説明

急結剤、急結剤スラリー、吹付け材料及びそれを用いた吹付け工法

【課題】トンネル等の吹付け作業で発生する粉塵の発生を抑えて作業性を向上し、湧水や地山面が悪化した状況下においても、高い急結性が得られる急結剤の提供。
【解決手段】カルシウムアルミネート、硫酸塩、アルカリ金属アルミン酸塩、アルカリ金属炭酸塩、オキシカルボン酸、保水性物質、及びガス発泡物質を含有してなる急結剤。ガス発泡物質がアルミ粉である該急結剤。該急結剤と水とを含有する急結剤スラリー。セメントコンクリートと、該急結剤スラリーとを含有する吹付け材料。該急結剤に連続的に加水することにより、急結剤スラリーを調製し、セメントコンクリートと合流混合して吹付けることを特徴とする吹付け工法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、道路、鉄道、及び導水路等のトンネルや法面等において露出した地山面へ吹付ける急結剤、急結スラリー、吹付け材料、及びそれを用いた吹付け工法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トンネル掘削等露出した地山の崩落を防止するために、急結剤をコンクリートに配合した急結コンクリートの吹付け工法が行われている(特許文献1)。この工法は、通常、掘削工事現場に設置した、セメント、骨材、及び水の計量混合プラントで吹付けコンクリートを調製し、アジテータ車で運搬し、コンクリートポンプで圧送し、途中に設けた合流管で、他方から圧送した急結剤と混合し、急結性吹付けコンクリートとして地山面に所定の厚みになるまで吹付ける工法である。又、従来使用されている急結剤としては、カルシウムアルミネート、アルカリ金属アルミン酸塩とアルカリ炭酸塩等との混合物、並びに、カルシウムアルミネート、アルカリ金属アルミン酸塩、及びアルカリ炭酸塩等の混合物や、カルシウムアルミネートと3CaO・SiOとの混合物等が知られている(特許文献2、3、4、5)。これらの急結剤は、セメントの凝結を促進させる働きがあり、いずれもセメントコンクリートと混合して地山面に吹付けられる。急結剤の添加方法は、通常、空気輸送による粉体混合のために、粉塵量が多くなる方法であった。そのため、作業環境が悪化する場合があり、吹付け時には保護眼鏡や防塵マスク等を着用して作業する必要があり、粉塵量のより少ない工法が求められていた。
【0003】
粉塵発生量が少ない工法として、急結剤をスラリー化してセメントコンクリートに添加混合した後、更に、アルカリ金属アルミン酸塩の溶液を別途圧送し、混合し、吹付け施工する方法が提案されている(特許文献6)。この方法は、高アルカリの液体を使用するため、取り扱いにくく、吹付け時には保護眼鏡や手袋等が必要となり、作業性が低下するという課題があった。
【0004】
これに対して、急結剤をスラリー化し、かつ、セメントコンクリートにミョウバンを配合することにより、作業環境を改善する急結施工方法が提案されている(特許文献7)。近年、作業性、粉塵低減効果を更に良くし、工期短縮の点で、急結性を向上した急結施工方法が提案されている(特許文献8)。
【0005】
しかしながら、湧水や地山面が悪化した状況下において急結剤に対する要求は益々高まっており、従来の急結剤スラリーの要求性能である、初期凝結時間の確保、粉塵低減効果についても更なる向上が求められている。
【0006】
本発明者は、前記課題や要求を種々検討した結果、ある特定の急結剤を使用して吹付け施工を行うことにより、前記課題や要求が解決できるという知見を得て本発明を完成するに至った。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特公昭60−4149号公報
【特許文献2】特開昭64−051351号公報
【特許文献3】特公昭56−27457号公報
【特許文献4】特開昭61−026538号公報
【特許文献5】特開昭63−210050号公報
【特許文献6】特開平5−139804号公報
【特許文献7】特開平5−097491号公報
【特許文献8】特開平2003−81664号公報
【発明の開示】
【0008】
