説明

心筋細胞への分化の改善

本発明は、hES細胞の心筋細胞への分化の効率を増強する方法であって、無血清条件下で細胞をインキュベーションするステップを含む方法を提供する。本発明は、典型的には、細胞間接触により心筋細胞分化を誘導する細胞を提供するステップを含む。心筋細胞への分化は2つの経路によって、すなわち、自発的分化によっておよび誘導型分化によって生じうる。理論により結びつけられるわけではないが、誘導型分化の場合では、例えば、END−2細胞は、凝集して局所的に高い細胞密度を生じるために、および新生中胚葉の分化を誘導する際に必要とされると本発明者らは仮定している。この第2のステップは任意のヒト胚性幹細胞系統において増強されうると思われ、それがhES以外の系統において奏功することが予測される。自発的分化を受ける細胞系統では、内胚葉において胚様体の局所的な誘導が生ずることが仮定される。典型的には、誘導型分化のためには、本発明の方法は、分化を誘導する条件下においてhES細胞を、少なくとも1つの心筋細胞分化誘導因子を分泌する細胞またはそれらの細胞外培地と共に培養するステップを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明が関する技術分野は、幹細胞からの心筋細胞分化の誘導である。
【背景技術】
【0002】
心筋細胞は最終分化であると考えられている。少数の割合の細胞は増殖能力を有する場合もあるが、損傷または死滅した心筋細胞と置換するには不十分である。心筋細胞の死滅は、例えば、冠状血管が血栓によって閉塞され、周囲の心筋細胞に他の冠状血管から必要なエネルギー源を供給することができない場合に生ずる。機能的な心筋細胞の損失により慢性心不全を生ずることがある。「正常な」心臓機能を修復するために考えられる手段は、損傷または死滅した心筋を機能のある新たな心筋細胞と置換することである。ヒト胚性肝(hES)細胞は心筋細胞置換の可能性のある細胞源である。hESの心筋細胞への分化は自発的または誘導によって実施することができる(1〜6)。hES細胞(hES2)からの心筋細胞分化は、マウス内胚葉様細胞系統である、END−2との共培養から12日以内に生ずる。心筋細胞表現型および電気生理学に基づいて、hES由来心筋細胞は大半がヒト胎児心室心筋細胞に類似している(1,2)。しかし、標準的な共培養実験での心筋細胞への分化効率は低い。
【発明の開示】
【0003】
心筋細胞への分化効率を改善する試みにおいて、本発明者らは、心臓発生性因子を試験するための規定されている無血清条件を開発した。無血清増殖自体が心筋分化効率を改善し、拍動領域は、標準的な血清含有条件より早期に、かつ高い効率で検出されることを本発明者らは実証している。
【0004】
本発明者らは、ウシ胎仔血清(FCS)がhES細胞からの心筋細胞分化に与える影響を記載している。FCSが存在しない場合に拍動領域数の劇的な増加が観察された。この増加は、試験した全てのhES細胞系統(hES2、hES3およびhES4)において観察された。心筋細胞への分化の改善のためのこれらの培養条件は、これらの試験されたものと同じ起源の全てのHES系統に少なくとも適用可能であることが期待され、心筋細胞への分化の改善のためのこれらの培養条件が一般に全てのhES細胞系統およびhES細胞に適用可能であることが示唆される。さらに、これらの分化条件はウシ胎児血清が存在しない、すなわち動物病原体が存在しない状況において確立されるということは、これらのhES由来の心筋細胞は、心疾患患者における心筋細胞移植に好適であるという可能性が高まる。
【0005】
本発明は、hES細胞の心筋細胞への分化効率を増強する方法であって、無血清条件下で細胞をインキュベーションするステップを含む方法を提供する。本発明は、典型的には、細胞間接触によって心筋細胞分化を誘導する細胞を提供するステップを含む。心筋細胞への分化は2つの経路によって、すなわち、自発的分化によっておよび誘導型分化によって生じうる。理論により結びつけられるわけではないが、誘導型分化の場合では、例えば、END−2細胞は、凝集して局所的に高い細胞密度を生じるために、および新生中胚葉の分化を誘導する際に必要とされると本発明者らは仮定している。この第2のステップは任意のヒト胚性幹細胞系統において増強されうると思われ、hES以外の系統においても奏功することが予測される。自発的分化をする細胞系統では、内胚葉において胚様体の局所的な誘導が生ずることが仮定される。典型的には、誘導型分化のためには、本発明の方法は、分化を誘導する条件下において、hES細胞を、少なくとも1つの心筋細胞分化誘導因子を分泌する細胞またはそれらの細胞外培地と共に培養するステップを含む。
【0006】
本発明はまた、心臓発生因子を試験するための無血清条件を提供する。従って、本発明は、心臓発生のための因子を試験する方法であって、因子の存在下および非存在下において無血清条件下におけるhES細胞の心筋細胞への分化効率を試験するステップを含む方法を提供する。典型的には、本発明の方法は、分化を誘導する条件下において、hES細胞を、少なくとも1つの心筋細胞分化誘導因子を分泌する細胞またはそれらの細胞外培地と共に培養するステップも含む。
【0007】
本発明はまた、hES細胞の心筋細胞への分化を誘導する方法における無血清培地の使用も提供する。
【0008】
一部のhES細胞は自発的に心臓発生をし、胚葉体内で自発的に体細胞系列細胞に分化し、これはmES細胞によって形成されるものに類似している(10)。
【0009】
