説明

心理状態増幅装置及びコンピュータプログラム

【課題】 疑似体験型ゲーム等をする際の臨場感を効果的に高める様な装置及びコンピュータプログラムを提供する。
【解決手段】 ユーザに関係する情報等からユーザの心理状態を判定し、その結果に基づいてユーザの心理状態を増幅するための心理状態増幅装置であって、ユーザに関係する情報を検出するための情報検出手段と、情報検出手段で検出された情報に基づいてユーザの心理状態を判定する心理状態判定手段と、心理状態判定手段によって得られたユーザの心理状態を参照して、ユーザの心理状態を増幅する因子を出力するための神経刺激因子出力手段とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、計測された環境情報とユーザの生体情報とに基づいて、ユーザの意識状態に働きかける出力因子を出力するための装置及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、心理学及び精神医学の分野の研究が発達し、生体情報から、その人間の心理状態を推定する事が可能となってきている。例えば、一般に人間が緊張状態にあるとその人の発汗量が増加するので、他の条件に大きな変化がないのにある人の発汗量が増加した場合、その人が緊張している事がわかる。
【0003】
さらに、周囲の環境が人間の精神に与える影響についても徐々に明らかになってきている。例えば、特定の香りを嗅ぐと心理状態が変化するという事についての科学的な裏付けが徐々になされてきている。具体的には、緊張して眠れない場合でもラベンダーから抽出された香りを嗅ぐと安眠できる様になるという様な事である。これは、ラベンダーの香気成分に含まれる特定の物質が人間の脳内物質に与える影響のためであると理解されている。
【0004】
そこで、この様な人間の心理状態と生体情報との関係及び周囲の環境が人間の心理状態に及ぼす影響を利用すると、ある人の心理状態を好ましい状態に誘導する事が可能である。それには、ある人の心理状態を判定し、その心理状態が、目的とする心理状態とは異なっている場合には、目的とする心理状態に近づけるような因子を出力すればよい。この様な出力を心理状態をフィードバックすると言う。
【0005】
心理状態をフィードバックする先行技術として特許文献1に開示のゲーム装置がある。特許文献1に開示のゲーム装置は、心拍数等の生体情報からユーザの心理状態を明らかにして、ゲームをしているときに、ユーザの興奮度が低すぎれば興奮度を高める様にゲームの進行内容を変化させ、逆に興奮度が高すぎれば興奮度を低める様にゲームの進行内容を変化させるという機能を持つ。具体的には、例えば、ゲーム中で、恐怖感を感じさせたい場面であるにも関わらず、生体情報から判定してユーザがあまり恐怖感を感じていない様であれば恐怖感を煽る様な演出を強める。一方、ユーザが恐怖感を感じすぎている様であれば、恐怖感を煽る様な演出を弱める。この様に、ユーザに合わせて演出効果を変化させる事ができるので、個々のユーザの個性を反映した、より楽しいゲーム展開が可能となる。つまり、ユーザは退屈する事なく、かつ、緊張しすぎる事もなく、心地よくゲームをする事ができる。
【0006】
また、特許文献2には、光と音の信号入力を脳波誘導のために調整し、リラックス状態を作り出すためのリラクセーション誘導装置が開示されている。この装置を使用して生体情報である脳波をある所定の波形に誘導する事により、リラクセーション状態を促す。また、この原理を応用して能率的な学習方法が提供される。
【0007】
さらに、特許文献3には、脈拍等の生体情報からユーザのリラックス度を判定し、ユーザがリラックス状態にあればその事をユーザに告知し、リラックス状態になければ指導内容を告知する装置が開示されている。これにより、例えば、自律訓練法のようなリラックス訓練を行なう場合に、ユーザは自分がうまくリラックスできているか否かを簡単に自己判定する事ができる。また、リラックス状態にない場合には指導内容が告知されるので、リラックス訓練を進行する際にその指導内容を役立てる事ができる。
【特許文献1】特開平8−191955号公報
【特許文献2】特開平9−131403号公報
【特許文献3】特開平10−76012号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
これらの先行技術はいずれも、ユーザの現在の心理状態とは異なる心理状態に誘導する様なフィードバックの仕方をしている。具体的には例えば、ユーザの生体情報からユーザが退屈していると判定されれば、退屈を解消する様な刺激を出力する。また、ユーザが緊張していると判定されれば緊張を鎮める様な刺激を出力する。この方法によると、好ましくない現在の心理状態を改善する事が可能になる。
【0009】
しかし、疑似体験型のゲームや映画等でよりリアルな体験をする事が必要な場合には、この様なフィードバックの仕方は適切ではない場合がある。疑似体験型のゲームや映画等で、この様なフィードバックをすると、臨場感が薄れるおそれがあるためである。
【0010】
そこで、本発明は、疑似体験型ゲーム等をする際の臨場感を効果的に高める様な装置及びコンピュータプログラムを提供する事を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の局面に係る心理状態増幅装置は、ユーザに関係する情報等からユーザの心理状態を判定し、その結果に基づいてユーザの心理状態を増幅するための装置であって、ユーザに関係する情報を検出するための情報検出手段と、情報検出手段で検出された情報に基づいてユーザの心理状態を判定する心理状態判定手段と、心理状態判定手段によって得られたユーザの心理状態を参照して、ユーザの心理状態を増幅する因子を出力するための神経刺激因子出力手段とを含む。
【0012】
この装置によると、まず、ユーザに関係する情報から、ユーザの現在の心理状態が判定される。そして、その判定結果に基づいて、ユーザの現在の心理状態を増幅する様な因子が出力される。この様な因子の出力により、ユーザの神経が刺激され、ユーザの現在の心理状態が増幅される。
【0013】
好ましくは、情報検出手段は、ユーザの生体情報を検出するための生体情報検出手段を含む。
【0014】
この装置によると、ユーザの現在の心理状態が判定される際に、比較的容易に検出できるユーザの生体情報が使用される。それゆえ、効率的な心理状態判定が可能となる。
【0015】
より好ましくは、情報検出手段はさらに、ユーザの周囲の環境情報を検出するための環境情報検出手段を含む。
