恒温維持装置。
【課題】外部熱負荷装置の急激な温度変化にも対応できる熱応答性が高くしかも高精度の温度制御が可能な恒温維持装置を提供する。
【解決の手段】恒温維持装置のメインユニット1の冷却側タンク43から予め定められた温度に調整された低温循環液が供給配管14によってサブユニット2の三方弁20に供給される。一方、加熱側タンク44から予め定められた温度に調整された高温循環液が供給配管15によって三方弁20に供給される。低温循環液と高温循環液は三方弁20において外部熱負荷装置7の温度によって混合割合を調整された後、熱交換室71に供給されて外部熱負荷装置7の温度を設定温度に維持する。外部熱負荷装置7の温度はプロセスチャンバーに設置された温度センサー72,恒温循環液供給管に設置された温度センサー23、恒温循環液戻り管に設置された温度センサー24の何れかで計測されて、三方弁20の弁開度をフィードバック制御する。
【解決の手段】恒温維持装置のメインユニット1の冷却側タンク43から予め定められた温度に調整された低温循環液が供給配管14によってサブユニット2の三方弁20に供給される。一方、加熱側タンク44から予め定められた温度に調整された高温循環液が供給配管15によって三方弁20に供給される。低温循環液と高温循環液は三方弁20において外部熱負荷装置7の温度によって混合割合を調整された後、熱交換室71に供給されて外部熱負荷装置7の温度を設定温度に維持する。外部熱負荷装置7の温度はプロセスチャンバーに設置された温度センサー72,恒温循環液供給管に設置された温度センサー23、恒温循環液戻り管に設置された温度センサー24の何れかで計測されて、三方弁20の弁開度をフィードバック制御する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部熱負荷装置の温度を一定に保つための恒温維持装置に関し、特に、半導体製造装置等に使用されるチラー装置等の、一定温度の液体熱媒体を循環させて外部熱負荷装置の温度を一定に保つための恒温維持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
先進的な半導体メーカーにおいては、次世代の半導体装置として45nmプロセスのマイクロプロセッサの開発が進められている。この製造プロセスでは熱負荷の大きいプラズマエッチング装置等の温度を常に一定に保つために大型で高精度、特に熱応答性の高い温度制御装置が要求されている。温度制御装置としては、通常チラー装置と呼ばれる恒温維持装置が使用されている。
【0003】
この種の恒温維持装置は、通常、冷却器、加熱器および外部熱負荷装置の間を循環する環状管路に液体の熱媒体を流し、外部熱負荷装置で加温された液媒体を冷却器で過冷却し、過冷却した液媒体を加熱器で外部熱負荷装置の要求する設定温度に迄加熱して外部熱負荷装置に供給している。
【0004】
通常このような装置では、外部熱負荷装置の熱負荷があるなしに拘わらず、冷却器はその装置仕様の冷却能力を常に発揮している。そのために、冷却が仮に冷凍機であった場合などは常に大きな電力を浪費することになる。そこで、外部熱負荷装置の運転状況にあわせて、運転モードと省エネルギーモードとを切り換えできる恒温維持装置が提案されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004-169933号公報
【0005】
また、恒温維持装置の冷却器は通常冷却器の出口の液媒体の温度が冷却器の設定温度になるように制御されている。ところが、冷却器の冷凍サイクル内の冷媒ガス(フロンガス等)は熱伝達速度が遅いので、設定温度に到着してから設定温度を大きく超えたり(オーバーシュート)、設定温度を大きく下回ったり(アンダーシュート)することがしばしば起こる。これは加熱器への負担が大きくなり、大型で広い温度範囲の温度調節ができる加熱器が要求される。
【0006】
そこで、恒温維持装置の外で外部熱負荷装置に近い位置に熱媒体の温度を微調節する温度調節装置を設けることが提案されている(特許文献2および特許文献3参照)。
【特許文献2】特開2001-153518号公報
【特許文献3】米国公開特許第20060237181号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記、特開2004-169933号公報には、コンピュータでプラズマエッチング処理装置の工程シーケンスのレシピ情報を先読みして、一定以上の休止状態がある時またはそれが回復される時にチラー装置の運転モードと省エネルギーモードとを切り換えるチラー制御装置が開示されている。
【0008】
しかしこの装置では、温度制御対象装置の稼働状況を常に把握し、その状況をチラー装置の制御系に送信するためのコンピュータやそれに付随する信号線等を必要とする。
【0009】
上記特開2001-153518号公報には、プロセス装置側の温度によってチラー装置の出口温度を設定すると共に、プロセス装置に供給する熱媒体の温度を微調整する第2温度制御部をチラー装置から分離してプロセス装置の近傍に設けた温度制御システムが開示されている。
【0010】
そして、第1温度制御部では広範囲の温度制御に対応し、第2温度制御部では第1温度制御部で大まかに制御された温度を微調整するだけでよいので、大きな温度変化に追従できなくとも、小さな範囲内での精密な制御ができる機構を備えれば良いとして、第2温度制御部での温度制御用の装置として、チラー装置や、加熱にはヒーターを用い冷却には冷却機で冷却した流体を用いる装置が例示されている。
【0011】
すなわち、この発明の方法では、急激な温度変化に対しては、第1温度制御部が対応しているので、タイムラグが発生し、熱応答性が悪く、急激な温度変化を伴う45nmプロセス級のマイクロプロセッサ製造のプロセスチャンバー用の温度制御には不適当であるという欠点がある。
【0012】
上記米国公開特許第20060237181号公報記載の発明は、冷却機能のみを持った冷却ユニットと冷却ユニットからの冷却液と外部熱負荷装置を冷却するための循環液とを熱交換させる遠隔温度制御モジュール(RTCM)とより構成し、外部熱負荷装置の温度でRTCMの熱交換部の温度をフィードバック制御している。このようにRTCMを冷却ユニットと切り離して外部熱負荷装置の近くに置くことによって、温度制御の精度を高めることができる。
【0013】
また、RTCMは冷却ユニットと切り離されているので、冷却ユニット1台に対して多くのRTCMを増設できるので、例えば、半導体製造装置の複数個のプロセスチャンバー(マルチチャンバー)に、このRTCMを1個ずつ取り付けることができ、しかも、各RTCM毎に独立して温度制御を行うことができる等の利点を有している。
【0014】
しかし、米国公開特許第20060237181号公報記載の発明では、RTCM中では、熱交換装置を用いて冷却液と循環液とを間接的に熱交換を行っている。一般的に間接熱交換方式では熱損失が大きいと共に、温度応答性が悪いので、急激な温度変化を伴う45nmプロセス級のマイクロプロセッサ製造のプロセスチャンバー用の温度制御には不適当である。
【0015】
また、RTCMの加熱用にヒーターを搭載しているので、各モジュール毎に大きな電力供給用の回線が必要となり、装置の大型化や複雑化が避けられない等の欠点がある。
【0016】
本発明は、外部熱負荷装置の急激な温度変化にも対応できる熱応答性が高くしかも高精度の温度制御が可能な恒温維持装置を提供することを第1の目的としている。
【0017】
本発明は、1つのメインユニットに対して多数のサブユニットを増設することが可能であると共に、各サブユニット毎に異なった温度を設定することが可能な恒温維持装置を安価に提供することを第2の目的としている。
【0018】
本発明は、外部熱負荷装置から離れた場所にメインユニットを設置しても、温度応答性と温度精度を保証できる恒温維持装置を提供することを第3の目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の恒温維持装置は、予め定められた温度に調整された高温熱媒体循環液を生成するための高温熱媒体循環液生成手段と予め定められた温度に調整された低温熱媒体循環液を生成するための低温熱媒体循環液生成手段とを備えたメインユニットと、上記高温熱媒体循環液と上記低温熱媒体循環液とを直接混合すると共に該高温熱媒体循環液と該低温熱媒体循環液との流量比を上記外部熱負荷装置の温度に応じて制御することによって予め定められた設定温度の熱媒体循環液を生成するための恒温熱媒体循環液生成手段を備えたサブユニットとより構成されていることを特徴とする。
【0020】
上記高温熱媒体循環液生成手段の熱源としては冷凍機サイクルより得られる高温側の熱媒体、ヒーターおよび工場設備用水からなる群から選ばれた少なくとも1つの熱源を使用し、上記低温熱媒体循環液生成手段の熱源としては冷凍機サイクルより得られる冷熱側の熱媒体、ヒーターおよび工場設備用水からなる群から選ばれた少なくとも1つの熱源を使用することができる。
【0021】
