説明

情報入力装置

【課題】 記憶性表示体を用いた情報入力装置において、入力操作に対して高速表示を行うことの可能な、情報入力装置を提供する。
【解決手段】 加圧により加圧部分の界面光学状態が変化する感圧性シート70を介して記憶性表示体30に対して入力操作を行う。入力操作中は、入力操作による記憶性表示体30の表示画像への反映は行わずに入力ペン20の位置座標を記憶する。このとき、入力操作による加圧により感圧性シート70には入力ペン20の移動軌跡が表示される。入力操作後、感圧性シート70が剥離されたタイミングで(ステップS11)、記憶していた入力ペン20の移動軌跡を表す位置座標をもとに記憶性表示体30の表示画像への反映を行う(ステップS12、S13)。これにより感圧性シート70の表示が削除され、これまでこの感圧性シート70に表示されていた表示画像が記憶性表示体30の表示画像に反映される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体の位置を検出し、これを用いて情報入力を行うようにした情報入力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、情報装置の低電力化のために、表示記憶性を持ち、表示リフレッシュが不要な、記憶性表示体を用いた情報装置が提案されている。前記記憶性表示体としては、例えば、特許文献1に示すような、電子ペーパーと呼ばれる表示媒体が提案されている。
【特許文献1】特開2002−169190号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、このような記憶性表示体は、通常、応答が遅い。このため、例えば、このような記憶性表示体を用いて、手書きにより、文字或いは線画等の入力を行う場合等、使用者の筆記状況に合わせて筆跡に相当する画像を表示させるといった、比較的高速の動作は困難である。
このような高速動作を実現するための応答速度を表示体で確保するには、高速駆動可能なアクティブ駆動方式等といった高価な表示体構成を余儀なくされる。また、このように使用者の筆記状況に合わせて画面を更新するとなると、リフレッシュ不要で且つ低電力といった、記憶性表示体の特質を全く生かすことができなくなるという問題がある。
【0004】
そこで、この発明は上記従来の未解決の問題に着目してなされたものであり、記憶性表示体を用いた情報入力装置において、低電力且つリフレッシュ不要等といった記憶性表示体の特質を損なうことなく、入力操作に対する高速表示を行うことの可能な、情報入力装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記した課題を解決するために、本発明の情報入力装置は、移動体の移動軌跡に応じた画像を表示する情報入力装置において、記憶性表示体及び当該記憶性表示体の表示面上に配置される副表示手段を備えた表示装置と、前記副表示手段上での前記移動体の位置を検出する位置検出手段と、当該位置検出手段で検出した、所定期間における前記移動体の位置情報を保持する保持手段と、当該保持手段で保持する位置情報をもとに、予め設定したタイミングで、前記所定期間における前記移動体の移動軌跡に応じた画像を、前記記憶性表示体の表示画像に反映させる表示画像更新手段と、を備え、前記副表示手段は、当該副表示手段の表示面上を前記移動体が移動したとき当該移動体の移動と共にその移動軌跡を表示可能に構成されていることを特徴とする。
【0006】
上記構成によれば、記憶性表示体と、この記憶性表示体の表示面上に配置された副表示手段とから表示装置が構成される。副表示手段は、この副表示手段の表示面上で移動体を移動させると、移動体の移動と共にその移動軌跡を表示可能に構成されているから、移動体の移動と同時にその移動軌跡が副表示手段により表示される。また、移動体の移動と共にその位置情報が位置検出手段で検出され、この位置検出手段で検出した所定期間における移動体の位置情報が保持手段で保持される。そして、この保持された位置情報をもとに予め設定したタイミングで、表示画像更新手段により、所定期間における移動体の移動軌跡に応じた画像が記憶性表示体の表示画像に反映されるから、この時点で移動体の移動軌跡に応じた画像が記憶性表示体に表示されることになる。
