説明

情報入力装置、方法及びプログラム

【課題】ソフトウェアキーボードの画面を目視確認することなく個人に適合した効率的文字入力を実現すること。
【解決手段】タッチパネル式表示画面にユーザが手を置いた際、個人の手の形などにしたがって指が画面に触れた位置に応じたホームポジションとなる配列でソフトウェアキーボードを表示することにより、ソフトウェアキーボードの画面を目視確認することなく個人に適合した効率的文字入力を実現することができる。触れた位置を複数の指について検出することにより、縦と横、部分ごとなど、キー配列を多元的に調整できるので、ユーザにとってより一層操作感の優れたユーザーインターフェースを実現できる。特に、両親指を除く8本の指について触れた位置を検出することにより、アルファベットと数字を担当する全ての指の位置がキー表示位置に反映されるので、最適な文字入力効率が実現できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報端末における情報入力に関する。
【背景技術】
【0002】
文字入力用キーボードでは入力効率などの観点から標準として、どのキーをどの指で押すかの割り当てと、初期状態としての指の置き位置が決まっており、この置き位置をホームポジションと呼ぶ。一般的ないわゆるQWERTY配列の文字入力用キーボードにおけるホームポジションでは、両人差し指がそれぞれ「F」と「J」キー上であり、これら両キートップには一般にそれとわかる突起が形成されている。
【0003】
ところで近年、タブレットPCなどタッチパネル式表示画面でキーボードを代用する情報機器では、文字入力欄が選択されると、ソフトウェアキーボードと呼ばれるキーボード配列を画面表示し、画面上のキーに触れると該当する文字の入力となる技術が用いられる。このようなソフトウェアキーボードのホームポジションに応じて表示されたマーカーをずらす操作などにより、ユーザの手の大きさなどに応じてホームポジションの位置関係を変更できる先行技術も知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−054589号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、ソフトウェアキーボードでは、ホームポジションを示す突起など物理的目標は無いため、ユーザは、手を置いて文字入力を始める際、画面表示されたソフトウェアキーボードのホームポジションを目視して確認する必要があり、煩雑という課題があった。また、上記の先行技術において、所定の操作でホームポジションの位置関係を調整する場合も、操作の前提として同様に目視が必要であり、煩雑であった。
【0006】
上記の課題に対し、本発明の目的は、ソフトウェアキーボードの画面を目視確認することなく個人に適合した効率的文字入力を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的をふまえ、本発明の一態様(1)は、タッチパネルを兼ねた表示画面にソフトウェアキーボードを表示して入力を受け付ける情報入力装置であって、前記ソフトウェアキーボードについて、キー配列の基準位置に対応する一又は二以上のキーを含む各キーのキー配列を記憶しているキー配列記憶手段と、前記表示画面に複数の指が触れている位置を検出し、検出された位置を前記基準位置として、記憶されている前記キー配列に基づいて、各キーの表示位置を決定する位置決定手段と、決定された前記表示位置に基づいて前記ソフトウェアキーボードを前記表示画面に表示する表示手段と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
本発明の他の態様(7)は、上記態様を方法のカテゴリで捉えたもので、コンピュータを用いた情報入力装置が備えるタッチパネルを兼ねた表示画面にソフトウェアキーボードを表示して入力を受け付ける情報入力方法であって、前記ソフトウェアキーボードについて、キー配列の基準位置に対応する一又は二以上のキーを含む各キーのキー配列をコンピュータのキー配列記憶手段に予め記憶しておき、コンピュータが、前記表示画面に複数の指が触れている位置を検出し、検出された位置を前記基準位置として、記憶されている前記キー配列に基づいて、各キーの表示位置を決定する位置決定処理と、コンピュータが、決定された前記表示位置に基づいて前記ソフトウェアキーボードを前記表示画面に表示する表示処理と、を含むことを特徴とする。
【0009】