すなわち、高温熱媒体循環液生成手段の熱源としては冷凍機サイクルより得られる高温側の熱媒体を使用し、低温熱媒体循環液生成手段の熱源として冷凍機サイクルより得られる冷熱側の熱媒体を使用することができる。この方式では、高温熱媒体循環液または/および低温熱媒体循環液の温度を微調整するためにヒーターを併用することができる。また、この方式では廃熱を利用するので熱効率が高くなる。
【0022】
また、高温熱媒体循環液生成手段の熱源としてヒーターを使用し、低温熱媒体循環液生成手段の熱源として工場設備用水を使用することもできる。
【0023】
また、高温熱媒体循環液生成手段の熱源としてヒーターを使用し、低温熱媒体循環液生成手段の熱源として冷凍機サイクルより得られる冷熱側の熱媒体を使用することもできる。
【0024】
さらに、高温熱媒体循環液生成手段の熱源として工場設備用水を使用し、低温熱媒体循環液生成手段の熱源として冷凍機サイクルより得られる冷熱側の熱媒体を使用することもできる。
【0025】
さらにまた、高温の工場設備用水と低温の工場設備用水が確保できる事業所では、高温熱媒体循環液生成手段の熱源として高温の工場設備用水を使用し、低温熱媒体循環液生成手段の熱源として低温の工場設備用水を使用することもできる。
【0026】
このように、冷凍機サイクルより得られる熱媒体、工場設備用水およびヒーターは高温側の熱源および低温側の熱源として上記以外の種々の組み合わせで使用することが可能である。特に、ヒーターは設定温度の微調整用に他の熱源と併用して使用すると便利である。
【0027】
上記恒温熱媒体循環液生成手段として、高温熱媒体循環液が流入する流入口、低温熱媒体循環液が流入する流入口、恒温熱媒体循環液が流出する流出口および高温熱媒体循環液と低温熱媒体循環液との流量比を制御するための制御弁とを備えた三方弁と恒温熱媒体循環液を攪拌混合して送出する攪拌混合送出手段を備えた装置を使用することができる。低温熱媒体循環液との流量比を制御するための制御弁には外部熱負荷装置の温度に応じてその開度を制御するための三方弁制御手段を備える必要がある。
【0028】
上記三方弁制御手段は、外部熱負荷装置に流入する側の恒温熱媒体循環液の温度、上記外部熱負荷装置から流出する側の恒温熱媒体循環液の温度、上記外部熱負荷装置の必要部位の温度の群から選ばれたいずれか1つの温度によって三方弁に流入する高温熱媒体循環液と低温熱媒体循環液との流量比をフィードバック制御する機能を有する。
【0029】
外部熱負荷装置に直接測温用の温度センサーを取り付けて温度を制御する方式が最も熱応答性が高い。具体的には、外部熱負荷装置として半導体製造装置のプロセスチャンバーを対象とする場合は、半導体ウエハーの台座、高周波プラズマ装置の台座またはチャンバーの壁面の温度を測定するように温度センサーを取り付けるのが好ましい。
【0030】
外部熱負荷装置に直接温度センサーを取り付けるのが困難な場合は、サブユニットから外部熱負荷装置に恒温熱媒体循環液を供給する管路、外部熱負荷装置からサブユニットに恒温熱媒体循環液が流出する戻り管路のいずれかに温度測定用のセンサーを設けてもよい。この場合、戻り管路に設けた方が熱応答性が高いので好ましい。
【0031】
三方弁の制御弁の動力部にはスッテプモーター、サーボモーターまたは空気圧駆動ダイアフラムのいずれかを使用し、フィードバック制御にはPID制御を使用することを推奨する。
【0032】
上記攪拌混合送出手段としては、高温熱媒体循環液と低温熱媒体循環液とを短時間に均一に混合する必要があるので、特に撹拌力の強いターボ型流体ポンプを使用するのが好ましい。また、ポンプの流量又は圧力を調整しやすいインバータ駆動式のポンプを使用することを推奨する。
【0033】
ターボ型流体ポンプとしては、渦巻きポンプ、ディフューザポンプまたはカスケードポンプを使用することができる。
【0034】
メインユニットとサブユニットとは隔離されていて、高温熱媒体循環液の供給用管路、低温熱媒体循環液の供給用管路および恒温熱媒体循環液の戻り用管路で相互に連結されている。特に、サブユニットは外部熱負荷装置に近接して設けることが熱応答性を高めるために特に重要である。
【発明の効果】
【0035】
(1)本発明の恒温維持装置は、高温熱媒体循環液と低温熱媒体循環液とを直接混合して恒温熱媒体循環液を生成しているので、外部熱負荷装置の急激な温度変化に対しても、瞬間的に所望の設定温度の熱媒体循環液を生成でき、熱応答性が極めて高い。
【0036】
(2)本発明の恒温維持装置は、恒温熱媒体循環液生成手段として、高温熱媒体循環液と低温熱媒体循環液との流量比を制御するための制御弁を備えた三方弁と高温熱媒体循環液と低温熱媒体循環液との混合液を攪拌混合して送出する手段として撹拌力の強いターボ型流体ポンプを使用しているので、混合液を短時間で均一に混合して恒温熱媒体循環液を瞬間的に生成でき、例えば、次世代プロセスの半導体ウエハー処理中に急激に設定温度が変化するシステム(マルチステップシステム)に対しても瞬間的に対応できる、熱応答性および熱精度の極めて高い恒温維持装置を提供することができる。
【0037】
(3)本発明の恒温維持装置は、メインユニットとサブユニットとは隔離されているので、1つのメインユニットに対してサブユニットを多数取り付けることができ、いわゆるマルチチャンバーシステムに容易に対応できる。
【0038】
(4)本発明の恒温維持装置は、メインユニットとサブユニットとは隔離されているので、サブユニットを外部熱負荷装置の近傍に設置することができ、熱応答性、熱精度をさらに高めることができる。
【0039】
(5)本発明の恒温維持装置は、メインユニットとサブユニットとに分離され、設定温度の異なる外部熱負荷装置が複数あっても、設定温度の異なる外部熱負荷装置毎にサブユニットを設置して、1つのメインユニットで対応できるので、メインユニットにおける循環液の補充・管理作業が容易になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
本発明を実施するための恒温維持装置の実施例を図面によって説明する。
【実施例】
【0041】
(実施例1)
図1は本発明の恒温維持装置の概念図を示すもので、1はメインユニット、2はサブユニット、12は低温熱媒体循環液生成手段、13は高温熱媒体循環液生成手段、20は三方弁、21は撹拌混合送出手段としてのインバータ駆動ポンプ、26は制御弁、7は外部熱負荷装置、71は熱交換室である。
【0042】
低温熱媒体循環液生成手段12で生成された低温熱媒体循環液は低温循環液供給配管14を通り、高温熱媒体循環液生成手段13で生成された高温熱媒体循環液は高温循環液供給配管15を通ってサブユニット2の三方弁20に供給される。三方弁20の制御弁26は、外部熱負荷装置7の温度によって低温熱媒体循環液と高温熱媒体循環液との流量を制御して設定温度の熱媒体循環液を生成する。インバータ駆動ポンプ21は設定温度の熱媒体循環液(恒温熱媒体循環液)を均一に撹拌して熱交換室71に送り外部熱負荷装置7の温度を設定温度に維持する。
【0043】
図2はメインユニット1のシステム構成図、図3はサブユニット2のシステム構成図を示している。
図2に示す実施例では、メインユニット1において、高温熱媒体循環液生成手段13の熱源としては冷凍機サイクルより得られる高温側の熱媒体を使用し、低温熱媒体循環液生成手段12の熱源として冷凍機サイクルより得られる冷熱側の熱媒体を使用している。
【0044】
図2において、冷凍機サイクル3は、圧縮機30、冷凍機吐出ガス熱交換器31、コンデンサ32、ドライヤ34、循環液冷却用電子膨張弁36、エバポレータ39、気液分離器兼受液器33、圧縮機30で閉回路を構成している。図中35はサイトグラス、37は冷凍機吸込みガス冷却用電子膨張弁、38は冷凍機直接冷却用電子膨張弁、40は制水弁、55は冷凍機用の冷却水出口、56は冷凍機用の冷却水入口である。
【0045】
サブユニット2より戻り配管16によって送られてきた低温熱媒体循環液(以下低温循環液と略称する)はエバポレータ39で冷熱を得て、冷却側タンク43に貯留される。この際、冷却側温度センサー10によって計測された低温循環液の温度によって循環液冷却用電子膨張弁36の開度が調整されエバポレータ39を介して低温循環液の温度が設定温度に保たれる。設定温度に保たれた低温循環液は冷却ポンプ45によって低温循環液供給配管14、冷却側マニホールド17、低温循環液サブユニット供給用配管50を経て、サブユニット2に送られる。なお、図中42はリザーブタンク、47は冷却側リリーフ弁である。
【0046】
一方、ヒーター41を備えた加熱側タンク44内の高温熱媒体循環液(以下高温循環液と略称する)は加熱ポンプ46で冷凍機吐出ガス熱交換器31に送られそこで圧縮機30から送られてくる高温熱媒体と熱交換して加熱されて、高温循環液供給配管15、加熱側マニホールド18、高温循環液サブユニット供給用配管51を経て、サブユニット2に送られる。図中11は加熱側温度センサー、19は戻り側マニホールド、48は加熱側リリーフ弁、52はサブユニット戻り用配管、57は低温循環液側ドレインバルブ、58は高温循環液側ドレインバルブである。
【0047】
図3はサブユニット2の構成図であって、低温循環液サブユニット供給用配管50で送られてきた低温循環液と高温循環液サブユニット供給用配管51で送られてきた高温循環液とは制御弁26を備えた三方弁20で混合され、インバータ駆動ポンプ21で撹拌混合されて均一の恒温循環液となって恒温循環液供給口53から外部熱負荷装置7の熱交換室71に送られる。