本発明は、カルシウムアルミネート、硫酸塩、アルカリ金属アルミン酸塩、アルカリ金属炭酸塩、オキシカルボン酸、保水性物質、及びガス発泡物質を含有してなる急結剤であり、ガス発泡物質がアルミ粉である該急結剤であり、該急結剤と水とを含有してなる急結剤スラリーであり、セメントを含有してなるセメントコンクリートと、該急結剤スラリーとを含有してなる吹付け材料であり、該急結剤に連続的に加水することにより、急結剤スラリーを調製し、セメントコンクリートと合流混合して吹付けることを特徴とする吹付け工法である。
【0009】
本発明は、例えば、トンネル等の吹付け作業で発生する粉塵の発生を抑えて作業性を向上し、湧水や地山面が悪化した状況下においても、高い急結性が得られるといった効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のセメントコンクリートとは、ペースト、モルタル、及びコンクリートを総称するものである。又、本発明における部や%は特に規定しない限り質量基準である。
【0011】
本発明で使用するカルシウムアルミネートとは、例えば、カルシアを含む原料と、アルミナを含む原料等を混合して、キルンで焼成したり、電気炉で溶融したりする等の熱処理をして得られるものである。カルシウムアルミネートは、CaOとAlとを主たる成分とし、水和活性を有する物質の総称である。又、CaOやAlの一部が、アルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化鉄、アルカリ金属ハロゲン化物、アルカリ土類金属ハロゲン化物、アルカリ金属硫酸塩、及びアルカリ土類金属硫酸塩等と置換した化合物、或いは、CaOとAlとを主成分とするものに、これらが少量固溶した物質等が挙げられる。鉱物形態としては、結晶質、非晶質いずれであっても使用可能である。これらの中では、反応活性の点で、非晶質のカルシウムアルミネートが好ましく、12CaO・7Al(以下、C12という)組成に対応する熱処理物を急冷した非晶質のカルシウムアルミネートがより好ましい。
【0012】
カルシウムアルミネートの粒度は、急結性や初期強度発現性の点で、ブレーン比表面積(以下、ブレーン値という)3,000cm/g以上が好ましく、5,000cm/g以上がより好ましい。3,000cm/g未満では、急結剤と吹付けセメントコンクリートを混合した急結性吹付けセメントコンクリートの急結性や初期強度発現性が低下する場合がある。
【0013】
本発明で使用する硫酸塩とは、急結性吹付けセメントコンクリートの凝結性や強度発現性を向上するものであり、例えば、急結剤と水(以下、スラリー水という)を混合した急結剤スラリーの硬化時間を遅延するために混合するものである。硫酸塩としては、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸アルミニウム、ミョウバン、及び無水石膏や半水石膏や二水石膏の石膏等が挙げられ、使用する目的に応じてこれらのうちの一種又は二種以上を併用することが可能である。これらの中では、急結性が充分に得られる点や、初期強度発現性や現場施工に適している点で、硫酸ナトリウムや石膏が好ましく、石膏がより好ましく、無水石膏が最も好ましい。
【0014】
硫酸塩の粒度は、急結性や初期強度発現性の点で、ブレーン比表面積(以下、ブレーン値という)2,500cm/g以上が好ましく、3,000cm/g以上がより好ましい。2,500cm/g未満では、急結剤と吹付けセメントコンクリートを混合した急結性吹付けセメントコンクリートの急結性や初期強度発現性が低下する場合がある。
【0015】
硫酸塩の使用量は、カルシウムアルミネート100部に対して、10〜50部が好ましく、25〜45部がより好ましい。10部未満では急結剤スラリーの粘度が上昇するため、急結性吹付けセメントコンクリートの施工性や凝結性が低下して、長期強度発現性を促進しにくい場合があり、50部を超えると初期凝結が遅れ、初期強度発現性が低下する場合がある。
【0016】
本発明で使用するアルカリ金属アルミン酸塩(以下、アルミン酸塩という)とは、セメントの初期凝結を促進するものであり、水酸化アルミニウムとアルカリ金属水酸化物を混合溶解し、乾燥し、粉末状として得られるものである。アルミン酸塩としては、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カリウム、及びアルミン酸リチウム等が挙げられ、これらの一種又は二種以上を使用することが可能である。これらの中では、急結性吹付けセメントコンクリートの凝結性や初期強度発現性の点で、アルミン酸ナトリウムが好ましい。
