説明

心血管疾患を診断および処置するための送達システムおよび方法

本発明は、ホスホリルコリン結合体が含まれている薬学的組成物、またはホスホリルコリン結合体に対して特異性を有している抗体調製物(例えば、モノクローナル抗体)、ならびに、アテローム性動脈硬化症の処置もしくは予防(例えば、アテローム性動脈硬化症の処置、予防、またはさらなる進行の減速)におけるこれらの組成物の使用に関する。さらに、本発明は、状況に応じてアジュバントを用いて薬学的組成物を産生するための、ホスホリルコリン結合体または上記抗体調製物(例えば、モノクローナル抗体)の使用にも関する。なおさらに、本発明は、虚血性心血管疾患を発症する高いリスクまたは低いリスクに関係している抗体(例えば、IgMまたはIgG)の存在またはそれが存在しないことを診断することにも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、米国仮特許出願第60/664,300号(2005年3月22日出願)の利益を主張する。参照される出願の各々の全教示および詳述は、参考として本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
アテローム性動脈硬化症は炎症性疾患であり、最終的には、動脈壁の内部での脂質の蓄積に至る。高コレステロール血症、高血圧、高いホモシステイン濃度、感染、および/または他の症状による血管内皮の損傷は、アテローム性動脈硬化症の起因事象と考えられている。これにより、動脈内皮細胞は接着分子を発現するように導かれる。接着分子は、様々なクラスの白血球(単球およびTリンパ球を含む)に結合する。一旦、内皮に接着すると、損傷を受けた動脈壁の中で発現させられたケモカイン(例えば、MCP−1)は、白血球が内膜に移動するように刺激し、それにより炎症プロセスが確立され、最終的には、典型的なアテローム斑の発症に至る。これには、単球のマクロファージへの分化転換が含まれる。これらの細胞はスカベンジャー受容体を発現し、これは、脂質の細胞内蓄積をもたらし、それにより、マクロファージが泡沫細胞(アテローム斑の脂質の蓄積成分の発端である)となる原因となる。
【0003】
炎症はまた、アテローム性動脈硬化症に特徴的な急性の血栓性合併症の減少(precipitation)にも寄与している。コラーゲンを含む分厚い繊維性のキャップは、通常、循環している血液から斑の脂質構成成分を分離する。しかし、斑の中に残っている炎症細胞が活性化されると、これらはキャップのコラーゲンを分解させて、これを侵食および破裂しやすくする原因となるタンパク質分解酵素を生産することができる。斑の前血栓構成成分(prothrombotic constituent)が循環している血液に曝されると、血栓のプロセスが開始し、これは、マクロファージが強力な血栓の誘因である組織因子を発現するように誘導する炎症分子によってさらに促進される。
【0004】
アテローム性動脈硬化症の病因についての知識が増えるにつれ、心血管疾患の予防には、上記のリスクファクターの矯正(correction)だけではなく、動脈壁の中で起こっているアテローム生成のプロセスの直接的な薬理学的制御もまた含まれるであろうことが示唆されている(非特許文献1)。したがって、アテローム生成のプロセスを調節することにより血管疾患およびアテローム性動脈硬化症を処置および予防するための新規の治療方法を開発すること、ならびに、診断的適用のための新規の方法を開発することが必要である。
【非特許文献1】Ross,R.,Nature,362:801−809(1993)
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明の概要
本発明は、物質(例えば、治療薬または診断薬)を、個体の血管の中のアテローム性の病変に送達するための生物学的システムに関する;アテローム性の病変は、例えば、安定なアテローム斑、または損傷を受けやすいアテローム斑である。本発明はさらに、例えば、治療が必要な個体の処置における、個体の中のアテローム性の病変への造影剤(単数または複数)の送達方法における、ならびに、個体の中のアテローム性動脈硬化症および/もしくはアテローム斑の存在の診断または診断の補助における、生物学的システムの使用に関する。
【0006】
特定の実施形態においては、本発明により、個体の血管の中のアテローム性の病変(例えば、安定なアテローム斑、損傷を受けやすいアテローム斑)への治療薬の送達のための生物学的システムが提供される。このような生物学的システムには:(a)治療薬と(b)アテローム性の病変の中に存在している分子(本明細書中では「標的分子」と呼ばれる)と相互作用する少なくとも1つの標的化部分が含まれている担体が含まれる。この場合、生物学的システムにより、血管の中のアテローム性の病変に対して治療薬が送達される。さらなる実施形態においては、生物学的システムには、アテローム性の病変の中に存在している様々な標的分子と相互作用する2つ以上の標的化部分が含まれる。複数の標的化部分は同じ担体上に存在する場合があり、また、異なる担体上に存在する場合もある。アテローム性の病変の中に存在している標的分子の特定の例として、リガンド、例えば、CXCL1(増殖調節オンコジーン−α(growth−regulated oncogene−alpha));CXCL5(ENA−78);CXCL8(IL−8);CXCL9(Mig);CXCL10(IP−10);CXCL11(I−TAC);CXCL12(SDF−1);CCL2(MCP−1);CCL3(MIP−1α);CCL5(RANTES);CCL7(MCP−3);CCL17(TARC);CCL22(MDC);フラクタルカイン(fractalkine)(FKN);HSP60、(S)−2−アミノ−4−ホスホノブタン酸、および(S)−3,4−ジカルボキシフェニルグリシン;IL−6、IL−8、IFN−γ;またはTNF−αが挙げられるが、これらに限定はされない。標的分子はまた、VCAM−1およびICAM−1のような接着分子リガンドである場合もある。この場合は、生物学的システムの標的化部分は、これらのリガンドのいずれか1つの受容体であり得る。あるいは、標的化部分は、リガンドに結合する抗体であり得る。アテローム性病変の中に存在している標的分子の他の例としては、CXCL1(増殖調節オンコジーン−α);CXCL5(ENA−78);CXCL8(IL−8);CXCL9(Mig);CXCL10(IP−10);CXCL11(I−TAC);CXCL12(SDF−1);CCL2(MCP−1);CCL3(MIP−1α);CCL5(RANTES);CCL7(MCP−3);CCL17(TARC);CCL22(MDC);フラクタルカイン(FKN);HSP60、(S)−2−アミノ−4−ホスホノブタン酸、および(S)−3,4−ジカルボキシフェニルグリシン;IL−6、IL−8、IFN−γ;またはTNF−αの受容体のような、リガンドの受容体が挙げられるが、これらに限定はされない。説明のために、受容体としては、CXCR3、CXCR4、CCR4、CX3CR1、トル様受容体、および代謝生成物産性グルタミン酸受容体(mGluRs)が挙げられるが、これらに限定はされない。この場合、生物学的システムの標的化部分は、受容体に結合する対応するリガンドであり得る。あるいは、標的化部分は、受容体に結合する抗体であり得る。アテローム性の病変の中に存在している標的分子のさらなる例としては、アテローム性の病変の構成成分(例えば、脂質および細胞外マトリックス)が挙げられる。この場合、生物学的システムの標的化部分は、細胞外マトリックス分子(例えば、プロテオグリカンまたはコラーゲン)に結合する抗体、あるいは脂質結合因子(例えば、オイルレッド(oil red))であり得る。オステオポンチンもまた、標的分子であり得る。
【0007】
1つの特異的な実施形態においては、この生物学的システムにはさらに、治療薬を含む第2の担体と、標的化部分を含む担体(第1の担体と呼ばれる)の成分/構成成分と相互作用する結合パートナーが含まれる。結合パートナーと標的化部分との間での相互作用により、第2の担体は、第1の担体によって病変部位に引き付けられ、それによって、治療薬の送達の増加がもたらされる。
【0008】
生物学的システムの中の治療薬は、核酸、ポリペプチド、抗体、低分子化合物、および/またはペプチド模倣物であり得る。特定の特異的な実施形態においては、治療薬は、送達されるポリペプチド(ペプチドおよびタンパク質が含まれる)またはポリペプチド(単数または複数)をコードする核酸である。特異的な実施形態においては、治療薬は、裸のDNAから構成されるか、またはベクターの中に存在しているかのいずれかである核酸であり、例えば、トランスジーンとしてウイルスベクターの中に挿入されたウイルスベクターである。生物学的システムの中の治療薬の例としては、以下が挙げられるが、これらに限定はされない:(a)アテローム性の病変の中の脂質濃度を低下させる物質、例えば、HMG−CoAレダクターゼ阻害剤、甲状腺ホルモン剤(thyromimetic)、フィブラート、またはペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPAR)のアゴニスト;(b)哺乳動物において酸化プロセスを緩和する物質、例えば、サイトカインによって刺激されるシクロヒドロラーゼ−1(GTPCH−1)またはハプログロビン;(c)内皮細胞受容体、内皮細胞接着分子、内皮細胞インテグリン、平滑筋細胞受容体、平滑筋細胞接着分子、または平滑筋細胞インテグリンの発現を調節する物質;(d)哺乳動物の血管内の内皮細胞または平滑筋細胞の増殖を調節する物質;(e)炎症関連受容体(もしくはそのような受容体のリガンド、もしくはそのような受容体のシグナル伝達経路)を調節する物質;または炎症関連転写因子(例えば、ケモカイン受容体、組織因子(TF));RAGE受容体、トル様受容体、アンギオテンシン受容体、TGF受容体、インターロイキン受容体、TNF受容体、IFNγ受容体;代謝生成物産性グルタミン酸8(mGlu8)受容体、NF−κbを活性化させることができる受容体;CXCL12(SDF−1およびその受容体CXCR4);CCL17(TARC);CCL22(MDC);CCL3(MIP−1α);CCL5(RANTES);CCL7(MCP−3);CXCL1(増殖調節オンコジーンα);CXCL5(ENA−78);CXCL8(IL−8);フラクタルカイン(FKN;およびその受容体CX3CR1);HSP60、トル様受容体、代謝生成物産性グルタミン酸受容体(mGluRs;およびそのリガンド、例えば、(S)−2−アミノ−4−ホスホノブタン酸、および(S)−3,4−ジカルボキシフェニルグリシン);c−Fos;IL−6;IL−8;MCP−1;IFN−γ;およびTNF−α;(f)内皮細胞、血管の平滑筋細胞、リンパ球、単球、もしくは好中球の増殖、アポトーシス、または壊死を調節する物質;(g)細胞外マトリックスタンパク質(例えば、コラーゲン、エラスチン、またはプロテオグリカン)の生産、分解、または架橋を調節する物質);(h)哺乳動物の血管内での細胞の活性化、分泌、または脂質負荷を調節する物質;(i)哺乳動物の血管内での樹状細胞もしくは単球/マクロファージ細胞の活性化または増殖を調節する物質;(j)哺乳動物の血管壁での血小板の活性化もしくは接着を調節するか、または別の方法で、血餅の形成を阻害する物質(例えば、活性化されたプロテインC(APC));ならびに、(k)アテローム性の病変に罹患している哺乳動物に有効である、インビボでの活性を有しているタンパク質である治療用物質をコードする核酸からなる物質。治療用物質の1つの特異的な例はHDL(HLDのペプチド成分は、HDLと同様の治療上の作用を有している)またはそのようなペプチド成分をコードする核酸である。それらの治療上の作用としては、コレステロールへの結合、および組織への輸送(その中でこれは分解される)、およびコレステロールの輸送に関係している受容体(例えば、ATP−結合カセットトランスポーター1(ABCA1)またはSR−B1受容体(これらは、マクロファージの中および血管壁細胞の中に存在している))に対する結合が挙げられるが、これらに限定はされない。
【0009】
生物学的システムの担体としては、リポソーム、ミセル、細胞、ウイルス粒子、ウイルス、ナノ粒子(例えば、ナノスフェア)、またはマイクロ粒子(例えば、マイクロスフェア)、室のある(chambered)マイクロデバイス、エマルジョン、脂質ディスク(lipid disc)、ポリマー、ガドリウム結合分子、超常磁性酸化鉄粒子、多様なペルフルオロカーボンナノ粒子、および超微粒気泡が挙げられるが、これらに限定はされない。1つ以上の標的化部分を、担体の表面に連結させることができる。担体は、ポリペプチド/ペプチド、または、1つ以上の治療用ポリペプチド/ペプチド物質をコードするトランスジーンのいずれかとして、治療薬を保有することができる。
【0010】
好ましくは、生物学的システムにより、損傷を受けやすい病変/斑に治療薬が送達される。このような病変/斑は、これらが破裂または侵食を受けやすく、それによって血管の部分的または完全な閉塞が導かれる血栓形成が促進されるので、損傷を受けやすいと言われる。用語「病変」と「斑」は本明細書中ではほとんど同じ意味で使用される。用語「安定なアテローム斑」と「安定なアテローム性の病変」は、本明細書中ではほとんど同じ意味で使用される。用語「損傷を受けやすいアテローム斑」と「損傷を受けやすいアテローム性の病変」は、本明細書中ではほとんど同じ意味で使用される。用語「アテローム斑」と「アテローム性の病変」もまた、本明細書中ではほとんど同じ意味で使用され、これには、安定なアテローム斑、安定なアテローム性の病変、損傷を受けやすいアテローム斑、および損傷を受けやすいアテローム性の病変が含まれるが、これらに限定はされない。
【0011】
