説明

患者特異的なモデルを用いた画像誘導による処置のためのコンピュータ化されたシミュレーションを実行するためのシステムおよび方法

本発明の実施形態は画像誘導による処置のコンピュータ化されたシミュレーションを実行する方法に関する。本方法は、医療画像データに基づいて、解剖学的組織のデジタル画像ベースのモデルを生成する工程と、画像ベースのモデルおよび外挿されたデータに基づいて、医療画像データ内に含まれていない解剖学的組織および隣接の解剖学的領域を示す拡張モデルを生成する工程と、拡張モデルのグラフィック表示を表示する工程と、拡張モデルを用いた画像誘導による処置のコンピュータ化されたシミュレーションを実行する工程とを含んでよい。

【発明の詳細な説明】
【発明の概要】
【0001】
臨床診療は、従来からの観血的療法による医療行為を可能な限り、より侵襲的でない技術に取って代えようとしているが、しかしこれには間接的な画像ベースのフィードバックが必要とされる。例えば、血管カテーテル法、血管形成法、およびステント留置術等、画像誘導による医療行為において、医師は画像内の解剖学的組織を識別する必要がある。これらの医療行為は広範囲にわたる訓練なしに習得することは困難であり、さらには人間を対象にして訓練することは命に関わることになる場合もある。従って、画像誘導による処置のためのシミュレーションシステムが、不必要なリスクを負わずに医者に訓練を施し得て、また、手術前の計画ツールとして、または術後の評価ツールとして機能してもよい。多くのシミュレーションシステムは、解剖学的組織の事前に定義されたモデルに基づいており、患者特異的ではない。従って、このようなシステムは、手術を行う前に特定の患者について手術を正確に計画するために利用することは不可能であり、または手術後の評価に利用することは不可能である。さらなる改善されたシミュレーションシステムは、患者特異的な医療画像データを用いる患者特異的なシミュレーションシステムである。
【0002】
本発明として想定するこの技術的事項が本明細書の結論部分において特に指摘されかつ明確に主張される。しかしながら、本発明は、その課題、特徴、および利点と共に、構成と運用の方法との両方に関して、添付の図面を参照して読まれる場合に以下の詳細な説明を参照することで最良に理解され得るものである。
【図面の簡単な説明】
【0003】
【図1】図1は、本発明の実施形態に係る画像誘導による処置をシミュレーションするための例示的なシステムを示す。
【図2】図2は、本発明の実施形態を理解するのに役立つ例示的な解剖学的組織の図を示す。
【図3】図3は、本発明の一部の実施形態に係る画像誘導による処置をシミュレーションするための方法を示すフローチャートの図である。
【図4A】図4Aは、本発明の実施形態に係る、生成された例示的な3Dデジタルモデルのグラフィック図を示す。
【図4B】図4Bは、本発明の実施形態に係る、生成された例示的な3Dデジタルモデルのグラフィック図を示す。
【図5】図5は、本発明の一部の実施形態に係る画像誘導による処置のための患者特異的なシミュレーションのための拡張モデルを生成するための例示的な方法を示すフローチャートの図である。
【図6】図6は、本発明の実施形態に係る拡張モデルのための例示的な3D汎用モデルのグラフィック図である。
【図7A】図7Aは、本発明に係る、生成された例示的な3Dデジタルモデルのグラフィック図を示す。
【図7B】図7Bは、本発明に係る、生成された例示的な3Dデジタルモデルのグラフィック図を示す。
【0004】
図を簡素かつ明瞭にするため、図面中に示す要素は必ずしも縮尺通りに描かれてはいない。例えば、それらの要素の一部の寸法は、明瞭にするために、他の要素に比して誇張されている場合もある。さらに、適切だと想定される場合には、対応した類似する要素を指し示すために、複数の図面に亘って参照符号が繰り返される場合がある。
【発明を実施するための形態】
【0005】
以下の詳細な記載において、多くの特定の詳細は、本発明の十分な理解をもたらすために説明される。しかしながら、本発明がこれらの特定の詳細なしに実施され得ることを当業者は理解するであろう。他の例では、周知の方法、手順、構成要素、モジュール、ユニットおよび/または回路は本発明を曖昧なものにさせないように詳細には記載されていない。
【0006】
本発明の実施形態は、画像誘導による処置のための患者特異的なコンピュータ化されたシミュレーションに関する。本方法は、対象のスキャンから受信された医療画像データに基づいて、解剖学的組織のデジタルモデルを生成することを含んでよい。この対象は、例えば、画像誘導による処置を受けようとする患者であってよい。通常、例えば、CTシステムまたは任意の他の適切なイメージングシステムから受信された医療画像データは、シミュレーションのために当該領域全体を含まず、または扱わず、むしろ、より限られた範囲または領域を含むかまたは扱う。例えば、ステント挿入の処置に先立って行われるスキャンは、通常、処置される領域に非常に近い領域を扱ってよい。当業者が理解するように、通常、患者のスキャンは、例えば、特定の解剖学的領域内の病状を診断する診断ツールとして行われるものであり、それゆえ、通常、そのようなスキャンは、病気となった、損傷を受けた、または変えられた領域およびそれに直に隣接した領域のみを扱うものである。病変を処置するための手術または処置は、スキャンによって扱われない他の解剖学的領域を介した通路を必要とする場合がある。医師は、手術を行うのに先立って、そうした処置全体について練習し、および/または術後の評価を実行することを望む。従って、処置の包括的なシミュレーションを可能にするために、さらなる領域の解剖学的モデルが所望されてよい。