【0007】
ここで、副表示手段は、移動体の移動と共にその移動軌跡を表示可能に構成されているから、移動体の移動軌跡を表示画像に反映することが比較的遅い記憶性表示体の表示画像と、この記憶性表示体で移動体の移動軌跡を反映させる場合よりも速やかに移動体の移動軌跡を反映させることの可能な副表示手段の表示画像とを、両方参照することで、記憶性表示体を用いた表示装置において、移動体の移動に応じてその移動軌跡を速やかに表示装置に表示させることができる。また、記憶性表示体の表示画像への反映は、逐次行われるのではなく、予め設定したタイミングで行われるから、記憶性表示体での、表示画像の更新に伴う消費電力を削減することができる。
【0008】
上記した情報入力装置では、前記副表示手段は、前記記憶性表示体の表示面との界面光学状態が筆記圧により変化する感圧性シートを備え、前記記憶性表示体の表示面と前記感圧性シートとの接触を解除することで前記界面光学状態が非変化状態に復帰するようになっていることが好ましい。
上記構成によれば、副表示手段は、記憶性表示体の表示面と接触することにより画像表示が行われ、接触を解除することにより表示画像が消去されるから、簡易な構成で副表示手段を実現することができる。
【0009】
また、上記した情報入力装置では、前記記憶性表示体の表示面と前記感圧性シートとの接触を解除する操作が行われたとき作動するスイッチ手段を備え、前記表示画像更新手段は、前記スイッチ手段が作動したときに、前記記憶性表示体の表示画像への反映を行うことが好ましい。
上記構成によれば、スイッチ手段で、副表示手段に対する接触を解除する操作が行われたことを検出したときに、表示画像更新手段による表示画像への反映を行うようにしたから、使用者が、副表示手段の表示画像を消去するタイミングで、記憶性表示体の表示画像を更新することができる。
【0010】
また、上記した情報入力装置では、前記副表示手段は、前記記憶性表示体の表示面上に着脱可能に配置されていることが好ましい。
上記構成によれば、副表示手段は、記憶性表示体の表示面上に着脱可能に配置されているから、入力操作を行うときにのみ副表示手段を用い、入力操作を行わないときには、副表示手段を用いずに記憶性表示体の表示面を直接見るようにしたシステムを、容易に実現することができる。
【0011】
また、本発明の情報入力装置は、前記副表示手段は、前記記憶性表示体による表示画像を透過表示可能に構成されていることが好ましい。
上記構成によれば、副表示手段は、記憶性表示体による表示画像を透過表示可能に構成されているから、記憶性表示体の表示画像と副表示手段の表示画像とを重畳させることで、記憶性表示体を用いた表示装置において、移動体の移動に応じてその移動軌跡を速やかに表示装置に表示させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明に係る情報入力装置の実施の形態について、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の情報入力装置の一実施形態を表す外観図である。この情報入力装置1は、移動可能な移動体としての入力ペン20と、この入力ペン20による入力情報が表示される表示装置50と、を備えている。
表示装置50は、板状の基体40と、基体40の表面の一方の端部に設けられた取付部材40a上に所定の距離を保って固定された、入力ペン20の座標検出用の2つの基準体(10A,10B)と、基体40の表面の略中央部に埋設された記憶性の表示媒体で構成される記憶性表示体30と、この記憶性表示体30の上に配置された感圧性シート70と、この感圧性シート70と記憶性表示体30との接触状況を検出する剥離検出スイッチ(スイッチ手段)(80A,80B)と、から構成される。
【0013】
2つの基準体(10A,10B)は、例えば、距離計測に用いる超音波計測パルスを検出する超音波センサ(11A,11B)をそれぞれに備えると共に、何れか一方の基準体(10A又は10B)に、同期用に用いる同期光パルスとしての赤外光を検出する赤外線センサ12を備え、超音波センサ(11A,11B)の検出領域と、赤外線センサ12の検出領域とは、記憶性表示体30が表示可能な全ての領域を含むように調整されている。