本発明の他の態様(8)は、上記態様をコンピュータ・プログラムのカテゴリで捉えたもので、コンピュータを用いた情報入力装置が備えるタッチパネルを兼ねた表示画面にソフトウェアキーボードを表示して入力を受け付ける情報入力プログラムであって、その情報処理プログラムはコンピュータを制御することにより、前記ソフトウェアキーボードについて、キー配列の基準位置に対応する一又は二以上のキーを含む各キーのキー配列をコンピュータのキー配列記憶手段に予め記憶させ、前記表示画面に複数の指が触れている位置を検出させ、検出された位置を前記基準位置として、記憶されている前記キー配列に基づいて、各キーの表示位置を決定させ、決定された前記表示位置に基づいて前記ソフトウェアキーボードを前記表示画面に表示させることを特徴とする。
【0010】
このように、タッチパネル式表示画面にユーザが手を置いた際、個人の手の形などにしたがって指が画面に触れた位置に応じたホームポジションとなる配列でソフトウェアキーボードを表示することにより、ソフトウェアキーボードの画面を目視確認することなく個人に適合した効率的文字入力を実現することができる。
【0011】
本発明の他の態様(2)は、上記いずれかの態様において、前記位置決定手段は、複数の指について前記位置を検出し、検出された位置と、記憶されている前記キー配列と、に基いて各キーの前記表示位置を決定することを特徴とする。
【0012】
本発明の他の態様(3)は、上記いずれかの態様において、前記位置決定手段は、複数の指について前記位置を検出し、前記ソフトウェアキーボードのホームポジションを左右方向に貫く基準軸を、前記検出した前記位置を基にした回帰直線として算出し前記表示位置の決定に用いることを特徴とする。
【0013】
本発明の他の態様(4)は、上記いずれかの態様において、前記位置決定手段は、複数の指について検出した前記位置の間における左右方向の距離に応じて、各キーの前記表示位置を決定することを特徴とする。
【0014】
本発明の他の態様(5)は、上記いずれかの態様において、前記位置決定手段は、所定時間以上連続して所定の指が触れたことを検出することにより、前記表示位置の決定を行うことを特徴とする。
【0015】
本発明の他の態様(6)は、上記いずれかの態様において、前記位置決定手段により決定された前記表示位置に基づいて前記表示手段により前記ソフトウェアキーボードが表示された後、そのソフトウェアキーボードにおけるいずれかのキーの領域に所定時間より短時間、指が触れたことを検出することによりキー入力と判定しそのキーの入力として受け付ける判定受付手段を備えたことを特徴とする。
【0016】
なお、上記の各態様は、明記しない他のカテゴリ(方法、プログラム、システムなど)としても把握することができ、方法やプログラムのカテゴリについては、装置のカテゴリで示した「手段」を、「処理」や「ステップ」のように適宜読み替えるものとする。また、処理やステップの実行順序は本出願に直接明記するものに限定されず、技術的な原理に反しない範囲で、処理順序を変更したり、一部の処理をまとめてもしくは随時一部分ずつ実行するなど、変更可能である。さらに、方法やプログラムのカテゴリにおいて、個々の処理やステップを実行するサーバや端末などのコンピュータは共通でもよいし、処理ごと、ステップごとやタイミングごとに異なってもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ソフトウェアキーボードの画面を目視確認することなく個人に適合した効率的文字入力を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態について構成を示す機能ブロック図。
【図2】本発明の実施形態におけるデータ例を示す図(キー配列のデータ)。
【図3】本発明の実施形態におけるデータ例を示す図(ユーザ別の表示位置を表すデータ)。
【図4】本発明の実施形態における処理手順を示すフローチャート。
【図5】本発明の実施形態における画面例を示す図(指を置いた状態)。
【図6】本発明の実施形態における画面表示例を示す図(ソフトウェアキーボードを表示した状態)。
【図7】本発明の実施形態における画面表示例を示す図(他の人に応じてソフトウェアキーボードを表示した状態)。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明を実施するための形態(「実施形態」と呼ぶ)について図に沿って例示する。なお、背景技術や課題などで既に述べた内容と共通の前提事項は適宜省略する。
