説明

情報入力装置

【課題】視認性に優れた情報入力装置を提供する。
【解決手段】情報入力装置は、表面を有する光学層と、表面に形成された複数の第1の電極と、表面に第1の電極と交差するように形成された複数の第2の電極と、第1の電極と第2の電極とが交差する交差部に介在された透明絶縁層とを備える。光学層の表面は、可視光の波長以下の平均波長を有する波面であり、波面の平均波長をλmとし、波面の振動の平均幅をAmとしたき、比率(Am/λm)が、0.2以上1.0以下の範囲内である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、情報入力装置に関する。詳しくは、互いに交差するように形成された第1の電極および第2の電極を光学層表面に有する情報入力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話や携帯音楽端末などのモバイル機器にタッチパネル(入力装置)が搭載されるケースが増えている。タッチパネルは、指やペンなどにより接触が行われた場所の位置検出を行うための入力装置である。このようなタッチパネルには、抵抗膜型や静電容量型などがあるが、モバイル機器には静電容量型が非常に多く用いられている。
【0003】
静電容量型タッチパネルでは、例えば、互いに交差する方向に電極パターンを延在させて、指などが接触あるいは近接した際、電極間の静電容量が変化することを検知して入力位置を検出するタイプのものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−173238号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の従来技術では、2枚の透明導電性フィルムを使用するため、内部反射が増加し、視認性が低下してしまう。また、電極パターンが形成されている部分と形成されていない部分との光学特性の違いにより、電極パターンが視認されてしまう。
【0006】
したがって、本技術の目的は、視認性に優れた情報入力装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の課題を解決するために、本技術は、
表面を有する光学層と、
表面に形成された複数の第1の電極と、
表面に第1の電極と交差するように形成された複数の第2の電極と、
第1の電極と第2の電極とが交差する交差部に介在された透明絶縁層と
を備え、
光学層の表面は、可視光の波長以下の平均波長を有する波面であり、
波面の平均波長をλmとし、波面の振動の平均幅をAmとしたき、比率(Am/λm)が、0.2以上1.0以下の範囲内である情報入力装置である。
【0008】
本技術において、光学層の波面は、複数の構造体を基体表面に配列することにより形成されていることが好ましい。構造体は、凸状または凹状を有し、所定の格子状に配置されていることが好ましい。格子状としては、四方格子状もしくは準四方格子状、または六方格子状もしくは準六方格子状を用いることが好ましい。
【0009】
本技術において、同一トラック内における構造体の配置ピッチP1は、隣接する2つのトラック間における構造体の配置ピッチP2よりも長いことが好ましい。このようにすることで、楕円錐または楕円錐台形状を有する構造体の充填率を向上することができるので、光学調整機能を向上することができる。
【0010】
本技術において、各構造体が、基体表面において六方格子パターン、または準六方格子パターンを形成している場合には、同一トラック内における構造体の配置ピッチをP1、隣接する2つのトラック間における構造体の配置ピッチをP2としたとき、比率P1/P2が、1.00≦P1/P2≦1.1、または1.00<P1/P2≦1.1の関係を満たすことが好ましい。このような数値範囲にすることで、楕円錐または楕円錐台形状を有する構造体の充填率を向上することができるので、光学調整機能を向上することができる。
【0011】
本技術において、各構造体が、基体表面において六方格子パターン、または準六方格子パターンを形成している場合には、各構造体は、トラックの延在方向に長軸方向を有し、中央部の傾きが先端部および底部の傾きよりも急峻に形成された楕円錐または楕円錐台形状であることが好ましい。このような形状にすることで、光学調整機能を向上することができる。
【0012】
本技術において、各構造体が、基体表面において六方格子パターン、または準六方格子パターンを形成している場合には、トラックの延在方向における構造体の高さまたは深さは、トラックの列方向における構造体の高さまたは深さよりも小さいことが好ましい。このような関係を満たさない場合には、トラックの延在方向の配置ピッチを長くする必要が生じるため、トラックの延在方向における構造体の充填率が低下する。このように充填率が低下すると、光学調整機能の低下を招くことになる。
【0013】
本技術において、構造体が、基体表面において四方格子パターンまたは準四方格子パターンを形成している場合には、同一トラック内における構造体の配置ピッチP1は、隣接する2つのトラック間における構造体の配置ピッチP2よりも長いことが好ましい。このようにすることで、楕円錐または楕円錐台形状を有する構造体の充填率を向上することができるので、光学調整機能を向上することができる。
【0014】
構造体が、基体表面において四方格子パターンまたは準四方格子パターンを形成している場合には、同一トラック内における構造体の配置ピッチをP1、隣接する2つのトラック間における構造体の配置ピッチをP2としたとき、比率P1/P2が、1.4<P1/P2≦1.5の関係を満たすことが好ましい。このような数値範囲にすることで、楕円錐または楕円錐台形状を有する構造体の充填率を向上することができるので、光学調整機能を向上することができる。
【0015】
構造体が、基体表面において四方格子パターンまたは準四方格子パターンを形成している場合には、各構造体は、トラックの延在方向に長軸方向を有し、中央部の傾きが先端部および底部の傾きよりも急峻に形成された楕円錐または楕円錐台形状であることが好ましい。このような形状にすることで、光学調整機能を向上することができる。
【0016】
構造体が、基体表面において四方格子パターンまたは準四方格子パターンを形成している場合には、トラックに対して45度方向または約45度方向における構造体の高さまたは深さは、トラックの列方向における構造体の高さまたは深さよりも小さいことが好ましい。このような関係を満たさない場合には、トラックに対して45度方向または約45度方向における配置ピッチを長くする必要が生じるため、トラックに対して45度方向または約45度方向における構造体の充填率が低下する。このように充填率が低下すると、光学調整機能の低下を招くことになる。
【0017】
本技術において、微細ピッチで基体表面に多数配設けられた構造体が、複数列のトラックをなしていると共に、隣接する3列のトラック間において、格子パターンを形成していることが好ましい。格子パターンとしては、六方格子パターン、準六方格子パターン、四方格子パターンおよび準四方格子パターンの少なくとも1種を用いることが好ましい。これにより、表面における構造体の充填密度を高くすることができる。したがって、光学調整機能を高めた情報入力装置を得ることができる。
【0018】
本技術において、光ディスクの原盤作製プロセスとエッチングプロセスとを融合した方法を用いて光学層を作製することが好ましい。光学層作製用原盤を短時間で効率良く製造することができるとともに情報入力装置の大型化にも対応でき、これにより、情報入力装置の生産性の向上を図ることができる。
【0019】
本技術では、光学層の同一面に第1の電極と第2の電極とを形成しているので、光学層の層数を減らすことができる。したがって、内部反射を低減し、視認性の低下を抑制することができる。
【0020】
本技術では、可視光の波長以下の平均波長を有する波面に第1の電極および第2の電極を形成することともに、波面の平均波長λmと波面の振動の平均幅Amとの比率(Am/λm)を0.2以上1.0以下の範囲内としている。したがって、波長依存性の少ない、視認性の優れた光学調整機能を得ることができる。したがって、第1の電極および第2の電極の視認を抑制することができる。ここで、光学調整機能とは、透過特性および/または反射特性の光学調整機能を示す。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように、本技術によれば、情報入力装置の視認性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1Aは、本技術の第1の実施形態に係る情報入力装置の構成の一例を示す概略平面図である。図1Bは、図1Aに示したA−A線に沿った概略断面図である。
【図2】図2Aは、光学層の表面形状の一例を示す斜視図である。図2Bは、図2Aに示したA−A線に沿った断面図である。図2Cは、光学層の表面に形成された複数の構造体の配列の一例を示す平面図である。
【図3】図3は、構造体の境界が不明瞭な場合の構造体底面の設定方法について説明するための概略図である。
【図4】図4Aは、図1Aに示した交差部Cの付近を拡大して示す平面図である。図4Bは、図4Aに示したA−A線に沿った断面図である。
【図5】図5Aは、本技術の第1の実施形態に係る情報入力装置の電極パターンの第1の例を示す概略平面図である。図5Bは、本技術の第1の実施形態に係る情報入力装置の電極パターンの第2の例を示す概略平面図である。
【図6】図6Aは、本技術の第1の実施形態に係る情報入力装置の電極パターンの第3の例を示す概略平面図である。図6Bは、本技術の第1の実施形態に係る情報入力装置の電極パターンの第4の例を示す概略平面図である。
【図7】図7Aは、第1の連結部の第1の構成例を示す概略図である。図7Bは、第1の連結部の第2の構成例を示す概略図である。図7Cは、第1の連結部の第3の構成例を示す概略図である。
【図8】図8Aは、透明絶縁層の第1の形状例を示す概略図である。図8Bは、透明絶縁層の第2の形状例を示す概略図である。図8Cは、透明絶縁層の第3の形状例を示す概略図である。図8Dは、透明絶縁層の第4の形状例を示す概略図である。
【図9】図9Aは、透明絶縁層の第5の形状例を示す概略図である。図9Bは、透明絶縁層の第6の形状例を示す概略図である。図9Cは、透明絶縁層の第7の形状例を示す概略図である。図9Dは、透明絶縁層の第8の形状例を示す概略図である。
【図10】図10Aは、図4Bに示した領域R1を拡大して示す断面図である。図10Bは、図4Bに示した領域R2を拡大して示す断面図である。
【図11】図11Aは、第1の電極の表面形状の一例を説明するための拡大断面図である。図11Bは、第1の電極の膜厚を説明するための拡大断面図である。
【図12】図12Aは、ロール原盤の構成の一例を示す斜視図である。図12Bは、図12Aに示したロール原盤の一部を拡大して表す平面図である。図12Cは、図12BのトラックTにおける断面図である。
【図13】図13は、ロール原盤露光装置の構成の一例を示す概略図である。
【図14】図14A〜図14Dは、本技術の第1の実施形態に係る情報入力装置の製造方法の一例を説明するための工程図である。
【図15】図15A〜図14Cは、本技術の第1の実施形態に係る情報入力装置の製造方法の一例を説明するための工程図である。
【図16】図16A〜図16Dは、本技術の第1の実施形態に係る情報入力装置の製造方法の一例を説明するための工程図である。
【図17】図17は、本技術の第2の実施形態に係る情報入力装置の光学層の表面形状の一例を示す平面図である。
【図18】図18Aは、本技術の第3の実施形態に係る情報入力装置の光学層の表面形状の一例を示す平面図である。図18Bは、本技術の第3の実施形態に係る情報入力装置の光学層の表面形状の一例を示す断面図である。
【図19】図19は、本技術の第4の実施形態に係る情報入力装置の構成の一例を示す断面図である。
【図20】図20Aは、サンプル1−1〜1−3の基体表面に配列された複数の構造体を示す平面図である。図20Bは、サンプル1−1〜1−3の透明導電性素子の反射スペクトルを示すグラフである。
【図21】図21は、サンプル2−1〜2−3の透明導電性素子の透過スペクトルの測定結果を示すグラフである。
【図22】図22Aは、サンプル3−1〜3−3の透明導電性素子の反射スペクトルを示すグラフである。図22Bは、サンプル3−1〜3−3の透明導電性素子の透過スペクトルを示すグラフである。
【図23】図23は、サンプル4−1〜4−4の透明導電性素子の反射スペクトルを示すグラフである。
【図24】図24は、サンプル6−1、6−2およびサンプル6−3、6−4の透明導電性素子の反射率の差ΔRを示すグラフである。
【図25】図25Aは、サンプル7−1の透明導電性素子の反射スペクトルを示すグラフである。図25Bは、サンプル7−2の透明導電性素子の反射スペクトルを示すグラフである。図25Cは、サンプル7−3の透明導電性素子の反射スペクトルを示すグラフである。
【図26】図26Aは、サンプル7−2の透明導電層の厚さD1、D2、D3を示す断面図である。図26Bは、サンプル7−3の透明導電層の厚さD1、D2、D3を示す断面図である。
【図27】図27は、サンプル9−1〜10−5の透明導電性シートの表面抵抗値の測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本技術の実施形態について図面を参照しながら以下の順序で説明する。なお、以下の実施形態の全図においては、同一または対応する部分には同一の符号を付す。
(1)第1の実施形態(光学層の波面に電極パターンを形成した情報入力装置の例)
(1−1)情報入力装置の概略構成
(1−2)情報入力装置の構成要素
(1−2−1)第1の光学層
(1−2−2)第2の光学層
(1−2−3)第1の電極および第2の電極
(1−2−4)電極の形状
(1−3)光学特性
(1−4)ロール原盤の構成
(1−5)露光装置の構成
(1−6)情報入力装置の製造方法
(2)第2の実施形態(複数の構造体を(準)四方格子状に配列することにより波面を形成した情報入力装置の例)
(3)第3の実施形態(複数の構造体をランダムに配列することにより波面を形成した情報入力装置の例)
(4)第4の実施形態(電極面側を表示装置の表示面に対向させた情報入力装置の例)
(5)本技術の構成
【0024】
(1)第1の実施形態
(1−1)情報入力装置の概略構成
図1Aは、本技術の第1の実施形態に係る情報入力装置の構成の一例を示す概略平面図である。図1Bは、図1Aに示したA−A線に沿った概略断面図である。情報入力装置1は、いわゆる投影型静電容量方式タッチパネルであり、図1Aおよび図1Bに示すように、表面を有する光学層(第1の光学層)2と、光学層2の同一の表面に形成された複数の第1の電極3および複数の第2の電極4と、第1の電極3および第2の電極4の間に介在された透明絶縁層5とを備える。光学層2の表面は波面であり、この波面に倣うように第1の電極3および第2の電極4が形成されている。また、図1Bに示すように、必要に応じて、第1の電極3および第2の電極4が形成された光学層2の表面に光学層(第1の光学層)6をさらに備えるようにしてもよい。光学層6は、貼合層7と、基体8とを備え、貼合層7を介して基体8が光学層2の表面に貼り合わされている。情報入力装置1は、表示装置の表示面に対して適用して好適なものである。光学層2および光学層6は、例えば、可視光に対して透明性を有しており、その屈折率nは、1.2以上1.7以下の範囲内であることが好ましい。以下では、情報入力装置1の表面の面内で互いに直交する2方向をそれぞれX軸方向、およびY軸方向とし、その表面に垂直な方向をZ軸方向と称する。
【0025】
第1の電極3は、光学層2の表面においてX軸方向(第1の方向)に延在されているに対して、第2の電極4は、光学層2の表面においてY軸方向(第2の方向)に向かって延在されている。したがって、第1の電極3と第2の電極4とは直交するように交差している。第1の電極3と第2の電極4とが交差する交差部Cには、両電極間を絶縁するための透明絶縁層5が介在されている。第1の電極3および第2の電極4の一端にはそれぞれ、取り出し電極11が電気的に接続され、この取り出し電極11と駆動回路(図示省略)とがFPC(Flexible Printed Circuit)12を介して接続されている。
