説明

悪性腫瘍の診断のための試薬および診断方法

【課題】
がん特異抗原のタンパク質を測定するがんマーカーは、臓器特異的で悪性腫瘍として一括して診断できない。多数のタンパク質を同時に検出し複数のがんを一括診断する診断チップもあるが、複数のタンパク質を測定する必要があり、扱い方が煩雑で、肉腫等のがんとは発生の母地が異なる悪性腫瘍について測定できない。がん被検体の体内で発生する主要な酵素を目印とするタンパク質を指標にした試薬もあるが、酵素は活性を失い易く、肉腫等は測定できない。本発明はこのような問題点を課題とする。
【解決手段】 本発明は、抗PCNAポリクロ−ナル抗体と特異的に相互作用する、SDS−PAGE上での分子量がPCNAよりも大きなタンパク質またはその改変体、ならびにそれに特異的に相互作用する因子、それらを使用した、キット、組成物、方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、悪性腫瘍の診断に関する。より詳細には、本発明は,例えばがん等の悪性腫瘍被検体の血清中に特異的に発現するタンパク質を測定することで、がん等の悪性腫瘍の早期診断に有効な診断用試薬と診断方法に関する
【背景技術】
【0002】
がん、肉腫等の悪性腫瘍のマーカータンパク質に対する特異抗体は、臨床上、がんの診断や研究領域でタンパク質の固定に用いられている。これまでに、種々のがん細胞が発現するマーカータンパク質に対するマウスのモノクロ−ナル抗体の作製が報告されている。そして、このマウスモノクロ−ナル抗体を用い、がんマーカーとしてがん特異抗原のタンパク質を測定し、これにより、がんを診断する方法が報告されている。
【0003】
米国SomaLogic(コロラド州)から多数のタンパク質を同時に検出し、複数のがんを一括診断できるような診断チップが開発されつつある(特許文献1)。
【0004】
しかし、この特許文献1に記載される技術では、種々の特異抗体または特異的オリゴヌクレオチドを使用する必要があり、抗体などの集積によって複数のがんの診断を実現している。しかし、すべてのがんを診断するためには、すべてのがんを網羅するセットの抗体を用意する必要があるが、非常に困難であり、煩雑である。
【0005】
従って、当該分野において、すべてのがんを一括して網羅的に診断できるような因子・手段の登場が待ち望まれている。
【0006】
米国Panacea Pharmaceuticals(メリ−ランド州)により報告された、ヒトアスパルチル(アスパラギニル)βヒドロキシラ−ゼ(HAAH)と呼ばれるタンパク質を指標にした試薬は、主要ながん被検体の体内で発生する酵素を目 印とした診断方法で、ほぼ全身のがんを一度の血液検査で早期発見することを目的としているものである。しかし、このタンパク質は、正常または健常被検体でも発現していることから、その検出効率には限界がある。
【特許文献1】米国特許第6544776号
【特許文献2】国際公開02/092782号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
種々のがん細胞が発現するマーカータンパク質に対するマウスのモノクロ−ナル抗体の場、腫瘍細胞では大量に合成されるタンパク質ではあるが、広いがんに対して有効とされるHAAHでさえ、正常細胞でも合成されており、的確にがんの診断ができる程度での陽性率が得られず、被検体が、がんでありながら陰性を誤診する恐れがあるという問題があった。また、何よりもがんマーカーは臓器特異的であり、悪性腫瘍として一括して診断することはできなかった。
【0008】
米国SomaLogicの診断チップの場合については、複数のタンパク質を測定する必要があり、より扱い方が煩雑である点、また、がん診断は行えるが肉腫等のがんとは発生の母地が異なる悪性腫瘍については測定できない欠点を有する。
【0009】
米国Panacea Pharmaceuticalsにより報告された「HAAH」と呼ぶタンパク質を指標にした試薬については、がんから産出される酵素を中心としているが、酵素は比較的活性を失いやすい点、また、これもSomaLogicと同じく肉腫などの悪性腫瘍については測定できない欠点を有する。
【0010】
従って、本発明は、がん等の悪性腫瘍全般の検出に有用なタンパク質を診断用試薬として提供し、このタンパク質を測定することで、被検体が悪性腫瘍であるかどうかの診断に有効な悪性腫瘍診断方法であり、健康診断の一次スクリーニングに適用し、悪性腫瘍の早期診断により早期治療を行うことを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、抗PCNAポリクロ−ナル抗体と特異的に相互作用する、SDS−PAGE上での分子量がPCNAよりも大きなタンパク質が予想外に、普遍的にがん被検体の試料において発現していること見出したことによって上記課題を解決した。
【0012】
従って、本発明は、以下を提供する。
【0013】
1つの局面において、本発明は、抗PCNAポリクロ−ナル抗体と特異的に相互作用する、SDS−PAGE上での分子量がPCNAよりも大きなタンパク質(本明細書において、PCNA関連抗原ともいう)を提供する。このタンパク質の分子量は、36000ダルトンより大きく、43500ダルトンより小さく、より好ましくは、40000ダルトンより小さく、さらに好ましくは、38000ダルトンより小さい。ここで、上記PCNAは配列番号2に示すアミノ酸配列を有するものであってもよい。
【0014】
別の局面において、本発明は、抗PCNAポリクロ−ナル抗体と特異的に相互作用する、SDS−PAGE上での分子量がPCNAよりも大きなタンパク質に特異的に相互作用する、因子を提供する。ここで、上記PCNAは配列番号2に示すアミノ酸配列を有するものであってもよい。
【0015】
1つの実施形態において、この因子は、核酸分子、ポリペプチド、脂質、糖鎖、有機低分子およびそれらの複合分子からなる群より選択される。
【0016】
別の実施形態において、この因子は、抗体またはその誘導体である。
【0017】
別の実施形態において、この因子は、プロ−ブとして使用される。
【0018】
別の実施形態において、この因子は、標識されているかまたは標識され得る。
【0019】
別の実施形態において、この標識は、蛍光、燐光、化学発光、放射能、酵素基質反応および抗原抗体反応からなる群より選択される技法を利用する。
【0020】
さらに別の実施形態において、本発明の因子は、PCNAとは相互作用しない。
【0021】
別の実施形態において、本発明の因子は、モノクロ−ナル抗体である。
【0022】
他の局面において、本発明は、本発明のモノクロ−ナル抗体を生産する、ハイブリド−マを提供する。
【0023】
他の局面において、本発明は、抗PCNAポリクロ−ナル抗体と特異的に相互作用する、SDS−PAGE上での分子量がPCNAよりも大きなタンパク質を含む、悪性腫瘍の診断のための組成物を提供する。
【0024】
別の局面において、本発明は、抗PCNAポリクロ−ナル抗体と特異的に相互作用する、SDS−PAGE上での分子量がPCNAよりも大きなタンパク質に対して特異的に相互作用する因子を含む、悪性腫瘍の診断のための組成物(例えば、がん診断剤)を提供する。本発明のがん診断剤は、例えば、乳がん、胃がん、食道がん、大腸がん、肝がん、前立腺がん、胆管がん、骨肉腫、悪性線維性組織球腫等の診断に利用できる。
【0025】
他の局面において、本発明は、被検体の悪性腫瘍の診断のためのキットであって、
(A)抗PCNAポリクロ−ナル抗体と特異的に相互作用する、SDS−PAGE上での分子量がPCNAよりも大きなタンパク質を検出する手段、を備え、
ここで、該タンパク質の発現の出現または増加は、該被検体が悪性腫瘍に罹患するかまたは罹患している疑いが高いことを示す、キットを提供する。
【0026】
他の局面において、本発明は、被検体の悪性腫瘍の診断のための方法であって、
(A)該被検体からの試料を得る工程;
(B)該試料と、抗PCNAポリクロ−ナル抗体と特異的に相互作用する、SDS−PAGE上での分子量がPCNAよりも大きなタンパク質に特異的に相互作用する因子とを混合する工程;
(C)該試料と該因子とが相互作用した量を測定する工程;
(D)該相互作用した量が健常人の量よりも多いかどうかを判定する工程、
を包含する、方法を提供する。
【0027】
この方法の好ましい実施形態において、この悪性腫瘍は、胆管がん、メラノ−マ、肺がん、胃がん、腺がん、扁平上皮がん、腺扁平上皮がん、胸腺がん、リンパ腫、肉腫、肝がん、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、白血病、子宮がん、乳がん(胸部がん)、前立腺がん、卵巣がん、膵臓がん、大腸がん(結腸直腸がん)、多発性骨髄腫、神経芽細胞腫、膀胱がん、子宮頸部がん、皮膚がん、乳がん、食道がん、腎腫、脳腫瘍、骨肉腫、ユ−イング肉腫および悪性腺維性組織球腫からなるより選択され、より好ましくは、胆管がん、前立腺がん、胃がん、乳がん、食道がん、肝がん、大腸がん、骨肉腫、ユ−イング肉腫および悪性腺維性組織球腫からなる群より選択される少なくとも1つの腫瘍を含む。
【0028】
より好ましい実施形態では、上記悪性腫瘍は、胆管がん、前立腺がん、胃がん、乳がん、食道がん、肝がん、大腸がん、骨肉腫、ユ−イング肉腫および悪性腺維性組織球腫からなる群より選択されるすべての腫瘍を含む。
【0029】
本発明では、血清として、健常人の血清と被検体の血清を使用し、被検体血清中の標的タンパク質を測定し、結果を比較する方法を利用することができる。
【0030】
本発明では、健常人の血清には、本タンパク質は含まれない。従って、健常人の血清を用いた場合、本タンパク質は検出されない。ところが、がん等の悪性腫瘍被検体の血清中には本タンパク質が高率に発現する。従って、被検体の血清を使用して見られた本タンパク質の発現をもって、被検体が、がん等の悪性腫瘍である可能性があると診断することができる。
【0031】
本発明のタンパク質は、がん等の悪性腫瘍被検体の血清中に顕著に増殖しているもので、その出現頻度ががん等に特異的であることにより、悪性腫瘍診断における腫瘍マーカーとして利用できる
実際に、どこの臓器の悪性腫瘍であるか否かを診断するに際しては、公知の他の臓器特異的な、がん診断法と併用し、その結果をも考慮した上で診断することが好ましい。
【0032】
また、本発明のがん診断剤は、手術後のがん転移の有無を調べるためのマーカーとしても利用できる。
【0033】
従って、本発明のこれらおよび他の利点は、添付の図面を参照して、以下の詳細な説明を読みかつ理解すれば、当業者には明白になることが理解される。
【発明の効果】
【0034】
本発明は、部位に拘らず、どのようながんまたは肉腫であっても診断することができる、がんの総合マーカーを提供する。このような総合マーカーを用いることによって、もれなく簡便にがんを診断することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、本発明を説明する。本明細書の全体にわたり、単数形の表現は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。従って、単数形の冠詞などは、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。また、本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。したがって、他に定義されない限り、本明細書中で使用される全ての専門用語および科学技術用語は、本発明の属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、本明細書(定義を含めて)が優先する。
【0036】
(一般技術)
本明細書において用いられる分子生物学的手法、生化学的手法、微生物学的手法は、当該分野において周知であり慣用されるものであり、例えば、Sambrook J. et al. (1989). Molecular Cloning: A Laboratory Manual,Cold Spring Harborおよびその3rd Ed. (2001); Ausubel, F. M. (1987). Current Protocolsin Molecular Biology, Greene Pub. AssociatESand Wiley−Interscience; Ausubel, F.M. (1989). Short Protocols in Molecular Biology: A Compendium of Methods fromCurrent Protocols in Molecular Biology, Greene Pub. Associates and Wiley−Interscience;Innis, M. A. (1990). PCR Protocols: A Guide to Methods and Applications,Academic Press; Ausubel, F. M. (1992). Short Protocols in Molecular Biology: ACompendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology, Greene Pub.Associates; Ausubel, F. M. (1995). Short Protocols in Molecular Biology: ACompendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology, Greene Pub.Associates; Innis, M. A. et al. (1995). PCR Strategies, Academic Press;Ausubel, F. M. (1999). Short Protocols in Molecular Biology: A Compendium ofMethods from Current Protocols in Molecular Biology, Wiley, and annual updates;Sninsky, J. J. et al. (1999). PCR Applications: Protocols for FunctionalGenomics, Academic Press、別冊実験医学「遺伝子導入&発現解析実験法」羊土社、1997などに記載されており、これらは本明細書において関連する部分(全部であり得る)が参考として援用される。
