説明

心臓及び脳卒中のリスクのための予後診断及び診断マーカーとしてのリポカリン−2

(1)将来の心臓血管疾患のリスクの予測及び(2)心臓血管疾患の予防及び/又は治療のために設計されたある治療の使用から、ある個体が多かれ少なかれ利益を得られる可能性の決定のために、免疫アッセイ又は免疫試験などのアッセイによって、体液(血液、血清、血漿、尿、唾液、涙などを含むが、それらに限らない)中のリポカリン−2を測定するための方法及び装置を開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、心臓リスク、慢性心臓疾患、及び脳卒中のリスクのための診断マーカーとしてのリポカリン−2の使用に関する。具体的には、本発明は、対象中を循環するリポカリン−2の濃度を測定し、標準化集団又は標準集団内のリポカリン−2レベルと測定したレベルを比較することによる、リスクの評価及びこれらのリスクの進行の評価に関する。
【背景技術】
【0002】
心臓血管疾患は、依然として、先進国において疾病率及び死亡率の最も一般的な原因である。したがって、心臓血管疾患の予防は、主要な公衆衛生における重要な分野である。現在では、将来の心臓疾患に対する幾つかのリスク因子が開示されており、高いリスクを有する個体の検出に広く臨床的に使用されている。例えば、高比重リポタンパク質(HDL)及び低比重リポタンパク質(LDL)の総コレステロールレベルの評価である。しかしながら、多数の心臓疾患は、明らかに低〜中程度のリスクプロフィールを有する個体において生じ、その様な患者を同定する能力は限られている。さらに、データの蓄積は、心臓血管疾患のリスクがある又は心臓血管疾患を有することが既知の患者に対するある予防処置及び治療処置の有益な効果が、異なる患者群の間で程度に差異があることを示唆している。しかしながら、このような状況において、ある治療方法が多かれ少なかれ効果的であることが期待できるか否か決定する診断方法を開示するデータは存在していない。
【0003】
リポカリン−2は、24p3(1)及び好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン(NGAL)(2)としても知られており、マウスの腎細胞及びヒト好中性顆粒で最初に同定された25kDaの分泌糖タンパク質である。前記タンパク質は、RBP4、脂肪酸結合タンパク質(FABP)、主要尿タンパク質(MUP)、アポリポタンパク質D(apoD)、及びプロスタグランジンD合成酵素(PGDS)(3)を含む、20超の小さな分泌タンパク質からなるリポカリンスーパーファミリーに属する。このタンパク質ファミリーの共通の特徴は、遊離脂肪酸、レチノイド、アラキドン酸、及び各種のステロイドなどの小さな脂質物質に結合し、輸送する能力である(4)。リポカリン−2がロイコトリエンB及びリポポリサッカリド(5)に弱く結合することは過去に報告されていたが、その高い親和性を有する内在性リガンドはまだ同定されていない。好中球に加えて、リポカリン−2は、肝臓、肺、腎臓、脂肪細胞、及びマクロファージを含む幾つかの他の組織において発現している(6−8)。リポポリサッカリド及び「IL−1β」などの幾つかの炎症刺激は、これらの細胞におけるリポカリン−2発現及び分泌を顕著に誘導し得る(6、9)。特に、炎症性転写因子である、NF−κBは、リポカリン−2遺伝子のプロモーター領域内の共通モチーフと結合することによって、リポカリン−2発現を転写活性することが示されており、このことは、当該分泌タンパク質が炎症応答に関与する可能性を示唆する。
【0004】
血清リポカリン−2レベルの上昇は、最近、動脈硬化病変におけるタンパク質溶解活性の増大と関連しており、虚血傷害、シスプラチン腎毒性、又は感染後の腎不全を示すことが確認された(11−15)。リポカリン−2とマトリックスメタロペプチダーゼ9(MMCN9)との部分的な関係は、リポカリン−2が、MMCN9を分解から保護し(2、16)、その酵素活性を保存することによるMMCN9に対する調節作用を奏し得ることを示唆する。最近の研究によって、MMCN9及びリポカリン−2が、ヒト動脈硬化性プラークにおいてマクロファージ及び平滑筋細胞(SMC)に共局在することが実証された。インサイチュリンパ管造影法によって、リポカリン−2がより多く発現しているところでより高いMMCN9活性が示され、このことは、MMCN9活性の調節及びプラークの不安定化におけるリポカリン−2の潜在的な役割を示す(15)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Hraba-Renevey, S., Turler, H., Kress, M., Salomon, C, and Weil, R. 1989. SV40- induced expression of mouse gene 24p3 involves a post-transcriptional mechanism. Oncogene. 4:601-608.
【非特許文献2】Kjeldsen, L., Johnsen, A.H., Sengelov, H., and Borregaard, N. 1993. Isolation and primary structure of NGAL, a novel protein associated with human neutrophil gelatinase. J Biol Chem. 268:10425-10432.
【非特許文献3】Akerstrom, B., Flower, D. R., and Salier, J. P. 2000. Lipocalins: unity in diversity. Biochim Biophys Acta. 1482 : 1 -8.
【非特許文献4】Flower, D.R. 1996. The lipocalin protein family: structure and function. Biochem J. 318:1-14.
【非特許文献5】Bratt, T., Ohlson, S., and Borregaard, N. 1999. Interactions between neutrophil gelatinase-associated lipocalin and natural lipophilic ligands. Biochim Biophys Acta. 1472:262-269.
【非特許文献6】Liu, Q., and Nilsen-Hamilton, M. 1995. Identification of a new acute phase protein. J Biol Chem. 270:22565-22570.
【非特許文献7】Kratchmarova, I., Kalume, D.E., Blagoev, B., Scherer, P.E., Podtelejnikov, A. V., Molina, H., Bickel, P.E., Andersen, J.S., Fernandez, M.M., Bunkenborg, J., et al. 2002. A proteomic approach for identification of secreted proteins during the differentiation of 3T3-L1 preadipocytes to adipocytes. MoI Cell Proteomics. 1 :213-222.
【非特許文献8】Meheus, L.A., Fransen, L.M., Raymackers, J.G., Blockx, H.A., Van Beeumen, J.J., Van Bun, S. M., and Van de Voorde, A. 1993. Identification by microsequencing of lipopolysaccharide-induced proteins secreted by mouse macrophages. J Immunol. 151 :1535-1547.
【非特許文献9】Jayaraman, A., Roberts, K. A., Yoon, J., Yarmush, D. M., Duan, X., Lee, IC, and Yarmush, M.L. 2005. Identification of neutrophil gelatinase-associated lipocalin (NGAL) as a discriminatory marker of the hepatocyte-secreted protein response to IL-I beta: a proteomic analysis. Biotechnol Bioeng. 91:502-515.
【非特許文献10】Fujino, R.S., Tanaka, K., Morimatsu, M., Tamura, IC, Kogo, H., and Hara, T. 2006. Spermatogonial Cell-mediated Activation of An I{kappa}B{zeta} -independent NF- {kapρa}B Pathway in Sertoli Cells Induces Transcription of the LipocaIin-2 Gene. MoI Endocrinol 20:904-915.
【非特許文献11】Mishra, J., Dent, C, Tarabishi, R., Mitsnefes, M.M., Ma, Q., Kelly, C, Ruff, S. M., Zahedi, IC, Shao, M., Bean, J., et al. 2005. Neutrophil gelatinase-associated lipocalin (NGAL) as a biomarker for acute renal injury after cardiac surgery. Lancet. 365:1231- 1238.
【非特許文献12】Mishra J., Ma Q., Prada A., Mitsnefes M., Zahedi IC, Yang J., Barasch J., Devarajan P., 2003. Identification of neutrophil gelatinase-associated lipocalin as a novel early urinary biomarker for ischemic renal injury. Journal of the American Society of Nephrology, 14(10):2534~43.
【非特許文献13】Mishra J., Mori IC, Ma Q., Kelly C, Barasch J., Devarajan P., 2004. Neutrophil gelatinase-associated lipocalin: a novel early urinary biomarker for cisplatin nephrotoxicity. American Journal of Nephrology. 24(3):307-l 5.
【非特許文献14】Reghunathan R., Jayapal M., Hsu L. Y., Chng H.H., Tai D,, Leung B. P., Melendez A.J., 2005. Expression profile of immune response genes in patients with Severe Acute Respiratory Syndrome. BMC Immunology, 6:2.