【0014】
また、前記感圧性シート70は、前記記憶性表示体30と同等の大きさに形成され、前記取付部材40a側の端部が、シート固定部材75により基体40に固定されている。また、感圧性シート70の、シート固定部材75とは逆側の端部には、手がかりとなる補強部材77が取り付けられている。また、図2に示すように、補強部材77の両端部付近には、基体40上に配置された嵌合部材41A、41Bと嵌合する図示しない嵌合部材(77a,77b)が設けられ、補強部材77の嵌合部材と基体40側の嵌合部材41A、41Bとがそれぞれ嵌合することによって感圧性シート70が記憶性表示体30上に固定されるようになっている。そして、補強部材77を把持し、感圧性シート70を持ち上げることにより、感圧性シート70を、その一端を固定したまま被装及び剥離可能となっている。また、基体40の補強部材77側の中央部付近には、補強部材77と対向する位置に浅い凹部40bが形成され、補強部材77の下部に空間を形成することで記憶性表示体30上に載置された感圧性シート70を補強部材77位置で持ち易くなっている。
【0015】
また、前記基体40の嵌合部材41A、41Bの近傍には、前記補強部材77と記憶性表示体30とが接触しているかどうかを検出するための剥離検出スイッチ80A及び80Bが設けられている。この剥離検出スイッチ80A、80Bは、例えば、光スイッチ或いは接点スイッチ等で構成され、補強部材77が記憶性表示体30から離れたとき作動するように構成されている。
【0016】
前記感圧性シート70は、略透明の樹脂シートで形成され、その下面は記憶性表示体30の表面と加圧粘着性を有している。
この感圧性シート70としては、例えば、蛍光顔料を混入した透明樹脂シートが適用される。この樹脂シートは、通常は、シート内を全反射してほとんど表面から漏出しない励起光が、記憶性表示体30の表面と加圧粘着した部分では界面状態の変化によって、粘着部から外部、すなわち、記憶性表示体30側に漏出して散乱されることにより、樹脂シートに対する筆跡に沿って発光して見えるようになっている。また、粘着部を一旦、記憶性表示体30の盤面から剥離して、再度被加圧状態で被装すると、未筆記状態に戻るようになっている。このような樹脂シートとしては、知育玩具等の表示部として用いられている樹脂シートを適用することができる。
【0017】
なお、図示していないが、前記記憶性表示体30には、感圧性シート70から漏出した励起光を効率よく散乱させるために、必要に応じてその表示画面の透明構造物に散乱構造を設けてもよい。本実施例では、このような散乱構造と前記感圧性シート70とで副表示手段を構成している。
表示装置50は、赤外線センサ12で入力ペン20からの同期光パルスを検出すると、超音波センサ(11A,11B)で入力ペン20からの超音波計測パルスを検出するまでの所要時間をそれぞれ計測し、これら計測時間に基づいて記憶性表示体30上における入力ペン20の位置を検出する。また、この入力ペン20の位置情報を所定の記憶領域で保持し、剥離検出スイッチ(80A,80B)の作動状況から感圧性シート70が記憶性表示体30から剥離されたことを検出したとき、前記記憶領域で保持する入力ペン20の位置情報を読み出し、前記記憶性表示体30により入力ペン20の移動軌跡を反映した表示画像を表示する。
【0018】
入力ペン20は、図1に示すように、例えば、先端部(21〜23)と把持部24とで構成される。この先端部(21〜23)には、接触を感知する接触センサ21と、赤外線を発光する赤外線LED22と、表示装置50の超音波センサ(11A,11B)が感知可能な超音波を発する超音波発振器23とを備えている。
把持部24は、接触センサ21で接触を感知したとき、赤外線LED22を発光させると共に超音波発振器23により超音波を発生させる機能を備える。
【0019】
そして、この入力ペン20は、情報入力装置1の使用者がこの把持部24を把持して感圧性シート70上を移動させ、感圧性シート70に対して手書き入力することで、情報入力を行う。