特定のさらなる実施形態においては、本発明により、造影剤(1種類以上の造影剤)を、個体の血管の中のアテローム性の病変に送達するための生物学的システムが提供される。このような生物学的システムには:(a)造影剤と(b)アテローム性の病変の中に存在している標的分子と相互作用する少なくとも1つの標的化部分が含まれている担体が含まれる。この場合、生物学的システムによって、血管の中のアテローム性の病変に造影剤が送達される。さらなる実施形態においては、生物学的システムには、アテローム性の病変の中に存在している異なる標的分子と相互作用する2つ以上の標的化部分が含まれる。複数の標的化部分は、同じ担体上に存在している場合も、また、異なる担体上に存在している場合もある。アテローム性の病変の中に存在している標的分子の特定の例としては、CXCL1(増殖調節オンコジーン−α);CXCL5(ENA−78);CXCL8(IL−8);CXCL9(Mig);CXCL10(IP−10);CXCL11(I−TAC);CXCL12(SDF−1);CCL2(MCP−1);CCL3(MIP−1α);CCL5(RANTES);CCL7(MCP−3);CCL17(TARC);CCL22(MDC);フラクタルカイン(FKN);HSP60、(S)−2−アミノ−4−ホスホノブタン酸、および(S)−3,4−ジカルボキシフェニルグリシン;IL−6、IL−8、IFN−γ、およびTNF−αのようなリガンドが挙げられるが、これらに限定はされない。標的分子はまた、VCAM−1およびICAM−1のような接着分子リガンドである場合もある。この場合は、生物学的システムの標的化部分は、リガンドの受容体であり得る。あるいは、標的化部分は、リガンドに結合する抗体であり得る。アテローム性病変の中に存在している標的分子の他の例としては、CXCL1(増殖調節オンコジーン−α);CXCL5(ENA−78);CXCL8(IL−8);CXCL9(Mig);CXCL10(IP−10);CXCL11(I−TAC);CXCL12(SDF−1);CCL2(MCP−1);CCL3(MIP−1α);CCL5(RANTES);CCL7(MCP−3);CCL17(TARC);CCL22(MDC);フラクタルカイン(FKN);HSP60、(S)−2−アミノ−4−ホスホノブタン酸、および(S)−3,4−ジカルボキシフェニルグリシン;IL−6、IL−8、IFN−γ、またはTNF−αの受容体のような、リガンドの受容体が挙げられるが、これらに限定はされない。説明のために、受容体としては、CXCR3、CXCR4、CCR4、CX3CR1、トル様受容体、および代謝生成物産性グルタミン酸受容体(mGluRs)が挙げられるが、これらに限定はされない。この場合、生物学的システムの標的化部分は、受容体に結合する対応するリガンドであり得る。あるいは、標的化部分は、受容体に結合する抗体であり得る。アテローム性の病変の中に存在している標的分子のさらなる例としては、アテローム性の病変の構成成分(例えば、脂質および細胞外マトリックス)が挙げられる。この場合、生物学的システムの標的化部分は、細胞外マトリックス分子(例えば、プロテオグリカン、コラーゲン)に結合する抗体、あるいは脂質結合因子(例えば、オイルレッド)であり得る。オステオポンチンもまた、標的分子であり得る。
【0012】
1つの特異的な実施形態においては、この生物学的システムにはさらに、造影剤を含む第2の担体と、標的化部分を含む担体(第1の担体と呼ばれる)の成分/構成成分と相互作用する結合パートナーが含まれる。結合パートナーと標的化部分との間での相互作用により、第2の担体は、第1の担体によって病変部位に引き付けられ、それによって、造影剤の送達の増加がもたらされる。
【0013】
生物学液システムの造影剤の例としては、以下が挙げられるが、これらに限定はされない:放射性物質(例えば、放射性ヨウ素、テクネチウム、イットリウム、または他の放射性医薬品);造影剤(contrast agent)(例えば、ガドリウム、マンガン、硫酸バリウム、ヨウ素化または非ヨウ素化物質、イオン性物質または非イオン性物質、超常磁性酸化鉄粒子、および多様なペルフルオロカーボンナノ粒子);磁性物質または常磁性物質;リポソーム(例えば、放射性物質、造影剤(contrast agent)、もしくは本明細書中に記載されている任意の他の造影剤を保有しているリポソーム);ミセル、細胞、ウイルス粒子、ウイルス、マイクロ粒子(例えば、マイクロスフェア)、ナノ粒子(例えば、ナノスフェア)、室のあるマイクロデバイス、エマルジョン、脂質ディスク、ポリマー、ガドリウム結合分子、超常磁性酸化鉄粒子、多様なペルフルオロカーボンナノ粒子、ならびに、超微粒気泡。特定の場合には、造影剤は、発現ベクターまたはウイルスによってコードされる蛍光ポリペプチド(例えば、ルシフェラーゼ)である。状況に応じて、造影剤には、CT、蛍光透視法、SPECT画像解析、光学的画像解析、PET、MRI、またはγ線画像解析に使用されている造影剤が含まれる。
【0014】
この生物学的システムの担体としては、リポソーム、ミセル、細胞、ウイルス粒子、ウイルス、ナノ粒子(例えば、ナノスフェア)、またはマイクロ粒子(例えば、マイクロスフェア)、室のあるマイクロデバイス、エマルジョン、脂質ディスク、ポリマー、ガドリウム結合分子、超常磁性酸化鉄粒子、多様なペルフルオロカーボンナノ粒子、ならびに、超微粒気泡が挙げられるが、これらに限定はされない。1つ以上の標的化部分を担体の表面に連結させることができる。担体は、ポリペプチド/ペプチド、または、1つ以上の治療用ポリペプチド/ペプチド物質をコードするトランスジーンのいずれかとして、治療薬を保有することができる。
【0015】
生物学的システムによって、損傷を受けやすい病変/斑に対して造影剤を送達することができる。これらの斑は、これらが破裂または侵食を受けやすく、それによって血管の部分的または完全な閉塞が導かれる血栓形成が促進されるので、損傷を受けやすいと言われる。あるいは、生物学的システムは、安定なアテローム斑に造影剤を送達することができる。
【0016】
特異的な実施形態においては、この生物学的システムにはさらに、(造影剤(単数または複数)に加えて)少なくとも1つの治療薬が含まれる。治療薬と造影剤は、1つの担体の中に存在していても、また異なる担体の中に存在していてもよい。
【0017】
特定の実施形態においては、本発明により、個体のアテローム性動脈硬化症の発症を遅らせる方法が提供される。この方法には、個体に対して、(a)治療薬と(b)アテローム性の病変の中に存在している標的分子と相互作用する標的化部分を含む担体が含まれている治療有効量の生物学的システムを投与する工程が含まれる。この場合、生物学的システムにより、血管の中のアテローム性の病変に対して治療薬が送達される。好ましくは、個体はヒトである。さらなる実施形態においては、この方法にしたがって投与される生物学的システムには、アテローム性の病変(例えば、安定なアテローム斑、損傷を受けやすいアテローム斑)の中に存在している様々な標的分子と相互作用する2つ以上の標的化部分が含まれる。複数の標的化部分は同じ担体上に存在する場合があり、また、異なる担体上に存在する場合もある。
【0018】
特定の実施形態においては、本発明により、個体においてアテローム性動脈硬化症を処置または予防する方法が提供される。この方法には、(a)治療薬と(b)アテローム性の病変の中に存在している標的分子と相互作用する標的化部分を含む担体が含まれている治療有効量の生物学的システムを投与する工程が含まれる。この場合、生物学的システムにより、血管の中のアテローム性の病変に対して治療薬が送達される。好ましくは、個体はヒトである。さらなる実施形態においては、この方法にしたがって投与される生物学的システムには、アテローム性の病変の中に存在している様々な標的分子と相互作用する2つ以上の標的化部分が含まれる。複数の標的化部分は同じ担体上に存在する場合があり、また、異なる担体上に存在する場合もある。アテローム性動脈硬化症には、斑の破裂、斑の侵食、急性冠不全症候群、脳卒中、一過性虚血発作、心臓発作、狭心症、不安定狭心症、血栓症、心筋梗塞、虚血性心疾患、末梢動脈疾患、または移植によって誘導される動脈硬化症が伴う場合がある。状況に応じて、この方法にはさらに、少なくとも1つのさらなる治療薬(例えば、ストレプトキナーゼ)、組織プラスミノーゲン活性化因子、プラスミン、ウロキナーゼ、組織因子プロテアーゼ阻害剤、線虫から抽出された抗凝固タンパク質、メタロプロテイナーゼ阻害剤、抗炎症剤(単数または複数)、スタチン、HDL(例えば、HDLの主要タンパク質、apo A1、またはHDLの活性と同様の治療活性を有しているapo A1のペプチド成分);変異体apo A1(例えば、apo A1 Milano、または同様の治療活性を有している他の変異体形態)を投与する工程が含まれる。
【0019】
特定の実施形態においては、本発明により、個体のアテローム性の病変に対して造影剤を送達する方法が提供される。この方法には、個体に対して、(a)造影剤と(b)アテローム性の病変の中に存在している標的分子と相互作用する標的化部分を含む担体が含まれている治療有効量の生物学的システムを投与する工程が含まれる。この場合、生物学的システムにより、血管の中のアテローム性の病変に対して造影剤が送達される。好ましくは、個体はヒトである。さらなる実施形態においては、この方法の生物学的システムには、アテローム性の病変の中に存在している様々な標的分子と相互作用する2つ以上の標的化部分が含まれる。複数の標的化部分は同じ担体上に存在する場合があり、また、異なる担体上に存在する場合もある。
【0020】
特定の実施形態においては、本発明により、個体のアテローム性の病変(安定なアテローム斑、損傷を受けやすいアテローム斑、または両方)の重篤度、範囲、および重篤度と範囲の両方を特定する方法が提供される。この方法には、1)(a)造影剤と(b)アテローム性の病変の中に存在している標的分子と相互作用する標的化部分を含む担体が含まれている生物学的システムを投与する工程;および2)個体のアテローム性の病変に対する造影剤の量、局在化、形状、密度、または相対的な分布を観察する工程が含まれる。生物学的システムの標的化部分は、それが使用されるであろう特定方法に関連して選択されるであろう。例えば、損傷を受けやすいアテローム性の病変/斑の重篤度、範囲、または重篤度と範囲が決定される場合には、生物学的システムには、損傷を受けやすいアテローム性の病変の中に存在している標的分子と相互作用する標的化部分が含まれるであろう。同様に、安定なアテローム性の病変/斑の重篤度、範囲、または重篤度と範囲が決定される場合には、生物学的システムには、安定なアテローム性の病変/斑の中に存在している標的分子と相互作用する標的化部分が含まれるであろう。好ましくは、個体はヒトである。特定の実施形態においては、この方法の生物学的システムには、アテローム性の病変の中に存在している様々な標的分子と相互作用する2つ以上の標的化部分が含まれる。複数の標的化部分は同じ担体上に存在する場合があり、また、異なる担体上に存在する場合もある。
【0021】
特定の特異的な実施形態においては、本発明により、個体にHDL治療薬を送達するための生物学的システムが提供される。生物学的システムには、(a)HDL、apoA−1、変異体apoA−1、apoA−1模倣ペプチド、およびapoA−1もしくはapoA−1のペプチド模倣物のいずれかをコードする核酸から選択されるHDL治療薬;ならびに(b)それによって(a)のHDL治療薬が血管に送達される担体が含まれる。例えば、apoA−1タンパク質またはapoA−1模倣ペプチドは、コレステロール輸送に関与している受容体(例えば、ATP結合カセットトランスポーター1(ABCA1)またはSR−B1受容体)に結合する。状況によっては、担体は、ナノ粒子、マイクロ粒子、細胞、およびリポソームから選択される。状況によっては、核酸HDL治療薬は、発現ベクターの中のDNAである。
【0022】
特定の特異的な実施形態においては、本発明により、血管の中のアテローム斑を標的とする送達システムが提供される。送達システムには、(a)HDL、apoA−1、変異体apoA−1、apoA−1模倣ペプチド、およびapoA−1もしくはapoA−1のペプチド模倣物のいずれかをコードする核酸から選択されるHDL治療薬;ならびに(b)アテローム斑の構成成分と相互作用/結合し、そしてアテローム斑に対して(a)のHDL治療薬を送達する担体が含まれる。例えば、apoA−1タンパク質またはapoA−1模倣ペプチドは、コレステロールの輸送に関係している受容体(例えば、ATP−結合カセットトランスポーター1(ABCA1)またはSR−B1受容体(これらは、マクロファージの中および血管壁の中に存在している))に結合する。状況によっては、担体は、ナノ粒子、マイクロ粒子、細胞、およびリポソームから選択される。状況によっては、核酸HDL治療薬は、発現ベクターの中のDNAである。説明のために、担体は、その表面上に、アテローム斑の構成成分(例えば、斑自体の構成成分(斑上に存在している分子、または斑の中に通常存在している細胞によって発現される分子)、斑に移動した細胞、斑の細胞外マトリックス、斑の中に存在している血管、例えば、脈管が含まれる)、あるいは、斑から放出された/脱落した産物の結合パートナーを有する。特定の場合には、アテローム斑は、破裂しやすい。
【0023】
特定の特異的な実施形態においては、本発明により、個体のアテローム性の病変の発症を遅らせる方法が提供される。この方法には、個体に対して、治療有効量の本発明の生物学的システムを投与する工程が含まれ、これにより、個体においてアテローム性の病変の発症が遅らせられる。
【0024】
特定の特異的な実施形態においては、本発明により、その必要がある個体において、アテローム斑の中でのコレステロール濃度を低下させる方法が提供される。この方法には、個体に対して、治療有効量の本発明の送達システムが投与され、それによって、個体においてアテローム斑の中のコレステロール濃度が低下される。
【0025】
特定の特異的な実施形態においては、本発明により、以下が含まれている発現ベクターが提供される:(a)apoA−1、変異体apoA−1、apoA−1模倣ペプチドから選択されるHDLのタンパク質成分をコードするDNA;および(b)アテローム斑を含む血管の中で特異的に発現されるプロモーター。この場合、(a)のDNAは、(b)のプロモーターに動作可能であるように連結させられている。状況に応じて、発現ベクターには、損傷を受けやすいアテローム斑を含む血管の中で特異的に発現されるプロモーターが含まれる。単なる説明ではあるが、このようなプロモーターの一例は、炎症の状況に通常は関係している活性化因子についての結合部位を含むプロモーター(例えば、MCP−1のプロモーター)であり;別の例は、新たに伸びつつある血管に通常は関係している活性化因子についての結合部位を含むプロモーター(例えば、VEGFのプロモーター)である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
発明の詳細な説明
本発明は、アテローム性動脈硬化症および/またはアテローム性動脈硬化症を伴う心血管疾患に、広く関係する。本発明のいくつかの態様により、アテローム性動脈硬化症およびアテローム性動脈硬化症を伴う心血管疾患の処置、予防、および診断のための送達システム、ならびに方法が提供される。
【0027】
特定の実施形態においては、本発明により、個体の血管の中のアテローム性の病変(安定なアテローム性の病変、または損傷を受けやすいアテローム性の病変)に対して、治療薬または造影剤を送達するための生物学的送達システムが提供される。1つの実施形態においては、生物学的システムには:(a)治療薬と(b)アテローム性の病変の中に存在している標的分子(例えば、ケモカインリガンド、ケモカイン受容体、または接着分子)と相互作用する少なくとも1つの標的化部分が含まれている担体が含まれる。この場合、生物学的システムにより、血管の中のアテローム性の病変に対して治療薬が送達される。別の実施形態においては、生物学液システムには:(a)造影剤と(b)アテローム性の病変の中に存在している標的分子(例えば、ケモカインリガンド、ケモカイン受容体)と相互作用する少なくとも1つの標的化部分が含まれている担体が含まれる。この場合、生物学的システムにより、血管の中のアテローム性の病変に対して造影剤が送達される。