【0037】
人工的に合成した遺伝子を作製するためのDNA合成技術および核酸化学については、例えば、Gait, M. J. (1985). Oligonucleotide Synthesis: A Practical Approach,IRL Press; Gait, M. J. (1990). Oligonucleotide Synthesis: A Practical Approach,IRL Press; Eckstein, F. (1991). Oligonucleotides and Analogues: A PracticalApproach, IRL Press; Adams, R. L. et al. (1992). The Biochemistry of theNucleic Acids, Chapman & Hall; Shabarova, Z. et al. (1994). AdvancedOrganic Chemistry of Nucleic Acids, Weinheim; Blackburn, G. M. et al. (1996).Nucleic Acids in Chemistry and Biology, Oxford University Press; Hermanson, G.T. (I996). Bioconjugate Techniques, Academic Pressなどに記載されており、これらは本明細書において関連する部分が参考として援用される。
【0038】
(用語の定義)
以下に本明細書において特に使用される用語の定義を列挙する。
【0039】
(生化学)
本明細書において使用される「タンパク質」、「ポリペプチド」、「オリゴペプチド」および「ペプチド」は、本明細書において同じ意味で使用され、任意の長さのアミノ酸のポリマ−をいう。このポリマ−は、直鎖であっても分岐していてもよく、環状であってもよい。アミノ酸は、天然のものであっても非天然のものであってもよく、改変されたアミノ酸であってもよい。本明細書において用いられる場合、この用語は、好ましくは、核酸分子によって翻訳された形態であることから、通常、直鎖であり、天然のアミノ酸のみから構成されるがそれに限定されない。この用語はまた、複数のポリペプチド鎖の複合体へとアセンブルされたものを包含し得る。この用語はまた、天然または人工的に改変されたアミノ酸ポリマ−も包含する。そのような改変としては、例えば、ジスルフィド結合形成、グリコシル化(糖鎖結合)、脂質化、アセチル化、リン酸化または任意の他の操作もしくは改変(例えば、標識成分との結合体化)。この定義にはまた、例えば、アミノ酸の1または2以上のアナログを含むポリペプチド(例えば、非天然のアミノ酸などを含む)、ペプチド様化合物(例えば、ペプトイド)および当該分野において公知の他の改変が包含される。本発明の遺伝子産物は、通常ポリペプチド形態をとる。本明細書では、本発明のポリペプチドは、通常、特定の配列またはそれらの改変体を有する。抗原(例えば、がん細胞に由来する抗原)などの遺伝子の遺伝子産物は、通常、このような配列を有するポリペプチド形態をとる。ここで、改変を有する配列もまた、本発明において、診断、予防、治療目的に使用され得る。
【0040】
本明細書において「糖鎖」とは、単位糖(単糖および/またはその誘導体)が1つ以上連なってできた化合物をいう。単位糖が2つ以上連なる場合は、各々の単位糖同士の間は、グリコシド結合による脱水縮合によって結合する。このような糖鎖としては、例えば、生体中に含有される多糖類(グルコ−ス、ガラクト−ス、マンノ−ス、フコ−ス、キシロ−ス、N−アセチルグルコサミン、N−アセチルガラクトサミン、シアル酸ならびにそれらの複合体および誘導体)の他、分解された多糖、糖タンパク質、プロテオグリカン、グリコサミノグリカン、糖脂質などの複合生体分子から分解または誘導された糖鎖など広範囲なものが挙げられるがそれらに限定されない。したがって、本明細書では、糖鎖は、「多糖(ポリサッカリド)」、「糖質」、「炭水化物」と互換可能に使用され得る。
【0041】
本明細書において「単糖」とは、これより簡単な分子に加水分解されず、一般式C2nで表される化合物をいう。ここで、n=2、3、4、5、6、7、8、9および10であるものを、それぞれジオ−ス、トリオ−ス、テトロ−ス、ペント−ス、ヘキソ−ス、ヘプト−ス、オクト−ス、ノノ−スおよびデコ−スという。一般に鎖式多価アルコ−ルのアルデヒドまたはケトンに相当するもので、前者をアルド−ス,後者をケト−スという。
【0042】
本明細書において「単糖の誘導体」とは、単糖上の一つ以上の水酸基が別の置換基に置換され、結果生じる物質が単糖の範囲内にないものをいう。そのような単糖の誘導体としては、カルボキシル基を有する糖(例えば、C−1位が酸化されてカルボン酸となったアルドン酸(例えば、D−グルコ−スが酸化されたD−グルコン酸)、末端のC原子がカルボン酸となったウロン酸(D−グルコ−スが酸化されたD−グルクロン酸)、アミノ基またはアミノ基の誘導体(例えば、アセチル化されたアミノ基)を有する糖(例えば、N−アセチル−D−グルコサミン、N−アセチル−D−ガラクトサミンなど)、アミノ基およびカルボキシル基を両方とも有する糖(例えば、N−アセチルノイラミン酸(シアル酸)、N−アセチルムラミン酸など)、デオキシ化された糖(例えば、2−デオキシ−D−リボ−ス)、硫酸基を含む硫酸化糖、リン酸基を含むリン酸化糖などがあるがそれらに限定されない。あるいは、ヘミアセタ−ル構造を形成した糖において、アルコ−ルと反応してアセタ−ル構造のグリコシドもまた、単糖の誘導体の範囲内にある。
【0043】
本明細書において使用される「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」、「核酸」および「核酸分子」は、本明細書において同じ意味で使用され、任意の長さのヌクレオチドのポリマ−をいう。そのような核酸分子としては、例えば、cDNA、mRNA、ゲノムDNAが挙げられるがそれらに限定されない。この用語はまた、「誘導体オリゴヌクレオチド」または「誘導体ポリヌクレオチド」を含む。本明細書において「誘導体オリゴヌクレオチド」または「誘導体ポリヌクレオチド」とは、ヌクレオチドの誘導体を含むか、またはヌクレオチド間の結合が通常とは異なるオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドをいい、互換的に使用される。そのようなオリゴヌクレオチドとして具体的には、例えば、2’−O−メチル−リボヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のリン酸ジエステル結合がホスホロチオエ−ト結合に変換された誘導体オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のリン酸ジエステル結合がN3’−P5’ホスホロアミデ−ト結合に変換された誘導体オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のリボ−スとリン酸ジエステル結合とがペプチド核酸結合に変換された誘導体オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のウラシルがC−5プロピニルウラシルで置換された誘導体オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のウラシルがC−5チアゾ−ルウラシルで置換された誘導体オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のシトシンがC−5プロピニルシトシンで置換された誘導体オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のシトシンがフェノキサジン修飾シトシン(phenoxazine−modified cytosine)で置換された誘導体オリゴヌクレオチド、DNA中のリボ−スが2’−O−プロピルリボ−スで置換された誘導体オリゴヌクレオチドおよびオリゴヌクレオチド中のリボ−スが2’−メトキシエトキシリボ−スで置換された誘導体オリゴヌクレオチドなどが例示される。他にそうではないと示されなければ、特定の核酸配列はまた、配列表に明示的に示された配列と同様に、その保存的に改変された改変体(例えば、縮重コドン置換体)、相補配列、対応する配列(例えば、ヒト配列に対するマウス配列など)を包含することが企図される。具体的には、縮重コドン置換体は、1またはそれ以上の選択された(または、すべての)コドンの3番目の位置が混合塩基および/またはデオキシイノシン残基で置換された配列を作成することにより達成され得る(Batzeret al., Nucleic Acid Res.19:5081(1991); Ohtsuka et al.、 J. Biol. Chem.260: 2605−2608 (1985); Rossolini et al.、Mol. Cell. Probes 8: 91−98 (1994))。本発明の遺伝子ワクチンは、通常、このポリヌクレオチド形態をとり、通常、アミノ酸形態に翻訳されることが必要であることから、インビボで転写および翻訳される形態(例えば、天然のヌクレオチドからなる)をとることが好ましいがそれに限定されない。本明細書では、核酸および核酸分子は、用語「遺伝子」の概念に含まれ得る。ある遺伝子配列をコ−ドする核酸分子はまた、「スプライス変異体(バリアント、改変体)」を包含する。同様に、核酸によりコ−ドされた特定のタンパク質は、その核酸のスプライス改変体によりコ−ドされる任意のタンパク質を包含する。その名が示唆するように「スプライス変異体」は、遺伝子のオルタナティブスプライシングの産物である。転写後、最初の核酸転写物は、異なる(別の)核酸スプライス産物が異なるポリペプチドをコ−ドするようにスプライスされ得る。スプライス変異体の産生機構は変化するが、エキソンのオルタナティブスプライシングを含む。読み過し転写により同じ核酸に由来する別のポリペプチドもまた、この定義に包含される。スプライシング反応の任意の産物(組換え形態のスプライス産物を含む)がこの定義に含まれる。したがって、本発明の遺伝子には、そのスプライス変異体もまた包含され得る。このような変異体は、本発明の診断において有用である。
【0044】
本明細書において「分子量」は、当該分野において通常使用されるのと同じ意味で用いられ、ダルトンによって表示される。本明細書では、代表的にSDS−PAGE上での見かけ上の分子量によってタンパク質の分子量を表現する。SDS−PAGE上の「分子量は、アミノ酸配列によって影響を受ける他、修飾(例えば、糖鎖など)によっても影響を受けることがあり得る。従って、本発明のタンパク質が、例えばPCNAより大きいというときは、アミノ酸配列上の相違の他、翻訳後修飾(例えば、糖鎖、脂質化など)を受けた結果分子量が相違していることを包含する。当業者は、SDS−PAGE上の分子量が異なることは、標準的なPCNAを用いて、本明細書において記載されるSDS−PAGEの条件で実験することによって、容易に確認することが理解される。
【0045】
ここで、本明細書において使用されるSDS−PAGEの条件は以下のとおりである。SDS−PAGEは、12.5%のゲルを用いる。このゲルを用いて、100Vで1時間電気泳動した後、Immobilon−P Transfer membrane(Millipore,Billerica,Mass.,USA)にトランスファーする。その後、ウェスタンブロット法により陽性・陰性を判断する。
【0046】
本明細書において「遺伝子」とは、遺伝形質を規定する因子をいう。タンパク質の一次構造を規定するものを構造遺伝子といい、その発現を左右するものを調節遺伝子(たとえば、プロモ−タ−)という。本明細書では、遺伝子は、特に言及しない限り、構造遺伝子および調節遺伝子を包含する。したがって、あるタンパク質について遺伝子というときは、通常、そのタンパク質の構造遺伝子およびそのタンパク質などのプロモ−タ−などの転写または翻訳の調節配列の両方を包含する。本明細書では、「遺伝子」は、通常「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」、「核酸」および「核酸分子」をさすが、場合により「タンパク質」、「ポリペプチド」、「オリゴペプチド」および「ペプチド」ことがあることが理解される。当業者は、その文脈に応じて「遺伝子」が何を指すかを理解する。本明細書においてはまた、「遺伝子産物」は、遺伝子によって発現された「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」および「核酸」ならびに/または「タンパク質」、「ポリペプチド」、「オリゴペプチド」および「ペプチド」を包含する。当業者であれば、遺伝子産物が何たるかはその状況に応じて理解することができる。
【0047】
本明細書において遺伝子(例えば、核酸配列、アミノ酸配列など)の「相同性」とは、2以上の遺伝子配列の、互いに対する同一性の程度をいう。従って、ある2つの遺伝子の相同性が高いほど、それらの配列の同一性または類似性は高い。2種類の遺伝子が相同性を有するか否かは、配列の直接の比較、または核酸の場合ストリンジェントな条件下でのハイブリダイゼ−ション法によって調べられ得る。2つの遺伝子配列を直接比較する場合、その遺伝子配列間でDNA配列が、代表的には少なくとも50%同一である場合、好ましくは少なくとも70%同一である場合、より好ましくは少なくとも80%、90%、95%、96%、97%、98%または99%同一である場合、それらの遺伝子は相同性を有する。本明細書において、遺伝子(例えば、核酸配列、アミノ酸配列など)の「類似性」とは、上記相同性において、保存的置換をポジティブ(同一)とみなした場合の、2以上の遺伝子配列の、互いに対する同一性の程度をいう。従って、保存的置換がある場合は、その保存的置換の存在に応じて同一性と類似性とは異なる。また、保存的置換がない場合は、同一性と類似性とは同じ数値を示す。
