説明

応答標的の同定及びフラビウイルス感染反応の治療に用いる組成物及び方法

デングウイルスや日本脳炎ウイルスなどのフラビウイルスに感染したとき血漿タンパクの漏出及びその他悪影響を誘発する細胞受容体が同定される。ここで開示する融合タンパク質を使用して、フラビウイルスなどの病原体がグリカン結合を介して結合する受容体が決定される。受容体が決定されたら、特定の受容体に結合することの作用が解明可能となり、特定の症状を引き起こす受容体の標的化は、受容体への病原体の結合を阻害する物質によって標的化することができる。これに基づき、デングウイルスと日本脳炎ウイルスの場合、病原体がDLVR/CLECA受容体に結合すると、TNF−αが放出される。DLVR/CLECA受容体をモノクロナール抗体で阻害することによって、ウイルスの排除を担うサイトカインの分泌に影響を与えることなくTNF−αの分泌を減少し、感染マウスの生存率をゼロから約50%に高めることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2008年3月27日出願の米国実用新案登録出願第12/079576号及び2005年8月31日出願の米国仮特許出願番号第60/713463号のパリ条約による優先権を主張する2006年8月31日出願の米国特許出願第11/469270号のパリ条約による優先権を主張し、それら特許出願の全開示が参照として組み込まれる。
【0002】
本研究は、台湾国家科学委員会助成金番号94F00−8−5、NSC 95−2320−B−010−010、NSC 95−3112−B−010−017からの助成金によって支援された。また本研究は台湾中央研究院助成金番号94M002−1、および国立陽明大学助成金番号95A−CT8G02からの助成金によっても支援された。
【0003】
本発明は応答標的の同定及びフラビウイルス感染反応の治療に用いる組成物及び方法に関する。
【背景技術】
【0004】
本明細書におけるあらゆる参考文献の引用は、このような参考文献が任意の国の一般知識または先行技術の一部を形成するという容認または暗示を構成せず、そのように認識されるべきでない。ここに引用されるあらゆる参考文献は全開示が参照として組み込まれる。
【0005】
免疫系は、宿主生物が非自己抗原から自身を区別し、かつ侵襲性病原体を認識してそれらを根絶することを可能にする。適応免疫系はT細胞とB細胞に抗原を提示し、それによって免疫系を活性化させるために、主要組織適合性複合体(MHC、major histocompatibility complex)のクラスI及びクラスII抗原、T細胞受容体、B細胞受容体などの多形分子に大きく依存している。自然免疫系がこれらの多様な抗原を認識するメカニズムは、Janeway(Janeway、1989、Cold Spring Harb Symp Quant Biol 54 Pt 1、1〜13)によって示された「パターン認識受容体(PPR)」の概念が生まれるまで解明されていなかった。この仮説は後に、TOLL様受容体(Aderem and Ulevitch、2000 Nature 406、782〜7;Akira and Takeda、2004、Nat Rev Immunol 4、499〜511;Athman and Philpott、2004、Curr Opin Microbiol 7、25〜32)、レクチン受容体(Cambi and Figdor、2003、Curr Opin Cell Biol 15、539〜46)、免疫グロブリン様(Ig様)受容体(Daws et al.、2003、J Immunol 171、594〜9)、NODタンパク質(Athman and Philpott、2004、Curr Opin Microbiol 7、25〜32)、その他(Liu et al.、2001、J Biol Chem 276、34686〜94;McDonald et al.、2005、J Biol Chem 280、20177〜80)によって認識される病原体特異的分子パターン(PAMP)の識別によって正しいことが証明された。
【0006】
TOLL様受容体(Akira and Takeda、2004、Nat Rev Immunol 4、499〜511)によって認識され、しっかりと特徴付けられたPAMPに加えて、最近の研究では、宿主の免疫系は特定の糖鎖抗原を通して侵襲性病原体を認識できることが示されている。例えば、マンノース受容体は病原体の表面に発現された高マンノース型糖鎖を認識でき(Stahl and Ezekowitz、1998、Curr Opin Immunol 10、50〜5)、一方でDectin−1受容体は菌の細胞壁の多糖類の主要なバックボーンであるβ−グルカンに特異的に結合することができる(Brown and Gordon、2001、Nature 413、36〜7;Herre et al.、2004、Mol Immunol 40、869〜76)。これらの結果は、病原体に関連付けられる糖鎖構造が、免疫細胞の自然免疫受容体によって認識される標的の1つであることを暗示している。
【0007】
茸の一種であるマンネンタケとコルディセプスは中国で医療用途に服用される最も一般的な植物薬である。マンネンタケ(霊芝、レイシとも呼ばれる)から抽出される多糖は抗腫瘍剤及び免疫機能調節剤として伝統的な漢方薬で使用されている(Lien、1990、Prog Drug Res 34、395〜420;Wang et al.、2002、Bioorg Med Chem 10、1057〜62;Shiao、2003、Chem Rec 3、172〜80)。コルディセプス(冬虫夏草、虫草菌)から抽出されたものは、アポトーシスホメオスタシスを変化させ、呼吸器、腎臓、心血管機能(Buenz et al.、2005、J Ethnopharmacol 96、19〜29;Zhu et al.、1998、J Altern Complement Med 4、289〜303;Zhu et al.、1998、J Altern Complement Med 4、429〜57)、及び体全体のインスリン感性を向上することが示されている(Balon et al.、2002、J Altern Complement Med 8、315〜23)。しかし、抽出物の多糖組成物は、多糖が異なるソースから、異なる菌株から、及び異なる成長条件下で抽出されたときさまざまである。
【0008】
高速液体クロマトグラフィ(HPLC、high-performance liquid chromatography)及びプロトン核磁気共鳴に依存した分析法を用いて霊芝と冬虫夏草から分離した多糖の組成物の調査が行われている(He and Seleen、2004、Int. J. Med. Mushrooms 6、253)。しかしながら、HPLCクロマトグラムはガノデリン酸AとC(霊芝の2つの主要なトリテルペン)またはアデノシンの比較に基づいている。質量に基づいて抽出物が多糖の活性物質を含んでいるかを知ることは未だ困難である。
【0009】
デングウイルスや日本脳炎ウイルスなどのフラビウイルスに感染したとき血漿タンパクの漏出及びその他悪影響を誘発する細胞受容体が同定される。ここで開示する融合タンパク質を使用して、フラビウイルスなどの病原体がグリカン結合を介して結合する受容体が決定される。受容体が決定されたら、特定の受容体に結合することの作用が解明可能となり、特定の症状を引き起こす受容体の標的化は、受容体への病原体の結合を阻害する物質によって標的化することができる。これに基づき、デングウイルスと日本脳炎ウイルスの場合、病原体がDLVR/CLECA受容体に結合すると、TNF−αが放出される。DLVR/CLECA受容体をモノクロナール抗体で阻害することによって、ウイルスの排除を担うサイトカインの分泌に影響を与えることなくTNF−αの分泌を減少し、感染マウスの生存率をゼロから約50%に高めることができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Janeway、1989、Cold Spring Harb Symp Quant Biol 54 Pt 1、1〜13
【非特許文献2】Aderem and Ulevitch、2000 Nature 406、782〜7
【非特許文献3】Akira and Takeda、2004、Nat Rev Immunol 4、499〜511
【非特許文献4】Athman and Philpott、2004、Curr Opin Microbiol 7、25〜32
【非特許文献5】Cambi and Figdor、2003、Curr Opin Cell Biol 15、539〜46
【非特許文献6】Daws et al.、2003、J Immunol 171、594〜9
【非特許文献7】Athman and Philpott、2004、Curr Opin Microbiol 7、25〜32
【非特許文献8】Liu et al.、2001、J Biol Chem 276、34686〜94
【非特許文献9】McDonald et al.、2005、J Biol Chem 280、20177〜80
【非特許文献10】Stahl and Ezekowitz、1998、Curr Opin Immunol 10、50〜5
【非特許文献11】Brown and Gordon、2001、Nature 413、36〜7
【非特許文献12】Herre et al.、2004、Mol Immunol 40、869〜76
【非特許文献13】Lien、1990、Prog Drug Res 34、395〜420
【非特許文献14】Wang et al.、2002、Bioorg Med Chem 10、1057〜62;
【非特許文献15】Shiao、2003、Chem Rec 3、172〜80
【非特許文献16】Buenz et al.、2005、J Ethnopharmacol 96、19〜29
【非特許文献17】Zhu et al.、1998、J Altern Complement Med 4、289〜303
【非特許文献18】Zhu et al.、1998、J Altern Complement Med 4、429〜57
【非特許文献19】Balon et al.、2002、J Altern Complement Med 8、315〜23
【非特許文献20】He and Seleen、2004、Int. J. Med. Mushrooms 6、253
【発明の概要】
【0011】
本発明の特徴に基づき、本発明は、受容体の結合領域と、基質に付着させるための領域を含む融合タンパク質の補体を取得する工程、病原体が融合タンパク質の補体の少なくとも1つの融合タンパク質の結合領域に結合するかを決定するため前記融合タンパク質と病原体を接触させる工程、前記病原体が前記融合タンパク質に結合されているかを検出する工程を含む方法を提供する。前記融合タンパク質の補体は、少なくとも1つの受容体の複数の異なる結合領域を表す。
【0012】
本発明の特徴に基づき、本発明は、病原体に感受性のある細胞を取得する工程、少なくとも1つの細胞受容体遺伝子をノックダウンする工程、前記細胞と前記病原体を接触させる工程、前記細胞のサイトカイン分泌レベルを測定する工程を含むことを特徴とする方法を開示する。
【0013】
本発明の特徴に基づき、本発明は、病原体によって示されるリガンドに結合する少なくとも1つの細胞受容体を同定する工程、前記病原体に感染した動物に対し、前記受容体への前記リガンドの結合を阻害して前記病原体の作用を修飾するため物質を投与する工程を含むことを特徴とする方法を開示する。
【0014】
本発明の特徴に基づき、本発明は、病原体の動物における作用を修飾するため動物に感染している病原体の作用を修飾する物質の有効量を提供する工程を含ことを特徴とする方法を開示する。前記物質は、動物のネイティブ細胞の少なくとも1つの細胞受容体に誘導されて、前記受容体が病原体によって示されるリガンドに結合する。
【0015】
本発明の特徴に基づき、本発明は、デングウイルスに感染した動物に有効量の抗DLVR/CLECA抗体を提供する工程を含み、そのうち、前記抗DLVR/CLECA抗体が、デングウイルス粒子によって示されるリガンドのDLVR/CLECA受容体への結合を阻止し、それによりTNF−αの分泌が阻害されることを特徴とする方法を開示する。
【0016】
本発明の特徴に基づき、本発明は、日本脳炎ウイルスに感染した動物に有効量の抗DLVR/CLECA抗体を提供する工程を含み、そのうち、前記抗DLVR/CLECA抗体が、日本脳炎ウイルス粒子によって示されるリガンドのDLVR/CLECA受容体への結合を阻止し、それによりTNF−αの分泌が阻害されることを特徴とする方法を開示する。
【0017】
本発明の特徴に基づき、本発明は、インターフェロンαの分泌に影響することなく、少なくとも1つの前炎症性サイトカインの分泌を少なくとも部分的に阻害する有効量の物質をデングウイルスに感染した動物に提供する工程を含むことを特徴とする方法を開示する。
【0018】
本発明の特徴に基づき、本発明は、デングウイルス感染に感受性のあるマウスと、マウス体内のDLVR/CLECA受容体をノックダウンするsh−RNA粒子を含むことを特徴とするマウスを開示する。
【0019】
本発明の特徴に基づき、本発明は、動物の病原体感染の作用を修飾するため、動物の少なくとも1つの細胞受容体に対する有効量の抗体を含む医薬製剤を含む組成物を開示する。前記修飾は少なくとも動物細胞の前炎症性サイトカイン分泌の阻害を含み、かつウイルスの排除に作用するサイトカインの分泌に影響しない。
【0020】
本発明の特徴に基づき、本発明は、動物のデングウイルス感染の作用を修飾するため、デングウイルスに感染した動物のDLVR/CLECA受容体に対する有効量の抗体を含む医薬製剤を含む組成物を開示する。前記修飾が少なくとも動物細胞の前炎症性サイトカイン分泌の阻害を含み、かつウイルスの排除に作用するサイトカインの分泌に影響しない。
【0021】
本特許もしくは出願書類は、少なくとも1つのカラーで作成された図面を含んでいる。カラー図面を含めた本特許もしくは特許出願公報のコピーは、請求及び必要手数料の支払いにより、特許庁から提供される。本発明の前述の特徴及び目的は、以下の説明を添付図面と合わせて参照するとより完全に理解できる。図面中では、同一の符号は同一の部品を参照している。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1A】RT−PCRで増幅され、さらに0.8%アガロース上で分画し、エチジウムブロミド染色によって可視化された自然免疫受容体のDNA断片を示す。
【図1B】発現した組み換え受容体を示す。12%SDS−PAGEゲル上での電気泳動後のFc融合タンパク質である。
【図2A】ストレプトアビジン結合西洋ワサビ由来ペルオキシダーゼ(HRP)と接触した膜固定化したビオチン化GLPS F3のドットブロットを示す。
【図2B】Dectin−1.Fc融合タンパク質と接触し、ヤギHRP標識抗IgG1抗体でインキュベーションした、膜固定化非ビオチン化GLPS F3のドットブロットを示す。
【図2C】図2Bのブロットのドット密度分析を示す。
【図2D】Dectin−1.Fcから膜固定化したGLPS F3の結合上の競合(competitor)βグルカンのドット密度に対する影響を示す。
【図2E】Dectin−1.Fc融合タンパク質と接触し、異なる量の競合多糖(βグルカン、D−グルコース、D−ガラクトース)が存在する状況においてヤギHRP標識抗IgG1抗体でインキュベーションした、固定化したGLPS F3のドットブロットを示す。
【図3】それぞれがリストに記載のIgG1 Fcにカップリングされた自然免疫受容体の細胞外ドメインを含む27の異なる融合タンパク質と接触された、膜固定化したGLPS F3及びGLPS F3Cのドットブロットの半定量分析を示す。
【図4A】図3のリストに記載された27の融合タンパク質でプローブした、膜固定化したGLPS F3及びGLPS F3Cのドットブロットを示す。
【図4B】Dectin−1.Fc、DC−SIGNR.Fc、KCR.Fc、TLT−2.Fcの膜固定化したGLPS F3への結合におけるEDTAの影響を示す。
【図4C】Dectin−1.Fc、DC−SIGNR.Fc、KCR.Fc、TLT−2.Fc融合タンパク質でプローブした、膜固定化したβグルカンのドットブロットを示す。
【図5A】Dectin−1.Fc、DC−SIGNR.Fc、KCR.Fc、TLT−2.Fc融合タンパク質でプローブした多糖試料のドットブロットを示す。
【図5B】試料番号の識別情報と、半定量形式での図5Aのドット密度を示す。
【図6A】黄色反応性生物を検出するため、ペルオキシダーゼ標識アビジンアッセイを用い、OD450nmで読み取った、マイクロタイタープレート上に塗布されたビオチン化GLPS−F3の量を示す。
【図6B】マイクロタイタープレート上に固定化されたGLPS−F3に対する多様な受容体.Fc融合タンパク質の親和性をグラフ形式で示す。各受容体.Fc融合タンパク質の絶対結合(absolute binding)を左Y軸に(OD450nm読み取りとして)表し、右Y軸にDectin−1.Fcの結合と比較した相対結合を表す。
【図7】多糖マンナンとβグルカン、及び単糖D−マンノース(Man)、D−グルコース(Glc)、N−アセチル−グルコサミン(GlcNAc)、D−ガラクトース(Gal)、N−アセチル−ガラクトサミン(GalNAc)、L−フコース(Fuc)、シアル酸の競合アッセイにおけるさまざまな受容体.Fc融合タンパク質のGLPS−F3への結合率を示す。
【図8A】ヒトIgG陰性対照と比較した受容体.Fc融合タンパク質のデングウイルスへの結合を示すグラフである。
【図8B】デングウイルスEタンパク質に対する抗体でプローブした、3つの受容体.Fc融合タンパク質及びヒトIgG陰性対照でのデングウイルスの免疫複合体のウェスタンブロットを示す。
【図8C】EDTAがデングウイルスのDC−SIGN.Fc融合タンパク質への結合を阻害するが、 DVLR/CLECA.Fc融合タンパク質への結合は阻害しないことを示すグラフである。
【図8D】DVLR/CLECA.Fc融合タンパク質のPNGaseF、ジチオスレイトール(DTT)、熱(Heat)、紫外線照射(UV)で処理されたデングウイルスへの結合、及び未処理デングウイルス(Non)への結合を示す。
【図9A】抗 DVLR/CLECA抗体を用いたフローサイトメトリーによる多様な免疫細胞タイプにおける DVLR/CLECAの発現を示す。 DVLR/CLECAの発現は、 DVLR/CLECAのプロファイル(点線跡)が抗体アイソタイプコントロール(網掛け部分)に合致しないところに示される。
【図9B】抗DC−SIGN抗体を用いたフローサイトメトリーによる多様な免疫細胞タイプにおけるDC−SIGNの発現を示す。DC−SIGNの発現は、DC−SIGNのプロファイル(点線跡)が抗体アイソタイプコントロール(網掛け部分)に合致しないところに示される。
【図10A】対応する抗体アイソタイプコントロール(網掛け部分)と比較し、生(live)またはUV照射(UV−DV)デングウイルスと接触したCD14+マクロファージにおける抗NS3抗体を用いたNS3タンパク質発現のフローサイトメトリー分析を示す。
【図10B】異なる感染多重度(MOI)でデングウイルスに感染した、またはUV照射デングウイルスに感染した、CD14+マクロファージの細胞外デングウイルスの力価を時間経過と共に示すグラフである。
【図10C】異なるMOIでデングウイルスに感染したCD14+マクロファージにおけるトータルDAP12及びリン酸化DAP12を示す免疫ブロットを示す。
【図10D】MOI=5での生(live)デングウイルスまたはUV照射デングウイルスでの感染後の異なる時間における、デングウイルスに感染したCD14+マクロファージにおけるトータルDAP12及びリン酸化DAP12を示す免疫ブロットを示す。
【図11】デングウイルス感染前にpLL3.7ベクター(コントロール)または DVLR/CLECA−shRNAでエレクトロポレーションされたCD14+マクロファージにおけるトータルDAP12及びリン酸化DAP12を示す免疫ブロットを示す。
【図12A】特定のMOIの生(live)またはUV照射デングウイルスにCD14+マクロファージが感染した6時間後のTNF−α の分泌を示す。
【図12B】特定のMOIの生(live)またはUV照射デングウイルスにCD14+マクロファージが感染した12時間後のTNF−α の分泌を示す。
【図12C】CD14+マクロファージの感染後のTNF−αの分泌の時間変化測定値を示す。
【図13A】DC−SIGNsh−RNAまたは DVLR/CLECAsh−RNA、あるいはベクターコントロール(pWTSI及びpLL3.7)で形質転換されたCD14+マクロファージにおける、ウェスタンブロットによるDC−SIGN及び DVLR/CLECAの発現を示す。
【図13B】デングウイルス感染前に、DC−SIGN−shRNA、 DVLR/CLECA−shRNA、またはpLL3.7ベクターコントロールでエレクトロポレーションされたCD14+マクロファージにおける、(抗NS3抗体を用いた)NS3発現のフローサイトメトリー分析を示す。網掛け部分はNS3抗体のアイソタイプコントロールである。
【図13C】t=0でデングウイルスに感染する前のDC−SIGN−shRNAまたは DVLR/CLECA−shRNA、ベクターコントロールでエレクトロポレーションされたCD14+マクロファージの上清中のウイルス力価の時間経過解析を示す。
【図14A】t=0でデングウイルスに感染する前のDC−SIGN−shRNAまたは DVLR/CLECA−shRNA、ベクターコントロールでエレクトロポレーションされたCD14+マクロファージの多様なサイトカインの分泌の時間経過解析を示す。
【図14B】同一条件下でのサイトカインIFN−αの時間経過解析を示す。
【図15】デングウイルスに感染し、特定のモノクロナール抗体で DVLR/CLECAに対して特定の濃度で処理されたCD14+マクロファージによって培養上清に分泌されたTNF−αのELISA測定値を示す。
【図16a】多様な受容体.Fc融合タンパク質のデングウイルスへの結合を示すグラフである。
【図16b】デングウイルスEタンパク質に対する抗体でプローブした、3つの受容体.Fc融合タンパク質とヒトIgG 陰性対照でのデングウイルスの免疫複合体のウェスタンブロットを示す。
【図16c】EDTAがデングウイルスのDC−SIGN.Fc融合タンパク質への結合を阻害するが、DLVR/CLECA融合タンパク質への結合は阻害しないことを示すグラフである。
【図16d】デングウイルスのヒト293T細胞への結合の増加、及びDC−SIGN.FcとDLVR/CLECA融合タンパク質への結合を示すグラフである。
【図16e】多様な糖の添加がデングウイルスのDC−SIGN.Fc融合タンパク質への結合を阻害することを示すグラフである。
【図16f】デングウイルスのDLVR/CLECA融合タンパク質への結合におけるPNGaseFの作用を示すグラフである。
【図17a】ヒトPBMCにおけるDC−SIGNの発現パターンを示す。
【図17b】ヒトPBMCにおけるDLVR/CLECAの発現パターンを示す。
【図18a】リン酸化チロシンとDAP12に対する抗体を用いた、ヒトマクロファージにおけるデングウイルス誘導DAP12リン酸化(感染2時間後)を示す免疫ブロットを示す。
【図18b】デングウイルス及び紫外線不活化デングウイルスによって誘導されたDAP12リン酸化のキネティクス(kinetics)を示す免疫ブロットを示す。
【図18c】shRNAのDLVR/CLECA及びDC−SIGN.Fc融合タンパク質発現ノックダウン、及びデングウイルス(m.o.i.=5)介在性DAP12リン酸化阻害の能力を示す免疫ブロットを示す。
【図18d】マクロファージにおけるデングウイルスの侵入と複製に対するshRNAの作用を示す。
【図18e】非構造タンパク質NS3の発現に対する抗DLVR/CLECA mAb、抗DCSIGN mAb及びマウスIgGの作用を示す。
【図18f】感染したマクロファージのデングウイルス力価に対するshRNAの作用の時間経過解析を示すグラフである。
【図19a】マクロファージによるデングウイルス及び紫外線不活化デングウイルス誘導TNF−α分泌の用量依存性を示すグラフである。
【図19b】デングウイルス感染(m.o.i.=5)後のTNF−α発現のキネティクスを示すグラフである。
【図19c】デングウイルス感染(m.o.i.=5)マクロファージからのTNF−α、IL−6、MIP1−α、IL−8、IP−10、IFN−αの分泌に対するDLVR/CLECA及びDC−SIGN sh−RNAの作用を示すグラフである。
【図19d】デングウイルス誘導TNF−α及びIFN−α分泌の多様な分泌経路に対する特定のshRNAを用いたノックダウン実験の作用を示すグラフである。
【図19e】拮抗的抗DLVR/CLECA mAbによるデングウイルス血清型1〜4に応答したTNF−α分泌の阻害を示すグラフである。M.R. mAb(抗マンノース受容体mAb、mIgG1)及びマウスIgM(mIgM)が陰性対照として用いられた。
【図20a】デングウイルス、デングウイルス/抗E、デングウイルス/抗prM免疫複合体に感染したマクロファージのNS3発現を示す。
【図20b】DV2に感染したマクロファージのTNF−α 及びIFN−α分泌のレベルを示す。
【図20c】抗prM/デングウイルス、抗E/デングウイルス免疫複合体に感染したマクロファージのTNF−α及びIFN−α分泌のレベルを示す。
【図21a】上清のHMEC−1単層の透過性及びTNF−αレベルの時間経過解析を示すグラフである。
【図21b】内皮単層の透過性に対するTNFR2.Fc及び抗DLVR/CLECAの阻害効果を示すグラフである。
【図22a】デングウイルスのヒト及びマウスDLVR/CLECA.Fc融合タンパク質との結合親和性を示すグラフである。
【図22b】マウス脾細胞におけるmDLVR/CLECAの発現を示す。
【図22c】マウス骨髄(BM)由来マクロファージ及びマウスのマクロファージ細胞株Raw264.7におけるmDLVR/CLECAの発現を表す。
【図23a】デングウイルスのマウスのマクロファージ細胞株Raw264.7との結合からのTNF−α分泌と、ヒトDC−SIGNを安定的に発現しているRaw264.7細胞の比較を示すグラフである。
【図23b】mAbが存在する状況においてDV2でインキュベーションされた、ヒトDC−SIGNを安定的に発現しているRaw264.7細胞によるTNF−αの分泌を示すグラフである。
【図23c】抗mDLVR/CLECA mAb(3D2H6及び10D7H3)による用量依存的なDV2誘導TNF−α分泌の阻害を示すグラフである。
【図24】DV2/PL046株及びDV2/NGC−C株でチャレンジしたSTAT−/−マウスのカプラン−マイヤー生存曲線を示す。
【図25a】デングウイルスをチャレンジしたSTAT1−/−マウスの皮下及び腸出血に向けて、マウスDLVR/CLECAに対して作成した、mAb 3D2H6及び10D7H3の作用を示す。
【図25b】デングウイルスをチャレンジしたSTAT1−/−マウスの重要臓器への血漿タンパク漏出に向けた、DLVR/CLECA(3D2H6及び10D7H3)に対するmAbの作用を示す。