【0028】
アテローム性の病変(安定なアテローム斑、または損傷を受けやすいアテローム斑)の標的化は、以下を含む生物学的システムを供給することにより得ることができる:(a)アテローム性の病変(安定なアテローム斑、または損傷を受けやすいアテローム斑)の中に存在している2つ以上の標的分子と相互作用する複数の標的化部分を有している1つの担体、または(b)それぞれが、アテローム性の病変(安定なアテローム斑、または損傷を受けやすいアテローム斑)の中に存在している標的分子と相互作用する異なる標的化部分を有している複数の担体。いずれの場合においても、生物学的システムの中の治療薬または造影剤は、アテローム性の病変に効率よく送達される。状況に応じて、複数の様々な標的化部分が互いに結合し(例えば、ケモカインおよびケモカイン受容体)、そして標的化部分のレベルの増大の生物学的結果を反映するシグナルの増幅を示し、これによって、アテローム性の病変に対する治療薬または造影剤の送達の増加がもたらされる。
【0029】
好ましい実施形態においては、本発明の生物学的システムにより、血管の中の損傷を受けやすい斑に対して治療薬が送達される。表現「損傷を受けやすい斑」は、本明細書中で使用される場合には、破裂または侵食の可能性が大きく、結果として、血栓の形成、およびしたがって、不安定な狭心症または心筋梗塞を特徴とする急性冠不全症候群(ACS)、脳卒中、または一過性の脳の虚血発作を導くアテローム斑を意味する。これらのタイプの斑にはまた、突然死も伴う。特定の場合には、治療薬は、例えば、斑の中に含まれる脂質を減少させること、および/または斑の不安定性に寄与している炎症プロセスを緩和することにより、斑の侵食または破裂を防ぐことができ(それによって、血栓の形成、および血管の部分的または全体の閉塞を防ぐことができる)。治療薬はまた、さらに、アテローム性の病変のさらなる拡大を防ぐことができるか、または、アテローム性の病変による血管の閉塞を防ぐことができる。多くの場合には、治療薬は、アテローム性の病変の大きさを制御すること、または縮小させることができる。
【0030】
1つの実施形態においては、本発明の生物学的システムにより、造影剤が、アテローム性の病変の内腔表面に、および/またはアテローム性の病変の内部コアに送達され、そして適切な検出方法(例えば、MRIおよび心臓のCT)を使用してこれらのアテローム性の病変を視覚化することができる。本発明の方法および送達システムを使用することによってアテローム性の病変を視覚化させることによって特異性を診断できることを明らかにすることが、本発明の目的である。その後、治療薬を、これらの損傷を受けやすい病変に送達させることができる。あるいは、従来の処置方法が、本発明の画像化方法によって損傷を受けやすい斑が同定された後に、使用される場合がある(例えば、ステントの挿入、血管形成術、または積極的な薬物療法)。
【0031】
本発明の全ての実施形態においては、生物学的システムの中の標的化部分は、その中で使用されるであろう方法(例えば、治療方法、診断方法、画像化方法)に関連して選択されるであろう。例えば、損傷を受けやすいアテローム性の病変/斑の重篤度、範囲、または重篤度と範囲が決定される場合には、生物学的システムには、損傷を受けやすいアテローム性の病変の中に存在している標的分子と相互作用する標的化部分が含まれるであろう。治療的部分が損傷を受けやすいアテローム斑に送達される場合には、生物学的システムには、損傷を受けやすいアテローム斑の中に存在している標的分子と相互作用する標的化部分が含まれるであろう。安定なアテローム性の病変/斑の重篤度、範囲、または重篤度と範囲が決定される場合には、生物学的システムには、安定なアテローム性の病変/斑の中に存在している標的分子と相互作用する標的化部分が含まれるであろう。
【0032】
I.生物学的送達システム
本発明の1つの態様により、アテローム性の病変(安定なアテローム斑、または損傷を受けやすいアテローム斑)を処置、予防、または画像化することにおいて使用される生物学的システムが提供される。本発明の特定の実施形態により、以下を含む生物学的システムが提供される:(a)治療薬または造影剤と、(b)アテローム性の病変(安定なアテローム斑、損傷を受けやすいアテローム斑)の中に存在している標的分子と相互作用する少なくとも1つの標的化部分を含む第1の担体。生物学的システムにより、血管の中のアテローム性の病変(安定なアテローム斑、または損傷を受けやすいアテローム斑)に対して治療薬または造影剤が送達される。標的化部分は、多種多様な担体(以下に記載されるような、治療薬が含まれているナノ粒子またはリポソームが含まれる)とともに使用することができると理解される。
【0033】
1.標的化部分および標的分子
用語「標的化部分」は、本明細書中で使用される場合は、アテローム性の病変に存在している標的分子(例えば、リガンドまたは受容体)と相互作用することができる部分を意味する。限られた交差反応性を有している標的化部分が好ましい。特定の実施形態においては、適切な標的化部分としては、例えば、特異的な結合対のメンバー(例えば、抗体、タンパク質、融合タンパク質、受容体、リガンド、アプタマー、ホーミングペプチド、およびペプチド模倣物)が挙げられる。本発明の送達システムの標的化部分によって、アテローム性の病変の部位(安定なアテローム斑、または損傷を受けやすいアテローム斑)での治療薬または造影剤の存在の増加が生じる。
【0034】
アテローム斑、および具体的には、損傷を受けやすい斑は、局所的な炎症反応の部位である。白血球が炎症部位にひきつけられる主要な機構の1つは、接着分子と、ケモカインと呼ばれる化学走査性分子の炎症部位での発現による。接着分子は細胞接着を媒介し、そしてケモカインは細胞上に存在しているケモカイン受容体との相互作用によって細胞の移動を媒介する;これらの受容体は、白血球上で発現されるそれらのアミノ酸配列(例えば、CCR、CXCR、またはCX3CR)を有しているシステイン残基のそれらの立体配置を特徴とする。損傷を受けやすい斑には、したがって、内皮細胞の損傷によって誘導される接着分子、および炎症によって誘導されるケモカインとケモカイン受容体の両方(これらは、接着分子とケモカインとの相互作用による炎症の領域に帰巣する細胞上に存在している)が含まれるであろう。
【0035】
したがって、例示的な標的化部分としては、CXCL1(増殖調節オンコジーン−α(growth−regulated oncogene−alpha));CXCL5(ENA−78);CXCL8(IL−8);CXCL9(Mig);CXCL10(IP−10);CXCL11(I−TAC);CXCL12(SDF−1);CCL2(MCP−1);CCL3(MIP−1α);CCL5(RANTES);CCL7(MCP−3);CCL17(TARC);CCL22(MDC);フラクタルカイン(fractalkine)(FKN);HSP60、(S)−2−アミノ−4−ホスホノブタン酸、および(S)−3,4−ジカルボキシフェニルグリシン;IL−6、IL−8、IFN−γ、およびTNF−αのようなリガンドが挙げられるが、これらに限定はされない。標的分子はまた、VCAM−1およびICAM−1のような接着分子である場合もある。標的化部分の他の例としては、例えば、CXCR3、CXCR4、CCR4、CX3CR1、トル様受容体、および代謝生成物産性グルタミン酸受容体(mGluRs)のような、これらのリガンドのいずれか1つに結合する受容体が挙げられる。標的化部分のさらなる例としては、本明細書中に記載されるリガンドまたは受容体に結合する抗体が挙げられる。これらのリガンドもしくは受容体の断片または融合タンパク質は、それらがアテローム性の病変に存在している標的分子に結合する限りは、標的化部分として生産することができることが理解される。オステオポンチンもまた、標的分子であり得る。
【0036】
特定の特異的な実施形態においては、生物学的システムには、2つ以上の標的化部分が含まれる。これらの複数の標的化部分は同じ担体上に存在する場合があり、また、異なる担体上に存在する場合もある。好ましくは、これらの複数の標的化部分は、異なる標的分子と相互作用する。より高い感度および/または特異性は、1つの標的化部分によってではなく、複数の標的化部分によって生じるであろうことが予想される。例えば、2つ以上の抗体が標的化部分として使用され、そしてこれらは、アテローム斑の中の、またはアテローム斑の近くの複数の標的分子(例えば、受容体またはリガンド)を認識し、そしてそれらに結合する。
【0037】
上記のように、標的化部分は抗体であり得る。用語「抗体」には、本明細書中で使用される場合には、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、抗体断片、それらの誘導体またはアナログ(これには、以下が含まれるが、これらに限定はされない:Fv断片、単鎖Fv(scFv)断片、Fab’断片、F(ab’)2断片、シングルドメイン抗体、ラクダ化(camelized)抗体および抗体断片、ヒト化抗体および抗体断片、ならびに上記の多価バージョン);多価標的化部分(これには、以下が含まれるが、これらに限定はされない:単特異的抗体または二重特異的抗体、例えば、ジスルフィド安定化Fv断片、scFvタンデム((scFv)断片)、ダイアボディー、トリボディー、またはテトラボディー(これらは通常は、scFv断片に共有結合させられたか、または別の方法で安定化させられた(例えば、ロイシンジッパー、またはヘリックスで安定化させられていた)scFv断片である));所望される標的分子と自然界において相互作用する受容体分子が含まれる。
【0038】
抗体の調製は、当業者に公知の方法(例えば、モノクローナル抗体を作成するための方法)によって行うことができる。これらの方法には、通常、動物(例えば、マウス)を所望される免疫原(例えば、所望される標的分子またはその断片)で免疫化する工程が含まれる。一旦、動物が免疫化され、そして、これは好ましくは、所望される免疫原(単数または複数)で1回以上追加免疫されると、モノクローナル抗体を生産するハイブリドーマを調製することができ、そして周知の方法にしたがってスクリーニングすることができる(例えば、モノクローナル抗体の生産の一般的な概要については、Kuby,Janis,Immunology,第3版,pp.131−139,W.H.Freeman & Co.(1997)(その一部が参照により本明細書中に援用される)を参照のこと)。
【0039】
最近の数十年前の間に、抗体の生産は極めて活発になっている。抗体認識とファージディスプレイ技術を組み合わせたインビトロでの方法により、当業者は、特異的な結合能力を有している抗体を増幅させ、そして選択することができる。例えば、Holt,L.J.et al.,「The Use of Recombinant Antibodies in Proteomics」、Current Opinion in Biotechnology,2000,11:445−449(参照により本明細書中に援用される)を参照のこと。これらの方法は、通常は、伝統的なモノクローナルの調製方法によるハイブリドーマの調製よりもはるかに扱いやすい。結合エピトープは、小さい有機化合物(例えば、ブロモウリジンおよびホスホチロシン)から、7〜9アミノ酸の長さの程度のオリゴペプチドまでの大きさの範囲であり得る。
【0040】
標的化部分は、必ずしも生物学的供給源に由来するものではない。標的化部分は、例えば、合成ペプチドの組み合わせライブラリーからスクリーニングすることができる。1つのこのような方法は、米国特許第5,948,635号(参照により本明細書中に援用される)に記載されている。ここでは、M13のpIII遺伝子の中にランダムなアミノ酸の挿入を有しているファージミドライブラリーの生産が記載されている。これらのファージは、親和性選択によってクローン的に増幅させることができる。
【0041】
特定の実施形態においては、ポリペプチド標的化部分(例えば、ケモカイン、またはケモカイン受容体)の結合領域を変異させること、および変異していない標的化部分と比較して優れた結合特性を有している標的化部分を選択することが所望される場合がある。例えば、ケモカイン受容体の変異体または断片が、アテローム性の病変に存在しているケモカインについてのその優れた結合親和性のために選択され得る。これは、任意の標準的な突然変異誘発技術によって、例えば、誤りが起こる条件下でのTaqポリメラーゼを用いたPCRによって、行うことができる。このような場合には、PCRプライマーを、突然変異が起こる条件下でファージミドプラスミドのscFvをコードする配列を増幅させるために使用することができる。PCR産物は、その後、ファージミドベクターにクローニングすることができ、そして所望される特異性についてスクリーニングすることができる。
【0042】
他の実施形態においては、標的化部分は、それらをプロテアーゼによる切断に対してより耐性であるようにするために修飾される場合がある。例えば、ポリペプチドを含む標的化部分の安定性は、(L)立体配置の自然界に存在しているアミノ酸の1つ以上をD−アミノ酸で置換することによって高めることができる。様々な実施形態においては、標的化部分のアミノ酸残基の少なくとも1%、5%、10%、20%、50%、80%、90%、または100%が、D立体配置であり得る。Dアミノ酸のLアミノ酸での置換によっては、消化管の中の至る所で見られるペプチダーゼの多くの消化能力が中和される。あるいは、ペプチド結合を含む標的化部分の高い安定性は、従来のペプチド結合の修飾の導入によって得ることができる。例えば、ポリペプチド骨格の中への環の導入によっては、胃または他の消化系の臓器の中、および血清の中のポリペプチドを消化することが知られている多くのタンパク質分解酵素の効果を低下させるための高い安定性がもたらされ得る。なお他の実施形態においては、標的化部分の高い安定性は、標的化部分のアミノ酸の間に1つ以上の右旋性アミノ酸(例えば、右旋性フェニルアラニンまたは右旋性トリプトファン)を挿入することによって得ることができる。例示的な実施形態においては、このような修飾により、所望される標的分子との相互作用の活性または特異性には影響を及ぼすことなく、標的化部分のプロテアーゼ耐性が高められる。
【0043】
特定の実施形態においては、標的化部分(例えば、抗体またはその変異体)は、被験体
に投与された場合にそれが免疫原性が低くなるように修飾される場合がある。例えば、被験体がヒトである場合には、抗体は、例えば、ヒトモノクローナル抗体の中に移植されたハイブリドーマに由来する抗体の相補性決定領域(単数または複数)を移植することによって、「ヒト化」される場合がある(例えば、Jones,P.et al.(1986),Nature,321,522−525またはTempest et al.(1991),Biotechnology,9,266−273に記載されている)。トランスジェニックマウス、または他の哺乳動物もまた、ヒト化抗体を発現させるために使用することができる。このようなヒト化は部分的である場合も、また、全体である場合もある。