【非特許文献15】Hemdahl A.L., Gabrielsen A., Zhu C, Eriksson P., Hedin U., Kastrup J., Thoren P., Hansson G.K., 2006. Expression of neutrophil gelatinase-associated lipocalin in atherosclerosis and myocardial infarction. Arteriosclerosis, Thrombosis & Vascular Biology. 26(l):136-42.
【非特許文献16】Tschesche H., Zolzer V., Triebel S., Bartsch S., 2001. The human neutrophil lipocalin supports the allosteric activation of matrix metalloproteinases. European Journal of Biochemistiy. 268(7):1918-28.
【非特許文献17】Xu, A, Lam, M.C., Chan, K. W., Wang, Y., Zhang, J., Hoo, R.L., Xu, J.Y., Chen, B., Chow, W.S., Tso, A. W., et al. 2005. Angiopoietin-like protein 4 decreases blood glucose and improves glucose tolerance but induces hyperlipidemia and hepatic steatosis in mice. Proc Natl Acad Sci USA 102:6086-6091.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の実施態様は、(1)将来の心臓血管疾患のリスクを予測し;及び(2)心臓血管疾患の予防及び/又は治療のために設計されたある処置の使用から、ある患者が多かれ少なかれ利益を得られる可能性を決定するための、免疫アッセイ又は免疫試験による、体液(血液、血清、血漿、尿、唾液、涙などを含むが、それらに限らない)中のリポカリン−2の測定に関する。
【0007】
リポカリン−2レベルの上昇によって将来の心臓血管疾患が予測されることを発見した。例えば、一見したところ健康なヒトにおけるリポカリン−2レベルの上昇によって心筋梗塞(MI)のリスクの増大が予測される。他の例としては、リポカリンレベルの上昇によって将来の心筋梗塞の可能性の増大が予測される。
【0008】
将来の心臓血管疾患のリスクを低減するためのある治療剤の使用から、ある個体が多かれ少なかれ利益を得られる可能性が、個体のリポカリン−2ベースラインレベルから決定できることを発見した。本発明は、将来の心臓血管疾患の他の予測因子から独立した予測値をリポカリン−2が有するという驚くべき発見に部分的に基づく。特に、リポカリン−2は、C反応性タンパク質(CRP)及びミエロペルオキシダーゼ(MPO)から独立して、将来の悪性心臓血管疾患を予測する。したがって、リポカリン−2は、将来の悪性心臓血管疾患の予測因子として単独で使用するか、又はコレステロール、CRP、及びMPOを含むが、それらに限らない従来の予測因子と組み合わせて使用してよい。かくして、本発明は、他の予測因子を使用して実施することが以前から可能であった測定を単純に重複することは含まない。むしろ、リポカリン−2レベルは、従来の予測因子に加わるものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述のように、これらの発見は、新たな診断試験をもたらした。本発明の1つの態様によれば、将来に心臓血管疾患を発症する個体のリスクプロフィールを特徴付けるための方法が提供される。前記方法は、個体におけるリポカリン−2レベルを得る工程を含む。次いで、前記リポカリン−2レベルを所定の値と比較し、次いで、将来に心臓血管疾患を発症する固体のリスクプロフィールを、所定の値との比較におけるリポカリン−2レベルに基づいて特徴付ける。前記所定の値は、単独の値、複数の値、単独の範囲、又は複数の範囲であり得る。かくして、1つの実施態様では、前記所定の値は、複数の所定のマーカーレベル範囲であり、比較工程は、どの所定のマーカーレベル範囲に個体のレベルが収まるかを測定することを含む。
【0010】
本発明のさらなる他の態様によれば、将来に心臓血管疾患を発症する個体のリスクプロフィールを特徴付けるための、コレステロール画分、CRP、又はMPOを含むが、それらに限らない、他の既知の心臓血管疾患マーカーと組み合わせてリポカリン−2レベルを使用する方法を提供する。個体におけるリポカリン−2のレベルを得る。前記リポカリン−2レベルを第一の所定の値と比較して、第一のリスク値を確立する。コレステロール、CRP、又はMPOを含むが、それらに限らない、他の既知の心臓血管疾患マーカーの個体内のレベルも得る。第二のマーカー(コレステロール、CRP、又はMPOを含むが、それらに限らない)の個体内のレベルを第二の所定の値と比較して、第二のリスク値を確立する。次いで、心臓血管疾患を発症する個体のリスクプロフィールを、前記第一及び第二のリスク値の組み合わせに基づいて特徴付け、ここでは、前記第一のリスク値及び第二のリスク値の組み合わせから、第一及び第二のリスク値とは異なる第三のリスク値を確立する。
【0011】
本発明のさらなる他の態様によれば、心臓血管疾患のリスクを低減するための薬剤を用いる治療から個体が利益を得られる可能性を評価するための方法を提供する。前記薬剤は、抗炎症剤、抗血栓剤、抗血小板剤、線維素溶解剤、脂質低減剤、直接トロンビン阻害剤、及び糖タンパク質IIb/IIIa受容体阻害剤、並びに細胞接着分子に結合し、その様な分子に接着する白血球の機能を阻害する薬剤(例えば、抗細胞接着分子抗体)からなる群から選択することができる。前記方法を実施するために、個体中のリポカリン−2レベルを得る。次いで、当該レベルを所定の値と比較する。ここで、前記所定の値との比較におけるリポカリン−2レベルは、前記薬剤を用いる治療から個体が利益を得る可能性の指標である。次いで、個体は、前記薬剤を用いる治療によって得られるであろう正味の利益に関して特徴付けられる。
【0012】
かくして、本発明は、候補の患者のある治療の正味の利益の可能性を評価するための情報を提供する。
【0013】
本発明は、リポカリン−2のアッセイ及び説明書、並びに場合によって数字又は色の表などの任意の関連する資料を含むパッケージを含む、上述のように、将来に心臓血管疾患を発症するリスク又は他の患者の基準と前記アッセイによって測定されるようなリポカリン−2のレベルとを関連付けるためのキットも包含する。さらなる実施態様では、前記キットは、コレステロール、CRP、MPOなどを含むが、それらに限らない、少なくとも1つの第二のマーカーについてのアッセイも含む。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1A】図1A及び1Bは、心臓発作/脳卒中の高いリスクを有する患者における血清および尿のリポカリン−2(LCN2)を示す。心臓発作/脳卒中の高いリスクを有する患者(n=46)(x軸)の濃度を示し(y軸)、36人の健康な対照の対象(x軸)の濃度を示す(y軸)。ボックス内の線は中央値を示し、ボックスは25から75パーセンタイル値の間の区間を示す。ウィスカーは10及び90パーセンタイル値の間の区間を示す。高リスク群と健康群との間の血清及び尿のLCN2濃度の差異は、統計的に有意であった(各々P<0.001及びP<0.05)。
【図1B】図1A及び1Bは、心臓発作/脳卒中の高いリスクを有する患者における血清および尿のリポカリン−2(LCN2)を示す。心臓発作/脳卒中の高いリスクを有する患者(n=46)(x軸)の濃度を示し(y軸)、36人の健康な対照の対象(x軸)の濃度を示す(y軸)。ボックス内の線は中央値を示し、ボックスは25から75パーセンタイル値の間の区間を示す。ウィスカーは10及び90パーセンタイル値の間の区間を示す。高リスク群と健康群との間の血清及び尿のLCN2濃度の差異は、統計的に有意であった(各々P<0.001及びP<0.05)。
【発明を実施するための形態】
【0015】
定義
