説明

心電図検査におけるノイズ検出システム及び方法

【課題】ECG信号取得システムに使用するノイズ検出システムを提供する。
【解決手段】本システム(100)は、被検体(105)の皮膚表面上に配置した一群の電極(130)に接続するように動作することができるECG信号取得システム(112)と組み合わせて使用するため、回路板(170)と該回路板上に取り付けられた複数の分岐回路(200,205,210,215,220)を含む。複数の分岐回路は、被検体の皮膚表面上に配置した一群の電極(130)の電気インピーダンスと実質的に類似した電気インピーダンスを持つ回路板(170)上に配置することができる。本システムは更に、ECG取得システムへ伝送するために前記複数の分岐回路から伝送された信号を受け取るように電気通信関係に接続された出力コネクタ(280)を含むことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に云えば、ノイズ検出システム及び方法に関し、より詳しく云えば、保健医療環境でノイズを検出し且つノイズの方向を識別するシステム及び方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
今日、作業環境内でノイズ・レベルを最小に設定し、確立し且つ維持することは、フィールド・エンジニアにとって課題であり且つ必要である。ノイズ干渉の発生源の例としては、接地していない電気延長コード、電気ソケット、電気エネルギ需要の大きい装置などを挙げることができる。このようなノイズ干渉は、しばしば、処理装置によって検査を行うため、或いは電気信号処理装置を試験し、デバッグ(debug) し又は維持するために行われる電気信号の測定及び分解能を妨害することがある。
【0003】
例えば、ノイズが問題となる1つの環境は、心電図検査が行われる保健医療施設内である。心電図(ECG)システムは、人の心臓内又は人の皮膚の表面における小さな生体電位信号を測定することができる。これらの生体電位信号は、100μVほどの低い範囲であることがあり、また、30μVほどに小さく分解可能である。例えば、John G.Websterの著書「Medical Instrumentation - Application and Method」(1988)に、心臓の機能を調べるための診断ツールとして用いられるECGを追跡するために電極を人に対して配置するやり方が記載されている。
【0004】
ノイズ・レベルを最小にすることにより電気信号処理性能を向上させることができるようにする処理装置用の環境が必要とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第20080315879号
【発明の概要】
【0006】
電気処理装置によって検査を行うために行われる電気信号の測定及び分解能を妨害する虞のある環境ノイズの発生源を検出し且つその位置を突き止めるシステム及び方法が要求され又は望まれている。上述の欠点及び要求は、以下に説明する様々な実施形態で対処する。
【0007】
一実施形態によれば、ECG信号取得システムと組み合わせて使用するシステムが提供される。ECG信号取得システムは、被検体の皮膚表面上に配置した一群の電極に接続するように動作することができる。本システムは、回路板と該回路板上に取り付けられた複数の分岐回路(subcircuit)を含むことができる。複数の分岐回路は、被検体の皮膚表面上に配置した一群の電極の電気インピーダンスと相関する電気インピーダンスを持つ回路板上に配置することができる。本システムは更に、ECG取得システムと通信するために複数の分岐回路から伝送された信号を受信するように電気通信関係に接続された出力コネクタを含むことができる。
【0008】
本書に記載の発明の別の実施形態によれば、被検体のECG信号を取得するように配置した一群の電極と通信関係にあるECG信号取得システムを含んでいるシステムが提供される。改良手段として、ECG取得システムと通信関係に接続されたアンテナ・システムが設けられ、該アンテナ・システムは、回路板上に取り付けられた一連の分岐回路を含む。該一連の分岐回路は、被検体上に配置した一群の電極と相似した配列で回路板上に配置することができる。出力コネクタが、アンテナ・システムからの信号の帯域幅及び振幅を表示するためにECG取得システムへ伝送するために複数の分岐回路から伝送された信号を受け取るように電気通信関係に接続される。
【0009】