マウス臓側内胚葉(VE)様細胞と共培養したヒト胚性幹細胞は拍動する筋細胞を形成し、心臓特異的筋節タンパク質およびイオンチャネルを発現する。電気生理学的応答の直接比較は、大半は培養中のヒト胎児心室細胞に類似しているが、少数は心房表現型を有することを実証している。この共培養方法は、局所的に細胞が高密度であっても自発的に心臓発生をしないhES細胞において心筋細胞への分化を可能にする。培養中の胎児およびhES由来心筋細胞は共に、ギャップ結合によって機能的に連結されている。
【0010】
多能性hES細胞系統とEND−2細胞との共培養は、異なる系統由来の2つの別個細胞種への広範な分化を誘導する。一方は上皮性で、α−フェトプロテインで陽性に染色される大きな嚢胞構造を形成し、胚体外臓側内胚葉と思われる;他方は局所的な高密度領域に集まって、自発的に拍動する。これらの拍動細胞は心筋細胞である。
【0011】
本発明は、ヒト胚性幹細胞(hES)の心筋細胞分化を増強する方法であって、無血清培地において、分化を誘導する条件下において少なくとも1つの心筋細胞分化誘導因子を分泌する細胞またはそれらの細胞外培地と共に培養するステップを含む方法を提供する。典型的には、細胞は、マウスVE様細胞によって産生されるものと少なくとも実質的に同様のタンパク質分泌プロファイルを産生する。
【0012】
本発明の方法に使用するのに好適な幹細胞は胚性幹細胞および成人幹細胞の両方を含み、患者自身の組織に由来するものであってもよい。これは、幹細胞に由来する分化した組織移植片と患者の適合性を増加すると思われる。これに関しては、hES細胞はその人自身の組織に由来する成人幹細胞を含んでもよいことに注目すべきである。ヒト幹細胞は、胚細胞または胚細胞の細胞外培地に曝露前、曝露中または曝露後において、分化状態を制御することができる遺伝子の導入によって使用前に遺伝的に改変されてもよい。それらは、Oct−4などの幹細胞特異的プロモーターの制御下において選択マーカーを発現するベクターの導入によって遺伝的に改変されてもよい。幹細胞は、マーカーが任意の培養段階まで存続するように、任意の段階においてマーカーにより遺伝的に改変されてもよい。マーカーは、任意の培養段階において分化または未分化幹細胞集団を精製するために使用することができる。
【0013】
分化因子を提供する細胞は、胚から単離される臓側内胚葉組織または臓側内胚葉様組織から誘導される胚細胞であってもよい。好ましくは、臓側内胚葉は、マウス胚(E7.5)などの原腸形成後初期(early postgastrulation)胚から単離してもよい。臓側内胚葉または臓側内胚葉様組織は(22)に記載されているように単離することができる。特徴として、臓側内胚葉はアルファフェトプロテインおよびサイトケラチン(ENDO−A)の発現によって同定することができる。胚細胞は胚性癌細胞であってもよく、好ましくは、臓側内胚葉特性を有するものであってもよい。内胚葉因子を発現する、または内胚葉因子を発現するように遺伝子操作されている細胞も含まれる。
【0014】
一実施態様において、分化因子を産生する細胞はマウスVE様細胞またはそれ由来の細胞である。この実施態様の好ましい形態において、細胞はEND−2細胞である。
【0015】
胚性幹細胞は培養中の細胞系統または細胞に由来してもよい。胚細胞は、胚細胞系統、好ましくは、END−2細胞系統などの臓側内胚葉の特徴を有する細胞系統に由来してもよい(23)。END−2細胞系統は、浮遊培養中の凝集物(胚様体)としてレチノイン酸で処理したP19 EC細胞の培養物からクローニングすることによって樹立し、次いで再度接着培養した(23)。END−2細胞系統は臓側内胚葉(VE)の特徴を有し、アルファ−フェトプロテイン(AFP)および細胞骨格タンパク質ENDO−Aを発現する。
【0016】
別の実施態様において、細胞は肝実質細胞である。この実施態様の好ましい形態において、肝実質細胞はHepG2である。
【0017】
ヒト胚性幹細胞は、胚または胚性幹細胞培養物に直接由来するものでもよい[例えば、(12)参照]。幹細胞は、胚細胞系統または胚組織に由来してもよい。胚性幹細胞は、未分化状態で培養され、維持されている細胞であってもよい。
【0018】
hES細胞は、自発的に心臓発生しないhES細胞であってもよく、または別の方法として、それは、自発的に分化するhES細胞であってもよい。
【0019】
本発明はまた、本発明の方法によって作製される心筋細胞を提供する。
【0020】
分化心筋細胞は、心臓特異的筋節タンパク質を発現し、変時応答およびイオンチャネル発現および心筋細胞に典型的な機能を示す。
【0021】
好ましくは、分化心筋細胞は培養中のヒト胎児心室細胞に類似している。
【0022】
別の好ましい形態において、分化心筋細胞は培養中のヒト胎児心房細胞に類似している。
【0023】
別の好ましい形態において、分化心筋細胞は培養中のヒト胎児ペースメーカー細胞に類似している。
【0024】
これらの胎児細胞との類似性は、これらの胎児細胞と同じレベルの成熟度を有するところに必ずしも及ぶわけではなく、さらに成熟した表現型の分化心筋細胞も含まれることが理解される。
【0025】
本発明は、分化心筋細胞が連結している本発明の複数の分化心筋細胞を提供する。連結は機能的であってもまたは物理的であってもよい。
【0026】
一実施態様において、連結はギャップ結合による。
【0027】
別の実施態様において、連結は接着結合による。
【0028】
さらに別の実施態様において、連結は電気的である。