【0020】
〔1.構成〕
本実施形態は、図1の構成図に示すように、タッチパネルを兼ねた表示画面5にソフトウェアキーボードを表示して入力を受け付ける情報入力装置1(以下「本装置1」や「本装置」とも呼ぶ)に関する。本装置1は、少なくとも情報の入力を行う装置であればよいが、入力以外の情報処理も行う装置への適用が望ましく、例えばタブレットPC、スマートフォン、パーソナルコンピュータなどの情報処理装置に適用できる。この種の情報処理装置は、多くの場合、クライアント装置としてウェブ閲覧などのネットワーク接続を行うものである。
【0021】
また、本装置1は、コンピュータの構成としてCPUなどの演算制御部6と、主メモリや補助記憶装置等の記憶装置7と、通信ネットワークN(例えば、携帯電話、PHS、公衆無線LANなどの移動通信網、インターネットなど)との通信手段8(移動通信網との通信回路、無線LANアダプタなど)と、を有する。また、本装置1の表示画面5は、投影型静電容量方式に代表されるマルチタッチスクリーンである。
【0022】
本装置1では、記憶装置7に記憶(インストール)した所定のコンピュータ・プログラムが演算制御部6を制御することで、図1に示す各手段などの要素(10,15ほか)を実現する。そのコンピュータ・プログラムの種類は自由で、タブレットPCなど情報処理装置のオペレーティング・システムなど基本ソフトウェアであってもよいし、その機能追加用ソフトウェアでもよいし、ダウンロードなどでインストールするアプリケーション・ソフトウェアなどでもよい。
【0023】
そのようなソフトウェアで実現される上記の要素のうち情報の記憶手段は、記憶装置7上のファイルなど任意のデータ形式で実現できるほか、ネットワークコンピューティング(クラウド)によるリモート記憶でもよい。また、記憶手段は、データの格納領域だけでなく、データの入出力や管理などの機能(例えばDBMS:データベース・マネジメント・システムなど)を含んでもよい。
【0024】
また、本出願に示す記憶手段の単位は説明上の便宜によるもので、適宜、構成を分けたり一体化できるほか、明示する記憶手段以外にも、各手段の処理データや処理結果などを記憶する記憶手段を適宜用いるものとする。
【0025】
上記のような記憶手段のうち、キー配列記憶手段15は、前記ソフトウェアキーボードについて、キー配列の基準位置に対応する一又は二以上のキーを含む各キーのキー配列をデータとして記憶している手段である。
【0026】
図2は、キー配列を示すデータの一例で、各キー(例えばアルファベットの「Q」「W」「E」など)ごとに、ソフトウェアキーボードの左上隅を原点とみた場合の全体のサイズの中で、個々のキーの左上隅がX座標方向とY座標方向のそれぞれどの位置に相当するかを表示位置オフセットとして示している。
【0027】
なお、図中(例えば図1)の矢印は、データや制御などの流れについて主要な方向を補助的に示すもので、他の流れを否定するものでも、方向の限定を意味するものでもない。例えばデータをある方向に取得する場合、事前のデータリクエストや事後のアクノリッジ(ACK)が逆方向に送信される。また、記憶手段以外の各手段は、以下に説明するような情報処理の機能・作用(例えば図4)を実現・実行する処理手段であるが、これらは説明のために整理した機能単位であり、実際のハードウェア要素やソフトウェアモジュールとの一致は問わない。
【0028】
〔2.作用効果〕
上記のように構成された本装置1では、キーボードを打つ時の要領で表示画面5上に両手を暫し置くことで、手のサイズなどにソフトウェアキーボードの表示位置を合わせる処理を実行できる。この処理を「ホームポジション確定の処理」と呼ぶこととする。ホームポジション確定の処理は、ユーザが本装置1でソフトウェアキーボードの使用を開始するとき(例えば、本装置1の入手後初めてや、電源投入後最初など)の他、入力エラーが所定以上発生した場合、ユーザがホームポジション確定の処理を指示した場合など、適宜なタイミングで行う。このようなホームポジション確定の処理と、それを基に表示したソフトウェアキーボードで文字入力を受け付ける処理の手順を図4のフローチャートに示す。また、ホームポジション確定の処理において表示画面5上に両手を置いた状態を図5、それを基にソフトウェアキーボードKを表示画面5に表示した状態を図6に例示する。
【0029】
〔2−1.作用効果の概要〕