【0007】
本発明の実施形態によれば、本方法は、デジタルモデルおよび外挿されたデータに基づいて、医療画像データ内に含まれていない解剖学的組織の隣接部分を示す拡張モデルを生成することを含んでよい。拡張モデルのグラフィック表示がモニタ上に表示されてよく、拡張モデルは、例えばツールのモデル等の追加の情報と共に閲覧されてよい。医師は、実際の手術の事前の処置として、この拡張モデルを用いて、画像誘導による処置のコンピュータ化されたシミュレーションを実行してよい。
【0008】
医療画像データは、コンピュータ断層撮影(CT)、CT−蛍光透視法、蛍光透視法、磁気共鳴映像法(MRI)、超音波、ポジトロン放出断層撮影法(PET)、およびX線等のイメージングシステムから取得される患者特異的な医療画像であってよい。本発明の実施形態は、入力として、解剖学的組織、器官、および系の3Dまたは4Dモデル、ならびに、さらにイメージングシステムから取得された医療画像に存在しない領域を含む拡張モデルを用いてよい。
【0009】
画像データに基づいて生成された3Dモデルは、例えば、解剖学的組織の3次元(3D)表面、組織の体積のボクセルマスク、または2DのB−スプライン等のパッチ表面を示す多角形メッシュであってもよい。説明を簡素化するために、本発明の実施形態は多角形メッシュに関して記載される。しかしながら、本発明がそのようなモデルに限定されず、他のモデルが本発明の範囲内にあることを当業者は理解すべきである。
【0010】
図1は、本発明の実施形態に係る画像誘導による処置(医療行為)をシミュレーションするための例示的なシステム100を示す。システム100は、入力ユニット105、出力ユニット120、モデル生成ユニット110、シミュレーションユニット115、および管理ユニット135を備えてよい。システム100は、メモリ130およびコントローラ131をさらに備えてよい。入力ユニット105は、医療画像データを受信してよく、シミュレーションのための患者特異的なモデルを生成するために、その医療画像データをモデル生成ユニット110に送ってよい。このモデルは、入力データとして用いられる医療画像データ内に提示されなかった解剖学的組織の領域を示す拡張部分を含んでよい。ユーザが、例えば、シミュレーションユニット115を用い、画像誘導による処置のための事前の処置としてのシミュレーションを実行する場合、モデルのグラフィック表示およびシミュレーションのプロセスは、出力ユニット120のモニタ上に表示されてよい。
【0011】
入力ユニット105は、X線システム、CTシステム、MRIシステム、および/または超音波画像システム等の画像システム(図示せず)からの医療画像データとインターフェース接続してよく、または当該医療画像データを受信してよい。入力ユニット105は、マウス、キーボード、タッチスクリーンまたはタッチパッドあるいは任意の適切な入力デバイスを含んでよい。代替的にまたは追加として、入力ユニット105は、例えば画像システムからのデータを受け取り得る有線または無線のネットワークインターフェースカード(NIC)を含んでよい。一部の実施形態によれば、入力ユニット105は、画像保管通信システム(PACS)等の医療画像を保存するシステムまたはサーバと通信してよく、かつそのようなシステム、サーバ、またはアプリケーションから任意の関連する画像情報、データ、またはパラメータを取得してよい。
【0012】
モデル生成ユニット110は、例えば、体内の器官にある血管系またはその任意の他の領域等の解剖学的組織の3Dまたは4Dによる解剖学的なモデル等のデジタルモデルおよびそのグラフィック表示を生成するための構成要素またはモジュールを備えてよい。そのモデルは、例えば、入力ユニット105を介したCTシステムから受信された医療画像等の画像システムから受信された情報に従って、モデル生成ユニット110により生成されてよい。シミュレーションユニット115は、画像誘導による処置のシミュレーションを生成するための構成要素を備えてよい。本発明の実施形態によれば、システム100は、体内において物理的なツールを操作した時の力の知覚をシミュレーションするための力のフィードバックデバイス(図示せず)をさらに備えてよい。
【0013】