【0017】
アルミン酸塩の使用量は、カルシウムアルミネート100部に対して、3〜30部が好ましく、5〜15部がより好ましい。3部未満では初期凝結が遅れ、初期強度発現性が低下する場合があり、30部を超えると急結剤スラリーの粘度が上がり、急結性吹付けセメントコンクリートの施工性や長期強度発現性が低下する場合がある。
【0018】
本発明で使用するアルカリ金属炭酸塩(以下、炭酸アルカリという)とは、セメントの初期凝結を促進するものであり、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、及び炭酸水素カリウム等が挙げられる。これらの中では、初期凝結促進の点で、炭酸ナトリウムが好ましい。
【0019】
炭酸アルカリの使用量は、カルシウムアルミネート100部に対して、10〜60部が好ましく、20〜50部がより好ましい。10部未満では急結性吹付けセメントコンクリートの初期凝結が遅れ、初期強度発現性が低下する場合があり、60部を超えると急結剤スラリーの粘度が上がり、施工性や長期強度発現性が低下する場合がある。
【0020】
本発明で使用するオキシカルボン酸(以下、オキシ酸という)としては、グルコン酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、サリチル酸、及び乳酸又はこれらの塩等が挙げられる。塩としては、ナトリウムやカリウム等のアルカリ金属塩等が挙げられる。これらの中では、初期強度発現性の点で、グルコン酸ナトリウムが好ましい。
【0021】
オキシ酸の使用量は、カルシウムアルミネート100部に対して、0.01〜2部が好ましく、0.1〜1部がより好ましい。0.01部未満では急結性吹付けセメントコンクリートの凝結性や初期強度発現性を阻害する場合があり、2部を超えると凝結性や強度発現性を阻害する場合がある。
【0022】
本発明で使用する保水性物質とは、吹付けコンクリートの粉塵を低減させるだけではなく、急結剤スラリー自体の粉塵低減効果を更に高めるものである。保水性物質としては、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、及びヒドロキシエチルエチルセルロース等のセルロース、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、β−1,3グルカン、ブルラン、グアガム、カゼイン、及びウエランガム等の多糖顛、酢酸ビニル、エチレン、塩化ビニル、メタクリル酸、アクリル酸、アクリル酸ナトリウム、及び不飽和カルボン酸等のビニル重合体やこれらの共重合体、並びに、酢酸ビニル重合体やその共重合体をケン化しポリピニルアルコール骨格に変性したもの等のエマルジョン等が挙げられ、ベントナイト、及びシリカゲル等の無機物、水ガラスと塩化ナトリウム等の水ガラスのゲル化剤、更には、デン粉、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキサイド、ポリアクリルアマイド、ビニルアルコール−アクリル酸塩共重合体、ポリアクリロ二トリル加水分解物及び一般式RO(AO)H(式中Rはアルキル基、Aは一種又は二種以上のアルキル基、nは整数)で示される高分子物質等が挙げられる。これらの中では、充分な粘度を発揮する点で、メチルセルロース、ポリエチレンオキサイド、ビニルアルコール−アクリル酸塩共重合体、ポリアクリロ二トリル加水分解物、及び一般式RO(AO)H(式中Rはアルキル基、Aは一種又は二種以上のアルキル基、nは整数)で示される高分子物質からなる群のうちの一種又は二種以上が好ましく、ポリエチレンオキシドがより好ましい。ポリエチレンオキシドの重量平均分子量は、100万〜500万が好ましい。
【0023】
保水性物質の使用量は、カルシウムアルミネート100部に対して、0.001〜0.02部が好ましく、0.003〜0.01部がより好ましい。0.001部未満では、リバウンド率や粉塵量が多く発生し、施工性が低下する場合があり、0.02部を超えると、リバウンド率や粉塵量が多く発生し、施工性、凝結性、強度発現性を阻害する場合がある。
【0024】