【0029】
本発明はまた、本発明の分化心筋細胞から拍動領域を分離することによって作製される分化心筋細胞コロニーを提供する。
【0030】
典型的には、分離した細胞を再培養する。好ましくは、それらは2次元形態を取る。
【0031】
本発明はまた、本発明の分化心筋細胞を含む、培養中のヒト心筋細胞を研究するためのモデルも提供する。このモデルは、心筋細胞移植治療の開発に有用である。
【0032】
さらに、本発明は、本発明の分化心筋細胞を含む心血管薬を試験するためのインビトロシステムを提供する。
【0033】
本発明はまた、突然変異hES細胞から作製される本発明の突然変異型分化心筋細胞を提供する。細胞に突然変異を導入するための方法は当技術分野において周知であることが認識される。含まれる突然変異は、遺伝子またはタンパク質の欠損を生じる突然変異だけでなく、遺伝子またはタンパク質の過剰発現を生じるものである。
【0034】
本発明は、本発明の突然変異型分化心筋細胞の使用を含む、心筋細胞分化および機能を研究する方法(電気生理学)を提供する。
【0035】
本発明は、本発明の突然変異型分化心筋細胞を含む心血管薬を試験するためのインビトロシステムを提供する。
【0036】
本発明は、試験細胞として本発明の突然変異型分化心筋細胞を使用するステップを含む、心血管薬を試験するためのインビトロ方法を提供する。
【0037】
イオンチャネルは、心筋細胞機能において重要な役割を果たす。どのチャネルが発現されているかがわかれば、本発明者らは、特定のイオンチャネルを欠損するhES細胞を作製し、(電気生理学を使用して)心臓分化および機能に対する影響を研究することができる。さらに、心臓のイオンチャネルに特異的な薬剤は心筋機能を対象に(活動電位、拍動頻度および形態的外観などの指標を観察することで)試験されうる。
【0038】
拍動するhES由来心筋細胞領域はANFを発現する。心臓特異的L型カルシウムチャネルのαサブユニット(α1c)および一過性外向きカリウムチャネル(Kv4.3)の発現も検出され、Kv4.3の発現は拍動の開始より数日先行して見られる。遅延型整流性カリウムチャネルKvLQT1のRNAは未分化細胞に見られるが、転写物は早期分化段階において消失し、後期段階に再度出現する。
【0039】
リアノジンまたは細胞表面α1cイオンチャネルに対する抗体による生体蛍光染色により、本発明の分化心筋細胞を混合培養物中で同定することができる。これは、遺伝子操作を行うことなく、またはそれらの生存性を損なわないで、移植のための心筋細胞を単離する手段を提供することができる。
【0040】
本発明はまた、移植、細胞治療または遺伝子治療に使用することができる、本発明の方法を使用して作製される分化細胞を提供する。好ましくは、本発明は、心疾患または状態に罹患している被験者の心筋機能を修復する方法などにおいて治療目的に使用することができる、本発明の方法を使用して作製される分化細胞を提供する。
【0041】
本発明の別の局面は、心疾患または状態を治療または予防する方法である。心疾患は、典型的には、心機能低下に関連し、心筋梗塞、心肥大および心不整脈の状態を含むが、これらに限定されない。本発明のこの態様において、本発明は、本発明の方法を使用して治療するとき、本発明の単離された分化心筋細胞および/または心筋細胞に分化することができる細胞を被験者の心臓組織に導入するステップを含む。単離された心筋細胞は、好ましくは、被験者の損傷した心臓組織に移植される。さらに好ましくは、本発明の方法により、被験者の心機能が修復される。
【0042】
本発明のさらに別の態様において、心臓組織を修復する方法であって、本発明の方法を使用して治療するとき、本発明の単離された心筋細胞および/または心筋細胞に分化することができる細胞を被験者の損傷した心臓組織に導入するステップを含む方法が提供される。
【0043】
被験者は心疾患または状態に罹患していることが好ましい。本発明の心臓組織を修復する方法において、単離された心筋細胞は、好ましくは、被験者の損傷した心臓組織に移植される。さらに好ましくは、本発明の方法により、被験者の心機能が修復される。
【0044】
本発明は、好ましくは、心筋細胞に分化している幹細胞が心機能を修復する能力を試験するための心筋モデルも提供する。
【0045】
本発明は、さらに、本発明の分化細胞および担体を含む細胞組成物を提供する。
【0046】
本明細書において使用する「分化を誘導する」という用語は、幹細胞に対する直接的または計画的な影響の結果として、幹細胞を特定の分化細胞種に発生させることを意味する。影響因子には、イオン流入、pH変化などの細胞パラメーター、および/または分化を調節および誘発する増殖因子およびサイトカインなどに代表されるがそれに限定されない分泌タンパク質などの細胞外因子を挙げることができる。それは、細胞をコンフルエントまで培養することを含んでもよく、細胞密度によって影響されてもよい。
【0047】
好ましくは、hES細胞および分化因子を提供する任意の細胞をインビトロにおいて共培養する。これは、典型的には、培養中の胚細胞の増殖によって作製される胚細胞単層に幹細胞を導入するステップを含む。好ましくは、胚細胞単層は、十分なコンフルエントまで増殖され、幹細胞は、特定の細胞種への幹細胞の分化を誘導するのに十分な期間にわたって胚細胞の細胞外培地の存在下において増殖させることができる。または、幹細胞は、胚細胞の細胞外培地を含有する培地においてであるが、胚細胞が存在しない条件において培養されてもよい。胚細胞および幹細胞は、フィルターまたは寒天などの無細胞基質によって互いから分離することができる。