【0026】
(1−2)情報入力装置の構成要素
(1−2−1)第1の光学層
(第1の光学層の表面形状)
図2Aは、光学層の表面形状の一例を示す斜視図である。図2Aに示すように、光学層2は、一主面に波面Swを有している。波面Swの平均波長λmに対する波面Swの振動の平均幅Amの比率(Am/λm)が、好ましくは0.2以上1.0以下、より好ましくは0.3以上0.8以下の範囲内である。比率(Am/λm)が0.2未満であると、波面Swによる光学調整機能が低下する傾向がある。一方、比率(Am/λm)が1.0を超えると、電気的信頼性が低下する傾向がある。
【0027】
波面Swの平均波長λmは、光学調整機能を目的とする光の波長帯域以下であることが好ましい。光学調整機能を目的とする光の波長帯域は、例えば、紫外光の波長帯域、可視光の波長帯域または赤外光の波長帯域である。ここで、紫外光の波長帯域とは10nm〜360nmの波長帯域、可視光の波長帯域とは360nm〜830nmの波長帯域、赤外光の波長帯域とは830nm〜1mmの波長帯域をいう。具体的には、波面Swの平均波長λmは、好ましくは140nm以上300nm以下、より好ましくは150nm以上270nm以下の範囲内である。波面Swの平均波長λmが140nm未満であると、電気特性が悪化する傾向がある。一方、波面Swの平均波長λmが300nmを超えると、視認性が悪化する傾向がある。
【0028】
波面Swの振動の平均幅Amは、好ましくは28nm以上300nm以下、より好ましくは50nm以上240nm以下、さらに好ましくは80nm以上240nm以下の範囲内である。波面Swの振動の平均幅Amが28nm未満であると、光学調整機能が劣化する傾向がある。一方、波面Swの振動の平均幅Amが300nmを超えると、電気特性が劣化する傾向がある。
【0029】
ここで、波面Swの平均波長λm、振動の平均幅Am、および比率(Am/λm)は、以下のようにして求めたものである。まず、波面Swの振動の幅が最大となる位置を含むようにして情報入力装置1を一方向に切断し、その断面を透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)にて撮影する。次に、撮影したTEM写真から、波面Swの波長λおよび振動の幅Aを求める。この測定を情報入力装置1から無作為に選び出された10箇所で繰り返し行い、測定値を単純に平均(算術平均)して波面Swの平均波長λm、および振動の平均幅Amを求める。次に、これらの平均波長λm、および振動の平均幅Amを用いて、比率(Am/λm)を求める。
【0030】
波面Swのうち斜面の平均角度が、好ましくは60°以下、より好ましくは30°以上60°以下の範囲内である。平均角度が30°未満であると、波面Swによる電気的信頼性が低下する傾向がある。一方、平均角度が60°を超えると、電気的信頼が低下する傾向がある。また、平均角度が60°を超えると、第1の電極3および第2の電極4を作製する際の透明導電層のエッチング耐性が低下する傾向にある。
【0031】
(第1の光学層の構成)
図2Bは、図2Aに示したA−A線に沿った断面図である。図2Bに示すように、光学層2は、例えば、基体21と、基体21の表面に形成された複数の構造体23とを備える。複数の構造体23は、複数の列をなすように配置されている。波面Swは、このように配列された複数の構造体23により形成されている。構造体23は、例えば、基体21の表面に対して凸状または凹状を有している。なお、図2Aおよび図2Bでは、構造体23が、基体21の表面に対して凸状を有する例が示されている。構造体23と基体21とは、例えば、別成形または一体成形されている。構造体23と基体21とが別成形されている場合には、必要に応じて構造体23と基体21との間に基底層22をさらに備えるようにしてもよい。基底層22は、構造体23の底面側に構造体23と一体成形される層であり、構造体23と同様のエネルギー線硬化性樹脂組成物などを硬化してなる。
【0032】
(基体)
基体21は、例えば、透明性を有する透明基体である。基体21の材料としては、例えば、透明性を有するプラスチック材料、ガラスなどを主成分とするものが挙げられるが、これらの材料に特に限定されるものではない。
【0033】
ガラスとしては、例えば、ソーダライムガラス、鉛ガラス、硬質ガラス、石英ガラス、液晶化ガラスなど(「化学便覧」基礎編、P.I-537、日本化学会編参照)が用いられる。プラスチック材料としては、透明性、屈折率、および分散などの光学特性、さらには耐衝撃性、耐熱性、および耐久性などの諸特性の観点から、ポリメチルメタアクリレート、メチルメタクリレートと他のアルキル(メタ)アクリレート、スチレンなどといったビニルモノマーとの共重合体などの(メタ)アクリル系樹脂;ポリカーボネート、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート(CR-39)などのポリカーボネート系樹脂;(臭素化)ビスフェノールA型のジ(メタ)アクリレートの単独重合体ないし共重合体、(臭素化)ビスフェノールAモノ(メタ)アクリレートのウレタン変性モノマーの重合体及び共重合体などといった熱硬化性(メタ)アクリル系樹脂;ポリエステル特にポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートおよび不飽和ポリエステル、アクリロニトリル−スチレン共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリアリレート、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、シクロオレフィンポリマー(商品名:アートン、ゼオノア)、シクロオレフィンコポリマーなどが好ましい。また、耐熱性を考慮したアラミド系樹脂の使用も可能である。ここで、(メタ)アクリレートは、アクリレートまたはメタアクリレートを意味する。
【0034】
基体21としてプラスチック材料を用いる場合、プラスチック表面の表面エネルギー、塗布性、すべり性、平面性などをより改善するために、表面処理として下塗り層を設けるようにしてもよい。この下塗り層としては、例えば、オルガノアルコキシメタル化合物、ポリエステル、アクリル変性ポリエステル、ポリウレタンなどが挙げられる。また、下塗り層を設けるのと同様の効果を得るために、基体21の表面に対してコロナ放電、UV照射処理を行うようにしてもよい。
【0035】
基体21がプラスチックフィルムである場合には、基体21は、例えば、上述の樹脂を伸延、あるいは溶剤に希釈後フィルム状に成膜して乾燥するなどの方法で得ることができる。また、基体21の厚さは、情報入力装置1の用途に応じて適宜選択することが好ましく、例えば25μm〜500μm程度である。
【0036】
基体21の形状としては、例えば、シート状、プレート状、ブロック状を挙げることができるが、特にこれらの形状に限定されるものではない。ここで、シートにはフィルムが含まれるものと定義する。
【0037】
(構造体)
図2Cは、光学層の表面に形成された複数の構造体の配列の一例を示す平面図である。図2Cに示すように、複数の構造体23は、基体21の表面に対して2次元配列されている。構造体23は、反射の低減または透過の向上を目的とする光の波長帯域以下の短い平均配置ピッチで周期的に2次元配列されていることが好ましい。
【0038】
複数の構造体23は、基体21の表面において複数列のトラックT1,T2,T3,・・・(以下総称して「トラックT」ともいう。)をなすような配置形態を有する。本技術において、トラックとは、構造体23が列をなして連なった部分のことをいう。トラックTの形状としては、直線状、円弧状などを用いることができ、これらの形状のトラックTをウォブル(蛇行)させるようにしてもよい。このようにトラックTをウォブルさせることで、外観上のムラの発生を抑制できる。
【0039】
トラックTをウォブルさせる場合には、基体21上における各トラックTのウォブルは、同期していることが好ましい。すなわち、ウォブルは、シンクロナイズドウォブルであることが好ましい。このようにウォブルを同期させることで、六方格子または準六方格子の単位格子形状を保持し、充填率を高く保つことができる。ウォブルしたトラックTの波形としては、例えば、サイン波、三角波などを挙げることができる。ウォブルしたトラックTの波形は、周期的な波形に限定されるものではなく、非周期的な波形としてもよい。ウォブルしたトラックTのウォブル振幅は、例えば±10nm程度に選択される。
【0040】
構造体23は、例えば、隣接する2つのトラックT間において、半ピッチずれた位置に配置されている。具体的には、隣接する2つのトラックT間において、一方のトラック(例えばT1)に配列された構造体23の中間位置(半ピッチずれた位置)に、他方のトラック(例えばT2)の構造体23が配置されている。その結果、図3Bに示すように、隣接する3列のトラック(T1〜T3)間においてa1〜a7の各点に構造体23の中心が位置する六方格子パターンまたは準六方格子パターンを形成するように構造体23が配置されている。
【0041】
ここで、六方格子とは、正六角形状の格子のことをいう。準六方格子とは、正六角形状の格子とは異なり、歪んだ正六角形状の格子のことをいう。例えば、構造体23が直線上に配置されている場合には、準六方格子とは、正六角形状の格子を直線状の配列方向(トラック方向)に引き伸ばして歪ませた六方格子のことをいう。構造体23が円弧状に配置されている場合には、準六方格子とは、正六角形状の格子を円弧状に歪ませた六方格子、または正六角形状の格子を配列方向(トラック方向)に引き伸ばして歪ませ、かつ、円弧状に歪ませた六方格子のことをいう。構造体23が蛇行して配列されている場合には、準六方格子とは、正六角形状の格子を構造体23の蛇行配列により歪ませた六方格子、または正六角形状の格子を配列方向(トラック方向)に引き伸ばして歪ませ、かつ、構造体23の蛇行配列により歪ませた六方格子のことをいう。
【0042】
構造体23が準六方格子パターンを形成するように配置されている場合には、図2Cに示すように、同一トラック(例えばT1)内における構造体23の配置ピッチP1(例えばa1〜a2間距離)は、隣接する2つのトラック(例えばT1およびT2)間における構造体23の配置ピッチ、すなわちトラックの延在方向に対して±θ方向における構造体23の配置ピッチP2(例えばa1〜a7、a2〜a7間距離)よりも長くなっていることが好ましい。このように構造体23を配置することで、構造体23の充填密度の更なる向上を図れるようになる。
【0043】
構造体23の具体的な形状としては、例えば、錐体状、柱状、針状、半球体状、半楕円体状、多角形状などが挙げられるが、これらの形状に限定されるものではなく、他の形状を採用するようにしてもよい。錐体状としては、例えば、頂部が尖った錐体形状、頂部が平坦な錐体形状、頂部に凸状または凹状の曲面を有する錐体形状が挙げられ、電気的信頼性の観点からすると、頂部に凸状の曲面を有する錐体形状が好ましいが、これらの形状に限定されるものではない。頂部に凸状の曲面を有する錐体形状としては、例えば、放物面状などの2次曲面状が挙げられる。また、錐体状の錐面を凹状または凸状に湾曲させるようにしてもよい。後述するロール原盤露光装置(図13参照)を用いてロール原盤を作製する場合には、構造体23の形状として、頂部に凸状の曲面を有する楕円錐形状、または頂部が平坦な楕円錐台形状を採用し、それらの底面を形成する楕円形の長軸方向をトラックTの延在方向と一致させることが好ましい。ここで、楕円、球体、楕円体などの形状には、数学的に定義される完全な楕円、球体、楕円体などの形状のみならず、多少の歪みが付与された楕円、球体、楕円体などの形状も含まれる。
【0044】
光学調整機能の向上の観点からすると、頂部の傾きが緩やかで中央部から底部に徐々に急峻な傾きの錐体形状が好ましい。また、反射特性および透過特性の光学調整機能の向上の観点からすると、中央部の傾きが底部および頂部より急峻な錐形形状、または、頂部が平坦な錐体形状であることが好ましい。構造体23が楕円錐形状または楕円錐台形状を有する場合、その底面の長軸方向が、トラックの延在方向と平行となることが好ましい。
【0045】
構造体23は、その底部の周縁部に、頂部から下部の方向に向かってなだらかに高さが低下する曲面部23bを有することが好ましい。情報入力装置1の製造工程において光学層2を原盤などから容易に剥離することが可能になるからである。なお、曲面部23bは、構造体23の周縁部の一部にのみ設けてもよいが、上記剥離特性の向上の観点からすると、構造体23の周縁部の全部に設けることが好ましい。
【0046】
構造体23の周囲の一部または全部に突出部23aを設けることが好ましい。このようにすると、構造体23の充填率が低い場合でも、反射率を低く抑えることができるからである。突出部23aは、成形の容易さの観点からすると、隣り合う構造体23の間に設けることが好ましい。また、構造体23の周囲の一部または全部の表面を荒らし、微細の凹凸を形成するようにしてもよい。具体的には例えば、隣り合う構造体23の間の表面を荒らし、微細な凹凸を形成するようにしてもよい。また、構造体23の表面、例えば頂部に微小な穴を形成するようにしてもよい。
【0047】
なお、図2A〜図2Cでは、各構造体23がそれぞれ同一の大きさ、形状および高さを有しているが、構造体23の形状はこれに限定されるものではなく、基体表面に2種以上の大きさ、形状および高さを有する構造体23が形成されていてもよい。
【0048】
トラックの延在方向における構造体23の高さH1は、列方向における構造体23の高さH2よりも小さいことが好ましい。すなわち、構造体23の高さH1、H2がH1<H2の関係を満たすことが好ましい。H1≧H2の関係を満たすように構造体23を配列すると、トラックの延在方向の配置ピッチP1を長くする必要が生じるため、トラックの延在方向における構造体23の充填率が低下するためである。このように充填率が低下すると、光学調整機能の低下を招くことになる。
【0049】
なお、構造体23のアスペクト比は全て同一である場合に限らず、各構造体23が一定の高さ分布をもつように構成されていてもよい。高さ分布を有する構造体23を設けることで、光学調整機能の波長依存性を低減することができる。したがって、優れた光学調整機能を有する情報入力装置1を実現することができる。
【0050】
ここで、高さ分布とは、2種以上の高さを有する構造体23が基体21の表面に設けられていることを意味する。例えば、基準となる高さを有する構造体23と、この構造体23とは異なる高さを有する構造体23とが基体21の表面に設けるようにしてもよい。この場合、基準とは異なる高さを有する構造体23は、例えば基体21の表面に周期的または非周期的(ランダム)に設けられる。その周期性の方向としては、例えば、トラックの延在方向、列方向などが挙げられる。
【0051】
構造体23の平均配置ピッチPm、平均高さHmおよびアスペクト比(平均高さまたは平均深さHm/平均配置ピッチPm)はそれぞれ、波面Swの平均波長λm、振動の平均幅Amおよび比率(振動の平均幅Am/平均波長λm)と同様である。
【0052】
同一トラック内における構造体23の配置ピッチをP1、隣接する2つのトラック間における構造体23の配置ピッチをP2としたとき、比率P1/P2が、1.00≦P1/P2≦1.1、または1.00<P1/P2≦1.1の関係を満たすことが好ましい。このような数値範囲にすることで、楕円錐または楕円錐台形状を有する構造体23の充填率を向上することができるので、光学調整機能を向上することができる。
【0053】
波面Swの面積S1に対する平坦部の面積S2の比率Rs((S2/S1)×100)が、好ましくは0%以上50%以下、より好ましくは0%以上45%以下、さらに好ましくは0%以上30%以下の範囲内である。面積比率Rsを50%以下にすることで、光学調整機能を向上することができる。