本発明で使用するガス発泡物質は、急結スラリーの固化体の密度を2.00g/cm以下に調製することが好ましく、1.90g/cm以下に調製することがより好ましい。この範囲に調製することにより、供給装置の負荷を軽減し、施工性を向上するものである。
【0025】
ガス発泡物質としては、アルミ粉、炭素物質、過炭酸塩、過硫酸塩、過ホウ酸塩、及び過マンガン酸塩等の過酸化物質等が挙げられる。これらの中では、密度を小さくできる点で、アルミ粉、炭素物質、過炭酸塩、過硫酸塩、過ホウ酸塩、及び過マンガン酸塩からなる群のうちの一種又は二種以上が好ましく、アルミ粉がより好ましい。
【0026】
ガス発泡物質の使用量は、急結剤100部に対して、0.001〜0.1部が好ましく、0.01〜0.05部がより好ましい。0.001部未満では、施工性が低下し、急結スラリー密度を2.00g/cm以下に調製できない場合があり、0.1部を超えて使用すると、凝結性や強度発現性が悪くなる場合がある。
【0027】
本発明で使用する急結剤スラリー中のスラリー水の使用量は、急結剤100部に対して、15〜80部が好ましく、22〜70部がより好ましく、30〜60部が最も好ましい。22部未満では急結剤がスラリー状態にならず、粉塵量が多くなる場合があり、70部を超えると凝結性や強度発現性が低下する場合がある。
【0028】
急結剤の使用量は、セメント100部に対して、固形分換算で3〜10部が好ましく、5〜8部がより好ましく、6〜8部が最も好ましい。3部未満では急結性吹付けセメントコンクリートの初期凝結を促進しにくい場合があり、10部を超えると長期強度発現性を阻害する場合がある。
【0029】
ここでセメントとは、通常市販されている普通、早強、中庸熱、及び超早強等の各種ポルトランドセメントや、これら各種ポルトランドセメントにフライアッシュや高炉スラグ等を混合した各種混合セメント等が挙げられ、これらを微粉末化して使用することも可能である。
【0030】
本発明の急結剤スラリーでは、必要に応じて、更に、減水剤を使用することも可能である。
【0031】
本発明で使用するセメントコンクリートはセメントと骨材とを含有するものである。ここで、骨材としては、吸水率が低くて、骨材強度が高いものが好ましい。骨材の最大寸法は吹付けできれば特に限定されるものではない。細骨材としては、川砂、山砂、海砂、石灰砂、及び珪砂等が使用可能であり、粗骨材としては、川砂利、山砂利、及び石灰砂利等が使用可能である。
【0032】
セメントコンクリートに使用する水の量は、強度発現性の点で、35%以上が好ましく、50〜65%がより好ましい。35%未満ではセメントコンクリートを充分混合できない場合がある。
【0033】
本発明の急結剤スラリーを用いた吹付け工法においては、従来使用の吹付け設備等が使用可能である。例えば、吹付けセメントコンクリートの圧送にはシンテック社製、商品名「MKW−25SMT」等が、又、急結剤の圧送には急結剤圧送装置「ナトムクリート」等がそれぞれ使用可能である。
【0034】
又、本発明の急結剤スラリーを用いた吹付け工法としては、要求される物性、経済性、及び施工性等に応じた種々の吹付け工法が可能である。本発明の急結剤スラリーを用いた吹付け工法としては、乾式吹付け工法、湿式吹付け工法、いずれの工法も可能である。
【0035】
乾式吹付け工法としては、例えば、セメント、細骨材、及び粗骨材を加えて混合してドライセメントコンクリートを調製し、ドライセメントコンクリートを圧縮空気により搬送し、途中にY字管を設け、その一方から急結剤添加装置や水ポンプにより、急結剤スラリー、ドライセメントコンクリート、水を合流混合して、急結性吹付けコンクリートとし、吹付ける方法が挙げられる。
【0036】
湿式吹付け工法としては、例えば、セメント、細骨材、粗骨材、及び水を加えて混練し、ポンプ圧送し、途中にY字管を設け、その一方から急結剤供給装置により圧送した急結剤を合流混合して急結性湿式吹付けコンクリートとしたものを吹付ける方法が挙げられる。
【0037】
本発明の急結剤スラリーを用いた吹付け工法においては、通常、吹付け圧力は0.2〜0.5MPaが好ましく、吹付け速度は4〜20m/hが好ましい。
【0038】
又、急結剤を圧送する圧送空気の圧力は、セメントコンクリートが急結剤スラリーの圧送管内に混入した時に圧送管内が閉塞しないように、セメントコンクリートの圧送圧力より0.01〜0.3MPa大きいことが好ましい。