【図25c】臓器からのエバンスブルー抽出による重要臓器の血管透過性を示すグラフである。
【図25d】抗DLVR/CLECA mAbまたはTNFR2.Fcが存在する、または存在しない状況において、デングウイルスをチャレンジしたSTAT1−/−マウスのTNF−αとIP−10の血漿レベル、及びウイルス力価を示す。
【図25e】拮抗的抗マウス DLVR/CLECA mAbまたはTNFR2.Fcが存在する状況において、DV2をチャレンジしたSTAT1欠損マウスの生存率を示すグラフである。
【図26a】図26はDLVR/CLECAがJEV介在性 DAP12リン酸化及びヒトマクロファージからのTNF−α分泌に関与していることを示す。DLVR/CLECA.Fc(1μg)とJEV及びデングウイルス(DV)(5×10PFU)の相互作用をELISAでそれぞれ検出した。DVはヒトDLVR/CLECA(188アミノ酸長)と相互作用するが、選択的スプライシングされた形式sDLVR/CLECA(aa43〜65が削除される)とはしない。対照的に、JEVはsDLVR/CLECAのみと相互作用し、全長(full length)DLVR/CLECAとはしない。
【図26b】デングウイルスはヒトマクロファージにDAP12リン酸化(感染2時間後に)を誘導する。DV感染マクロファージ中のDAP12は抗DAP12mAbによって沈降され、SDS−PAGEでの分画後にニトロセルロースペーパーにブロットされ、さらにリン酸化チロシン及びDAP12に対する抗体とそれぞれ培養された。JEV誘導DAP12リン酸化(m.o.i.=5)はpLL3.7/DLVR/CLECAによって阻害される。
【図26c】JEV感染(左)に応答したヒトマクロファージからのTNF−α分泌のキネティクスを示す。JEV誘導TNF−α分泌はpLL3.5/DLVR/CLECA mAb(右)によって阻害される。データは3回の独立実験の平均±標準偏差で表す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の以下の詳細な説明では、本発明を実施することができる特定の実施形態を図によって示す添付の図面を参照し、以下の図面では同じ参照番号は同じ構成部品を指す。する。これらの実施形態は当業者 が本発明を実施できるように十分に詳細に説明され、他の実施形態を利用することができること、ならびに本発明の範囲を逸脱せずに論理的、機械的、生物学的、電気的、機能的、その他変更を加えることができることを理解されたい。したがって以下の説明は限定的なものととられるべきでなく、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によって定義される。本明細書で使用される用語「または」(「or」)は、論理和として定義され、排他的論理和をとることが明示されているか、「xまたは」(「xor」)と記載されていない限り、排他的論理和を示すものではないことを理解する必要がある。
【0024】
一実施形態において、本発明は自然免疫受容体の糖鎖認識ドメインと異種ポリペプチドを含む融合タンパク質を提供する。ここで言う自然免疫受容体とは次を意味する。
1)CD66ファミリー(CEACAM1及びPSG1)、SIGLECファミリー、NGK7、FCGRT、ILT/LILRA/LILRB(CD85)ファミリー、LAIRファミリー、KIR(CD158)ファミリー(KIR2DLサブファミリー、KIR2DSサブファミリー、KIR3DLサブファミリーを含む)、FCAR(CD89)、NKp46(NCR1)、GPVI(GP6)を含むが、これらに限定されない、ヒト第19染色体上の白血球受容体複合体(LRC)及びLRC関連遺伝子内の遺伝子によってコードされる受容体、及び
2)MAFA−L(KLRG1)、A2M、NKR−P1A(KLRB1)、LLt1(CLEC2D)、CD69(CLEC2C)、KLRF1、AICL(CLEC2B)、CLEC−2(CLECFS2)、Lox−1(OLR1)、CD94(KLRD1)、NKG2−D(KLRK1)、NKG2−F(KLRC4)、NKG2−E(KLRC3)、NKG2−C(KLRC2)、NKG2−A(KLRC1)、Ly49L(KLRA1)、PRB3を含むが、これらに限定されない、ヒト第12染色体上のナチュラルキラー受容体複合体(NKC)内の遺伝子によってコードされる受容体、及び
3)ヒト染色体上のヒト及びマウスC型レクチン(CLEC)ファミリー遺伝子すべて、ヒトシアル酸結合性Ig様(SIGLEC)遺伝子すべて、骨髄細胞上に発現するヒトトリガー受容体(TREM)遺伝子すべて、ヒトTREM様(TREML/TLT)遺伝子すべて、ヒトToll様受容体(TLR)遺伝子すべて、ヒトFc受容体様(FCRL1からFCLR6、及びFCLRM1とFCLRM2を含む)遺伝子すべて。
【0025】
ヒト遺伝子解析機構(HUGO、Human Genome Organization)検索エンジンウェブサイトを使って本発明の方法に用いることができる可能性のある、これらグループ内の別の遺伝子が見つかる場合がある。さらに、Immunological Reviews 2001 Vol. 181:20〜38の遺伝子座の説明も全開示が参照としてここに組み込まれる。
【0026】
非ヒト種由来の前述の遺伝子のいずれかのオルソログも本発明の方法において用いることができる。
【0027】
本発明での使用が考えられるC型レクチン遺伝子は、次のヒト遺伝子を含むが、これらに限定されない:ASGR1、ASGR2(CLEC4H2)、CD207(CLEC4K/ランゲリン)、CD209(DC−SIGN/CLEC4L)、CD302(CLEC13A)、CLEC1A、CLEC1B(CLEC−2)、CLEC2A、CLEC2B、CD69、CLEC2D、CLEC2L、CLEC3A、CLEC3B、CLEC3O、CLEC3Q、CLEC4A、CLEC4C、CLEC4D(CLEC−6)、CLEC4E、CLEC4F(KCLR)、CLEC4G、CLEC4M(DC−SIGNR)、CD209、DLVR/CLECA、CLEC6A(Dectin−2)、CLEC7A(Dectin−1)、CLEC9A、CLEC10A、CLEC11A、CLEC12A、CLEC14A、FCER2、KLRB1、KLRF1、LY75(DEC205)、MRC1、MRC1L1、MRC2(Endo180)、OLR1、PLA2R1、DCAL1、COLEC10。これらいずれかの遺伝子の相同体、及びマウスやラットなどその他動物種由来のオルソログも考えられる。相同体及びオルソログは列挙されたC型レクチン遺伝子のいずれかと50%、70%、80%、80.6%、83%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%同じとすることができる。具体的に考えられるオルソログはマウスのKupffer細胞受容体(mKCR)遺伝子(ヒトCLEC4Fに相同)である。
【0028】
本発明での使用が考えられるTREM遺伝子及びTREML遺伝子は、次のヒト遺伝子を含むが、これらに限定されない:CD300抗原様ファミリーメンバーB(CD300LB)、CD300抗原様ファミリーメンバーG(CD300LG)、TREM1、TREM2、TREML1(TLT1)、TREML2(TLT2)、TREML3(TLT3)、TREML4(TLT4)。これらいずれかの遺伝子の相同体、及びマウスやラットなどその他動物種由来のオルソログも考えられる。相同体及びオルソログはこれら列挙された遺伝子のいずれかと50%、70%、80%、80.6%、83%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%同じとすることができる。具体的に考えられるオルソログはマウス由来のmTREM1、mTREM2、mTLT1、mTLT4を含む。
【0029】
本発明での使用が考えられるTLR遺伝子は次のヒト遺伝子を含むが、これらに限定されない:TLR1、TLR2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR6、TLR7、TLR8、TLR9、TLR10、TLR11、TLR12、TLR13。これらいずれかの遺伝子の相同体、及びマウスやラットなどその他動物種由来のオルソログも考えられる。相同体及びオルソログは列挙されたTLR遺伝子のいずれかと50%、70%、80%、80.6%、83%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%同じとすることができる。
【0030】
本発明での使用が考えられるSIGLEC遺伝子は次のヒト遺伝子を含むが、これらに限定されない:CD22、CD33、ミエリン関連糖タンパク質(MAG)、SIGLEC5、SIGLEC6、SIGLEC7、SIGLEC8、SIGLEC9、SIGLEC10、SIGLEC11、SIGLEC12、SIGLEC13、シアロアドヘシン(SN)。これらいずれかの遺伝子の相同体、及びマウスやラットなどその他動物種由来のオルソログも考えられる。相同体及びオルソログは列挙されたSIGLEC遺伝子のいずれかと50%、70%、80%、80.6%、83%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%同じとすることができる。
【0031】
本発明での使用に適したその他自然免疫受容体は以下の実施形態において挙げるものを含む。
【0032】
前記融合タンパク質は、糖鎖認識ドメインを含む、自然免疫受容体の全細胞外ドメイン、または糖鎖認識ドメインを含む、細胞外ドメインの一部、または糖鎖認識ドメインのみを含むことができる。
【0033】
前記異種ポリペプチドは、体内または体外のいずれにおいても、糖鎖ドメインがそのコグネイトの特定の糖鎖に結合することを前記異種ポリペプチドが阻害しないように、自然免疫受容体の糖鎖認識ドメインが融合可能な任意のポリペプチドを含むことができる。好ましくは、前記異種ポリペプチドはヒトIgG1、IgG2a、IgG2b、IgG3、IgG4、IgM、IgE、IgD、IgAa、IgA2などの免疫グロブリン、またはほかの動物種由来の免疫グロブリンとする。好ましくは、例えば、IgGのFcフラグメントなど免疫グロブリンのフラグメントを異種ポリペプチドとして用いる。好ましい実施形態において、異種ポリペプチドはヒトFc受容体に結合しない免疫グロブリンの異型である。そのような異型は本技術分野で公知であり、例えばL234A、L235E、G237A、P331Sといった変異体を含むヒトIgG1 Fc異型を用いることができる。
【0034】
前記異種ポリペプチドはさらに、前記融合ポリペプチドを固体支持体上に固定化する、または複雑な混合物から精製することができる1つ以上の機能性ドメインを含むことができる。具体例を挙げると、前記異種ポリペプチドはHis6タグを含み、本技術分野で公知の方法で融合タンパク質のNi−NTA固体支持体への付着を可能にすることができる。さらに具体例を挙げると、前記異種ポリペプチドは、得られる融合タンパク質が、例えばグルタチオンビーズまたはグルタチオン誘導体化マイクロタイタープレート上に吸収されるように、グルタチオン−S−トランスフェラーゼドメインを含むことができる。
【0035】
前記異種ポリペプチドはまた、1つ以上のビオチン、またはビオチン誘導体を含むことができる。この方法で、融合タンパク質をストレプトアビジン結合固体支持体に固定化する、またはストレプトアビジン結合酵素を融合タンパク質に結合させることができる。
【0036】
前記融合タンパク質は選択的に、さらに異種ポリペプチドと前記自然免疫受容体の糖鎖認識ドメイン間のリンカーを含むことができる。前記リンカーはペプチドリンカー、またはポリエチレングリコールなどの非ペプチド性リンカーとすることができる。
【0037】
前記糖鎖認識ドメインは、融合タンパク質において前記異種ポリペプチドに対してC−末端、または前記異種ポリペプチドに対してN−末端とすることができる。
【0038】
本発明の前記融合タンパク質は、本技術分野で公知の任意のタンパク質の生産方法で作製することができる。好ましくは、前記融合タンパク質は本技術分野で公知のDNA組み換え技術及びタンパク質発現技術を用いて作製する。例えば、自然免疫受容体の糖鎖認識ドメインをコードするDNAは、その特定の自然免疫受容体の糖鎖認識ドメインに特異的なプライマーを用いたmRNAの逆転写PCR(RT−PCR)によって取得することができる。得られるDNAはその後異種ポリペプチド配列をコードするDNAとインフレームで発現ベクターにクローニングすることができる。本発明において有用な発現ベクターは一般に、複製起点、5’(すなわち、上流)に位置するプロモーターとそれに続く融合タンパク質をコードするDNA配列、転写終結配列および残りのベクターからなる。前記発現ベクターはまた、本技術分野で公知の他のDNA配列、例えば、発現生成物に安定性を付与する安定化リーダー配列(stability leader Sequences)、発現生成物を分泌させる分泌リーダー配列(secretory leader sequences)、融合タンパク質の発現の修飾または誘導を可能にする配列を含むことができる。 前記発現ベクターはまた、バキュロウイルス発現系など本技術分野で公知のウイルス発現系を用いて融合タンパク質を発現させることができるウイルス配列も含むことができる。前記発現ベクターは微生物細胞、イースト細胞、哺乳類細胞、昆虫細胞などの宿主細胞に導入することができる。前記発現ベクターnaked DNAとして、またはウイルス(バキュロウイルスなど)内に封入(encapsulate)して細胞に導入することができる。前記発現ベクターは宿主細胞内に保持するか、宿主細胞ゲノムに組み込むこともできる。
【0039】
好ましくは、前記発現ベクターは、融合タンパク質に分泌リーダー配列を追加し、それにより前記融合タンパク質を宿主細胞周囲の培地(medium)に分泌させることに導くDNA配列を含む。融合タンパク質はその後本技術分野で公知の方法を用いて培地から精製することができる。具体例を挙げると、融合タンパク質が異種ポリペプチドとしてIgGを含む場合、融合タンパク質に結合するためにプロテインAカラムを用い、融合タンパク質を周囲の培地内のほかのタンパク質から分離することができる。
【0040】
また、融合タンパク質は、アフリカツメガエル卵母細胞(Xenopus oocyte)発現系など、in vitro発現系を用いて、その融合タンパク質をコードするmRNAのin vitro翻訳によって作製することもできる。
【0041】
一実施形態において、前記融合タンパク質は個別に作製し、その後本技術分野で公知の化学技法を用いて相互に結合することもできる。例えば、前記糖鎖認識ドメインと前記異種ポリペプチドを個別に作製し、その後グルタルアルデヒドを用いて相互に結合することができる。
【0042】
融合タンパク質の作製後、前記融合タンパク質は、蛍光色素、放射標識、酵素、酵素基質、色素、化学発光物質、磁性粒子、量子ドット、または直接的または間接的に、検出可能な信号を生成する任意のその他部分(moiety)など、検出可能な標識で標識することができる。そのようなタンパク質に対する検出可能な標識の結合(conjugation)の多くの方法が本技術分野で公知である。具体例のみとして挙げると、N−ヒドロキシスクシンイミド活性化色素、最も好ましくはN−ヒドロキシスクシンイミド活性化蛍光色素を、融合タンパク質上での第一級アミンとの反応によって融合タンパク質に結合させることができる。
【0043】
一部の実施形態において、前記融合タンパク質は本技術分野で公知の方法を用い、前記融合タンパク質が1つ以上のビオチンまたは1つ以上のビオチン誘導体を含むように、ビオチン化される。これにより、前記融合タンパク質は酵素−ストレプトアビジン結合などのストレプトアビジン検出可能部分結合(streptavidin−detecable moiety conjugate)に付着させることができる。
【0044】
ある一連の実施形態において、本発明の融合タンパク質は多糖類を含む組成物に特定の糖鎖成分が存在するか否かを判定するために用いられる。この方法は、多糖類を多糖類の特定の糖鎖成分に結合する融合タンパク質に接触させ、その後前記融合タンパク質が組成物において多糖類に結合しているか否かを判定する工程を含む。例えば、CLEC7A(Dectin−1とも呼ばれる)の糖鎖認識ドメインは、β-1、3−D−グリカンと相互作用できることが知られている (Brown、G.D.及びGordon,S.、2001、Nature 413、36〜7、全開示が参照によってここに組み込まれる)。したがって、CLEC7Aの糖鎖認識ドメインを含む融合タンパク質の多糖組成物への結合は、多糖組成物がβ-1、3グルカンを含むことを示す。同様に、げっ歯類Kupffer細胞受容体(KCR、ヒトCLEC4Fに相同)はD−ガラクトース及びN−アセチルガラクトサミンに高い親和性を有し、D−ガラクトースとD−フコース末端糖タンパク質を血漿から除去できるため(Fadden,A.J.,Holt,O.J.and Drickamer,K.(2003)、Glycobiology 13、529〜37を参照、全開示が参照によってここに組み込まれる)、KCRの糖鎖認識ドメインを含む融合タンパク質の多糖組成物への結合は、前記多糖組成物がD−ガラクトースまたはN−アセチルガラクトサミンまたはD−ガラクトース末端糖タンパク質またはD−フコース末端糖タンパク質を含むことを示す。さらに、CD209(DC−SIGN及びCLEC4Lとも呼ばれる)及びCLEC4M(DC−SIGNR及びL−SIGN)は共にManGlcNAcAsn糖ペプチド,に結合できるが、CD209のみが末端フコース残基を有するグリカンに結合でき、CLEC4Mはできない(Guo et al(2004)Nat Struct Mol Biol 11、591〜8参照)。したがって、CD209及びCLEC4Mの融合タンパク質はこれら糖質成分を含む多糖組成物間を区別することができる。したがって、本発明の方法及び試薬は多糖組成物の糖質成分の同一性及びそれら糖質成分の相対量を判定する、つまり多糖組成物の「フィンガープリンティング」に用いることができる。例えば、本発明の方法及び試薬は、免疫調節作用を有する多糖組成物の糖質成分を判定するために用いることができる。
【0045】
加えて、融合タンパク質の糖鎖認識ドメインが由来する自然免疫受容体を発現する細胞の同一性が分かっている場合、本発明の開示するアッセイは、調べている多糖類に結合する体内の細胞の同一性を明らかにする。そのような知識は、例えば、特定の多糖組成物(霊芝から分離された多糖など)がその多糖類に接触する生物に対して有益な、または有害な影響を及ぼすメカニズムを明らかにするために役立つ。この実施形態において、糖鎖認識ドメインによって結合される糖質成分の同一性を知る必要はない。
【0046】
本発明の融合タンパク質のそのコグネイト糖質成分への結合は、多糖類を含む組成物を固体支持体に固定化した後、前記固体支持体を融合タンパク質と接触させることで実行することができる。融合タンパク質の結合は、固体支持体の表面上における融合タンパク質の有無、例えば、固体支持体の表面上の異種ポリペプチドの有無、または固体支持体の表面上の糖鎖認識ドメインの有無を検出することで検出できる。例えば、異種ポリペプチドが蛍光色素に結合され(conjugated)、その後洗浄後、固体支持体の表面上に前記蛍光色素が存在する場合、これは融合タンパク質の存在を示し、さらに融合タンパク質の糖鎖認識ドメインによって認識される特定の糖鎖成分を含む多糖類の存在を示す。
【0047】
ここで言う「固体支持体」とは、共有結合または非共有結合のいずれかを通して分子が付着する任意の表面として定義される。これは、メンブレン(例えば、ポリビニリデンジフルオライド(PVDF)メンブレンなど)、プラスチック(例えば、マイクロタイタープレートなど)、常磁性ビーズ、荷電性紙(charged paper)、ナイロン、ラングミュア・ブロジェット膜、官能化ガラス、ゲルマニウム、シリコン、PTFE、ポリスチレン、ガリウムヒ素、金、銀などを含むが、これらに限定されない。本技術分野で公知のその表面に組み込まれたアミノ、カルボキシル、チオール、ヒドロキシルなどの官能基を持つことができるその他あらゆる材料もまた検討可能である。これは、球面、溝付表面、円柱面(柱体など)の任意のトポロジの表面を含むが、これらに限定されない。
【0048】
多糖を含む組成物(ここでは「多糖組成物」とも言う)は、制限なく、例えば、糖タンパク質(プロテオグリカンを含む)、糖脂質、ペプチドグリカン、微生物細胞壁、ウイルス粒子、麹菌細胞壁を含む多糖類を含む任意の組成物とすることができる。別の実施形態において、多糖類を含む組成物は溶液中で自由な多糖類、例えば、タンパク質または脂質に結合していない多糖類である。ここで「多糖類」とは2つ以上の単糖類を含む糖質分子を指す。
【0049】
多糖類を含む組成物の固体支持体上での固定化は、例えば、組成物中の多糖をビオチン化した後、ストレプトアビジン結合固体支持体上で固定化することにより、達成可能である。さらに、多糖は例えばメタノール活性化PVDFメンブレンなどの上に固定化させることができる。本発明の方法はPVDFメンブレン上に固定化された多糖類のドットを用いた「ドットブロット」形式で実行できることを特に意図する。
【0050】
一部の実施形態において、融合タンパク質の固定化された多糖類への結合は、第二試薬を融合タンパク質に、好ましくは異種ポリペプチドに結合した後、第二試薬の有無を検出することによって検出される。例えば、ビオチン化融合タンパク質はストレプトアビジン結合酵素に付着することができ、この酵素の存在は検出可能な生成物を生み出す基質を加えることで検出される。非ビオチン化融合タンパク質は、例えば、二次抗体が酵素に結合される、異種ポリペプチド(異種ポリペプチドがIgG、またはIgG Fcの場合抗IgG 抗体など)に結合する抗体を用いて検出することができる。例えば、酵素が西洋ワサビ由来ペルオキシダーゼ(HRP)である場合、融合タンパク質結合の検出は本技術分野で公知の技法であるECL(Enhanced Chemiluminescence)を用いて実施することができる。また第二試薬は、あるいは選択的に、蛍光色素や放射性同位元素などの検出可能な標識に結合させることもできる。本発明の融合タンパク質の固体支持体への結合の検出に用いることができるその他多くの技法が本技術分野で公知である。
【0051】
前述のアッセイは、多重アレイ形式で実施できることを特に考慮する。例えば、固体支持体は複数の異なる組成物を結合させることができる複数の空間的に不連続のアドレス(spatially discrete address)に区分してもよい。その後固体支持体は融合タンパク質と接触され、融合タンパク質の結合が検出される。この方法で、融合タンパク質の糖鎖認識ドメインによって結合された特定の糖質成分を含む固定化された多糖組成物がある場合、それを判定することができる。
【0052】
別の実施形態において、単一の組成物が複数の空間的に不連続のアドレスに区分された固体支持体上に固定化される。その後各アドレスが異なる融合タンパク質と接触され、各異なる融合タンパク質は異なる糖鎖認識ドメインを含む。非特異的に結合した物質を除去するための洗浄後、上述の方法で融合タンパク質の結合を検出することができる。検出された各結合反応の空間的アドレスは、結合した融合タンパク質のアイデンティティを表す。この方法で、組成物は同時に複数の異なる融合タンパク質でプローブすることができる。この実施形態において、各融合タンパク質は同一の異種ポリペプチドを含むことができ、それにより単一の第二試薬で同時に各アドレスで結合を検出することがえきる。例えば、各融合タンパク質がIgG Fcを異種ポリペプチドとして含む場合、抗IgG 抗体、またはタンパク質A、またはタンパク質Gのいずれかを使用して融合タンパク質の結合を検出することができる。
【0053】
本発明の融合タンパク質及び方法は、マンネンタケ(霊芝)、冬虫夏草、シイタケ、及び植物Dendrobium huoshanenseから分離された多糖類含有フラクションなどの生薬から取得される多糖組成物を含むが、これに限定されない、多糖を含む任意の組成物の「フィンガープリンティング」に用いることができる。特に、ここで用いられる方法は、霊芝多糖類のF3多糖類フラクションの糖質成分を判定するために用いられることを意図する(Wang, et al(2002)Bioorg Med Chem 10、1057〜62;Chen, et al(2004)Bioorg Med Chem 12、5595〜601;Chien, et al(2004) Bioorg Med Chem 12、5603〜9;Hsu et al(2004)J Immunol 173、5989〜99を参照、それぞれの全開示が参照によってここに組み込まれる)。
【0054】
本発明の方法は、多数の異なる多糖組成物を含む複雑な混合物の「フィンガープリンティング」に用いることができ、また、例えば単一の糖タンパク質や単一の多糖類など、単一の多糖類の種のみを含む製剤に用いることができる。
【0055】
糖鎖認識ドメインが由来する自然免疫受容体を発現する細胞のアイデンティティが分かっている場合、前述のアッセイは多糖組成物を体内に導入することで体内のどの細胞が多糖類に結合するかを示すことができる。その後、同定された自然免疫受容体の働きを修飾する薬剤(agent)を取得することが可能となる。例えば、多糖類の構造を模擬する薬剤、または多糖類の自然免疫受容体との相互作用を促進する薬剤は、自然免疫受容体の多糖類との相互作用が体内において有益な効果をもたらす場合、遺伝子に関係している場合がある。以下の「修飾因子」と題されたセクションを参照のこと。
【0056】
別の一連の実施形態において、本発明の方法及び融合タンパク質は、真菌細胞、細菌細胞、またはエンベロープウイルス及びフラビウイルスファミリーからのウイルスを含むが、これらに限定されないウイルスなど、病原体表面上に現れる多糖の同一性の判定に用いることができる。本発明の方法での用途に適したフラビウイルス科ウイルスは、フラビウイルス属のメンバー(例えば、デングウイルス(DV)、ウエストナイルウイルス(WNV、West Nile Virus)、日本脳炎ウイルス(JEV、Japanese encephamyelitis virus)、黄熱ウイルス(YFV、yellow fever virus)、ダニ媒介脳炎ウイルスなど)及びヘパシウイルス属のメンバー(例えば、C型肝炎ウイルスなど)を含むが、これらに限定されない。そのような一実施形態において、融合タンパク質が固体支持体上に固定化され(例えば、異種ポリペプチドがIgGまたはそのフラグメントである場合、タンパク質A誘導体化(derivatized)固体支持体を用いる)、その後前記固体支持体がその特定の病原体を含む組成物に接触される。洗浄後、例えば融合タンパク質の結合と競合せずに、その病原体に特異的に結合する第二試薬を用いて、病原体の結合が検出される。例えば、前記病原体に特異的な二次抗体を用いることができる。その後前記第二試薬の結合は上述したように(例えば、HRP結合(conjugated)二次抗体を使用して)、または第二試薬に結合する第三試薬を用いて(例えば、前記第二試薬が抗病原体IgGである場合、HRPに結合した(conjugated)抗IgG 抗体を用いて)検出することができる。第二試薬の結合が検出された場合、これは特定の糖鎖成分を含む多糖類を含む病原体が融合タンパク質の糖鎖認識ドメインに認識されたことを示す。
