説明

情報入力装置

【課題】キーボードを小型化すると、キー間隔を狭くせざるを得ないことにより、入力速度が低下したり、誤入力が増加する問題および接触式ポインティングデバイスを一体化する場合、キー入力中に誤操作が生じ易い問題を解決する。
【解決手段】キーボードから文字入力に必要最小限度以外の全てのキーを廃止し、キー数の大幅削減を行い、キーを小型化することなく、キーボードの小型化と、従来のキー配列に対する習熟の継承を両立させたキー配列を実現する。キー数の削減により必要となる新たなシフトキーを、文字キーと兼用することで操作性の低下を防止する。又、キー数削減により、従来不可能であった誤操作の生じない位置への、ポインティングデバイスの配置を実現する。更に、キーボードとポインティングデバイスを統合的に制御することで、ポインティングデバイスの操作で一部のキーを代替し、キーにより、ポインティングデバイス従属のスイッチを代替する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置の文字情報の入力手段としてのキーボード、及びキーボードと一体化される位置情報入力手段としての接触式のポインティングデバイス(所謂タッチパッド)に関する。
【背景技術】
【0002】
従来,情報機器用の文字情報入力手段として、所謂QWERTY配列と呼ばれる機械式タイプライタ由来の文字配列を基本とする情報機器用キーボードが広く普及している。
前記キーボードには、標準的な配列が各種工業規格や、業界団体規格として存在し、所謂デスクトップ用と呼ばれる標準的なサイズのもの(一般にフルキーボードと呼ばれる)と、小型化を想定した装置向けの、小型キーボードの2種類が存在する。小型キーボードでは、図12に示されるような、小型化を想定した最小限度のキーで構成された配列が採用されている。
【0003】
前記、QWERTY配列は、その文字配置の根拠を機械式タイプライタに於ける、高速入力時の印字ハンマの機械的干渉防止に由来し、今日の電子式キーボードにとっては、必然性のない配列となっているが、機械式タイプライタが先行して普及し、情報入力用キーボードがそれに続いた歴史的経移から、情報入力用のキー配列としても機械式タイプライタ時代の基本的配列(特に英文字の a 〜 z の26文字、enter, shift 等)が継承されて今日に至っている。(人間工学的な観点から、新たな配列も考案された例があるが、広く普及した例は無い)
参考文献:非特許文献1
【0004】
図12の配列は、日本語キーボードに於ける一例であるが、横幅を決定しているのは、最上段から2段目の、数字を配置する段に、左端に漢字キー(英語キーボードに於いては、この位置にESCキー)を配置し、続いて数字の1〜9,0の10キーを配し、続いて3つの記号キー、右端に、バックスペースキーを配置していることにより、キーボードの幅(15キー分)を決定しており、この状況は、言語によらず、同じ配置が踏襲されている。従って、キーボード幅として、最低15キー分を必要とするのは、現在普及している、一般的なキーボードに普遍的に言えることである。
【0005】
横方向に少なくとも15列のキーに相当する幅が必要であることから、隣接するキーの中心間距離(以後、単にキー間隔と略す)を一定に保つと、一定の横幅以下の機器には搭載できなくなる。
具体的に数値を挙げれば、一般に使い易いキーの間隔は、約19mmといわれているので、15列のキーボードを実現するのに必要な幅は、キートップの幅方向の大きさが、略キー間隔である場合、少なくとも、19×15=285mmとなる。(現実的には、装置幅を100%キーに割り当てることは困難であるため、更に横幅は大きくなる)即ち、装置幅が、285mm以下の機器では、図12のキー配列を実現するには、全てのキーに対し19mmのキー間隔を維持することは、出来ないことを意味する。
【0006】
一方、例えば、ノートブック型のコンピュータ等の、小型化された情報機器では、事務用の用紙規格(例えばA4、B5サイズ等)に合わせて外寸を決定される場合が多く、例えばB5サイズを目標に設計される場合、装置幅が、257mm以下である必要がある。(用紙のB5サイズが、182×257mmであるため)
【0007】
従って、B5サイズを謳う情報機器では、図12のキー配列を踏襲する場合には、一部、又は全体のキー間隔を狭くすることで、装置幅に収めることが行われる。このことは、B5サイズに限らず、有効なキーボード部の幅が、標準的なキー間隔を維持出来ない場合は、一般的に行われている。
【0008】
キー間隔を狭くすると、通常サイズのキーボードに比べ、入力速度の低下や、誤入力が増加する(以後、この2つの問題を「操作性の低下」と表現する)等の問題が生じる。即ち、現在の、小型化された情報機器に於いて、装置幅の制約により、標準的なキー間隔を確保出来ない場合、一部、若しくは全体のキー間隔が狭められることによる、操作性の低下という問題がある。
【0009】
又、小型化を優先する情報機器では、接触式のポインティングデバイス、所謂タッチパッド(以後、特に断らない限り、ポインティングデバイスとは、前記タッチパッドを指すものとする)が一体化されるのが普通である。現状で広く普及している、ポインティングデバイスの配置位置は、図12のキーボードの例で、符号1202の領域に示す如く、キーボード中央直下が殆どであり、この位置は、キー操作中に容易に手が触れてしまうため、誤操作が生じやすい。
【0010】
キー操作中に、手が触れてしまう理由は、文字入力、又は文字入力待機状態で、ホームポジションに指を配している状況で、図20中の、符号2001,2002で示す領域が、両手の親指、及び手のひらの一部の直下にあり、且つ、距離が接近しているため、わずかな指の位置の変化でポインティングデバイスの表面に、指の一部、若しくは、手の平の一部が触れてしまうためである。
【0011】
以上のように、現在普及している、小型機器のキーボード(特にB5サイズ以下の機器)に於いては、キー操作性の低下の問題があり、ポインティングデバイスを一体化する場合には、ポインティングデバイスの誤操作という問題が存在する。
これらの問題に対し、従来は以下のような対策が取られてきた。
【0012】
キーボードの小型化による操作性の問題は、キーボードを伸縮構造とし、収納時は、装置幅に収め、使用時は、展開し、通常の大きさに戻すものが、特許文献1に提示されているが、この方法は、複雑な可動構造を必要とし、コストアップや、信頼性の低下等の原因となり、実現に困難が伴う。2011年7月現在で、一般に普及している小型コンピュータで、このような、伸縮、展開型のキーボードを商品化している例はない。
又、このような伸縮、展開型の小型化では、移動時の小型化は可能となっても、使用時には、通常サイズに近い幅を必要とするため、使用状態で小型である要求は満足することが出来ない。
参考文献:特許文献1
【0013】
従って、一般的には、操作性の低下を、最小限度に抑える手段として、英文字の大きさを維持し、他のキーを縮小することで、全体の幅を狭めることが行われている。具体的には、図13に示す如く、キー配列は、図12と同一の配列を維持し、図13中の符号1301,1302で示す領域内のキーで、一部のキー(主に周辺のキー)の間隔を狭めることが行われる。
【0014】
この方法では、周辺部のキー間隔が通常のキーボードに比べて狭くなっているため、通常のキーボードに慣れた手で操作すると、誤操作が増加する。キーボード周辺部には、バックペースや、日本語キーにおいては、日本語入力への切り替えを行う漢字キー、英語入力に於いては、カンマや、ピリオド等の使用頻度の高いキーが配置されており、かつ、これらのキーは、小指や薬指等の運動性が他の指に比べて劣る指の操作となっていため、わずかな位置の変更であっても、操作性を著しく低下させる。
【0015】
以上のキー間隔の縮小に関わる問題について、新たなキー配置によって、キー数を削減することで、キーボードの小型化を実現すれば、キー間隔の問題は回避可能であるが、以下に述べる理由により、キー配列は、容易には可変できない事情がある。
【0016】
(キー配列を変更することが困難である理由)
従来、新たなキー配列が考案される場合、既に普及してしまっている配列に対する学習効果を無視して、文字の出現頻度や、キースストローク数の最小化等の観点で、ゼロベースの新たな配列が考案される例が多かった。
その理由は、既存のキー配列に対する学習効果を単なる、キー位置の学習と誤解していることから、新たな配列を再学習することの困難性を重視しなかったためと思われる。ところが、キー配列に対する操作方法の学習は、個別のキー位置の学習を超えたものである。
【0017】
具体的に言えば、例えば、WORDという単語を入力する際に、学習されているのは、W,O,R,Dという個別の文字の位置ではなく、単語としての「WORD」を入力したときの、左右の指使いの順序や、相対的な位置の変化、指の運動の順序等を含んだ複合的な一連の運動の単位である。同様のことが、頻繁に使用する全ての単語に対し、単語別の運動バターンとして蓄積されていると考えられるため、その学習効果の総量は膨大なものとなる。(単なる個別のキー位置の学習を超えたものというのは、この意味である)