【0048】
本明細書において「アミノ酸」は、本発明の目的を満たす限り、天然のものでも非天然のものでもよい。本明細書において「誘導体アミノ酸」または「アミノ酸アナログ」とは、天然に存在するアミノ酸とは異なるがもとのアミノ酸と同様の機能を有するものをいう。そのような誘導体アミノ酸およびアミノ酸アナログは、当該分野において周知である。
【0049】
本明細書において「ヌクレオチド」は、天然のものでも非天然のものでもよい。本明細書において「誘導体ヌクレオチド」または「ヌクレオチドアナログ」とは、天然に存在するヌクレオチドとは異なるがもとのヌクレオチドと同様の機能を有するものをいう。そのような誘導体ヌクレオチドおよびヌクレオチドアナログは、当該分野において周知である。そのような誘導体ヌクレオチドおよびヌクレオチドアナログの例としては、ホスホロチオエ−ト、ホスホルアミデ−ト、メチルホスホネ−ト、キラルメチルホスホネ−ト、2−O−メチルリボヌクレオチド、ペプチド−核酸(PNA)が含まれるが、これらに限定されない。本発明では、遺伝子産物が発現される限り、どのようなアナログを使用してもよい。好ましくは、天然型のヌクレオチドを含む遺伝子ワクチンが使用される。天然型のものは、ペプチドに翻訳される可能性が高いからである。
【0050】
本明細書において「フラグメント」とは、全長のポリペプチドまたはポリヌクレオチド(長さがn)に対して、1〜n−1までの配列長さを有するポリペプチドまたはポリヌクレオチドをいう。フラグメントの長さは、その目的に応じて、適宜変更することができ、例えば、その長さの下限としては、ポリペプチドの場合、3、4、5、6、7、8、9、10、15,20、25、30、40、50およびそれ以上のアミノ酸が挙げられ、ここの具体的に列挙していない整数で表される長さ(例えば、11など)もまた、下限として適切であり得る。また、ポリヌクレオチドの場合、5、6、7、8、9、10、15,20、25、30、40、50、75、100およびそれ以上のヌクレオチドが挙げられ、ここの具体的に列挙していない整数で表される長さ(例えば、11など)もまた、下限として適切であり得る。本明細書において、ポリペプチドおよびポリヌクレオチドの長さは、上述のようにそれぞれアミノ酸または核酸の個数で表すことができるが、上述の個数は絶対的なものではなく、同じ機能を有する限り、上限または下限としての上述の個数は、その個数の上下数個(または例えば上下10%)のものも含むことが意図される。そのような意図を表現するために、本明細書では、個数の前に「約」を付けて表現することがある。しかし、本明細書では、「約」のあるなしはその数値の解釈に影響を与えないことが理解されるべきである。本発明において用いられる、細胞表面マーカー、がん抗原などについても、その機能(例えば、抗体惹起能)を有する限り、このようなフラグメントもまた使用され得ることが理解される。
【0051】
本明細書において「対応する」アミノ酸および核酸(例えば、細胞表面マーカーにおける)とは、それぞれあるポリペプチドおよび核酸分子において、比較の基準となるポリペプチドおよび核酸分子における所定のアミノ酸および核酸と同様の作用を有するか、または有することが予測されるアミノ酸および核酸をいい、例えば、酵素においては、その酵素の活性中心と同様の位置に存在し触媒活性に同様の寄与をするアミノ酸およびそれをコ−ドする核酸をいう。抗原であれば、抗原性に関与するアミノ酸配列(例えば、エピト−プ)に対応する部分に関するアミノ酸配列が相当し得、核酸配列であれば、その核酸配列またはそれがコ−ドする特定の部分と同様の機能を発揮する部分であり得る。
【0052】
本明細書において「対応する」遺伝子(例えば、腫瘍マーカーなどのポリペプチド、核酸分子など)とは、ある種において、比較の基準となる種における所定の遺伝子と同様の作用を有するか、または有することが予測される遺伝子をいい、そのような作用を有する遺伝子が複数存在する場合、進化学的に同じ起源を有するものをいう。従って、ある遺伝子の対応する遺伝子は、その遺伝子のオルソログであり得る。したがって、ヒトの腫瘍マーカーなどの遺伝子に対応する遺伝子は、他の動物(マウス、ラット、ブタ、ウシなど)においても見出すことができる。そのような対応する遺伝子は、当該分野において周知の技術を用いて同定することができる。したがって、例えば、ある動物における対応する遺伝子は、対応する遺伝子の基準となる遺伝子(例えば、がん抗原などの遺伝子)の配列をクエリ配列として用いてその動物(例えばマウス、ラット)の配列デ−タベ−スを検索することによって、またはウェットの実験でライブラリ−をスクリーニングすることによって見出すことができる。
【0053】
本明細書において「検索」とは、電子的にまたは生物学的あるいは他の方法により、ある核酸塩基配列を利用して、特定の機能および/または性質を有する他の核酸塩基配列を見出すことをいう。電子的な検索としては、BLAST(Altschul et al., J. Mol. Biol. 215: 403−410 (1990))、FASTA (Pearson& Lipman, Proc. Natl. Acad. Sci., USA 85: 2444−2448(1988))、Smith and Waterman法(Smithand Waterman, J. Mol. Biol. 147: 195−197 (1981))、およびNeedleman and Wunsch法(Needlemanand Wunsch, J. Mol. Biol. 48: 443−453 (1970))などが挙げられるがそれらに限定されない。生物学的な検索としては、ストリンジェントハイブリダイゼ−ション、ゲノムDNAをナイロンメンブレン等に貼り付けたマクロアレイまたはガラス板に貼り付けたマイクロアレイ(マイクロアレイアッセイ)、PCRおよび in situハイブリダイゼ−ションなどが挙げられるがそれらに限定されない。本明細書において、がん抗原などには、このような電子的検索、生物学的検索によって同定された対応遺伝子も含まれるべきであることが意図される。
【0054】
アミノ酸は、その一般に公知の3文字記号か、またはIUPAC−IUB Biochemical Nomenclature Commissionにより推奨される1文字記号のいずれかにより、本明細書中で言及され得る。ヌクレオチドも同様に、一般に認知された1文字コ−ドにより言及され得る。
【0055】
本明細書では、アミノ酸配列および塩基配列の類似性、同一性および相同性の比較は、配列分析用ツ−ルであるFASTAを用いてデフォルトパラメ−タを用いて算出される。
【0056】
本明細書において「改変体」とは、もとのポリペプチドまたはポリヌクレオチドなどの物質に対して、一部が変更されているものをいう。そのような改変体としては、置換改変体、付加改変体、欠失改変体、短縮(truncated)改変体、対立遺伝子変異体などが挙げられる。そのような改変体としては、基準となる核酸分子またはポリペプチドに対して、1または数個の置換、付加および/または欠失、あるいは1つ以上の置換、付加および/または欠失を含むものが挙げられるがそれらに限定されない。対立遺伝子(allele)とは、同一遺伝子座に属し、互いに区別される遺伝的改変体のことをいう。従って、「対立遺伝子変異体」とは、ある遺伝子に対して、対立遺伝子の関係にある改変体をいう。そのような対立遺伝子変異体は、通常その対応する対立遺伝子と同一または非常に類似性の高い配列を有し、通常はほぼ同一の生物学的活性を有するが、まれに異なる生物学的活性を有することもある。「種相同体またはホモログ(homolog)」とは、ある種の中で、ある遺伝子とアミノ酸レベルまたはヌクレオチドレベルで、相同性(好ましくは、60%以上の相同性、より好ましくは、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上の相同性)を有するものをいう。そのような種相同体を取得する方法は、本明細書の記載から明らかである。「オルソログ(ortholog)」とは、オルソロガス遺伝子(orthologous gene)ともいい、二つの遺伝子がある共通祖先からの種分化に由来する遺伝子をいう。例えば、多重遺伝子構造をもつヘモグロビン遺伝子ファミリ−を例にとると、ヒトおよびマウスのがんマーカーはオルソログであり得るが,ヒトのがんマーカーはまた、パラログ(遺伝子重複で生じた遺伝子)である。同様に、マラリアなどの原虫の遺伝子についても、オルソログが存在し得る。オルソログは、分子系統樹の推定に有用である。オルソログは、通常別の種において、もとの種と同様の機能を果たしていることがあり得ることから、本発明のオルソログもまた、本発明において有用であり得る。本発明において使用される細胞表面マーカーにもオルソログが存在することが理解される。
【0057】
本明細書において、ポリペプチドまたはポリヌクレオチドの「置換」、「付加」および「欠失」とは、もとのポリペプチドまたはポリヌクレオチドに対して、それぞれアミノ酸もしくはその代替物、またはヌクレオチドもしくはその代替物が、置き換わること、付け加わること、および取り除かれることをいう。このような置換、付加または欠失の技術は、当該分野において周知であり、そのような技術の例としては、部位特異的変異誘発技術などが挙げられる。置換、付加または欠失は、1つ以上であれば任意の数でよく、そのような数は、その置換、付加または欠失を有する改変体において目的とする機能(例えば、プロテアソ−ムへの運搬など)が保持される限り、多くすることができる。例えば、そのような数は、1または数個であり得、そして好ましくは、全体の長さの20%以内、10%以内、または100個以下、50個以下、25個以下などであり得る。本発明では、そのような腫瘍マーカーなどの改変体が使用され得ることが理解される。
【0058】
本明細書において遺伝子、ポリヌクレオチド、ポリペプチドなど遺伝子産物の「発現」とは、その遺伝子(通常は、DNA形態)などがインビボで一定の作用を受けて、別の形態になることをいう。好ましくは、遺伝子、ポリヌクレオチドなどが、転写および翻訳されて、ポリペプチドの形態になることをいうが、転写されてmRNAが作製されることもまた発現の一形態であり得る。別の実施形態では、そのようなポリペプチドの形態は、翻訳後プロセシング(例えば、リ−ダ−配列切除)を受けたものであり得る。
【0059】
本明細書において、遺伝子が「特異的に発現する」とは、その遺伝子が、生物の特定の部位または時期において他の部位または時期とは異なる(好ましくは高い)レベルで発現されることをいう。特異的に発現するとは、ある部位(例えば、罹患部位などの特異的部位)にのみ発現してもよく、それ以外の部位においても発現していてもよい。好ましくは特異的に発現するとは、ある部位においてのみ発現することをいう。そのような特異的発現は、抗原提示細胞の特性を利用して実現することができる。
【0060】
本明細書において遺伝子発現(たとえば、mRNA発現、ポリペプチド発現)の「検出」または「定量」は、例えば、mRNAの測定および免疫学的測定方法を含む適切な方法を用いて達成され得る。分子生物学的測定方法としては、例えば、ノ−ザンブロット法、ドットブロット法またはPCR法などが例示される。免疫学的測定方法としては、例えば、方法としては、必要に応じてマイクロタイタ−プレ−トを用いる、ELISA法、RIA法、蛍光抗体法、ウェスタンブロット法、免疫組織染色法などが例示される。また、定量方法としては、ELISA法またはRIA法などが例示される。アレイ(例えば、DNAアレイ、プロテインアレイ)を用いた遺伝子解析方法によっても行われ得る。DNAアレイについては、(秀潤社編、細胞工学別冊「DNAマイクロアレイと最新PCR法」)に広く概説されている。プロテインアレイについては、Nat Genet.2002 Dec;32 Suppl:526−32に詳述されている。遺伝子発現の分析法としては、上述に加えて、RT−PCR、RACE法、SSCP法、免疫沈降法、two−hybridシステム、インビトロ翻訳などが挙げられるがそれらに限定されない。そのようなさらなる分析方法は、例えば、ゲノム解析実験法・中村祐輔ラボ・マニュアル、編集・中村祐輔 羊土社(2002)などに記載されており、本明細書においてそれらの記載はすべて参考として援用される。
【0061】
本明細書において「発現量」とは、対象となる細胞などにおいて、ポリペプチドまたはmRNAが発現される量をいう。そのような発現量としては、本発明の抗体を用いてELISA法、RIA法、蛍光抗体法、ウェスタンブロット法、免疫組織染色法などの免疫学的測定方法を含む任意の適切な方法により評価される本発明ポリペプチドのタンパク質レベルでの発現量、またはノ−ザンブロット法、ドットブロット法、PCR法などの分子生物学的測定方法を含む任意の適切な方法により評価される本発明のポリペプチドのmRNAレベルでの発現量が挙げられる。「発現量の変化」とは、上記免疫学的測定方法または分子生物学的測定方法を含む任意の適切な方法により評価される本発明のポリペプチドのタンパク質レベルまたはmRNAレベルでの発現量が増加あるいは減少することを意味する。
【0062】
本発明は、種々の組織または臓器由来のサンプルを対象に使用することができる。
【0063】
本明細書において「組織」(tissue)とは、多細胞生物において、実質的に同一の機能および/または形態をもつ細胞集団をいう。通常「組織」は、同じ起源を有するが、異なる起源を持つ細胞集団であっても、同一の機能および/-または形態を有するのであれば、組織と呼ばれ得る。本発明の診断の対象は、このような組織が対象とされ得る。天然では、2以上の異なる起源を有する細胞集団が一つの組織を構成し得る。そのような場合であっても、本発明は、そのような組織を診断対象とし得る。通常、組織は、臓器の一部を構成する。動物の組織は,形態的、機能的または発生的根拠に基づき、上皮組織、結合組織、筋肉組織、神経組織などに区別される。