本明細書で使用する用語「試験サンプル」は、患者などの興味のある対象の診断、予後診断、又は評価を目的として得た体液のサンプルである。ある実施態様では、その様なサンプルは、進行している疾患の結末又は疾患に対する治療計画の効果を決定する目的で得られてよい。好ましい試験サンプルは、血液、血清、血漿、尿、唾液、及び涙を含むが、それらに限らない。加えて、当業者は、ある試験サンプルは、分画又は生成工程、例えば、全血の血清又は血漿成分への分離後により容易に分析されるであろうことを認識するであろう。
【0016】
本明細書で使用する用語である心臓血管疾患(CVD)及び冠動脈疾患(CAD)は、互換的なものであり、心臓疾患、アテローム性動脈硬化症、微小血管疾患、高血圧症、脳卒中、糖尿病性血管症、心筋梗塞、急性冠不全症候群、不安定狭心症、及び糖尿病性網膜症を包含するが、それらに限らないことを意図する。
【0017】
本明細書で使用する用語「診断」は、一連のリスク値及び/又は患者の症状から疾患又は病気のタイプを予測することをいう。これは、疾患が発生する前に疾患の発生を予測する、疾患の予測とは対照的なものであり、過去の時点で1つ又は複数の指標値から未来の時点における疾患の進行を予測することである用語「予後診断」とも対照的なものである。
【0018】
本明細書で使用する用語「マーカー」は、タンパク質若しくはポリペプチドなどの物質又は対象から得られた試験サンプルをスクリーニングするための標的として使用される他の物質である。本発明でマーカーとして使用する「タンパク質又はポリペプチド」は、断片として同定可能な、任意に免疫学的に検出可能な断片を含むことを意図する。当業者は、脳卒中の間に損傷した中枢神経系の細胞によって放出されるタンパク質が、その様な断片に分解又は切断され得ることを認識するであろう。加えて、あるマーカーは、例えばタンパク質分解などによって後に活性化され得る、不活性状態において合成される。その様なマーカーの例は、インターロイキン−1β(IL−1β)及び他の従来技術から既知の多数の他のものを含む。本明細書で使用する用語「関連マーカー」は、マーカー自体の代わりに検出され得る特定のマーカーの1つ又は複数の断片である。これらの関連マーカーは、例えば、マーカーの「プリ(pre)」、「プロ(pro)」、若しくは「プリプロ(preproform)」形態、又は除去されて成熟マーカーを形成する「プリ」、「プロ」、若しくは「プリプロ」断片であってよい。IL−1βなどのプリ、プロ、プリプロ形態として合成されるマーカーの例は、当該技術分野において既知である。好ましい実施態様では、これら「プリ」、「プロ」、「プリプロ」形態又は除去された「プリ」、「プロ」、「プリプロ」断片は、本明細書で使用する方法における成熟マーカーと同等の様式で使用される。
【0019】
本明細書における使用、及び添付の特許請求の範囲において、「a」、「an」、及び「the」の単数形は、文脈が明らかにそうではないことを示さない限り、複数形も含むことに注意すべきである。かくして、例えば、「リポカリン−2結合成分」は、複数のその様な結合成分及び当業者に既知のその同等成分などを含む。
【0020】
本明細書に記載する文献は、本願の出願日前の開示についてのみ提供する。先行発明を理由として、本願発明が、その様な文献に先行する資格がないことを認めるものとして解されるべきではない。さらに、記載した文献の公開日は、独立して確認する必要がある可能性がある実際の公開日とは異なる可能性がある。
【0021】
発明の詳細な説明
当該技術分野における要求に応じて、本発明は、バイオマーカー若しくはスクリーニングツールとしてLCN2を使用することによって、心臓血管疾患を発症している哺乳動物の対象のリスクを評価するか、又は心臓血管疾患の進行を評価するための方法を提供する。本発明は、哺乳動物の対象中のLCN2レベルと、心臓血管疾患の発症又は進行についてのリスクレベルとの相互関係を提供する。
【0022】
1つの態様では、本発明は、心臓血管疾患の新規バイオマーカーとしてLCN2を使用することによる、哺乳動物の対象における心臓血管疾患のリスク又は進行を測定するための診断方法を提供する。かくして、本発明の方法は、哺乳動物の対象の体液中のリポカリン−2レベルを測定することによって、心臓血管疾患のリスク又は進行を測定することを伴う。測定される当該レベルは、1つの集団のLCN2レベルの標準と比較する。標準と比較して上昇したLCN2レベルによって、疾患リスクの増大が示される。1つの実施態様では、前記集団を形成するLCN2レベルの下から25%よりも大きいLCN2レベルは、心臓血管疾患のリスクを示す。他の実施態様では、対照のLCN2レベルが、前記集団を形成するLCN2レベルの50%よりも大きい場合に、心臓血管疾患の中程度のリスクがあると診断される。さらなる他の実施態様では、前記集団を形成するLCN2レベルの75%よりも大きいLCN2レベルが、心臓血管疾患の高いリスク又は存在する心臓血管疾患の進行を示す。他の実施態様では、前記集団を形成するLCN2レベルの80%よりも大きいLCN2レベルが、疾患の最も高いリスクを示す。
【0023】
他の態様では、本発明の方法は、心臓血管疾患の第二のバイオマーカー又は第二の炎症バイオマーカーのサンプル中の濃度を測定し、LCN2レベルと第二のバイオマーカーのレベルとを関連付けることをさらに含み、前記LCN2濃度と第二のバイオマーカーの濃度との組み合わせによって、心臓血管リスクが予測される。
【0024】
他の態様では、本発明の方法は、循環するLCN2を経時的に反復して測定し、心臓血管疾患リスクの進行を観察することを含む。
【0025】
これらの方法の1つの実施態様では、血漿又は血清LCN2レベルは、心臓血管疾患の症状を現わさない及び/又は糖尿病性ではない、哺乳動物の対象におけるアテローム性動脈硬化症などの心臓血管疾患のリスクを示す。さらなる実施態様では、本発明の方法は、メタボリックシンドロームの症状を示す哺乳動物の対象の心臓血管疾患を予測する。さらなる他の実施態様では、本発明の方法は、糖尿病を有する対象の心臓血管疾患のリスクを評価する。さらなる他の実施多様では、本発明の方法は、対象において経時的に疾患リスクを監視するために使用されてよい。
【0026】
さらなる他の態様では、本発明は、患者の循環LCN2のレベル又は効果を低減させることによって、哺乳動物の対象において炎症性疾患又は心臓血管疾患を治療するか又は進行を遅延させるための方法を提供する。
【0027】
本発明によって、(1)将来の心臓血管疾患のリスクを予測し;及び(2)心臓血管疾患を予防及び/又は治療するために設計されたある処置の使用から、ある個体が多かれ少なかれ利益を得られる可能性を測定するために、免疫アッセイ又は免疫試験などのアッセイによって体液(血液、血清、血漿、尿、唾液、涙などを含むが、それらに限らない)中のリポカリン−2を測定するための方法及び装置を提供する。
【0028】
1つの実施例によれば、脳卒中、心臓まひ、又は心臓血管疾患を発症する個体のリスクを特徴付けるための方法は、個体から体液サンプルを得る工程、前記サンプル中のリポカリン−2濃度を測定する工程、及び、測定したリポカリン−2濃度を健康な個体に関連する所定の参照値と比較する工程を含む。脳卒中、心臓発作、又は心臓血管疾患を発症するリスクは、前記サンプル中のリポカリン−2濃度が前記参照値と比較して上昇していた場合に存在する。前記所定の値は、単独の値、複数の値、単独の範囲、又は複数の範囲であり得る。所定の値が複数の所定のマーカーレベル範囲である、1つの実施態様では、測定したリポカリン−2濃度の所定の参照値に対して比較する工程は、どの所定のマーカーレベル範囲に、個体のリポカリン−2レベルが収まるかを決定することを含む。
【0029】
リスクについて評価される心臓血管疾患は、慢性心臓疾患、急性冠動脈症候、又は心不全であり得る。
【0030】
さらなる実施態様において、リポカリン−2濃度によって測定されるリスク値に加えて、コレステロール画分(HDL、LDL、又はそれら双方を含む)、C反応性タンパク質、ミエロペルオキシダーゼ(MPO)又は他のリスクマーカーを測定し、健康な個体に関連する、対応する所定の参照値と比較して、第二のリスク値を確立することができる。個体のリスクは、第一のリスク値(リポカリン−2濃度によって測定)及び第二のリスク値に基づいて特徴付けることができる。第一の実施態様では、個体のリスク値は、第一のリスク値及び第二のリスク値との組み合わせに基づくリスクの評価である、第三のリスク値に基づいて特徴付けることができる。
【0031】
A.各種のマーカーの測定方法
