説明

心拍出量を決定するためのシステムおよび方法

心拍出量を測定するためのシステムおよび方法が開示される。患者の動脈カニューレ(45)と静脈カニューレ(43)との間に閉鎖流体回路が形成される。ポンプ(53)は閉鎖流体回路内の流れを調整する。閉鎖流体回路は、標識を注入するための少なくとも1つのポートを含む。標識が患者の系を少なくとも1回通過流動した後に、血液パラメータの読みを得るために、少なくとも1つのセンサが閉鎖流体回路に取り付けられる。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本願は、米国特許法第119条(e)項に基づき、2005年3月7日に出願した「System and Method for Determining Cardiac Output」と称する米国特許仮出願第60/659,205号に基づく優先権を主張する。
【連邦政府の資金提供を受けた研究または開発に関する記載】
【0002】
該当なし。
【「配列表」に関する記載】
【0003】
該当なし。
【技術分野】
【0004】
本発明は、患者の生命徴候のモニタリングに関し、さらに詳しくは、患者の心拍出量のモニタリングに関する。
【背景技術】
【0005】
病院で患者に治療を施す際に、しばしば介護者は患者の血流をモニタする必要がある。しばしばこれは、心拍出量すなわち心臓によって圧送される血液の量のモニタリングを含む。希釈原理を使用する現在のシステムは、静脈内へのカテーテル、心臓カテーテル法を必要とする例えばSwan‐Ganz温度希釈カテーテルの挿入を必要とする。カテーテルは一般的に直径が約2〜4mmであり、長さは1メートルに達することがある。多くの成人の場合、彼らの静脈および動脈は大きく、そのような大きい装置を受け入れるのに充分によく発達しているので、問題ではない。しかし、若年の青年や幼児の場合、彼らの動脈および静脈の小さいサイズのため、センサ付きのそのような動脈内または静脈内カテーテルを使用することは往々にして不可能である。
【0006】
子供または若年者の心拍出量をモニタするために、上述したように血液中に挿入されるセンサ付きカテーテルを使用する必要の無い、現在利用可能な多数の希釈方法が存在する。これらの方法は、1)リチウム希釈技術、および2)カーディオグリーン(cardio-green)希釈技術である。リチウム希釈技術で使用される標識は毒性を示し、過剰投与を回避するために医師が注意深く投与量をモニタする必要がある。リチウム希釈技術は、センサと接触した後に再調整されない血液を抜き取る必要があるので、患者の血液喪失をも引き起こす。カーディオグリーン希釈技術は、投与を繰り返す必要があるので、それもまた結果的に患者の血液喪失を引き起こす。また、検査を繰り返すと、患者の皮膚の色相が薄くなる。
【0007】
小さい患者の血液喪失に関連して上述した問題を前提として、すなわち小児の受け入れられない心拍出量は一般的に、カラードップラのような非侵襲的であるが精度の劣る方法によって監視または測定される。しかし、担当医が幼児の血流を安全にかつ高い精度でモニタすることができれば、それは大きい利点をもたらすであろう。
【0008】
標識希釈技術は、心拍出量を含む血流の決定のために1世紀以上にわたって使用されてきた。米国特許第6,155,984号は、本発明者による本明細書に記載する発明の1つの方法およびシステムを記載している。上記特許では、標識導入アセンブリが標識を中心血液供給の静脈側に導入する。次いで動脈センサが、心臓の左および右側を通過した後にセンサを通過するときの標識の濃度を決定する。
【特許文献1】米国特許第6,155,984号
【0009】
上述した通り、直径2〜3mm、長さ1メートル以上のカテーテルを挿入するよりは侵襲性の低い手順が開発されてきたが、現在利用可能なシステムは依然としてある程度侵襲的であり、特定の予め定められた用途に特定的である。したがって必要とされるものは、カテーテルを患者に挿入する必要が無く、血液を喪失することなく患者の体外で測定手順を実行することのできる、幼児または若年者の心拍出量を測定するための単純かつ効果的な方法およびシステムである。加えて、必要とされるものは、非侵襲性であり、患者の血液を汚染せず、かつ容易に実現されるシステムである。さらに必要とされるものは、これらの既存のシステムの動作に干渉することなく、患者の他の物理的パラメータを測定する既存のシステムと、協働するシステムである。
【発明の概要】
【0010】
したがって、本発明の目的は、患者の心拍出量を測定するための非侵襲的で正確で容易に実現できる方法およびシステムを提供することである。さらなる目的は、幼児および若年者のみならず成人にも使用することのできる方法およびシステムを提供することである。本発明の追加の目的は、既存の患者モニタリングおよび治療システムに容易に組み込むことのできるシステムを提供することである。
