説明

微量成分計測装置

【課題】ガス中の微量成分の計測を簡易にしかも感度良く計測することができるガス中の微量元素成分濃度を計測する微量成分計測装置を提供する。
【解決手段】ガスGの供給・排出ラインを備えた減圧セル101と、該減圧セル101内に噴射されたガスG中の微量成分をプラズマ化する放電装置102と、前記放電により発生したプラズマ光103を分光し、分光して得られたプラズマスペクトルのうち、波長175乃至850nmの発光強度を検出する検出装置104とを具備する微量成分計測装置であって、前記減圧セル内の条件が700〜200Paであると共に、前記放電電極に印加する電圧が、2〜6kVの高電圧パルスであり、前記高電圧パルスの時間長さが30ns以下であり、且つ前記放電電極の間隔が10mmである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はガス中の微量元素成分濃度を計測する微量成分計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年環境問題の高まりから、水銀(Hg)等の重金属の排出を規制する動向があり、セメント・ソーダ・鉄鋼等の各種工場において、排ガス水銀分析計の設置を義務付けることが求められており、簡易且つ迅速な微量成分の計測装置の出現が望まれている。
【0003】
そこで、本発明者等は先に、微量成分をプラズマ化手段によりプラズマ化させてガス中の微量元素成分濃度を計測する微量成分計測装置を提案した(特許文献1)。
【0004】
図8に従来の微量成分計測装置を示す。図8に示すように、従来技術にかかる微量成分計測装置10は、燃料ガス11の供給・排出ライン12,13を備えた減圧セル14と、該減圧セル14内に供給されたガス11中の微量成分をプラズマ化するプラズマ化手段15と、一定のディレイ時間を経た後に、上記プラズマ化により発生したプラズマ光25を分光器17で分光し、該分光器17により分光して得られたプラズマスペクトルのうち、波長175乃至850nmの発光強度のみを検出する検出手段18とを具備するものである。図中、符号19は減圧セル内を50kPa以下となるように減圧する真空ポンプ、20はレーザ光を吸収するビームダンパである。
【0005】
図8においては、上記プラズマ化手段15として、レーザ照射手段15Aを用いており、該レーザ照射手段15Aからの発振されたレーザ光21は集光レンズ22により集光されて減圧セル14に設けられた計測窓23を介して測定場24に集光される。このため、測定場24に存在する微粒子がプラズマ化し、プラズマ化した成分物質からはプラズマ光25が発生する。
【0006】
発生したプラズマ光は、測定場24の計測窓(図示せず)から外部に出力され、レンズ26で集光されて分光器17に入射される。分光器16は、波長が175乃至850nm(或いはこの範囲内の一部の波長域)のプラズマ光25を分光し、分光した光成分をICCDカメラ等の検出手段18に入力する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−53294号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1にかかる装置において、微量成分である例えばHgを計測するに際し、特にレーザ照射によってプラズマ化させる場合、圧力を低下させるとプラズマが発生しにくくなり、計測不能となるという問題がある。
【0009】
そこで、対向する電極に高電圧を印加して放電させることで、プラズマ化することはできるものの、ノイズが多くなり、微量成分の信号強度は小さい場合検出が困難であるという問題がある。
【0010】
本発明は、前記問題に鑑み、ガス中の微量成分の計測を簡易にしかも感度良く計測することができるガス中の微量元素成分濃度を計測する微量成分計測装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決するための本発明の第1の発明は、ガスの供給・排出ラインを備えた減圧セルと、該減圧セル内に供給されたガス中の微量成分である水銀をプラズマ化する一対の放電電極を有する放電装置と、前記発生したプラズマ光を分光し、分光して得られたプラズマスペクトルのうち、波長175乃至850nmの発光強度を検出する検出装置とを具備する微量成分計測装置であって、前記減圧セル内の条件が700〜200Paであると共に、前記放電電極に印加する電圧が、2〜6kVの高電圧パルスであり、前記高電圧パルスの時間長さが30ns以下であり、且つ前記放電電極の間隔が10mmであることを特徴とする微量成分計測装置にある。
【0012】
第2の発明は、第1の発明において、前記減圧セルと放電電極との距離が100mm以下であることを特徴とする微量成分計測装置にある。
【0013】
第3の発明は、第1又は2の発明において、前記放電装置の放電電極が、絶縁材を介して減圧セルから仕切られていることを特徴とする微量成分計測装置にある。
【0014】
第4の発明は、第1又は2において、前記検出装置が、減圧セルの内部から外部に光を導光する導光部材を設けたことを特徴とする微量成分計測装置にある。