【0064】
本発明において、例えば、診断などで臓器が対象とされる場合、そのような臓器はどのような臓器でもよく、また本発明が対象とする組織または細胞は、生物のどの臓器または器官に由来するものでもよい。本明細書において「臓器」または「器官」とは、互換可能に用いられ、生物個体のある機能が個体内の特定の部分に局在して営まれ,かつその部分が形態的に独立性をもっている構造体をいう。一般に多細胞生物(例えば、動物)では器官は特定の空間的配置をもついくつかの組織からなり、組織は多数の細胞からなる。そのような臓器または器官としては、血管系に関連する臓器または器官が挙げられる。1つの実施形態では、本発明が対象とする臓器は、皮膚、血管、角膜、腎臓、心臓、肝臓、臍帯、腸、神経、肺、胎盤、膵臓、脳、四肢末梢、網膜などが挙げられるがそれらに限定されない。
【0065】
(抗原および抗体)
本明細書において「抗体」とは、免疫反応において,抗原の刺激により生体内に作られ抗原と特異的に結合するタンパク質またはその改変体をいう。そのような抗体としては、例えば、ポリクロ−ナル抗体、モノクロ−ナル抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、多重特異性抗体、キメラ抗体、および抗イディオタイプ抗体、ならびにそれらの断片、例えばF(ab’)およびFab断片、ならびにその他の組換えにより生産された結合体が挙げられるがそれらに限定されない。さらにこのような抗体を、酵素、例えばアルカリホスファタ−ゼ、西洋ワサビペルオキシダ−ゼ、α−ガラクトシダ−ゼなど、に共有結合させまたは組換えにより融合させてよい。従って、このような複合物または融合物は、抗体の誘導体の範囲内にある。
【0066】
本明細書において「モノクロ−ナル抗体」とは、実質的にただ一つの抗原決定基だけに対する抗体をいう。通常、そのようなモノクロ−ナル抗体は、抗体を産生しているB細胞と骨髄腫細胞を融合させて作ったハイブリド−マによって試験管内で純粋な形態で作製され得る。
【0067】
本明細書において「ポリクロ−ナル抗体」とは、抗原分子の複数の抗原決定基に対する抗体が混在する抗体をいう。ある抗原に対して作られた抗血清、または抗血清からγグロブリン画分を精製したものなど、通常抗体として扱われているものを含むがそれらに限定されない。
【0068】
本明細書において「ハイブリド−マ」とは、2種類の細胞を人工的に融合させて作った腫瘍性をもつ雑種細胞をいう。本明細書で通常用いる場合は、形質細胞腫とB細胞(Bリンパ球)との雑種細胞をさす。免疫した個体から分離したB細胞は、形質細胞腫細胞と融合することにより、抗体を培養内で永遠に作りつづけることができる。
【0069】
本明細書において「抗原」(antigen)とは、抗体分子によって特異的に結合され得る任意の基質をいう。本明細書において「免疫原」(immunogen)とは、抗原特異的免疫応答を生じるリンパ球活性化を開始し得る抗原をいう。
【0070】
本明細書において「エピト−プ」とは、抗原を決定する構造を構成する基のことをいう。従って、エピト−プには特定の免疫グロブリンによる認識に関与するアミノ酸残基のセット、または、T細胞の場合は、T細胞レセプタ−タンパク質および/もしくは主要組織適合性複合体(MHC)レセプタ−による認識について必要であるアミノ酸残基のセットが包含される。この用語はまた、「抗原決定基」または「抗原決定部位」と交換可能に使用される。本発明では、エピト−プを決定する必要は全くない。免疫系分野において、インビボまたはインビトロで、エピト−プは、分子の特徴(例えば、一次ペプチド構造、二次ペプチド構造または三次ペプチド構造および電荷)であり、免疫グロブリン、T細胞レセプタ−またはHLA分子によって認識される部位を形成する。ペプチドを含むエピト−プは、エピト−プに独特な空間的コンフォメ−ション中に3つ以上のアミノ酸を含み得る。一般に、エピト−プは、少なくとも5つのこのようなアミノ酸からなり、代表的には少なくとも6つ、7つ、8つ、9つ、または10のこのようなアミノ酸からなる。エピト−プの長さは、より長いほど、もとのペプチドの抗原性に類似することから一般的に好ましいが、コンフォメ−ションを考慮すると、必ずしもそうでないことがある。アミノ酸の空間的コンフォメ−ションを決定する方法は、当該分野で公知であり、例えば、X線結晶学、および2次元核磁気共鳴分光法を含む。さらに、所定のタンパク質におけるエピト−プの同定は、当該分野で周知の技術を使用して容易に達成される。例えば、Geysenら(1984)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:3998(所定の抗原における免疫原性エピト−プの位置を決定するために迅速にペプチドを合成する一般的な方法);米国特許第4,708,871号(抗原のエピト−プを同定し、そして化学的に合成するための手順);およびGeysenら(1986)MolecularImmunology 23:709(所定の抗体に対して高い親和性を有するペプチドを同定するための技術)を参照されたい。同じエピト−プを認識する抗体は、単純な免疫アッセイにおいて同定され得る。このように、ペプチドを含むエピト−プを決定する方法は、当該分野において周知であり、そのようなエピト−プは、核酸またはアミノ酸の一次配列が提供されると、当業者はそのような周知慣用技術を用いて決定することができる。従って、本発明では、PCNAを識別可能な本発明のタンパク質のエピト−プ(すなわち、PCNAには反応しないが、本発明のタンパク質に反応するエピト−プ)などは、このようなエピト−プマッピングなどによって決定することができる。
【0071】
従って、ペプチドを含むエピト−プとして使用するためには、少なくとも3アミノ酸の長さの配列が必要であり、好ましくは、この配列は、少なくとも4アミノ酸、より好ましくは5アミノ酸、6アミノ酸、7アミノ酸、8アミノ酸、9アミノ酸、10アミノ酸、15アミノ酸、20アミノ酸、25アミノ酸の長さの配列が必要であり得る。
【0072】
本明細書において「プロ−ブ」とは、インビトロおよび/またはインビボなどのスクリーニングなどの生物学的実験において用いられる、検索の対象となる物質をいい、例えば、特定の塩基配列を含む核酸分子または特定のアミノ酸配列を含むペプチドなどが挙げられるがそれに限定されない。
【0073】
プロ−ブとして通常用いられるタンパク質としては、例えば、抗体またはその誘導体が挙げられるがそれらに限定されない。プロ−ブとして、タンパク質が用いられる場合も、直接または間接的に標識で標識され得る。
【0074】
本明細書において「標識」とは、元素または物質の挙動を知るために添加する物質または因子をいう。そのような標識には、放射性物質、化学発光物質、蛍光物質、燐光物質、発色剤、酵素反応基質または酵素、さらなる抗体または抗原、リガンド、ハプテンおよびそれらの原材料(すなわち、変換工程によって放射性、化学発光性、蛍光性、燐光性、発色などを呈するもの)が挙げられるがそれらに限定されない。
【0075】
(疾患)
本明細書において「腫瘍」とは、自律的な過剰増殖を示す細胞の集合体をいい、悪性および良性のものがある。腫瘍には、上皮性腫瘍(悪性のものはがんという)、非上皮性腫瘍(悪性のものは肉腫という)、混合腫瘍、奇形腫などを挙げることができる。良性のものには、線腫、扁平上皮乳頭腫などの上皮性腫瘍;線維腫、脂肪腫などの非上皮性腫瘍、多形線腫などの混合腫瘍、成熟奇形腫などの奇形腫を挙げることができる。
【0076】
本明細書において「悪性腫瘍」とは、異型性が強く,増殖は早く,周囲組織に破壊性に浸潤し,転移をおこし,宿主を死に至らしめるような性質を有し、がん、肉腫、混合腫瘍、奇形腫を含む。
【0077】
本明細書において「腫瘍マーカー」とは、腫瘍が産生する任意の因子(例えば、タンパク質、核酸、他の遺伝子産物など)をいう。好ましくは、成人組織での産生が見られないものが使用される。従来の腫瘍マーカーは、特定の細胞に特異性が高いもの(AFP、NSE,HCG,PSA、PAP、セミノプロテイン、ホルモン、MAM6)、細胞分化の特定時期に産生されるもの(例えば、白血病分化抗原、SSEA1、PGP)、病因に特異性の高いもの(ATL抗体、EB抗体、HPV)など、特異性の高いもののみが知られていた。マーカーの血中濃度を規定する要因としては、例えば、産生量(マーカー産生腫瘍細胞・良性細胞の数および活動性);分泌の方向性(例えば、局所の血流およびリンパ流、腺管構造の乱れ、排泄経路の遮断、貯蔵プ−ルの存在など);代謝および排泄(分解臓器の機能、代謝障害、循環不全、腎不全、結合タンパク質、抗体などの存在など)を挙げる事ができるがそれらに限定されない。腫瘍マーカーは、高危険群のスクリーニング、フォロ−アップ、がんの補助診断、原発臓器および細胞の種類の鑑別、病期および転移の有無および予後の推定、治療効果判定、再発のモニタリング、がんの生物学的特性の把握および治療法の選択などに用いることができる。
【0078】
特に、本明細書において「がん抗原」とは、正常細胞ががん化するに伴って新たに発現するようになる抗原分子をいう。そのようながん抗原としては、例えば、以下のようなものが挙げられるがそれらに限定されない:
(1)がんウイルス由来抗原(例えば、アデノウイルス、ポリオ−マウイルス、SV40などのDNA型腫瘍ウイルスに由来するT抗原など)。ヒト、マウスのRNA型腫瘍ウイルスでは、ウイルスのエンベロ−プタンパク質が細胞表面に発現される。
【0079】
(2)がん特異移植抗原(tumor specific transplantation antigen,TSTA);この抗原は、同系のがん細胞に対して特異的免疫応答が成立する結果、そのがん細胞が拒絶される場合、その標的抗原となるものが該当する。遺伝子変異により、がん細胞内に変異タンパク質が作られると、他の細胞内正常タンパク質と同様に、ペプチド断片として細胞内で、主要組織適合抗原遺伝子複合体(MHC)の分子と会合しがん細胞表面に発現されるようになる。;
(3)がん関連抗原(tumor associated antigen, TAA)。がん細胞に必ずしも特異的でないが,がん化に伴って特徴的な発現を示す抗原。例えば、肝がんにおけるα−フェトプロテイン、腸がんなどにおける胎児性がん抗原(carcinoembryonicantigen, CEA)などが該当する。これらは、元来は正常の胎児だけに存在するタンパク質であり、成人の組織には認められない。しかし、これらのタンパク質は、がん化に伴って再発現を示すのでがん胎児抗原(oncofetalantigen)と呼ばれる。
【0080】
本明細書において使用される場合、がん抗原としては、どのような形態のものであっても用いることができるが、特に、がん関連抗原と呼ばれる形態のものが好ましく用いられる。MHCとの会合によって、がん細胞の表面に発現されるようになるからである。
【0081】
本明細書において「がん」または「癌」は、互換可能に用いられ、異型性が強く、増殖が正常細胞より速く、周囲組織に破壊性に浸潤し得あるいは転移をおこし得る悪性腫瘍またはそのような悪性腫瘍が存在する状態をいう。本発明においては、がんは固形がんおよび造血器腫瘍を含むがそれらに限定されない。がんには、例えば、腺がん、嚢胞腺がん、肝細胞がん、腎細胞がん、扁平上皮がん、基底細胞がん、移行上皮がん、悪性黒色腫、絨毛がん、セミノ−マ、胎児性がん等を挙げることができるがそれらに限定されない。
【0082】
本明細書において「固形がん」は、固形の形状があるがんをいい、白血病などの造血器腫瘍とは対峙する概念である。そのような固形がんとしては、例えば、乳がん、肝がん、胃がん、肺がん、頭頸部がん、子宮頸部がん、前立腺がん、網膜芽細胞腫、悪性リンパ腫、食道がん、脳腫瘍、骨腫瘍が挙げられるがそれらに限定されない。造血器腫瘍としては、白血病などが挙げられるがそれらに限定されない。
【0083】
本明細書において「肉腫」とは、生体の支持組織である非上皮組織(通常、骨髄リンパ組織を除く)から発生する悪性腫瘍をいう。肉主としては、例えば、線維肉腫、脂肪肉腫、平滑筋肉腫、横紋筋肉種、骨肉腫、軟骨肉腫、血管肉腫、リンパ管肉腫、滑膜肉腫、悪性中皮腫、浸潤性髄膜腫、白血病、悪性リンパ腫などを挙げることができる。
【0084】
その他の悪性腫瘍としては、例えば、悪性混合腫瘍、ウイルムス腫のような混合腫瘍、未熟奇形腫のような奇形腫を挙げることができる。
【0085】
本明細書において、「がん細胞」とは、がんの状態にある細胞をいう。本明細書において、がん細胞としては、例えば、メラノ−マ、肺がん、胃がん、腺がん、扁平上皮がん、腺扁平上皮がん、胸腺がん、リンパ腫、肉腫、肝がん、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、白血病、子宮がん、胸部がん、前立腺がん、卵巣がん、膵臓がん、大腸がん(結腸直腸がん)、多発性骨髄腫、神経芽細胞腫、膀胱がん、子宮頸部がん、皮膚がん、乳がん、食道がん、腎腫、脳腫瘍などの細胞を挙げることができるがそれらに限定されない。
【0086】
本明細書において「がん治療」は、抗がん剤(例えば、化学療法剤、放射線治療など)を投与することによって行われるか、または外科的に除去などをする外科的治療を包含する。本発明によってがんと診断された場合は、任意のがん治療を使用することができることが理解される。
【0087】
