説明

患者の照射すべきターゲットボリュームに照射プロセスの照射野を適合させる方法および放射線治療装置

【課題】位置および/または大きさが変化するボリュームの照射の実施を簡単化する。
【解決手段】患者内で粒子線を照射すべきターゲットボリュームの位置および/または形状が時間とともに変化し、ターゲットボリュームが粒子線を照射され、3D計画画像データセットと、3D計画画像データセットに基づいてターゲットボリュームのボリューム要素に順次適用すべき線量を割り当てることによって計画段階において計画された照射野とを準備し、照射段階において、照射すべきターゲットボリュームを描出する照射段階の3D画像データセットを取得し、ターゲットボリュームの位置および/または形状の変化を記述する変換を取得することによって、3D計画画像データセットと3D照射データセットとにおけるターゲットボリュームのレジストレーションを行ない、順次適用すべき線量の空間的位置を変換によって変換することによって、計画段階の照射野を、照射段階におけるターゲットボリュームの位置および/または形状の変化に適合させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、適用可能な照射野を設定可能である線源を備え、時間とともに患者内で姿勢および/または形状が変化し得る患者の照射すべきターゲットボリュームを照射するための放射線治療装置に関する。更に、本発明は、時間にともなって患者内で姿勢および/または形状を変え得る患者の照射すべきターゲットボリュームに照射プロセスのための照射野を適合(整合)させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
放射線治療は高エネルギー光子でも粒子でも可能である。前者はよく知られた定評のある技術である(例えば、特許文献1参照)。粒子線治療装置は一般に加速器ユニットおよび高エネルギービーム案内システムを有する。粒子(例えば光子、炭素イオンまたは酸素イオン)の加速は例えばシンクロトロンまたはサイクロトロンにより行なわれる。
【0003】
高エネルギービーム輸送システムは粒子を加速器ユニットから1つ又は複数の治療室へ案内する。粒子が固定の方向から治療場所に命中する固定ビーム式の治療室と、いわゆるガントリ式の治療室とは区別される。後者の場合には粒子線をガントリにより種々の方向から患者に向けることができる。
【0004】
更に、スキャンニング技術とスキャタリング技術とが区別される。後者は照射すべきボリュームの大きさに合わせられた広い面積のビームを使用するのに対して、スキャンニング技術の場合には数ミリメートルからセンチメートルまでの直径の「ペンシルビーム」なるスキャナが照射すべきボリュームを走査する。走査システムをラスタ走査システムとして実施する場合、粒子線は、「点ごとに」、前もって定められた粒子数が適用されるまでの間はラスタの1つのボリューム要素に向けられる。走査範囲内の全てのボリューム要素が順次照射され、その際に適用されたペンシルビームの隣り合った同士の広がりは部分的に重なり合っていることが好ましい。ボリューム要素のための粒子は、このボリューム要素においてだけでなく、粒子照射経路全体に沿っても線量に寄与する。
【0005】
粒子治療装置の制御および安全システムは、その都度、要求されるパラメータにより特徴づけられる粒子線が相応の治療室に導かれることを保証する。治療プロセスのパラメータは例えばいわゆる治療計画において照射野としてまとめられる。治療計画は、粒子のボリューム要素への割り当てを含んでいる。すなわち、治療計画においては、どのくらいのエネルギーを持ったどの方向からのいかほどの量の粒子を患者もしくはボリューム要素に照射すべきかが確定される。粒子のエネルギーは、患者への浸透深さ、すなわち粒子治療時に組織との最大の相互作用が起こる位置を決定する。換言するならば、線量の最大が集積させられる位置である。治療中に集積させられる線量の最大が腫瘍内(または、粒子線の他の医療用途の場合にはそれぞれの標的領域内)にある。
【0006】
更に、制御および安全システムは、患者を粒子線に対して位置決めする位置決め装置を制御する。治療計画の変換にとって、患者が照射のために計画どおりの位置を占めることが重要である。これは、例えば2D位置検査により行なわれる。2D位置検査では、例えば照射の実施前に2D撮影と照射計画からの撮影との比較が行なわれる。
【0007】
スキャンニングシステムを有する粒子治療装置は公知である(例えば、特許文献2または非特許文献1参照)。
【0008】
以下において本発明を粒子治療装置と関連して検討するが、光子治療においても同じ課題設定および解決策がもたらされる。
【0009】