【0016】
この装置によると、ユーザの現在の心理状態が判定される際に、比較的容易に検出できるユーザの周囲の環境情報が使用される。それゆえ、効率的な心理状態判定が可能となる。
【0017】
さらに好ましくは、心理状態判定手段は、生体情報及び環境情報を使用して、ユーザの自律神経系の作用状態を判定するための自律神経作用状態判定手段を含む。
【0018】
この装置によると、判定すべき心理状態として、自律神経系の作用状態を使用する事ができる。一般に、人間の生体情報及び人間を取巻く環境情報から自律神経系の作用状態を推定する事ができる。それゆえ、人間の心理状態を、生体情報及び環境情報から推定できる自律神経系の作用状態を使用する事によって判定する事ができる。
【0019】
環境情報検出手段は、ユーザの周囲の環境情報として気温を計測する気温計測手段を含んでもよいし、湿度を計測する湿度計測手段を含んでもよい。
【0020】
この装置によると、計測されたユーザの周囲の気温又は湿度から、ユーザの自律神経系の作用状態を推定し、ユーザの心理状態を判定する事ができる。
【0021】
好ましくは、生体情報検出手段は、ユーザの生体情報として発汗量を計測するための発汗量計測手段、瞳孔直径を計測するための瞳孔直径計測手段、又は心拍数を計測するための心拍数計測手段を含む。
【0022】
この装置によると、計測されたユーザの生体情報である発汗量、瞳孔直径、又は心拍数の変化から、ユーザの自律神経系の作用状態を推定する事ができる。そして、自律神経系の作用状態から、ユーザの心理状態を判定する事ができる。
【0023】
より好ましくは、心理状態判定手段は、ユーザの生体情報を使用してユーザの集中度を判定するための集中度判定手段をさらに含む。
【0024】
この装置によると、判定すべき心理状態として、ユーザの精神の集中度を使用する事ができる。ユーザの精神の集中度は、生体情報から比較的容易に推定する事ができる。それゆえ、効率的な心理状態判定が可能となる。
【0025】
さらに好ましくは、生体情報検出手段は、ユーザの生体情報として、瞬き回数を計測するための瞬き回数計測手段を含む。
【0026】
この装置によると、比較的容易に得る事のできる瞬き回数を使用する事によって、ユーザの集中度を判定する事ができる。
【0027】
好ましくは、心理状態判定手段は、ユーザの心理状態を判定するための基準となる標準データを格納するための標準データ格納手段と、ユーザに関係する情報と標準データとを比較して、ユーザの心理状態を判定するための手段とを含む。
【0028】
この装置によると、ユーザの心理状態を判定する際に使用する標準データがあらかじめ格納されている。この標準データとユーザに関係する情報との比較により、ユーザの心理状態を判定できる。それゆえ、心理状態判定の際の処理が簡略化される。
【0029】
さらに好ましくは、心理状態判定手段は、心理状態判定の際に使用する標準データに影響を与えると考えられる、ユーザに固有の個人データを使用して標準データ格納手段によって格納された標準データを修正するための修正手段を含む。
【0030】
この装置によると、心理状態判定の際に使用する標準データに影響を与える様なユーザに固有の個人データを使用して、標準データが適宜修正される。それゆえ、高精度の心理状態判定結果が得られる。
【0031】
さらに好ましくは、心理状態判定手段は、個人データを入力するための個人データ入力手段を含む。
【0032】
この装置によると、ユーザが適切に個人データを入力する事ができる。それゆえ、適切な標準データの修正が可能となり、適切な心理状態判定が可能となる。
【0033】
さらに好ましくは、心理状態判定手段は、標準データの修正に使用する個人データを記憶するための個人データ記憶手段を含む。
【0034】
この装置によると、上述した個人データが記憶される。この記憶された個人データが読出されさえすれば、それを使用して、標準データが修正される。それゆえ、心理状態を判定する必要があるときに、ユーザがその都度個人データを入力するという作業を省く事ができる。
【0035】
好ましくは、神経刺激因子出力手段は、神経刺激因子として、互いに両立しない複数の心理状態のうち、第1の心理状態を増幅する様な神経刺激因子を出力するための第1の神経刺激因子出力手段と、互いに両立しない複数の心理状態のうち、第2の心理状態を増幅する様な神経刺激因子を出力するための第2の神経刺激因子出力手段と、心理状態判定手段での判定結果に基づいて、第1の神経刺激因子出力手段及び第2の神経刺激因子出力手段のいずれかが動作する様に制御するための制御手段を含む。
【0036】
この装置によると、心理状態判定結果に基づいて適切な神経刺激因子が出力される。
【0037】
本発明の第2の局面に係るコンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されると、当該コンピュータを上記したいずれかの装置として動作させるものである。従って、上記した装置と同様の効果を奏する事ができる。
【発明の効果】
【0038】
この装置によると、まず、ユーザに関係する情報から、ユーザの現在の心理状態が判定される。このユーザに関係する情報はユーザの生体情報及びユーザの周囲の環境情報等である。そして、これらの情報は発汗量及び気温等の比較的容易に測定が可能な情報である。また、心理状態として判定されるのは、ユーザの自律神経系の働き及びユーザの精神の集中度等の、生体情報及び環境情報から比較的容易に得られるものである。それゆえ、心理状態の判定を効率的に行なう事ができる。また、心理状態の判定の際には、あらかじめ得られる標準データをユーザの個人データで適宜修正する。この修正により、より正確な心理状態の判定が可能となる。そして、その判定結果に基づいて、ユーザの現在の心理状態を増幅する様な因子が出力される。
【0039】
この様に、この装置によると、ユーザに関係する情報から、ユーザの心理状態が判定され、この心理状態判定結果を使用して、ユーザの心理状態を増幅する様な適切な神経刺激因子が出力される。それゆえ、ユーザの現在の心理状態が増幅される。従って、疑似体験型ゲーム等をする際にこの装置を使用すると、臨場感を効果的に高める様な装置を提供する事ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
<第1の実施の形態>
本実施の形態では、ユーザの心理状態を判定し、それを元にユーザにポジティブにフィードバックをする事により、臨場感を高める様な装置を採用する。本実施の形態の詳細を説明する前に、まず、心理状態判定方法の原理について詳述する。