記憶性表示体30は、入力ペン20からの指示に応じた画像を表示する。この記憶性表示体30の形状や表示方法については、基準体10と感圧性シート70上の入力ペン20との間で超音波計測パルス及び同期光パルスを授受することができればどのようなものでも可能であり、ここでは、例えば略平板状の表示体を採用する。
【0020】
基体40の内部には、図示を略した電源入力部を備える。この電源入力部は、外部から電源を入力して、電圧等を適正に調整した後、基準体10や記憶性表示体30の駆動部等に電源を供給する。
図3は、表示装置50の概略構成を示すブロック図である。
図3に示すように、表示装置50は、入力ペン20の位置座標の検出を行う座標検出部110と、記憶性表示体30への表示制御を行う表示体制御部120と、剥離検出スイッチ(80A,80B)で感圧性シート70の剥離を検出したとき、前記記憶性表示体30の表示画像を更新する演算処理部(CPU)130とを備えている。また、各種プログラムを格納するためのプログラムROM140、また、ワークRAM150や記憶性表示体30への表示データを記憶する表示データ記憶部160、及びこれら各部への電源供給を行う電源部170を備えている。
【0021】
座標検出部110は、後述の手順で入力ペン20の位置座標を算出し、この位置情報をワークRAM150に格納する。
表示体制御部120は、表示データ記憶部160に格納された表示データをもとに、記憶性表示体30への画像表示を行う。
演算処理部(CPU)130は、プログラムROM140に格納されたプログラムにしたがって処理を行う。そして、剥離検出スイッチ(80A,80B)の何れかで剥離検出が行われたときには、ワークRAM150で保持している所定期間における、入力ペン20の位置情報をもとに、この所定期間における入力ペン20の移動軌跡からなる表示データと、表示データ記憶部160に格納されている現在表示中の表示データとをもとに新たな表示データを生成しこれを表示データ記憶部160に格納する。
【0022】
なお、演算処理部130は、ワークRAM150で保持している所定期間の位置情報をもとに、表示データの更新を行ったならばワークRAM150で保持している前記位置情報は削除するようになっている。つまり、ワークRAM150には、剥離検出スイッチ(80A,80B)で剥離検出が行われ表示データの更新が行われた時点以後から、再度剥離検出スイッチ(80A,80B)で剥離検出が行われるまでの位置情報が格納され、この期間の位置情報に基づき表示データの更新を行うことにより、前回表示データの更新を行った後、剥離検出が行われるまでの間の入力ペン20の移動軌跡が記憶性表示体130の表示画像に反映されるようになっている。
【0023】
図4は、入力ペン20と、表示装置50の座標検出部110との機能構成の概略を示すブロック図である。
図4に示すように、入力ペン20は、接触センサ21と、超音波計測パルス及び同期光パルスの発信タイミングを決定するタイミング発生回路110と、超音波計測パルスを発信する音波送信部120と、同期光パルスを発信する光送信部130とを備えている。
【0024】
接触センサ21は、記憶性表示体30との接触を感知するタッチセンサを採用することができる。この接触センサ21は接触を感知すると、信号を生成してタイミング発生回路110に送信する。また、接触状態から非接触状態に遷移した場合も同様に信号を生成し、タイミング発生回路110に送信する。
タイミング発生回路110は、間隔基準となるクロック信号と、接触センサ21からの接触を示す信号とを入力し、超音波計測パルス及び同期光パルスを発信するタイミングを制御する。このタイミング発生回路110は、接触センサ21が接触を感知する状態であるペンダウン中及び接触センサ21が接触を感知しない状態であるペンアップ状態に切り換わった直後のクロック信号活性時にパルスを出力するように構成される。
【0025】
クロック信号のパルス間隔は、記憶性表示体30の大きさ等により最適に決定され、例えば、記憶性表示体30がA4サイズ程度である場合は、10ミリ秒程度のパルス間隔に設定される。このタイミング発生回路110の出力は、音波送信部120及び光送信部130に入力される。