【0011】
本発明は、a)ICU患者にすでに存在する動脈カニューレと静脈カニューレとの間に体外閉鎖流体回路を確立するステップと、b)閉鎖回路を介して動脈カニューレから静脈カニューレへの調整された血流をポンプにより確立するステップと、c)静脈内に標識を注入するステップと、d)動脈および静脈カニューレを取り付けられた患者の心肺系を標識が少なくとも1回通過した後で、閉鎖流体回路で血液パラメータの読みを得るステップと、e)測定された血液パラメータから心拍出量を決定するステップにより、心臓の血液拍出量を決定する方法を提供することによってこれらおよび他の目的を達成する。本発明のさらなる態様では、標識は体外閉鎖流体回路内に注入される。
【0012】
本発明の別の態様では、a)患者内の動脈カニューレおよび静脈カニューレを接続する閉鎖流体体外回路と、b)閉鎖流体回路内を動脈カニューレから静脈カニューレに流動する流体の物理的パラメータを感知するために配置された前記閉鎖流体回路上の少なくとも1つのセンサと、c)閉鎖流体回路上の少なくとも1つの閉鎖可能なアクセスポートであって、前記閉鎖流体回路への流体のアクセスを可能にするように構成されたアクセスポートと、d)前記閉鎖流体回路を流れる血流を確立かつ調整する少なくとも1つの流量調整装置と、e)前記少なくとも1つの閉鎖可能なアクセスポート内に注入された標識と共に、血液が前記動脈カニューレから前記静脈カニューレに流れたときに、前記少なくとも1つのセンサからの信号を受け取り、それによって心拍出量を決定するように構成された、前記センサに接続されたプロセッサとを有する、患者の心拍出量を決定するためのシステムを提供する。
【0013】
本発明は、以下の説明を添付の図面と併せて精査することによって、いっそうよく理解することができる。
【好適実施形態の詳細な説明】
【0014】
集中治療室(ICU)内の患者には一般的に、1つまたはそれ以上の静脈内カテーテルまたはカニューレおよび動脈内カテーテルまたはカニューレが接続される。静脈内カニューレまたはカテーテルは一般的に静脈に取り付けられ、患者への薬剤および他の物質の静脈内供給を可能にする。動脈内カニューレまたはカテーテルは患者の動脈に接続され、直接かつ正確な血圧の読みを得ることを可能にする。読みは、血圧カニューレを、通常ヘパリン化生理食塩水が充填された管路を介して、血圧センサに接続することによって得られる。凝固を防止するために、生理食塩水は緩徐にカニューレ内に送り込まれる。
【0015】
カニューレが取り付けられる実際の動脈または静脈は、治療の要件に依存する。一般的に静脈カニューレは中心静脈系に接続され、それはしばしば頸静脈または大腿静脈とすることができる。動脈カニューレはしばしば撓骨もしくは大腿動脈に、または新生児の場合は臍帯動脈に接続される。
【0016】
三方弁または標準弁システムが一般的に、動脈カニューレおよび静脈カニューレの端部または延長セットに接続される。これによりカニューレへのアクセス、および最終的に、カニューレが取り付けられた静脈または動脈へのアクセスが容易になる一方、アクセスを閉鎖しカテーテルの性能に影響を及ぼさないようにすることが可能になる。同様に、適切な弁を開いた後、静脈内フィード(IV)を静脈カニューレに挿入することができる。それは三方弁アセンブリであるので、たとえIVまたはセンサプローブが弁の第2の開口に挿入されている場合でも、第3の開口を介してカニューレへのアクセスを得ることができる。
【0017】
本発明は、ICUの標準手順として、患者に配置された既存の静脈および動脈カニューレを利用する。本発明は、動脈カニューレと静脈カニューレとの間に管を接続する。この管は、動脈カニューレと静脈カニューレとの間に体外閉鎖流体回路を確立する。動脈カニューレおよび静脈カニューレは両方とも標準弁およびアクセスポート開口49Aおよび49Bを有し、それは各カニューレ間の流体の流れすなわち血流の制御を可能にする。管内の流動の標準的方向は、動脈カニューレから静脈カニューレの方向である。適切な流量を確立し、かつ体外閉鎖流体回路内の血液の凝固を防止するために、動脈カニューレから流体回路に入り、流体回路を通過し、静脈カニューレを出て患者の体内に流入する血液の流れを支援かつ調整するポンプ53が管路に追加される。
【0018】