図4のフローチャートに示した処理の概要としては、本装置1の位置決定手段20が、表示画面5に複数の指が触れている指位置P1〜P10(図5においてハッチングを施した破線の円又は楕円で示す)を検出し、検出された位置(「指位置」とも呼ぶこととする)を基準位置として、キー配列記憶手段15に記憶されているキー配列に基づいて、各キーの表示位置を決定する(ステップS13〜S14。具体的には後述)。そして、表示手段30が、決定された表示位置に基づいてソフトウェアキーボードを表示画面に表示する(ステップS16。例えば図6)。
【0030】
このように本実施形態では、タッチパネル式表示画面にユーザが手を置いた際、個人の手の形などにしたがって指が画面に触れた位置に応じたホームポジションとなる配列でソフトウェアキーボードを表示することにより、ソフトウェアキーボードの画面を目視確認することなく個人に適合した効率的文字入力を実現することができる。
【0031】
〔2−2.複数の指による決定〕
より具体的には位置決定手段20が、複数の指について位置を検出し、検出された指位置と、予め記憶されているキー配列と、に基づいて各キーの表示位置を決定する。さらに詳細な例としては、事前に位置情報特定用の指を定めて対象指記憶手段12に記憶させておき、位置決定手段20が位置情報抽出手段10に、ユーザからの入力に応じて指の位置を検出させる。そして、位置決定手段20は、指位置のパターンや位置関係に表れる手の位置や大きさなどに応じ、ソフトウェアキーボード全体として表示すべき位置や大きさを算出する。各キーに対応する位置を計算により調整することもできる。
【0032】
ここでは、両手10指のうち両親指の触れた位置を除外し残り8指の指位置に対して回帰直線の手法を利用し、キーボードのX軸すなわちホームポジションを左右方向に貫く軸を求め(ステップS13)、次に、手の大きさが現れる指間の距離も加味して各キーの表示位置を決定し(ステップS14)、ソフトウェアキーボードを表示するものとする(ステップS16)。両手10指の指位置(例えば図5のP1〜P10)から両親指の指位置P5,P6を識別して除外するには、Y軸方向(水平に置いたタブレットPCでは前後方向。図5では上下方向)の座標位置が最も大きく外れた2つの指位置を除外してもよいし、X軸方向(左右方向)の座標位置が中央となる2つの指位置を除外してもよい。また、ユーザによっては、両親指を触れることなく操作することが考えられるため、両親指を除く、両手8指の触れた指位置に対して回帰直線の手法を利用し、上記のソフトウェアキーボードを表示してもよい。
【0033】
上記のように本実施形態では、触れた位置を複数の指について検出することにより、縦と横、部分ごとなど、キー配列を多元的に調整できるので、ユーザにとってより一層操作感の優れたユーザーインターフェースを実現できる。特に、両親指を除く8本の指について触れた位置を検出することにより、アルファベットと数字を担当する全ての指の位置がキー表示位置に反映されるので、最適な文字入力効率が実現できる。
【0034】
〔2−3.左右方向基準軸の算出〕
本実施形態における表示位置の決定では、まず、位置決定手段20が、複数の指について位置を検出し、ソフトウェアキーボードのホームポジションを左右方向に貫く基準軸を、検出した指位置を基にした回帰直線として算出し(ステップS13)、前後方向(Y軸方向)における表示位置の決定に用いる。
【0035】
ここで、基準軸は、図5の例では、ホームポジションに対応する所定のキー群に係る左右方向(X軸方向)の基準軸Aであり、一般的なホームポジションに対応するキー群は例えば「A」「S」「D」「F」−「J」「K」「L」「+」であるが、キー配列の相違などに応じて他のキー群であってもよい。図5において円や楕円で示す各指位置P1〜P10のうち、両親指の指位置P5,P6を除くP1〜P4及びP7〜P10の例えば中心点を点列とし、最小二乗法では、これら点列との距離を最小にする直線である基準軸Aを回帰直線として求める。
【0036】
上記のように本実施形態では、ホームポジションに対応する所定のキー群に係る左右方向の基準軸を、点列と直線の距離を最小にする最小二乗法による回帰直線として算出することにより、キー配列の基準軸がそれぞれの指の位置に近くなるので、無駄のない最小の指の動きによる効率的文字入力が実現できる。
【0037】
〔2−4.左右の距離に基づく決定〕
また、本実施形態における表示位置の決定では、位置決定手段20はさらに、複数の指について検出した指位置の間における左右方向(X軸方向)の距離(スパン)に応じて、各キーの表示位置を決定する。ここでいう表示位置は、個別のキーごとの数値として算出してもよいしソフトウェアキーボード全体の表示倍率等を表す包括的数値でもよく、表示倍率等の包括的数値はX軸方向とY軸方向が別れていても一体でもよい。
