説明

心血管障害の治療用医薬組成物及びその使用

本発明は、活性成分として3〜1部のエキノシスト酸と、1部のオレアノール酸とを含む、心血管障害の治療用医薬組成物を提供する。本発明は、総質量90.0%〜99.9%のエキノシスト酸と、オレアノール酸とを含み、エキノシスト酸とオレアノール酸の質量比が3:1〜1:1である、グレジチア抽出物をも提供する。この抽出物の調製方法及び使用も本発明で提供される。本発明の医薬組成物は、該組成物中のエキノシスト酸とオレアノール酸の比を制御することによって肝毒性を低減させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、医学技術分野、特に心血管障害の治療用医薬組成物及びその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
皀莢(そうきょう)(Fructus gleditsiae)(トウサイカチ(Gleditschia sinensis Lam.)としても知られる)は中国に広く分布し、優れた林業価値と臨床上の中国の伝統的な特許医薬品におけるかなり広範な応用展望とを兼ね備えている。皀莢は、異なった発育状態の2つのタイプの果実、すなわち支那皀莢果実(Chinese honeylocust fruit)(Fructus gleditsiae Sinensis)として知られる成熟した丸々とした鞘、及び支那皀莢異常果実(Chinese honeylocust abnormal fruit)(Fructus gleditsiae abnormalis)として知られる発育が遅延した細い鞘を形成し得る。
Fan Kehuaらは、心筋虚血を患っているイヌの心筋梗塞に対するグレジチア(gleditsiae)抽出物の保護作用を示唆した[Fan Kehua, et al. West China Journal of Pharmaceutical Sciences, 2006, 21(4): 339-342]。Ding Yunluらは、麻酔したイヌの冠動脈の結紮術によって生じる急性心筋虚血に対する保護作用を調査して、グレジチアサポニン(gleditsia saponin)が心筋虚血を改善することができ、また心筋梗塞の領域を減らすことができることを見い出した[Ding Yunlu, et al. Natural Product Research and Development, 2006, 18: 275-278]。Ding Yunluらは、グレジチアサポニンがラットの心筋虚血に及ぼす効果をさらに研究し、ラットの心筋虚血の改善及び心筋梗塞の領域減少におけるグレジチアサポニンの優れた効力を見い出した[Ding Yunlu, et al. Chinese Journal of New Drugs and Clinical Remedies, 2006, 26(2):110-113]。
【0003】
現在、以下の文献がグレジチアサポニンの抽出方法を含む。発明の名称「グレジチアサポニン抽出物、その調製方法及び使用(A GLEDITSIA SAPONIN EXTRACT, PREPARATION METHODS FOR THE SAME AND USES THEREOF)」の中国特許出願第200910020233.7号では、グレジチアサポニン抽出物、その調製方法並びに肺癌、肝細胞癌、胃癌、大腸癌、及び白血病の治療におけるその使用が開示された。グレジチアサポニン抽出物は、支那皀莢異常果実又は支那皀莢果実を原材料として水又はエタノールで抽出し、マクロ多孔性樹脂で精製することによって調製された。サポニンの総含量は60%を超えた。またグレジチアサポニンは主に種々の五員環トリテルペンサポニンを含む。発明の名称「皀莢からトリテルペン酸を抽出する方法、トリテルペン酸の医学的使用及びトリテルペン酸を含む中国医薬製剤(A METHOD FOR EXTRACTING TRITERPENIC ACID FROM FRUCTUS GLEDITSIAE, MEDICAL USE OF TRITERPENIC ACID AND CHINESE MEDICINE FORMULATIONS COMPRISING THE SAME)」の中国特許出願第02109825.5号では、皀莢からトリテルペン酸を抽出する方法、トリテルペン酸の医学的使用及びトリテルペン酸を含む中国医薬製剤が開示された。この特許出願では、皀莢鞘を50〜70%のエタノールによる抽出、脱色、ろ過、及びエタノール再循環に供してから、脱イオン水で希釈し、マクロ多孔性吸着性樹脂カラム上で溶出、濃縮によって精製し、乾燥させて全トリテルペノイドサポニンを得た。この発明の抽出物は、高脂血症、脂肪肝、アテローム等の疾患の治療及び予防用薬物の調製で使用できる。
【0004】
HAO Yu-fangは、グレジチアサポニンがかなり高い毒性を有することを見い出した。このことが臨床応用におけるグレジチアサポニンの使用を制限している[HAO Yu-fang, Preparation of Gleditsia Sapogein and Study on its Anti-Myocardial Ischemia Efficacy, Master's Degree thesis, Changchun University of Traditional Chinese Medicine, 2006]。さらに、グレジチアサポゲニンには活性成分、エキノシスト酸が含まれる。発明の名称「エキノシスト酸の調製方法、それを含む医薬製剤及びその新規の医学的用途(A PREPARATION METHOD OF ECHINOCYSTIC ACID, PHARMACEUTICAL FORMULATIONS COMPRISING THE SAME AND NOVEL MEDICAL USE THEREOF)」の中国特許出願第03100676.0号では、グレジチアサポニンの酸加水分解から調製したエキノシスト酸が冠動脈疾患、狭心症、及び心筋虚血の治療で優れた効力を示すことが開示された。現在、グレジチアサポゲニンについての報告はほとんどなかった。Chen Xiaolanらは、エキノシスト酸に加えて、グレジチアサポゲニンの化学構造を報告した。この報告では、グレジチアシネンシス(Gleditsia sinensis)の鞘から抽出、完全加水分解、クロマトグラフィー等を行なうことによって、2種類のサポゲニン:3-ヒドロキシ-12-オレアネン-28-酸及び3,16-ジヒドロキシ-12-オレアネン-28-酸を得た[Chen Xiaolan, et al. Studies on Structure of Sapogenins from Pod of Gleditsia sinensis, Chinese Traditional and Herbal Drugs, 2001, 32(3)]。しかし、グレジチアサポゲニンに関する現在の研究は単一の活性成分に基づいているだけであった。薬用材料由来の抽出物は様々な既知及び未知成分を含み、またグレジチアサポゲニンも種々の化合物を含むので、グレジチアサポゲニンの活性を十分に利用する方法は、解決すべき緊急の課題である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
(発明の概要)
本発明の一実施形態は、心血管障害の治療用医薬組成物を提供し、本発明の別の実施形態は、エキノシスト酸とオレアノール酸を含むグレジチア抽出物、その調製方法及びその使用を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、心血管障害の治療用医薬組成物であって、その活性成分が、
3〜1質量部のエキノシスト酸と、1質量部のオレアノール酸とから成る、
医薬組成物を提供する。
さらに好ましくは、活性成分が、
3〜2質量部のエキノシスト酸と、1質量部のオレアノール酸とから成る。
なおさらに好ましくは、活性成分が、3質量部のエキノシスト酸と、1質量部のオレアノール酸とから成る。
エキノシスト酸及びオレアノール酸は、植物抽出物又は化学合成物質から得られる。
本発明は、心血管障害の予防又は治療用薬物の調製における本医薬組成物の使用をも提供する。
前記薬物は、冠動脈疾患、狭心症、心筋虚血、心筋梗塞、不整脈、高脂血症又はアテローム性動脈硬化症の予防又は治療用薬物である。
本発明は、エキノシスト酸とオレアノール酸の総質量パーセンテージが90.0%〜99.9%であり、かつエキノシスト酸とオレアノール酸の質量比が3:1〜1:1である、グレジチア抽出物を提供する。
さらに好ましくは、エキノシスト酸とオレアノール酸の質量比が3:1〜2:1、さらに好ましくは3:1である。
本発明は、グレジチア抽出物の調製方法であって、以下の工程:
a. 皀莢果実(Fructus Gleditsiae Sinensis)の薬用材料を調製し、この薬用材料を水による煎出に供してからろ過し、ろ液を濃縮する工程;
b. この濃縮されたろ液中に水又は水性エタノールと共に酸を添加して、前記酸の濃度を2モル/Lにし、かつ前記任意のエタノールの含量を1〜45%(v/v)にし、これらを加水分解のために撹拌及び煮沸してから、この加水分解された溶液をろ過し、得られたフィルターケークを精製水で、流出液のpHが6を超えるまで洗浄し、この洗浄されたフィルターケークを次に80℃で乾燥させて粗製グレジチアサポゲニンを得る工程;
c. この粗製グレジチアサポゲニンを95%エタノールに加熱しながら溶解させ(95%エタノールの量は、前記粗製グレジチアサポゲニンの1部としての質量に基づいて体積で15〜40部である)、その中に医薬的に許容できる活性炭を添加し(活性炭の量は、95%エタノールの体積に基づいて1〜4%(w/v)である)、これらを30分間撹拌及び煮沸した後、熱いうちにろ過し;ろ液のpHを2〜6に調整した後、そこからエタノールを回収してから冷却及び結晶化し、得られた結晶を80℃で乾燥させてグレジチア抽出物を得る工程
