微細気泡形成装置。
【課題】 マイクロバブル発生装置では、マイクロ化できない気泡もマイクロバブルと一体に送出するため突沸を起こしやすく。また、炭酸ガスなどコストを要するガスのマイクロバブル化では、マイクロバブル化できなかったガスを無駄に大気放出している。
【解決手段】
マイクロバブル発生装置の循環路内に圧力調整槽を設け、大サイズの気泡を浮上分離させ、槽内の上部空間に回収する。また、この上部空間の気体を吸引してマイクロバブルとして液中に戻すマイクロバブル発生ノズルを前記圧力調整槽の上部に設置する。
【解決手段】
マイクロバブル発生装置の循環路内に圧力調整槽を設け、大サイズの気泡を浮上分離させ、槽内の上部空間に回収する。また、この上部空間の気体を吸引してマイクロバブルとして液中に戻すマイクロバブル発生ノズルを前記圧力調整槽の上部に設置する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は主として浴槽や、シャワー、或いは洗浄用途として用いられる微細気泡を含む水の作製方法と作製装置に関するが、液体燃料に水素ガスなどを微細気泡化させて混入させる水素添加装置にも係る。
【背景技術】
【0002】
マイクロバブル発生装置についての先行技術には次のものがある。
特許文献1には炭酸ガスや空気をマイクロバブルとして温水に溶解、混合させる気液混合タンクを備えたマイクロバブル・炭酸泉発生装置の発明が開示されている。
特許文献2には水温により決まる空気の溶解量を考慮し、オリフィス固定弁7から吸引される空気のすべてが気液混合タンク内の水に溶解される圧力を保持するようポンプ1の吐出圧力を設定制御することで、過剰空気が大きな泡となって浴槽内などに放出されるのを防止する発明が開示されている。
特許文献3には、貯留槽の水を外部循環路で循環させる循環路の途中に設置した、エゼクタ方式のマイクロバブル発生装置が開示されている。
【0003】
特許文献4にはエゼクタ部の気体吸入ポートから気体を引き込んで循環水中に気体を混合させ、混合された気体を更に破砕する気泡破砕部を有するエゼクタ方式のマイクロバブル発生装置が開示されている。
特許文献5には旋回流を発生させる多数の傾斜孔を設けたプレートの発明が開示されており、マイクロバブルを更に微細化する効果があるとされている。
特許文献6は本願発明者の一人の発明であり、水噴流ノズルをオリフィス形状とし、その近傍に気体ノズルを配置した気液二相微細気泡発生装置の発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−114099
【特許文献2】特開2007−289903
【特許文献3】特開2006−167612
【特許文献4】特開2006−212562
【特許文献5】特開2008−086868
【特許文献6】特開2006−212562
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
炭酸ガスをマイクロバブル化して湯に混合して、白濁化させた風呂は、炭酸ガスが温浴効果を高め血行を促進し、疲れ・肩こり・冷え症などに効果のあることが知られている。
炭酸ガスをマイクロバブル化する特許文献1の発明では、密閉容器に水噴射ノズルと二酸化炭素ガス噴射ノズルの噴出部を接続し、噴出効果で密閉容器内が攪拌混合され、二酸化炭酸と空気の一部を水に溶解させ、残る気体部分については攪拌効果でマイクロバブル化するとされている。
しかし、単なる噴射ノズルの噴出効果のみで気体がマイクロバブル化できるとは考え難く、大きな気泡が浴槽内に放される可能性が強い。大きな気泡となって放出される二酸化炭素には温浴効果は無くむしろ、快適な入浴妨げになる。
【0006】
また、特許文献1の発明では密閉容器内に水位検出センサを配置し、容器内気体体積を所定範囲内に維持はしているが、気体の二酸化炭酸と空気の割合は把握困難である。極端な場合密閉容器内の気体が全て空気になった場合、炭酸ガスの供給が遮断され続けることもあり得る。
本願発明の課題は次の2点である。
第1の課題:貯留層に還流する液体中に大サイズの気泡が含まれると、突沸的現象が起こる。液中に含まれる気泡は全てマイクロバブル(微細気泡)化され、大サイズ気泡を除去する必要がある。
第2の課題:ガスボンベなどを用い空気以外のガスを使用する場合、マイクロバブル化できずに無駄に放出されるガスを減らす。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の微細気泡形成装置は、貯留槽と、循環路と、循環ポンプと、気体供給手段と、気泡形成手段とから構成される。
ここに、貯留槽は液体を貯留し、循環路は一旦貯留槽から流出させた液体を再び貯留槽に戻す一連の配管経路である。また、液体中への気体供給手段は循環ポンプの上流側、循環ポンプの下流側の何れの部位に設置されてよく、取り込み方法も吸引ノズルを用いるエゼクタ方式、高圧ガスボンベ等による圧入など如何なる方法であってもよい。
またこの循環路の途中には気泡形成手段が設けられるが、気泡形成手段は気体供給手段と一体であっても、別離のものであってもよい。気泡形成手段は循環液中に気泡を混入し、気泡の混入された液体が貯留槽に還流する。
【0008】
また、気泡形成手段には、加圧手法も含まれてよい。加圧の場合、気体は気泡として混合されるのでなく液体中に溶解される。なお、溶解した気泡は貯留槽に至るまでの経路の途中で減圧され、微細気泡として液体中に析出して微細気泡が形成される。
本発明は、上記微細気泡形成装置であって、循環路の途中に少なくとも加圧液体ポンプと、圧力調整槽と、第1気泡微細化手段とが配設される。
なお、圧力調整槽には管路抵抗調節弁など、内部圧力調節部材が装着され、加圧液体ポンプの加圧限界まで槽内圧力を高めることができる。従って、貯留槽に貯留された液体を加圧ポンプで吸引し、排出側に配置された圧力調整部材の設定圧力まで内圧を高めて気体を液体中に溶解させ、再度貯留槽に還流させる時点で貯留槽内圧力まで減圧させることで液体中に微細気泡を析出させることが出来る。
【0009】
前記圧力調整槽は、加圧液体ポンプで圧送される液体中に存在する気泡が圧送中に気泡同士の接触融合で大サイズ化した場合や、取り込み時点で大サイズであった気泡を、圧力調整槽内で浮上させ上部空間に気体として回収する。また、圧力調整槽上部には、第1気泡微細化手段が設置されており、回収した気体を再度微細気泡として液中に混入させる。圧力調整槽は大サイズの気泡を液中から分離する機能を有しており、圧力調整槽より送出される液体中には微細気泡のみが含まれる。