治療計画においては一般に異なる入射角を有する多数の治療野が個別に計画される。各治療野はスキャンニングシステムに合わせられている。すなわち、計画時にその都度1つの治療野が個別に計画され、治療野の範囲はスキャンニングシステムの走査範囲によって限定されている。走査範囲は粒子線の最大偏向によって与えられている。この場合に、2Dスキャンニング(粒子線の偏向が2つの方向において行なわれる。)と、1Dスキャンニングとが区別される。1Dスキャンニングにおいては、第2の次元に広がるボリュームも照射することができるように、付加的に患者が少しずつ移動される。
【0010】
計画段階において照射野設定の基礎をなしたのと異なる位置および/または大きさを照射段階において有するターゲットボリュームの照射は厄介である。なぜならば、患者の位置検査が行なわれたにもかかわらず、ターゲットボリュームの位置および/または大きさの変化により、ターゲットボリュームが患者内の計画された部位に存在しないことがあるからである。
【0011】
類似の状況は、例えば呼吸に起因して動く標的を照射する場合に生じる。この問題は既に検討されていて(例えば、非特許文献2参照)、それには更に腫瘍組織の境界を定めるために使用することができるセグメンテーション方法が開示されている。一般に画像データのセグメンテーションおよびレジストレーションは放射線腫瘍学において知られている。
【特許文献1】米国特許第6687330号明細書
【特許文献2】欧州特許第098070号明細書
【非特許文献1】“The 200−MeV Proton Therapy project at the Paul Scherrer Institute:Conceptual design and Practical realization”,E.Pedroni et al.,Med.Phys.22.37−53(1995)
【非特許文献2】E.Rietzel et al.,“Fourdimensional image based treatment planning:target volume segmentation and dose calculation in the presence of repiratory motion”,Int.J.Radiation Oncology Biol.Phys.Vol.61,No.5,pp.1535−1550,2005
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の課題は、位置および/または大きさが変化するボリュームの照射の実施を簡単化し、かつ相応の放射線治療装置を提供すること、具体的には、患者の照射すべきターゲットボリュームに照射プロセスの照射野を適合させる方法、および放射線治療装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
患者の照射すべきターゲットボリュームに照射プロセスの照射野を適合させる方法に関する課題は、本発明によれば、患者内で粒子線を照射すべきターゲットボリュームの位置および/または形状が時間とともに変化し、粒子線がターゲットボリュームにわたって点ごとに走査されるスキャンニング技術により粒子線を照射される患者の照射すべきターゲットボリュームに照射プロセスの照射野を適合させる方法において、
3D計画画像データセットと、3D計画画像データセットに基づいてターゲットボリュームのボリューム要素に順次適用すべき線量を割り当てることによって計画段階において計画された照射野とを準備し、
照射段階において、照射すべきターゲットボリュームを描出する照射段階の3D画像データセットを取得し、
ターゲットボリュームの位置および/または形状の変化を記述する変換を取得することによって、3D計画画像データセットと3D照射データセットとにおけるターゲットボリュームのレジストレーションを行ない、
順次適用すべき線量の空間的位置を変換によって変換することによって、計画段階の照射野を、照射段階におけるターゲットボリュームの位置および/または形状の変化に適合(整合)させることによって解決される。
【0014】
放射線治療装置に関する課題は、本発明によれば、患者内で粒子線を照射すべきターゲットボリュームの位置および/または形状が時間とともに変化し、粒子線がターゲットボリュームにわたって点ごとに走査されるスキャンニング技術により粒子線を照射される患者の照射すべきターゲットボリュームの照射のための放射線治療装置において、
粒子線を放出するように構成されかつ適用可能な照射野を設定可能である線源と、
照射段階において3D照射データセットを取得するための3D画像化装置と、
照射段階において存在する位置および/または形状の変化に照射野を適合させるための適合化ユニットとを備え、
適合化ユニットは、次のように構成されている、すなわち、
3D照射データセットと準備された3D計画画像データセットとのレジストレーションを行なうと共に、ターゲットボリュームの位置および/または形状の変化を記述する変換を取得し、