更に別の実施形態によれば、規定の空間内に配置されたECG取得システムの処理によりノイズ干渉信号の発生源を検出するシステムが提供される。本システムは、ノイズ干渉信号を検出して、ECG取得システムへ伝送するアンテナ・システムと、規定の空間に対するアンテナ・システムの向き及び位置を伝送するように接続された位置突き止めシステムと、アンテナ・システムが規定の空間内を移動するにつれて、規定の空間に対するアンテナ・システムの向き及び位置と組み合わせてノイズ干渉信号の振幅の測度を表示するように構成された表示装置とを含む。
【0010】
様々な範囲のシステム、方法及びコンピュータ・プログラミング製品を本書で説明する。この「発明の概要」項で述べた様々な側面及び利点に加えて、更なる側面及び利点が、添付の図面を参照し且つ以下の詳しい説明を参照すると明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本書に記載の発明に従った、電気信号処理環境内のノイズ干渉の発生源の検出、方向突き止め及び隔離を向上させるように動作できるシステムの一実施形態の概略図である。
【図2】図2は、本書に記載の発明に従った、患者から放出された生体電位信号の取得の際に電極に現れるノイズ減衰を検出するために回路板上に配置した一群の電気分岐回路を持つアンテナ・システムの一実施形態の概略図である。
【図3】図3は、本書に記載の発明に従った、患者からの生体電位信号の取得の際に、右腕に配置した電極をシミュレート(模擬)する電気分岐回路の一実施形態の詳細図である。
【図4】図4は、本書に記載の発明に従った、図3のアンテナ・システムのアンテナ出力の一実施形態の詳細図である。
【図5】図5は、本書に記載の発明に従った、患者の生体電位信号検査におけるノイズ減衰の取得及び測定をシミュレートするように動作することのできる図1のシステムの一実施形態の概略図である。
【図6】図6は、本書に記載の発明に従った、図1のシステムの可視表示出力の一実施形態を示す略図である。
【図7】図7は、図1のシステムを用いてベースライン・ノイズ測定を行う方法の一実施形態の流れ図である。
【図8】図8は、図1のシステムを用いてノイズ・シミュレーションを遂行する方法の一実施形態の流れ図である。
【図9】図9は、図1のシステムを用いてノイズ角度測定(angulation)を遂行する方法の一実施形態の流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下の詳しい説明では、その一部を形成し且つ実施することのできる特定の実施形態を例として示した添付の図面を参照する。これらの実施形態は、当業者が該実施形態を実施することができる程度に詳しく説明しており、従って、他の実施形態を利用することができること、また実施形態の範囲から逸脱することなく論理的、機械的、電気的及びその他の変更を行うことができることを理解されたい。従って、以下の詳しい説明は、本発明の範囲を制限するものとして解釈すべきではない。
【0013】
図1は、電気信号処理環境内のノイズ干渉の発生源の検出、方向突き止め及び隔離を向上させるように動作できるシステム100の一実施形態の概略図である。電気信号処理環境の一例は、被検体105(例えば、人又は動物)が生体電位信号取得システム110によって検査を受けることのできる生体電位検査室である。生体電位信号取得システム110の一例は、図示のような(表面又は心臓内)心電図(ECG)信号取得システム112を含む。また、他の種類の生体電位信号監視システムの例としては、限定するものではないが、被検体105(例えば、人又は動物)の脳波図(EEG)、エレクトロニューログラム(ENG)、筋電図(EMG)及び網膜電図(ERG)の測定のためのシステムを挙げることができる。ノイズ干渉の発生源の例としては、限定するものではないが、接地されていない電気延長コード、電気ソケット、エネルギ消費の大きい装置などを挙げることができる。ECG信号取得システム112と組み合わせたシステム100は、負荷試験ECG、安静時ECG、運動時ECG、患者監視、細動監視などのような、高感度の電気信号記録及び処理を必要とする様々なECG信号取得用途に適用することができる。
【0014】
例として、本書に記載の発明のECG信号取得システム112について以下に説明するが、該システム112は、増幅器115と、記録装置120と、被検体105に配置された一連の電極130との有線又は無線の通信を含むことができる。しかし、記録装置120は必要とされない。ECG信号取得システム112は、システム100のインターフェース125と有線又は無線通信関係に接続することができる。
【0015】