【0010】
請求項2に於いて第1気泡微細化手段と定義する気泡微細化手段は、吸引ノズルのあるエゼクタであり、しかも吸引ノズルの吸引口が圧力調整槽の上部に開口されていていることを特徴とする。従って、エゼクタは圧力調整槽の上部空間に存在する気体を逐次吸引し、微細気泡化して、確実に液体中に混合させることができる。
また、圧力調整槽の圧力調整部を通過した液は、貯留槽内液と略同一の圧力まで減圧されるので、溶解していた気体は微細気泡として液中に析出し、微細気泡を形成する。従って、貯留槽に送出される液には第1気泡微細化手段で形成される微細気泡と、減圧過程で析出される微細気泡の2種類が混然一体に含まれる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1〜2項に記載の微細気泡形成装置であって、前記液中への気体取り込み手段として第2気泡微細化手段を用いる。第2気泡微細化手段は加圧液体ポンプの上流に設置され、吸引ノズルで吸引した気体を循環液体に混入させ、オリフィス構造で前記吸引した気体をせん断して微細化する。本発明の構成は特開2006−212562に記載のマイクロバブル発生ノズルと同一構成であっても、周知のエゼクタ機構の何れであってもよく、また対象液体も水に限定されず微細気泡の混入が対象となる液体であれば水、重油燃料など全てが対象になる。更に、気体についても空気に限定されることなく、炭酸ガス、水素など液体に混合することが必要とされる気体は全て対象になる。
本発明により循環液体に供給される気体は、液中への導入時点で十分微細化されるので、加圧液体ポンプの下流に位置する圧力調整槽内まで送出されたとき、上部空間に浮上する気体量を最小限と
することができる。
また、気泡の微細化効果で気液接触面積が拡大され、加圧液体ポンプの加圧効果による液中への気体溶解過程を円滑に進行させることができる。
【0012】
請求項4に記載の発明は請求項1〜3項の何れか一項に記載の微細気泡形成装置であって、貯留槽への送出部に第3の気泡微細化手段を設置する発明である。第3の気泡微細化手段は慣用技術を組合せ最適化を図った気泡微細化装置であって、圧力調整槽から送出される前記循環液に含まれる微細気泡を更にせん断して微細化すると伴に、前記循環液体圧力を前記貯留槽圧力まで減圧して前記貯留槽に放出する。
このとき、圧力調整槽で液中に溶解した気体は減圧効果により微細気泡として析出し、せん断効果により微細化された微細気泡と混然一体となって貯留槽に放出される。
【0013】
請求項5に記載の発明は請求項1〜4項の何れか一項に記載の微細気泡形成装置であって、前記液体が水であって、前記気体が炭酸ガスまたは空気であることを特徴とする。
水に炭酸ガスを微細気泡化して混入させる用途は、例えば風呂に好適である。また空気を微細化して水に混入させる方法としては風呂以外に洗浄用途などに好適である。
【0014】
請求項6に記載の発明は請求項1〜4項の何れか一項に記載の微細気泡形成装置であって、前記液体が重油を基調とする燃料であって、前記気体が水素ガスであることを特徴とする。
例えばエマルジョン燃料においては一定割合で重油に水が混入されるが、水の混入割合が大きい場合、燃料効率、排ガスなどでの改善効果はあっても、着火性に欠ける場合がある、このような場合、水素ガスを微小気泡化して混入させることで着火性が促進され、水の混入割合を増すことに伴い生じる着火性の問題を克服することができる。
本発明はエマルジョン燃料分野に於いても好適に使用できる。
【発明の効果】
【0015】
本願発明によれば従技術に存在した2課題に対し、それぞれ次ぎの対応が可能である。
(1) 第1の課題について
本発明の微細気泡形成装置では、少なくとも第1気泡微細化手段があって、気体は微細化されて液中に混入される。また微細化されない大サイズの気泡が存在したとしても大サイズの気泡は圧力調整槽に送出され、圧力調整槽内での滞留中に、液中から容易に分離浮上し、貯留層上部空間に放出される。上部空間に放出された気体は、第1気泡微細化手段により再度微細化されて液中に混合されるので、還流する液中に含まれる気泡は全てマイクロバブル(微細気泡)化され、液中には大サイズの気泡は存在しないので突沸的現象は回避され、第一の課題は解決される。
なお、気泡の微細化は第1気泡微細化手段に加え、第2気泡微細化手段や、第3気泡微細化手段を併用することで一層促進される。
【0016】
(2) 第2の課題について
空気以外のガスである炭酸ガスや水素であっても、また使用液体が水以外の例えば重油をベースとするエマルジョン燃料であっても、気体の微細気泡化効果は同じである。また、本発明では液中に存在する大きな気泡は圧力調整槽で分離回収され、再度微細化気泡として液中に戻されるので、無駄に放出される気体はなく、第二の課題も解決される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第1、2気泡微細化手段を備えた微細気泡形成装置の基本構成図。
【図2】第1、2、3気泡微細化手段を備えた微細気泡形成装置の基本構成図。
【図3】第1、2気泡微細化手段として用いられるRタイプの微細気泡発生ノズル。
【図4】第1、2気泡微細化手段として用いられるSタイプの微細気泡発生ノズル。
【図5】第3気泡微細化手段として用いられるAタイプの微細気泡発生ノズル。
【図6】第3気泡微細化手段として用いられるBタイプの微細気泡発生ノズル。
【図7】第3気泡微細化手段として用いられるCタイプの微細気泡発生ノズル。
【図8】第3気泡微細化手段として用いられるDタイプの微細気泡発生ノズル。
【図9】第3気泡微細化手段として用いられるEタイプの微細気泡発生ノズル。
【図10】第3気泡微細化手段として用いられるFタイプの微細気泡発生ノズル。
【図11】照度測定によるマイクロバブル発生量の評価方法。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明による微細気泡形成装置の第1の実施例を図1を用い説明する。