当業者には、本発明のマーカーの検出及び分析のための幾つかの方法及び装置が既知である。患者試験サンプル中のポリペプチド又はタンパク質に関しては、免疫アッセイ装置及び方法を使用することが多い。代替的又は付加的に、当該技術分野においてよく知られているように、より大きな特異性をもった結合のためにアプタマーを選択及び使用することができる。これらの装置及び方法は、サンドイッチ、競争的、又は非競争的アッセイフォーマットにおいて、標識した分子を使用して、興味ある検体の存在又は量に関連するシグナルを生成させることができる。加えて、バイオセンサー及び光学的免疫アッセイなどの、ある方法及び装置を使用して、標識した分子を必要とせずに、検体の存在及び量を測定してよい。
【0032】
好ましくは、免疫アッセイを使用して前記マーカーを分析するが、他の方法が当業者にはよく知られている(例えば、マーカーRNAレベルの測定)。マーカーの存在又は量は、各マーカーに特異的な抗体を使用し、特異的な結合を検出することによって一般的には測定される。任意の適切な免疫アッセイ、例えば、酵素免疫吸着測定法(ELISA)、放射免疫アッセイ(RIA)、及び競争的結合アッセイなどを使用してよい。マーカーに対する抗体の特異的な免疫学的結合は、直接又は関節的に検出することができる。直接的な標識は、抗体に結合させた蛍光又は発光タグ、金属、染料、及び放射性ヌクレオチドなどを含む。間接的な標識は、アルカリホスファターゼ及びセイヨウワサビペルオキシダーゼなどの、当該技術分野においてよく知られた各種の酵素を含む。どのように当該工程を機械で実施するかについての例としては、蛍光タグ方法を用いるClinical Reader(商標)と称されるRAMP Biomedical装置を使用することができるが、当業者には、同じアッセイを実施するための多数の異なる装置及び工程手順が既知であろう。希釈した全血をサンプルウェルに入れる。赤血球をサンプルパッドに保持して、分離した血漿をストリップに沿って移動させる。蛍光染色ラテックス粒子が検体に結合して、検出領域に固定化される。追加の粒子を内部対照領域に固定化する。検出領域及び対象領域の蛍光は、RAMP Clinical Reader(商標)で測定され、これらの値の比が算出される。この比を使用して、各アッセイについて各試験キットにおいて製造業者から提供されるロット特異的な標準曲線からの補間によって検体濃度を決定する。
【0033】
マーカー特異的な固定化抗体の使用も、本発明によって意図されており、当業者によく知られている。抗体は、磁性又はクロマトグラフィーマトリックス粒子、アッセイを行う場所(例えば、マイクロタイターウェル)の表面、固体基体物質のピース(例えば、プラスチック、ナイロン、紙)などの各種の固体支持体に固定化されるであろう。アッセイストリップは、固体支持体上に抗体又は複数の抗体を配列させて被覆することによって調製されるであろう。このストリップは、次いで、試験サンプルに浸けられ、その後に、洗浄、及び着色したスポットなどの測定可能なシグナルを生成する検出工程によって即時に処理されるであろう。
【0034】
複数のマーカーの分析は、1つの試験サンプルを用いて別々又は同時に実施されてよい。幾つかのマーカーは、複数のサンプルの効率的な処理のための1つの試験に組み合わせてよい。加えて、当業者は、同じ個体に由来する複数のサンプルの試験の値(例えば、連続的な時点におけるもの)を認識するであろう。その様な連続的なサンプルの試験は、経時的なマーカーレベルの変化の同定を可能にするであろう。マーカーレベルにおける増大又は低減ならびにマーカーレベルにおける変化が無いことは、発生してからの推定の時間、救出可能な組織の存在及び量、薬物治療の妥当性、各種の治療法の有効性、事態の重度の認識、疾患重度の同定、将来のリスクを含む患者の結末の同定を含むが、それらに限らない疾患状態についての有用な情報を提供するであろう。
【0035】
本発明において参照されるマーカーの組み合わせからなるアッセイを作製して、異なる診断に関連する関連情報を提供してよい。そのようなパネルは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、若しくはそれ以上のマーカー又は個々のマーカーを使用して作製してよいが、4未満の数のマーカーはが最も好ましい実施態様である。単独のマーカー又はより多くのマーカーのパネルを含むマーカーのサブセットの分析を、本発明の方法によって実施して、各種の臨床背景において臨床的な感度又は特異性が最適化されるであろう。アッセイの臨床的な感度は、アッセイが正確に予測する疾患を有する対象の割合として定義され、アッセイの特異性は、アッセイが正確に予測する疾患を有しない対象の割合として定義される(Tietz Textbook of Clinical Chemistry,2nd edition,Carl Burtis and Edward Ashwood eds.,W.B.Saunders and Company,p.496)。
【0036】
マーカーの分析は、各種の物理的なフォーマットでも実施されるであろう。例えば、マイクロタイタープレート又はオートメーションを使用して、多数の試験サンプルの処理が容易にされるであろう。代替的には、単独のサンプルフォーマットが開発されて、例えば、救急輸送中又は緊急治療室の状況における、タイムリーな即時の治療及び診断を容易にするであろう。特に有用な物理的なフォーマットは、複数の異なる検体の検出のための、複数の分離したアドレス可能な配置を有する表面を備える。その様なフォーマットは、タンパク質マイクロアレイ又は「タンパク質チップ」(例えば、Ng and Ilag,J.Cell Mol.6:329−340(2002))及びキャピラリー装置を含む。
【0037】
他の実施態様では、本発明は、マーカーの分析のためのキットを提供する。その様なキットは、好ましくは、少なくとも1つの試験サンプルの分析のための装置及び試薬並びにアッセイを実施するための説明書を備える。前記キットは、標的マーカーに特異的なアプタマーを含有してよい。最適には、前記キットは、ある診断を考慮に入れるか又は排除するためのマーカーパネルについて実施される免疫アッセイから得られる情報を使用するための1つ又は複数の手段を含有してよい。マーカー抗体又は抗原は、どのマーカー抗体又は抗原を測定するかに応じて、免疫アッセイ診断キットに組み込まれてよい。第一の容器は、抗原又は抗体調製物を含む組成物を含んでよい。抗体調製物及び抗原調製物の双方が、好ましくは、抗原濃度及び/又は抗体力価が定量用途において容易に参照できるように提供されて、適切な滴定された形態で提供されるべきである。
【0038】
所定の抗原及び/又は抗体(場合によって)と診断サンプルとの間の特異的な免疫反応の検出のための免疫検出試薬又は標識を含んでもよい。適切な検出試薬は、抗原及び/又は抗体とともに又は一次抗体に対する特異性を有する二次抗体とともに典型的には使用される、放射活性、酵素活性、又は他の発色リガンドによって例示されるように、当該技術分野においてよく知られている。かくして、前記反応は、標識を検出又は定量することによって検出又は定量される。本発明の新規方法と関連する用途に適切な免疫検出試薬及び方法は、一般的には当該技術分野においてよく知られている。
【0039】
前記試薬は、緩衝剤及びタンパク質安定化剤、例えば、ポリサッカリドなどの補助的な薬剤も含んでよい。前記診断キットは、必要な場合には、試験のバックグラウンド干渉を低減するための薬剤、シグナルを増大するための薬剤、マーカー値を組み合わせ及び補間することによって、興味ある臨床的な結末の予測を行うためのソフトウェア及びアルゴリズム、試験を実施するための装置、較正曲線及び図表、並びに標準曲線及び図表などをさらに含んでよい。
【0040】
サンプル中のリポカリン−2濃度は、アッセイの任意の方法によって、好ましくはアプタマー結合によるか又は免疫学的な方法によって、好ましくは免疫アッセイ又は免疫試験によって、より好ましくは酵素免疫吸着測定法(ELISA)又は尿試験紙によって測定することができる。
【0041】
