心電波形計測システム
【課題】心電信号の検出精度をより向上することのできる心電波形計測システムを提供すること。
【解決手段】心電波形計測システム1では、心電信号生成部10はセンサ回路11aと差動増幅器13との間に補正回路12aを有しているとともにセンサ回路11bと差動増幅器13との間に補正回路12bを有していることとした。これにより、センサ回路11a及び11bから出力された検出信号は、補正回路12a及び12bにより補正された上で差動増幅器13によって差分が取られることになる。したがって、検出信号とこの検出信号に重畳したノイズとを同時に増幅してしまう従来技術とは異なり、補正回路12a及び12bによる補正の前後でシグナルとノイズとの比であるSN比を高めることができ、ひいては心電信号の検出精度を向上することができるようになる。
【解決手段】心電波形計測システム1では、心電信号生成部10はセンサ回路11aと差動増幅器13との間に補正回路12aを有しているとともにセンサ回路11bと差動増幅器13との間に補正回路12bを有していることとした。これにより、センサ回路11a及び11bから出力された検出信号は、補正回路12a及び12bにより補正された上で差動増幅器13によって差分が取られることになる。したがって、検出信号とこの検出信号に重畳したノイズとを同時に増幅してしまう従来技術とは異なり、補正回路12a及び12bによる補正の前後でシグナルとノイズとの比であるSN比を高めることができ、ひいては心電信号の検出精度を向上することができるようになる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検者に負担をかけることなく被検者の心電信号を計測する静電容量結合型の心電波形計測システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に記載の技術が知られている。この特許文献1に記載の心電波形計測システムについて図20を参照して説明する。図20に示されるように、心電波形計測システム100は、シートに着座した運転者である被検者と接触する位置に設けられた3個の測定用電極D1〜D3と、これら測定用電極D1〜D3に対応して設けられ、それぞれがn個、合計m(=3n)個の圧力センサB1〜Bmで構成された圧力センサ群BG1〜BG3からなる信号検出部102と、信号検出部102を構成する測定用電極D1〜D3から得られる信号に基づいて(補正前)心電信号を生成する心電信号生成部103と、心電信号生成部103で生成された(補正前)心電信号を、指定された増幅率Aで増幅(補正)する可変増幅器104と、可変増幅器104の出力をデジタルデータである心電データDHに変換するA/D変換器105と、信号検出部102を構成する各圧力センサB1〜Bmから得られる信号に基づいて、可変増幅器104の増幅率Aを指定するとともに、心電データDHの信頼度を表す確度データDKを生成する補正制御部106とを備えて構成されている。
【0003】
ここで、心電信号生成部103は、測定用電極D1及びD2にそれぞれ接続されたボルテージフォロア回路131及び132と、測定用電極D3の電位を基準電位として、両ボルテージフォロア回路131及び132から出力される電圧信号の差分を増幅する差動増幅器133と、差動増幅器133の出力を増幅する増幅回路134と、増幅回路134の出力からノイズ成分を除去するバンドパスフィルタ135とを備えている。
【0004】
このように構成された心電波形計測システム100は、測定用電極D1〜D3と被検者との間の静電容量C1〜C3を算出し、その算出結果に基づいて可変増幅器104の増幅率Aを設定することにより、心電信号の信号レベルを補正する。そのため、測定用電極D1〜D3と被検者との接触状態、すなわち静電容量C1〜C3の大きさのばらつきによらず、信頼度の高い心電信号の測定結果を得ることができるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−219554号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来の心電波形計測システム100では、心電信号生成部103によって生成された補正前心電信号に対し、可変増幅器104によって補正が行なわれている。このように、補正回路が可変増幅器104のみで構成されていることから、可変増幅器104による補正の前後でSN比が改善されておらず、心電信号の検出精度を向上するには依然として改善の余地が残されている。
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、心電信号の検出精度をより向上することのできる心電波形計測システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
こうした目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、被検者を検査する検査部の内部に配置された少なくとも一組のセンサ電極と、センサ電極における電位を取得して検出信号として出力するセンサ回路と検出信号を補正して補正信号として出力する補正回路とをセンサ電極毎に有するとともに、これら補正回路から出力された補正信号の差分をとって差分信号として出力する差動増幅器を有し、差分信号を用いて被検者の心電信号を生成する心電信号生成部と、検査部の被検者接触面に平行であり、且つ、互いに平行となるように、センサ電極よりも被検者接触面側に配置された少なくとも一対のインピーダンス計測用電極と、インピーダンス計測用電極を用いて計測された、センサ電極と検査部に接触する被検者との間のインピーダンスの計測結果に基づいて、補正回路による検出信号の補正を制御する補正制御部とを備える心電波形計測システムであって、センサ電極は、平板状の電極によって構成され、検査部の被検者接触面に対し平行となるように配置されていることを特徴とする。
【0009】
心電波形計測システムとしての上記構成では、心電信号生成部はセンサ回路と差動増幅器との間に補正回路を有していることから、センサ回路から出力された検出信号は、補正回路により補正された上で差動増幅器によって差分が取られることになる。したがって、検出信号とこの検出信号に重畳したノイズとを同時に増幅してしまう従来技術とは異なり、補正回路による補正の前後でシグナルとノイズとの比であるSN比を高めることができ、ひいては心電信号の検出精度を向上することができるようになる。
【0010】
周知のように、センサ電極と被検者との間の静電容量Cは、センサ電極と被検者との接触面積Ar、センサ電極と被検者との間の距離d、及びセンサ電極及び被検者間の誘電率εを用いて「C=ε×Ar/d」のように表される。上記従来の心電波形計測システムでは、センサ電極(測定用電極)と被検者とが平行であると仮定した上で、圧力センサから得られる信号(換言すれば測定用電極と被検者との接触面積Ar)と固定値εとに基づいて、測定用電極と被検者との間の静電容量Cを算出し、その算出結果に基づいて可変増幅器の増幅率を決定していた。
【0011】
しかしながら、被検者のシートでの着座姿勢によっては、測定用電極と被検者とが平行となるとは限らない。そのため、上記仮定が成立せず、測定用電極と被検者との間の静電容量Cの算出精度が低下し、その結果、心電信号の検出精度が低下してしまうおそれがあった。しかも、このとき、センサ電極及び被検者間の誘電率εについては何ら考慮されていない。
【0012】
心電波形計測システムとしての上記請求項1に記載の構成では、一対のインピーダンス計測用電極は、仮定ではなく実際に、検査部の被検者接触面に平行であり、且つ、互いに平行となるように、センサ電極と被検者との間に位置することになり、これら一対のインピーダンス計測用電極間のインピーダンスの計測結果がセンサ電極と被検者との間のインピーダンスの計測結果として用いられる。
【0013】
ここで、センサ電極と被検者との間には、被検者が着用する衣服等が介在することから、一対のインピーダンス計測用電極間のインピーダンスの計測結果を用いては、センサ電極と被検者との間のインピーダンスの正確な計測結果が得られないとも思われる。しかしながら、一対のインピーダンス計測用電極間のインピーダンスは被検者が着用する衣服のインピーダンスと比較して非常に大きいため、一対のインピーダンス計測用電極間のインピーダンスの計測結果は、上記従来技術におけるセンサ電極と被検者との間の静電容量の算出結果よりも、センサ電極と被検者との間の実際のインピーダンスに近くなることが多い。
【0014】
したがって、上記請求項1に記載の構成によれば、センサ電極と被検者との間のインピーダンスの計測精度を向上することができるようになる。そして、計測精度が向上する結果、補正回路による検出信号の補正精度が向上し、心電信号の検出精度を向上することができるようになる。なお、上記請求項1に記載の構成では、一対のインピーダンス計測用電極間のインピーダンスを一括して計測することから、上記従来技術のように接触面積Arや誘電率ε等の値が正確にわからなくても、インピーダンスを正確に測定することができる。
【0015】
なお、上記請求項1に記載の構成のように、センサ電極は、平板状の電極によって構成されており、一対のインピーダンス計測用電極は、センサ電極に対し平行となるように配置されていることが望ましい。
【0016】
また、請求項2に記載の発明のように、補正制御部は、少なくとも一対のインピーダンス計測用電極間のインピーダンスを計測するインピーダンス計測部を有し、センサ電極と検査部に接触する被検者との間のインピーダンスの計測結果として、少なくとも一対のインピーダンス計測用電極のうち一対のインピーダンス計測用電極間のインピーダンスの計測結果を用いるとよい。
【0017】
また、請求項3に記載の発明のように、請求項1または2に記載の構成において、一対のインピーダンス計測用電極は、センサ電極と対向するように配置されているとよい。これにより、一対のインピーダンス計測用電極間のインピーダンスの計測結果は、センサ電極と被検者との間のインピーダンスの推定結果により近づくことになる。
【0018】
ところで、インピーダンス計測部による一対のインピーダンス計測用電極間のインピーダンスの計測と、心電信号生成部による心電信号の生成とを同時に行なうと、インピーダンスの計測が心電信号の生成に影響を与えることが懸念される。
【0019】
そこで、上記請求項1〜3のいずれかに記載の構成において、請求項4に記載の発明では、補正制御部は、インピーダンス計測部による一対のインピーダンス計測用電極間のインピーダンスの計測と心電信号生成部による心電信号の生成とを切り替える切替スイッチと、この切替スイッチによる切り替えを行なうスイッチ制御部とを有することとした。
【0020】
上記請求項4に記載の構成によれば、切替スイッチによってインピーダンスの計測と心電信号の生成とが切り替えられて同時に行なわれないため、インピーダンスの計測が心電信号の生成に影響を与えることが低減されるようになる。したがって、心電信号をより正確に生成する、すなわち、心電信号の検出精度をより向上することができるようになる。
【0021】
具体的には、上記請求項4に記載の構成において、請求項5に記載の発明のように、切替スイッチは、一対のインピーダンス計測用電極の接続状態を、インピーダンス計測部と接続された接続状態と、インピーダンス計測部と接続されていない未接続状態との間で切り替えるものであり、スイッチ制御部が一対のインピーダンス計測用電極の接続状態をインピーダンス計測部との接続状態に切り替えた場合には、インピーダンス計測部は一対のインピーダンス計測用電極間のインピーダンスを検出し、スイッチ制御部が一対のインピーダンス計測用電極の接続状態をインピーダンス計測部と接続されていない未接続状態に切り替えた場合には、心電信号生成部は心電信号を生成するとよい。
【0022】
あるいは、上記請求項4に記載の構成において、請求項6に記載の発明のように、切替スイッチは、一対のインピーダンス計測用電極の接続状態を、インピーダンス計測部と接続された接続状態、GND電位と接続された接続状態、並びに、これらインピーダンス計測部及びGND電位のいずれとも接続されていない未接続状態の中で切り替えるものであり、スイッチ制御部が一対のインピーダンス計測用電極の接続状態をインピーダンス計測部との接続状態に切り替えた場合には、インピーダンス計測部は一対のインピーダンス計測用電極間のインピーダンスを検出し、スイッチ制御部が一対のインピーダンス計測用電極の接続状態をGND電位との接続状態に切り替えた後、さらにインピーダンス計測部及びGND電位のいずれとも接続されていない未接続状態に切り替えた場合には、心電信号生成部は心電信号を生成するとよい。
【0023】
上記請求項6に記載の構成では、一対のインピーダンス計測用電極の接続状態がGND電位との接続状態に切り替えられて、貯まった電荷がGND電位に逃がされ、インピーダンス計測部及びGND電位のいずれとも接続されていない未接続状態に切り替えられた後に、心電信号生成部によって心電信号が生成される。そのため、一対のインピーダンス計測用電極に貯まった電荷が心電信号の生成に与える影響を上記請求項5に記載の構成よりも小さくすることができるようになる。
【0024】
また、上記請求項1〜3のいずれかに記載の構成においては、請求項7に記載の発明のように、少なくとも一対のインピーダンス計測用電極は、センサ電極の周囲を覆うこのセンサ電極と同心の円環状の電極もしくは円環の一部にて構成されているとよい。
【0025】
また、上記請求項7に記載の構成において、請求項8に記載の発明のように、センサ電極の周囲を覆うとともに、センサ電極をインピーダンス計測用電極からシールドする位置に配置されたガード電極を備えるとよい。
【0026】
また、上記請求項8に記載の構成において、請求項9に記載の発明のように、ガード電極は、筒状であるとよい。
【0027】
また、上記請求項8または9に記載の構成において、請求項10に記載の発明のように、ガード電極は、センサ電極と同心であるとよい。
【0028】
上記請求項1〜10のいずれかに記載の構成において、請求項11に記載の発明では、検査部は被検者が着座するシートであり、被検者接触面はシートの背もたれ面であり、一組のセンサ電極毎に設けられた一対のインピーダンス計測用電極間のインピーダンスの計測結果に基づいて、被検者がシートに着座しているか否かを判断する被検者判断部と、被検者判断部による判断結果を報知する報知部とをさらに備えることとした。これにより、被検者がシートに着座しているか否かに係る判断結果を報知することができるようになる。
【0029】
具体的には、上記請求項11に記載の構成において、請求項12に記載の発明のように、被検者判断部は、一組のセンサ電極毎に設けられた一対のインピーダンス計測用電極間のインピーダンスが双方ともに所定の未着座判定閾値と一致する場合には、被検者がシートに着座していないと判断し、報知部は、被検者判断部によって被検者がシートに着座していないと判断された場合には、その旨を報知するとよい。なお、所定の未着座判定閾値とは、被検者がシートに着座していない状態にて予め測定された一対のインピーダンス計測用電極間のインピーダンスである。
【0030】
また、請求項11または12に記載の構成において、請求項13に記載の発明では、被検者判断部は、一組のセンサ電極毎に設けられた一対のインピーダンス計測用電極間のインピーダンスの計測結果に基づいて、シートに着座している被検者が通常の姿勢にて着座しているか否かを判断し、報知部は、被検者判断部によって被検者が通常の姿勢にてシートに着座していないと判断された場合には、通常の姿勢にてシートに着座するよう報知することとした。これにより、被検者が通常の姿勢にてシートに着座していないと判断された場合には、通常の姿勢にてシートに着座するよう報知することができるようになる。
【0031】
具体的には、上記請求項13に記載の構成において、請求項14に記載の発明のように、被検者判断部は、一組のセンサ電極毎に設けられた一対のインピーダンス計測用電極間のインピーダンスの差の大きさが所定の通常姿勢判定閾値を上回る場合には、シートに着座している被検者は通常の姿勢にて着座していないと判断するとよい。
【0032】
なお、通常の姿勢とは、前かがみとなってシートの背もたれにもたれていない姿勢や背後に反ってシートの背もたれを押圧する姿勢ではなく、シートの背もたれにもたれた姿勢を意味する。また、所定の通常姿勢判定閾値とは、そのような通常の姿勢にて着座している状態にて予め測定された、一組のセンサ電極毎に設けられた一対の静電容量計測用電極間の静電容量の差の大きさである。
【0033】
上記請求項11〜14のいずれかに記載の構成において、請求項15に記載の発明では、被検者判断部は、一組のセンサ電極毎に設けられた一対のインピーダンス計測用電極間のインピーダンスの計測結果に基づいて、シートに着座している被検者が安静に着座しているか否かを判断し、報知部は、被検者判断部によって被検者がシートに安静に着座していないと判断された場合には、シートに安静に着座するよう報知することとした。これにより、被検者がシートに安静に着座していないと判断された場合には、シートに安静に着座するよう報知することができるようになる。
【0034】
具体的には、上記請求項15に記載の構成において、請求項16に記載の発明のように、被検者判断部は、一組のセンサ電極のうち一方のセンサ電極に設けられた一対のインピーダンス計測用電極間のインピーダンスについての所定時間内の変化の大きさと、一組のセンサ電極のうち他方のセンサ電極に設けられた一対のインピーダンス計測用電極間のインピーダンスについての所定時間内の変化の大きさとの少なくともいずれか一方が所定の安静判定用閾値を上回る場合には、シートに着座している被検者は安静に着座していないと判断するとよい。
【0035】
なお、安静に着座するとは、揺れることなく着座する、すなわち振動することなく着座することを意味する。また、所定の安静判定用閾値とは、振動しながら着座している状態にて予め測定された、一組のセンサ電極毎に設けられた一対のインピーダンス計測用電極間のインピーダンスについて所定時間内の変化の大きさの最小値よりも大きな値である。
【0036】
上記請求項1〜16のいずれかに記載の構成において、請求項17に記載の発明のように、一対のインピーダンス計測用電極は、導電性を有する布にて構成され、検査部の内部に配置されているとよい。これにより、一対のインピーダンス計測電極は検査部の変形に従って変形することから、検査部に接触した際に被検者が異物感を感じることを低減することができるようになる。
【0037】
また、上記請求項1〜17のいずれかに記載の構成において、請求項18に記載の発明のように、検査部は、当該検査部の表面を覆う検査部素材と、検査部の内部の弾性体とを有して構成されており、弾性体は、検査部素材のうち被検者が接触する部分とセンサ電極との間に介在しているとよい。これによっても、検査部に接触した際に被検者が異物感を感じることを低減することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明に係る心電波形計測システムの原理を説明するための概念図である。
【図2】本発明に係る心電波形計測システムの第1の実施の形態について、その全体構成を示すブロック図である。
【図3】第1の実施の形態について、補正制御部の詳細な構成を示すブロック図である。
【図4】第1の実施の形態について、シートの内部におけるセンサ電極及び一対の静電容量計測用電極の配置態様を側面方向から示す図である。
【図5】第1の実施の形態について、(a)は、図4中のA−A線に沿った断面図であり、(b)は、図4中のB−B線に沿った断面図である。
【図6】第1の実施の形態について、補正回路12aの構成例を示す回路図である。
【図7】第1の実施の形態について、補正回路12bの構成例を示す回路図である。
【図8】第1の実施の形態について、センサ回路11aの構成例を示す回路図である。
【図9】第1の実施の形態について、センサ回路11bの構成例を示す回路図である。
【図10】第1の実施の形態について、補正パラメータの算出方法を説明するための図である。
【図11】第1の実施の形態について、コンデンサC1の静電容量がコンデンサC2の静電容量よりも大きい場合における周波数特性を示した図である。
【図12】第1の実施の形態によって実行される心電信号生成処理について、その処理手順を示すフローチャートである。
【図13】心電信号生成処理の中で実行される補正パラメータ算出処理について、その処理手順を示すフローチャートである。
【図14】本発明に係る心電波形計測システムの第2の実施の形態について、その全体構成を示すブロック図である。
【図15】第2の実施の形態について、補正制御部の詳細な構成を示すブロック図である。
【図16】第2の実施の形態について、シートの内部におけるセンサ電極及び一対の静電容量計測用電極の配置態様を側面方向から示す図である。
【図17】第2の実施の形態について、図16中のC−C線に沿った断面図である。
【図18】第2の実施の形態によって実行される心電信号生成処理について、その処理手順を示すフローチャートである。
【図19】心電信号生成処理の中で実行される被検者判断処理について、その処理手順を示すフローチャートである。
【図20】従来の心電波形計測システムについて、その全体構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
(発明の原理)
本発明に係る心電波形計測システムの実施の形態について説明するに先立ち、本発明に係る心電波形計測システムの原理について図1を参照して簡単に説明する。なお、図1は、心電波形の計測対象である被検者を含めた心電波形計測システムS全体の概念図である。
【0040】
この図1に示されるように、心電波形計測システムSは、被検者Hmと、人−センサ間インピーダンスZ1及びZ2と、センサSen1及びSen2と、差動増幅器Dと、ノイズ源とを有するとみなすことができる。