【0057】
もう一つの方法として、前記アッセイは前記病原体に特異的に結合する試薬を固体支持体上に固定化することで実施できる。例えば、病原体に結合する抗体を固体支持体上に固定化し、その後病原体を含む組成物と接触させる。その後前記固体支持体を融合タンパク質と接触させ、融合タンパク質の結合が上述したように検出される(好ましくは、前記融合タンパク質が病原体と固定化された試薬との結合に競合しない)。例えば、融合タンパク質の異種ポリペプチドがIgG Fcである場合、抗IgG抗体が融合タンパク質の病原体への結合を検出することができる。または、融合タンパク質が検出可能な標識に結合される(conjugated)場合、標識の検出を用いて結合を検出することができる。
【0058】
前述の病原体アッセイは、例えば複数の異なる融合タンパク質を同時に用いて、多重形式で実施できることが明示的に意図される。例えば、病原体に結合する抗体は、固体支持体上の複数の不連続のアドレスで固定化することができる。その後、前記固体支持体が前記病原体を含む組成物と接触され、さらにその後各特定のアドレスが異なる融合タンパク質と接触され、各異なる融合タンパク質は異なる糖鎖認識ドメインを含む。各融合タンパク質が同一の異種ポリペプチドを含む場合、融合タンパク質の結合は前記異種ポリペプチドに結合する単一の試薬を用いて検出することができる。例えば、前記異種ポリペプチドがIgG Fcである場合、抗IgG抗体を用いて融合タンパク質の結合を検出することができる。各結合反応の空間的アドレスは、前記融合タンパク質のアイデンティティを示す。あるいは、固体支持体上の空間的に不連続のアドレスで固定化された複数の異なる融合タンパク質を用い、前記固体支持体と病原体を含む組成物を接触させた後、前記固体支持体と前記病原体に特異的に結合する第二試薬を接触させることで、多重(multiplexed)アッセイを実行することができる。例えば、病原体がデングウイルスである場合、前記第二試薬はEエンベロープタンパク質に対する抗体とすることができる。前述のすべてのアッセイと同様に、非特異的に結合した物質を固体支持体から除去するために洗浄を用いることができる。
【0059】
本発明の方法を用いて、デングウイルスはCD14+マクロファージの表面上で DVLR/CLECAに結合することが発見されている。これに関しては実施例11を参照する。さらに、デングウイルスに結合した DVLR/CLECAはDAP12の活性化を生じ、これがさらにマクロファージからの前炎症性サイトカインTNF−α、MIP−1α、IFN−α、IL−8の放出をもたらすことが示されている。これに関しては実施例12を参照する。これらサイトカインの放出はデング出血熱(DHF、Dengue hemorrhagic fever)及びデングショック症候群(DSS、Dengue shock syndrome)の形成に関与している。
【0060】
本発明の方法の実施形態に従い、DLVR/CLECAがデングウイルスと特異的に相互作用することが示されている。これに関しては実施例16〜18を参照する。さらに、DLVR/CLECAはDAP12リン酸化を修飾し、これがTNF−αなど前炎症性サイトカインの放出を少なくとも部分的に修飾すると考えられることが示されている。これに関しては実施例18を参照する。DLVR/CLECA発現がデングウイルスに感染した細胞でノックダウンされると、DAP12のリン酸化が抑制され、かつインターフェロン−αなどのウイルス排除サイトカインの分泌に作用することなく、TNF−αを含む前炎症性サイトカインの分泌が抑制される。これに関しては実施例18〜19を参照する。実施形態に基づき、DLVR/CLECAのノックダウンは、si−RNAとsh−RNAの両方の使用を含め、従来のRNA干渉法を用いて達成することができる。これに関しては実施例18〜19を参照する。
【0061】
病原体と相互作用する自然免疫受容体のアイデンティティに関する知識は、自然免疫受容体の働きを修飾する薬剤の形成に用いることができる。例えば、特定の病原体に対する免疫反応を促進するために、同定された自然免疫受容体を活性化させる修飾因子を得ることができる。特定の多糖組成物に対する自然免疫受容体の相互作用が体に有害である場合(例えば、病原体が過剰炎症を引き起こすときなど)、自然免疫受容体の働きを抑制する修飾因子を取得することができる。例えば、病原体の自然免疫受容体への結合を遮断する薬剤(抗体など)は、前記病原体の感染に対する好ましくない炎症誘導反応の発生を防止するために用いることができる。同様に、本発明のスクリーニング法によって特定の病原体(ウイルスなど)が自然免疫受容体を使用して細胞に侵入することが明らかになった場合、その病原体の自然免疫受容体への結合を遮断する薬剤が病原体の細胞への侵入を防止する。
【0062】
本発明の方法の実施形態に基づき、利用可能なDLVR/CLECA結合部位を減少する阻害剤の投与が、デングウイルス感染マウスの生存率を高めることが示されている。実施形態に基づき、DLVR/CLECAのDLVR/CLECAリガンドへの結合を阻害するDLVR/CLECA抗体の投与がマウスの生存率を向上することが示されている。これに関しては実施例25を参照する。
【0063】
別の一連の実施形態において、本発明の融合タンパク質は、多糖類と細胞表面上の自然免疫受容体間の相互作用を妨害または阻止するために用いられる。この一連の実施形態において、前記融合タンパク質は細胞表面に発現した自然免疫受容体の糖鎖認識ドメインを含む。その後自然免疫受容体を発現する細胞は、体内または体外のいずれかで、前記融合タンパク質と接触され、それにより前記融合タンパク質が前記自然免疫受容体への結合のため多糖類と競合する。
【0064】
多糖類と細胞表面の自然免疫受容体の相互作用が有機体に有害な影響をもたらす場合、その相互作用を防止または減少するため、医薬組成物内で有機体に対し治療的に有効な量の前記融合タンパク質を投与することができる。投与される融合タンパク質の異種ポリペプチドがいかなる細胞表面受容体にも結合しないことが好ましい。例えば、前記異種ポリペプチドは細胞表面上のFc受容体に結合しないIgG Fcの変異した異型を含むことができる。
【0065】
精製
別の一連の実施形態において、融合タンパク質は、前記融合タンパク質の糖鎖認識ドメインによって認識される特定の糖鎖成分を含む多糖を少なくとも部分的に精製または単離するために用いられる。例えば、前記融合タンパク質は固体支持体上に固定化され、多糖組成物を含有することが考えられる、または分かっている組成物が前記固体支持体と接触される。前記組成物が前記融合タンパク質の糖鎖認識ドメインに結合できる多糖類を含む場合、その多糖類が前記融合タンパク質に結合する。その後前記固体支持体を洗浄し、前記組成物の非特異的に結合した成分を排除することができ、その後融合タンパク質との相互作用を絶つことにより、結合した前記多糖類が溶出され、収集される。例えば、前記融合タンパク質がレクチン受容体の糖鎖認識ドメインを含む場合、前記相互作用はCa2+をキレートするEDTAを用いて絶つことができる。この方法で、特定の多糖組成物を複雑な混合物から精製することができる。好ましい実施形態において、この方法は霊芝(レイシ)から分離された多糖を精製するために用いることができる。
【0066】
前述の精製法に関し、固体支持体は、例えば、融合タンパク質が結合したカラムを含むことができる。適したカラムは、異種ポリペプチドとしてIgGを含む融合タンパク質が、タンパク質Aを持つ融合タンパク質のIgGドメインとの相互作用を介して結合できる、セファロースタンパク質Aカラムを含む。または、CNBr活性化カラム媒体に融合タンパク質を結合させることができる。
【0067】
本発明はまた、上述のあらゆる方法で使用できるキットも提供する。一実施形態において、キットは本発明の融合タンパク質を1つ以上の容器内に含む。前記キットはさらに、融合タンパク質の異種ポリペプチドドメインに特異的に結合する抗体(例えば、前記異種ポリペプチドがIgG、またはそのフラグメントである場合、抗IgG 抗体)など、第二試薬を含むことができる。前記キットはまた、融合タンパク質の多糖類への結合を検出するための試薬及びバッファーを含むことができる。例えば、HRP結合(conjugated)二次抗体が融合タンパク質の多糖類への結合の検出に用いられる実施形態において、前記キットは増強化学発光反応を確立するために必要な試薬、例えば、ルミノール、p−クマル酸、トリスバッファー、過酸化水素を含む1つ以上の容器を含む。前記キットはさらに、1つ以上の陽性対照多糖を含むことができる。前記キットはまた、前述の方法での使用向けの1つ以上の固体支持体、例えば、1つ以上のPVDFメンブレン、または1つ以上のマルチウェルマイクロタイタープレートなどを含むことができる。
【0068】
修飾因子(Modulators)
上述したように、本発明の方法は特定の多糖類と相互作用する自然免疫受容体を同定する。この情報は同定された自然免疫受容体の修飾因子を取得することを可能にする。修飾因子は、自然免疫受容体のアゴニスト、アンタゴニスト(競合的及び非競合的拮抗薬を含む)、またはインバースアゴニストとすることができる。修飾因子は、多糖類の自然免疫受容体への結合を阻害する、多糖類の自然免疫受容体への結合を促進する、または、自然免疫受容体に結合する多糖類のミメティクスとして機能し、かつこれらに限定されず、それにより多糖類が存在しなくても自然免疫受容体を活性化させることができる。
【0069】
自然免疫受容体の修飾因子は抗体を含む。例えば、自然免疫受容体に対する拮抗的抗体は、病原体の自然免疫受容体への結合を防止することができる。一部のケースで、そのような抗体は自然免疫受容体を発現する細胞への病原体の侵入を防止するため、中和抗体である。または、アゴニスト抗体は細胞に有益な効果を発揮する多糖組成物のミメティクスとして機能することができる。また、拮抗的抗体は、病原体の結合に際した受容体による下流シグナル伝達を阻害するように、自然免疫受容体に結合することもできる。抗体は、ポリクローナル、モノクローナル、単価、二重特異性、ヘテロ抱合、多重特異性、ヒト、ヒト化またはキメラ抗体、一本鎖抗体、Fabフラグメント、F(ab’)フラグメント、Fab発現ライブラリーから産生されるフラグメント、抗イディオタイプ(抗Id)抗体、および上述のいずれかのエピトープ結合フラグメントとできるが、これらに限定されない。ここで言う「抗体」とは、免疫グロブリン分子および免疫グロブリン分子の免疫学的活性部分、すなわち、免疫特異的に抗原に結合する抗原結合部位を含む分子を指す。前記免疫グロブリン分子は任意のタイプ(例:IgG、IgE、IgM、IgD、IgA、IgY)、クラス(例:IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、IgA2など)または免疫グロブリン分子のサブクラスとすることができる。さらに、「抗体」(Ab)または「モノクロナール抗体」(Mab)という語句は、タンパク質を特異的に結合する能力がある、完全分子、および抗体フラグメント(例えば、FabおよびF(ab’)2フラグメントなど)を含むことが意図されている。FabおよびF(ab’)2フラグメントはインタクト抗体のFcフラグメントが欠けており、動物または植物の循環からより迅速に消失し、非特異的組織結合がインタクト抗体よりも少ない場合がある(Wahl et al.、J. Nucl. Med. 24:316〜325(1983))。抗体アゴニストを産生する方法は、例えば、PCT公報WO96/40281号、米国特許第5811097号、Deng et al.、Blood 92(6):1981〜1988(1998)、Chen et al.、Cancer Res. 58(16): 3668〜3678(1998)、Harrop et al.、J.Immunol.161(4):1786〜1794(1998)、Zhu et al.、Cancer Res. 58 (15): 3209〜3214(1998)、Yoon et al.、J. Immunol. 160(7):3170〜3179(1998)、Prat et al.、J. Cell. Sci.111(Pt2):237〜247(1998)、Pitard et al.、J. Immunol. Methods 205(2):177〜190(1997)、Liautard et al.、Cytokine 9(4):233〜241(1997)、Carlson et al.、J. Biol. Chem.272(17):11295〜11301(1997)、Taryman et al.、Neuron 14(4):755〜762(1995)、Muller et al.、Structure 6(9):1153〜1167(1998)、Bartunek et al.、Cytokine 8(1):14〜20(1996)、Harlow et al.、Antibodies:A Laboratory Manual、(Cold Spring Harbor Laboratory Press、2nd ed.1988)、Hammerling、 et al.、in:Monoclonal Antibodies and T−Cell ハイブリドーマ 563〜681(Elsevier, N.Y.、1981)に記載されている(これらはすべて全開示が参照としてここに組み込まれる)。
【0070】
本発明は、DV感染後にマクロファージからのTNF−α放出を防止する抗 DVLR/CLECAモノクロナール抗体の具体的な(制限しない)例を提供する。これについては実施例15を参照する。これらの抗体は、ここで特定される医薬組成物および治療法、特に、人間のDV感染の治療または予防向けの組成物および方法に用いることができる。
【0071】
本発明はまた、DVまたはJEV感染後のマクロファージからのTNF−α放出を防止するヒト化抗 DVLR/CLECA抗体を提供する。これに関しては実施例20〜26を参照する。特定の実施形態において、前記ヒト化抗体は、ヒト化抗体9B12、3E12A2、3E12C1、3E12G9、8H8F5〜構成される群から選択される。これら抗体はここで特定される医薬組成物および治療法、特に、人間のDV感染の治療または予防向けの組成物および方法に用いることができる。具体的な治療は、DV誘導血漿タンパクの漏出、および皮下と重要臓器の出血の抑制を含む。前記ヒト化抗体は、DV誘導出血性ショックおよび敗血症に対する治療法として用いることができる。ここで説明するウイルスによるサイトカイン刺激の減少に関連する原則は、刺激する細胞の受容体に結合し、それを修飾するすべてのウイルスに適用されることが明示的に意図されている。
【0072】
さらに、ウイルスの発見と治療の原則は、同様に細胞侵入受容体、および細菌、真菌、寄生生物の作用にも拡大される。本発明の方法は、当業者が病原体の結合プロファイル(すなわち、どの受容体に結合するか)を判定する、受容体の結合の作用を判定する、および抗体などの阻害剤を提供し、病原体のターゲット受容体に結合する能力を阻害することを可能にする。
【0073】
実施形態に基づき、マウス脾細胞とNS1骨髄パートナー細胞の融合によって生成されるモノクロナール抗体(mAb)、抗DLVR/CLECA mAbは一本鎖ヒト抗ヒトDLVR/CLECA mAbを生成するためのファージディスプレイ技術によって生成することができる。アゴニストmAbおよび拮抗的mAbは実施例19〜25に開示されたスクリーニング法に基づいて選択することができる。
【0074】
現在のマウス抗ヒトDLVR/CLECA mAbの抗原性を減少するため、実施形態に基づき、野生型Fc部分はヒト免疫グロブリンG1(IgG1)で置換される。Fc受容体へのFc結合をさらに消失させ、補体活性化を防ぐには、ヒトIgG1の変異型Fcフラグメント(L234A、L235E、G237A、P331S)を使用して野生型Fcを置換し、ヒト化mAbを生成することができる。抗原性をさらに減少するには、抗体Vドメインのフレームワーク領域をヒト配列で置換することができる。
【0075】
自然免疫受容体の修飾因子は、高スループットスクリーニング法によって同定される小分子も含む。前記高スループットスクリーニング法は通常、多数の治療薬候補化合物(例えばリガンドまたはモジュレーター化合物)を含むコンビナトリアルケミカルまたはペプチドライブラリーの提供を含む。前記コンビナトリアルケミカルライブラリーまたはリガンドライブラリーは、1つ以上のアッセイでスクリーニングされ、その特定の自然免疫受容体に結合するライブラリーメンバー(例えば、特定の化学種またはサブクラス)が同定される。そのように同定された化合物は、従来のリード化合物として役立てるか、そのものを治療薬候補または実際の治療薬として用いることができる。
【0076】
コンビナトリアルケミカルライブラリーは、複数の化学合成遮断(つまり、アミノ酸などの試薬)を組み合わせることによる化学合成または生物学的合成のいずれかによって生成される多様な化合物のコレクションである。一例として、例えば、一連の化学合成遮断を特定の化合物長さ(すなわちポリペプチドまたはペプチド化合物中のアミノ酸の数)に対して可能なあらゆる方法で組み合わせることで、ポリペプチドまたはペプチドライブラリーなどの線状コンビナトリアルライブラリーが形成される。そのような化学合成遮断の組み合わせ混合を通して数百万の化合物を合成することができる。
【0077】
コンビナトリアルケミカルライブラリーの調製とスクリーニングは、関連技術でスキルを有する人物にはよく知られている。コンビナトリアルライブラリーは、ペプチドライブラリー(例えば、米国特許第5010175号、Furka、1991、Int. J. Pept. Prot. Res.、37:487〜493、Houghton et al.、1991、Nature、354:84〜88など)を含むが、これに限定されない。その他化合物多様化ライブラリーを生成するための化学物質も使用できる。化合物多様化ライブラリーの化学物質の例には、ペプチド(PCT公開番号WO91/019735)、コードされたペプチド(PCT公開番号WO93/20242)、ランダムバイオオリゴマー(PCT公開番号WO92/00091)、ベンゾジアゼピン(米国特許第5288514号)、ヒダントイン、ベンゾジアゼピン、ジペプチドなどの異性体(Hobbs et al.、1993、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、90:6909〜6913)、ビニルロゴアスポリペプチド(Hagihara et al.、1992、J. Amer. Chem. Soc.、114:6568)、グルコース骨格を備えた非ペプチド性ペプチドミメティクス(Hirschmann et al.、1992、J. Amer. Chem. Soc.、114:9217〜9218)、小化合物ライブラリーの類似有機合成(Chen et al.、1994、J. Amer. Chem. Soc.、116:2661)、オリゴカルバメート(Cho et al.、1993、Science、261:1303)、またはペプチジルホスホン酸(Campbell et al.、1994、J. Org. Chem.、59:658)、核酸ライブラリー(例えば、「アプタマー」として知られる核酸リガンドの生成を説明する米国特許第5270163号を参照)、ペプチド核酸ライブラリー(米国特許第5539083号)、抗体ライブラリー(例えば、Vaughn et al.、1996、Nature Biotechnology、14(3):309〜314)およびPCT/米国第96/10287号)、糖鎖ライブラリー(例えば、Liang et al.、1996、Science、274〜1520〜1522)および米国特許第5593853号)、有機小分子ライブラリー(例えば、ベンゾジアゼピン、Baum C&EN、1993年1月18日、33ページ、および米国特許第5288514号;イソプレノイド、米国特許第5569588号;チアゾリジノンおよびメタチアゾノン、米国特許第5549974号;ピロリジン、米国特許第5525735号および第5519134号;モルフォリノ化合物、米国特許第5506337号;等を参照のこと)を含むがこれに限らない。
【0078】
コンビナトリアルライブラリーを調製するための装置が、市販で入手可能である(例えば、357MPS、390MPS、Advanced Chem Tech、Louisville KY;Symphony、Rainin、Woburn、Mass.;433A Applied Biosystems、Foster City、Calif.;9050 Plus、Millipore、Bedford、Mass.を参照のこと)。それに加えて、多数のコンビナトリアルライブラリーが、それ自身市販で入手可能である(例えば、ComGenex、Princeton、N.J.;Asinex、Moscow、Russia;Tripos,Inc.、St Louis、Mo.;ChemStar,Ltd.、Moscow、Russia;3D Pharmaceuticals、Exton、Pa.;Martek Biosciences、Columbia、Md.;等を参照のこと)。
【0079】
医薬組成物
本発明はまた、医薬組成物も提供する。一部の実施形態において、前記医薬組成物は本発明の融合タンパク質を含む。ほかの実施形態において、前記医薬組成物は自然免疫受容体の修飾因子(例えば、例15で示す抗体を含め、 DVLR/CLECAなどの自然免疫受容体に対する抗体)を含む。そのような医薬組成物において、前記融合タンパク質または前記自然免疫受容体修飾因子は「活性化合物」を形成する。一部の実施形態において、前記医薬組成物は、対象の細胞表面で多糖類が自然免疫受容体に結合することによって特徴付けられる疾病または疾患を治療または防止するため、対象に投与される。別の実施形態において、前記医薬組成物は、自然免疫受容体の働きを高めることが対象にとって有益である状況において、その自然免疫受容体を活性化させるため対象に投与される。さらに別の実施形態において、前記医薬組成物は、多糖組成物の自然免疫受容体への結合を促進するために対象に投与される。
【0080】
前記医薬組成物は、活性化合物に加え、好ましくは、少なくとも1つの薬学上許容される担体を含む。本明細書で用いる「薬学上許容される担体」という語句は、医薬的投与に適合する溶媒、分散媒、コーティング剤、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などを含む。補助活性化合物も組成物に含めることができる。医薬組成物は特定の投与経路に適合するように調製される。投与経路の例には、非経口、例えば、静脈内、皮内、皮下、口腔(例えば吸入)、経皮(局所)、経粘膜、直腸投与が含まれる。非経口、皮内、皮下用途に用いられる溶媒または懸濁液は、注射用水、生理食塩水、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、その他合成溶媒などの無菌希釈剤、ベンジルアルコールまたはメチルパラベンなどの抗菌剤、アスコルビン酸または亜硫酸水素ナトリウムなどの酸化防止剤、エチレンジアミン四酢酸などのキレート剤、酢酸塩、クエン酸塩、リン酸塩などの緩衝液、塩化ナトリウムもしくはデキストロースなどの等張性を調整するための製剤を含むことができる。pHは、例えば塩酸もしくは水酸化ナトリウムなどの酸もしくは塩基を用いて調整できる。非経口製剤は、ガラスまたはプラスチック製のアンプル、ディスポーザブルシリンジもしくは複数回投与バイアル内に封入できる。
【0081】
本明細書で用いられる対象とは、人間および人間以外の霊長類(例えば、ゴリラ、マカク、マーモセット)、家畜動物(例えば、羊、牛、馬、ロバ、豚)、コンパニオンアニマル(例えば、犬、猫)、実験動物(例えば、マウス、ウサギ、ラット、モルモット、ハムスター)、捕獲野生動物(例えば、キツネ、鹿)およびその他任意の本発明の薬剤から恩恵を受ける有機体を指す。本発明で説明する薬剤から恩恵を受ける動物の種類について制限はない。本発明の最も好ましい対象は人間である。人間または人間以外の有機体を問わず、対象は患者、個人、動物、宿主、受容者と呼ぶこともある。
【0082】
注射用途に適した医薬組成物は、無菌水溶液 (可溶性の場合)、又は、無菌の注射可能溶液又は分散体の即時調製用の分散体及び無菌粉末を含む。静脈内の投与に適した担体は、生理食塩水、静菌水、Cremophor EL.TM(BASF, Parsippany, N.J.)またはリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)が含まれる。いずれの場合も、組成物は無菌でなくてはならず、また、シリンジでの投与に十分な流動性を保持していなくてはならない。前記組成物は、調剤及び保存の条件下で安定的でなくてはならず、細菌及び真菌などの微生物由来の汚染を防止する必要がある。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(グリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコールなど)、及び適切な混合物を含む、溶媒または分散媒培地を使用することができる。例えば、レクチンなどのコーティング剤を用い、分散媒においては必要とされる粒子サイズを維持し、界面活性剤を用いることにより適度な流動性が維持される。微生物の働きの防止に対しては、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなどのさまざまな抗菌剤及び抗真菌剤が使用可能である。また多くの場合、糖、マンニトール、ソルビトールなどのポリアルコール及び塩化ナトリウムなどの等張剤が組成物中に含まれてもよい。注射可能な組成物の吸収を遅らせるには、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンなどの吸収を遅らせる薬剤を組成物に含めることで可能である。
【0083】
無菌の注射可能溶液は、上に列挙した成分の必要なものを1つ以上組み合わせ、適切な溶媒中に必要量の活性化合物を加えた上で、フィルタ滅菌することにより調製される。一般に分散媒は、基本的な分散培地及び上述したその他の必要成分を含む滅菌的媒体中に活性化合物を取り込むことにより調製される。無菌の注射可能溶液を調製するのための無菌粉末の調製方法には、活性成分及び先にフィルタ滅菌された溶液に由来するいずれかの所望な成分を含む粉末を調製する真空乾燥及び凍結乾燥が含まれる。
【0084】
通常、経口組成物には、不活性な希釈剤または可食担体が含まれる。経口的治療投与のために、活性化合物は賦形剤と共に取り込まれ、錠剤、トローチまたは例えば、ゼラチンのカプセル剤などカプセル剤の形態で使用される。また、経口組成物は、洗口液として使用するために流動性担体を用いて調製することも可能である。さらに、薬剤的に適合する結合剤、またはアジュバント物質などが組成物に包含されてもよい。錠剤、丸薬、カプセル剤、トローチなどは、微結晶セルロース、トラガカントガム、ゼラチンなどの結合剤、デンプン、ラクトースなどの賦形剤、アルギン酸、プリモゲル(Primogel)、コーンスターチなどの崩壊剤、ステアリン酸マグネシウム、ステロート(Sterote)などの潤滑剤、コロイド状二酸化ケイ素のような流動促進剤、スクロースまたはサッカリンなどの甘味剤、ペパーミント、サリチル酸メチル、オレンジフレーバなどの香味料、あるいは同様の性質の成分または化合物のいずれかを含有してよい。