【0018】
前記キー操作に対する学習効果は、例えば、キー操作に熟達した人間であっても、ランダムな文字列の入力は入力速度が極めて低下することや、単語のスペルを口では即座に言えなくとも、キー入力する際には、よどみなく行える場合がある等の、事実から容易に想像されることである。
【0019】
従って、キー配列を可変するということは、表面的な変化からは想像されにくい、深刻な学習効果の喪失が生じること意味する。新たなキー配列が受け入れられにくい根本的な理由はここにあり、そのため、小型化機器に於けるキーボードとして、新たな配列を考案するには、前記学習効果の蓄積に対する十分な配慮が必要である。
【0020】
ポインティングデバイスの誤操作に関しては、様々な対策が取られているが、代表的なものを4つ挙げる。
1)ポインティングデバイスのON/OFFスイッチを設けるもの
2)文字入力中にポインティングデバイスの動作を無効化するもの
3)ポインティングデバイスを、ディスプレイパネルへ移動させるもの
4)キーボードを中央で左右に分離し、その間にポインティングデバイスを配置するもの
【0021】
1)のポイティングデバイスのON・OFFをスイッチで行うものは、商品化も多数例があり、ポインティングデバイスを無効化してしまうため、誤操作は完全に排除されるが、ポインティングデバイスを操作する都度ON・OFFを行わなければならず、文字入力とポインティングデバイスの複合操作では、操作性が著しく低下してしまう。従って、ON・OFFスイッチは頻繁に操作するのではなく、OFF状態として使い、外部にマウス等の別のポインティングデバイスを使用するのが現実的である。その意味では、キーボードと一体化されているポインティングデバイスは常用出来ない一時的なポインティングデバイスとして使うことになり、一体化の意味が半減してしまう。
参考文献:特許文献2
【0022】
従って、ポインティングデバイスのON・OFFスイッチを設けるものは、ポインティングデバイスの誤操作防止としては有効であっても、ポインティングデバイスを一体化する利便性を損なうものであり、有効な対策とは言い難い。
【0023】
2)のソフトウェアによる方式は、現在市販されているポインティングデバイス一体型のコンピュータでは、ポインティングデバイスの動作設定画面で、「キー入力中にポインティングデバイスを無効化する」という項目を有するものが殆どであり、この方法も普及している対策の一つである。
この方法では、ポインティングデバイスを単に無効化しているだけであるが、キー入力中にポインティングデバイスのポインタ位置を積極的に(接触しても動作を起こさない位置へ)移動させることで等価的に、ポインティングデバイスが無効化される方法も考案されている。
参考文献:特許文献3、特許文献4
【0024】
これらソフトウェアによる方式は、ある程度、効果を期待出来るが、文字入力中か否かをプログラムにより厳密に判定することは、原理的に不可能であるので、十分な対策とは言い難い。具体的に言えば、例えば、キー入力中であることの判断を、一定時間以内に継続してキー入力がある場合を、文字入力中と判断する等が考えら得るが、この方式では、文字入力中に、一時入力を中断して思考中の場合には、キー入力終了と判断されてしまうため、その直後のポインティングデバイスの誤操作は避けることが出来ない。又、逆に文字入力完了後に、素早くポインティングデバイスを操作しようとすると無視されてしまうという別の問題を生じさせる。
従って、2)の方式も、誤操作防止の対策としては十分とは言い難い。
【0025】
3)のポインティングデバイスをキーボード外に移動させる方式は、キー操作中のポインティングデバイスとの干渉は防止出来るものの、ポインティングデバイスがキーから遠い位置に配置されてしまうため、操作性が低下すると共に、現在広く普及しているキーボード直下に配置されるポインティングデバイスに比べ、小型のポインティングデバイスしか配置することが出来ず、操作感の低下が生じやすい。又、小型化を目的とした機器では、装置幅を可能な限り表示器に割り当てなければ、視認性の悪い表示器となりがちであるため、ポインティングデバイスをディスプレイ近傍に配置すると、ディスプレイ面積を圧迫する(即ち、装置幅を効率よくディスプレイに割り当てることが出来ない)問題がある。従って、3)の方式も十分な対策とは言えない。
参考文献:特許文献5
【0026】
4)のキーボードを左右に分離し、その間にポインティングデバイスを配置するものは、本発明に外観上の類似性があるが、単にキーボードを左右に分離すると、キーボード全体としての幅は、ポインティングデバイス分増大し、本発明の目的としている、小型化を想定したキーボードでは、実現不可能な方法である。特許文献6による発明も、小型化を想定しない、デスクトップ用の所謂フルキーボードが前提となっている。
従って、4)の方式は、本発明の目的とする小型化には、反するものであるため、本発明の目的からは、不十分な対策である。
参考文献:特許文献6
【0027】
本発明はこれらの問題に鑑みなされたものであり、標準的サイズのキーボードのキー間隔(19mm)を維持したまま、キー配列の変更によるキーボードの小型化と、従来のQWERTY配列に対する習熟効果の継承を両立させることを実現する。又、ポインティングデバイスが一体化される場合は、小型化を損なうことなく、キー操作中のポインティングデバイスの誤操作を効果的に防止することを実現する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0028】
【特許文献1】特許公開2003−162357
【特許文献2】特許公開平6−75702
【特許文献3】特許公開2000−112657
【特許文献4】特許公開平11−95972
【特許文献5】特許公開平9−292936
【特許文献6】特許公開平7−200121
【非特許文献】
【0029】
【非特許文献1】インターネットによる公開情報: http://ja.m.wikipedia.org/wiki/Dvrorak配列
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0030】
解決しようとする問題点は、従来のキーボードでは、キーボードを小型化すると、キー間隔を狭くせざるを得ないことにより、操作性が低下すること、及び、ポインティングデバイスを一体化する場合は、ポインティングデバイス配置位置が、キー入力中に誤操作し易い位置にならざるを得ないことである。
【課題を解決するための手段】
【0031】
本発明は、
「従来のQWERTY配列の英文字配列を維持したまま、キー数を大幅に削減することにより、操作性を低下させない十分な大きさのキーを全てのキーに使用しても従来より、小型化の可能なキーボードを実現可能としたこと」
「削減されたキーを英文字キーに重複配置しても、操作性を低下させない為の改良されたシフト方式を実現したこと」
「キー占有幅を効果的に削減するため、従来左右に配置されていた大型のキーである、shiftキー、enterキー、ctrlキーを中央に集約しキー配置効率を高めたこと」
キー数削減の手段の一つとして、キーボード処理とポインティングデバイス処理を統合して行うことにより、「特定の状況に於ける、特定のキー操作をポインティングデバイスの従属機能に変換すること」
「特定の状況に於けるポインティングデバイスの特定の操作をキー操作に変換すること」
これらのキー数の削減、配置効率化により、
「従来不可能であった理想的な位置へのポインティングデバイスの配置を実現したこと」
を主要技術とする。
上記文中、「」は、後の実施の形態、実施例に於いて、「」で囲んだ範囲を単位として、再引用するため、その部分との対応関係を明確にする意味で用いた。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、従来よりキー総数が大幅に削減される(約50%に削減される)為、小型の機器に搭載する場合でも、キー間隔を狭める必要がない。従って、操作性が低下しない。しかも、従来のキーボードでホームポジションに隣接して配置されているキー配列は変えていないため、従来キーに対する習熟効果の大半を継承することが出来る。
【0033】
更に、従来ホームポジションから遠い位置に配置されていたファンクションキーや、数字キーを英文字キーに重複配置することで英文字キーと、これら再配置されたキーが等距離となり、操作性が改善される。
【0034】
又、これらのキー数削減により、ポインティングデバイスの配置スペースが確保され、理想的な位置にポインティングデバイスを配置することが可能になり、結果的に、文字入力中のポインティングデバイス誤操作が回避される。
【0035】
更に、副次的な効果として、キーボードのキー総数削減により、新たにキー操作を学習する場合に、習熟期間の短縮が期待出来る。