【0041】
詳しくは、被検者Hmは、直接接続された2つの交流電圧源を有して構成されており、これら2つの交流電圧源がそれぞれ「Vd/2」ずつ出力することによって心電信号Vdが出力される。被検者Hmにはノイズ源として交流電圧源が接続されており、このノイズ源から出力されるノイズ信号Vcが上記心電信号Vdに重畳される。ノイズ信号Vcが重畳された心電信号Vdは被検者Hmから2分して出力され、人−センサ間インピーダンスZ1及びZ2、さらにインピーダンスZinを有するセンサSen1及びSen2を介して差動増幅器Dにそれぞれ入力される。そして、差動増幅器Dでは、センサSen1から出力された出力信号及びSen2から出力された出力信号の差動が取られ、出力信号Voutとして出力される。なお、人−センサ間インピーダンスZ1及びZ2は特許請求の範囲に記載のセンサ電極と被検者との間のインピーダンスに相当し、センサSen1及びSen2は特許請求の範囲に記載のセンサ回路に相当し、差動増幅器Dは特許請求の範囲に記載の差動増幅器に相当する。
【0042】
ここで、差動増幅器Dの出力信号Voutは下式(1)のように表すことができる。すなわち、出力信号Voutは、第1項の心電信号Vdに係る成分であるシグナル成分と、第2項のノイズ信号Vcに係る成分であるノイズ成分との和にて表すことができる。
【数1】
【0043】
ちなみに、人−センサ間インピーダンスZ1及びZ2は下式(2)のように表すことができる。
【数2】
【0044】
上式(1)から分かるように、シグナル成分とノイズ成分との比であるSN比は、人−センサ間インピーダンスZ1及びZ2に、すなわちC1及びC2に依存する。そのため、SN比を高めるには、センサ電極と被検者との間の静電容量C1及びC2の推定結果に基づいて上式(1)の第2項が零に近づくようにセンサSen1及びSen2の出力信号を補正し、その補正後に差動増幅器Dの差動を取ればよいこととなる。
【0045】
以下、「センサ電極と被検者との間の静電容量C1及びC2の推定結果に基づいて上記(1)の第2項が零に近づくようにセンサSen1及びSen2の出力信号を補正する」との発明の原理を具体化した実施の形態について説明する。
【0046】
(第1の実施の形態)
以下、本発明に係る心電波形計測システムの第1の実施の形態について、図2〜図12を参照して説明する。なお、図2は、本実施の形態の心電波形計測システム1について、その全体構成を示すブロック図であり、図3は、心電波形計測システム1を構成する制御部20の詳細を示すブロック図である。また、人−センサ間インピーダンスZ1及びZ2は実際にはR成分とC成分で構成されるが、心電周波数帯ではほぼC成分と考えることが可能である。
【0047】
図2に示されるように、心電波形計測システム1は、一組のセンサ電極D1a及びD1bと、基準電極D2と、一対の静電容量計測用電極E11及びE12によって構成されるコンデンサC1と、一対の静電容量計測用電極E21及びE22によって構成されるコンデンサC2と、心電信号生成部10と、制御部20と、操作スイッチ32とを有して構成されている。
【0048】
まず、一組のセンサ電極D1a及びD1b並びに基準電極D2について説明する。センサ電極D1a及びD1bは、例えば銅などの金属材料からなる円形平板状の電極によって構成されており、被検者Hmが着座するシートの背もたれ部(図示略)に被検者Hmの平均的な心臓の位置を挟んでその上下に配置されているとともに、シートの背もたれ面に対し平行となるように対向配置されている。また、センサ電極D1a及びD1bは、心電信号生成部10を構成するセンサ回路11a及び11bにそれぞれ接続されている。なお、センサ電極D1a及びD1bについては、図4を用いて後述する。また、シート及び背もたれ面が特許請求の範囲に記載の検査部及び被検者接触面にそれぞれ相当する。
【0049】
次に、心電信号生成部10について説明する。心電信号生成部10は、センサ回路11a及びセンサ回路11bと、補正回路12a及び補正回路12bと、差動増幅器13と、バンドパスフィルタ(BPF)14と、AD変換器15とを備えて構成されている。
【0050】
センサ回路11aは、公知のオペアンプを含んで構成されており、その入力端子はセンサ電極D1aに接続され、その出力端子は補正回路12aに接続されており、その基準電位は基準電極D2の電位とされている。なお、図1では便宜上、センサ回路11aは、オペアンプのみを含んで構成されているが、実際には、オペアンプに加えて公知の抵抗器及びコンデンサも含んで構成されており、図8を用いて後述する。
【0051】
同様に、センサ回路11bも、公知のオペアンプを含んで構成されており、その入力端子はセンサ電極D1bに接続され、その出力端子は補正回路12bに接続されており、その基準電位は基準電極D2の電位とされている。なお、図1では便宜上、センサ回路11bは、オペアンプのみを含んで構成されているが、実際には、オペアンプに加えて公知の抵抗器及びコンデンサも含んで構成されており、図9を用いて後述する。
【0052】
これらセンサ回路11a及び11bは、基準電極D2の電位を基準電位としてセンサ電極D1a及びD1bにおける電位を取得し、検出信号として補正回路12a及び12bにそれぞれ出力する。
【0053】
補正回路12aは、その入力端子がセンサ回路11aに接続され、その出力端子が差動増幅器13の反転入力端子に接続されている。また、補正回路12aは、後述の制御部20を構成する補正パラメータ算出部22(詳しくはパラメータA算出部22a)にも接続されており、このパラメータA算出部22aによって算出された補正パラメータAを用いて当該補正回路12aの周波数特性を制御することにより、センサ回路11aから入力された検出信号を補正して補正信号として差動増幅器13に出力する。
【0054】
同様に、補正回路12bは、その入力端子がセンサ回路11bに接続され、その出力端子が差動増幅器13の非反転入力端子に接続されている。また、補正回路12bは、後述の制御部20を構成する補正パラメータ算出部22(詳しくはパラメータB算出部22b)にも接続されており、このパラメータB算出部22bによって算出された補正パラメータBを用いて当該補正回路12bの周波数特性を制御することにより、センサ回路11bから入力された検出信号を補正して補正信号として差動増幅器13に出力する。
【0055】
なお、これら補正回路12a及び12bのより詳細な構成については図6及び図7を参照して、補正パラメータAを用いた補正回路12aの周波数特性の制御方法及び補正パラメータBを用いた補正回路12bの周波数特性の制御方法については図11を参照して、それぞれ後述する。
【0056】
差動増幅器13は、公知の差動増幅器にて構成されており、その反転入力端子は補正回路12aに接続され、その非反転入力端子は補正回路12bに接続され、その出力端子はバンドパスフィルタ14に接続されている。差動増幅器13は、これら補正回路12aから入力された補正信号と補正回路12bから入力された補正信号との差分をとって差分信号としてバンドパスフィルタ14に出力する。
【0057】
バンドパスフィルタ14は、公知のバンドパスフィルタにて構成されており、その入力端子が差動増幅器13に接続され、その出力端子がAD変換器15に接続されている。バンドパスフィルタ14は、差動増幅器13から入力された差分信号について、心電信号帯域(例えば「0.2〜35[Hz])の成分を通過させるとともに、これ以外の帯域の成分を減衰させた上で、アナログ信号としてAD変換器15に出力する。
【0058】
AD変換器15は、公知のAD変換器にて構成されており、その入力端子はバンドパスフィルタ14に接続されている。AD変換器15は、バンドパスフィルタ14から入力されたアナログ信号をデジタル信号に変換し、その変換されたデジタル信号を被検者の心電信号として出力する。
【0059】
このように、心電波形生成部10は、センサ回路11a及び補正回路12a、並びに、センサ回路11b及び補正回路12bを、センサ電極D1a及びセンサ電極D1b毎に有しており、心電信号を生成して出力する。なお、バンドパスフィルタ14やAD変換器15については省略してもよい。
【0060】
次に、一対の静電容量計測用電極E11及びE12並びに制御部20について説明する。一対の静電容量計測用電極E11及びE12は、例えば導電性を有する布によって円形状に構成されており、シートの背もたれ面に平行であり、且つ、互いに平行となるように、また、センサ電極D1aよりもシートの背もたれ面側になるように、さらに、このセンサ電極D1aと対向するように、シートの内部に配置されている。これら一対の静電容量計測用電極E11及びE12はコンデンサC1を構成している。なお、この静電容量計測用電極E11及びE12が特許請求の範囲に記載のインピーダンス計測用電極に相当する。
【0061】
一対の静電容量計測用電極E11及びE12と同様に、一対の静電容量計測用電極E21及びE22も、導電性を有する布によって構成されており、シートの背もたれ面に平行であり、且つ、互い平行となるように、また、センサ電極D1bよりもシートの背もたれ面側になるように、さらに、このセンサ電極D1bと対向するように、シートの内部に配置されている。これら一対の静電容量計測用電極E21及びE22はコンデンサC2を構成している。
【0062】
制御部20は、公知のCPUを有して構成される公知のコンピュータであり、切替スイッチ31及び操作スイッチ32に接続され、センサ電極D1a及びD1bとシートに着座する被検者との間の静電容量の推定結果に基づいて、補正回路12a及び12bによる検出信号の補正を制御する。なお、本実施の形態では、制御部20は、センサ電極D1a及びD1bとシートに着座する被検者との間の静電容量の推定結果として、上記コンデンサC1及びC2の計測結果を用いることとしている。また、制御部20が特許請求の範囲に記載の補正制御部に相当する。
【0063】
具体的には、制御部20は、例えばフラッシュメモリ等の記憶部24を有して構成されており、この記憶部24に記憶されているプログラムを実行することによって、各種機能を実現している。以下の説明では、制御部20は、静電容量計測部21と、補正パラメータ算出部22とを有するものとして説明する。
【0064】
切替スイッチ31は、図3に示されるように、切替スイッチ311a〜312bを有して構成されており、切替スイッチ311a〜312bは、例えばオフ抵抗が高い機械式の切替スイッチによって構成されている。切替スイッチ311a及び312aは、静電容量計測用電極E11及びE12の接続状態を、C1計測部21aと接続された接続状態、GND電位と接続された接続状態、並びに、これらC1計測部21a及びGND電位のいずれとも接続されていない未接続状態の中で切り替える。また、切替スイッチ311b及び312bは、静電容量計測用電極E21及びE22の接続状態を、C2計測部21bと接続された接続状態、GND電位と接続された接続状態、並びに、これらC2計測部21b及びGND電位のいずれとも接続されていない未接続状態の中で切り替える。
【0065】
静電容量計測部21は、図3に示されるように、C1計測部21a及びC2計測部21bを有して構成されている。C1計測部21aは、パラメータA算出部22aに接続されており、切替スイッチ311a及び312aによって静電容量計測用電極E11及びE12と接続された状態に切り替えられると、例えば公知の自動平衡ブリッジ法により上記心電信号帯域内の周波数(例えば「30[Hz])におけるコンデンサC1の静電容量を計測し、その計測結果をパラメータA算出部22aに出力する。そして、パラメータA算出部22aは、コンデンサC1の計測結果に基づいて補正パラメータAを算出し、補正回路12aに出力する。同様に、C2計測部21bは、パラメータB算出部22bに接続されており、切替スイッチ311b及び312bによって静電容量計測用電極E21及びE22と接続された状態に切り替えられると、コンデンサC2の静電容量を計測し、その計測結果をパラメータB算出部22bに出力する。そして、パラメータB算出部22bは、コンデンサC2の計測結果に基づいて補正パラメータBを算出し、補正回路12bに出力する。なお、補正パラメータA及び補正パラメータBの算出方法については図11を参照して後述する。また、静電容量計測部21が特許請求の範囲に記載のインピーダンス計測部に相当する。
【0066】
補正パラメータ算出部22は、図3に示されるように、パラメータA算出部22a及びパラメータB算出部22bを有して構成されている。スイッチ制御部23は、例えば公知のプッシュスイッチからなる操作スイッチ32及び上記切替スイッチ311a〜312bに接続されている。
【0067】
スイッチ制御部23は、操作スイッチ32がプッシュ操作されることをもって心電信号の計測開始指示が与えられたと判断し、上記切替スイッチ311a〜312bによる接続状態の切り替えを行なう。なお、この接続状態の切り替えタイミングについては後述する。
【0068】
スイッチ制御部23は、切替スイッチ311a〜312bの切替タイミングを同期させる。すなわち、スイッチ制御部23は、静電容量計測用電極E11及びE12の接続状態がC1計測部21aと接続された接続状態である期間と、静電容量計測用電極E21及びE22の接続状態がC2計測部21bと接続された接続状態である期間とが一致するように、切替スイッチ311a〜312bを切り替える。同様に、スイッチ制御部23は、静電容量計測用電極E11及びE12の接続状態がGND電位と接続された接続状態である期間と、静電容量計測用電極E21及びE22の接続状態がGND電位と接続された接続状態である期間とが一致するように、切替スイッチ311a〜312bを切り替える。また同様に、スイッチ制御部23は、静電容量計測用電極E11及びE12の接続状態がC1計測部21a及びGND電位のいずれとも接続されていない未接続状態である期間と、静電容量計測用電極E21及びE22の接続状態がC1計測部21a及びGND電位のいずれとも接続されていない未接続状態である期間とが一致するように、切替スイッチ311a〜312bを切り替える。
【0069】
そして、スイッチ制御部23が静電容量計測用電極E11及びE12の接続状態をC1計測部21aとの接続された接続状態に切り替えた場合には、上記C1計測部21aはコンデンサC1の静電容量を検出する。同様に、スイッチ制御部23が静電容量計測用電極E21及びE22の接続状態をC2計測部21bとの接続された接続状態に切り替えた場合には、上記C2計測部21bはコンデンサC2の静電容量を検出する。
【0070】
また、スイッチ制御部23が、静電容量計測用電極E11及びE12の接続状態をGND電位との接続状態に切り替えた後、C1計測部21a及びGND電位のいずれとも接続されていない未接続状態に切り替えた場合には、上記心電信号生成部10は心電信号を生成する。同様に、スイッチ制御部23が、静電容量計測用電極E21及びE22の接続状態をGND電位との接続状態に切り替えた後、C2計測部21b及びGND電位のいずれとも接続されていない未接続状態に切り替えた場合には、上記心電信号生成部10は心電信号を生成する。
【0071】
スイッチ制御部23は、上記心電信号生成部10が心電信号を生成中に、操作スイッチ32がプッシュ操作されることをもって心電信号の計測終了指示が与えられたと判断し、上記切替スイッチ311a〜312bによる接続状態の切り替えを終了する。
【0072】
ここで、背景技術の欄にて説明した従来技術では、センサ電極と被検者とが平行であるとの仮定の下にセンサ電極と被検者との間の静電容量が算出されていたことから、静電容量の算出精度は高くなく、その結果、心電信号の検出精度も高くなかった。
【0073】
その点、本実施の形態では、センサ電極D1a及びD1bと被検者Hmとの間の静電容量の推定結果として、センサ電極と被検者との間の静電容量の算出結果に替えて、コンデンサC1及びC2の静電容量の計測結果を用いることとした。
【0074】
センサ電極D1a及びD1bと被検者Hmとの間には、図4に示すようにあるいは後述するように、弾性体62、シート素材61、及び被検者Hmが着用する衣服Cl等が介在することから、コンデンサC1の静電容量の計測結果やコンデンサC2の静電容量の計測結果を用いては、センサ電極D1a及びD1bと被検者Hmとの間の静電容量の正確な推定結果が得られないとも思われる。
【0075】
しかしながら、弾性体62の静電容量(スポンジの場合、例えば「1[pF])は、被検者Hmが着用する衣服(例えば「13[pF])やシート素材(例えば「58[pF]」)の静電容量と比較して低いため、コンデンサC1及びコンデンサC2の静電容量の計測結果は、上記従来技術におけるセンサ電極と被検者との間の静電容量の算出結果よりも、センサ電極D1a及びD1bと被検者Hmとの間の実際の静電容量に近くなることが多い。したがって、「コンデンサC1及びC2の静電容量≒センサ電極D1a及びD1bと被検者Hmとの間の静電容量」とみなすことが可能である。
【0076】
以下、図4及び図5を併せ参照してさらに詳述する。なお、図4は、シート60内部におけるセンサ電極D1a及び静電容量計測用電極E11及びE12の配置態様を側面方向から示す図であり、図5(a)は、図4中のA−A線に沿った断面図であり、図5(b)は、図4中のB−B線に沿った断面図である。また、図4及び図5では、センサ電極D1aについて示しているが、センサ電極D1bについてもセンサ電極D1aと同様である。
【0077】
図4に示されるように、衣服Clを着用した被検者Hmが着座するシート60は、当該シート60の表面を覆うとともに衣服Clを介して被検者Hmと接触する背もたれ面Fを構成するシート素材61と、センサ電極D1aの硬さに起因して被検者Hmのシート着座時の違和感を低減する例えばスポンジ(比誘電率が例えば「5」)等の弾性体62とを備えて構成されている。また、このシート60の内部には、既述した切替スイッチ31、C1計測部21a、コンデンサC1、及びセンサ電極D1a等が配置されているだけでなく、ガード電極40やこのガード電極40と弾性体62との間に介在する絶縁体50とが配置されている。
【0078】
センサ電極D1aは例えば銅などの金属材料からなる円形平板状の電極によって構成されており、一対の静電容量計測用電極E11及びE12は例えば導電性を有する布によって円形状に構成されていることは既述した通りである。また、これらセンサ電極D1a並びに一対の静電容量計測用電極E11及びE12は、それら中心線Ceが一致して同心となるように、直径が例えば「50[mm]」で一致するように、センサ電極D1aと静電容量計測用電極E12との離間距離が例えば「25[mm]」となるように、一対の静電容量計測用電極E11及びE12間の離間距離が例えば「50[mm]」となるように、構成されている。このようにして、一対の静電容量計測用電極E11及びE12はセンサ電極D1aと対向するように配置されることになる。なお、一対の静電容量計測用電極E11及びE12の緒元については、上記一例に限らず、上記心電信号帯域(例えば「0.2〜35[Hz]」)においてコンデンサC1の静電容量を計測可能な緒元であれば、適宜変更可能である。
【0079】
ガード電極40は、例えば銅などの金属材料からなり、図5(b)に示すように、センサ電極D1a及び一対の静電容量計測用電極E11及びE12と同心の円環状の電極によって構成されている。また、ガード電極40は、図4に示すように、センサ電極D1aと同一の平面上に配置されている。このように構成されることで、センサ電極D1aへの高インピーダンス入力に影響が与えられないようにすることができるようになる。なお、本実施の形態では、ガード電極40は、円環状の電極にて構成されているが、これに限らず、センサ電極D1aの周囲を覆う形状にて構成されていればよい。
【0080】
絶縁体50は、例えばフィルムなどの樹脂材料からなり、図5(a)に示すように、静電容量計測用電極E12と同心、したがって、静電容量計測用電極E11及びセンサ電極D1aとも同心の円形平板状に形成されている。また、絶縁体50は、図4に示すように、センサ電極D1a及びガード電極40と弾性体62との間に介在するように配置されている。このように配置されることで、センサ電極D1aと静電容量計測用電極E12との間の電気的な絶縁と、ガード電極40と静電容量計測用電極E12との間の電気的な絶縁が確保される。
【0081】
以下、図6〜図11を併せ参照して、補正パラメータ算出部22による補正パラメータA及び補正パラメータBの算出方法について説明する。なお、図10は、心電信号生成部10のうち補正パラメータを算出するにあたり必要となる主要な構成を含む回路図である。図6は、図10中の補正回路12aを示す回路図であり、図7は、図10の補正回路12bを示す回路図である。また、図8は、図10のセンサ回路11aを示す回路図であり、図9は、図10のセンサ回路11bを示す回路図である。なお、これら補正回路12a及び12bの構成は一例に過ぎず、適宜変更可能である。
【0082】
図6に示されるように、補正回路12aは、オペアンプOP12a、抵抗器R4、抵抗器R8、抵抗器R9、及びコンデンサC4を有して構成されている。なお、抵抗器R4及び抵抗器R9は可変抵抗器によって構成されており、補正パラメータ算出部22によって算出された補正パラメータAによってその抵抗値が制御可能である。また、抵抗器R8及びコンデンサC4は抵抗値及び静電容量が固定されており、補正パラメータ算出部22によって算出された補正パラメータAによってその抵抗値及び静電容量を制御することはできない。
【0083】