【0048】
一般に、幹細胞を分化するためには、幹細胞を単層の胚細胞上で培養して、幹細胞の分化を誘導するための培養液中で増殖させることができる。
【0049】
分化胚性幹細胞を得るための条件は、典型的には、幹細胞再生に非許容的であるが、幹細胞を死滅させないまたは胚体外系統に排他的に分化することを誘導しないものである。幹細胞増殖の最適条件から徐々に離脱することが、特定の細胞種への幹細胞の分化に望ましい。好適な培養条件は、分化速度および/または効率を増加すると思われるDMSO、レチノイン酸、FGFまたはBMPを共培養に添加することを含んでもよい。
【0050】
胚細胞層の細胞密度は、典型的には、その安定性および性能に影響を与える。胚細胞は、典型的には、コンフルエントである。典型的には、胚細胞はコンフルエントまで増殖され、次いでマイトマイシンCなどの、細胞のさらなる分化を防止する薬剤に曝露される。胚単層は、典型的には、幹細胞添加の2日前に樹立される。幹細胞は、典型的には、分散され、次いで単層の胚細胞に導入される。典型的には、幹細胞および胚細胞は、幹細胞の相当部分が分化するまで、2〜3週間共培養される。
【0051】
本明細書において使用する「細胞外培地」という用語は、胚細胞によって産生される分泌タンパク質などの細胞外因子が条件培地に存在するように、本明細書に記載する胚細胞を培地において所定の期間にわたって増殖することによって作製される条件培地を意味する。培地は、細胞の増殖を促進する成分を含むことができ、例えば(血清は培地への通常の成分であるが)、無血清状態で提供されたダルベッコの最小必須培地(DMEM)またはHam’s F12などの基礎培地であるである。END−2細胞は、通常、7.5%FCS、ペニシリン、ストレプトマイシンおよび1%非必須アミノ酸を含むDMEM1:1混合培地中で培養される。ヒト幹細胞との共培養では、培地を、20%以下のFCSを含有するヒト胚性幹細胞培地と交換する。END−2細胞からの条件培地の場合には、条件培地は、標準的な7.5%血清と異なり、無血清形態で調製される。
【0052】
本発明の心筋細胞は、好ましくは、拍動している。心筋細胞は固定して、α−アクチニン抗体で染色して、筋表現型を確認することができる。α−トロポニン、α−トロポミオシンおよびα−MHC抗体も特徴的な筋染色を提供する。好ましくは、心筋細胞は、当業者に公知の方法により固定される。さらに好ましくは、心筋細胞はパラホルムアルデヒド、好ましくは約2%〜約4%パラホルムアルデヒドで固定される。イオンチャネルの特徴および筋細胞の活動電位はパッチクランプ、電気生理学およびRT−PCRによって決定することができる。
【0053】
心筋細胞へと誘導される幹細胞は、例えば、イオンチャネルに突然変異を有するように遺伝的に改変することができる(これはヒトにおいて突然死を生ずる)。従って、これらの改変された幹細胞から誘導される心筋細胞は異常であり、イオンチャネル欠損に関連する心疾患の培養モデルを生ずる。これは基礎研究および薬剤の試験に有用であると思われる。同様に、その他の遺伝性の心疾患の培養モデルを作製することができると思われる。本発明の心筋細胞はまた、心機能の移植および修復にも使用することができる。
【0054】
例えば、虚血性心疾患は、西欧諸国における罹病および死亡の主要原因である。酸素欠乏によって生じる心虚血およびその後の酸素再灌流は不可逆的な細胞損傷を開始し、最終的に広範な細胞死および機能損失を生じる。心筋細胞移植により損傷した心臓組織を再生する方法は梗塞後心不全を予防または制限することができる。本明細書において上記するように、幹細胞の心筋細胞への分化を増強する方法はこのような心疾患を治療するために有用であると思われる。本発明の心筋細胞はまた、心臓機能を修復する能力を試験するための心筋梗塞モデルにも使用することができる。
【0055】
本発明は、好ましくは、本発明の方法を使用して心筋細胞に分化させた幹細胞が心臓機能を修復する能力を試験するための心筋モデルを提供する。インビボにおいて心筋細胞移植の有効性を試験するためには、測定可能な心臓機能のパラメーターを有する再現可能な動物モデルを入手することが重要である。移植の影響を十分に判定することができるように、使用するパラメーターは対照動物と被験動物を明白に識別するべきである[例えば、(24)参照]。PV相関は心臓のポンプ能力の尺度であり、移植後の心機能の変化の読み出しとして使用することができる。
【0056】
免疫不全マウスなどであるが、これに限定されない宿主動物は、種々の起源由来の心筋細胞の「普遍的なアクセプター」として使用されることができる。心筋細胞は本発明の方法によって作製される。
【0057】
本発明の心筋モデルは、好ましくは、好適な宿主動物への心筋細胞または好適な前駆体の移植後の心臓修復の程度を評価するように設計される。さらに好ましくは、宿主動物は、分化心筋細胞の普遍的なアクセプターとして使用される、梗塞後の心筋再生モデルとして作製された免疫不全動物である。この動物は、マウス、ヒツジ、ウシ、イヌ、ブタおよび任意の非ヒト霊長類を含むが、それに限定されるわけではない任意の種であってもよい。これらの動物において心臓修復を測定するために使用されるパラメーターには、心臓組織または種々の心臓機能の電気生理学的特性を挙げることができるが、それに限定されるわけではない。例えば、収縮機能は、心臓の容積および圧力の変化によって評価することができる。好ましくは、心室収縮機能を評価する。心臓機能および心臓組織の特徴を評価する方法は、当業者に公知の技法に関係してもよい。