【0044】
特定の実施形態においては、本発明の標的化部分は融合タンパク質(例えば、Fc断片と融合させられたケモカインまたはケモカイン受容体)であり得る。このような融合タンパク質には、その単離、移動、同定、もしくは検出を簡単にする、および/またはその溶解度を増大させるタグが含まれる場合がある。1つの実施形態においては、融合タンパク質には、抗体のFc断片が含まれる。Fc断片は、プロテインAまたはプロテインGに結合することができる。別の好ましい実施形態においては、融合タンパク質には、融合タンパク質を標的組織に対して選択的に指向させるホーミングペプチドが含まれる。融合タンパク質には、他のタグ(例えば、グルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)、カルモジュリン結合ペプチド、チオレドキシ、マルトース結合タンパク質、HA、myc、ポリアルギニン、ポリHis、ポリHis−Asp、またはFLAGタグが含まれ得る。様々な実施形態においては、本発明の標的化部分には、1つ以上のタグ(同じタグの複数のコピー、または2つ以上の異なるタグが含まれる)が含まれる場合がある。構築を容易にするため、またはその構造的拘束を最適にするために、本発明の標的化部分とタグの間にスペーサー(例えば、ポリペプチド配列または化学的部分)を含めることもまた、本発明の範囲に含まれる。別の実施形態においては、タグ化部分が、タグとタグを除去するための部分の間にプロテアーゼ切断部位が含まれるように構築される場合がある。タグの除去のための適切なエンドプロテアーゼの例としては、例えば、第Xa因子およびTEVプロテアーゼが挙げられる。
【0045】
特定の実施形態においては、本発明の標的化部分には、アテローム性の病変(例えば、安定なアテローム斑、損傷を受けやすいアテローム斑)に対して担体を選択的に指向させるホーミングペプチドが含まれる場合がある。このようなホーミングペプチドの一例は、PCR公開番号WO03/014145(参照により本明細書中に援用される)に記載されている。さらに、標的組織(または臓器)についてのホーミングペプチドは、当該分野で周知の様々な方法を使用して同定することができる。例示的な方法は、インビボでのファージディスプレイ法である。具体的には、ランダムなペプチド配列は、ファージの表面タンパク質との融合ペプチドとして発現させられ、そしてこのランダムペプチドのライブラリーが、全身的な循環に注入される。宿主マウスへの注入後、標的組織または臓器が回収され、その後、ファージが単離され、増殖させられ、そして注射手順が2回以上繰り返される。それぞれの回の注射には、デフォルトにより、ネガティブ選択の成分が含まれる。なぜなら、注射されたウイルスは、組織に対してランダムに結合することができるか、または非標的組織に特異的に結合できるかのいずれかであるからである。非標的組織に特異的に結合するウイルス配列は、選択プロセスによって迅速に排除されるであろう。一方、非特異的結合ファージの数は、選択のそれぞれの回によって減少する。多くの研究室で、脳、腎臓、肺、皮膚、膵臓、小腸、子宮、副腎、網膜、筋肉、前立腺、または腫瘍の血管系について選択的であるホーミングペプチドが同定されている。例えば、Samoylova et al.,1999,Muscle Nerve,22:460;Pasqualini et al.,1996、Nature,380:364;Koivunen et al.,1995、Biotechnology,13:265;Pasqualini et al.,1995,J.Cell Biol.,130:1189;Pasqualini et al.,1996、Mole.Psych.,1:421,423;Rajotte et al.,1998、J.Clin.Invest.,102:430;Rajotte et al.,1999、J.Biol.Chem.,274:11593を参照のこと。米国特許第5,622,699号;同第6,068,829号;同第6,174,687号;同第6,180,084号;同第6,232,287号;同第6,296,832号;同第6,303,573号;同第6,306,365もまた参照のこと。
【0046】
なお他の実施形態においては、標的化部分はペプチド模倣物である場合がある。例えば、他のタンパク質との結合に関与している1つのタンパク質のアミノ酸残基をマップするためのスキャン突然変異誘発を使用することにより、相互作用を促進するそれらの残基を模倣するペプチド模倣化合物を作成することができる。このような模倣物は、その後、標的化部分として、担体を標的組織に送達するために使用することができる。例えば、このような残基の加水分解されないペプチドアナログを、ベンゾジアゼピン(例えば、Freidinger et al.,Peptides:Chemistry and Biology,G.R.Marshall編,ESCOM Publisher:Leiden,Netherlands,1988を参照のこと)、アゼピン(例えば、Huffman et al.,Peptides:Chemistry and Biology,G.R.Marshall編,ESCOM Publisher:Leiden,Netherlands,1988を参照のこと)を使用して作成することができる。
【0047】
2.担体
特定の実施形態においては、本発明の生物学的システムには、治療薬または造影剤を送達するための1つ以上の担体が含まれる。用語「担体」は、本明細書中で使用される場合は、任意の媒体、分子、デバイス、または治療薬もしくは造影剤をアテローム性の病変部位に輸送することができる分子複合体を意味する。担体の例としては、リポソーム、ミセル、細胞、ウイルス粒子、ウイルス、ナノ粒子(例えば、ナノスフェア)、またはマイクロ粒子(例えば、マイクロスフェア)、室のあるマイクロデバイス、エマルジョン、脂質ディスク、ポリマー、ガドリウム結合分子、超常磁性酸化鉄粒子、多様なペルフルオロカーボンナノ粒子、および超微粒気泡が挙げられるが、これらに限定はされない。
【0048】
担体の1つの特異的な例はリポソームである。リポソームは、球形の二重層に並べられた脂質から構成される小胞である。リポソームは通常、小さい単層の小胞(SUV)、大きい単層の小胞(LUV)、または多層の小胞(MLV)として分類される。SUVとLUVは、定義によれば、1つしか二重層を有していないが、MLVには多くの同心の二重層が含まれる(例えば、Stryer,Biochemistry,第2版,W.H.Freeman & Co.,p.213(1981)を参照のこと)。リポソームは、様々な技術によって調製することができる(例えば、Szoka et al.,Ann.Rev.Biophys.Bioeng.9:467(1980);米国特許第5,631,018を参照のこと)。リポソームは、通常、リン脂質から調製され、通常、これにはコレステロールが含まれる。1つの実施形態においては、リポソームには、重合させられていないか、または最小限に重合させられたリン脂質が含まれる。別の実施態様においては、リポソームは、二重結合および三重結合を含む単量体リン脂質の重合によって調製される。重合させることができる官能基の例としては、オレフィン、アセチレン、アクリレート、およびチオールが挙げられるが、これらに限定はされない。リポソームは、フリーラジカル開始(free radical initiation)、ならびに紫外線およびγ線の照射が含まれるが、これらに限定はされない当業者に公知の様々な技術によって重合させることができる。適切なリン脂質は当業者に公知であり、これには、ホスファチジルコリン、スフィンゴミエリン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルセリン、ホスファチジン酸、DODPC(1,2−ジ(2,4−オクタデカジエノイル)−3−ホスファチジルコリン)、2,4−ジエンリン脂質、ジ−インリン脂質が含まれるが、これらに限定はされない。例えば、米国特許第4,485,045号および同第4,861,521号(これらはそれらの全体が参照により本明細書中に援用される)を参照のこと。
【0049】
本発明の組成物での使用に適しているリポソームとしては、小胞を形成する脂質から主に構成されているリポソームが挙げられる。小胞を形成する脂質は、リン脂質によって例示されるように、水中で自発的に二重層の小胞を形成することができる。リポソームにはまた、脂質二重層の中に取り込まれる他の脂質(例えば、コレステロール)も含まれる場合がある。これには、内部と接触する疎水性部分、二重膜の疎水性領域、および二重膜の極性表面である外側に向かう頭基部分が含まれる。
【0050】
担体の別の特異的な例としては、脂質ミセル(例えば、疎水性薬物と共に使用されるPEG−DSPEから構成されるミセル)が含まれる(例えば、米国特許公開番号20020192275(その全体が参照により本明細書中に援用される)を参照のこと)。
【0051】
担体の別の特異的な例は細胞である。一般的には、治療薬をコードする核酸が、発現のために細胞内に導入される。標的化部分は、細胞対合技術のような方法によって、細胞の表面上に結合させることができる(例えば、米国特許第6,316,256号を参照のこと)。あるいは、細胞は、標的化部分(例えば、ケモカインリガンドまたは受容体)を発現するように操作される。特定の場合には、細胞は、アテローム性の病変(任意の分化全能性の幹細胞、多能性(pluripotent)幹細胞、および多能性(multipotent)幹細胞、ならびにそれらの系統の子孫細胞が含まれる)への送達に適している先祖細胞であり得る。先祖細胞は、胚組織または生体組織のいずれかに由来し得る。このような細胞の一例としては、骨髄に由来する間質細胞(MSC)が挙げられる。細胞内に核酸を送達するための方法およびベクターは、当該分野で周知である(以下の「治療薬」も参照のこと)。
【0052】
3.治療薬
特定の実施形態においては、本発明により、アテローム性動脈硬化症およびアテローム性動脈硬化症を伴う心血管疾患を処置または予防するための、当業者が利用できる任意の治療薬の送達が意図される。本発明の状況においては、表現「治療薬」にはまた、活性のある代謝物質とそのプロドラッグも含まれる。活性のある「代謝物質」は、治療薬が代謝されると生じる、治療薬の活性のある誘導体である。「プロドラッグ」は、治療薬に代謝されるか、または治療薬の活性のある代謝物質(単数または複数)に代謝されるかのいずれかの化合物である。本発明は、治療薬(例えば、低分子量の化合物、放射性核種、薬物、酵素、生物学的活性を有しているペプチドおよび/またはタンパク質、抗体、核酸、あるいは、治療用ポリペプチドをコードする核酸または遺伝子、発現ベクター、あるいは他の核酸構築物(例えば、裸のプラスミドDNA、1つ以上の遺伝子を保有している任意のベクター、任意のセンスまたはアンチセンスRNA、任意のリボザイム、またはRNA緩衝(RNAi)の目的のための任意のsiRNA))を投与するために使用することができる。
【0053】
治療薬は、標的化部分に直接または間接的に連結させることができ、そして投与されると、これらの治療薬は、アテローム性の病変(例えば、安定なアテローム斑、損傷を受けやすいアテローム斑)の部位に局在化するようになり、そして、アテローム性の病原の領域の中での動脈血流の制御を助ける、動脈血流を少なくする、または他の方法で動脈血流の改善を促進し、さらに、斑からのコレステロールの除去の制御を助ける、コレステロールの除去を少なくする、または他の方法でコレステロールの除去を促進し、それによって、損傷を受けやすい斑の破裂または侵食を阻害するかまたはその阻害を助け、これによって血栓の形成が阻害されるか、またはその阻害が助けられるであろう。
【0054】
例えば、本発明の治療薬には、繊維素溶解薬、例えば、血栓溶解剤(例えば、ストレプトキナーゼ)、組織プラスミノーゲン活性化因子、プラスミン、ウロキナーゼ、組織因子プロテアーゼ阻害剤、線虫から抽出された抗凝固タンパク質、メタロプロテイナーゼ阻害剤、抗炎症剤(単数または複数)、スタチン、HDL(例えば、HDLの主要タンパク質、apo A1、またはHDLの活性と同様の治療活性を有しているapo A1のペプチド成分);変異体apo A1(例えば、apo A1 Milano、または同様の治療活性を有している他の変異体形態)が含まれる。治療薬はまた、上記物質のいずれかをコードする核酸でもあり得る。
【0055】
治療薬の1つの特異的な例としては、以下が挙げられるが、これらに限定はされない:(a)アテローム性の病変の中の脂質濃度を低下させる物質、例えば、HMG−CoAレダクターゼ阻害剤、甲状腺ホルモン剤(thyromimetic)、フィブラート、またはペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPAR)のアゴニスト;(b)哺乳動物において酸化プロセスを緩和する物質、例えば、サイトカインによって刺激されるシクロヒドロラーゼ−1(GTPCH−1)またはハプログロビン;(c)内皮細胞受容体、内皮細胞接着分子、内皮細胞インテグリン、平滑筋細胞受容体、平滑筋細胞接着分子、または平滑筋細胞インテグリンの発現を調節する物質;(d)哺乳動物の血管内の内皮細胞または平滑筋細胞の増殖を調節する物質;(e)炎症関連受容体(もしくはそのような受容体のリガンド、もしくはそのような受容体のシグナル伝達経路)を調節する物質;または炎症関連転写因子(ケモカイン受容体、組織因子(TF)から選択される);RAGE受容体、トル様受容体、アンギオテンシン受容体、TGF受容体、インターロイキン受容体、TNF受容体、IFNγ受容体;代謝生成物産性グルタミン酸8(mGlu8)受容体、NF−κbを活性化させることができる受容体;CXCL9(Mig);CXCL10(IP−10);CXCL11(I−TAC);CXCL12(SDF−1およびその受容体CXCR4);CCL17(TARC);CCL22(MDC);CCL3(MIP−1α);CCL5(RANTES);CCL7(MCP−3);CXCL1(増殖調節オンコジーンα);CXCL5(ENA−78);CXCL8(IL−8);フラクタルカイン(FKN;およびその受容体CX3CR1);HSP60、トル様受容体、代謝生成物産性グルタミン酸受容体(mGluRs;およびそのリガンド、例えば、(S)−2−アミノ−4−ホスホノブタン酸、および(S)−3,4−ジカルボキシフェニルグリシン);c−Fos、IL−6、IL−8、MCP−1、IFN−γ、およびTNF−α;、ならびに、接着分子(例えば、VCAM−1およびICAM−1);(f)内皮細胞、血管の平滑筋細胞、リンパ球、単球、もしくは好中球の増殖、アポトーシス、または壊死を調節する物質;(g)細胞外マトリックスタンパク質(例えば、コラーゲン、エラスチン、またはプロテオグリカン)の生産、分解、または架橋を調節する物質);(h)哺乳動物の血管内での細胞の活性化、分泌、または脂質負荷を調節する物質;(i)哺乳動物の血管内での樹状細胞もしくは単球/マクロファージ細胞の活性化または増殖を調節する物質;(j)哺乳動物の血管壁での血小板の活性化もしくは接着を調節するか、または別の方法で、血餅の形成を阻害することができる物質(例えば、活性化されたプロテインC(APC));ならびに、(k)タンパク質である治療用物質をコードする核酸からなる物質(この場合、タンパク質である治療薬は、アテローム性の病変に罹患している哺乳動物に有効である、インビボでの活性を有している)。