音波送信部120は、超音波発振器23と、この超音波発振器23を駆動するための超音波駆動回路121とで構成される。超音波駆動回路121は、タイミング発生回路110からのパルス信号を受信する間、前記超音波発振器23を断続的に駆動し超音波計測パルスを発生させる。超音波発振器23は、超音波駆動回路121から送信される駆動信号に従い、位置指示装置20の先端部から全方位に向けて、周波数が略2万〔Hz〕を越える超音波を発信する。これによって超音波計測パルスが発信される。
【0026】
光送信部130は、赤外線LED22と、この赤外線LED22を駆動するためのLED駆動回路131とから構成される。LED駆動回路131は、タイミング発生回路110からのパルス信号を受信する間、赤外線LED22を断続的に駆動し、同期光パルスを発生させる。
赤外線LED22は、LED駆動回路131から入力される駆動信号に従い、位置指示装置20の先端部から、波長が略770〔nm〕を越える赤外光を発光する。これによって同期光パルスが発信される。
【0027】
このように、入力ペン20は、ペンダウン中、同期光パルス及び超音波計測パルスを同時に発信し且つこれを断続的に発信する。
一方、座標検出部110は、超音波計測パルスを受信する音波受信部210と、基準体10Bを構成する赤外線センサ12から構成され同期光パルスを受信する光受信部220と、時間計測を行うためのカウンタ回路230と、入力ペン20の座標算出を行う座標演算部240とを備える。
【0028】
音波受信部210は、基準体(10A,10B)を構成する超音波センサ(11A,11B)から構成される。
カウンタ回路230は、超音波センサ(11A,11B)の出力をそれぞれA系統及びB系統のストップ信号として入力し、また、赤外線センサ12の検出信号をスタート信号として入力する。そして、カウンタ回路230は、赤外線センサ12で同期光パルスを検出した時点で、A系統及びB系統の計測を共に開始し、超音波センサ(11A,11B)で超音波を検出したときにはそれぞれに対応する系統の計測を終了する。これにより、A系統及びB系統のそれぞれについて、同期光パルスを受信した時点から超音波計測パルスを受信するまでの間の所要時間を計測する。そして、次に同期光パルスを検出するまでの間、この計測結果を保持する。なお、カウンタ回路230での計測結果は、座標演算部240で参照可能に構成されている。
【0029】
この座標演算部240では、公知の手順と同様に、同期光パルスを受信してから超音波計測パルスを受信するまでの所要時間と、音速値Vと、既知の超音波センサ11A及び11B間の距離とから超音波発振器23の位置、すなわち、入力ペン20の位置座標を算出する。
次に、入力ペン20で感圧性シート70に対して入力操作が行われたときの表示装置50の処理の流れを、図5及び図6のフローチャートに基づいて説明する。
【0030】
今、使用者が、入力ペン20を、感圧性シート70上で移動させ、図1に示すように、ひらがなの“あ”を入力したものとする。
感圧性シート70は、入力ペン20により加圧されることから入力ペン20が移動するとこれに伴ってその移動軌跡に沿って発光し、感圧性シート70にひらがなの“あ”という文字が発光表示されることになる。すなわち、入力ペン20による入力情報が速やかに表示装置50に表示されることになる。
【0031】
一方、入力ペン20では、入力ペン20の先端と感圧性シート70とが接触することから接触センサ21が作動し、これによって、接触センサ21が作動している間、赤外線LED22及び超音波発振器23が作動し、同期光パルス及び超音波計測パルスが断続的に発信される。
表示装置50では、同期光パルス及び超音波計測パルスを受信すると、図5の位置入力割込処理を実行し、入力した同期光パルス及び超音波計測パルスに基づき超音波計測パルスの伝達所要時間を計測し、計測した伝達所要時間に基づき上記の手順で入力ペン20の位置を検出する(ステップS1)。そして、この検出した位置座標を未反映筆跡データとしてワークRAM150に格納する(ステップS2)。ここで、前記ステップS1の処理が位置検出手段に対応し、ワークRAM150が保持手段に対応している。
【0032】