【0039】
本発明の急結剤スラリーを用いた吹付け工法においては、粉塵やリバウンドを低減するために、粉体急結剤にスラリー水を加えて連続的に急結剤をスラリー化し、この急結剤スラリーを、吐出口先端で吹付けセメントコンクリートと混合して吹付けることが好ましい。急結剤を連続的にスラリー化する方法としては、例えば、粉体急結剤を空気圧送する圧送管の周囲に穴を開け、その穴から水、例えば、高圧水を圧送管内へ加水してスラリー化し、空気圧送する方法等が使用できる。
【実施例1】
【0040】
カルシウムアルミネート100部、並びに、カルシウムアルミネート100部に対して表1に示す量の石膏、アルミン酸塩、炭酸アルカリ、オキシ酸、保水性物質、及び、急結剤100部に対して表1に示す量のガス発泡物質からなる急結剤100部と、スラリー水50部とを混合撹拌して急結剤スラリーを調製し、その粘度を測定した。
又、砂/セメント比=3、水/セメント比=57%のモルタルを調製し、そのセメント100部に対して、急結剤スラリーを固形分換算で6部添加し、急結性モルタルとし、凝結時間とモルタル圧縮強度を測定した。尚、急結剤スラリーを添加しないモルタルの水/セメント比は60%とした。結果を表1に併記する。
【0041】
<使用材料>
セメント:普通ポルトランドセメント、市販品、ブレーン値3,200cm/g、比重3.16
細骨材:新潟県糸魚川市姫川水系川砂、表乾状態、比重2.62
カルシウムアルミネート:C12組成に対応するもの、非晶質、ブレーン値6,500cm/g
石膏:市販無水石膏粉砕品、ブレーン値5,900cm/g
アルミン酸塩:アルミン酸ナトリウム、市販品
炭酸アルカリ:炭酸ナトリウム、市販品
オキシ酸:グルコン酸ナトリウム、市販品
保水性物質:ポリエチレンオキサイド、市販品、分子量100万〜200万
ガス発泡物質:アルミ粉、市販品
【0042】
<測定方法>
粘度:温度20℃、湿度80%の条件下で、急結剤スラリーを調製し、回転数20rpmの条件下で、B型粘度計で測定
凝結時間:急結性モルタルを土木学会基準「吹付けコンクリート用急結剤品質規(JSCED−102)」に準じて測定
モルタル圧縮強度:急結性モルタルをJIS R 5201に準じて測定
ブレーン値:JIS R 5201 「セメントの物理試験方法」に基づき測定
【0043】
【表1】



【0044】
表1より、実験No.1‐4の試験結果が急結剤スラリー粘度、圧縮強度、凝結時間共にバランスのとれたデータとなった。
【実施例2】
【0045】
各材料の単位量を、セメント360kg/m、細骨材1,058kg/m、粗骨材710kg/m、及び水216kg/mとして吹付けコンクリートを調製し、この吹付けコンクリートを吹付け圧力0.4MPa、吹付け速度10m/hの条件下で、コンクリート圧送機「MKW−25SMT」によりポンプ圧送した。一方、実験例1で行った表1記載の実験No.1‐4、27、28、29、30、31の急結剤を、セメント100部に対して、7部になるように、圧送圧力0.5MPaの条件下で、急結剤添加装置「ナトムクリート」を用いて空気圧送し、途中に設けたY字管の一方の管の周囲6カ所に設けた穴から、急結剤100部に対して、スラリー水50部を加水して急結剤スラリーとした。この急結剤スラリーをY字管のもう一方から圧送された吹付けコンクリートに混合し、急結性吹付けコンクリートとした。この急結性吹付けコンクリートについて、粉塵量、リバウンド率、コンクリート圧縮強度、施工性評価を測定した。
又、急結剤スラリーについて、固化体の密度を測定した。結果を表2に示す。
【0046】
<使用材料>
粗骨材:新潟県糸魚川市姫川産川砂利、表乾状態、比重2.64、最大寸法10mm
【0047】
<測定方法>
コンクリート圧縮強度:材齢1時間の圧縮強度は、幅25cm×長さ25cmのプルアウト型枠に設置したピンを、プルアウト型枠表面から急結性吹付けコンクリートで被覆し、型枠の裏側よりピンを引き抜き、その時の引き抜き強度を求め、(圧縮強度)=(引き抜き強度)×4/(供試体接触面積)の式から圧縮強度を算出した。材齢1日以降の圧縮強度は、幅50cm×長さ50cm×厚さ20cmの型枠に急結性吹付けコンクリートを吹付け、採取した直径5cm×長さ10cmの供試体を20トン耐圧機で測定し、圧縮強度を求めた。
