説明

微量流体昇温装置

【課題】 微量流体を従来より均質に加熱することができる微量流体昇温装置を提供しようとするもの。
【解決手段】 長手方向に導電発熱層1が形成されたチューブ2を具備し、前記チューブ2の導電発熱層1に電圧を印加して発熱させ内部を流す流体を昇温させると共に、前記チューブ2は複数区間においてそれぞれ電圧を印加するようにした。この微量流体昇温装置は、長手方向に導電発熱層が形成されたチューブを具備し、前記チューブの導電発熱層に電圧を印加して発熱させ内部を流れる流体を昇温させるようにしたので、流体を流すチューブ自体が発熱するため、外付けのヒーター熱源にチューブを接触させて外部から間接的に伝熱するよりも効率的に加熱することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、検体その他の微量流体を加熱する微量流体昇温装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、住宅用の給水、給湯等の送水ホースとして使用される発熱性チューブが知られているが、前記送水ホースは野外の使用、特に寒冷地での野外の使用においてホース内に残留した水が凍結するという問題に鑑み、ホース全長に亘って一定の温度で発熱することができるようにするため次のような提案がある(特許文献1参照)。
【0003】
すなわち、図9に示すように、内層チューブ11と外層チューブ12で構成された円筒状の合成樹脂製の発熱性チューブであって、前記内層チューブ11と前記外層チューブ12の層間に互いに交差しない2本の裸銅線13a、13bと1本の発熱繊維14が埋設されており、前記裸銅線13a、13bが前記発熱繊維14に一定間隔で接触交差するようにしている。これにより、発熱繊維14が一定間隔で裸銅線13a、13bと接触していることから、発熱性チューブに埋設した裸銅線13a、13bに電流を流すことで裸銅線13a、13bと発熱繊維14で形成された並列回路が等間隔で形成され、チューブの長さに関係なくチューブ全体を一定の温度で発熱することができる、というものである。
【0004】
ところで、上記のような給水、給湯等の生活材としての大径の発熱性チューブとは発明が属する技術分野は異なるのであるが、近時、微量で高速の分析技術の開発により、家庭用等診断チップなどの大きなライフサイエンス市場を創出しようとする試みがある(非特許文献1参照)。具体的には、検体その他の流体を体温程度まで昇温して分析装置に供給するため、板状形状や紐状形状のヒーターなどの熱源に流体を流すチューブを接触させて加熱を行う装置の開発が進められている。
【0005】
しかし、前記熱源とチューブとの相互間の接触面積が小さく、均質に加熱することは困難であるという問題があった。
【特許文献1】特開2004―162827号公報(第2〜3頁、図1)
【非特許文献1】マイクロ化学プロセス技術研究組合ホームページ、“事業目的”、[2004/11/5検索]、インターネット<URL:http://www.mcpt.jp/japanese/mission.html>
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこでこの発明は、微量流体を従来より均質に加熱することができる微量流体昇温装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するためこの発明では次のような技術的手段を講じている。
(1)この発明の微量流体昇温装置は、長手方向に導電発熱層が形成されたチューブを具備し、前記チューブの導電発熱層に電圧を印加して発熱させ内部を流す流体を昇温させると共に、前記チューブは複数区間においてそれぞれ電圧を印加するようにしたことを特徴とする。
【0008】
この微量流体昇温装置は、長手方向に導電発熱層が形成されたチューブを具備し、前記チューブの導電発熱層に電圧を印加して発熱させ内部を流れる流体を昇温させるようにしたので、流体を流すチューブ自体が発熱するため、外付けのヒーター熱源にチューブを接触させて外部から間接的に伝熱するよりも効率的に加熱することができる。
【0009】