【0085】
吸入による投与向けに、化合物は、適切な噴霧剤(例えば、二酸化炭素などのガス)を含有する圧縮容器またはディスペンサー、ネブライザーからエアロゾルスプレーの形態で送達される。
【0086】
全身投与は、経粘膜手段または経皮手段でもあり得る。経粘膜投与または経皮投与向けに、浸透される障壁に適した浸透剤が、製剤中に使用される。このような浸透剤は、一般的に本技術分野で公知であり、そして例えば、経粘膜投与向けには、界面活性剤、胆汁酸塩およびフシジン酸誘導体が挙げられる。経粘膜投与は、鼻内スプレーまたは坐薬の使用を介して達成され得る。経皮投与向けに、活性化合物は、一般的に本技術分野で公知の軟膏(ointment)、軟膏(salve)、ゲルまたはクリームで調製される。
【0087】
化合物はまた、坐薬(例えば、従来のココアバターやその他グリセリド坐薬基剤などと共に)または直腸送達のための停留浣腸の形態で調製され得る。
【0088】
一実施形態において、活性化合物は、移植片およびマイクロカプセル化送達系を含む、徐放製剤など、身体からの迅速な排除から化合物を保護する担体と共に調製される。エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステルおよびポリ乳酸など、生分解性の生体適合性ポリマーを使用することができる。このような製剤の調製方法は、当業者には明らかである。これらの物質はまた、Alza CorporationおよびNova Pharmaceuticals,Incから商業的に入手できる。リポソーム懸濁液(細胞特異的抗原に対するモノクローナル抗体を用いて感染させた細胞に標的化されたリポソームを含む)もまた、薬学上許容される担体として使用することができる。これらは例えば、米国特許第4522811号に記載される方法など、当業者に公知の方法に従って調製することができる。
【0089】
投与の容易さおよび投薬量の均一性のため、投薬単位形態で経口的組成物または非経口的組成物を調製することが特に有利である。本明細書中で使用される投薬単位形態とは、処置されるべき対象にとって単位投与量として適した物理的分散単位をいう。それぞれの単位は、必要とされる薬学的担体に関連して所望される治療的効果を生じるように計算され、予め決定された量の活性化合物を含む。
【0090】
それら化合物の毒性及び治療効果は、例えば、LD50(半数の個体が死に至る薬物量)及びED50(半数の個体に有効な薬理効果が現れる量)の判定など、細胞培養または実験動物における標準の薬学的手順によって判定される。毒性と治療効果間の用量割合が治療指数であり、LD50/ED50の比で表される。高治療指数の化合物が好ましい。一方で、毒性のある副作用を持つ化合物は使用できるが、そのような化合物が影響を受けた組織の場所をターゲットとする送達システムの設計に注意し、未感染の細胞に対する潜在的な損傷を最小に抑え、それにより副作用を軽減する必要がある。
【0091】
細胞培養アッセイ及び動物研究から得られるデータを対象での使用向けの用量範囲の処方に使用できる。そのような化合物の投与量は、好ましくは、ED50を含み、毒性が少ないまたは毒性がない、血中濃度の範囲内とする。前記投与量は用いられる投与形態及び利用される投与経路によって、この範囲内で変化することができる。本発明の方法で使用されるあらゆる化合物について、治療的に有効な投与量は初めに細胞培養アッセイから見積もりが可能である。投与量は動物モデルで処方し、細胞培養において判定されたIC50(すなわち、半数の症状の阻害を達成する試験化合物の濃度)を含む血中血漿濃度範囲を達成することができる。そのような情報は、対象における有用な投与量のより正確な判定に用いることができる。血漿中のレベルは、例えば、高速液体クロマトグラフィで測定することができる。
【0092】
本明細書で定義されるように、治療的に有効量の本発明の活性化合物は、約0.001〜30mg/kg体重、好ましくは約0.01〜25mg/kg体重、より好ましくは約0.1〜20mg/kg体重、さらにより好ましくは約1〜10mg/kg、2〜9mg/kg、3〜8mg/kg、4〜7mg/kg、または5〜6mg/kg体重とすることができる。活性化合物は週に1回から1日3回またはそれ以上の頻度で、約1〜10週間、好ましくは2〜8週間、より好ましくは約3〜7週間、さらにより好ましくは約4、5、または6週間、投与することができるが、これに限定されない。当業者は、疾病または疾患の重篤度、前処置、対象の全般的健康状態または年齢、およびその他疾病の存在を含むが、これらに限定されない、特定の要因が対象を効果的に治療するために必要な投与量とタイミングに影響を与えることを認識する必要がある。さらに、治療的に有効量の本発明の医薬組成物での対象の治療は、単一の治療、または、好ましくは、一連の治療を含むことがある。
【0093】
遺伝子治療とRNAi
本発明の融合タンパク質をコードするコンストラクトは、受容体融合タンパク質の治療的に有効な投与量を対象に送達するための遺伝子治療プロトコルの一部として用いることができる。細胞への核酸の生体内導入に関しては、本発明の融合タンパク質をコードする、核酸を含むウイルスベクターの使用によるアプローチが好ましい。細胞のウイルスベクターへの感染は、標的細胞の大部分が核酸を受け取るという利点がある。加えて、例えばウイルスベクター中に含まれるcDNAによって、ウイルスベクター中でコードされる分子は、ウイルスベクター核酸を取得した細胞で効率的に発現される。
【0094】
レトロウイルスベクター及びアデノ随伴ウイルスベクターは、体内での融合タンパク質をコードする外来性核酸分子の転移向けの組み換え遺伝子送達システムとして用いることができる。これらベクターは細胞に核酸を効率的に送達し、転移された核酸は安定的に宿主の染色体DNAに組み込まれる。複製欠損レトロウイルスのみを産生する特殊な細胞株(「パッケージング細胞」と呼ばれる)の開発は、遺伝子治療のためのレトロウイルスの利用を増加し、欠損レトロウイルスは、遺伝子治療目的の遺伝子導入での使用に特徴付けられる(概説はMiller,A.D.(1990)Blood 76:271を参照)。複製欠損レトロウイルスは、標準的な技法でヘルパーウイルスの使用を通して標的細胞に感染するために用いることができるウイルス粒子にパッケージすることができる。組み換えレトロウイルスの産生及び体外または体内でそのようなウイルスを細胞に感染させるプロトコルは、Current Protocols in Molecular Biology、Ausubel,F. M. et al.、(eds.)Greene Publishing Associates、(1989)、セクション9.10〜9.14及びその他の標準実験マニュアルに記載されている。
【0095】
もう1つの有用なウイルス遺伝子送達システムはアデノウイルス由来ベクターを使用する。アデノウイルスのゲノムは、特定の遺伝子産物をコードし、発現するが、正常の溶菌ウイルス生活環で複製する能力が不活性となるように、操作することができる。例えば、Berkner et al.、BioTechniques 6:616(1988)、Rosenfeld et al.、Science 252:431〜434(1991)、Rosenfeld et al.、Cell 68:143〜155(1992)を参照できる。アデノウイルス株Adタイプ5 d1324またはその他アデノウイルスの株(例えば、Ad2、Ad3、Ad7、など)由来の適したアデノウイルスベクターは、当業者に公知である。組み換えアデノウイルスは、非分裂細胞を感染させることができない特定の状況において利点がある場合があり、かつ上皮細胞(Rosenfeld et al.、(1992)上記参照)を含む幅広い細胞の種類を感染させるために用いることができる。さらに、ウイルス粒子は精製および濃縮に対して比較的安定性があって適しており、かつ、上述のように、感染スペクトルに影響を与えるように修飾することができる。加えて、導入されたアデノウイルスDNA(及びそれに含まれる外来DNA)は宿主細胞のゲノムに組み込まれず、エピソームに留まるため、導入されたDNAが宿主ゲノムに組み込まれる状況(例えば、レトロウイルスDNA)での挿入変異の結果として生じることがある潜在的な問題を回避することができる。さらに、アデノウイルスゲノムの外来DNAに対する環境収容力は、ほかの遺伝子送達ベクターに比べて大きい(最大8キロベース)(Berkner et al.、上記参照;Haj−Ahmand et al.、J. Virol. 57:267(1986))。
【0096】
別の実施形態において、本発明の非ウイルス性遺伝子送達システムは、標的化された細胞による対象の核酸分子取り込みのためのエンドサイトーシス経路に依存する。このタイプの遺伝子送達システムの例は、リポソーム由来のシステム、ポリリシンコンジュゲート、人工ウイルスエンベロープを含む。代表的な実施形態において、本発明の融合タンパク質をコードする核酸分子は、表面が正に荷電した(例えば、リポフェクチン)及び(選択的に)標的組織の細胞表面抗原に対して抗体でタグ付けされたリポソームに封入されることができる(Mizunoら(1992)脳神経外科20:547〜551、PCT公報WO91/06309、日本特許出願第1047381号、欧州特許公報第EP−A43075号)。
【0097】
本発明の融合タンパク質をコードする遺伝子のための遺伝子送達システムは、任意の数の方法で対象に導入することができる。例えば、遺伝子送達システムの製剤は、例えば静脈内注射によって、全身に導入することができ、標的細胞内のタンパク質の特異的伝達は、遺伝子送達手段、受容体遺伝子の発現を制御する転写調節配列による細胞型または組織型発現、またはそれらの組み合わせによって提供されるトランスフェクションの特異度から主に発生する。ほかの実施形態において、組み換え遺伝子の最初の送達はかなり局所化されて動物への導入でより制限される。例えば、遺伝子送達手段はカテーテルによって(米国特許第5328470号参照)または定位的注入によって(例えば、Chenら(1994)PNAS 91:3054〜3057)導入され得る。遺伝子治療コンストラクトの製剤は、本質的に許容可能な希釈剤中の遺伝子送達システムから成るか、あるいは遺伝子送達手段が埋め込まれた徐放性マトリックスを含むことができる。融合タンパク質が、例えば、レトロウイルスベクターなど、組み換え細胞から完全に産生できる場合、製剤は融合タンパク質を産生する1つ以上の細胞を含むことができる。
【0098】
別の実施形態において、本発明に基づき病因に関与しているとして同定される自然免疫受容体の発現は、RNA干渉(RNAi)を用いて低減または完全に阻害される。RNAiは本技術分野で公知であり、低分子干渉RNA(siRNA)を用いて達成できる。本発明に基づくsiRNAは、最大29bps、25bps、22bps、21bps、20bps、15bps、10bps、5bpsまたは同程度またはそれらの間の任意の整数とすることができる。そのようなsiRNAは、例えば、ベクター(例えば、低分子ヘアピン型RNA(shRNA)をコードするベクターなど)によってコードされる形態またはリポソーム核酸複合体として投与することができる。免疫脂質複合体(immunolipid complex)などの標的化リポソームを含む、脂質:核酸複合体の調製は、当業者に公知である(例えば、Crystal、Science 270:404〜410(1995)、Blaese et al.、Cancer Gene Ther. 2:291〜297(1995)、Behr et al.、Bioconjugate Chem. 5:382〜389(1994)、Remy et al.、Bioconjugate Chem. 5:647〜654(1994)、Gao et al.、Gene Therapy 2:710〜722(1995)、Ahmad et al.、Cancer Res. 52:4817〜4820(1992)、米国特許第4186183号、第4217344号、第4235871号、第4261975号、第4485054号、第4501728号、第4774085号、第4837028号、第4946787号を参照)。したがって、本発明はまた、対象に投与されたときの自然免疫受容体のRNA干渉を媒介することができるRNA分子を含む医薬組成物も提供する。
【0099】
実施形態に基づき、本発明はマクロファージ中の DVLR/CLECA遺伝子RNAi介在性「ノックダウン」の非限定的な例を提供する。この方法での DVLR/CLECAの減衰はDV感染マクロファージ中の前炎症性サイトカインの分泌を大幅に抑え、それにより DVLR/CLECAのRNAi介在性減衰がDVの治療に有用であることを示す。
【0100】
DVLR/CLECAの発現を減衰するsiRNAまたはshRNAがデングウイルスに感染した対象のRNAi介在性治療に用いられることが特に意図されている。特定の遺伝子の発現を減衰するためのshRNAおよびsiRNAを設計、合成、投与する方法は、本技術分野で公知であり、例えば、米国特許第7022828号で説明されている。本発明のshRNAコンストラクト及びsiRNA分子との調製に適した物質の非限定的な例には、PEG結合(conjugated)核酸、リン脂質結合核酸、親油性成分を含む核酸、ホスホロチオアート、多様な組織への薬物の進入を強化できるP−糖タンパク質阻害剤(Pluronic P85など)、例えば、CNS(Jolliet−Riant and Tillement、1999、Fundam. Clin. Pharmacol.、13、16 26)、植え込み後の徐放送達のためのポリ(DL−ラクチド−コグリコリド)小球体などの生分解性ポリマー(Emerich DF et al.、1999、Cell Transplant、8、47〜58)Alkermes, Inc. Cambridge, Mass.;および血液脳関門を横切って薬物を送達することができ、及び神経細胞の取り込み機構を変化させることができるポリブチルシアノアクリラートから作製されたものな ど、搭載されたナノ粒子(Prog Neuropsychopharmacol Biol Psychiatry、23、941〜949、1999)が含まれる。本発明の核酸分子のCNS送達を含む、送達戦略のその他非限定的な例には、Boado et al.、1998、J. Pharm. Sci.、87、1308〜1315;Tyler et al.、1999、FEBS Lett.、421、280〜284;Pardridge et al.、1995、PNAS USA.、92、5592〜5596;Boado、1995、Adv. Drug Delivery Rev.、15、73〜107;Aldrian−Herrada et al.、1998、Nucleic Acids Res.、26、4910〜4916;Tyler et al.、1999、PNAS USA.、96、7053〜7058で説明されている物質が含まれる。これらの参考文献はすべて参照によってここに組み込まれる。さらに、ポリ(エチレングリコール)脂質を含有する表面修飾されたリポソーム(PEG修飾された、若しくは長時間循環するリポソームまたはステルスリポソーム)を含む組成物も、本発明の核酸に使用され得る。本発明の核酸分子は、多様な分子量の共有結合化PEG分子も含むことができる。これらの製剤は、標的組織中での薬物の蓄積を増加させる方法を提供する。薬物担体のこのクラスは、単核性食細胞系(MPSまたはRES)によるオプソニ ン化及び除去に耐えることにより、封入された薬物に対して、より長い血液循環時間及び強化された組織曝露を可能にする(Lasic et al.、Chem. Rev. 1995、95、2601〜2627;Ishiwata et al.、Chem. Pharm. Bull. 1995、43、1005〜1011)。そのようなリポソームは、おそらく、新血管新生が生じた標的組織中への血管外遊走と捕捉によって、腫瘍中に選択的に蓄積することが示されている(Lasic et al.、Science 1995、267、1275〜1276;Oku et al.、1995、Biochim. Biophys. Acta、1238、86〜90)。長時間循環するリポソームは、とりわけ、MPSの組織中に蓄積することが知られている従来の陽イオン性リポソームと比べて、DNA及びRNAの薬物動態学及び薬力学を強化する(Liu et al.、J. Biol. Chem. 1995、42、24864〜24870;Choi et al.、国際PCT公報第WO96/10391号;Ansell et al.、国際PCT公報第WO96/10390号;Holland et al.、国際PCT公報第WO96/10392;これらすべては参照によって本明細書に組み込まれる)。長時間循環するリポソームは、肝臓及び脾臓などの代謝的に攻撃的なMPS組織中への蓄積を回避する能力に基づいて、陽イオン性リポソームに比べてより大きな程度で、薬物をヌクレアーゼ分解から保護する可能性もある。
【実施例】
【0101】
実施例
本発明について、以下非限定的な実施例を挙げてさらに説明する。
【実施例1】
【0102】
自然免疫受容体の調製:Fc融合タンパク質
細胞培養
293F細胞(Invitrogen、R790−07)が、37℃のCOインキュベータ内のオービタルシェーカー(125rpm)上の125mLフラスク内無血清293フリースタイル203培地(Invitrogen、12338−018)で培養された。
【0103】
受容体.Fc融合遺伝子のコンストラクション
レクチン受容体の細胞外ドメイン、TREMおよびTLTが逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)によってクローニングされ、その後yT&Aベクターに、さらにその後pcDNA3.1(+)hIgG1.Fc発現ベクターにサブクローニングされた。得られた受容体.Fcコンストラクトは、ヒトFc受容体に結合しない、変異型ヒトIgG1 Fc部分と融合される、組み換えタンパク質をコードする。IgG1 Fc部分の突然変異は、L234A、L235E、G237A、P331Sである。細胞外ドメインをRT−PCR増幅するために用いられるプライマーの配列は次のとおりである(または、表2に記載された配列からプライマーを選択することも可能である)。
【0104】
CLEC1A/CLEC−1
センスプライマー
5'-GAATCCTTTCAGTACTACCAGCTCTCC-3' 配列番号 l
アンチセンスプライマー
5'-GAATTCTCAGTCACCTTCGCCTAATGT-3' 配列番号 2
CLEC1B/CLEC−2
センスプライマー
5'-GGATCCCTGGGGATTTGGTCTGTC-3' 配列番号 3
アンチセンスプライマー
5'-GAATTCTTAAGGTAGTTGGTCCAC-3' 配列番号 4
CLEC2B/AICL
センスプライマー
5'-GGATCCTCTCAGAGTTTATGCCCC-3' 配列番号 5
アンチセンスプライマー
5'-GGATCCCCCCATTATCTTAGACAT-3' 配列番号 6
CLEC4A/DCIR
センスプライマー
5' -GGATCCTTTCAAAAATATTCTCAGCTTCTT-3' 配列番号 7
アンチセンスプライマー
5' -GAATTCTCATAAGTGGATCTTCATCATC-3' 配列番号 8
CLEC4C/BDCA−2
センスプライマー
5'-GGATCCTTTATGTATAGCAAAACTGTCAAG-3' 配列番号 9
アンチセンスプライマー
5'-GAATTCTTATATGTAGATCTTCTTCATCTT-3' 配列番号 10
CLEC4D/CLEC-6
センスプライマー
5'-GAATCCCATCACAACTTTTCACGCTGT-3' 配列番号 11
アンチセンスプライマー
5'-GAATTCCTAGTTCAATGTTGTTCCAGG-3' 配列番号 12
CLEC4E/MINCLE
センスプライマー
5'-GAAGATCTACATTTCGCATCTTTCAAACC-3' 配列番号 13
アンチセンスプライマー
5'-GCGGTTAAAGAGATTTTCCTTTGTTCA-3' 配列番号 14
CLEC4K/ランゲリン
センスプライマー
5'-GGATCCCGGTTTATGGGCACCATA-3' 配列番号 15
アンチセンスプライマー
5'-GGATCCTCACGGTTCTGATGGGAC-3' 配列番号 l6
CLEC4L/DC−SIGN
センスプライマー
5'-GGATCCAAGGTCCCCAGCTCCATAAG-3' 配列番号 17
アンチセンスプライマー
5'-GAATTCCTACGCAGGAGGGGGGT-3' 配列番号 18
CLEC4M /DC−SIGNR/L−SIGN
センスプライマー
5'-GGATCCTCCAAGGTCCCCAGCTCC-3' 配列番号 19
アンチセンスプライマー
5'-GAATTCCTATTCGTCTCTGAAGCAGG-3' 配列番号 20
DLVR/CLECA(MDL−1)
センスプライマー
5'-AGATCTAGTAACGATGGTTTCACCAC-3' 配列番号 21
アンチセンスプライマー
5'-GAATTCCTGTGATCATTTGGCATTCTT-3' 配列番号 22
CLEC6A/Dectin−2
センスプライマー
5'-GGATCCACATATGGTGAAACTGGC-3' 配列番号 23
アンチセンスプライマー
5'-GAATTCCATCAGTCGATGGGC-3' 配列番号 24
CLEC7A/Dectin−1
センスプライマー
5'-GGATCCACCATGGCTATTTGGAGATCC-3' 配列番号 25
アンチセンスプライマー
5'-GAATTCTTACATTGAAAACTTCTTCTCACA-3' 配列番号 26
CLEC10A/ML2
センスプライマー
5'-GGATCCTCCAAATTTCAGAGGGACCTG-3' 配列番号 27
アンチセンスプライマー
5'-GAATTCTCAGTGACTCTCCTGGCTG-3' 配列番号 28
CLEC12A/CLL−1
センスプライマー
5'-GGATCCGTAACTTTGAAGATAGAAATGAAA-3' 配列番号 29
アンチセンスプライマー
5'- GAATCCTCATGCCTCCCTAAAATATGTA -3' 配列番号 30
CLEC13A/BIMLEC
センスプライマー
5'-GGATCCTCATGCTCCGGGCCGCG -3' 配列番号 31
アンチセンスプライマー
5'-GAATTCGCTAGCAATCACCAATGCTGA-3' 配列番号 32
COLEC12/CL−P1
センスプライマー
5'-AGAGGTGACAGAGGATCCCA-3' 配列番号 33
アンチセンスプライマー
5'-GAATTCGTGATCCCATCACAGTCC-3' 配列番号 34
MAFA−L/KLRG−1
センスプライマー
5'-GGATCCTGCCAGGGCTCCAACT-3' 配列番号 35
アンチセンスプライマー
5'-ATGACAGATCTGAGGGTCA-3' 配列番号 36
【0105】
組み換え受容体.Fc融合タンパク質の発現及び精製
受容体.Fc タンパク質がFREESTYLE293遺伝子導入システム(Invitrogen、カリフォルニア州カールズバッド)を使用して過剰発現され、プロテインAカラムで精製された。簡単に、3×10個の293-F細胞が1500rpmでスピンダウンされた後、28mlのFREESTYLE293培地で再懸濁された。その後、293FECTIN40μlとOPTI−MEM(Invitrogen、31985−062)1mlを室温で5分間混合し、30μgのプラスミドDNAと1mlのOPTI−MEM(Invitrogen、31985-062)でさらに20分間インキュベーションした後、293-F細胞を加えた。48時間後、上清を取り出し、組み換え融合タンパク質をプロテインAカラムで精製した。
【実施例2】
【0106】
多糖類抽出物の調製
霊芝生エキス
霊芝生エキス(アルカリ抽出、中和、エタノール沈殿で調製)をPharmanex Co.(米国カリフォルニア州)より取得した。Spectrapor(登録商標)透析用メンブレンチューブ分画分子量(MWCO)6000〜8000ダルトン、Thermo bio−basic SEC−1000カラム、Tosoh TSK G5000PWx1 SECカラム、およびすべての薬品と試薬は、別途記載がない限り、Sigma、またはAldrich Co.製である。
【0107】
霊芝抽出物の精製
生薬霊芝粉末(6g)(Pharmanex Co.から取得)を120mlのddHO中に溶解させ、熱水(100℃)で2時間攪拌し、1時間遠心分離(1000rpm)して不溶性物質を除去した。得られた溶液を約40℃〜約50℃で濃縮して少量を得た後、凍結乾燥して5g(83%)の暗褐色粉末(霊芝多糖; GLPS)を生成した。この可溶性残渣物をさらなる精製までの間−20℃で保存した。
【0108】
霊芝多糖類F3フラクションの標準分離
霊芝多糖類の可溶性残渣物の暗褐色粉末から霊芝多糖類フラクション3(以下、「GLPS F3」及び「F3」と呼ぶ)を分離した。クロマトグラフィ手順はすべて4℃の冷室で実行された。アジ化ナトリウム0.1Nを含む少量のトリスバッファー(pH7.0、0.1N)中に試料(2.1g)を溶解し、Sephacryl S−500カラム(95×2.6cm)と溶離液として0.1Nトリスバッファー(pH7.0)を使用して、ゲルろ過クロマトグラフィによって精製した。流量は0.6ml/分に設定され、1チューブにつき6.0mlが収集された。クロマトグラフィ後、各フラクションについてフェノール硫酸法で各チューブ内の糖含有量を検出した。5つのフラクションが収集された(フラクション1〜5)。フラクション3(F3)を約40〜50℃で回転式気化器により濃縮し、少量を得て、その後6000〜8000ダルトンのMWCOメンブレンを使ってそれを透析し、過剰な塩とアジ化ナトリウムを除去した。透析後、F3を凍結乾燥し、520mgの固体を得た。
【0109】
冬虫夏草由来の多糖の調製
冬虫夏草由来の多糖の精製のため、試料を0.2cm 片に砕いた後、脱イオン化熱水(100℃)で60分間インキュベーションし、室温まで冷却してから、0.2μmのフィルタを通過させ、等量のエタノールを加えて多糖を沈殿させた。凍結乾燥機を用いて沈殿物を乾燥させ、4℃で保管した。多糖の全糖量分析はフェノール硫酸法により485nmでODを測定することで判定され、多糖の純度はThermo Bio−Basic SEC−1000カラムを使用し、280nmのUV測定で、かつRI検出器を用いてHPLCにより判定された。
【0110】
Dendrobium huoshanense由来の多糖の調製