出力ユニット120は、出力を視覚化できるディスプレイスクリーン、または、必要に応じて、出力を音声化できるスピーカまたは他のオーディオデバイスとインターフェース接続するための構成要素を備えてよい。出力ユニット120は、1つ以上のディスプレイ、スピーカ、および/または任意の他の適切な出力デバイスを備えてよい。出力ユニット120は、システム100の任意の他の構成要素またはユニットと通信してよく、それに応じて、そのようなユニットが外部のシステムと通信できてもよい。ユニット105、110、115、および120は、ソフトウェア、ハードウェア、ファームウェア、または任意の他の適切なそれらの組合せであってよく、またはそれらを含んでもよい。
【0014】
コントローラ131は、任意の適切なコントローラまたは処理ユニット、例えば中央処理ユニットプロセッサ(CPU)であってよい。メモリ130は、任意の適切なメモリ部品、デバイス、チップ、またはシステムであってもよく、かつコントローラ131によって実行され得るアプリケーションまたは他の実行可能なコードを保存してもよい。例えば、モデル生成および/またはシミュレーションを実施するアプリケーションまたはモジュールはメモリ130にロードされてよく、かつコントローラ131に実行されてよい。
【0015】
本明細書において記載されるシステム100は、例示的なシステムであると認識されるものである。本発明の実施形態によれば、システム100は、単一のコンピュータデバイス上で実施されてもよく、あるいは、2つ以上の異なるコンピュータデバイス上における分散型の構成において実施されてもよい。例えば、モデル生成ユニット110は、第1のコンピュータデバイス上で稼動してよく、かつ第1の管理ユニットによって管理されてよく、これに対して、シミュレーションユニット115は、別のコンピュータデバイス上で稼動してよく、かつ第1の管理ユニットと通信する第2の管理ユニットによって管理されてもよい。別の例示的な実施形態において、管理ユニット135は、コンピュータデバイス上で稼動してよく、モデル生成ユニット110は、第2のコンピュータデバイス上で稼動してよく、かつシミュレーションユニット115は、第3のコンピュータデバイス上で稼動してよい。
【0016】
図2は、本発明の実施形態を理解するのに有用な心臓血管系の解剖学的組織の例示的な図を示す。例えば頚動脈へのステントの挿入のシミュレーション等の画像誘導による処置シミュレーションを実行する際、ユーザは、様々なカテーテルを試す間、脈管中のナビゲーションを実施してもよい。通常、診断目的のために患者をスキャンすることは、病変箇所の直接的に近接した位置においてのみ行われる。従って、入力データとしてこのようなスキャンを用いるシミュレーションのためのモデルは、医師が病変箇所に到達するようにナビゲートすべき全ての領域を包括していなくてもよい。
【0017】
図2は、例示的な画像システムによってスキャンされた領域を示す上部領域220と、スキャンされていない下部領域230とを示す。従って、医療画像データは、領域220の画像のみを含む。本発明の実施形態によれば、処置の全ておよび/または包括的なシミュレーションを行うために、スキャンされた領域220とスキャンされていない領域230との両方を示すシミュレーションのための拡張モデルが生成されてよい。本発明の実施形態によれば、スキャンされた領域を示すモデルの一部は、特定の対象者の医療画像データから生成されてよく、かつ、そのモデルは、スキャンされていない領域の表示を含むように外挿(extrapolate)されてもよい。この外挿(補外)法は、解剖学的組織を示す一連の事前に設計された汎用的なモデルから、所望の拡張部分を示す最良の一致を選択することを含んでよい。
【0018】
例えば、例えば頚動脈へのステント挿入等の血管形成のための処置において、病変箇所が存在し得る位置235における左椎骨に到達するために、患者の身体の下側部分の大動脈にカテーテルを挿入し得て、かつ位置240を介して左椎骨へと誘導され得る。従って、大動脈を含む拡張モデルは、シミュレーションでの処置に対して所望され得る。
【0019】
図3は、本発明の一部の実施形態に係る画像誘導による処置をシミュレーションするための方法を記載する例示的なフローチャートである。さらに、図4Aおよび図4Bは、本発明の実施形態に係る、生成された例示的な3Dデジタルモデルのグラフィック図を示す。ボックス310に示すように、本方法は、対象者の医療画像データを受信することを含み得る。医療画像データは、例えばCTまたはMRIスキャナ等の画像またはスキャンシステムから受信されてよい。ボックス315に示すように、本方法は、受信された画像データを処理し、その処理したデータに基づいて、患者特異的である医療画像に描かれた解剖学的組織のモデルを生成し得る。この医療画像データに示される解剖学的組織のみを含むモデルは、本明細書においては、基本モデル、または画像ベースのモデルとも記載される。図4Aは、脈管構造の一部のCTデータから加工された例示的な画像ベースのモデル410を示す。
【0020】