本明細書において用いられる化学療法剤は、当該分野において周知であり、抗癌剤マニュアル第2版 塚越茂他編 中外医学社;Pharmacology; Lippincott Williams & Wilkins,Inc.に記載されている。そのような化学療法剤は、例えば、以下が挙げられるがそれに限定されない:1)アルキル化剤(DNA,タンパク質などの細胞構成成分をアルキル化して細胞毒性を示す。例えば、シクロホスファミド,ブスルファン、チオテパ、ダカルバジンが挙げられるがそれらに限定されない);2)代謝拮抗剤(おもに核酸の合成を阻害する薬剤(例えば、葉酸代謝拮抗剤としてメトトレキサ−トなど、プリン代謝拮抗剤として6−メルカプトプリンなど、ピリミジン代謝拮抗剤としてフルオロウラシル(5−FU)など);3)DNAトポイソメラ−ゼ阻害剤(例えば、カンプトテシン、エトポシド(それぞれトポイソメラ−ゼI、IIを阻害する));4)チュ−ブリン作用薬(微小管形成を阻害し、細胞分裂を抑制する。ビンブラスチン、ビンクリスチンなど);5)白金化合物(DNAおよびタンパク質との結合による細胞毒性を示す。シスプラチン、カルボプラチンなど);6)抗がん抗生物質(DNAと結合し、DNA合成、RNA合成を阻害する。アドリアマイシン、ダウノルビシン、マイトマイシンC、ブレオマイシンなど);7)ホルモン剤(乳がん、子宮がん、前立腺がんなどホルモン依存性のがんに適応。タモキシフェン、リュ−プロレリン(LH−RH)など);8)生物製剤(アスパラギン要求性血液悪性腫瘍に対して有効なアスパラギナ−ゼ、直接的な抗腫瘍作用と免疫増強による間接作用を示すインタ−フェロンなどがある);9)免疫賦活剤(免疫応答能を増強し、間接的に抗腫瘍活性を示す。シイタケ由来の多糖体であるレンチナン、微生物由来のペプチドであるベスタチンなど)。
【0088】
本明細書において「抗がん剤」とは、がん(腫瘍)細胞の増殖を選択的に抑制し、がんの薬剤および放射線治療の両方を包含する。そのような抗癌剤は当該分野において周知であり、例えば、抗癌剤マニュアル第2版 塚越茂他編 中外医学社;Pharmacology;Lippincott Williams & Wilkins,Inc.に記載されている。
【0089】
本明細書において「放射線療法」または「放射線治療」とは、互換可能に使用され、電離放射線または放射性物質を利用した疾患の治療をいう。代表的な放射線療法としては、X線、γ線、電子線、陽子線、重粒子線、中性子捕捉療法が挙げられるがそれに限定されない。好ましい放射線療法としては、重粒子線が挙げられる。重粒子線を用いた療法は装置が大きく一般的でないことがある。そのような放射線療法は当該分野において周知であり、例えば、放射線検査と治療の基礎;放射線治療と集学的治療:邵啓全(滋賀医大 放射線):総合消化器ケア 6巻 6号 Page 79−89,6−7 (2002.02) に記載されている。
【0090】
(特異的因子)
本明細書においてポリヌクレオチドまたはポリペプチドに対して「特異的に相互作用する」とは、そのポリヌクレオチドまたはそのポリペプチドに対する親和性が、他の無関連の(特に、同一性が30%未満の)ポリヌクレオチドまたはポリペプチドに対する親和性よりも、代表的には同等またはより高いか、好ましくは有意に高いことをいう。そのような親和性は、例えば、ハイブリダイゼ−ションアッセイ、結合アッセイなどによって測定することができる。代表的には、特異的に相互作用するかどうかは、ウェスタンブロット法で検出できるかどうかによって判定することができる。従って、本明細書において「相互作用しない」とは、ウェスタンブロットにおいて有意に検出がされないことを含むがそれらに限定されない。
【0091】
本明細書において「因子」としては、意図する目的を達成することができる限りどのような物質または他の要素(例えば、エネルギ−)でもあってもよい。そのような物質としては、例えば、タンパク質、ポリペプチド、オリゴペプチド、ペプチド、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ヌクレオチド、核酸(例えば、cDNA、ゲノムDNAのようなDNA、mRNAのようなRNAを含む)、ポリサッカリド、オリゴサッカリド、脂質、有機低分子(例えば、ホルモン、リガンド、情報伝達物質、有機低分子、コンビナトリアルケミストリで合成された分子、医薬品として利用され得る低分子(例えば、低分子リガンドなど)など)、これらの複合分子が挙げられるがそれらに限定されない。ポリヌクレオチドに対して特異的な因子としては、代表的には、そのポリヌクレオチドの配列に対して一定の配列相同性を(例えば、70%以上の配列同一性)もって相補性を有するポリヌクレオチド、プロモ−タ−領域に結合する転写因子のようなポリペプチドなどが挙げられるがそれらに限定されない。ポリペプチドに対して特異的な因子としては、代表的には、そのポリペプチドに対して特異的に指向された抗体またはその誘導体あるいはその類似物(例えば、単鎖抗体)、そのポリペプチドがレセプタ−またはリガンドである場合の特異的なリガンドまたはレセプタ−、そのポリペプチドが酵素である場合、その基質などが挙げられるがそれらに限定されない。
【0092】
本明細書中で使用される「化合物」は、任意の識別可能な化学物質または分子を意味し、これらには、低分子、ペプチド、タンパク質、糖、ヌクレオチド、または核酸が挙げられるが、これらに限定されず、そしてこのような化合物は、天然物または合成物であり得る。
【0093】
本明細書において「有機低分子」とは、有機分子であって、比較的分子量が小さなものをいう。通常有機低分子は、分子量が約1000以下のものをいうが、それ以上のものであってもよい。有機低分子は、通常当該分野において公知の方法を用いるかそれらを組み合わせて合成することができる。そのような有機低分子は、生物に生産させてもよい。有機低分子としては、例えば、ホルモン、リガンド、情報伝達物質、有機低分子、コンビナトリアルケミストリで合成された分子、医薬品として利用され得る低分子(例えば、低分子リガンドなど)などが挙げられるがそれらに限定されない。
【0094】
(診断、治療、予防)
本明細書において「診断」とは、被験体における疾患の種類、障害の種類と程度、身体状態などに関連する種々のパラメ−タを同定し、そのような疾患、障害、状態の現状、薬物反応性予測、病態変化予測または原因を判定することをいう。本発明の方法、装置、システムを用いることによって、疾患を分析し、疾患の状態と相関付けることができ、そのような情報を用いて、被験体における疾患、障害、状態、投与すべき薬物の種類や量など処置または予防のための処方物または方法などの種々のパラメ−タを選定することができる。
【0095】
本発明の診断方法は、原則として、身体から出たものを利用することができることから、医師などの医療従事者の手を離れて実施することができることから、産業上有用である。
【0096】
本明細書において「ハイリスク」であるとは、ある疾患について用いられるとき、被験体がその疾患に罹患している可能性が高いこと(例えば、約25%、約50%、約75%など)をいう。ハイリスク診断を受けた被験体は、別の診断法によって確定診断を行うことができる。
【0097】
本明細書において「確定診断」とは、ある疾患について用いられるとき、ある被験体がその疾患に罹患していると確定的に診断することをいう。本発明は、早期診断および総合診断として主に使用される。従って、このような確定診断には、ある特定のがんなどに特異的なマーカーおよび/または組織検査などによって、がんの確定診断を行うことができる。
【0098】
本明細書において「治療」とは、ある疾患または障害について、そのような状態になった場合に、そのような疾患または障害の悪化を防止、好ましくは、現状維持、より好ましくは、軽減、さらに好ましくは消長させることをいう。
【0099】
本明細書において「予防」とは、ある疾患または障害について、そのような状態になることを防止、遅延など、および悪化を防ぐことを包含する。
【0100】
本明細書において「指示書」は、本発明を使用する方法または診断する方法などを医師、被検体など投与を行う人、診断する人(被検体本人であり得る)に対して記載したものである。指示書は、診断薬などがキットとして提供される場合、その使用方法を指示するために添付され得る。この指示書は、本発明の診断薬、医薬などを投与する手順を指示する文言が記載されている。この指示書は、本発明が実施される国の監督官庁(例えば、日本であれば厚生労働省、米国であれば食品医薬品局(FDA)など)が規定した様式に従って作成され、その監督官庁により承認を受けた旨が明記される。指示書は、いわゆる添付文書(package insert)であり、通常は紙媒体で提供されるが、それに限定されず、例えば、電子媒体(例えば、インタ−ネットで提供されるホ−ムペ−ジ(ウェブサイト)、電子メ−ル、SMS、PDF文書など)のような形態でも提供され得る。
【0101】
(スクリーニング)
本明細書において「スクリーニング」とは、目的とするある特定の性質をもつ生物、細胞または物質などの標的を、特定の操作/評価方法で多数を含む集団の中から選抜することをいう。スクリーニングのために、本発明の因子(例えば、抗体)、ポリペプチドまたは核酸分子を使用することができる。スクリーニングは、インビトロ、インビボなど実在物質を用いた系を使用してもよく、インシリコ(コンピュ−タを用いた系)の系を用いて生成されたライブラリ−を用いてもよい。本発明では、所望の活性を有するスクリーニングによって得られた化合物もまた、本発明の範囲内に包含されることが理解される。また本発明では、本発明の開示をもとに、コンピュ−タモデリングによる薬物、診断剤、治療薬などが提供されることも企図される。
【0102】
(遺伝子治療)
特定の実施形態において、本発明のタンパク質をコ−ドする核酸配列の正常体または改変体、抗体またはその機能的誘導体をコ−ドする配列を含む核酸は、悪性腫瘍に関連した疾患または障害を処置、阻害または予防するために、遺伝子治療の目的で投与される。遺伝子治療とは、発現されたか、または発現可能な核酸の、被験体への投与により行われる治療をいう。本発明のこの実施形態において、核酸は、それらのコ−ドされたタンパク質を産生し、そのタンパク質は治療効果を媒介する。
【0103】
当該分野で利用可能な遺伝子治療のための任意の方法が、本発明に従って使用され得る。例示的な方法は、遺伝子治療の方法の一般的な概説書である、Goldspiel et al., Clinical Pharmacy 12: 488−505 (1993); Wu and Wu,Biotherapy 3: 87−95 (1991); Tolstoshev, Ann. Rev. Pharmacol. Toxicol. 32: 573−596(1993); Mulligan, Science 260: 926−932 (1993);ならびにMorgan and Anderson, Ann.Rev. Biochem. 62: 191−217 (1993); May, TIBTECH 11(5): 155−215 (1993)に記載されている。遺伝子治療において使用される一般的に公知の組換えDNA技術は、Ausubelら(編),Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, NY (1993); およびKriegler,Gene Transfer and Expression, A Laboratory Manual, Stockton Press, NY (1990)に記載される。
【0104】
(好ましい実施形態の説明)
以下に本発明の好ましい実施形態を説明する。以下に提供される実施形態は、本発明のよりよい理解のために提供されるものであり、本発明の範囲は以下の記載に限定されるべきでないことが理解される。従って、当業者は、本明細書中の記載を参酌して、本発明の範囲内で適宜改変を行うことができることは明らかである。
【0105】
(本発明の新規タンパク質)
本発明のタンパク質は、抗PCNAポリクロ−ナル抗体と特異的に相互作用する、SDS−PAGE上での分子量がPCNAよりも大きなタンパク質(本明細書において、「PCNA関連抗原」ともいう)またはその改変体に関する。ここで、PCNA(増殖細胞核抗原)に対するポリクロ−ナル抗体(米国Santa Cruz)で認識される分子量36000〜43500ダルトン、好ましくは36000〜40000ダルトン、より好ましくは36000〜38000ダルトン、さらに好ましくは約37000ダルトンのタンパク質である。PCNAは、分子量35000〜36000の非ヒストン酸性核タンパク質であり、明らかにSDS−PAGE上での分子量が異なる故、全く同じタンパク質ではないと思われる。
【0106】
本明細書において「PCNA」とは、増殖細胞核抗原(PROLIFERATING CELL NUCLEAR ANTIGEN; PCNA)の略称で、DNAポリメラ−ゼδ補助タンパク質(DNA POLYMERASE DELTA AUXILIARY PROTEIN)とも呼ばれる(生化学68巻、1542−1548(1996)に記載されるように、polδの補助因子として機能する複製タンパク質として知られている)。Travaliらが、1989年に、ヒトPCNA遺伝子全長およびその隣接配列のcDNAを単離した(Travali,S.et al.,J.Biol.Chem.264:7466−7472,1989)。PCNAは、ユビキチン、小ユビキチン関連修飾体(small ubiquitin−related modifier;SUMO)と関連しており、ユビキチンおよびSUMOは、PCNAの改変と競合する。従って、PCNAは、DNA複製および修復の進行に必須の因子であると考えられる。
【0107】
PCNAの配列は、代表的に配列番号1(核酸)および配列番号2(アミノ酸)に記載される。しかし、ポリクロ−ナル抗体で反応する点で、少なくともPCNA関連抗原か、その変異体である可能性が強い。PCNA抗原は、最初、自己免疫疾患である全身性エリテマト−デス(SLE)の被検体の血清中にある抗体と反応する細胞核内抗原として発見された(Miyachi K. et al., J. Immun. 121,2228-2234,1978)。その後、DNA損傷の除去修復(ShivjiM. et al., Cell 69,367-374,1992)や細胞周期の調節機構などへの関与も報告されている(Xiong Cell,505−514,1992)。またPCNAは三量体を形成することにより、多様な機能を持つ分子表面を提供していることが示されているが、他の分子との相互作用については不明であり、腫瘍マーカーとしての有用性も明らかではない(森岡 弘志、生化学 第68巻 第9号 1542−1548,1996)。