オペアンプOP12aの非反転入力端子は、コンデンサC4を介してセンサ回路11aの出力端子に接続されているとともに、抵抗器R4を介してGND電位に接続されている。また、オペアンプOP12aの反転入力端子は、抵抗器R8を介してGND電位に接続されているとともに、抵抗器R9を介して差動増幅器13の反転入力端子に接続されている(図10参照)。また、オペアンプOP12aの出力端子は差動増幅器13の反転入力端子に接続されている(図10参照)。このように構成された補正回路12aのゲイン及びカットオフ周波数をそれぞれG12a及びfc12aとする。
【0084】
また、図7に示されるように、補正回路12bは、オペアンプOP12b、抵抗器R7、抵抗器R5、抵抗器R6、及びコンデンサC7を有して構成されている。このように構成された補正回路12bのゲイン及びカットオフ周波数をそれぞれG12b及びfc12bとする。なお、補正回路12bは上記補正回路12aに準じた構成であるため、ここでの重複する説明を割愛する。
【0085】
また、図8に示されるように、センサ回路11aは、オペアンプOP11a、抵抗器R1、及びコンデンサC5を有して構成されている。オペアンプOP11aの反転入力端子及び出力端子は補正回路12aに接続されており、オペアンプOP11aの非反転入力端子は、抵抗器R1を介してGND電位に接続されているとともに、コンデンサC5を介してGND電位に接続されている。さらに、図8に示されるように、オペアンプOP11aの非反転入力端子はコンデンサC1に接続されている。このように構成されたセンサ回路11aのゲイン及びカットオフ周波数をそれぞれG11a及びfc11aとする。
【0086】
また、図9に示されるように、センサ回路11bは、オペアンプOP11b、抵抗器R2、及びコンデンサC6を有して構成されている。そして、センサ回路11b及びカットオフ周波数をそれぞれゲインG11b及びfc11bとする。なお、センサ回路11bは上記センサ回路11aに準じた構成であるため、ここでの重複する説明を割愛する。
【0087】
図11は、上記コンデンサC1の静電容量が上記コンデンサC2の静電容量よりも大きい場合における周波数特性を示した図である。なお、この図11においては、補正回路12aによる補正前のセンサ回路11aの周波数特性を1点鎖線L11aにて、補正回路12bによる補正前のセンサ回路11bの周波数特性を2点鎖線L11bにて、補正回路12aによる補正後のセンサ回路11aの周波数特性及び補正回路12bによる補正後のセンサ回路11bの周波数特性を実線L1にて、それぞれ示している。
【0088】
補正パラメータ算出部22は、上記コンデンサC1の静電容量が上記コンデンサC2の静電容量よりも大きい場合には、補正パラメータA及び補正パラメータBを次のように算出する。
【0089】
詳しくは、補正パラメータ算出部22は、補正回路12aによる補正後のセンサ回路11aのカットオフ周波数が、補正回路12bによる補正後のセンサ回路11bのカットオフ周波数と一致するように抵抗器R4を制御する補正パラメータAを算出する。また、補正パラメータ算出部22は、センサ回路11aのゲインG11aを増幅しないように抵抗器R9を制御する補正パラメータAを算出する。また、補正パラメータ算出部22は、センサ回路11bのカットオフ周波数が必要帯域以下となるように抵抗器R7を制御する補正パラメータBを算出する。また、補正パラメータ算出部22は、補正回路12bによる補正後のセンサ回路11bのゲインが、補正回路12aによる補正後のセンサ回路11aのゲインと一致するように抵抗器R6を制御する補正パラメータBを算出する。こうした補正パラメータA及び補正パラメータBによる補正により、補正回路12aによる補正後のセンサ回路11aの周波数特性と補正回路12bによる補正後のセンサ回路11bの周波数特性とがほぼ同一の特性となる。
【0090】
次に、補正パラメータ算出部22は、上記コンデンサC2の静電容量が上記コンデンサC1の静電容量よりも大きい場合には、補正パラメータA及び補正パラメータBを次のように算出する。
【0091】
詳しくは、補正パラメータ算出部22は、補正回路12bによる補正後のセンサ回路11bのカットオフ周波数が、補正回路12aによる補正後のセンサ回路11aのカットオフ周波数と一致するように抵抗器R7を制御する補正パラメータBを算出する。また、補正パラメータ算出部22は、センサ回路11bのゲインG11bを増幅しないように抵抗器R6を制御する補正パラメータBを算出する。また、補正パラメータ算出部22は、センサ回路11aのカットオフ周波数が必要帯域以下となるように抵抗器R4を制御する補正パラメータAを算出する。また、補正パラメータ算出部22は、補正回路12aによる補正後のセンサ回路11aのゲインが、補正回路12bによる補正後のセンサ回路11bのゲインと一致するように抵抗器R9を制御する補正パラメータAを算出する。こうした補正パラメータA及び補正パラメータBによる補正により、補正回路12aによる補正後のセンサ回路11aの周波数特性と補正回路12bによる補正後のセンサ回路11bの周波数特性とがほぼ同一の特性となる。
【0092】
次に、補正パラメータ算出部22は、上記コンデンサC1の静電容量と上記コンデンサC2の静電容量とが同一である場合には、補正パラメータA及び補正パラメータBを次のように算出する。
【0093】
詳しくは、補正パラメータ算出部22は、センサ回路11aのゲインG11aを増幅しないように抵抗器R9を制御する補正パラメータAを算出するとともに、センサ回路11bのゲインG11bを増幅しないように抵抗器R6を制御する補正パラメータBを算出する。また、補正パラメータ算出部22は、センサ回路11aのカットオフ周波数が必要帯域以下となるように抵抗器R4を制御する補正パラメータAを算出するとともに、センサ回路11bのカットオフ周波数が必要帯域以下となるように抵抗器R7を制御する補正パラメータBを算出する。
【0094】
図12は、心電波形計測システム1によって実行される心電信号生成処理S1の処理手順を示すフローチャートであり、図13は、心電信号生成処理S1の中で実行されるステップS105の処理、すなわち補正パラメータ算出処理の処理手順を示すフローチャートである。これら図12及び図13を併せ参照して、当該心電波形計測システム1の動作について総括する。なお、心電波形計測システム1は、心電信号生成処理S1を繰り返し実行する。
【0095】
制御部20は、心電信号生成処理S1を実行開始すると、まず、ステップS101の判断処理として、操作スイッチ32がプッシュ操作されることで計測開始指示が入力されたか否かを判断する。ここで、計測開始指示が入力されたと判断しなかった場合(ステップS101の判断処理で「No」)、制御部20は、このステップS101の判断処理を再度実行する一方、計測開始指示が入力されたと判断した場合(ステップS101の判断処理で「Yes」)、制御部20は、続くステップS102の判断処理に移行する。換言すれば、制御部20は、計測開始指示が入力されるまで待機する。
【0096】
ステップS102の判断処理に移行すると、制御部20は、前回の補正パラメータ算出処理ステップS105(後述)の実行時を基準として第1所定期間T1(例えば「1[分]」)が経過したか否かを判断する。ここで、第1所定期間T1が経過したと判断しなかった場合(ステップS102の判断処理で「No」)、補正パラメータが更新されて間もないことを意味する。補正パラメータを更新する必要性が高くないことから、制御部20は、後述のステップS112の処理に移行する。一方、第1所定期間T1が経過したと判断した場合(ステップS102の判断処理で「Yes」)、補正パラメータが更新されてから長期間が経過したことを意味する。補正パラメータを更新する必要性が高いことから、制御部20は、補正パラメータ算出処理に関連する一連の処理(S103〜S104、S106〜S109)を実行する。
【0097】
ステップS103の処理に移行すると、制御部20は、切替スイッチ311a及び312aを切り替えて、静電容量計測用電極E11及びE12の接続状態をC1計測部22aと接続された接続状態に切り替えるとともに、切替スイッチ311b及び312bを切り替えて、静電容量計測用電極E21及びE22の接続状態をC2計測部22bと接続された接続状態に切り替える。
【0098】
静電容量計測部21と接続された接続状態に切り替えると、制御部20は、続くステップS104の処理として、静電容量計測用電極E11及びE12によって構成されるコンデンサC1の静電容量と、と静電容量計測用電極E21及びE22によって構成されるコンデンサC2の静電容量を計測し、図13に示す補正パラメータ算出処理S105に移行する。
【0099】
この補正パラメータ算出処理S105に移行すると、制御部20は、まず、ステップS1051の判断処理として、コンデンサC1の静電容量とコンデンサC2の静電容量とが同一であるか否かを判断する。ここで、コンデンサC1の静電容量とコンデンサC2の静電容量とが同一であると判断された場合(ステップS1051の判断処理で「Yes」)、制御部20は、続くステップS1052の処理として、センサ回路11aのゲインG11aを増幅しないように抵抗器R9を制御するとともに、センサ回路11aのカットオフ周波数が必要帯域以下となるように抵抗器R4を制御する補正パラメータAtを算出する。さらに、制御部20は、続くステップS1053の処理として、センサ回路11bのゲインG11bを増幅しないように抵抗器R6を制御するとともに、センサ回路11bのカットオフ周波数が必要帯域以下となるように抵抗器R7を制御する補正パラメータBtを算出する。そして、補正パラメータAt及び補正パラメータBtを算出すると、制御部20は、続くステップS106の判断処理に移行する。なお、補正パラメータAt及び補正パラメータBtは、今回の心電信号生成処理S1の実行時に算出された補正パラメータA及び補正パラメータBであることを意味する。
【0100】
一方、コンデンサC1の静電容量とコンデンサC2の静電容量とが同一であると判断されなかった場合(ステップS1051の判断処理で「No」)、制御部20は、続くステップS1054の判断処理として、コンデンサC1の静電容量がコンデンサC2の静電容量よりも大きいか否かを判断する。
【0101】
コンデンサC1の静電容量がコンデンサC2の静電容量よりも大きいと判断された場合(ステップS1054の判断処理で「Yes」)、制御部20は、続くステップS1055の処理として、センサ回路11aのゲインG11aを増幅しないように抵抗器R9を制御するとともに、補正回路12aによる補正後のセンサ回路11aのカットオフ周波数が、補正回路12bによる補正後のセンサ回路11bのカットオフ周波数と一致するように抵抗器R4を制御する補正パラメータAtを算出する。さらに、制御部20は、続くステップS1056の処理として、補正回路12bによる補正後のセンサ回路11bのゲインが、補正回路12aによる補正後のセンサ回路11aのゲインと一致するように抵抗器R6を制御するとともに、センサ回路11bのカットオフ周波数が必要帯域以下となるように抵抗器R7を制御する補正パラメータBtを算出する。そして、補正パラメータAt及びBtを算出すると、制御部20は、続くステップS106の判断処理に移行する。
【0102】
一方、コンデンサC1の静電容量がコンデンサC2の静電容量よりも大きいと判断されなかった場合(ステップS1054の判断処理で「No」)、制御部20は、続くステップS1057の処理として、補正回路12aによる補正後のセンサ回路11aのゲインが、補正回路12bによる補正後のセンサ回路11bのゲインと一致するように抵抗器R9を制御するとともに、センサ回路11aのカットオフ周波数が必要帯域以下となるように抵抗器R4を制御する補正パラメータAtを算出する。さらに、制御部20は、続くステップS1058の処理として、センサ回路11bのゲインG11bを増幅しないように抵抗器R6を制御するとともに、補正回路12bによる補正後のセンサ回路11bのカットオフ周波数が、補正回路12aによる補正後のセンサ回路11aのカットオフ周波数と一致するように抵抗器R7を制御する補正パラメータBtを算出する。そして、補正パラメータAt及びBtを算出すると、制御部20は、続くステップS106の判断処理に移行する。
【0103】
このようにして補正パラメータAt及びBtを算出すると、制御部20は、続くステップS106の判断処理として、今回算出した補正パラメータAtと前回使用した補正パラメータAt−1とが同一であるか否かを判断する。なお、補正パラメータAt−1は、記憶部24から読み出した補正パラメータAであり、前回使用した補正パラメータAであることを意味し、制御部20は、今回の心電信号生成処理S1を終了する前に、今回使用した補正パラメータAを記憶部24に記憶している。
【0104】
ここで、今回算出した補正パラメータAtと前回使用した補正パラメータAt−1とが同一であると判断しなかった場合(ステップS106の判断処理で「No」)、制御部20は、続くステップS107の処理として、今回算出した補正パラメータAtを今回使用する補正パラメータAに設定し、続くステップS108の判断処理に移行する。一方、今回算出した補正パラメータAtと前回使用した補正パラメータAt−1とが同一であると判断した場合(ステップS106の判断処理で「Yes」)、制御部20は、前回使用した補正パラメータAt−1を今回使用する補正パラメータAに設定し、続くステップS108の判断処理に移行する。
【0105】
ステップS108の判断処理に移行すると、制御部20は、今回算出した補正パラメータBtと前回使用した補正パラメータBt−1とが同一であるか否かを判断する。なお、補正パラメータBt−1は、記憶部24から読み出した補正パラメータBであり、前回使用した補正パラメータBであることを意味し、制御部20は、今回の心電信号生成処理S1を終了する前に、今回使用した補正パラメータBを記憶部24に記憶している。
【0106】
ここで、今回算出した補正パラメータBtと前回使用した補正パラメータBt−1とが同一であると判断しなかった場合(ステップS108の判断処理で「No」)、制御部20は、続くステップS109の処理として、今回算出した補正パラメータBtを今回使用する補正パラメータBに設定し、続くステップS110の処理に移行する。一方、今回算出した補正パラメータBtと前回使用した補正パラメータBt−1とが同一であると判断した場合(ステップS108の判断処理で「Yes」)、制御部20は、前回使用した補正パラメータBt−1を今回使用する補正パラメータBに設定し、続くステップS110の処理に移行する。
【0107】
このように、上記ステップS102〜ステップS109の一連の処理を通じて、補正パラメータA及び補正パラメータBを第1所定期間T1毎に算出し更新している。
【0108】
制御部20は、ステップS110の処理に移行すると、切替スイッチ311a及び312aを切り替えて、静電容量計測用電極E11及びE12の接続状態を、GND電位との接続状態に切り替えるとともに、切替スイッチ311b及び312bを切り替えて、静電容量計測用電極E21及びE22の接続状態を、GND電位との接続状態に切り替える。
【0109】
GND電位との接続状態に切り替えると、制御部20は、GND電位との接続状態に切り替えてから第2所定期間T2(例えば「1[秒]」)が経過するまで待機し、続くステップS111の処理に移行する。第2所定期間T2だけ待機することにより、静電容量計測用電極E11及びE12に貯まっていた電荷をGND電位に確実に逃がすとともに、静電容量計測用電極E21及びE22に貯まっていた電荷をGND電位に確実に逃がすことができる。なお、本実施の形態では第2所定期間T2として例えば「1[秒]」を採用したがこれに限らない。静電容量計測用電極E11及びE12あるいはE21及びE22に貯まっていた電荷をGND電位に確実に逃がすことのできる最短時間よりも長い時間に適宜変更可能である。
【0110】
ステップS111の処理に移行すると、制御部20は、切替スイッチ311a及び312aを切り替えて、静電容量計測用電極E11及びE12の接続状態を未接続状態に切り替えるとともに、切替スイッチ311b及び312bを切り替えて、静電容量計測用電極E21及びE22の接続状態を未接続状態に切り替える。
【0111】
未接続状態に切り替えると、制御部20は、続くステップS112の処理として、補正パラメータA及び補正パラメータBを使用して補正回路12a及び12bの周波数特性を制御し、心電信号生成部10は心電信号を生成する。
【0112】
心電信号を生成すると、制御部20は、続くステップS113の判断処理として、操作スイッチ32がプッシュ操作されることで計測終了指示が入力されたか否かを判断する。ここで、計測終了指示が入力されたと判断しなかった場合(ステップS113の判断処理で「No」)、制御部20は、先のステップS102の判断処理に移行する。一方、計測終了指示が入力されたと判断した場合(ステップS113の判断処理で「Yes」)、制御部20は、心電信号生成処理S1を終了する。
【0113】
上記ステップS111の処理を実行することで、静電容量計測用電極E11及びE12並びにE21及びE22を絶縁することができるようになり、コンデンサC1の静電容量の計測、並びに、コンデンサC2の静電容量の計測が心電信号の生成に影響を与えないようにすることができるようになる。
【0114】
以上説明した第1の実施の形態の心電波形計測システム1では、心電信号生成部10はセンサ回路11aと差動増幅器13との間に補正回路12aを有しているとともにセンサ回路11bと差動増幅器13との間に補正回路12bを有していることとした。これにより、センサ回路11a及び11bから出力された検出信号は、補正回路12a及び12bにより補正された上で差動増幅器13によって差分が取られることになる。したがって、検出信号とこの検出信号に重畳したノイズとを同時に増幅してしまう従来技術とは異なり、補正回路12a及び12bによる補正の前後でシグナルとノイズとの比であるSN比を高めることができ、ひいては心電信号の検出精度を向上することができるようになる。
【0115】
また、上記第1の実施の形態では、心電波形計測システム1は、シートの背もたれ面に平行であり、且つ、互いに平行となるように、また、センサ電極D1aよりもシートの背もたれ面側になるように、さらに、このセンサ電極D1aと対向するように、シートの内部に配置され、コンデンサC1を構成する一対の静電容量計測用電極E11及びE12、並びに、シートの背もたれ面に平行であり、且つ、互いに平行となるように、また、センサ電極D1bよりもシートの背もたれ面側になるように、さらに、このセンサ電極D1bと対向するように、シートの内部に配置され、コンデンサC2を構成する一対の静電容量計測用電極E21及びE22を備えており、制御部20は、センサ電極D1a及びD1bと被検者Hmとの間の静電容量の推定結果として、センサ電極と被検者との間の静電容量の算出結果に替えて、コンデンサC1及びC2の静電容量の計測結果を用いることとした。「コンデンサC1及びC2の静電容量≒センサ電極と被検者との間の静電容量」とみなすことが可能であることから、センサ電極と被検者との間の静電容量の推定精度を向上することができるようになり、推定精度が向上する結果、補正回路12a及び12bによる検出信号の補正精度が向上し、心電信号の検出精度を向上することができるようになる。また、コンデンサC1及びC2の静電容量を一括して計測することから、上記従来技術のように接触面積Arや誘電率ε等の値が正確にわからなくても、静電容量を正確に測定することができる。
【0116】
(第2の実施の形態)
以下、本発明に係る心電波形計測システムの第2の実施の形態について、図14〜図19を参照して説明する。なお、図14は、本実施の形態の心電波形計測システム2について、その全体構成を示すブロック図であり、図15は、心電波形計測システム2を構成する制御部20aの詳細を示すブロック図である。図14及び図15から分かるように、この第2の実施の形態の心電波形計測システム2は、第1の実施の形態の心電波形計測システム1とは異なり、切替スイッチ311a〜312bを有しておらず、これら切替スイッチ311a〜312bの切替制御を行なわない。なお、上記心電波形計測システム1と重複する説明については省略する。
【0117】
図14に示されるように、心電波形計測システム2は、第1の実施の形態と同様に、一組のセンサ電極D1a及びD1bと、基準電極D2と、一対の静電容量計測用電極E11a及びE12aによって構成されるコンデンサC1aと、一対の静電容量計測用電極E21a及びE22aによって構成されるコンデンサC2aと、心電信号生成部10aと、制御部20aと、操作スイッチ32と、報知部70とを有して構成されている。
【0118】
一対の静電容量計測用電極E11a及びE12a並びに制御部20aについて説明する。一対の静電容量計測用電極E11a及びE12aは、例えば導電性を有する布によってセンサ電極D1aの周囲を覆うこのセンサ電極D1aと同心の円環状の電極にて構成されており、シートの背もたれ面に平行であり、且つ、互いに平行となるように、また、センサ電極D1aよりもシートの背もたれ面側になるように、シートの内部に配置されている。これら一対の静電容量計測用電極E11a及びE12aはコンデンサC1を構成している。
【0119】
一対の静電容量計測用電極E11a及びE12aと同様に、一対の静電容量計測用電極E21a及びE22aも、導電性を有する布によって構成されており、シートの背もたれ面に平行であり、且つ、互い平行となるように、また、センサ電極D1bよりもシートの背もたれ面側になるように、シートの内部に配置されている。これら一対の静電容量計測用電極E21a及びE22aはコンデンサC2aを構成している。
【0120】
以下、図16及び図17を併せ参照してさらに詳述する。なお、図16は、シート60内部におけるセンサ電極D1a及び静電容量計測用電極E11a及びE12aの配置態様を側面方向から示す図であり、図17は、図16中のC−C線に沿った断面図である。
【0121】