生物学的サンプル中のLCN2濃度の測定は、任意の適切なLCN2抗体又はアプタマーを使用して、前記タンパク質を検出する。その様なアプタマー又は抗体は、当該技術分野において現在においても存在しているか若しくは市販されており、又は免疫学の分野の現在一般的な技術によって開発され得る。本明細書で使用する用語「抗体」は、2つ軽鎖及び2つの重鎖を有する完全な免疫グロブリン又はその任意の断片である。かくして、単独の単離された抗体又は断片が、ポリクローナル抗体、抗親和性ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、合成抗体、組換え抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、又はヒト抗体であってよい。用語「抗体断片」は、完全な抗体構造にまで至らず、単離去れた単独の抗体さ、Fv構築物、Fab構築物、軽鎖可変領域又は相補性決定領域(CDR)配列などを含むが、それらに限らない。抗LCN2抗体の結合部位、例えば、LCN2に結合する1つ又は複数の可変鎖CDR配列を有する組換え分子が、本発明の診断アッセイにおいて使用されてもよい。本明細書で使用されるように、用語「抗体」は、適当な場合には、LCN2に結合する異なる抗体又は抗体断片の混合物であってもよい。その様な異なる抗体は、混合物の他の抗体とは異なるLCN2の部位に結合してよい。前記アッセイに使用する抗体におけるその様な差異は、抗体の可変領域のCDR配列に反映され得る。例えば、抗体自体がヒトCDR配列を含む非ヒト抗体、キメラ抗体、又は非ヒト起源の配列を含有する他の組換え抗体断片である場合は、その様な差異は、抗体主鎖によって生じる可能性もある。本はテイの方法において有用な抗体又は断片は、従来技術を使用して合成又は組換えにより作製されるか、又は結成から単離及び精製されるか、その結合親和性を増大すべくさらに処置されてよい。LCN2又は上述のLCN2の特定の配列に結合する任意の抗体、抗体断片、又はそれらの混合物が、抗体又は抗体断片がどのように作製されたかにかかわらず、本発明の方法において使用されてよい。
【0042】
同様に、アッセイフォーマットに依存して、抗体は、検出可能なシグナルを提供することができる試薬でタグ付加又は標識されてよい。その様な標識は、単独又は他の組成物若しくは化合物と組み合わせて、検出可能なシグナルを提供することができる。2以上の抗体が診断方法で使用される場合は、標識は、相互に作用して検出可能なシグナルを生じさせることが望ましい。最も望ましくは、標識は視覚的に検出可能であり、例えば、比色分析により検出可能である。各種の酵素システムが作用して、アッセイにおいて比色分析シグナルを示し、例えば、グルコースオキシダーゼ(グルコースを基質として使用する)は、生成物として過酸化物を放出し、それが、ペルオキシダーゼ及びテトラメチルベンジジン(TMB)などの水素ドナーの存在下において、青色の酸化TMBを生じさせる。他の例は、セイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)又はアルカリホスファターゼ(AP)、ATP、グルコース、及びNAD+と反応して、とりわけ340nmの波長における吸収の増大として検出されるNADHを生成するグルコース−6−ホスフェートデヒドロゲナーゼと組み合わせたヘキソキナーゼを含む。
【0043】
本発明の方法で使用してよい他の標識システムは、他の手段によって検出可能であり、例えば、染料が埋め込まれている着色ラテックス微粒子(Bangs Laboratories,Indiana)を、酵素の代わりに使用して、適切なアッセイにおいて生じるLCN2抗体複合体の存在を示す可視シグナルを提供する。さらなる他の標識は、蛍光化合物、放射活性化合物、又は成分を含む。好ましくは、抗LCN2抗体は、蛍光検出可能な蛍光色素、例えば、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、フィコエリトリン(PE)、アロフィコシアニン(APC)、コリホスフィン−O(CPO)、又はタンデム染料、PE−シアニン−5(PE−Cy5)、及びPE−Texas Red(ECD)と接合又は結合している。一般的に使用される蛍光色素は、フルオロセインイソチオシアネート(FITC)、フィコエリトリン(PE)、アロフィコシアニン(APC)を含み、及びタンデム染料、PE−Cy5、PE−シアニン−7(PE−Cy7)、PE−シアニン−5.5(PE−Cy5.5)、ECD、ローダミン、ペリジニン−クロロフィル−タンパク質(PerCP)、FITC、及びアレクサ染料を含む。とりわけTexas Red及びローダミン、FITC+PE、FITC+PE−Cy5、並びにPE+PE−Cy7などの標識の組み合わせが、アッセイ方法に依存して使用されてよい。
【0044】
本発明の診断アッセイにおいて有用な抗体に結合させるための検出可能な標識は、診断アッセイの分野の当業者に既知又は容易に入手可能な多数の組成物から容易に選択され得る。本発明に有用な抗LCN2アプタマー、抗体、又は断片は、使用する特定の検出可能な標識又は標識システムによっては限定されない。かくして、本発明で使用するための最適な標識を有する適切な抗LCN2抗体及びアプタマーの選択及び/又は作製は、本明細書、本明細書に組み込まれた文献、及び免疫学の従来技術が提供された当業者の能力の範囲内である。
【0045】
同様に、生物学的サンプルでLCN2を測定するために使用される特定のアッセイフォーマットは、酵素免疫吸着測定法、例えば、下記の実施例に開示したもの、サンドイッチ免疫アッセイ、ホモジーニアスアッセイ、または他の従来のアッセイフォーマットなどの広範な免疫アッセイから選択されてよい。当業者は、多数の従来の免疫アッセイフォーマットから容易に選択して、本発明を実施し得る。
【0046】
LCN2を検出することができるペプチド摸倣体、合成化合物などの生物学的サンプル中のタンパク質の検出のための他の試薬は、ウエスタンブロット、フローサイトメトリーなどの生物学的サンプル中のLCN2の定量的検出のための他のアッセイフォーマットで使用され得る。
【0047】
好ましくは血漿又は血清中におけるLCN2の測定は、CVDリスクのためのバイオマーカーとして働く。本発明の方法によれば、心臓血管疾患のリスク又は進行を測定するために、哺乳動物の対象の体液中のLCN2のレベルを測定し、集団におけるLCN2レベルの参照基準と比較する。前記基準と比較して上昇したLCN2レベルによって、疾患リスクの増大が予測される。
【0048】
参照基準は、健康から、CVD/CADの各種の増大するリスク、CVD/CADに罹患まで様々な程度の心臓血管の健康状態の哺乳動物の対象から当然に構成される、正常な集団のサンプルのLCN2の値を測定することによって確立されるものである。かくして、前記標準は、好ましくは、標準化における誤差を避けるために、対象のLCN2レベルの測定のために使用されるのと同一のアッセイ技術を使用して提供される。下記の実施例において実証しているように、CVDリスクの相対レベルは、集団のLCN2レベルと比較した際のLCN2の増大に基づいて決定することができる。
【0049】
かくして、1つの実施態様では、対象のLCN2レベルが集団を形成するLCN2レベルの下から25%の範囲内である場合は、対照は「正常」なLCN2レベル又は心臓血管疾患の低いリスクを有する。かくして、対象のLCN2レベルが、集団のLCN2レベルの下から25%よりも大きい場合には、この測定は心臓血管疾患のある程度のリスクを示す。例えば、他の実施態様では、対象のLCN2レベルが集団を形成するLCN2レベルの下から25%から50%の範囲内である場合には、前記対象は、低中度ではあるが、増大した心臓血管疾患リスクを有する。対象のLCN2レベルが集団を形成するLCN2レベルの50%よりも大きい場合には、前記対象は、中程度の心臓血管疾患リスクを有すると診断される。同様に、対象のLCN2レベルが集団を形成するLCN2レベルの75%よりも大きい場合には、前記対象は、高い心臓血管疾患発症リスクを有するか又は存在する心臓血管疾患の進行を示す。最後に、対象のLCN2レベルが標準集団のLCN2レベルの80%よりも大きい場合には、前記対象は、疾患の最も高いリスク及び/又は進行性の心臓血管疾患を示す。
【0050】
心臓血管薬又は脳卒中、心臓発作、若しくは心臓血管疾患のリスクを低減する薬剤で治療しようとする個体が特定の治療から利益を受ける可能性を評価する方法は、個体から体液サンプルを得る工程、前記サンプル中のリポカリン−2濃度を測定する工程、及び所定の参照値に対して、測定したリポカリン−2濃度を比較する工程を含み得る。1つの実施態様では、所定の参照値は、過去の試験又は特定の薬剤を用いる治療の前の試験から得られる値であり得る。参照値と比較して、サンプル中のリポカリン−2濃度が低減している場合に、治療から利益を得る可能性がある。ある実施態様では、前記薬剤は、抗炎症剤、抗血栓症剤、抗血小板剤、線維素溶解剤、脂質低減剤、直接トロンビン阻害剤、及び糖タンパク質IIb/IIIa受容体阻害剤、並びに細胞接着分子に結合して、その様な分子に結合する白血球の機能を阻害する薬剤からなる群から選択することができる。