【0048】
熱交換室71で熱交換した恒温循環液は恒温循環液戻り口54からサブユニット2を経てサブユニット戻り用配管52によってメインユニット1に送り返される。図中22は恒温循環液吐出圧力センサー、23は恒温循環液供給温度センサー、24は恒温循環液戻り温度センサー、25は恒温循環液流量センサーである。
【0049】
ここで、三方弁20の構造と動作について説明する。
図5は三方弁20の断面図で、高温循環液流入口201、低温循環液流入口202、混合循環液吐出口203を有する弁箱204に、動力部261で駆動される制御弁26が組み込まれている。動力部261にはサーボモーター、ステップモーターまたは圧縮空気で駆動されるダイアフラム等が内蔵されている。
【0050】
昇温時は図6に示されるように、混合循環液吐出口203から流出する恒温循環液の温度が設定温度になるまで、高温循環液流入口201から流入する高温循環液が100%になるように制御弁26を下げて低温循環液流入口202の低温側弁座206を閉鎖する。
【0051】
降温時は図7に示すように、混合循環液吐出口203から流出する恒温循環液の温度が設定温度になるまで、低温循環液流入口202から流入する低温循環液が100%になるように制御弁26を引き上げて高温循環液流入口201の高温側弁座205を閉鎖する。
【0052】
調温時は図8に示すように、外部熱負荷装置7の熱負荷が大きくなった場合は、低温循環液の割合を高温循環液の割合よりも多くするために、制御弁26を引き上げて、低温側弁座206の開度を高温側弁座205の開度よりも大きくする。反対に、外部熱負荷装置7の熱負荷が小さくなったり、瞬間的になくなった場合は、低温循環液の割合を高温循環液の割合よりも少なくするために、制御弁26を下げて、低温側弁座206の開度を高温側弁座205の開度よりも小さくする。
【0053】
図4は恒温維持装置を制御するためのコントローラの配線図を示すもので、コントローラはメインユニット1に設けられたメインコントローラ61とサブユニット2に設けられたサブコントローラ62の2個設けられている。メインコントローラ61には表示・設定パネル63が付設されていて、予めメインユニット1の設定値、すなわち、低温循環液設定温度LSVおよび高温循環液設定温度HSVと、サブユニット2の設定値、すなわち、恒温循環液供給側設定温度(または恒温循環液戻り側設定温度)SSV、恒温循環液吐出圧力設定値SPSおよび恒温循環液吐出流量設定値SFSが入力される。なお、図中64は電源である。
【0054】
メインユニット1の低温循環液側では、冷却側温度センサー10で計測された温度TS1によって、循環液冷却用電子膨張弁36の開度が調整され、冷凍機サイクル3の出力が制御されて、低温循環液の温度を設定温度LSVに維持する。
【0055】
一方、高温循環液側では、加熱側温度センサー11で計測された温度TS2によって、ヒーター41がPID制御されて、高温循環液の温度を設定温度HSVに維持する。
【0056】
サブユニット2では、インバータ駆動ポンプによる恒温循環液の吐出流量又は吐出圧力の管理と三方弁による恒温循環液の温度の管理を行っている。
すなわち、吐出圧力管理の場合は、恒温循環液吐出圧力センサー22の吐出圧力PSが設定圧力SPSになるように渦巻きポンプ28の駆動周波数をインバータ27で調整している。
【0057】
また、吐出流量管理の場合は、恒温循環液吐出流量センサー25の吐出流量FSが設定流量SFSになるように渦巻きポンプ28の駆動周波数をインバータ27で調整している。
【0058】
恒温循環液の温度を制御するためには、三方弁20を用いて高温循環液量と低温循環液量の割合を変化させる。そのために、恒温循環液供給温度センサー23の測定温度TS3が設定温度SSVになるようにPID制御によって三方弁20の開度を調整している。この場合、恒温循環液戻り温度センサー24の測定温度TS4によって三方弁をPID制御してもよい。
【0059】
以上の操作を図9及び図10のフローチャートを用いてさらに詳しく説明する。図9はメインユニットの循環液温度制御のフローチャートである。
ステップS1で、メインコントローラ61の表示・設定パネル63に低温循環液設定温度LSVおよび高温循環液設定温度HSVを設定する。次に、冷却側温度センサー10の測定温度TS1および加熱側温度センサー11の測定温度TS2を読み込む。
【0060】
次にステップS2において、測定温度TS2が高温循環液設定温度HSVになるようにヒーター41をPID制御制御する。
【0061】
次にステップS3において、低温側測定温度TS1と低温循環液設定温度LSVとを比較する。低温側測定温度TS1が低温循環液設定温度LSVと等しいかそれよりも高い場合は、ステップS4に行き、圧縮機30を駆動させる。
【0062】
再び、ステップS5において、低温側測定温度TS1と低温循環液設定温度LSVとを比較する。低温側測定温度TS1と低温循環液設定温度LSVが等しい場合は、ステップS6に行き、冷凍機サイクルの出力を現状維持にして、ステップS1に戻る。
【0063】
ステップS5において、低温側測定温度TS1と低温循環液設定温度LSVが等しくない場合は、ステップS7行き、冷凍機サイクルの冷却能力を増加させ、ステップS1に戻る。
【0064】
ステップS3において、低温側測定温度TS1が低温循環液設定温度LSVよりも低い場合は、ステップS8に行き、(低温循環液設定温度LSV−5度)よりもさらに低温側測定温度TS1が低い場合は、冷凍機サイクルを停止させ、ステップS1に戻る。(低温循環液設定温度LSV−5度)よりも低温側測定温度TS1が高い場合は、ステップS10に行き、冷凍機サイクルの冷却能力を減少させ、ステップS1に戻る。
【0065】
図10はサブユニットの循環液温度制御のフローチャートである。
ステップS21で、メインコントローラ61の表示・設定パネル63に恒温循環液供給口側設定温度SSVを設定する。次に、恒温循環液供給温度センサー23の測定温度TS3または恒温循環液戻り温度センサー24の測定温度TS4を読み込む。
【0066】
次のステップS22で流量制御を行うか否かを判断する。流量制御を行う場合はステップS23に、流量制御を行わない場合はステップS31に行く。
【0067】
ステップS23において、恒温循環液流量センサー25の測定値FSおよび恒温循環液吐出流量設定値SFSを読み込む。
【0068】
ステップS24において、恒温循環液流量センサー25の測定値FSを恒温循環液吐出流量設定値SFSと比較する。測定値FSが設定値SFSと等しいかそれより小さい場合はステップS25に行き、測定値FSが設定値SFSと等しいか否かを比較して、等しい場合はステップ26に行きインバータ駆動ポンプ21のインバータ27の周波数を現状維持にする。等しくない場合はステップS28に行き、インバータ周波数を上昇させて、ポンプ回転量を増加させる。
【0069】
ステップS24において、測定値FSが設定値SFSよりも大きい場合はステップ27に行き、インバータ周波数を降下させて、ポンプ回転量を減少させる。
【0070】
ステップS22で流量制御を行わないと判断された場合はステップS31に行き、恒温循環液吐出圧力センサー22の測定値PSおよび恒温循環液吐出圧力設定値SPSを読み込む。
【0071】
ステップS32において、恒温循環液吐出圧力センサー22の測定値PSを恒温循環液吐出圧力設定値SPSと比較する。測定値PSが設定値SPSと等しいかそれよりも小さい場合はステップS33に行き、測定値PSが設定値SPSと等しいか否かを比較して、等しい場合はステップ34に行ってインバータ周波数を現状維持にする。等しくない場合はステップS35に行き、インバータ周波数を上昇させ、ポンプ回転量を増加させる。
【0072】
ステップS32において、測定値PSが設定値SPSよりも大きい場合は、ステップS36に行き、インバータ27の周波数を降下させて、ポンプの回転量を減少させる。
【0073】
ステップS26〜ステップ28またはステップS34〜ステップ36によって恒温循環液の流量又は液圧が安定した後、ステップ30において三方弁20の制御を行う。ここでは、恒温循環液供給温度センサー23の測定温度TS3または恒温循環液戻り温度センサー24の測定温度TS4が恒温循環液供給口側設定温度SSVに等しくなるように三方弁20の制御弁26の位置をPID制御する。
【0074】
(実施例2)
図11は、メインユニットの冷却源としては工場設備用水を使用し、加熱源としてはヒーターを使用した例を示す。
【0075】
4は工場設備用水冷却システムで、冷却水入口56から導入された工場用水は設備用水熱交換器59において、サブユニット2から戻り配管16によって戻されてくる温度が高くなった低温循環液と熱交換して低温循環液を冷却する。冷却された低温循環液は冷却側タンク43に貯留され、冷却ポンプ45によって低温循環液供給配管14を通り、低温循環液サブユニット供給用配管50を経てサブユニット2に送られる。低温循環液の温度は冷却側温度センサー10によって計測され、この計測された低温循環液の温度が設定温度に達する迄、冷却側タンク43内に備えられた冷却側ヒーター60をPID制御する。なお、図中47は冷却側リリーフ弁、52はサブユニット戻り用配管、57は低温循環液側ドレインバルブである。