【0041】
[心理状態の判定方法]
ユーザの心理状態を増幅してゲーム等の臨場感を高めるためには、まずユーザが現在どの様な心理状態にあるかを何らかの手段を用いて推定する事が必要である。そこで、本実施の形態では、交感神経と副交感神経とが人間の心理状態と大きくかかわっているという事実に着目し、交感神経と副交感神経との状態に関係する生理的な情報と、人間がおかれている環境に関する情報とから、人間の心理状態を判定する事とする。交感神経及び副交感神経は自律神経系と呼ばれる。自律神経系に関係する生体情報を使用する事の意義を以下で説明する。
【0042】
生体においては、交感神経及び副交感神経からなる自律神経系の働きによって呼吸及び脈拍等の状態を適切に保ち、生命が維持されている。その他にも、様々な側面で自律神経系の働きが生体活動を支えている。そして、これは、人間がゲームをしている場合にも当てはまる。なお、ここでのゲームはユーザが動かすゲームの主人公が様々な冒険をするというロールプレイング型ゲームであるとする。例えば主人公が旅をし、途中で怪物と戦ったり、花畑で休息したりしながらある目的を達成する、というゲームである。
【0043】
ロールプレイング型ゲームにおいては、主人公が緊張したり何らかの激しい動きをしたりする場面、例えば、怪物と戦う場面では、一般的にプレーヤの交感神経が優位になる事が多い。逆に、主人公の心がリラックスし、のんびりと過ごす場面、例えば花畑で休息する様な場面では、一般的にプレーヤの副交感神経が優位になる事が多い。この様にゲームの各場面でプレーヤにおいて優位になる自律神経系が違う。そこで、本実施の形態では、交感神経と副交換神経とに関連するプレーヤの生体情報からプレーヤの心理状態を判定し、その結果に従って、交感神経又は副交感神経のうち優位である方をさらに刺激するような外界からの刺激をプレーヤに与える事により、プレーヤの心理状態を増幅し、ゲームの臨場感が増す様にする。
【0044】
心理状態の判定にあたっては、環境情報である気温及び湿度と、生体情報である発汗量、瞳孔直径、及び心拍数の変化等とを使用する事が考えられる。そこで、自律神経系の判定をするためにこれらの環境情報及び生体情報と自律神経系の作用状態との関係を予め集積し、統計的に処理した標準データが用意されている事が望ましい。
【0045】
環境及び生体情報と自律神経系の作用状態との関係を集積し統計処理をすると、交感神経又は副交感神経のいずれが優位かを判定するためのしきい値を得る事ができる。例えば、一般的に、温度が上昇しすぎる又は下降しすぎると、交感神経が優位になりやすい。また、湿度が上昇しすぎると交感神経が優位になりやすい。さらに、交感神経が優位になると、発汗量が増加し、瞳孔直径が増大し、心拍数が増加するという傾向が見られる。そこで、どの程度の環境情報の変化及び生体情報の変化があれば、交感神経又は副交感神経が優位かを推定するためのしきい値をデータの集積・統計処理により得る事ができる。
【0046】
前述した様に、この装置を動作させるためには、環境情報及び生体情報の値がそれぞれ所定の値以上になれば交感神経が優位であると判定するが、所定の値未満になると副交感神経が優位であると判定する様なしきい値を定める必要がある。そして、ゲームの臨場感を高めるにあたっては、ポジティブフィードバックするに値する自律神経系の働きのみを抽出する必要がある。なぜならば、人間は、比較的平常心でいる場合であっても、交感神経又は副交感神経のいずれかが優位にあるからである。以下でこの事をゲーム内容を参照して説明する。
【0047】
例えば、前述したロールプレイング型ゲームにおいて怪物を倒すためのアイテムを店で買う場面を想定する。この様な場合にも、交感神経又は副交感神経のどちらかが優位になっている。しかし、ユーザは怪物と闘っているときほど興奮しているわけではない。また、花畑で休息しているときほどリラックスしているわけでもない。だとすれば、例えば発汗量の増加がある値x以上であれば交感神経が優位であり、x未満であれば副交感神経が優位になっているという様なしきい値を設定すると以下の様な問題点が生じる。
【0048】
上述した買い物の例では、しきい値x以上であれば交感神経を刺激する様な因子が出力されるので、買い物をしているだけにしては不自然なほどに興奮してしまう。また、x未満であれば副交感神経が優位であると判定され副交感神経を刺激する様な因子が出力されるので、買い物をしているのにも関わらず不自然なほどリラックスしてしまう事になる。
【0049】
この様に、ただ一つのしきい値でもってクリティカルにユーザの心理状態を判定し、その結果に基づいて交感神経又は副交感神経を刺激してしまうと、ユーザの自然な感覚を阻害するおそれがある。その結果、リアルな感覚を増幅させて臨場感にあふれたゲーム進行を可能にするという目的がかえって阻害される事になる。
【0050】
従って、実際には、自律神経系の作用状態の判定に使用するしきい値は、2種類必要である。つまり、しきい値a以上ならば交感神経が優位であるが、しきい値b未満ならば副交感神経が優位であるという様なしきい値である。この様なしきい値では、a>bの関係が成立する。
【0051】
また、環境情報及び生体情報の種類によっては、標準データを個人データによって修正する事が必要になる場合もある。例えば、発汗量や心拍数については個体の年齢及び体重等がその値に大きく影響すると考えられる。そこで、標準データを修正するための個人データも予めユーザ等によって入力されている事が望ましい。
【0052】
以下、図面を参照し、本発明の第1の実施の形態を説明する。本実施の形態は、ユーザの心理状態をユーザ自身にポジティブにフィードバックし、臨場感を増幅させるための心理状態対応型ゲーム装置20に関するものである。
【0053】
[構成]
図1に、本発明の第1の実施の形態に係る心理状態対応型ゲーム装置20の機能ブロック図を示す。なお、図には示さないが、このゲーム装置は、画面表示のためのゴーグル、発汗量測定のための手袋、及び脈波測定のためのアームバンドを備えているものとする。ユーザはゲームを始める前にこれらの付属装置を身につける事とする。また、心理状態を増幅させるための精神刺激因子として考えられる芳香剤を放出するための装置及び光を画面に表示するために画面と接続する端子等を備えている事とする。
【0054】