又、小型の機器と、小型化の必要のない機器でキーボードサイズを変更する必要がなくなるため、文字入力手段の物理的な共通化が可能となり、利用者にとっては、単一の入力環境を維持できるメリットがあり、製造メーカにとっては、部材の共通化が推進され、省資源、コストダウンが期待出来る。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の典型的な実施例、英文字と必要最小限度の制御キー以外を全て廃止し、shift,enter,ctrl キーを中央へ移動し、ポインティングデバイスをキーボード上部に配置した図である。
【図2】キートップ上に表示される文字、記号、とシフト操作との組み合わせの関連を説明する図である
【図3】図2の表記を一般化して、キーボード全体に展開した図である。(再配置可能なキーと、従来配置を継承するキーを明らかにする目的で、本発明を適用する典型的なキー配列の例を用いて、全てのキーを表示している)
【図4】ポインティングデバイスをキーとして代替使用する基本図(中央に配置される3キーを代替する場合の説明図)である。
【図5】図4の例を、実際のキーボードと組み合わせた場合の実例である。
【図6】図4の変形例、生産上の都合から形状を単純化する必要がある場合の適用例である。
【図7】図6の変形例とキーボードを組み合わせた場合の例である。
【図8】ポインティングデバイスをキーとして代替使用する場合の応用の一例(図4の例に更に6つのキーを追加した場合の例)である。
【図9】図8の例を実際のキーボードと組み合わせた例である。
【図10】図8の変形例、生産上の都合などにより、形状を単純化した場合の例である。
【図11】図10に示す例を、キーボードと組み合わせた例である。
【図12】一般的なキー配列における配列を固定すべき場所と、可変可能な場所を説明する為に、キーボードの配置領域を3つの領域に分類した図である。
【図13】図12の領域を、本発明により、再配置した結果の領域を示す図である。
【図14】本発明の前提となる、システムの構成図である。
【図15】本発明による、キー処理が実現可能であることを示すフローチャートである。
【図16】本発明による、ポインティングデバイス処理が実現可能であることを示す、フローチャートである。
【図17】一般に普及している小型化を目的としたキーボードの典型的な例である。(日本語キーボード)
【図18】図17のキー配列で、全てのキーを標準サイズとすると、キーボードが装置幅に収められない場合、QWERTY配列を維持しつつ小型化の為に周辺部のキー幅を狭くしていることの説明図である。
【図19】図1に示す本発明による典型的なキーボードと、従来技術によるキーボードとの、幅、高さ方向の寸法比較を行った図である。
【図20】従来技術による、小型化キーボードで配置されているポインティングデバイスの位置では、キー操作中に、誤操作が起こり易い理由を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明の実施の形態について、以下に、ハードウェア構成、キー配列、処理システム、の3つの観点から、説明する。
【0038】
(ハードウェア構成上の観点から)
従来技術によるキーボードと、従来技術によるポインティングデバイス、により実現されるが、従来これらのハードウェア、若しくはそのハードウェアを処理するサブシステムは、上位システムに個別に接続されていたが、本発明では、両者を統合的に処理する処理システムを経由して、上位システムに接続されている点が異なる。
【0039】
(キー配列)
キー数が大幅に削減されているにもかかわらず、英文字については、通常のQWERTY配列を踏襲しているため、文字入力は従来キーボードと変わらない入力が可能となっている。文字配列は従来のQWERTY配列を踏襲しているが、左右の手の分担境界で間隔を空け、その位置に大型キーを配置していることにより、キーボード全体の幅方向の縮小実現している。
結果的に、キーボード全体の構成として、幅方向に全域に渡って2キー、上下方向に2キー(部分的に1キー)分の縮小を実現した。上下方向のキー占有面積削減により、キーボード上部にポインティングデバイスを配することが可能となった。
【0040】
(処理システム)
新たなシフト操作が追加されるが、新たなシフトキーは増設することなく既存のキーと新たなシフトキーを兼用可能な処理を実現した。 又、キー処理と、ポインティングデバイスの処理を統合的に行い、相互に情報を交換、若しくは動作状態を可変する処理を有する(特定のキー操作をポインティングデバイス従属のキースイッチの代用としたり、ポインティングデバイスの動作状態の可変に使用したり、ポインティングデバイスの特定の操作をキーの代替手段とすることが可能となり、キーの削減に貢献する)
結果的に、中央に移動されたshift, enter, ctrlキーをポインティングデバイスで代替することも可能となり、その場合は、キーボード中央の最も操作しやすい位置に、ポインティングデバイスが配置されるにもかかわらず、誤操作を防止することが出来るようになった。
【実施例】
【0041】
本発明を実施する上で典型的なシステム構成の一例を図14に示す。1400は、システム構成の全体を示しており、1401で示されるキーボードが経路1403により、処理システム1405に接続されており、同様に、1402で示されるポインティングデバイスが経路1404により、前述の処理システム1405に接続されており、処理システムで一旦、文字情報の入力と、位置情報の入力が統合的に処理された後に、キーボードの接続経路1406と、ポインティングデバイスの接続経路1407を経由して、上位システム1408に接続されている。
【0042】
処理システム1405では、状況に応じて、文字情報が位置情報処理の補助的情報に変換されたり、位置情報を、文字情報に変換することにより、本発明のキーの大幅削減に寄与しているが、上位システムからみると、従来通り、キーボードの入力経路と、ポインティングデバイスの入力経路が独立しているため、従来の処理そのまま利用可能である。即ち、処理システム1405を経由することにより、本発明によるキー削減の処理は、上位システムでは、考慮する必要がない。
【0043】
尚、以下の実施例で、キーボードとは、物理的なキーボードに限らず、表示装置と透明電極を組み合わせた所謂ソフトウェアキーボード等についても、全く同様の適用が可能なため、「キーボード」とは、それら代替手段も含むものとし、説明の煩雑さ避ける目的で、以後、特に述べない。
【0044】
(キーを図示する上での表現方法)
本発明の性質上、一つのキーに従来より多くの文字、又は、機能を重複して配置する必要性から、以後の説明では、一つのキーに複数の文字、又は記号、機能表記を表示した図を参照するため、先ず、重複して配置された文字、又は機能のうち有効となる一つを選択するための操作とキートップ上の表示の関係について説明を行う。
尚、以下説明文中で、文字を表す場合は、記号ダブルクオーテーション " で囲むこととする。例外として、ダブルクオーテーション自体を文字として表現したい場合は、シングルクオーテーションで囲むものとする。即ち、
"a" は、文字 a を表し、 '"' は、ダブルクオーテーション記号を表すものとする。
【0045】
図2の符号200で示されるのは、一つのキーに複数の文字又は、機能を割り当てた場合に、それらのシンボルのキートップ上の表示位置を表している。各表示位置はキー操作の方法に関連付けらており、文字又は、機能の表示位置により、入力のための操作方法が一意に決定される。
【0046】
図2で示されるのは、具体的なキーの例であり、は、符号210で英文字 y 、220で英文字 r キーを例として表示している。
尚、以下の説明では、キーボードは、英語キーボード、若しくは、日本語入力をローマ字入力により行うキーボードを前提に説明を行うため、201〜209の表示位置の内、201,202を英文字と一部記号、203,204を数字と一部記号、205,206を機能キーに割り当てる前提とする。
【0047】
(一般的キーボードで必要とされるキーの総数について)
一般に、キーボードにより、入力される文字、機能の総数は、およそ160程度(図12のキーボードの場合158種類)である。 例えば、USB規格によるキーボードの論理コードの割り当て仕様(USB HID Usage Tables10/128/2004Version1.2)によれば、キーコードの最大割り当て数は232種類である。これら232種類の中には、通常実装されることのない特殊なキーや機能が含まれることから、前述の、通常必要とされる総数を160 としたが、仮に、HID規格より更に余裕をもたせた、240を想定しておけば、実用上十分な数と考えられる。
【0048】