【0076】
一方、加熱側タンク44においてヒーター41で加熱された高温循環液は高温循環液供給配管15を通り、高温循環液サブユニット供給用配管51を経てサブユニット2に送られる。高温循環液の温度は加熱側温度センサー11によって計測され、この計測された高温循環液の温度が設定温度に達する迄、加熱側タンク44内に備えられたヒーター41をPID制御する。なお、図中48は加熱側リリーフ弁、58は高温循環液側ドレインバルブである。
【0077】
低温循環液と高温循環液は三方弁20で混合され、インバータ駆動ポンプ21で撹拌混合された後、外部熱負荷装置7の熱交換室71に送られる。この際、低温循環液と高温循環液の流量の割合は、設定温度になるように外部熱負荷装置7の温度に応じて調整される。この低温循環液と高温循環液の流量の割合は三方弁20に設けられた制御弁26を外部熱負荷装置7の温度によってフィードバック制御すればよい。
【0078】
外部熱負荷装置7の温度は外部熱負荷装置に設けられた温度センサー72、恒温循環液供給温度センサー23、または恒温循環液戻り温度センサー24のいずれかで計測される。なお、22は恒温循環液吐出圧力センサー、25は恒温循環液流量センサーである。
【0079】
図12は熱応答性について本願発明と従来法とを比較したグラフを示すものである。本願発明のシステムは、実施例2記載のシステムを使用し、従来システムとしては、冷却循環液を冷凍システムによっては過冷却し、外部熱負荷装置の温度によってフィードバック制御されるヒーターで微調整して冷却循環液の温度を設定温度に保つチラー装置を使用した。外部熱負荷装置、冷却循環液は同じものを使用し、冷却循環液の吐出流量を同一に設定した。本発明のシステムの特有な条件としては、低温側設定温度TS1は25℃とし、20〜23℃の工場設備用水を冷却側ヒーターで加熱して調整する。高温側設定温度TS2は60℃とした。
【0080】
データ測定条件:
(1)外部熱負荷装置の設定温度を+30℃から+50℃に昇温した場合と、(2)外部熱負荷装置の設定温度を+50℃から+30℃に降温した場合の2つの温度変化に対応する両システムの熱応答性を比較検討した。
【0081】
図12において、上図(A)は従来システムの冷却循環液の温度曲線を示すもの、下図(B)は本発明の冷却循環液の温度曲線を示すものである。昇温動作(Ramp UP)は設定温度を30℃から50℃に切り替えた時点を示し、降温動作(Ramp DOWN)は設定温度を50℃から30℃に切り替えた時点を示す。
【0082】
従来システム(A)において、設定温度を昇温した場合、ランプアップから冷却循環液の温度が50℃に達するまで200秒かかっている。しかも、温度曲線は設定温度に達した後上に盛り上がっている。これは、オーバーシュートを示すもので、液温が安定化するまでに更に80秒かかっている。設定温度を降温した場合も、ランプダウンから冷却循環液の温度が30℃に達するまでに170秒かかっている。しかも、設定温度に達した後に温度曲線は下方にふくらんでいる。これは、アンダーシュートを示すもので、液温が安定化するまでに更に100秒かかっている。
【0083】
本発明のシステム(B)において、設定温度を昇温する場合、ランプアップから冷却循環液の温度が50℃に達する迄の時間は僅か40秒で、しかも、設定温度の50℃に達した後に液温は直ちに安定している。本発明のシステムでは、昇温動作において従来システムに比べて、液温が安定するまでの時間は1/7に短縮されている。
【0084】
設定温度を降温する場合も、ランプダウンから冷却循環液の温度が30℃に安定するまでの時間は僅か40秒と極めて短く、しかも、設定温度の30℃に達した後は液温は直ちに安定している。本発明のシステムでは、降温動作において従来システムに比べて、液温が安定するまでの時間は1/6.75に短縮されている。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明の恒温維持装置の概念図である。
【図2】本発明の実施例1のメインユニットのシステム構成図である。
【図3】本発明の実施例1のサブユニットのシステム構成図である。
【図4】本発明の実施例1のコントローラの配線図である。
【図5】三方弁の断面図である。
【図6】三方弁の昇温動作を示す説明図である。
【図7】三方弁の降温動作を示す説明図である。
【図8】三方弁の調温動作を示す説明図である。
【図9】メインユニットの動作を示すフローチャートである。
【図10】サブユニットの動作を示すフローチャートである。
【図11】本発明の実施例2のシステム構成図である。
【図12】熱応答性について本発明と従来例との比較グラフである。
【符号の説明】
【0086】
1 メインユニット
2 サブユニット
3 冷凍機サイクル
7 外部熱負荷装置
20 三方弁
21 インバータ駆動ポンプ
22 恒温循環液吐出圧力センサー
23 恒温循環液供給温度センサー
24 恒温循環液戻り温度センサー
25 恒温循環液流量センサー
43 冷却側タンク
44 加熱側タンク
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部熱負荷装置の温度を一定に保つための恒温維持装置に関し、特に、半導体製造装置等に使用されるチラー装置等の、一定温度の液体熱媒体を循環させて外部熱負荷装置の温度を一定に保つための恒温維持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
先進的な半導体メーカーにおいては、次世代の半導体装置として45nmプロセスのマイクロプロセッサの開発が進められている。この製造プロセスでは熱負荷の大きいプラズマエッチング装置等の温度を常に一定に保つために大型で高精度、特に熱応答性の高い温度制御装置が要求されている。温度制御装置としては、通常チラー装置と呼ばれる恒温維持装置が使用されている。
【0003】
この種の恒温維持装置は、通常、冷却器、加熱器および外部熱負荷装置の間を循環する環状管路に液体の熱媒体を流し、外部熱負荷装置で加温された液媒体を冷却器で過冷却し、過冷却した液媒体を加熱器で外部熱負荷装置の要求する設定温度に迄加熱して外部熱負荷装置に供給している。
【0004】
通常このような装置では、外部熱負荷装置の熱負荷があるなしに拘わらず、冷却器はその装置仕様の冷却能力を常に発揮している。そのために、冷却が仮に冷凍機であった場合などは常に大きな電力を浪費することになる。そこで、外部熱負荷装置の運転状況にあわせて、運転モードと省エネルギーモードとを切り換えできる恒温維持装置が提案されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004-169933号公報
【0005】
また、恒温維持装置の冷却器は通常冷却器の出口の液媒体の温度が冷却器の設定温度になるように制御されている。ところが、冷却器の冷凍サイクル内の冷媒ガス(フロンガス等)は熱伝達速度が遅いので、設定温度に到着してから設定温度を大きく超えたり(オーバーシュート)、設定温度を大きく下回ったり(アンダーシュート)することがしばしば起こる。これは加熱器への負担が大きくなり、大型で広い温度範囲の温度調節ができる加熱器が要求される。
【0006】
そこで、恒温維持装置の外で外部熱負荷装置に近い位置に熱媒体の温度を微調節する温度調節装置を設けることが提案されている(特許文献2および特許文献3参照)。
【特許文献2】特開2001-153518号公報
【特許文献3】米国公開特許第20060237181号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記、特開2004-169933号公報には、コンピュータでプラズマエッチング処理装置の工程シーケンスのレシピ情報を先読みして、一定以上の休止状態がある時またはそれが回復される時にチラー装置の運転モードと省エネルギーモードとを切り換えるチラー制御装置が開示されている。
【0008】
しかしこの装置では、温度制御対象装置の稼働状況を常に把握し、その状況をチラー装置の制御系に送信するためのコンピュータやそれに付随する信号線等を必要とする。
【0009】
上記特開2001-153518号公報には、プロセス装置側の温度によってチラー装置の出口温度を設定すると共に、プロセス装置に供給する熱媒体の温度を微調整する第2温度制御部をチラー装置から分離してプロセス装置の近傍に設けた温度制御システムが開示されている。
【0010】
そして、第1温度制御部では広範囲の温度制御に対応し、第2温度制御部では第1温度制御部で大まかに制御された温度を微調整するだけでよいので、大きな温度変化に追従できなくとも、小さな範囲内での精密な制御ができる機構を備えれば良いとして、第2温度制御部での温度制御用の装置として、チラー装置や、加熱にはヒーターを用い冷却には冷却機で冷却した流体を用いる装置が例示されている。
【0011】
すなわち、この発明の方法では、急激な温度変化に対しては、第1温度制御部が対応しているので、タイムラグが発生し、熱応答性が悪く、急激な温度変化を伴う45nmプロセス級のマイクロプロセッサ製造のプロセスチャンバー用の温度制御には不適当であるという欠点がある。