貯留槽6に液体9が貯留されており液体は加圧液体ポンプ7により循環路8aを経由して吸引される。吸引された液体は加圧液体ポンプ7に至るまでの間に第2気泡微細化手段2により吸引ノズル22から気体を吸引し、吸引した気体を微細気泡化して液体中に混入させる。
気液混合状態の液体は循環路8bを経由して加圧液体ポンプ7に吸引される。加圧液体ポンプ7はロータリー方式のポンプで排出側の管路抵抗に対応する突出圧力を発生させる。加圧液体ポンプ7により加圧状態で送出された液体は循環路8cを経由して第1気泡微細化手段1に至る。
【0019】
第1気泡微細化手段1の吸気管22の吸気部は圧力調整槽4の上部空間に開放されており、液体送出口も圧力調整槽4の上部に開放されている。第1気泡微細化手段1は吸気管22により圧力調整槽4の上部空間に滞留する気体を吸引し、循環路8c内を圧送される気液混合液体中に微細化して混合させる。気液混合された液体は第1気泡微細化手段1の送出口から圧力調整槽4内に噴出される。圧力調整槽4内は加圧液体ポンプ7の送出圧に対応して高圧に維持されるので、気体の一部は循環路8c内と圧力調整槽4内において液体に溶解する。
【0020】
気液混然となった液体は圧力調整槽4内に一定時間滞留する。滞留時間は圧力調整槽4の容積や上部に形成される空間体積、液体の流速などにより決まる。このとき、微小気泡は第1気泡微細化手段1から送出される液体の攪拌効果で気液混然となって圧力調整槽4内を循環するが、大サイズの気泡は浮上力が大きいので液体表面に浮上分離され、上部空間に放出される。従って内部圧力調整部材5に流出する液中に含まれる気泡は微細気泡のみとなる。
内部圧力調整部材5は例えば弁であり、液体流路を狭めて流路抵抗を増大させ、圧力調整槽4の内部圧力を上昇させたり、逆に液体流路を拡張させ、流路抵抗を低減させ圧力調整槽4内部圧力を降下させることができる。
【0021】
内部圧力調整部材5を通過した気液混合液体は循環路8dに流出した瞬間内部圧力が一気に貯留槽6内部の液体9と略同一圧力に減圧される。このとき液中に溶解していた気体も一気に微細気泡となって液中に析出する。循環路8dから貯留槽6に放出される液中には第1、2の気泡微細化手段で
液に混入された微細気泡と、加圧液体ポンプにより加圧溶された後、減圧により液中から析出した微細気泡が混然一体に含まれる。
【0022】
ここで、第1、2の気泡微細化手段の詳細について説明する。
図3、図4にこれら気泡微細化手段の構造を示す。第1と第2の気泡微細化手段に機能上の差異は無い。
まず図3のSタイプノズルの構成について説明する。
Sタイプノズルは本体30とキャップ31で構成され、本体30の中心部に流路21が設けられ液体は矢印方向(図面左から右)に流れる。液体流路の断面積は流路に沿って変化し、また断面積に対応して本体内部の流速も変化する。具体的には流路21に流入した液体はオリフィス23で急激に流路を狭められ、その後拡大流路領域24に至る。このとき吸気管22がノズル内部に開口する部位が負圧になるため吸気管22から気体が吸入される。吸入気体は高速に流れる液体にせん断されて微細気泡となり液体と混然一体となって排出口25から送出される。
【0023】
次に図4を用いRタイプノズルの構成について説明する。
Rタイプノズルは本体30とキャップ31で構成され、本体30の中心部に流路21が設けられて液体は矢印方向(図面左から右)に流れる。RタイプノズルもSタイプノズル以上に内部流路の内径が複雑に変化し、また流路に沿った断面積に対応して本体内部の流速が変化する。
まず、左端の流入路21に接続する吸気路27で流路断面積は急激に狭められ、中間流路26に至り拡大される。中間流路26の先端部にオリフィス23が設けられ、オリフィスの先は逐次流路が拡大され、拡大流路24に至る。拡大流路の先端は噴出口25であり、液体は噴出口から送出される。
なお、吸気流路27の部位は流速が最も早い部位で、この部位に接続する吸気管の開口部は負圧になり吸気管22を介して外部より気体が吸引される。吸引された気体はオリフィス部を通過する高速流体にせん断され、微細気泡となって噴出口25から送出される。
【0024】
なお、図1に記載は無いが、圧力調整槽4に液面の下限を検出可能なセンサー(例えばフロート)を配置し、液体量が限界を越えて減少したとき(上部空間体積が限界以上に拡大したとき)第2気泡微細化手段が吸引する気体量を制限させることができる。逆に、圧力調整槽4上部の空間が液体で充填される場合もあり得る。この場合吸気管22が圧力調整槽4内の液体を吸引することになるが、吸気管22が液体を吸引するに至っても何ら機能上の問題は何ら生じない。
【0025】
次に第2の構成例について図2を用いて説明する。
図2の基本構成は図1と同じであるが、相違点は循環路8dの先端部に第3気泡微細化手段3が設置され、この気泡微細化手段の先端が貯留槽6に開放されている点である。
図2では第3気泡微細化手段3を追加設置されるので、液中の微細気泡は更に微細化される。
第3気泡微細化手段3の代表例を図5に示す。
【0026】
図5のAタイプノズルは本体11と、キャップ14と、螺旋流板15と、メッシュ16で構成され、本体11の中心部に断面円形の流路が設けられ、液体は矢印方向(図面左から右)に流れる。本体内部の流路断面積は流れ方向に沿って様々に変化しており、断面積に対応して本体内部の流速は変化する。
まず、左方より流入する液体は螺旋板15で流れ方向が旋回流に変えられる。この旋回効果で気泡はせん断力を受け微細化する。内径D1の流路を旋回しながら流れオリフィス12に至る。オリフィス部において流路は急激に狭まり流速が増す。オリフィス通過後はなだらかに流路断面が拡張され最大内径D2になる。オリフィス部では内径方向の流速勾配が大きく、液中に存在する気泡に大きなせん断力が作用し、液中に存在する微細気泡の更なる微細化が進む。オリフィス通過後流体はメッシュ16に至る。メッシュ通過時流速は局所的に変化するのでこの場合も気泡にせん断力が作用し、微細化は更に促進される。キャップ14の貯留槽6への開放口の内径はD3に狭められるので、液体は微細気泡を含み気液混合状態で勢いよく貯留槽6に放射される。
【実施例1】
【0027】
図1のシステム構成において、液体として水を使用し、水中に空気のマイクロバブル発生させる実験
を行なった。実験装置仕様の概要は次の通りである。
実験しに使用した装置の主要部寸法は次になる。
<ノズル>
D1:9mm D2:18mm D3:6mm D4:2mm