この仮定に立ち、40キー程度のキーにより、240種類の文字又は、機能を入力するには、一つのキーに6種類の異なる、文字、又は、機能を割り当てる必要がある。従って、一つのキーについて、6種類の異なる入力状態を実現する必要があり、これには、従来から、存在する大文字/小文字の選択を行う文字シフトキー(以後、単にshiftキーと表す)、機能選択を行うfnシフトキー(以後、単にfnキーと表す)に加えて新たに、1つのシフトキーがあれば良い。
【0049】
即ち、6種類の入力状態の実現方法の一例は、以下の通りとなる。
・ 文字又は機能キーを、シフト操作なく単独で操作する場合
・ 文字又は機能キーを、shiftキーを併用して操作する場合
・ 文字又は機能キーを、新たなシフトキーを併用して操作する場合
・ 文字又は機能キーを、shiftキーと新たなシフトキーを同時に併用して操作する場合
・ 文字又は機能キーを、fnキーと併用して操作する場合
・ 文字又は機能キーを、shiftキーとfnキーを同時に併用して操作する場合
【0050】
前記6種類の文字入力操作と、キートップ上の対応を、図2、200に召す。即ち、200で示すのは、一つのキー上の領域201〜209であり、各領域は、前述の6種類の入力操作と対応関係を持って使用される。各領域と、操作の関係を以下に整理する。
領域201: シフト操作なく単独での「キー操作時に入力される文字、又は機能」、尚、以下「キー操作時に入力される文字、又は機能」を単に入力キーと略す。(但し、英文字の"a"〜"z" は慣例的に省略されるため、英文字に該当するキーの201の領域は空白となっている)
領域202: shiftキーと併用による入力キー
領域203: 新たなシフトキーとの併用による入力キー
領域204: shiftキーと新たなシフトキーとの併用による入力キー
領域205: fnキーとの併用による入力キー
領域206: shiftキーとfnキーとの併用による入力キー
領域207〜209は、新たな第二のシフトキーの併用により同様に入力可能だが、本説明では省略する。
以上の規則による、具体的なキーの例を、図2中の、210,220で示す。
【0051】
210ので示すキーでは、文字キー"y"表しており、shiftキーと共に押下された場合は通常のキーボード同様に、大文字の"Y"が入力される。新たなシフトキーと同時に押下された場合は、数字の"1"が入力される。その他の操作は、有効でないため、空白となっている。
【0052】
220の例では、単独で押下された場合は、英文字の"r"、shiftキーと共に押下された場合は、 大文字の"R"、新たなシフトキーと共に押下された場合は、記号の"}"、 新たなシフトキー及びshiftキーと共に押下された場合は、"~"(チルダ)が入力される。領域205に相当する場所には、外部モニタを表すシンボルが表示されており、例えば表示出力を外部モニタ端子に出力することを示している。従って、fnキーと共に押下された場合は、外部モニタへの出力が有効となる。領域206にはLCDと表示されているため、例えば、外部モニタへの表示出力を搭載LCDディスプレイに切り替える機能を表している。又、これらの規則に従った一般的なキー配列の例を、図3に示す。
【0053】
図3の表示では、図2に於ける領域、202,203,204,205,206 に配置される文字、又は機能をそれぞれ、キートップ上に表示した文字列、c4〜c10,s1〜s37,t1〜t37,f1〜f37,g1〜g37で示している。これらの領域に、実際に文字、又は機能を割り付けたより具体的な例を図1に示す。
【0054】
図1の配置では、図2での各領域を、以下のように分類して使用している。
領域202,203:右手領域は、数字、若しくは、数字に関連性の強い記号
領域202,203:左手領域は、各種記号
領域204,205:右手領域は、F1〜F12キー
領域205,205:左手領域は、各種機能キー
【0055】
又、BS(バックスペースキー)は従来、小指操作範囲の右上端に配置されていたが、人差し指操作範囲且つ、enterキーより最も遠くなるよう、図1中では、104で示す中央部上部右寄りの位置に配置されている。
【0056】
新たなシフトキーとして、例えば、スペースバー(キートップ上の表記は SP )の利用を前提として、105で示す スペースバーに、106で示すシフト領域を示すグラフィックシンボルが表示されている。(グラフィックシンボルは、図2で示した、キートップ上の9つの領域をシンボル化して表しており、キートップ上の9つの領域のうち、どの領域の表示文字が有効となるかを、着色して2箇所で表示している。一箇所はスペースバーを押下しながら押下した場合に有効となる領域を示し、他の一箇所は、スペースバーと通常のshiftキーを同時に押下した場合に有効となる領域を示す。Fnキーにも同様ルールのシンボルが表示されている。)
【0057】
107,108で示すfnキーは、105で示すスペースバーの両端に配置されている。この配置により、シフト操作に関わる全てのキーが中央最下段のスペースバーを中心に隣接することとなり(直上がshiftキー、左右がfnキー)、シフト関連キーの配置位置への習熟期間の短縮が期待出来る。
【0058】
(シフト兼用キーを単独で押下し続けた場合の例外処理)
通常、同一キーを押下し続けると、上位システムでは、押下直後に送出されたキーコードにより、一定時間経過後に、連続キー入力(同一キーコードを一定時間毎に繰り返し生成する、所謂リピート動作)の処理を行うが、シフト兼用キーが単独で押下された直後には、文字として押下した場合と、その後に、他のキーが続けて押下されて、シフトキーとして機能する場合の2つの可能性があるため、キー押下直後にキーの意味を確定するこが出来ない(即ち、上位システムに対し、キーコードを送出することが出来ない)。
【0059】
従って、後続するキーが押下されるか、シフト兼用キーが開放される時点まで、動作を保留する必要がある。シフト兼用キーが文字キーの連続入力を意図して、押下され続けた場合、前述の処理の保留状態に留まるため、何らかの形で、連続文字入力の意図を明らかにする必要が生じる。
【0060】
109,110で示す位置の alt キーの数字シフトの位置に表示されている、 rptSP の意味は、このシフト兼用キー(図1の例ではスペースバー)の連続押下を明示的に示すためのキーを表し、スペースバーと、alt キーが同時に押下されている場合は、直ちにスペースバーに該当する文字コードが上位システムに送信され、一般的なキーに於ける、スペースバーを押下し続けた場合と同一の状態を作り出すことが出来る。
以上は、シフト兼用キーをスペースバーで実現した場合の例であるが、他のキーをシフト兼用キーとして使用しても、同様に適用することが出来る。
【0061】
既に引用したとおり、図1は、本発明による、典型的なキー配列の実例であるが、図1の配置が、先に述べた、問題の解決手段と具体的にどのように対応しているかを、以下に、解決手段で用いた表現を引用しつつ、解説する。
【0062】
(「従来のQWERTY配列の英文字配列を維持したまま、キー数を大幅に削減することにより、操作性を低下させない十分な大きさのキーを全てのキーに使用しても従来より、小型化の可能なキーボードを実現可能としたこと」との対応関係)
従来のQWERTY配列の英文字とその他の文字の位置関係を、図17に示す。図17において、符号1701,1702,1703,1704は、右手に於けるホームポジション、1705,1706,1707、1708,は左手に於けるホームポジションと呼ばれる指の配置位置であり、この位置に人差し指から小指の4本の指を配置することをキー操作の基本とする操作が機械式タイプライタ時代に確立され、今日でも、その操作方法が踏襲されている。英文字の"a"〜"z"の26文字と、","、"."、":"、";"等、文章作成上頻繁に使用されるキーは全て、ホームポジションから、1隣接キーの範囲に集中して配置されている。先に従来技術で述べた、「キー配列を変更することが困難である理由」により、図1の実施例では、この領域(ホームポジション、及び、その1隣接距離にあるキー)の配置を中央のキーで左右に分離しているものの、左右の手のキー操作守備範囲に於いて、変更していない。
従って、英文字の"a"〜"z"の26文字と、","、"."、":"、";"の操作性について、従来のキーの操作性を踏襲している。又、如何なるキーも小型化していない。
【0063】
一方、従来キーの配列を示す図17に於いて、英文字の"a"〜"z"の26文字と、","、"."、":"、";"、以外の領域、即ち、図中の符号709,1710,1712の領域に配置されているキーについては、文字が配置されていないことと、ホームポジションから遠い位置にあることが重なり、正確なキー操作には、目視による補助が加わっている場合が多いと考えられる。従って、これらの領域については、配置を大幅に変更しても、キーボードを見ることなくキー操作を行う、所謂ブラインドタッチによる高速の文字入力には、大きく影響しないと考えられる。