生体電位信号取得システム110の例としては、GE(登録商標)Healthcare社によって製造されているMAC3500 、MAC5500 、MAC400、CARDIOLAB (登録商標)EP記録装置、MAC1600 ECGモニタ又はSolar8000i患者モニタ、或いはMortara Instrument社によって製造されているELI350又はX-Scribe、或いはCardiac Science 社によって製造されているBurdick8500 又はQunitonEclipse又はQ9550 、或いはSt. Jude社によって製造されているEP-Workmate 記録システム、或いはHenan Huanan Medical Science and Technology 社によって製造されているGY電気生理/EP記録装置システム、或いはSIEMENS (登録商標)社によって製造されているAXIOM SENSIS XP Hemo/EP記録装置、或いはBIOSENSE WEBSETER (登録商標)社によって製造されているCARTO XP及びCARTO 3 Mapping System、或いはBARD(登録商標)Electrophysiology 社によって製造されているLab System Pro、或いはPHILIPS (登録商標)社によって製造されているPagewriter TC30, TC50, TC70、又はIntelliVue MP40, MP60, MP70、又はHeartStart MRx モニタ/除細動器、或いはWelch Allyn社によって製造されている1500患者モニタ、或いはMEDTRONIC (登録商標)社によって製造されているPhysio Cnotrol Lifepak 12 が挙げられる。
【0016】
電極130(図5参照)は、一般に、被検体105の皮膚表面に接触させ又は結合することができ、また被検体105の心臓活動に伴うECG信号を取得するように動作可能である。各々の電極130は、取得されたECG信号を、リード線135を介して増幅器115を伝送するように、電気接続することができる。被検体105上の電極の既知の配置分布は、右腕電極140、左腕電極145、右脚電極150、及び左脚電極155を含むことができる。これらの電極130の例では、また被検体105の心臓又はその近くの体内に配置することができる。
【0017】
増幅器115は、一般に、ECG信号の入力を受け取り、ECG信号をアナログからディジタルへ変換し、高忠実度を維持しながら信号強度を増大して、そのディジタル化されたECC信号を、その後の信号処理のために記録装置120へ送るように動作することができる。記録装置120は、一般に、取得されたECG信号の表示及び記憶のための信号処理を遂行することができる。
【0018】
システム110の別の実施形態では、増幅器115は、被検体105上の電極130から別の方法で取得されたECG信号を再生し又はシミュレートするように動作可能であるECGシミュレータ158から送られたECG信号を受け取るように通信関係に接続することができる。ECG信号シミュレータ158の例は、GE Healthcare 社によって製造されているもの、又はFluke Corporation 社によって製造されているマルチパラメータ患者ECGシミュレータである。
【0019】
次に図2について説明すると、システム100は、一般に、増幅器115(図1参照)と通信関係に電気接続されたアンテナ・システム160を含むことができる。アンテナ・システム160の一実施形態は、一般に、金属エッチングで形成された電気分岐回路を取り付け又は受容するように構成された絶縁基板材料で形成された電気回路板170を含むことができる。電気回路板170は、矩形の形状にし且つ一般的に人の胴体175の平均的な大きさに比例する大きさに形成することができる。電気回路板170の寸法及び形状(例えば、多角形、円形、又はそれらの組合せ)は、他の生理学的又は環境因子に適応するよう変えることができる。
【0020】
更に図2について説明すると、アンテナ・システム160は更に、被検体105から心電図信号を取得する際に被検体105から増幅器115へ導く電極130及びリード線135を取り付けるためのプロキシ(proxy) として(単独で又は組み合わせて)相関する又は動作する物体又は構成部品を持つ、回路板170上に取り付けられた一連の電気分岐回路(以下に説明する)を含むことができる。
【0021】
一実施形態の一連の電気分岐回路は、一般に、既知のトポロジイ又は方法(例えば、前額平面における増強誘導、横断平面における前胸部誘導)に相関させて、ECG信号を取得するように電極130を被検体105上に配置することができる。このような一例では、アンテナ・システム160は、被検体105の右腕(RA)から導く電極及びリード線135と相関する第1又は右腕電気分岐回路200と、被検体105の左腕(LA)から導く電極及びリード線と相関する第2又は左腕電気分岐回路205と、被検体105の右脚(RL)から導く電極及びリード線と相関する第3又は右脚電気分岐回路210と、被検体105の左脚(LL)から導く電極及びリード線と相関する第4又は左脚電気分岐回路215と、3つの電極RA、LA及びLLで検出された取得信号の平均を測定する点として中央端子(CT)と相関する第5又は中央端子電気分岐回路220とを含むことができる。第3の電気分岐回路210は、前額平面ECG検査を追跡し遂行する際にRL電極150をどのように用いることができるかに関して、相似した態様で第1、第2及び第4の電気回路200,205,215で取得され検出された信号に対して電位を測定するための基準(例えば、電気的アース)として取り扱うことができる。