【0012】
上記米国公開特許第20060237181号公報記載の発明は、冷却機能のみを持った冷却ユニットと冷却ユニットからの冷却液と外部熱負荷装置を冷却するための循環液とを熱交換させる遠隔温度制御モジュール(RTCM)とより構成し、外部熱負荷装置の温度でRTCMの熱交換部の温度をフィードバック制御している。このようにRTCMを冷却ユニットと切り離して外部熱負荷装置の近くに置くことによって、温度制御の精度を高めることができる。
【0013】
また、RTCMは冷却ユニットと切り離されているので、冷却ユニット1台に対して多くのRTCMを増設できるので、例えば、半導体製造装置の複数個のプロセスチャンバー(マルチチャンバー)に、このRTCMを1個ずつ取り付けることができ、しかも、各RTCM毎に独立して温度制御を行うことができる等の利点を有している。
【0014】
しかし、米国公開特許第20060237181号公報記載の発明では、RTCM中では、熱交換装置を用いて冷却液と循環液とを間接的に熱交換を行っている。一般的に間接熱交換方式では熱損失が大きいと共に、温度応答性が悪いので、急激な温度変化を伴う45nmプロセス級のマイクロプロセッサ製造のプロセスチャンバー用の温度制御には不適当である。
【0015】
また、RTCMの加熱用にヒーターを搭載しているので、各モジュール毎に大きな電力供給用の回線が必要となり、装置の大型化や複雑化が避けられない等の欠点がある。
【0016】
本発明は、外部熱負荷装置の急激な温度変化にも対応できる熱応答性が高くしかも高精度の温度制御が可能な恒温維持装置を提供することを第1の目的としている。
【0017】
本発明は、1つのメインユニットに対して多数のサブユニットを増設することが可能であると共に、各サブユニット毎に異なった温度を設定することが可能な恒温維持装置を安価に提供することを第2の目的としている。
【0018】
本発明は、外部熱負荷装置から離れた場所にメインユニットを設置しても、温度応答性と温度精度を保証できる恒温維持装置を提供することを第3の目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の恒温維持装置は、予め定められた温度に調整された高温熱媒体循環液を生成するための高温熱媒体循環液生成手段と予め定められた温度に調整された低温熱媒体循環液を生成するための低温熱媒体循環液生成手段とを備えたメインユニットと、上記高温熱媒体循環液と上記低温熱媒体循環液とを直接混合すると共に該高温熱媒体循環液と該低温熱媒体循環液との流量比を上記外部熱負荷装置の温度に応じて制御することによって予め定められた設定温度の熱媒体循環液を生成するための恒温熱媒体循環液生成手段を備えたサブユニットとより構成されていることを特徴とする。
【0020】
上記高温熱媒体循環液生成手段の熱源としては冷凍機サイクルより得られる高温側の熱媒体、ヒーターおよび工場設備用水からなる群から選ばれた少なくとも1つの熱源を使用し、上記低温熱媒体循環液生成手段の熱源としては冷凍機サイクルより得られる冷熱側の熱媒体、ヒーターおよび工場設備用水からなる群から選ばれた少なくとも1つの熱源を使用することができる。
【0021】
すなわち、高温熱媒体循環液生成手段の熱源としては冷凍機サイクルより得られる高温側の熱媒体を使用し、低温熱媒体循環液生成手段の熱源として冷凍機サイクルより得られる冷熱側の熱媒体を使用することができる。この方式では、高温熱媒体循環液または/および低温熱媒体循環液の温度を微調整するためにヒーターを併用することができる。また、この方式では廃熱を利用するので熱効率が高くなる。
【0022】
また、高温熱媒体循環液生成手段の熱源としてヒーターを使用し、低温熱媒体循環液生成手段の熱源として工場設備用水を使用することもできる。
【0023】
また、高温熱媒体循環液生成手段の熱源としてヒーターを使用し、低温熱媒体循環液生成手段の熱源として冷凍機サイクルより得られる冷熱側の熱媒体を使用することもできる。
【0024】
さらに、高温熱媒体循環液生成手段の熱源として工場設備用水を使用し、低温熱媒体循環液生成手段の熱源として冷凍機サイクルより得られる冷熱側の熱媒体を使用することもできる。
【0025】
さらにまた、高温の工場設備用水と低温の工場設備用水が確保できる事業所では、高温熱媒体循環液生成手段の熱源として高温の工場設備用水を使用し、低温熱媒体循環液生成手段の熱源として低温の工場設備用水を使用することもできる。
【0026】
このように、冷凍機サイクルより得られる熱媒体、工場設備用水およびヒーターは高温側の熱源および低温側の熱源として上記以外の種々の組み合わせで使用することが可能である。特に、ヒーターは設定温度の微調整用に他の熱源と併用して使用すると便利である。
【0027】
上記恒温熱媒体循環液生成手段として、高温熱媒体循環液が流入する流入口、低温熱媒体循環液が流入する流入口、恒温熱媒体循環液が流出する流出口および高温熱媒体循環液と低温熱媒体循環液との流量比を制御するための制御弁とを備えた三方弁と恒温熱媒体循環液を攪拌混合して送出する攪拌混合送出手段を備えた装置を使用することができる。低温熱媒体循環液との流量比を制御するための制御弁には外部熱負荷装置の温度に応じてその開度を制御するための三方弁制御手段を備える必要がある。
【0028】
上記三方弁制御手段は、外部熱負荷装置に流入する側の恒温熱媒体循環液の温度、上記外部熱負荷装置から流出する側の恒温熱媒体循環液の温度、上記外部熱負荷装置の必要部位の温度の群から選ばれたいずれか1つの温度によって三方弁に流入する高温熱媒体循環液と低温熱媒体循環液との流量比をフィードバック制御する機能を有する。
【0029】
外部熱負荷装置に直接測温用の温度センサーを取り付けて温度を制御する方式が最も熱応答性が高い。具体的には、外部熱負荷装置として半導体製造装置のプロセスチャンバーを対象とする場合は、半導体ウエハーの台座、高周波プラズマ装置の台座またはチャンバーの壁面の温度を測定するように温度センサーを取り付けるのが好ましい。
【0030】
外部熱負荷装置に直接温度センサーを取り付けるのが困難な場合は、サブユニットから外部熱負荷装置に恒温熱媒体循環液を供給する管路、外部熱負荷装置からサブユニットに恒温熱媒体循環液が流出する戻り管路のいずれかに温度測定用のセンサーを設けてもよい。この場合、戻り管路に設けた方が熱応答性が高いので好ましい。
【0031】
三方弁の制御弁の動力部にはスッテプモーター、サーボモーターまたは空気圧駆動ダイアフラムのいずれかを使用し、フィードバック制御にはPID制御を使用することを推奨する。
【0032】
上記攪拌混合送出手段としては、高温熱媒体循環液と低温熱媒体循環液とを短時間に均一に混合する必要があるので、特に撹拌力の強いターボ型流体ポンプを使用するのが好ましい。また、ポンプの流量又は圧力を調整しやすいインバータ駆動式のポンプを使用することを推奨する。
【0033】
ターボ型流体ポンプとしては、渦巻きポンプ、ディフューザポンプまたはカスケードポンプを使用することができる。
【0034】
メインユニットとサブユニットとは隔離されていて、高温熱媒体循環液の供給用管路、低温熱媒体循環液の供給用管路および恒温熱媒体循環液の戻り用管路で相互に連結されている。特に、サブユニットは外部熱負荷装置に近接して設けることが熱応答性を高めるために特に重要である。
【発明の効果】
【0035】
(1)本発明の恒温維持装置は、高温熱媒体循環液と低温熱媒体循環液とを直接混合して恒温熱媒体循環液を生成しているので、外部熱負荷装置の急激な温度変化に対しても、瞬間的に所望の設定温度の熱媒体循環液を生成でき、熱応答性が極めて高い。
【0036】
(2)本発明の恒温維持装置は、恒温熱媒体循環液生成手段として、高温熱媒体循環液と低温熱媒体循環液との流量比を制御するための制御弁を備えた三方弁と高温熱媒体循環液と低温熱媒体循環液との混合液を攪拌混合して送出する手段として撹拌力の強いターボ型流体ポンプを使用しているので、混合液を短時間で均一に混合して恒温熱媒体循環液を瞬間的に生成でき、例えば、次世代プロセスの半導体ウエハー処理中に急激に設定温度が変化するシステム(マルチステップシステム)に対しても瞬間的に対応できる、熱応答性および熱精度の極めて高い恒温維持装置を提供することができる。
【0037】
(3)本発明の恒温維持装置は、メインユニットとサブユニットとは隔離されているので、1つのメインユニットに対してサブユニットを多数取り付けることができ、いわゆるマルチチャンバーシステムに容易に対応できる。
【0038】
(4)本発明の恒温維持装置は、メインユニットとサブユニットとは隔離されているので、サブユニットを外部熱負荷装置の近傍に設置することができ、熱応答性、熱精度をさらに高めることができる。
【0039】
(5)本発明の恒温維持装置は、メインユニットとサブユニットとに分離され、設定温度の異なる外部熱負荷装置が複数あっても、設定温度の異なる外部熱負荷装置毎にサブユニットを設置して、1つのメインユニットで対応できるので、メインユニットにおける循環液の補充・管理作業が容易になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