図1の例では、1709,1710,1712の領域のキーを全て廃止し、英文字、又は1711の領域を再編成し、重複して配置することで、QWERTY配列への習熟の継承と、キーの削減による小型化の両立を実現している。
【0064】
(「削減されたキーを英文字キーに重複配置しても、操作性を低下せないための改良されたシフト方式を実現したこと」との対応関係)
前述の英文字以外の位置のキーを英文字に重複して配置するには、先に図2を用いて説明したとおり、複数の入力状態を作り出す必要が生じるが、通常の英小文字、英大文字については、従来キーと同様の操作となるためshiftキーの位置変更に対する習熟のみで対応可能である。shiftキーの位置変更に対しては、従来の小指操作から、人指し指操作に転換されたため、人間工学的には、操作性が改善されたと考えられる。
図1の例では、従来の shift キーは、中央部、スペースバー直上に配置している。
【0065】
数字を文字キーに重複して配置している点については、本発明では、新たなシフトキーを既存の文字キーと兼用するため、新たなキー位置を学習する必要がない。先に述べた通り、スペースバーを数字シフト用のシフトキーとして使用すれば、スペースバーは左右いずれの手でも、操作可能であり、且つ、人差し指でも、親指でも操作可能であるため、数字入力中に同時に押下する負担は極めて少ない。但し、シフトキーと文字キーを同一キーとする使い方は、一般的ではないため、具体的な実現方法は、改めて、「文字キーとシフトキーを兼用する具体的処理」として、処理フローを示して説明を行う。
図1の例では、新たなシフトキーは、105で示すスペースバーと兼用されており、新たなシフトキーであることを示すシンボル106がスペースバー上に表示されている。
【0066】
fnキーについては、従来から、機能キーの一部は、fnキーによるシフトが取り入れられていたため、特別な違和感は感じないと考えられる。むしろ、図1の領域 111 に示す如く、数字キーの"1"〜"0"と、ファンクションF1〜F10 が同一位置に配置され、F11,F12はF9,F10直下に配置されることで、従来は、F1〜F12キーはブラインドタッチが困難(ホームポジションから遠いため、ミスタッチを誘発し易い)なキーであったものが、文字と同様にブラインドタッチ可能なキーとなり、操作性が向上することが期待出来る。
図1の例では、fnキーの位置は、107,108で示す位置に配置されており、この位置は従来キー配列でのfnキーの位置に近い位置であり、且つ大型化されているため、操作性は向上している。
【0067】
(「キー占有幅を効果的に削減するため、従来左右に配置されていたshiftキー、ctrlキーを中央に集約し、それに合わせて enterキーも中央へ移動させたこと」との対応関係)
キー数削減の手段として、図17の領域1709,1710に配置されたキーを廃止する際に、この領域には、通常、shift, ctrl、enter等の大型のキーが配置されているが、これらのキーを無配慮に、他の位置へ移動させると、左右方向の幅を無闇に拡大する恐れがある、そこで、本発明では、これらのキーを中央に集約し、大型キーの配置上の無駄を排除する。具体的には、図18の1801で示す領域に、前記大型のキーを集中して配置する。図1でキーボード中央部に実際に配置した例を示している。
【0068】
ctrl,enter,shiftの3つのキーの配置位置が大きく変化するが、従来これらのキーが小指で操作されていたものを、人差し指操作に転換することで、配置変更に対する習熟期間の短縮と、操作性改善を同時に実現される。
【0069】
更に、中央部の大型のキーで、左右の文字キーが分離されるため、ホームポジションの位置が把握し易くなるというメリットもある。(中央部の大型キーから数えて、2つめのキーがホームポジションとなるため。大型キーがホームポジションを知る上での基準位置となり得るため)
【0070】
(文字キーとシフトキーを兼用する具体的処理)
fnキーによるシフト操作は、fnキーが従来キーと同様に独立したキーにより、実現されているため、通常のシフトキーと同様の処理を行えば、該当文字、又は機能が、選択可能なことは、自明であるので、先の実施例として示した、スペースバーを新たなシフトキーと通常の空白文字と兼用することが可能であることを、図15に示す処理フローを参照しながら、説明を行う。
【0071】
文字の割り当てキーと、シフト機能を一つのキーで兼用すると、キーの押下直後には、通常の文字キーとして押下されたのか、シフトキーとして押下されたのかを判定することが論理的に不可能なので、押下直後には、状態を保留し、後続するキーの押下の有無により、シフトキーとして処理すべきか、文字キーとして押下されたかを判断する必要がある。
【0072】
ところが、通常、キーは、押下直後に文字が表示されないと不自然な動作と感じられてしまうため、一般には、文字キーとシフト機能の兼用は困難である。(実現は可能だが、操作上、不自然さを回避することが出来ない)
しかしながら、特定のキーに限れば、この問題を回避することが出来る。例えば、スペースバーは通常、押下直後に開放される場合が殆どであることと、キーが際立って大きいこと、唯一の親指操作のキーであること等の理由により、文字として押下された場合の応答を目視確認する必要性が殆どない。このため、キーの押下直後に状態を保留しても、不自然な動作とならないキーの一つである。他のキーでも押下の頻度の少ない記号や、機能キーの一部は同様に、押下直後に保留しても問題を生じない。
【0073】
図15に示すフローチャートを参照しながら、シフト兼用キーが目的の機能を果たすことを、具体的に説明を行う。 先ず、図15中の各処理の概要について説明を行い、更に、前述のキー入力とシフト状態の組み合わせによるキーコード生成処理の対応関連を述べる。
【0074】
尚、図15のフローチャートで示す、キーボードの処理は、上位のシステムにキーの押下状態を通信により出力する前提で処理を記述している都合上、生成されたキーコードを送信することで処理が完結するフローとなっているが、キーの状態を上位、若しくは他の処理に伝達する手段として通信によらない、例えば、情報がメモリ上の情報として共有されている場合は、送信処理は不要であり、キーコードを単に特定の領域に生成することで処理が完結するが、発明の主旨には無関係であるため、説明の都合から、キーコードの送信により、処理が完結するものとする。
【0075】
又、本発明では、キーボードの処理と、ポインティングデバイスの処理が相互に、情報を交換する場合があるため、キーボードの処理中に、ポインティングデバイス処理に伝達すべき情報の処理が、存在するので、その説明も合わせて行う。
【0076】
(各処理の概要)
1500は、キー入力処理の開始処理であり、通常キー入力により生じる電気的な割り込み信号や、入力状態を一定時間毎に監視するプログラムによる処理の制御権の移行等により、実行が開始される。
【0077】
1501はキー操作がポインティングデバイス操作中か否かの判定であり、ポインティングデバイス操作中でなければ、通常のキー入力処理である1504に分岐し、ポインティングデバイス操作中であれば、1502に分岐して、ポインティングデバイス操作中のキー処理を行う。
【0078】
1502は、ポインティングデバイス操作中の有効なキー操作を判定する処理であり、有効なキー操作であれば、ポインティングデバイスに従属した処理情報を生成するため、処理1503に分岐し、有効なキーでない場合は、終了処理の1522へ分岐して処理を終了する。
【0079】
1503は、ポインティングデバイス操作中のキー操作による、ポインティングデバイス処理情報の生成処理を行い、ポインティングデバイスの処理へ、押下キーに応じたポインティングデバイスの装飾情報(ポインティング位置情報ではないが、ポインティングデバイスの動作に影響を与える情報を装飾情報と表記する)、例えば、左右のクリック状態の生成や、ポインティングデバイスの位置生成ゲイン(ポインティング操作量に対する位置情報の変化率)の可変等が処理間の通信手段(タスク間の通信処理や、共有メモリを経由した情報の伝達等)を用いて伝達される。1503の処理が実行される場合は、キーは通常のキー入力として操作されていないため、1503の処理が終了すると、1522へ移行して、処理を終了する。
【0080】
1504は、現在のキー入力状態を取得する処理であり、この処理で、物理的なキー入力状態が処理システム内に取り込まれる(ポインティングデバイス処理による、キー入力等価情報が生成された場合のキー押下情報の取り込みも、この処理に含まれる)。物理的なスイッチで構成されているキーボードであれば、スイッチのON、OFF状態の検査を全てのキースイッチに対して行い、現在の状態を取得する。この際、この処理で、キーの短時間のチャタリングの除去など押下されたキーの安定化処理等が同時に行われる。
【0081】