【0058】
本発明は、さらに、本発明の分化細胞および担体を含む細胞組成物を提供する。担体は、細胞を維持する任意の生理的に許容される担体であってもよい。それはPBSまたは当業者に公知の他の最小必須培地であってもよい。本発明の細胞組成物は、移植などの生物学的分析または医学的目的に使用することができる。
【0059】
本発明の細胞組成物は、心疾患または組織損傷が生じている疾患または状態を修復または治療する方法に使用することができる。治療には、細胞または細胞組成物(部分的または完全に分化している)の患者への投与を挙げることができるが、それに限定されるわけではない。これらの細胞または細胞組成物は、動物モデルの使用を通じて、上記に開示されているような機能の復旧を経て状態の改善をもたらすであろう。
【0060】
本明細書の説明および特許請求の範囲全体において、「含む」という言葉ならびに「含む(comprising)」および「含む(comprises)」などのこの言葉の変形は、他の添加物、要素、成分またはステップを排除することを意図しない。
【0061】
書類、行為、材料、装置、物品等の考察は、本発明の状況を提供する目的のためだけに本明細書に含まれる。これらの事柄のいずれかもしくは全ては、従来技術の基礎の一部を形成したり、または本発明に関連する分野において本願の各特許請求の範囲の優先日以前にオーストラリアに存在した共通の一般知識であったとは示唆されたり、示されたりしない。
【0062】
本発明はここで添付の実施例および図面を参照してさらに十分に記載される。しかし、以下の説明は例示にすぎず、いかなる意味においても上記の発明の一般性に対する限定と考えられるべきではないことが理解されるべきである。
【実施例】
【0063】
hES細胞をマウスの臓側内胚葉(VE)様細胞と共培養すると、拍動筋への分化が開始した。筋節マーカータンパク質、変時応答ならびにイオンチャネル発現および機能は心筋細胞に典型的であった。電気生理学は、ほとんどの細胞はヒト胎児心室細胞に類似しており、少数の集団において心房様応答が見られることを実証した。リアルタイム細胞内カルシウム測定、ルシファーイエローの注入およびコネキシン43の発現は、胎児およびhES由来心筋細胞が培養状態においてギャップ結合によって連結されることを実証した。抗体染色およびベラパミルによる電気的応答の阻害は、機能的α1cカルシウムイオンチャネルの存在を実証した。
【0064】
細胞培養
以前に記載されているように(7,11,12)、END−2細胞およびhES2細胞を培養した。共培養を開始するためには、マイトマイシンC(mit.C;10μg/ml)で3時間処理した(7)分裂不活性なEND−2細胞培養物を、hES細胞のフィーダーとしてマウス胚性線維芽細胞(MEF)と交換した。次いで、共培養物を最長6週間増殖させ、5日目以降拍動筋領域の存在を集計した。肝実質細胞に類似している癌細胞系統であるHepG2細胞(13)をDMEMプラス10%ウシ胎仔血清(FCS)中で培養し、週2回継代した。共培養はEND−2細胞について開始した。電気生理学については、コラゲナーゼを使用して拍動中の集合体を分離し、ゼラチンコートされたカバースリップ上で再培養した。
【0065】
免疫組織化学
細胞を3.0%パラホルムアルデヒドで固定し、次いで0.1%トリトンX100で透過性にした。次いで、未分化hESコロニーを抗oct4(Sigma)で4℃において終夜染色し、ABC複合体/HPRキット(DAKO)およびFast 3,3’’−ジアミノベンジジンタブレットセット(Sigma)を使用して可視化した。α−アクチニンに対する免疫蛍光抗体については、トロポミオシンおよびpan−カドヘリン(Sigma)、MLC2aおよび2v(Dr K. Chienからの供与)、α1CおよびCav1.2a(Alomone labs, イスラエル)、コネキシン43(Transduction Labs, USA)ならびにファロイジン−Cy3(Sigma)を、蛍光結合二次抗体(Jackson Laboratories, U.S.A.)と併用使用した。共焦点画像(Leica Systems)は2D投影Z−シリーズにより作製された(63x対物)。
【0066】
初代ヒト成人および胎児心筋細胞
標準的な同意書手順を使用した個人の許可およびUniversity Medical Center, Utrechtの倫理委員会の承認を得た後、心臓手術中または中絶後に初代組織を入手した。以前に報告されているように(2)、成人心筋細胞を単離し、培養した。ランゲンドルフで灌流した胎児心臓から胎児心筋細胞を単離し、ガラスカバースリップ上で培養した。(パッチクランプ)電気生理学のために、低Ca2+を添加したタイロード緩衝液に細胞を回収した(14)。
【0067】
電気生理学
Axopatch 200B増幅器(Axon Instruments Inc., Foster City, CA, U.S.A.)を使用して、33℃において自発的に拍動中の領域の細胞からデータを記録した。細胞接着パッチは全細胞膜電位固定モードで作製された。ピペットオフセット、直列抵抗および一過性キャンセルは補償され、その後の活動電位は、200B増幅器の電流固定モードにスイッチすることによって記録された。出力信号は、AD/DAC LAB PC+収集ボード(National Instruments, Austin, TX, U.S.A.)を装備したPentium(登録商標) IIIを使用して4kHzでデジタル化した。1〜3MΩの抵抗を有するパッチピペットが使用された。バス培地は140mM NaCl、5mM KCL、2mM CaCl2、10mM HEPESであり、NaOHでpH 7.45に調節した。ピペット組成:145mM KCl、5mM NaCl、2mM CaCl2、4mM EGTA、2mM MgCl2、10mM HEPESであり、KOHでpH 7.30に調節。ベラパミルは、示すように、5μMで使用した。