ところで、流体(例えば血液など検体)の変質を極力避けるためチューブ内を高い温度にさらすよりも設定昇温温度近傍で加熱する(柔らかく加熱する)ことが好ましい一方、チューブは内部を流す流体が加熱前温度(例えば15℃〜)から加熱後の設定温度(例えば37℃)へと昇温できるような熱量を与えることができる長さが必要となるところ、その分チューブの長さが長くなると長さに比例して抵抗値が大きくなり電圧を印加しても発熱し難くなる不具合があるが、チューブ全長の両端末に電圧を印加するのではなく複数区間においてそれぞれ電圧を印加するようにしたので、チューブの長さが多少長くなることがあっても流体を設定昇温温度近傍で柔らかく加熱してその変質を防止して昇温させることができる。
前記電圧は直流電源により印加してもよいし、交流電源により印加してもよい。
【0010】
(2)前記チューブは略U字状の湾曲部を略直線部で連結した形状であることとしてもよい。このように構成すると、チューブの略U字状の湾曲部を介して略直線部からなる複数区間が往復するような形状として装置をコンパクトに形成することができる。
【0011】
(3)前記チューブは緩やかな曲線を連続した形状であることとしてもよい。このように構成すると、チューブ自体に多少硬い傾向があっても緩やかな曲線を連続させて形成することができる。
【0012】
(4)前記チューブはRが付いた略直角部を略直線部で連結した形状であることとしてもよい。このように構成すると、チューブ自体に多少硬い傾向があってもRが付いた略直角部を連続させて形成することができる。
【0013】
ここで、チューブは上記のような二次元状(平面状)ではなく、コイル状その他の三次元状に配設(配管)してもよい。
【0014】
(5)前記チューブの複数区間の両端部同士に電圧が並列で印加されるように導線と導電発熱層とを配線したこととしてもよい。このように構成すると、導線をチューブの導電発熱層に対してすっきりとした態様で配線することができる。
【0015】
(6)前記チューブをターンさせることにより形成される複数区間について、これを更に区分した細分区間に電圧が並列で印加されるように導線と導電発熱層とを配線したこととしてもよい。
【0016】
このように構成すると、複数区間の長さを長めに設定(区分した細分区間に電圧を印加して加熱することが可能である)してチューブのターンの数を少なく設定することができ、装置全体の配置レイアウトの自由度を増大させることができる。
【0017】
(7)離間した2本の導線の周囲に前記チューブを巻回すると共に前記チューブの導電発熱層を正負に通電する2本の導線に交互に接触させて電気的な導通状態とし、前記チューブは2本の導線が交互に接触する複数区間においてそれぞれ電圧を印加するようにしたこととしてもよい。このように構成すると平面状ではなく直線状に配置することができる。
【発明の効果】
【0018】
この発明は上述のような構成であり、次の効果を有する。
【0019】
外付けのヒーター熱源にチューブを接触させて外部から間接的に伝熱するよりも効率的に加熱することができるので、微量流体を従来より均質に加熱することができる微量流体昇温装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、この発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
(実施形態1)
図1〜図3に示すように、この実施形態の微量流体昇温装置は、長手方向に導電発熱層1が形成されたチューブ2を具備する。このチューブ2は採取された血液などの分析用流体を加熱して昇温させるものであり、その内径の直径は好ましくは8mm以下であり、昇温効率上より好ましくは3mm以下である。例えば、外径(mm)―内径(mm)が1.0−0.5φ、1.0−0.2φ、2.2−1φ、3−2φ、3−1φとかに設定することができる。
【0021】
図2に示すように、チューブ最内層には流体と接する絶縁層3(ベースのETFE樹脂)を有し、その外層側には導電発熱層1が長手方向に積層される。前記導電発熱層1は、ベースのETFE樹脂に対して導電することにより発熱する性質を有する樹脂や物質(例えば導電性カーボンや金属粉、カーボン繊維や金属繊維、カーボンナノチューブ)を混合して含有させている。前記導電発熱層1の体積抵抗率を10−6〜10Ω・cmで設定することにより、加熱度合の調整を行うことができる。このチューブ2はETFE樹脂で形成したが、PFA樹脂等で形成することもできる。そして、チューブ外面に絶縁層4(ナイロン)を形成している。前記導電発熱層1は、チューブ2の肉厚中に設けられている。このチューブ2は、3種3層多層チューブ金型を用いて押出成形により製造した。