【0022】
電気分岐回路200、205、210、215及び220の各々は、エッチングされた物体(以下に説明する)を含むことができ、これらの物体は、組み合わさって、被検体105からの生体電位信号の検出又は取得に用いている際に被検体105から増幅器へ導く電極130及びリード線135の使用と同じ電気インピーダンス(抵抗、インダクタンス及び容量効果を含む)を実質的に(例えば、患者電極等価回路の標準化された電気モデルの20パーセント以内に)持ち且つそれに相関するように構成される。
【0023】
図2を参照して説明すると、電気分岐回路200、205、210、215及び220の内の1つ以上は、一実施形態では、人の皮膚表面に取り付けられた電極130のインピーダンスと相関するインピーダンスを持つ第1の回路部品又は物体を含むことができる。第1の回路部品又は物体230は、被検体105に付着する電極130のコンダクタンスと相関する同様な大きさ、形状、次元又は表面積の金属組成物(例えば、銅のエッチング)であってよい。第1の物体230は、一実施形態では、矩形の形状とすることができるが、第1の物体230の大きさ、形状、次元又は表面積は変えることができる。
【0024】
電気分岐回路200、205、210、215及び220の内の1つ以上は更に、被検体105に付着する電極130に増幅器115を接続する電極リード線135に関連したインピーダンスと相関する電気インピーダンスを持つ第2の回路部品又は物体235を含むことができる。第2の物体235は、一実施形態では、電極ワイヤの長さと実質的に同じ長さであってよい。第2の物体235は、回路板170上にコイル形状に配置された長さを持つ金属エッチングであってよい。金属エッチングの形状は、多角形(例えば、図示のように四角形)或いは円形又は蛇行形又は他の形状とすることができ、これらに限定されない。
【0025】
図2及び図3を参照して説明すると、電気分岐回路200、205、210、215及び220の内の1つ以上は更に、被検体105の皮膚又は表面に対する電極130の付着部のインピーダンスに関連したインピーダンス(抵抗、キャパシタンス及びインダクタンスを含む)と相関する電気インダクタンス及びインピーダンス値を持つ、電気的並列接続関係に接続された第1の抵抗器255及びコンデンサ260の対を有すると共に、被検体105を通って(例えば、心臓の拍動に関連した)電気信号を送る身体組織のインピーダンスと実質的に同様なインピーダンスを持つことができるような大きさを持つ、互いに電気的並列接続関係の第2の抵抗器265及びコンデンサ270の対を有する分岐回路250を含むことができる。第1の抵抗器255及びコンデンサ260の対のインピーダンスは、一実施形態では、被検体105の表面への電極130の付着不良に関連した(業界で知られている)インピーダンス値の閾値とすることができる。更に、電気分岐回路200、205、210、215及び220の内の1つ以上のインピーダンスの閾値は、一実施形態では、本書で規定されたように各々の相関効果のために規定されているようなインピーダンスについての公表された業界標準の閾値にほぼ等しい値とすることができる。
【0026】
図2、図3及び図4を参照して説明すると、アンテナ・システム160は、一実施形態では、更に、増幅器115へ伝送するために、第1、第2、第3、第4及び第5の電気分岐回路200、205、210、215及び220の各々から組合せアンテナ出力コネクタ280(図2及び図4参照)への出力の電気接続部を含むことができる。アンテナ・システム160は更に、互いに電気接続した第1、第2、第3、第4及び第5の電気電気分岐回路200、205、210、215及び220の各々からの共通端子285(図2参照)の電気接続部を含むことができる。第4の電気分岐回路215は、組合せアンテナ出力コネクタ280において電気的基準又は電気的アース端子290(図2及び図4参照)への基準端子接続部を含むことができる。組合せアンテナ出力コネクタ280は、一実施形態では、取得したアンテナ信号を増幅器115へ伝送するために同軸ケーブル295(図4参照)からの接続部を受けるように構成されたBNC(Bayonet Neill-Concelman) コネクタとすることができる。しかし、コネクタ280及び通信リンク(例えば、無線、有線)の種類を変えることができる。同軸ケーブル295は、アンテナ・システム160からの電気信号の汚染を隔離し抑制するために電気遮蔽体を含むことができる。