【0015】
第5の発明は、第1又は2の発明において、前記減圧セルが非導電体、非磁性体のいずれかからなることを特徴とする微量成分計測装置にある。
【0016】
第6の発明は、第5の発明において、前記減圧セルが、光透過部材からなると共に、減圧セルの周囲に反射ミラーを配設し、該反射ミラーによりプラズマ光を集光してなることを特徴とする微量成分計測装置にある。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、微量成分の信号強度が小さい場合でも、ノイズが低減し、ガス中の微量成分の計測を簡易にしかも感度良く計測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、実施例1にかかる微量成分計測装置の概略図である。
【図2】図2は、実施例2にかかる微量成分計測装置の模式図である。
【図3】図3は、実施例3にかかる微量成分計測装置の模式図である。
【図4】図4は、実施例4にかかる微量成分計測装置の模式図である。
【図5】図5は、実施例5にかかる微量成分計測装置の模式図である。
【図6】図6は、信号強度と波長との関係図である。
【図7】図7は、信号強度と波長との関係図である。
【図8】図8は、従来技術にかかる微量成分計測装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施例における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【実施例1】
【0020】
本発明による実施例1に係る微量成分計測装置について、図面を参照して説明する。
図1は、実施例1に係る微量成分計測装置を示す概念図である。
図1に示すように、本実施例に係る微量成分計測装置100は、ガスGの供給・排出ラインを備えた減圧セル101と、該減圧セル101内に噴射されたガスG中の微量成分をプラズマ化する放電装置102と、前記放電により発生したプラズマ光103を分光し、分光して得られたプラズマスペクトルのうち、波長175乃至850nmの発光強度を検出する検出装置104とを具備するものである。
【0021】
前記減圧セル101は真空ポンプ111にて700〜200Paまで減圧している。
本発明では減圧セルの真空度合いを極めて低くすることで、検出対象である微量成分以外の不純物のノイズを低減するようにしている。なお、減圧条件が700Paを超える場合には、図6に示すように、ガス中の微量成分(例えば水銀)が他のノイズと区別することができないからであり、200Pa未満であると、信号強度が小さくなり、定量精度が不安定となるからである。
【0022】
前記放電装置102は、一対の放電電極112−1、112−2と、超短パルスを発生させる高電圧電源113を備えた超短パルス発生装置114とからなる。
【0023】
また検出装置104は、プラズマ光103を集光する集光光学系115と集光されたプラズマ光103の波長が175乃至850nm(或いはこの範囲内の一部の波長域)の帯域を分光する分光器116と、該分光した光成分を検出する高感度カメラ(例えばICCDカメラ等)117と、該高感度カメラ117の画像を表示する画像処理装置118とを具備するものである。
なお、超短パルス発生装置114と高感度カメラ117とを同期させるタイミング制御装置119が設けられている。
【0024】
ここで、前記高電圧電源は2〜6kV程度とし、超短パルス発生装置114からの高電圧パルスの時間長さ(パルス半値幅)を50ns以下、好ましくは40ns以下、より好ましくは30ns以下とするのが好ましい。これは、図7に示すように、パルス半値幅を短くすることで、検出対象である微量成分(Hg)以外の不純物のノイズの低減を図ることができるようにしている。
なお、パルス半値幅とは、ピーク電圧に対する半分の電圧を超える時間長さをいう。
よって、パルス半値幅を50ns以下とすることでノイズが低減した微量成分の検出が可能となる。
【0025】
ここで、前記微量成分計測装置において、減圧セル101内の電極112−1,112−2間で放電するためには、減圧セル101と+側電極112−1との間での放電条件に比べて、接地側電極112−2の放電条件が優位(放電電圧が低い)である必要がある。
減圧セルを模式化した図2に示すように、圧力変動などの要因を考慮し、電極112−1、112−2間の距離をL、減圧セル101と電極の距離をdとすると、d=10×L程度とするのが望ましい。
試験の結果、放電電圧を2kVにすると、電極の間隔Lは10mm程度で放電した。この結果、d=100mmとなり、直径200mmの容器にする必要がある。
しかしながら、減圧セル101が大きくなることは、応答性、利便性の面から計測装置の減圧セル容器としては好ましくない。
そこで、実施例2乃至4のようにすることで、減圧セルをコンパクトとしても計測が可能とするようにした。以下に装置のコンパクト化の実施例について説明する。
【実施例2】
【0026】
本実施例は、図2の図面において、減圧セル101の材質をガラス、密度の高いセラミックス等の非導電体で構成してする。なお、本実施例では、減圧セルと放電電極のみを示し、他の構成は実施例1にかかる図1と同様であるので、省略する(以下の実施例においても同様)。