【0022】
そして、図1に示すように、前記チューブ2は略U字状の湾曲部5を略直線部6で連結した形状とし、前記チューブ2の複数区間(20列)の両端部(湾曲部5)同士に電圧が並列で印加されるように導線7と導電発熱層1とを配線した。ここで、導線7と導電発熱層1とを電気的に導通させる箇所8では、チューブ外面の絶縁層4を剥離している。前記チューブ2は、略直線部6からなる複数区間においてそれぞれ電圧(直流電源を用いたが交流電源でもよい)を印加する。チューブ2は前記のような二次元状(平面状)ではなく、コイル状その他の三次元状に配設(配管)してもよい。
【0023】
なお、図3に示すように、前記外面の絶縁層4を形成せず流体と接する絶縁層3と導電発熱層1との2層で実施することもできる。このチューブ2は、2種2層多層チューブ金型を用いて押出成形により製造した。この場合、前記導電発熱層1はチューブ2の外層に設けることとなる。
【0024】
次に、この実施形態の微量流体昇温装置の使用状態を説明する。
【0025】
この微量流体昇温装置は、長手方向に導電発熱層1が形成されたチューブ2を具備し、前記チューブ2の導電発熱層1に電圧を印加して発熱させ内部を流れる流体を昇温させるようにしたので、流体を流すチューブ2自体が発熱するため、外付けのヒーター熱源にチューブを接触させて外部から間接的に伝熱するよりも効率的に加熱することができ、微量流体を従来より均質に加熱することができるという利点がある。
【0026】
ところで、流体(例えば血液など検体)の変質を極力避けるためチューブ内を高い温度にさらすよりも設定昇温温度近傍で加熱する(柔らかく加熱する)ことが好ましい一方、チューブは内部を流す流体が加熱前温度(例えば15〜25℃)から加熱後の設定温度(例えば37℃)へと昇温できるような熱量を与えることができる長さが必要となるところ、その分チューブの長さが長くなると長さに比例して抵抗値が大きくなり電圧を印加しても発熱し難くなる不具合があるが、チューブ2全長の両端末に電圧を印加するのではなく複数区間においてそれぞれ電圧を印加するようにしたので、チューブ2の長さが多少長くなることがあっても流体を設定昇温温度近傍で柔らかく加熱してその変質を防止して昇温させることができるという利点がある。例えば、採取した分析用の検体(血液等)を生体内と同じような条件に近づける為に体温に近い37℃程度へと加熱し昇温させた状態で分析機器(図示せず)に導入することができる。なお、昇温させる温度として80℃等のより高温に加熱することもできる。
【0027】
また、チューブ2の略U字状の湾曲部5を介して略直線部6からなる複数区間(20列)が往復するような形状として装置をコンパクトに形成することができるという利点がある。さらに、前記チューブ2の複数区間の両端部(湾曲部5)同士に電圧が並列で印加されるように導線7と導電発熱層1とを配線したので、導線7をチューブ2の導電発熱層1に対してすっきりとした態様で配線することができるという利点がある。
【0028】
その上、チューブ2の導電発熱層1に電圧を印加して発熱させ前記最内層の絶縁層3を介して内部を流す流体を昇温させ、前記流体の出口近傍のチューブ2温度を温度センサSにより検知して導電発熱層1への導線7により印加電圧を制御するようにしており、昇温させた流体の温度を直接測定しなくても流体の出口近傍のチューブ2温度により印加電圧を調整することができると共に、流体入口近傍と比較して出口近傍では流体が昇温されてきておりこの位置でのチューブ2温度を検知することによりチューブ2内の実際の流体の温度をより正確に評価することができる。
【0029】
(実施形態2)
前記実施形1との相違点を中心に説明する。
【0030】
図4に示すように、この実施形態では、チューブ2の複数区間の両端部(湾曲部5)の頂部同士に電圧(直流電源を用いたが交流電源でもよい)が並列で印加されるように導線7と導電発熱層1とを配線している。すなわち、複数区間の両端部の頂部と、導線7と導電発熱層1とを電気的に導通させる箇所8とが一致する。このように構成したので、略直線部6の外側の略U字状の湾曲部5でも発熱させることができ、発熱しない領域をなくすことができるという利点がある。
【0031】
(実施形態3)