空気乾燥したD. huoshanenseを粉砕し、粉末に挽いて蒸留水中に均質化し、4℃で一晩攪拌した。不溶性物質を遠心沈殿法で収集した。上清を少量に濃縮した後、1分量のエタノールを加えて沈殿(0)と上清(N)を得た。定義済みの分子量を有する標準プルランフラクションを用いた多糖分析にはTSK G−5000PWサイズ排除カラムを高速液体クロマトグラフィ(HPLC、high performance liquid chromatography)で使用した。N中の多糖の分子量は1.2×10〜4.1×10ダルトンの間と見積もられ、O中の多糖の分子量は1.0×10〜2.2×10ダルトンの間と見積もられた。糖含量をフェノール硫酸法で測定した。O中の多糖は83%、N中の多糖は77%であった。OとNの両方共ヨウ素反応で陽性であり(λmax440nm、紺色)、これらフラクション中の多糖は主にα−D−グルカンであることを示している。
【0111】
キノコ由来の多糖の調製
空気乾燥したシイタケを粉砕し、粉末に挽いて蒸留水中で均質化し、4℃で一晩攪拌した。残渣を遠心沈殿法で除去し、上清を少量に濃縮した後、凍結乾燥して粗多糖類Lを得た。その後、0.25N NaOH溶液を(遠心沈殿法によって分離された)不溶性残渣に加え、この混合物を室温で一晩攪拌した後、2分量のエタノールを添加して多糖を沈殿させた。その後沈降された多糖類に蒸留水を添加し、続いて酢酸を加えてpHを中和した。得られた溶液を遠心分離し、かつ凍結乾燥して多糖類Mを得た。その後TSK G−5000PWサイズ排除カラムを使用したHPLCを実施して、多糖を分析した。糖含量をフェノール硫酸法で測定した結果、Lが79%の糖を含有し、Mが90%の糖を含有していた。シイタケ由来の多糖のフラクションのデータと比較すると、多糖LおよびMは主にβ-1、3−D−グルカンであることが示されている。
【0112】
β−1,3−グルカン、D−グルコース、D−ガラクトースの調製
競合アッセイ用の試料を調整するため、β−1,3−グルカン(Fluka、日本)100mgを7.5mlの水で懸濁し、40%(w/w)水酸化ナトリウム水溶液50μlを加えた。この混合物を還流下で1.5時間加熱し、冷却した。その後、メタノールを加えてβ−1,3−グルカンを沈殿させた。β−1,3−グルカンの沈殿を水に溶解させ、4Lのdd−HOで4回透析し、減圧濃縮して可溶性β−1,3−グルカンを得た。D−グルコース(Sigma)およびD−ガラクトース(Sigma)dd−HO(100mg/ml)中で溶解させ、4℃で保管した。
【0113】
ビオチニル−F3の調製
霊芝多糖−F3にワンポット反応を使用してビオチン標識した。具体的には、0.2N NaHCO/NaCO(10ml)中の霊芝多糖類−F3(100mg)とビオチンアミドヘキサノイル−6−アミノ−ヘキサン酸N−ヒドロキシ−スクシンイミドエステル(ビオチン−XX−NHS)1.0mgをDMF(1ml)中で反応させた。この混合物を室温で12時間攪拌した。反応の完了後、MWCO6000〜8000ダルトン(5×500ml)のメンブレンチュービングを使用し、4℃で得られた溶液を48時間透析した。透析後、ビオチニル−F3を凍結乾燥して、褐色粉末90mg(90%)を得た。ビオチニル−F3の精製はHPLCによってモニタされ、ストレプトアビジン−FITCを結合アッセイに使用した。
【実施例3】
【0114】
精製受容体:Fc融合タンパク質のウェスタンブロット分析
実施例1の精製受容体.Fc融合タンパク質が電気泳動を受け、ニトロセルロースメンブレン(Hybond−C extra、Amersham Pharmacia Biotech)に転写され、(1:3000)ペルオキシダーゼ標識ヤギ抗ヒトIgG Ab(Jackson、米国ペンシルベニア州)とTBST(0.02%Tween 20含有トリスバッファー塩中脱脂粉乳5%)バッファー中で反応された。TBSTでの洗浄後、可視化するためブロットを増強化学発光試薬(Amersham Pharmacia Biotech)でインキュベーションされた。
【実施例4】
【0115】
免疫吸着ドット結合アッセイ
5倍段階希釈後、Bio−Dot Microfiltration Apparatus(商標)(Bio−Rad、米国カリフォルニア州)を用いてビオチン化F3をメタノール活性化PVDFメンブレン(2μL/ドット)にブロットした。空気乾燥後、ブロットをTBSTでインキュベーションし、続いて100μLのストレプトアビジン結合西洋ワサビ由来ペルオキシダーゼ(HRP)(1:2000希釈)(Chemicon、米国カリフォルニア州)でインキュベーションした。結合反応は増強化学発光(ECL)試薬で可視化された(Amersham Pharmacia Biotech)。
【0116】
非ビオチン化多糖もメタノール活性化PVDFメンブレン上に固定化され、続いて100μLの受容体.Fc融合タンパク質(1μg/ml、2mM CaCl/TBST中)がBio−Dot Microfiltration Apparatus(商標)(Bio−Rad、米国カリフォルニア州)上で室温で1時間インキュベーションされた後、(1:3000)HRP結合(conjugated)ヤギ抗ヒトIgG抗体(Jackson、米国ペンシルベニア州)とTBST(0.02%Tween 20含有トリスバッファー塩中脱脂粉乳5%)バッファー中で反応された。BSTでの洗浄後、可視化するためブロットを増強化学発光試薬(Amersham Pharmacia Biotech)でインキュベーションされた。
【実施例5】
【0117】
組み換え受容体.Fc融合タンパク質の発現
免疫細胞由来のいくつかの自然免疫受容体の細胞外ドメインが、実施例1の方法に従い、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)によってクローンされた。増幅されたDNA断片がpcDNA3/hIgG1−変異プラスミドに含有されるヒトIgG1のFc部分と融合された。クローンされた融合遺伝子は293FREESTYLE哺乳類細胞に形質転換され、分泌されたタンパク質は実施例1の方法に従い、タンパク質ビーズによって精製された。図1に示すように、16のC型レクチン遺伝子がクローンされた(図1A)。具体的には、図1Aに、RT−PCRによって増幅された後、0.8%アガロース上で分画され、エチジウムブロミド染色により可視化された自然免疫受容体のDNA断片を示す。図1Bに、12%SDS−PAGEゲルでの電気泳動後、発現した組み換え受容体.Fc融合タンパク質を示す。図1Aと図1Bの両方で、次のレーン指定が用いられている:レーン1:CLEC2B/AICL、レーン2:CLEC4C/BDCA−2、レーン3:CLEC13A/BIMLEC、レーン4:CLEC1A/CLEC−1、レーン5:CLEC4D/CLEC−6、レーン6:CLEC12A/CLL−1、レーン7:CLEC4A/DCIR、レーン8:CLEC4L/DC−SIGN、レーン9:CLEC4M/DC−SIGNR、レーン10:CLEC7A/Detin−1、レーン11:CLEC6A/Detin−2、レーン12:CLEC4H2/HBVxAgBP、レーン13:CLEC4K/Langerin、レーン14:KLRG/MAFAL、レーン15:DLVR/CLECA(MDL−1)、レーン16:CLEC4E/MINCLE。さらに、ヒトTREM(骨髄細胞上に発現するトリガー受容体)−1、−2及びTREM様転写物(TLT)−1、−2(Bouchon et al.、2000、J Immunol 164、4991〜5;Daws et al.、2003、J Immunol 171、594〜9;Washington et al.、2002、Blood 100、3822〜4)も類似の戦略でクローンされ、発現された。
【実施例6】
【0118】
固定化された多糖と受容体.Fc融合タンパク質間の用量依存的相互作用
多糖と受容体.Fc融合タンパク質間の相互作用は、実施例4の方法に従い、ドット結合アッセイを用いてテストされた。霊芝多糖の可溶性フラクション3(F3)(実施例3を参照)は、サイトカインを産生する細胞を刺激する活性成分を含む(Wang et al.、2002、Bioorg Med Chem 10、1057〜62; Chen et al.、2004、Bioorg Med Chem 12、5595〜601; Chien et al.、2004、Bioorg Med Chem 12、5603〜9;Hsu et al.、2004、J Immunol 173、5989〜99)。霊芝サッカリドはβ−1,3型結合の多糖類バックボーン、またはα−1,4結合のポリマンノースバックボーンのいずれかを含むことが知られていた(Usui et al.、1983、Carbohydr. Res.、273;Miyazaki and Nishijime、1982、Carbohydr. Res. 109、290;Bao et al.、2002、Phytochemistry 59、175〜81)。C型レクチンファミリーのメンバーであるDectin−1受容体は、β-1,3−D−グリカンと相互作用することが示されている(Brown and Gordon、2001、Nature 413、36〜7)。Dectin−1受容体はβ−グルカンの生物学的作用を媒介することが知られている(Brown et al.、2003、J Exp Med 197、1119〜24)。このため、霊芝のF3部分はDectin−1受容体と相互作用するか否かを判定するため、実施例4のドット結合アッセイを用いてテストされた。
【0119】
ビオチン化F3フラクション(図2Aの「ビオチン−GLPS F3」)(実施例2に従い調製)は5倍段階希釈後にPVDFメンブレン上に固定化され、ストレプトアビジン結合HRPでインキュベーションされ、得られた結合反応が増強化学発光試薬を用いて検出された(実施例4参照)。図2Aに示すように、このドット結合アッセイの感度は約0.08μgより良い。図2Aはまた、非ビオチン化F3(図2Aの「GLPS−F3」)がPVDFメンブレン上に固定化され、その後ストレプトアビジン結合HRPと接触されたとき、いかなるバックグラウンドも見えないことを示している。
【0120】
非ビオチン化F3フラクションも段階希釈後PVDFメンブレン上に固定化され、100μLの1μg/mlのDectin−1.Fc融合タンパク質またはヒトIgG1でインキュベーションされ(陰性対照として)、続いてヤギHRP標識抗ヒトIgGでインキュベーションされた(実施例4を参照)。図2Bに示すように、Dectin−1.Fcはドット結合アッセイで約1ng未満のF3の存在を検出できる。Dectin−1.FcではなくヒトIgG1に接触されたブロットの領域に見えるバックグラウンドはない。
【0121】
図2Bのブロットのドット密度はデンシトメータ (ImageQuant)で測定され、結果によると、Dectin−1.Fc結合シグナルは用量依存的に増加したことを示している(図2C参照)。
【0122】
ほかの多糖がF3とDectin−1間の相互作用を阻害するか否かを判定するため、F3(10μg/ドット)がPVDFメンブレン上で固定化され、β−グルカン、D−グルコース、D−ガラクトース(0.1μg〜1000μg)の段階希釈溶液の存在する中で100μLのDectin−1.Fc(1μg/ml)と接触され、その後ヤギHRP標識抗ヒトIgGでインキュベーションされた。図2Dに競合βグルカンに関するブロットのドット密度分析を示す。図2Eに全競合(competitors)のブロット画像を示す。Dectin−1.FcとF3フラクション間の相互作用はβ−1,3−グルカンによって阻害されるが、D−グルコースまたはD−ガラクトースによっては阻害されないと見ることができる。これは、Dectin−1.FcとF3の相互作用は、β−1, 3−グルカンの認識を介していることを示す。
【実施例7】
【0123】
F3フラクションと相互作用する能力を持つ受容体の同定
F3とC型レクチンファミリーのほかのメンバーまたはIg様受容体との相互作用を分析した。非ビオチン化F3と非ビオチン化F3C(100kDaMWCO遠心チューブを通過した後のF3に由来する)(10μg/ドット)がPVDFメンブレン上に固定化され(実施例4を参照)、25の異なる組み換え受容体.Fc融合タンパク質(19のレクチン受容体、及びTREMとTLTファミリーの8つのメンバーを含む)の1μg/ml溶液100μLと、対照としてヒトIgG1でインキュベーションされた。ヤギHRP標識抗IgG抗体とECL試薬を用いて結合が検出された。結果を表形式で図3に示し(相対的ドット強度は「+」のシンボルで、検出可能な結合なしは「−」のシンボルで表示)、ブロットの画像を図4Aに示す。図3で用いられたプローブ番号のシステムが図4Aで維持されている。
【0124】
結果によると、Dectin−1.Fc(図3と図4Aのプローブ番号14)に加え、F3はKCR.Fc(図3と図4Aのプローブ番号7), DC−SIGNR.Fc(図3と図4Aのプローブ番号11)、TLT−2.Fc(図3と図4Aのプローブ番号21)とも相互作用したことが示されている。100kDaMWCO遠心チューブを通過した後のF3に由来するF3CのTLT2に対する親和性が低くなっていることが興味深い。これは、TLT2がF3とF3C間の微妙な違いを区別できることを示唆している。
【0125】
レクチン受容体ファミリーのメンバーは相互作用のためCa++に依存している。このため、 EDTA(エチレンジアミン四酢酸)のF3への結合を阻害する能力を研究した。その結果、EDTA(TBST中10mM)はF3のKCR.Fc、及びDC−SIGNR.Fcとの相互作用を完全に消滅させたが、F3のDectin−1.Fc、及びTLT2.Fcとの相互作用は消滅させなかった。図4BにCa++が存在する状況と存在しない状況(左パネルはTBSTのみ、右パネルは10mMのEDTA+TBST)で作成したブロットの画像を示す。ヤギHRP標識抗IgG抗体とECL試薬を用いて結合が検出された。この結果は、リガンドとKCR間の相互作用(Hoyle and Hill、1988、J Biol Chem 263、7487〜92)及びDC−SIGNRがCa++依存性であること(Soilleux et al.、2000、J Immunol 165、2937〜42)、一方Ca++がDectin−1とβ−1,3−グルカン間の相互作用に不可欠であること(Herre et al.、2004、Mol Immunol 40、869〜76)といった先行研究と合致する。従って、F3は複数の受容体と免疫細胞上で同時に相互作用できる豊富なグリカンを含んでいるようである。
【0126】
図4Cにβグルカンを多糖類として(10μg/ドット)、及び1μg/mlのDectin−1.Fc、DC−SIGN.Fc、mKCR.Fc、TLT2.Fc100μLを用いたドットブロットを示す。ヤギHRP標識抗IgG抗体とECL試薬を用いて結合が検出された。テストした4つの受容体.Fc融合タンパク質のうち、Dectin−1.Fcのみがβ−1,3−グルカンに結合した。これは、ほかの3つの受容体.Fc融合タンパク質はβ−1,3−グルカンではない糖成分に結合することを示している。
【実施例8】
【0127】
多様なソースに由来する多糖のフィンガープリント
冬虫夏草及び市場のその他ソースから分離された多糖のフィンガープリントを取得するため、Dectin1.Fc、mKCR.Fc、DC−SIGNR.Fc、TLT2.Fc融合タンパク質を用いて実施例4のドット結合アッセイを実施した。各多糖組成物は上述したようにPVDFメンブレン上に固定され、その後融合タンパク質の1μg/ml溶液100μLに接触された。ヤギHRP標識抗IgG抗体とECL試薬を用いて結合が検出された。図5Aに各融合タンパク質に関する個別のドットブロットを示し、図5Bに表形式で試料のキー番号と相対的なドット強度を示す。霊芝生薬抽出物(図5のスポット番号5)はDectin−1.Fc及びDC−SIGNR.Fcとのみ相互作用し、一方前記生薬抽出物由来の精製されたF3(スポット番号1)は4つすべての受容体と相互作用した。これは、F3精製工程が免疫受容体と相互作用する成分を豊富にしたことを示している。冬虫夏草由来の多糖類(スポット番号7)はDectin−1.Fcと強い相互作用があり、この多糖類はβ−1,3−グリカンを含むことを示しているが、ほかの3つの受容体との相互作用はF3よりずっと弱い。Dendrobiun huoshanenseから分離された多糖はヨウ素テスト反応が陽性であり(実施例2を参照)、これらフラクションが主にα−D−グルカンを含むことを示唆している。キノコ類から分離されたものとは対照的に、D. huoshanenseの多糖の混合(スポット番号6)は4つの受容体.Fc融合タンパク質のいずれとも反応しない。キノコ多糖からddHO(フラクションL、スポット番号8)と0.25N NaOH(フラクションM、スポット番号9)によって分離された多糖(実施例2を参照)は、特異的にDectin−1.Fc及びDC−SIGNR.Fcと結合する。従って、このアプローチで異なるソース及び調製から分離された多糖から明確なフィンガープリントを産生することができる。
【0128】
実施例6〜8は、F3がDectin−1.Fc、mKCR.Fc、DC−SIGNR.Fc、TLT2.Fcと相互作用することを示している。Kupffer細胞受容体(KCR)はD−ガラクトースとN−アセチルガラクトサミンに高い親和性を持ち(Fadden et al.、2003、Glycobiology 13、529〜37)、血漿D−ガラクトースまたはD−フコース末端の糖タンパク質を除去することができる(Lehrman et al.、1986、J Biol Chem 261、7426〜32)。F3の免疫調節機能はフコースの存在に依存しており、α1,2−フコシダーゼによる解糖系による切断がF3の作用を消滅させる。従って、これら4つの受容体が解糖系による切断後にF3と相互作用できるか否かという問題が興味深いものとなる。DC−SIGNR/L−SIGNは構造的にDC−SIGNに類似(77%の同一性)しているが、肝類洞壁、リンパ節、胎盤の内皮細胞でのみ発現される(Van Liempt et al.、2004、J Biol Chem 279、33161〜7)。DC−SIGN及びDC−SIGNRの両方がN−結合高マンノース型糖鎖(ManGlcNAcAsn糖ペプチド)に結合できる。しかし、DC−SIGNのみが末端フコース残基を持つグリカンに結合でき、DC−SIGNRはできない(Guo et al.、2004、Nat Struct Mol Biol 11、591〜8)。DC−SIGNRはDC−SIGNよりも比較的限られたリガンドに結合できるが、DC−SIGNRのみがF3と相互作用できる。これは、F3がFucα1−4GlcNAc、Lewis、Lewis及び血液型糖エピトープ(DC−SIGNの既知のリガンド)とは異なる固有の構造を含む可能性を示唆している。
【0129】
TLT-2はTREM様転写物ファミリーのメンバーであり、単一のV−set免疫グロブリン(Ig)ドメインと、プロリンリッチ領域及び免疫受容抑制性チロシンモチーフ(ITIM)を持つ長い細胞質尾部の特徴を含み、後者はタンパク質チロシンホスファターゼとの相互作用に用いられることが知られている(Washington et al.、2002、Blood 100、3822〜4;Washington et al.、2004、Blood 104、1042〜7)。F3は強力な免疫刺激機能を有し、TLT2.Fc結合成分を親和性クロマトグラフィによりF3から除去することで、F3の刺激機能をさらに強化できるか否かが将来的に興味深い研究となる。また、F3はDectin−1.Fc、KCR.Fc、DC−SIGNR.Fcを用いて親和性クロマトグラフィによりF3中のほかの成分を除去することでさらに精製することができる。
【0130】
F3とF3C間、F3と霊芝1-3間、キノコ多糖フラクションLとM間のディファレンシャルフィンガープリントは、精製手順を最適化し、異なるソースまたは異なる培養条件に由来するさまざまな多糖のモニタリングにここで例示したこれら4つの受容体.Fc融合タンパク質が使用できることを示唆している。
【実施例9】
【0131】
マイクロタイタープレート上での酵素結合免疫アッセイによるGLPS−F3と相互作用するヒトレクチン受容体の同定
多糖と受容体.Fc融合タンパク質の相互作用について、親水性力と疎水性力の両方を通してマイクロタイタープレート(ポリスチレン)上にGLPS−F3を固定化することに基づいた、酵素結合免疫アッセイを実施することによりさらに調査した。この形式では、プロファイリングするための異なる受容体.Fc融合体の数を実施例7よりも増加した。固定化のためのGLPS−F3の量を最適化するため、多様な量(3〜1000ng/ウェル、10mMのトリスバッファー、pH9.5に希釈)のビオチン化GLPS−F3(Biotin-GLPS−F3)をMaxiSorp StarWellマイクロタイタープレート上に塗布した(50μL/ウェル;ヌンク)。プレートを一晩4℃でインキュベーションした後、ウェルをTBSTで2回洗浄し、200μLのブロッキングバッファー(2%BSA/TBST)で室温で1時間遮断した。その後、ペルオキシダーゼ標識アビジン(1:5000希釈、Vector Laboratories)とTMB(テトラメチルベンジジン)基質を固定化されたビオチン化GLPS−F3の検出に用いた。図6Aに示すように、プレート塗布のビオチン−GLPS−F3の量は100ng/ウェルでプラトーに達し、このため、EIAでの非ビオチン化GLPS−F3の固定化に用いるために選択された。
【0132】
次にGLPS−F3と受容体.Fc間の相互作用をテストした。非ビオチン化 GLPS−F3が上述のように100ng/ウェルで固定化され、100μLの受容体.Fc融合タンパク質(2mM MgCL/2mM CaCl/1%BSA/TBSTに1μg/ml)が各ウェルに加えられ、室温で1時間インキュベーションされた。TBSTでの洗浄後、ウェルはペルオキシダーゼ標識ヤギ抗ヒトIgG Ab(1:5000希釈、Jackson ImmunoResearch Laboratories)とブロッキングバッファー中で室温で30分間インキュベーションされた。ウェルはTBST洗浄後100μLのTMB基質と15分間インキュベーションされ、Fusionプレートリーダー(Perkin Elmer)で450nmで読み取られた。結果はFc.Dectin−1結合(Dectin−1は、GLPS−F3中のバックボーンであるβ-1,3−グルカンに結合する既知のレクチン受容体である)に対して補正された(normalized)。図6BにDectin−1に対するGLPS−F3の各受容体の親和性を図の形式で示す。結果によると、GLPS−F3への高い結合親和性がFc.Langerin、Fc.DC−SIGN、MMR.Fc、TLR2.Fc、TLR4.Fc、Fc.CLEC-2(CLEC1B)、Fc.CLEC-6(CLEC4D)について認められたことが示されている(このアッセイにおいて高い結合とはFc.Dectin−1と比較して>50%の結合強度と定義する)。GLPS誘導細胞活性化の役割を果たすことを示しているTLR2とTLR4(Hsu et al.、J Immunol 173:5989〜5999(2004);Shao et al.、Biochem Biophys Res Commun 323:133〜141(2004))が、EIA形式でもGLPS−F3に結合することに注目すべきである。Fc.NKG2D、Fc.MINCLE、Fc.mKCR、DCAL1.Fc、DEC205.Fc、Endo180.Fc、NKp30(NCR3).Fcでも弱いながらも陽性のGLPS−F3結合能力(Fc.dectin−1と比較して25〜50%の結合強度)があった。Fc.AICL、Fc.BDCA2、Fc.CLEC1、Fc.CLL1、Fc.DCIR、Fc.DC−SIGNR、Fc.Dectin−2、Fc.MDL−1、Fc.ML2を含むほかのレクチン受容体は、対照のヒトIgG1と同様に、GLPS−F3に最小程度の結合能力があった。
【実施例10】
【0133】
GLPS−F3と相互作用する自然免疫受容体の競合アッセイ
GLPS−F3と特定の自然免疫受容体の相互作用を理解するため、多糖マンナンとβ−グルカン及び単糖D−マンノース(Man)、D−グルコース(Glc)、N−アセチル−グルコサミン(GlcNAc)、D−ガラクトース(Gal)、N−アセチル−ガラクトサミン(GalNAc)、L−フコース(Fuc)、シアル酸が競合アッセイで使用された。Fc.Dectin−1、Fc.Langerin、Fc.DC−SIGN、TLR4.Fc、MMR.Fc、Fc.CLEC-2(CLEC1B)、Fc.CLEC-6(CLEC4D)を含む、GLPS−F3に対してより高い結合能力を示した自然免疫受容体が検査された。アッセイは各多糖類または単糖類1mg/mlを加えて実施例9の通りに実施された。
【0134】
図7(糖類の存在しない状況で見られる結合に対して各受容体/糖類の組み合わせの結合%をグラフで示す)及び表1(図7のデータを表形式で示す)に示すように、GLPS−F3とFc.Dectin−1間の相互作用は、公開されている結果に基づくと、阻害率58%のβグルカンによって遮断され得る(Palma et al.、J Biol Chem 281:5771〜5779 (2006);Willment et al.、J Biol Chem 276:43818〜43823 (2001))。シアル酸(83%の阻害率)の添加はFc.Dectin−1 のGLPS−F3への結合を阻害した。Fc.LangerinとGLPS−F3間の相互作用は、ランゲリンの糖リガンドとして報告されている(Stambach & Taylor、Glycobiology 13:401〜410(2002))マンナン、Man、GlcNAc(95%、26%、84%の阻害率)によって分断された。シアル酸(95%の阻害率)もFc.ランゲリンのGLPS−F3への結合を阻害することが観察された。Fc.DC−SIGNのGLPS−F3への結合については、マンナン、Man、Fuc、シアル酸が強い遮断作用を示した(98%、72%、92%、90%の阻害率)一方で、GlcとGlcNAcは相互作用の遮断においてより弱い効果(それぞれ45%と27%の阻害率)しかなかった。マンナン、Man、Glc、GlcNAc、Gal、Fuc、シアル酸は、GLPS−F3と、Man、Fuc、GlcNAc、シアリルLewis x(sLex)に結合することが知られている重要なレクチン受容体である(Letuex et al.、J Exp Med 191:1117〜1126(2000);Stahl、Am J Respir Cell Mol Biol 2:317〜318(1990))MMR.Fc間の相互作用を遮断した(98%、87%、45%、78%、36%、88%、93%の阻害率)。Fc.CLEC-2のGLPS−F3に対する相互作用は、シアル酸(55%の阻害率)の添加によって遮断された。Fc.CLEC-6については、テストした糖の中で顕著なブロッキングは観察されなかった。とりわけ、マンナンとFucはTLR4.FcとGLPS−F3の相互作用に遮断作用(それぞれ72%と44%の阻害率)を示した。ここで得られた結果は、Dectin−1、ランゲリン、DC−SIGN、MMRの糖リガンドに関する研究で報告されている結果に添うものであった。また、多くのレクチン受容体が異なる糖成分を通して多価(multivalency)のGLPS−F3に結合できることも示された。
【0135】
【表1】