図1を参照して、この心理状態対応型ゲーム装置20は、発汗量、瞳孔直径、及び心拍数等のユーザの生体情報と気温及び湿度等の環境情報とを検出するための生体−環境情報検出部30と、この生体−環境情報検出部30で検出された生体情報、環境情報、予めユーザによって入力されたユーザの個人データ34、及び個人データ34の選択36による選択結果に基づいて、ユーザの心理状態を判定し、ユーザの心理状態をユーザ自身にポジティブにフィードバックする様な香り、画像、及び振動等の出力をするためのポジティブフィードバック部32とを含む。
【0055】
図2に、生体−環境情報検出部30の機能ブロック図を示す。図2を参照して、この生体−環境情報検出部30は、外気の温度と湿度とを計測するための温度・湿度センサ40と、ユーザの発汗量を計測するための手袋に装着された発汗量センサ42と、ユーザの瞳孔を撮影するためのゴーグルに装着されたカメラ44と、カメラ44で撮影されたユーザの瞳孔の画像を処理して瞳孔直径を計測するための瞳孔直径計測部46と、ユーザによって装着されるアームバンドに取付けられたユーザの心拍数を計測するための心拍数センサ48と、前述した温度・湿度センサ40、発汗量センサ42、瞳孔直径計測部46、及び心拍数センサ48から得られた、外気の温度、外気の湿度、ユーザの発汗量、ユーザの瞳孔直径、及びユーザの心拍数に関する情報のうちでアナログ情報であるものをデジタル情報に変換し、さらにこれらの情報を時分割により統合した信号を出力するためのインターフェイス50と、インターフェイス50で統合された生体−環境情報を以降のフィードバック処理のためにポジティブフィードバック部32へ送信するための送信部52とを含む。
【0056】
ここで、発汗量は皮膚抵抗値計を用いる事により計測する事ができる。
【0057】
瞳孔直径計測の際に必要な瞳孔の動きは、CCD(Charge Coupled Devices)又はCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサによる画像のエッジの動き検出により検出できる。
【0058】
心拍数の測定方法としては、まず、LED(Light Emitting Diode)と受光素子とを用いて、脈波による皮膚表面の変化に基づく皮膚表面の反射率の変化を利用する方法がある。また、圧電センサを利用し直接圧脈波の変化を測定するもの等の簡易的な検出方法もある。
【0059】
図3に、ポジティブフィードバック部32の機能ブロック図を示す。図3を参照して、このポジティブフィードバック部32は、生体−環境情報検出部30に含まれる送信部52から送信された生体情報及び環境情報を受信するための受信部60を含む。ここでの送受信には、スペクトラム拡散及びIR(infrared ray)等の方式による通信が適している。
【0060】
ポジティブフィードバック部32はさらに、前述した標準データを格納するための標準データ格納部64と、ゲームを始める前に、前述した個人データ34をユーザが予め入力するための個人データ入力部68と、個人データ入力部68によって入力された個人データを記憶するための個人データ記憶部66と、ゲームを行なう前に、個人データ記憶部66に記憶された個人データからユーザの個人データの選択36をユーザに行なわせるための個人データ選択部70と、個人データ選択部70で選択されたデータを用いて標準データ格納部64に格納された標準データを修正し、修正された標準データと受信部60から受取った環境情報及び生体情報とを比較参照し、現在のユーザの心理状態を判定するための判定部62とを含む。
【0061】
ポジティブフィードバック部32はさらに、判定部62で判定されたユーザの心理状態の判定結果を受取り、心理状態を増幅させる様な制御信号を与えるための制御部72と、制御部72から所定の制御信号を受けて動作する第1のプログラム74と、制御部72から所定の制御信号を受けて動作する第2のプログラム76と、第1のプログラム74又は第2のプログラム76を使用して交感神経を刺激する様な因子又は副交感神経を刺激する様な因子を出力するための神経刺激因子出力部78とを含む。
【0062】
ここで、第1のプログラム74は、後の神経刺激因子出力部78に交感神経を刺激する様な因子を出力させるためのプログラムである。一方、第2のプログラム76は、副交感神経を刺激する様な因子を出力させるためのプログラムである。
【0063】
なお、図示しないが、神経刺激因子出力部78は、出力される刺激因子に応じた出力手段を備えている。
【0064】
図4に判定部62の機能ブロック図を示す。図4を参照して、出力端子91A、91B、91C、及び91Dを有する判定部62は、生体情報及び環境情報に関する信号60を受けて、発汗量に関する情報を出力端子91Aに、瞳孔直径に関する情報を出力端子91Bに、心拍数に関する情報を出力端子91Cに、及び温度及と湿度とに関する情報を出力端子91Dに振分けるための情報種判定部90を含む。
【0065】
判定部62はさらに、情報種判定部90の出力端子91Aに接続された入力を持ち、発汗量に関する情報を個人データによって修正された標準データと比較参照する事によりユーザの現在の自律神経作用状態を判定し、その判定結果を表わす信号を出力するための発汗量変動状態判定部92と、情報種判定部90の出力端子91Bに接続された入力を持ち、瞳孔直径に関する情報を個人データによって修正された標準データと比較参照する事によりユーザの現在の自律神経作用状態を判定し、その判定結果を表わす信号を出力するための瞳孔直径変動状態判定部94と、情報種判定部90の出力端子91Cに接続された入力を持ち、心拍数に関する情報を個人データによって修正された標準データと比較参照する事によりユーザの現在の自律神経作用状態を判定し、その判定結果を表わす信号を出力するための心拍数変動状態判定部96と、情報種判定部90の出力端子91Dに接続された入力を持ち、温度及び湿度に関する情報を個人データによって修正された標準データと比較参照する事によりユーザの現在の自律神経作用状態を判定し、その判定結果を表わす信号を出力する外気コンディション判定部98とを含む。
【0066】
判定部62はさらに、発汗量変動状態判定部92、瞳孔直径変動状態判定部94、心拍数変動状態判定部96、及び外気コンディション判定部98から自律神経作用状態判定結果を表わす信号が与えられると、これら4つの判定結果を表わす信号を比較して、多数決方式により自律神経系の作用状態を判定し、その判定結果を制御部72に与えるための自律神経作用状態判定部100とを含む。
【0067】
実際には、これらの信号の全てが同じ重みとして扱われるわけではなく、データの種類によって異なった重みが付けられている事が望ましい。例えば、外気コンディションに関しては重み1がついているが、瞳孔直径に関しては重み3がついているという様な区別をする。