を含む方法をも提供する。
本発明は、心血管障害の予防又は治療用薬物の調製における前記グレジチア抽出物の使用をも提供する。
前記薬物は、冠動脈疾患、狭心症、心筋虚血、心筋梗塞、不整脈、高脂血症、又はアテローム性動脈硬化症の予防又は治療用薬物である。
【0007】
実験において、本出願人は、エキノシスト酸が適用中に比較的強い毒性副作用を有することを見い出し、かつエキノシスト酸が一定の毒性を示すのみならず、グレジチアサポゲニン(エキノシスト酸とオレアノール酸の総含量が約70%であった)も一定の毒性副作用を示すことをも発見した。特に、1日3回、1回当たり500mgのグレジチアサポゲニンを投与した6名の対象(均等に男性と女性で構成された)のうち、4名の対象(均等に男性と女性で構成された)は、蓄積的に5〜11回投与した場合、ALTとASTの両方の増加を示した。エキノシスト酸の薬力学的性能を十分に引き出し、かつその毒性副作用を減少させるため、数々の実験研究後に出願人は、3:1〜1:1の質量比のエキノシスト酸とオレアノール酸から成る活性成分が、心血管障害の治療においてエキノシスト酸の毒性副作用を減少させ、これによってエキノシスト酸のより広い安全域をもたらすことができ、ひいてはより高い安全性及びより大きい効力につながることを見い出した。同時に、グレジチア抽出物を皀莢から調製し、かつエキノシスト酸とオレアノール酸の総含量を制御し、かつこれら2種の酸間の質量比を調整することによって最適化すると、エキノシスト酸とオレアノール酸を90.0%〜99.9%の総含量で、エキノシスト酸とオレアノール酸の質量比が3:1〜1:1で含むグレジチア抽出物は、有意な効力で心血管障害を治療することも、有意に低減した肝毒性を示すことも可能にした。さらに、その生産コストもかなり削減された。
【0008】
結論として、本発明は、先行技術に比べて以下の利点を有する。
1. 医薬組成物中のエキノシスト酸とオレアノール酸との間の比を制御することによって、エキノシスト酸の肝毒性を有意に減少させ、これにより心血管障害の治療においてエキノシスト酸の安全性及び効力を高めることができる。
2. グレジチア抽出物中のエキノシスト酸とオレアノール酸の質量比を制御することによって、エキノシスト酸の肝毒性を減少させるのみならず、グレジチア抽出物の生産コストを大幅に削減し得る最適化抽出物が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】薬物のHPLCクロマトグラムを示し、Aはエキノシスト酸、Bはオレアノール酸、Cは実施例1で調製したグレジチア抽出物(エキノシスト酸:オレアノール酸=1:1)、Dは実施例2で調製したグレジチア抽出物(エキノシスト酸:オレアノール酸=2.1:1)、Eは実施例3で調製したグレジチア抽出物(エキノシスト酸:オレアノール酸=2.4:1)、Fは実施例4で調製したグレジチア抽出物(エキノシスト酸:オレアノール酸=3:1)である。
【図2】Z01群のHE染色大動脈の病理像を示す(×100)。
【図3】Z02群のHE染色大動脈の病理像を示す(×100)。
【図4】リピトール(Lipitor)群のHE染色大動脈の病理像を示す(×100)。
【図5】リパンシール(Lipanthyl)群のHE染色大動脈の病理像を示す(×100)。
【図6】モデル群のHE染色大動脈の病理像を示す(×100)。
【図7】ブランク群のHE染色大動脈の病理像を示す(×100)。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(発明の詳細な説明)
実施例1:本発明のグレジチア抽出物の調製
支那皀莢果実の600gの薬用材料を秤量し、約1cmの短セグメントに切断し、10倍重量の水で2回煎出した(1回目の煎出は1.5時間、2回目の煎出は1時間)。1回目及び2回目の煎出から得たろ液をプールし、減圧下で1.05の相対密度(室温で)まで濃縮した。結果として生じる溶液の体積が濃縮溶液の体積の4倍になり、かつ酸の濃度が2モル/L及びエタノール含量が45%(v/v)になるように、適量の塩酸、及び水とエタノールを濃縮溶液に加えた。結果として生じた溶液を3時間加熱、撹拌及び煮沸して加水分解してからろ過した。フィルターケークを精製水で、流出液のpHが6を超えるまで洗浄してから80℃で乾燥させて15.5gの粗製グレジチア抽出物を得た。この粗製グレジチア抽出物を230mlのエタノールに加え、加熱によって溶解させてから2.3gの医薬的に許容できる活性炭を添加し、30分間撹拌及び煮沸してから熱いうちにろ過した。ろ液のpH値を2〜3に調整してから室温で24時間放置した後、ろ過した。フィルターケークを精製水で、流出液のpHが6を超えるまで洗浄し、80℃で乾燥させて6.3gのグレジチア抽出物を得た。得られたグレジチア抽出物中のエキノシスト酸とオレアノール酸の総含量を高速液体クロマトグラフィーで測定すると、97.78%であり、エキノシスト酸とオレアノール酸の比は1:1であった。
【0011】
実施例2:本発明のグレジチア抽出物の調製
支那皀莢果実の800gの薬用材料を秤量し、約1cmの短セグメントに切断し、8倍重量の水で2回煎出した(1回目の煎出は1.5時間、2回目の煎出は1時間)。1回目及び2回目の煎出から得たろ液をプールし、減圧下で1.10の相対密度(室温で)まで濃縮した。結果として生じる溶液の体積が濃縮溶液の体積の4倍になり、かつ酸の濃度が2モル/Lになるように、適量の塩酸及び水を濃縮溶液に加えた。結果として生じた溶液を3時間加熱、撹拌及び煮沸して加水分解してからろ過した。フィルターケークを精製水で、流出液のpHが6を超えるまで洗浄し、80℃で乾燥させて61.2gの粗製グレジチア抽出物を得た。この粗製グレジチア抽出物を2450mlのエタノールに加え、加熱によって溶解させた後、49.0gの医薬的に許容できる活性炭を添加してから30分間撹拌及び煮沸し、熱いうちにろ過した。ろ液のpH値を3〜4に調整し、減圧下で濃厚なペースト様になるまで濃縮し、冷ました後、ろ過した。フィルターケークを精製水で、流出液のpHが6を超えるまで洗浄し、80℃で乾燥させて8.5gのグレジチア抽出物を得た。得られたグレジチア抽出物中のエキノシスト酸とオレアノール酸の総含量を高速液体クロマトグラフィーで測定すると、94.11%であり、エキノシスト酸とオレアノール酸の比は2.1:1であった。
【0012】
実施例3:本発明のグレジチア抽出物の調製
支那皀莢果実の2400gの薬用材料を秤量し、約1cmの短セグメントに切断し、6倍重量の水で2回煎出した(1回目の煎出は1.5時間、2回目の煎出は1時間)。1回目及び2回目の煎出から得たろ液をプールし、減圧下で1.20の相対密度(室温で)まで濃縮した。結果として生じる溶液の体積が濃縮溶液の体積の4倍になり、かつ酸の濃度が2モル/Lになるように、適量の塩酸及び水を濃縮溶液に加えた。結果として生じた溶液を3時間加熱、撹拌及び煮沸して加水分解し、ろ過した。フィルターケークを精製水で、流出液のpHが6を超えるまで洗浄し、80℃で乾燥させて153.0gの粗製グレジチア抽出物を得た。この粗製グレジチア抽出物を6120mlのエタノールに添加し、加熱によって溶解させた後、122.4gの医薬的に許容できる活性炭を添加してから30分間撹拌及び煮沸し、熱いうちにろ過し;ろ液のpH値を4〜5に調整し、減圧下で850mlまで濃縮し、冷ました後、ろ過し;フィルターケークを精製水で、流出液のpHが6を超えるまで洗浄し、80℃で乾燥させて24.1gのグレジチア抽出物を得た。得られたグレジチア抽出物中のエキノシスト酸とオレアノール酸の総含量を高速液体クロマトグラフィーで測定すると、100.28%であり、エキノシスト酸とオレアノール酸の比は2.4:1であった。
【0013】
実施例4:本発明のグレジチア抽出物の調製
支那皀莢果実の800gの薬用材料を秤量し、約1cmの短セグメントに切断し、8倍重量の水で2回煎出した(1回目の煎出は1.5時間、2回目の煎出は1時間)。1回目及び2回目の煎出から得たろ液をプールし、減圧下で1.10の相対密度(室温で)まで濃縮した。結果として生じる溶液の体積が濃縮溶液の体積の4倍になり、かつ酸の濃度が2モル/Lになるように、適量の塩酸及び水を濃縮溶液に加えた。結果として生じた溶液を3時間加熱、撹拌及び煮沸して加水分解し、ろ過した。フィルターケークを精製水で、流出液のpHが6を超えるまで洗浄し、かつ80℃で乾燥させて51.0gの粗製グレジチア抽出物を得た。この粗製グレジチア抽出物を2040mlのエタノールに添加し、加熱によって溶解させた後、81.6gの医薬的に許容できる活性炭を添加してから30分間撹拌及び煮沸し、熱いうちにろ過した。ろ液のpH値を5〜6に調整し、減圧下で濃厚なペースト様になるまで濃縮し、冷ました後、ろ過した。フィルターケークを精製水で、流出液のpHが6を超えるまで洗浄し、80℃で乾燥させて6.2gのグレジチア抽出物を得た。得られたグレジチア抽出物中のエキノシスト酸とオレアノール酸の総含量を高速液体クロマトグラフィーで測定すると、96.33%であり、エキノシスト酸とオレアノール酸の比は3:1であった。
【0014】
(アッセイ方法)
クロマトグラフ条件:高速液体クロマトグラフ:Dionex U-3000及びクロマトグラフィーカラム:Agilent TC-C18 250×4.6mm(5μm)を使用し;移動相Aとしてアセトニトリル、及び移動相Bとして水(そのpHをリン酸で3.7に調整した)を使用し、1.0ml/分の流速、30℃のカラム温度、及び215nmの検出波長で下表に従って勾配溶出を行なう。
【0015】