図16に示されるように、また既述したように、センサ電極D1aは例えば銅などの金属材料からなる円形平板状の電極によって構成されており、一対の静電容量計測用電極E11a及びE12aは例えば導電性を有する布によって円環状に構成されている。これらセンサ電極D1a並びに一対の静電容量計測用電極E11a及びE12aは、それら中心線Ceが一致して同心となるように、センサ電極D1aが配置される平面と静電容量計測用電極E12aとの離間距離が例えば「1[mm]」となるように、一対の静電容量計測用電極E11a及びE12a間の離間距離が例えば「74[mm]」となるように、構成されている。また、センサ電極D1aはその直径が例えば「50[mm]」となるように構成されているとともに、一対の静電容量計測用電極11a及びE12aは、その直径が例えば「75[mm]」となるように構成されている。
【0122】
このようにして、一対の静電容量計測用電極E11a及びE12aはセンサ電極D1aを覆うように配置されることになる。なお、一対の静電容量計測用電極E11a及びE12aの緒元については、上記一例に限らず、上記心電信号帯域(例えば「0.2〜35[Hz]」)においてコンデンサC1aの静電容量を常時計測可能であれば、適宜変更可能である。
【0123】
ガード電極40aは、例えば導電性を有する布からなり、図17に示すように、センサ電極D1aと同心であってこのセンサ電極D1aの周囲を覆う筒状の電極によって構成されている。また、ガード電極40aは、その直径が例えば「60[mm]」となるように構成されており、センサ電極と同電位の電位でガードする。このように構成されることで、センサ電極D1aへの高インピーダンス入力に影響が与えられないようにすることができるようになる。
【0124】
絶縁体50aは、例えばフィルムなどの樹脂材料からなり、図17に示すように、静電容量計測用電極E12と同心、したがって、センサ電極D1aと同心の円形平板状に形成されている。また、絶縁体50aは、図16に示すように、センサ電極D1aと弾性体62との間に介在するように配置されている。
【0125】
なお、ガード電極40aは、図16に示すように、センサ電極D1aと同一平面上に位置する部分と弾性体62内部に位置する部分とに分割されて構成されている。これら両部分の間には、適宜の材料にて構成された導電性テープが介在しており、一体的に構成されている。
【0126】
制御部20aは、公知のCPUを有して構成される公知のコンピュータであり、操作スイッチ32に接続され、センサ電極D1a及びD1bとシートに着座する被検者との間の静電容量の推定結果に基づいて、補正回路12a及び12bによる検出信号の補正を制御する。なお、本実施の形態でも、制御部20aは、センサ電極D1a及びD1bとシートに着座する被検者との間の静電容量の推定結果として、上記コンデンサC1a及びC2aの計測結果を用いることとしている。また、制御部20aが特許請求の範囲に記載の補正制御部に相当する。
【0127】
制御部20aは、センサ電極D1aに対して設けられたコンデンサC1aの静電容量の計測結果、及び、センサ電極D1bに対して設けられたコンデンサC2aの計測結果に基づいて、被検者がシートに着座しているか否か、シートに着座している被検者が通常の姿勢にて着座しているか否か、さらに、シートに着座している被検者が安静に着座しているか否かを判断する。なお、制御部20aが特許請求の範囲に記載の被検者判断部に相当する。
【0128】
詳しくは、制御部20aは、コンデンサC1aの静電容量の計測結果が所定の未着座判定閾値C1th1に一致し、且つ、コンデンサC2aの静電容量の計測結果が所定の未着座判定閾値C2th1に一致すると判断した場合には、被検者Hmがシート60に着座していないと判断する。そして、制御部20aは、被検者Hmがシート60に着座していないと判断した場合には、例えばスピーカ等から構成された報知部70を制御してその旨すなわち判断結果を報知する。なお、未着座判定閾値C1th1は被検者Hmがシート60に着座していない状態にて予め測定されたコンデンサC1aの静電容量の計測結果であり、未着座判定閾値C2th1は被検者Hmがシート60に着座していない状態にて予め測定されたコンデンサC2aの静電容量の計測結果である。また、これら未着座判定閾値C1th1及びC2th1は上記記憶部24に記憶されている。さらに、本実施の形態では、報知部70としてスピーカを採用したが、スピーカに限らず、例えばLCD等の表示部を採用して判断結果を画像にて表示してもよい。
【0129】
また、制御部20aは、コンデンサC1aの静電容量の計測結果及びコンデンサC2aの静電容量の計測結果の差の大きさが所定の通常姿勢判定閾値Cth2を上回る場合には、シートに着座している被検者は通常の姿勢にて着座していないと判断する。そして、制御部20aは、シート60に着座している被検者Hmは通常の姿勢にて着座していないと判断した場合には、報知部70を制御して通常の姿勢にて着座するように報知する。なお、通常の姿勢とは、前かがみとなってシート60の背もたれにもたれていない姿勢や背後に反ってシート60の背もたれを押圧する姿勢ではなく、シートの背もたれにもたれた姿勢を意味する。また、所定の通常姿勢判定閾値Cth2とは、そのような通常の姿勢にて着座している状態にて予め測定されたコンデンサC1aの静電容量の測定結果とコンデンサC2aの静電容量の測定結果との差である。また、通常姿勢判定閾値Cth2は上記記憶部24に記憶されている。
【0130】
また、制御部20aは、コンデンサC1aの静電容量についての第3所定時間T3(例えば「3[秒]」)内の変化の大きさが所定の安静判定用閾値C1th3を上回る、または、コンデンサC2aの静電容量についての第3所定時間T3内の変化の大きさが所定の安静判定用閾値C2th3を上回る場合には、シート60に着座しているHmは安静に着座していないと判断する。そして、制御部20aは、シート60に着座しているHmは安静に着座していないと判断した場合には、報知部70を制御して安静に着座するよう報知する。なお、安静に着座するとは、揺れることなく着座する、すなわち振動することなく着座することを意味する。また、所定の安静判定用閾値C1th3とは、振動しながら着座している状態にて予め測定された、コンデンサC1の静電容量の第3所定時間T3内の変化の大きさの最小値であり、所定の安静判定用閾値C2th3とは、振動しながら着座している状態にて予め測定された、コンデンサC2の静電容量の第3所定時間T3内の変化の大きさの最小値である。また、安静判定用閾値C1th3及びC2th3は上記記憶部24に記憶されている。
【0131】
図18は、心電波形計測システム2によって実行される心電信号生成処理S2の処理手順を示すフローチャートであり、図19は、心電信号生成処理S2の中で実行されるステップS214の処理、すなわち被検者判断処理の処理手順を示すフローチャートである。これら図18及び図19を併せ参照して、当該心電波形計測システム2の動作について総括する。なお、心電波形計測システム2は、心電信号生成処理S2を繰り返し実行する。
【0132】
制御部20aは、ステップS102の判断処理に移行すると、前回の補正パラメータ算出処理ステップS105の実行時を基準として第1所定期間T1が経過したか否かを判断する。ここで、第1所定期間T1が経過したと判断しなかった場合(ステップS102の判断処理で「No」)、補正パラメータが更新されて間もないことを意味する。補正パラメータを更新する必要性が高くないことから、制御部20aは、被検者判断処理S214(後述)及び補正パラメータ算出処理に関連する一連の処理(S104a〜S109)を実行することなく、ステップS112の処理に移行する。一方、第1所定期間T1が経過したと判断した場合(ステップS102の判断処理で「Yes」)、補正パラメータが更新されてから長期間が経過したことを意味する。補正パラメータを更新する必要性が高いことから、制御部20aは、被検者判断処理S214及び補正パラメータ算出処理に関連する一連の処理(S104a〜S109)を実行する。
【0133】
ステップS104aの処理に移行すると、制御部20aは、静電容量計測用電極E11a及びE12aによって構成されるコンデンサC1aの静電容量と、静電容量計測用電極E21a及びE22aによって構成されるコンデンサC2aの静電容量とを計測し、図19に示す被検者判断処理S214に移行する。
【0134】
この被検者判断処理S214に移行すると、制御部20aは、まず、ステップS2141の判断処理として、コンデンサC1aの静電容量の計測結果が所定の未着座判定閾値C1th1に一致し、且つ、コンデンサC2aの静電容量の計測結果が所定の未着座判定閾値C2th1に一致するか否かを判断する。
【0135】
ここで、両者が一致すると判断した場合(ステップS2141の判断処理で「Yes」)、制御部20aは、被検者Hmがシート60に着座していないと判断する。そして、制御部20aは、続くステップS2142の処理として、報知部70を制御して被検者Hmがシート60に着座していない旨を報知し、続くステップS105の処理に移行する。
【0136】
一方、両者が一致すると判断しなかった場合(ステップS2141の判断処理で「No」)、制御部20aは、被検者Hmがシート60に着座していると判断する。そして、制御部20aは、続くステップS2143の判断処理として、コンデンサC1aの静電容量の計測結果及びコンデンサC2aの静電容量の計測結果の差の大きさが所定の通常姿勢判定閾値Cth2を上回るか否かを判断する。
【0137】
ここで、上記差の大きさが上回ると判断した場合(ステップS2143の判断処理で「Yes」)、制御部20aは、シート60に着座している被検者は通常の姿勢にて着座していないと判断する。そして、制御部20aは、続くステップS2144の処理として、報知部70を制御して通常の姿勢にて着座するように報知し、続くステップS105の処理に移行する。一方、上記差の大きさが上回ると判断しなかった場合(ステップS2143の判断処理で「No」)、制御部20aは、続くステップS2145の判断処理に移行する。
【0138】
ステップS2145の判断処理に移行すると、制御部20aは、コンデンサC1aの静電容量についての第3所定時間T3内の変化の大きさが所定の安静判定用閾値C1th3を上回るか否か、または、コンデンサC2aの静電容量についての第3所定時間T3内の変化の大きさが所定の安静判定用閾値C2th3を上回るか否かを判断する。
【0139】
ここで、否定判断をした場合(ステップS2145の判断処理で「No」)、被検者60はシート60に通常の姿勢にて安静に着座していることを意味する。そのため、制御部20aは、そのまま続くステップS105の処理に移行する。一方、肯定判断をした場合(ステップS2145の判断処理で「Yes」)、被検者60はシート60に安静に着座していないことを意味する。そのため、制御部20aは、続くステップS2146の処理として、報知部70を制御して安静に着座するよう報知し、続くステップS105の処理に移行する。
【0140】
以上説明した第2の実施の形態の心電波形計測システム2では、センサ電極D1aに対して設けられたコンデンサC1aの静電容量の計測結果、及び、センサ電極D1bに対して設けられたコンデンサC2aの計測結果に基づいて、被検者Hmがシート60に着座しているか否か、シート60に着座している被検者Hmが通常の姿勢にて着座しているか否か、さらに、シート60に着座している被検者Hmが安静に着座しているか否かを判断することとした。そして、制御部20aは、被検者Hmがシート60に着座していないと判断した場合には報知部70を制御してその旨を報知し、被検者Hmが通常の姿勢にてシート60に着座していないと判断された場合には、報知部70を制御して通常の姿勢にてシート60に着座するよう報知し、被検者Hmがシート60に安静に着座していないと判断された場合には、報知部70を制御してシート60に安静に着座するよう報知することとした。これにより、被検者Hmに対して通常の姿勢にて安静にシート60に着座することを促すことができ、ひいては、心電信号の検出精度をより向上することができるようになる。
【0141】
(他の実施の形態)
上記各実施の形態では、被検者を検査する検査部として、シートを採用していたが、これに限らない。他に例えば、被検者を検査する検査部としてベッドを採用することができる。ベッドを採用した場合、ベッドの表面のうち被検者が横たわる面が被検者接触面に相当することになる。
【符号の説明】
【0142】
1,2…心電波形計測システム、10…心電信号生成部、11a,11b…センサ回路、12a,12b…補正回路、13…差動増幅器、14…バンドパスフィルタ(BPF)、15…AD変換器、20…制御部(補正制御部)、20a…制御部(補正制御部、被検者判断部)、21…静電容量計測部、21a…C1計測部、21b…C2計測部、22…補正パラメータ算出部、22a…パラメータA算出部、22b…パラメータB算出部、23…スイッチ制御部、24…記憶部、31,311a〜312b…切替スイッチ、32…計測開始スイッチ、40、40a…ガード電極、50…絶縁体、51…導電性テープ、60…シート、61…シート素材、62…弾性体、70…報知部、D1a,D1b…センサ電極、D2…基準電極、E11,E12,E11a,E12a…一対の静電容量計測用電極、E21,E22,E21a,E22a…一対の静電容量計測電極、Hm…人体、Cl…衣服、C1,C2,C4〜C7…コンデンサ、R1,R2,R4〜R9…抵抗器、OP11a〜OP12b…オペアンプ
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検者に負担をかけることなく被検者の心電信号を計測する静電容量結合型の心電波形計測システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に記載の技術が知られている。この特許文献1に記載の心電波形計測システムについて図20を参照して説明する。図20に示されるように、心電波形計測システム100は、シートに着座した運転者である被検者と接触する位置に設けられた3個の測定用電極D1〜D3と、これら測定用電極D1〜D3に対応して設けられ、それぞれがn個、合計m(=3n)個の圧力センサB1〜Bmで構成された圧力センサ群BG1〜BG3からなる信号検出部102と、信号検出部102を構成する測定用電極D1〜D3から得られる信号に基づいて(補正前)心電信号を生成する心電信号生成部103と、心電信号生成部103で生成された(補正前)心電信号を、指定された増幅率Aで増幅(補正)する可変増幅器104と、可変増幅器104の出力をデジタルデータである心電データDHに変換するA/D変換器105と、信号検出部102を構成する各圧力センサB1〜Bmから得られる信号に基づいて、可変増幅器104の増幅率Aを指定するとともに、心電データDHの信頼度を表す確度データDKを生成する補正制御部106とを備えて構成されている。
【0003】
ここで、心電信号生成部103は、測定用電極D1及びD2にそれぞれ接続されたボルテージフォロア回路131及び132と、測定用電極D3の電位を基準電位として、両ボルテージフォロア回路131及び132から出力される電圧信号の差分を増幅する差動増幅器133と、差動増幅器133の出力を増幅する増幅回路134と、増幅回路134の出力からノイズ成分を除去するバンドパスフィルタ135とを備えている。
【0004】
このように構成された心電波形計測システム100は、測定用電極D1〜D3と被検者との間の静電容量C1〜C3を算出し、その算出結果に基づいて可変増幅器104の増幅率Aを設定することにより、心電信号の信号レベルを補正する。そのため、測定用電極D1〜D3と被検者との接触状態、すなわち静電容量C1〜C3の大きさのばらつきによらず、信頼度の高い心電信号の測定結果を得ることができるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−219554号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来の心電波形計測システム100では、心電信号生成部103によって生成された補正前心電信号に対し、可変増幅器104によって補正が行なわれている。このように、補正回路が可変増幅器104のみで構成されていることから、可変増幅器104による補正の前後でSN比が改善されておらず、心電信号の検出精度を向上するには依然として改善の余地が残されている。
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、心電信号の検出精度をより向上することのできる心電波形計測システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
こうした目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、被検者を検査する検査部の内部に配置された少なくとも一組のセンサ電極と、センサ電極における電位を取得して検出信号として出力するセンサ回路と検出信号を補正して補正信号として出力する補正回路とをセンサ電極毎に有するとともに、これら補正回路から出力された補正信号の差分をとって差分信号として出力する差動増幅器を有し、差分信号を用いて被検者の心電信号を生成する心電信号生成部と、検査部の被検者接触面に平行であり、且つ、互いに平行となるように、センサ電極よりも被検者接触面側に配置された少なくとも一対のインピーダンス計測用電極と、インピーダンス計測用電極を用いて計測された、センサ電極と検査部に接触する被検者との間のインピーダンスの計測結果に基づいて、補正回路による検出信号の補正を制御する補正制御部とを備える心電波形計測システムであって、センサ電極は、平板状の電極によって構成され、検査部の被検者接触面に対し平行となるように配置されていることを特徴とする。
【0009】
心電波形計測システムとしての上記構成では、心電信号生成部はセンサ回路と差動増幅器との間に補正回路を有していることから、センサ回路から出力された検出信号は、補正回路により補正された上で差動増幅器によって差分が取られることになる。したがって、検出信号とこの検出信号に重畳したノイズとを同時に増幅してしまう従来技術とは異なり、補正回路による補正の前後でシグナルとノイズとの比であるSN比を高めることができ、ひいては心電信号の検出精度を向上することができるようになる。
【0010】
周知のように、センサ電極と被検者との間の静電容量Cは、センサ電極と被検者との接触面積Ar、センサ電極と被検者との間の距離d、及びセンサ電極及び被検者間の誘電率εを用いて「C=ε×Ar/d」のように表される。上記従来の心電波形計測システムでは、センサ電極(測定用電極)と被検者とが平行であると仮定した上で、圧力センサから得られる信号(換言すれば測定用電極と被検者との接触面積Ar)と固定値εとに基づいて、測定用電極と被検者との間の静電容量Cを算出し、その算出結果に基づいて可変増幅器の増幅率を決定していた。
【0011】
しかしながら、被検者のシートでの着座姿勢によっては、測定用電極と被検者とが平行となるとは限らない。そのため、上記仮定が成立せず、測定用電極と被検者との間の静電容量Cの算出精度が低下し、その結果、心電信号の検出精度が低下してしまうおそれがあった。しかも、このとき、センサ電極及び被検者間の誘電率εについては何ら考慮されていない。
【0012】
心電波形計測システムとしての上記請求項1に記載の構成では、一対のインピーダンス計測用電極は、仮定ではなく実際に、検査部の被検者接触面に平行であり、且つ、互いに平行となるように、センサ電極と被検者との間に位置することになり、これら一対のインピーダンス計測用電極間のインピーダンスの計測結果がセンサ電極と被検者との間のインピーダンスの計測結果として用いられる。
【0013】
ここで、センサ電極と被検者との間には、被検者が着用する衣服等が介在することから、一対のインピーダンス計測用電極間のインピーダンスの計測結果を用いては、センサ電極と被検者との間のインピーダンスの正確な計測結果が得られないとも思われる。しかしながら、一対のインピーダンス計測用電極間のインピーダンスは被検者が着用する衣服のインピーダンスと比較して非常に大きいため、一対のインピーダンス計測用電極間のインピーダンスの計測結果は、上記従来技術におけるセンサ電極と被検者との間の静電容量の算出結果よりも、センサ電極と被検者との間の実際のインピーダンスに近くなることが多い。
【0014】
したがって、上記請求項1に記載の構成によれば、センサ電極と被検者との間のインピーダンスの計測精度を向上することができるようになる。そして、計測精度が向上する結果、補正回路による検出信号の補正精度が向上し、心電信号の検出精度を向上することができるようになる。なお、上記請求項1に記載の構成では、一対のインピーダンス計測用電極間のインピーダンスを一括して計測することから、上記従来技術のように接触面積Arや誘電率ε等の値が正確にわからなくても、インピーダンスを正確に測定することができる。
【0015】
なお、上記請求項1に記載の構成のように、センサ電極は、平板状の電極によって構成されており、一対のインピーダンス計測用電極は、センサ電極に対し平行となるように配置されていることが望ましい。
【0016】
また、請求項2に記載の発明のように、補正制御部は、少なくとも一対のインピーダンス計測用電極間のインピーダンスを計測するインピーダンス計測部を有し、センサ電極と検査部に接触する被検者との間のインピーダンスの計測結果として、少なくとも一対のインピーダンス計測用電極のうち一対のインピーダンス計測用電極間のインピーダンスの計測結果を用いるとよい。
【0017】
また、請求項3に記載の発明のように、請求項1または2に記載の構成において、一対のインピーダンス計測用電極は、センサ電極と対向するように配置されているとよい。これにより、一対のインピーダンス計測用電極間のインピーダンスの計測結果は、センサ電極と被検者との間のインピーダンスの推定結果により近づくことになる。