【0054】
ここで、波面Swの面積S1に対する平坦部の面積S2の比率Rs((S2/S1)×100)は以下のようにして求めた値である。まず、情報入力装置1の表面を走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)を用いてTop Viewで撮影する。次に、撮影したSEM写真から無作為に単位格子Ucを選び出し、その単位格子Ucの配置ピッチP1、およびトラックピッチTpを測定する(図2C参照)。また、その単位格子Ucの中央に位置する構造体23の底面の面積S(structure)を画像処理により測定する。次に、測定した配置ピッチP1、トラックピッチTp、および底面の面積S(structure)を用いて、以下の式より比率Rを求める。
比率R=[(S(lattice)−S(structure))/S(lattice)]×100
単位格子面積:S(lattice)=P1×2Tp
単位格子内に存在する構造体の底面の面積:S(structure)=2S
【0055】
上述した比率Rの算出処理を、撮影したSEM写真から無作為に選び出された10箇所の単位格子Ucについて行う。そして、測定値を単純に平均(算術平均)して比率Rの平均率を求め、これを比率Rsとする。
【0056】
構造体23が重なっているときや、構造体23の間に突出部23aなどの副構造体があるときの比率Rsは、構造体23の高さに対して5%の高さに対応する部分を閾値として面積比を判定する方法により求めることができる。
【0057】
図3は、構造体23の境界が不明瞭な場合の比率Rsの算出方法について説明するための図である。構造体23の境界が不明瞭な場合には、断面SEM観察により、図3に示すように、構造体23の高さhの5%(=(d/h)×100)に相当する部分を閾値とし、その高さdで構造体23の径を換算し比率Rsを求めるようにする。構造体23の底面が楕円である場合には、長軸および短軸で同様の処理を行う。
【0058】
構造体23が、その下部同士を重ね合うようにして繋がっていることが好ましい。具体的には、隣接関係にある構造体23の一部または全部の下部同士が重なり合っていることが好ましく、トラック方向、θ方向、またはそれら両方向において重なり合っていることが好ましい。このように構造体23の下部同士を重なり合わせることで、構造体23の充填率を向上することができる。構造体同士は、屈折率を考慮した光路長で使用環境下の光の波長帯域の最大値の1/4以下の部分で重なり合っていることが好ましい。これにより、優れた光学調整機能を得ることができるからである。
【0059】
配置ピッチP1に対する径2rの比率((2r/P1)×100)が、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上の範囲内である。このような範囲にすることで、構造体23の充填率を向上し、光学調整機能を向上できるからである。比率((2r/P1)×100)が大きくなり、構造体23の重なりが大きくなりすぎると光学調整機能が低減する傾向にある。したがって、屈折率を考慮した光路長で使用環境下の光の波長帯域の最大値の1/4以下の部分で構造体同士が接合されるように、比率((2r/P1)×100)の上限値を設定することが好ましい。ここで、配置ピッチP1は、図2Cに示すように、構造体23のトラック方向の配置ピッチであり、径2rは、図2Cに示すように、構造体底面のトラック方向の径である。なお、構造体底面が円形である場合、径2rは直径となり、構造体底面が楕円形である場合、径2rは長径となる。
【0060】
構造体23が準六方格子パターンを形成する場合には、構造体底面の楕円率eは、100%<e<150%以下であることが好ましい。この範囲にすることで、構造体23の充填率を向上し、優れた光学調整機能を得ることができるからである。
【0061】
(1−2−2)第2の光学層
(第2の光学層の構成)
光学層6は、例えば、基体8と貼合層7とを備え、この貼合層7を介して基体8が、第1の電極3および第2の電極4を形成した光学層2の表面に貼り合わされる。光学層6はこの例に限定されるものではなく、SiO2などのセラミックコート(オーバーコート)とすることも可能である。
【0062】
(基体)
基体8は、上述の光学層(第1の光学層)2の基体21と同様である。
【0063】
(貼合層)
貼合層7としては、例えば、粘着ペースト、粘着テープなどを用いることができる。それらの粘着剤としては、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコン系粘着剤などを用いることができるが、透明性の観点からすると、アクリル系粘着剤が好ましい。
【0064】
(1−2−3)第1の電極および第2の電極
(電極の構成)
図4Aは、図1Aに示した交差部Cの付近を拡大して示す平面図である。図4Bは、図4Aに示したA−A線に沿った断面図である。図4Aに示すように、第1の電極3は、複数の第1のパッド部(第1の単位電極体)3aと、複数の第1のパッド部3a同士を連結する複数の第1の連結部3bとを備える。第1の連結部3bは、X軸方向に延在されており、隣り合う第1のパッド部3aの端部同士を連結する。図4Aに示すように、第2の電極4は、複数の第2のパッド部(第2の単位電極体)4aと、複数の第2のパッド部4a同士を連結する複数の第2の連結部4bとを備える。第2の連結部4aは、Y軸方向に延在されており、隣り合う第2のパッド部4aの端部同士を連結する。
【0065】
図4Bに示すように、交差部Cでは、第2の連結部4b、透明絶縁層5、第1の連結部4aがこの順序で光学層2の表面に積層されている。第1の連結部3bは、透明絶縁層5を横断して跨ぐように形成され、透明絶縁層5を跨いだ第1連結部3bの一端が、隣り合う第1のパッド部3aの一方と電気的に接続され、透明絶縁層5を跨いだ第1連結部3bの他端が、隣り合う第1のパッド部3aの他方と電気的に接続される。
【0066】
第1のパッド部3aと第1の連結部3bとは、別形成されている。第2のパッド部4aと第2の連結部4bとは、一体的に形成されている。第1のパッド部3a、第2のパッド部4aおよび第2のパッド部4bは、例えば、透明導電層からなり、第1の連結部3bは、例えば、導電層からなる。以下、これらの透明導電層および導電層について説明する。
【0067】
(透明導電層)
第1のパッド部3aおよび第2のパッド部4aを構成する透明導電層は、透明導電材料を主成分としている。透明導電材料としては、導電性の観点からすると、透明酸化物半導体を用いることが好ましい。透明酸化物半導体としては、例えば、SnO2、InO2、ZnOおよびCdOなどの二元化合物、二元化合物の構成元素であるSn、In、ZnおよびCdのうちの少なくとも一つの元素を含む三元化合物、または多元系(複合)酸化物を用いることができる。透明酸化物半導体の具体例としては、例えばインジウム錫酸化物(ITO)、酸化亜鉛(ZnO)、アルミドープ酸化亜鉛(AZO(Al23、ZnO))、SZO、フッ素ドープ酸化錫(FTO)、酸化錫(SnO2)、ガリウムドープ酸化亜鉛(GZO)、酸化インジウム亜鉛(IZO(In23、ZnO))などが挙げられる。特に、信頼性の高さ、および抵抗率の低さなどの観点から、インジウム錫酸化物(ITO)が好ましい。透明酸化物半導体は、導電性の向上の観点からすると、アモルファスと多結晶との混合状態であることが好ましい。
【0068】
透明導電材料としては、生産性の観点からすると、導電性高分子、金属ナノ粒子、およびカーボンナノチューブからなる群より選ばれる少なくとも1種を主成分とするものが好ましい。これらの材料を主成分とすることで、高価な真空装置などを用いずに、ウエットコーティングにより透明導電層を容易に形成することができる。
【0069】
第1のパッド部3aおよび第2のパッド部4aを形成する透明導電層の表面抵抗は、50Ω/□以上4000Ω/□以下の範囲内であることが好ましく、より好ましくは50Ω/□以上500Ω/□以下の範囲内である。ここで、透明導電層の表面抵抗は、4端子測定(JIS K 7194)により求めたものである。透明導電層の比抵抗は、1×10-3Ω・cm以下であることが好ましい。1×10-3Ω・cm以下であると、上記表面抵抗範囲を実現することができるからである。
【0070】
(導電層)
第1の連結部3bを構成する導電層としては、例えば、金属層または透明導電層を用いることができる。金属層は、金属を主成分として含んでいる。金属としては、導電性の高い金属を用いるこことが好ましく、このような材料としては、例えば、Ag、Al、Cu、Ti、Nb、不純物添加Siなどが挙げられるが、導電性の高さ、ならびに成膜性および印刷性などを考慮すると、Agが好ましい。金属層の材料として導電性が高い金属を用いることにより、第1の連結部3bの幅を狭くし、その厚さを薄くし、その長さを短くすることが好ましい。これにより視認性を向上することができる。
【0071】
具体的には、第1の連結部3aが透明導電層からなる場合、第1の連結部3aの長さL、幅Dおよび厚さTは以下のように選択することが好ましい。第1の連結部3aの長さLは、好ましくは5mm以下、より好ましくは2mm以下の範囲内である。第1の連結部3aの幅Dは、好ましくは500μm以下、より好ましくは200μm以下の範囲内である。第1の連結部3aの厚さTは、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下の範囲内である。
【0072】
透明導電層は、透明導電材料を主成分として含んでいる。透明導電材料としては、第1のパッド部3a、第2のパッド部4aおよび第2のパッド部4bと同様のものを用いることができる。導電層として透明導電層を用いる場合には、第1の連結部3bが透明を有するために、導電層として金属層を用いる場合よりも第1の連結部3bの幅を広くするようにしてもよい。
【0073】
具体的には、第1の連結部3aが金属層からなる場合、第1の連結部3aの長さL、幅Dおよび厚さTは以下のように選択することが好ましい。第1の連結部3aの長さLは、好ましくは5mm以下、より好ましくは2mm以下の範囲内である。第1の連結部3aの幅Dは、好ましくは30μm以下、より好ましくは15μm以下の範囲内である。第1の連結部3aの厚さTは、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下の範囲内である。
【0074】
(パッド部の形状例)
図5A〜図6Bは、第1のパッド部および第2のパッド部の形状の例を示す概略平面図である。第1のパッド部3aおよび第2のパッド部4aの形状としては、例えば、菱形(図5A)、星形(図5B)、矩形(図6A)、および十字形(図6B)などを用いることができるが、これらの形状に限定されるものではない。
【0075】
図5Aは、菱形を有する第1のパッド部および第2のパッドの例を示す概略平面図である。図5Aに示すように、情報入力装置1を入力面側からみると、菱形を有する第1のパッド部3aおよび第2のパッド部4aが敷き詰められて、最密充填された状態となっていることが好ましい。具体的には、菱形を有する第1のパッド部3aおよび第2のパッド部4aは、対向する2組の角部を有し、一方の組の角部がX軸方向を向き、他方の組の角部がY軸方向を向くように敷き詰められていることが好ましい。これにより、情報入力装置1の光学特性を面内でほぼ同様にすることができる。
【0076】
図5Bは、星形を有する第1のパッド部および第2のパッドの例を示す概略平面図である。図5Bに示すように、第1のパッド部3aおよび第2のパッド部4aが有する星形は、対向する2組の先端部を有し、一方の組の先端部がX軸方向を向き、他方の組の先端部がY軸方向を向くように敷き詰められていることが好ましい。
【0077】
図6Aは、矩形を有する第1のパッド部および第2のパッドの例を示す概略平面図である。図6Aに示すように、第1のパッド部3aおよび第2のパッド部4aが有する矩形は、対向する2組の辺部を有し、一方の組の辺部(例えば長辺部)がX軸方向を向き、他方の組の辺部(例えば短辺部)がY軸方向を向くように敷き詰められていることが好ましい。
【0078】
図6Bは、十字形を有する第1のパッド部および第2のパッドの例を示す概略平面図である。図6Bに示すように、第1のパッド部3aおよび第2のパッド部4aが有する十字形は、X軸方向に延在された1組の先端部と、Y軸方向に延在された1組の先端部とを有し、一方の組の延在部がX軸方向を向き、他方の組の延在部がY軸方向を向くように敷き詰められていることが好ましい。
【0079】
(第1の連結部の形状例)
図7Aは、第1の連結部の形状の例を示す概略図である。図7Aに示すように、第1の連結部3aの形状としては矩形状を採用することができるが、第1の連結部3bの形状は隣り合う第1のパッド部3a同士を連結可能な形状であればよく特に矩形状に限定されるものではない。矩形状以外の形状の例としては、線状、長円状、三角形状、不定形状などを挙げることができる。
【0080】
図7Bは、第1の連結部の本数の例を示す概略図である。図7Bに示すように、X軸方に隣り合う第1のパッド部3a同士を、複数の第1の連結部5aにより連結することも可能である。このような構成にする場合、複数の第1の連結部3aの幅D1、D2、・・・、Dnの合計(D1+D2+・・・+Dn)を連結部3aの幅Dと定義する。
【0081】
図7Cは、第1の連結部の構造の例を示す概略図である。図7Cに示すように、第1の連結部3aの構造をメッシュ構造とすることも可能である。このような構造にする場合、メッシュ構造を形成する孔部を除いた部分を連結部3aの幅Dと定義する。
【0082】
(1−2−4)透明絶縁層
(透明絶縁層)
透明絶縁層5は、第1の連結部3bと第2の連結部とが交差する部分より大きな面積を有していることが好ましく、例えば、交差部Cに位置する第1のパッド部3aおよび第2のパッド部4aの先端に被さる程度の大きさを有している。
【0083】
透明絶縁層5は、透明絶縁材料を主成分として含んでいる。透明絶縁材料としては、透明性を有する高分子材料を用いることが好ましく、このような材料としては、例えば、ポリメチルメタアクリレート、メチルメタクリレートと他のアルキル(メタ)アクリレート、スチレンなどといったビニルモノマーとの共重合体などの(メタ)アクリル系樹脂;ポリカーボネート、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート(CR-39)などのポリカーボネート系樹脂;(臭素化)ビスフェノールA型のジ(メタ)アクリレートの単独重合体ないし共重合体、(臭素化)ビスフェノールAモノ(メタ)アクリレートのウレタン変性モノマーの重合体及び共重合体などといった熱硬化性(メタ)アクリル系樹脂;ポリエステル特にポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートおよび不飽和ポリエステル、アクリロニトリル−スチレン共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリアリレート、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、シクロオレフィンポリマー(商品名:アートン、ゼオノア)、シクロオレフィンコポリマーなどが挙げられる。また、耐熱性を考慮したアラミド系樹脂を使用することも可能である。ここで、(メタ)アクリレートは、アクリレートまたはメタアクリレートを意味する。
【0084】
透明絶縁層5の体積抵抗率は1012Ω・cm以上であることが好ましい。透明絶縁層5の厚さは、好ましくは10μm以下、より好ましくは3μm以下である。10μm以下であると、例えば50μm程度の厚みの貼合層7を用いた場合、第1の電極3、透明絶縁層5および第2の電極4による凹凸を吸収して、光学層6の表面の凹凸を目視できない程度に抑えることができるからである。
【0085】
(透明絶縁層の形状例)