【0068】
カルシウム測定
10μM fura2−AMで37℃において15分細胞を標識した。二波長励起モノクロメーター(SPEX fluorolog SPEX Industries EDISION, N.J. U.S.A.)からの光線は340(8)nmと380(8)nmとを急速に切り換えられ、UV−光ファイバーによって顕微鏡に連結された。最大速度120ms/pairで生細胞から蛍光強度画像を記録し、バックグラウンド蛍光で補正した。較正は、細胞に5μg/mlイオノマイシンおよび4mM EGTA(pH 8)を添加後の最小比(Rmin)および5μg/mlイオノマイシンおよび10mM CaCl2を添加後の最大比(Rmax)を使用した。カルシウム濃度は以下のように算出した:(R−Rmin)/(Rmax−R)*sf2/sb2*d(10)。
【0069】
ダイカップリング
3%w/vルシファーイエローリチウム塩(Molecular Probes,Leiden,NL)の150mM LiClのろ過溶液をQuickfillガラス微小電極(Clark Electromedical Instruments Pangboume,UK)によりマイクロインジェクションした。1Hz方形波(50%デューティサイクル)、5×10-9Aの振幅によって、自発的に拍動中の細胞グループの1つに染料を注入した。注入直後に、注入領域の共焦点レーザー走査顕微鏡像を作製した。
【0070】
血清の影響の試験
以前と同様に(1,12)、END−2細胞ならびにhES2、hES3およびhES4細胞を培養した。共培養を開始するために、マイトマイシンC(mit.C;10μg/ml)で3時間処理したEND−2細胞培養物を、hES細胞のフィーダーとしてマウス胚性線維芽細胞(MEF)と置換した。標準的な共培養において、L−グルタミン、インスリン−トランスフェリン−セレン、非必須アミノ酸、90μM β−メルカプトエタノール、ペニシリン/ストレプトマイシンおよび20%ウシ胎仔血清(FCS)を含有するDMEM培地において細胞を増殖させた。次いで、共培養物を最長3週間増殖させ、5日目以降拍動筋領域の存在を集計した。心筋細胞分化に対する影響を検討するために、本発明者らは標準的な共培養条件を変更した。共培養物のFCSの割合は20%FCSから0%FCSに変更した。
【0071】
心筋細胞分化に対する血清の影響
END−2細胞との共培養におけるhES細胞の心筋細胞分化に対する血清の影響を求めるために、本発明者らは血清の割合を10%、5%、2.5%および0%に低下し、12穴共培養プレートの拍動領域数を標準的な20%FCS共培養条件と比較した。図1に示すように、拍動領域数の有意な増加が、より低い血清の割合の場合に観察され、20%FCSを含有する培養物と比較するとき、血清が全く存在しない場合には12倍以上のアップレギュレーションがみられた。無血清条件化では拍動領域は7日目以降に観察され(5または6日目という早い場合もある)、拍動領域数の直線的な増加は12日目まで観察された。FCSが存在しない場合には、12日目以降に追加の拍動領域が出現したが、比較的低い割合であった(図2)。
【0072】
hES細胞が臨床的に適用可能になる前に、それらの増殖および分化を制御することが重要である。マウス由来の胚性および成人幹細胞は、マウス胚の合図に応答して(実質的に)全ての体細胞組織に分化するようである(15に総説が示されている)。これらの合図およびそれらが活性化するシグナル伝達経路を同定することができると、この知識を培養中およびインビボにおいて幹細胞の分化を制御する際に利用することができる。本発明者らは、胎児心室、心房またはペースメーカー細胞の特徴を有する心筋細胞にヒトES細胞を分化させるシグナルの細胞源として(臓側)内胚葉を同定した。VE(END−2)および肝実質(HepG2)細胞は同様のタンパク質分泌プロファイルを有するので、ES細胞において同様の応答を誘導する能力は驚くことではない。マウスES細胞と異なり、本発明者らの手中では、ヒトES細胞は、集合物として増殖するとき、胚様体を容易に形成せず、過剰増殖において高細胞密度でも心筋細胞への「自発的な」分化を示さない。これは、hES細胞が、心筋細胞を含有する胚様体を形成する他の報告(3,4および9)と異なる。それにもかかわらず、再現可能な誘導シグナル源の同定は今後重要なステップとなる。ツメガエル(Xenopus)およびヒヨコおよび突然変異ゼブラフィッシュにおける組織組換え実験において、影響の原因であると思われる内胚葉から発する心臓発生シグナルのうち、BMP、FGF、およびwntシグナリングのリプレッサーが最も重要であることが示唆されている(Olson17に総説が示されている)。マウス胚の内胚葉はBMP2(18)およびwntシグナリングの阻害因子(19,20)を発現する。しかし、hES細胞にBMP2を直接添加しても心筋細胞分化を生じなかった;一方、それらは胚体外内胚葉を形成するようであった(データは示していない)。