【0038】
左右方向(X軸方向)については例えば(図5)、左手の小指の指位置P1から人差指の指位置P4までの間の距離L1,L2,L3や、右手の人差指の指位置P7から小指の指位置P10までの間の距離L5,L6,L7、両人差指の指間の距離L4のうち全部又は一部を基にX軸方向すなわち左右方向のキー表示位置の間隔を計算することが考えられる。これに加え、両手人差指の指位置P4とP7の距離L4を6等分し、両人差指に対応するキーの配置を決める計算の基礎に含めることが考えられる。例えば、図6に示すように、両手人差指の指位置P4とP7の距離L4を6等分し、L4の左端の線を「F」キーの中心線、左端から1/6の線を「F」、「G」キーの境界の中心線、左端から2/6の線を「G」キーの中心線、左端から3/6の線、すなわちL4の中心線を「G」、「H」キーの中心線、左端から4/6の線を「H」キーの中心線、左端から5/6の線を「H」、「J」キーの中心線、右端の線を「J」キーの中心線として、各キーの表示位置を決定する。
【0039】
上記のように本実施形態では、検出した指の位置間に左右方向の間隔に応じて各キーの表示位置を割り付けることにより、ユーザの手の大きさに応じたキーごとの間隔や配置範囲でソフトウェアキーボードを表示できるので、より効率的な文字入力を実現することができる。例えば、図6の例に比べて図7の例では、左手の指幅が小さく、相対的に右手の指幅を広くとるユーザに応じて、相対的に右手に対応するキーボードの横方向の幅が大きいソフトウェアキーボードK2が、表示画面5に表示されている。
【0040】
〔2−5.時間の連続に基づく決定〕
以上のような表示位置の決定は、ユーザが指示操作をした場合の他、ソフトウェアキーボードを表示しようとする際に、ある程度以上の時間連続して指が置かれたときに行えば、予期せぬタイミングでホームポジション確定の処理が行われることが回避できる。すなわち、位置決定手段20は、所定時間以上連続して所定の指が触れたことを検出することにより(ステップS11及びステップS12:「YES」)、上に説明したような表示位置の決定を行う(ステップS13,S14)。
【0041】
ここでいう「所定時間」は、1秒や数秒など、システム設定値やユーザ設定値などとして自由に定めてよく、所定時間「以上」とは所定時間「より長く」と読み替える態様を含むものとする。
【0042】
上記のように本実施形態では、所定時間以上連続して指が表示画面に触れたときに、表示位置を決定しホームポジションを確定してソフトウェアキーボードの表示を開始したり更新することにより、そのような開始や更新を改めて指示する操作が不要となるうえ、タイピング途中で予期せずホームポジション確定の処理が行われて入力作業の妨げとなることが無く、文字入力作業がより円滑となる。
【0043】
〔2−6.キー入力開始の判定〕
また、上に述べたホームポジション確定の処理の後、実際のキー入力のためのタッチは、判定受付手段40が次のように判定する。すなわち、判定受付手段40が、位置決定手段20により決定された表示位置に基づいて表示手段30によりソフトウェアキーボードが表示された後(ステップS16)、そのソフトウェアキーボードにおけるいずれかのキーの領域に所定より短時間、指が触れたことを検出することによりキー入力と判定し(ステップS17:「YES」)、その触れた位置が属する領域に対応するキーを判定して(ステップS18)、そのキーの入力として受け付ける(ステップS21)。
【0044】
ここでいう「所定より短時間」についても、0.5秒、数十〜数百ミリ秒など、システム設定値やユーザ設定値などとして自由に定めてよく、また、「所定より短時間」とは「所定以内の短時間」と読み替える態様を含むものとする。
【0045】
上記のように本実施形態では、ホームポジションが確定してソフトウェアキーボードが表示された後、所定の短い継続時間でキー領域に指が触れた場合に、キー入力と判定し受け付けることにより、ホームポジションに指を置いている状態と識別できるので、タイピング時以外に指を表示画面から離しておく注意や努力が不要となり、快適で疲労の少ない文字入力が実現できる。
【0046】
〔2−7.位置ずれの警告〕