例示的な実施形態によれば、この処理は、医療画像データをセグメント化することを含んでよい。セグメンテーションは、画像領域を、区別可能な解剖学的組織に対応する非重複領域に区切ること、および医療画像における所望の解剖学的組織を識別することを含む。他のセグメンテーション技術、例えば、ソフトセグメンテーション、確率的なセグメンテーション、またはベイズ式セグメンテーションが、領域を重複させることを可能にしてもよい。本発明の実施形態はそうした点に関して限定されず、任意の適用可能であるセグメンテーションまたはソフトセグメンテーション方法が用いられてよい。
【0021】
セグメンテーション処理は、完全自動化アルゴリズム、ユーザからの最小限の入力を用いる半自動化アルゴリズム、ユーザが所望のセグメンテーションを明確に特定することができる個々に適したアルゴリズム、または、例えばCADツールを利用した手動でのセグメンテーションによって実施されてもよい。セグメンテーションプロセスの出力は、画像データの一部を所望の解剖学的組織の体積を示す一連のボクセル(マスク)として識別することを含む。データの処理は、境界表現(B−rep)とも呼ばれる、この体積の離散化された表面を生成することをさらに含んでもよい。これらの表面は、通常、多角形メッシュで示されるが、本発明の実施形態は、そうした点に限定されず、他の表示、例えば、スプライン曲面パッチまたはCSG(constructive solid geometry)表示あるいはそれらの任意の混合形態が同様に可能である。
【0022】
この処理は、例えば、血管、腸、または大腸等、多角形メッシュの隣接した管状部分の中心線の計算をさらに含んでよい。図4Aの例示的な画像誘導または画像ベースのモデルにおいて、その中心線は、異なる血管の中心線を示す。血管の中心線は、三次スプライン、例えばCatmul−Romスプライン、または任意の他の適切な数学関数によって定義されてよい。この処理は、追加として、または代替的に、様々な血管の半径の計算をさらに含んでよい。
【0023】
一部の実施形態によれば、医療画像に描かれた解剖学的組織の画像ベースのモデルを生成することがレジストレーション処理を含んでもよい。レジストレーションは、単一座標システムに設定される複数のデータの並びとして規定されてよいので、対応する位置の空間的な場所が合致する。解剖学的組織のセグメント化された部分は、適切に位置付けられてよく、かつ患者の生体構造を示す他のモデルに対して回転されてよい。そのような他のモデルは、本明細書に記載されるように、汎用的なモデルまたは患者特異的なモデルであってよい。例えば、シミュレーションがなされた血管をレジストレーションすることは、患者の骨構造、内臓、または肺のデジタルモデルに対してそれを適切に位置付けることを含んでもよい。レジストレーションは、処置される患者の実物についての画像を提示することができてよい。レジストレーションは、さらに、空間中で、シミュレーションされたモデルを回転、あるいは、移動、または再配置することができてよく、他方で、シミュレーションされたモデルにおいて、器官、部位、領域、または一部の相対的な位置を保存することができてよい。
【0024】
一部の実施形態によれば、セグメンテーションに付随する手順、タスク、および/または機能、多角形メッシュの生成、ならびに、中心線および/または半径の計算は、シミュレーションステージにおいて、モデル生成ユニット110またはシミュレーションユニット115のいずれかによるシミュレーション開始において実行されてよい。本明細書における記載が典型的に実行されるが、他の実施が存在し得ることを当業者は理解するべきである。例えば、シミュレーションユニット115は、表面レンダリング、および/または中心線または半径の計算、ならびに/またはレジストレーションを実行することなしに、一連のボクセルを入力として用いてモデルを生成してもよい。本発明の実施形態は、解剖学的組織の画像ベースの基本モデルを生成するために記載された例示的な方法およびシステムに限定されず、他の方法が、本発明の範囲から逸脱することなくそのようなモデルを生成するために用いられてもよいことが認識される。
【0025】
図3を再び参照して、本発明の実施形態によれば、本方法は、医療画像データを描く基本モデルの境界を外挿することによって解剖学的組織の拡張モデルを生成または計算することを含んでよい(ボックス320)。次いで、本方法は、その拡張モデルに従って画像誘導による処置の患者特異的なシミュレーションを実行することを含んでよい(ボックス325)。本発明の実施形態によれば、対象者の医療画像データから失われている部位、部分、または領域は、医療画像データから計算されたモデルを外挿することによってシミュレーションまたはモデル化されてもよい。図4Bは、図4の基本モデル410内の境界を識別し、図5、図6、図7A、および図7Bにおいて詳細に説明されるように、基本モデル410を外挿し、かつ外挿された部分420、421を加えることによって、生成される拡張モデルを示す。
【0026】