図5及び図2に示すように、この実施形態の微量流体昇温装置は、長手方向に導電発熱層1が形成されたチューブ2を具備する。このチューブ2は採取された血液などの分析用流体を加熱して昇温させるものであり、その内径の直径は好ましくは8mm以下であり、昇温効率上より好ましくは3mm以下である。例えば、外径(mm)―内径(mm)が1.0−0.5φ、1.0−0.2φ、2.2−1φ、3−2φ、3−1φとかに設定することができる。
【0032】
図2に示すように、チューブ最内層には流体と接する絶縁層3(ベースのETFE樹脂)を有し、その外層側には導電発熱層1が長手方向に積層される。前記導電発熱層1は、ベースのETFE樹脂に対して導電することにより発熱する性質を有する樹脂や物質(例えば導電性カーボンや金属粉、カーボン繊維や金属繊維、カーボンナノチューブ)を混合して含有させている。前記導電発熱層1の体積抵抗率を10−6〜10Ω・cmで設定することにより、加熱度合の調整を行うことができる。このチューブ2はETFE樹脂で形成したが、PFA樹脂等で形成することもできる。そして、チューブ外面に絶縁層4(ナイロン)を形成している。前記導電発熱層1は、チューブ2の肉厚中に設けられている。このチューブ2は、3種3層多層チューブ金型を用いて押出成形により製造した。
【0033】
そして、図5に示すように、前記チューブ2は緩やかな曲線を連続した形状とし、前記チューブ2の複数区間の両端部同士に電圧が並列で印加されるように導線7と導電発熱層1とを配線した(図1も参照)。ここで、導線7と導電発熱層1とを電気的に導通させる箇所8では、チューブ外面の絶縁層4を剥離している。前記チューブ2は、曲線からなる複数区間においてそれぞれ電圧(直流電源を用いたが交流電源でもよい)を印加する。チューブ2は前記のような二次元状(平面状)ではなく、コイル状その他の三次元状に配設(配管)してもよい。
【0034】
なお、図3に示すように、前記外面の絶縁層4を形成せず流体と接する絶縁層3と導電発熱層1との2層で実施することもできる。このチューブ2は、2種2層多層チューブ金型を用いて押出成形により製造した。この場合、前記導電発熱層1はチューブ2の外層に設けることとなる。
【0035】
次に、この実施形態の微量流体昇温装置の使用状態を説明する。
【0036】
この微量流体昇温装置は、長手方向に導電発熱層1が形成されたチューブ2を具備し、前記チューブ2の導電発熱層1に電圧を印加して発熱させ内部を流れる流体を昇温させるようにしたので、流体を流すチューブ2自体が発熱するため、外付けのヒーター熱源にチューブを接触させて外部から間接的に伝熱するよりも効率的に加熱することができ、微量流体を従来より均質に加熱することができるという利点がある。
【0037】
ところで、流体(例えば血液など検体)の変質を極力避けるためチューブ内を高い温度にさらすよりも設定昇温温度近傍で加熱する(柔らかく加熱する)ことが好ましい一方、チューブは内部を流す流体が加熱前温度(例えば15〜25℃)から加熱後の設定温度(例えば37℃)へと昇温できるような熱量を与えることができる長さが必要となるところ、その分チューブの長さが長くなると長さに比例して抵抗値が大きくなり電圧を印加しても発熱し難くなる不具合があるが、チューブ2全長の両端末に電圧を印加するのではなく複数区間においてそれぞれ電圧を印加するようにしたので、チューブ2の長さが多少長くなることがあっても流体を設定昇温温度近傍で柔らかく加熱してその変質を防止して昇温させることができるという利点がある。例えば、採取した分析用の検体(血液等)を生体内と同じような条件に近づける為に体温に近い37℃程度へと加熱し昇温させた状態で分析機器(図示せず)に導入することができる。なお、昇温させる温度として80℃等のより高温に加熱することもできる。
【0038】
また、チューブ2自体が材質上多少硬い傾向があっても、緩やかな曲線を連続させて形成することができるという利点がある。また、前記チューブ2の複数区間の両端部同士に電圧が並列で印加されるように導線7と導電発熱層1とを配線したので、導線7をチューブ2の導電発熱層1に対してすっきりとした態様で配線することができるという利点がある。
【0039】
その上、チューブ2の導電発熱層1に電圧を印加して発熱させ前記最内層の絶縁層3を介して内部を流す流体を昇温させ、前記流体の出口近傍のチューブ2温度を温度センサSにより検知して導電発熱層1への導線7により印加電圧を制御するようにしており、昇温させた流体の温度を直接測定しなくても流体の出口近傍のチューブ2温度により印加電圧を調整することができると共に、流体入口近傍と比較して出口近傍では流体が昇温されてきておりこの位置でのチューブ2温度を検知することによりチューブ2内の実際の流体の温度をより正確に評価することができる。