表1は糖競合体(sugar competitor)が不在時に見られる結合に相対する、糖競合体存在時の自然免疫受容体.Fc融合体のGLPS−F3への結合率を示す。
【0136】
実施例7〜10で提示したシステムはGLPSだけではなく、現在使用されている多くの漢方薬を含め、ほかの糖タンパク質混合物(mixture)の高スループットプロファイリングにおいても有用なツールである。多糖の固定化に異なる表面(PVDF及びポリスチレン)を用いることにより、GLPS−F3について異なるプロファイルを取得することができた。これは、異なる表面に対する混合物中の特定の多糖の選択的結合による可能性がある。これら2つの相補的形式から得られた結果は、多糖類混合物の「フィンガープリント」を提供する。多糖類混合物のこれらフィンガープリント戦略は、例えば、異なる条件下での、異なるソースまたは異なるバッチに由来する、草本抽出物の成分を監視するために用いることができる。さらに、特定の多糖類混合物のプロファイルから集めた情報は、それらの体内における生物学的作用の根本的分子機序を理解する際に非常に重要となる。
【実施例11】
【0137】
DVLR/CLECA(MDL−1)とデングウイルスの相互作用の検出
以下の実施例は、本発明の融合タンパク質および方法をどのように病原体と相互作用する自然免疫受容体を同定し、かつその後その情報をどのように用いてその自然免疫受容体に結合する病原体の下流の影響を判定し、そしてどのように病原体感染の治療用の治療薬を設計するかに用いることができるかを示す。
【0138】
デングは人に影響を与える最も重要な蚊媒介性ウイルス疾病の1つである。その世界的な分布はマラリアにも匹敵し、約25億人の人々流行性伝播の危険がある地域に居住している。デングウイルス(DV)感染後の臨床的症候群には、 デング熱(DF)とデング出血熱(DHF)/デングショック症候群(DSS)が含まれる。しかし、DHFおよびDSSを引き起こす根本的分子機序は未だよく解明されていない。
【0139】
DC−SIGNは、ヒト樹枝状細胞のDV感染を媒介することが知られている(Tassaneetrithep et al.、J Exp Med、2003、197(7):823〜9)。DVの病因を理解するためには、DVが樹枝状細胞、マクロファージ、ナチュラルキラー細胞、末梢血単核細胞(PBMC)由来のほかのメンブレン結合C型レクチン受容体およびC型様レクチン受容体と相互作用できるか否かを判定することが重要である。このため、DVLR1/CLEC4A(MDL−1)、Dectin−1、KCR、およびDC−SIGN(陽性対照として)の細胞外ドメインがヒトIgG1のFc部分に融合された。具体的には、DC−SIGN(配列番号17及び配列番号18)、 DVLR/CLECA(配列番号21及び配列番号22)、Dectin−1(配列番号25及び配列番号26)、KCR(フォワード:5'−CAGCCTTGGAGACCTGAGT−3' 配列番号37、リバース:5'−TAGCCTACTCTGGCCGC−3'配列番号38)のプライマーを使用して 、増幅されたcDNA断片を生成した。各フォワードプライマーは余分なBamHiサイトを有し、各リバースプライマーは余分なEcoRIサイトを有しており、ヒトIgG1のFc部分を含む哺乳類発現ベクターpCDNA3.1(Invitrogen)への増幅されたcDNAのサブクローニングが促進される。さらにその後、得られたベクターが可溶性組み換えタンパク質を産生するために293 FreeStyle細胞(Invitrogen)に形質転換された。すべての組み換え受容体.Fc融合タンパク質がタンパク質Aセファロースビーズ(Pharmacia)で精製され、0.1M グリシン−HCl(pH0.3)で溶出された。
【0140】
各受容体.Fc融合タンパク質1μgでマイクロタイタープレート上をコートし、一晩4℃で置いた。その後、結合バッファー(1%BSA、2mM CaCl、2mM MgCl、50mM トリス−HCl pH7.5、150mM NaCl)中の16681株(DEN2株)のDV(5×10粒子)がプレートに添加され、プレートを2時間インキュベーションした。非結合ウイルスの洗浄後、ビオチン化抗DEN2エンベロープタンパク質抗体(Wu et al.、J Viroi、2002、76(8):3596〜604)がウイルスに結合させるため1時間適用された。その後希釈した西洋ワサビ由来ペルオキシダーゼ結合(conjugated)ストレプトアビジンをプレートに添加し、続いて1時間インキュベーションした。さらにその後TMB基質を加え、ELISAリーダーを使用してOD450nmでプレートを読み取った。
【0141】
結果を図8Aに示す(**はp<0.01、***はp<0.001を表す(スチューデントのt検定))。結果によると、DC−SIGN(陽性対照)に加え、DVも DVLR/CLECAに結合することが示された。この結果を確認するため、ヒトIgG1(陰性対照)、DC−SIGN.Fc、KCR.Fc、 DVLR/CLECA. Fcで免疫沈降を実施した。具体的には、5×10のデングウイルス粒子を各タンパク質5μgでインキュベーションした後、タンパク質Aビーズを添加した。得られた免疫複合体を洗浄し、SDS−PAGEで分離して、ニトロセルロースメンブレン上に転写した。その後、メンブレンはビオチン化抗DEN2エンベロープタンパク質抗体でプローブされ、西洋ワサビ由来ペルオキシダーゼ結合(conjugated)ストレプトアビジンで発現された。その結果を図8Bに示す。結果によると、DC−SIGN.Fcと DVLR/CLECA.FcのみがDVを免疫沈降することができた。
【0142】
マイクロタイタープレートアッセイをEDTA(10mM)が存在する状態でキレートCa++ カチオンに対して繰り返した。結果(図8C)によると、デングウイルスに結合している DVLR/CLECAはCa++非依存的であり、一方DC−SIGN結合はCa++ 依存的であることが示された(***はp<0.001を表す、スチューデントのt検定)。
【0143】
マイクロタイタープレートアッセイを、1)500UのグリコシダーゼPNGaseF(New England Biolabs, Inc.)で一晩37℃でプレインキュベートされた、または、2)ジチオスレイトール(DTT)(0.1M)で処理された、または、3)95℃で5分間インキュベートされた、あるいは、4)5分間UV照射した、DV粒子(5×10)で DVLR/CLECA.Fc融合タンパク質に対しても繰り返した。その結果を図8Dに示す(アスタリスクは DVLR/CLECA.Fc融合タンパク質の結合親和性が未処理のウイルスに対してウイルスの修飾によって変化されている場合を示す、**p<0.01、*** p<0.001、スチューデントのt検定)。結果は、DVのPNGaseFでの前処理が DVLR/CLECA.Fcの相互作用を大きく阻害し、かつ加熱またはジチオスレイトールのいずれかで前処理がほぼ完全に DVLR/CLECA.Fc結合を阻害したが、DC−SIGN.FcのDVへの結合は阻害しないことを示した。これは、DVの糖エピトープと立体構造の両方が DVLR/CLECAへの結合に重要であることを示唆している。
【0144】
免疫細胞上での DVLR/CLECAの発現を評価するため、フローサイトメトリー分析がヒト多形核(PMN)細胞(好中球)、PBMC、マクロファージ、樹枝状細胞に実施された。PMNとPBMCは説明したとおりデキストラン沈降法(Kuan et al.、Br. J. Pharmacol.、2005、145(4):460〜468)、及びFicoll−Paqueでの標準密度勾配遠心沈殿法(Amersham Biosciences、ニュージャージー州ピスカタウェイ)で人の健常ドナーの全血からそれぞれ分離された。精製した好中球を赤血球の低張性溶解でリン酸緩衝生理食塩水(PBS、pH7.4)中に再懸濁した。続いてPBMCから抗CD14マイクロビーズ(Miltenyi Biotec GmbH、ドイツ、ベルギッシュグラートバハ)でのVARIOMACS法を使用した高勾配磁気分離によってCD14+細胞を精製した後、10ng/mlのヒトM−CSF(R&D Systems、ミネソタ州ミネアポリス)を添加した完全なRPMI−1640培地(Life Technologies、メリーランド州ゲイザースバーグ)で6日間培養した(Chang et al.、J. Leukoc Biol、2004、75(3):486〜494)。10%ウシ胎仔血清、800U/mlのヒトGM−CSF(Leucomax;Schering−Plough、ニュージャージー州ケニルワース)と、500U/mlのヒトIL−4(R&D Systems)を添加したRPMI1640培地で6日間培養することにより、樹枝状細胞(DC)を接着(adherent)PBMCから生成した(未成熟DC、immature DC)。成熟した活性DCを作製するため、未成熟DCをさらにγ線照射済み(5500rad)CD40リガンド(CD40L)発現L細胞(DNAX Research Institute、カリフォルニア州パロアルト)と3:1の割合で36時間インキュベーションした(Hsu et al.、J Immunol.、2002、168(10):4846〜4853)。
【0145】
フローサイトメトリーが、FITC結合(conjugated)抗 DVLR/CLECAモノクロナール抗体(R&D Systems、ミネソタ州ミネアポリス)、またはFITC結合抗DC−SIGNモノクロナール抗体(ED PharMingen)を使って、二重染色のためPhycoerythrin(PE)結合抗CD3、CD19、CD56、CD14、CD66抗体と組み合わせ(BD PharMingen)、上述の細胞型に実施された。背景情報を提供するため、対応するアイソタイプ対照(DVLR1 mAbに対してIgG2B、DC−SIGNに対してIgG1;Sigma)もこの表面染色で実施された。蛍光色素がFACSCaliburフローサイトメトリー(Becton Dickinson)によってCellQuestソフトウェア(Becton Dickinson)で分析された。CDマーカー陽性細胞が DVLR/CLECAまたはDC−SIGNの発現を判定するためにゲートされた。その結果を図9A( DVLR/CLECA)と図9B(DC−SIGN)に示す(網掛け部分はアイソタイプ対照を表す)。結果は、DC−SIGNが主に未成熟の樹枝状細胞で発現し、マクロファージでは弱く発現したことが示されている。また、 DVLR/CLECAがCD14+由来マクロファージ(MΦ)、CD66+PMN、CD14+新鮮分離PBMCの表面上では検出されたが、CD14+由来未成熟及び成熟樹枝状細胞では検出されなかったことも示している。これは、 DVLR/CLECA mRNAがヒト単球とマクロファージでは発現するが、樹枝状細胞ではしないという先行観察と合致している(Bakker et al.、Proc. Natl. Acad Sci USA、1999、96(17):9792〜9796)。
【0146】
この実施例で示された結果は、本発明が開示する受容体.Fc融合タンパク質に基づいた方法が、デングウイルスなど特定病原体に結合する自然免疫受容体の同一性の判定に利用可能であることを示している。そしてこれは、病原体と相互作用する細胞型を同定し、さらにその病原体による感染の治療または防止の新たなターゲットを提供することを可能にする。例えば、本発明の開示する結果は、DVの DVLR/CLECAへの結合を防止する物質を予防目的または治療目的に利用できることを示唆している。例えば、DVの DVLR/CLECAへの結合を防止する DVLR/CLECAに対するモノクロナール抗体を当業者であれば生成することが可能である。さらに、DVはフラビウイルスファミリーのメンバーであるため、この結果は DVLR/CLECAが、例えば、フラビウイルス属内のウイルス(ウエストナイルウイルス、日本脳炎ウイルス(JEV)、黄熱ウイルス、ダニ媒介脳炎ウイルスなど)及びヘパシウイルス属内のウイルス(C型肝炎ウイルスなど)といった、同一ファミリー内のほかのウイルスと相互作用する可能性も示唆している。従って、 DVLR/CLECAはこれらウイルスに対する治療または予防ターゲットとしても作用する可能性がある。加えて、 DVLR/CLECAはパターン認識受容体であるため、 DVLR/CLECAはほかのエンベロープウイルスに対する治療または予防ターゲットとして作用する可能性がある。
【実施例12】
【0147】
デングウイルス誘導DAP12リン酸化が DVLR/CLECAによって媒介される
DVLR/CLECA(MDL−1)は、長さ187aaから成り、膜貫通領域に荷電性残基を含み、DAP12(12kDaのNAX性化ンパク質)とペアを組むことが可能なII型膜貫通タンパク質である(Bakker et al.、Proc. Natl. Acad Sci USA、1999、96(17):9792〜9796)。DAP12は、最小の細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン中に荷電性アスパラギン酸、及びその細胞質尾部にITAM(免疫受容活性化チロシンモチーフ)を含有するジスルフィド結合のホモ二量体状膜貫通タンパク質である。DVはCD14+マクロファージ上で DVLR/CLECAに結合するため、またDAP12はITAMを有するため、DVがCD14+マクロファージにおいてDAP12リン酸化を誘導できるか否かの判定が興味を引く。従って、Chen et al、J.Virol.2002、76(19):9877〜9887で開示された方法を若干変更した方法を用いてCD14+マクロファージをDVに感染させた。簡単に、最終分化(terminal differentiated)マクロファージは培地中のウシ胎仔血清を除去するために不完全RPMI培地で洗浄された。その後異なる感染多重度(MOI)で細胞をDVに感染させた。ウイルスは細胞と共に無血清RPMIで37℃で2.5時間インキュベーションされ、ウイルスを吸着させた。培養プレートは最適なウイルス−細胞接触を確約するため30分ごとに静かに撹拌された。その後、細胞単層を無血清RPMIで2回、その後インキュベーションで1回洗浄することにより未吸着のウイルスが除去され、無細胞上清が分離して採取され、かつ感染性ウイルス産生とサイトカイン分泌の分析までアリコートで−80℃で保存された(実施例13参照)。感染性ウイルス力価がBHK−21細胞でのプラーク形成アッセイによって判定された。プラークはクリスタルバイオレットオーバーレイの7日後に目視検査でカウントされ、上清1mL当たりのプラーク形成単位(PFU、plaque-forming unit)数を判定した(Lin et al.、J. Virol.、1998、72(12):9729〜9737)。細胞内のDV抗原を検出するため、感染した細胞が1%のパラホルムアルデヒドで固定され、0.1%のサポニンで膜透過処理され、続いてNS3 mAb(Lin et al.、J. Virol.、1998、72(12):9729〜9737)または対応するアイソタイプコントロール(IgG1;Sigma)で染色された。1時間のインキュベーション後、蛍光検出のためPE結合(conjugated)ヤギF(ab)’抗マウスIgG二次抗体が加えられ、蛍光色素がFACSCaliburフローサイトメトリーによってCellQuestソフトウェアで分析された。
【0148】
結果を図10A〜Dに示す。感染の48時間後、MOI=5で、DV非構造タンパク質3(NS3)がマクロファージの細胞質中にフローサイトメトリーによって検出された(図10A;灰色のヒストグラムは抗体アイソタイプ対照)。細胞外ウイルス力価が感染後のさまざまな時間に測定され、マクロファージが生(live)DVに感染したときはウイルス粒子が培養上清に放出されるが、UV照射DV(UV−DV;氷上で5〜10cmの距離で15分間254nm照射)では放出されないことが明らかになった(図10B)。
【0149】
DAP12リン酸化が感染の2時間後にさまざまなMOI(MOI=0.05〜30、感染2時間後)と、一定のMOI(MOI=5)での時間経過(感染の2〜48時間後)で検査された。具体的には、リン酸化DAP12の検出のため、マクロファージが適切な時間、適切なMOIでDVによって刺激され、その後溶解バッファー(50mMトリス−HCl[pH7.5]、150mM NaCl、1%Triton X−100、0.1% SDS、5mM EDTA、10mM NaF、1mMオルトバナジン酸ナトリウム、プロテアーゼ阻害剤カクテルタブレット[Roche])中に溶解された。等量の全細胞抽出物(total cell extract)がDAP12ウサギポリクローナル抗体(Santa Cruz Biotechnology Inc. カリフォルニア州)とタンパク質Aセファロース(Amersham Biosciences AB)で4時間4℃で免疫沈降された。インキュベーション後、免疫複合体は3回洗浄され、SDS−PAGEによって分離され、続いてニトロセルロースメンブレンに転写され、さらに抗リン酸化チロシン抗体(4G10;Upstate Biotechnology, Inc.)でプローブされた。HRP結合(conjugated)二次抗体と増強化学発光(Amersham)を用いて免疫ブロット作製された。リプロービングのため、メンブレンが強いリプローブキット(Chemicon)で剥離され、DAP12抗体でブロットされた。
【0150】
多様なMOIで得られた結果を図10Cに、時間経過実験の結果を図10Dにそれぞれ示す。結果は、DV感染2時間後、MOIがMOI=0.05から上がるにつれてDAP12リン酸化の強度が増加し、MOI=5でピークとなることを示している(図10C)。DAP12リン酸化はDV感染2時間後に検出され、12時間でピークとなり、少なくとも48時間継続した(図10D)。UV−DVはCD14+マクロファージ中で複製できず、プラークアッセイ(図10B)で活動がなくても、DAP12はやはり2時間でリン酸化され、強度は生(live)DVによって誘導されたものよりずっと弱いながらも、リン酸化DAP12が12時間検出可能となった(図10D;UV−DV)。これは、DV誘導DAP12リン酸化には2つのフェーズがあり、フェーズI(最初の6時間)が複製非依存性で、フェーズII(12時間後)が複製依存性であることを示唆している。
【0151】
DAP12リン酸化が DVLR/CLECA経由であることを確認するため、CD14+マクロファージにおける DVLR/CLECAの発現を阻害するために低分子ヘアピン型RNA(short hairpin RNA、shRNA)でのRNA干渉(RNAi)を使用し、DAP12リン酸化が上述のようにアッセイされた。具体的には、ヒト DVLR/CLECAのコード領域が次の DVLR/CLECA siRNAで標的化された。
5'−TTGTTGGAATGACCTTAT-3' 配列番号39
【0152】
このストレッチは、shRNAを形成するため、Brummelkamp et al.、Science、2002、296(5567):550〜553からのループ配列(TTCAAGAGA)に適応された。本発明で用いられたポリメラーゼIIIターミネーターストレッチはTTTTTTであった。shRNAは、loxP部位、増強緑色蛍光タンパク質(EGFP、enhanced green fluorescent protein)の発現を促すCMV(サイトメガロウイルス)プロモーター、下流制限部位(HpaI及びXhoI)を持つU6プロモーターを含むpLL3.7遺伝子サイレンシングベクターにクローンされた(Rubinson et al.、Nat.Genet.、2003、33(3):401〜406)。また、DC−SIGN shRNAコンストラクトは、コンストラクトpSUPER−siDC−SIGN(Tassaneetrithep et al.、上記参照)に含まれるsh−RNAをHpaI/XhoIで消化したpLL3.7ベクターにサブクローニングすることにより作製された。コンストラクトはAmaxaキット(メリーランド州ゲイザースバーグ)を製造元の規格に従って用い、マクロファージにエレクトロポレーションされた。簡単に、マクロファージ(6x10)が上述のように採取され、100μLのヌクレオフェクター溶液に再懸濁された。siRNA(5μg)またはベクターコントロールを加えた後、細胞はAmaxaプログラムY−001を用いてエレクトロポレーションされ、回復に16時間与えられた。DVLR1及びDC−SIGNサイレンシングの効率が、抗 DVLR/CLECA及びDC−SIGNモノクロナール抗体(R&D Systems)をそれぞれ使用した免疫ブロットにより、トランスフェクションの24時間後に分析された。
【0153】
結果を図11に示す。コントロールベクターpLL3.7、またはDC−SIGN shRNAでエレクトロポレーションされたCD14+マクロファージは、DV感染後DAP12リン酸化において減少を示さなかった。対照的に、DAP12リン酸化はDV感染に先立って DVLR/CLECA−shRNAでエレクトロポレーションされたCD14+マクロファージにおいて劇的に減少した。このため、DV誘導DAP12リン酸化は DVLR/CLECA経由で発生すると結論付けられた。
【実施例13】
【0154】
DVLR/CLECAはDV介在性TNF−α放出に関与しているが、CD14+マクロファージへの侵入には関与していない
DV感染に際して、CD14+マクロファージは、腫瘍壊死因子α(TNF−α)、α−インターフェロン(IFN−α)、MIP−1α、IL−8(Chen et al.、上記参照)を含む前炎症性サイトカインとケモカインを分泌する。市販のELISAキットを用いてDV感染CD14+マクロファージの培養上清中のTNF−αのレベルを測定した。測定は異なるMOIで、及び感染後の異なる時間に、生(live)DVとUV−DVについて実施された。結果を図12A〜Cに示す(エラーバーは3回(triplicates)の平均からの標準誤差を示し、アスタリスクはサイトカイン産生の統計的に異なるレベル、*=p<0.05;**=p<0.01;***=p<0.001を示す)。結果によると、感染6時間後、生DVとUV−DVの両方が0.05〜30の範囲のMOIでTNF−α分泌に対し類似の作用をすることが示された(図12A)。感染12時間後、TNF−αの分泌は生DVのみに対して用量(MOIの増加)依存的に増加した。UV−DV感染細胞については感染12時間後、TNF−αレベルはすべてのMOIで変わらなかった(図12B)。図12CにTNFの時間変化測定結果を示す。結果によると、MOI=5で生DVに感染させたとき、TNF−αの分泌は6時間(8pg/ml)から12時間(85pg/ml)にかけて急速に増加し、48時間(350pg/ml)でピークに達することが示されている。しかし、UV−DVでインキュベーションしたとき、TNF−αの分泌は 8pg/ml(6時間時点)から5pg/ml(12時間時点)に減少した。これは初期反応(6時間時点)がウイルス複製に非依存的である一方、TNF−α分泌のより後のフェーズ(12時間後)はDV複製と相関性があることを示唆している。
【0155】
DC−SIGNは先に樹枝状細胞へのウイルス侵入を媒介するためDVと相互作用することが示されている。RNAi法と先の実施例の試薬を用い、DV感染CD14+マクロファージ中でのDC−SIGN−sh−RNA及び DVLR/CLECA−shRNAのNS3発現における作用を調べた。図13Aは、DC−SIGN−shRNA及び DVLR/CLECA−shRNAがそれらそれぞれのタンパク質をノックダウンできることを示している(pWTSI及びpLL3.7はインサート対照ではない)。図13Bは、フローサイトメトリー分析の結果を示し、DC−SIGN−shRNAのみがCD14+マクロファージにおけるDV NS3の発現を弱める可能性があることを示している。この結果は、抗DS3抗体を用いた共焦点免疫蛍光顕微鏡法で確認された。図13CはshRNAコンストラクトでエレクトロポレーションされた細胞の上清中のウイルス力価のリアルタイムPCR分析を示す。結果は、DC−SIGN−shRNAのみがDV感染細胞の上清中のウイルス力価を減弱させることができることを示している。
【実施例14】
【0156】
DVLR/CLECAはCD14+マクロファージからのDV誘導性前炎症性サイトカイン放出に関与している
ELISAを用い、前述の実施例の方法(2.5時間トランスフェクション)に従って DVLR/CLECA及びDC−SIGNのノックダウン後、DVに感染した(MOI=5)CD14+マクロファージのサイトカイン放出プロファイルを評価した。最初の12時間、DC−SIGN−shRNAはTNF−α、MIP−1α、IFN−α、IL−6、IL−8の分泌に作用しなかった。図14A〜Bを参照する(エラーバーは3回の平均からの標準誤差を示し、アスタリスクは対照実験と比較した統計的に有意な差異を示す、*=p<0.05;**=p<0.01;***=p<0.001)。48時間後、DC−SIGN−shRNAはTNF−α、MIP−1α、IFN−α、IL−6の分泌に 軽度の阻害作用(20%未満)があり、IL−8の分泌は影響されなかった。DC−SIGNがウイルスの侵入と複製に関与しているため、この観察は初期のサイトカイン分泌(最初の12時間)がDV複製に非依存的であることを示唆している。対照的に、 DVLR/CLECAのノックダウンはTNF−α、MIP−1α、IFN−α、IL−8の分泌を大幅に抑制した(p<0.005)が、IL−6は抑制されなかった。これは、 DVLR/CLECAがCD14+マクロファージからのDV誘導サイトカイン放出に関与していることを示唆している。従って、DVの DVLR/CLECAへの結合を防止する治療薬がヒトにおけるDV誘導サイトカイン放出の有害な影響を防止するために有効となる。例えば、 DVLR/CLECAのDVとの相互作用を防止するモノクロナール抗体は、DV誘導デングショック症候群(DSS)またはデング出血熱(DHF)の防止または治療に有効となる。
【実施例15】
【0157】
拮抗的抗 DVLR/CLECAモノクロナール抗体(mAb)がDV血清型1、2、3、4による炎症性サイトカイン放出を消滅させる
標準の技法を用いて DVLR/CLECAに対するモノクロナール抗体を生成した。簡単に、マウスがDVLR−1.Fc融合タンパク質で免疫され、マウスからの脾細胞をP3/NSI/1−Ag4−1[NS−1]骨髄腫細胞(ATCC TIB−18)と融合してハイブリドーマを形成した。生成されたmAbのうち、クローン9B12、3E12のサブクローン(クローン3E12A2、3E12C1、3E12G9)、及びクローン8H8F5は、DEN1(766733A株)、DEN2(PL046株)、DEN3(H−87株)、DEN4(866146A株)の感染後、用量依存的にマクロファージからのTNF−α放出を抑制した。図15にDVに感染したCD14+マクロファージによって培養上清に分泌されたTNF−αのELISA測定値を示す。標準の命名法に従い、各抗体はそれを分泌するハイブリドーマのクローン番号で呼ばれる。従って、本発明は上述のモノクロナール抗体を分泌するハイブリドーマも提供する。
【0158】
結果によると、抗 DVLR/CLECA抗体は、ヒトのDV感染CD14+マクロファージからの前炎症性サイトカイン放出を防止する有効な治療薬として作用することが示されている。特に、ただし排他的でなく、本実施例のモノクロナール抗体、またはそのフラグメント、あるいは本実施例の抗体と同一のエピトープに結合する抗体(またはそのフラグメント)は、本発明の方法に従い、医薬組成物として作製し、ヒトにおけるDV感染の治療または予防向けに投与することが可能である。
【実施例16】
【0159】
デングウイルスによって活性かされる免疫細胞上のパターン認識受容体(PRR)の判定
樹枝状細胞(DC)及びマクロファージはDV感染の主な標的である(Halstead et al.、J. Exp. Med. 1977、146:201〜217;Palucka、Nat. Med. 2000、6:748〜749;Wu et al.、Nat. Med. 2000、6:816〜820)。感染したDCがアポトーシスを起こす(バイスタンダーDCによる前炎症性サイトカインの分泌に関わらず)(Palmer et al.、J Virol. 2005、79:2432〜2439)一方、感染したマクロファージは少なくとも45日間生存し、感染6時間後から複数のサイトカインとケモカインを分泌する(Chen et al.、J. Virol. 2002、76:9877〜9887)。これは、マクロファージがDV感染に伴う前炎症性サイトカインの主要なソースであり、そこでウイルス粒子がパターン認識受容体(PRR)を活性化させることで炎症反応を引き起こす可能性があることを示唆している。このコンテクストで、TOLL様受容体(TLR、Toll-like receptor)、C型レクチン、免疫グロブリン様(Ig様)受容体(例えば、TREM及びTREM様受容体(TLT))が潜在的PRRとされている(Cook et al.、Nat. Immunol. 2004、5:975〜979;Klesney−Tait et al.、Nat. Immunol. 2006、7:1266〜1273;Robinson et al.、Nat Immunol. 2006、7:1258〜1265)。
【0160】
デングウイルスが免疫細胞の候補PRRに結合し、それらを活性化させるか否かを判定するため、22の融合タンパク質が哺乳類細胞で発現され、かつDV2とのそれらの相互作用についてスクリーニングされた(表2)。融合タンパク質は、ヒトIgG1.Fcフラグメントと、C型レクチンの細胞外ドメイン及びIg様受容体を含有した。
【0161】
【表2−1】