従って、本発明者らは、BMPシグナリング経路の活性化は、END−2/hES細胞共培養によって開始される初期の事象である可能性は低いと考える。同様に、本発明者らはFGFの明白な影響を観察しなかった。しかし、これらのシグナルは、心筋筋芽細胞への新生中胚葉の分化の後期に関与すると思われ、本明細書に記載する分化を増強するためのBMP、FGFおよびwntアンタゴニストの使用は可能性のあるものとして注目される。発生中の胚様体への脱メチル化剤5−アザシチジンの後期の添加も、早期の添加より効果的であることが示されている(9)。hES細胞分化の注意深い段階的分析および胚の内因的シグナルを再現または模倣する方法は、特定の系統へのhES分化効率を増加するために最も可能性が高い。また、宿主細胞との機能的な結合を形成する能力を保持している未成熟の前駆細胞の移植は、不整脈を導入する可能性がほとんどないようである。
【0073】
筋節組織化は主に機械的な力によって決定されるが、その力は無傷の心臓と比較して、培養中では比較的小さい。これは、本発明において、拍動の維持にもかかわらず6週間以上にわたり明確な染色に乏しかったことを説明し得る(データは示していない)。同様に、結合タンパク質の染色は、hES由来の心筋細胞は非常に未成熟であることを示したが、細胞内Ca2+濃度のリアルタイム測定は、細胞が電気的に連結していることを明白に示した。
【0074】
Kehatら(3)は、最近、独自に派生し得られたhES心筋細胞における同様の所見を報告した。
【0075】
成人哺乳類心筋では、細胞Ca2+流入は交感神経系によって調節される。L型Ca2+チャネル電流はβ−アドレナリン作動性(β−A)アゴニストによって顕著に増加され、心拍数および心臓の収縮活動の変化に寄与する。
【0076】
受容体密度の変化およびシグナリングカスケードの下流要素とのカップリングは発生が進行するときに生じるので、発生中の哺乳類の心臓では、この酵素カスケードによるCa2+流入の調節は明白には確立されていない。本発明者らのデータは、hES由来心筋細胞および胎児心筋細胞のL型Ca2+チャネルはアドレナリン作動性刺激に応答することを示しており、十分に発達し、下流経路に接続されていることを示している。L型Ca2+チャネルを特異的に遮断するベラパミルは、予想されるように、胎児およびhES由来の心筋細胞の活動電位を阻害した。これは、L型Ca2+チャネルの存在にもかかわらず、早期細胞が無応答性であったマウス胎児筋細胞およびhES由来心筋細胞と対照的である。ここで、cAMP依存的プロテインキナーゼの欠損は制限要因であると思われた(10,16)。それ故、hES由来および早期ヒト胎児心筋細胞は早期マウス心筋細胞の一部の特徴を示すが、それらのカルシウムチャネルの調節は、成獣マウスに類似している。このように、hES細胞は、マウスと大きく異なると思われる早期ヒト発生中のカルシウムチャネル機能の変化を研究するためのすぐれたシステムとなりうる。さらに、カルシウムを適切に取り扱うことにより、細胞をより移植に適したものにする。興味深いことには、胎児心房培養物においてプラトーおよび非プラトー型活動電位を有する細胞が観察された。これらは無傷の胎児心臓の心房全体に分散されていると記載されており(21)、心房線維の分化の指標候補と考えられているが、それらの重要性は明らかではない。非プラトー型はhES由来心筋細胞では観察されなかった。
【0077】
リアノジンまたは細胞表面α1cイオンチャネルに対する抗体による生体蛍光染色により、これらの細胞を混合培養物中で同定することができる。これは、遺伝子操作を行うことなくまたはそれらの生存性を損なわないで、移植のための心筋細胞を単離する手段を提供することができる。
【0078】
文献:
【表1A】

【表1B】

【表1C】

【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】L−グルタミン、インスリン−トランスフェリン−セレン、非必須アミノ酸、90μM β−メルカプトエタノール、ペニシリン/ストレプトマイシンおよび種々の濃度のウシ胎仔血清(FCS)を含有するDMEM培地において、マイトマイシンC処理したEND−2細胞と共培養した。共培養は12穴プレートにおいて実施し、共培養開始から12日後に拍動領域を計数した。異なる条件は各々少なくとも3回の独立した実験からなった。20%FCSを含有する共培養では、12穴プレートの拍動領域の平均数は2であった。共培養中のFCSの量を低下すると、拍動領域数の増加が見られた。血清を含有しない共培養では(0%FCS)、拍動領域の平均数は24であった。
【図2】L−グルタミン、インスリン−トランスフェリン−セレン、非必須アミノ酸、90μM β−メルカプトエタノール、ペニシリン/ストレプトマイシンおよび種々の濃度のウシ胎仔血清(FCS)を含有するDMEM培地において、マイトマイシンC処理したEND−2細胞と共培養した。共培養は12穴プレートにおいて実施し、8日目から18日目まで拍動領域を計数した。全ての培養条件において8日目から12日目まで拍動領域数の直線的な増加が観察された。血清が全く存在しない場合においてのみ(0%FCS)、拍動領域数のわずかな増加が18日目以降に観察された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト胚性幹細胞(hES細胞)の心筋細胞への分化効率を増強する方法であって、無血清条件下で細胞をインキュベーションするステップを含む方法。