さらに、本実施形態では、上記のように指が触れた位置に対応するキーの判定に際し(ステップS18)、触れた位置が他の指の位置と比較した差異に相対的に位置のずれがある場合にそれを警告する。警告の具体的な条件は自由であるが、具体的には、報知手段50が、ソフトウェアキーボードにおける各キーの領域からずれた位置に指が触れたことを検出したときに(ステップS19:「YES」)、音や画面ポップアップ表示などのアラートすなわち警告を出力する(ステップS20)。
【0047】
上記のように本実施形態では、ホームポジションを含む各キーの領域からずれた位置に指が触れたときに警告を出力することにより、他の指の位置との関係で相対的にホームポジションからずれた位置に指を置いていたりキー領域以外の部分をタイピングしたことがユーザにわかるので、正しい指の位置で正確な文字入力を行うことができる。
【0048】
〔2−8.ユーザの特定による表示〕
加えて、本実施形態では、位置決定手段20又は他の適宜な処理手段が、上に説明したようなホームポジション確定の処理で決定された表示位置をユーザ固有の情報と対応付けてユーザ別記憶手段60に記憶しておき(ステップS15)、ユーザに合わせて呼び出すことができる。ここで、ユーザ固有の情報はタッチに基づくもので、例えば指紋、指ごとの接触面積、触れた位置の配置パターンなどが考えられる。このようなユーザ固有の情報は、固有情報取得手段70が、決定された表示位置を記憶する際やそれに先立ってホームポジション確定の処理の際などに、表示画面5に触れた指について取得する。
【0049】
また、決定された表示位置を記憶しておく形式は自由であり、個々のキーごとに表示位置オフセットなど表示位置を表す情報を記憶しておくことで、キー配置の柔軟性を向上できる。なお、ここでは一例として、ソフトウェアキーボードを表示画面のどこにどのようなサイズで表示するかの情報を記憶しておく例を示す。すなわち、図3の例では、ユーザ固有の情報ごとに、表示画面5におけるソフトウェアキーボード全体の表示開始位置座標(X,Y)と、表示倍率とを、表示位置を表す情報として記憶している。
【0050】
その後、例えば同じユーザが本装置1を次回使う際などに、固有情報取得手段70が、表示画面5に触れた指についてユーザ固有の情報を取得すると(ステップS9:「YES」)、対応配列取得手段80が、取得されたユーザ固有の情報と対応する各指間の距離、ソフトウェアキーボード全体の横幅すなわちX軸方向に沿った幅、ソフトウェアキーボード全体の縦幅すなわちY軸方向に沿った幅等をユーザ別記憶手段60から検索し、ユーザ固有の情報が適合するソフトウェアキーボードに関する上記の情報があればその情報を取得して位置決定手段20又は表示手段30へ提供し、ソフトウェアキーボードを実現する(ステップS10)。例えば、ユーザが、表示画面5の任意の位置に右手人差指のみを触れた場合、対応配列取得手段80が、ユーザの右手人差し指の情報をユーザ固有の情報として識別する。そして、表示手段30は、ユーザの指間の距離に対応したソフトウェアキーボードを表示する。
【0051】
上記のように本実施形態では、タッチに基づくユーザ固有の情報に基づいてユーザを特定し、予め記憶されているユーザの指間の距離に対応したソフトウェアキーボードを表示する。これにより、前回や普段使用する幅のソフトウェアキーボードを利用できるので、文字入力作業を迅速円滑に行うことができる。
【0052】
〔3.他の実施形態〕
なお、上記実施形態は例示に過ぎず、本発明は、以下に例示するものやそれ以外の他の実施態様も含むものである。例えば、タッチパネルのタイプは自由であり、指が触れたことは、静電容量方式に限らず、圧力センサー、温度等他のセンサーなどによるいかなる原理で検出してもよい。また、両手に限らず片手のみ置いてその指位置から表示位置を決定するようにすれば、片手で本体を保持してもう片手でキー入力する場合についても、ソフトウェアキーボードの画面を目視確認することなく個人に適合した効率的文字入力を実現することができる。
【0053】
また、本出願における構成図、データの図、フローチャートなどは例示に過ぎず、各要素の有無、その配置や処理実行などの順序、具体的内容などは適宜変更可能である。例えば、本発明に関する手段などの各要素は、コンピュータの演算制御部に限らず物理的な電子回路など他の情報処理機構で実現してもよい。
【符号の説明】
【0054】
1 情報入力装置
5 表示画面
6 演算制御部
7 記憶装置
8 通信手段
10 位置情報抽出手段
12 対象指記憶手段
15 キー配列記憶手段
20 位置決定手段
30 表示手段
40 判定受付手段
