説明

微細針状二酸化チタン群生成方法及び板表面の実質的反応面積測定方法

【課題】 チタンやチタン合金の表面に微細エネルギー密度のレーザを照射し、その表面に微細針状突起の二酸化チタン群を形成し、実質的反応面積の大きな表面を形成し、更にレーザ加工によって板表面に生ずる発色を基にして所望の実質的反応面積の二酸化チタン群を求める微細針状二酸化チタン群生成方法及び板表面の実質的反応面積測定方法を提供する。
【解決手段】 YVO4等のレーザ加工機4を用いて微細エネルギー密度のレーザ6を照射ピッチ及びトラッキング回数を変えてチタン板3に照射し、微細針状突起2からなる二酸化チタン群1が形成される。この二酸化チタン群1の実質的反応面積(Ar)はもとの面積(A)の数倍もあり、かつ色々に発色する。よって、発色を基に実質的反応面積(Ar)を求めることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
光触媒反応効果のある二酸化チタン群を板表面に形成し、かつその形成される実質的反応面積に対応する光触媒反応効果の高い板材を形成するための微細針状二酸化チタン群生成方法及び板表面の実質的反応面積測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
二酸化チタンは光触媒効果に優れ、有機物分解特性、殺菌特性、超親水性、電気分解効果等の様々な有効な特性を有する。以上の二酸化チタンの諸特性を最大限に引き出すには、反応に必要な紫外線を出来るだけ多く確保する必要があると共に、二酸化チタンの形成される反応面積を出来るだけ大きくすることが必要である。この反応面積を大きくするにはそれに対応して装置も大きくなり、高価なものとなると共に省スペースやコンパク化等の最近必要とされている志向に反する結果を招く。
なお、従来においても二酸化チタンを形成する各種の方法が開示されており、その一例として「特許文献1」が挙げられる。
【特許文献1】特開2002−302760号(請求項1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記「特許文献1」は金属板上に光触媒性の高い二酸化チタンを作製する方法に関するものであるが、成膜法を用いるものであり、本発明のように直接レーザを板表面に照射し、その照射条件によって室質的反応面積の広大を図り、かつその実質的反応面積を計測し得るものではない。
一定の面積Aの表面に二酸化チタンを形成する場合、前記のようにこの面積Aを大きくすればよいが、面積Aのままで実質的の面積を大きくすることができれば、省スペース化がコンパクト化の志向に相反することなく光触媒効果を上げることができる。
出願人の研究によれば、微小出力がコントロール可能なレーザ加工機(例えば、YVO4レーザ(6.5w、Q−switch)で弱いエネルギー密度の熱エネルギーをチタン等の板材の表面に(ガルバノ)等によって所定の照射ピッチで集中的に繰返し照射することによりその照射エリアに微細針状突起ができ、実質的反応面積の広い二酸化チタン群を形成することができることがわかった。
【0004】
本発明は、以上の事情に鑑みて発明されたものであり、チタン等の板の表面に微弱なエネルギー密度のレーザを照射ピッチや繰返し回数(トラッキング回数)を決めて照射し、数十ナノメートルから数面ナノメートルの微細針状突起からなる二酸化チタン群を形成する方法と、微細針状突起の突起高さに対応して変化する発色を照射ピッチに対応させて求め、発色によって実質的反応面積を求めるようにした微細針状二酸化チタン群生成方法及び板表面の実質的反応面積測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以上の目的を達成するために、請求項1の発明は、チタン又はチタン合金又はステンレス,アルミ,アルミナ,ニッケル等の金属板の板表面(面積A)に微弱エネルギー密度にコントロールされたレーザを照射し、前記表面に微細針状突起(突起高さd)の二酸化チタン群を形成することを特徴とする。
【0006】
また、請求項2の発明は、前記二酸化チタン群は、前記微細針状突起の突起高さdに対応して色彩を変化させるものからなり、突起高さdの増加に対応して色彩が濃色になることを特徴とする。
【0007】
また、請求項3の発明は、前記微細針状突起の突起高さdが、数十ナノメートルから数百ナノメートルのものからなることを特徴とする。
【0008】
また、請求項4の発明は、前記二酸化チタン群は、照射ピッチ及び照射繰返し回数(トラッキング回数という)に対応して前記面積Aよりも広い実質的反応面積(Ar)を形成するものからなることを特徴とする。
【0009】
また、請求項5の発明は、二酸化チタン群によって形成される反応面積の測定方法であって、該方法は、前記請求項1乃至4の微細針状二酸化チタン群生成方法によって形成される二酸化チタン群の色彩を基にして前記実質的反応面積Arを求めることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の請求項1の微細針状二酸化チタン群生成方法によれば、チタン等の板材の表面に弱エネルギー密度にコントロールされたレーザを照射することにより微細針状突起ができ、これによる二酸化チタン群を容易に生成することができる。この二酸化チタン群は突起群からなり実質的な面積の拡大化が図れる。
【0011】
また、請求項2の微細針状二酸化チタン群生成方法によれば、突起高さによって表面に生ずる色彩が相異し、この発色は照射ピッチによって異なり、照射ピッチと発色との関係を求めることができる。
【0012】
また、請求項3の微細針状二酸化チタン群生成方法によれば、突起高さdを数十ナノメートル乃至数百ナノメートルにすることにより異なる発色の二酸化チタン群を形成することができる。
【0013】
また、請求項4の微細針状二酸化チタン群生成方法によれば、実質的反応面積(Ar)は照射ピッチとトラッキング回数により異なるため、所望の広面積の二酸化チタン群をこれ等の条件を基にして形成することができる。
【0014】
また、請求項5の微細針状二酸化チタン群による板表面の実質的反応面積の測定方法によれば、照射ピッチを基にして板表面に形成される発光の色彩によって元の照射面積Aの数倍の所望の実質的反応面積(Ar)の二酸化チタン群を形成することができる。即ち、発色を基にして実質的反応面積(Ar)を求めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の微細針状二酸化チタン群生成方法及び板表面の実質的反応面積測定方法の実施の形態を図面や表に基づいて詳述する。
まず、レーザが加工機4としては一例としてYVO4レーザ(6.5w,Q−switch)を用い、そのガルバノ5のコントロールにより照射ピッチやトラッキング回数をコントロールして微弱エネルギー密度のレーザ6を照射するようにする。なお、レーザ加工機き前記のものに限定するものではないことは勿論である。また、レーザ6を照射するための板材としてはチタンやチタン合金、ステンレス、アルミ、アルミナ及びニッケル等の金属が適用されるが、チタン又はチタン合金が最も望ましい。
【0016】
以上のレーザ加工機4からのレーザ6を図1に示すようにチタン板3の面積Aの部分に照射するとその面積Aの部分には突起高さdの微細針状突起2が形成され、これが二酸化チタン群1が形成される。この場合、照射ピッチ及びトラッキング回数を変えると例えば「表1」が求められる。また、形成される突起高さdは数ナノメートル及び数百ナノメートルであるが、これに限定するものではない。
【0017】
【表1】