L1:14mm L2:15mm L3:65mm
<圧力調整槽>
内径:70mm 高さ:150mm
<貯留槽>
600×300×360mm
<加圧液体ポンプ>
ロータリーポンプ 24V、50W
<配管>
内径:12mm 外径:18mm
【0028】
実施例1では次の2条件で装置運転をした時のマイクロバブル大きさと、圧力調整槽の空間体積
変化を目視観察した。
条件1:第1気泡微細化手段1を通常条件(吸気管22を「開」にして)で5分間運転。
条件2:第1気泡微細化手段1の吸気管22を「閉」にして5分間運転。
この結果、定性的には次の差異が認められた。
(1)条件1で形成されるマイクロバブルは、条件2で形成されるマイクロバブルに比べ粒度が小さく、水中での滞留が長い。
(2)条件1では吸気管を介して圧力調整槽内の気体が泡状に吸引される状況が観察され、また、圧力調整層内の気体比率は条件2に比べ小さい。
本実験により、圧力調整槽内では、大型サイズの気泡が浮上分離され、これらが上部空間に滞留し
第1気泡微細化手段の吸気管に吸引されてマイクロバブル化されて再び水中に混入されるので、気
泡の微細化が一層促進されることが確認された。
これにより、本発明の請求項1に係る圧力調整槽の気泡分離機能と、請求項2に係る第1気泡微細化手段の圧力調整槽からの気体吸引効果の有効性が確認された。
【実施例2】
【0029】
図2のシステム構成における第3気泡微細化手段について、種々の形状のノズルを作成し、マイク
ロバブル生成特性を評価した。
実験では図5〜図10に示す6種類のノズルを作成し評価した。なお、6種類のノズル構成の特徴はつぎの通りである。
Aタイプノズル(図5):螺旋流板15と、メッシュ16を共に装着
Bタイプノズル(図6):螺旋流板15のみ装着
Cタイプノズル(図7):螺旋流板15、メッシュ16の何れも装着なし
Dタイプノズル(図8):構成はAタイプノズルと同一であるが、流水方向が逆
Eタイプノズル(図9):構成はBタイプノズルと同一であるが、流水方向が逆
Fタイプノズル(図10):構成はCタイプノズルと同一であるが、流水方向が逆
【0030】
なお、マイクロバブルの発生量は、照度計を用い図11に示す方法で計測した。
貯留槽6の下部に配置された第3気泡微細化手段3に上記A〜Fの6種類のノズル順次取り付け実験を行う。なお、貯留槽6の右方より光源36(ハロゲンランプ:E17ミニレフ電球100V.40W)で照射を行い、貯留槽6を挟み対向する位置に照度計35(ミノルタ製デジタル照度計T11)を配置する。実験は周囲環境からの光を遮断して暗黒状態で光源を点燈させるので、照度計は貯留槽6を透過する光源36からの光のみを検出する。従って、貯留槽6内に配置された第3気泡微細化手段3で気泡が作られると透過光は気泡の散乱を受け、照度計で検出される光量は低減する。
透過光量の低減はマイクロバブルの発生量にほぼ比例すると思われるので、照度計を用いた透過光量(照度)の測定により、マイクロバブルの発生量の相対評価が可能であると考えた。
A〜Fの6種類のノズルについて、マイクロバブル発生3分後の照度を測定した結果は次の通りであった。なお測定結果はマイクロバブル発生前の照度を100%とした相対値で表している。
Aタイプ: 7% Dタイプ:2%
Bタイプ:10% Eタイプ:5%
Cタイプ:14% Fタイプ:9%
マイクロバブル発生効率はDタイプが最も優れ次いでEタイプ、Aタイプの順となり、最後が
Cタイプであった。これより、マイクロバブル発生にはメッシュ16と、螺旋板15が有効に作用すること、
またノズルの設置方向は、キャップ部を水流の下流側とするよりも上流側に向ける方がマイクロバブル
は効率的に発生することが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明にかかる微細気泡形成装置は浴場施設としてはシャワーを含め、業務用、家庭用何れにも適用可能である。また、生産工場における器具、部品など洗浄用途にも好適で、家庭用食器洗い、洗濯、業務用洗浄機、などにも適用できる。さらには、エマルジョン燃料に水素ガスを添加しエマルジョン燃料の着火特性の改質にも有効に適用できる。
【符号の説明】
【0032】
1 第1気泡微細化手段
2 第2気泡微細化手段
3 第3気泡微細化手段
4 圧力調整槽
5 内部圧力調整部材
6 貯留槽
7 加圧液体ポンプ
8a、8b,8c,8d 循環路
9 液体
10 微細気泡
11 ノズル本体
12 キャップ
15 螺旋流板
16 メッシュ
22 吸気管
23 オリフィス
35 照度計
36 光源
【技術分野】
【0001】
本発明は主として浴槽や、シャワー、或いは洗浄用途として用いられる微細気泡を含む水の作製方法と作製装置に関するが、液体燃料に水素ガスなどを微細気泡化させて混入させる水素添加装置にも係る。
【背景技術】
【0002】
マイクロバブル発生装置についての先行技術には次のものがある。
特許文献1には炭酸ガスや空気をマイクロバブルとして温水に溶解、混合させる気液混合タンクを備えたマイクロバブル・炭酸泉発生装置の発明が開示されている。
特許文献2には水温により決まる空気の溶解量を考慮し、オリフィス固定弁7から吸引される空気のすべてが気液混合タンク内の水に溶解される圧力を保持するようポンプ1の吐出圧力を設定制御することで、過剰空気が大きな泡となって浴槽内などに放出されるのを防止する発明が開示されている。
特許文献3には、貯留槽の水を外部循環路で循環させる循環路の途中に設置した、エゼクタ方式のマイクロバブル発生装置が開示されている。
【0003】
特許文献4にはエゼクタ部の気体吸入ポートから気体を引き込んで循環水中に気体を混合させ、混合された気体を更に破砕する気泡破砕部を有するエゼクタ方式のマイクロバブル発生装置が開示されている。
特許文献5には旋回流を発生させる多数の傾斜孔を設けたプレートの発明が開示されており、マイクロバブルを更に微細化する効果があるとされている。
特許文献6は本願発明者の一人の発明であり、水噴流ノズルをオリフィス形状とし、その近傍に気体ノズルを配置した気液二相微細気泡発生装置の発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−114099
【特許文献2】特開2007−289903
【特許文献3】特開2006−167612
【特許文献4】特開2006−212562