【0027】
第1、第2、第3、第4及び第5の電気電気分岐回路200、205、210、215及び220の各々は、それぞれの電気分岐回路200、205、210、215及び220の接続又は切断を回路板170上の残りのものから隔離する一対の電気コネクタ端子298を含むことができる。これにより、電気分岐回路200、205、210、215及び220の各々は、記録装置120又はインターフェース125でユーザーに対して表示するための直列又は並列通信のために電気分岐回路200、205、210、215及び220の各々からの測定されたノイズ干渉の個別の信号出力を供給するように設計することができる。
【0028】
アンテナ・システム160は、別の実施形態では、更に、第1の基板層及びその上に取り付けられた電気分岐回路を、電気的アース305に接続された導電層から分離する第2の基板層又は絶縁層を含むことができる。
【0029】
図1に例示した実施形態によれば、アンテナ・システム160は、ECG信号の取得の際に被検体105を支持するテーブル300に結合するか又はそれと一体に構成することができる。とは云え、アンテナ・システム160は、別の実施形態では、患者テーブル300から分離して動かすために結合せずに移動可能になるように独立に構成することができる。
【0030】
アンテナ・システム160の別の実施形態では、アンテナ・システム160の電気電気分岐回路200、205、210、215及び220の各々からの出力は、患者105の心電図を追跡する際に電極130間の電位を隔離するのと同様な態様で、電気電気分岐回路200、205、210、215及び220の選択対の間の電位を自動的に隔離するようにスイッチ機構(図示せず)に電気接続することができる。
【0031】
図5を参照して説明すると、システム10は更に、生体電位信号シミュレータ158(例えば、ECG信号シミュレータ)を含むことができ、該シミュレータは、アンテナ・システム160からの電気出力線と共に、増幅器115及び記録装置120へ伝送するためにシミュレータ158及びアンテナ・システム160からの取得信号の1つ以上を選択的に隔離し又は組み合わせ/混合するように動作可能である加算器又は同様な種類の電気信号混合装置310と通信関係に接続することができる。
【0032】
図1及び図5を参照して説明すると、インターフェース125は、ECG信号取得システム110(例えば、記録装置120)と通信関係に接続されるラップトップ又は汎用コンピュータはであってよい。インターフェース125は、ECG信号取得システム112の動作効率を診断し増大させ、又はECG信号取得システム112からの出力を歪ませるノイズ干渉の発生源を識別するために働くフィールド・エンジニア又はサービス技術者によって動作させることができる。
【0033】
図6は、システム100によって生成された一実施形態のグラフィック表示400を例示する。グラフィック表示400は、ECG信号取得システム112で又はインターフェース125で又はそれらの両方で表示するためにアンテナ・システム160及び/又はシミュレータ158から伝送された取得電気信号の異なる濾波範囲又は段階の遮断周波数405の測度を表す図形的表示を含むことができる。遮断周波数又は濾波範囲の数は変えることができ、本書に記載の発明で制限するものではない。グラフィック表示400は更に、表示400上の基準(例えば、水平面における患者テーブル300のアラインメント)415に対する回路板170(及びそれに取り付けられた電気分岐回路)のアラインメント410の向き又は方向を表す図形的表示を含むことができる。ノイズの濾波又は遮断周波数範囲内で電気信号の最大強度又は振幅420を検出して測定するまで回路板170を回転させることによって、オペレータは、被検体105について遂行されるECG信号取得の結果に悪影響を与える虞のある空間内のノイズ発生源の各々の方向を観察者に指し示すことのできる回路板170のアラインメント410の向き又は方向を観察することができる。グラフィック表示400は更に、表示400上の基準(例えば、基準は患者テーブル300の高さレベルとすることができる)430に対する垂直方向における回路板170の方向又は向き425を表す図形的表示を含むことができる。
【0034】