50 報知手段
60 ユーザ別記憶手段
70 固有情報取得手段
80 対応配列取得手段
G 表示画面
L1〜L7 距離
N 通信ネットワーク
P1〜P10 各指位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タッチパネルを兼ねた表示画面にソフトウェアキーボードを表示して入力を受け付ける情報入力装置であって、
前記ソフトウェアキーボードについて、キー配列の基準位置に対応する一又は二以上のキーを含む各キーのキー配列を記憶しているキー配列記憶手段と、
前記表示画面に複数の指が触れている位置を検出し、検出された位置を前記基準位置として、記憶されている前記キー配列に基づいて、各キーの表示位置を決定する位置決定手段と、
決定された前記表示位置に基づいて前記ソフトウェアキーボードを前記表示画面に表示する表示手段と、
を備えたことを特徴とする情報入力装置。
【請求項2】
前記位置決定手段は、複数の指について前記位置を検出し、検出された位置と、記憶されている前記キー配列と、に基づいて各キーの前記表示位置を決定することを特徴とする請求項1記載の情報入力装置。
【請求項3】
前記位置決定手段は、複数の指について前記位置を検出し、前記ソフトウェアキーボードのホームポジションを左右方向に貫く基準軸を、前記検出した前記位置を基にした回帰直線として算出し前記表示位置の決定に用いることを特徴とする請求項1又は2記載の情報入力装置。
【請求項4】
前記位置決定手段は、複数の指について検出した前記位置の間における左右方向の距離に応じて、各キーの前記表示位置を決定することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の情報入力装置。
【請求項5】
前記位置決定手段は、所定時間以上連続して所定の指が触れたことを検出することにより、前記表示位置の決定を行うことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の情報入力装置。
【請求項6】
前記位置決定手段により決定された前記表示位置に基づいて前記表示手段により前記ソフトウェアキーボードが表示された後、そのソフトウェアキーボードにおけるいずれかのキーの領域に所定より短時間、指が触れたことを検出することによりキー入力と判定しそのキーの入力として受け付ける判定受付手段を備えたことを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の情報入力装置。
【請求項7】
コンピュータを用いた情報入力装置が備えるタッチパネルを兼ねた表示画面にソフトウェアキーボードを表示して入力を受け付ける情報入力方法であって、
前記ソフトウェアキーボードについて、キー配列の基準位置に対応する一又は二以上のキーを含む各キーのキー配列をコンピュータのキー配列記憶手段に予め記憶しておき、
コンピュータが、前記表示画面に複数の指が触れている位置を検出し、検出された位置を前記基準位置として、記憶されている前記キー配列に基づいて、各キーの表示位置を決定する位置決定処理と、
コンピュータが、決定された前記表示位置に基づいて前記ソフトウェアキーボードを前記表示画面に表示する表示処理と、
を含むことを特徴とする情報入力方法。
【請求項8】
コンピュータを用いた情報入力装置が備えるタッチパネルを兼ねた表示画面にソフトウェアキーボードを表示して入力を受け付ける情報入力プログラムであって、
その情報処理プログラムはコンピュータを制御することにより、
前記ソフトウェアキーボードについて、キー配列の基準位置に対応する一又は二以上のキーを含む各キーのキー配列をコンピュータのキー配列記憶手段に予め記憶させ、
前記表示画面に複数の指が触れている位置を検出させ、検出された位置を前記基準位置として、記憶されている前記キー配列に基づいて、各キーの表示位置を決定させ、
決定された前記表示位置に基づいて前記ソフトウェアキーボードを前記表示画面に表示させる
ことを特徴とする情報入力プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−84144(P2013−84144A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−224010(P2011−224010)
【出願日】平成23年10月11日(2011.10.11)
【出願人】(500257300)ヤフー株式会社 (1,128)
【Fターム(参考)】