血液の特性および回路内で必要ならば血流をもモニタし、心拍出量を決定するために使用される必要な読みを得るために、1つまたはそれ以上のセンサが流体回路に取り付けられる。本発明の好適な実施形態では、超音波トランスデューサが使用される。図3および4に示すように、単数または複数のセンサがコンビネーションコンピュータ/流量計に直接接続される。コンピュータは、流量計とインタフェースする適切なソフトウェアを実行する。流量計とインタフェースするために、このソフトウェアは必要なプログラミングを含み、コンピュータは必要なハードウェアを有し、流量計は次にセンサに接続される。図3Aは、センサ51が流量計59Aに接続され、それがさらにコンピュータ59Bに接続された、図3のコンピュータ流量計構成のブロック図である。図4Aは、センサ51および63が流量計59Aに接続され、それがさらにコンピュータ59Bに接続された、図4のコンピュータ流量計構成のブロック図である。この構成では、計器59Aはニューヨーク州イサカのTransonic Systems Inc.によって製造されたHD02流量計であり、それはセンサ51および63とコンピュータ59Aとの間のインタフェースとして働く。HD02流量計は、Dell、HP等から入手可能な標準パーソナルコンピュータとインタフェースする標準ソフトウェアが付いている。コンピュータを流量計内に一体化するなど、センサ、計器、およびコンピュータの他の構成も可能である。
【0019】
センサを介して、システムは、血液中に注入された標識の濃度(または濃度に比例する関連値)の読みに基づいて、心拍出量をモニタする。システムによって得られた読みから、標識の濃度の変化の定性的および定量的測定値のみならず、閉鎖流体回路の流量もモニタされる。加えて、閉鎖体外流体回路を通過する流動の測定およびモニタリングは、追加安全因子である。そのようなモニタリングは、体外回路内の血流の問題および凝固を知らせることができる。
【0020】
本発明は標識希釈技術を使用して心拍出量を決定する。その好適な実施形態のシステムの方法は、動脈および静脈カニューレ間に体外閉鎖流体回路を確立すること21、好適な実施形態ではポンプを使用して、血液の流動を開始させること22、および生理食塩水のような標識を閉鎖流体回路内に注入すること23を含む。血液が動脈カニューレから体外閉鎖流体回路内に流入し、静脈カニューレを通して患者の体内に流入することができるように、弁49A、49B、および49Cが開かれた後、血液は流れ始める。この時点でポンプ53が作動し、閉鎖流体回路に適切かつ調整された血流が形成される。標識は、血液が閉鎖流体回路内を流動し始めた後、閉鎖流体回路内に注入される。どこかで述べた通り、標識は、注入の目的に応じて、49A、49B、または49Cに配置されたポートから注入することができる。また、好適な実施形態では、管路47が動脈カニューレ45および静脈カニューレ43に接続されるときに、管路47には生理食塩水溶液が充填されており、血液が管路47に流入し始めた後、測定が行なわれることにも注目されたい。加えて、好適な実施形態は標識を管路47内に注入することを論じているが、いずれかの静脈のようないずれかの位置から静脈内注入することができ、依然として本発明を実施することができる。
【0021】
好適な実施形態では、動脈および静脈カニューレが取り付けられた患者の心肺循環系を標識が少なくとも1回通過した後、閉鎖流体回路で血液パラメータの読みが得られる24。センサによって生成される読みは計器によって収集され、コンピュータに送信され、そこでこれらの読みを使用して、心拍出量25が算出される。得られた読みは、読取り時にセンサ位置を通過する血中の標識の濃度を反映する。標準標識希釈読みが得られ、心拍出量を算出するために使用される。好適な実施形態では、センサによって送られる実際の信号は、センサ位置を通過して流れる血液中を伝達される超音波の速度を表わす電圧の変化である。血中の超音波の速度の変化は、血中の希釈標識の濃度を表わす。標準標識希釈原理が使用されるので、次式は行なわれる計算を表わす。
Q=V/S
この式中、Qは心拍出量を表わし、Vは標識の量を表わし、Sは希釈曲線より下の面積を表わす。実際、Sは経時的に得られ積分された標識の濃度の一連の読みの組合せであり、したがってそれは希釈曲線より下の面積を表わす。
【0022】
用語Sおよびその定義「希釈曲線の下の面積」は、センサによって得られる読みを簡単に指す方法である。Sを見る別の方法は次の通りである。センサがこの時点までに心肺循環系を通過した標識の存在を感知したときに、それは経時的に一連の読みを得、これらの読みから、図2によってグラフで表わされたSを算出する。図2のaからbまでの面積が、希釈曲線の下の面積と呼ばれる。実際、センサは経時的な濃度の変化の読みを得るので、Sは次式によって表わすこともできる。
【数1】

この式中、Bは、経時的に血中の標識の存在によって影響を受ける血液の濃度である。したがってこれは、血中の標識の濃度の時間変化率の積分であり、積分法で曲線の下の面積と同等である。実際には、センサは濃度変化に比例(関連)する電圧変化を生成したことを理解されたい。
【0023】
本発明の別の好適な実施形態では、標準標識希釈演算式は次の形を取る。