図8A〜図9Dは、透明絶縁層の形状例を示す概略図である。透明絶縁層5の形状は、交差部Cにおいて第1の電極3と第2の電極4との間に介在し、両電極の電気的接触を防ぐことが可能な形状であればよく特に限定されるものではないが、例示するならば、四角形などの多角形(図8A〜図9B)、楕円形(図9C)、円形(図9D)などを挙げることができる。四角形としては、例えば、長方形(図8A)、正方形(図8B)、菱形(図8D)、台形(図9A)、平行四辺形(図9C)、角に曲率Rが付された矩形状(図9D)が挙げられる。
【0086】
(1−2−4)電極の形状
図10Aは、図4Bに示した領域R1を拡大して示す断面図である。図10Bは、図4Bに示した領域R2を拡大して示す断面図である。図10Aに示すように、第1のパッド部3aおよび第2のパッド3bが光学層2の波面Swに倣うように形成されていることが好ましい。これにより、波長依存性が少なく、視認性に優れた光学調整機能を得ることができる。したがって、第1の電極3および第2の電極4の視認を抑制することができる。透明絶縁層5も、光学層2の波面Swに倣うように形成されていることが好ましい。これにより、波長依存性が少なく、視認性に優れた光学調整機能を得ることができる。したがって、透明絶縁層5の視認を抑制することができる。
【0087】
図10Bに示すように、交差部Cにおいて、積層された第2の結合部4b、透明絶縁層5および第1の結合部3bがすべて光学層2の波面Swに倣うように形成されていることが好ましい。これにより、公差部Cにおいて、視認性に優れた光学調整機能を得ることができる。したがって、公差部Cにおいて、第2の電極4、透明絶縁層5および第1の電極3の視認を抑制することができる。
【0088】
第1の連結部3bが、光学層2の波面Swに倣うように形成されていることが好ましい。特に第1の連結部3bが金属層からなる場合に、第1の連結部3bが、光学層2の波面Swに倣うように形成されていることが好ましい。第1の連結部3bが反射率が高い金属層からなる場合であっても、第1の連結部3bの視認を抑制することができるからである。
【0089】
波長依存性が少なく、視認性に優れた光学調整機能を得る観点からすると、第1の電極3および第2の電極4が光学層2の波面Swに倣うように形成されていることが好ましく、第1の電極3、透明絶縁層5および第2の電極4がすべて光学層2の波面Swに倣うように形成されていることが好ましい。
【0090】
図11Aは、第1のパッド部および第2のパッド部の表面形状の例を説明するための拡大断面図である。第1のパッド部3aおよび第2のパッド部4aは、互いに同期する第1の波面Sw1と第2の波面Sw2とを有する。第1の波面Sw1と第2の波面Sw2との振動の平均幅が異なっていることが好ましい。第1の波面Sw1の振動の平均幅Am1は、第2の波面Sw2の振動の平均幅Am2よりも小さいことがより好ましい。振動の幅が最大となる位置を含むようにして、第1の波面Sw1または第2の波面Sw2を一方向に向かって切断したときの断面形状は、例えば、三角波形状、正弦波形状、2次曲線もしくは2次曲線の一部を繰り返した波形状、またはこれらに近似する形状などである。2次曲線としては、円、楕円、放物線などが挙げられる。
【0091】
図11Bは、第1のパッド部および第2のパッド部の膜厚を説明するための拡大断面図である。図11Bに示すように、構造体4の頂部における第1のパッド部3aおよび第2のパッド部4aの膜厚をD1、構造体4の傾斜面における第1のパッド部3aおよび第2のパッド部4aの膜厚をD2、構造体間における第1のパッド部3aおよび第2のパッド部4aの膜厚をD3としたときに、膜厚D1、D2、D3が、好ましくはD1>D3、より好ましくはD1>D3>D2の関係を満たしている。構造体4の頂部における第1のパッド部3aおよび第2のパッド部4aの膜厚D1に対する、構造体間の第1のパッド部3aおよび第2のパッド部4aの膜厚D3の比率(D3/D1)が、好ましくは0.8以下、より好ましくは0.7以下の範囲内である。比率(D3/D1)を0.8以下にすることで、比率(D3/D1)を1とした場合に比して光学調整機能を向上することができる。したがって、第1のパッド部3aおよび第2のパッド部4aが形成されたパッド部形成領域(電極体形成領域)と、第1のパッド部3aおよび第2のパッド部4aの間の隙間9において光学層2の波面Swが露出した波面露出領域との反射率差ΔRを低減することができる。すなわち、第1の電極3および第2の電極4の視認を抑制することができる。
【0092】
なお、構造体4の頂部における第1のパッド部3aおよび第2のパッド部4aの膜厚D1、構造体4の傾斜面における第1のパッド部3aおよび第2のパッド部4aの膜厚D2、構造体間における第1のパッド部3aおよび第2のパッド部4aの膜厚D3はそれぞれ、波面Swが最も高くなる位置における透明導電層6の膜厚D1、波面Swの傾斜面における透明導電層6の膜厚D2、波面Swが最も低くなる位置における透明導電層6の膜厚D3と等しい。
【0093】
構造体4の頂部における第1のパッド部3aおよび第2のパッド部4aの膜厚D1は、好ましくは100nm以下、より好ましく10nm以上100nm以下、さらに好ましくは10nm以上80nm以下の範囲内である。100nmを超えると、視認性が悪化する傾向がある。一方、10nm未満であると、電気特性が悪化する傾向がある。
【0094】
上述した第1のパッド部3aおよび第2のパッド部4aの膜厚D1、D2、D3は以下のようにして求めたものである。まず、情報入力装置1を構造体4の頂部を含むようにトラックの延在方向に切断し、その断面をTEMにて撮影する。次に、撮影したTEM写真から、構造体4の頂部における第1のパッド部3aおよび第2のパッド部4aの膜厚D1を測定する。次に、構造体4の傾斜面の位置のうち、構造体4の半分の高さ(H/2)の位置の膜厚D2を測定する。次に、構造体間の凹部の位置のうち、その凹部の深さが最も深くなる位置の膜厚D3を測定する。なお、第1のパッド部3aおよび第2のパッド部4aの膜厚D1、D2、D3が上記関係を有しているか否かは、上述のようにして求めた第1のパッド部3aおよび第2のパッド部4aの膜厚D1、D2、D3により確認することができる。
【0095】
(1−3)光学特性
第1の電極3および第2の電極4上に光学層6がさらに形成されている場合、第1のパッド部3aおよび第2のパッド部3bが形成されたパッド部形成領域(電極体形成領域)の反射率R1と、第1のパッド部3aおよび第2のパッド部3bの間の隙間9において波面Swが露出した波面露出領域(図4A参照)の反射率R2との反射率差ΔR(=R2−R1)が、好ましくは5%以下、より好ましくは3%以下、さらに好ましくは1%以下の範囲内である。反射率差ΔRを5%以下にすることで、第1のパッド部3aおよび第2のパッド部3bの視認を抑制することができる。
【0096】
第1の電極3および第2の電極4上に光学層6が形成されておらず、第1のパッド部3aおよび第2のパッド部3bが露出している場合、情報入力装置1の両主面のうち第1のパッド部3aおよび第2のパッド部3bとは反対側の主面でのL*a*b*色度系における透過色相が、好ましくは|a*|≦10かつ|b*|≦10、より好ましくは|a*|≦5かつ|b*|≦5、さらに好ましくは|a*|≦3かつ|b*|≦3である。透過色相を|a*|≦10かつ|b*|≦10とすることで、視認性を向上できる。
【0097】
第1の電極3および第2の電極4上に光学層6がさらに形成されている場合、情報入力装置1の両主面のうち第1のパッド部3aおよび第2のパッド部3bとは反対側の主面でのL*a*b*色度系における透過色相が、好ましくは|a*|≦5かつ|b*|≦5、より好ましくは|a*|≦3かつ|b*|≦3、さらに好ましくは|a*|≦2かつ|b*|≦2である。透過色相を|a*|≦5かつ|b*|≦5とすることで、視認性を向上できる。
【0098】
第1の電極3および第2の電極4上に光学層6が形成されておらず、第1のパッド部3aおよび第2のパッド部3bが露出している場合、情報入力装置1の両主面のうち第1のパッド部3aおよび第2のパッド部3b側の主面でのL*a*b*色度系における反射色相が、好ましくは|a*|≦10かつ|b*|≦10、反射色相を|a*|≦10かつ|b*|≦10とすることで、視認性を向上できる。
【0099】
第1の電極3および第2の電極4上に光学層6がさらに形成されている場合、情報入力装置1の両主面のうち第1のパッド部3aおよび第2のパッド部3b側の主面でのL*a*b*色度系における反射色相が、好ましくは|a*|≦10かつ|b*|≦10、より好ましくは|a*|≦5かつ|b*|≦5、さらに好ましくは|a*|≦3かつ|b*|≦3である。反射色相を|a*|≦10かつ|b*|≦10とすることで、視認性を向上できる。
【0100】
(1−4)ロール原盤の構成
図12Aは、ロール原盤の構成の一例を示す斜視図である。図12Bは、図12Aに示したロール原盤の一部を拡大して表す平面図である。図12Cは、図12BのトラックT1、T3、・・・における断面図である。ロール原盤31は、上述した構成を有する光学層2を作製するための原盤、より具体的には、上述した基体表面に複数の構造体4を成形するための原盤である。ロール原盤31は、例えば、円柱状または円筒状の形状を有し、その円柱面または円筒面が基体表面に波面Sw、すなわち複数の構造体4を成形するための成形面とされる。この成形面には、例えば、複数の構造体32が2次元配列されている。構造体32は、例えば、成形面に対して凹状または凸状を有している。なお、図12Cでは、構造体21が成形面に対して凹状を有する例が示されている。ロール原盤31の材料としては、例えばガラスを用いることができるが、この材料に特に限定されるものではない。
【0101】
ロール原盤31の成形面に配置された複数の構造体32と、上述の基体3の表面に配置された複数の構造体4とは、反転した凹凸関係にある。すなわち、ロール原盤31の構造体32の形状、配列、配置ピッチなどは、基体3の構造体4と同様である。
【0102】
(1−5)露光装置の構成
図13は、ロール原盤を作製するためのロール原盤露光装置の構成の一例を示す概略図である。このロール原盤露光装置は、光学ディスク記録装置をベースとして構成されている。
【0103】
レーザー光源41は、記録媒体としてのロール原盤31の表面に着膜されたレジストを露光するための光源であり、例えば波長λ=266nmの記録用のレーザー光34を発振するものである。レーザー光源41から出射されたレーザー光34は、平行ビームのまま直進し、電気光学素子(EOM:Electro Optical Modulator)42へ入射する。電気光学素子42を透過したレーザー光34は、ミラー43で反射され、変調光学系45に導かれる。
【0104】
ミラー43は、偏光ビームスプリッタで構成されており、一方の偏光成分を反射し他方の偏光成分を透過する機能をもつ。ミラー43を透過した偏光成分はフォトダイオード44で受光され、その受光信号に基づいて電気光学素子42を制御してレーザー光34の位相変調を行う。
【0105】
変調光学系45において、レーザー光34は、集光レンズ46により、ガラス(SiO2)などからなる音響光学素子(AOM:Acousto-Optic Modulator)47に集光される。レーザー光34は、音響光学素子47により強度変調され発散した後、レンズ48によって平行ビーム化される。変調光学系45から出射されたレーザー光34は、ミラー51によって反射され、移動光学テーブル52上に水平かつ平行に導かれる。
【0106】
移動光学テーブル52は、ビームエキスパンダ53、および対物レンズ54を備えている。移動光学テーブル52に導かれたレーザー光34は、ビームエキスパンダ53により所望のビーム形状に整形された後、対物レンズ54を介して、ロール原盤31上のレジスト層へ照射される。ロール原盤31は、スピンドルモータ55に接続されたターンテーブル56の上に載置されている。そして、ロール原盤31を回転させるとともに、レーザー光34をロール原盤31の高さ方向に移動させながら、レジスト層へレーザー光34を間欠的に照射することにより、レジスト層の露光工程が行われる。形成された潜像は、円周方向に長軸を有する略楕円形になる。レーザー光34の移動は、移動光学テーブル52の矢印R方向への移動によって行われる。
【0107】
露光装置は、図2Cに示した六方格子または準六方格子の2次元パターンに対応する潜像をレジスト層に形成するための制御機構57を備えている。制御機構57は、フォマッター49とドライバ50とを備える。フォマッター49は、極性反転部を備え、この極性反転部が、レジスト層に対するレーザー光34の照射タイミングを制御する。ドライバ50は、極性反転部の出力を受けて、音響光学素子47を制御する。
【0108】
このロール原盤露光装置では、2次元パターンが空間的にリンクするように1トラック毎に極性反転フォマッター信号と回転コントロラーを同期させて信号を発生し、音響光学素子47により強度変調している。角速度一定(CAV)で適切な回転数と適切な変調周波数と適切な送りピッチでパターニングすることにより、六方格子または準六方格子パターンを記録することができる。
【0109】
(1−6)情報入力装置の製造方法
図14A〜図16Dは、本技術の第1の実施形態に係る情報入力装置の製造方法の一例を説明するための工程図である。
【0110】
(レジスト成膜工程)
まず、図14Aに示すように、円柱状または円筒状のロール原盤31を準備する。このロール原盤31は、例えばガラス原盤である。次に、図14Bに示すように、ロール原盤31の表面にレジスト層33を形成する。レジスト層33の材料としては、例えば有機系レジスト、および無機系レジストのいずれを用いてもよい。有機系レジストとしては、例えばノボラック系レジストや化学増幅型レジストを用いることができる。また、無機系レジストとしては、例えば、1種または2種以上含む金属化合物を用いることができる。
【0111】
(露光工程)
次に、図14Cに示すように、ロール原盤31の表面に形成されたレジスト層33に、レーザー光(露光ビーム)34を照射する。具体的には、図13に示したロール原盤露光装置のターンテーブル56上に載置し、ロール原盤31を回転させると共に、レーザー光(露光ビーム)34をレジスト層33に照射する。このとき、レーザー光34をロール原盤31の高さ方向(円柱状または円筒状のロール原盤31の中心軸に平行な方向)に移動させながら、レーザー光34を間欠的に照射することで、レジスト層33を全面にわたって露光する。これにより、レーザー光34の軌跡に応じた潜像35が、例えば可視光波長と同程度のピッチでレジスト層33の全面にわたって形成される。
【0112】
潜像35は、例えば、ロール原盤表面において複数列のトラックをなすように配置されるとともに、六方格子パターンまたは準六方格子パターンを形成する。潜像35は、例えば、トラックの延在方向に長軸方向を有する楕円形状である。
【0113】
(現像工程)
次に、例えば、ロール原盤31を回転させながら、レジスト層33上に現像液を滴下して、レジスト層33を現像処理する。これにより、図14Dに示すように、レジスト層33に複数の開口部が形成される。レジスト層33をポジ型のレジストにより形成した場合には、レーザー光34で露光した露光部は、非露光部と比較して現像液に対する溶解速度が増すので、図14Dに示すように、潜像(露光部)16に応じたパターンがレジスト層33に形成される。開口部のパターンは、例えば六方格子パターンまたは準六方格子パターンなどの所定の格子パターンである。
【0114】
(エッチング工程)
次に、ロール原盤31の上に形成されたレジスト層33のパターン(レジストパターン)をマスクとして、ロール原盤31の表面をエッチング処理する。これにより、図15Aに示すように、トラックの延在方向に長軸方向をもつ楕円錐形状または楕円錐台形状の凹部、すなわち構造体32を得ることができる。エッチングとしては、例えばドライエッチング、ウエットエッチングを用いることができる。このとき、エッチング処理とアッシング処理とを交互に行うことにより、例えば、錐体状の構造体32のパターンを形成することができる。以上により、目的とするロール原盤31が得られる。
【0115】
(転写工程)