3D計画画像データセットに基づくターゲットボリュームのボリューム要素に順次適用すべき線量を割り当てることによって計画段階において計画されて準備された照射野を、取得された変換により変換すると共に、順次適用すべき線量の空間的位置が変換により変換されることによって、照射段階におけるターゲットボリュームの位置および/または形状の変化に適合させるように構成されている
ことによって解決される。
【0015】
請求項1によれば、患者内で位置および/または形状が時間とともに変化し得るターゲットボリュームに照射野を適合(整合)させるために、次のように進行する。一般的には既に放射線治療の計画段階において作成された3D計画画像データセットが、それに基づいて計画された照射野と一緒に準備される。照射野は、ターゲットボリュームの個々のボリューム要素への適用すべき線量の割り当てに相当する。治療段階において、患者が照射のために支度させられて相応に位置決めされる。照射計画に比べて照射治療の開始が後の時点であるために、患者内でターゲットボリュームの位置および/または形状が変化していることがある。
【0016】
これらの変化を照射時に補償するために、照射段階において3D照射データセットが取得される。この3D照射データセットは、3D計画画像データセットとレジストレーション処理される。その際に、一致する座標系において、例えばターゲットボリュームの並進、回転、拡大縮小(スケーリング)、斜体処理および/または変形を記述する付属の変換が取得される。ターゲットボリュームの変化を考慮するために、計画段階の照射野がこの変換により照射段階に適合(整合)させられる。3D照射データセットは、照射治療時点に、すなわち照射段階中に、照射すべきターゲットボリュームを3次元で描出する。
【0017】
これは、計画されかつ照射のために検査およびチェックされた照射野が、ターゲットボリュームにおける変化にもかかわらず、新たな検査を必要としないという利点を有する。それゆえ、ターゲットボリュームの位置および/または形状の小さな変化は、照射段階において迅速かつ簡単に考慮することができる。大きな変化の場合には、付加的に照射野の線量がその都度の入射経路における3D照射データセットでの密度分布に基づいて確認または適合化されるのが有利である。したがって、例えば粒子線治療において必要な粒子浸透深さの精度を保証することができる。
【0018】
更に、例えば走査装置による照射の場合に、ターゲットボリュームの位置および/または形状の変化は照射野の付加的な調整が有利であることが分かった。これは、例えば、ターゲットボリュームにおける個々のボリューム要素が圧縮によりそれらの間隔を変え、もはや、例えば走査装置のラスタに投射され得ない場合である。このような場合には、更に、線量が照射ラスタを超えて補間されると特に有利である。したがって、ターゲットボリュームの位置および/または形状の比較的強い変化の際にも照射計画を維持することができる。
【0019】
レジストレーションは手動、部分自動または全自動で行なうことができる。この場合に、例えば操作者が異なる3D画像データセットにおいて一致する点にマーキングし、この入力パラメータに基づいてマーキング点の変換を算出することができる。レジストレーションは、ターゲットボリュームにとって重要なハウンズフィールド値により自動的に行なうこともできる。
【0020】
レジストレーションの際に付加的に、ターゲットボリュームを取り巻く組織の動きがレジストレーションされる場合、これらの動きも入射方向の適合化に利用される。これらの動きは、特にこの組織が照射されてはならない場合に、入射方向に影響を及ぼすとよい。このようにして、例えば近くにある大切に扱われるべき組織範囲が入射経路から締め出される。
【0021】
レジストレーションの際にターゲットボリュームの位置および/または形状の変化が限界値を超過することが確認された場合には、例えば警報信号(例えば、音響信号または視覚信号)が発生される。操作者が変化を障害として評価した場合、操作者は例えば照射段階を中断させることができる。代替として、操作者は警報信号に対して警報解除を与えることができ、適合した照射野で照射を行なうよう指示することができる。
【0022】
放射線治療装置に関する課題は請求項8による構成により解決される。この種の放射線治療装置は、適用可能な照射野を発生する線源のほかに、放射線治療の照射段階における3D照射データセットを取得するための3D画像化装置を含む。更に、この種の放射線治療装置は、照射段階において存在する位置および/または形状の変化に照射野を適合(整合)させることを可能にする適合化ユニットを有する。このために、適合化ユニットは、3D照射データセットと準備された3D計画画像データセットとのレジストレーション処理を行い、かつターゲットボリュームの位置および/または形状の変化を記述する付属の変換を取得するように構成されている。更に、適合化ユニットは、3D計画画像データセットに基づくターゲットボリュームのボリューム要素に適用すべき線量を割り当てることによって計画段階において計画される準備された計画野を、取得された変換により変換して、照射段階におけるターゲットボリュームの位置および/または形状の変化に適合(整合)させるように構成されている。