Q=K×V/S
この式中、Qは再び心拍出量であり、Vは標識の量であり、Sは、センサの位置を通過する血中の標識の濃度の経時的な一連の読みから得られる希釈曲線より下の面積である。Kは、センサから受け取る電圧信号を、センサを通過するときの血中の標識の濃度に関連付けるように設計された較正定数である。実際には、読みから導出される値は標識の濃度に比例し、あるいは定量化可能に関連付けられることを理解されたい。較正は現場で標準的な方法で行なわれ、あるいは好ましくはセンサ、コンピュータソフトウェア、および/または計器は製造中に較正される。
【0024】
センサ2個の構成(図4)を含む本発明の別の好適な実施形態では、標準標識希釈演算式は次の形を取る。
【数2】

(図4に示すような)センサ2個の構成のシステムでは、センサの1つは、静脈側の注入部位より前に配置され、第2のセンサは動脈側に配置される。センサは両方ともループを介して流量を測定することができる。第1のセンサは、注入された標識の量V(t)および標識の注入により生じる濃度の変化C(t)を、標識がセンサ位置を通過する間、経時的に記録する。この式中、Qは心血流量であり、Sは、動脈側のセンサの位置を通過して流れる血中の標識の濃度の経時的な一連の読みから得た、希釈曲線の下の面積であり、∫(C(t)*V(t))dtは、静脈側のセンサ位置を通過するときの標識の経時的な一連の読みから得られる、注入された標識の量を表わす。同演算式を、センサ1個のシステムにも使用することができ、その場合、標識が最初に通過するときに初期較正読みを得、次いで標識が心肺循環系を通過した後で希釈曲線を記録するために、センサより前で注入が行なわれる。
【0025】
図3は、単一センサシステムの略図である。ICU患者41には、静脈カニューレ43および動脈カニューレ45が取り付けられている。体外閉鎖流体回路47は動脈カニューレ45および静脈カニューレ43を接続する。閉鎖流体回路47は1つまたはそれ以上のアクセスポート49A、49B、および49Cを有する。センサ51は閉鎖流体回路47の示された位置に接続される。加えて、ポンプ53が閉鎖流体回路47に接続される。標識注入装置55はアクセスポート49Cに接続される。センサ51は流量計59Aに接続され、該流量計はコンピュータ59Bに接続される。
【0026】
動脈カニューレ45および静脈カニューレ43は一般的に、病院内でICU患者に配置される。静脈カニューレ43は、患者IVの血流内に、患者に投与される医薬のみならず、治療のために必要な他の物質をも注入するために使用される。注入は患者の血液系に直接行なわれる。一般的に、静脈カニューレは中心静脈系に配置され、それはしばしば頸静脈に接続される。大腿静脈のような他の静脈を使用することもできる。動脈カニューレは、患者の血圧を定期的に測定し血液試料を採取するカテーテルのためのアクセスを提供するために使用される。動脈カニューレの好適な位置は一般的に、撓骨動脈もしくは大腿動脈であり、新生児の場合は臍帯動脈である。
【0027】
アクセス弁49A、49B、および49Cは三方弁であり、好適な実施形態では三方活栓である。三方弁49A、49B、および49Cは、流体回路47における流動を完全に停止させることができ、あるいは流体回路47中の血液の流動をアクセスの有無に関係なく可能にする。弁49A、49B、および49Cは三方弁であるので、弁の3つのポートを全部開いて、血液が流体回路47を通過するときに同時に流体回路47へのアクセスを可能にすることができる。これらの弁の型、位置、および個数は、本発明の範囲および精神から逸脱することなく変えることができる。
【0028】
好適な実施形態では、流体回路47は一般的に外科または医療等級のチューブであり、体外で1つの位置で動脈カニューレ45に、第2の位置で静脈カニューレ43に接続される。体外閉鎖流体回路47は、動脈カニューレ45から静脈カニューレ43への血液の流れを可能にする。図3で、流体回路47内の血液の標準的流れは、上流側の動脈側から下流側の静脈側への方向である。回路47を介する血液の移動の調整を補助するために、ポンプ53が接続される。好適な実施形態では、ポンプ53は蠕動ポンプである。蠕動ポンプ53は基本的に流体回路47のチューブをマッサージして、閉鎖流体回路内の血液または標識を矢印61の方向に移動させる。好適な実施形態はその非侵襲性のために蠕動ポンプを使用し、血液は流体回路47内に閉じ込められたままであり、ポンプと直接接触しない。しかし、本発明の精神から逸脱することなく、多くの他の型のポンプを使用して本発明を実施することができる。
【0029】
標識注入装置55は好適な実施形態では、生理食塩水または他の型の標識が充填されたシリンジであり、アクセスポート弁49A、49B、または49Cの適切な設定により、標識を流体回路47内に注入することができる。