1505は、キーの押下状態の変化を検出する処理であり、現在のキーボード処理システムでは、キーボード押下状態の変化が生じた時点で、上位のシステムに押下キーに関するキーコード、若しくはキーが開放された場合は、開放コードを送信する処理が一般的であるため、本説明でも同様の処理を前提として説明を行う。即ち、キーボードは、押下中や、開放中のように同一の状態が継続する場合は、同一の情報を繰り返し上位システムに送信することはなく、キーが押下された直後に、押下キーの情報を送信し、開放直後に開放コードを上位のシステムに送信する。
上位のシステムでは、キーの開放情報を受信するまでは、先のキーの押下が継続していると処理される。従って、1505では、繰り返し実施されるキー押下状態の検出に於いて、前回でのキーの押下状態と現在の押下状態を照合し、同一の場合、何も行わず処理を終了し、変化があった場合のみ、1506に移行して、キー押下に関わる処理を開始する。変化が無かった場合は、1522へ移行して処理を終了する。
【0082】
1506は、キー押下状態に変化があった場合に、現在の状態が押下中か、開放かを判断する。押下中であった場合は、1507から始まる、キーの押下処理へ移行し、開放であれば、1517から始まるキー開放時の処理へ移行する。
【0083】
1507はキーの押下時の処理であり、この時点では、何らかのキーが押下されていることが確実であるため、押下キーにシフト兼用キーが含まれているかどうかの判定処理を先ず1507で行う。従って、1507では、押下キーにシフト兼用キーが含まれている場合には、1508へと処理を移行させ、含まれていない場合には、1514へ移行させる。
【0084】
1508はシフト兼用キーの押下を含む処理の開始であり、先ず、押下キーがシフト兼用キー単独であるのか、他のキーを含むのかの処理を行う。シフト兼用キー単独、或いは該当するシフトキーで指定されるキートップ上の位置に文字、又は機能の定義のないキーの同時押下の場合は、シフト兼用キーの本来のキーのリピート操作の可能性が残るため、1512へ分岐して、リピートキーの処理がチェックされる。シフト兼用キーと組み合わせ可能な他のキーが同時に押下されている場合は、1509が実行される。
【0085】
1509では、シフト兼用キーと有効なキーに加えて、通常のシフトキーの押下の有無をチェックする。通常のシフトキーが同時に押下されていない場合は、図2の文字位置の定義では、201の位置、若しくは203の位置の文字(シフト兼用キーの数によっては、205、207)の位置に定義されている文字、又は機能に該当する文字コードが、処理1511により、出力される。
1509の処理により、シフトキー(従来のキーボードにおけるシフトキー)が同時に押下されているこが、検出された場合は、処理1510に移行し、シフト兼用キーの種類により、図2での表示位置202、又は204の位置に定義されている文字、又は機能に該当する文字コードが送信される。
【0086】
1512の処理は、1508の処理により、シフト兼用キーが押下されていてる状態で、該当のシフト位置に有効な文字、又は、機能キーが存在しない場合に、Rpt(リピートキーの意味)キーが押下されていることを検出する処理であり、本発明のキー処理に固有の処理である。シフト兼用キーとRptキーのみが押下されいる場合は、シフト兼用キーは、シフトキーとしてではなく、本来の文字、又は機能キーとして押下されたとみなされ、1513に移行して、本来のキーコードが送信される。
Rptキーの押下がない場合は有効なキー操作でないため、1521に移行して処理を終了する。
【0087】
1514の処理は、1507の処理により、シフト兼用キーが押下されていない場合に開始される処理であり、ここで、更に通常のシフトキーの押下の有無がチェックされ、シフトキーの押下がある場合は、処理1515に移行し、通常のキーがシフトと共にで押下された場合のキーコード、即ち、図2の表示領域S1に該当するキーコードが送信され、1521へ移行して終了する。
【0088】
1514の処理で、シフトキーの押下が無い場合は、1516に移行し、通常キーがシフト操作なしで、押下された場合に該当するキー、即ち図2の領域S0に表示されているキーに相当するキーコードを送信しk、1521へ移行して処理を終了する。
【0089】
1517の処理は、1506でキーの押下が無い場合、即ち、キー開放時の処理である。 従来のキーボードでは、キー開放処理は、単に開放コードの生成のみであるが、本発明では、シフトキーを文字キーと兼用しているため、シフト・文字兼用キーについては、押下直後には、文字キーとして押下された場合と、シフトキーとして押下され、継続して他の文字キーが押下されてシフトーとして機能する場合が区別できないため、押下直後には、文字コードを送信することが出来ず、続く操作が行われるまで、処理を保留する必要がある。1517は、そのための処理であり、直前の押下キーがシフト兼用キー単独であった場合は、1518に移行して、シフト兼用キーが単独で押下、開放された場合の処理へ移行する。
【0090】
1517の処理で、直前の押下キーがシフト兼用キーの単独押下でない場合は、キーの押下が開放された場合に街頭するため、1520に移行して、開放キーコードの送信処理を行い、1521に移行して処理を終了する。。
【0091】
1518の処理は、シフト兼用キーが単独で押下、開放された場合の処理であり、本発明に固有の処理である。シフト兼用キーがシフト操作ではなく、文字又は機能キーを意図して単独で押下、開放された場合に1518の処理が開始され、シフト兼用キーが押下直後の処理を保留していた補完処理をここで実施する。即ち、先ず、シフト兼用キーの本来の文字又は機能に該当するキーコードを送信し、更に、処理1519に移行して、一定時間経過後に、キー開放コードを送信する。この処理より、シフト兼用キーが、専用キーとして独立している場合の動作と等価な動作を実現している。
【0092】
1521の処理は、全ての処理の終了時に経由する処理であり、現在のキーの押下状態を記憶し、次回のキー処理での、直前のキー状態を知るための情報を保持し、1522に移行して終了処理を行い、キーボード処理全体を終了する。
【0093】
(シフト状況別の処理フロー)
以上のような、1500〜1522の処理が、シフトキーとの組み合わせ状況と、図2に示す表示領域との対応別に、起動される順序を整理すると以下の通りとなる。(1500, 1522は開始、終了処理であり、全てに含まれるため省略する)
【0094】
キー押下が無いか、変化がない場合
1501→1504→1505→1521
【0095】
シフト兼用キーと共に図2の表示領域、S2,S4に表記のあるキーが押下された場合
1501→1504→1505→1506→1507→1508→1509→1511→1521
【0096】
シフト兼用キーに加えて、シフトキーと共に図2の表示領域、S3,S5に表記のあるキーが押下された場合
1501→1504→1505→1506→1507→1508→1509→1510→1521
【0097】
シフト兼用キーのみが押下された場合、又は、シフト兼用キーと図2の表示領域、S2,S4に表記のないキーが押下された場合
1501→1504→1505→1506→1507→1508→1512→1521
【0098】
シフト兼用キーがシフトキーとしてではなく、本来のキーとして、リピート動作を期待して、Rptキーと共に押下された場合。
1501→1504→1505→1506→1507→1508→1512→1521→1513→1521
【0099】
シフト兼用キーを通常文字キーとして押下、開放した場合
押下時:1501→1504→1505→1506→1507→1508→1512→1521
開放時:1501→1504→1505→1506→1517→1518→1519→1521
【0100】
シフトキーと共に、図2の表示領域、S1の領域に表記のあるキーが押下された場合、
1501→1504→1505→1506→1507→1514→1515→1521
【0101】
シフト兼用キーでないキーが単独で押下された場合、
1501→1504→1505→1506→1507→1514→1516→1521
【0102】
以上により、従来より大幅にキー数の削減されたキーボードであっても、複数のシフト兼用キーの組み合わせにより、従来のキーと同様の文字や機能を実現することが出来、かつ必要とされる新たなシフトキーを通常の文字、又は機能キーと兼用しても、矛盾なく重複配置されているキーから必要なキーを選択し、入力可能であることが、実際の処理フローと共に示された。
【0103】
(本発明によるキー配列で、操作性が低下しない理由)
本発明をキーボードの操作性の観点から、従来キーボードに比べて操作性が低下していないことを、異なる2つの観点から、以下に述べる。第一の観点は、既に広く普及しているQWERTY配列に習熟している場合の移行の容易性であり、第二の観点は、キーボードの操作を初めて習得する場合の習熟の容易さである。
【0104】