【0023】
この種の放射線治療装置は、照射野の新たな検査なしにこれを変化したターゲットボリュームに適用することを可能にする。これは放射線治療を迅速化する。なぜならば、必要な新たな照射野算出が省略されるからである。
【0024】
この種の放射線治療装置の線源は、高エネルギー粒子線または光子線を放出するように構成されているとよい。粒子線または光子線のエネルギー、出射方向、形状、ラスタリング、エネルギー分布および/または強度は設定可能である。これは、適用された放射の必要な変更を変換により行なうことを可能にする。この種の変更は、例えばそれぞれの入射経路において3D照射データセットでの密度分布に基づいて照射野の線量を確認または適合化するように適合化ユニットが構成されている場合にも必要である。更に、設定変更は、位置および/または形状の変化に基づいて照射野を調整し、特に予め与えられた照射ラスタ上に補間するように適合化ユニットが構成されている場合に必要とされ得る。適用される放射のこの種の変更は、更に、ターゲットボリュームを取り巻くボリュームの位置および/または形状の変化に例えば入射方向を適合(整合)させるように適合化ユニットが構成されている場合に必要とされ得る。それによって、例えば、大切に扱うべき組織への過剰線量照射を防止することができる。
【0025】
しかして、患者の照射すべきターゲットボリュームに照射プロセスの照射野を適合させる方法に関する本発明の実施態様は次の通りである。
付加的に照射野の線量が、それぞれ入射経路における3D照射データセットでの密度分布に基づいて確認または適合化される。
付加的に照射野が、ターゲットボリュームの位置および/または形状の変化に基づいて調整される、特に、予め与えられた照射ラスタ上に補間される。
レジストレーションが手動、部分自動または全自動で行なわれる。
変換として、並進、回転、拡大縮小(スケーリング)、斜体処理および/または変形が行われる。
付加的に入射方向が、ターゲットボリュームを包囲するボリュームの位置および/または形状の変化に適合させられる。
ターゲットボリュームの位置および/または形状の変化が限界値を超過する際に、警報信号が発生され、警報信号の警報解除後にのみ適合化が行なわれる。
【0026】
放射線治療装置に関する本発明の実施態様は次の通りである。
高エネルギー粒子線を放出する線源は粒子線のエネルギーおよび出射方向を設定可能である。
3D画像化装置がコンピュータ断層撮影装置またはCアームX線装置として構成されている。
適合化ユニットは、更に照射野の線量を、それぞれの入射経路における3D照射データセットでの密度分布に基づいて確認または適合化するように構成されている。
適合化ユニットは、更に照射野をボリューム要素の位置および/または形状の変化に基づいて調整するように、特に予め与えられた照射ラスタ上で補間を行なうように構成されている。
適合化ユニットは、更に手動、部分自動または全自動のレジストレーションを行なうように構成されている。
適合化ユニットは、更に変換として、並進、回転、拡大縮小(スケーリング)、斜体処理および/または変形を行うように構成されている。
適合化ユニットは、更に、ターゲットボリュームを包囲するボリュームの位置および/または形状の変化に入射方向を適合させる。
適合化ユニットは、更に、ターゲットボリュームの位置および/または形状の変化が限界値を超過する際に警報信号を発生し、警報信号の警報解除後にのみ適合化を行なうように構成されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下において、図1ないし図4に基づいて本発明の複数の実施例を説明する。
図1は模範的な粒子治療装置の概略図を示し、
図2は照射野の適合化を明らかにするための経過ダイアグラムを示し、
図3はターゲットボリュームのレジストレーションと共に入射経路の近くにおける大切に扱うべき組織を明らかにするための概略図を示し、
図4はターゲットボリュームの並進および変形の場合における照射野の変更のための概略図を示す。
【0028】
図1は線源2および照射場所3を有する放射線治療装置1を概略的に示す。更に、概略的に走査システム5が、これに対して位置合わせされた患者7と共に認識される。線源2は粒子治療装置の場合には、例えば加速器システム(シンクロトロンまたはサイクロトロン)および高エネルギービーム供給装置を有する。そこでは粒子、すなわち特にイオン、例えば陽子または炭素イオンが数100MeVまでのエネルギーに加速される。走査システム5によりビームは、走査範囲内において好ましくは平行にビーム位置を設定される。