【0068】
[動作]
図1〜図4を参照して、本実施の形態に係るゲーム装置の動作について説明する。
【0069】
ゲームを始める前に、ユーザは予め個人データ入力部68によって、年齢、性別、身長、及び体重等の個人データを入力する必要がある。このデータ入力にあたっては後の選択処理を容易にするために、ユーザ個体を識別するための名前も合わせて入力できる事が望ましい。入力された個人データは個人データ記憶部66に記憶される。
【0070】
そして、ユーザはゲームを行なう前には、個人データ選択部70で個人データ記憶部66に記憶されたデータ中からユーザの個人データを選択する。ここでの選択方法としては、個人データとして名前も入力されている場合には、名前を入力すれば選択できる方式をとる事ができる。そして、判定部62では、個人データ選択部70で選択されたデータを用いて標準データ格納部64に格納された標準データである自律神経作用状態判定のためのしきい値を修正するという処理が行なわれる。
【0071】
さらにユーザはゲームを始める前に、カメラ44を搭載したゴーグル、脈波計を搭載したアームバンド、及び皮膚抵抗値計を搭載した手袋を装着する。
【0072】
ユーザがゲームを始めると、温度・湿度センサ40によって、外気の温度と湿度とが計測される。ユーザが装着した発汗量センサ42によって、ユーザの現在の発汗量が計測される。ユーザの瞳孔がカメラ44によって撮影され、瞳孔直径計測部46でその画像が処理され瞳孔直径が計測される。ユーザが装着した心拍数センサ48によって、ユーザの現在の心拍数が計測される。
【0073】
インターフェイス50はまず、上記生体情報、及び環境情報のうち、アナログ方式で計測されている外気温、外気の湿度、及び心拍数をデジタル方式に変換する処理を行なう。インターフェイス50はまた、前述した温度・湿度センサ40、発汗量センサ42、瞳孔直径計測部46、及び心拍数センサ48での計測結果を読出し、時間情報に基づいてこれらの計測結果を統合する。
【0074】
インターフェイス50で統合された生体−環境情報が送信部52に与えられる。送信部52は受取った生体−環境情報を以降のフィードバック処理のためにポジティブフィードバック部32へ送信する。
【0075】
受信部60は、送信部52から送信された生体情報及び環境情報を受信する。受信部60により受信された生体情報及び環境情報に関するデジタル信号は情報種判定部90に与えられる。情報種判定部90は、情報が発汗量の変動に関するものであれば発汗量変動状態判定部92に、瞳孔直径の変動に関する情報であれば瞳孔直径変動状態判定部94に、心拍数に関する情報であれば心拍数変動状態判定部96に、温度・湿度に関する情報であれば外気コンディション判定部98にそれぞれ振分ける。
【0076】
発汗量変動状態判定部92では、発汗量としきい値との比較により、交感神経又は副交感神経のいずれが優位であるかを判定する。そしてこの判定結果を表わす信号を自律神経作用状態判定部100に与える。この処理に使用されるしきい値は、標準データ格納部64に格納された発汗量と自律神経系の作用状態との関係を示すデータである標準データを個人データ記憶部66に記憶された個人データを使用して修正したものである。
【0077】
瞳孔直径変動状態判定部94は、瞳孔直径と修正されたしきい値との比較によりユーザの自律神経系の作用状態を判定する。瞳孔直径変動状態判定部94はさらに、この判定結果を表わす信号を自律神経作用状態判定部100に与える。
【0078】
心拍数変動状態判定部96は、心拍数と修正されたしきい値との比較により、ユーザの自律神経系の作用状態を判定する。そしてこの判定結果を表わす信号を自律神経作用状態判定部100に与える。
【0079】
外気コンディション判定部98は、温度及び湿度と修正されたしきい値との比較により、ユーザの自律神経系の作用状態を判定する。そしてこの結果を信号化して自律神経作用状態判定部100に送信する。
【0080】
以上の発汗量変動状態判定部92、瞳孔直径変動状態判定部94、心拍数変動状態判定部96、及び外気コンディション判定部98から交感神経又は副交感神経のいずれがユーザにフィードバックするに値する働き方をしているかを表わす信号が自律神経作用状態判定部100に与えられる。その後、自律神経作用状態判定部100が、4つのデータを比較して多数決方式により、いずれの自律神経系が優位であると言えるかを判定する。
【0081】
自律神経作用状態判定部100で判定された自律神経作用状態を示す信号は、ユーザへのフィードバックのために制御部72へ与えられる。
【0082】
図3を参照して、制御部72は、この結果を受けて、第1のプログラム74又は第2のプログラム76のいずれかを動作させるための信号を送る。これら二つのプログラムは神経刺激因子出力部78での処理で使用される。
【0083】
いずれかのプログラムが動作した事に反応して、神経刺激因子出力部78が何らかの神経刺激因子の出力処理を行なう。ここで、例えば、第1のプログラム74が動作したとすれば、ユーザの交感神経が優位である状態にあるので、その状態をさらに増幅させるような神経刺激因子の出力がされる。反対に第2のプログラム76が動作したとすれば、ユーザの副交感神経が優位である状態にあるので、その状態をさらに増幅させる様な神経刺激因子の出力がされる。
【0084】
具体的な神経刺激因子としては以下の様なものが考えられる。一例として、画面に所定の色の光を点滅させる方法が考えられる。一般に、赤色は交感神経を刺激し、青色は副交感神経を刺激する。従って、交感神経が優位の場合には画面の一部に赤色の光を点滅させ、副交感神経が優位の場合には画面の一部に青色の光を点滅させる事が考えられる。
【0085】
また、別の例としては、神経刺激因子として芳香剤を使用する事も考えられる。一般に、グレープフルーツ等の香りは交感神経を刺激する作用がある。反対に、ラベンダー等の香りは副交感神経を刺激する作用がある。従って、交感神経が優位の場合には神経刺激因子出力部78に取付けられた芳香剤を放出するための装置からグレープフルーツの香りを放出し、副交感神経が優位の場合にはラベンダーの香りを放出する事が考えられる。
【0086】
この他にも、神経刺激因子として、振動、風、音、及び水滴等を使用する事が考えられる。
【0087】
[コンピュータによる実現]