次に、図15Bに示すように、ロール原盤31と、基体21上に塗布された転写材料36とを密着させた後、紫外線などのエネルギー線をエネルギー線源37から転写材料36に照射して転写材料36を硬化させた後、硬化した転写材料36と一体となった基体21を剥離する。これにより、図15Cに示すように、複数の構造体23を基体表面に有する光学層2が作製される。
【0116】
エネルギー線源37としては、電子線、紫外線、赤外線、レーザー光線、可視光線、電離放射線(X線、α線、β線、γ線など)、マイクロ波、または高周波などエネルギー線を放出可能なものであればよく、特に限定されるものではない。
【0117】
転写材料36としては、エネルギー線硬化性樹脂組成物を用いることが好ましい。エネルギー線硬化性樹脂組成物としては、紫外線硬化性樹脂組成物を用いることが好ましい。エネルギー線硬化性樹脂組成物が、必要に応じてフィラーや機能性添加剤などを含んでいてもよい。
【0118】
紫外線硬化性樹脂組成物は、例えばアクリレートおよび開始剤を含んでいる。紫外線硬化性樹脂組成物は、例えば、単官能モノマー、二官能モノマー、多官能モノマーなどを含み、具体的には、以下に示す材料を単独または、複数混合したものである。
【0119】
単官能モノマーとしては、例えば、カルボン酸類(アクリル酸)、ヒドロキシ類(2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート)、アルキル、脂環類(イソブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、ラウリルアクリレート、ステアリルアクリレート、イソボニルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート)、その他機能性モノマー(2−メトキシエチルアクリレート、メトキシエチレンクリコールアクリレート、2−エトキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ベンジルアクリレート、エチルカルビトールアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、N,N-ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、アクリロイルモルホリン、N−イソプロピルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N−ビニルピロリドン、2−(パーフルオロオクチル)エチル アクリレート、3−パーフルオロヘキシル−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、3−パーフルオロオクチルー2−ヒドロキシプロピル アクリレート、2−(パーフルオロデシル)エチル アクリレート、2−(パーフルオロー3−メチルブチル)エチル アクリレート)、2,4,6−トリブロモフェノールアクリレート、2,4,6−トリブロモフェノールメタクリレート、2−(2,4,6−トリブロモフェノキシ)エチルアクリレート)、2−エチルヘキシルアクリレートなどを挙げることができる。
二官能モノマーとしては、例えば、トリ(プロピレングリコール)ジアクリレート、トリメチロールプロパン ジアリルエーテル、ウレタンアクリレートなどを挙げることができる。
【0120】
多官能モノマーとしては、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ及びヘキサアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレートなどを挙げることができる。
【0121】
開始剤としては、例えば、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オンなどを挙げることができる。
【0122】
フィラーとしては、例えば、無機微粒子および有機微粒子のいずれも用いることができる。無機微粒子としては、例えば、SiO2、TiO2、ZrO2、SnO2、Al23などの金属酸化物微粒子を挙げることができる。
【0123】
機能性添加剤としては、例えば、レベリング剤、表面調整剤、消泡剤などを挙げることができる。基体21の材料としては、例えば、メチルメタクリレート(共)重合体、ポリカーボネート、スチレン(共)重合体、メチルメタクリレート−スチレン共重合体、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートブチレート、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアセタール、ポリエーテルケトン、ポリウレタン、ガラスなどが挙げられる。
【0124】
基体21の成形方法は特に限定されず、射出成形体でも押し出し成形体でも、キャスト成形体でもよい。必要に応じて、コロナ処理などの表面処理を基体表面に施すようにしてもよい。
【0125】
(電極の形成工程)
まず、図16Aに示すように、複数の構造体23が形成された光学層2の波面Swに、透明導電層13を成膜する。透明導電層6を成膜する際に、光学層2を加熱しながら成膜を行うようにしてもよい。透明導電層6の成膜方法としては、例えば、熱CVD、プラズマCVD、光CVDなどのCVD法(Chemical Vapor Deposition(化学蒸着法):化学反応を利用して気相から薄膜を析出させる技術)のほか、真空蒸着、プラズマ援用蒸着、スパッタリング、イオンプレーティングなどのPVD法(Physical Vapor Deposition(物理蒸着法):真空中で物理的に気化させた材料を基板上に凝集させ、薄膜を形成する技術)などを用いることができる。
【0126】
次に、図16Bに示すように、透明導電層13をパターニングすることにより、光学層2の波面Swに、第1のパッド部3a、第2のパッド部4aおよび第2の連結部4bを形成する。パターニングの方法としては、例えば、フォトリソグラフィ(感光性の薄膜をパターン露光し、エッチングによりパターンを生成する技術)などによりエッチングを行うことでパターンを形成する方法を用いることができる。
【0127】
第1のパッド部3a、第2のパッド部4aおよび第2の連結部4bの形成方法は、上述の例に限定されるものではなく、透明導電層の成膜時に形成パターン以外の部分にマスキングを行うことでパターンを形成する方法、印刷法などを用いることができる。印刷法としては、例えば、グラビア印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、スクリーン印刷法、インクジェット法、ディスペンス法などを用いることができる。
【0128】
(絶縁層の形成工程)
次に、図16Cに示すように、第2の電極4の第2の連結部4bの表面に透明絶縁層5を形成する。透明絶縁層5の形成方法としては、例えば、透明絶縁層の成膜時に形成パターン以外の部分にマスキングを行うことでパターンを形成する方法、マスキングをせずに成膜を行い、フォトリソグラフィ(感光性の薄膜をパターン露光し、エッチングによりパターンを生成する技術)などによりエッチングを行うことでパターンを形成する方法、印刷法によりパターンを形成する方法などを用いることができる。透明導電層の成膜方法としては、例えば、熱CVD、プラズマCVD、光CVDなどのCVD法(Chemical Vapor Deposition(化学蒸着法):化学反応を利用して気相から薄膜を析出させる技術)のほか、真空蒸着、プラズマ援用蒸着、スパッタリング、イオンプレーティングなどのPVD法(Physical Vapor Deposition(物理蒸着法):真空中で物理的に気化させた材料を基板上に凝集させ、薄膜を形成する技術)などを用いることができる。印刷法としては、例えば、グラビア印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、スクリーン印刷法、インクジェット法、ディスペンス法などを用いることができる。
【0129】
(連結部の形成工程)
次に、図16Dに示すように、透明絶縁層5を跨ぐようにして第1の連結部3bを形成する。これにより、第1の電極パッド3aの間が第1の連結部3bにより連結される。第1の連結部3bの形成方法としては、例えば、第1の連結部3bの成膜時に形成パターン以外の部分にマスキングを行うことでパターンを形成する方法、マスキングをせずに成膜を行い、フォトリソグラフィ(感光性の薄膜をパターン露光し、エッチングによりパターンを生成する技術)などによりエッチングを行うことでパターンを形成する方法、印刷法によりパターンを形成する方法などを用いることができる。
【0130】
(光学層の形成工程)
次に、必要に応じて、光学層2の波面Swの波面に、貼合層7を介して基体8を貼り合わせることにより、光学層6を形成する。
【0131】
(効果)
第1の実施形態によれば、光学層2の同一面に第1の電極3と第2の電極4とを形成しているので、光学層の層数を減らすことができる。したがって、内部反射を低減し、視認性の低下を抑制することができる。
【0132】
また、可視光の波長以下の平均波長を有する波面Swに、この波面Swに倣うように第1の電極3および第2の電極4を形成した場合には、波長依存性の少ない、視認性の優れた光学調整機能を得ることができる。したがって、第1の電極3および第2の電極4の視認を抑制することができる。
【0133】
また、光学層2の波面Swのうち斜面の平均角度を30°以上60°以下の範囲内とした場合には、優れた電気的信頼性を得ることができる。
【0134】
(2)第2の実施形態
図17は、本技術の第2の実施形態に係る情報入力装置の光学層の表面形状の一例を示す平面図である。図17に示すように、第2の実施形態に係る情報入力装置1は、複数の構造体23が、隣接する3列のトラックT間において四方格子パターンまたは準四方格子パターンをなしている点において、第1の実施形態のものとは異なっている。
【0135】
ここで、四方格子とは、正四角形状の格子のことをいう。準四方格子とは、正四角形状の格子とは異なり、歪んだ正四角形状の格子のことをいう。例えば、構造体23が直線上に配置されている場合には、準四方格子とは、正四角形状の格子を直線状の配列方向(トラック方向)に引き伸ばして歪ませた四方格子のことをいう。構造体23が円弧状に配置されている場合には、準四方格子とは、正四角形状の格子を円弧状に歪ませた四方格子、または正四角形状の格子を配列方向(トラック方向)に引き伸ばして歪ませ、かつ、円弧状に歪ませた四方格子のことをいう。構造体23が蛇行して配列されている場合には、準四方格子とは、正四角形状の格子を構造体23の蛇行配列により歪ませた四方格子、または正四角形状の格子を配列方向(トラック方向)に引き伸ばして歪ませ、かつ、構造体23の蛇行配列により歪ませた四方格子のことをいう。
【0136】
同一トラック内における構造体23の配置ピッチP1は、隣接する2つのトラック間における構造体23の配置ピッチP2よりも長いことが好ましい。また、同一トラック内における構造体23の配置ピッチをP1、隣接する2つのトラック間における構造体23の配置ピッチをP2としたとき、P1/P2が1.4<P1/P2≦1.5の関係を満たすことが好ましい。このような数値範囲にすることで、楕円錐または楕円錐台形状を有する構造体23の充填率を向上することができるので、光学調整機能を向上することができる。また、トラックに対して45度方向または約45度方向における構造体23の高さまたは深さは、トラックの延在方向における構造体23の高さまたは深さよりも小さいことが好ましい。
【0137】
トラックの延在方向に対して斜となる構造体23の配列方向(θ方向)の高さH2は、トラックの延在方向における構造体23の高さH1よりも小さいことが好ましい。すなわち、構造体23の高さH1、H2がH1>H2の関係を満たすことが好ましい。
【0138】
構造体23が四方格子または準四方格子パターンを形成する場合には、構造体底面の楕円率eは、150%≦e≦180%であることが好ましい。この範囲にすることで、構造体23の充填率を向上し、優れた光学調整機能を得ることができるからである。
【0139】
波面Swの面積S1に対する平坦部の面積S2の比率Rs((S2/S1)×100)が、好ましくは0%以上50%以下、より好ましくは0%以上45%以下、さらに好ましくは0%以上30%以下の範囲内である。比率Rsを50%以下にすることで、光学調整機能を向上することができる。
【0140】
ここで、波面Swの面積S1に対する平坦部の面積S2の比率Rs((S2/S1)×100)は以下のようにして求めた値である。まず、情報入力装置1の表面を走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)を用いてTop Viewで撮影する。次に、撮影したSEM写真から無作為に単位格子Ucを選び出し、その単位格子Ucの配置ピッチP1、およびトラックピッチTpを測定する(図10B参照)。また、その単位格子Ucに含まれる4つの構造体23のいずれかの底面の面積S(structure)を画像処理により測定する。次に、測定した配置ピッチP1、トラックピッチTp、および底面の面積S(structure)を用いて、以下の式より比率Rを求める。
比率R=[(S(lattice)−S(structure))/S(lattice)]×100
単位格子面積:S(lattice)=2×((P1×Tp)×(1/2))=P1×Tp
単位格子内に存在する構造体の底面の面積:S(structure)=S
【0141】
上述した比率Rの算出の処理を、撮影したSEM写真から無作為に選び出された10箇所の単位格子Ucについて行う。そして、測定値を単純に平均(算術平均)して比率Rの平均率を求め、これを比率Rsとする。
【0142】
配置ピッチP1に対する径2rの比率((2r/P1)×100)が、64%以上、好ましくは69%以上、より好ましくは73%以上である。このような範囲にすることで、構造体23の充填率を向上し、光学調整機能を向上できるからである。ここで、配置ピッチP1は、構造体23のトラック方向の配置ピッチ、径2rは、構造体底面のトラック方向の径である。なお、構造体底面が円形である場合、径2rは直径となり、構造体底面が楕円形である場合、径2rは長径となる。
【0143】
この第2の実施形態において上記以外のことは、第1の実施形態と同様である。
【0144】
第2の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0145】
(3)第3の実施形態
図18Aは、本技術の第3の実施形態に係る情報入力装置の光学層の表面形状の一例を示す平面図である。第3の実施形態に係る情報入力装置1は、複数の構造体23をランダム(不規則)に2次元配列することにより、光学層2の波面Swを形成している点において、第1の実施形態とは異なっている。
【0146】
図18Bは、本技術の第3の実施形態に係る情報入力装置の光学層の表面形状の一例を示す断面図である。図18Bに示すように、構造体21の形状、大きさおよびは高さの少なくとも1つをランダムに変化させるようにしてもよい。
【0147】
上述の表面形状を有する光学層2を作製するための原盤の作製方法としては、例えば、アルミニウム基材などの金属基材の表面を陽極酸化する方法を用いることができるが、この方法に特に限定されるものではない。
【0148】
この第3の実施形態において上記以外のことは、第1の実施形態と同様である。
【0149】
第3の実施形態では、複数の構造体23をランダムに2次元配列しているので、外観上のムラの発生を抑制できる。
【0150】
(4)第4の実施形態
図19は、本技術の第4の実施形態に係る情報入力装置の構成の一例を示す断面図である。図19に示すように、情報入力装置1が、表示装置61の表示面に対して設けられている。第4の実施形態において第1の実施形態と同様の箇所には同一の符号を付して説明を省略する。
【0151】