【特許文献5】特開2008−086868
【特許文献6】特開2006−212562
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
炭酸ガスをマイクロバブル化して湯に混合して、白濁化させた風呂は、炭酸ガスが温浴効果を高め血行を促進し、疲れ・肩こり・冷え症などに効果のあることが知られている。
炭酸ガスをマイクロバブル化する特許文献1の発明では、密閉容器に水噴射ノズルと二酸化炭素ガス噴射ノズルの噴出部を接続し、噴出効果で密閉容器内が攪拌混合され、二酸化炭酸と空気の一部を水に溶解させ、残る気体部分については攪拌効果でマイクロバブル化するとされている。
しかし、単なる噴射ノズルの噴出効果のみで気体がマイクロバブル化できるとは考え難く、大きな気泡が浴槽内に放される可能性が強い。大きな気泡となって放出される二酸化炭素には温浴効果は無くむしろ、快適な入浴妨げになる。
【0006】
また、特許文献1の発明では密閉容器内に水位検出センサを配置し、容器内気体体積を所定範囲内に維持はしているが、気体の二酸化炭酸と空気の割合は把握困難である。極端な場合密閉容器内の気体が全て空気になった場合、炭酸ガスの供給が遮断され続けることもあり得る。
本願発明の課題は次の2点である。
第1の課題:貯留層に還流する液体中に大サイズの気泡が含まれると、突沸的現象が起こる。液中に含まれる気泡は全てマイクロバブル(微細気泡)化され、大サイズ気泡を除去する必要がある。
第2の課題:ガスボンベなどを用い空気以外のガスを使用する場合、マイクロバブル化できずに無駄に放出されるガスを減らす。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の微細気泡形成装置は、貯留槽と、循環路と、循環ポンプと、気体供給手段と、気泡形成手段とから構成される。
ここに、貯留槽は液体を貯留し、循環路は一旦貯留槽から流出させた液体を再び貯留槽に戻す一連の配管経路である。また、液体中への気体供給手段は循環ポンプの上流側、循環ポンプの下流側の何れの部位に設置されてよく、取り込み方法も吸引ノズルを用いるエゼクタ方式、高圧ガスボンベ等による圧入など如何なる方法であってもよい。
またこの循環路の途中には気泡形成手段が設けられるが、気泡形成手段は気体供給手段と一体であっても、別離のものであってもよい。気泡形成手段は循環液中に気泡を混入し、気泡の混入された液体が貯留槽に還流する。
【0008】
また、気泡形成手段には、加圧手法も含まれてよい。加圧の場合、気体は気泡として混合されるのでなく液体中に溶解される。なお、溶解した気泡は貯留槽に至るまでの経路の途中で減圧され、微細気泡として液体中に析出して微細気泡が形成される。
本発明は、上記微細気泡形成装置であって、循環路の途中に少なくとも加圧液体ポンプと、圧力調整槽と、第1気泡微細化手段とが配設される。
なお、圧力調整槽には管路抵抗調節弁など、内部圧力調節部材が装着され、加圧液体ポンプの加圧限界まで槽内圧力を高めることができる。従って、貯留槽に貯留された液体を加圧ポンプで吸引し、排出側に配置された圧力調整部材の設定圧力まで内圧を高めて気体を液体中に溶解させ、再度貯留槽に還流させる時点で貯留槽内圧力まで減圧させることで液体中に微細気泡を析出させることが出来る。
【0009】
前記圧力調整槽は、加圧液体ポンプで圧送される液体中に存在する気泡が圧送中に気泡同士の接触融合で大サイズ化した場合や、取り込み時点で大サイズであった気泡を、圧力調整槽内で浮上させ上部空間に気体として回収する。また、圧力調整槽上部には、第1気泡微細化手段が設置されており、回収した気体を再度微細気泡として液中に混入させる。圧力調整槽は大サイズの気泡を液中から分離する機能を有しており、圧力調整槽より送出される液体中には微細気泡のみが含まれる。
【0010】
請求項2に於いて第1気泡微細化手段と定義する気泡微細化手段は、吸引ノズルのあるエゼクタであり、しかも吸引ノズルの吸引口が圧力調整槽の上部に開口されていていることを特徴とする。従って、エゼクタは圧力調整槽の上部空間に存在する気体を逐次吸引し、微細気泡化して、確実に液体中に混合させることができる。
また、圧力調整槽の圧力調整部を通過した液は、貯留槽内液と略同一の圧力まで減圧されるので、溶解していた気体は微細気泡として液中に析出し、微細気泡を形成する。従って、貯留槽に送出される液には第1気泡微細化手段で形成される微細気泡と、減圧過程で析出される微細気泡の2種類が混然一体に含まれる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1〜2項に記載の微細気泡形成装置であって、前記液中への気体取り込み手段として第2気泡微細化手段を用いる。第2気泡微細化手段は加圧液体ポンプの上流に設置され、吸引ノズルで吸引した気体を循環液体に混入させ、オリフィス構造で前記吸引した気体をせん断して微細化する。本発明の構成は特開2006−212562に記載のマイクロバブル発生ノズルと同一構成であっても、周知のエゼクタ機構の何れであってもよく、また対象液体も水に限定されず微細気泡の混入が対象となる液体であれば水、重油燃料など全てが対象になる。更に、気体についても空気に限定されることなく、炭酸ガス、水素など液体に混合することが必要とされる気体は全て対象になる。
本発明により循環液体に供給される気体は、液中への導入時点で十分微細化されるので、加圧液体ポンプの下流に位置する圧力調整槽内まで送出されたとき、上部空間に浮上する気体量を最小限と
することができる。
また、気泡の微細化効果で気液接触面積が拡大され、加圧液体ポンプの加圧効果による液中への気体溶解過程を円滑に進行させることができる。
【0012】
請求項4に記載の発明は請求項1〜3項の何れか一項に記載の微細気泡形成装置であって、貯留槽への送出部に第3の気泡微細化手段を設置する発明である。第3の気泡微細化手段は慣用技術を組合せ最適化を図った気泡微細化装置であって、圧力調整槽から送出される前記循環液に含まれる微細気泡を更にせん断して微細化すると伴に、前記循環液体圧力を前記貯留槽圧力まで減圧して前記貯留槽に放出する。
このとき、圧力調整槽で液中に溶解した気体は減圧効果により微細気泡として析出し、せん断効果により微細化された微細気泡と混然一体となって貯留槽に放出される。
【0013】