【0018】
ところで、インピーダンス計測部による一対のインピーダンス計測用電極間のインピーダンスの計測と、心電信号生成部による心電信号の生成とを同時に行なうと、インピーダンスの計測が心電信号の生成に影響を与えることが懸念される。
【0019】
そこで、上記請求項1〜3のいずれかに記載の構成において、請求項4に記載の発明では、補正制御部は、インピーダンス計測部による一対のインピーダンス計測用電極間のインピーダンスの計測と心電信号生成部による心電信号の生成とを切り替える切替スイッチと、この切替スイッチによる切り替えを行なうスイッチ制御部とを有することとした。
【0020】
上記請求項4に記載の構成によれば、切替スイッチによってインピーダンスの計測と心電信号の生成とが切り替えられて同時に行なわれないため、インピーダンスの計測が心電信号の生成に影響を与えることが低減されるようになる。したがって、心電信号をより正確に生成する、すなわち、心電信号の検出精度をより向上することができるようになる。
【0021】
具体的には、上記請求項4に記載の構成において、請求項5に記載の発明のように、切替スイッチは、一対のインピーダンス計測用電極の接続状態を、インピーダンス計測部と接続された接続状態と、インピーダンス計測部と接続されていない未接続状態との間で切り替えるものであり、スイッチ制御部が一対のインピーダンス計測用電極の接続状態をインピーダンス計測部との接続状態に切り替えた場合には、インピーダンス計測部は一対のインピーダンス計測用電極間のインピーダンスを検出し、スイッチ制御部が一対のインピーダンス計測用電極の接続状態をインピーダンス計測部と接続されていない未接続状態に切り替えた場合には、心電信号生成部は心電信号を生成するとよい。
【0022】
あるいは、上記請求項4に記載の構成において、請求項6に記載の発明のように、切替スイッチは、一対のインピーダンス計測用電極の接続状態を、インピーダンス計測部と接続された接続状態、GND電位と接続された接続状態、並びに、これらインピーダンス計測部及びGND電位のいずれとも接続されていない未接続状態の中で切り替えるものであり、スイッチ制御部が一対のインピーダンス計測用電極の接続状態をインピーダンス計測部との接続状態に切り替えた場合には、インピーダンス計測部は一対のインピーダンス計測用電極間のインピーダンスを検出し、スイッチ制御部が一対のインピーダンス計測用電極の接続状態をGND電位との接続状態に切り替えた後、さらにインピーダンス計測部及びGND電位のいずれとも接続されていない未接続状態に切り替えた場合には、心電信号生成部は心電信号を生成するとよい。
【0023】
上記請求項6に記載の構成では、一対のインピーダンス計測用電極の接続状態がGND電位との接続状態に切り替えられて、貯まった電荷がGND電位に逃がされ、インピーダンス計測部及びGND電位のいずれとも接続されていない未接続状態に切り替えられた後に、心電信号生成部によって心電信号が生成される。そのため、一対のインピーダンス計測用電極に貯まった電荷が心電信号の生成に与える影響を上記請求項5に記載の構成よりも小さくすることができるようになる。
【0024】
また、上記請求項1〜3のいずれかに記載の構成においては、請求項7に記載の発明のように、少なくとも一対のインピーダンス計測用電極は、センサ電極の周囲を覆うこのセンサ電極と同心の円環状の電極もしくは円環の一部にて構成されているとよい。
【0025】
また、上記請求項7に記載の構成において、請求項8に記載の発明のように、センサ電極の周囲を覆うとともに、センサ電極をインピーダンス計測用電極からシールドする位置に配置されたガード電極を備えるとよい。
【0026】
また、上記請求項8に記載の構成において、請求項9に記載の発明のように、ガード電極は、筒状であるとよい。
【0027】
また、上記請求項8または9に記載の構成において、請求項10に記載の発明のように、ガード電極は、センサ電極と同心であるとよい。
【0028】
上記請求項1〜10のいずれかに記載の構成において、請求項11に記載の発明では、検査部は被検者が着座するシートであり、被検者接触面はシートの背もたれ面であり、一組のセンサ電極毎に設けられた一対のインピーダンス計測用電極間のインピーダンスの計測結果に基づいて、被検者がシートに着座しているか否かを判断する被検者判断部と、被検者判断部による判断結果を報知する報知部とをさらに備えることとした。これにより、被検者がシートに着座しているか否かに係る判断結果を報知することができるようになる。
【0029】
具体的には、上記請求項11に記載の構成において、請求項12に記載の発明のように、被検者判断部は、一組のセンサ電極毎に設けられた一対のインピーダンス計測用電極間のインピーダンスが双方ともに所定の未着座判定閾値と一致する場合には、被検者がシートに着座していないと判断し、報知部は、被検者判断部によって被検者がシートに着座していないと判断された場合には、その旨を報知するとよい。なお、所定の未着座判定閾値とは、被検者がシートに着座していない状態にて予め測定された一対のインピーダンス計測用電極間のインピーダンスである。
【0030】
また、請求項11または12に記載の構成において、請求項13に記載の発明では、被検者判断部は、一組のセンサ電極毎に設けられた一対のインピーダンス計測用電極間のインピーダンスの計測結果に基づいて、シートに着座している被検者が通常の姿勢にて着座しているか否かを判断し、報知部は、被検者判断部によって被検者が通常の姿勢にてシートに着座していないと判断された場合には、通常の姿勢にてシートに着座するよう報知することとした。これにより、被検者が通常の姿勢にてシートに着座していないと判断された場合には、通常の姿勢にてシートに着座するよう報知することができるようになる。
【0031】
具体的には、上記請求項13に記載の構成において、請求項14に記載の発明のように、被検者判断部は、一組のセンサ電極毎に設けられた一対のインピーダンス計測用電極間のインピーダンスの差の大きさが所定の通常姿勢判定閾値を上回る場合には、シートに着座している被検者は通常の姿勢にて着座していないと判断するとよい。
【0032】
なお、通常の姿勢とは、前かがみとなってシートの背もたれにもたれていない姿勢や背後に反ってシートの背もたれを押圧する姿勢ではなく、シートの背もたれにもたれた姿勢を意味する。また、所定の通常姿勢判定閾値とは、そのような通常の姿勢にて着座している状態にて予め測定された、一組のセンサ電極毎に設けられた一対の静電容量計測用電極間の静電容量の差の大きさである。
【0033】
上記請求項11〜14のいずれかに記載の構成において、請求項15に記載の発明では、被検者判断部は、一組のセンサ電極毎に設けられた一対のインピーダンス計測用電極間のインピーダンスの計測結果に基づいて、シートに着座している被検者が安静に着座しているか否かを判断し、報知部は、被検者判断部によって被検者がシートに安静に着座していないと判断された場合には、シートに安静に着座するよう報知することとした。これにより、被検者がシートに安静に着座していないと判断された場合には、シートに安静に着座するよう報知することができるようになる。
【0034】
具体的には、上記請求項15に記載の構成において、請求項16に記載の発明のように、被検者判断部は、一組のセンサ電極のうち一方のセンサ電極に設けられた一対のインピーダンス計測用電極間のインピーダンスについての所定時間内の変化の大きさと、一組のセンサ電極のうち他方のセンサ電極に設けられた一対のインピーダンス計測用電極間のインピーダンスについての所定時間内の変化の大きさとの少なくともいずれか一方が所定の安静判定用閾値を上回る場合には、シートに着座している被検者は安静に着座していないと判断するとよい。
【0035】
なお、安静に着座するとは、揺れることなく着座する、すなわち振動することなく着座することを意味する。また、所定の安静判定用閾値とは、振動しながら着座している状態にて予め測定された、一組のセンサ電極毎に設けられた一対のインピーダンス計測用電極間のインピーダンスについて所定時間内の変化の大きさの最小値よりも大きな値である。
【0036】
上記請求項1〜16のいずれかに記載の構成において、請求項17に記載の発明のように、一対のインピーダンス計測用電極は、導電性を有する布にて構成され、検査部の内部に配置されているとよい。これにより、一対のインピーダンス計測電極は検査部の変形に従って変形することから、検査部に接触した際に被検者が異物感を感じることを低減することができるようになる。
【0037】
また、上記請求項1〜17のいずれかに記載の構成において、請求項18に記載の発明のように、検査部は、当該検査部の表面を覆う検査部素材と、検査部の内部の弾性体とを有して構成されており、弾性体は、検査部素材のうち被検者が接触する部分とセンサ電極との間に介在しているとよい。これによっても、検査部に接触した際に被検者が異物感を感じることを低減することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明に係る心電波形計測システムの原理を説明するための概念図である。
【図2】本発明に係る心電波形計測システムの第1の実施の形態について、その全体構成を示すブロック図である。
【図3】第1の実施の形態について、補正制御部の詳細な構成を示すブロック図である。
【図4】第1の実施の形態について、シートの内部におけるセンサ電極及び一対の静電容量計測用電極の配置態様を側面方向から示す図である。
【図5】第1の実施の形態について、(a)は、図4中のA−A線に沿った断面図であり、(b)は、図4中のB−B線に沿った断面図である。
【図6】第1の実施の形態について、補正回路12aの構成例を示す回路図である。
【図7】第1の実施の形態について、補正回路12bの構成例を示す回路図である。
【図8】第1の実施の形態について、センサ回路11aの構成例を示す回路図である。
【図9】第1の実施の形態について、センサ回路11bの構成例を示す回路図である。
【図10】第1の実施の形態について、補正パラメータの算出方法を説明するための図である。
【図11】第1の実施の形態について、コンデンサC1の静電容量がコンデンサC2の静電容量よりも大きい場合における周波数特性を示した図である。
【図12】第1の実施の形態によって実行される心電信号生成処理について、その処理手順を示すフローチャートである。
【図13】心電信号生成処理の中で実行される補正パラメータ算出処理について、その処理手順を示すフローチャートである。
【図14】本発明に係る心電波形計測システムの第2の実施の形態について、その全体構成を示すブロック図である。
【図15】第2の実施の形態について、補正制御部の詳細な構成を示すブロック図である。
【図16】第2の実施の形態について、シートの内部におけるセンサ電極及び一対の静電容量計測用電極の配置態様を側面方向から示す図である。
【図17】第2の実施の形態について、図16中のC−C線に沿った断面図である。
【図18】第2の実施の形態によって実行される心電信号生成処理について、その処理手順を示すフローチャートである。
【図19】心電信号生成処理の中で実行される被検者判断処理について、その処理手順を示すフローチャートである。
【図20】従来の心電波形計測システムについて、その全体構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
(発明の原理)
本発明に係る心電波形計測システムの実施の形態について説明するに先立ち、本発明に係る心電波形計測システムの原理について図1を参照して簡単に説明する。なお、図1は、心電波形の計測対象である被検者を含めた心電波形計測システムS全体の概念図である。
【0040】
この図1に示されるように、心電波形計測システムSは、被検者Hmと、人−センサ間インピーダンスZ1及びZ2と、センサSen1及びSen2と、差動増幅器Dと、ノイズ源とを有するとみなすことができる。
【0041】
詳しくは、被検者Hmは、直接接続された2つの交流電圧源を有して構成されており、これら2つの交流電圧源がそれぞれ「Vd/2」ずつ出力することによって心電信号Vdが出力される。被検者Hmにはノイズ源として交流電圧源が接続されており、このノイズ源から出力されるノイズ信号Vcが上記心電信号Vdに重畳される。ノイズ信号Vcが重畳された心電信号Vdは被検者Hmから2分して出力され、人−センサ間インピーダンスZ1及びZ2、さらにインピーダンスZinを有するセンサSen1及びSen2を介して差動増幅器Dにそれぞれ入力される。そして、差動増幅器Dでは、センサSen1から出力された出力信号及びSen2から出力された出力信号の差動が取られ、出力信号Voutとして出力される。なお、人−センサ間インピーダンスZ1及びZ2は特許請求の範囲に記載のセンサ電極と被検者との間のインピーダンスに相当し、センサSen1及びSen2は特許請求の範囲に記載のセンサ回路に相当し、差動増幅器Dは特許請求の範囲に記載の差動増幅器に相当する。
【0042】
ここで、差動増幅器Dの出力信号Voutは下式(1)のように表すことができる。すなわち、出力信号Voutは、第1項の心電信号Vdに係る成分であるシグナル成分と、第2項のノイズ信号Vcに係る成分であるノイズ成分との和にて表すことができる。
【数1】
【0043】
ちなみに、人−センサ間インピーダンスZ1及びZ2は下式(2)のように表すことができる。
【数2】
【0044】
上式(1)から分かるように、シグナル成分とノイズ成分との比であるSN比は、人−センサ間インピーダンスZ1及びZ2に、すなわちC1及びC2に依存する。そのため、SN比を高めるには、センサ電極と被検者との間の静電容量C1及びC2の推定結果に基づいて上式(1)の第2項が零に近づくようにセンサSen1及びSen2の出力信号を補正し、その補正後に差動増幅器Dの差動を取ればよいこととなる。
【0045】
以下、「センサ電極と被検者との間の静電容量C1及びC2の推定結果に基づいて上記(1)の第2項が零に近づくようにセンサSen1及びSen2の出力信号を補正する」との発明の原理を具体化した実施の形態について説明する。
【0046】
(第1の実施の形態)
以下、本発明に係る心電波形計測システムの第1の実施の形態について、図2〜図12を参照して説明する。なお、図2は、本実施の形態の心電波形計測システム1について、その全体構成を示すブロック図であり、図3は、心電波形計測システム1を構成する制御部20の詳細を示すブロック図である。また、人−センサ間インピーダンスZ1及びZ2は実際にはR成分とC成分で構成されるが、心電周波数帯ではほぼC成分と考えることが可能である。
【0047】
図2に示されるように、心電波形計測システム1は、一組のセンサ電極D1a及びD1bと、基準電極D2と、一対の静電容量計測用電極E11及びE12によって構成されるコンデンサC1と、一対の静電容量計測用電極E21及びE22によって構成されるコンデンサC2と、心電信号生成部10と、制御部20と、操作スイッチ32とを有して構成されている。
【0048】
まず、一組のセンサ電極D1a及びD1b並びに基準電極D2について説明する。センサ電極D1a及びD1bは、例えば銅などの金属材料からなる円形平板状の電極によって構成されており、被検者Hmが着座するシートの背もたれ部(図示略)に被検者Hmの平均的な心臓の位置を挟んでその上下に配置されているとともに、シートの背もたれ面に対し平行となるように対向配置されている。また、センサ電極D1a及びD1bは、心電信号生成部10を構成するセンサ回路11a及び11bにそれぞれ接続されている。なお、センサ電極D1a及びD1bについては、図4を用いて後述する。また、シート及び背もたれ面が特許請求の範囲に記載の検査部及び被検者接触面にそれぞれ相当する。
【0049】
次に、心電信号生成部10について説明する。心電信号生成部10は、センサ回路11a及びセンサ回路11bと、補正回路12a及び補正回路12bと、差動増幅器13と、バンドパスフィルタ(BPF)14と、AD変換器15とを備えて構成されている。
【0050】
センサ回路11aは、公知のオペアンプを含んで構成されており、その入力端子はセンサ電極D1aに接続され、その出力端子は補正回路12aに接続されており、その基準電位は基準電極D2の電位とされている。なお、図1では便宜上、センサ回路11aは、オペアンプのみを含んで構成されているが、実際には、オペアンプに加えて公知の抵抗器及びコンデンサも含んで構成されており、図8を用いて後述する。
【0051】
同様に、センサ回路11bも、公知のオペアンプを含んで構成されており、その入力端子はセンサ電極D1bに接続され、その出力端子は補正回路12bに接続されており、その基準電位は基準電極D2の電位とされている。なお、図1では便宜上、センサ回路11bは、オペアンプのみを含んで構成されているが、実際には、オペアンプに加えて公知の抵抗器及びコンデンサも含んで構成されており、図9を用いて後述する。
【0052】
これらセンサ回路11a及び11bは、基準電極D2の電位を基準電位としてセンサ電極D1a及びD1bにおける電位を取得し、検出信号として補正回路12a及び12bにそれぞれ出力する。
【0053】
補正回路12aは、その入力端子がセンサ回路11aに接続され、その出力端子が差動増幅器13の反転入力端子に接続されている。また、補正回路12aは、後述の制御部20を構成する補正パラメータ算出部22(詳しくはパラメータA算出部22a)にも接続されており、このパラメータA算出部22aによって算出された補正パラメータAを用いて当該補正回路12aの周波数特性を制御することにより、センサ回路11aから入力された検出信号を補正して補正信号として差動増幅器13に出力する。
【0054】
同様に、補正回路12bは、その入力端子がセンサ回路11bに接続され、その出力端子が差動増幅器13の非反転入力端子に接続されている。また、補正回路12bは、後述の制御部20を構成する補正パラメータ算出部22(詳しくはパラメータB算出部22b)にも接続されており、このパラメータB算出部22bによって算出された補正パラメータBを用いて当該補正回路12bの周波数特性を制御することにより、センサ回路11bから入力された検出信号を補正して補正信号として差動増幅器13に出力する。
【0055】
なお、これら補正回路12a及び12bのより詳細な構成については図6及び図7を参照して、補正パラメータAを用いた補正回路12aの周波数特性の制御方法及び補正パラメータBを用いた補正回路12bの周波数特性の制御方法については図11を参照して、それぞれ後述する。
【0056】
差動増幅器13は、公知の差動増幅器にて構成されており、その反転入力端子は補正回路12aに接続され、その非反転入力端子は補正回路12bに接続され、その出力端子はバンドパスフィルタ14に接続されている。差動増幅器13は、これら補正回路12aから入力された補正信号と補正回路12bから入力された補正信号との差分をとって差分信号としてバンドパスフィルタ14に出力する。
【0057】
バンドパスフィルタ14は、公知のバンドパスフィルタにて構成されており、その入力端子が差動増幅器13に接続され、その出力端子がAD変換器15に接続されている。バンドパスフィルタ14は、差動増幅器13から入力された差分信号について、心電信号帯域(例えば「0.2〜35[Hz])の成分を通過させるとともに、これ以外の帯域の成分を減衰させた上で、アナログ信号としてAD変換器15に出力する。
【0058】
AD変換器15は、公知のAD変換器にて構成されており、その入力端子はバンドパスフィルタ14に接続されている。AD変換器15は、バンドパスフィルタ14から入力されたアナログ信号をデジタル信号に変換し、その変換されたデジタル信号を被検者の心電信号として出力する。
【0059】
このように、心電波形生成部10は、センサ回路11a及び補正回路12a、並びに、センサ回路11b及び補正回路12bを、センサ電極D1a及びセンサ電極D1b毎に有しており、心電信号を生成して出力する。なお、バンドパスフィルタ14やAD変換器15については省略してもよい。
【0060】
次に、一対の静電容量計測用電極E11及びE12並びに制御部20について説明する。一対の静電容量計測用電極E11及びE12は、例えば導電性を有する布によって円形状に構成されており、シートの背もたれ面に平行であり、且つ、互いに平行となるように、また、センサ電極D1aよりもシートの背もたれ面側になるように、さらに、このセンサ電極D1aと対向するように、シートの内部に配置されている。これら一対の静電容量計測用電極E11及びE12はコンデンサC1を構成している。なお、この静電容量計測用電極E11及びE12が特許請求の範囲に記載のインピーダンス計測用電極に相当する。
【0061】
一対の静電容量計測用電極E11及びE12と同様に、一対の静電容量計測用電極E21及びE22も、導電性を有する布によって構成されており、シートの背もたれ面に平行であり、且つ、互い平行となるように、また、センサ電極D1bよりもシートの背もたれ面側になるように、さらに、このセンサ電極D1bと対向するように、シートの内部に配置されている。これら一対の静電容量計測用電極E21及びE22はコンデンサC2を構成している。
【0062】
制御部20は、公知のCPUを有して構成される公知のコンピュータであり、切替スイッチ31及び操作スイッチ32に接続され、センサ電極D1a及びD1bとシートに着座する被検者との間の静電容量の推定結果に基づいて、補正回路12a及び12bによる検出信号の補正を制御する。なお、本実施の形態では、制御部20は、センサ電極D1a及びD1bとシートに着座する被検者との間の静電容量の推定結果として、上記コンデンサC1及びC2の計測結果を用いることとしている。また、制御部20が特許請求の範囲に記載の補正制御部に相当する。