【0029】
図1において、例えば患者7の前立腺が照射される。前立腺の位置は日ごとに膀胱および腸の充填状態に依存して変化する。前立腺は、その位置および/または大きさが時間とともに変化するターゲットボリューム9の一例である。更に、この種の変化の理由は、この種の腫瘍の縮小または成長にあり、そして重量変化および隣接器官の充填度合いによる形状変化にある。もっと短い時間的尺度では、この種の動きは蠕動、心拍動または呼吸によってもひき起こされる。相応に高速の計算能力の場合には、この種の短時間の位置変化も照射時に考慮することができる。
【0030】
更に、図1は、患者用寝台13の向きの柔軟な調整を可能にする(例えばロボットを基礎とする)位置決め装置11を示す。照射位置の変化も入射角の変化も、
a)患者側では患者位置決め装置11によって、および/または
b)ビーム供給側では走査装置5により、および/またはガントリの回転によって
行なうことができる。
【0031】
更に、図1に概略的に3D画像化装置15が示されている。この画像化装置15は、ここに明確に示された照射段階、すなわちビーム適用の開始直前にターゲットボリュームおよびその周辺の3D画像化を実施することを可能にする。
【0032】
更に、図1には適合化装置17が示されている。適合化装置17は、例えば制御システムの形で、患者位置決め装置11ならびに走査装置5、ガントリ角度、線源2のビームパラメータ(例えば、エネルギー、エネルギー分布、強度など)の設定を指令することができる。適合化装置17は治療計画のためのワークステーション19と直接に連絡していることが好ましい。このワークステーション19は、例えば計画CT装置と、照射野の線量分布を算出するための相応の計画プログラムとを有する。計画ワークステーション19から、適合化装置17は直接に3D計画画像データセットに1つ又は複数の照射野を関連付ける。適合化装置17は例えば入出力手段を有する。この入出力手段により3D計画画像データセットと3D放射画像データセットとのレジストレーションを開始させかつ監視することができる。適合化装置17はこのレジストレーションを自動的に実行することもできる。適合化装置17は、ターゲットボリュームのレジストレーションに関連する変換を、ターゲットボリュームの位置および/または形状の変化に照射野を適合(整合)させるために使用することができる。適合化装置17は照射野を変化に適合させる変換を使用する。
【0033】
このやり方を図2における経過ダイアグラムが明らかにする。矩形の形をしたターゲットボリューム22を有する患者7の図式的な上半身によって示された3D計画画像データセット21が認識される。更に3D照射画像データセット23が認識され、これにおいてはターゲットボリューム22が患者用寝台25の方向に移動されて示されている。この移動は、適合化装置17によって両3D画像データセットのレジストレーション時における変換Tにより決定される。
【0034】
更に、ボリューム要素29を有する3次元照射野27と、その照射野内にあるアイソセンタ31とが示されている。照射時における照射野のジオメトリは、一般にターゲットボリューム22内にあるアイソセンタ31に対して幾何学的に関連付けられている。適合化装置17は変換Tを照射野27に作用させる。その結果、適合した照射野27’が生じ、この照射野27’においてはアイソセンタ31がX方向に移動されて照射野の上部範囲にある。
【0035】
図3は、変換Tにより移動されたターゲットボリューム33’(実線)へのターゲットボリューム33(破線)の模範的な移動の場合において有り得る変化を略図により示す。ターゲットボリューム33に対して、大きさがほんの少しの安全周縁37しか持たない照射野35が書き込まれている。なぜならば、変換Tを介して行なわれる照射野の適合化を考慮することができるからである。
【0036】
照射野の適合化が行なわれなかったならば、照射野35は、一部は安全周縁37の外側にある移動したターゲットボリューム33’の位置も覆われなければならなかったはずである。照射野35は、Z方向への粒子線の照射時に全体として照射されてもよいし、あるいはラスタ走査技術の使用時に個々のボリューム要素41の照射によって治療されてもよい。ボリューム要素41に適用すべき線量は、3D計画データセットにおいて入射経路における減弱係数により算出される。ボリューム要素45のための身体表面44において始まる入射経路43が概略的に示されている。
【0037】