請求項5に記載の発明は請求項1〜4項の何れか一項に記載の微細気泡形成装置であって、前記液体が水であって、前記気体が炭酸ガスまたは空気であることを特徴とする。
水に炭酸ガスを微細気泡化して混入させる用途は、例えば風呂に好適である。また空気を微細化して水に混入させる方法としては風呂以外に洗浄用途などに好適である。
【0014】
請求項6に記載の発明は請求項1〜4項の何れか一項に記載の微細気泡形成装置であって、前記液体が重油を基調とする燃料であって、前記気体が水素ガスであることを特徴とする。
例えばエマルジョン燃料においては一定割合で重油に水が混入されるが、水の混入割合が大きい場合、燃料効率、排ガスなどでの改善効果はあっても、着火性に欠ける場合がある、このような場合、水素ガスを微小気泡化して混入させることで着火性が促進され、水の混入割合を増すことに伴い生じる着火性の問題を克服することができる。
本発明はエマルジョン燃料分野に於いても好適に使用できる。
【発明の効果】
【0015】
本願発明によれば従技術に存在した2課題に対し、それぞれ次ぎの対応が可能である。
(1) 第1の課題について
本発明の微細気泡形成装置では、少なくとも第1気泡微細化手段があって、気体は微細化されて液中に混入される。また微細化されない大サイズの気泡が存在したとしても大サイズの気泡は圧力調整槽に送出され、圧力調整槽内での滞留中に、液中から容易に分離浮上し、貯留層上部空間に放出される。上部空間に放出された気体は、第1気泡微細化手段により再度微細化されて液中に混合されるので、還流する液中に含まれる気泡は全てマイクロバブル(微細気泡)化され、液中には大サイズの気泡は存在しないので突沸的現象は回避され、第一の課題は解決される。
なお、気泡の微細化は第1気泡微細化手段に加え、第2気泡微細化手段や、第3気泡微細化手段を併用することで一層促進される。
【0016】
(2) 第2の課題について
空気以外のガスである炭酸ガスや水素であっても、また使用液体が水以外の例えば重油をベースとするエマルジョン燃料であっても、気体の微細気泡化効果は同じである。また、本発明では液中に存在する大きな気泡は圧力調整槽で分離回収され、再度微細化気泡として液中に戻されるので、無駄に放出される気体はなく、第二の課題も解決される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第1、2気泡微細化手段を備えた微細気泡形成装置の基本構成図。
【図2】第1、2、3気泡微細化手段を備えた微細気泡形成装置の基本構成図。
【図3】第1、2気泡微細化手段として用いられるRタイプの微細気泡発生ノズル。
【図4】第1、2気泡微細化手段として用いられるSタイプの微細気泡発生ノズル。
【図5】第3気泡微細化手段として用いられるAタイプの微細気泡発生ノズル。
【図6】第3気泡微細化手段として用いられるBタイプの微細気泡発生ノズル。
【図7】第3気泡微細化手段として用いられるCタイプの微細気泡発生ノズル。
【図8】第3気泡微細化手段として用いられるDタイプの微細気泡発生ノズル。
【図9】第3気泡微細化手段として用いられるEタイプの微細気泡発生ノズル。
【図10】第3気泡微細化手段として用いられるFタイプの微細気泡発生ノズル。
【図11】照度測定によるマイクロバブル発生量の評価方法。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明による微細気泡形成装置の第1の実施例を図1を用い説明する。
貯留槽6に液体9が貯留されており液体は加圧液体ポンプ7により循環路8aを経由して吸引される。吸引された液体は加圧液体ポンプ7に至るまでの間に第2気泡微細化手段2により吸引ノズル22から気体を吸引し、吸引した気体を微細気泡化して液体中に混入させる。
気液混合状態の液体は循環路8bを経由して加圧液体ポンプ7に吸引される。加圧液体ポンプ7はロータリー方式のポンプで排出側の管路抵抗に対応する突出圧力を発生させる。加圧液体ポンプ7により加圧状態で送出された液体は循環路8cを経由して第1気泡微細化手段1に至る。
【0019】
第1気泡微細化手段1の吸気管22の吸気部は圧力調整槽4の上部空間に開放されており、液体送出口も圧力調整槽4の上部に開放されている。第1気泡微細化手段1は吸気管22により圧力調整槽4の上部空間に滞留する気体を吸引し、循環路8c内を圧送される気液混合液体中に微細化して混合させる。気液混合された液体は第1気泡微細化手段1の送出口から圧力調整槽4内に噴出される。圧力調整槽4内は加圧液体ポンプ7の送出圧に対応して高圧に維持されるので、気体の一部は循環路8c内と圧力調整槽4内において液体に溶解する。
【0020】
気液混然となった液体は圧力調整槽4内に一定時間滞留する。滞留時間は圧力調整槽4の容積や上部に形成される空間体積、液体の流速などにより決まる。このとき、微小気泡は第1気泡微細化手段1から送出される液体の攪拌効果で気液混然となって圧力調整槽4内を循環するが、大サイズの気泡は浮上力が大きいので液体表面に浮上分離され、上部空間に放出される。従って内部圧力調整部材5に流出する液中に含まれる気泡は微細気泡のみとなる。
内部圧力調整部材5は例えば弁であり、液体流路を狭めて流路抵抗を増大させ、圧力調整槽4の内部圧力を上昇させたり、逆に液体流路を拡張させ、流路抵抗を低減させ圧力調整槽4内部圧力を降下させることができる。
【0021】
内部圧力調整部材5を通過した気液混合液体は循環路8dに流出した瞬間内部圧力が一気に貯留槽6内部の液体9と略同一圧力に減圧される。このとき液中に溶解していた気体も一気に微細気泡となって液中に析出する。循環路8dから貯留槽6に放出される液中には第1、2の気泡微細化手段で
液に混入された微細気泡と、加圧液体ポンプにより加圧溶された後、減圧により液中から析出した微細気泡が混然一体に含まれる。
【0022】
ここで、第1、2の気泡微細化手段の詳細について説明する。
図3、図4にこれら気泡微細化手段の構造を示す。第1と第2の気泡微細化手段に機能上の差異は無い。
まず図3のSタイプノズルの構成について説明する。