【0108】
PCNAについては、以下も参照される。
1. Bravo, R., Exp. Cell Res. 163: 287−293, 1986.
2. Hasan, S. et al., Nature 410: 387−391, 2001.
3. Hoege, C. et al., Nature 419: 135−141, 2002.
4. Ku, D.−H. et al., Genet. 15:297−307, 1989.
5. Mann, M. J. et al., Proc. Nat. Acad. Sci. 92: 4502−4506, 1995.
6. Rao, V. V.N. G. et al., Cell Genet. 56: 169−170, 1991.
7. Stelter, P. et al., Nature 425: 188−191, 2003.
8. Suzuka, I. et al., Proc. Nat. Acad. Sci. 86: 3189−3193, 1989.
9. Taniguchi, Y. et al., Mammalian Genome 7: 906−908, 1996.
10. Travali, S. et al., J. Biol. Chem. 264: 7466−7472, 1989.
11. Webb, G. et al., Genet. 86: 84−86, 1990.
上記PCNA関連抗原は、がん等の悪性腫瘍被検体の血清中に顕著に増殖しているも
ので、その出現頻度が、がん等に特異的であることにより、悪性腫瘍診断における腫
瘍マーカーとしての有用である。このような有用性は、本発明において初めて提供された効果である。
【0109】
(本発明のタンパク質の製造法)
本発明のタンパク質を製造する方法としては、例えば、化学分離精製法や遺伝子組み換え法が挙げられる。
【0110】
化学分離精製法としては、例えば、市販の高速液体クロマトグラフィーおよびイオン交換クロマトグラフィーを利用することができる。その方法は、「日本分析化学関東支部編 高速液体クロマトグラフィーハンドブック、丸善 、1985」に詳細に記載されている。
【0111】
遺伝子組み換え法としては、例えば、本発明におけるタンパク質をコ−ドするDNAをベクタ−に挿入して組み替えベクタ−を構築し、それを宿主に挿入して形質転換体を作製し、その形質転換体から目的のタンパク質を精製する方法がある。
【0112】
本発明のポリペプチドをコ−ドするDNAを組み込んだ組換え体ベクタ−を保有する微生物、動物細胞などに由来する形質転換体を、通常の培養方法に従って培養し、本発明のポリペプチドを生成蓄積させ、本発明の培養物より本発明のポリペプチドを採取することにより、本発明のポリペプチドを製造することができる。
【0113】
本発明の形質転換体を培地に培養する方法は、宿主の培養に用いられる通常の方法に従って行うことができる。大腸菌等の原核生物あるいは酵母等の真核生物を宿主として得られた形質転換体を培養する培地としては、本発明の生物が資化し得る炭素源、窒素源、無機塩類等を含有し、形質転換体の培養を効率的に行える培地であれば天然培地、合成培地のいずれを用いてもよい。
【0114】
ベクタ−としては、例えば、プラスミド、ファ−ジなどが挙げられる。
【0115】
宿主としては、例えば、大腸菌、枯草菌、酵母などが挙げられる。
【0116】
炭素源としては、それぞれの微生物が資化し得るものであればよく、グルコ−ス、フラクト−ス、スクロ−ス、これらを含有する糖蜜、デンプンあるいはデンプン加水分解物等の炭水化物、酢酸、プロピオン酸等の有機酸、エタノ−ル、プロパノ−ル等のアルコ−ル類を用いることができる。
【0117】
窒素源としては、アンモニア、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、リン酸アンモニウム等の各種無機酸または有機酸のアンモニウム塩、その他含窒素物質、ならびに、ペプトン、肉エキス、酵母エキス、コ−ンスチ−プリカ−、カゼイン加水分解物、大豆粕および大豆粕加水分解物、各種発酵菌体およびその消化物等を用いることができる。
【0118】
無機塩としては、リン酸第一カリウム、リン酸第二カリウム、リン酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム、硫酸第一鉄、硫酸マンガン、硫酸銅、炭酸カルシウム等を用いることができる。培養は、振盪培養または深部通気攪拌培養等の好気的条件下で行う。
【0119】
培養温度は15〜40℃がよく、培養時間は、通常5時間〜7日間である。培養中pHは、3.0〜9.0に保持する。pHの調整は、無機あるいは有機の酸、アルカリ溶液、尿素、炭酸カルシウム、アンモニア等を用いて行う。また培養中必要に応じて、アンピシリンまたはテトラサイクリン等の抗生物質を培地に添加してもよい。
【0120】
プロモ−タ−として誘導性のプロモ−タ−を用いた発現ベクタ−で形質転換した微生物を培養するときには、必要に応じてインデュ−サ−を培地に添加してもよい。例えば、lacプロモ−タ−を用いた発現ベクタ−で形質転換した微生物を培養するときにはイソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド等を、trpプロモ−タ−を用いた発現ベクタ−で形質転換した微生物を培養するときにはインド−ルアクリル酸等を培地に添加してもよい。遺伝子を導入した植物の細胞または器官は、ジャ−ファ−メンタ−を用いて大量培養することができる。培養する培地としては、一般に使用されているムラシゲ・アンド・スク−グ(MS)培地、ホワイト(White)培地、またはこれら培地にオ−キシン、サイトカイニン等、植物ホルモンを添加した培地等を用いることができる。
【0121】
例えば、動物細胞を用いる場合、本発明の細胞を培養する培地は、一般に使用されているRPMI1640培地[The Journal of the American Medical Association,199,519(1967)]、EagleのMEM培地[Science,122,501(1952)]、DMEM培地[Virology,8,396(1959)]、199培地[Proceedings of the Society for the Biological Medicine,73,1(1950)]またはこれら培地にウシ胎児血清等を添加した培地等が用いられる。
【0122】
培養は、通常pH6〜8、25〜40℃、5%CO存在下等の条件下で1〜7日間行う。また培養中必要に応じて、カナマイシン、ペニシリン、ストレプトマイシン等の抗生物質を培地に添加してもよい。
【0123】
本発明のポリペプチドをコ−ドする核酸配列で形質転換された形質転換体の培養物から、本発明のポリペプチドを単離または精製するためには、当該分野で周知慣用の通常の酵素の単離または精製法を用いることができる。例えば、本発明のポリペプチドが本発明のポリペプチド製造用形質転換体の細胞外に本発明のポリペプチドが分泌される場合には、その培養物を遠心分離等の手法により処理し、可溶性画分を取得する。その可溶性画分から、溶媒抽出法、硫安等による塩析法脱塩法、有機溶媒による沈澱法、ジエチルアミノエチル(DEAE)−Sepharose、DIAION HPA−75(三菱化学)等樹脂を用いた陰イオン交換クロマトグラフィー法、S−Sepharose FF(Pharmacia)等の樹脂を用いた陽イオン交換クロマトグラフィー法、ブチルセファロ−ス、フェニルセファロ−ス等の樹脂を用いた疎水性クロマトグラフィー法、分子篩を用いたゲルろ過法、アフィニティ−クロマトグラフィー法、クロマトフォ−カシング法、等電点電気泳動等の電気泳動法等の手法を用い、精製標品を得ることができる。
【0124】
本発明のポリペプチドが本発明のポリペプチド製造用形質転換体の細胞内に溶解状態で蓄積する場合には、培養物を遠心分離することにより、培養物中の細胞を集め、その細胞を洗浄した後に、超音波破砕機、フレンチプレス、マントンガウリンホモジナイザ−、ダイノミル等により細胞を破砕し、無細胞抽出液を得る。その無細胞抽出液を遠心分離することにより得られた上清から、溶媒抽出法、硫安等による塩析法脱塩法、有機溶媒による沈澱法、ジエチルアミノエチル(DEAE)−Sepharose、DIAION HPA−75(三菱化学)等樹脂を用いた陰イオン交換クロマトグラフィー法、S−Sepharose FF(Pharmacia)等の樹脂を用いた陽イオン交換クロマトグラフィー法、ブチルセファロ−ス、フェニルセファロ−ス等の樹脂を用いた疎水性クロマトグラフィー法、分子篩を用いたゲルろ過法、アフィニティ−クロマトグラフィー法、クロマトフォ−カシング法、等電点電気泳動等の電気泳動法等の手法を用いることによって、精製標品を得ることができる。
【0125】
本発明のポリペプチドが細胞内に不溶体を形成して発現した場合は、同様に細胞を回収後破砕し、遠心分離を行うことにより得られた沈澱画分より、通常の方法により本発明のポリペプチドを回収後、そのポリペプチドの不溶体をポリペプチド変性剤で可溶化する。この可溶化液を、ポリペプチド変性剤を含まないあるいはポリペプチド変性剤の濃度がポリペプチドが変性しない程度に希薄な溶液に希釈、あるいは透析し、本発明のポリペプチドを正常な立体構造に構成させた後、上記と同様の単離精製法により精製標品を得ることができる。
【0126】
また、通常のタンパク質の精製方法[J. Evan. Sadler et al.: Methods in Enzymology, 83, 458]に準じて精製できる。また、本発明のポリペプチドを他のタンパク質との融合タンパク質として生産し、融合したタンパク質に親和性をもつ物質を用いたアフィニティ−クロマトグラフィーを利用して精製することもできる[山川彰夫,実験医学(ExperimentalMedicine),13,469−474(1995)]。例えば、Loweらの方法[Proc. Natl. Acad. Sci., USA, 86, 8227−8231(1989), Genes Develop., 4, 1288 (1990)]に記載の方法に準じて、本発明のポリペプチドをプロテインAとの融合タンパク質として生産し、イムノグロブリンGを用いるアフィニティ−クロマトグラフィーにより精製することができる。
【0127】
また、本発明のポリペプチドをFLAGペプチドとの融合タンパク質として生産し、抗FLAG抗体を用いるアフィニティ−クロマトグラフィーにより精製することができる[Proc. Natl. Acad. Sci., USA, 86, 8227 (1989), Genes Develop., 4,1288 (1990)]。
【0128】
さらに、本発明のポリペプチド自身に対する抗体を用いたアフィニティ−クロマトグラフィーで精製することもできる。本発明のポリペプチドは、公知の方法[J. Biomolecular NMR, 6, 129−134, Science, 242, 1162−1164, J.Biochem., 110, 166−168 (1991)]に準じて、in vitro転写・翻訳系を用いてを生産することができる。
【0129】
上記で取得されたポリペプチドのアミノ酸情報を基に、Fmoc法(フルオレニルメチルオキシカルボニル法)、tBoc法(t−ブチルオキシカルボニル法)等の化学合成法によっても本発明のポリペプチドを製造することができる。また、Advanced ChemTech、Applied Biosystems、Pharmacia Biotech、Protein Technology Instrument、Synthecell−Vega、PerSeptive、島津製作所等のペプチド合成機を利用し化学合成することもできる。
【0130】
精製した本発明のポリペプチドの構造解析は、タンパク質化学で通常用いられる方法、例えば遺伝子クロ−ニングのためのタンパク質構造解析(平野久著、東京化学同人発行、1993年)に記載の方法により実施可能である。本発明の新規ps20様ポリペプチドの生理活性は、公知の測定法[Cell, 75, 1389 (1993)、J. Cell Bio. l146, 233 (1999)、Cancer Res. 58,1238 (1998), Neuron 17, 1157 (1996), Science 289, 1197(2000)]に準じて測定することができる。
【0131】
本発明ポリペプチドのアミノ酸の欠失、置換もしくは付加は、周知技術である部位特異的変異誘発法により実施することができる。かかる1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加は、Molecular Cloning, A Laboratory Manual, Second Edition, Cold SpringHarbor Laboratory Press(1989)、Current Protocols in Molecular Biology,Supplement 1−38, John Wiley & Sons (1987−1997)、Nucleic Acids Research, 10,6487(1982)、Proc. Natl. Acad. Sci., USA, 79, 6409 (1982)、Gene, 34, 315(1985)、NucleicAcids Research, 13, 4431 (1985), Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 82, 488 (1985),Proc. Natl. Acad. Sci., USA, 81, 5662 (1984), Science, 224, 1431 (1984)、PCT WO85/00817 (1985), Nature, 316, 601 (1985)等に記載の方法に準じて調製することができる。
【0132】
(本発明のタンパク質に特異的に相互作用する因子)
別の局面において、本発明は、抗PCNAポリクロ−ナル抗体と特異的に相互作用する、SDS−PAGE上での分子量がPCNAよりも大きなタンパク質に特異的に相互作用する、因子を提供する。この因子は、核酸分子、ポリペプチド、脂質、糖鎖、有機低分子およびそれらの複合分子などであり得るがそれらに限定されない。好ましくは、抗体またはその誘導体であり得る。抗体が好ましい。特にモノクロ−ナル抗体がより好ましく、そのモノクロ−ナル抗体は、PCNAとは交差反応しないことがさらに好ましい。PCNAと交差反応しない抗体を使用することによって、ドットブロットなどで簡便にがんの診断を行うことができるからであるがそれらに限定されない。
【0133】
従って、本発明の因子は、プロ−ブとして使用され得る。そのようなプロ−ブは、免疫反応を用いたアッセイにおいて有用である。
【0134】
1つの実施形態において、本発明の因子は、標識されているかまたは標識され得ることが好ましい。アッセイにおいて、使用することができるからである。標識され得るとは、例えば、ある因子に付加することで別の第二の因子を使用することによってその因子の存在を検出することができるような物質をいうことが理解される。標識には、蛍光、燐光、化学発光、放射能、酵素基質反応および抗原抗体反応などのメカニズムを用いることができることが理解される。
【0135】
別の局面において、本発明は、本発明の因子(好ましくは抗体)を生産するハイブリド−マを提供する。ハイブリド−マの生産法は、本明細書において以下に詳述されるように、当該分野において周知の技法を用いることができることが理解される。
【0136】
本発明のポリペプチドを認識する抗体の作製もまた当該分野において周知である。例えば、ポリクロ−ナル抗体の作製は、取得したポリペプチドの全長または部分断片精製標品、あるいは本発明のタンパク質の一部のアミノ酸配列を有するペプチドを抗原として用い、動物に投与することにより行うことができる。
【0137】