【0030】
センサ51は好適な実施形態では、血液中の超音波の速度の変化を測定するセンサである。速度の変化は、生理食塩水溶液の場合のように注入され、あるいは温度変化または通常の当業熟練者が精通している多数の異なる標識のいずれかとして導入される、標識の量に関連付けられる。センサ51は流量計59Aに接続される。次に、コンピュータ59Bが流量計59Aから読みを受け取り、流量計59Aからの読みと、システムのユーザがコンピュータ上で実行されるコンピュータプログラムに入力する追加情報とに基づいて、心拍出量を算出する。好適な実施形態では、プログラムは、心拍出量を決定するために必要な計算を実行するように適切に適応された上記式を使用する。センサ51は回路47の周囲にクランプされ、したがって血液に接触してそれを汚染することがなく、また血液に接触しないので血液によって汚染されることもない。
【0031】
図3に示す通り単一センサシステムは、図3に示す通り最初にシステムと接続することによって、心拍出量をモニタするために使用される。次のステップは、動脈カニューレ45から閉鎖流体回路47内へ、次いでポンプ53を介して静脈カニューレ43を通して患者の体内に戻る血液の流れを開始することである。ひとたび血液の流れが確立されると、標識が標識注入器55によって注入される。センサ51はコンビネーションコンピュータ/流量計59に接続され、次いで閉鎖流体回路47内の血液の流れをモニタし始める。センサ51が、以前にポート49Cから注入された標識を検出すると、それはその読みを開始する。これらの読みは次いで流量計59Aによって読み込まれ、次いで該流量計は、適切なソフトウェアを実行するコンピュータ59Bに読みを転送する。好適な実施形態では、上述の通り行なわれる読みは超音波センサによって達成され、それは超音波トランスデューサを含む。これらの読みは、注入器55によって注入された標識の量と共に、心拍出量を算出するために使用される。注入された標識の量は、システムのオペレータによってコンピュータで実行されるソフトウェアプログラムに入力されている。
【0032】
本発明の好適な実施形態は実際には、センサの読みを濃度単位に変換するための較正用の読みを提供する。単一センサシステムの好適な実施形態では、較正用の読みは、システムをフラッシングするようにポート49Aまたは49Bのいずれかから標識を注入することによって得られる。フラッシングは、センサ51から血液を洗い流すことを意図している。センサ51は次いで、最初にプライミングされた流体回路47内の標識の流れのモニタリングを開始し、血液が検出されると、読みを得て較正定数を提供する。センサは工場で再較正することができ、その場合、患者の測定中にそれを較正する必要は無い。
【0033】
図4は、本発明のセンサ2個の構成の図を提示する。図4で、図3の品目と同一である品目は全て同一番号を有する。図4における唯一の実質的な追加は、第2のセンサ63の追加である。好適な実施形態では、センサ63の追加により、初期較正用の読みを代替的な方法で行なうことが可能になる。これにより、較正用の読みを得るためにシステムをフラッシングする必要が無くなり、心拍出量を決定するために使用される標識の1回の注入に基づいて、較正用の読みを得ることが可能になる。図4に示す変形例では、標識は標識注入器55によってポート49Cから注入される。標識が最初にセンサ63を通過すると、コンピュータ/流量計59がセンサ63から較正用の読みを得る。標識が最終的に患者41の心臓血管循環系を通過し、動脈カニューレ45から出てくると、流体回路47内の流れをモニタしているセンサ51が必要な読みを得、そこから心拍出量が算出される。
【0034】
好適な実施形態では生理食塩水標識が使用されるが、任意の適切な標識を使用することができる。他の型の標識として、1つまたはそれ以上の血液特性の変化等がある。これらは温度希釈を含むが、それに限定されない。
【0035】
上述した好適な実施形態は、必要な読みを得るために、標識の急激な注入、すなわち大量瞬時投与を使用する。しかし、本発明の精神から逸脱することなく、本発明は多種多様な標識希釈技術を用いて実施することができることに留意されたい。したがって、本発明は定常状態標識希釈技術を用いて実施することもできる。
【0036】