【0056】
1つの実施形態においては、治療薬は、その活性がアテローム性の病変に罹患している哺乳動物(例えば、ヒト)に有用であり得るタンパク質をコードする核酸である。遺伝子治療薬は、例えば、病変の大きさを小さくすることができる、血小板の病変との相互作用を防ぐことができる、平滑筋細胞の増殖を減少させるかもしくは妨げることができる、損傷を受けやすい斑の侵食もしくは破裂の可能性を低くすることができる、または別の方法で、アテローム性の病変を安定化させるかもしくはアテローム性の病変と有効に相互作用することができる。別の実施形態においては、治療薬は、アテローム性の病変の部位にある有害なタンパク質の発現を減少させるために有用なアンチセンスRNAを作成することができる核酸である。このような治療用の核酸は、本発明の標的化部分に直接結合させることができ、また、これは、当業者が入手できるファージ粒子、リポソーム、または他の形質転換ベクターの中に存在させることもできる。
【0057】
別の実施形態においては、ポリペプチド治療薬をコードする核酸は、インビボで直接投与される。この場合、これは、標的化部分への連結によってアテローム性の病変の部位に対して標的化される。状況によっては、「裸」のDNAが標的化部分に連結させられ、これは直接、例えば、制御された圧力によって媒介される送達方法の使用によって、送達することができる(例えば、von der Leyen,Braun−Dullaeus,et al.,Hum.Gene Ther.1999,10:2355を参照のこと)。このような方法によっては、核酸、遺伝子、およびオリゴヌクレオチドの安全性と、アテローム性の病変(例えば、安定なアテローム斑、損傷を受けやすいアテローム斑)の部位にある細胞への効率的な動脈による移動が提供される。
【0058】
別の実施形態においては、標的化部分(例えば、ケモカインリガンドまたは受容体)をコードする核酸は、ハイブリッドまたは組み換え体核酸を形成する生物学的に活性な治療薬をコードする別の核酸と連結される。ハイブリッドまたは組み換え体核酸は、目的の細胞型の中で発現される適切なベクターの中に取り込まれる。得られるベクターを含む細胞は、その後、アテローム性の病変(例えば、安定なアテローム斑、損傷を受けやすいアテローム斑)に、インビボまたはエクスビボ投与によって送達される。
【0059】
一例として、治療薬には、アテローム性の病変の進行の部位、もしくは損傷を受けやすいアテローム性の病変の部位での炎症事象を阻害するタンパク質またはアンチセンスRNAをコードする遺伝子あるいは核酸が含まれる。このような遺伝子または核酸には、ケモカイン受容体(CCR、CXCR、またはCX3CRのいずれか)のドミナント−ネガティブ形態または可溶性形態、ならびに、接着分子(例えば、VCAM−1およびICAM−1)が含まれる。同様に、トル様受容体のドミナント−ネガティブ形態または可溶性形態(例えば、TLR−1、TLR−2、TLR−3、TLR−4、またはTLR−5)が、本発明の治療薬であり得る。別の例として、治療薬には、泡沫細胞の形成を阻害し、したがって、アテローム性の病変の進行を遅らせる、および/またはアテローム性の病変の退行を刺激する、タンパク質またはアンチセンスRNAをコードする遺伝子あるいは核酸が含まれる。このような遺伝子または核酸は、例えば、マクロファージスカベンジャー受容体MSR(sMSR)の分泌型「デコイ」または変異体をコードし得る。
【0060】
特定の実施形態においては、治療薬は、アンチセンスRNAをコードする核酸である。このようなアンチセンスRNAは、通常、その通常の方向とは反対の方向で発現カセットの中にクローニングされた「センス」DNA配列である。そのような反対の方向で発現カセットの中のプロモーターに動作可能であるように連結されると、その核酸によってコードされる自然界に存在しているmRNAに相補的であるRNAが合成される。
【0061】
特定の実施形態においては、治療薬は、RNAiと呼ばれる機構(RNAによって媒介される緩衝)による相同遺伝子の発現のサイレンシングを誘発することができる二本鎖のRNA(dsRNA)である(Fire et al.,1998、Nature 391,806−811)。RNAiは進化の過程で保存されている表現形であり、RNaseIIIエンドヌクレアーゼであるDicerの作用によるインビボでの活性のある小さい干渉RNA(siRNA)の生成が含まれている多工程のプロセスである。得られる21から23ntのsiRNAによって、相補的な相同RNAの分解が媒介される(Bernstein et al.,2001、RNA 7,1509−1521;Sharp et al.,2001、Genes Dev.15,485−490)。このようなRNAi技術は、RNAiを使用することにより特異的な遺伝子の発現をブロックするために、本発明と共に使用することができる。その発現をブロックすることができる目的のRNAとしては、本明細書中に記載されるような同じ標的タンパク質、遺伝子、RNA、およびDNAをコードするものが挙げられる。
【0062】
特定の態様においては、アテローム斑(単数または複数)への治療薬の標的化させられた送達によって、内皮の被覆率を高めることができ、そしてアテローム性動脈硬化症の部位(特に、破裂しやすく、そして血栓を生じやすい斑の中、不安定な狭心症、心筋梗塞、または脳卒中)の治癒を促進することができる。内皮を治癒させるためのこのような標的化させられた送達によって利点を得ることができる他の領域としては、血管インターベンション(例えば、血管形成術またはステント挿入)の部位が挙げられる。
【0063】
特定の実施形態においては、本発明の治療薬または標的化部分をコードする核酸を、発現カセットおよび/または発現ベクターの中に含めることができる。形質転換のための発現カセットを調製するためには、治療薬をコードする核酸は、環状または直鎖状の二本鎖または一本鎖であり得る。当業者が入手することができる任意のベクター(これには、ウイルス(アデノウイルス、レトロウイルス、レンチウイルス、もしくは他のウイルス)ベクター、または合成のベクター(例えば、リポソーム、マイクロ粒子、もしくはナノ粒子)が含まれる)をこの目的のために使用することができ、遺伝子、リボザイム、アンチセンスオリゴヌクレオチド、dsRNA、またはDNAのアテローム性の病変への送達を改善することができる。哺乳動物細胞の中への外来遺伝子または自然界に存在している遺伝子の導入のための多数のベクターシステムが公知である。これらには、以下が含まれる:SV40ウイルス(Okayama et al.,1985);ウシパピローマウイルス(DiMaio et al.,1982);アデノウイルス(Morin et al.,1987;Dai et al.,1995;Yang et al.,1996;Tripathy et al.,1996;Quantin et al.,1992;Rosenfeld et al.,1991;Wagner,1992;Duriel et al.,1992;Curiel,1991;LeGal LaSalle et al.,1993;Kass−Eisled et al.,1993);アデノ随伴ウイルス(Muzyczka,1994;Xiao et al.,1996);単純ヘルペスウイルス(Geller et al.,1998;Huard et al.,1995;米国特許第5,501,979号);レンチウイルス(Douglas et al.,Hum Gene Ther.12(4):410−413(2001)、Miyoshi,et al.,Virol.72:8150−8157(1999),Garvey et al.,Virology,175:391−409,1990、Berkowitz et al.,J.Virol.7(7):33713382(2001);WO01/44458、米国特許第6,277,633号および同第5,380,830号。
【0064】
任意のこのようなベクターには、ポリペプチド治療薬のコード領域に動作可能であるように連結された誘導性プロモーターが含まれる場合がある。このようなプロモーターにより、適切な転写インデューサーによる核酸の制御可能な発現が可能となる。ベクターはキメラDNAの形態であり得る。キメラDNAには、標的細胞内での核酸の発現を促進する制御配列が隣接している選択された核酸のコード領域が含まれる。本明細書中で使用される場合は、「キメラ」は、ベクターに、少なくとも2つの異なる種に由来するDNAが含まれていること、または同じ種に由来するDNAが含まれており、これらは、その種の「自然界に存在している」タイプまたは野生型においては起こらない様式で連結されているかもしくは結合させられていることを意味する。用語「制御配列」は、特定の宿主細胞の中での動作可能であるように連結されたコード領域の発現に不可欠なDNA配列を意味するように定義される。真核生物細胞に適している制御配列には、プロモーター、ポリアデニル化シグナル、およびエンハンサーが含まれる。さらに、他のエレメントが、細胞の中で形質転換核酸またはベクターの最適な能力を得るために当業者に所望される場合には、核酸またはベクターの中に含められる場合がある。表現「動作可能であるように連結された」は、核酸が別の核酸配列と機能的な関係で配置されていることを意味するように定義される。例えば、制御配列は、有用なタンパク質をコードする核酸に動作可能であるように連結される;プロモーターまたはエンハンサーは、それがコード領域の転写に影響を与える場合には、コード領域に動作可能であるように連結される:あるいは、リボソーム結合部位は、それが翻訳を促進するように配置される場合には、コード領域に動作可能であるように連結される。
【0065】
他の実施形態においては、本発明は、アテローム性の病変(例えば、安定なアテローム斑、損傷を受けやすいアテローム斑)の部位に、あるいは、血管再建術(ステント挿入または透析のための専用の取り付け口(access port)が含まれる)の部位に、治療薬として薬学的化合物(薬剤)を送達することに関する。このような薬学的化合物は、1つ以上の標的化部分に対して直接連結させることができる。あるいは、これらは、1つ以上の標的化部分が含まれている化学的組成物の中に取り込ませることができる。別の実施形態においては、これらは、1つ以上の標的化部分が含まれている人工の担体(例えば、リポソームまたは他のマイクロ粒子)の中に取り込ませることができる。このような薬剤治療の例としては、HMG−CoAレダクターゼ(例えば、スタチン)を調節する化合物、フィブラート、およびPPARに影響を与える他の化合物(例えば、PPARα、γ、および/またはδアゴニスト)、ならびに、甲状腺ホルモン剤(thyromimetic)が挙げられる。
【0066】
特定の特異的な実施形態においては、本発明の治療薬には、HDL、HDLと同様の治療的作用(例えば、コレステロールの結合、およびその分解に関係している組織へのその輸送、またはコレステロールの輸送に関係している受容体(例えば、ABCA1およびSR−B1)の結合)を有しているHDLのペプチド成分、ならびに、HDLのペプチド/タンパク質成分をコードする核酸が含まれる。高いHDLレベルは、アテローム性動脈硬化症の防御効果と関係しており、そして高コレステロール血症の動物でのHDLの上昇は、アテローム性動脈硬化症を緩和することが示されている。したがって、本発明は、HDLの自然界に存在しているペプチド/タンパク質成分、apoA−I Milano、またはapoA−I模倣ペプチドをコードする核酸(DNA、RNA)、をアテローム性の病変(例えば、損傷を受けやすい斑)に送達し、それによって、HDLの既存の病変の大きさを縮小させ、そして破裂のリスクがある斑を安定化させることに関する。HDLの自然界に存在しているペプチド/タンパク質、apoA−I Milano、またはapoA−I模倣ペプチドをコードするトランスジーン(単数または複数)を、上記のような任意の担体(例えば、細胞およびリポソーム)を介して導入することができる。例えば、Brewer et al.,(2004)Arterioscler.Thromb.Vasc.Biol.,24:1755−1760;Brewer(2004)Arterioscler.Thromb.Vasc.Biol.24:387−381;およびBrewer(2004)N.Engl.J.Med.350:1491−1494を参照のこと。
【0067】
1つの特異的な実施形態においては、本発明により、HDL治療薬を個体に送達するための生物学的システムが提供される。生物学的システムには:(a)HDL、apoA−1、変異体apoA−1、apoA−1模倣ペプチド、およびapoA−1もしくはapoA−1のペプチド模倣物のいずれかをコードする核酸から選択されるHDL治療薬;ならびに(b)それによって(a)のHDL治療薬が血管に送達される担体が含まれる。例えば、apoA−1タンパク質またはapoA−1模倣ペプチドは、コレステロール輸送に関与している受容体(例えば、ATP結合カセットトランスポーター1(ABCA1)またはSR−B1受容体)に結合する。状況によっては、担体は、ナノ粒子、マイクロ粒子、細胞、およびリポソームから選択される。状況によっては、核酸HDL治療薬は、発現ベクターの中のDNAである。
【0068】
特定の特異的な実施形態においては、本発明により、血管の中のアテローム斑を標的とする送達システムが提供される。送達システムには、(a)HDL、apoA−1、変異体apoA−1、apoA−1模倣ペプチド、およびapoA−1もしくはapoA−1のペプチド模倣物のいずれかをコードする核酸から選択されるHDL治療薬;ならびに(b)アテローム斑の構成成分と相互作用/結合し、そしてアテローム斑に対して(a)のHDL治療薬を送達する担体が含まれる。例えば、apoA−1タンパク質またはapoA−1模倣ペプチドは、コレステロールの輸送に関係している受容体(例えば、ATP−結合カセットトランスポーター1(ABCA1)またはSR−B1受容体に結合する。状況によっては、担体は、ナノ粒子、マイクロ粒子、細胞、およびリポソームから選択される。状況によっては、核酸HDL治療薬は、発現ベクターの中のDNAである。説明のために、担体は、その表面上に、アテローム斑の構成成分(例えば、斑自体の構成成分(斑上に存在している分子、または斑の中に通常存在している細胞によって発現される分子)、斑に移動した細胞、斑の細胞外マトリックス、斑の中に存在している血管、例えば、脈管が含まれる)、あるいは、斑から放出された/脱落した産物の結合パートナーを有する。特定の場合には、アテローム斑は、破裂しやすい。