【表2−2】

【0162】
表2に組み換え受容体.Fc融合タンパク質のコンストラクトを示す。
【0163】
図16に示すように、DVはDLVR/CLECAと相互作用する。具体的に、図16aはELISAによって判定されたDV(5×10 PFU)の受容体.Fc(1μg)との相互作用を示す。図16bでは、DV(5×10 PFU)と受容体.Fc(5μg)の複合体が免疫沈降され、DVエンベロープ(E)タンパク質に対するmAbでウェスタンブロット検出された。図16cは、ELISAで判定された、EDTA(10mM)によるDLVR/CLECA-DV相互作用の阻害を示す。図16d及び図16eは、DC−SIGN(CLEC4L)とDLVR/CLECAの両方がヒト293T細胞へのDV結合を増加する(図16d)一方で、糖の添加がDC−SIGN(左パネル)またはDLVR/CLECA(右パネル)形質転換293T細胞へのビオチン化DVの結合を用量依存的に阻害する(図16e)ことをフローサイトメトリーによって判定した、糖競合アッセイを示す。 図16eにおいて、MFIは平均蛍光強度を表す。単糖類(マンノース及びフコース)と多糖類(マンナン)の単位(U)はそれぞれ、mMとmg/mlである。図16fは、ELISAで測定したPNGaseF(500U)、DTT(0.1M)、熱(95℃、5分)、またはUV(10J/cm)のDLVR/CLECA-DV相互作用に対する影響を示す。データは3回の独立した実験の平均値±標準偏差として示されている。両側検定のスチューデントt検定を実施した。
【0164】
テストした受容体のうち、DC−SIGNはDVのエンベロープ(E)タンパク質上に位置するグリカンと相互作用することがこれまでに示されている(Pokidysheva, E.et al.、Cell 124:485〜93 (2006))。ELISAを用い、DLVR/CLECA.Fc(DC−SIGN.FcとDC−SIGNR.Fcに加え)がDV2を捕獲できることが示された(図16a)。DLVR/CLECAとDV間の相互作用の特異性を確認するため、複合体がタンパク質Aセファロースビーズで免疫沈降され、その後抗DVエンベロープ(抗E)モノクロナール抗体(mAb)でプローブされた。Eタンパク質がDC−SIGN.FcとDLVR/CLECA.Fcの免疫沈降で検出され、DLVR/CLECAがデングウイルス粒子と相互作用することが確認された(図16b)。しかしながら、DC−SIGNのDVへの結合はCa++依存的である一方で、EDTA(Ca++キレート剤)はDLVR/CLECAとDVの相互作用に一切作用しなかった(図16c)。さらに、DC−SIGNとDLVR/CLECAでの293T細胞のトランスフェクションはビオチン化DVの細胞への結合増加につながった(図16d)。
【0165】
2つの保存されたN−結合糖鎖付加部位がEタンパク質のAsn−67とAsn−153にあり(Pokidysheva,E. et al.、Cell 124:485〜93(2006))、付着したグリカン(末端フコースとマンノース含有)は細胞吸着とウイルス侵入に関与している(Modis, Y. et al.、J. Virol. 79:1223〜1231(2005)).DLVR/CLECAとDVの会合におけるグリカンの参与を調べるため、ウイルス粒子がフコース、マンノース、またはマンナンとインキュベーションされた。このうちマンノースとマンナンはDC−SIGN用のリガンドである(Mitchell et al.、J. Biol. Chem. 276: 28939〜28945(2006))。予想されたとおり、マンノースとマンナンはDC−SIGNとDVの相互作用の用量依存的な阻害を引き起こし(図16e)、一方DLVR/CLECAのDVへの結合はフコース(p<0.0001)と、より少ない程度ながら、マンナン(p=0.0005)の存在で大幅に減少された(図16e)。DVのPNGaseFでの前処理もDLVR/CLECAとDVの相互作用を大きく減少し(図16f)、ウイルスのEタンパク質に存在するグリカンが結合に必須であることを示唆している。熱処理またはジチオスレイトール(DTT)もDLVR/CLECAとDVの相互作用を消滅させることが判明しており(図16f)、デングウイルス粒子上におけるグリカンの正しい局所的な分布が重要であることを示唆している。
【実施例17】
【0166】
DC−SIGNとDLVR/CLECのデングウイルスとの相互作用
図17にヒトPBMCにおけるDC−SIGN及びDLVR/CLECAの発現パターンを示す。新鮮分離PBMCがPE結合(conjugated)抗体で図17aに示す実施形態に基づいてCDマーカー(BD PharMingen)とFITC結合(conjugated)抗DC−SIGN mAbに、または図17bに示す実施形態に基づいてFITC結合抗DLVR/CLECA mAb(R&D Systems)に二重染色された。CDマーカー陽性細胞がDC−SIGNとDLVR/CLECAの発現を判定するためにゲートされた(点線)。網掛け部分はアイソタイプ対照を示す。
【0167】
DCとマクロファージ上で発現したDC−SIGN(図17a)は、その細胞質尾部にエンドサイトーシスまたは細胞内輸送のいずれかに関与すると考えられているモチーフを3つ含有する(Lozach et al.、J. Biol. Chem. 2005、280、23698〜23708)。対照的に、DLVR/CLECAは本来単球とマクロファージ上で排他的に発現されるDAP12会合分子として同定されているが(図17b)、そのリガンド及び生物学的機能は謎のままである(Bakker et al.、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1999、96、9792〜9796)。
【実施例18】
【0168】
DLVR/CLECAはDV誘導DAP12リン酸化に必須であるが、デングウイルス複製には必須でない
図18に示す実施形態に基づくと、DLVR/CLECAはDV誘導DAP12リン酸化に必須であるが、DV複製には必須でない。具体的には、図18aにおいて、リン酸化チロシン及びDAP12に対する抗体を用いてウェスタンブロットでヒトマクロファージにおけるDV誘導 DAP12リン酸化(感染2時間後)が判定された。図18bはDV及び紫外線不活化DV(UV−DV)によって誘導されたDAP12リン酸化のキネティクスを示す。図18cはshRNAのDLVR/CLECA及びDC−SIGNの発現をノックダウンする能力と、DV介在性(m.o.i.=5)DAP12リン酸化を阻害する能力を示す。図18dはフローサイトメトリーで判定したマクロファージにおけるDV侵入と複製に対するshRNAの作用を示す。図18eは共焦点顕微鏡で検査した非構造タンパク質NS3(赤;Cy3標識)の発現に対する抗DLVR/CLECA mAb、抗DC−SIGN mAb、マウスIgG(50 μg/ml)の作用を示す(Tassaneetrithep, B. et al.、J Exp Med 197: 823〜29(2003))。細胞はHoechst 33342(青)でカウンター染色された。図18dおよび図18eの両方で、マクロファージをDV(m.o.i.= 5)に感染させ、感染48時間後のNS3発現を判定した。図18fは感染マクロファージのDV力価に対するshRNAの作用を示す。
【0169】
マクロファージのDV感染は用量依存的にDAP12リン酸化を誘導することが分かった(図18a)。DAP12リン酸化は感染12時間後(p.i.)にピークに達し、生(live)DVの存在する中では少なくとも48時間持続した一方で、紫外線不活化デングウイルス(UV−DV)は限られたDAP12リン酸化のみを生じ、12時間だけ持続した(図18b)。これは、感染から最初の2〜6時間、DAP12リン酸化がDV複製に非依存的であることを示している。DC−SIGNのノックダウン(pLL3.7/DC−SIGNによる)ではなく、DLVR/CLECAのノックダウン(shRNA pLL3.7/DLVR/CLECAを使用)が、DAP12リン酸化に大幅な減少を引き起こしており(図18c)、DVでトリガされるDAP12リン酸化はDLVR/CLECAに媒介されることを示唆している。
【0170】
DC−SIGNはDVによるDCの感染に関与していることが知られている(Navarro−Sanchez et al.、EMBO Rep. 4:723〜28(2003);Tassaneetrithep et al.、J. Exp. Med. 197:823〜829(2003))。このため、DLVR/CLECAがDVのマクロファージへの侵入に関与しているか否かを知るために、DVがマクロファージ中で複製されるときに発現されるDV非構造タンパク質3(NS3)の発現を監視することにより、それをテストした。DC−SIGNと対照的に、shRNAによるDLVR/CLECAのノックダウン(図18d)または抗DLVR/CLECA AbでのDLVR/CLECAとDVの相互作用の遮断(図18e)は、マクロファージにおけるNS3発現を阻害しなかった(それぞれフローサイトメトリーと共焦点顕微鏡で検査)。shRNA pLL3.7/DLVR/CLECAも感染したマクロファージの上清へのデングウイルス粒子の放出を抑制できなかった(プラーク形成アッセイで判定)(図18f)。これらの結果は、DC−SIGNがDV感染と複製に介在する一方で、DVとDLVR/CLECAの相互作用が細胞シグナリングを引き起こすことを示唆している。
【実施例19】
【0171】
DLVR/CLECAとデングウイルスの相互作用の阻害がウイルスの排除反応に影響せずに感染したマクロファージによる炎症反応を抑制する
DLVR/CLECAがDV誘導性炎症に関与しているか否かを判定するため、DV感染後のマクロファージによる炎症性サイトカインの分泌を調べた。
【0172】
図19に示す実施形態に基づくと、DLVR/CLECAはDV介在性TNF−αの分泌に重要であるが、IFN−αの分泌には重要でない。より具体的に、図19aはELISAにより6時間及び感染12時間後に測定されたマクロファージによるDV及びUV−DV誘導性TNF−α分泌の用量依存性を示す。図19bはDV感染(m.o.i.=5)後のTNF−α発現のキネティクスを示す。図19cはDV感染マクロファージ(m.o.i.=5)からのTNF−α、IL−6、MIP1−α、IL−8、IP−10、IFN−αの分泌に対するDLVR/CLECAとDC−SIGN shRNAの作用を示す。図19dでは、受容体特異的shRNAでのノックダウン実験により、DV誘導IFN−αの分泌がTLR7−MyD88経由であり、TNF−αの分泌がDLVR/CLECA−TLR7−MyD88経由であることを示す。図19eは、DV血清型1〜4に応答したTNF−αの分泌を阻害する拮抗的抗DLVR/CLECA mAbが阻害されていることを示す(表3参照)。
【0173】
【表3】