とりあえず、強く吸収する組織範囲47の付加的に発生する移動は無視する。ターゲットボリューム33の移動Tの後に、移動されたターゲットボリューム33’のボリューム要素45’のための入射経路43が2つのボリューム要素だけ短縮されている。したがって、粒子線において同じ方向はそのエネルギーを低減されるべきである。必要なエネルギーは、3D照射画像データセットから算出された短縮入射経路40の吸収に基づいて算出される。
【0038】
アイソセンタ32,32’間の移動Tは両画像データセットのレジストレーションにより得ることができる。強く吸収する組織ボリューム47を大切に扱われなくてもよい場合には、入射方法はZ方向のままである。
【0039】
これに対して組織ボリューム47が大切に扱われるべきで、入射経路43内にあってはならない場合には、組織ボリューム47の付加的なレジストレーションおよび付属の変換T’の算出によって、照射野のための回転させた入射方向49を決定することができる。回転に基づいて、移動されたターゲットボリューム33’の個々のボリューム要素における線量を維持する場合には、新しいラスタ設定もしくは粒子線の形状付与が必要である。図3には、これを、傾斜させたボリューム要素で示す。
【0040】
図4は形状変化時における照射野の適合化を示す。計画画像データセットには、3つのボリューム要素からなる照射野53を有する湾曲したターゲットボリューム51が計画された。3D照射画像データセットにおいては、ターゲットボリュームがまっすぐ伸びて縮んだことが認識できる。変化させられたターゲットボリューム51’は、今や照射野53’の2つのボリューム要素により治療される。前もって3つのボリューム要素に分けられた線量は、今や2つのボリューム要素に配分される。更に、変換Tは回転させられた入射方向Z’を生じさせる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】模範的な粒子治療装置の概略図
【図2】照射野の適合化を明らかにするための経過ダイアグラム
【図3】ターゲットボリュームのレジストレーションと共に入射経路の近くにおける大切に扱うべき組織を明らかにするための概略図
【図4】ターゲットボリュームの並進および変形の場合における照射野の変更のための概略図
【符号の説明】
【0042】
1 放射線治療装置
2 放射線源
3 照射場所
5 走査システム
7 患者
9 ターゲットボリューム
11 位置決め装置
13 患者用寝台
15 画像化装置
17 適合化装置
19 ワークステーション
21 3D計画画像データセット
22 ターゲットボリューム
23 3D照射画像データセット
25 患者用寝台
27 照射野
27’ 適合した照射野
29 ボリューム要素
31 アイソセンタ
32 アイソセンタ
32’ アイソセンタ
33 ターゲットボリューム
33’ 移動されたターゲットボリューム
35 照射野
37 安全周縁
40 入射経路
41 ボリューム要素
43 入射経路
44 身体表面
45 ボリューム要素
45’ ボリューム要素
47 組織ボリューム
49 入射方向
51 ターゲットボリューム
51’ ターゲットボリューム
53 照射野
53’ 照射野
T 変換
T’ 変換
Z 入射方向
Z’ 回転させられた入射方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者内で粒子線を照射すべきターゲットボリュームの位置および/または形状が時間とともに変化し、粒子線がターゲットボリュームにわたって点ごとに走査されるスキャンニング技術により粒子線を照射される患者の照射すべきターゲットボリュームに照射プロセスの照射野を適合させる方法において、
3D計画画像データセットと、3D計画画像データセットに基づいてターゲットボリュームのボリューム要素に順次適用すべき線量を割り当てることによって計画段階において計画された照射野とを準備し、
照射段階において、照射すべきターゲットボリュームを描出する照射段階の3D画像データセットを取得し、
ターゲットボリュームの位置および/または形状の変化を記述する変換を取得することによって、3D計画画像データセットと3D照射データセットとにおけるターゲットボリュームのレジストレーションを行ない、
順次適用すべき線量の空間的位置を変換によって変換することによって、計画段階の照射野を、照射段階におけるターゲットボリュームの位置および/または形状の変化に適合させる
ことを特徴とする患者の照射すべきターゲットボリュームに照射プロセスの照射野を適合させる方法。
【請求項2】
付加的に照射野の線量が、それぞれ入射経路における3D照射データセットでの密度分布に基づいて確認または適合化されることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
付加的に照射野が、ターゲットボリュームの位置および/または形状の変化に基づいて調整されることを特徴とする請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