本発明を実施するための恒温維持装置の実施例を図面によって説明する。
【実施例】
【0041】
(実施例1)
図1は本発明の恒温維持装置の概念図を示すもので、1はメインユニット、2はサブユニット、12は低温熱媒体循環液生成手段、13は高温熱媒体循環液生成手段、20は三方弁、21は撹拌混合送出手段としてのインバータ駆動ポンプ、26は制御弁、7は外部熱負荷装置、71は熱交換室である。
【0042】
低温熱媒体循環液生成手段12で生成された低温熱媒体循環液は低温循環液供給配管14を通り、高温熱媒体循環液生成手段13で生成された高温熱媒体循環液は高温循環液供給配管15を通ってサブユニット2の三方弁20に供給される。三方弁20の制御弁26は、外部熱負荷装置7の温度によって低温熱媒体循環液と高温熱媒体循環液との流量を制御して設定温度の熱媒体循環液を生成する。インバータ駆動ポンプ21は設定温度の熱媒体循環液(恒温熱媒体循環液)を均一に撹拌して熱交換室71に送り外部熱負荷装置7の温度を設定温度に維持する。
【0043】
図2はメインユニット1のシステム構成図、図3はサブユニット2のシステム構成図を示している。
図2に示す実施例では、メインユニット1において、高温熱媒体循環液生成手段13の熱源としては冷凍機サイクルより得られる高温側の熱媒体を使用し、低温熱媒体循環液生成手段12の熱源として冷凍機サイクルより得られる冷熱側の熱媒体を使用している。
【0044】
図2において、冷凍機サイクル3は、圧縮機30、冷凍機吐出ガス熱交換器31、コンデンサ32、ドライヤ34、循環液冷却用電子膨張弁36、エバポレータ39、気液分離器兼受液器33、圧縮機30で閉回路を構成している。図中35はサイトグラス、37は冷凍機吸込みガス冷却用電子膨張弁、38は冷凍機直接冷却用電子膨張弁、40は制水弁、55は冷凍機用の冷却水出口、56は冷凍機用の冷却水入口である。
【0045】
サブユニット2より戻り配管16によって送られてきた低温熱媒体循環液(以下低温循環液と略称する)はエバポレータ39で冷熱を得て、冷却側タンク43に貯留される。この際、冷却側温度センサー10によって計測された低温循環液の温度によって循環液冷却用電子膨張弁36の開度が調整されエバポレータ39を介して低温循環液の温度が設定温度に保たれる。設定温度に保たれた低温循環液は冷却ポンプ45によって低温循環液供給配管14、冷却側マニホールド17、低温循環液サブユニット供給用配管50を経て、サブユニット2に送られる。なお、図中42はリザーブタンク、47は冷却側リリーフ弁である。
【0046】
一方、ヒーター41を備えた加熱側タンク44内の高温熱媒体循環液(以下高温循環液と略称する)は加熱ポンプ46で冷凍機吐出ガス熱交換器31に送られそこで圧縮機30から送られてくる高温熱媒体と熱交換して加熱されて、高温循環液供給配管15、加熱側マニホールド18、高温循環液サブユニット供給用配管51を経て、サブユニット2に送られる。図中11は加熱側温度センサー、19は戻り側マニホールド、48は加熱側リリーフ弁、52はサブユニット戻り用配管、57は低温循環液側ドレインバルブ、58は高温循環液側ドレインバルブである。
【0047】
図3はサブユニット2の構成図であって、低温循環液サブユニット供給用配管50で送られてきた低温循環液と高温循環液サブユニット供給用配管51で送られてきた高温循環液とは制御弁26を備えた三方弁20で混合され、インバータ駆動ポンプ21で撹拌混合されて均一の恒温循環液となって恒温循環液供給口53から外部熱負荷装置7の熱交換室71に送られる。
【0048】
熱交換室71で熱交換した恒温循環液は恒温循環液戻り口54からサブユニット2を経てサブユニット戻り用配管52によってメインユニット1に送り返される。図中22は恒温循環液吐出圧力センサー、23は恒温循環液供給温度センサー、24は恒温循環液戻り温度センサー、25は恒温循環液流量センサーである。
【0049】
ここで、三方弁20の構造と動作について説明する。
図5は三方弁20の断面図で、高温循環液流入口201、低温循環液流入口202、混合循環液吐出口203を有する弁箱204に、動力部261で駆動される制御弁26が組み込まれている。動力部261にはサーボモーター、ステップモーターまたは圧縮空気で駆動されるダイアフラム等が内蔵されている。
【0050】
昇温時は図6に示されるように、混合循環液吐出口203から流出する恒温循環液の温度が設定温度になるまで、高温循環液流入口201から流入する高温循環液が100%になるように制御弁26を下げて低温循環液流入口202の低温側弁座206を閉鎖する。
【0051】
降温時は図7に示すように、混合循環液吐出口203から流出する恒温循環液の温度が設定温度になるまで、低温循環液流入口202から流入する低温循環液が100%になるように制御弁26を引き上げて高温循環液流入口201の高温側弁座205を閉鎖する。
【0052】
調温時は図8に示すように、外部熱負荷装置7の熱負荷が大きくなった場合は、低温循環液の割合を高温循環液の割合よりも多くするために、制御弁26を引き上げて、低温側弁座206の開度を高温側弁座205の開度よりも大きくする。反対に、外部熱負荷装置7の熱負荷が小さくなったり、瞬間的になくなった場合は、低温循環液の割合を高温循環液の割合よりも少なくするために、制御弁26を下げて、低温側弁座206の開度を高温側弁座205の開度よりも小さくする。
【0053】
図4は恒温維持装置を制御するためのコントローラの配線図を示すもので、コントローラはメインユニット1に設けられたメインコントローラ61とサブユニット2に設けられたサブコントローラ62の2個設けられている。メインコントローラ61には表示・設定パネル63が付設されていて、予めメインユニット1の設定値、すなわち、低温循環液設定温度LSVおよび高温循環液設定温度HSVと、サブユニット2の設定値、すなわち、恒温循環液供給側設定温度(または恒温循環液戻り側設定温度)SSV、恒温循環液吐出圧力設定値SPSおよび恒温循環液吐出流量設定値SFSが入力される。なお、図中64は電源である。
【0054】
メインユニット1の低温循環液側では、冷却側温度センサー10で計測された温度TS1によって、循環液冷却用電子膨張弁36の開度が調整され、冷凍機サイクル3の出力が制御されて、低温循環液の温度を設定温度LSVに維持する。
【0055】
一方、高温循環液側では、加熱側温度センサー11で計測された温度TS2によって、ヒーター41がPID制御されて、高温循環液の温度を設定温度HSVに維持する。
【0056】
サブユニット2では、インバータ駆動ポンプによる恒温循環液の吐出流量又は吐出圧力の管理と三方弁による恒温循環液の温度の管理を行っている。
すなわち、吐出圧力管理の場合は、恒温循環液吐出圧力センサー22の吐出圧力PSが設定圧力SPSになるように渦巻きポンプ28の駆動周波数をインバータ27で調整している。
【0057】
また、吐出流量管理の場合は、恒温循環液吐出流量センサー25の吐出流量FSが設定流量SFSになるように渦巻きポンプ28の駆動周波数をインバータ27で調整している。
【0058】
恒温循環液の温度を制御するためには、三方弁20を用いて高温循環液量と低温循環液量の割合を変化させる。そのために、恒温循環液供給温度センサー23の測定温度TS3が設定温度SSVになるようにPID制御によって三方弁20の開度を調整している。この場合、恒温循環液戻り温度センサー24の測定温度TS4によって三方弁をPID制御してもよい。
【0059】
以上の操作を図9及び図10のフローチャートを用いてさらに詳しく説明する。図9はメインユニットの循環液温度制御のフローチャートである。
ステップS1で、メインコントローラ61の表示・設定パネル63に低温循環液設定温度LSVおよび高温循環液設定温度HSVを設定する。次に、冷却側温度センサー10の測定温度TS1および加熱側温度センサー11の測定温度TS2を読み込む。
【0060】
次にステップS2において、測定温度TS2が高温循環液設定温度HSVになるようにヒーター41をPID制御制御する。
【0061】
次にステップS3において、低温側測定温度TS1と低温循環液設定温度LSVとを比較する。低温側測定温度TS1が低温循環液設定温度LSVと等しいかそれよりも高い場合は、ステップS4に行き、圧縮機30を駆動させる。
【0062】
再び、ステップS5において、低温側測定温度TS1と低温循環液設定温度LSVとを比較する。低温側測定温度TS1と低温循環液設定温度LSVが等しい場合は、ステップS6に行き、冷凍機サイクルの出力を現状維持にして、ステップS1に戻る。
【0063】
ステップS5において、低温側測定温度TS1と低温循環液設定温度LSVが等しくない場合は、ステップS7行き、冷凍機サイクルの冷却能力を増加させ、ステップS1に戻る。
【0064】
ステップS3において、低温側測定温度TS1が低温循環液設定温度LSVよりも低い場合は、ステップS8に行き、(低温循環液設定温度LSV−5度)よりもさらに低温側測定温度TS1が低い場合は、冷凍機サイクルを停止させ、ステップS1に戻る。(低温循環液設定温度LSV−5度)よりも低温側測定温度TS1が高い場合は、ステップS10に行き、冷凍機サイクルの冷却能力を減少させ、ステップS1に戻る。