【0069】
なお別の特異的な実施形態においては、本発明により、以下が含まれている発現ベクターが提供される:(a)apoA−1、変異体apoA−1、apoA−1模倣ペプチドから選択されるHDLのタンパク質成分をコードするDNA;および(b)アテローム斑を含む血管の中で特異的に発現されるプロモーター。この場合、(a)のDNAは、(b)のプロモーターに動作可能であるように連結させられている。状況に応じて、発現ベクターには、損傷を受けやすいアテローム斑を含む血管の中で特異的に発現されるプロモーターが含まれる。単なる説明ではあるが、このようなプロモーターの一例は、炎症の状況に通常は関係している活性化因子についての結合部位を含むプロモーター(例えば、MCP−1のプロモーター)であり;別の例は、新たに伸びつつある血管に通常は関係している活性化因子についての結合部位を含むプロモーター(例えば、VEGFのプロモーター)である。
【0070】
4.造影剤
特定の実施形態においては、本発明により、アテローム性の病変の検出および診断のために当業者が入手することができる任意の造影剤を送達することが意図される。造影剤の例としては、放射性物質;造影剤;磁性物質または常磁性物質;リポソーム、ミセル、細胞、ウイルス粒子、ウイルス、マイクロ粒子(例えば、マイクロスフェア)、ナノ粒子(例えば、ナノスフェア)、室のあるマイクロデバイス、エマルジョン、脂質ディスク、ポリマー、ガドリウム結合分子、超常磁性酸化鉄粒子、多様なペルフルオロカーボンナノ粒子、ならびに、超微粒気泡が挙げられるが、これらに限定はされない。
【0071】
例えば、放射性物質は、放射性ヨウ素、テクネチウム、イットリウム、または他の放射性医薬品である。例えば、造影剤は、ガドリウム、マンガン、硫酸バリウム、ヨウ素化または非ヨウ素化物質、イオン性物質または非イオン性物質、超常磁性酸化鉄粒子、あるいは多様なペルフルオロカーボンナノ粒子である。例えば、リポソームは、放射性物質、造影剤、もしくは任意の他の造影剤(これには、ガドリウム、マンガン、硫酸バリウム、ヨウ素化または非ヨウ素化物質、イオン性物質または非イオン性物質、超常磁性酸化鉄粒子、あるいは多様なペルフルオロカーボンナノ粒子が含まれるが、これらに限定はされない)を保有している。例えば、発現ベクターまたはウイルスによってコードされる検出薬は、蛍光ポリペプチド(例えば、ルシフェラーゼ)である。
【0072】
本発明では、CT、蛍光透視法、SPECT画像解析、光学的画像解析、PET、MRI、またはγ線画像解析に使用されている任意の造影剤が意図されることが理解される。
【0073】
特定の実施形態においては、造影剤は標的化部分に直接連結させられ、アテローム性の病変の部位に送達される。状況によっては、造影剤は、標的化部分を含む担体(例えば、リポソーム、ナノ粒子など)に取り込まれる。
【0074】
II.治療的適用
本発明の特定の態様は、個体のアテローム性動脈硬化症、またはアテローム性動脈硬化症を伴う心血管疾患の処置の方法に関する。望ましくない症状(例えば、心血管疾患、アテローム性動脈硬化症、心臓発作、または脳卒中)の臨床的な発現の前に投与される場合は、処置は予防的であり、例えば、これによって、症状を発症する程度が減少(全体的に、または部分的に)される。望ましくない症状の発現後に投与される場合は、処置は治療的である(すなわち、すでに存在している望ましくない症状またはそれによる副作用を軽減する、緩和する、または維持することが意図される)。好ましい実施形態においては、個体はヒトである。
【0075】
1つの特異的な態様により、個体においてアテローム性動脈硬化症の発症を遅らせる方法が提供される。別の特異的な態様によっては、個体においてアテローム性動脈硬化症を処置または予防する方法が提供される。このような方法には、それが必要な個体に対して、(a)治療薬と(b)アテローム性の病変の中に存在している標的分子と相互作用する標的化部分を含む担体が含まれている治療有効量の生物学的システムを投与する工程が含まれる。この場合、生物学的システムにより、血管の中のアテローム性の病変に対して治療薬が送達される。表現「治療有効量」は、任意の処置に適用することができる合理的な利点/リスク比で、所望される局所的効果または全身的効果を生じるそのような物質の量を意味する。特定の実施形態においては、化合物の治療有効量は、その治療指数、溶解度などに応じて様々であろう。例えば、本発明の方法によって発見された特定の化合物は、そのような処置に適用することができる合理的な利点/リスク比を生じるために十分な量で投与され得る。
【0076】
一般的には、アテローム性の病変には、斑の破裂、斑の侵食、急性冠不全症候群、脳卒中、一過性虚血発作、心臓発作、狭心症、不安定狭心症、血栓症、心筋梗塞、虚血性心疾患、冠動脈疾患、末梢動脈疾患、または移植によって誘導される動脈硬化症のような症状が伴う。したがって、用語「アテローム性動脈硬化症を伴う心血管疾患」には、アテローム性動脈硬化症の病変の結果である、アテローム性動脈硬化症に医学的に関係している上記の症状または疾患の任意のものについての言及が含まれる。「冠動脈疾患」(「CAD」)は、冠動脈のアテローム性動脈硬化症への関与を特徴とする病理学的状態である。これは最初は穏やかな、動脈の最小限の狭窄であり、これによっては冠動脈の流れが損なわれることはなく、したがって、心筋の虚血に至ることはなく、無症候性である。それにもかかわらず、このような斑は、突然侵食されるか、または破裂する可能性があり、これによってACSに至る可能性がある。病変が進行すると、これらは十分な動脈の閉塞を生じ、その結果、虚血が起こる。この時点で、疾患は症候性となる(例えば、狭心症および心筋梗塞)。本明細書中で使用される場合は、CADには、症候性の疾患と無症候性の疾患の両方が含まれる。同じ事柄が、脳および脚に供給する動脈血管のアテローム性動脈硬化症への関与にも、当てはまる。斑の侵食または破裂は、最も一般的には、比較的穏やかであり、まだ血流が損なわれていない病変の中で起こる。結果として、アテローム性動脈硬化症の重い症状(心臓発作、脳卒中、突然死)が、事前にあまり深刻ではない症状の発症なく、疾患の主症状として起こり得る。
【0077】
本明細書中に記載される方法のいくつかの実施形態においては、個体は、心臓血管のアテローム性動脈硬化症、脳血管のアテローム性動脈硬化症、末梢血管のアテローム性動脈硬化症、冠状動脈性心臓アテローム性動脈硬化症、またはそれらの併発に罹患している。他の実施形態においては、被験体は、肥満、インシュリン耐性、糖尿病、高血圧、高コレステロール血症、またはそれらの併発に罹患している。
【0078】
1つの特異的な実施形態においては、本発明により、個体においてアテローム性の病変の発症を遅らせる方法が提供される。この方法には、個体に対して、治療有効量の生物学的システムを投与する工程が含まれる。生物学的システムには、(a)HDL、apoA−1、変異体apoA−1、apoA−1模倣ペプチド、およびapoA−1もしくはapoA−1のペプチド模倣物のいずれかをコードする核酸から選択されるHDL治療薬;ならびに(b)それによって(a)のHDL治療薬が血管に送達される担体が含まれる。
【0079】
別の特異的な実施形態においては、本発明により、その必要がある個体において、アテローム斑の中のコレステロール濃度を下げる方法が提供される。この方法には、個体に対して、治療有効量の送達システムを投与する工程が含まれる。生物学的システムには、(a)HDL、apoA−1、変異体apoA−1、apoA−1模倣ペプチド、およびapoA−1もしくはapoA−1のペプチド模倣物のいずれかをコードする核酸から選択されるHDL治療薬;ならびに(b)アテローム斑の構成成分と相互作用/結合し、そしてアテローム斑に対して(a)のHDL治療薬を送達する担体が含まれる。
【0080】
特定の実施形態においては、本発明のこの方法にはさらに、患者に対して、治療有効量の少なくとも1つの別の物質(例えば、スタチン(例えば、アトロバスタチン、セリバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、メバスタチン、パラバスタチン、ロスバスタチン、シニバスタチン)、フィブラート(例えば、ベクロブラート、ベザフィブラート、シプロフィブラート、クリノフィブラート、クロフィブラート)、クロフィブラート、エトフィリンクロフィブラート、フェノフィブラート、ジェムフィブロジル、ピリフィブラート、プラフィブリブ(plafibribe)、シニフィブラート、トコフィブラート、胆汁酸結合樹脂、コレセベライン、コレスチポール、コレスチラミン、ジビスチラミン、ニコチン酸塩、アシピモックス、ビニフィブラート、エトフィブラート、ニセリトロール、ニコフィブラート、ピロザジル、ロニフィブラート、ソルビニケート、ニコチン酸トコフェリル、オメガトリグリセリド、オメガ酸エチルエステル、オメガマリントリグリセリド、アシル−コエンザイムAコレステロールO−アシルトランスフェラーゼ(ACAT)阻害剤、アバシミブ、PPARγアゴニスト(例えば、ピオグリタゾン)、コレステロール吸収阻害剤(例えば、エゼチミブ)、リパーゼ阻害剤、および/またはリスタット)を投与する工程が含まれる。
【0081】
本明細書中に記載される方法のいくつかの実施形態においては、1つ以上の治療薬が含まれている生物学的システムを、薬学的組成物として処方し、そして、選択される投与経路に適応させられた様々な投与形態で哺乳動物宿主(例えば、ヒト)に投与することができる。例えば、生物学的システムは、個体(または被験体)に、静脈内、筋肉内、皮内、皮下、ステントによって、またはそれらの組み合わせによって投与することができる。他の実施形態においては、1つ以上の治療薬が含まれている生物学的システムは全身的に投与されるか、または、アテローム斑の部位に局所投与される。
【0082】
生物学的システムの溶液は、状況に応じて毒性のない界面活性剤と混合させられた、水
の中に調製することができる。分散液もまた、グリセロール、液体のポリエチレングリコール、トリアセチン、およびそれらの混合物の中に、ならびに油中に調製することもできる。通常の保存および使用の条件下では、これらの調製物には、微生物の増殖を防ぐための保存剤が含まれる。
【0083】
特定の実施形態においては、本発明の治療方法は、心血管疾患の別のタイプの治療薬(ストレプトキナーゼ、組織プラスミノーゲン活性化因子、プラスミン、ウロキナーゼ、組織因子プロテアーゼ阻害剤、線虫から抽出された抗凝固タンパク質、メタロプロテイナーゼ阻害剤、および抗炎症剤が含まれるが、これらに限定はされない)と組み合わせることができる。
【0084】
III.診断および画像化適用
特定の態様においては、本発明は、アテローム性動脈硬化症の診断および予後診断の方法、ならびに、個体(好ましくは、ヒト)の症候性のアテローム性動脈硬化症、またはアテローム性動脈硬化症を伴う心血管疾患の発症の可能性を予想する方法に関する。用語「診断」は、通常は、個体が目的の疾患または障害(例えば、アテローム性動脈硬化症)に罹患しているかどうかを決定するために、他のアッセイによる結果と組み合わせて、当業者が使用することができる結果を提供するアッセイを意味する。用語「予後診断」は、そのような疾患または障害を有している個体が疾患の合併症(例えば、突然死、心臓発作、または脳卒中)を発症する可能性を評価するためのアッセイの使用を意味する。用語「薬理遺伝学的」は、グループの中のどの個々の患者が特定の治療的もしくは予防的組成物または処置に対して最良に反応するかを予想するためのアッセイの使用を意味する。
【0085】
1つの特異的な実施形態においては、本発明により、個体のアテローム性の病変に対して造影剤を送達する方法が提供される。この方法には、個体に対して、治療有効量の生物学的システムを投与する工程が含まれる。生物学的システムには、(a)造影剤と(b)アテローム性の病変の中に存在している標的分子と相互作用する標的化部分を含む担体が含まれている。この場合、生物学的システムにより、血管の中のアテローム性の病変に対して造影剤が送達される。生物学的システムは、様々な経路(例えば、静脈内投与)によって個体に送達することができる。
【0086】
別の特異的な実施形態においては、本発明により、個体のアテローム性の病変の重篤度を評価する方法が提供される。この方法には、1)(a)造影剤と(b)アテローム性の病変の中に存在している標的分子と相互作用する標的化部分を含む担体が含まれている生物学的システムを投与する工程;および2)個体のアテローム性の病変に対する造影剤の量、局在化、形状、密度、または相対的な分布を観察する工程が含まれる。
【0087】
本明細書中に記載される本発明の方法は、個体の体内のどこであっても、アテローム性の病変の位置、範囲、および病理学的組成物を診断するために使用することができることが理解される。例えば、アテローム性の病変に送達される造影剤の検出によって、病変の位置、形状、範囲、およびパターンに関する情報を提供することができる。状況によっては、本発明の方法は、様々な段階のアテローム性の病変を検出することができ、したがって、病変の病期または重篤度、および血栓の起こり得るリスクを診断するために使用することができる。特定の場合には、造影剤は、血管内皮の内腔表面に、その中に、および/またはその範囲全体に送達される。
【0088】
特定の実施形態においては、本発明は、個体の身体の画像化を行うことに関する。「身体の画像化」は、本明細書中で使用される場合は、個体の体全体またはその一部の画像化を意味する。身体の画像化はポジティブであり得、すなわち、特異的なタイプのアテローム性の病変(例えば、損傷を受けやすい斑)の存在を検出するために使用することができる。別の実施形態においては、ポジティブな身体の画像化は、安定なアテローム性の病変/斑の存在、またはそれが存在しないことを検出するために使用することができる。あるいは、身体の画像化は「ネガティブ」もあり得る。すなわち、これは、特異的なタイプのアテローム性の病変(例えば、損傷を受けやすい斑)が存在しないことを検出するために使用することができる。ポジティブおよびネガティブな身体の画像化のいずれによっても、正常な、および異常な病状(例えば、アテローム性の病変)の両方の視覚化および/または検出ができる。状況によっては、このような画像化方法は、アテローム性の病変の範囲、大きさ、および/または数を定量あるいは決定するために使用することができる。したがって、疾患の範囲を推定することができ、例えば、臨床的な診断および/または予後診断が容易になる。
【0089】