この実施の形態のゲーム装置は、コンピュータハードウェアと、そのコンピュータハードウェアにより実行されるプログラムと、コンピュータハードウェアに格納されるデータとにより実現される。図5はこの心理状態対応型ゲーム装置20を実現するコンピュータシステム330の内部構成を示す。
【0088】
図5を参照して、コンピュータ340は、FDドライブ352及びCD−ROMドライブ350に加えて、CPU(中央処理装置)356と、CPU356、FDドライブ352及びCD−ROMドライブ350に接続されたバス366と、ブートアッププログラム等を記憶する読出専用メモリ(ROM)358と、バス366に接続され、プログラム命令、システムプログラム、及び作業データ等を記憶するランダムアクセスメモリ(RAM)360とを含む。コンピュータシステム330はさらに、プリンタ344と、ディスプレイ342と、キーボード346と、マウス348と、神経刺激因子である芳香剤を出力するための芳香剤出力装置366と、ゲーム装置中で情報をやり取りするための通信部368とを含んでいる。
【0089】
ここでは示さないが、コンピュータ340はさらにローカルエリアネットワーク(LAN)への接続を提供するネットワークアダプタボードを含んでもよい。
【0090】
コンピュータシステム330に心理状態対応型ゲーム装置20としての動作を行なわせるためのコンピュータプログラムは、CD−ROMドライブ350又はFDドライブ352に挿入されるCD−ROM362又はFD364に記憶され、さらにハードディスク354に転送される。又は、プログラムは図示しないネットワークを通じてコンピュータ340に送信されハードディスク354に記憶されてもよい。プログラムは実行の際にRAM360にロードされる。CD−ROM362から、FD364から、又はネットワークを介して、直接にRAM360にプログラムをロードしてもよい。
【0091】
このプログラムは、コンピュータ340にこの実施の形態の心理状態対応型ゲーム装置20として動作を行なわせる複数の命令を含む。この動作を行なわせるのに必要な基本的機能のいくつかはコンピュータ340上で動作するオペレーティングシステム(OS)もしくはサードパーティのプログラム、又はコンピュータ340にインストールされる各種ツールキットのモジュールにより提供される。従って、このプログラムはこの実施の形態のシステム及び方法を実現するのに必要な機能全てを必ずしも含まなくてよい。このプログラムは、命令のうち、所望の結果が得られる様に制御されたやり方で適切な機能又は「ツール」を呼出す事により、上記した心理状態対応型ゲーム装置20としての動作を実行する命令のみを含んでいればよい。コンピュータシステム330の動作は周知であるので、ここでは繰返さない。
【0092】
<第2の実施の形態>
本実施の形態では、ユーザの集中度を判定し、それを元にユーザに心理状態をポジティブにフィードバックする様な装置を採用する。本実施の形態の詳細を説明する前に、まず、集中度判定の原理について詳述する。
【0093】
[集中度の判定方法]
人間の心理状態の中には「集中/弛緩」という心理状態がある。そして、人間は一般的に、集中していると瞬き回数が減少し、集中状態から弛緩状態に移行すると瞬き回数が増加する。この集中状態と弛緩状態とにおける瞬き回数の増減は、人間がゲームをしている場合にも当てはまる。なお、ここでのゲームはユーザが動かすゲームの主人公が様々な冒険をするというロールプレイング型ゲームであるとする。
【0094】
ロールプレイング型ゲームでは、例えば、怪物と戦っている様な場面では、ユーザは集中している事が一般的である。そこで、集中力をさらに高める様な刺激因子を出力すると、さらに集中度が高まり、ゲームの臨場感が高まる。
【0095】
次に、集中していた状態から集中力が途切れた状態になると、人間は急激に疲労感を感じる事がある。そして、弛緩したままさらに疲労感が進むと、眠くなる等の反応が生じる。一方、ゲーム中に集中力が途切れて弛緩した際に、弛緩を促す様な因子を出力すると、弛緩状態が進み、眠くなる。この様に弛緩から眠気への移行を人為的に補助する事によりゲームの臨場感を高める事ができる。
【0096】
これらの事から、瞬き回数から心理状態を判定する事は、ゲームの臨場感を高める事に役立つ。そこで、集中度の判定をするために瞬き回数と集中度との関係を予め集積し、統計的に処理した標準データが用意されている事が望ましい。具体的には例えば、瞬き数があるしきい値未満であると集中していて、しきい値以上であると集中していないといったデータである。
【0097】
図6に、平常状態から集中状態になり、その後集中状態から解放されて弛緩状態になった場合の心理状態と瞬き回数の変遷との関係の一例を示す。
【0098】
図6を参照して、例えば、瞬きの発生頻度が1分間につき45回くらいであれば、平常状態であると言える。その後瞬きの発生頻度が1分間につき10回くらいになれば、集中していると言える。さらに、瞬きの発生頻度が1分間につき60回くらいになれば、集中状態から開放、つまり弛緩状態になったと言う事ができる。この様に、この例からは、瞬き回数が約60回/分以上では弛緩状態に、約10回/分以下では集中状態に入るという事がわかる。それゆえ、この例では、瞬き回数60回/分付近が集中状態に切替わるしきい値となり、10回/分付近が弛緩状態に切替わるしきい値となる。
【0099】
ただし、一時的に瞬き回数が増加したとしても、それが即、集中状態から開放されて弛緩した事を示すとは限らない。単に目が乾燥しただけかもしれないからである。また、同様に、一時的に瞬き回数が減少したとしても、そのために即、集中状態に入ったと判断できるとは限らない。そこで、この例では、しきい値の設定にあたっては、集中状態から開放されて弛緩状態になるためには60回/分よりも多い瞬き回数をしきい値とし、弛緩状態から再び集中状態になる場合には10回/分よりも少ない瞬き回数をしきい値とする必要がある。
【0100】
[構成]
図7に、本発明の第2の実施の形態に係る心理状態対応型ゲーム装置108の機能ブロック図を示す。なお、図には示さないが、このゲーム装置は、画面表示のためのゴーグルを備えているものとする。ユーザはゲームを始める前にゴーグルを身につける事とする。また、刺激因子として芳香剤を放出するための装置及び光を画面に表示するために表示装置と接続する端子等を備えている事とする。
【0101】
図7を参照して、この心理状態対応型ゲーム装置108は、ユーザの生体情報である瞬き回数を検出するための生体情報検出部110と、この生体情報検出部110で検出された瞬き回数に基づいてユーザの集中度を判定し、ユーザの集中度をユーザにポジティブにフィードバックする様な香り、画像、及び振動等の出力をするためのポジティブフィードバック部112とを含む。