図1及び図5を参照して説明すると、システム100は更に、空間の物理的基準452に対してアンテナ・システム160の位置(例えば、直角x,y,z座標、緯度、経度、高さなど)及び向き(例えば、180°又は360°の角度方向アラインメント)を追跡するように動作できる位置突き止め又は追跡システム450を含むことができる。これにより、追跡システム450は、上述の図形的表示410及び425を支援することができる。位置突き止めシステム450は、様々な種類の既知の位置追跡技術(例えば、加速度計、ジャイロスコープ、カメラ、RFID、超音波、電磁波、赤外線,光学スキャナなど)を用いることができるが、本書に記載の発明について制限するものでない。位置突き止めシステム450は、規定の空間内の物理的基準452に対するアンテナ・システム160の位置及び向きの情報を、ユーザーに対してインターフェース125で表示するために伝送することができる。これによって、システム100は、ECG監視システム112による取得したECG信号の処理と共に、規定の空間の基準452に対するノイズ干渉信号の発生源の検出を表示することができる。アンテナ・システム160は、インターフェース125での通信のために、ノイズ干渉信号をECG監視システム112へ伝送するように接続することができる。位置突き止めシステム450は、基準452に対する規定の空間内でのアンテナ・システム160の移動につれて、アンテナ・システム160の向き及び位置と組み合わせて、ノイズの遮断周波数範囲内の電気信号の最大振幅420をインターフェース125で表示するために、アンテナ・システムの向き及び位置(例えば、回路板170の位置及び向き)を伝送するように(例えば、有線又は無線で)接続することができる。これにより、規定の空間全体にわたってアンテナ・システム160を移動させることによって、システム100は、ノイズ干渉信号の検出及び測定によって、ほぼ実時間で、アンテナ・システム160(例えば、回路板170)の位置及び向きと組み合わせて、規定された帯域幅内の最大のノイズ干渉信号の検出及び測度をインターフェース125で表示することができる。
【0035】
これまで、本書に記載の発明の実施形態のシステム100の構成について説明したが、以下に、実施形態のシステム100を動作させる方法505,510,515の実施形態について一般的に説明する。また、当然のことながら、以下に説明する方法の行為又は段階のシーケンス又は順序は変えることができる。更にまた、当然のことながら、方法505,510,515は、説明する各行為又は段階を必要としないことがあり、或いは本書に開示していない追加の行為又は段階を含むことができる。方法505,510,515の下記の段階及び行為の1つ以上は、また、インターフェース125の又はそれと通信関係にあるプロセッサ又は他のコンピュータ・プログラム可能な装置520によって実行するためにメモリ518に記憶されたコンピュータ読取り可能なプログラム命令の形態にすることができる。
【0036】
ECG記録装置120が、ECG検査室内又は規定の空間内で増幅器115と通信関係に結合されていると仮定する。動作方法は、シミュレータ158及びアンテナ・システムを加算器310と通信関係に接続すること、及び加算器310を増幅器115及び記録装置120に通信関係に接続することを含む。また、インターフェース125は、記録装置120に伝送されるデータを受け取るように通信関係に接続することができると仮定する。
【0037】
図7は、上述のシステム100を用いてベースライン・ノイズ測定を行う方法505の一実施形態を示す。段階525で、生体電位検査を受ける被検体の位置又は向きと相関してアンテナ・システム160を位置決めし又は配向する。段階530で、アンテナ・システム160及びシミュレータを加算器と通信関係に接続する。段階535で、加算器で、シミュレータから伝送された信号のみを受け取るように選択し、インターフェースでシミュレータ信号を表示するために所望の増幅器利得設定値を選択する。段階540で、表示装置で表示するためにシステム100内のベースライン・ノイズを測定して記録する。
【0038】
図8は、ノイズ・シミュレーションを遂行する方法510の一実施形態を示す。段階545で、シミュレータ及びアンテナ・システム160から受け取った信号から生成した組合せ信号を伝送するように加算器を切り換える。段階550で、加算器からの組合せ信号を表示するために記録装置で利得を選択する。段階555で、インターフェースで表示するために組合せ信号の記録を作る指示を受け取る。段階560で、前記記録を、既知の問題のある信号と、又は電気信号処理中に遭遇したノイズについての報告と比較して、組合せ信号が読取り可能であるか又は判読困難である場合の指示を受け取る。段階565で、組合せ信号の記録が容認可能であるかどうかについての指示を受け取る。指示が読取り可能でないことを表している場合、段階570で、記録装置における利得について設定値を増大して、段階555へ戻る。指示が容認可能であることを表している場合、段階575で、アンテナ・システム160の回路板を配置し、その位置を記録する。段階580で、組合せ信号を既知の問題のある信号又は報告と比較する。記録された組合せ信号が前記問題のある信号又は報告と実質的に類似していると云う指示を受け取った場合、段階585で、図9に記述された方法515に切り換え又は開始させる。組合せ信号が前記問題のある信号又は報告と実質的に類似していないと云う指示を受け取った場合、段階575へ戻る。