【0063】
具体的には、制御部20は、例えばフラッシュメモリ等の記憶部24を有して構成されており、この記憶部24に記憶されているプログラムを実行することによって、各種機能を実現している。以下の説明では、制御部20は、静電容量計測部21と、補正パラメータ算出部22とを有するものとして説明する。
【0064】
切替スイッチ31は、図3に示されるように、切替スイッチ311a〜312bを有して構成されており、切替スイッチ311a〜312bは、例えばオフ抵抗が高い機械式の切替スイッチによって構成されている。切替スイッチ311a及び312aは、静電容量計測用電極E11及びE12の接続状態を、C1計測部21aと接続された接続状態、GND電位と接続された接続状態、並びに、これらC1計測部21a及びGND電位のいずれとも接続されていない未接続状態の中で切り替える。また、切替スイッチ311b及び312bは、静電容量計測用電極E21及びE22の接続状態を、C2計測部21bと接続された接続状態、GND電位と接続された接続状態、並びに、これらC2計測部21b及びGND電位のいずれとも接続されていない未接続状態の中で切り替える。
【0065】
静電容量計測部21は、図3に示されるように、C1計測部21a及びC2計測部21bを有して構成されている。C1計測部21aは、パラメータA算出部22aに接続されており、切替スイッチ311a及び312aによって静電容量計測用電極E11及びE12と接続された状態に切り替えられると、例えば公知の自動平衡ブリッジ法により上記心電信号帯域内の周波数(例えば「30[Hz])におけるコンデンサC1の静電容量を計測し、その計測結果をパラメータA算出部22aに出力する。そして、パラメータA算出部22aは、コンデンサC1の計測結果に基づいて補正パラメータAを算出し、補正回路12aに出力する。同様に、C2計測部21bは、パラメータB算出部22bに接続されており、切替スイッチ311b及び312bによって静電容量計測用電極E21及びE22と接続された状態に切り替えられると、コンデンサC2の静電容量を計測し、その計測結果をパラメータB算出部22bに出力する。そして、パラメータB算出部22bは、コンデンサC2の計測結果に基づいて補正パラメータBを算出し、補正回路12bに出力する。なお、補正パラメータA及び補正パラメータBの算出方法については図11を参照して後述する。また、静電容量計測部21が特許請求の範囲に記載のインピーダンス計測部に相当する。
【0066】
補正パラメータ算出部22は、図3に示されるように、パラメータA算出部22a及びパラメータB算出部22bを有して構成されている。スイッチ制御部23は、例えば公知のプッシュスイッチからなる操作スイッチ32及び上記切替スイッチ311a〜312bに接続されている。
【0067】
スイッチ制御部23は、操作スイッチ32がプッシュ操作されることをもって心電信号の計測開始指示が与えられたと判断し、上記切替スイッチ311a〜312bによる接続状態の切り替えを行なう。なお、この接続状態の切り替えタイミングについては後述する。
【0068】
スイッチ制御部23は、切替スイッチ311a〜312bの切替タイミングを同期させる。すなわち、スイッチ制御部23は、静電容量計測用電極E11及びE12の接続状態がC1計測部21aと接続された接続状態である期間と、静電容量計測用電極E21及びE22の接続状態がC2計測部21bと接続された接続状態である期間とが一致するように、切替スイッチ311a〜312bを切り替える。同様に、スイッチ制御部23は、静電容量計測用電極E11及びE12の接続状態がGND電位と接続された接続状態である期間と、静電容量計測用電極E21及びE22の接続状態がGND電位と接続された接続状態である期間とが一致するように、切替スイッチ311a〜312bを切り替える。また同様に、スイッチ制御部23は、静電容量計測用電極E11及びE12の接続状態がC1計測部21a及びGND電位のいずれとも接続されていない未接続状態である期間と、静電容量計測用電極E21及びE22の接続状態がC1計測部21a及びGND電位のいずれとも接続されていない未接続状態である期間とが一致するように、切替スイッチ311a〜312bを切り替える。
【0069】
そして、スイッチ制御部23が静電容量計測用電極E11及びE12の接続状態をC1計測部21aとの接続された接続状態に切り替えた場合には、上記C1計測部21aはコンデンサC1の静電容量を検出する。同様に、スイッチ制御部23が静電容量計測用電極E21及びE22の接続状態をC2計測部21bとの接続された接続状態に切り替えた場合には、上記C2計測部21bはコンデンサC2の静電容量を検出する。
【0070】
また、スイッチ制御部23が、静電容量計測用電極E11及びE12の接続状態をGND電位との接続状態に切り替えた後、C1計測部21a及びGND電位のいずれとも接続されていない未接続状態に切り替えた場合には、上記心電信号生成部10は心電信号を生成する。同様に、スイッチ制御部23が、静電容量計測用電極E21及びE22の接続状態をGND電位との接続状態に切り替えた後、C2計測部21b及びGND電位のいずれとも接続されていない未接続状態に切り替えた場合には、上記心電信号生成部10は心電信号を生成する。
【0071】
スイッチ制御部23は、上記心電信号生成部10が心電信号を生成中に、操作スイッチ32がプッシュ操作されることをもって心電信号の計測終了指示が与えられたと判断し、上記切替スイッチ311a〜312bによる接続状態の切り替えを終了する。
【0072】
ここで、背景技術の欄にて説明した従来技術では、センサ電極と被検者とが平行であるとの仮定の下にセンサ電極と被検者との間の静電容量が算出されていたことから、静電容量の算出精度は高くなく、その結果、心電信号の検出精度も高くなかった。
【0073】
その点、本実施の形態では、センサ電極D1a及びD1bと被検者Hmとの間の静電容量の推定結果として、センサ電極と被検者との間の静電容量の算出結果に替えて、コンデンサC1及びC2の静電容量の計測結果を用いることとした。
【0074】
センサ電極D1a及びD1bと被検者Hmとの間には、図4に示すようにあるいは後述するように、弾性体62、シート素材61、及び被検者Hmが着用する衣服Cl等が介在することから、コンデンサC1の静電容量の計測結果やコンデンサC2の静電容量の計測結果を用いては、センサ電極D1a及びD1bと被検者Hmとの間の静電容量の正確な推定結果が得られないとも思われる。
【0075】
しかしながら、弾性体62の静電容量(スポンジの場合、例えば「1[pF])は、被検者Hmが着用する衣服(例えば「13[pF])やシート素材(例えば「58[pF]」)の静電容量と比較して低いため、コンデンサC1及びコンデンサC2の静電容量の計測結果は、上記従来技術におけるセンサ電極と被検者との間の静電容量の算出結果よりも、センサ電極D1a及びD1bと被検者Hmとの間の実際の静電容量に近くなることが多い。したがって、「コンデンサC1及びC2の静電容量≒センサ電極D1a及びD1bと被検者Hmとの間の静電容量」とみなすことが可能である。
【0076】
以下、図4及び図5を併せ参照してさらに詳述する。なお、図4は、シート60内部におけるセンサ電極D1a及び静電容量計測用電極E11及びE12の配置態様を側面方向から示す図であり、図5(a)は、図4中のA−A線に沿った断面図であり、図5(b)は、図4中のB−B線に沿った断面図である。また、図4及び図5では、センサ電極D1aについて示しているが、センサ電極D1bについてもセンサ電極D1aと同様である。
【0077】
図4に示されるように、衣服Clを着用した被検者Hmが着座するシート60は、当該シート60の表面を覆うとともに衣服Clを介して被検者Hmと接触する背もたれ面Fを構成するシート素材61と、センサ電極D1aの硬さに起因して被検者Hmのシート着座時の違和感を低減する例えばスポンジ(比誘電率が例えば「5」)等の弾性体62とを備えて構成されている。また、このシート60の内部には、既述した切替スイッチ31、C1計測部21a、コンデンサC1、及びセンサ電極D1a等が配置されているだけでなく、ガード電極40やこのガード電極40と弾性体62との間に介在する絶縁体50とが配置されている。
【0078】
センサ電極D1aは例えば銅などの金属材料からなる円形平板状の電極によって構成されており、一対の静電容量計測用電極E11及びE12は例えば導電性を有する布によって円形状に構成されていることは既述した通りである。また、これらセンサ電極D1a並びに一対の静電容量計測用電極E11及びE12は、それら中心線Ceが一致して同心となるように、直径が例えば「50[mm]」で一致するように、センサ電極D1aと静電容量計測用電極E12との離間距離が例えば「25[mm]」となるように、一対の静電容量計測用電極E11及びE12間の離間距離が例えば「50[mm]」となるように、構成されている。このようにして、一対の静電容量計測用電極E11及びE12はセンサ電極D1aと対向するように配置されることになる。なお、一対の静電容量計測用電極E11及びE12の緒元については、上記一例に限らず、上記心電信号帯域(例えば「0.2〜35[Hz]」)においてコンデンサC1の静電容量を計測可能な緒元であれば、適宜変更可能である。
【0079】
ガード電極40は、例えば銅などの金属材料からなり、図5(b)に示すように、センサ電極D1a及び一対の静電容量計測用電極E11及びE12と同心の円環状の電極によって構成されている。また、ガード電極40は、図4に示すように、センサ電極D1aと同一の平面上に配置されている。このように構成されることで、センサ電極D1aへの高インピーダンス入力に影響が与えられないようにすることができるようになる。なお、本実施の形態では、ガード電極40は、円環状の電極にて構成されているが、これに限らず、センサ電極D1aの周囲を覆う形状にて構成されていればよい。
【0080】
絶縁体50は、例えばフィルムなどの樹脂材料からなり、図5(a)に示すように、静電容量計測用電極E12と同心、したがって、静電容量計測用電極E11及びセンサ電極D1aとも同心の円形平板状に形成されている。また、絶縁体50は、図4に示すように、センサ電極D1a及びガード電極40と弾性体62との間に介在するように配置されている。このように配置されることで、センサ電極D1aと静電容量計測用電極E12との間の電気的な絶縁と、ガード電極40と静電容量計測用電極E12との間の電気的な絶縁が確保される。
【0081】
以下、図6〜図11を併せ参照して、補正パラメータ算出部22による補正パラメータA及び補正パラメータBの算出方法について説明する。なお、図10は、心電信号生成部10のうち補正パラメータを算出するにあたり必要となる主要な構成を含む回路図である。図6は、図10中の補正回路12aを示す回路図であり、図7は、図10の補正回路12bを示す回路図である。また、図8は、図10のセンサ回路11aを示す回路図であり、図9は、図10のセンサ回路11bを示す回路図である。なお、これら補正回路12a及び12bの構成は一例に過ぎず、適宜変更可能である。
【0082】
図6に示されるように、補正回路12aは、オペアンプOP12a、抵抗器R4、抵抗器R8、抵抗器R9、及びコンデンサC4を有して構成されている。なお、抵抗器R4及び抵抗器R9は可変抵抗器によって構成されており、補正パラメータ算出部22によって算出された補正パラメータAによってその抵抗値が制御可能である。また、抵抗器R8及びコンデンサC4は抵抗値及び静電容量が固定されており、補正パラメータ算出部22によって算出された補正パラメータAによってその抵抗値及び静電容量を制御することはできない。
【0083】
オペアンプOP12aの非反転入力端子は、コンデンサC4を介してセンサ回路11aの出力端子に接続されているとともに、抵抗器R4を介してGND電位に接続されている。また、オペアンプOP12aの反転入力端子は、抵抗器R8を介してGND電位に接続されているとともに、抵抗器R9を介して差動増幅器13の反転入力端子に接続されている(図10参照)。また、オペアンプOP12aの出力端子は差動増幅器13の反転入力端子に接続されている(図10参照)。このように構成された補正回路12aのゲイン及びカットオフ周波数をそれぞれG12a及びfc12aとする。
【0084】
また、図7に示されるように、補正回路12bは、オペアンプOP12b、抵抗器R7、抵抗器R5、抵抗器R6、及びコンデンサC7を有して構成されている。このように構成された補正回路12bのゲイン及びカットオフ周波数をそれぞれG12b及びfc12bとする。なお、補正回路12bは上記補正回路12aに準じた構成であるため、ここでの重複する説明を割愛する。
【0085】
また、図8に示されるように、センサ回路11aは、オペアンプOP11a、抵抗器R1、及びコンデンサC5を有して構成されている。オペアンプOP11aの反転入力端子及び出力端子は補正回路12aに接続されており、オペアンプOP11aの非反転入力端子は、抵抗器R1を介してGND電位に接続されているとともに、コンデンサC5を介してGND電位に接続されている。さらに、図8に示されるように、オペアンプOP11aの非反転入力端子はコンデンサC1に接続されている。このように構成されたセンサ回路11aのゲイン及びカットオフ周波数をそれぞれG11a及びfc11aとする。
【0086】
また、図9に示されるように、センサ回路11bは、オペアンプOP11b、抵抗器R2、及びコンデンサC6を有して構成されている。そして、センサ回路11b及びカットオフ周波数をそれぞれゲインG11b及びfc11bとする。なお、センサ回路11bは上記センサ回路11aに準じた構成であるため、ここでの重複する説明を割愛する。
【0087】
図11は、上記コンデンサC1の静電容量が上記コンデンサC2の静電容量よりも大きい場合における周波数特性を示した図である。なお、この図11においては、補正回路12aによる補正前のセンサ回路11aの周波数特性を1点鎖線L11aにて、補正回路12bによる補正前のセンサ回路11bの周波数特性を2点鎖線L11bにて、補正回路12aによる補正後のセンサ回路11aの周波数特性及び補正回路12bによる補正後のセンサ回路11bの周波数特性を実線L1にて、それぞれ示している。
【0088】
補正パラメータ算出部22は、上記コンデンサC1の静電容量が上記コンデンサC2の静電容量よりも大きい場合には、補正パラメータA及び補正パラメータBを次のように算出する。
【0089】
詳しくは、補正パラメータ算出部22は、補正回路12aによる補正後のセンサ回路11aのカットオフ周波数が、補正回路12bによる補正後のセンサ回路11bのカットオフ周波数と一致するように抵抗器R4を制御する補正パラメータAを算出する。また、補正パラメータ算出部22は、センサ回路11aのゲインG11aを増幅しないように抵抗器R9を制御する補正パラメータAを算出する。また、補正パラメータ算出部22は、センサ回路11bのカットオフ周波数が必要帯域以下となるように抵抗器R7を制御する補正パラメータBを算出する。また、補正パラメータ算出部22は、補正回路12bによる補正後のセンサ回路11bのゲインが、補正回路12aによる補正後のセンサ回路11aのゲインと一致するように抵抗器R6を制御する補正パラメータBを算出する。こうした補正パラメータA及び補正パラメータBによる補正により、補正回路12aによる補正後のセンサ回路11aの周波数特性と補正回路12bによる補正後のセンサ回路11bの周波数特性とがほぼ同一の特性となる。
【0090】
次に、補正パラメータ算出部22は、上記コンデンサC2の静電容量が上記コンデンサC1の静電容量よりも大きい場合には、補正パラメータA及び補正パラメータBを次のように算出する。
【0091】
詳しくは、補正パラメータ算出部22は、補正回路12bによる補正後のセンサ回路11bのカットオフ周波数が、補正回路12aによる補正後のセンサ回路11aのカットオフ周波数と一致するように抵抗器R7を制御する補正パラメータBを算出する。また、補正パラメータ算出部22は、センサ回路11bのゲインG11bを増幅しないように抵抗器R6を制御する補正パラメータBを算出する。また、補正パラメータ算出部22は、センサ回路11aのカットオフ周波数が必要帯域以下となるように抵抗器R4を制御する補正パラメータAを算出する。また、補正パラメータ算出部22は、補正回路12aによる補正後のセンサ回路11aのゲインが、補正回路12bによる補正後のセンサ回路11bのゲインと一致するように抵抗器R9を制御する補正パラメータAを算出する。こうした補正パラメータA及び補正パラメータBによる補正により、補正回路12aによる補正後のセンサ回路11aの周波数特性と補正回路12bによる補正後のセンサ回路11bの周波数特性とがほぼ同一の特性となる。
【0092】
次に、補正パラメータ算出部22は、上記コンデンサC1の静電容量と上記コンデンサC2の静電容量とが同一である場合には、補正パラメータA及び補正パラメータBを次のように算出する。
【0093】
詳しくは、補正パラメータ算出部22は、センサ回路11aのゲインG11aを増幅しないように抵抗器R9を制御する補正パラメータAを算出するとともに、センサ回路11bのゲインG11bを増幅しないように抵抗器R6を制御する補正パラメータBを算出する。また、補正パラメータ算出部22は、センサ回路11aのカットオフ周波数が必要帯域以下となるように抵抗器R4を制御する補正パラメータAを算出するとともに、センサ回路11bのカットオフ周波数が必要帯域以下となるように抵抗器R7を制御する補正パラメータBを算出する。
【0094】
図12は、心電波形計測システム1によって実行される心電信号生成処理S1の処理手順を示すフローチャートであり、図13は、心電信号生成処理S1の中で実行されるステップS105の処理、すなわち補正パラメータ算出処理の処理手順を示すフローチャートである。これら図12及び図13を併せ参照して、当該心電波形計測システム1の動作について総括する。なお、心電波形計測システム1は、心電信号生成処理S1を繰り返し実行する。
【0095】
制御部20は、心電信号生成処理S1を実行開始すると、まず、ステップS101の判断処理として、操作スイッチ32がプッシュ操作されることで計測開始指示が入力されたか否かを判断する。ここで、計測開始指示が入力されたと判断しなかった場合(ステップS101の判断処理で「No」)、制御部20は、このステップS101の判断処理を再度実行する一方、計測開始指示が入力されたと判断した場合(ステップS101の判断処理で「Yes」)、制御部20は、続くステップS102の判断処理に移行する。換言すれば、制御部20は、計測開始指示が入力されるまで待機する。
【0096】
ステップS102の判断処理に移行すると、制御部20は、前回の補正パラメータ算出処理ステップS105(後述)の実行時を基準として第1所定期間T1(例えば「1[分]」)が経過したか否かを判断する。ここで、第1所定期間T1が経過したと判断しなかった場合(ステップS102の判断処理で「No」)、補正パラメータが更新されて間もないことを意味する。補正パラメータを更新する必要性が高くないことから、制御部20は、後述のステップS112の処理に移行する。一方、第1所定期間T1が経過したと判断した場合(ステップS102の判断処理で「Yes」)、補正パラメータが更新されてから長期間が経過したことを意味する。補正パラメータを更新する必要性が高いことから、制御部20は、補正パラメータ算出処理に関連する一連の処理(S103〜S104、S106〜S109)を実行する。
【0097】
ステップS103の処理に移行すると、制御部20は、切替スイッチ311a及び312aを切り替えて、静電容量計測用電極E11及びE12の接続状態をC1計測部22aと接続された接続状態に切り替えるとともに、切替スイッチ311b及び312bを切り替えて、静電容量計測用電極E21及びE22の接続状態をC2計測部22bと接続された接続状態に切り替える。
【0098】
静電容量計測部21と接続された接続状態に切り替えると、制御部20は、続くステップS104の処理として、静電容量計測用電極E11及びE12によって構成されるコンデンサC1の静電容量と、と静電容量計測用電極E21及びE22によって構成されるコンデンサC2の静電容量を計測し、図13に示す補正パラメータ算出処理S105に移行する。
【0099】
この補正パラメータ算出処理S105に移行すると、制御部20は、まず、ステップS1051の判断処理として、コンデンサC1の静電容量とコンデンサC2の静電容量とが同一であるか否かを判断する。ここで、コンデンサC1の静電容量とコンデンサC2の静電容量とが同一であると判断された場合(ステップS1051の判断処理で「Yes」)、制御部20は、続くステップS1052の処理として、センサ回路11aのゲインG11aを増幅しないように抵抗器R9を制御するとともに、センサ回路11aのカットオフ周波数が必要帯域以下となるように抵抗器R4を制御する補正パラメータAtを算出する。さらに、制御部20は、続くステップS1053の処理として、センサ回路11bのゲインG11bを増幅しないように抵抗器R6を制御するとともに、センサ回路11bのカットオフ周波数が必要帯域以下となるように抵抗器R7を制御する補正パラメータBtを算出する。そして、補正パラメータAt及び補正パラメータBtを算出すると、制御部20は、続くステップS106の判断処理に移行する。なお、補正パラメータAt及び補正パラメータBtは、今回の心電信号生成処理S1の実行時に算出された補正パラメータA及び補正パラメータBであることを意味する。
【0100】
一方、コンデンサC1の静電容量とコンデンサC2の静電容量とが同一であると判断されなかった場合(ステップS1051の判断処理で「No」)、制御部20は、続くステップS1054の判断処理として、コンデンサC1の静電容量がコンデンサC2の静電容量よりも大きいか否かを判断する。