図5は、本発明の実施形態に係る、画像誘導による処置の患者特異的なシミュレーションのための拡張モデルを生成するための方法を記載する例示的なフローチャートである。さらに、図6、図7A、および図7Bは、本発明の実施形態に係る、生成された例示的な多角形メッシュのグラフィック図を示す。本発明の実施形態は、様々な解剖学的組織、システム、部位、領域、機関、またはそれらの部分に適用可能であってよい。従って、図5を参照して本明細書に記載された方法は、任意のそのような解剖学的組織の拡張モデルを生成するのに適用可能であってよい。しかしながら、簡素化および明瞭性を目的として、以下での記載は、脈管構造についての例示的な図示を参照する。本発明の実施形態はそのような点に限定されないことに留意されたい。説明の便宜のために、本発明の実施形態は、多角形メッシュについて記載される。しかしながら、本発明は、そのようなモデルに限定されず、他のモデルもまた本発明の範囲内にあることを当業者は理解すべきである。
【0027】
図5の例示的な実施形態によれば、外挿段階への入力とは、画像ベースモデルの3D表面を示す多角形メッシュとして示される画像ベースモデルであり、スプラインによって示される血管の中心線をさらに含み、適切にレジストレーションおよび回転される。ボックス510に示すように、本方法は、図4Aのメッシュ410または図7Aのメッシュ710等の多角形メッシュの1つ以上の境界を識別することを含んでよい。例えば、多角形メッシュの境界は、1つの多角形のみに付随した縁(接線)を検出することによって検出されてよい。検出された縁は、1つ以上の、接続関係にある構成要素群(connectivity components)にグループ化されてよく、ここで、各々の構成要素は、潜在的に外挿を必要とし得る単一の血管の開放された境界(open boundary)に付随する。
【0028】
本発明の例示的な実施形態によれば、本方法は、拡張部分についてのモデルとして用いられるために、例えば図6のメッシュ610等の多角形メッシュとして示される汎用の事前に設計されたモデルを、外挿を必要とする各境界について選択することを含んでよい(ボックス515)。この汎用モデルは、特定のパラメータおよびルールに従って、開放された境界の縁に最良に合致させるために、一連の事前に設計されたモデルから選択されてよい。この汎用モデルは、医療画像データに従って生成された画像ベースモデル内に含まれない領域または部分の近似または概算として用いられるために、多角形メッシュによって示されてよい。
【0029】
選択された反応モデル、例えば多角形メッシュは、汎用メッシュのデータベース、ライブラリ、または任意の他のリポジトリから読み出されてよい。このようなリポジトリは、特定の解剖学的位置における、例えば特定の血管に各々対応する大量の多角形メッシュまたは他のモデルを保存してよく、例えば長さおよび半径等の既知の物理的特性を有する。本発明の実施形態によれば、事前に生成されたモデルまたは多角形メッシュのリポジトリは、基本的な、または画像ベースのモデルを示す多角形メッシュの開放された境界に最も近いか、または最良に合致する多角形メッシュを取得するためにアクセスされてよい。例えば、多角形メッシュ610は、図7Aおよび図7Bに示すように、境界715における部分710について、拡張部分720を生成するための基点または起点として選択されてもよい。最良の合致の選択は、セグメント化されたモデルの特定の一連の形状属性に基づいて手動でまたは自動的に実行されてもよい。あるいは、その選択は、手動かつ自動化された操作の両方を用いることによってなされてもよい。本発明の実施形態によれば、そのシステムは、特定の汎用モデルを選択するためにユーザに提案を送ってよく、またユーザは次いで、その提案を賛成または否定してよい。
【0030】
次いで、ボックス525に示すように、例示的な実施形態は、その境界に合致した選択されたメッシュを配置することを含んでよい。例示的なアライメント方法は、事前に規定された外挿メッシュのライブラリに付随した中心線を利用してよく、かつその境界付近のセグメント化された領域の縁において中心線への接線ベクトルを計算することを含んでよい。このような接線ベクトルは、縁におけるある位置または検出された境界に関連して計算されてよい。次に、事前に規定された、または生成された多角形メッシュの中心線上の位置が位置付けられてもよい。このような位置は、シミュレーションされた器官の境界について計算された接線の値に近似または同一である接線ベクトルに関連されてよいか、またはそれを有してよい。類似の接線ベクトルを有する位置を用いることで、シミュレーションされた器官またはそれを示す多角形メッシュに関して正しい方向に、事前に規定された多角形メッシュを位置付けることが可能となってよい。
【0031】
次いで、ボックス530に示すように、例示的な実施形態は、画像ベースモデルを示す多角形メッシュの中心線を、図7Aに示す選択された事前に規定された多角形メッシュの中心線に接続することを含んでよい。中心線の接続は、本明細書に記載された計算された接線の値に従ってなされてよい。中心線は連結され、接合され、またはつなぎ合わされてよいので、その結果、近似、類似、または同一の接線の値を有する位置が合致して、基本モデルおよび追加された部分が3D空間において類似的に位置付けられ得るか、または方向付けられ得ることを保証する。