そして、入力ペン20が感圧性シート70上で移動されている間、入力ペン20から同期光パルス及び超音波計測パルスが発信され、座標検出部110では、逐次、入力ペン20の位置を検出しこれをワークRAM150に格納する。そして、“あ”の文字が書き終わった時点では、ワークRAM150には、“あ”と書いたときの入力ペン20の移動軌跡に応じた位置座標がワークRAM150に格納されることになる。
【0033】
そして“あ”の文字が書き終わった時点で、使用者が感圧性シート70を図2に示すようにめくると、感圧性シート70と記憶性表示体30との接触が解除されることから、この時点で、感圧性シート70で表示される発光文字は消えることになる。
また、感圧性シート70がめくられることにより、剥離検出スイッチ(80A,80B)が作動する。このため、表示装置50では、ワークRAM150を参照し、この場合、ワークRAM150には、“あ”と書いたときの移動軌跡を表す位置座標が格納されており、これは記憶性表示体30に反映させていない未反映筆跡データであることから、図6のステップS11からステップS12に移行し、ワークRAM150からこの未反映筆跡データを読み出す。
【0034】
次いでステップS13に移行し、この未反映筆跡データを現在表示中の表示画像に反映させる(表示画像更新手段)。ここで、ワークRAM150には、前述のように、入力ペン20で“あ”とかいたときの入力ペン20の移動軌跡を表す位置座標が逐次格納されていることから、この未反映筆跡データはすなわち、“あ”の文字を表す位置座標となり、図2に示すように、記憶性表示体30に“あ”の文字が表示されることになる。
【0035】
そして、この状態で感圧性シート70を記憶性表示体30に被装すると、感圧性シート70は略透明であるから、図7に示すように、感圧性シート70を通して記憶性表示体30に表示された文字“あ”を見ることができる。
したがって、続いて入力を行う場合には、感圧性シート70を通して見える“あ”の文字に続いて感圧性シート70上で文字を書くことにより、これに続く文字を入力することができる。このとき、感圧性シート70を通して“あ”が表示されその位置は感圧性シート70上で“あ”と移動させた場合と同じ位置に表示されていることから、例えば“あさ”と続けて入力する場合と同様の間隔で、“あ”に続く文字“さ”を記載することができる。
【0036】
一方、感圧性シート70を剥離したときに、未反映筆跡データがワークRAM150にない場合には、図6のステップS11からそのまま処理を終了する。つまり、反映させる表示データがない場合には表示画像の更新は行わない。
ここで、記憶性表示体30の場合、入力ペン20での入力に対してその入力情報が記憶性表示体30の表示に反映されるまでに時間がかかる。しかしながら、上述のように、記憶性表示体30の上に感圧性シート70を載置し、この感圧性シート70に対して入力を行うようにしているから、入力情報を感圧性シート70に速やかに反映させることができる。また、感圧性シート70を剥離するタイミングで記憶性表示体30への表示を行うようにしているから、入力情報を記憶性表示体30の表示画像に対しても反映させることができる。
【0037】
したがって、記憶性表示体30を用いた場合、入力ペン20による入力情報が記憶性表示体30の表示画像に反映されるまでに時間がかかるが、感圧性シート70を用いることで、低電力且つリフレッシュが不要といった記憶性表示体の特質を生かしつつ、入力情報を速やかに表示画像に反映させることができ、使い勝手のよい情報入力装置1を実現することができる。
【0038】
また、記憶性表示体30に対する表示画像の更新は、入力ペン20の移動に伴い逐次行うのではなく、感圧性シート70が剥離される毎に、それまでの未反映筆跡データをまとめて更新するようにしているから、その分、記憶性表示体30における表示画像の更新回数を削減することができ、表示画像の更新に伴う消費電力の低減を図ることができる。
また、感圧性シート70に対する削除操作を行う時点で、記憶性表示体30における表示画像の更新を行うようにしているから、削除操作を行っている間に表示画像の更新が行われればよい。したがって、記憶性表示体30に対してそれほど高速動作を要求されることはないから、表示画像の更新速度が比較的遅い記憶性表示体30を用いてはいるものの、感圧性シート70の表示画像と記憶性表示体30の表示画像とを重畳させることで、比較的高速動作が要求される手書き入力に対する情報入力装置の表示装置50として十分適用することができる。