【0065】
図10はサブユニットの循環液温度制御のフローチャートである。
ステップS21で、メインコントローラ61の表示・設定パネル63に恒温循環液供給口側設定温度SSVを設定する。次に、恒温循環液供給温度センサー23の測定温度TS3または恒温循環液戻り温度センサー24の測定温度TS4を読み込む。
【0066】
次のステップS22で流量制御を行うか否かを判断する。流量制御を行う場合はステップS23に、流量制御を行わない場合はステップS31に行く。
【0067】
ステップS23において、恒温循環液流量センサー25の測定値FSおよび恒温循環液吐出流量設定値SFSを読み込む。
【0068】
ステップS24において、恒温循環液流量センサー25の測定値FSを恒温循環液吐出流量設定値SFSと比較する。測定値FSが設定値SFSと等しいかそれより小さい場合はステップS25に行き、測定値FSが設定値SFSと等しいか否かを比較して、等しい場合はステップ26に行きインバータ駆動ポンプ21のインバータ27の周波数を現状維持にする。等しくない場合はステップS28に行き、インバータ周波数を上昇させて、ポンプ回転量を増加させる。
【0069】
ステップS24において、測定値FSが設定値SFSよりも大きい場合はステップ27に行き、インバータ周波数を降下させて、ポンプ回転量を減少させる。
【0070】
ステップS22で流量制御を行わないと判断された場合はステップS31に行き、恒温循環液吐出圧力センサー22の測定値PSおよび恒温循環液吐出圧力設定値SPSを読み込む。
【0071】
ステップS32において、恒温循環液吐出圧力センサー22の測定値PSを恒温循環液吐出圧力設定値SPSと比較する。測定値PSが設定値SPSと等しいかそれよりも小さい場合はステップS33に行き、測定値PSが設定値SPSと等しいか否かを比較して、等しい場合はステップ34に行ってインバータ周波数を現状維持にする。等しくない場合はステップS35に行き、インバータ周波数を上昇させ、ポンプ回転量を増加させる。
【0072】
ステップS32において、測定値PSが設定値SPSよりも大きい場合は、ステップS36に行き、インバータ27の周波数を降下させて、ポンプの回転量を減少させる。
【0073】
ステップS26〜ステップ28またはステップS34〜ステップ36によって恒温循環液の流量又は液圧が安定した後、ステップ30において三方弁20の制御を行う。ここでは、恒温循環液供給温度センサー23の測定温度TS3または恒温循環液戻り温度センサー24の測定温度TS4が恒温循環液供給口側設定温度SSVに等しくなるように三方弁20の制御弁26の位置をPID制御する。
【0074】
(実施例2)
図11は、メインユニットの冷却源としては工場設備用水を使用し、加熱源としてはヒーターを使用した例を示す。
【0075】
4は工場設備用水冷却システムで、冷却水入口56から導入された工場用水は設備用水熱交換器59において、サブユニット2から戻り配管16によって戻されてくる温度が高くなった低温循環液と熱交換して低温循環液を冷却する。冷却された低温循環液は冷却側タンク43に貯留され、冷却ポンプ45によって低温循環液供給配管14を通り、低温循環液サブユニット供給用配管50を経てサブユニット2に送られる。低温循環液の温度は冷却側温度センサー10によって計測され、この計測された低温循環液の温度が設定温度に達する迄、冷却側タンク43内に備えられた冷却側ヒーター60をPID制御する。なお、図中47は冷却側リリーフ弁、52はサブユニット戻り用配管、57は低温循環液側ドレインバルブである。
【0076】
一方、加熱側タンク44においてヒーター41で加熱された高温循環液は高温循環液供給配管15を通り、高温循環液サブユニット供給用配管51を経てサブユニット2に送られる。高温循環液の温度は加熱側温度センサー11によって計測され、この計測された高温循環液の温度が設定温度に達する迄、加熱側タンク44内に備えられたヒーター41をPID制御する。なお、図中48は加熱側リリーフ弁、58は高温循環液側ドレインバルブである。
【0077】
低温循環液と高温循環液は三方弁20で混合され、インバータ駆動ポンプ21で撹拌混合された後、外部熱負荷装置7の熱交換室71に送られる。この際、低温循環液と高温循環液の流量の割合は、設定温度になるように外部熱負荷装置7の温度に応じて調整される。この低温循環液と高温循環液の流量の割合は三方弁20に設けられた制御弁26を外部熱負荷装置7の温度によってフィードバック制御すればよい。
【0078】
外部熱負荷装置7の温度は外部熱負荷装置に設けられた温度センサー72、恒温循環液供給温度センサー23、または恒温循環液戻り温度センサー24のいずれかで計測される。なお、22は恒温循環液吐出圧力センサー、25は恒温循環液流量センサーである。
【0079】
図12は熱応答性について本願発明と従来法とを比較したグラフを示すものである。本願発明のシステムは、実施例2記載のシステムを使用し、従来システムとしては、冷却循環液を冷凍システムによっては過冷却し、外部熱負荷装置の温度によってフィードバック制御されるヒーターで微調整して冷却循環液の温度を設定温度に保つチラー装置を使用した。外部熱負荷装置、冷却循環液は同じものを使用し、冷却循環液の吐出流量を同一に設定した。本発明のシステムの特有な条件としては、低温側設定温度TS1は25℃とし、20〜23℃の工場設備用水を冷却側ヒーターで加熱して調整する。高温側設定温度TS2は60℃とした。
【0080】
データ測定条件:
(1)外部熱負荷装置の設定温度を+30℃から+50℃に昇温した場合と、(2)外部熱負荷装置の設定温度を+50℃から+30℃に降温した場合の2つの温度変化に対応する両システムの熱応答性を比較検討した。
【0081】
図12において、上図(A)は従来システムの冷却循環液の温度曲線を示すもの、下図(B)は本発明の冷却循環液の温度曲線を示すものである。昇温動作(Ramp UP)は設定温度を30℃から50℃に切り替えた時点を示し、降温動作(Ramp DOWN)は設定温度を50℃から30℃に切り替えた時点を示す。
【0082】
従来システム(A)において、設定温度を昇温した場合、ランプアップから冷却循環液の温度が50℃に達するまで200秒かかっている。しかも、温度曲線は設定温度に達した後上に盛り上がっている。これは、オーバーシュートを示すもので、液温が安定化するまでに更に80秒かかっている。設定温度を降温した場合も、ランプダウンから冷却循環液の温度が30℃に達するまでに170秒かかっている。しかも、設定温度に達した後に温度曲線は下方にふくらんでいる。これは、アンダーシュートを示すもので、液温が安定化するまでに更に100秒かかっている。
【0083】
本発明のシステム(B)において、設定温度を昇温する場合、ランプアップから冷却循環液の温度が50℃に達する迄の時間は僅か40秒で、しかも、設定温度の50℃に達した後に液温は直ちに安定している。本発明のシステムでは、昇温動作において従来システムに比べて、液温が安定するまでの時間は1/7に短縮されている。
【0084】
設定温度を降温する場合も、ランプダウンから冷却循環液の温度が30℃に安定するまでの時間は僅か40秒と極めて短く、しかも、設定温度の30℃に達した後は液温は直ちに安定している。本発明のシステムでは、降温動作において従来システムに比べて、液温が安定するまでの時間は1/6.75に短縮されている。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明の恒温維持装置の概念図である。
【図2】本発明の実施例1のメインユニットのシステム構成図である。
【図3】本発明の実施例1のサブユニットのシステム構成図である。
【図4】本発明の実施例1のコントローラの配線図である。
【図5】三方弁の断面図である。
【図6】三方弁の昇温動作を示す説明図である。
【図7】三方弁の降温動作を示す説明図である。
【図8】三方弁の調温動作を示す説明図である。
【図9】メインユニットの動作を示すフローチャートである。
【図10】サブユニットの動作を示すフローチャートである。
【図11】本発明の実施例2のシステム構成図である。
【図12】熱応答性について本発明と従来例との比較グラフである。
【符号の説明】
【0086】
1 メインユニット
2 サブユニット
3 冷凍機サイクル
7 外部熱負荷装置
20 三方弁
21 インバータ駆動ポンプ
22 恒温循環液吐出圧力センサー
23 恒温循環液供給温度センサー
24 恒温循環液戻り温度センサー
25 恒温循環液流量センサー
43 冷却側タンク
44 加熱側タンク
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部熱負荷装置の温度を熱媒体循環液との間接熱交換によって制御するための恒温維持装置であって、予め定められた温度に調整された高温熱媒体循環液を生成するための高温熱媒体循環液生成手段と予め定められた温度に調整された低温熱媒体循環液を生成するための低温熱媒体循環液生成手段とを備えたメインユニットと、上記高温熱媒体循環液と上記低温熱媒体循環液とを直接混合すると共に該高温熱媒体循環液と該低温熱媒体循環液との流量比を上記外部熱負荷装置の温度に応じて制御することによって予め定められた設定温度の熱媒体循環液を生成するための恒温熱媒体循環液生成手段を備えたサブユニットとより構成されていることを特徴とする恒温維持装置。