本発明の因子の代表的な例である抗体を生産する場合、投与する動物として、ウサギ、ヤギ、ラット、マウス、ハムスタ−等を用いることができる。その抗原の投与量は動物1匹当たり50〜100μgが好ましい。ペプチドを用いる場合は、ペプチドをスカシガイヘモシアニン(keyhole limpet haemocyanin)またはウシチログロブリン等のキャリアタンパク質に共有結合させたものを抗原とするのが望ましい。抗原とするペプチドは、ペプチド合成機で合成することができる。その抗原の投与は、1回目の投与の後1〜2週間おきに3〜10回行う。各投与後、3〜7日目に眼底静脈叢より採血し、その血清が免疫に用いた抗原と反応することを酵素免疫測定法[酵素免疫測定法(ELISA法):医学書院刊 1976年、Antibodies− A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Lavoratory (1988)]等で確認することができる。
【0138】
免疫に用いた抗原に対し、その血清が充分な抗体価を示した非ヒト哺乳動物より血清を取得し、その血清より、周知技術を用いてポリクロ−ナル抗体を分離、精製することができる。モノクロ−ナル抗体の作製もまた当該分野において周知である。抗体産性細胞の調製のために、まず、免疫に用いた本発明のポリペプチドの部分断片ポリペプチドに対し、その血清が十分な抗体価を示したラットを抗体産生細胞の供給源として使用し、骨髄腫細胞との融合により、ハイブリド−マの作製を行う。その後、酵素免疫測定法になどより、本発明のポリペプチドの部分断片ポリペプチドに特異的に反応するハイブリド−マを選択する。このようにして得たハイブリド−マから産生されたモノクロ−ナル抗体は種々の目的に使用することができる。
【0139】
本発明の抗体は、抗体の合成のために当該分野で公知の任意の方法によって、化学合成によって、または、好ましくは、組換え発現技術によって産生され得る。
【0140】
本発明の抗体、またはそのフラグメント、誘導体もしくはアナログ(例えば、本発明の抗体の重鎖もしくは軽鎖または本発明の単鎖抗体)の組換え発現は、その抗体をコ−ドするポリヌクレオチドを含有する発現ベクタ−の構築を必要とする。一旦、本発明の抗体分子または抗体の重鎖もしくは軽鎖、あるいはそれらの部分(好ましくは、重鎖または軽鎖の可変ドメインを含有する)をコ−ドするポリヌクレオチドが得られると、抗体分子の産生のためのベクタ−は、当該分野で周知の技術を用いる組換えDNA技術によって生成され得る。従って、抗体をコ−ドするヌクレオチド配列を含有するポリヌクレオチドの発現によってタンパク質を調製するための方法は、本明細書に記載される。当業者に周知の方法は、抗体をコ−ドする配列ならびに適切な転写制御シグナルおよび翻訳制御シグナルを含有する発現ベクタ−の構築のために使用され得る。これらの方法としては、例えば、インビトロの組換えDNA技術、合成技術、およびインビボの遺伝子組換えが挙げられる。従って、本発明は、プロモ−タ−に作動可能に連結された、本発明の抗体分子、あるいはその重鎖もしくは軽鎖、または重鎖もしくは軽鎖の可変ドメインをコ−ドするヌクレオチド配列を含む、複製可能なベクタ−を提供する。このようなベクタ−は、抗体分子の定常領域(例えば、PCT公開 WO86/05807;PCT公開 WO89/01036;および米国特許第5,122,464号を参照)をコ−ドするヌクレオチド配列を含み得、そしてこの抗体の可変ドメインは、重鎖または軽鎖の全体の発現のためにこのようなベクタ−にクロ−ニングされ得る。
【0141】
この発現ベクタ−は、従来技術によって宿主細胞へと移入され、次いで、このトランスフェクトされた細胞は、本発明の抗体を産生するために、従来技術によって培養される。従って、本発明は、異種プロモ−タ−に作動可能に連結された、本発明の抗体、あるいはその重鎖もしくは軽鎖、または本発明の単鎖抗体をコ−ドするポリヌクレオチドを含む宿主細胞を含む。二重鎖抗体の発現についての好ましい実施形態において、重鎖および軽鎖の両方をコ−ドするベクタ−は、免疫グロブリン分子全体の発現のために宿主細胞中に同時発現され得る。
【0142】
このような抗体は、例えば、本発明のポリペプチドの免疫学的検出方法に使用することができ、本発明の抗体を用いる本発明のポリペプチドの免疫学的検出法としては、必要に応じてマイクロタイタ−プレ−トを用いたELISA法、蛍光抗体法、ウェスタンブロット法、免疫組織染色法等を挙げることができる。
【0143】
また、本発明ポリペプチドの免疫学的定量方法にも使用することができる。本発明ポリペプチドの定量方法としては、液相中で本発明のポリペプチドと反応する抗体のうちエピト−プが異なる2種類のモノクロ−ナル抗体を用いたサンドイッチELISA法、126I等の放射性同位体で標識した本発明のタンパク質と本発明のタンパク質を認識する抗体とを用いるラジオイムノアッセイ法等を挙げることができる。
【0144】
本発明ポリペプチドのmRNAの定量方法もまた、当該分野において周知である。例えば、本発明のポリヌクレオチドあるいはDNAより調製した上記オリゴヌクレオチドを用い、ノ−ザンハイブリダイゼ−ション法またはPCR法により、本発明のポリペプチドをコ−ドするDNAの発現量をmRNAレベルで定量することができる。このような技術は、当該分野において周知であり、本明細書において列挙した文献にも記載されている。
【0145】
当該分野で公知の任意の方法によって、これらのポリヌクレオチドが得られ得、そしてこれらポリヌクレオチドのヌクレオチド配列が、決定され得る。例えば、抗体のヌクレオチド配列が公知である場合、この抗体をコ−ドするポリヌクレオチドは、化学的に合成されたオリゴヌクレオチドからアセンブルされ得(例えば、Kutmeier et al.、BioTechniques 17:242(1994)に記載されるように)、これは、手短に言えば、抗体をコ−ドする配列の部分を含むオ−バ−ラップするヌクレオチドの合成、それらのオリゴヌクレオチドのアニ−リングおよび連結、ならびに次いでPCRによるこの連結されたオリゴヌクレオチドの増幅を含む。
【0146】
抗体をコ−ドするポリヌクレオチドは、適切な供給源由来の核酸から作製することができる。ある抗体をコ−ドする核酸を含むクロ−ンは入手不可能だが、その抗体分子の配列が既知である場合、免疫グロブリンをコ−ドする核酸は、化学的に合成され得るか、あるいは適切な供給源(例えば、抗体cDNAライブラリ−または抗体を発現する任意の組織もしくは細胞(例えば、本発明の抗体の発現のために選択されたハイブリド−マ細胞)から生成されたcDNAライブラリ−、またはそれから単離された核酸(好ましくはポリA+RNA))から、例えば、抗体をコ−ドするcDNAライブラリ−からのcDNAクロ−ンを同定するために、その配列の3’末端および5’末端にハイブリダイズ可能な合成プライマ−を使用するPCR増幅によって、またはその特定の遺伝子配列に特異的なオリゴヌクレオチドプロ−ブを使用するクロ−ニングによって得ることができる。PCRによって作製された増幅された核酸は、当該分野で周知の任意の方法を用いて、複製可能なクロ−ニングベクタ−にクロ−ニングされ得る。
【0147】
一旦、抗体のヌクレオチド配列および対応するアミノ酸配列が決定されると、抗体のヌクレオチド配列は、ヌクレオチド配列の操作について当該分野で周知の方法(例えば、組換えDNA技術、部位指向性変異誘発、PCRなど(例えば、Sambrook et al., 前出およびAusubel et al.編、前出に記載の技術を参照。これらは両方がその全体において本明細書に参考として援用される。))を用いて操作され、例えば、アミノ酸の置換、欠失、および/または挿入を生成するように異なるアミノ酸配列を有する抗体を作製し得る。
【0148】
特定の実施形態において、重鎖可変ドメインおよび/または軽鎖可変ドメインのアミノ酸配列は、相補性決定領域(CDR)の配列の同定のために、当該分野において周知の方法によって(例えば、配列超可変性の領域を決定するために、他の重鎖可変領域および軽鎖可変領域の既知のアミノ酸配列と比較することによって)調べられ得る。慣用的な組換えDNA技術を用いて、1つ以上のCDRが、前述のようにフレ−ムワ−ク領域内に(例えば、非ヒト抗体をヒト化するために、ヒトフレ−ムワ−ク領域中に)挿入され得る。このフレ−ムワ−ク領域は天然に存在し得るか、またはコンセンサスフレ−ムワ−ク領域であり得、そして好ましくはヒトフレ−ムワ−ク領域であり得る(例えば、列挙したヒトフレ−ムワ−ク領域については、Chothiaら、J. Mol. Biol. 278: 457−479 (1998)を参照)。好ましくは、フレ−ムワ−ク領域およびCDRの組み合わせによって生成されたポリヌクレオチドは、本発明のポリペプチドに特異的に結合する抗体をコ−ドする。好ましくは、上記に議論されるように、1つ以上のアミノ酸置換は、フレ−ムワ−ク領域内で作製され得、そして好ましくは、そのアミノ酸置換は、抗体のその抗原への結合を改善する。さらに、このような方法は、1つ以上の鎖内ジスルフィド結合が欠如した抗体分子を生成するように、鎖内ジスルフィド結合に関与する1つ以上の可変領域のシステイン残基のアミノ酸置換または欠失を作製するために使用され得る。ポリヌクレオチドへの他の変更は、本発明によって、および当該分野の技術において包含される。
【0149】
さらに、適切な抗原特異性のマウス抗体分子由来の遺伝子を、適切な生物学的活性のヒト抗体分子由来の遺伝子と共にスプライシングさせることによって、「キメラ抗体」の産生のために開発された技術(Morrison et al., Proc. Natl. Acad. Sci. 81: 851−855 (1984);Neuberger et al., Nature 312: 604−608 (1984); Takeda et al., Nature 314: 452−454(1985))が使用され得る。上記のように、キメラ抗体は、異なる部分が異なる動物種に由来する分子であり、このような分子は、マウスmAbおよびヒト免疫グロブリンの定常領域由来の可変領域を有する(例えば、ヒト化抗体)。
【0150】
単鎖抗体を製造する場合、単鎖抗体の産生に関する記載された公知の技術(米国特許第4,946,778号;Bird, Science 242: 423−42 (1988); Huston etal., Proc. Natl. Acad.Sci. USA 85: 5879−5883 (1988); およびWard et al., Nature 334: 544−54 (1989))が、利用され得る。単鎖抗体は、Fv領域の重鎖フラグメントおよび軽鎖フラグメントがアミノ酸架橋を介して連結されれることによって形成され、単鎖ポリペプチドを生じる。E.coliにおける機能性Fvフラグメントのアセンブリのための技術もまた、使用され得る(Skerraet al., Science 242: 1038−1041 (1988))。
【0151】
(診断組成物)
別の局面において、本発明は、抗PCNAポリクロ−ナル抗体と特異的に相互作用する、SDS−PAGE上での分子量がPCNAよりも大きなタンパク質を含む、悪性腫瘍の診断のための組成物を提供する。このようなタンパク質を含む、組成物は、従来知られておらず、しかもこのタンパク質は、悪性腫瘍被検体において普遍的に発現が見られ、正常被検体には見られないことから、診断マーカーとしての有用性は高いことが理解される。このような組成物は、悪性腫瘍を診断する際に診断用試薬の標準物質として用いることができる。代表的には、ラジオイムノアッセイ(RIA)またはELISA法などを用いることができる。この場合このタンパク質に対して特異的な因子として抗体を作製し、その抗体を用いて抗原を測定することで判断することができる。その測定法としては、本明細書に記載されるような任意の方法を用いることができる。本発明のタンパク質は、本明細書において(本発明の新規タンパク質)の節において説明されるような任意の形態を採ることができるが理解される。
【0152】
他の局面において、本発明は、抗PCNAポリクロ−ナル抗体と特異的に相互作用する、SDS−PAGE上での分子量がPCNAよりも大きなタンパク質に対して特異的に相互作用する因子を含む、悪性腫瘍の診断のための組成物を提供する。本発明の因子を含む組成物は、本発明のタンパク質を検出することによって、悪性腫瘍の診断に用いることができる。そのような検出は、任意の免疫学的手法を用いることができ、例えば、ELISA、RIA、EIA、RIBAなどが用いられ得るがそれらに限定されない。従って、本発明の因子は、特異性が高いことが有利である。特に、PCNAとは識別可能に反応することが好ましい。分子量で分別する必要がなくなるからである。
【0153】
本発明の因子は、本明細書において(本発明の新規タンパク質に特異的に相互作用する因子)の節において説明されるような任意の形態を採ることができることが理解される。
【0154】
(がん等の測定法)
別の局面において、本発明は、被検体の悪性腫瘍の診断のための方法であって、(A)該被検体からの試料を得る工程;(B)該試料と、抗PCNAポリクロ−ナル抗体と特異的に相互作用する、SDS−PAGE上での分子量がPCNAよりも大きなタンパク質に特異的に相互作用する因子とを混合する工程;(C)該試料と該因子とが相互作用した量を測定する工程;(D)該相互作用した量が健常人の量よりも多いかどうかを判定する工程、を包含する、方法を提供する。ここで、悪性腫瘍は、胆管がん、メラノ−マ、肺がん、胃がん、腺がん、扁平上皮がん、腺扁平上皮がん、胸腺がん、リンパ腫、肉腫、肝がん、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、白血病、子宮がん、乳がん(胸部がん)、前立腺がん、卵巣がん、膵臓がん、大腸がん(結腸直腸がん)、多発性骨髄腫、神経芽細胞腫、膀胱がん、子宮頸部がん、皮膚がん、乳がん、食道がん、腎腫、脳腫瘍、骨肉腫、ユ−イング肉腫および悪性腺維性組織球腫などの任意の悪性腫瘍を診断することができることが理解される。
【0155】
好ましい実施形態では、この悪性腫瘍は、胆管がん、前立腺がん、胃がん、乳がん、食道がん、肝がん、大腸がん、骨肉腫、ユ−イング肉腫および悪性腺維性組織球腫からなる群より選択される少なくとも1つの腫瘍を含む。より好ましくは、この悪性腫瘍は、胆管がん、前立腺がん、胃がん、乳がん、食道がん、肝がん、大腸がん、骨肉腫、ユ−イング肉腫および悪性腺維性組織球腫からなる群より選択されるすべての腫瘍を含む。このような多種類および多岐にわたる悪性腫瘍をすべて網羅的に診断・検出できるマーカーは従来存在せず、本発明は、網羅的ながんマーカー、悪性腫瘍のマーカーを提供するという点で画期的な効果を奏するといえる。
【0156】
このようながん等の検出法は、代表的には、ウエスタンブロッティング法(Harlow et alCol dSpring Harbor Lab,. 471−510,1988)で行うこ とができる。例えば、検体を電気泳動・分離し(電気泳動法)、検出しようとするタンパク質に特異的な標識物で標識された抗体を利用し、その標識を利用して検体中のタンパク質を測定する方法(免疫測定法)を利用することができる。免疫測定法としては、標識物が酵素である酵素免疫測定法、標識物が放射性同位元素である放射免疫測定法等を利用することができる。なお、本発明において、「検出」は、定性的な測定だけでなく、「測定」等の定量的な測定も含む。
【0157】
別の実施形態において、本発明では、酵素免疫測定法を利用して本タンパク質を測定する方法としては、例えば、本タンパク質に対するモノクロ−ナル抗体を、動物の抗体産生細胞とミエロ−マ細胞との細胞融合法により作製し、このモノクロ−ナル抗体を用いた免疫抗原抗体法により行うことができる。例えば、モノクロ−ナル抗体の一つを担体に固定し、この担体に検体を添加し、酵素標識化モノクロ−ナル抗体を添加し、洗浄し、基質を添加し、前記酵素と基質を反応させ、その反応による発光、発色等を測定する方法を利用することができる。
【0158】