【0039】
また、上記実施の形態においては、副表示手段として、界面光学状態が変化する樹脂シートからなる感圧性シートを用いるようにしているから、簡易な構成で副表示手段を構成することができ、従来の記憶性表示体を用いた情報入力装置に対し大幅な変更やコストの増加を伴うことなく容易に実現することができる。
なお、上記実施の形態においては、副表示手段として、加圧粘着性の樹脂シートを用いた場合について説明したが、これに限るものではない。例えば、感熱性の部材を用い温度変化を与えることにより表示可能なもの、或いは電気的又は磁気的変化により表示可能なもの、また、いわゆるホワイトボードに用いる形態の、筆跡が払拭可能なペンで直接記載するようにしたもの等、を用いた表示手段であっても適用することができる。要は、入力ペン20での入力情報を速やかに表示させることの可能な表示手段であって、少なくとも、記憶性表示体30において移動体の移動に応じてその移動軌跡を表示画像に反映するようにした場合よりも、より速やかに表示画像の更新を行うことの可能な表示手段であり、且つ、この副表示手段の下に配置された記憶性表示体30の表示内容を透過表示することの可能な表示手段であれば適用することができる。
【0040】
また、上記実施の形態においては、副表示手段としての略透明な感圧性シートを用いた場合について説明したが、副表示手段は必ずしも略透明である必要はない。例えば、透明ではない副表示手段を用いた場合には、入力操作を行うときのみ副表示手段を記憶性表示体30上に載置して、入力ペン20の移動と共に副表示手段により表示を行い、入力操作終了後は、副表示手段を移動し、記憶性表示体30の表示画像を直接見るようにすればよい。
【0041】
また、上記実施の形態においては、入力ペン20の位置検出方式として、入力ペン20で発信した同期光パルス及び超音波計測パルスに基づき位置座標を検出するようにした場合について説明したがこれに限るものではない。例えば、電磁的なタブレット装置等であっても適用することができ、要は、感圧性シート70を介して記憶性表示体30に対する入力を行う際に、入力ペン20の位置検出を行うことができればどのような方法であっても適用することができる。
【0042】
また、上記実施の形態においては、感圧性シート70を剥離することにより感圧性シート70の表示内容を消去するようにした場合について説明したが、これに限るものではない。例えば、感圧性シート70と記憶性表示体30との間に、感圧性シート70を長手方向からみたときの幅よりも長く、且つ感圧性シート70の長手方向に移動する操作レバーを介挿し、この操作レバーを長手方向に移動させ、感圧性シート70と記憶性表示体30との接着を解除するようにしたものであっても適用することができる。
【0043】
また、上記実施の形態においては、感圧性シート70を剥離したときに、記憶性表示体30への入力情報を反映させるようにした場合について説明したが、これに限るものではない。例えば、剥離検出スイッチ(80A,80B)に代えて記憶性表示体30への反映を指示するための反映スイッチを設け、この反映スイッチが操作されたときに、ワークRAM150に格納された実反映筆跡データを記憶性表示体30の表示画像に反映させるようにしてもよい。また、剥離検出スイッチ(80A,80B)と共に反映スイッチを設け、剥離検出スイッチ(80A,80B)が作動し且つ反映スイッチが操作されたときにのみ、ワークRAM150に格納された未反映筆跡データを記憶性表示体30の表示画像に反映させるようにし、剥離検出スイッチ(80A,80B)が作動しても反映スイッチが操作されないときには、入力情報を記憶性表示体30の表示画像に反映させないようにすることもできる。このようにすることによって、例えば、感圧性シート70に表示された入力情報を参照した時点でこの入力情報を記憶性表示体30の表示画像に反映させたくない場合等には、反映スイッチを操作せずに、感圧性シート70をめくるだけで、入力情報を記憶性表示体30の表示画像に反映させることなく、入力情報を消去することができる。