クロマトグラムを図1に示す。そのデータを以下に列挙する。
【0016】
HPLCクロマトグラムのデータ

【0017】
(コントロールサンプルの調製)
上で調製したグレジチア抽出物をその最大濃度までクロマトグラフ的に純粋なメタノールで溶解させ、GE AKTA基本的分取用高速液体クロマトグラフ上に装填し、クロマトグラフィーカラムKromasil Cl8 250×20mm(5μm)を用いて、移動相としてメタノール:水(そのpH値をリン酸で3.7に調整した)=85:15を用いて、流速10.0ml/分、30℃のカラム温度、及び215nmの検出波長で行なった。エキノシスト酸又はオレアノール酸のピークに対応するフラクションをそれぞれ収集し、結晶化してエキノシスト酸(98.5%)又はオレイン酸(99.0%)を得た。
エキノシスト酸:白色針状結晶、融点305〜307.5℃
IRmaxcm-1:3572, 3388, 3209, 2641(アルコールヒドロキシル-OHの伸縮振動に起因);2947, 2925, 2866(メチル);1692, 1679(カルボニル基のC=Oの伸縮振動に起因);1465, 1449, 1368, 1363, 1307(カルボキシル);1286, 1333, 1235(六員炭素環);1140, 1204, 1187, 1029, 998, 979, 965, 950, 816(エチレン結合);788, 744
EI-MSm/z(%):471(M-H+: 100), 453 (M-H+: 55.0), 441 (M-H+: 80.0), 425 (M-H+: 92.0), 407 (M-H+: 100)
1HNMR (DMSO-d6, δ): 0.67-1.95 (41H: -CH2-, -CH<, -CH3); 2.21 (1H: -CH2-); 2.88-3.00 (2H: -CH<); 4.32-4.71 (2Η: -ΟΗ); 5.20 (1 H: -CH<); 12.01 (1H: -COOH)
13CNMR (DMSO-d6, δ): 38.17 (C-1), 27.02 (C-2), 76.89 (C-3), 38.42 (C-4), 54.97 (C-5), 18.00 (C-6), 32.70 (C-7), 38.96 (C-8), 46.23 (C-9), 36.63 (C-10), 22.90 (C-11), 121.25 (C-12), 143.98 (C-13), 41.04 (C-14), 35.21 (C-15), 72.98 (C-16), 47.30 (C-17), 40.10 (C-18), 46.38 (C-19), 30.26 (C-20), 34.69 (C-21), 31.50 (C-22), 28.28 (C-23), 16.08 (C-24), 15.25 (C-25) 16.85 (C-26), 26.50 (C-27), 178.24 (C-28), 32.92 (C-29), 24.20 (C-30)。
【0018】
オレアノール酸:白色針状結晶、融点307℃〜308℃、(α)20D + 73°。
1HNMR (DMSO-d6, δ): δ ppm: 5.16 (m), 3.36 (t), 1.09 (s, Me), 0.91 (s, Me), 0.84 (s, Me), 0.81 (s, Me), 0.80 (s, Me), 0.71 (s, Me), 0.67 (s, Me)。
13CNMR (DMSO-d6, δ): 38.5 (C-1), 27.19 (C-2), 76.8 (C-3), 38.22 (C-4), 54.7 (C-5), 18 (C-6), 32.85 (C-7), 39.66 (C-8), 47 (C-9), 37 (C-10), 23.36 (C-11), 121.53 (C-12), 143.82 (C-13), 41.31 (C-14), 25.99 (C-15), 22.86 (C-16), 45.66 (C-17), 41.3 (C-18), 45.68 (C-19), 30.19 (C-20), 33.31 (C-21), 32.41 (C-22), 28.21 (C-23), 15.15 (C-24), 16.1 (C-25), 16.8 (C-26), 26.99 (C-27), 178.6 (C-28), 32.1 (C-29), 22.6 (C-30)。
【0019】
実施例5:本発明のカプセル剤の調製
500gのグレジチア抽出物、1600gのラクトース、340gのデンプン、及び50gのナトリウムカルボキシメチルデンプンを均一に混合し、適量の70%エタノールを用いて造粒し、乾燥させ、10gのステアリン酸マグネシウムとブレンドし、得られた混合物を1号カプセルに1カプセル当たり250mg封入した。
実施例6:本薬物の錠剤の調製
400gのグレジチア抽出物、800gの微結晶性セルロース、500gのラクトース、125gのポリビニルピロリドンK30、125gのクロスカルメロースナトリウム、及び40gのシリカ粉末(SiliciiDoxydum)を均一に混合し、適量の50%エタノールを用いて造粒し、乾燥させ、10gのステアリン酸マグネシウムとブレンドし、1錠当たり200mgを圧縮して錠剤にした。
グレジチア抽出物の代わりにそれぞれ300.4gのエキノシスト酸(社内製、98.5%の純度)と99.6gのオレアノール酸(社内製、99.0%の純度)、又は200.5gのエキノシスト酸(社内製、98.5%の純度)と199.5gのオレアノール酸(社内製、99.0%の純度)を用いて上記手順に従って他の種類の錠剤を調製した。
実施例7:本発明の医薬組成物の調製
300.4gのエキノシスト酸(上記調製、98.5%の純度)、99.6gのオレアノール酸(上記調製、99.0%の純度)、1815gの微結晶性セルロース、50gのドデシル硫酸ナトリウム、100gの架橋ポリビニルピロリドン、及び125gのヒドロキシプロピルメチルセルロースを均一に混合し、適量の精製水を用いて造粒し、乾燥させ、10gのステアリン酸マグネシウムとブレンドし、混合物を1号カプセルに1カプセル当たり250mg封入した。
200.5gのエキノシスト酸(上記調製、98.5%の純度)及び199.5gのオレアノール酸(上記調製、99.0%の純度)を用いて上記手順に従って別の種類のカプセルを調製した。
【0020】
比較例:HAO Yufang,“Preparation of Gleditsia Sapogenin and Study on its Anti-Myocardial Ischemia Efficacy,” Master's Degree thesis, Changchun University of Traditional Chinese Medicine, 2006に記載されたグレジチアサポゲニンの抽出法に従ってグレジチアサポゲニンを調製した。支那皀莢果実の乾燥した薬用材料を秤量し、約1cmの短セグメントに切断し、還流下で75%エタノールで3回抽出した。3回の抽出で用いたエタノールの体積は粗製薬物の重量の6、5、及び5倍(v/w)であり、それぞれ3、2、及び1.5時間だった。3回の抽出から得た抽出物をプールし、減圧下で濃縮して1.20〜1.30の相対密度(50℃で測定)を得、減圧下で乾燥させ(80℃)てグレジチアサポニンを得た。結果として生じたグレジチアサポニンを、2モル/Lの塩酸を含むエタノール溶液(エタノール濃度は45%)(グレジチアサポニンの重量の12倍の体積(v/w))中100℃で3時間加水分解した。加水分解生成物をろ過し、加水分解物を捨てた。フィルターケークを脱イオン水で中性になるまで洗浄し、乾燥させて粗製グレジチアサポゲニンを得た。次に、粗製グレジチアサポゲニンの重量の40倍(v/w)の体積の95%エタノールに粗製グレジチアサポゲニンを溶解させ、溶液を加熱して沸騰させた後、その中に1%の医薬的に許容できる活性炭(溶液の体積に基づいて)を添加してから熱いうちにろ過した。ろ液を減圧下で濃縮してろ液からエタノールを回収し、固体を乾燥させて(80℃)、グレジチアサポゲニンを得た。全部で3バッチを調製した。アッセイ結果を表1を示した。
【0021】
表1 比較法から得た3バッチのアッセイ結果

【0022】
サポゲニンの平均収率は2.25%であり、この場合エキノシスト酸の平均含量は55.53%であり、オレアノール酸の平均含量は20.23%であり、エキノシスト酸とオレアノール酸の総含量は75.76%だった。
この比較法の以下の欠点は必然的である。
a. 抽出及び加水分解手順で大量のエタノールを使用し、結果として生産コストが高くなる。
b. 減圧下での乾燥手順を原液の混合物について行なうので、工業化生産にとって安全でなく、かつ適してもいない。
c. 調製されたサポゲニンは、20%を超える他成分及び不純物を含む。
d. 得られたサポゲニンは灰白色粉末であり、製剤化中に水、アルコール等の溶媒にさらされると暗褐色に変わり、患者のコンプライアンスを増す新規剤形、例えば経口崩壊錠剤、持続性及び/又は制御製剤などの開発に不利である。
比較法と比べると、グレジチア抽出物の本調製方法は、抽出プロセスの条件、例えば加水分解のpH値、使用する医薬的に許容できる活性炭の量などを制御することによって、エキノシスト酸とオレアノール酸の総含量及びそれらの間の質量比を制御することができる。グレジチア抽出物の本調製方法は以下の利点を有する。
a. 抽出手順において、抽出溶媒としてアルコールの代わりに水を使用し、かつ加水分解手順をアルコールの非存在下で行なうことができ、生産コストを大幅に削減する。
b. 減圧下での乾燥手順の代わりに直接加水分解を利用するので、エネルギー消費を減らし、かつ生産効率を高め、またアルコールの非存在下の酸加水分解を利用するので、生産コストを削減する。
上記2つの利点、すなわち生産効率上昇及び生産コスト削減によってグレジチア抽出物の工業化生産が可能になるのみならず、製造中の安全性が向上し、グレジチア抽出物をさらに薬物に発展させることができ、多くの特許に有利に働く。
c. 本発明のグレジチア抽出物は、エキノシスト酸とオレアノール酸の総含量が90%以上である白色又はオフホワイトの結晶であり、有意に改良された品質の高純度グレジチア抽出物は、その抽出物規格を確立するため及び市場競争の必要性に従う種々の新しい剤形を開発するためにも好ましいことを示唆している。
d. この改良された方法は、グレジチア抽出物の品質を有意に高め、かつその品質を超えて安定性及び可制御性をも向上させ、薬物の開発にさらに都合よい。
【0023】
本発明の他の有利な効果は、以下の毒物学的及び薬力学的試験によって実証されるであろう。
試験例1:本発明の医薬組成物とエキノシスト酸との毒物学的試験の比較
(材料及び方法)
動物:通常の健康な成体ビーグルイヌ、雄と雌で均等に構成され、6〜8月齢、体重9〜11kg。
薬物:Z01(エキノシスト酸:オレアノール酸=3:1、実施例4の方法で調製、エキノシスト酸とオレアノール酸の総含量が99%である)、社内製のオフホワイト錠剤、ロット番号:090205;Z02(エキノシスト酸:オレアノール酸=1:1、実施例1の方法で調製、エキノシスト酸とオレアノール酸の量が抽出物の量の94.2%を占める)、社内製のオフホワイト錠剤、ロット番号:090206;社内製のエキノシスト酸EA(98.5%のエキノシスト酸含有)、ピュアホワイト散剤、ロット番号:090107;生理食塩水、無色清澄液、Chengdu QingShan LiKang Pharmarceutical co., Ltd.によって提供、ロット番号:A0803025;アラニントランスアミナーゼ(Alanine Transarninase)(ALT)キット、Sichuan MiKe Science & Technology Co., Ltd.によって提供、ロット番号:1007071。
主要機器:完全自動化血液生化学分析器(Roche Integra 400 Plus, Switzerland)、完全自動化血液学分析器(Abbott CELL-DYN 3700SL, USA)、完全自動化血液凝固分析器(SYSMEX CA-500, Japan)、4チャネル生理学記録システム(RM6240, Chengdu Instrument Factory, China)、電子秤など。
【0024】
手順:正常なビーグルイヌを2週間隔離して異常なパラメーターを有するイヌを退けた。選ばれたイヌをランダムに以下の10群に割り当てた:ブランクコントロール群、低用量Z01群(エキノシスト酸の薬用量、50mg/kg)、中用量Z01群(エキノシスト酸の薬用量、150mg/kg)、高用量Z01群(エキノシスト酸の薬用量、250mg/kg)、Z02低用量群(エキノシスト酸の薬用量、50mg/kg)、中用量Z02群(エキノシスト酸の薬用量、150mg/kg)、高用量Z02群(エキノシスト酸が250mg/kg)、低用量EA群(50mg/kg)、中用量EA群(150mg/kg)、高用量EA群(250mg/kg)、雄と雌で均等に構成された1群当たり8匹の動物。10ml/kgの体積で1日1回、21日間連続して個々群の全てのイヌに胃内投与した。投与前及び投与後の日21に、朝自然に排泄された尿のサンプル及び前肢静脈からの血液をそれぞれ尿ルーチン、血液ルーチン、及び凝固時間測定のために収集し、その一方で第2誘導(lead II)心電図を追跡した。投与前並びに投与後の日4、日7、日14、及び日21に血液サンプルをイヌ前肢静脈から収集し、肝機能と関係がある生化学指標について評価した。最終投与後24時間に、各群の動物を解剖し、全身を検死し、裸眼で観察した。実質器官を秤量し、器官係数の計算に供し、組織病理学的に調査した。実験データを統計ソフトウェアパッケージSPSS 11.5で処理し、平均±標準偏差
【数1】