【0102】
図8に、生体情報検出部110の動作の機能ブロック図を示す。図8を参照して、この生体情報検出部110は、ゴーグルに取付けられた、ユーザの目付近の映像を撮影するためのカメラ120と、カメラ120で撮影された画像を処理してユーザの瞬きの回数を計測するための瞬き回数計測部122と、瞬き回数計測部122から得られた瞬き回数を処理し、ある一定時間内に生じた瞬き回数を求め、送信に適した信号に変換するためのインターフェイス124と、インターフェイス124で処理された瞬き回数をポジティブフィードバック部112へ送信するための送信部126とを含む。
【0103】
ここで、瞬き回数計測の際に必要な目蓋の動きは、CCDあるいはCMOSイメージセンサによる画像のエッジの動きを検出する事により容易に検出できる。
【0104】
図9に、ポジティブフィードバック部112の機能ブロック図を示す。図9を参照して、このポジティブフィードバック部112は、生体情報検出部110に含まれる送信部126から送信された生体情報及び環境情報を受信するための受信部130を含む。ここでの送受信には、スペクトラム拡散及びIR等の方式による通信が適している。
【0105】
ポジティブフィードバック部112はさらに、生体情報である瞬き回数と集中度との関係を予め集積し統計処理して得られた集中又は弛緩のいずれの状態にユーザがあるのかを判定するためのしきい値を標準データとして格納するための標準瞬き回数データ格納部134を含む。
【0106】
ポジティブフィードバック部112はさらに、標準瞬き回数データ格納部134に格納された標準データを参照し、受信部130から受取った生体情報から現在のユーザの集中度を判定するための瞬き回数変動状態判定部132と、瞬き回数変動状態判定部132で判定されたユーザの集中度の判定結果を受取り、ポジティブフィードバックをするためのユーザの心理状態に関する制御信号を与えるための制御部136と、制御部136から所定の制御信号を受けて動作する第1のプログラム138と、制御部136から所定の制御信号を受けて動作する第2のプログラム140と、第1のプログラム138又は第2のプログラム140を使用して集中度を高める様な因子又は弛緩度を高める様な因子を出力するための神経刺激因子出力部142とを含む。
【0107】
ここで、第1のプログラム138は、後の神経刺激因子出力部142に集中度を高める様な因子を出力させるためのプログラムである。一方、第2のプログラム140は、弛緩度を高める様な因子を出力させるためのプログラムである。
【0108】
<動作>
図7〜図9を参照して、本実施の形態に係るゲーム装置の動作の詳細について説明する。まず、ユーザはゲームを始める前にカメラ120を搭載したゲーム画面表示のためのゴーグルを装着する。
【0109】
ゲームが始まると、ユーザの目の周囲がカメラ120によって撮影され、瞬き回数計測部122でその画像が処理され、瞬き回数が計測される。
【0110】
インターフェイス124が瞬き回数計測部122で計測された瞬き回数を処理して一定時間あたりの瞬き回数データを算出する。インターフェイス124で処理された瞬き回数に関する情報を送信部126がポジティブフィードバック部112に送信する。
【0111】
受信部130が、送信部126から送信された瞬き回数に関する情報を受信する。受信された生体情報は、瞬き回数変動状態判定部132に与えられる。
【0112】
瞬き回数変動状態判定部132での処理にあたっては、予め集積され統計処理されて標準瞬き回数データ格納部134に格納された標準データが使用される。瞬き回数変動状態判定部132は、標準瞬きデータと、実際にユーザから得られた瞬き回数とを比較参照して、現在のユーザの精神の集中度を判定する。
【0113】
瞬き回数変動状態判定部132でのユーザの集中度の判定結果が制御部136に送られる。制御部136は、この結果を受けて、ユーザの現状態を増幅させる様な制御をするために、第1のプログラム138又は第2のプログラム140を動作させるための信号を与える。これら二つのプログラムは、神経刺激因子出力部142での処理で使用される。ここで、第1のプログラム138は、後の神経刺激因子出力部142にユーザのさらなる精神の集中を促すための因子を出力させるためのプログラムである。一方、第2のプログラム140は、ユーザのさらなる精神の弛緩を促す様な因子を出力させるためのプログラムである。
【0114】
いずれかのプログラムが動作する事により、神経刺激因子出力部142が何らかの神経刺激因子の出力処理を行なう。ここで、例えば、第1のプログラム138が動作したとすれば、ユーザは集中状態にあるので、その状態をさらに増幅させるような神経刺激因子の出力がされる。反対に第2のプログラム140が動作したとすれば、ユーザは弛緩状態にあるので、その状態をさらに増幅させる様な神経刺激因子の出力がされる。
【0115】
具体的な神経刺激因子としては以下の様なものが考えられる。一例として、画面に所定の色の光を点滅させる方法が考えられる。一般に、赤色は精神の集中を促し、青色は精神の弛緩を促す。従って、集中している場合には画面の一部に赤色の光を点滅させ、弛緩している場合には画面の一部に青色の光を点滅させるという事が考えられる。
【0116】
また、別の例としては、神経刺激因子として芳香剤を使用する事も考えられる。一般に、グレープフルーツ等の香りは精神の集中を促す作用がある。反対に、ラベンダー等の香りは精神の弛緩を促す作用がある。従って、集中している場合には芳香剤を放出するための装置からグレープフルーツの香りを放出し、弛緩している場合にはラベンダーの香りを放出するという事が考えられる。
【0117】
この他にも、神経刺激因子として、振動、風、音、及び水滴等を使用する事が考えられる。
【0118】
[コンピュータによる実現]
本発明の第2の実施の形態に係るゲーム装置においても、第1の実施の形態と同様に、コンピュータと、当該コンピュータ上で実行されるコンピュータプログラムとにより実現できる。なお、本実施の形態に係るゲーム装置を実現するコンピュータプログラムの制御構造については、第1の実施の形態の説明に基づいて、当業者には容易に実現できると思われる。従って、ここではそれについての詳細な説明は繰返さない。
【0119】
なお、図1及び図7に示したゲーム装置は、本発明の実施の形態の一部にすぎない。心理状態増幅装置は、ゲーム装置のみならず、疑似体験型映画及び遊園地のアトラクション等、臨場感を高める事ができるとより好ましいと考えられる様々な装置のために搭載する事ができる。