Sタイプノズルは本体30とキャップ31で構成され、本体30の中心部に流路21が設けられ液体は矢印方向(図面左から右)に流れる。液体流路の断面積は流路に沿って変化し、また断面積に対応して本体内部の流速も変化する。具体的には流路21に流入した液体はオリフィス23で急激に流路を狭められ、その後拡大流路領域24に至る。このとき吸気管22がノズル内部に開口する部位が負圧になるため吸気管22から気体が吸入される。吸入気体は高速に流れる液体にせん断されて微細気泡となり液体と混然一体となって排出口25から送出される。
【0023】
次に図4を用いRタイプノズルの構成について説明する。
Rタイプノズルは本体30とキャップ31で構成され、本体30の中心部に流路21が設けられて液体は矢印方向(図面左から右)に流れる。RタイプノズルもSタイプノズル以上に内部流路の内径が複雑に変化し、また流路に沿った断面積に対応して本体内部の流速が変化する。
まず、左端の流入路21に接続する吸気路27で流路断面積は急激に狭められ、中間流路26に至り拡大される。中間流路26の先端部にオリフィス23が設けられ、オリフィスの先は逐次流路が拡大され、拡大流路24に至る。拡大流路の先端は噴出口25であり、液体は噴出口から送出される。
なお、吸気流路27の部位は流速が最も早い部位で、この部位に接続する吸気管の開口部は負圧になり吸気管22を介して外部より気体が吸引される。吸引された気体はオリフィス部を通過する高速流体にせん断され、微細気泡となって噴出口25から送出される。
【0024】
なお、図1に記載は無いが、圧力調整槽4に液面の下限を検出可能なセンサー(例えばフロート)を配置し、液体量が限界を越えて減少したとき(上部空間体積が限界以上に拡大したとき)第2気泡微細化手段が吸引する気体量を制限させることができる。逆に、圧力調整槽4上部の空間が液体で充填される場合もあり得る。この場合吸気管22が圧力調整槽4内の液体を吸引することになるが、吸気管22が液体を吸引するに至っても何ら機能上の問題は何ら生じない。
【0025】
次に第2の構成例について図2を用いて説明する。
図2の基本構成は図1と同じであるが、相違点は循環路8dの先端部に第3気泡微細化手段3が設置され、この気泡微細化手段の先端が貯留槽6に開放されている点である。
図2では第3気泡微細化手段3を追加設置されるので、液中の微細気泡は更に微細化される。
第3気泡微細化手段3の代表例を図5に示す。
【0026】
図5のAタイプノズルは本体11と、キャップ14と、螺旋流板15と、メッシュ16で構成され、本体11の中心部に断面円形の流路が設けられ、液体は矢印方向(図面左から右)に流れる。本体内部の流路断面積は流れ方向に沿って様々に変化しており、断面積に対応して本体内部の流速は変化する。
まず、左方より流入する液体は螺旋板15で流れ方向が旋回流に変えられる。この旋回効果で気泡はせん断力を受け微細化する。内径D1の流路を旋回しながら流れオリフィス12に至る。オリフィス部において流路は急激に狭まり流速が増す。オリフィス通過後はなだらかに流路断面が拡張され最大内径D2になる。オリフィス部では内径方向の流速勾配が大きく、液中に存在する気泡に大きなせん断力が作用し、液中に存在する微細気泡の更なる微細化が進む。オリフィス通過後流体はメッシュ16に至る。メッシュ通過時流速は局所的に変化するのでこの場合も気泡にせん断力が作用し、微細化は更に促進される。キャップ14の貯留槽6への開放口の内径はD3に狭められるので、液体は微細気泡を含み気液混合状態で勢いよく貯留槽6に放射される。
【実施例1】
【0027】
図1のシステム構成において、液体として水を使用し、水中に空気のマイクロバブル発生させる実験
を行なった。実験装置仕様の概要は次の通りである。
実験しに使用した装置の主要部寸法は次になる。
<ノズル>
D1:9mm D2:18mm D3:6mm D4:2mm
L1:14mm L2:15mm L3:65mm
<圧力調整槽>
内径:70mm 高さ:150mm
<貯留槽>
600×300×360mm
<加圧液体ポンプ>
ロータリーポンプ 24V、50W
<配管>
内径:12mm 外径:18mm
【0028】
実施例1では次の2条件で装置運転をした時のマイクロバブル大きさと、圧力調整槽の空間体積
変化を目視観察した。
条件1:第1気泡微細化手段1を通常条件(吸気管22を「開」にして)で5分間運転。
条件2:第1気泡微細化手段1の吸気管22を「閉」にして5分間運転。
この結果、定性的には次の差異が認められた。
(1)条件1で形成されるマイクロバブルは、条件2で形成されるマイクロバブルに比べ粒度が小さく、水中での滞留が長い。
(2)条件1では吸気管を介して圧力調整槽内の気体が泡状に吸引される状況が観察され、また、圧力調整層内の気体比率は条件2に比べ小さい。
本実験により、圧力調整槽内では、大型サイズの気泡が浮上分離され、これらが上部空間に滞留し
第1気泡微細化手段の吸気管に吸引されてマイクロバブル化されて再び水中に混入されるので、気
泡の微細化が一層促進されることが確認された。
これにより、本発明の請求項1に係る圧力調整槽の気泡分離機能と、請求項2に係る第1気泡微細化手段の圧力調整槽からの気体吸引効果の有効性が確認された。
【実施例2】
【0029】
図2のシステム構成における第3気泡微細化手段について、種々の形状のノズルを作成し、マイク
ロバブル生成特性を評価した。
実験では図5〜図10に示す6種類のノズルを作成し評価した。なお、6種類のノズル構成の特徴はつぎの通りである。
Aタイプノズル(図5):螺旋流板15と、メッシュ16を共に装着
Bタイプノズル(図6):螺旋流板15のみ装着
Cタイプノズル(図7):螺旋流板15、メッシュ16の何れも装着なし
Dタイプノズル(図8):構成はAタイプノズルと同一であるが、流水方向が逆
Eタイプノズル(図9):構成はBタイプノズルと同一であるが、流水方向が逆
Fタイプノズル(図10):構成はCタイプノズルと同一であるが、流水方向が逆
【0030】
なお、マイクロバブルの発生量は、照度計を用い図11に示す方法で計測した。
貯留槽6の下部に配置された第3気泡微細化手段3に上記A〜Fの6種類のノズル順次取り付け実験を行う。なお、貯留槽6の右方より光源36(ハロゲンランプ:E17ミニレフ電球100V.40W)で照射を行い、貯留槽6を挟み対向する位置に照度計35(ミノルタ製デジタル照度計T11)を配置する。実験は周囲環境からの光を遮断して暗黒状態で光源を点燈させるので、照度計は貯留槽6を透過する光源36からの光のみを検出する。従って、貯留槽6内に配置された第3気泡微細化手段3で気泡が作られると透過光は気泡の散乱を受け、照度計で検出される光量は低減する。