として示した。複数群間の比較は分散の一元配置分析で試験し、2つの群間の比較はt検定で試験した。病理結果を記述的に検討した。詳細データを表1に示した。
【0025】
結果:
1. 試験動物の生化学試験及びALTの結果
表1の結果は、50、150、及び250mg/kgの用量で投与した3つの群由来の血液中のアラニントランスアミナーゼの全レベルが投与後7日目に上昇し、投与後21日目まで持続したこと、及びアラニントランスアミナーゼのレベルの上昇度がエキノシスト酸に関して用量依存性であることを示した。投与後、150及び250mg/kgの用量で投与した2つの群由来の血液中のアラニントランスアミナーゼのレベルは、イヌの正常範囲を超えた。Z01群(エキノシスト酸とオレアノール酸の質量比が3:1)に関しては、50及び150mg/kgの用量でエキノシスト酸を投与した群のアラニントランスアミナーゼ(ALT)のレベルは、投与後に有意には影響を受けないが;一方250mg/kgの用量でエキノシスト酸を投与した群では投与後7日目に上昇傾向を示し、投与後14日目には最高値に達するが(イヌの正常範囲超え)、投与後21日目にわずかに減少することが分かった。50、150、及び250mg/kgの用量でエキノシスト酸を投与した3つのZ02群(エキノシスト酸とオレアノール酸の質量比が1:1)では投与後のアラニントランスアミナーゼのレベルが有意には影響を受けなかった。
2. 他の試験及び結果
投与中、数匹の動物だけが嘔吐、下痢などの症状を示した。他の異常な徴候は各動物で観察されず、動物の体重は投与前の体重と比べて有意には変化しなかった。尿ルーチン、血液ルーチン、及び凝固時間測定、第2誘導心電図並びにALT以外の種々の生化学指標から得た全ての試験結果は、あらゆるモニタリング時点で投与前の当該結果及びブランクコントロール群の当該結果に比べて有意には変化せず、これらの結果は、統計的有意性において無意味である。
3. 結論:この実験の3種の薬物の用量レベル設定は、エキノシスト酸の含量を基礎とした。すなわち、低用量群、中用量群、及び高用量群のエキノシスト酸の含量は、それぞれ50、150、及び250mg/kgだった。該実験の結果は、エキノシスト酸が血中のALTレベルを上昇させ、かつALTレベルとの用量効果関係を示すこと、すなわち、エキノシスト酸は一定の肝毒性を引き起こし得ることを示唆している。しかし、医薬組成物中のエキノシスト酸とオレアノール酸の比を3:1〜1:1の範囲内で制御することによって、肝臓に及ぼすエキノシスト酸の毒性反応を大幅に減らすことができる。
【0026】

注:*平均の差異は、投与前の平均と比較する場合に統計的な意義がある(P<0.05);
**平均の差異は、投与前の平均と比較する場合に統計的な意義がある(P<0.01)。
【0027】
試験例2:麻酔したイヌの冠動脈結紮に起因する心筋梗塞に及ぼす本発明の医薬組成物の効果
(材料及び方法)
動物:健康な成体ハイブリッドイヌ、雄と雌を両方使用、体重12〜16kg。
薬物:Z01(エキノシスト酸:オレアノール酸=3:1、エキノシスト酸とオレアノール酸の総含量が99.0%である)、社内製のオフホワイト錠剤、ロット番号:090205;Z02(エキノシスト酸:オレアノール酸=1:1、エキノシスト酸とオレアノール酸の量が94.2%である)、社内製のオフホワイト錠剤、ロット番号:090206;レッドセージルートの複合錠剤(Compound Tablet of Red Sage Root)(以後「CTRSR」と略記する)、Sichuan Shuzhong Pharmaceutical Co., Ltd.製の褐色錠剤、ロット番号:080202;ペントバルビタールナトリウム、Sigma Corporation, USA製の白色又はオフホワイトの散剤、ロット番号:P3761;ヘパリンナトリウム、Qilu Pharmaceutical. Co., Ltd.製の無色又は黄色がかった清澄液、ロット番号:P20080227152652765;ニトロテトラゾリウムブルークロリド、Shanghai Jingchun Reagent Co.,Ltdから、黄色散剤、ロット番号:1124927。
機器:動物用HX-300人工呼吸器(Chengdu TME Technology Co, Ltd, China)、及び完全自動化生化学分析器(Roche Integra 400 Plus, Switzerland)。
【0028】
手順:実験用イヌを順化給餌に供し、ランダムに以下の7群に割り当てた:モデル群、負コントロール群(偽手術群)、正コントロール群(25mg/kgのレッドセージルートの複合錠剤)、高用量Z01群(44.4mg/kg)、低用量Z01群(22.2mg/kg)、高用量Z02群(70mg/kg)、低用量Z02群(35mg/kg)、1群当たり6匹の動物。3%ペントバルビタールナトリウムの静脈内注射(30mg/kg)で各実験用動物に麻酔をかけた。首の手術及び気管内挿管を行なった後、人工呼吸器につなげた。片側の頚動脈を分離して圧力トランスデューサーに接続した。胸を開いた。心膜を長手方向にハサミで切り、巾着縫合で固定して心臓を保持した。左回旋性冠動脈と大動脈起始部を分離した。3mlの血液を採取及び試験して結紮前のリン酸クレアチンキナーゼ(CK)、乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)、及びグルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ(AST)の活性を決定した。次に、冠動脈を結紮した(偽手術群では、結紮せず)。15分後に、個々の指標を決定した。同時に、試験群の動物には十二指腸を介して薬物を投与し、モデル群と偽手術群の動物には等体積の生理食塩水を同経路で投与した。投与後、それぞれ30分、60分、90分、120分、及び180分に個々の指標を決定した。最後に、3mlの血液を採取及び試験して、結紮又は投与後のCK、LDH、及びASTの活性を決定した。そして、動物を屠殺した。心臓を取り出し、水で洗浄して残存血液を除去し、ろ紙でぬぐって水分を乾燥させて秤量した。その後、心室を約1.0cm厚の薄片にスライスした。薄片を2%レッドテトラゾリン(TTC)の溶液に入れ、37℃で15分間インキュベートして染色し、溶液から取り出した。非染色心筋を薄片から分離し、秤量して、心室に対する梗塞部の割合を計算した。実験データをソフトウェアSPSS 11.5で統計的に処理した。群内及び群間の両比較は分散の一元配置分析で試験し、結果を
【数2】

で示した。
【0029】
結果:
1. イヌの心筋梗塞の領域に及ぼす効果
イヌの心筋梗塞の領域を決定している表2の結果は、治療群及びCTRSR群由来の梗塞イヌにおける心筋梗塞の領域がモデル群由来の当該領域と比較して有意に減少し(P<0.01)、CTRSRと比較した場合には、投与群間で有意な差異がなかったことを示している。
【0030】

注:モデル群との比較において、*:P<0.05;**:P<0.01
【0031】
2. イヌの心筋酵素に及ぼす効果
心筋酵素の活性を決定している表3の結果は、各投与群由来の心筋虚血のイヌにおけるリン酸クレアチンキナーゼ(CK)の活性がモデル群由来の当該活性に比べて有意に低減し、またCTRSR群と比較した場合には有意な差異がないことを示している。Z01高群及びZ02高群由来の心筋虚血のイヌにおける乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)の活性は、モデル群由来の当該活性と比較して有意に低減し;各投与群由来の活性は、CTRSR群に比べて有意な差異がなかった。
【0032】