【0018】
表1に示すように、照射ピッチとトラッキング回数を変化させると実質的反応面積(Ar)が大きく変化する。なお、表1に示すように照射ピッチが小さくトラッキング回数が大きい場合に実質的反応面積(Ar)は大きくなり、例えば、照射ピッチ0.01mmでトラッキング回数が20回の場合はAr/A=4.55となり、面積Aの4.55倍となる。よってレーザ加工機6によるレーザ密度を決めて、照射ピッチやトラッキング回数を変化させることにより所望の実質的反応面積(Ar)を求めることができる。
【0019】
以上のように、レーザ照射によりチタン板3に所望の実質的反応面積(Ar)の二酸化チタン群1を形成することができるが、この場合、照射されるレーザの照射条件により突起高さdが相異し、この突起高さdの値により発色が異なる。この突起高さdと発色との関係は照射ピッチごとに予め求められるが、突起高さdが大きくなるに従って発色は濃くなる結果となる。「表2」はその状態を示す模式図である。
【0020】
【表2】

【0021】
次に、「表1」や「表2」を基にして所望の実質的反応面積(Ar)の二酸化チタン群1を生成する方法と、実質的反応面積(Ar)の求め方について説明する。
まず、レーザ加工機4を選定し、微弱エネルギー密度をコントロールし、微細針状突起の突起高さdが数十ナノメートル乃至数百ナノメートルになるようにレーザ6をチタン板3等の表面に照射する。以上から照射ピッチ及びトラッキング回数を決めることにより「表1」のように所望の実質的反応面積(Ar)を容易に求めることができる。
【0022】
一方、逆にレーザ照射されたチタン板3の発色状態を光の干渉によるホログラフィー効果によって求める(観察)ことができ、この場合の発色に対応した微細針状突起2を求め、これを発生させている照射ピッチを求めることができ、この場合のトラッキング回数を求めることにより実質的反応面積(Ar)を求めることができる。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明は、所望の光触媒効果を生じさせるためにチタン等の板材の表面に広い実質的反応面積を形成するものであり、二酸化チタン群を形成した広面積の板材は各種の場所に適用され、その利用範囲は極めて広い。また、省スペース、コンパクト化が図れ、環境保全への貢献も高い。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の突起高さdの二酸化チタン群を示す模式図。
【符号の説明】
【0025】
1 二酸化チタン群
2 微細針状突起
3 チタン板
4 レーザ加工機
5 ガルバノ
6 レーザ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チタン又はチタン合金又はステンレス,アルミ,アルミナ,ニッケル等の金属板の板表面(面積A)に微弱エネルギー密度にコントロールされたレーザを照射し、前記表面に微細針状突起(突起高さd)の二酸化チタン群を形成することを特徴とする微細針状二酸化チタン群生成方法。
【請求項2】
前記二酸化チタン群は、前記微細針状突起の突起高さdに対応して色彩を変化させるものからなり、突起高さdの増加に対応して色彩が濃色になることを特徴とする請求項1に記載の微細針状二酸化チタン群生成方法。
【請求項3】
前記微細針状突起の突起高さdが、数十ナノメートルから数百ナノメートルのものからなることを特徴とする請求項1又は2にいずれかに記載の微細針状二酸化チタン群生成方法。
【請求項4】
前記二酸化チタン群は、照射ピッチ及び照射繰返し回数(トラッキング回数という)に対応して前記面積Aよりも広い実質的反応面積(Ar)を形成するものからなることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の微細針状二酸化チタン群生成方法。
【請求項5】
前記二酸化チタン群によって形成される反応面積の測定方法であって、該方法は、請求項1乃至4の微細針状二酸化チタン群生成方法によって形成される二酸化チタン群の色彩を基にして前記実質的反応面積Arを求めることを特徴とする微細針状二酸化チタン群による板表面の実質的反応面積測定方法。

【図1】
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【公開番号】特開2007−210802(P2007−210802A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−317981(P2005−317981)
【出願日】平成17年11月1日(2005.11.1)
【出願人】(598113704)板垣金属 株式会社 (4)
【出願人】(502073496)
【Fターム(参考)】