【0039】
次いで図9について説明すると、ノイズ・デバッグを遂行する方法515を示す。段階600で、インターフェースを介してノイズ分析機能を選択する指令を受け取る。段階605で、アンテナ・システム160からの信号を加算器からのみ伝送するように選択し、且つシミュレータからの信号の加算を除外する。段階610で、生体電位検査を受ける被検体105の向き及び位置とほぼ整合するようにアンテナ・システムの回路板を配置する。段階615で、選択されたフィルタ範囲、並びに設定されたデフォールト角度及び方位設定についての指令を受け取る。段階620で、アンテナ・システムからの信号を記録装置で記録するように指令を受け取る。段階625で、表示装置で表示するために信号分析結果を記録するように指令を受け取る。段階630で、アンテナ・システムの回路板の角度又は向きを変更することを表す指示を受け取り、次いで段階620へ戻る。回路板の向きを更に変更することは無いという指令を受け取った場合、段階640で、表示装置上に信号分析の結果を記録し、次いで段階610へ戻る。アンテナ・システムの回路板の向きを変更すると云う指令を受け取って、回路板からの信号について信号分析を遂行した場合、段階650で、表示装置で表示するために基準に対する回路板の向きの変化を測定する。段階655で、基準に対する回路板の現在の向きが、回路板の他の向きの場合の信号分析と比較して最大の又は優勢なノイズ・ベクトルを生成するかどうか検出する。もし優勢なノイズ・ベクトルであった場合、段階660で、方法は終了する。もし優勢なノイズ・ベクトルでなかった場合、段階665で、基準に対する回路板の仰角の変化を記録し、次いで段階640へ進んで、表示装置に信号分析の結果を記録する。段階670で、基準に対して垂直な平面における回路板の向きの変化を記録し、次いで段階640へ進んで、表示装置に信号分析の結果を記録する。
【0040】
上述の発明の実施形態の技術的効果として、被検体105のECGを測定することのできる電気生理学的検査室のような、電気信号の追跡及び処理を行う環境内で、ノイズに関係した干渉の発生源の作用を模倣し、該発生源を検出し、且つその位置を突き止めるシステム100及び方法を提供することが挙げられる。ECG検査環境内でノイズ干渉の発生源の位置を検出して隔離する能力は、検査手順の結果を向上させ、ECG事例検査を完了する時間を短縮することができる。システム100及び方法はまた、ECG記録システム120のサービス、維持、及び不良性能の修復を向上させることができる。
【0041】
本明細書は、最良の実施形態を含めて、本発明を開示するために、また当業者が本発明を実施することができるようにするために、様々な例を使用した。本発明の特許可能な範囲は「特許請求の範囲」の記載に定めており、また当業者に考えられる他の例を含み得る。このような他の例は、それらが「特許請求の範囲」の文字通りの記載から実質的に差異のない構造的要素を持つ場合、或いはそれらが「特許請求の範囲」の文字通りの記載から実質的に差異のない等価な構造的要素を含む場合、特許請求の範囲内にあるものとする。
【符号の説明】
【0042】
100 システム
105 被検体(患者)
110 生体電位信号取得システム
112 心電図(ECG)信号取得システム
115 増幅器
120 記録装置
125 インターフェース
130 電極
135 リード線
140 右腕電極
145 左腕電極
150 右脚電極
155 左脚電極
158 ECGシミュレータ
160 アンテナ・システム
170 電気回路板
175 人の胴体
200 右腕電気分岐回路
205 左腕電気分岐回路
210 右脚電気分岐回路
215 左脚電気分岐回路
220 中央端子電気分岐回路
230 第1の物体
235 第2の物体
250 分岐回路
255 第1の抵抗器
260 コンデンサ
265 第2の抵抗器
270 コンデンサ
280 組合せアンテナ出力コネクタ
285 共通端子
290 電気的アース端子
295 同軸ケーブル
298 電気コネクタ端子
300 患者テーブル
305 電気的アース
310 加算器
400 グラフィック表示
410 アラインメント
415 基準
420 振幅