注:モデル群との比較において、*:P<0.05;**:P<0.01
上記結果は、本発明の2種のタイプの医薬組成物がイヌの心筋梗塞を有意に完全することを示唆している。
【0033】
試験例3:麻酔したイヌの心筋虚血後の血行動態に及ぼす本発明の医薬組成物の効果
(材料及び方法)
動物:健康な成体ハイブリッドイヌ、雄と雌を両方使用、体重12〜16kg。
薬物:Z01(エキノシスト酸:オレアノール酸=3:1、エキノシスト酸とオレアノール酸の総含量が99.0%である)、社内製のオフホワイト錠剤、ロット番号:090205;Z02(エキノシスト酸:オレアノール酸=1:1、エキノシスト酸とオレアノール酸の総含量が94.2%である)、社内製のオフホワイト錠剤、ロット番号:090206;CTRSR、Sichuan Shuzhong Pharmaceutical Co., Ltd.製の褐色錠剤、ロット番号:080202;ペントバルビタールナトリウム、Sigma Corporation, USA製の白色又はオフホワイトの散剤、ロット番号:P3761。
機器:4チャネル生理学記録システム(RM-6000)(Nihon Kohden Co.)、電磁流量計 5.0mm、1.0mm(Nihon Kohden Co.)、自動血液ガス分析器(AVLCOMPACT-3,Sweden)。
【0034】
手順:実験用イヌを順化給餌に供し、ランダムに以下の7つの群に割り当てた:モデル群、負コントロール群(偽手術群)、正コントロール群(25mg/kgのレッドセージルートの複合錠剤)、高用量Z01群(44.4mg/kg)、低用量Z01群(22.2mg/kg)、高用量Z02群(70mg/kg)、低用量Z02群(35mg/kg)、1群当たり6匹の動物。3%ペントバルビタールナトリウムの静脈内注射(30mg/kg)で実験用動物に麻酔をかけた。首の手術及び気管内挿管を行なった後、人工呼吸器につなげた。冠動脈前下行枝の第2の主要分岐下で動脈のフラグメントを慎重に分離し、容易に使えるように糸を通してから上行大動脈起始部をも分離して電磁流量計を固定するために用いて心拍出量を記録した。左心室尖部を心臓カテーテルに挿管し、該カテーテルを介して左心室圧及び微分(±dp/dtmax)を圧力センサーで記録した。心電図用の電極を動物の肢に固定してモニターし、心電図を記録した。正常血圧、心電図、心拍出量、左心室内圧及び±dp/dtmaxを記録した後、冠動脈の左前下行枝の自由端で結紮を行なって心筋虚血を誘発した。同時に、割当群に応じて動物に薬物を十二指腸を介して投与し;モデル群及び偽手術群の動物には等体積の生理食塩水を同経路で投与した。頚動脈及び冠静脈洞からそれぞれ得た血液サンプルを自動血液ガス分析器を用いて血中酸素含量について分析した。ソフトウェアSPSS 11.5で実験データを統計処理した。群内と群間の両方の平均の比較は分散の一元配置分析で試験し、結果を
【数3】

で示した。
【0035】
結果:
1. 心筋梗塞を患うイヌにおける心筋の酸素消費に及ぼす効果
表4では、各群における心筋の酸素消費(VO2)の計算結果は、あらゆるイヌ群の心筋の酸素消費がモデル群の当該酸素消費に比べて結紮後1〜4時間で有意に減少し、CTRSR群の当該酸素消費と比較した場合には有意な差異がないことを示している。
【0036】

注:モデル群との比較において、*:P<0.05;**:P<0.01
【0037】
2. 心筋梗塞を患うイヌの心拍出量に及ぼす効果
表5において、心拍出量(AF)の定量結果は、各用量群の心拍出量がモデル群の当該心拍出量に比べて投与後30分〜4時間で有意に差異があり(P<0.05、P<0.01)、CTRSR群の当該心拍出量と比較した場合には有意な差異がないことを示している。
【0038】

注:モデル群との比較において、*:P<0.05;**:P<0.01
【0039】
3. 心筋梗塞を患うイヌの心仕事量に及ぼす効果
表6では、心仕事量(MW)の計算結果は、用量群及びCTRSR群の心仕事量が投与後30分で有意に減少し、かつ用量群の心仕事量はモデル群の当該心仕事量に比べて投与後30分〜4時間で有意に減少し(P<0.05)、高用量Z01群の心仕事量及び高用量Z02群の心仕事量は、投与後それぞれ1時間及び2時間の時点でさらに有意に減少し(P<0.01);用量群とCTRSR群との間には有意な差異がないことを示している。
【0040】

注:モデル群との比較において、*:P<0.05;**:P<0.01
【0041】
要するに、2種のタイプの医薬組成物は抗心筋梗塞効果を示し、その機構は、心筋機構のみならず、虚血心筋細胞の細胞膜の安定化及び保護をある程度改善することによる心筋の酸素消費の減少である。本組成物を心筋梗塞、狭心症及び関連障害の治療用の新薬物に発展させ得る。
【0042】
試験例4:ピツイトリン(pituitrin)(PIT)に起因するラットの心筋虚血に及ぼす本発明の医薬組成物の効果
(材料及び方法)
動物:クリーングレードのSDラット、5〜6週齢、200〜250gの体重、雌と雄両方使用。
薬物:X01(エキノシスト酸:オレアノール酸=3:1、実施例4の方法で調製、エキノシスト酸とオレアノール酸の総含量が92.8%である)、社内製のオフホワイト錠剤、ロット番号:090309;X02(エキノシスト酸:オレアノール酸=1:1、実施例1の方法で調製、エキノシスト酸とオレアノール酸の総含量が98.8%である)、社内製のオフホワイト錠剤、ロット番号:090310;ピツイトリン(PIT):ロット番号:080315、Bengbu Hongye Biochemical pharmaceuticals Factory製、ペントバルビタールナトリウム:ロット番号:F20020915;Sinopharm Chemical Reagent(Shanghai, China) Co., Ltd.によって輸入及び配給;トングキシンルオ(Tongxinluo)カプセル剤、ロット番号:080749、Shijiazhuang Yiling Pharmaceutical Co., Ltd.製。
機器:ASB240U Biosignal Acquisiton System, Chengdu Aosheng Electronics Co., Ltd;KQ5200B Ultrasonic Cleaner, Kunshan Ultrasonic Instrument Co. Ltd.;Milli-Q Gradient A10 Pure Water Device:USA Millipore Co.;AB 104-N Electronic Balance:METTLER TOLEDO Co.
【0043】
手順:ピツイトリン(PIT)に感受性かつ正常ECGを有する112匹のSDラット(5〜6週齢かつ体重が200〜250g)をスクリーニングした。動物をランダムに以下の7つの群に割り当てた:モデル群、ブランクコントロール群、正コントロール群(360mg/kgのトングキシンルオカプセル剤)、X01高用量群(69.5mg/kg)、X01低用量群(34.7mg/kg)、X02高用量群(97.7mg/kg)、X02低用量群(48.8mg/kg)、1群当たり、雄と雌で均等に構成された15匹の動物。各群の動物に対応薬物を10ml/kgの体積で7日間連続して胃内投与した。最終投与100分後に1%ペントバルビタールナトリウム(30mg/kg)をラットに腹腔内注射した。麻酔をかけるとき、動物をフロッグボード上に固定して2分間にわたる第2誘導(Lead II)による正常心電図の追跡に供した。次いで、PIT(1.5IU/kg)を20秒間かけてゆっくりラットの尾静脈を介してラットに注入した。PIT注入後15分に心電図の変化を追跡した。STセグメント由来データを10秒、30秒、1分、2分、4分、6分、8分、10分、13分、及び15分の時点で収集した。モデリング後の種々の時点でSTセグメントシフトを比較した。
結果:
表7のSTセグメントシフトの合計の分析から、2種のサンプルの高用量と低用量の両方ともSTセグメントシフトにある程度拮抗することができ、X01高用量群、X02高用量群及び低用量群の拮抗作用が最も有意であることが分かる(P<0.05又はP<0.01)。種々の時点における心筋虚血モデルのSTセグメントシフトの結果によれば、X02は、PITの注入後10秒、10分、13分、及び15分で抗心筋虚血の有意な効果を示す。これらの結果は、医薬組成物X01及びX02の2種のサンプルは両方とも有意な抗心筋虚血効果を有し、かつ冠動脈心臓発作の初期及び回復期で使用可能であることを実証する。
【0044】

注:モデル群との比較において、*:P<0.05;**:P<0.01
【0045】
試験例5:ピツイトリン(PIT)に起因するラットの心筋虚血に及ぼす薬物の効果
(材料及び方法)
動物:クリーングレードのSDラット、5〜6週齢、体重200〜250g、雄と雌の両方使用。
薬物:Y01(エキノシスト酸:オレアノール酸=3:1、実施例4の方法で調製、エキノシスト酸とオレアノール酸の総含量は97.4%である)、社内製のオフホワイト散剤;エキノシスト酸EA(98.4%のエキノシスト酸含有)、社内製のピュアホワイト散剤;オレアノール酸OA(97.8%のオレアノール酸含有)、社内製のピュアホワイト散剤;ピツイトリン、ロット番号:080315、Bengbu Hongye Biochemical pharmaceuticals Factory製品;ペントバルビタールナトリウム、Chengdu Changzheng Huabo Co., Ltd.製;トングキシンルオカプセル剤、Shijiazhuang Yiling Pharmaceutical Co., Ltd.の製品。
機器:ASB240U Biosignal Acquisiton System, Chengdu Aosheng Electronics Co., Ltd;KQ5200B Ultrasonic Cleaner, Kunshan Ultrasonic Instrument Co. Ltd.;Milli-Q Gradient A10 Pure Water Device:USA Millipore Co.;AB 104-N Electronic Balance: METTLER TOLEDO Co.
【0046】
手順:ピツイトリン(PIT)に感受性かつ正常ECGを有する90匹のSDラット(5〜6週齢かつ体重が200〜240g)をスクリーニングした。動物をランダムに以下の6つの群に割り当てた:モデル群、ブランクコントロール群、正コントロール群(360mg/kgのトングキシンルオカプセル剤)、Y01群(68.4mg/kg、エキノシスト酸の含量が50mg/kg、オレアノール酸の含量が16.7mg/kgだった)、EA群(50.8mg/kg、エキノシスト酸の含量が50mg/kgだった)、OA群(17.0mg/kg、オレアノール酸の含量が16.7mg/kgだった)、1群当たり、雄と雌で均等に構成された15匹の動物。全群の各動物に対応薬物を10ml/kgの体積で7日間連続して胃内投与した。最終投与100分後に1%ペントバルビタールナトリウム(30mg/kg)をラットに腹腔内注射した。麻酔をかけるとき、動物をフロッグボード上に固定して2分間にわたる第2誘導(Lead II)による正常心電図の追跡に供した。次いで、PIT(1.5IU/kg)を20秒間かけてゆっくりラットの尾静脈を介してラットに注入した。PIT注入後15分に心電図の変化を追跡した。STセグメントからのデータを10秒、30秒、1分、2分、4分、6分、8分、10分、13分、及び15分の時点で収集した。モデリング後の種々の時点でSTセグメントシフトを比較した。実験データを統計ソフトウェアパッケージSPSS、バージョン13.0で処理した。測定データを平均±標準偏差
【数4】