光学層2の波面Swに形成された第1の電極3および第2の電極4は露出しており、これらの電極が露出した波面Swと、表示装置61の表示面とが所定間隔離して対向配置されている。情報入力装置1と表示装置61との周縁部間には、貼合層62が設けられており、互いに貼り合わされている。貼合層121としては、例えば、粘着ペースト、粘着テープなどを用いることができる。
【0152】
情報入力装置101が設けられる表示装置102は特に限定されるものではないが、例示するならば、液晶ディスプレイ、CRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイ、プラズマディスプレイ(Plasma Display Panel:PDP)、エレクトロルミネッセンス(Electro Luminescence:EL)ディスプレイ、表面伝導型電子放出素子ディスプレイ(Surface-conduction Electron-emitter Display:SED)、電子ペーパなどの各種表示装置が挙げられる。
【0153】
第4の実施形態によれば、波面Swに第1の電極3および第2の電極4を形成しているので、第1の電極3および第2の電極4が露出している場合でも、第1の電極3と第2の電極4の視認、例えば第1のパッド部3aおよび第2のパッド部4aの視認を抑制することができる。
【0154】
(5)本技術の構成
なお、本技術は以下のような構成も取ることができる。
(1)表面を有する光学層と、
上記表面に形成された複数の第1の電極と、
上記表面に上記第1の電極と交差するように形成された複数の第2の電極と、
上記第1の電極と上記第2の電極とが交差する交差部に介在された透明絶縁層と
を備え、
上記光学層の表面は、可視光の波長以下の平均波長を有する波面であり、
上記波面の平均波長をλmとし、上記波面の振動の平均幅をAmとしたき、比率(Am/λm)が、0.2以上1.0以下の範囲内である情報入力装置。
(2)上記第1の電極は、複数の第1の単位電極体と、上記複数の第1の単位電極体同士をそれぞれ連結する複数の第1の連結部とを備え、
上記第2の電極は、複数の第2の単位電極体と、上記複数の第2の単位電極体同士をそれぞれ連結する複数の第2の連結部とを備え、
上記交差部では、上記第2の連結部、上記透明絶縁層、上記第1の連結部がこの順序で上記表面に積層され、
上記第1の連結部は、上記透明絶縁層を跨いで上記第1の単位電極体を連結している(1)記載の情報入力装置。
(3)上記第1の単位電極体、上記第2の単位電極体、および上記第2の連結部は、透明導電材料を主成分とする透明導電層であり、
上記第1の連結部は、金属または透明導電材料を主成分とする導電層である(2)記載の情報入力装置。
(4)上記波面のうち斜面の平均角度が、30°以上60°以下の範囲内であり、
上記波面が最も高くなる位置における上記透明導電層の膜厚をD1とし、上記波面が最も低くなる位置における上記透明導電層の膜厚をD3としたとき、比率D3/D1が0.8以下の範囲内である(3)記載の情報入力装置。
(5)上記波面が最も高くなる位置における透明導電層の膜厚が、100nm以下である(3)または(4)記載の情報入力装置。
(6)上記第1の単位電極体および上記第2の単位電極体が、上記波面に倣うように形成されている(2)〜(5)のいずれか1項に記載の情報入力装置。
(7)上記第1の電極、上記第2の電極、および上記透明絶縁層が、上記波面に倣うように形成されている(1)〜(5)のいずれか1項に記載の情報入力装置。
(8)上記光学層の波面には、上記第1の単位電極体および上記第2の単位電極体が形成された電極体形成領域と、上記第1の単位電極体および上記第2の単位電極体との間において上記波面が露出した波面露出領域とがあり、
上記電極体形成領域と上記波面露出領域との反射率差ΔRが5%以下である(2)〜(5)のいずれか1項に記載の情報入力装置。
(9)上記波面側でのL*a*b*色度系における反射色相が|a*|≦10かつ|b*|≦10である(1)〜(8)のいずれか1項に記載の情報入力装置。
(10)上記波面とは反対側の面でのL*a*b*色度系における透過色相が|a*|≦10かつ|b*|≦10である(1)〜(8)のいずれか1項に記載の情報入力装置。
(11)上記第1の電極、および上記第2の電極が形成された表面に光学層をさらに備える(1)〜(8)のいずれか1項に記載の情報入力装置。
(12)上記波面とは反対側の面でのL*a*b*色度系における透過色相が|a*|≦5かつ|b*|≦5である(11)記載の情報入力装置。
(13)上記波面のうち平坦部の面積が、50%以下である(1)〜(12)のいずれか1項に記載の情報入力装置。
(14)上記波面の平均波長λmが、140nm以上300nm以下であり、
上記波面の振動の平均幅Amが、28nm以上300nm以下である(1)〜(13)のいずれか1項に記載の情報入力装置。
(15)上記波面は、複数の列をなすように配置された複数の構造体により形成され、
上記列が、直線状、または円弧状を有する(1)〜(14)のいずれか1項に記載の情報入力装置。
(16)上記波面は、複数の列をなすように配置された複数の構造体により形成され、
上記列が、蛇行している(1)〜(15)のいずれか1項に記載の情報入力装置。
(17)上記構造体は、隣接する列間において格子パターンを形成し、
上記格子パターンが、六方格子パターン、準六方格子パターン、四方格子パターンおよび準四方格子パターンの少なくとも1種である(15)または(16)記載の情報入力装置。
【実施例】
【0155】
以下、実施例により本技術を具体的に説明するが、本技術はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0156】
以下、サンプルにより本技術を具体的に説明するが、本技術はこれらのサンプルのみに限定されるものではない。
【0157】
(平均高さHm、平均配置ピッチPm、アスペクト比(Hm/Pm))
以下において、透明導電性シートなどの構造体の平均高さHm、平均配置ピッチPm、およびアスペクト比(Hm/Pm)は次のようにして求めた。
【0158】
まず、透明導電性シートを構造体の頂部を含むように切断し、その断面を透過型電子顕微鏡(TEM)にて撮影した。次に、撮影したTEM写真から、構造体の配置ピッチP、構造体の高さHを求めた。この測定を透明導電性シートから無作為に選び出された10箇所で繰り返し行い、測定値を単純に平均(算術平均)して、平均配置ピッチPm、および平均高さHmを求めた。次に、これらの平均配置ピッチPm、および平均高さHmを用いて、アスペクト比(Hm/Pm)を求めた。
【0159】
なお、構造体の平均高さHm、平均配置ピッチPm、およびアスペクト比(Hm/Pm)はそれぞれ、波面の振動の平均幅Am、波面の平均波長をλm、および比率(Am/λm)に対応する。
【0160】
(ITO膜の膜厚)
以下において、ITO膜の膜厚は次のようにして求めた。
まず、透明導電性シートを構造体の頂部を含むように切断し、その断面を透過型電子顕微鏡(TEM)にて撮影し、撮影したTEM写真から、構造体の頂部におけるITO膜の膜厚を測定した。
【0161】
(構造体斜面の平均角度)
以下において、構造体斜面の平均角度は次のようにして求めた。
まず、透明導電性シートを構造体の頂部を含むように切断し、その断面を透過型電子顕微鏡(TEM)にて撮影した。次に、撮影したTEM写真から、底部から頂部への斜面の角度の平均値(1個の構造体の斜面角度の平均値)を求めた。このような平均値を求める処理を透明導電性シートから無作為に選び出された10箇所で繰り返し行い、10個の構造体の斜面角度の平均値を単純に平均(算術平均)して、構造体斜面の平均角度とした。
【0162】
サンプル1−1〜10−5について以下の順序で説明する。
1.平坦部面積比(サンプル1−1〜1−3)
2.色調(サンプル2−1〜2−3)
3.透明導電層の膜厚比(サンプル3−1〜3−3)
4.アスペクト比(サンプル4−1〜4−4)
5.電気的信頼性(サンプル5−1〜5−6)
6.反射率差ΔR(サンプル6−1〜6−4)
7.構造体の形状(サンプル7−1〜7−3)
8.パターン歪み(サンプル8−1、8−2)
9.エッチング耐性(サンプル9−1〜10−5)
【0163】
<1.平坦部面積比>
サンプル1−1〜1−3では、RCWA(Rigorous Coupled Wave Analysis)による光学シミュレーションにより、平坦部面積比と反射率との関係について検討を行った。
【0164】
(サンプル1−1)
光学シミュレーションにより、透明導電性素子の反射スペクトルを求めた。その結果のグラフを図20Bに示す。
【0165】
以下に、光学シミュレーションの条件を示す。
(透明導電性素子の構成)
透明導電性素子は以下の積層構造体とした。
(入射側)基体/構造体/透明導電層/光学層(出射側)
【0166】
図20Aは、基体表面に配列された複数の構造体を示す平面図である。図20Aにおいて、円形状は構造体底面を示し、Ucは単位格子、rsは構造体底面の半径を示す。基体表面には、図20Aに示すように、複数の構造体が配列されている。
【0167】
(基体)
屈折率n:1.52
(構造体)
構造体の配列:六方格子
構造体の形状:釣鐘型
構造体の底面:円形
配置ピッチ(波長λ)P:250nm
構造体の高さ(振幅A)H:150nm
アスペクト比(H/P):0.6
単位格子Ucの面積S(lattice):2×2√3
構造体の底面の半径rs:0.9
構造体の底面の面積S(structure):2×πrs2=2×π×0.92
平坦部の面積比率Rs:[(S(lattice)−S(structure))/S(lattice)]×100=26.54%
(透明導電層)
透明導電層の屈折率n:2.0
透明導電層の厚さt:60〜75nm
構造体頂部の透明導電層の厚さD1:75nm
構造体間の透明導電層の厚さD3:60nm
膜厚比D3/D1:0.8
(光学層)
屈折率n:1.52
(入射光)
偏光:無偏光
入射角:5度(透明導電性素子の法線に対して)
【0168】
(サンプル1−2)
以下の条件を変更する以外はサンプル1−1と同様にして、光学シミュレーションにより、透明導電性素子の反射スペクトルを求めた。その結果のグラフを図20Bに示す。
【0169】
(構造体)
構造体の底面の半径rs:0.8
構造体の底面の面積S(structure):2×πrs2=2×π×0.82
平坦部の面積比率:[(S(lattice)−S(structure))/S(lattice)]×100=41.96%
【0170】
(サンプル1−3)
以下の条件を変更する以外はサンプル1−1と同様にして、光学シミュレーションにより、透明導電性素子の反射スペクトルを求めた。その結果のグラフを図20Bに示す。
【0171】
(構造体)
構造体の底面の半径rs:0.7
構造体の底面の面積S(structure):2×πrs2=2×π×0.72
平坦部の面積比率:[(S(lattice)−S(structure))/S(lattice)]×100=55.56%
【0172】
図20Bから以下のことがわかる。
透明導電性素子の表面において平坦部の面積比率を50%以下とすることで、視感反射率(波長550nmにおける反射率)を2%以下にすることができる。
視感反射率2%以下にすることで、視認性を向上することができる。
【0173】
なお、構造体の底面の半径rs、構造体の底面の面積S(structure)、および平坦部の面積比率Rsを以下のように設定した場合には、サンプル1−1に比して反射率をさらに低減することができる。
構造体の底面の半径rs:1.0
構造体の底面の面積S(structure):2×πrs2=2×π×1.02
平坦部の面積比率Rs:[(S(lattice)−S(structure))/S(lattice)]×100=9.31%
【0174】
<2.色調>
サンプル2−1〜2−3では、透明導電性シートを実際に作製することにより、色調について検討を行った。
【0175】
(サンプル2−1)
まず、外径126mmのガラスロール原盤を準備し、このガラスロール原盤の表面に以下のようにしてレジスト層を着膜した。すなわち、シンナーでフォトレジストを1/10に希釈し、この希釈レジストをディッピング法によりガラスロール原盤の円柱面上に厚さ70nm程度に塗布することにより、レジスト層を着膜した。次に、記録媒体としてのガラスロール原盤を、図13に示したロール原盤露光装置に搬送し、レジスト層を露光することにより、1つの螺旋状に連なるとともに、隣接する3列のトラック間において六方格子パターンをなす潜像がレジスト層にパターニングされた。
【0176】
具体的には、六方格子状の露光パターンが形成されるべき領域に対して、前記ガラスロール原盤表面まで露光するパワー0.50mW/mのレーザー光を照射し六方格子状の露光パターンを形成した。なお、トラック列の列方向のレジスト層の厚さは60nm程度、トラックの延在方向のレジスト厚さは50nm程度であった。
【0177】
次に、ガラスロール原盤上のレジスト層に現像処理を施して、露光した部分のレジスト層を溶解させて現像を行った。具体的には、図示しない現像機のターンテーブル上に未現像のガラスロール原盤を載置し、ターンテーブルごと回転させつつガラスロール原盤の表面に現像液を滴下してその表面のレジスト層を現像した。これにより、レジスト層が六方格子パターンに開口しているレジストガラス原盤が得られた。
【0178】
次に、ロールエッチング装置を用い、CHF3ガス雰囲気中でのプラズマエッチングを行った。これにより、ガラスロール原盤の表面において、レジスト層から露出している六方格子パターンの部分のみエッチングが進行し、その他の領域はレジスト層がマスクとなりエッチングはされず、楕円錐形状の凹部がガラスロール原盤に形成された。この際、エッチング量(深さ)は、エッチング時間によって調整した。最後に、O2アッシングにより完全にレジスト層を除去することにより、凹形状の六方格子パターンを有するモスアイガラスロールマスタが得られた。列方向における凹部の深さは、トラックの延在方向における凹部の深さより深かった。
【0179】
次に、上記モスアイガラスロールマスタを用いて、UVインプリントにより複数の構造体を厚さ125μmのPETシート上に作製した。具体的には、上記モスアイガラスロールマスタと、紫外線硬化樹脂を塗布したPET(ポリエチレンテレフタレート)シートを密着させ、紫外線を照射し硬化させながら剥離した。これにより、以下の構造体が一主面に複数配列された光学シートが得られた。
構造体の配列:六方格子
構造体の形状:釣鐘型
構造体の平均配置ピッチ(波長λ)Pm:250nm
構造体の平均高さ(振幅A)Hm:125nm
構造体のアスペクト比(Hm/Pm):0.5
【0180】
次に、スパッタリング法により、複数の構造体が形成されたPETシート表面に、ITO層を成膜することにより、透明導電性シートを作製した。
【0181】
以下にITO層の成膜条件を示す。
ガス種:ArガスとO2ガスとの混合ガス
混合ガスの混合比率(体積比率):Ar:O2=200:10
ITO層の膜厚:75nm
ここで、ITO層の膜厚は構造体の頂部における膜厚である。
【0182】
次に、透明導電性シートを屈折率1.5のガラス基板上に、粘着シートを介してITO層側の面がガラス基板の面側になるように接着した。
【0183】
以上により、目的とする透明導電性シートが作製された。
【0184】
(サンプル2−2)
以下の構造体をPETシートの一主面に複数配列する以外のことは、サンプル2−1と同様にして光学シートを作製した。
構造体の配列:六方格子
構造体の形状:釣鐘型
構造体の平均配置ピッチPm:250nm
構造体の構造体の平均高さHm:150nm
アスペクト比(Hm/Pm):0.6
【0185】
次に、スパッタリング法により、複数の構造体が形成されたPETシート表面に、ITO層を成膜することにより、透明導電性シートを作製した。
【0186】
以下にITO層の成膜条件を示す。
ガス種:ArガスとO2ガスとの混合ガス
混合ガスの混合比率(体積比率):Ar:O2=200:10
ITO層の膜厚:100nm
ここで、ITO層の膜厚は構造体の頂部における膜厚である。
【0187】