425 向き
430 基準
450 位置突き止め又は追跡システム
452 空間の物理的基準
505 システム動作方法
510 システム動作方法
515 システム動作方法
518 メモリ
520 プロセッサ又は他のコンピュータ・プログラム可能な装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体(105)のECG信号を取得するように配置した一群の電極(130)と通信関係にあるECG信号取得システム(112)を含んでいるシステム(100)であって、
前記ECG取得システム(112)と通信関係に接続されたアンテナ・システム(160)であって、回路板(170)上に取り付けられていて、被検体(105)上の前記一群の電極(130)と相似した配列で配置された複数の分岐回路(200,205,210,215,220)を含んでいる、アンテナ・システム(160)と、
前記アンテナ・システム(160)からの信号の帯域幅及び振幅を表示するために前記ECG取得システム(112)へ伝送するために前記複数の分岐回路(200,205,210,215,220)から伝送された信号を受け取るように電気通信関係に接続されている出力コネクタ(280)と、
を有するシステム(100)。
【請求項2】
前記複数の分岐回路(200,205,210,215,220)の各々は、被検体(105)上の前記一群の電極(130)の各々の付着部の電気インピーダンスの所定の閾値内の電気インピーダンスを持っている、請求項1記載のシステム。
【請求項3】
前記複数の分岐回路(200,205,210,215,220)の各々は、前記被検体(105)上の前記一群の電極(130)の各々の付着部の電気インピーダンスの所定の閾値内の電気インピーダンスを持つ電気部品を含んでいる、請求項1記載のシステム。
【請求項4】
前記出力コネクタ(280)は前記ECG取得システム(112)及びインターフェース(125)と通信関係に接続されており、この場合、前記回路板(170)上の前記分岐回路(200,205,210,215,220)の配列は、前記インターフェース(125)上で表示するための規定の空間の基準に対する前記回路板(170)の独自のアラインメントを定めている、請求項1記載のシステム(100)。
【請求項5】
前記複数の分岐回路(200,205,210,215,220)の内の少なくとも1つは、開放したときにそれぞれの分岐回路(200,205,210,215,220)を前記出力コネクタ(280)から隔離する一対の切断部(298)を含んでいる、請求項1記載のシステム(100)。
【請求項6】
更に、インターフェース(125)が前記ECG取得システム(112)と通信関係に接続されていて、前記インターフェース(125)は、前記出力コネクタ(280)から伝送されているときの検出信号の振幅と少なくとも所定の範囲の波長又は周波数との表示(400)を含んでいる、請求項1記載のシステム。
【請求項7】
前記表示(400)は更に、その中に前記回路板(170)が配置されている規定の空間の基準に対する前記回路板(170)の独自のアラインメント(410)の図形的表示を有している、請求項6記載のシステム。
【請求項8】
更に、予備的な期間の間に被検体(105)から取得した少なくとも1つの予め記録したECG信号を持つECGシミュレータ(158)と、
前記ECGシミュレータ(158)から伝送される前記少なくとも1つのECG信号を、前記アンテナ・システム(160)から出力される信号と組み合わせるように接続された加算器(210)であって、前記ECGシミュレータ(158)からのECG信号と前記アンテナ・システム(160)の出力の信号と組み合わせて、前記ECG取得システム(112)へ伝送するように接続されている加算器(210)と、
を含んでいる請求項1記載のシステム(100)。
【請求項9】
更に、インターフェース(125)が前記ECG取得システム(112)と通信関係に接続されていて、前記インターフェース(125)は、前記出力コネクタ(280)から伝送された検出された電気信号の内の、所定の波長又は周波数の範囲内にある少なくとも1つの信号についての表示(400)含んでいる、請求項1記載のシステム(100)。
【請求項10】
更に、前記回路板(170)が規定の空間内を移動しているとき、規定の空間に対する前記回路板(170)の向き及び位置と組み合わせて、信号の振幅の測度を表示するように構成された表示(400)を含んでいる請求項1記載のシステム(100)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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