【0120】
今回開示された実施の形態は単に例示であって、本発明が上記した実施の形態のみに制限されるわけではない。本発明の範囲は、発明の詳細な説明の記載を参酌した上で、特許請求の範囲の各請求項によって示され、そこに記載された文言と均等の意味及び範囲内でのすべての変更を含む。
【図面の簡単な説明】
【0121】
【図1】本発明における第1の実施の形態に係る心理状態対応型ゲーム装置20の機能ブロック図である。
【図2】生体−環境情報検出部30の機能ブロック図である。
【図3】ポジティブフィードバック部32の機能ブロック図である。
【図4】判定部62の機能ブロック図である。
【図5】本発明の一実施の形態に係る心理状態対応型ゲーム装置20を実現するコンピュータのブロック図である。
【図6】心理状態と瞬き回数の変遷との関係を示す図である。
【図7】本発明における第2の実施の形態に係る心理状態対応型ゲーム装置108についての機能ブロック図である。
【図8】生体情報検出部110の機能ブロック図である
【図9】ポジティブフィードバック部112の機能ブロック図である。
【符号の説明】
【0122】
30 生体−環境情報検出部、32 ポジティブフィードバック部、40 温度・湿度センサ、42 発汗量センサ、44 カメラ、46 瞳孔直径計測部、48 心拍数センサ、62 判定部、64 標準データ格納部、66 個人データ記憶部、68 個人データ入力部、72 制御部、78 神経刺激因子出力部、100 自律神経作用状態判定部、110 生体情報検出部、112 ポジティブフィードバック部、120 カメラ、122 瞬き回数計測部、132 瞬き回数変動状態判定部、134 標準瞬き回数データ格納部、136 制御部、142 神経刺激因子出力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザに関係する情報等からユーザの心理状態を判定し、その結果に基づいて前記ユーザの心理状態を増幅するための心理状態増幅装置であって、
前記ユーザに関係する情報を検出するための情報検出手段と、
前記情報検出手段で検出された情報に基づいてユーザの心理状態を判定する心理状態判定手段と、
前記心理状態判定手段によって得られた前記ユーザの心理状態を参照して、前記ユーザの心理状態を増幅する因子を出力するための神経刺激因子出力手段とを含む、心理状態増幅装置。
【請求項2】
前記情報検出手段は、ユーザの生体情報を検出するための生体情報検出手段を含む、請求項1に記載の心理状態増幅装置。
【請求項3】
前記情報検出手段は、さらに、ユーザの周囲の環境情報を検出するための環境情報検出手段を含む、請求項2に記載の心理状態増幅装置。
【請求項4】
前記心理状態判定手段は、前記生体情報及び前記環境情報を使用して、ユーザの自律神経系の作用状態を判定するための自律神経作用状態判定手段を含む、請求項3に記載の心理状態増幅装置。
【請求項5】
前記環境情報検出手段は、前記ユーザの周囲の環境情報として気温を計測する気温計測手段を含む、請求項3に記載の心理状態増幅装置。
【請求項6】
前記環境情報検出手段は、前記ユーザの周囲の環境情報として湿度を計測する湿度計測手段を含む、請求項3に記載の心理状態増幅装置。
【請求項7】
前記生体情報検出手段は、前記ユーザの生体情報として発汗量を計測するための発汗量計測手段を含む、請求項2に記載の心理状態増幅装置。
【請求項8】
前記情報検出手段は、前記ユーザの生体情報として瞳孔直径を計測するための瞳孔直径計測手段を含む、請求項2に記載の心理状態増幅装置。
【請求項9】
前記情報検出手段は、前記ユーザの生体情報として心拍数を計測するための心拍数計測手段を含む、請求項2に記載の心理状態増幅装置。
【請求項10】
前記心理状態判定手段は、さらに、前記ユーザの生体情報を使用してユーザの集中度を判定するための集中度判定手段を含む、請求項2に記載の心理状態増幅装置。
【請求項11】
前記生体情報検出手段は、前記ユーザの生体情報として、瞬き回数を計測するための瞬き回数計測手段を含む、請求項10に記載の心理状態増幅装置。
【請求項12】
前記心理状態判定手段は、前記ユーザの心理状態を判定するための基準となる標準データを格納するための標準データ格納手段と、
前記ユーザに関係する情報と前記標準データとを比較して、前記ユーザの心理状態を判定するための手段とを含む、請求項4〜請求項9及び請求項11のいずれかに記載の心理状態増幅装置。
【請求項13】
前記心理状態判定手段は、前記ユーザの心理状態を判定するための基準となる標準データに影響を与えると考えられる、ユーザに固有の個人データによって前記標準データ格納手段によって格納された標準データを修正するための修正手段をさらに含む、請求項12に記載の心理状態増幅装置。
【請求項14】
前記心理状態判定手段は、前記個人データを入力するための個人データ入力手段をさらに含む、請求項13に記載の心理状態増幅装置。
【請求項15】
前記心理状態判定手段は、前記標準データの修正に使用する個人データを記憶するための個人データ記憶手段をさらに含む、請求項14に記載の心理状態増幅装置。
【請求項16】
前記神経刺激因子出力手段は、
神経刺激因子として、互いに両立しない複数の心理状態のうち、第1の心理状態を増幅する様な神経刺激因子を出力するための第1の神経刺激因子出力手段と、
前記互いに両立しない複数の心理状態のうち、第2の心理状態を増幅する様な神経刺激因子を出力するための第2の神経刺激因子出力手段と、
前記心理状態判定手段での判定結果に基づいて、前記第1の神経刺激因子出力手段及び前記第2の神経刺激因子出力手段のいずれかが動作する様に制御するための制御手段を含む、請求項12〜請求項15のいずれかに記載の心理状態増幅装置。
【請求項17】
コンピュータにより実行されると、当該コンピュータを請求項1〜請求項16のいずれかに記載の心理状態増幅装置として動作させる、コンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−130212(P2007−130212A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−325846(P2005−325846)
【出願日】平成17年11月10日(2005.11.10)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】