次に、透明導電性シートを屈折率1.5のガラス基板上に、粘着シートを介してITO層側の面がガラス基板の面側になるように接着した。
以上により、目的とする透明導電性シートが作製された。
【0188】
(サンプル2−3)
まず、ITO層の形成を省略する以外は、サンプル2−1と同様にして光学シートを作製した。
【0189】
次に、光学シートを屈折率1.5のガラス基板上に、粘着シートを介して複数の構造体が形成された側の面がガラス基板の面側になるように接着した。
以上により、目的とする透明導電性シートが作製された。
【0190】
(透過色相)
上述のようにして作製した透明導電性シートおよび光学シートを測定試料として、分光光度計により可視周辺の波長域(350nm〜800nm)での透過スペクトルを測定し、その透過スペクトルから透過色相a*、b*を算出した。透過スペクトルの測定結果を図21に示す。透過色相a*、b*の算出結果を表1に示す。
【0191】
表1は、サンプル2−1〜2−3の透過色相の算出結果を示す。
【表1】

【0192】
表1から以下のことがわかる。
サンプル2−1、2−2の透明導電性シートでは、a*、b*ともに3より小さい値となり、無色透明で良好な特性を有していることがわかる。
【0193】
<3.透明導電層の膜厚比>
サンプル3−1〜3−3では、RCWAによる光学シミュレーションにより、透明導電層の膜厚比(D3/D1)と反射率との関係について検討を行った。
【0194】
(サンプル3−1)
光学シミュレーションにより透明導電性素子の反射スペクトルを求め、この反射スペクトルから反射色相a*、b*および反射Y値を求めた。その結果のグラフを図22Aおよび表2に示す。
【0195】
同様に、光学シミュレーションにより透明導電性素子の透過スペクトルを求め、この透過スペクトルから透過色相a*、b*を求めた。その結果のグラフを図22Bおよび表3に示す。
【0196】
以下に、光学シミュレーションの条件を示す。
(透明導電性素子の構成)
透明導電性素子は以下の積層構造体とした。
(入射側)基体/構造体/透明導電層/光学層(出射側)
【0197】
(基体)
屈折率n:1.52
(構造体)
構造体の配列:六方格子
構造体の形状:釣鐘型
構造体の底面:円形
配置ピッチ(波長λ)P:250nm
構造体の高さ(振幅A)H:150nm
アスペクト比(H/P):0.6
単位格子Ucの面積S(lattice):2×2√3
平坦部の面積比率Rs:[(S(lattice)−S(structure))/S(lattice)]×100=42%
(透明導電層)
透明導電層の屈折率n:2.0
透明導電層の厚さt:50nm
構造体頂部の透明導電層の厚さD1:50nm
構造体間の透明導電層の厚さD3:50nm
膜厚比D3/D1:1
(光学層)
屈折率n:1.52
(入射光)
偏光:無偏光
入射角:5度(透明導電性素子の法線に対して)
【0198】
(サンプル3−2)
以下の光学シミュレーション条件を変更する以外のことは、サンプル3−1と同様にして光学シミュレーションを行い、反射スペクトルを求め、この反射スペクトルから反射色相a*、b*および反射Y値を求めた。その結果のグラフを図22Aおよび表2に示す。
【0199】
同様に、光学シミュレーションにより透明導電性素子の透過スペクトルを求め、この透過スペクトルから透過色相a*、b*を求めた。その結果のグラフを図22Bおよび表3に示す。
【0200】
(透明導電層)
透明導電層の厚さt:40〜50nm
構造体頂部の透明導電層の厚さD1:50nm
構造体間の透明導電層の厚さD3:40nm
膜厚比D3/D1:0.8
【0201】
(サンプル3−3)
以下の光学シミュレーション条件を変更する以外のことは、サンプル3−1と同様にして光学シミュレーションを行い、反射スペクトルを求め、この反射スペクトルから反射色相a*、b*および反射Y値を求めた。その結果のグラフを図22Aおよび表2に示す。
【0202】
同様に、光学シミュレーションにより透明導電性素子の透過スペクトルを求め、この透過スペクトルから透過色相a*、b*を求めた。その結果のグラフを図22Bおよび表3に示す。
【0203】
(透明導電層)
透明導電層の厚さt:30nm〜50nm
構造体頂部の透明導電層の厚さD1:50nm
構造体間の透明導電層の厚さD3:30nm
膜厚比D3/D1:0.6
【0204】
【表2】

【0205】
【表3】

【0206】
図22Aから以下のことがわかる。
膜厚比D3/D1を1未満とすることで反射特性を向上することができる。具体的には膜厚比D3/D1が、好ましくは0.8以下、より好ましくは0.6以下である。
【0207】
<4.アスペクト比>
サンプル4−1〜4−4では、RCWAによる光学シミュレーションにより、構造体のアスペクト比と反射率との関係について検討を行った。
【0208】
(サンプル4−1)
光学シミュレーションにより、透明導電性素子の反射スペクトルを求め、この反射スペクトルから反射色相a*、b*および反射Y値を求めた。その結果を図23および表4に示す。
【0209】
以下に、光学シミュレーションの条件を示す。
(透明導電性素子の構成)
透明導電性素子は以下の積層構造体とした。
(入射側)基体/構造体/透明導電層/光学層(出射側)
【0210】
(基体)
屈折率n:1.52
(構造体)
構造体の配列:六方格子
構造体の形状:釣鐘型
構造体の底面:円形
配置ピッチ(波長λ)P:250nm
構造体の高さ(振幅A)H:200nm
アスペクト比(H/P):0.8
単位格子Ucの面積S(lattice):2×2√3
平坦部の面積比率Rs:[(S(lattice)−S(structure))/S(lattice)]×100=42%
(透明導電層)
透明導電層の屈折率n:2.0
透明導電層の厚さt:60〜75nm
構造体頂部の透明導電層の厚さD1:75nm
構造体間の透明導電層の厚さD3:60nm
膜厚比D3/D1:0.8
(光学層)
屈折率n:1.52
(入射光)
偏光:無偏光
入射角:5度(透明導電性素子の法線に対して)
【0211】
(サンプル4−2)
以下の光学シミュレーション条件を変更する以外のことは、サンプル4−1と同様にして光学シミュレーションを行い、反射スペクトルを求め、この反射スペクトルから反射色相a*、b*および反射Y値を求めた。その結果のグラフを図23および表4に示す。
【0212】
(構造体)
配置ピッチ(波長λ)P:250nm
構造体の高さ(振幅A)H:150nm
アスペクト比(H/P):0.6
【0213】
(サンプル4−3)
以下の光学シミュレーション条件を変更する以外のことは、サンプル4−1と同様にして光学シミュレーションを行い、反射スペクトルを求め、この反射スペクトルから反射色相a*、b*および反射Y値を求めた。その結果のグラフを図23および表4に示す。
【0214】
(構造体)
配置ピッチ(波長λ)P:250nm
構造体の高さ(振幅A)H:100nm
アスペクト比(H/P):0.4
【0215】
(サンプル4−4)
以下の光学シミュレーション条件を変更する以外のことは、サンプル4−1と同様にして光学シミュレーションを行い、反射スペクトルを求め、この反射スペクトルから反射色相a*、b*および反射Y値を求めた。その結果のグラフを図23および表4に示す。
【0216】
(構造体)
配置ピッチ(波長λ)P:400nm
構造体の高さ(振幅A)H:60nm
アスペクト比(H/P):0.15
【0217】
【表4】

【0218】
図23から以下のことがわかる。
構造体のアスペクトを0.2以上1.0以下の範囲内にすると、優れた光学調整機能を得ることができる。
【0219】
<5.電気的信頼性>
サンプル5−1〜5−5では、透明導電性シートを実際に作製することにより、構造体斜面の平均角度と電気的信頼性との関係について検討を行った。
【0220】
(サンプル5−1)
以下の構造体をPETシートの一主面に複数配列する以外のことは、サンプル2−1と同様にして光学シートを作製した。
構造体の配列:六方最密
構造体の形状:円錐台形状
構造体の平均配置ピッチPm:220nm
構造体の平均高さHm:240nm
構造体のアスペクト比(Hm/Pm):1.091
構造体斜面の平均角度θm:65度
【0221】
次に、スパッタリング法により、複数の構造体が形成されたPETシート表面に、ITO層を成膜することにより、透明導電性シートを作製した。
【0222】
以下にITO層の成膜条件を示す。
ガス種:ArガスとO2ガスとの混合ガス
混合ガスの混合比率(体積比率):Ar:O2=200:13
ITO層の膜厚:36nm〜40nm
ここで、ITO層の膜厚は構造体の頂部における膜厚である。
【0223】
(サンプル5−2)
以下の構造体をPETシートの一主面に複数配列する以外のことは、サンプル5−1と同様にして透明導電性シートを作製した。
構造体の配列:六方最密
構造体の形状:円錐台形状
構造体の平均配置ピッチPm:250nm
構造体の平均高さHm:180nm
構造体のアスペクト比(Hm/Pm):0.72
構造体斜面の平均角度θm:55度
【0224】
(サンプル5−3)
以下の構造体をPETシートの一主面に複数配列する以外のことは、サンプル5−1と同様にして透明導電性シートを作製した。
構造体の配列:六方最密
構造体の形状:円錐台形状
構造体の平均配置ピッチPm:270nm
構造体の平均高さHm:150nm
構造体のアスペクト比(Hm/Pm):0.55
構造体斜面の平均角度θm:70度
【0225】
(サンプル5−4)
以下の構造体をPETシートの一主面に複数配列する以外のことは、サンプル5−1と同様にして透明導電性シートを作製した。
構造体の配列:六方最密
構造体の形状:円錐台形状
構造体の平均配置ピッチPm:250nm
構造体の平均高さHm:135nm
構造体のアスペクト比(Hm/Pm):0.54
構造体斜面の平均角度θm:50度
【0226】
(サンプル5−5)
構造体の形成を省略し、PETシートの平坦な一主面に厚さ20nmのITO層を成膜する以外は、サンプル5−1と同様にして透明導電性シートを作製した。
【0227】
(サンプル5−6)
構造体の形成を省略し、PETシートの平坦な一主面に、厚さ20nmのNbO層、厚さ90nmのSiO2層、厚さ20nmのITO層を順次成膜する以外は、サンプル5−1と同様にして透明導電性シートを作製した。
【0228】
(ヒートショック試験)
まず、上述のようにして作製した透明導電性シートを、大気中雰囲気下において150度、30分間エージングした。次に、−30度の低温環境下に30分間保持した後、70度の高温環境下に30分間保持する環境試験を透明導電性シートに50サイクル行った。次に、透明導電性シートの表面抵抗を4探針法(JIS K 7194)により測定した。その結果を表5に示す。
【0229】
(高温試験)
まず、上述のようにして作製した透明導電性シートを、大気中雰囲気下において150度、30分間エージングした。次に、透明導電性シートを80度の低温環境下に240時間保持した後、透明導電性シートの表面抵抗を4探針法(JIS K 7194)により測定した。その結果を表5に示す。
【0230】
表5は、サンプル5−1〜5−6のヒートショック試験および高温試験(以下信頼性試験という。)の結果を示す。
【表5】

【0231】
表5から以下のことがわかる。
単層ITO、多層ITOの構成を有するサンプル5−5、5−6では、信頼性試験により表面抵抗が10%以上上昇する。
高アスペクト1.09の構造体を表面に形成したサンプル5−1では、傾斜角度が65度と大きいため、信頼性試験により表面抵抗が大きく上昇する。
低アスペクト0.55の構造体を形成したサンプル5−3でも、構造体の形状が楕円錐台であるため、射面傾斜角度が70度と大きくなり、信頼性試験により表面抵抗が上昇する。
1.0以下の低アスペクトであり、60度以下の緩やかな射面傾斜角度であるサンプル5−2、5−4では、信頼製試験による表面抵抗の抵抗が極めて少ない。
【0232】
ITO層が数10nmの膜厚であると、基材の膨張収縮率による変化に応力を受けて一部断線すると考えられるが、構造体を基材表面に付与することで応力が緩和されて信頼性が飛躍的に向上すると考えられる。
【0233】
したがって、構造体の形状としては、電気的信頼性の観点から、頂部に凸状の曲面を有する錐体状が好ましい。また、電気的信頼性の観点から、構造体の平均傾斜角度は、60度以下であることが好ましい。
【0234】
<6.反射率差ΔR>
(サンプル6−1)
まず、以下の構造体をPETシートの一主面に複数配列する以外のことは、サンプル1−1と同様にして透明導電性シートを作製した。
構造体の配列:六方格子
構造体の形状:釣鐘型
構造体の平均配置ピッチPm:250nm
構造体の平均構造体の高さHm:90nm
構造体のアスペクト比(Hm/Pm):0.36
構造体の傾斜部平均角度θm:36deg
【0235】
次に、スパッタリング法により、複数の構造体が形成されたPETシート表面に、ITO層を成膜することにより、透明導電性シートを作製した。
【0236】
以下にITO層の成膜条件を示す。
ガス種:ArガスとO2ガスとの混合ガス
混合ガスの混合比率(体積比率):Ar:O2=200:13
ITO層の膜厚:30nm
ここで、ITO層の膜厚は構造体の頂部における膜厚である。
【0237】
次に、透明導電性シートを屈折率1.5のガラス基板上に、粘着シートを介してITO層側の面がガラス基板の面側になるように接着した。
以上により、目的とする透明導電性シートが作製された。
【0238】
(サンプル6−2)
まず、ITO層の形成を省略する以外は、サンプル6−1と同様にして光学シートを作製した。
【0239】
次に、光学シートを屈折率1.5のガラス基板上に、粘着シートを介して複数の構造体が形成された面がガラス基板の面側になるように接着した。
以上により、目的とする光学シートが作製された。
【0240】
(サンプル6−3)
構造体の形成を省略し、PETシートの平坦な一主面に30nmの厚さのITO層を成膜する以外は、サンプル6−1と同様にして透明導電性シートを作製した。
【0241】
(サンプル6−4)
ITO層の形成を省略する以外は、サンプル6−3と同様にして光学シートを作製した。
【0242】
(反射スペクトル)
まず、上述のようにして作製した透明導電性シートおよび光学シートのガラス基板を貼り合わせた側とは反対側の面に黒色テープを貼り合わせることにより、測定試料を作製した。次に、この測定試料の可視周辺の波長域(350nm〜700nm)での反射スペクトルを、分光光度計(日本分光株式会社製、商品名:V−550)により測定した。次に、以下の式により反射率の差ΔRを算出した。反射率の差ΔRの算出結果を図24に示す。視感反射率の差ΔRの算出結果を表6に示す。ここで、視感反射率とは、波長550nmにおける反射率である。
ΔR=((サンプル6−2の反射率)−(サンプル6−1の反射率))
ΔR=((サンプル6−4の反射率)−(サンプル6−3の反射率))
【0243】
(反射色相)
上述のようにして測定した反射スペクトルから反射色相a*、b*を算出した。その結果を表6に示す。
【0244】
表6は、サンプル6−1〜6−4の視感反射率の差ΔRおよび反射色相の算出結果を示す。
【表6】

【0245】
図24および表6から以下のことがわかる。
傾斜角度が制御された構造体上に透明導電層を形成することで、視感反射率の差ΔRを抑制することができる。また、a*、b*の値の絶対値を小さくできる。
【0246】
<7.構造体の形状>
サンプル7−1〜7−3では、RCWA(Rigorous Coupled Wave Analysis)による光学シミュレーションにより、構造体の形状と反射率との関係について検討を行った。
【0247】
(サンプル7−1)
光学シミュレーションにより、透明導電性素子の反射スペクトルを求め、この反射スペクトルから反射色相a*、b*を算出した。その結果を図25Aおよび表7に示す。
【0248】
以下に、光学シミュレーションの条件を示す。
(透明導電性素子の構成)
透明導電性素子は以下の積層構造体とした。
(入射側)基体/透明導電層/光学層(出射側)
【0249】
(基体)