【0032】
次に、ボックス535に示すように、例示的な実施形態は重複の部分を除去することを含んでよい。基本的な多角形メッシュによって示される基本モデルの境界のレジストレーションは既知であるので、仮想的なボックス、球体、または他の組織の体積は、それが多角形メッシュを含み得るように規定されてよい。従って、このような仮想的な体積を超えて延びる、またはその外側へと延びる追加された部分の一部は、それらが重複し得るので、除去されてよい。あるいは、そのようなバーチャルなボックスまたは体積内にある、選択されたメッシュの交点のみが、本明細書において記載されるさらなる処理のために保持されてよい。
【0033】
ボックス540により示すように、例示的な実施形態は、基本モデルを示す基本的な多角形メッシュの半径を最良に合致させるために、選択された汎用のメッシュの半径を拡大縮小することを含んでよい。選択された、事前に規定された多角形メッシュの形状は、接続される境界または開口端部の形状と適合しなくてもよく、または完全に合致しなくてもよい。さらに、本明細書に記載されるように並べられるか、または方向付けられるとしても、基本モデルを示す多角形メッシュおよび拡張部分を示す選択された多角形メッシュの中心線は、空間的に別々のままであってよい。さらに、例えば、シミュレーションされた血管の場合、開口端部に合致している事前に規定された、外挿された部分の断面は、完全に円形でなくてもよく、その中心線は、円筒における数学的な意味で正確な中心線であることを保証するものでもない。従って、中心線周囲のおそらく全ての角について、異なる拡大縮小の要因が適用されてよい。
【0034】
次いで、ボックス545に示すように、例示的な実施形態は、選択された多角形メッシュの表面と、基本的な多角形メッシュの表面とをつなぎ合わせることを含んでよい。例えば、基本的な多角形メッシュおよび選択された、事前に規定された多角形メッシュは連結されてよく、その結果、継続した表面が、図7Bに示すように生成される。基本的な多角形メッシュとそれに対応する選択された拡張部分のメッシュからの交点は連結されてよく、かつ、単一の交点によって示されてよく、他方で、重複の交点はそのモデルから除去されてよい。上述の例示的な方法は、各開口端部、境界、または拡張される必要のある基本モデルの縁について繰り返されてよい。
【0035】
拡張された組織を示す事前に規定された汎用モデルは、基本モデルとは異なるかまたは類似する多くの方法およびモデルにおいて示されてよいことを当業者は理解すべきである。一部の実施形態によれば、拡張領域を示すモデルは、基本モデルと異なっていてよい。従って、外挿された領域を示すモデルは、基本モデルに適合するように、別のフォーマットまたは表示に変換されてもよい。変換された表示における外挿された領域は、次いで、つなぎ合わせられてよく、あるいは、基本モデルに接続されてもよい。
【0036】
あるいは、本発明の他の実施形態によれば、多角形メッシュまたは外挿された部分を示す別の適切なモデルは、自動(procedurally)生成されてよい。外挿された部分または領域の自動生成は、拡張される境界、関連する半径、中心線等の、基本モデルのキー属性を識別することを含んでよい。例えば、血管の生成された基本モデルの中心線は、第1のセットのルールに従って外挿されてよい。第1のセットのルールのための非限定的な例は、事前に決定された方向に対して外挿をなだらかに曲げることに関連するルールを含んでよい。次いで、シミュレーションされた血管モデルの半径の関数は、例えば、第2のセットのルールを用いることによって外挿されてもよい。第2のセットのルールのための非限定的な例は、事前に規定された長さについて、事前に規定された値(例えば1cm)の方向に、基本モデルの同定された値から、その半径をなだらかに変化させ、次いで、端部から(例えば端部から2mm)の事前に規定された距離において、その半径をゼロへとなだらかに変化させることを含んでもよい。次いで、外挿された中心線および半径の関数を用い、基本モデルとその外挿との両方を示す一体化された多角形メッシュが生成されてよい。
【0037】
本発明の実施形態は、プロセッサまたはコントローラによって実行された場合に、本明細書に開示された方法を実行する命令例えばコンピュータが実行可能な命令をエンコードする、含む、または保存する、コンピュータ、またはプロセッサが読取り可能な媒体、あるいは、例えばメモリ、ディスクドライブ、またはUSBフラッシュメモリ等のコンピュータまたはプロセッサ記憶媒体等の物品を含んでよい。
【0038】
本発明の実施形態はこうした点に限定されず、本明細書において用いられる、用語「複数」および「複数の」は、例えば、「多数の」または「2つ以上」を含んでよい。用語「複数」または「複数の」は、2つ以上の構成要素、デバイス、要素、ユニット、パラメータ等を記載するために、明細書を通して用いられてよい。
【0039】