【請求項2】
上記高温熱媒体循環液生成手段の熱源としては冷凍機サイクルより得られる高温側の熱媒体、ヒーターおよび工場設備用水からなる群から選ばれたいずれか1つの熱源を使用し、上記低温熱媒体循環液生成手段の熱源としては冷凍機サイクルより得られる冷熱側の熱媒体および工場設備用水からなる群から選ばれた少なくとも1つの熱源を使用することを特徴とする請求項1記載の恒温維持装置。
【請求項3】
上記高温熱媒体循環液生成手段の熱源としては冷凍機サイクルより得られる高温側の熱媒体を使用し、上記低温熱媒体循環液生成手段の熱源として冷凍機サイクルより得られる冷熱側の熱媒体を使用することを特徴とする請求項2記載の恒温維持装置。
【請求項4】
上記高温熱媒体循環液生成手段の熱源としてヒーターを使用し、上記低温熱媒体循環液生成手段の熱源として工場設備用水を使用することを特徴とする請求項2記載の恒温維持装置。
【請求項5】
上記高温熱媒体循環液生成手段の熱源としてヒーターを使用し、上記低温熱媒体循環液生成手段の熱源として冷凍機サイクルより得られる冷熱側の熱媒体を使用することを特徴とする請求項2記載の恒温維持装置。
【請求項6】
上記高温熱媒体循環液生成手段の熱源として工場設備用水を使用し、上記低温熱媒体循環液生成手段の熱源として冷凍機サイクルより得られる冷熱側の熱媒体を使用することを特徴とする請求項2記載の恒温維持装置。
【請求項7】
上記恒温熱媒体循環液生成手段として、上記高温熱媒体循環液が流入する流入口、上記低温熱媒体循環液が流入する流入口、上記恒温熱媒体循環液が流出する流出口および上記高温熱媒体循環液と上記低温熱媒体循環液との流量比を制御するための制御弁とを備えた三方弁、上記恒温熱媒体循環液を攪拌混合して送出する攪拌混合送出手段並びに上記外部熱負荷装置の温度に応じて上記三方弁の制御弁の開度を制御するための三方弁制御手段とを備えたことを特徴とする請求項1記載の恒温維持装置。
【請求項8】
上記三方弁制御手段は、上記外部熱負荷装置に流入する側の恒温熱媒体循環液の温度、上記外部熱負荷装置から流出する側の恒温熱媒体循環液の温度、上記外部熱負荷装置の必要部位の温度の群から選ばれたいずれか1つの温度によって上記三方弁に流入する上記高温熱媒体循環液と上記低温熱媒体循環液との流量比をフィードバック制御する機能を有することを特徴とする請求項7記載の恒温維持装置。
【請求項9】
上記制御弁の動力部としては、スッテプモーター、サーボモーターおよび空気圧駆動ダイアフラムよりなる群から選ばれたいずれか1つを使用することを特徴とする請求項7記載の恒温維持装置。
【請求項10】
上記フィードバック制御する機能がPID制御機能であることを特徴とする請求項8記載の恒温維持装置。
【請求項11】
上記攪拌混合送出手段として、ターボ型流体ポンプを使用することを特徴とする請求項7記載の恒温維持装置。
【請求項12】
上記ターボ型流体ポンプとして、インバータ駆動式のポンプを使用することを特徴とする請求項11記載の恒温維持装置。
【請求項13】
上記ターボ型流体ポンプとして、渦巻きポンプ、ディフューザポンプおよびカスケードポンプよりなる群から選ばれたいずれか1つのポンプを使用することを特徴とする請求項11記載の恒温維持装置。
【請求項14】
上記メインユニットと上記サブユニットとは上記高温熱媒体循環液の供給用管路、上記低温熱媒体循環液の供給用管路および上記恒温熱媒体循環液の戻り用管路で連結されて互いに隔離して設けられていると共に、上記サブユニットは上記外部熱負荷装置に近接して設けられていることを特徴とする請求項1記載の恒温維持装置。
【請求項1】
外部熱負荷装置の温度を熱媒体循環液との間接熱交換によって制御するための恒温維持装置であって、予め定められた温度に調整された高温熱媒体循環液を生成するための高温熱媒体循環液生成手段と予め定められた温度に調整された低温熱媒体循環液を生成するための低温熱媒体循環液生成手段とを備えたメインユニットと、上記高温熱媒体循環液と上記低温熱媒体循環液とを直接混合すると共に該高温熱媒体循環液と該低温熱媒体循環液との流量比を上記外部熱負荷装置の温度に応じて制御することによって予め定められた設定温度の熱媒体循環液を生成するための恒温熱媒体循環液生成手段を備えたサブユニットとより構成されていることを特徴とする恒温維持装置。
【請求項2】
上記高温熱媒体循環液生成手段の熱源としては冷凍機サイクルより得られる高温側の熱媒体、ヒーターおよび工場設備用水からなる群から選ばれたいずれか1つの熱源を使用し、上記低温熱媒体循環液生成手段の熱源としては冷凍機サイクルより得られる冷熱側の熱媒体および工場設備用水からなる群から選ばれた少なくとも1つの熱源を使用することを特徴とする請求項1記載の恒温維持装置。
【請求項3】
上記高温熱媒体循環液生成手段の熱源としては冷凍機サイクルより得られる高温側の熱媒体を使用し、上記低温熱媒体循環液生成手段の熱源として冷凍機サイクルより得られる冷熱側の熱媒体を使用することを特徴とする請求項2記載の恒温維持装置。
【請求項4】
上記高温熱媒体循環液生成手段の熱源としてヒーターを使用し、上記低温熱媒体循環液生成手段の熱源として工場設備用水を使用することを特徴とする請求項2記載の恒温維持装置。
【請求項5】
上記高温熱媒体循環液生成手段の熱源としてヒーターを使用し、上記低温熱媒体循環液生成手段の熱源として冷凍機サイクルより得られる冷熱側の熱媒体を使用することを特徴とする請求項2記載の恒温維持装置。
【請求項6】
上記高温熱媒体循環液生成手段の熱源として工場設備用水を使用し、上記低温熱媒体循環液生成手段の熱源として冷凍機サイクルより得られる冷熱側の熱媒体を使用することを特徴とする請求項2記載の恒温維持装置。
【請求項7】
上記恒温熱媒体循環液生成手段として、上記高温熱媒体循環液が流入する流入口、上記低温熱媒体循環液が流入する流入口、上記恒温熱媒体循環液が流出する流出口および上記高温熱媒体循環液と上記低温熱媒体循環液との流量比を制御するための制御弁とを備えた三方弁、上記恒温熱媒体循環液を攪拌混合して送出する攪拌混合送出手段並びに上記外部熱負荷装置の温度に応じて上記三方弁の制御弁の開度を制御するための三方弁制御手段とを備えたことを特徴とする請求項1記載の恒温維持装置。
【請求項8】
上記三方弁制御手段は、上記外部熱負荷装置に流入する側の恒温熱媒体循環液の温度、上記外部熱負荷装置から流出する側の恒温熱媒体循環液の温度、上記外部熱負荷装置の必要部位の温度の群から選ばれたいずれか1つの温度によって上記三方弁に流入する上記高温熱媒体循環液と上記低温熱媒体循環液との流量比をフィードバック制御する機能を有することを特徴とする請求項7記載の恒温維持装置。
【請求項9】
上記制御弁の動力部としては、スッテプモーター、サーボモーターおよび空気圧駆動ダイアフラムよりなる群から選ばれたいずれか1つを使用することを特徴とする請求項7記載の恒温維持装置。
【請求項10】
上記フィードバック制御する機能がPID制御機能であることを特徴とする請求項8記載の恒温維持装置。
【請求項11】
上記攪拌混合送出手段として、ターボ型流体ポンプを使用することを特徴とする請求項7記載の恒温維持装置。
【請求項12】
上記ターボ型流体ポンプとして、インバータ駆動式のポンプを使用することを特徴とする請求項11記載の恒温維持装置。
【請求項13】
上記ターボ型流体ポンプとして、渦巻きポンプ、ディフューザポンプおよびカスケードポンプよりなる群から選ばれたいずれか1つのポンプを使用することを特徴とする請求項11記載の恒温維持装置。
【請求項14】
上記メインユニットと上記サブユニットとは上記高温熱媒体循環液の供給用管路、上記低温熱媒体循環液の供給用管路および上記恒温熱媒体循環液の戻り用管路で連結されて互いに隔離して設けられていると共に、上記サブユニットは上記外部熱負荷装置に近接して設けられていることを特徴とする請求項1記載の恒温維持装置。
【図1】
【図3】
【図4】
【図10】
【図11】
【図2】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図12】
【図3】
【図4】
【図10】
【図11】
【図2】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図12】
【公開番号】特開2008−292026(P2008−292026A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−136188(P2007−136188)
【出願日】平成19年5月23日(2007.5.23)
【出願人】(305009496)ATSジャパン株式会社 (2)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年5月23日(2007.5.23)
【出願人】(305009496)ATSジャパン株式会社 (2)
【Fターム(参考)】
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