透過光量の低減はマイクロバブルの発生量にほぼ比例すると思われるので、照度計を用いた透過光量(照度)の測定により、マイクロバブルの発生量の相対評価が可能であると考えた。
A〜Fの6種類のノズルについて、マイクロバブル発生3分後の照度を測定した結果は次の通りであった。なお測定結果はマイクロバブル発生前の照度を100%とした相対値で表している。
Aタイプ: 7% Dタイプ:2%
Bタイプ:10% Eタイプ:5%
Cタイプ:14% Fタイプ:9%
マイクロバブル発生効率はDタイプが最も優れ次いでEタイプ、Aタイプの順となり、最後が
Cタイプであった。これより、マイクロバブル発生にはメッシュ16と、螺旋板15が有効に作用すること、
またノズルの設置方向は、キャップ部を水流の下流側とするよりも上流側に向ける方がマイクロバブル
は効率的に発生することが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明にかかる微細気泡形成装置は浴場施設としてはシャワーを含め、業務用、家庭用何れにも適用可能である。また、生産工場における器具、部品など洗浄用途にも好適で、家庭用食器洗い、洗濯、業務用洗浄機、などにも適用できる。さらには、エマルジョン燃料に水素ガスを添加しエマルジョン燃料の着火特性の改質にも有効に適用できる。
【符号の説明】
【0032】
1 第1気泡微細化手段
2 第2気泡微細化手段
3 第3気泡微細化手段
4 圧力調整槽
5 内部圧力調整部材
6 貯留槽
7 加圧液体ポンプ
8a、8b,8c,8d 循環路
9 液体
10 微細気泡
11 ノズル本体
12 キャップ
15 螺旋流板
16 メッシュ
22 吸気管
23 オリフィス
35 照度計
36 光源
【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯留槽と、該貯留槽に貯留される液体を外部経路で循環させる循環路と、該循環路内に設置される気体供給手段と、前記気体を微細気泡にして前記液体中に混入させる気泡形成手段と、から構成される前記貯留槽に気泡を供給する気泡形成装置であって、
少なくとも、加圧液体ポンプと、圧力調整槽と、第1気泡微細化手段と、を有し、
前記圧力調整槽が前記液体中に含まれる大サイズの気泡を浮上させ、前記圧力調整槽内部の上部空間に気体として回収することを特徴とする微細気泡形成装置。
【請求項2】
前記第1気泡微細化手段が吸引ノズルを有するエゼクタ構造をなし、前記吸引ノズルの吸引口が前記圧力調整槽内上部に開放されていることを特徴とする微細気泡形成装置。
【請求項3】
前記微細気泡形成装置であって、
吸引ノズルで吸引した気体を循環液体に混入させ、オリフィス構造で前記吸引した気体をせん断して微細化する第2気泡微細化手段を前記加圧液体ポンプの上流に設置することを特徴とする請求項1に記載の微細気泡形成装置。
【請求項4】
前記圧力調整槽から排出される前記循環液に含まれる微細気泡を更にせん断して微細化すると伴に、前記循環液体圧力を前記貯留槽圧力まで減圧して前記貯留槽に放出する第3の気泡微細化手段を有することを特徴とする請求項1若しくは請求項3項の何れか一項に記載の微細気泡形成装置。
【請求項5】
前記液体が水であって、前記気体が炭酸ガスまたは空気であることを特徴とする請求項1若しくは請求項4の何れか一項に記載の微細気泡形成装置。
【請求項6】
前記液体が重油を含む燃料液体であって、前記気体が水素ガスであることを特徴とする請求項1若しくは請求項4の何れか一項に記載の微細気泡形成装置。
【請求項1】
貯留槽と、該貯留槽に貯留される液体を外部経路で循環させる循環路と、該循環路内に設置される気体供給手段と、前記気体を微細気泡にして前記液体中に混入させる気泡形成手段と、から構成される前記貯留槽に気泡を供給する気泡形成装置であって、
少なくとも、加圧液体ポンプと、圧力調整槽と、第1気泡微細化手段と、を有し、
前記圧力調整槽が前記液体中に含まれる大サイズの気泡を浮上させ、前記圧力調整槽内部の上部空間に気体として回収することを特徴とする微細気泡形成装置。
【請求項2】
前記第1気泡微細化手段が吸引ノズルを有するエゼクタ構造をなし、前記吸引ノズルの吸引口が前記圧力調整槽内上部に開放されていることを特徴とする微細気泡形成装置。
【請求項3】
前記微細気泡形成装置であって、
吸引ノズルで吸引した気体を循環液体に混入させ、オリフィス構造で前記吸引した気体をせん断して微細化する第2気泡微細化手段を前記加圧液体ポンプの上流に設置することを特徴とする請求項1に記載の微細気泡形成装置。
【請求項4】
前記圧力調整槽から排出される前記循環液に含まれる微細気泡を更にせん断して微細化すると伴に、前記循環液体圧力を前記貯留槽圧力まで減圧して前記貯留槽に放出する第3の気泡微細化手段を有することを特徴とする請求項1若しくは請求項3項の何れか一項に記載の微細気泡形成装置。
【請求項5】
前記液体が水であって、前記気体が炭酸ガスまたは空気であることを特徴とする請求項1若しくは請求項4の何れか一項に記載の微細気泡形成装置。
【請求項6】
前記液体が重油を含む燃料液体であって、前記気体が水素ガスであることを特徴とする請求項1若しくは請求項4の何れか一項に記載の微細気泡形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−206689(P2011−206689A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−77138(P2010−77138)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(304026696)国立大学法人三重大学 (270)
【出願人】(596100616)
【出願人】(310006659)有限会社吉川製作所 (1)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(304026696)国立大学法人三重大学 (270)
【出願人】(596100616)
【出願人】(310006659)有限会社吉川製作所 (1)
【Fターム(参考)】
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