として示した。複数群間の比較は、ランダム化ブロックデザイン用のANOVAで試験し、2つの群間の比較はSNK-g検定で試験した。
【0047】
結果:
表8のSTセグメントシフトの合計の分析から、Y01とEAは両方ともSTセグメントシフトに拮抗することができ、Y01のSTセグメントシフトの合計がモデル群の当該合計と比較した場合に最も有意であり(P<0.01)、一方OAのSTセグメントシフトに対する拮抗作用は、そのSTセグメントシフトの合計をモデル群の当該合計と比較した場合(P>0.05)及びY01群の当該合計と比較した場合(P<0.05)に明白でないことが分かる。種々の時点における心筋虚血モデルのSTセグメントシフトの値によれば、Y01とEAは両方ともPITの注入後のほとんど全ての時点で抗心筋虚血の有意な効果を示すが、OAは、PITの注入後の各時点で抗心筋虚血の明白な効果を示さない。
【0048】

注:モデル群との比較において、*:P<0.05;**:P<0.01;Y01群との比較において、Δ:P<0.05
【0049】
表8のデータは、グレジチア抽出物Y01とエキノシスト酸サンプルが両方とも抗心筋虚血の有意な効果を有し、かつ冠動脈心臓発作の初期及び回復期に使用可能であり、オレアノール酸は心筋虚血を改善するが有意でないことを示している。作用強度を考慮すると、Y01はエキノシスト酸又はオレアノール酸のどちらよりも明らかに優れている。
【0050】
試験例6:塩化バリウムによって誘発されるラットの不整脈に及ぼす本発明の医薬組成物の効果
(材料及び方法)
動物:クリーングレードのSDラット、5〜6週齢、体重200〜250g、雄と雌を両方使用。
薬物:X01(エキノシスト酸:オレアノール酸=3:1、エキノシスト酸とオレアノール酸の総含量が92.8%である)、社内製のオフホワイト錠剤、ロット番号::090309;X02(エキノシスト酸:オレアノール酸=1:1、エキノシスト酸とオレアノール酸の総含量が98.8%である)、社内製のオフホワイト錠剤、ロット番号:090310;塩化バリウム、A.P, Kaiyuan Chemical Reagent Factoryから、ロット番号:0807002;CTRSR、Sichuan Shuzhong Pharmaceutical Co., Ltd.製、褐色錠剤、ロット番号:080202。
機器:ASB240U Biosignal Acquisiton System, Chengdu Aosheng Electronics Co., Ltd;KQ5200B Ultrasonic Cleaner, Kunshan Ultrasonic Instrument Co. Ltd.;Milli-Q Gradient A10 Pure Water Device, USA Millipore Co.;AB 104-N Electronic Balance, METTLER TOLEDO Co.。
【0051】
手順:塩化バリウムに感受性かつ正常ECGを有する112匹のSDラット(5〜6週齢、体重が200-250g)をスクリーニングした。動物を以下の6つの群に割り当てた:モデル群、正コントロール群(75mg/kgのレッドセージルートの複合錠剤)、X01高用量群(69.5mg/kg)、X01低用量群(34.7mg/kg)、X02高用量群(97.7mg/kg)、X02低用量群(48.8mg/kg)、1群当たり、雄と雌で均等に構成された15匹の動物。予防の目的で、全群の各動物に1日1回5日間連続で対応薬物を胃内投与した。最終投与後に10%抱水クロラール(400mg/kg)の注射でラットに麻酔をかけ、仰臥位で固定し、30分間静置した後、第2誘導(Lead II)の正常心電図の時間を追跡した。最終投与後45分に舌静脈を介した4mg/kgの0.4%塩化バリウム注射でラットの不整脈を誘発した。第2誘導(Lead II)心電図の変化を観察した。二方向性心室性不整脈の発生時点(早期又は後期)及びその持続時間を指標とみなした。30分より長く持続する二方向性心室性不整脈の持続時間は30分として記録した。
結果:
表9から、試験薬物は、塩化バリウムの静脈内注射の結果として生じるラットの二方向性心室性不整脈の発生時点を延期し、かつこの不整脈の持続時間を減少させ得ることが分かる。さらに、予防的治療の効率が勾配様式で現れ、明白な用量効果関係を示している。用量群の効率は、正コントロール(CTRSR)群と比較した場合に有意な差異はないが、表9のデータから、医薬組成物X01及びX02の高用量群は、不整脈の発生の延期及び持続時間の減少においてCTRSR群よりわずかに良いことが分かる。これは、本発明の医薬組成物が不整脈の治療に有利であることを示唆している。
【0052】

注:モデル群との比較において、*:P<0.05;**:P<0.01
【0053】
試験例7:ウサギの脂質障害に及ぼす本発明の医薬組成物及びエキノシスト酸の効果
(材料及び方法)
動物:純血種の日本の白色ウサギ、グレードI、雄、3月齢、1動物につき1.5〜2.0kg。
薬物:Z01(エキノシスト酸:オレアノール酸=3:1、エキノシスト酸とオレアノール酸の総含量が99.0%である)、社内製のオフホワイト錠剤、ロット番号:090205;Z02(エキノシスト酸:オレアノール酸=1:1、エキノシスト酸とオレアノール酸の総含量が94.2%である)、社内製のオフホワイト錠剤、ロット番号:090206;アトルバスタチンカルシウム錠剤(Lipitor)、Pfizer Inc.製、ロット番号:95837012;フェノフィブラートカプセル剤(Lipanthyl)、Laboratories Fournier S.A. France製、ロット番号:12094;生理食塩水、Chengdu Qingshan Likang Pharmarceutical Co., Ltd.によって提供、清澄無色液体、ロット番号:A0703025。
機器:完全自動化生化学分析器(Roche Integra 400 Plus, Switzerland);TGL-16G遠心分離機;AB104-N電子秤;BP211D電子秤。
【0054】
手順:動物を順化給餌に10日間供した。次に、60匹の動物を高脂肪餌(1%コレステロール+5%精製ラード+10%卵黄粉末+84%の基礎餌から成る)で飼育し、追加の6匹の動物を基礎餌で飼育した。15日間飼育した後、絶食させながら動物を中耳動脈からの採血に供した。血清を分離し、種々の血液指標について分析した。高脂肪餌で飼育した60匹の動物から、TC含量に基づいて42匹の動物を選択し、ランダム化ブロックデザインによって7つの群に割り当て(1群6匹の動物);基礎餌で飼育した6匹の動物をブランクコントロール群として使用した。群化後、全群の動物を全て基礎餌で飼育し、以下の群スケジュールに従って胃内投与し始めた:低用量Z01群(8.4mg/kg)、高用量Z01群(16.8mg/kg)、低用量Z02群(13.3mg/kg)、高用量Z02群(26.5mg/kg)、リピトール(Lipitor)群(2.5mg/kg)、リパンシール(Lipanthyl)群(20mg/kg)、モデル群、及びブランクコントロール群。投与を4週間持続した。実験データを統計ソフトウェアパッケージSPSS、バージョン13.0で処理した。測定データを平均±標準偏差
【数5】

として表した。複数群間の比較はランダム化ブロックデザイン用のANOVAで試験し、2つの群間の比較はSNK-q検定で試験した。
【0055】
結果:投与前及び最終投与24時間後に全ての実験群の絶食動物から血液サンプルを収集し、総コレステロール(TC)及びトリグリセリド(TG)の含量について分析した。データを統計処理して表10に示した。
【0056】