【0051】
本発明の実施態様では、脳卒中、心臓発作、又は心臓血管疾患の発症の個々のリスクを予測するためのインビトロ診断マーカーとしてリポカリン−2を使用することができる。
【0052】
ある実施態様では、前記心臓血管疾患は、慢性心臓病、急性冠動脈症候、又は心不全であり得る。
【0053】
本発明の実施態様では、脳卒中、心臓発作、又は心臓血管疾患の予防のため又は心臓血管疾患の治療のための医薬の製造のために、個体のリポカリン−2濃度を低減することができる成分を使用することができる。1つの実施態様では、リポカリン−2に対する中和抗体又はリポカリン−2生産を抑制するか若しくはリポカリン−2の生物学的活性をアンタゴナイズする化合物を使用することができる。
【0054】
1つの実施態様によれば、本発明は、対象中の循環リポカリン−2濃度を低減することができる薬剤を必要な対象に投与することによる、脳卒中、心臓発作、若しくは心臓血管疾患のリスクを低減するか、又は心臓血管疾患を治療するための方法を意図する。
【0055】
本発明に係る方法の更なる実施態様では、CVD又はCADのリスク評価が、1つ又は複数のCVD/CADバイオマーカーの測定と組み合わせて、LCN2レベルを測定することによって実施され得る。その様な追加のバイオマーカーは、冠動脈石灰化、高感度C反応性タンパク質(CRP)、ミエロペルオキシダーゼ(MPO)、炎症マーカー、リポタンパク質、ホモシステイン、線維素溶解及び止血機能のマーカー、例えば、フィブリノゲン、D二量体、組織プラスミノゲン活性化因子(tPA)、プラスミノゲン活性化因子阻害剤1抗原、腫瘍壊死因子α(TNFα)、リポタンパク質関連ホスホリパーゼ(LpPLA2)、脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)、インターロイキン−1β(IL−1β)、IL−18、IL−14、IL−6、可溶性TNF受容体−1(solTNFR1)、及びCD40リガンド(CD40L)を含むが、それらに限らない炎症マーカー、とりわけ、並びにコレステロール画分(HDL、LDL又はそれらの双方)及び当該技術分野においてよく知られているものなどのCVDの他の従来のリスク因子の測定を含むが、それらに限らない。LCN2レベルと既知の第二のバイオマーカーのCVDリスクを示すレベルとの相関関係によって、CVDのリスク又は進行がさらに確認される。かくして、LCN2の測定は、既知のバイオマーカーについてのアッセイによって得られるCVDの指標を確認するために役立つものであり得る。代替的には、LCN2の測定は、CRPなどの既知のバイオマーカーよりも正確にCVD/CADリスクを診断するために役立ち得る。
【0056】
さらなる実施態様では、本発明の方法は、経時的にLCN2レベルを反復して測定する工程を含み、それにより、CVDを有する患者の進行を観察するために役立つことができる。前記方法は、CVD/CADの特定の治療計画の成功の程度を測定するために有用である可能性があり、治療の変更が必要である状況を示す可能性がある。
【0057】
B.心臓血管疾患又は炎症の治療のための治療方法
LCN2レベルがCAD/CVDのバイオマーカーであると本発明者が決定したことの当然の結果として、本発明は、CVD/CAD及び/又は炎症性疾患の進行を遅らせるための新規治療方法をさらに提供する。その様な炎症性疾患は、糖尿病、肥満、インスリン耐性、並びアテローム性動脈硬化症から生じる疾患、例えば、脳卒中、腎不全、失明、及び塞栓症をとりわけ含むが、それらに限らない。その様な方法は、循環LCN2を低減するか又はそうでなければその効果を阻害するのに十分な量のLCN2中和抗体又はLCN2アンタゴニストなどの化合物を患者に投与する工程を含む、治療計画を提供する。CVD/CADリスクレベルは、上述の標準集団を超える血漿又は血清中のLCN2レベルの増大と共に増大するため、当該方法は、LCN2レベルを低減させ、引き続いてリスクレベル値を低減させることを企図する。例えば、血清LCN2レベルに基づいて非常に高いリスクカテゴリー(すなわち、標準集団の上から75%にある値)にある患者には、前記方法は、基準の次の最も低いレベルの濃度にまで血清LCN2を中和することを伴う。しかしながら、コレステロールレベルと同様に、開始時のLCN2の高いリスクレベルより小さい任意の値まで高いLCN2レベルを低減させることは望ましいと解される。治療を反復して実施して、増強させることにより、LCN2レベルが標準集団の最も低いパーセンタイル(特定の患者について可能な限り正常集団/低リスク集団/標準集団の25%にまで低く又はその近く)で安定化するまで、LCN2レベルを次第に低減させる。
【0058】
かくして、1つの実施態様では、本発明の方法は、対象の循環LCN2のレベル又は効果を低減させることによって、哺乳動物の対象における炎症疾患又は心臓血管疾患の治療又は進行を遅らせることに関する。望ましくは、前記レベルは、既存のレベルの少なくとも10%低減する。さらに望ましくは、前記レベルは、既存のレベルの少なくとも20%低減する。本明細書に記載のアッセイを使用して、標準集団のLCNレベルに対して対象のレベルを比較することによって、対象のLCN2レベルを測定してよい。かくして、標準集団の上位25%よりも低いレベル(すなわち、75%)まで対照のレベルを低減させることも望ましい。当該方法によれば、治療を継続して、標準集団の50から75%の範囲内又はそれ未満まで対象のLCN2レベルを低減させる。本発明の他の実施態様によれば、本発明を利用して、標準集団の上位50%未満のレベルまで対象のLCN2レベルを低減させる。言うまでも無く、本発明を実施して、標準集団の下位25%の範囲内のレベルまで対象のレベルを低減させることが最も望ましい。
【0059】
これらの方法は、反復してアンタゴニストを投与するか、又は本明細書に記載の所望の閾値に循環LCN2レベルを維持する治療を患者に提供することを伴ってよい。ある実施態様では、脳卒中、心臓発作、若しくは心臓血管疾患の予防のための薬剤、又は心臓血管疾患の治療のための薬剤を含む、医薬組成物を使用し、前記薬剤は、抗炎症剤(アスピリン及び非アスピリン抗炎症剤を含む)、抗糖尿病剤(PPARγアゴニストチアゾリジンジオン(例えば、ロシグリタゾン))、抗血栓剤、抗血小板剤、線維素溶解剤、脂質低減剤、直接トロンビン阻害剤、糖タンパク質IIb/IIIa受容体阻害剤、細胞接着分子に結合して、その様な分子に結合する白血球の機能を阻害する薬剤、カルシウムチャンネルブロッカー、βアドレナリン作動性受容体ブロッカー、シクロオキシゲナーゼ−2阻害剤、及びアンジオテンシン系阻害剤からなる群から選択される。前記医薬組成物は、個体のリポカリン−2濃度を低減することができる成分も含む。
【0060】
その様な治療方法は、既にCVD/CADを有する患者、又は循環LCN2の正常地よりも大きい循環LCN2レベルを有する無症状患者に有用である。
【0061】
用語「LCN2アンタゴニスト」は、治療により、治療前に存在するよりも上述のように低いリスクレベルまで循環LCN2を低減させることができる任意の化合物を意味する。1つの実施態様では、前記アンタゴニストは、天然の受容体に対するLNC2の結合を妨げる。かくして、その様な化合物は、合成薬、抗LCN2抗体若しくはその断片、又はLCN2の発現を低減させる治療用組成物であってよい。当該治療方法において有用である、その様なLCN2アンタゴニストは、市販の又は従来技術である既知の化合物であり得る。
【0062】
当該方法によれば、循環LCN2の所望の低減を達成するための患者、好ましくはヒト患者に投与するための、選択されるLCN2アンタゴニストの適切な量及び製剤は、関連する因子に応じて主治医によって選択され得る。例えば、選択されるLCN2−低減化合物の用量は、使用する特定の組成物(アンタゴニストの性質、例えば、タンパク質性、合成化合物など)、化合物の半減期、心臓血管疾患又は炎症性疾患の同定及び/又は段階、患者の示すLCN2レベル、患者の年齢、体重、性別、一般的な健康状態、投与経路、任意の他の医薬及び治療、並びに対象の病歴に応じて変化する。的確な用量は、個々の治療対象とともに経験に基づいて投与する医師によって決定され得る。効果的な治療用量は、循環LCN2レベルを低減するのに十分な量、好ましくは約20%以上まで開始時のLCN2レベルを低減するのに十分な量を含有する。