身体の画像化のためには、造影剤が個体に投与される。造影剤は、1つ以上の標的化部分に対して、直接または間接的のいずれかで連結される。この場合、標的化部分は、アテローム性の病変に結合するかまたは局在化する。特定の場合には、造影剤が含まれている生物学的システムが個体に投与(例えば、静脈内または動脈内)され、その後、個体は、血管の中の造影剤の存在もしくはそれが存在しないこと、あるいはその濃度について評価される。「濃度」は、本明細書中で使用される場合は、個体の体内の特定の位置にある造影剤の量である。濃度が、個体の中での造影剤の単なる循環または拡散から予想されるよりも高い場合には、個体は、アテローム性の病変を有していると決定される。濃度は、標的部位(例えば、アテローム性の病変)への物質の送達の指標である。
【0090】
特定の実施形態においては、本発明の画像化方法にはさらに、造影剤とともに治療薬を、アテローム性の病変に送達する工程が含まれる。
【0091】
参照による援用
本明細書中に記載される全ての刊行物および特許は、それぞれの個々の刊行物または特許が具体的かつ個別に、参照によって援用されることが示されているかのように、それらの全体が参照により本明細書中に援用される。
【0092】
本発明の特異的な実施形態が議論されたが、上記の記載は例示であって限定ではない。本発明の多くのバリエーションは、本明細書および添付の特許請求の範囲を参照して当業者に明らかになるであろう。本発明のあらゆる範囲は、それらの等価物のあらゆる範囲と共に特許請求の範囲、およびそのようなバリエーションと共に明細書を参照して決定されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
個体の血管の中のアテローム性の病変への治療薬の送達のための生物学的システムであって、前記システムには:(a)治療薬と(b)アテローム性の病変の中に存在している標的分子と相互作用する少なくとも1つの標的化部分が含まれている担体が含まれ、前記生物学的システムにより、血管の中のアテローム性の病変に対して治療薬が送達される、生物学的システム。
【請求項2】
前記生物学的システムに2つ以上の標的化部分が含まれている、請求項1に記載の生物学的システム。
【請求項3】
前記2つ以上の標的化部分が異なる、請求項2に記載の生物学的システム。
【請求項4】
前記2つ以上の標的化部分が異なる標的分子と相互作用する、請求項3に記載の生物学的システム。
【請求項5】
前記標的分子が、CXCL1(増殖調節オンコジーン−α);CXCL5(ENA−78);CXCL8(IL−8);CXCL9(Mig);CXCL10(IP−10);CXCL11(I−TAC);CXCL12(SDF−1);CCL2(MCP−1);CCL3(MIP−1α);CCL5(RANTES);CCL7(MCP−3);CCL17(TARC);CCL22(MDC);フラクタルカイン(FKN);HSP60、(S)−2−アミノ−4−ホスホノブタン酸、および(S)−3,4−ジカルボキシフェニルグリシン;IL−6、IL−8、IFN−γ、TNF−α、VCAM−1、ICAM−1、およびオステオポンチンからなる群より選択されるリガンドである、請求項1に記載の生物学的システム。
【請求項6】
前記標的化部分が前記リガンドの受容体である、請求項5に記載の生物学的システム。
【請求項7】
前記標的化部分が前記リガンドに対する抗体である、請求項5に記載の生物学的システム。
【請求項8】
前記標的分子が、CXCL1(増殖調節オンコジーン−α);CXCL5(ENA−78);CXCL8(IL−8);CXCL9(Mig);CXCL10(IP−10);CXCL11(I−TAC);CXCL12(SDF−1);CCL2(MCP−1);CCL3(MIP−1α);CCL5(RANTES);CCL7(MCP−3);CCL17(TARC);CCL22(MDC);フラクタルカイン(FKN);HSP60、(S)−2−アミノ−4−ホスホノブタン酸、および(S)−3,4−ジカルボキシフェニルグリシン;IL−6、IL−8、IFN−γ、TNF−α;VCAM−1、ICAM−1、およびオステオポンチンからなる群より選択されるリガンドの受容体である、請求項1に記載の生物学的システム。
【請求項9】
前記標的化部分が前記受容体のリガンドである、請求項8に記載の生物学的システム。
【請求項10】
前記標的化部分が前記受容体に対する抗体である、請求項8に記載の生物学的システム。
【請求項11】
前記受容体が、CXCR3、CXCR4、CCR4、CX3CR1、トル様受容体、代謝生成物産性グルタミン酸受容体(mGluRs)、ならびに、VCAM−1およびICAM−1に対する受容体からなる群より選択される、請求項8に記載の生物学的システム。
【請求項12】
治療薬と、アテローム性の病変の成分/構成成分と相互作用する少なくとも1つの結合パートナーがさらに含まれている、請求項1に記載の生物学的システム。
【請求項13】
前記治療薬が以下:
(a)HMG−CoAレダクターゼ阻害剤、甲状腺ホルモン剤、フィブラート、およびペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPAR)のアゴニストからなる群より選択される、アテローム性の病変の中の脂質濃度を低下させる物質;
(b)サイトカインによって刺激されるシクロヒドロラーゼ−1(GTPCH−1)またはハプログロビンのような、哺乳動物において酸化プロセスを緩和する物質;
(c)内皮細胞受容体、内皮細胞接着分子、内皮細胞インテグリン、平滑筋細胞受容体、平滑筋細胞接着分子、または平滑筋細胞インテグリンの発現を調節する物質;
(d)哺乳動物の血管内の内皮細胞または平滑筋細胞の増殖を調節する物質;
(e)炎症関連受容体(もしくはそのような受容体のリガンド、もしくはそのような受容体のシグナル伝達経路)を調節する物質;または、ケモカイン受容体、組織因子(TF)からなる群より選択される炎症関連転写因子;RAGE受容体、トル様受容体、アンギオテンシン受容体、TGF受容体、インターロイキン受容体、TNF受容体、IFNγ受容体、代謝生成物産性グルタミン酸8(mGlu8)受容体、NF−κbを活性化させることができる受容体;CXCL12(SDF−1およびその受容体CXCR4);CCL17(TARC);CCL22(MDC);CCL3(MIP−1α);CCL5(RANTES);CCL7(MCP−3);CXCL1(増殖調節オンコジーンα);CXCL5(ENA−78);CXCL8(IL−8);フラクタルカイン(FKN;およびその受容体、CX3CR1);HSP60、トル様受容体、代謝生成物産性グルタミン酸受容体(mGluRs;およびそのリガンド、例えば、(S)−2−アミノ−4−ホスホノブタン酸、および(S)−3,4−ジカルボキシフェニルグリシン);c−Fos;IL−6;IL−8;MCP−1;IFN−γ;TNF−α;VCAM−1、ICAM−1、ならびに、オステオポンチン;
(f)内皮細胞、血管の平滑筋細胞、リンパ球、単球、もしくは好中球の増殖、アポトーシス、または壊死を調節する物質;
(g)コラーゲン、エラスチン、またはプロテオグリカンからなる群より選択される細胞外マトリックスタンパク質の生産、分解、または架橋を調節する物質;
(h)哺乳動物の血管内での細胞の活性化、分泌、または脂質負荷を調節する物質;
(i)哺乳動物の血管内での樹状細胞もしくは単球/マクロファージ細胞の活性化または増殖を調節する物質;
(j)哺乳動物の血管壁での血小板の活性化もしくは接着を調節するか、または別の方法で、血餅の形成を阻害することができる、活性化されたプロテインC(APC)のような物質;ならびに、
(k)タンパク質である治療用物質をコードする核酸からなる物質であって、前記タンパク質である治療用物質がアテローム性の病変に罹患している哺乳動物に有用であるインビボでの活性を有している、物質
からなる群より選択される、請求項1に記載の生物学的システム。
【請求項14】
前記治療薬が、HDL;HDLの治療活性と同様の治療活性を有しているHDLのペプチド成分;HDLの主要タンパク質、apo A1;apo A1 Milanoの治療活性と同様の治療活性を有している変異体apo A1;およびapo A1 Milanoからなる群より選択される、請求項1に記載の生物学的システム。
【請求項15】
前記治療薬が、核酸、ポリペプチド、抗体、低分子化合物、およびペプチド模倣物からなる群より選択される、請求項1に記載の生物学的システム。
【請求項16】
前記核酸が裸のDNAから構成されているか、またはウイルスベクターの中にトランスジーンとして挿入されている、請求項15に記載の生物学的システム。
【請求項17】
前記担体が、リポソーム、ミセル、細胞、ウイルス粒子、ウイルス、またはマイクロ粒子、ナノ粒子、室のあるマイクロデバイス、エマルジョン、脂質ディスク、ポリマー、ガドリウム結合分子、超常磁性酸化鉄粒子、多様なペルフルオロカーボンナノ粒子、および超微粒気泡からなる群より選択される、請求項1に記載の生物学的システム。
【請求項18】
前記アテローム性の病変が損傷を受けやすいアテローム斑である、請求項1に記載の送達システム。
【請求項19】
個体の血管の中のアテローム性の病変への造影剤の送達のための生物学的システムであって、前記システムには:(a)造影剤と(b)アテローム性の病変の中に存在している標的分子と相互作用する少なくとも1つの標的化部分が含まれている担体が含まれ、前記生物学的システムにより、血管の中のアテローム性の病変に対して造影剤が送達される、生物学的システム。
【請求項20】
前記生物学的システムに2つ以上の標的化部分が含まれている、請求項19に記載の生物学的システム。
【請求項21】
前記2つ以上の標的化部分が異なる、請求項20に記載の生物学的システム。
【請求項22】
前記2つ以上の標的化部分が異なる標的分子と相互作用する、請求項21に記載の生物学的システム。
【請求項23】
前記標的分子が、CXCL1(増殖調節オンコジーン−α);CXCL5(ENA−78);CXCL8(IL−8);CXCL9(Mig);CXCL10(IP−10);CXCL11(I−TAC);CXCL12(SDF−1);CCL2(MCP−1);CCL3(MIP−1α);CCL5(RANTES);CCL7(MCP−3);CCL17(TARC);CCL22(MDC);フラクタルカイン(FKN);HSP60、(S)−2−アミノ−4−ホスホノブタン酸、および(S)−3,4−ジカルボキシフェニルグリシン;IL−6、IL−8、IFN−γ、TNF−α、VCAM−1、ICAM−1、およびオステオポンチンからなる群より選択されるリガンドである、請求項19に記載の生物学的システム。
【請求項24】
前記標的化部分が前記リガンドの受容体である、請求項23に記載の生物学的システム。
【請求項25】
前記標的化部分が前記リガンドに対する抗体である、請求項23に記載の生物学的システム。
【請求項26】
前記標的分子が、CXCL1(増殖調節オンコジーン−α);CXCL5(ENA−78);CXCL8(IL−8);CXCL9(Mig);CXCL10(IP−10);CXCL11(I−TAC);CXCL12(SDF−1);CCL2(MCP−1);CCL3(MIP−1α);CCL5(RANTES);CCL7(MCP−3);CCL17(TARC);CCL22(MDC);フラクタルカイン(FKN);HSP60、(S)−2−アミノ−4−ホスホノブタン酸、および(S)−3,4−ジカルボキシフェニルグリシン;IL−6、IL−8、IFN−γ、TNF−α;VCAM−1、ICAM−1、およびオステオポンチンからなる群より選択されるリガンドの受容体である、請求項19に記載の生物学的システム。
【請求項27】
前記標的化部分が前記受容体のリガンドである、請求項26に記載の生物学的システム。
【請求項28】
前記標的化部分が前記受容体に対する抗体である、請求項26に記載の生物学的システム。
【請求項29】
前記受容体が、CXCR3、CXCR4、CCR4、CX3CR1、トル様受容体、および代謝生成物産性グルタミン酸受容体(mGluRs)、ならびに、VCAM−1、ICAM−1の受容体、ならびに、オステオポンチンからなる群より選択される、請求項26に記載の生物学的システム。
【請求項30】
前記造影剤が、放射性物質;造影剤;磁性物質または常磁性物質;リポソーム、ミセル、細胞、ウイルス粒子、ウイルス、マイクロ粒子、ナノ粒子、室のあるマイクロデバイス、エマルジョン、脂質ディスク、ポリマー、ガドリウム結合分子、超常磁性酸化鉄粒子、多様なペルフルオロカーボンナノ粒子、および超微粒気泡からなる群より選択される、請求項19に記載の生物学的システム。
【請求項31】
前記放射性物質が、放射性ヨウ素、テクネチウム、イットリウム、または他の放射性医薬品である、請求項30に記載の生物学的システム。
【請求項32】
前記造影剤が、ガドリウム、マンガン、硫酸バリウム、ヨウ素化または非ヨウ素化物質、イオン性物質または非イオン性物質、超常磁性酸化鉄粒子、あるいは多様なペルフルオロカーボンナノ粒子である、請求項30に記載の生物学的システム。
【請求項33】
前記リポソームが、放射性物質、造影剤、もしくは任意の他の造影剤を保有しており、ガドリウム、マンガン、硫酸バリウム、ヨウ素化または非ヨウ素化物質、イオン性物質または非イオン性物質、超常磁性酸化鉄粒子、または多様なペルフルオロカーボンナノ粒子が含まれるが、これらに限定はされない、請求項30に記載の生物学的システム。
【請求項34】
前記造影剤が、発現ベクターまたはウイルスによってコードされる蛍光ポリペプチドであり、例えば、ルシフェラーゼである、請求項30に記載の生物学的システム。
【請求項35】
前記造影剤が、CT、蛍光透視法、SPECT画像解析、光学的画像解析、PET、MRI、またはγ線画像解析に使用されている、請求項19に記載の生物学的システム。
【請求項36】
前記担体が、リポソーム、ミセル、細胞、ウイルス粒子、ウイルス、マイクロ粒子、ナノ粒子、室のあるマイクロデバイス、エマルジョン、脂質ディスク、ポリマー、ガドリウム結合分子、超常磁性酸化鉄粒子、多様なペルフルオロカーボンナノ粒子、および超微粒気泡からなる群より選択される、請求項19に記載の生物学的システム。
【請求項37】
少なくとも1つの治療薬がさらに含まれている、請求項19に記載の生物学的システム。
【請求項38】
前記治療薬と前記造影剤が1つの担体上に存在している、請求項37に記載の生物学的システム。
【請求項39】
前記治療薬と前記造影剤が別の担体上に存在している、請求項37に記載の生物学的システム。
【請求項40】
個体のアテローム性動脈硬化症の発症を遅らせる方法であって、個体に対して、(a)治療薬と(b)アテローム性の病変の中に存在している標的分子と相互作用する標的化部分を含む担体が含まれている治療有効量の生物学的システムを投与する工程が含まれ、前記生物学的システムにより、血管の中のアテローム性の病変に対して治療薬が送達される、方法。
【請求項41】