注:*平均の差異は、モデル群の平均と比較する場合に統計的意義がある(P<0.05);
**平均の差異は、モデル群の平均と比較する場合に統計的意義がある(P<0.01);
平均の差異は、Lipitor群の平均と比較する場合に統計的意義がある(P<0.05);
平均の差異は、Lipanthyl群の平均と比較する場合に統計的意義がある(P<0.05);
【0057】
表10では、群中の血清TCレベルに及ぼす試験薬物の作用の結果は、高用量Z01群、低用量Z01群、及び高用量Z02群の医薬組成物が、様々な程度の脂質障害を有するウサギの血清TCレベルを調整するのに有効であるが、リピトール(Lipitor)群及びリパンシール(Lipanthyl)群に比べて効率に有意な差異がない(P>0.05)ことを示している。血清TCレベルを下げる効力についての傾向を考慮すると、医薬組成物は、高用量Z01群>高用量Z02群>低用量Z01群>Z02低用量群のように異なる効力を有する。まとめると、最初の3つのサンプルがウサギの脂質障害の調整及び改善に有効である。
群中の血清TGレベルに及ぼす試験薬物の作用の結果は、高用量Z01群、低用量Z01群、及び高用量Z02群の医薬組成物が、様々な程度の脂質障害を有するウサギの血清TGレベルを調整するのに有効であるが、リピトール(Lipitor)群及びリパンシール(Lipanthyl)群に比べて効率に有意な差異がない(P>0.05)ことを示している。血清TGレベルを下げる効力についての傾向を考慮すると、医薬組成物は、高用量Z01群>低用量Z01群>高用量Z02群のように異なる効力を有する。
【0058】
試験例8:ウサギの脂質障害に及ぼす効果の比較
(材料及び方法)
動物:純血種の日本の白色ウサギ、グレードI、雄、3月齢、1動物につき1.5〜2.0kg。
薬物:Y01(エキノシスト酸:オレアノール酸=3:1、エキノシスト酸とオレアノール酸の総含量が97.4%である)、社内製のオフホワイト散剤;エキノシスト酸EA(98.4%のエキノシスト酸含有)、社内製のピュアホワイト散剤;オレアノール酸OA(97.8%のオレアノール酸含有)、社内製のピュアホワイト散剤;アトルバスタチンカルシウム錠剤(Lipitor)、Pfizer Inc.製;生理食塩水、Sichuan Meida Kangjiale Pharmaceutical Co, Ltd.製。
機器:完全自動化生化学分析器(Roche Integra 400 Plus, Switzerland);TGL-16G遠心分離機;AB104-N電子秤;BP211D電子秤。
【0059】
手順:動物を順化給餌に10日間供した。次に、40匹の動物を高脂肪餌(1%コレステロール+5%精製ラード+10%卵黄粉末+84%の基礎餌から成る)で飼育し、追加の6匹の動物を基礎餌で飼育した。15日間飼育した後、絶食させながら動物を中耳動脈からの採血に供した。血清を分離し、種々の血液指標について分析した。高脂肪餌で飼育した40匹の動物から、TC含量に基づいて30匹の動物を選択し、ランダム化ブロックデザインによって5つの群に割り当て(1群6匹の動物);基礎餌で飼育した6匹の動物をブランクコントロール群として使用した。群化後、個々群の動物を全て基礎餌で飼育し、以下の群スケジュールに従って胃内投与し始めた:Y01群(16.4mg/kg、エキノシスト酸の量が2mg/kgであり、オレアノール酸の量が4mg/kgだった)、EA群(12.2mg/kg、エキノシスト酸の量が12mg/kgだった)、OA群(4.0mg/kg、オレアノール酸の量が4mg/kgだった)、リピトール群(2.5mg/kg)、モデル群、及びブランクコントロール群。投与を4週間持続した。実験データを統計ソフトウェアパッケージSPSS、バージョン13.0で処理した。測定データを平均±標準偏差
【数6】

として表した。複数群間の比較にはランダム化ブロックデザインのANOVAを使用し、2つの群間の比較にはSNK-q検定を使用した。
【0060】
結果:
投与前及び最終投与24時間後に各実験群の絶食動物から血液サンプルを収集し、総コレステロール(TC)及びトリグリセリド(TG)の含量について分析した。データを統計処理して表11に示した。
【0061】

注:モデル群との比較において、*:P<0.05; **:P<0.01;
YO1群との比較において、△:P<0.05。
【0062】
表11では、各群の血清TCレベルに及ぼす試験薬物の作用の結果は、脂質障害のあるウサギの血清TCレベルの調整においてY01群とEA群は異なる効力を有することを示し、モデル群と比較すると、Y01群とEA群は投与後に有意な差異を示し(P<0.01又はP<0.05);OA群は、脂質障害のあるウサギの血清TCレベルの調整において明白な効力がなく、投与後のモデル群と比較すると、何ら有意な差異を示さず(P>0.05)、かつY01群に比べてP<0.05の有意な差異を示す。
各群の血清TGレベルに及ぼす試験薬物の作用の結果は、脂質障害のあるウサギの血清TGレベルの調整においてY01群とEA群は異なる効力を有することを示し、モデル群と比較すると、Y01群とEA群は有意な差異を示し(P<0.01又はP<0.05);OA群は、脂質障害のあるウサギの血清TGレベルの調整において明白な効力がなく、モデル群と比較すると、何ら有意な差異を示さず(P>0.05)、かつY01群に比べてP<0.05の有意な差異を示す。
上記に鑑みて、Y01群に用いた薬物及びエキノシスト酸はウサギの脂質障害の調整及び改善に明白な効力を有する。しかし、オレアノール酸にはウサギの脂質障害の改善における明白な効力がない。作用強度を考慮すると、Y01群に用いた薬物が、エキノシスト酸及びオレアノール酸より明らかに優れている。
【0063】
試験例9:ウサギのアテローム性動脈硬化症に対する本発明の医薬組成物の予防効果
(材料及び方法)
動物:純血種の日本の白色ウサギ、グレードI、雄、3月齢、1動物につき1.5〜2.0kg。
薬物:Z01(エキノシスト酸:オレアノール酸=3:1、エキノシスト酸とオレアノール酸の総含量が99.0%である)、社内製のオフホワイト錠剤、ロット番号:090205;Z02(エキノシスト酸:オレアノール酸=1:1、エキノシスト酸とオレアノール酸の総含量が94.2%である)、社内製のオフホワイト錠剤、ロット番号:090206;アトルバスタチンカルシウム錠剤(Lipitor)、Pfizer Inc.製、ロット番号:95837012;フェノフィブラートカプセル剤(Lipanthyl)、Laboratories Fournier S.A. France製、ロット番号:12094;生理食塩水、Chengdu Qingshan Likang Pharmarceutical Co., Ltd.によって提供、清澄無色液体、ロット番号:A0703025;ウシ血清アルブミン(BSA)、Sigma Corporation, USA製。
機器:完全自動化生化学分析器(Roche Integra 400 Plus, Switzerland);TGL-16G遠心分離機;AB104-N電子秤;BP211D電子秤;電気ガラスホモジナイザーDY89-II。
【0064】
手順:10日間の順化給餌後、50匹の動物を完全にランダムに下記群に割り当てた:Z01群(16.8mg/kg)、Z02群(26.5mg/kg)、リピトール(Lipitor)群(2.5mg/kg)、リパンシール(Lipanthyl)群(20mg/kg)、及びモデル群、1群当たり9匹の動物;6匹の動物から成るブランクコントロール群。群化後、用量群及びモデル群の動物を毎日高脂肪餌(1%コレステロール+5%精製ラード+10%卵黄粉末+84%基礎餌から成る)で飼育し、一方ブランクコントロール群の動物は基礎餌で飼育した。同時に、全ての動物を群スケジュールに従う12週間の胃内投与に供した。投与の4週目の最後に、動物のASモデルの確立を促進するため、ウサギの辺縁耳静脈を介して200mg/kgの用量で10%BSAを1回注射した。実験データを統計ソフトウェアパッケージSPSS、バージョン13.0で処理した。測定データを平均±標準偏差
【数7】

として表した。複数群間の比較には完全ランダム化ブロックデザイン用の分散の一元配置分析で試験し、2つの群間の比較はSNK-qt検定で試験した。ノンパラメトリックな情報の統計は、クラスカル-ウォリスH検定(Kruskal-wallis H test)で行ない、2つの群間のその比較はネメニイ(Nemenyi)検定で試験した。
【0065】
結果:
1. 組織ホモジネート中の脂質レベルに及ぼす効果
(1) 実験群の各動物を最終投与24時間後に屠殺した。大動脈を取り除き、その中の脂質レベルの定量のためホモジネートした。データを統計処理して表12に示した。
【0066】

注:*平均の差異は、モデル群の平均と比較する場合に統計的意義がある(P<0.05)。
【0067】
表12では、大動脈組織ホモジネート内のTCレベルに及ぼす各群の試験薬物の作用の結果は、Z01群とZ02群が脂質障害のあるウサギの大動脈内のTCレベルを下げるのに異なる程度の効率を有し、リピトール群及びリパンシール群の当該効率に比べて有意な差異がないこと(P>0.05)を示している。大動脈内のTCレベルを下げる効力についての傾向を考慮すると、Z01群の医薬組成物の効力>Z02群の医薬組成物の効力である。
大動脈組織ホモジネート内のTGレベルに及ぼす各群の試験薬物の作用の結果は、Z01群とZ02群が脂質障害のあるウサギの大動脈内のTGレベルを下げるのに異なる程度の効率を有し、リピトール群及びリパンシール群の当該効率に比べて有意な差異がない(P>0.05)ことを示している。効力についての傾向を考慮すると、Z01群の医薬組成物の効力>Z02群の医薬組成物の効力である。
大動脈組織ホモジネート内の脂質レベルに及ぼす各実験群の試験薬物の効果から、本発明の医薬組成物、Z01及びZ02は両方とも大動脈内の脂質レベルを下げる効果をゆすることが分かり、この効果は、高脂肪食餌による強膜アテローム(scleratheroma)を改善することとして具体化される。
(2)各実験群の各動物を最終投与24時間後に屠殺した。肝臓を取り出し、その中の脂質レベルの定量のためホモジネートした。データを統計処理して表13に示した。
【0068】

注:*平均の差異は、モデル群の平均と比較する場合に統計的意義がある(P<0.05)。
【0069】
表13では、肝脈組織ホモジネート内のTCレベルに及ぼす各群の試験薬物の作用の結果は、Z01群とZ02群が脂質障害のあるウサギの肝組織内のTCレベルを下げるのに異なる程度の効率を有し、リピトール群及びリパンシール群に比べて有意な差異がない(P>0.05)ことを示している。肝組織内のTCレベルを下げる効力についての傾向を考慮すると、Z01群の医薬組成物の効力>Z02群の医薬組成物の効力である。
肝組織ホモジネート内のLDL-Cレベルに及ぼす各群の試験薬物の作用の結果は、Z01群とZ02群が脂質障害のあるウサギの肝組織内のLDL-Cレベルを下げるのに異なる程度の効率を有し、リピトール群及びリパンシール群に比べて有意な差異がない(P>0.05)ことを示している。効力についての傾向を考慮すると、Z01群の医薬組成物の効力>Z02群の医薬組成物の効力である。
肝組織ホモジネート内の脂質レベルに及ぼす各実験群の試験薬物の効果から、本発明の医薬組成物は、肝組織内のコレステロールレベルを下げる効果を有することが分かり、この効果は、肝組織内でコレステロールの合成を阻害することとして具体化される。
2. 大動脈内の動脈硬化性プラーク領域に及ぼす効果
各実験群の各動物を最終投与24時間後に屠殺した。大動脈を取り出し、全体的に染色した。動脈硬化性プラーク領域の割合を計算して統計処理した。そのデータを表14に示した。
【0070】