リバウンド率:急結性吹付けコンクリートを10m/hの圧送速度で10分間、鉄板でアーチ状に作成した高さ3.5m、幅2.5mの模擬トンネルに吹付けた。その後、(リバウンド率)=(模擬トンネルに付着せずに落下した急結性吹付けコンクリートの量)/(模擬トンネルに吹付けた急結性吹付けコンクリートの量)×100(%)で算出した。
粉塵量:急結性吹付けコンクリートを10m/hの圧送速度で10分間、模擬トンネルに吹付けた。その後、吹付け場所より3mの定位置で粉塵量を測定した。
密度:急結剤と水を混合して急結剤スラリーを調製し、1日放置して固化させた。その固化体の容積と質量から密度を求めた。
施工性評価:急結剤添加装置の圧送圧力を毎分測定し、吹付け後、Y字管が閉塞した穴の数を確認した。
【0048】
【表2】



【0049】
表2の結果より、実験No.1−27のようにガス発泡物質を加えない急結剤をスラリー化すると、Y字管内に急結剤スラリーの塊が生成し、急結剤がコンクリートに混合合流せず、吹付け中のコンクリートが剥がれてしまい、コンクリートが硬化しなかった。又、実験No.1−31のようにガス発砲物質を多く入れた急結剤では、急結剤と混合合流した後の急結性吹付けコンクリートの硬化が遅れ、リバウンド量が20.0%と増え、圧縮強度が得られにくい結果となった。
【実施例3】
【0050】
各材料の単位量を、セメント360kg/m、細骨材1,058kg/m、粗骨材710kg/m、及び水216kg/mとして吹付けコンクリートを調製し、この吹付けコンクリートを吹付け圧力0.4MPa、吹付け速度10m/hの条件下で、コンクリート圧送機「MKW−25SMT」によりポンプ圧送した。一方、実験例1で行った表1記載の実験No.1−4、22、23、24、25、26の急結剤を、セメント100部に対して、7部になるように、圧送圧力0.5MPaの条件下で、急結剤添加装置「ナトムクリート」を用いて空気圧送し、途中に設けたY字管の一方の管の周囲6カ所に設けた穴から、急結剤100部に対して、スラリー水50部を加水して急結剤スラリーとした。この急結剤スラリーをY字管のもう一方から圧送された吹付けコンクリートに混合し、急結性吹付けコンクリートとした。この急結性吹付けコンクリートについて、粉塵量、リバウンド率、コンクリート圧縮強度、施工性評価を測定した。結果を表3に示す。
【0051】
【表3】



【0052】
表3より、実験No.1−4の試験結果が粉塵量、リバウンド率、コンクリート圧縮強度、施工性評価共にバランスのとれたデータとなった。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明の急結剤を用いることにより、粉塵の発生量を少なくできる。更に、吹付け初期に高い強度が得られるために安全性も向上する。本発明の急結剤を用いることにより、トンネル等の作業性、粉塵低減効果を更に良くし、湧水や地山面が悪化した状況下においても高い急結性が発揮される急結施工方法を提供できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルシウムアルミネート、硫酸塩、アルカリ金属アルミン酸塩、アルカリ金属炭酸塩、オキシカルボン酸、保水性物質、及びガス発泡物質を含有してなる急結剤。
【請求項2】
ガス発泡物質がアルミ粉である請求項1記載の急結剤。
【請求項3】
請求項1又は2記載の急結剤と水とを含有してなる急結剤スラリー。
【請求項4】
セメントを含有してなるセメントコンクリートと、請求項3記載の急結剤スラリーとを含有してなる吹付け材料。
【請求項5】
請求項1又は2記載の急結剤に連続的に加水することにより、急結剤スラリーを調製し、セメントコンクリートと合流混合して吹付けることを特徴とする吹付け工法。

【公開番号】特開2010−241624(P2010−241624A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−90553(P2009−90553)
【出願日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【出願人】(000003296)電気化学工業株式会社 (1,539)
【Fターム(参考)】