本発明について、生理食塩水溶液を注入し、標識の存在およびその濃度を超音波センサで感知するような、標識希釈を使用する好適な実施形態を用いて説明した。通常の当業熟練者は、ひとたび本発明の原理を理解すれば、本発明の精神から逸脱することなく、血液の他の物理的性質を変化させることができ、かつ他の型のセンサを使用して希釈曲線を得ることができることを認識されるであろう。考えられる血液特性の潜在的な変化の中に、その光学的性質、電気的性質(電気インピーダンス)、熱的性質、または血液のいずれかの他の適切な物理的もしくは化学的性質がある。したがって、光センサ、電気センサ、熱センサ、または他の適切な物理的もしくは化学的センサを使用することができ、おそらく行なわれる血液の特性の変化に応じて使用される。加えて、アイソトープトレーサと適切なセンサを使用することができる。これは全てを網羅するリストではない。本発明の精神から逸脱しない異なる標識に使用するように、演算式は修正することができる。
【0037】
本発明を特にその好適な実施形態に関連して図示しかつ説明したが、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、形態および詳細を様々に変化させることができることを、当業者は理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明のシステムの1つの方法を示すフローチャートである。
【図2】該方法および装置の使用中に現われる血液濃度の読みの時間変化率のグラフである。
【図3】本発明のシステムの1つの変形例の略図である。
【図3A】図3のコンピュータ/流量計のブロック図である。
【図4】本発明のシステムの別の変形例の略図である。
【図4A】図4のコンピュータ/流量計のブロック図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
心拍出量を決定する方法であって、
a)ICU患者の動脈カニューレと静脈カニューレとの間に体外閉鎖流体回路を確立するステップと、
b)前記閉鎖回路を介して前記動脈カニューレから前記静脈カニューレへの調整された血流を、ポンプを使用して確立するステップと、
c)静脈内に標識を注入するステップと、
d)前記動脈および前記静脈カニューレが取り付けられた患者の心肺循環系を標識が少なくとも1回通過した後、前記閉鎖流体回路で血液パラメータの読みを得るステップと、
閉鎖流体回路内の血液パラメータの読みを取り出すステップと、
e)前記測定された血液パラメータから心拍出量を決定するステップと、を含む方法。
【請求項2】
前記血液パラメータの読みを得ることに加えて、較正用の読みを得、それにより心拍出量の決定の精度を改善する追加ステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記調整された血流を確立する前記ステップが、ポンプを始動して血液を予め定められた速度で流動させるステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
読みを得る前記ステップが、前記閉鎖回路内の血流をモニタし、かつ血中の標識の存在の徴候があるときに経時的に一連の読みを得るステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記決定ステップが、次式:
Q=V/S
を使用して血流量を算出するステップを含み、
式中、Qは標識が血中に存在することが検出されたときの心拍出量を表わし、Vは注入された標識の量を表わし、Sは注入された標識に対する血液の濃度の時間変化率の積分を表わす、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
標識に対する血液の濃度の時間変化率であるSが、希釈曲線より下の面積として表わされる、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
血液パラメータの読みを得ることに加えて、較正用の読みを得、それにより心血流量の決定の精度を改善する追加ステップを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記決定ステップが、次式:
Q=K×V/S
を使用して血流量を算出するステップを含み、
式中、Qは標識が血中に存在することが検出されたときの心血流量を表わし、Vは注入された標識の量を表わし、Kは較正用の読みを得ることから求めた定数であり、Sは注入された標識に対する血液の濃度の時間変化率の積分を表わす、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記読みが単一のセンサにより得られる、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
血液パラメータの読みを得ることに加えて、較正用の読みを得、それにより心拍出量の決定の精度を改善する追加ステップを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
較正用の読みを得る前に、前記閉鎖流体回路をフラッシングするさらなるステップを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