減圧セル101を非導電体とすることで、減圧セル101と放電電極との放電をなくし、電極間のみでの放電を行うことができる。
これにより、減圧セルを大型化することなく、コンパクトな計測装置とすることができる。
【実施例3】
【0027】
図3は実施例3にかかる計測装置の模式図である。
図3に示すように、減圧セル101内に対向して設けられる電極112−1、112−2は、減圧セル内において周囲に絶縁材220を用いて、減圧セル101から仕切られるようにしている。この絶縁材220を設けることにより、減圧セル101と電極間とで放電が発生せず、容器を小さくしても電極112−1、112−2間での放電を行うことができる。すなわち、絶縁材220を設けることで、絶縁破壊が発生しないようにし、これによって、減圧セルが小さい場合においても、電極間での放電が可能となる。
【実施例4】
【0028】
図4は実施例4にかかる計測装置の模式図である。
図4に示すように、本実施例では、減圧セル101内に、プラズマ光を導光する導光部材130を設けて、減圧セル101の外部へプラズマ光を導くようにしている。なお、導光部材130により集められた光はレンズ131により集光され、分光器光導入部132を介して、図示しない分光器116に送られる。
【0029】
前記導光部材130としては、例えば石英の棒等を例示することができるが、プラズマ光を導光できる材質であれば、これに限定されるものではない。
この結果、微量成分の光の発散量が小さいうちにおいて、導光部材130により外部へ導光されるので、検出感度が向上する。
また、導光部材130はプラズマ光側の径を大きく、レンズ131側の径を小さいテーパ形状とすることで、より効率良く光を集めることができる。
【実施例5】
【0030】
図5は実施例5にかかる計測装置の模式図である。本実施例では、実施例2と同様に減圧セル101をガラス容器とすると共に、さらに、ガラスの減圧セル101の周囲に光反射体であるミラー140を配設し、ガラスから周囲に放出する光を集めて分光器導入部132に集めるようにしている。
これにより、減圧セル101の周囲に放出した光を集光することができるので、微量成分の検出感度が向上する。
【産業上の利用可能性】
【0031】
以上のように、本発明にかかる微量成分計測装置は、微量成分の信号強度が小さい場合でも、ノイズが低減し、ガス中の微量成分の計測を簡易計測することができ、例えば排ガス中の有害物質の計測に用いて適している。
【符号の説明】
【0032】
100 微量成分計測装置
101 減圧セル
102 放電装置
103 プラズマ光
104 検出装置
112−1、112−2 放電電極
220 絶縁材
130 導光部材
140 ミラー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスの供給・排出ラインを備えた減圧セルと、
該減圧セル内に供給されたガス中の微量成分である水銀をプラズマ化する一対の放電電極を有する放電装置と、
前記発生したプラズマ光を分光し、分光して得られたプラズマスペクトルのうち、波長175乃至850nmの発光強度を検出する検出装置とを具備する微量成分計測装置であって、
前記減圧セル内の条件が700〜200Paであると共に、
前記放電電極に印加する電圧が、2〜6kVの高電圧パルスであり、
前記高電圧パルスの時間長さが30ns以下であり、
前記放電電極の間隔が10mmであることを特徴とする微量成分計測装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記減圧セルと放電電極との距離が100mm以下であることを特徴とする微量成分計測装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記放電装置の放電電極が、絶縁材を介して減圧セルから仕切られていることを特徴とする微量成分計測装置。
【請求項4】
請求項1又は2において、前記検出装置が、減圧セルの内部から外部に光を導光する導光部材を設けたことを特徴とする微量成分計測装置。
【請求項5】
請求項1又は2において、前記減圧セルが非導電体、非磁性体のいずれかからなることを特徴とする微量成分計測装置。
【請求項6】
請求項5において、前記減圧セルが、光透過部材からなると共に、減圧セルの周囲に反射ミラーを配設し、該反射ミラーによりプラズマ光を集光してなることを特徴とする微量成分計測装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−25952(P2010−25952A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−252200(P2009−252200)
【出願日】平成21年11月2日(2009.11.2)
【分割の表示】特願2005−33372(P2005−33372)の分割
【原出願日】平成17年2月9日(2005.2.9)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】