第一の観点に立って、本発明のキーボードを評価すれば、アルファベット26文字は、従来のキーボードと同じ位置関係を維持している点と、キー間隔を通常の標準サイズのキーボードと同一間隔を維持出来るため、アルファベットの文字入力については、新たな習熟期間を必要としないことは明白である。
【0105】
又、アルファベット以外の数字、記号、機能キーが文字に重複して配置され、従来のキーと異なる位置にある点については、数字に冠しては、元々、テンキーを持たない、小型キーボードにあっては、ホームポジションから遠い位置でかつ、横一列に配置されていることから、元来操作性が悪かった配列が、シフト操作を伴うとはいえ、ホームポジションに極めて近い位置に且つ、右手のみで、全ての数字を入力可能となったことから、操作性はむしろ向上したと言える。
【0106】
記号、機能キーに冠しては、メーカにより微妙に位置が異なるキーが存在するため、英文字程、習熟効果が強くないと考えられるため、合理的な配置であれば、短時間に際習熟可能と考えら得る。例えば、本発明の実施例では、図1に示す例では、記号と、英文字の連携を理解し易い配置としている。具体的には、"@"(アットマーク)、"$"(ドル記号)、Tab(タブ)を、各々、発音上の類似性を持つ、文字、"a", "d"," t" に該当するキーに重複して配置する等、の工夫を行っている。又、組み合わせて使用される場合の多い、"(" と ")"や、"{" と "}"等は、同一キーのシフトの有無で入力し分ける等も行っている。これらの配置上の工夫により、比較的出現頻度の少ない記号や、機能キーへの際習熟は大きな負担とならないことが期待出来る。以上より、即ち、前出の操作性の第一の観点での、本発明によるキーボードは、操作性に優れると考えられる。
【0107】
第二の観点に立って本発明によるキーボードを評価すれば、キーの数が従来のキーボードより大幅に少ないことが、習得期間を短縮すると考えられる。即ち、キー操作は、位置の連続動作の学習と考えられるため、学習すべき位置が少ない方が、習熟が早まることが期待出来る。更に、操作の習熟過程に於いては、キーの位置を目視で確認する必要性から、キー数が少ない程が目で探索する領域が狭くなることから、目的の文字を発見し易くなると期待出来る。以上の理由から、第二の観点に於いても本発明によるキーボードは操作性が優れていると考えられる。
【0108】
(「特定の状況に於けるポインティングデバイスの特定の操作をキー操作に変換すること」の実施例)
ポインティングデバイスとキーの処理を統合的に行うことにより、更なるキー数の削減や、ポインティングデバイス自体の構成面積を削減することが可能となり、結果的にポインティングデバイスの配置の自由度が更に増す。
【0109】
ポインティングデバイスの特定の領域の特定の領域を、ポインティング動作とならない単一の位置の接触と開放操作(以後、単にタップ操作と記述する)は、位置情報の変化や、ポインティングデバイスの操作時間が通常のポインティング操作と明らに異なるため、ポインティングデバイスの処理により、容易にポインタ位置を変化させる操作と分離可能である。この操作を、キー操作の代用とすることで、キーの一部をポインティングデバイスで、代用することが可能となり、キー数削減に更に貢献する。
【0110】
具体的な例として、図5、符号500に示すのは、表面を指でなぞることで、ポインティング操作を行う、所謂タッチパッドの例であるが、図中、501,502,503の位置に、表示されている、shift,enter,ctrlの文字を、点線で囲んでいる表示は、物理的なキーではなく、タッチパッド上のキー代替操作可能な領域を示す表示である。表示は、印刷によるものであっても、タッチパッド直下に配置された表示器による表示等であってもかまわない。
【0111】
即ち、これらの領域は通常は、タッチパッドとして機能しており、通常は、従来のタッチパッドと同様にして使用される。しかしながら、501,502,503の領域を、タップ操作した場合は、キーとして操作したと判断することが可能である。ところが、ポインティング操作の結果、操作位置が、これらキー相当の位置にある状態で、ポインティング操作の完結動作としてのタップ操作が行われる可能性もあり、この場合は、キー代替操作との区別が困難となる。この問題の対策としては、例えば、図6の602に示す、如く、キーを配置しない領域を明示し、この領域から操作が開始された場合は、ポインティング操作終了から所定の時間以内は、タップ操作をポインティング操作の完結操作とみなす、或いは、ポインティング操作の完結を示すタップ操作は、602の領域に限定する等の処理上の工夫により、回避可能である。
【0112】
従って、通常、タッチパッドとして使用している領域と、キーボードが同一場所を共有することになり、キーボードとして構成した場合、省スペース化に貢献すると同時に、図5に示す501,502,503の、shift,enter,ctrlキーは、本発明では、キーボード中央に位置するため、この領域がポインティングデバイスと共用されると、ポインティングデバイスの操作性の向上と、キー操作中のポインティングデバイスの誤操作防止を同時に実現することが出来る。
【0113】
キー中央で、キーとポインティングデバイスは、隣接しているが、キー操作中に、キーを操作している指以外の部分がポインティングデバイスに接近するこはなく、中央部に指が移動するのは、意図した操作がある場合のみであるため、誤操作が生じることが無い。又、キー中央部は、キーのホームポジションからは、1キー分離れており、ホームポジションで待機中に、意図せず指や手の平の一部が接触することもない。
【0114】
図6に示すのは、図5の3つのキーをポインティングデバイスと兼用した場合の応用例であり、先の3つのキーに加えて、キー中央部の6つのキーを、ポインティングデバイス上に移動している。601,602,603 については、先の説明と同様で、shift,enter,ctrlキーの代用を示す位置の表示を表すが、604,605,606,607,608,609 に文字、"t","g","b","y","h","n"に該当するキーが割り当てられている。
この例では、6つの文字キーがポインティングデバイスの代用操作で置き換えられているため、これらの6つの文字キーの操作感が通常のキーと異なるが、文字配置自体は従来キーボードと同一であり、新たな操作を覚える必要はない。
【0115】
従って、若干の慣れば必要となるものの、中央部が広くポインティングデバイスとなるメリット及び、ホームポジションに指を配する最、キー列の最中央よりがホームポジションのキーとなるため、ホームポジションを特に表示する必要がなくなる(通常のキーボードでは、ホームポジションを指の感触で識別できるよう、ホームポジションにおける、左右の人差し指位置に該当するキーのキートップに突起等を形成した、他のキートップと異なるキートップを採用することが一般に行われている)、。という副次的な効果も生じる。特に、キーボードに自然に指を配置すると、その位置がホームポジションとなるメリットは操作性の向上に貢献する。又、6キー分の更なるキー削減は、小型化、コストダウン、軽量化等にも貢献する。
【0116】
これら、ポインティングデバイスによる、一部キーの代用と、キーボードを組み合わせて構成した具体的例を、図6、図8に示す。
図6は、中央部の3つのキーのみがポインティングデバイスと共用されている例であり、図8は、更に中央の6つのキーがポインティングデバイス操作に置き換えられている例である。
【0117】
「特定の状況に於ける、キー操作をポインティングデバイスの従属操作に置き換える」ことは、処理ソフトウェアにより実現されポインティングデバイスの操作中の特定のキー操作を、キー操作とみなさずポインティングデバイス従属操作に変換することで実現される。より、具体的な例を挙げれば、ポインティング操作中に、文字キー"f"が押下されれば、左クリックと等価な動作を行い、同様に、文字キー"d"が押下されれば左クリックとして動作する、等である。
【0118】
叉、別の例としては、本発明では、図6に示す如く、中央の3つのキーのみをポインティングデバイスに置き換える例も提示しているので、この場合、ポインティングデバイスの占有面積は、通常のポインティングデバイスよりも、狭くなる場合が考えられる。そこで、例えば、ポインティングデバイス操作中に、文字キーtを同時に押下すれば、所定の倍率で、ポインティングデバイスの操作量に対する、上位システムに通知される移動量を増加させ、文字キーrが同時に押下されれば、移動量の割合を減少させる等の応用が考えられる。これら、移動量の割合の増減を行うことで、小型のポインティングデバイスであっても、広い面積のポインティングデバイスと同様の操作性を実現することが可能となる。
【0119】
以上により、
「特定の状況に於けるポインティングデバイスの特定の操作をキー操作に変換すること」
「特定の状況に於ける、特定のキー操作をポインティングデバイスの従属機能に変換すること」
の実施例を示したが、これらの機能は、ポインティングデバイスと、キーの協調的な処理により実現されるため、処理の具体的な実現例を、図16に示すフローチャートを参照しながら以下に説明する。