【0174】
表3に抗ヒトDLVR/CLECA mAbの特性を示す。「*」−p<0.05;「**」−p<0.01;「***」−p<0.001。ヒトマクロファージからのDV誘導TNF−α分泌を抑制することができる抗体(10μg/試料)。両側検定のスチューデントt検定を実施してデータを適切な各アイソタイプ対照抗体と比較した。ヒトマクロファージからTNF−αの分泌を引き起こすことができる抗体は(アイソタイプ対照と比較して)アゴニスティックであると定義された。特異性はpLL3.7/DLVR/CLECA shRNA(pLL3.7 ベクター及びpLL3.7/DC−SIGNはTNF−α分泌を媒介する抗体に対していかなる作用もなかった)を使ったTNF−α分泌の消滅によって確認された。ELISA、酵素結合免疫吸着アッセイ;WB、ウェスタンブロット;FACS、蛍光標識細胞分取。抗体はアジ化ナトリウム不含有、濾過滅菌済み、エンドトキシンレベル1マイクログラム当たり0.1EU未満。
【0175】
M.R.mAb(抗マンノース受容体mAb;mIgG1)とマウスIgM(mIgM)を陰性対照として用いた。図19dと図19eの両方で、マクロファージがDV(m.o.i.=5)に感染され、サイトカインアッセイ用に感染36時間後に採取された。データは3回の独立した実験の平均値±標準偏差として示されている(少なくとも3つの異なるドナーからのマテリアルを使用)。両側検定のスチューデントt検定を実施した。「ND」は未検出を表す。
【0176】
感染6時間後にTNF−αの用量依存的分泌が検出され、DVまたはUV−DVのいずれかに感染されたマクロファージによって同程度のサイトカインが分泌された(図19a、左パネル)。しかし、感染12時間後では、DVによるTNF−αの分泌がさらに増加したものの、UV−DVでは増加しなかった(図19a、右パネル)。48時間の時間経過中、TNF−αの分泌はDVに感染されたマクロファージで連続して増加した一方、UV−DVの感染24〜48時間後、このサイトカインはほぼ検出できなかった(図19b)。これらのデータはDAP12リン酸化のキネティクス(図18b)に準じており、DV介在性TNF−αの分泌はDAP12の活性化に関連があることを示唆している。また、DLVR/CLECAのノックダウンがDV感染マクロファージによるTNF−α、IL−6、IL−8、MIP1−α、IP−10の放出をDC−SIGNのノックダウンよりも大幅に抑制したことが観察された(図19c)。しかしながら、pLL3.7/DC−SIGNがIFN−αの分泌を軽度に抑制した(p=0.048)一方で、pLL3.7/DLVR/CLECAはIFN−αにまったく作用しなかった(図19c)。
【0177】
サイトカインの分泌につながるDV活性化シグナリング経路をより理解するために、DV感染に先立ってマクロファージがshRNAで形質転換され、DLVR/CLECA、DC−SIGN、TLR4、TLR7、またはMyD88をノックダウンした。得られたデータによると、DV誘導IFN−αの分泌はTLR7−MyD88経路で発生し(p=0.0016)、一方TNF−αの分泌はDLVR/CLECA(p=0.003)とTLR7−MyD88の両方を介して媒介される(p=0.013)(図19d)ことが示唆されている。DVの4つの血清型(上の表3参照)に対してDV感染マクロファージからのTNF−α分泌の阻害によって判断された特異的(differential)拮抗的作用を持つ抗DLVR/CLECA mAbの一群が生成された(図3e)。これらのデータは、DLVR/CLECAの異なるエピトープが個々の相互作用を媒介するようであるが、DLVR/CLECAとDVの相互作用を阻害する抗体は関連のDV血清型に感染したマクロファージによる炎症応答を抑制できることを示している。抗DLVR/CLECA mAbの特異的(differential)拮抗的作用は、各DV血清型がDLVR/CLECAの異なるエピトープに結合し、かつ抗DLVR/CLECA mAbは抗DLVR/CLECA mAbの結合部位と重なる結合部位を持つ特定のDV血清型の結合を阻害することができるという事実に関連している可能性がある。
【実施例20】
【0178】
抗体依存性感染増強(ADE)介在性IFN−αの分泌はDLVR/CLECに非依存的である
非中和性抗DV AbがFcR受容体を介してDVの標的細胞への侵入を助け、それによりサイトカイン放出を増強する、感染の抗体依存性感染増強(ADE、antibody-dependent enhancement)と呼ばれる現象がこれまでに示されている(Halstead et al.、J. Exp. Med. 146:201〜217(1977);Goncalvez et al.、Proc Natl Acad Sci USA 104:9422〜9427(2007))。例えば、抗prM及び抗E mAbは体外でこの作用を誘導することが示されている(Huang et al.、J Immuno 176:2825〜2832(2006))。ここでは、DLVR/CLECAとDVの相互作用の遮断がADEを阻害できるか否かに関する調査を実施した。
【0179】
図20に示す実施形態のとおり、DLVR/CLECAはADE介在性TNF−α分泌に重要であるが、IFN−αは重要でない。より具体的には、図20aでマクロファージがDV(m.o.i.=5)、DV/抗EまたはDV/抗prM免疫複合体(ADE)に36時間感染され、続いて抗NS3 mAbによりDV複製の検出を行った。拮抗的抗DLVR/CLECA mAb(1μg;クローン9B12H4)またはアイソタイプ対照が存在する状況で、10人からのマクロファージがDV2(図20b)あるいはDV/抗prMまたはDV/抗E複合体(図20c)に感染された。TNF−α及びIFN−αの分泌がELISAで判定された。両側検定のスチューデントT検定を実施した。
【0180】
プライマリヒトマクロファージが、DV単独または抗prM/DVまたは抗E/DV免疫複合体と共に、抗DLVR/CLECA mAb(またはアイソタイプ対照)が存在する状況で36時間感染された。抗prM/DV及び抗E/DV免疫複合体(ADE)は、DV単独と比較してNS3の発現(図20a)及びTNF−αとIFN−αの分泌レベルを増加する(図20bおよび図20c)ことが分かった。しかしながら、抗DLVR/CLECA mAbがDV、抗prM/DV及び抗E/DV免疫複合体(図20c)に感染したマクロファージからのTNF−α放出を大幅に阻害する一方で、IFN−αの分泌は影響を受けず、ADE介在性IFN−αの分泌は、(DV誘導IFN−α産生に関して上述したように)DLVR/CLECAに非依存的であることを示唆している。
【実施例21】
【0181】
デングウイルス誘導血管漏出におけるDLVR/CLECAの関与
DHFとDSSの特徴は、皮下及び重要臓器の出血を伴う血漿タンパクの漏出である。これらの症状は血管透過性を高める数々の可溶性因子と免疫細胞によって放出されるサイトカインにより引き起こされる(Green et al.、Curr. Opin. Infect. Dis. 19:429〜436(2006))。DLVR/CLECAがDV誘導血管漏出に関与しているか否かを判定するため、ヒト皮膚微小血管内皮細胞の単層(HMEC−1)が透過性アッセイで用いられた(Carr et al.、J. Med. Virol. 69:521〜528(2003))。
【0182】
図21に示す実施形態に基づき、拮抗的抗DLVR/CLECA mAbはDV感染マクロファージの上清によって内皮細胞単層の透過性を回復(rescue)する。より具体的に、図21aはDVまたはDV/抗prM複合体(ADE)に感染したマクロファージからの上清でのインキュベーション後にHRPの透過を測定することによって判定されたHMEC−1単層の透過性における時間経過上の変化を示す。上清中のTNF−αレベルがELISAによって測定された。図21bに示すように、TNFR2.Fc(5μg/ml)と抗DLVR/CLECA(クローン9B12H4、5μg/ml)内皮単層の透過性に対する阻害作用が判定された。データは3回の独立した実験の平均値±標準偏差として示されている。両側検定のスチューデントt検定を実施した。
【0183】
DVまたは抗prM/DV免疫複合体に感染したマクロファージからの上清は、HMEC−1単層における透過性を誘導することが分かった。そのうち、免疫複合体(ADE)は感染の最初の36〜48時間にわたりDV単独よりも大きな作用を示した(図21a、左)。興味深いことに、透過性における変化は上清中のTNF−αレベルと相関性がなかった(図21a、右)。さらに、組み換えTNFR2.FcによるTNF−αの中和がDVまたは抗prM/DVによって引き起こされる透過性の誘導を部分的に阻害することができた(p<0.05)(図21b)一方で、抗DLVR/CLECA mAbはこれに関してより効果的であった(図21b)。抗DLVR/CLECAがTNF−α(図19c)に加え、マクロファージによるほかの炎症性サイトカインの分泌を遮断したことが観察されており、これがこの現象を説明できるかもしれない。
【実施例22】
【0184】
拮抗的mAbとデングウイルス誘導性TNF−α分泌間の用量依存的相互作用
DVとCLEC5Aの相互作用の遮断が体内でのDV誘導致死性からマウスを回復させることができるか否かについてさらに調査を実施した。図22に示す実施形態に基づき、mDLVR/CLECAとDVの相互作用(図22a)及びmDLVR/CLECAのマウス細胞における発現パターンを(図22b及び図22c)が示された。より具体的に、図22AはELISAによって判定されたDV(5×10PFU)とヒト及びマウスのDLVR/CLECA.Fc(1μg)の相互作用を示す。マウス脾細胞(図22b)、マウス骨髄(BM)由来マクロファージ及びマウスマクロファージ細胞株Raw264.7(図22c)におけるmDLVR/CLECAの発現を判定するため、F4/80及びCDマーカー陽性細胞がゲートされた。
【0185】
マウスDLVR/CLECA(mDLVR/CLECA)はヒトDLVR/CLECAと同様の親和性でDVと結合し(図22a)、mDLVR/CLECAは骨髄系(CD11b+、F4/80+)、骨髄由来マクロファージ、及びマウスマクロファージ様Raw264.7細胞で発現されることが分かった(図22b及び図22c)。
【実施例23】
【0186】
mDLVR/CLECAとDVの相互作用の遮断はRaw264.7細胞からのDV誘導TNF−αの分泌を抑制する。
図23に示す実施形態に基づくと、mDLVR/CLECAとDVの相互作用の遮断はRaw264.7細胞からのDV誘導TNF−αの分泌を抑制する。より具体的に、図23aはヒトDC−SIGNがマウスマクロファージ細胞株Raw264.7へのDV結合を増加し、DV感染の促進作用を増強したことを示す。TNF−α放出がELISAによって判定された。図23bは、ヒトDC−SIGNを安定的に発現しているマウスDLVR/CLECA. Raw264.7細胞に対する拮抗的mAbの同定が、mAbの存在する状況でDV2(PL046; m.o.i.=30)とインキュベーションされたことを示す。上清中のTNF−αレベル(感染48時間後)がELISAで判定された。図23cは抗mDLVR/CLECA mAb(クローン:3D2H6及び10D7H3)がDV2(NGC−N;m.o.i.=30)誘導性TNF−α放出を用量依存的に阻害することを示す。mIgG1はアイソタイプ対応の陰性対照として作用する。
【0187】
DVはヒトDC−SIGNを安定的に発現しているRaw264.7細胞(Raw264.7/DC−SIGN)を刺激し、TNF−αを分泌させ(図23a)、拮抗的mAb(表4)によるmDLVR/CLECAとDVの相互作用の遮断はRaw264.7/DC−SIGN細胞によるDV誘導TNF−αの分泌を用量依存的に消滅させた(図23b及び図23c)。
【0188】
【表4】

【0189】
表4に抗マウス DLVR/CLECA mAbの特徴を示す。「*」−p<0.05;「**」−p<0.01;「ND」−未実施。マウスマクロファージ細胞株RAW264.7/DC−SIGNからのDV誘導TNF−αの分泌を抑制する抗体。両側検定スチューデントT検定を実施し、データを適切な各アイソタイプコントロール抗体と比較した。ELISA、酵素結合免疫吸着アッセイ;FACS、蛍光標識細胞分取。抗体はアジ化ナトリウム不含有、濾過滅菌済み、エンドトキシンレベル1マイクログラム当たり0.1EU未満。
【実施例24】
【0190】
デングウイルス(NGC−N)はSTAT1−/−マウスで致死性を誘導する
図24に示す実施形態に基づき、STAT1−/−マウス(n=5/グループ)が幅広い範囲の投与量(102〜105PFU)のDV2/PL046またはDV2/NGC−N株(i.p.及びi.c.ルート)で4週間チャレンジされた。データをカプラン−マイヤー生存曲線で示す。
【0191】
IFN−αはウイルス複製を感染細胞と未感染細胞の両方で阻害する作用を発揮し、DV感染に対するIFN介在性応答はSTAT1依存的(ウイルス複製のコントロールに不可欠)及びSTAT1非依存的(感染の消散に不可欠)経路の両方に関係がある(Shresta、et al、J. Immunol.175:3946〜3954(2005))。野生型マウスはDV感染に耐性があったが、STAT1欠損(STAT1−/−)(Durbin、 et al.、Cell.84:443〜450(1996))マウスはDV2〜9(New Guinea C−N株)誘導致死性に感受性があった(図24)。
【実施例25】
【0192】
DLVR/CLECAに対する拮抗的mAbの潜在的治療作用
STAT1−/−マウスに対する拮抗的mAbの潜在的治療作用についてさらにテストを実施した。図25に示す実施形態に基づき、抗DLVR/CLECA mAbはSTAT1欠損マウスにおいてDV誘導血管漏出と致死性を防止する。より具体的に、図25aでは、mAb 3D2H6に対して作成したマウスDLVR/CLECAがDVチャレンジSTAT1−/−マウスの皮下及び腸出血を阻害している。図25bでは、DVチャレンジSTAT1−/−マウスの重要臓器への血漿タンパクの漏出がDLVR/CLECAに対するmAb(3D2H6及び10D7H3)によって減少されたことがエバンスブルーアッセイにより判定された。 図25cは臓器からのエバンスブルーの抽出による血管透過性の定量化を示す。データは3回の独立した実験の平均値±標準偏差として示されている:*p<0.05;**p<0.01;***p<0.001(スチューデントt検定)。図25dは抗DLVR/CLECA mAbまたはTNFR2.Fcの存在するまたは存在しない状況における感染7日目のDVチャレンジSTAT1−/−マウスに関するTNF−αとIP−10の血漿レベル(n=8;上と中央)及びウイルス力価(n=4;下)を示す。両側検定のスチューデントt検定を実施した。図25eは拮抗的抗マウス DLVR/CLECA mAbまたはTNFR2.Fcが存在する状態でDV2(New Guinea C−N株、1×10 PFU/マウスi.p.+i.c.ルート)でチャレンジされたSTAT1欠損マウスの生存曲線を示す。データは4回の独立した実験(各グループ17マウス)から収集され、ログランク検定でカプラン−マイヤー生存曲線として示した。DLVR/CLECA mAbの治療とマウスIgG間の有意な差異のp値が示されている。
【0193】
DVチャレンジSTAT1−/−マウスは感染8日目に皮下と腸の出血に加えて被毛の乱れと弱い麻痺を示し(図25a)、感染から7〜14日以内にすべて死亡した(図25e)。5用量のAb(100μg/マウス、i.p.)またはTNFR2.Fc(100μg/マウス、i.p.)が感染0、1、3、5、7日目に投与された。感染9日目、DVチャレンジマウスの腎臓、肝臓、胃、小腸、大腸、脾臓へのエバンスブルーの漏出が対照群と比較して抗mDLVR/CLECA mAbで治療したマウスで大幅に減少した(図25b及び図25c)。抗mDLVR/CLECA mAbも感染7日目に(図25d、下)ウイルス複製を抑制することなく、TNF−αとIP−10の血漿レベルを効果的に低下させ(図25d、上と中央)、感染14日目にマウスを致死性から保護した(70%の保護率)。抗mDLVR/CLECAで治療されたマウスの全体生存率は感染21日目の観察で48%であり(図25e)、感染23日目に存命マウスの血漿からDVが排除された(データは表示していない)。従って、DLVR/CLECAとDVの相互作用を遮断することは、出血及び血漿タンパク漏出というDV関連合併症を防止し、同時に適応的免疫反応によるウイルス排除を妨げることなく、マクロファージ炎症性応答を抑制した。対照的に、TNFR2.FcはTNF−αの血漿レベルを効果的に低下させたものの(図25d)、血管透過性(図25c)を減少することも、致死性からマウスを保護することも(図25e)なかった。
【実施例26】
【0194】
DLVR/CLECがJEV介在性DAP12リン酸化とヒトマクロファージからのTNF−α分泌に関与している
DV同様に、JEVは類似のウイルス感染応答パターンに従い、これはすべてのフラビウイルスで同一または類似であると考えられる。図26aに示すように、DLVR/CLECA.Fc(1μg)のJEV及びDV(5×10PFU)それぞれとの相互作用がELISAによって判定された。DVはヒトDLVR/CLECA(187アミノ酸長)配列番号72と相互作用するが、選択的スプライシングされた形態のsDLVR/CLECA(aa43〜65が削除されている)配列番号 73とはしない。対照的に、JEVはsDLVR/CLECAのみと相互作用するが、全長のDLVR/CLECAとはしない。図26bに示すように、DVはヒトマクロファージにおいてDAP12リン酸化を(感染2時間後に)誘導する。DV感染マクロファージのDAP12が抗DAP12 mAbによって沈降され、SDS−PAGEで分画後ニトロセルロースペーパーにブロットされ、続いてリン酸化チロシンとDAP12に対する抗体でそれぞれインキュベーションされる。JEV誘導DAP12リン酸化(m.o.i.=5)はpLL3.7/DLVR/CLECAによって阻害される。図26cに、JEV感染に反応したヒトマクロファージからのTNF−α分泌のキネティクス(左)が示されている。JEV誘導TNF−α分泌はpLL3.5/DLVR/CLECA mAbによって阻害される(右)。データは3回の独立した実験の平均値±標準偏差として示されている。
【実施例27】
【0195】
mAb 3E12A2の可変重鎖及び軽鎖配列
mAb 3E12A2の可変重鎖配列を下に示す(配列番号 60):
【表5】

mAb 3E12A2の可変軽鎖配列を下に示す(配列番号 61):
【表6】

【実施例28】
【0196】
可変重鎖及び軽鎖配列 for mAb 3E12G9
mAb 3E12G9の可変重鎖配列を下に示す(配列番号 62):
【表7】

mAb 3E12G9の可変軽鎖配列を下に示す(配列番号 63):
【表8】

【実施例29】
【0197】
mAb 8H8F5の可変重鎖及び軽鎖配列
mAb 8H8F5の可変重鎖配列を下に示す(配列番号 64):
【表9】

mAb 8H8F5の可変軽鎖配列を下に示す(配列番号 65):
【表10】

【実施例30】
【0198】
mAb 8H8F5、3E12A2、3E12G9の可変重鎖及び軽鎖配列の比較
mAb 8H8F5、3E12A2、3E12G9の可変重鎖配列の比較を下に示す(それぞれ配列番号 66、67、68):
【表11】

mAb 8H8F5、3E12A2、3E12G9の可変軽鎖配列の比較を下に示す(それぞれ配列番号 69、70、71):
【表12】

【0199】
DLVR/CLECAはデングウイルス粒子徒食説相互作用し、かつ、それにより、DAP12リン酸化をもたらす。DLVR/CLECAとDVの相互作用を遮断することでインターフェロンαの放出に影響することなく、前炎症性サイトカインの分泌が抑制される。さらに、抗DLVR/CLECAモノクロナール抗体はDV誘導血漿タンパクの漏出、及び皮下と重要臓器の出血を阻害し、かつSTAT1欠損マウスでDV感染の発生を最大50%減少する。この結果は、DVによって引き起こされるマクロファージからのサイトカイン放出にDLVR/CLECAとTLR7経路の両方が関与しており、一方DLVR/CLECAとDVの相互作用の遮断がウイルスの排除を妨げることなく炎症を軽減することを示唆している。しかしながら、TLR7(またはMyD88)受容体の遮断は前炎症性サイトカインと、ウイルス排除性サイトカインの両方の分泌を阻害し、ウイルス及び炎症の排除を最終的に妨げる。このため、デングウイルス、及び日本脳炎ウイルスなどほかのフラビウイルスの効果的な治療には、DLVR/CLECAのウイルス結合の減衰を必要とするが、TLR7またはMyD88受容体については必要としない。従って、デングウイルスと抗DLVR/CLECA抗体の結合遮断はDHF/DSS患者における重度のデング疾病進行に対する治療を提供する。
【0200】
前述に記載した本明細書は当業者が本発明を実施するために十分であると考えられる。寄託された実施例は本発明及び本発明の範囲内で機能的に同等な任意の抗体の特定の要素のみを示すことが意図されているため、本発明は寄託されたハイブリドーマによって範囲が限定されることはない。本発明における材料の寄託は、ここに記載された説明が、その最良の実施形態を含め、本発明の任意の要素の実施を可能にするために不十分であるということを認めることを構成せず、また請求項の範囲をそれらが表す特定の説明に限定すると見なされない。実際に、ここに示し、ここで説明されたものに加え、本発明の多様な変更が前述の説明から当業者にとって明らかとなり、それらは後付の特許請求の範囲内に含まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受容体の結合領域(binding domain)と、基質(substrate)に付着させるための領域を含む融合タンパク質の補体(complement)を取得する工程、
病原体が融合タンパク質の補体の少なくとも1つの融合タンパク質の結合領域に結合するかを決定するため前記融合タンパク質と病原体を接触させる工程、
前記病原体が前記融合タンパク質に結合されているかを検出する工程、
を含み、そのうち、前記融合タンパク質の補体が少なくとも1つの受容体の複数の異なる結合領域を表すことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記融合タンパク質の補体の結合領域が、細胞膜受容体の細胞外部分のグリカン結合部位を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記基質に付着させるための前記領域が免疫グロブリンの.Fc部分であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記検出の方法が酵素結合免疫吸着アッセイであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記病原体がフラビウイルスであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記フラビウイルスがデングウイルスであることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記フラビウイルスが日本脳炎ウイルスであることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
病原体に感受性のある細胞を取得する工程、
少なくとも1つの細胞受容体遺伝子をノックダウンする工程、
前記細胞と前記病原体を接触させる工程、
前記細胞のサイトカイン分泌レベルを測定する工程、
を含むことを特徴とする、方法。
【請求項9】
さらにサイトカイン放出に作用する受容体を判定するために分泌量測定値の相関性を探る工程を含むことを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
測定される前記サイトカインの分泌が、TNF−αの分泌であることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記病原体がフラビウイルスであることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記フラビウイルスがデングウイルスであることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記フラビウイルスが日本脳炎ウイルスであることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
病原体によって示されるリガンドに結合する少なくとも1つの細胞受容体を同定する工程、
前記病原体に感染した動物に対し、前記受容体への前記リガンドの結合を阻害して前記病原体の作用を修飾するため物質を投与する工程、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項15】
前記病原体がフラビウイルスであることを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記フラビウイルスがデングウイルスであることを特徴とする、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記受容体がDLVR/CLECA受容体であることを特徴とする、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記作用が細胞からのTNF−αの放出であることを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記フラビウイルスが日本脳炎ウイルスであることを特徴とする、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記物質が、前記病原体に対する前記受容体の親和性を減少する前記受容体に対する抗体であることを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項21】
前記作用が細胞からのサイトカインの放出であることを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項22】
前記サイトカインがTNF−αであることを特徴とする、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記受容体がDLVR/CLECA受容体であることを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項24】
病原体の動物における作用を修飾するため動物に感染している病原体の作用を修飾する物質の有効量を提供する工程を含み、そのうち前記物質が動物のネイティブ細胞の少なくとも1つの細胞受容体に誘導され、前記受容体が病原体によって示されるリガンドに結合することを阻止することを特徴とする、方法。
【請求項25】
前記リガンドがグリカンであることを特徴とする、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記物質が受容体に結合する抗体であることを特徴とする、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記抗体が抗DLVR/CLECA抗体であり、前記受容体がDLVR/CLECA受容体であることを特徴とする、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記病原体がフラビウイルスであることを特徴とする、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記フラビウイルスが、デングウイルスまたは日本脳炎ウイルスのいずれかであることを特徴とする、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
デングウイルスに感染した動物に有効量の抗DLVR/CLECA抗体を提供する工程を含み、そのうち、前記抗DLVR/CLECA抗体が、デングウイルス粒子によって示されるリガンドのDLVR/CLECA受容体への結合を阻止し、それによりTNF−α の分泌が阻害されることを特徴とする、方法。
【請求項31】
前記抗DLVR/CLECA抗体が、配列番号 66、配列番号 67、配列番号 68から構成される群から選択されたアミノ酸配列を有する可変軽鎖を含むことを特徴とする、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記抗DLVR/CLECA抗体が、配列番号 69、配列番号 70、配列番号 71から構成される群から選択されたアミノ酸配列を有する可変重鎖を含むことを特徴とする、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
日本脳炎ウイルスに感染した動物に有効量の抗DLVR/CLECA抗体を提供する工程を含み、そのうち、前記抗DLVR/CLECA抗体が、日本脳炎ウイルス粒子によって示されるリガンドのDLVR/CLECA受容体への結合を阻止し、それによりTNF−αの分泌が阻害されることを特徴とする、方法。
【請求項34】
前記抗DLVR/CLECA抗体が、配列番号 66、配列番号 67、配列番号 68から構成される群から選択されたアミノ酸配列を有する可変軽鎖を含むことを特徴とする、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記抗DLVR/CLECA抗体が、配列番号 69、配列番号 70、配列番号 71から構成される群から選択されたアミノ酸配列を有する可変重鎖を含むことを特徴とする、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
インターフェロンαの分泌に影響することなく、少なくとも1つの前炎症性サイトカインの分泌を少なくとも部分的に阻害する有効量の物質をデングウイルスに感染した動物に提供する工程を含むことを特徴とする、方法。
【請求項37】
前記前炎症性サイトカインがTNF−αを含むことを特徴とする、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記物質が抗DLVR/CLECA抗体であることを特徴とする、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記物質が、グリカンリガンドのDLVR/CLECAへの結合を阻害するが、グリカンリガンドのToll様受容体7またはMyD88受容体への結合を阻害しないことを特徴とする、請求項36に記載の方法。
【請求項40】
前記物質が、グリカンリガンドのDLVR/CLECAへの結合に阻害する抗DLVR/CLECA抗体であることを特徴とする、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
デングウイルス感染に感受性のあるマウスと、マウス体内のDLVR/CLECA受容体をノックダウンするsh−RNA粒子を含むことを特徴とする、マウス。
【請求項42】
前記sh−RNA粒子が配列番号39を含むことを特徴とする、請求項41に記載のマウス。
【請求項43】
動物の病原体感染の作用を修飾するため、動物の少なくとも1つの細胞受容体に対する有効量の抗体を含む製剤を含み、
前記修飾が少なくとも動物細胞の前炎症性サイトカイン分泌の阻害を含み、かつウイルスの排除に作用するサイトカインの分泌に影響しないことを特徴とする、組成物。
【請求項44】
前記ウイルスが肝炎ウイルスであることを特徴とする、請求項43に記載の組成物。
【請求項45】
前記ウイルスがフラビウイルスであることを特徴とする、請求項43に記載の組成物。
【請求項46】
前記フラビウイルスがデングウイルスであることを特徴とする、ことを特徴とする、請求項45に記載の組成物。
【請求項47】
前記少なくとも1つの細胞受容体が、少なくともDLVR/CLECA受容体を含むことを特徴とする、請求項46に記載の組成物。
【請求項48】
前記前炎症性サイトカインがTNF−αを含み、ウイルスの排除に作用する前記サイトカインが少なくともインターフェロンαを含むことを特徴とする、請求項47に記載の組成物。
【請求項49】
前記フラビウイルスが日本脳炎ウイルスであることを特徴とする、請求項45に記載の組成物。
【請求項50】
前記前炎症性サイトカインが少なくともTNF−αを含むことを特徴とする、請求項43に記載の組成物。
【請求項51】
ウイルスの排除に作用する前記サイトカインが、少なくともインターフェロンαを含むことを特徴とする、請求項43に記載の組成物。
【請求項52】
動物のデングウイルス感染の作用を修飾するため、デングウイルスに感染した動物のDLVR/CLECA受容体に対する有効量の抗体を含む製剤を含み、前記修飾が少なくとも動物細胞の前炎症性サイトカイン分泌の阻害を含み、かつウイルスの排除に作用するサイトカインの分泌に影響しないことを特徴とする、組成物。
【請求項53】
少なくとも1つの前炎症性サイトカインがTNF−αであることを特徴とする、請求項52に記載の組成物。
【請求項54】
ウイルスの排除に作用する少なくとも1つのサイトカインがインターフェロンαであることを特徴とする、請求項52に記載の組成物。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図2E】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図8D】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【図10D】
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【図11】
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【図12A】
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【図12B】
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【図12C】
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【図13A】
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【図13B】
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【図13C】
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【図14A】
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【図14B】
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【図15】
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【図16a】
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【図16b】
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【図16c】
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【図16d】
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【図16e】
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【図16f】
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【図17a】
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【図17b】
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【図18a−18b】
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【図18c】
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【図18d】
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【図18e】
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【図18f】
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【図19a】
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【図19b】
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【図19c】
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【図19d】
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【図19e】
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【図20a】
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【図20b】
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【図20c】
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【図21a】
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【図21b】
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【図22a】
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【図22b】
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【図22c】
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【図23a】
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【図23b】
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【図23c】
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【図24】
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【図25a】
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【図25b】
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【図25c】
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【図25d】
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【図25e】
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【図26a】
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【図26b】
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【図26c】
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【公表番号】特表2011−519414(P2011−519414A)
【公表日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−501777(P2011−501777)
【出願日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際出願番号】PCT/US2008/065166
【国際公開番号】WO2009/120225
【国際公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【出願人】(596118493)アカデミア シニカ (33)
【氏名又は名称原語表記】ACADEMIA SINICA
【Fターム(参考)】