【0063】
同様に、投与経路、投与計画、及び投与頻度は、上述の因子、及びLCN2レベルの定期的な評価によって決定されるような、治療に対する患者の応答に依存する。
【0064】
他の実施態様によれば、脳卒中、心臓発作、又は心臓血管疾患を発症するリスクを予測するための試験キットが提供される。その様なキットは、リポカリン−2結合成分を含み得る。好ましい実施態様では、前記キットは、中和抗体又は他のリポカリン−2アンタゴニストを含み得る。脳卒中、心臓発作、又は心臓血管疾患のリスク評価、診断、及び/又は予後診断のためにキットを使用することができる。
【0065】
1つの実施態様では、キットは、リポカリン−2のアッセイ及び説明書を含み、将来の心臓血管疾患を発症するリスク又は上述のような他の患者の基準とアッセイによって測定されるリポカリン−2レベルとを関連付けるための、数または色表などの関連資料を場合によって含むパッケージを含み得る。更なる実施態様では、前記キットは、コレステロール、CRP、MPO、又は他のCVD/CADマーカーのアッセイも含む。
【実施例】
【0066】
実施例1
ヒト対象
46人の患者(年齢の平均値53±22歳;年齢の中央値50歳;年齢の範囲18から96歳;46%が女性)を試験に採用した。患者が(i)冠動脈疾患:過去のMI(インフォームドコンセントの2日より前)、又は文書化された多肢冠動脈疾患若しくは負荷テスト陽性である安定若しくは過去の不安定の狭心症(インフォームドコンセントの30日より前)、又は多肢経皮経管冠動脈形成(PTCA)(インフォームドコンセントの30日より前)、又は狭心症を有しないか(手術がインフォームドコンセントの4年より前に実施されている場合)若しくは手術後に狭心症を再発した、過去に15の多肢冠動脈バイパス移植(CABG);(ii)末梢動脈疾患:過去の肢のバイパス手術又は血管形成又は切断術、少なくとも片側で0.8未満の足首/腕の血圧比を有したことがある断続的な跛行、又は非侵襲性試験;(iii)過去の脳卒中;(iv)インフォームドコンセントの7日より前であり、かつ、1年前よりも後である、一過性の虚血性発作(TIA);(v)糖尿病(I型又はII型);末端器官損傷(網膜症、左心室肥大、微量若しくは大量アルブミン尿)の証拠又は過去の心臓若しくは血管の疾患の証拠がある場合に、患者は心臓発作/脳卒中の高リスクの群に分類した。
【0067】
36人の年齢及び性別を合わせた健康な対象の対照群(年齢の平均値65±18歳;年齢の中央値72歳;年齢の範囲:23から87歳;78%が女性)を含めた。
【0068】
図1A及び1Bは、心臓発作/脳卒中の高いリスクを有する患者及び健康な対照における、血清及び尿のリポカリン−2(LCN2)のブックスプロットを示す。血清LCN2濃度の中央値は、健康な対照よりも、心臓発作/脳卒中の高いリスクを有する患者において有意に高かった(51.6 vs 35.5μg/L;P<0.001)。尿のLCN2濃度の中央値も、健康な対象よりも、心臓発作/脳卒中の高いリスクを有する患者において有意に高かった(6.6 vs 1.6μg/L;P<0.05)。
【0069】
実施例2
マウス及びヒトリポカリン−2の定量のための抗体生産及びサンドイッチELISAの開発
組換えヒト又はマウスリポカリン2に対するポリクローナル抗体は、過去に開示されているようにニュージーランドのメスのウサギで生産した。抗ヒト又はマウスリポカリン2 IgGは、タンパク質A/Gビーズを使用し、次いで個々の抗原をリガンドとして使用する親和性クロマトグラフィーによって、免疫したウサギの血清から精製した。親和性により精製した抗ヒト又は抗マウスリポカリン2 IgGをPierce社製のキットを使用してビオチン化し、検出抗体として使用した。未標識の抗ヒト又は抗マウスリポカリン−2 IgGを使用して、4℃で一晩にわたって96ウェルマイクロタイタープレートを被覆した。ヒト又はマウス血清をPBSに希釈して(1:50)、100μlの希釈したサンプル又は組換え標準物質を各ウェルに適用して、37℃で1時間にわたってインキュベートした。プレートを3回洗浄し、次いで、100μlの検出抗体と共にさらに2時間インキュベートした。PBSで更に三回洗浄した後に、ストレプトアビジン接合セイヨウワサビペルオキシダーゼを用いてウェルを1時間にわたってインキュベートし、その後にテトラメチルベンジジン試薬を用いて15分にわたって反応させた。全部で100μlの2M HSOを各ウェルに添加して、反応を停止させ、450nmにおける吸収を測定した。二回重複して測定し、全部で6つの独立したアッセイにおいて5つの血清サンプルを測定することによって、内部及び相互のアッセイの変動係数を決定した。
【0070】
本発明が、本明細書に記載しているか又はその固有の目的を実行し、結果及び利点が得られることは、当業者によって容易に理解される。本明細書で挙げた実施例は、好ましい実施態様を示すものであり、例示であって、本発明の範囲を制限するものとは意図しない。変形例及び他の用途に当業者は気付くであろう。これらの変形例は、本発明の精神の範囲内であると意図され、特許請求の範囲に規定されている。
【0071】
本発明の範囲及び精神から逸脱すること無く、置換基の変更及び変形が本発明に為されることは、当業者には容易であることが明らかである。
【0072】
明細書中に上げた全ての特許及び文献は、本発明が属する技術分野の当業者のレベルを示すものである。全ての特許及び文献は、各文献が具体的且つ個別に示されているのと同じ程度まで参照により本明細書に取り込まれ、本明細書に明示した教示と矛盾しない程度に参照により取り込まれる。
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13. Mishra J., Mori IC, Ma Q., Kelly C, Barasch J., Devarajan P., 2004. Neutrophil gelatinase-associated lipocalin: a novel early urinary biomarker for cisplatin nephrotoxicity. American Journal of Nephrology. 24(3):307-l 5.
14. Reghunathan R., Jayapal M., Hsu L. Y., Chng H.H., Tai D,, Leung B. P., Melendez A.J., 2005. Expression profile of immune response genes in patients with Severe Acute Respiratory Syndrome. BMC Immunology, 6:2.
15. Hemdahl A.L., Gabrielsen A., Zhu C, Eriksson P., Hedin U., Kastrup J., Thoren P., Hansson G.K., 2006. Expression of neutrophil gelatinase-associated lipocalin in atherosclerosis and myocardial infarction. Arteriosclerosis, Thrombosis & Vascular Biology. 26(l):136-42.
16. Tschesche H., Zolzer V., Triebel S., Bartsch S., 2001. The human neutrophil lipocalin supports the allosteric activation of matrix metalloproteinases. European Journal of Biochemistiy. 268(7):1918-28.
17. Xu, A, Lam, M.C., Chan, K. W., Wang, Y., Zhang, J., Hoo, R.L., Xu, J.Y., Chen, B., Chow, W.S., Tso, A. W., et al. 2005. Angiopoietin-like protein 4 decreases blood glucose and improves glucose tolerance but induces hyperlipidemia and hepatic steatosis in mice. Proc Natl Acad Sci USA 102:6086-6091.