レジストレーションが手動、部分自動または全自動で行なわれることを特徴とする請求項1乃至3の1つに記載の方法。
【請求項5】
変換として、並進、回転、拡大縮小、斜体処理および/または変形が行われることを特徴とする請求項1乃至4の1つに記載の方法。
【請求項6】
付加的に入射方向が、ターゲットボリュームを包囲するボリュームの位置および/または形状の変化に適合させられることを特徴とする請求項1乃至5の1つに記載の方法。
【請求項7】
ターゲットボリュームの位置および/または形状の変化が限界値を超過する際に、警報信号が発生され、警報信号の警報解除後にのみ適合化が行なわれることを特徴とする請求項1乃至6の1つに記載の方法。
【請求項8】
患者内で粒子線を照射すべきターゲットボリュームの位置および/または形状が時間とともに変化し、粒子線がターゲットボリュームにわたって点ごとに走査されるスキャンニング技術により粒子線を照射される患者の照射すべきターゲットボリュームの照射のための放射線治療装置において、
粒子線を放出するように構成されかつ適用可能な照射野を設定可能である線源と、
照射段階において3D照射データセットを取得するための3D画像化装置と、
照射段階において存在する位置および/または形状の変化に照射野を適合させるための適合化ユニットとを備え、
適合化ユニットは、次のように構成されている、すなわち、
3D照射データセットと準備された3D計画画像データセットとのレジストレーションを行なうと共に、ターゲットボリュームの位置および/または形状の変化を記述する変換を取得し、
3D計画画像データセットに基づくターゲットボリュームのボリューム要素に順次適用すべき線量を割り当てることによって計画段階において計画されて準備された照射野を、取得された変換により変換すると共に、順次適用すべき線量の空間的位置が変換により変換されることによって、照射段階におけるターゲットボリュームの位置および/または形状の変化に適合させるように構成されている
ことを特徴とする放射線治療装置。
【請求項9】
高エネルギー粒子線を放出する線源は粒子線のエネルギーおよび出射方向を設定可能であることを特徴とする請求項8記載の放射線治療装置。
【請求項10】
3D画像化装置がコンピュータ断層撮影装置またはCアームX線装置として構成されていることを特徴とする請求項8又は9記載の放射線治療装置。
【請求項11】
適合化ユニットは、更に照射野の線量を、それぞれの入射経路における3D照射データセットでの密度分布に基づいて確認または適合化するように構成されていることを特徴とする請求項8乃至10の1つに記載の放射線治療装置。
【請求項12】
適合化ユニットは、更に照射野をボリューム要素の位置および/または形状の変化に基づいて調整するように構成されていることを特徴とする請求項8乃至11の1つに記載の放射線治療装置。
【請求項13】
適合化ユニットは、更に手動、部分自動または全自動のレジストレーションを行なうように構成されていることを特徴とする請求項8乃至12の1つに記載の放射線治療装置。
【請求項14】
適合化ユニットは、更に変換として、並進、回転、拡大縮小、斜体処理および/または変形を行うように構成されていることを特徴とする請求項8乃至13の1つに記載の放射線治療装置。
【請求項15】
適合化ユニットは、更に、ターゲットボリュームを包囲するボリュームの位置および/または形状の変化に入射方向を適合させることを特徴とすることを特徴とする請求項8乃至14の1つに記載の放射線治療装置。
【請求項16】
適合化ユニットは、更に、ターゲットボリュームの位置および/または形状の変化が限界値を超過する際に警報信号を発生し、警報信号の警報解除後にのみ適合化を行なうように構成されていることを特徴とする請求項8乃至15の1つに記載の放射線治療装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−68093(P2008−68093A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−237915(P2007−237915)
【出願日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【出願人】(390039413)シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト (2,104)
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Wittelsbacherplatz 2, D−80333 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】