前記標的分子が、CXCL1(増殖調節オンコジーン−α);CXCL5(ENA−78);CXCL8(IL−8);CXCL9(Mig);CXCL10(IP−10);CXCL11(I−TAC);CXCL12(SDF−1);CCL2(MCP−1);CCL3(MIP−1α);CCL5(RANTES);CCL7(MCP−3);CCL17(TARC);CCL22(MDC);フラクタルカイン(FKN);HSP60、(S)−2−アミノ−4−ホスホノブタン酸、および(S)−3,4−ジカルボキシフェニルグリシン;IL−6、IL−8、IFN−γ、TNF−α;VCAM−1;ICAM−1、およびオステオポンチンからなる群より選択されるリガンドである、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記標的分子が、CXCL1(増殖調節オンコジーン−α);CXCL5(ENA−78);CXCL8(IL−8);CXCL9(Mig);CXCL10(IP−10);CXCL11(I−TAC);CXCL12(SDF−1);CCL2(MCP−1);CCL3(MIP−1α);CCL5(RANTES);CCL7(MCP−3);CCL17(TARC);CCL22(MDC);フラクタルカイン(FKN);HSP60、(S)−2−アミノ−4−ホスホノブタン酸、および(S)−3,4−ジカルボキシフェニルグリシン;IL−6、IL−8、IFN−γ、TNF−α;VCAM−1;ICAM−1、およびオステオポンチンからなる群より選択されるリガンドの受容体である、請求項40に記載の方法。
【請求項43】
前記標的化部分が、リガンド、受容体、リガンドに対する抗体、および受容体に対する抗体からなる群より選択される、請求項40に記載の方法。
【請求項44】
前記受容体が、CXCR3、CXCR4、CCR4、CX3CR1、トル様受容体、および代謝生成物産性グルタミン酸受容体(mGluRs)、ならびに、VCAM−1、ICAM−1に対する受容体、ならびに、オステオポンチンからなる群より選択される、請求項42に記載の方法。
【請求項45】
前記生物学的システムに2つ以上の標的化部分が含まれている、請求項40に記載の方法。
【請求項46】
前記2つ以上の標的化部分が異なる標的分子と相互作用する、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記治療薬が以下:
(a)HMG−CoAレダクターゼ阻害剤、甲状腺ホルモン剤、フィブラート、およびペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPAR)のアゴニストからなる群より選択される、アテローム性の病変の中の脂質濃度を低下させる物質;
(b)サイトカインによって刺激されるシクロヒドロラーゼ−1(GTPCH−1)またはハプログロビンのような、哺乳動物において酸化プロセスを緩和する物質;
(c)内皮細胞受容体、内皮細胞接着分子、内皮細胞インテグリン、平滑筋細胞受容体、平滑筋細胞接着分子、または平滑筋細胞インテグリンの発現を調節する物質;
(d)哺乳動物の血管内の内皮細胞または平滑筋細胞の増殖を調節する物質;
(e)炎症関連受容体(もしくはそのような受容体のリガンド、もしくはそのような受容体のシグナル伝達経路)を調節する物質;または、ケモカイン受容体、組織因子(TF)からなる群より選択される炎症関連転写因子;RAGE受容体、トル様受容体、アンギオテンシン受容体、TGF受容体、インターロイキン受容体、TNF受容体、IFNγ受容体、代謝生成物産性グルタミン酸8(mGlu8)受容体、NF−κbを活性化させることができる受容体;CXCL12(SDF−1およびその受容体CXCR4);CCL17(TARC);CCL22(MDC);CCL3(MIP−1α);CCL5(RANTES);CCL7(MCP−3);CXCL1(増殖調節オンコジーンα);CXCL5(ENA−78);CXCL8(IL−8);フラクタルカイン(FKN;およびその受容体、CX3CR1);HSP60、トル様受容体、代謝生成物産性グルタミン酸受容体(mGluRs;およびそのリガンド、例えば、(S)−2−アミノ−4−ホスホノブタン酸、および(S)−3,4−ジカルボキシフェニルグリシン);c−Fos;IL−6;IL−8;MCP−1;IFN−γ;TNF−α;VCAM−1、ICAM−1、およびオステオポンチン;
(f)内皮細胞、血管の平滑筋細胞、リンパ球、単球、もしくは好中球の増殖、アポトーシス、または壊死を調節する物質;
(g)コラーゲン、エラスチン、またはプロテオグリカンからなる群より選択される細胞外マトリックスタンパク質の生産、分解、または架橋を調節する物質);
(h)哺乳動物の血管内での細胞の活性化、分泌、または脂質負荷を調節する物質;
(i)哺乳動物の血管内での樹状細胞の活性化または増殖を調節する物質;
(j)哺乳動物の血管壁での血小板の活性化もしくは接着を調節するか、または別の方法で、血餅の形成を阻害することができる、活性化されたプロテインC(APC)のような物質;ならびに、
(k)タンパク質である治療用物質をコードする核酸からなる物質であって、前記タンパク質である治療用物質がアテローム性の病変に罹患している哺乳動物に有用であるインビボでの活性を有している、物質
からなる群より選択される、請求項40に記載の方法。
【請求項48】
前記担体が、リポソーム、ミセル、細胞、ウイルス粒子、ウイルス、マイクロ粒子、ナノ粒子、室のあるマイクロデバイス、エマルジョン、脂質ディスク、ポリマー、ガドリウム結合分子、超常磁性酸化鉄粒子、多様なペルフルオロカーボンナノ粒子、および超微粒気泡からなる群より選択される、請求項40に記載の方法。
【請求項49】
前記個体がヒトである、請求項40に記載の方法。
【請求項50】
個体においてアテローム性動脈硬化症を処置または予防する方法であって、(a)治療薬と(b)アテローム性の病変の中に存在している標的分子と相互作用する標的化部分を含む担体が含まれている治療有効量の生物学的システムを投与する工程が含まれ、前記生物学的システムにより、血管の中のアテローム性の病変に対して治療薬が送達される、方法。
【請求項51】
前記アテローム性動脈硬化症によって、斑の破裂、斑の侵食、急性冠不全症候群、脳卒中、一過性虚血発作、心臓発作、狭心症、不安定狭心症、血栓症、心筋梗塞、虚血性心疾患、末梢動脈疾患、または移植によって誘導される動脈硬化症が引き起こされる、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
ストレプトキナーゼ、組織プラスミノーゲン活性化因子、プラスミン、ウロキナーゼ、組織因子プロテアーゼ阻害剤、線虫から抽出された抗凝固タンパク質、メタロプロテイナーゼ阻害剤、および抗炎症剤からなる群より選択される第2の治療薬を投与する工程がさらに含まれる、請求項50に記載の方法。
【請求項53】
前記個体がヒトである、請求項50に記載の方法。
【請求項54】
個体のアテローム性の病変に対して造影剤を送達する方法であって、個体に対して、(a)造影剤と(b)アテローム性の病変の中に存在している標的分子と相互作用する標的化部分を含む担体が含まれている有効量の生物学的システムを投与する工程が含まれ、前記生物学的システムにより、血管の中のアテローム性の病変に対して造影剤が送達される、方法。
【請求項55】
前記標的分子が、CXCL1(増殖調節オンコジーン−α);CXCL5(ENA−78);CXCL8(IL−8);CXCL9(Mig);CXCL10(IP−10);CXCL11(I−TAC);CXCL12(SDF−1);CCL2(MCP−1);CCL3(MIP−1α);CCL5(RANTES);CCL7(MCP−3);CCL17(TARC);CCL22(MDC);フラクタルカイン(FKN);HSP60、(S)−2−アミノ−4−ホスホノブタン酸、および(S)−3,4−ジカルボキシフェニルグリシン;IL−6、IL−8、IFN−γ、TNF−α;VCAM−1;ICAM−1、およびオステオポンチンからなる群より選択されるリガンドである、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記標的分子が、CXCL1(増殖調節オンコジーン−α);CXCL5(ENA−78);CXCL8(IL−8);CXCL9(Mig);CXCL10(IP−10);CXCL11(I−TAC);CXCL12(SDF−1);CCL2(MCP−1);CCL3(MIP−1α);CCL5(RANTES);CCL7(MCP−3);CCL17(TARC);CCL22(MDC);フラクタルカイン(FKN);HSP60、(S)−2−アミノ−4−ホスホノブタン酸、および(S)−3,4−ジカルボキシフェニルグリシン;IL−6、IL−8、IFN−γ、およびTNF−α;ならびに、VCAM−1、ICAM−1の受容体、およびオステオポンチンからなる群より選択されるリガンドの受容体である、請求項54に記載の方法。
【請求項57】
前記標的化部分が、リガンド、受容体、リガンドに対する抗体、および受容体に対する抗体からなる群より選択される、請求項54に記載の方法。
【請求項58】
前記受容体が、CXCR3、CXCR4、CCR4、CX3CR1、トル様受容体、および代謝生成物産性グルタミン酸受容体(mGluRs)、ならびに、VCAM−1、ICAM−1の受容体、ならびに、オステオポンチンからなる群より選択される、請求項56に記載の方法。
【請求項59】
前記生物学的システムに2つ以上の標的化部分が含まれている、請求項40に記載の方法。
【請求項60】
前記2つ以上の標的化部分が異なる標的分子と相互作用する、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記造影剤が、放射性物質;造影剤;磁性物質または常磁性物質;リポソーム、ミセル、細胞、ウイルス粒子、ウイルス、マイクロ粒子、ナノ粒子、室のあるマイクロデバイス、エマルジョン、脂質ディスク、ポリマー、ガドリウム結合分子、超常磁性酸化鉄粒子、多様なペルフルオロカーボンナノ粒子、および超微粒気泡からなる群より選択される、請求項54に記載の方法。
【請求項62】
前記個体がヒトである、請求項54に記載の方法。
【請求項63】
個体のアテローム性の病変の重篤度を特定する方法であって、1)(a)造影剤と(b)アテローム性の病変の中に存在している標的分子と相互作用する標的化部分を含む担体が含まれている生物学的システムを投与する工程;および2)個体のアテローム性の病変に対する造影剤の量、局在化、形状、密度、または相対的な分布を観察する工程が含まれる、方法。
【請求項64】
前記造影剤が、放射性物質;造影剤;磁性物質または常磁性物質;リポソーム、ミセル、細胞、ウイルス粒子、ウイルス、マイクロ粒子、ナノ粒子、室のあるマイクロデバイス、エマルジョン、脂質ディスク、ポリマー、ガドリウム結合分子、超常磁性酸化鉄粒子、多様なペルフルオロカーボンナノ粒子、および超微粒気泡からなる群より選択される、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
前記個体がヒトである、請求項63に記載の方法。
【請求項66】
個体にHDL治療薬を送達するための生物学的システムであって、前記生物学的システムには、(a)HDL、apoA−1、変異体apoA−1、apoA−1模倣ペプチド、およびapoA−1もしくはapoA−1のペプチド模倣物のいずれかをコードする核酸から選択されるHDL治療薬;ならびに(b)それによって(a)のHDL治療薬が血管に送達される担体が含まれている、生物学的システム。
【請求項67】
前記担体が、ナノ粒子、マイクロ粒子、細胞、およびリポソームから選択される、請求項66に記載の生物学的システム。
【請求項68】
前記(a)の核酸が発現ベクターの中のDNAである、請求項66に記載の生物学的システム。
【請求項69】
血管の中のアテローム斑を標的化する送達システムであって、前記システムには、(a)HDL、apoA−1、変異体apoA−1、apoA−1模倣ペプチド、およびapoA−1もしくはapoA−1のペプチド模倣物のいずれかをコードする核酸から選択されるHDL治療薬;(b)アテローム斑の構成成分と相互作用/結合し、そしてアテローム斑に対して(a)のHDL治療薬を送達する担体が含まれている、送達システム。
【請求項70】
前記担体が、ナノ粒子、マイクロ粒子、細胞、およびリポソームから選択される、請求項69に記載の生物学的システム。
【請求項71】
前記(a)の核酸が発現ベクターの中のDNAである、請求項69に記載の生物学的システム。
【請求項72】
前記担体が、その表面上に、アテローム斑の構成成分の結合パートナーを有している、請求項69に記載の送達システム。
【請求項73】
前記アテローム斑の構成成分が、斑自体の構成成分、または斑から放出される産物である、請求項72に記載の送達システム。
【請求項74】
前記アテローム斑が破裂しやすい、請求項69に記載の送達システム。
【請求項75】
個体においてアテローム性の病変の発症を遅らせる方法であって、個体に対して、治療有効量の請求項66に記載の生物学的システムを投与する工程が含まれ、それによって、個体におけるアテローム性の病変の発症が遅れる、方法。
【請求項76】
その必要がある個体においてアテローム斑のコレステロール濃度を下げる方法であって、個体に対して、治療有効量の請求項69に記載の送達システムを投与する工程が含まれ、それによって、個体のアテローム斑の中のコレステロール濃度が低下される、方法。
【請求項77】
(a)apoA−1、変異体apoA−1、apoA−1模倣ペプチドから選択されるHDLのタンパク質成分をコードするDNA;および(b)アテローム斑を含む血管の中で特異的に発現されるプロモーターが含まれている発現ベクターであって、ここでは、前記(a)のDNAが(b)のプロモーターに動作可能であるように連結させられている、発現ベクター。
【請求項78】
前記プロモーターに、炎症の状況に通常は関係している活性化因子についての結合部位が含まれている、請求項77に記載の発現ベクター。
【請求項79】
前記プロモーターがMCP−1遺伝子のプロモーターである、請求項78に記載の発現ベクター。
【請求項80】
前記プロモーターに、新たに伸びつつある血管に通常は関係している活性化因子についての結合部位が含まれている、請求項77に記載の発現ベクター。
【請求項81】
前記プロモーターが、VEGF遺伝子のプロモーターである、請求項80に記載の発現ベクター。

【公表番号】特表2008−534508(P2008−534508A)
【公表日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−503125(P2008−503125)
【出願日】平成18年3月22日(2006.3.22)
【国際出願番号】PCT/US2006/010371
【国際公開番号】WO2006/102395
【国際公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【出願人】(507316022)メドスター ヘルス インコーポレイテッド (1)
【出願人】(507316826)ジョージタウン ユニバーシティ (1)
【Fターム(参考)】