【0040】
(実施形態4)
図6及び図2に示すように、この実施形態の微量流体昇温装置は、長手方向に導電発熱層1が形成されたチューブ2を具備する。このチューブ2は採取された血液などの分析用流体を加熱して昇温させるものであり、その内径の直径は好ましくは8mm以下であり、昇温効率上より好ましくは3mm以下である。例えば、外径(mm)―内径(mm)が1.0−0.5φ、1.0−0.2φ、2.2−1φ、3−2φ、3−1φとかに設定することができる。
【0041】
図2に示すように、チューブ最内層には流体と接する絶縁層3(ベースのETFE樹脂)を有し、その外層側には導電発熱層1が長手方向に積層される。前記導電発熱層1は、ベースのETFE樹脂に対して導電することにより発熱する性質を有する樹脂や物質(例えば導電性カーボンや金属粉、カーボン繊維や金属繊維、カーボンナノチューブ)を混合して含有させている。前記導電発熱層1の体積抵抗率を10−6〜10Ω・cmで設定することにより、加熱度合の調整を行うことができる。このチューブ2はETFE樹脂で形成したが、PFA樹脂等で形成することもできる。そして、チューブ外面に絶縁層4(ナイロン)を形成している。前記導電発熱層1は、チューブ2の肉厚中に設けられている。このチューブ2は、3種3層多層チューブ金型を用いて押出成形により製造した。
【0042】
そして、図6に示すように、前記チューブ2はRが付いた略直角部9を略直線部6で連結した形状とし、前記チューブ2の複数区間の両端部同士に電圧が並列で印加されるように導線7と導電発熱層1とを配線した(図1参照)。ここで、導線7と導電発熱層1とを電気的に導通させる箇所8では、チューブ外面の絶縁層4を剥離している。前記チューブ2は、略直線部6からなる複数区間においてそれぞれ電圧(直流電源を用いたが交流電源でもよい)を印加する。チューブ2は前記のような二次元状(平面状)ではなく、コイル状その他の三次元状に配設(配管)してもよい。
【0043】
なお、図3に示すように、前記外面の絶縁層4を形成せず流体と接する絶縁層3と導電発熱層1との2層で実施することもできる。このチューブ2は、2種2層多層チューブ金型を用いて押出成形により製造した。この場合、前記導電発熱層1はチューブ2の外層に設けることとなる。
【0044】
次に、この実施形態の微量流体昇温装置の使用状態を説明する。
【0045】
この微量流体昇温装置は、長手方向に導電発熱層1が形成されたチューブ2を具備し、前記チューブ2の導電発熱層1に電圧を印加して発熱させ内部を流れる流体を昇温させるようにしたので、流体を流すチューブ2自体が発熱するため、外付けのヒーター熱源にチューブを接触させて外部から間接的に伝熱するよりも効率的に加熱することができ、微量流体を従来より均質に加熱することができるという利点がある。
【0046】
ところで、流体(例えば血液など検体)の変質を極力避けるためチューブ内を高い温度にさらすよりも設定昇温温度近傍で加熱する(柔らかく加熱する)ことが好ましい一方、チューブは内部を流す流体が加熱前温度(例えば15〜25℃)から加熱後の設定温度(例えば37℃)へと昇温できるような熱量を与えることができる長さが必要となるところ、その分チューブの長さが長くなると長さに比例して抵抗値が大きくなり電圧を印加しても発熱し難くなる不具合があるが、チューブ2全長の両端末に電圧を印加するのではなく複数区間においてそれぞれ電圧を印加するようにしたので、チューブ2の長さが多少長くなることがあっても流体を設定昇温温度近傍で柔らかく加熱してその変質を防止して昇温させることができるという利点がある。例えば、採取した分析用の検体(血液等)を生体内と同じような条件に近づける為に体温に近い37℃程度へと加熱し昇温させた状態で分析機器(図示せず)に導入することができる。なお、昇温させる温度として80℃等のより高温に加熱することもできる。
【0047】
また、チューブ2自体が材質上多少硬い傾向があってもRが付いた略直角部9を連続させて形成することができるという利点がある。また、前記チューブ2の複数区間の両端部同士に電圧が並列で印加されるように導線7と導電発熱層1とを配線したので、導線7をチューブ2の導電発熱層1に対してすっきりとした態様で配線することができるという利点がある。
【0048】