明示的に述べない限り、本明細書に記載された本方法の実施形態は、特定の順序または順番に縛られない。さらに、記載された方法の実施形態またはその要素の一部は、同時に同じ位置で、あるいは、同時に重複の位置において生じるか、または実行可能である。当該技術分野において公知であるように、機能、タスク、サブタスク、またはプログラム等の実行可能なコードのセグメントの実行は、機能、プログラム、または他の構成要素の実行のことであってもよい。
【0040】
本発明の実施形態はこうした点に限定されず、例えば、「処理する」、「算出する」、「計算する」、「決定する」、「確立する」、「分析する」、「チェックする」等の用語を用いた記載は、コンピュータのレジスターおよび/またはメモリ内での物理的な(例えば電子的な)量として示されるデータを操作し、および/または、操作および/または処理を実行するための命令を保存し得るコンピュータのレジスターおよび/またはメモリあるいは他の情報記憶媒体内で物理的量として類似して示される他のデータに変換する、コンピュータ、計算プラットフォーム、コンピューティングシステム、または他の電子計算装置の操作および/または処理のことをいってよい。
【0041】
本発明の特定の特徴が本明細書において図示および記載されているが、多くの変形、置換、変更、および等価物を、当業者は想起し得るものである。それゆえ、添付の特許請求の範囲は、本発明の真なる趣旨内に当てはまるそのような全ての変形および変更を包含することが意図されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像誘導による処置のコンピュータ化されたシミュレーションを実行する方法であって、
医療画像データに基づいて、解剖学的組織のデジタル画像ベースのモデルを生成する工程と、
前記画像ベースのモデルおよび外挿されたデータに基づいて、前記医療画像データ内に含まれていない前記解剖学的組織および隣接の解剖学的領域を示す拡張モデルを生成する工程と、
前記拡張モデルのグラフィック表示を表示する工程と、前記拡張モデルを用いた画像誘導による処置のコンピュータ化されたシミュレーションを実行する工程とを含む、方法。
【請求項2】
前記医療画像データは、患者のスキャンから受信され、前記画像ベースのモデルは、前記患者に関連する患者特異的なモデルである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記画像ベースのモデルを生成する工程は、第1の多角形メッシュを生成する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記拡張モデルを生成する工程は、
前記第1の多角形メッシュの境界を識別する工程と、
空間的位置および形状パラメータに基づいて、一連の事前に設計された汎用の多角形メッシュから、前記境界に最良に合致させる拡張部分を示す第2の多角形メッシュを選択する工程と、
前記第1の多角形メッシュの前記境界と前記第2の多角形メッシュとを結合する工程とを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記境界を結合する工程は、
前記境界に付随する管状部分の中心線を計算する工程と、
前記第1の多角形メッシュの管状部分の中心線を、前記第2の多角形メッシュの中心線に接続する工程とを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
重複する部分に付随するデジタルデータを除去する工程と、
前記第2の多角形メッシュの半径が前記第1の多角形メッシュの半径と合致するように、前記第2の多角形メッシュを拡大縮小する工程とをさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記拡張モデルを生成する工程は、
前記画像ベースのモデルの境界を識別する工程と、
前記境界における属性を識別する工程と、
前記画像ベースのモデルの拡張として、前記属性の1つ以上に基づいて、自動生成されたモデルを生成する工程であって、前記拡張モデルは、前記画像ベースのモデルと前記自動生成されたモデルとの両方を含む、工程と、を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記境界における属性を識別する工程は、前記境界における半径についての値を求める工程および前記境界に付随した部分の中心線を規定する工程を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記拡張モデルを生成する工程は、
第1のフォーマットにおいて示される前記画像ベースのモデルの境界を識別する工程と、
前記境界における属性を識別する工程と、
事前に規定されたモデルを、前記拡張モデルとなるように選択する工程であって、前記事前に規定されたモデルは、前記第1のフォーマットとは異なる第2のフォーマットにおいて示される、工程と、を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記モデルの第2のフォーマットを前記第1のフォーマットに変換する工程をさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記画像ベースのモデルを生成する工程は、