【0044】
また、上記実施の形態においては、入力ペン20の移動軌跡と同じサイズで感圧性シート70に入力情報を表示すると共に、記憶性表示体30の表示画像にも表示するようにした場合について説明したが、これに限るものではなく、例えば、感圧性シート70に入力領域を設定し、この入力領域に対して入力ペン20で入力された入力情報を、そのサイズを縮小して、記憶性表示体30の表示画像に反映させるようにしてもよい。このようにすることによって、例えば、記憶性表示体30の小さな領域に対して細かい入力を行うような場合であっても、感圧性シート70の入力領域では、より大きなサイズで入力操作を行うことができるから、細かい入力を行う場合等における使い勝手を向上させることができる。
【0045】
また、上記実施の形態においては、入力ペン20の移動軌跡をそのまま記憶性表示体30に反映させるようにした場合について説明したが、例えば、手書きによる文字入力が行われたときには、この入力文字を認識し、ゴシック体或いは明朝体等といった指定された表示形式で表示することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明における情報入力装置の一例を示す外観図である。
【図2】本発明における情報入力装置の一例を示す外観図である。
【図3】表示装置の概略構成を示すブロック図である。
【図4】位置指示装置及び座標検出部の機能構成を示すブロック図である。
【図5】表示装置での処理の流れを説明するためのフローチャートである。
【図6】表示装置での処理の流れを説明するためのフローチャートである。
【図7】本発明の動作を説明するための説明図である。
【符号の説明】
【0047】
20 入力ペン、30 記憶性表示体、70 感圧性シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体の移動軌跡に応じた画像を表示する情報入力装置において、
記憶性表示体及び当該記憶性表示体の表示面上に配置される副表示手段を備えた表示装置と、
前記副表示手段上での前記移動体の位置を検出する位置検出手段と、
当該位置検出手段で検出した、所定期間における前記移動体の位置情報を保持する保持手段と、
当該保持手段で保持する位置情報をもとに、予め設定したタイミングで、前記所定期間における前記移動体の移動軌跡に応じた画像を、前記記憶性表示体の表示画像に反映させる表示画像更新手段と、を備え、
前記副表示手段は、当該副表示手段の表示面上を前記移動体が移動したとき当該移動体の移動と共にその移動軌跡を表示可能に構成されていることを特徴とする情報入力装置。
【請求項2】
前記副表示手段は、前記記憶性表示体の表示面との界面光学状態が筆記圧により変化する感圧性シートを備え、前記記憶性表示体の表示面と前記感圧性シートとの接触を解除することで前記界面光学状態が非変化状態に復帰するようになっていることを特徴とする請求項1記載の情報入力装置。
【請求項3】
前記記憶性表示体の表示面と前記感圧性シートとの接触を解除する操作が行われたとき作動するスイッチ手段を備え、
前記表示画像更新手段は、前記スイッチ手段が作動したときに、前記記憶性表示体の表示画像への反映を行うことを特徴とする請求項2記載の情報入力装置。
【請求項4】
前記副表示手段は、前記記憶性表示体の表示面上に着脱可能に配置されていることを特徴とする請求項1から請求項3の何れか1項に記載の情報入力装置。
【請求項5】
前記副表示手段は、前記記憶性表示体による表示画像を透過表示可能に構成されていることを特徴とする請求項1から請求項4の何れか1項に記載の情報入力装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−139643(P2006−139643A)
【公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−330085(P2004−330085)
【出願日】平成16年11月15日(2004.11.15)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】