その上、チューブ2の導電発熱層1に電圧を印加して発熱させ前記最内層の絶縁層3を介して内部を流す流体を昇温させ、前記流体の出口近傍のチューブ2温度を温度センサSにより検知して導電発熱層1への導線7により印加電圧を制御するようにしており、昇温させた流体の温度を直接測定しなくても流体の出口近傍のチューブ2温度により印加電圧を調整することができると共に、流体入口近傍と比較して出口近傍では流体が昇温されてきておりこの位置でのチューブ2温度を検知することによりチューブ2内の実際の流体の温度をより正確に評価することができる。
【0049】
(実施形態5)
図7及び図3に示すように、この実施形態の微量流体昇温装置は、長手方向に導電発熱層1が形成されたチューブ2を具備する。このチューブ2は採取された血液などの分析用流体を加熱して昇温させるものであり、その内径の直径は好ましくは8mm以下であり、昇温効率上より好ましくは3mm以下である。例えば、外径(mm)―内径(mm)が1.0−0.5φ、1.0−0.2φ、2.2−1φ、3−2φ、3−1φとかに設定することができる。
【0050】
図3に示すように、チューブ最内層には流体と接する絶縁層3(ベースのETFE樹脂)を有し、その外層側には導電発熱層1が長手方向に積層される。前記導電発熱層1は、ベースのETFE樹脂に対して導電することにより発熱する性質を有する樹脂や物質(例えば導電性カーボンや金属粉、カーボン繊維や金属繊維、カーボンナノチューブ)を混合して含有させている。前記導電発熱層1の体積抵抗率を10−6〜10Ω・cmで設定することにより、加熱度合の調整を行うことができる。このチューブ2はETFE樹脂で形成したが、PFA樹脂等で形成することもできる。このチューブ2は、2種2層多層チューブ金型を用いて押出成形により製造した。
【0051】
そして、図7に示すように、離間した2本の導線7(それぞれ外周に絶縁膜10を有する)の周囲に前記チューブ2を螺旋状に巻回すると共に、前記チューブ2の導電発熱層1を正負に通電する2本の導線7に交互に接触させて電気的な導通状態とし(導通状態とすべき箇所11では導線7の絶縁膜10を剥離している)、前記チューブ2は2本の導線7が交互に接触する複数区間においてそれぞれ電圧(直流電源でも交流電源でもよい)を印加するようにしている。
【0052】
次に、この実施形態の微量流体昇温装置の使用状態を説明する。
【0053】
この微量流体昇温装置は、長手方向に導電発熱層1が形成されたチューブ2を具備し、前記チューブ2の導電発熱層1に電圧を印加して発熱させ内部を流れる流体を昇温させるようにしたので、流体を流すチューブ2自体が発熱するため、外付けのヒーター熱源にチューブを接触させて外部から間接的に伝熱するよりも効率的に加熱することができ、微量流体を従来より均質に加熱することができるという利点がある。
【0054】
ところで、流体(例えば血液など検体)の変質を極力避けるためチューブ内を高い温度にさらすよりも設定昇温温度近傍で加熱する(柔らかく加熱する)ことが好ましい一方、チューブは内部を流す流体が加熱前温度(例えば15〜25℃)から加熱後の設定温度(例えば37℃)へと昇温できるような熱量を与えることができる長さが必要となるところ、その分チューブの長さが長くなると長さに比例して抵抗値が大きくなり電圧を印加しても発熱し難くなる不具合があるが、チューブ2全長の両端末に電圧を印加するのではなく複数区間においてそれぞれ電圧を印加するようにしたので、チューブ2の長さが多少長くなることがあっても流体を設定昇温温度近傍で柔らかく加熱してその変質を防止して昇温させることができるという利点がある。例えば、採取した分析用の検体(血液等)を生体内と同じような条件に近づける為に体温に近い37℃程度へと加熱し昇温させた状態で分析機器(図示せず)に導入することができる。なお、昇温させる温度として80℃等のより高温に加熱することもできる。
【0055】
また、離間した2本の導線7の周囲に前記チューブ2を巻回すると共に前記チューブ2の導電発熱層1を正負に通電する2本の導線7に交互に接触させて電気的な導通状態とし、前記チューブ2は2本の導線7が交互に接触する複数区間においてそれぞれ電圧を印加するようにしたので、平面状ではなく直線状に細長く配置することができるという利点がある。
【0056】
(実施形態6)