担体としては、例えば、マイクロタイタ−プレ−トやラテックス粒子等が使用できる。
【0159】
モノクロ−ナル抗体を担体に固定する方法としては、例えば、ビオチンとアビジン(またはストレプトアビジン)を利用する結合方法等が挙げられる。ビオチンとアビジン(またはストレプトアビジン)を使用する固定化方法の一般的手法は、例えば、「石川栄治著、超高感度酵素免疫測定法、学会出版センタ−、1993年」に記載されている。
【0160】
本発明の検出・診断において使用される検体としては、例えば、被検体の血清、尿、汗、リンパ液、血漿、血液、唾液等を利用することができる。洗浄に用いる洗浄液としては、例えば、界面活性剤を含むリン酸緩衝液が利用できる。リン酸緩衝液としては、例えば、ダルベッコPBS、例えばMgを使用することができる。
【0161】
基質としては、例えば、酵素がパ−オキシダ−ゼである場合は、3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン(Sigma製、商品名:TMB)を使用することができる。
【0162】
本発明の、がん等を測定する方法としては、例えば、血清として、健常人の血清と被検体の血清を使用し、被検体血清中の標的タンパク質を測定し、結果を比較する方法を利用することができる。
【0163】
健常人の血清には、本タンパク質は含まれない。従って、健常人の血清を用いた場合、本発明のタンパク質は検出されない。ところが、がん等悪性腫瘍被検体の血清中には本タンパク質が高率に発現する。従って、被検体の血清を使用して見られた本タンパク質の発現をもって、被検体ががん等の悪性腫瘍である可能性があると診断することができる。また、実際に、どこの臓器の悪性腫瘍であるか否かを診断するに際しては、公知の他の臓器特異的ながん診断法と併用し、その結果をも考慮した上で診断することが好ましい。
【0164】
(診断剤/キット)
別の局面において、本発明は、被検体の悪性腫瘍の診断のためのキットであって、(A)抗PCNAポリクロ−ナル抗体と特異的に相互作用する、SDS−PAGE上での分子量がPCNAよりも大きなタンパク質を検出する手段、を備え、ここで、該タンパク質の発現の出現または増加は、該被検体が悪性腫瘍に罹患するかまたは罹患している疑いが高いことを示す、キットを提供する。ここで、本発明のタンパク質を検出する手段は、通常本発明の因子を使用する。そのような因子を用いて、必要に応じて標識などを用いることによって、本発明のタンパク質を検出することができる。アッセイによって検出されたタンパク質量に基づいて、本発明のタンパク質がどの程度発現し、正常値と比較することによって、悪性腫瘍の有無の診断に使用することができることが理解される。このようなキットは、本明細書において診断剤と称することもある。
【0165】
本発明の診断剤は、分子量36000より大きい(例えば、36000〜43500ダルトン、好ましくは、36000〜40000ダルトン、より好ましくは、36000〜38000ダルトン、さらに好ましくは37000ダルトンの)タンパク質(PCNA関連抗原、または変異抗原)を有効成分とするものであり、例えば、本発明のタンパク質に対するモノクロ−ナル抗体が固定化された担体等が挙げられ、また、担体のほかに酵素標識モノクロ−ナル抗体、基質、防腐剤、安定化剤、増感剤等が同封されたキット等が挙げられる。
【0166】
このタンパク質は固形がんのみならず、骨肉腫および悪性線維性組織球腫といった非上皮性由来の悪性腫瘍の被検体血清中に著明に増加する。しかし、対照群としての健常人の血清中ではまったく発現していない点を考慮すると、本タンパク質の発現をマーカーにした検査の臨床生化学的および臨床病理学的診断法としての意義は極めて大きい。
【0167】
従来のがん診断マーカーは、ほとんどが一つの器官・臓器にだけ対応することが多く、このように一度の検査でほぼ全身の悪性腫瘍の有無のモニタリングができる診断技術の開発の意義は極めて大きく、第一次スクリーニングとして、日常の健康診断への適用が考えられる。
【0168】
以下に、実施例に基づいて本発明を説明するが、以下の実施例は、例示の目的のみに提供される。従って、本発明の範囲は、上記発明の詳細な説明にも下記実施例にも限定されるものではなく、請求の範囲によってのみ限定される。
【実施例】
【0169】
以下に示した実施例において使用した試薬は、特に言及しない限り和光純薬、Sigmaから得た。動物の飼育は、National Society for Medical Researchが作成した「Principles of Laboratory Animal Care」およびInstitute of Laboratory Animal Resourceが作成、National Institute of Healthが公表した「Guide for the Care and Use of Laboratory Animals」(NIH Publication, No. 86−23, 1985,改訂)に遵って、動物愛護精神に則って行った。ヒトを対象とする場合は、事前に同意を得た上で実験を行った。
【0170】
(実施例1:がん等の測定)
本実施例では、被検体として、ボランティアで集めて正常人血清とインフォームドコンセントが得られたがん等の悪性腫瘍の患者血清を採用した。血清はそのまま30倍希釈で用いた。を採用して、がん等の悪性腫瘍のアッセイを行った。
【0171】
被検体血清を、泳動およびトランスファーについて、製造業者であるBiorad社のマニュアルの通りに、SDS−PAGE(ポリアクリルアミドゲル電気泳動法)で電気泳動し、ナイロン膜(Millipore社:Bedford, MA, 01730, USA)に転写した。ブロックエ−ス(商品名 大日本製薬、大阪)により膜を4℃で一晩ブロッキングし、市販のウサギ抗PCNAポリクロ−ナル抗体(FL−261:sc−7907;Santa Cruz Biotechnology,Inc.)を室温で一時間反応した。PBS・0.1% Tween−20(界面活性剤)(Nacalai tesque, Kyoto, Japan)で、5分間各5回洗浄した。この後、HRPO(hoese radish peroxydase)標識抗ウサギIgG(血清)(Goat anti−rabbit IgG−HRP(Santa Cruz Biotechnoloty Inc 2145 Delaware Avenue, Santa Cruz, Ca, 95060, USA)を加え、室温で一時間反応させた。そして、10mM Tris−HCL(pH7.4)−0.14M NaCl−0.1% Tween20(緩衝液)で、5分間それぞれ5回洗浄した。続いて、10mMTris−HCL(pH7.4)で5分間それぞれ2回洗浄した。市販のECL試薬により発色しX線フィルムにより感光をしてSDS−PAGE上での分子量が36000ダルトンより大きく43500より小さな、代表的には約37000ダルトンの反応線の発現をもって陽性とした(図1)。抗体としては、同じSanta Cruz Biotechnologyから販売されるPCNA(C−20):sc−9857;フナコシから販売されるMS−106−P0、MS−106−R7などのカタログ番号のものを用いても同様に検出することができる。
【0172】
結果を以下の表に示す。
【0173】
(表)
固形がん
胆管がん 1/2 2検体中1発現例
前立腺がん 2/2 2検体中2発現例
胃がん 3/4 4検体中3発現例
乳がん 7/10 10検体中7発現例
食道がん 12/18 18検体中12発現例
肝がん 2/4 4検体中2発現例
大腸がん 4/4 4検体中4発現例
小計 31/44 44検体中31発現例
肉腫
骨肉腫 2/3 3検体中2発現例
悪性腺維性組織球腫 3/3 3検体中3発現例
小計 5/7 7検体中5発現例

合計 36/51 51検体中36発現例

健常人 0/30 30検体中発現例なし

表からも明らかなように、このタンパク質は固形がんのみならず、骨肉腫、悪性線維性組織球腫といった非上皮性由来の悪性腫瘍の被検体血清中に著明に増加する。しかし、対照群としての健常人の血清中ではまったく発現していない点を考慮すると、本タンパク質の発現をマーカーにした検査の臨床生化学的および臨床病理学的診断法としての意義は極めて大きい。従来のがん診断マーカーはほとんどが一つの器官・臓器にだけ対応することが多く、このように一度の検査でほぼ全身の悪性腫瘍の有無のモニタリングができる診断技術の開発の意義は極めて大きく、第一次スクリーニングとして、日常の健康診断への適用が考えられる。
【0174】
(実施例2:本発明のタンパク質の精製)
ウサギ胸腺のアセトンパウダーを4℃で一晩攪拌した。遠心分離後、上清をウエスタンブロッティング法でアプライしたところ、がん等悪性腫瘍被検体血清中に発現した分子量36000〜43500ダルトン(およそ37000ダルトン付近)のタンパク質と同じ分子量を持ち、かつ、抗PCNA抗体で陽性のタンパク質を見出すことができた。これをさらに高速液体クロマトグラフィーおよびイオン交換クロマトグラフィーにより精製を行うことで、純度の極めて高いタンパク質が得られるものと思われる。この分子量36000〜43500ダルトン(およそ37000ダルトン付近)のタンパク質は、この診断用試薬の標準物質となるもので、量産化から得られる利益は多大である。このタンパク質は悪性腫瘍に産生される物質ではあるが、ウサギ胸腺から、この分子量を指標に常時えられる物質であり、悪性腫瘍細胞から偶発的、限定的かつ非目的的な手段を選ぶ必要はない。それ故、本発明は、計画的かつ効果的な手段により、かなりの臨床応用が可能となる。
【0175】
(実施例3:本発明のタンパク質に特異的な抗体の産生)
次に、PCNAには相互作用しないが、本発明のタンパク質に相互作用する抗体を作製する。このような抗体は、このタンパク質を精製し、これを用いてウサギまたはラットなどの動物を免疫し、その後に得られた抗体のうち、PCNAとは相互作用しない系統のものを選択することによって作製することができる。従って、このような抗体を用いることによって、ドットブロットなどの方法で分子量による分離を行うことなく、がん等の診断を行うことができる。
【0176】
以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。本明細書において引用した特許、特許出願および文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。
【産業上の利用可能性】
【0177】
本発明によって、簡便な方法で悪性腫瘍を網羅的に診断することができる。したがって、本発明の産業上の利用は、例えば、医薬品業界において見出される。
【図面の簡単な説明】
【0178】
【図1】図1は、種々のがん患者からのサンプルを用いて電気泳動後、抗PCNA抗体を用いてウェスタンブロット実験を行った結果である。
【配列表フリーテキスト】
【0179】
(配列表の説明)
配列番号1は、PCNAの核酸配列である。
配列番号2は、PCNAのアミノ酸配列である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗PCNAポリクロ−ナル抗体と特異的に相互作用する、SDS−PAGE上での分子量がPCNAよりも大きなタンパク質またはその改変体。
【請求項2】
前記分子量は、36000ダルトンより大きく、43500ダルトンより小さい、請求項1に記載のタンパク質。
【請求項3】
前記分子量は、36000ダルトンより大きく、40000ダルトンより小さい、請求項1に記載のタンパク質。
【請求項4】
前記分子量は、36000ダルトンより大きく、38000ダルトンより小さい、請求項1に記載のタンパク質。
【請求項5】
前記PCNAは、配列番号2に示すアミノ酸配列を有する、請求項1に記載のタンパク質。
【請求項6】
抗PCNAポリクロ−ナル抗体と特異的に相互作用する、SDS−PAGE上での分子量がPCNAよりも大きなタンパク質に特異的に相互作用する、因子。
【請求項7】
前記因子は、核酸分子、ポリペプチド、脂質、糖鎖、有機低分子およびそれらの複合分子からなる群より選択される、請求項6に記載の因子。
【請求項8】
前記因子は、抗体またはその誘導体である、請求項6に記載の因子。
【請求項9】
前記因子は、プロ−ブとして使用される、請求項6に記載の因子。
【請求項10】
前記因子は、標識されているかまたは標識され得る、請求項6に記載の因子。
【請求項11】
前記標識は、蛍光、燐光、化学発光、放射能、酵素基質反応および抗原抗体反応からなる群より選択される技法を利用する、請求項6に記載の因子。
【請求項12】
PCNAとは相互作用しない、請求項6に記載の因子。
【請求項13】
モノクロ−ナル抗体である、請求項6に記載の因子。
【請求項14】
前記PCNAは、配列番号2に示すアミノ酸配列を有する、請求項6に記載の因子。
【請求項15】
請求項13に記載の因子を生産する、ハイブリド−マ。
【請求項16】
抗PCNAポリクロ−ナル抗体と特異的に相互作用する、SDS−PAGE上での分子量がPCNAよりも大きなタンパク質を含む、悪性腫瘍の診断のための組成物。
【請求項17】
抗PCNAポリクロ−ナル抗体と特異的に相互作用する、SDS−PAGE上での分子量がPCNAよりも大きなタンパク質に対して特異的に相互作用する因子を含む、悪性腫瘍の診断のための組成物。
【請求項18】
被検体の悪性腫瘍の診断のためのキットであって、
(A)抗PCNAポリクロ−ナル抗体と特異的に相互作用する、SDS−PAGE上での分子量がPCNAよりも大きなタンパク質を検出する手段、
を備え、
ここで、該タンパク質の発現の出現または増加は、該被検体が悪性腫瘍に罹患するかまたは罹患している疑いが高いことを示す、
キット。
【請求項19】
被検体の悪性腫瘍の診断のための方法であって、
(A)該被検体からの試料を得る工程;
(B)該試料と、抗PCNAポリクロ−ナル抗体と特異的に相互作用する、SDS−PAGE上での分子量がPCNAよりも大きなタンパク質に特異的に相互作用する因子とを混合する工程;
(C)該試料と該因子とが相互作用した量を測定する工程;
(D)該相互作用した量が健常人の量よりも多いかどうかを判定する工程、
を包含する、方法。
【請求項20】
前記悪性腫瘍は、胆管がん、メラノ−マ、肺がん、胃がん、腺がん、扁平上皮がん、腺扁平上皮がん、胸腺がん、リンパ腫、肉腫、肝がん、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、白血病、子宮がん、乳がん(胸部がん)、前立腺がん、卵巣がん、膵臓がん、大腸がん(結腸直腸がん)、多発性骨髄腫、神経芽細胞腫、膀胱がん、子宮頸部がん、皮膚がん、乳がん、食道がん、腎腫、脳腫瘍、骨肉腫、ユ−イング肉腫および悪性腺維性組織球腫からなるより選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記悪性腫瘍は、胆管がん、前立腺がん、胃がん、乳がん、食道がん、肝がん、大腸がん、骨肉腫、ユ−イング肉腫および悪性腺維性組織球腫からなる群より選択される少なくとも1つの腫瘍を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記悪性腫瘍は、胆管がん、前立腺がん、胃がん、乳がん、食道がん、肝がん、大腸がん、骨肉腫、ユ−イング肉腫および悪性腺維性組織球腫からなる群より選択されるすべての腫瘍を含む、請求項19に記載の方法。

【図1】
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【公開番号】特開2006−8627(P2006−8627A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−190443(P2004−190443)
【出願日】平成16年6月28日(2004.6.28)
【出願人】(000225142)奈良県 (42)
【Fターム(参考)】