【0101】
コンデンサC1の静電容量がコンデンサC2の静電容量よりも大きいと判断された場合(ステップS1054の判断処理で「Yes」)、制御部20は、続くステップS1055の処理として、センサ回路11aのゲインG11aを増幅しないように抵抗器R9を制御するとともに、補正回路12aによる補正後のセンサ回路11aのカットオフ周波数が、補正回路12bによる補正後のセンサ回路11bのカットオフ周波数と一致するように抵抗器R4を制御する補正パラメータAtを算出する。さらに、制御部20は、続くステップS1056の処理として、補正回路12bによる補正後のセンサ回路11bのゲインが、補正回路12aによる補正後のセンサ回路11aのゲインと一致するように抵抗器R6を制御するとともに、センサ回路11bのカットオフ周波数が必要帯域以下となるように抵抗器R7を制御する補正パラメータBtを算出する。そして、補正パラメータAt及びBtを算出すると、制御部20は、続くステップS106の判断処理に移行する。
【0102】
一方、コンデンサC1の静電容量がコンデンサC2の静電容量よりも大きいと判断されなかった場合(ステップS1054の判断処理で「No」)、制御部20は、続くステップS1057の処理として、補正回路12aによる補正後のセンサ回路11aのゲインが、補正回路12bによる補正後のセンサ回路11bのゲインと一致するように抵抗器R9を制御するとともに、センサ回路11aのカットオフ周波数が必要帯域以下となるように抵抗器R4を制御する補正パラメータAtを算出する。さらに、制御部20は、続くステップS1058の処理として、センサ回路11bのゲインG11bを増幅しないように抵抗器R6を制御するとともに、補正回路12bによる補正後のセンサ回路11bのカットオフ周波数が、補正回路12aによる補正後のセンサ回路11aのカットオフ周波数と一致するように抵抗器R7を制御する補正パラメータBtを算出する。そして、補正パラメータAt及びBtを算出すると、制御部20は、続くステップS106の判断処理に移行する。
【0103】
このようにして補正パラメータAt及びBtを算出すると、制御部20は、続くステップS106の判断処理として、今回算出した補正パラメータAtと前回使用した補正パラメータAt−1とが同一であるか否かを判断する。なお、補正パラメータAt−1は、記憶部24から読み出した補正パラメータAであり、前回使用した補正パラメータAであることを意味し、制御部20は、今回の心電信号生成処理S1を終了する前に、今回使用した補正パラメータAを記憶部24に記憶している。
【0104】
ここで、今回算出した補正パラメータAtと前回使用した補正パラメータAt−1とが同一であると判断しなかった場合(ステップS106の判断処理で「No」)、制御部20は、続くステップS107の処理として、今回算出した補正パラメータAtを今回使用する補正パラメータAに設定し、続くステップS108の判断処理に移行する。一方、今回算出した補正パラメータAtと前回使用した補正パラメータAt−1とが同一であると判断した場合(ステップS106の判断処理で「Yes」)、制御部20は、前回使用した補正パラメータAt−1を今回使用する補正パラメータAに設定し、続くステップS108の判断処理に移行する。
【0105】
ステップS108の判断処理に移行すると、制御部20は、今回算出した補正パラメータBtと前回使用した補正パラメータBt−1とが同一であるか否かを判断する。なお、補正パラメータBt−1は、記憶部24から読み出した補正パラメータBであり、前回使用した補正パラメータBであることを意味し、制御部20は、今回の心電信号生成処理S1を終了する前に、今回使用した補正パラメータBを記憶部24に記憶している。
【0106】
ここで、今回算出した補正パラメータBtと前回使用した補正パラメータBt−1とが同一であると判断しなかった場合(ステップS108の判断処理で「No」)、制御部20は、続くステップS109の処理として、今回算出した補正パラメータBtを今回使用する補正パラメータBに設定し、続くステップS110の処理に移行する。一方、今回算出した補正パラメータBtと前回使用した補正パラメータBt−1とが同一であると判断した場合(ステップS108の判断処理で「Yes」)、制御部20は、前回使用した補正パラメータBt−1を今回使用する補正パラメータBに設定し、続くステップS110の処理に移行する。
【0107】
このように、上記ステップS102〜ステップS109の一連の処理を通じて、補正パラメータA及び補正パラメータBを第1所定期間T1毎に算出し更新している。
【0108】
制御部20は、ステップS110の処理に移行すると、切替スイッチ311a及び312aを切り替えて、静電容量計測用電極E11及びE12の接続状態を、GND電位との接続状態に切り替えるとともに、切替スイッチ311b及び312bを切り替えて、静電容量計測用電極E21及びE22の接続状態を、GND電位との接続状態に切り替える。
【0109】
GND電位との接続状態に切り替えると、制御部20は、GND電位との接続状態に切り替えてから第2所定期間T2(例えば「1[秒]」)が経過するまで待機し、続くステップS111の処理に移行する。第2所定期間T2だけ待機することにより、静電容量計測用電極E11及びE12に貯まっていた電荷をGND電位に確実に逃がすとともに、静電容量計測用電極E21及びE22に貯まっていた電荷をGND電位に確実に逃がすことができる。なお、本実施の形態では第2所定期間T2として例えば「1[秒]」を採用したがこれに限らない。静電容量計測用電極E11及びE12あるいはE21及びE22に貯まっていた電荷をGND電位に確実に逃がすことのできる最短時間よりも長い時間に適宜変更可能である。
【0110】
ステップS111の処理に移行すると、制御部20は、切替スイッチ311a及び312aを切り替えて、静電容量計測用電極E11及びE12の接続状態を未接続状態に切り替えるとともに、切替スイッチ311b及び312bを切り替えて、静電容量計測用電極E21及びE22の接続状態を未接続状態に切り替える。
【0111】
未接続状態に切り替えると、制御部20は、続くステップS112の処理として、補正パラメータA及び補正パラメータBを使用して補正回路12a及び12bの周波数特性を制御し、心電信号生成部10は心電信号を生成する。
【0112】
心電信号を生成すると、制御部20は、続くステップS113の判断処理として、操作スイッチ32がプッシュ操作されることで計測終了指示が入力されたか否かを判断する。ここで、計測終了指示が入力されたと判断しなかった場合(ステップS113の判断処理で「No」)、制御部20は、先のステップS102の判断処理に移行する。一方、計測終了指示が入力されたと判断した場合(ステップS113の判断処理で「Yes」)、制御部20は、心電信号生成処理S1を終了する。
【0113】
上記ステップS111の処理を実行することで、静電容量計測用電極E11及びE12並びにE21及びE22を絶縁することができるようになり、コンデンサC1の静電容量の計測、並びに、コンデンサC2の静電容量の計測が心電信号の生成に影響を与えないようにすることができるようになる。
【0114】
以上説明した第1の実施の形態の心電波形計測システム1では、心電信号生成部10はセンサ回路11aと差動増幅器13との間に補正回路12aを有しているとともにセンサ回路11bと差動増幅器13との間に補正回路12bを有していることとした。これにより、センサ回路11a及び11bから出力された検出信号は、補正回路12a及び12bにより補正された上で差動増幅器13によって差分が取られることになる。したがって、検出信号とこの検出信号に重畳したノイズとを同時に増幅してしまう従来技術とは異なり、補正回路12a及び12bによる補正の前後でシグナルとノイズとの比であるSN比を高めることができ、ひいては心電信号の検出精度を向上することができるようになる。
【0115】
また、上記第1の実施の形態では、心電波形計測システム1は、シートの背もたれ面に平行であり、且つ、互いに平行となるように、また、センサ電極D1aよりもシートの背もたれ面側になるように、さらに、このセンサ電極D1aと対向するように、シートの内部に配置され、コンデンサC1を構成する一対の静電容量計測用電極E11及びE12、並びに、シートの背もたれ面に平行であり、且つ、互いに平行となるように、また、センサ電極D1bよりもシートの背もたれ面側になるように、さらに、このセンサ電極D1bと対向するように、シートの内部に配置され、コンデンサC2を構成する一対の静電容量計測用電極E21及びE22を備えており、制御部20は、センサ電極D1a及びD1bと被検者Hmとの間の静電容量の推定結果として、センサ電極と被検者との間の静電容量の算出結果に替えて、コンデンサC1及びC2の静電容量の計測結果を用いることとした。「コンデンサC1及びC2の静電容量≒センサ電極と被検者との間の静電容量」とみなすことが可能であることから、センサ電極と被検者との間の静電容量の推定精度を向上することができるようになり、推定精度が向上する結果、補正回路12a及び12bによる検出信号の補正精度が向上し、心電信号の検出精度を向上することができるようになる。また、コンデンサC1及びC2の静電容量を一括して計測することから、上記従来技術のように接触面積Arや誘電率ε等の値が正確にわからなくても、静電容量を正確に測定することができる。
【0116】
(第2の実施の形態)
以下、本発明に係る心電波形計測システムの第2の実施の形態について、図14〜図19を参照して説明する。なお、図14は、本実施の形態の心電波形計測システム2について、その全体構成を示すブロック図であり、図15は、心電波形計測システム2を構成する制御部20aの詳細を示すブロック図である。図14及び図15から分かるように、この第2の実施の形態の心電波形計測システム2は、第1の実施の形態の心電波形計測システム1とは異なり、切替スイッチ311a〜312bを有しておらず、これら切替スイッチ311a〜312bの切替制御を行なわない。なお、上記心電波形計測システム1と重複する説明については省略する。
【0117】
図14に示されるように、心電波形計測システム2は、第1の実施の形態と同様に、一組のセンサ電極D1a及びD1bと、基準電極D2と、一対の静電容量計測用電極E11a及びE12aによって構成されるコンデンサC1aと、一対の静電容量計測用電極E21a及びE22aによって構成されるコンデンサC2aと、心電信号生成部10aと、制御部20aと、操作スイッチ32と、報知部70とを有して構成されている。
【0118】
一対の静電容量計測用電極E11a及びE12a並びに制御部20aについて説明する。一対の静電容量計測用電極E11a及びE12aは、例えば導電性を有する布によってセンサ電極D1aの周囲を覆うこのセンサ電極D1aと同心の円環状の電極にて構成されており、シートの背もたれ面に平行であり、且つ、互いに平行となるように、また、センサ電極D1aよりもシートの背もたれ面側になるように、シートの内部に配置されている。これら一対の静電容量計測用電極E11a及びE12aはコンデンサC1を構成している。
【0119】
一対の静電容量計測用電極E11a及びE12aと同様に、一対の静電容量計測用電極E21a及びE22aも、導電性を有する布によって構成されており、シートの背もたれ面に平行であり、且つ、互い平行となるように、また、センサ電極D1bよりもシートの背もたれ面側になるように、シートの内部に配置されている。これら一対の静電容量計測用電極E21a及びE22aはコンデンサC2aを構成している。
【0120】
以下、図16及び図17を併せ参照してさらに詳述する。なお、図16は、シート60内部におけるセンサ電極D1a及び静電容量計測用電極E11a及びE12aの配置態様を側面方向から示す図であり、図17は、図16中のC−C線に沿った断面図である。
【0121】
図16に示されるように、また既述したように、センサ電極D1aは例えば銅などの金属材料からなる円形平板状の電極によって構成されており、一対の静電容量計測用電極E11a及びE12aは例えば導電性を有する布によって円環状に構成されている。これらセンサ電極D1a並びに一対の静電容量計測用電極E11a及びE12aは、それら中心線Ceが一致して同心となるように、センサ電極D1aが配置される平面と静電容量計測用電極E12aとの離間距離が例えば「1[mm]」となるように、一対の静電容量計測用電極E11a及びE12a間の離間距離が例えば「74[mm]」となるように、構成されている。また、センサ電極D1aはその直径が例えば「50[mm]」となるように構成されているとともに、一対の静電容量計測用電極11a及びE12aは、その直径が例えば「75[mm]」となるように構成されている。
【0122】
このようにして、一対の静電容量計測用電極E11a及びE12aはセンサ電極D1aを覆うように配置されることになる。なお、一対の静電容量計測用電極E11a及びE12aの緒元については、上記一例に限らず、上記心電信号帯域(例えば「0.2〜35[Hz]」)においてコンデンサC1aの静電容量を常時計測可能であれば、適宜変更可能である。
【0123】
ガード電極40aは、例えば導電性を有する布からなり、図17に示すように、センサ電極D1aと同心であってこのセンサ電極D1aの周囲を覆う筒状の電極によって構成されている。また、ガード電極40aは、その直径が例えば「60[mm]」となるように構成されており、センサ電極と同電位の電位でガードする。このように構成されることで、センサ電極D1aへの高インピーダンス入力に影響が与えられないようにすることができるようになる。
【0124】
絶縁体50aは、例えばフィルムなどの樹脂材料からなり、図17に示すように、静電容量計測用電極E12と同心、したがって、センサ電極D1aと同心の円形平板状に形成されている。また、絶縁体50aは、図16に示すように、センサ電極D1aと弾性体62との間に介在するように配置されている。
【0125】
なお、ガード電極40aは、図16に示すように、センサ電極D1aと同一平面上に位置する部分と弾性体62内部に位置する部分とに分割されて構成されている。これら両部分の間には、適宜の材料にて構成された導電性テープが介在しており、一体的に構成されている。
【0126】
制御部20aは、公知のCPUを有して構成される公知のコンピュータであり、操作スイッチ32に接続され、センサ電極D1a及びD1bとシートに着座する被検者との間の静電容量の推定結果に基づいて、補正回路12a及び12bによる検出信号の補正を制御する。なお、本実施の形態でも、制御部20aは、センサ電極D1a及びD1bとシートに着座する被検者との間の静電容量の推定結果として、上記コンデンサC1a及びC2aの計測結果を用いることとしている。また、制御部20aが特許請求の範囲に記載の補正制御部に相当する。
【0127】
制御部20aは、センサ電極D1aに対して設けられたコンデンサC1aの静電容量の計測結果、及び、センサ電極D1bに対して設けられたコンデンサC2aの計測結果に基づいて、被検者がシートに着座しているか否か、シートに着座している被検者が通常の姿勢にて着座しているか否か、さらに、シートに着座している被検者が安静に着座しているか否かを判断する。なお、制御部20aが特許請求の範囲に記載の被検者判断部に相当する。
【0128】
詳しくは、制御部20aは、コンデンサC1aの静電容量の計測結果が所定の未着座判定閾値C1th1に一致し、且つ、コンデンサC2aの静電容量の計測結果が所定の未着座判定閾値C2th1に一致すると判断した場合には、被検者Hmがシート60に着座していないと判断する。そして、制御部20aは、被検者Hmがシート60に着座していないと判断した場合には、例えばスピーカ等から構成された報知部70を制御してその旨すなわち判断結果を報知する。なお、未着座判定閾値C1th1は被検者Hmがシート60に着座していない状態にて予め測定されたコンデンサC1aの静電容量の計測結果であり、未着座判定閾値C2th1は被検者Hmがシート60に着座していない状態にて予め測定されたコンデンサC2aの静電容量の計測結果である。また、これら未着座判定閾値C1th1及びC2th1は上記記憶部24に記憶されている。さらに、本実施の形態では、報知部70としてスピーカを採用したが、スピーカに限らず、例えばLCD等の表示部を採用して判断結果を画像にて表示してもよい。
【0129】
また、制御部20aは、コンデンサC1aの静電容量の計測結果及びコンデンサC2aの静電容量の計測結果の差の大きさが所定の通常姿勢判定閾値Cth2を上回る場合には、シートに着座している被検者は通常の姿勢にて着座していないと判断する。そして、制御部20aは、シート60に着座している被検者Hmは通常の姿勢にて着座していないと判断した場合には、報知部70を制御して通常の姿勢にて着座するように報知する。なお、通常の姿勢とは、前かがみとなってシート60の背もたれにもたれていない姿勢や背後に反ってシート60の背もたれを押圧する姿勢ではなく、シートの背もたれにもたれた姿勢を意味する。また、所定の通常姿勢判定閾値Cth2とは、そのような通常の姿勢にて着座している状態にて予め測定されたコンデンサC1aの静電容量の測定結果とコンデンサC2aの静電容量の測定結果との差である。また、通常姿勢判定閾値Cth2は上記記憶部24に記憶されている。
【0130】
また、制御部20aは、コンデンサC1aの静電容量についての第3所定時間T3(例えば「3[秒]」)内の変化の大きさが所定の安静判定用閾値C1th3を上回る、または、コンデンサC2aの静電容量についての第3所定時間T3内の変化の大きさが所定の安静判定用閾値C2th3を上回る場合には、シート60に着座しているHmは安静に着座していないと判断する。そして、制御部20aは、シート60に着座しているHmは安静に着座していないと判断した場合には、報知部70を制御して安静に着座するよう報知する。なお、安静に着座するとは、揺れることなく着座する、すなわち振動することなく着座することを意味する。また、所定の安静判定用閾値C1th3とは、振動しながら着座している状態にて予め測定された、コンデンサC1の静電容量の第3所定時間T3内の変化の大きさの最小値であり、所定の安静判定用閾値C2th3とは、振動しながら着座している状態にて予め測定された、コンデンサC2の静電容量の第3所定時間T3内の変化の大きさの最小値である。また、安静判定用閾値C1th3及びC2th3は上記記憶部24に記憶されている。
【0131】
図18は、心電波形計測システム2によって実行される心電信号生成処理S2の処理手順を示すフローチャートであり、図19は、心電信号生成処理S2の中で実行されるステップS214の処理、すなわち被検者判断処理の処理手順を示すフローチャートである。これら図18及び図19を併せ参照して、当該心電波形計測システム2の動作について総括する。なお、心電波形計測システム2は、心電信号生成処理S2を繰り返し実行する。
【0132】
制御部20aは、ステップS102の判断処理に移行すると、前回の補正パラメータ算出処理ステップS105の実行時を基準として第1所定期間T1が経過したか否かを判断する。ここで、第1所定期間T1が経過したと判断しなかった場合(ステップS102の判断処理で「No」)、補正パラメータが更新されて間もないことを意味する。補正パラメータを更新する必要性が高くないことから、制御部20aは、被検者判断処理S214(後述)及び補正パラメータ算出処理に関連する一連の処理(S104a〜S109)を実行することなく、ステップS112の処理に移行する。一方、第1所定期間T1が経過したと判断した場合(ステップS102の判断処理で「Yes」)、補正パラメータが更新されてから長期間が経過したことを意味する。補正パラメータを更新する必要性が高いことから、制御部20aは、被検者判断処理S214及び補正パラメータ算出処理に関連する一連の処理(S104a〜S109)を実行する。
【0133】
ステップS104aの処理に移行すると、制御部20aは、静電容量計測用電極E11a及びE12aによって構成されるコンデンサC1aの静電容量と、静電容量計測用電極E21a及びE22aによって構成されるコンデンサC2aの静電容量とを計測し、図19に示す被検者判断処理S214に移行する。
【0134】
この被検者判断処理S214に移行すると、制御部20aは、まず、ステップS2141の判断処理として、コンデンサC1aの静電容量の計測結果が所定の未着座判定閾値C1th1に一致し、且つ、コンデンサC2aの静電容量の計測結果が所定の未着座判定閾値C2th1に一致するか否かを判断する。
【0135】
ここで、両者が一致すると判断した場合(ステップS2141の判断処理で「Yes」)、制御部20aは、被検者Hmがシート60に着座していないと判断する。そして、制御部20aは、続くステップS2142の処理として、報知部70を制御して被検者Hmがシート60に着座していない旨を報知し、続くステップS105の処理に移行する。
【0136】
一方、両者が一致すると判断しなかった場合(ステップS2141の判断処理で「No」)、制御部20aは、被検者Hmがシート60に着座していると判断する。そして、制御部20aは、続くステップS2143の判断処理として、コンデンサC1aの静電容量の計測結果及びコンデンサC2aの静電容量の計測結果の差の大きさが所定の通常姿勢判定閾値Cth2を上回るか否かを判断する。
【0137】
ここで、上記差の大きさが上回ると判断した場合(ステップS2143の判断処理で「Yes」)、制御部20aは、シート60に着座している被検者は通常の姿勢にて着座していないと判断する。そして、制御部20aは、続くステップS2144の処理として、報知部70を制御して通常の姿勢にて着座するように報知し、続くステップS105の処理に移行する。一方、上記差の大きさが上回ると判断しなかった場合(ステップS2143の判断処理で「No」)、制御部20aは、続くステップS2145の判断処理に移行する。