屈折率n:1.52
(透明導電層)
透明導電層の屈折率n:2.0
透明導電層の厚さt:70nm
(出射面側の樹脂層)
屈折率n:1.52
(入射光)
偏光:無偏光
入射角:5度(透明導電性素子の法線に対して)
【0250】
(サンプル7−2)
図26Aは、サンプル7−2の透明導電層の厚さD1、D2、D3を示す断面図である。図26A中、n1、n2およびn3はそれぞれ、構造体頂部、構造体斜面および構造体間の垂線方向を示す。膜厚D1、膜厚D2、および膜厚D3はそれぞれ、構造体頂部における垂線n1方向の透明導電層の厚さ、構造体斜面における垂線n2方向の透明導電層の厚さ、および構造体間における垂線n3方向の透明導電層の厚さを示す。
【0251】
光学シミュレーションにより、透明導電性素子の反射スペクトルを求め、この反射スペクトルから反射色相a*、b*を算出した。その結果を図25Bおよび表7に示す。
【0252】
以下に、光学シミュレーションの条件を示す。
(透明導電性素子の構成)
透明導電性素子は以下の積層構造体とした。
(入射側)基体/構造体/透明導電層/光学層(出射側)
【0253】
(基体)
屈折率n:1.52
(構造体)
構造体の配列:正方格子
構造体の形状:四角錐(底面の辺の長さ:100nm、上面の辺の長さ:40nm)
構造体の底面:四角形
構造体の屈折率n:1.52
配置ピッチP:120nm
構造体の高さH:100nm
アスペクト比(H/P):0.83
【0254】
(透明導電層)
図26Aに示すように、構造体頂部における垂線方向n1の透明導電層の厚さD1、構造体斜面における垂線方向n2の透明導電層の厚さD2が70nmとなるように透明導電層を設定した。
【0255】
透明導電層の屈折率n:2.0
構造体頂部の透明導電層の厚さD1:70nm
構造体斜面の透明導電層の厚さD2:70nm
膜厚比D3/D1:1以上
(出射面側の樹脂層)
屈折率n:1.52
(入射光)
偏光:無偏光
入射角:5度(透明導電性素子の法線に対して)
【0256】
(サンプル7−3)
図26Bは、サンプル7−3の透明導電層の厚さD1、D2、D3を示す断面図である。図26B中、n0は、透明導電性素子表面(または基体表面)の垂線方向を示す。膜厚D1、膜厚D2、および膜厚D3はそれぞれ、構造体頂部における垂線方向n0の透明導電層の厚さ、構造体斜面における垂線方向n0の透明導電層の厚さ、および構造体間における垂線n0方向の透明導電層の厚さを示す。
【0257】
以下の光学シミュレーション条件を変更する以外のことは、試験例1と同様にして光学シミュレーションを行い、反射スペクトルを求め、この反射スペクトルから反射色相a*、b*を算出した。その結果を図25Cおよび表7に示す。
【0258】
(透明導電層)
図26Bに示すように、構造体頂部における垂線方向n0の透明導電層の厚さD1、構造体斜面における垂線方向n0の透明導電層の厚さD2、構造体間における垂線方向n0の透明導電層の厚さD3がすべて70nmとなるように透明導電層を設定した。
【0259】
透明導電層の屈折率n:2.0
構造体頂部の透明導電層の厚さD1:70nm
構造体間の透明導電層の厚さD3:70nm
膜厚比D3/D1:1
【0260】
表7は、サンプル7−1〜7−3の視感反射率および透過色相の算出結果を示す。
【表7】

【0261】
図25A〜図25Cおよび表7から以下のことがわかる。
平坦面上に透明導電層を形成した構成を有するサンプル7−1では、a*、b*の絶対値は小さいが、視感反射率が高くなってしまう。
構造体上に透明導電層を一定の厚さで形成したサンプル7−2では、視感反射率をある程度低減することはできるが、a*、b*の絶対値が大きくなってしまう。
構造体上に、この構造体が形成された表面の垂線方向に一定の厚さで透明導電層を形成したサンプル7−3では、視感反射率を低減することはできるが、a*、b*の絶対値が大きくなってしまう。
【0262】
<8.電極パターン歪み>
サンプル8−1、8−2では、透明導電性シートを実際に作製することにより、構造体の有無と電極パターン歪みとの関係について検討した。
【0263】
(サンプル8−1)
以下の構造体をPETシートの一主面に複数配列する以外のことは、サンプル1−1と同様にして光学シートを作製した。
構造体の配列:六方最密
構造体の形状:円錐台形状
配置ピッチP:250nm
構造体の高さH:150nm
アスペクト比:0.6
傾斜部平均角度:50deg
【0264】
次に、スパッタリング法により、複数の構造体が形成されたPETシート表面に、ITO層を成膜した。
【0265】
以下にITO層の成膜条件を示す。
ガス種:ArガスとO2ガスとの混合ガス
混合ガスの混合比率(体積比率):Ar:O2=200:10
ITO層の膜厚:30nm
ここで、ITO層の膜厚は構造体の頂部における膜厚である。
【0266】
次に、ITO層をパターニングしてダイヤモンド形状が繋がった複数の電極を形成することにより、透明導電性シートを作製した。次に、上述のようにして作製した2枚の透明導電性シートを、複数の電極が形成された面が上側となるようするとともに、互いのダイヤモンド形状の電極が重ならないようにして、紫外線硬化樹脂により貼り合わせた。次に、上側に位置する透明導電性シートを、屈折率1.5のガラス基板に粘着シートを介してITO層側の面がガラス基板の面側になるように接着した。
以上により、目的とする入力素子が得られた。
【0267】
(サンプル8−2)
構造体の形成を省略し、PETシートの平坦な一主面にITO層を成膜する以外は、サンプル8−1と同様にして入力素子を作製した。
【0268】
(パターン歪み評価)
上述のようにして作製した入力素子表面に蛍光灯を写し込み、入力素子表面に電極パターンに応じた歪みが生じているか否かを観察した。その結果、サンプル8−1では歪みが観察されなかったのに対して、サンプル8−2では歪みが観察された。
【0269】
<9.エッチング耐性>
(サンプル9−1)
(転写工程)
以下の構造体をPETシートの一主面に複数配列する以外のことは、サンプル2−1と同様にして光学シートを作製した。
構造体の配列:六方最密
構造体の形状:釣鐘型
配置ピッチP:250nm
構造体の高さH:180nm
アスペクト比:0.55
斜面の平均角度:55度
【0270】
(成膜工程)
次に、スパッタリング法により、複数の構造体が形成されたPETシート表面に、ITO層を成膜した。
【0271】
以下にITO層の成膜条件を示す。
ガス種:ArガスとO2ガスとの混合ガス
混合ガスの混合比率(体積比率):Ar:O2=200:10
ITO層の膜厚:30nm
ここで、ITO層の膜厚は構造体の頂部における膜厚である。
【0272】
(アニール工程)
次に、ITO層を形成したPETシートに対して、大気中にて150℃、120分間のアニールを施した。これにより、ITO層の多結晶化が促進された。次に、この促進の状態を確認すべく、X線回折(X‐ray diffraction:XRD)でITO層を測定したところ、In23のピークが確認された。
以上により、目的とする透明導電性シートが作製された。
【0273】
(サンプル9−2)
(転写工程、成膜工程、アニール工程)
まず、サンプル9−1と同様にして転写工程、成膜工程およびアニール工程を順次行い、アニール処理が施されたITO層を有するPETフィルムを作製した。
【0274】
(エッチング工程)
次に、アニール処理を施したPETフィルムを、HCl10%希釈溶液に20秒間浸漬させて、ITO層をエッチングした。
【0275】
(洗浄工程)
次に、エッチング処理を施したPETシートに対して純水洗浄を行った。
以上により、目的とする透明導電性シートが作製された。
【0276】
(サンプル9−3)
浸漬時間を40秒間に変更する以外はサンプル9−2と同様にして透明導電性シートを作製した。
【0277】
(サンプル9−4)
浸漬時間を60秒間に変更する以外はサンプル9−2と同様にして透明導電性シートを作製した。
【0278】
(サンプル9−5)
浸漬時間を100秒間に変更する以外はサンプル9−2と同様にして透明導電性シートを作製した。
【0279】
(サンプル10−1)
以下の構造体をPETシートの一主面に複数配列する以外のことは、サンプル9−1と同様にして透明導電性シートを作製した。
構造体の配列:六方最密
構造体の形状:釣鐘型
配置ピッチP:200nm
構造体の高さH:180nm
アスペクト比:0.62
斜面の平均角度:61度
【0280】
(サンプル10−2)
(転写工程、成膜工程、アニール工程)
まず、サンプル10−1と同様にして転写工程、成膜工程およびアニール工程を順次行い、アニール処理が施されたITO層を有するPETフィルムを作製した。
【0281】
(エッチング工程)
次に、アニール処理を施したPETフィルムを、HCl10%希釈溶液に20秒間浸漬させて、ITO層をエッチングした。
【0282】
(洗浄工程)
次に、エッチング処理を施したPETシートに対して純水洗浄を行った。
以上により、目的とする透明導電性シートが作製された。
【0283】
(サンプル10−3)
浸漬時間を40秒間に変更する以外はサンプル10−2と同様にして透明導電性シートを作製した。
【0284】
(サンプル10−4)
浸漬時間を60秒間に変更する以外はサンプル10−2と同様にして透明導電性シートを作製した。
【0285】
(サンプル10−5)
浸漬時間を100秒間に変更する以外はサンプル10−2と同様にして透明導電性シートを作製した。
【0286】
(表面抵抗)
上述のようにして得られたサンプル9−1〜10−5の透明導電性シート表面の表面抵抗値を4端針法にて測定した。その結果を表8および図27に示す。
【0287】
(初期変化率の逆数)
上述のようにして得られたサンプル9−1〜10−5の透明導電性シート表面の初期変化率の逆数(仮想厚さの変化)を以下の式より求めた。その結果を表9に示す。
(初期表面抵抗に対する変化率の逆数)=(エッチング前のサンプルの表面抵抗)/(エッチング後のサンプルの表面抵抗)
【0288】
表8は、サンプル9−1〜10−5に係る透明導電性シートの表面抵抗の評価結果を示す。
【表8】

【0289】
表9は、サンプル9−1〜10−5に係る透明導電性シートの初期変化率の逆数の評価結果を示す。
【表9】

【0290】
表8、表9および図27から以下のことがわかる。
【0291】
斜面の平均角度が60度を超えると、ITO層のエッチング耐性が低下し、エッチング時間の経過に伴って表面抵抗が上昇する傾向がある。
【0292】
以上、本発明の実施形態について具体的に説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
【0293】
例えば、上述の実施形態において挙げた構成、方法、工程、形状、材料および数値などはあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれと異なる構成、方法、工程、形状、材料および数値などを用いてもよい。
【0294】
また、上述の実施形態の構成、方法、工程、形状、材料および数値などは、本発明の主旨を逸脱しない限り、互いに組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0295】
1 情報入力装置
2 光学層(第1の光学層)
3 第1の電極(X電極)
3a 第1のパッド部
3b 第1の連結部
4 第2の電極(Y電極)
4a 第2のパッド部
4b 第2の連結部
5 透明絶縁層
6 光学層(第2の光学層)
7 貼合層
8 基体
11 取り出し電極
12 FPC
21 基体
22 基底層
23 構造体
Sw 波面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面を有する光学層と、
上記表面に形成された複数の第1の電極と、
上記表面に上記第1の電極と交差するように形成された複数の第2の電極と、
上記第1の電極と上記第2の電極とが交差する交差部に介在された透明絶縁層と
を備え、
上記光学層の表面は、可視光の波長以下の平均波長を有する波面であり、
上記波面の平均波長をλmとし、上記波面の振動の平均幅をAmとしたき、比率(Am/λm)が、0.2以上1.0以下の範囲内である情報入力装置。
【請求項2】
上記第1の電極は、複数の第1の単位電極体と、上記複数の第1の単位電極体同士をそれぞれ連結する複数の第1の連結部とを備え、
上記第2の電極は、複数の第2の単位電極体と、上記複数の第2の単位電極体同士をそれぞれ連結する複数の第2の連結部とを備え、
上記交差部では、上記第2の連結部、上記透明絶縁層、上記第1の連結部がこの順序で上記表面に積層され、
上記第1の連結部は、上記透明絶縁層を跨いで上記第1の単位電極体を連結している請求項1記載の情報入力装置。
【請求項3】
上記第1の単位電極体、上記第2の単位電極体、および上記第2の連結部は、透明導電材料を主成分とする透明導電層であり、
上記第1の連結部は、金属または透明導電材料を主成分とする導電層である請求項2記載の情報入力装置。
【請求項4】
上記波面のうち斜面の平均角度が、30°以上60°以下の範囲内であり、
上記波面が最も高くなる位置における上記透明導電層の膜厚をD1とし、上記波面が最も低くなる位置における上記透明導電層の膜厚をD3としたとき、比率D3/D1が0.8以下の範囲内である請求項3記載の情報入力装置。
【請求項5】
上記波面が最も高くなる位置における透明導電層の膜厚が、100nm以下である請求項3記載の情報入力装置。
【請求項6】
上記第1の単位電極体および上記第2の単位電極体が、上記波面に倣うように形成されている請求項2記載の情報入力装置。
【請求項7】
上記第1の電極、上記第2の電極、および上記透明絶縁層が、上記波面に倣うように形成されている請求項1記載の情報入力装置。
【請求項8】
上記光学層の波面には、上記第1の単位電極体および上記第2の単位電極体が形成された電極体形成領域と、上記第1の単位電極体および上記第2の単位電極体との間において上記波面が露出した波面露出領域とがあり、
上記電極体形成領域と上記波面露出領域との反射率差ΔRが5%以下である請求項2記載の情報入力装置。
【請求項9】
上記波面側でのL*a*b*色度系における反射色相が|a*|≦10かつ|b*|≦10である請求項1記載の情報入力装置。
【請求項10】
上記波面とは反対側の面でのL*a*b*色度系における透過色相が|a*|≦10かつ|b*|≦10である請求項1記載の情報入力装置。
【請求項11】
上記第1の電極、および上記第2の電極が形成された表面に光学層をさらに備える請求項1記載の情報入力装置。
【請求項12】
上記波面とは反対側の面でのL*a*b*色度系における透過色相が|a*|≦5かつ|b*|≦5である請求項11記載の情報入力装置。
【請求項13】
上記波面のうち平坦部の面積が、50%以下である請求項1記載の情報入力装置。
【請求項14】
上記波面の平均波長λmが、140nm以上300nm以下であり、
上記波面の振動の平均幅Amが、28nm以上300nm以下である請求項1記載の情報入力装置。
【請求項15】
上記波面は、複数の列をなすように配置された複数の構造体により形成され、
上記列が、直線状、または円弧状を有する請求項1記載の情報入力装置。
【請求項16】
上記波面は、複数の列をなすように配置された複数の構造体により形成され、
上記列が、蛇行している請求項1記載の情報入力装置。
【請求項17】
上記構造体は、隣接する列間において格子パターンを形成し、
上記格子パターンが、六方格子パターン、準六方格子パターン、四方格子パターンおよび準四方格子パターンの少なくとも1種である請求項15記載の情報入力装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【公開番号】特開2012−216084(P2012−216084A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−81021(P2011−81021)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】