図8及び図2に示すように、この実施形態の微量流体昇温装置は、長手方向に導電発熱層1が形成されたチューブ2を具備する。このチューブ2は採取された血液などの分析用流体を加熱して昇温させるものであり、その内径の直径は好ましくは8mm以下であり、昇温効率上より好ましくは3mm以下である。例えば、外径(mm)―内径(mm)が1.0−0.5φ、1.0−0.2φ、2.2−1φ、3−2φ、3−1φとかに設定することができる。
【0057】
図2に示すように、チューブ最内層には流体と接する絶縁層3(ベースのETFE樹脂)を有し、その外層側には導電発熱層1が長手方向に積層される。前記導電発熱層1は、ベースのETFE樹脂に対して導電することにより発熱する性質を有する樹脂や物質(例えば導電性カーボンや金属粉、カーボン繊維や金属繊維、カーボンナノチューブ)を混合して含有させている。前記導電発熱層1の体積抵抗率を10−6〜10Ω・cmで設定することにより、加熱度合の調整を行うことができる。このチューブ2はETFE樹脂で形成したが、PFA樹脂等で形成することもできる。そして、チューブ外面に絶縁層4(ナイロン)を形成している。前記導電発熱層1は、チューブ2の肉厚中に設けられている。このチューブ2は、3種3層多層チューブ金型を用いて押出成形により製造した。
【0058】
そして、図8に示すように、前記チューブ2は略U字状の湾曲部5を略直線部6で連結した形状とし、前記チューブ2の複数区間(5列)の両端部(湾曲部5)同士等に電圧が並列で印加されるように導線7と導電発熱層1とを配線した。ここで、導線7と導電発熱層1とを電気的に導通させる箇所8では、チューブ外面の絶縁層4を剥離している(図1参照)。
【0059】
また、前記チューブ2を略U字状の湾曲部5でターンさせることにより形成される複数区間(5列)について、これを更に区分(5区分)した細分区間12に電圧が並列で印加されるように導線7と導電発熱層1とを配線している。前記チューブ2は、略直線部6からなる複数区間の細分区間12においてそれぞれ電圧〔直流電源(+)(−)を用いたが交流電源でもよい〕を印加する。チューブ2は前記のような二次元状(平面状)ではなく、コイル状その他の三次元状に配設(配管)してもよい。
【0060】
なお、図3に示すように、前記外面の絶縁層4を形成せず流体と接する絶縁層3と導電発熱層1との2層で実施することもできる。このチューブ2は、2種2層多層チューブ金型を用いて押出成形により製造した。この場合、前記導電発熱層1はチューブ2の外層に設けることとなる。
【0061】
次に、この実施形態の微量流体昇温装置の使用状態を説明する。
【0062】
この微量流体昇温装置は、長手方向に導電発熱層1が形成されたチューブ2を具備し、前記チューブ2の導電発熱層1に電圧を印加して発熱させ内部を流れる流体を昇温させるようにしたので、流体を流すチューブ2自体が発熱するため、外付けのヒーター熱源にチューブを接触させて外部から間接的に伝熱するよりも効率的に加熱することができ、微量流体を従来より均質に加熱することができるという利点がある。
【0063】
ところで、流体(例えば血液など検体)の変質を極力避けるためチューブ内を高い温度にさらすよりも設定昇温温度近傍で加熱する(柔らかく加熱する)ことが好ましい一方、チューブは内部を流す流体が加熱前温度(例えば15〜25℃)から加熱後の設定温度(例えば37℃)へと昇温できるような熱量を与えることができる長さが必要となるところ、その分チューブの長さが長くなると長さに比例して抵抗値が大きくなり電圧を印加しても発熱し難くなる不具合があるが、チューブ2全長の両端末に電圧を印加するのではなく複数区間においてそれぞれ電圧を印加するようにしたので、チューブ2の長さが多少長くなることがあっても流体を設定昇温温度近傍で柔らかく加熱してその変質を防止して昇温させることができるという利点がある。例えば、採取した分析用の検体(血液等)を生体内と同じような条件に近づける為に体温に近い37℃程度へと加熱し昇温させた状態で分析機器(図示せず)に導入することができる。なお、昇温させる温度として80℃等のより高温に加熱することもできる。
【0064】
また、チューブ2の略U字状の湾曲部5を介して略直線部6からなる複数区間(20列)が往復するような形状として装置をコンパクトに形成することができるという利点がある。さらに、前記チューブ2の複数区間の両端部(湾曲部5)同士等に電圧が並列で印加されるように導線7と導電発熱層1とを配線したので、導線7をチューブ2の導電発熱層1に対してすっきりとした態様で配線することができるという利点がある。