血液パラメータの読みおよび較正用の読みを得る前記ステップが、前記動脈カニューレに隣接してその下流に前記センサを配置するステップを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記閉鎖流体ループに沿って第1センサおよび第2センサを配置するさらなるステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記血液パラメータの読みを得ることに加えて、較正用の読みを得、それによって心拍出量の決定の精度を改善する追加ステップを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記較正用の読みを得る前記ステップが、前記第1センサにより前記較正用の読みを得ることを含み、前記血液パラメータの読みを得る前記ステップが、それを前記第2センサにより得ることを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
第1センサおよび第2センサを前記閉鎖流体ループに沿って配置する前記ステップが、前記第1センサを前記静脈カニューレに隣接してその上流に配置し、かつ前記第2センサを前記動脈カニューレに隣接してその下流に配置することを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
標識を前記閉鎖流体回路内に注入する前記ステップが、前記第1センサの上流であって前記第2センサの下流の位置から前記閉鎖流体回路内にそれを注入することを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
閉鎖流体回路を確立する前記ステップが、可撓管の第1端を前記動脈カニューレに、かつ前記可撓管の第2端を前記静脈カニューレに接続することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
読みを得る前記ステップが、超音波トランスデューサにより読みを得ることを含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項20】
標識を注入する前記ステップが、生理食塩水溶液を注入することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
標識を静脈内に注入する前記ステップが、前記閉鎖流体回路内にそれを注入することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
患者の心拍出量を決定するためのシステムであって、
a)患者内の動脈カニューレおよび静脈カニューレを接続する閉鎖流体体外回路と、
b)前記閉鎖流体回路内を動脈カニューレから静脈カニューレに流動する流体の物理的パラメータを感知するために配置された前記閉鎖流体回路上の少なくとも1つのセンサと、
c)前記閉鎖流体回路上の少なくとも1つの閉鎖可能なアクセスポートであって、前記閉鎖流体回路への流体アクセスを可能にするように構成されたアクセスポートと、
d)前記閉鎖流体回路を流れる血流を確立かつ調整する少なくとも1つの流量調整装置と、e)前記少なくとも1つの閉鎖可能なアクセスポート内に注入された標識と共に、血液が前記動脈カニューレから前記静脈カニューレに流れるときに、前記少なくとも1つのセンサからの信号を受け取り、それによって心拍出量を決定するように構成された、前記センサに接続されたプロセッサと、を備えたシステム。
【請求項23】
前記流量制御装置がポンプである、請求項21に記載のシステム。
【請求項24】
前記ポンプが蠕動ポンプである、請求項22に記載のシステム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図3A】
image rotate

【図4】
image rotate

【図4A】
image rotate


【公表番号】特表2008−538934(P2008−538934A)
【公表日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−500864(P2008−500864)
【出願日】平成18年3月7日(2006.3.7)
【国際出願番号】PCT/US2006/008198
【国際公開番号】WO2006/096758
【国際公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【出願人】(500097555)トランソニック システムズ、インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】