【請求項2】
細胞間接触によって心筋細胞分化を誘導する細胞を提供するステップを含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
分化を誘導する条件下で、hES細胞を、少なくとも1つの心筋細胞分化誘導因子を分泌する細胞またはそれらの細胞外培地と共に培養するステップをさらに含む、分化が誘導される請求項1に記載の方法。
【請求項4】
心臓発生のための因子を試験する方法であって、因子の存在下および非存在下において無血清条件下におけるhES細胞の心筋細胞への分化効率を試験するステップを含む方法。
【請求項5】
分化を誘導する条件下において、hES細胞を、少なくとも1つの心筋細胞分化誘導因子を分泌する細胞またはそれらの細胞外培地と共培養するステップも含む請求項4に記載の方法。
【請求項6】
hES細胞の心筋細胞への分化を誘導する方法における無血清培地の使用。
【請求項7】
ヒト胚性幹細胞(hES)の心筋細胞分化を増強する方法であって、分化を誘導する条件下において、hES細胞を、少なくとも1つの心筋細胞分化誘導因子を分泌する細胞またはそれらの細胞外培地と共に培養するステップを含む方法。
【請求項8】
因子を分泌する細胞が、マウスVE様細胞によって産生されるものと少なくとも実質的に同様であるタンパク質分泌プロファイルを産生する請求項7に記載の方法。
【請求項9】
分化因子を産生する細胞がマウスVE様細胞またはマウスVE様細胞由来の細胞である請求項7に記載の方法。
【請求項10】
細胞がEND−2細胞である請求項9に記載の方法。
【請求項11】
細胞が肝実質細胞である請求項7に記載の方法。
【請求項12】
肝実質細胞がHepG2である請求項11に記載の方法。
【請求項13】
請求項1に記載の方法によって作製される心筋細胞。
【請求項14】
分化心筋細胞が培養中のヒト胎児心室細胞に類似している請求項13に記載の心筋細胞。
【請求項15】
分化心筋細胞が培養中のヒト胎児心房細胞に類似している請求項13に記載の心筋細胞。
【請求項16】
分化心筋細胞が培養中のヒト胎児ペースメーカー細胞に類似している請求項13に記載の心筋細胞
【請求項17】
分化心筋細胞が連結されている請求項13に記載の複数の分化心筋細胞。
【請求項18】
連結がギャップ結合を介している請求項17に記載の複数の分化心筋細胞。
【請求項19】
連結が接着結合を介している請求項17に記載の複数の分化心筋細胞。
【請求項20】
連結が電気的である請求項17に記載の複数の分化心筋細胞。
【請求項21】
請求項13に記載の分化心筋細胞から拍動領域を分離することによって作製される分化心筋細胞コロニー。
【請求項22】
請求項13に記載の分化心筋細胞を含む、培養中のヒト心筋細胞を検討するためのモデル。
【請求項23】
請求項13に記載の分化心筋細胞を含む心血管薬を試験するためのインビトロシステム。
【請求項24】
突然変異hES細胞から作製される請求項13に記載の突然変異型分化心筋細胞。
【請求項25】
請求項24に記載の突然変異型分化心筋細胞の使用を含む心筋細胞分化および機能(電気生理学)を検討する方法。
【請求項26】
請求項24に記載の突然変異型分化心筋細胞を含む心血管薬を試験するためのインビトロシステム。
【請求項27】
請求項24に記載の突然変異型分化心筋細胞を試験細胞として使用するステップを含む心血管薬を試験するためのインビトロ方法。
【請求項28】
移植、細胞治療または遺伝子治療のための、請求項1に記載の方法によって作製される請求項13記載の分化心筋細胞の使用。
【請求項29】
請求項1に記載の方法を使用して治療するとき、請求項13に記載の単離された分化心筋細胞および/または心筋細胞に分化することができる細胞を被験者の心臓組織に導入するステップを含む、心疾患または状態を治療または予防する方法。
【請求項30】
心臓組織を修復する方法であって、請求項1に記載の方法を使用して治療するとき、請求項13に記載の単離された分化心筋細胞および/または心筋細胞に分化することができる細胞を被験者の損傷した心臓組織に導入するステップを含む方法。
【請求項31】
請求項13に記載の心筋細胞を含む、心筋細胞に分化した幹細胞が心臓機能を修復する能力を試験するための心筋モデル。
【請求項32】
請求項13に記載の分化心筋細胞および担体を含む細胞組成物。
【請求項33】
ヒト胚性幹細胞を心筋細胞に無血清的に分化させる方法。
【請求項34】
細胞間接触により心筋細胞分化を誘導する細胞を提供するステップを含む請求項33に記載の方法。
【請求項35】
分化を誘導する条件下において、hES細胞を、少なくとも1つの心筋細胞分化誘導因子を分泌する細胞またはそれらの細胞外培地と共培養するステップをさらに含む、分化を誘導する請求項33に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2008−500821(P2008−500821A)
【公表日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−513595(P2007−513595)
【出願日】平成16年6月1日(2004.6.1)
【国際出願番号】PCT/AU2004/000727
【国際公開番号】WO2005/118784
【国際公開日】平成17年12月15日(2005.12.15)
【出願人】(504449952)イーエス・セル・インターナショナル・プライヴェート・リミテッド (5)
【Fターム(参考)】