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象の心臓血管疾患のリスクまたは進行を特徴付けるための方法であって、
前記対象から体液サンプルを得る工程、
前記サンプル中のリポカリン−2のレベルを測定する工程、及び
前記対象のリポカリン−2のレベルを所定の参照値と比較する工程
を含み、
前記所定の参照値が集団のリポカリン−2レベルの標準と関連しており、かつ、
前記所定の参照値と比較して上昇したリポカリン−2レベルによってリスクの増大が予測される、方法。
【請求項2】
前記所定の値が、単独の値、複数の値、単独の範囲、又は複数の範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記所定の値が、複数の所定のマーカーのレベルの範囲であり、前記対象のリポカリン−2レベルを所定の参照値と比較する工程が、
前記対象のリポカリン−2レベルが、どの所定のマーカーのレベルの範囲にあるかを決定することを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記心臓血管疾患が、慢性心臓疾患、急性冠動脈症候、心不全、又は脳卒中である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記サンプル中の心臓血管疾患又は炎症の第二のマーカーのレベルを測定する工程、及び
リポカリン−2のレベルを前記第二のマーカーのレベルを関連付ける工程、
をさらに含み、
前記リポカリン−2のレベル及び第二のマーカーのレベルの組み合わせによってリスクが予測される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記第二のマーカーが、コレステロール画分、C反応性タンパク質(CRP)、及びミエロペルオキシダーゼ(MPO)からなる群から選択され;
リポカリン−2のレベルに基づいて第一のリスク値を確立する工程、
コレステロール、CRP、又はMPOのレベルを第二の所定の参照値と比較して、第二のリスク値を確立する工程、及び
第一及び第二のリスク値の組み合わせに基づいて対象のリスクを特徴付ける工程
を更に含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記第一及び第二のリスク値の組み合わせが、前記第一及び第二のリスク値とは異なる第三のリスク値を確立する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記測定を経時的に反復して実施して、経時的な心臓血管疾患のリスクの変化又は進行をモニターする、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
対象が、心臓血管疾患のリスクを低減する薬剤を用いる治療から利益が得られる可能性を評価するための方法であって、
前記対象から体液サンプルを得る工程、
前記サンプル中のリポカリン−2レベルを測定する工程、
前記測定したリポカリン−2濃度を所定の参照値と比較する工程
を含み、
前記サンプル中のリポカリン−2濃度が所定の参照値と比較して低減している場合に、前記治療から利益が得られる可能性がある、方法。
【請求項10】
脳卒中、心臓発作、又は心臓血管疾患の予防のため、又は心臓血管疾患の治療のための薬剤を含む医薬組成物であって、
前記薬剤が、抗炎症剤(アスピリン及び非アスピリン抗炎症剤を含む)、抗糖尿病剤(PPARγアゴニストチアゾリジンジオン(例えば、ロシグリタゾン))、抗血栓剤、抗血小板剤、線維素溶解剤、脂質低減剤、直接トロンビン阻害剤、糖タンパク質IIb/IIIa受容体阻害剤、細胞接着分子に結合して、その様な分子に結合する白血球の機能を阻害する薬剤、カルシウムチャンネルブロッカー、βアドレナリン作動性受容体ブロッカー、シクロオキシゲナーゼ−2阻害剤、アンジオテンシン系阻害剤からなる群から選択され、個体のリポカリン−2濃度を低減することができる成分も含む、医薬組成物。
【請求項11】
前記成分が、リポカリン−2に対する中和抗体、又はリポカリン−2の生産を抑制するか若しくはリポカリン−2の生物学的活性をアンタゴナイズする化合物を含む、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
体内のリポカリン−2濃度を低減することができる薬剤を対象に投与する工程を含む、脳卒中、心臓発作、若しくは心臓血管疾患のリスクを低減するか又は心臓血管疾患を治療するための方法。
【請求項13】
リポカリン−2結合成分を含む、脳卒中、心臓発作、又は心臓血管疾患の発症リスクを予測するための試験キット。
【請求項14】
前記リポカリン−2結合成分が、アプタマー、抗体、又は他のリポカリン−2アンタゴニストである、請求項13に記載の試験キット。
【請求項15】
リポカリン−2についてのアッセイ及び説明書を含むパッケージを備える、試験キット。
【請求項16】
前記アッセイによって測定されるリポカリン−2のレベルを、将来の心臓血管疾患の発症リスク又は他の患者の基準と関連付けるための数又は色表をさらに備える、請求項15に記載の試験キット。
【請求項17】
心臓血管疾患の第二のマーカーについてのアッセイをさらに備える、請求項16に記載の試験キット。
【請求項18】
前記第二のマーカーのアッセイが、コレステロール、C反応性タンパク質、又はミエロペルオキシダーゼについてのものである、請求項17に記載の試験キット。
【請求項19】
患者の循環リポカリン−2のレベル又は効果を低減する工程を含む、哺乳動物の対象の心臓血管疾患を治療又はその進行を遅らせるための方法。
【請求項20】
前記低減する工程が、ある量のリポカリン−2のアンタゴニストを投与する工程を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記アンタゴニストが、リポカリン−2に対する抗体、又はリポカリン−2がその受容体に結合するのを妨げる化合物である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
対象の心臓血管疾患のリスク又は進行を特徴付けるための医薬の製造におけるリポカリン−2の使用であって、前記医薬が対象のリポカリン−2レベルを所定の参照値と比較するために製剤化され、前記参照値が集団のリポカリン−2レベルの標準に関連し、前記所定の参照値と比較して上昇したリポカリン−2レベルによってリスクの増大が予測される、使用。
【請求項23】
前記所定の値が、単独の値、複数の値、単独の範囲、又は複数の範囲である、請求項22に記載の使用。
【請求項24】
前記所定の値が複数の所定のマーカーのレベルの範囲であり、前記対象のリポカリン−2レベルを前記所定の参照値と比較する工程が、
前記対象のリポカリン−2レベルが、どの所定のマーカーのレベルの範囲にあるかを決定することを含む、請求項23に記載の使用。
【請求項25】
前記心臓血管疾患が、慢性心臓疾患、急性冠動脈症候、心不全、又は脳卒中である、請求項22に記載の使用。
【請求項26】
前記医薬が、第二のマーカーを更に含み、サンプル中の心臓血管疾患又は炎症の第二のマーカーのレベルを測定し、リポカリン−2のレベルを前記第二のマーカーのレベルと関連付けるために製剤化され、リポカリン−2のレベル及び第二のマーカーのレベルの組み合わせによってリスクが予測される、請求項22に記載の使用。
【請求項27】
前記第二のマーカーが、コレステロール画分、C反応性タンパク質(CRP)、及びミエロペルオキシダーゼ(MPO)からなる群から選択され;
リポカリン−2のレベルに基づいて第一のリスク値を確立する工程、
コレステロール、CRP、又はMPOのレベルを第二の所定の参照値と比較して、第二のリスク値を確立する工程、及び
第一及び第二のリスク値の組み合わせに基づいて対象のリスクを特徴付ける工程
を更に含む、請求項26に記載の使用。
【請求項28】
前記第一及び第二のリスク値の組み合わせが、前記第一及び第二のリスク値とは異なる第三のリスク値を確立する、請求項27に記載の使用。
【請求項29】
心臓血管疾患のリスクを低減する薬剤を使用する治療から対象が利益を得られる可能性を評価するための医薬の製造におけるリポカリン−2の使用であって、前記医薬が測定されるリポカリン−2濃度を所定の参照値と比較するために製剤化され、サンプル中のリポカリン−2濃度が所定の参照値と比較して低減している場合に、前記治療から利益が得られる可能性がある、使用。
【請求項30】
脳卒中、心臓発作、若しくは心臓血管疾患のリスクの低減又は心臓血管疾患の治療のための医薬の製造における、体内のリポカリン−2濃度を低減することができる薬剤の使用。
【請求項31】
哺乳動物の対象における心臓血管疾患を治療するか又は進行を遅らせるための医薬の製造における、対象の体内の循環リポカリン−2のレベル又は効果を低減することができる薬剤の使用。
【請求項32】
前記薬剤が一定量のリポカリン−2アンタゴニストである、請求項31に記載の使用。
【請求項33】
前記薬剤が、リポカリン−2に対する抗体、又はリポカリン−2のその受容体への結合を妨げる化合物である、請求項31に記載の使用。
【請求項34】
対象の心臓血管疾患のリスク又は進行の特徴付けに使用するためのリポカリン−2であって、対象のリポカリン−2レベルを所定の参照値と比較するために医薬が製剤化され、前記所定の参照値が集団のリポカリン−2のレベルの標準と関連し、前記所定の参照値と比較して上昇したリポカリン−2レベルによってリスクの増大が予測される、リポカリン−2。
【請求項35】
心臓血管疾患のリスクを低減する薬剤を使用する治療から対象が利益を得られる可能性の評価において使用するためのリポカリン−2であって、測定されるリポカリン−2濃度を所定の参照値と比較するために医薬が製剤化され、前記所定の参照値と比較してサンプル中のリポカリン−2濃度が低減している場合に、前記治療から利益を得られる可能性がある、リポカリン−2。
【請求項36】
脳卒中、心臓発作、若しくは心臓血管疾患のリスクの低減又は心臓血管疾患の治療において使用するための、体内のリポカリン−2濃度を低減することができる薬剤。
【請求項37】
哺乳動物の対象における心臓血管疾患を治療するか又は進行を遅らせるのに使用するための、対象の体内の循環リポカリン−2のレベル又は効果を低減することができる薬剤。

【図1A】
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【図1B】
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【公表番号】特表2011−519037(P2011−519037A)
【公表日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−506552(P2011−506552)
【出願日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際出願番号】PCT/CN2009/000405
【国際公開番号】WO2009/132510
【国際公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【出願人】(509027397)ヴァーシテック・リミテッド (3)
【出願人】(510288633)アール・アンド・シー・バイオジーニアス・リミテッド (1)
【Fターム(参考)】