【0138】
ステップS2145の判断処理に移行すると、制御部20aは、コンデンサC1aの静電容量についての第3所定時間T3内の変化の大きさが所定の安静判定用閾値C1th3を上回るか否か、または、コンデンサC2aの静電容量についての第3所定時間T3内の変化の大きさが所定の安静判定用閾値C2th3を上回るか否かを判断する。
【0139】
ここで、否定判断をした場合(ステップS2145の判断処理で「No」)、被検者60はシート60に通常の姿勢にて安静に着座していることを意味する。そのため、制御部20aは、そのまま続くステップS105の処理に移行する。一方、肯定判断をした場合(ステップS2145の判断処理で「Yes」)、被検者60はシート60に安静に着座していないことを意味する。そのため、制御部20aは、続くステップS2146の処理として、報知部70を制御して安静に着座するよう報知し、続くステップS105の処理に移行する。
【0140】
以上説明した第2の実施の形態の心電波形計測システム2では、センサ電極D1aに対して設けられたコンデンサC1aの静電容量の計測結果、及び、センサ電極D1bに対して設けられたコンデンサC2aの計測結果に基づいて、被検者Hmがシート60に着座しているか否か、シート60に着座している被検者Hmが通常の姿勢にて着座しているか否か、さらに、シート60に着座している被検者Hmが安静に着座しているか否かを判断することとした。そして、制御部20aは、被検者Hmがシート60に着座していないと判断した場合には報知部70を制御してその旨を報知し、被検者Hmが通常の姿勢にてシート60に着座していないと判断された場合には、報知部70を制御して通常の姿勢にてシート60に着座するよう報知し、被検者Hmがシート60に安静に着座していないと判断された場合には、報知部70を制御してシート60に安静に着座するよう報知することとした。これにより、被検者Hmに対して通常の姿勢にて安静にシート60に着座することを促すことができ、ひいては、心電信号の検出精度をより向上することができるようになる。
【0141】
(他の実施の形態)
上記各実施の形態では、被検者を検査する検査部として、シートを採用していたが、これに限らない。他に例えば、被検者を検査する検査部としてベッドを採用することができる。ベッドを採用した場合、ベッドの表面のうち被検者が横たわる面が被検者接触面に相当することになる。
【符号の説明】
【0142】
1,2…心電波形計測システム、10…心電信号生成部、11a,11b…センサ回路、12a,12b…補正回路、13…差動増幅器、14…バンドパスフィルタ(BPF)、15…AD変換器、20…制御部(補正制御部)、20a…制御部(補正制御部、被検者判断部)、21…静電容量計測部、21a…C1計測部、21b…C2計測部、22…補正パラメータ算出部、22a…パラメータA算出部、22b…パラメータB算出部、23…スイッチ制御部、24…記憶部、31,311a〜312b…切替スイッチ、32…計測開始スイッチ、40、40a…ガード電極、50…絶縁体、51…導電性テープ、60…シート、61…シート素材、62…弾性体、70…報知部、D1a,D1b…センサ電極、D2…基準電極、E11,E12,E11a,E12a…一対の静電容量計測用電極、E21,E22,E21a,E22a…一対の静電容量計測電極、Hm…人体、Cl…衣服、C1,C2,C4〜C7…コンデンサ、R1,R2,R4〜R9…抵抗器、OP11a〜OP12b…オペアンプ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検者を検査する検査部の内部に配置された少なくとも一組のセンサ電極と、
前記センサ電極における電位を取得して検出信号として出力するセンサ回路と前記検出信号を補正して補正信号として出力する補正回路とを前記センサ電極毎に有するとともに、これら補正回路から出力された補正信号の差分をとって差分信号として出力する差動増幅器を有し、前記差分信号を用いて前記被検者の心電信号を生成する心電信号生成部と、
前記検査部の被検者接触面に平行であり、且つ、互いに平行となるように、前記センサ電極よりも前記被検者接触面側に配置された少なくとも一対のインピーダンス計測用電極と、
前記インピーダンス計測用電極を用いて計測された、前記センサ電極と前記検査部に接触する被検者との間のインピーダンスの計測結果に基づいて、前記補正回路による検出信号の補正を制御する補正制御部とを備える心電波形計測システムであって、
前記センサ電極は、平板状の電極によって構成され、前記検査部の被検者接触面に対し平行となるように配置されていることを特徴とする心電波形計測システム。
【請求項2】
請求項1に記載の心電波形計測システムにおいて、
前記補正制御部は、
前記少なくとも一対のインピーダンス計測用電極間のインピーダンスを計測するインピーダンス計測部を有し、
前記センサ電極と前記検査部に接触する被検者との間のインピーダンスの計測結果として、前記少なくとも一対のインピーダンス計測用電極のうち一対のインピーダンス計測用電極間のインピーダンスの計測結果を用いることを特徴とする心電波形計測システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の心電波形計測システムにおいて、
前記一対のインピーダンス計測用電極は、前記センサ電極と対向するように配置されていることを特徴とする心電波形計測システム。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の心電波形計測システムにおいて、
前記補正制御部は、
前記インピーダンス計測部による前記一対のインピーダンス計測用電極間のインピーダンスの計測と前記心電信号生成部による心電信号の生成とを切り替える切替スイッチと、
この切替スイッチによる切り替えを行なうスイッチ制御部とを有することを特徴とする心電波形計測システム。
【請求項5】
請求項4に記載の心電波形計測システムにおいて、
前記切替スイッチは、前記一対のインピーダンス計測用電極の接続状態を、前記インピーダンス計測部と接続された接続状態と、前記インピーダンス計測部と接続されていない未接続状態との間で切り替えるものであり、
前記スイッチ制御部が前記一対のインピーダンス計測用電極の接続状態を前記インピーダンス計測部との接続状態に切り替えた場合には、前記インピーダンス計測部は前記一対のインピーダンス計測用電極間のインピーダンスを検出し、前記スイッチ制御部が前記一対のインピーダンス計測用電極の接続状態を前記インピーダンス計測部と接続されていない未接続状態に切り替えた場合には、前記心電信号生成部は心電信号を生成することを特徴とする心電波形計測システム。
【請求項6】
請求項4に記載の心電波形計測システムにおいて、
前記切替スイッチは、前記一対のインピーダンス計測用電極の接続状態を、前記インピーダンス計測部と接続された接続状態、GND電位と接続された接続状態、並びに、これらインピーダンス計測部及びGND電位のいずれとも接続されていない未接続状態の中で切り替えるものであり、
前記スイッチ制御部が前記一対のインピーダンス計測用電極の接続状態を前記インピーダンス計測部との接続状態に切り替えた場合には、前記インピーダンス計測部は前記一対のインピーダンス計測用電極間のインピーダンスを検出し、前記スイッチ制御部が前記一対のインピーダンス計測用電極の接続状態を前記GND電位との接続状態に切り替えた後、さらに前記インピーダンス計測部及びGND電位のいずれとも接続されていない未接続状態に切り替えた場合には、前記心電信号生成部は心電信号を生成することを特徴とする心電波形計測システム。
【請求項7】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の心電波形計測システムにおいて、
前記少なくとも一対のインピーダンス計測用電極は、前記センサ電極の周囲を覆うこのセンサ電極と同心の円環状の電極もしくは円環の一部にて構成されていることを特徴とする心電波形計測システム。
【請求項8】
請求項7に記載の心電波形計測システムにおいて、
前記センサ電極の周囲を覆うとともに、前記センサ電極を前記インピーダンス計測用電極からシールドする位置に配置されたガード電極を備えることを特徴とする心電波形計測システム。
【請求項9】
請求項8に記載の心電波形計測システムにおいて、
前記ガード電極は、筒状であることを特徴とする心電波形計測システム。
【請求項10】
請求項8または9に記載の心電波形計測システムにおいて、
前記ガード電極は、前記センサ電極と同心であることを特徴とする心電波形計測システム。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の心電波形計測システムにおいて、
前記検査部は被検者が着座するシートであり、前記被検者接触面はシートの背もたれ面であり、
前記一組のセンサ電極毎に設けられた前記一対のインピーダンス計測用電極間のインピーダンスの計測結果に基づいて、被検者が前記シートに着座しているか否かを判断する被検者判断部と、
前記被検者判断部による判断結果を報知する報知部とをさらに備えることを特徴とする心電波形計測システム。
【請求項12】
請求項11に記載の心電波形計測システムにおいて、
前記被検者判断部は、前記一組のセンサ電極毎に設けられた前記一対のインピーダンス計測用電極間のインピーダンスが双方ともに所定の未着座判定閾値と一致しない場合には、被検者が前記シートに着座していると判断し、
前記報知部は、前記被検者判断部によって被検者が前記シートに着座していないと判断された場合には、被検者がシートに着座していない旨を報知することを特徴とする心電波形計測システム。
【請求項13】
請求項11または12に記載の心電波形計測システムにおいて、
前記被検者判断部は、前記一組のセンサ電極毎に設けられた前記一対のインピーダンス計測用電極間のインピーダンスの計測結果に基づいて、前記シートに着座している被検者が通常の姿勢にて着座しているか否かを判断し、
前記報知部は、前記被検者判断部によって被検者が通常の姿勢にて前記シートに着座していないと判断された場合には、通常の姿勢にて前記シートに着座するよう報知することを特徴とする心電波形計測システム。
【請求項14】
請求項13に記載の心電波形計測システムにおいて、
前記被検者判断部は、前記一組のセンサ電極毎に設けられた前記一対のインピーダンス計測用電極間のインピーダンスの差の大きさが所定の通常姿勢判定閾値を上回る場合には、前記シートに着座している被検者は通常の姿勢にて着座していないと判断することを特徴とする心電波形計測システム。
【請求項15】
請求項11〜14のいずれか一項に記載の心電波形計測システムにおいて、
前記被検者判断部は、前記一組のセンサ電極毎に設けられた前記一対のインピーダンス計測用電極間のインピーダンスの計測結果に基づいて、前記シートに着座している被検者が安静に着座しているか否かを判断し、
前記報知部は、前記被検者判断部によって被検者が前記シートに安静に着座していないと判断された場合には、前記シートに安静に着座するよう報知することを特徴とする心電波形計測システム。
【請求項16】
請求項15に記載の心電波形計測システムにおいて、
前記被検者判断部は、前記一組のセンサ電極のうち一方のセンサ電極に設けられた前記一対のインピーダンス計測用電極間のインピーダンスの所定時間毎の変化の大きさと、前記一組のセンサ電極のうち他方のセンサ電極に設けられた前記一対のインピーダンス計測用電極間のインピーダンスの所定時間毎の変化の大きさとの少なくともいずれか一方が所定の安静判定用閾値を上回る場合には、前記シートに着座している被検者は安静に着座していないと判断することを特徴とする心電波形計測システム。
【請求項17】
請求項1〜16のいずれか一項に記載の心電波形計測システムにおいて、
前記一対のインピーダンス計測用電極は、導電性を有する布にて構成され、前記検査部の内部に配置されていることを特徴とする心電波形計測システム。
【請求項18】
請求項1〜17のいずれか一項に記載の心電波形計測システムにおいて、
前記検査部は、当該検査部の表面を覆う検査部素材と、前記検査部の内部の弾性体とを有して構成されており、
前記弾性体は、前記検査部素材のうち被検者が接触する部分と前記センサ電極との間に介在していることを特徴とする心電波形計測システム。
【請求項1】
被検者を検査する検査部の内部に配置された少なくとも一組のセンサ電極と、
前記センサ電極における電位を取得して検出信号として出力するセンサ回路と前記検出信号を補正して補正信号として出力する補正回路とを前記センサ電極毎に有するとともに、これら補正回路から出力された補正信号の差分をとって差分信号として出力する差動増幅器を有し、前記差分信号を用いて前記被検者の心電信号を生成する心電信号生成部と、
前記検査部の被検者接触面に平行であり、且つ、互いに平行となるように、前記センサ電極よりも前記被検者接触面側に配置された少なくとも一対のインピーダンス計測用電極と、
前記インピーダンス計測用電極を用いて計測された、前記センサ電極と前記検査部に接触する被検者との間のインピーダンスの計測結果に基づいて、前記補正回路による検出信号の補正を制御する補正制御部とを備える心電波形計測システムであって、
前記センサ電極は、平板状の電極によって構成され、前記検査部の被検者接触面に対し平行となるように配置されていることを特徴とする心電波形計測システム。
【請求項2】
請求項1に記載の心電波形計測システムにおいて、
前記補正制御部は、
前記少なくとも一対のインピーダンス計測用電極間のインピーダンスを計測するインピーダンス計測部を有し、
前記センサ電極と前記検査部に接触する被検者との間のインピーダンスの計測結果として、前記少なくとも一対のインピーダンス計測用電極のうち一対のインピーダンス計測用電極間のインピーダンスの計測結果を用いることを特徴とする心電波形計測システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の心電波形計測システムにおいて、
前記一対のインピーダンス計測用電極は、前記センサ電極と対向するように配置されていることを特徴とする心電波形計測システム。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の心電波形計測システムにおいて、
前記補正制御部は、
前記インピーダンス計測部による前記一対のインピーダンス計測用電極間のインピーダンスの計測と前記心電信号生成部による心電信号の生成とを切り替える切替スイッチと、
この切替スイッチによる切り替えを行なうスイッチ制御部とを有することを特徴とする心電波形計測システム。
【請求項5】
請求項4に記載の心電波形計測システムにおいて、
前記切替スイッチは、前記一対のインピーダンス計測用電極の接続状態を、前記インピーダンス計測部と接続された接続状態と、前記インピーダンス計測部と接続されていない未接続状態との間で切り替えるものであり、
前記スイッチ制御部が前記一対のインピーダンス計測用電極の接続状態を前記インピーダンス計測部との接続状態に切り替えた場合には、前記インピーダンス計測部は前記一対のインピーダンス計測用電極間のインピーダンスを検出し、前記スイッチ制御部が前記一対のインピーダンス計測用電極の接続状態を前記インピーダンス計測部と接続されていない未接続状態に切り替えた場合には、前記心電信号生成部は心電信号を生成することを特徴とする心電波形計測システム。
【請求項6】
請求項4に記載の心電波形計測システムにおいて、
前記切替スイッチは、前記一対のインピーダンス計測用電極の接続状態を、前記インピーダンス計測部と接続された接続状態、GND電位と接続された接続状態、並びに、これらインピーダンス計測部及びGND電位のいずれとも接続されていない未接続状態の中で切り替えるものであり、
前記スイッチ制御部が前記一対のインピーダンス計測用電極の接続状態を前記インピーダンス計測部との接続状態に切り替えた場合には、前記インピーダンス計測部は前記一対のインピーダンス計測用電極間のインピーダンスを検出し、前記スイッチ制御部が前記一対のインピーダンス計測用電極の接続状態を前記GND電位との接続状態に切り替えた後、さらに前記インピーダンス計測部及びGND電位のいずれとも接続されていない未接続状態に切り替えた場合には、前記心電信号生成部は心電信号を生成することを特徴とする心電波形計測システム。
【請求項7】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の心電波形計測システムにおいて、
前記少なくとも一対のインピーダンス計測用電極は、前記センサ電極の周囲を覆うこのセンサ電極と同心の円環状の電極もしくは円環の一部にて構成されていることを特徴とする心電波形計測システム。
【請求項8】
請求項7に記載の心電波形計測システムにおいて、
前記センサ電極の周囲を覆うとともに、前記センサ電極を前記インピーダンス計測用電極からシールドする位置に配置されたガード電極を備えることを特徴とする心電波形計測システム。
【請求項9】
請求項8に記載の心電波形計測システムにおいて、
前記ガード電極は、筒状であることを特徴とする心電波形計測システム。
【請求項10】
請求項8または9に記載の心電波形計測システムにおいて、
前記ガード電極は、前記センサ電極と同心であることを特徴とする心電波形計測システム。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の心電波形計測システムにおいて、
前記検査部は被検者が着座するシートであり、前記被検者接触面はシートの背もたれ面であり、
前記一組のセンサ電極毎に設けられた前記一対のインピーダンス計測用電極間のインピーダンスの計測結果に基づいて、被検者が前記シートに着座しているか否かを判断する被検者判断部と、
前記被検者判断部による判断結果を報知する報知部とをさらに備えることを特徴とする心電波形計測システム。
【請求項12】
請求項11に記載の心電波形計測システムにおいて、
前記被検者判断部は、前記一組のセンサ電極毎に設けられた前記一対のインピーダンス計測用電極間のインピーダンスが双方ともに所定の未着座判定閾値と一致しない場合には、被検者が前記シートに着座していると判断し、
前記報知部は、前記被検者判断部によって被検者が前記シートに着座していないと判断された場合には、被検者がシートに着座していない旨を報知することを特徴とする心電波形計測システム。
【請求項13】
請求項11または12に記載の心電波形計測システムにおいて、
前記被検者判断部は、前記一組のセンサ電極毎に設けられた前記一対のインピーダンス計測用電極間のインピーダンスの計測結果に基づいて、前記シートに着座している被検者が通常の姿勢にて着座しているか否かを判断し、
前記報知部は、前記被検者判断部によって被検者が通常の姿勢にて前記シートに着座していないと判断された場合には、通常の姿勢にて前記シートに着座するよう報知することを特徴とする心電波形計測システム。
【請求項14】
請求項13に記載の心電波形計測システムにおいて、
前記被検者判断部は、前記一組のセンサ電極毎に設けられた前記一対のインピーダンス計測用電極間のインピーダンスの差の大きさが所定の通常姿勢判定閾値を上回る場合には、前記シートに着座している被検者は通常の姿勢にて着座していないと判断することを特徴とする心電波形計測システム。
【請求項15】
請求項11〜14のいずれか一項に記載の心電波形計測システムにおいて、
前記被検者判断部は、前記一組のセンサ電極毎に設けられた前記一対のインピーダンス計測用電極間のインピーダンスの計測結果に基づいて、前記シートに着座している被検者が安静に着座しているか否かを判断し、
前記報知部は、前記被検者判断部によって被検者が前記シートに安静に着座していないと判断された場合には、前記シートに安静に着座するよう報知することを特徴とする心電波形計測システム。
【請求項16】
請求項15に記載の心電波形計測システムにおいて、
前記被検者判断部は、前記一組のセンサ電極のうち一方のセンサ電極に設けられた前記一対のインピーダンス計測用電極間のインピーダンスの所定時間毎の変化の大きさと、前記一組のセンサ電極のうち他方のセンサ電極に設けられた前記一対のインピーダンス計測用電極間のインピーダンスの所定時間毎の変化の大きさとの少なくともいずれか一方が所定の安静判定用閾値を上回る場合には、前記シートに着座している被検者は安静に着座していないと判断することを特徴とする心電波形計測システム。
【請求項17】
請求項1〜16のいずれか一項に記載の心電波形計測システムにおいて、
前記一対のインピーダンス計測用電極は、導電性を有する布にて構成され、前記検査部の内部に配置されていることを特徴とする心電波形計測システム。
【請求項18】
請求項1〜17のいずれか一項に記載の心電波形計測システムにおいて、
前記検査部は、当該検査部の表面を覆う検査部素材と、前記検査部の内部の弾性体とを有して構成されており、
前記弾性体は、前記検査部素材のうち被検者が接触する部分と前記センサ電極との間に介在していることを特徴とする心電波形計測システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2012−161490(P2012−161490A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−24337(P2011−24337)
【出願日】平成23年2月7日(2011.2.7)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月7日(2011.2.7)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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