前記医療画像データをセグメント化する工程と、
前記解剖学的組織の所望の体積を示す前記画像データの一部を識別する工程と、
前記所望の体積の境界表示を生成する工程と、を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記医療画像データは、CTまたはMRIスキャナから受信される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記解剖学的組織は、血管である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
画像誘導による処置をシミュレーションするためのシステムであって、
受信された医療画像データに基づいて、解剖学的組織のデジタル画像ベースのモデルを生成し、かつ、前記画像ベースのモデルおよび外挿されたデータに基づいて、前記医療画像データ内に含まれていない前記解剖学的組織および隣接の解剖学的領域を示す拡張モデルを生成するためのモデル生成ユニットと、
前記拡張モデルのグラフィック表示を表示し、かつ前記拡張モデルを用いて、画像誘導による処置のコンピュータ化されたシミュレーションを実行するための、シミュレーションユニットとを備える、システム。
【請求項15】
前記医療画像データは、患者のスキャンから受信され、前記画像ベースのモデルは、前記患者に関連する患者特異的なモデルである、請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
内部に保存された命令を有するコンピュータ可読記憶媒体であって、計算デバイスによって実行されたとき、前記命令は以下:
医療画像データに基づいて、解剖学的組織のデジタル画像ベースのモデルを生成すること;
前記画像ベースのモデルおよび外挿されたデータに基づいて、前記医療画像データ内に含まれていない前記解剖学的組織および隣接の解剖学的領域を示す拡張モデルを生成すること;
前記拡張モデルのグラフィック表示を表示すること;
前記拡張モデルを用いた画像誘導による処置のコンピュータ化されたシミュレーションを実行することを行う、コンピュータ可読記憶媒体。
【請求項17】
前記画像ベースのモデルは第1の多角形メッシュであり、前記拡張モデルを生成する前記命令は、前記計算デバイスによって実行されたとき、さらに以下:
前記第1の多角形メッシュの境界を識別すること;
空間的位置および形状パラメータに基づいて、一連の事前に設計された汎用の多角形メッシュから、前記境界に最良に合致させる拡張部分を示す第2の多角形メッシュを選択すること;
前記第1の多角形メッシュの前記境界と前記第2の多角形メッシュとを結合することを行う命令を含む、請求項16に記載のコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項18】
前記境界を組み合わせる前記命令は、前記計算デバイスによって実行されたとき、さらに以下:
前記境界に付随する管状部分の中心線を計算すること;
前記第1の多角形メッシュの管状部分の中心線を、前記第2の多角形メッシュの中心線に接続することを行う命令を含む、請求項17に記載のコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項19】
前記計算デバイスによって実行されたとき、前記命令はさらに以下:
重複する部分に付随するデジタルデータを除去すること;
前記第2の多角形メッシュの半径が前記第1の多角形メッシュの半径と合致するように、前記第2の多角形メッシュを拡大縮小することを行う命令を含む、請求項18に記載のコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項20】
前記解剖学的組織の画像ベースのモデルを生成する前記命令は、前記計算デバイスによって実行されたとき、さらに以下:
前記医療画像データをセグメント化すること;
前記解剖学的組織の所望の容積を示す前記画像データの一部を識別すること;
前記所望の容積の境界表示を生成することを行う命令を含む、請求項16に記載のコンピュータ可読記憶媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【公表番号】特表2012−521030(P2012−521030A)
【公表日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−500366(P2012−500366)
【出願日】平成22年3月2日(2010.3.2)
【国際出願番号】PCT/IL2010/000172
【国際公開番号】WO2010/106532
【国際公開日】平成22年9月23日(2010.9.23)
【出願人】(511226535)シンバイオニクス リミテッド (1)
【Fターム(参考)】