注:*平均の差異は、モデル群の平均と比較する場合に統計的意義がある(P<0.05)。
【0071】
表14では、各実験群における大動脈内の動脈硬化性プラーク領域に及ぼす作用の結果は、Z01群とZ02群が大動脈内の動脈硬化性プラークを改善するのに異なる程度の効率を有し、リピトール群及びリパンシール群の当該効率に比べて有意な差異がないことを示している(P>0.05)。大動脈内の動脈硬化性プラークを改善する効力についての傾向を考慮すると、Z01群の医薬組成物の効力>Z02群の医薬組成物の効力である。
要するに、本発明の医薬組成物はウサギのアテローム性動脈硬化症を予防及び改善するのに有効である。
【0072】
試験例10:ウサギのアテローム性動脈硬化症に及ぼす本発明の医薬組成物の治療効果
(材料及び方法)
動物:純血種の日本の白色ウサギ、グレードI、雄、3月齢、1動物につき1.5〜2.0kg。
薬物:Z01(エキノシスト酸:オレアノール酸=3:1、エキノシスト酸とオレアノール酸の総含量が99.0%である)、社内製のオフホワイト錠剤、ロット番号:090205;Z02(エキノシスト酸:オレアノール酸=1:1、エキノシスト酸とオレアノール酸の総含量が94.2%である)、社内製のオフホワイト錠剤、ロット番号:090206;アトルバスタチンカルシウム錠剤(Lipitor)、Pfizer Inc.製、ロット番号:95837012;フェノフィブラートカプセル剤(Lipanthyl)、Laboratories Fournier S.A. France製、ロット番号:12094;生理食塩水、Chengdu Qingshan Likang Pharmarceutical Co., Ltd.によって提供、清澄無色液体、ロット番号:A0703025;ウシ血清アルブミン(BSA)、Sigma Corporation, USA製。
機器:完全自動化生化学分析器(Roche Integra 400 Plus, Switzerland);TGL-16G遠心分離機;AB104-N電子秤;BP211D電子秤;OLYMPUS光学顕微鏡;倒立顕微鏡(カラー撮像システム付き)、Zeiss Corporation製。
【0073】
手順:10日間の順化給餌後、50匹の動物を完全にランダムに下記群に割り当てた:Z01群(16.8mg/kg)、Z02群(26.5mg/kg)、リピトール(Lipitor)群(2.5mg/kg)、リパンシール(Lipanthyl)群(20mg/kg)、及びモデル群、1群当たり9匹の動物;6匹の動物から成るブランクコントロール群。群化後、用量群の動物を毎日高脂肪餌(1%コレステロール+5%精製ラード+10%卵黄粉末+84%基礎餌から成る)で飼育し、一方ブランクコントロール群の動物は基礎餌で飼育した。飼育中の4週目の最後に、動物のASモデルの確立を促進するため、ウサギの辺縁耳静脈を介して200mg/kgの用量で10%BSAを1回注射した。8週間でモデリングを終了し、各群の動物を高脂肪餌に代えて基礎餌で飼育し、かつ群スケジュールに従う12週間の胃内投与に供した。実験データを統計スーツSPSS、バージョン13.0で処理した。測定データを平均±標準偏差
【数8】

として表した。ノンパラメトリックデータは、クラスカル-ウォリスH検定で行ない、2つの群間のその比較はネメニイ検定で試験した。
【0074】
結果:
1. 血管の内膜中膜厚に及ぼす効果
各実験群の各動物を最終投与後に屠殺した。胸部大動脈を全体的に染色した。次に、心臓近位の端部で横方向に動脈の小片をカットし(該近位端から心臓へはそれぞれ2cm及び4cmの位置)、パラフィンに包埋し、スライスし、HEで染色した。内膜厚対中膜厚の比を計算した。データを統計的に分析して表15に示した。
【0075】

注:*平均の差異は、モデル群の平均と比較する場合に統計的意義がある(P<0.05)
【0076】
表15の実験結果から、サンプル群の2種の実験薬物は両方とも内膜厚対中膜厚の比を小さくするのに有効であり、正コントロール群(リピトール群及びリパンシール群)の当該比に比べて有意な差異がないと結論づけることができる。この効力は、アテローム性動脈硬化症の治療における治療効果として具体化される。
2. 大動脈の組織病理学に及ぼす効果
各実験群の各動物を最終投与後に屠殺した。胸部大動脈を全体的に染色した。次に、心臓近位の端部で横方向に動脈の小片をカットし(該近位端から心臓へはそれぞれ2cm及び4cmの位置)、パラフィンに包埋し、スライスし、HEで染色し、組織病理学的に観察した。HEで染色された大動脈の断面を図2〜7に示した。
モデル群のHE染色検体では大動脈の有意な内皮症を観察することができる。また、コレステロールを有するマクロファージ由来泡沫細胞は、包埋及び染色中にその脂質を失うことによって、残されたふわふわした空胞と明確な核を有するふわふわした泡沫細胞のように見えた。サンプル群の大動脈の内皮症厚はより薄く、改善された抗アテローム性動脈硬化症効果を示し、リピトール群及びリパンシール群の当該効果に比べて有意な差異がなかった。大動脈の内皮症の改善における試験サンプルの効力の傾向を考慮すると、Z01群の医薬組成物の効力>Z02群の医薬組成物の効力である。
要するに、本発明の医薬組成物は、ウサギのアテローム性動脈硬化症の治療に有効である。
【0077】
(産業上の応用)
本医薬組成物の肝毒性は、医薬組成物中のエキノシスト酸とオレアノール酸の比を制御することによって有意に低減し、これにより心血管障害の治療における本医薬組成物の安全性及び可能性を高めることができる。グレジチア抽出物中のエキノシスト酸とオレアノール酸の質量比を制御することによって、最適化グレジチア抽出物が得られ、この最適化グレジチア抽出物は、その肝毒性を低減させるのみならず、その生産コストを大幅に削減することができ、その結果、有効な価値、良好な見通し及び産業上の応用に対する適合性を有している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
心血管障害の治療用医薬組成物であって、その活性成分が、3〜1質量部のエキノシスト酸と、1質量部のオレアノール酸とから成ることを特徴とする医薬組成物。
【請求項2】
前記その活性成分が、3〜2質量部のエキノシスト酸と、1質量部のオレアノール酸とから成ることを特徴とする請求項1に記載の心血管障害の治療用医薬組成物。
【請求項3】
前記その活性成分が、3質量部のエキノシスト酸と、1質量部のオレアノール酸とから成ることを特徴とする請求項1に記載の心血管障害の治療用医薬組成物。
【請求項4】
前記エキノシスト酸及びオレアノール酸が、植物抽出物又は化学合成物質由来であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の心血管障害の治療用医薬組成物。
【請求項5】
心血管障害の予防又は治療用薬物の調製における請求項1〜4のいずれか1項に記載の医薬組成物の使用。
【請求項6】
前記薬物が、冠動脈疾患、狭心症、心筋虚血、心筋梗塞、不整脈、高脂血症又はアテローム性動脈硬化症の予防又は治療用薬物であることを特徴とする請求項5に記載の使用。
【請求項7】
90.0%〜99.9%の総含量でエキノシスト酸とオレアノール酸を含み、かつエキノシスト酸とオレアノール酸が3:1〜1:1の質量比で存在していることを特徴とするグレジチア抽出物。
【請求項8】
エキノシスト酸とオレアノール酸が3:1〜2:1の質量比で存在していることを特徴とする請求項7に記載のグレジチア抽出物。
【請求項9】
エキノシスト酸とオレアノール酸が3:1の質量比で存在していることを特徴とする請求項8に記載のグレジチア抽出物。
【請求項10】
請求項7、8、又は9に記載のグレジチア抽出物の調製方法であって、以下の工程:
a. 皀莢果実(Fructus Gleditsiae Sinensis)の薬用材料を調製し、この薬用材料を水による煎出に供してからろ過し、ろ液を濃縮する工程;
b. この濃縮されたろ液中に水又は水性エタノールと共に酸を添加して、前記酸の濃度を2モル/Lにし、かつ前記任意のエタノールの含量を1〜45%にし、これらを加水分解のために撹拌及び煮沸してから、この加水分解された溶液をろ過し、得られたフィルターケークを精製水で、流出液のpHが6を超えるまで洗浄し、この洗浄されたフィルターケークを次に80℃で乾燥させて粗製グレジチアサポゲニンを得る工程;
c. この粗製グレジチアサポゲニンを15〜40部の95%エタノールに加熱しながら溶解させ、その中に1〜4%の医薬的に許容できる活性炭を添加し、これらを30分間撹拌及び煮沸した後、熱いうちにろ過し;ろ液のpHを2〜6に調整した後、そこからエタノールを回収してから冷却及び結晶化し、得られた結晶を80℃で乾燥させてグレジチア抽出物を得る工程
を含む方法。
【請求項11】
心血管障害の予防又は治療用薬物の調製における請求項7〜9のいずれか1項に記載のグレジチア抽出物の使用。
【請求項12】
前記薬物が、冠動脈疾患、狭心症、心筋虚血、心筋梗塞、不整脈、高脂血症又はアテローム性動脈硬化症の予防又は治療用薬物であることを特徴とする請求項11に記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2012−526730(P2012−526730A)
【公表日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−510094(P2012−510094)
【出願日】平成22年5月11日(2010.5.11)
【国際出願番号】PCT/CN2010/000671
【国際公開番号】WO2010/130152
【国際公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【出願人】(511277283)成都康弘制薬有限公司 (1)
【Fターム(参考)】