【0065】
さらに、前記チューブ2を略U字状の湾曲部5でターンさせることにより形成される複数区間について、これを更に区分(5区分)した細分区間12に電圧が並列で印加されるように導線7と導電発熱層1とを配線したので、複数区間の長さを長めに設定(区分した細分区間12に電圧を印加して加熱することが可能である)してチューブ2のターンの数を少なく設定することができ、装置全体の配置レイアウトの自由度を増大させることができる。
【0066】
その上、チューブ2の導電発熱層1に電圧を印加して発熱させ前記最内層の絶縁層3を介して内部を流す流体を昇温させ、前記流体の出口近傍のチューブ2温度を温度センサSにより検知して導電発熱層1への導線7により印加電圧を制御するようにしており、昇温させた流体の温度を直接測定しなくても流体の出口近傍のチューブ2温度により印加電圧を調整することができると共に、流体入口近傍と比較して出口近傍では流体が昇温されてきておりこの位置でのチューブ2温度を検知することによりチューブ2内の実際の流体の温度をより正確に評価することができる。
【産業上の利用可能性】
【0067】
外付けのヒーター熱源にチューブを接触させて外部から間接的に伝熱するよりも効率的に加熱することができ、微量流体を従来より均質に加熱することができるので、種々の微量流体昇温装置の用途に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】この発明の微量流体昇温装置の実施形態1を説明する平面図。
【図2】図1の微量流体昇温装置に用いるチューブの要部斜視図。
【図3】図1の微量流体昇温装置に用いるチューブの他の実施例の要部斜視図。
【図4】この発明の微量流体昇温装置の実施形態2を説明する平面図。
【図5】この発明の微量流体昇温装置の実施形態3を説明する平面図。
【図6】この発明の微量流体昇温装置の実施形態4を説明する平面図。
【図7】この発明の微量流体昇温装置の実施形態5を説明する断面図。
【図8】この発明の微量流体昇温装置の実施形態6を説明する断面図。
【図9】従来の発熱性チューブを示す斜視図(特許文献1の図1)
【符号の説明】
【0069】
1 導電発熱層
2 チューブ
5 湾曲部
6 略直線部
7 導線
9 略直角部
12 細分区間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に導電発熱層(1)が形成されたチューブ(2)を具備し、前記チューブ(2)の導電発熱層(1)に電圧を印加して発熱させ内部を流す流体を昇温させると共に、前記チューブ(2)は複数区間においてそれぞれ電圧を印加するようにしたことを特徴とする微量流体昇温装置。
【請求項2】
前記チューブ(2)は略U字状の湾曲部(5)を略直線部(6)で連結した形状である請求項1記載の微量流体昇温装置。
【請求項3】
前記チューブ(2)は緩やかな曲線を連続した形状である請求項1記載の微量流体昇温装置。
【請求項4】
前記チューブ(2)はRが付いた略直角部(9)を略直線部(6)で連結した形状である請求項1記載の微量流体昇温装置。
【請求項5】
前記チューブ(2)の複数区間の両端部同士に電圧が並列で印加されるように導線(7)と導電発熱層(1)とを配線した請求項1乃至4のいずれかに記載の微量流体昇温装置。
【請求項6】
前記チューブ(2)をターンさせることにより形成される複数区間について、これを更に区分した細分区間(12)に電圧が並列で印加されるように導線(7)と導電発熱層(1)とを配線した請求項1乃至5のいずれかに記載の微量流体昇温装置。
【請求項7】
離間した2本の導線(7)の周囲に前記チューブ(2)を巻回すると共に前記チューブ(2)の導電発熱層(1)を正負に通電する2本の導線(7)に交互に接触させて電気的な導通状態とし、前記チューブ(2)は2本の導線(7)が交互に接触する複数区間においてそれぞれ電圧を印加するようにした請求項1記載の微量流体昇温装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−266573(P2006−266573A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−84145(P2005−84145)
【出願日】平成17年3月23日(2005.3.23)
【出願人】(000247258)ニッタ・ムアー株式会社 (61)
【Fターム(参考)】