【0120】
先ず、図16のフローチャート中の各処理の概要について説明を行い、更に、ポインティングデバイス操作とキー操作の組み合わせによるポインティングデバイス操作情報生成処理の対応関連を述べる。 尚、図16のフローチャートで示す、ポインティングデバイスの処理は、上位のシステムにポインティング操作の操作状態を通信により送信することで処理が完結する前提とするが、当然、ポインティング操作状態を上位、若しくは他の処理に伝達する手段として通信によらない、例えば、情報がメモリ上の情報として共有されている場合は、当然送信は不要であり、操作状態を単に特定の領域に生成することで処理が完結することは言うまでもないが、ここでは、説明上、送信により、処理が完結するものとする。
【0121】
1600は起動処理を表し、一定時間毎の処理の遷移による方法や、ポインティングデバイスのハードウェアによる、操作状態の電気的な検出による割り込み信号などにより、起動され、ポインティングデバイスの処理が開始される。
【0122】
1601はポインティングデバイスの操作状態を取得する処理であり、ポインティングデバイスの操作されている位置情報や、操作の有無等が取得される。
【0123】
1602は、本発明に固有のポインティング処理中のキー操作情報の取得であり、ポインティング操作とキー操作が同時に行われていることを検出するための処理である。
【0124】
1603は、ポインティング操作の変化を検出する処理であり、ポインティング位置の変化を前回の操作位置との照合により判定する。
【0125】
1604は、ポインティング位置の変化量を判定し、変化量が予め定められた一定量以上であれば、別ポインティング操作であると判定する。
【0126】
1605はポインティング操作中に、予め操作ゲイン可変キーとして登録されているキーが同時に押下されている場合は、キー押下をキー入力ではなく、ポインティングデバイスのゲイン調整処理とするための処理である。
【0127】
1606は1605でポインティングデバイス操作ゲイン調整キーが同時に押下されていると判断された場合に、現在取得しているポインティングデバイスの操作量を、予め定義されているゲイン調整率に応じて、修正し、修正されたポインティング情報を上位システムに送信する処理である。本処理により、上位システムでは、単に、ポインティング操作量が実操作量より、増加、又は減少させられた結果のみを受け取ることにより、通常のポインティングデバイスの操作と同一の処理を行うことが出来る。
【0128】
1607は現在のポインティングデバイスの操作位置を記憶して、次回に処理が起動された際に、前回の位置として移動や、移動速度の計算を可能にする。
【0129】
1608は終了処理である。
【0130】
1609は、ポインティング操作に加えて、予め登録された、ポインティングデバイス従属キーに該当するキーが、押下されているかどうかの判定を行う。
【0131】
1611 は通常のポインティング操作が行われた場合の、操作量を出力する処理である。
【0132】
1612 は、ポインティングデバイスが、キー代替操作として操作されたか、否かを判定する処理であり、ポインティング操作がタップ操作とみなせる、操作量であり、且つ、操作位置が、予めキー代替位置として登録されている範囲内にある場合は、キー入力代替操作が行われたと判定する。
【0133】
1613 は、ポインティングデバイスが、キー代替操作として、操作された場合に、ポインティングデバイスの操作情報をキーコードに変換して上位に送信するための処理である。具体的には、キー処理を経由して、キーが押下された情報として送信を行うために必要な処理(例えば、処理間の通信)が行われる。
【0134】
1614は、タップ操作中か否かを判定する処理であり、現在のポインティングデバイス操作位置と前回の操作位置が所定の範囲内に留まる場合は、タップ操作とみなされる。
【0135】
1615は、タップ操作中にポインティングデバイス従属機能として割り当てられているキーが同時に操作されているか否かの判定処理である。
【0136】
1616は、前記1615の判定により、ポインティングデバイス従属機能として割り当てられているキーが押下されている場合の処理であり、キー操作はポインティングデバイスの従属操作に置き換えられ、上位システムに送信される。(例えば、左右のクリックスイッチの代替操作をキーで行う)
【0137】
1617は、前記1615の判定により、ポインティングデバイス従属キーでないキーの押下の場合は、通常のタップ処理として、位置情報を上位システムに送信する。
【0138】
以上のような、1600〜1617の処理が、ポインティングデバイスの操作状況と、起動される順序を整理すると以下の通りとなる。(1600,1601,1602,1607,1608は開始、終了処理であり、全てに含まれるため省略する)
【0139】
(ポインティングデバイスが、通常のポインティング操作として、操作された場合の処理)
1603 → 1604 → 1605 → 1609 → 1611 (スライド操作の場合)
1603 → 1604 → 1612 → 1615 → 1617 (キー代替でないタップ操作の場合)
【0140】
(ポインティングデバイスが、キー代替機能として操作された場合)
1603 → 1604 → 1612 → 1613
【0141】
(ポインティング操作中に、キーボードによる操作ゲインが可変される場合)
1603 → 1604 → 1605 → 1606
【0142】
(ポインティング操作中に、キーボードによる、ポインティングデバイス従属操作が行われた場合)
1603 → 1614 → 1615 → 1616
【0143】
(ポインティング操作中に、ポインティングデバイスによる、ポインティングデバイス従属操作が行われた場合)
1603 → 1604 → 1612 → 1615 → 1616
【0144】
以上により、
「特定の状況に於けるポインティングデバイスの特定の操作をキー操作に変換すること」
「特定の状況に於ける、特定のキー操作をポインティングデバイスの従属機能に変換すること」
がポインティングデバイス処理と、キー処理の協調的な処理により、実現可能なことが、処理フローと共に示された。
【0145】
「従来不可能であった理想的な位置へのポインティングデバイスの配置を実現したこと」の実施例。
【0146】
先に述べた通り、現状のポインティングデバイスを一体化したキーボードに於けるポインティングデバイスの誤操作の原因は、ポインティングデバイスの配置位置にあるため、キー操作中に、誤操作する危険性のない、位置へ移動させることが、根本的な対策となる。
【0147】
第一の実施例(キーボード上部に配置)
本発明では、前述のキーの重複配置により、キー数を通常のキーボードより大幅に削減しているため、ポインティングデバイスを、従来は不可能であった、キーボード上部に配置することが可能となる。従って、実施形態の第一の形態として、キーの配置変更とキーボード上部の空間にポインティングデバイスを移動させることの組み合わせが、考えられる。図1の実施例は、その配置を示している。図中、101,102,103 は夫々、左クリックスイッチ、ポインティング操作面、右クリックスイッチ、を表す。
101,102,103の位置は、キー入力中には、指の届かない範囲にあるため、誤操作の恐れが無くなる。
【0148】
第二の実施例(中央部の大型キーをポインティングデバイスによるタッチキーで実現)
既に説明を行った「特定の状況に於けるポインティングデバイスの特定の操作をキー操作に変換すること」の実施例で、参照した、図5、図6の中央部のキーをポインティングデバイスに置き換えた例である。
この位置は、キーボード中央であり且つ、左右の手のキー分担の境界に位置するため、通常、キー操作中にこの領域が操作されるのは、意図して、enter, shift, ctrl キーが操作される場合のみであるため、誤操作によりポインティングデバイスが動作してしまうことがない。
【0149】
第三の実施例(中央部の大型キーに加え、キーボード中央の6つのキーをポインティングデバイス操作に置き換えた例)
既に、説明した、図7、図8の例が該当し、誤操作が生じない理由は、第二の実施例と同様である。
第三の実施例の得失については、既に「特定の状況に於けるポインティングデバイスの特定の操作をキー操作に変換すること」の説明の通りである。
【0150】
即ち、第二、第三の実施例は、キーの削減と、ポインティングデバイスの誤操作防止を同時に実現している。
【産業上の利用可能性】
【0151】
本発明によれば、情報入力端末のキーボードとして、キーピッチを狭くすることなく、小型で誤操作の少ないキーボードを実現できるため、従来のキーボードが利用される、あらゆる局面に適用することが出来る。
【0152】
小型化を優先する機器に於いては、操作性を損なうことなく小型化が可能になり、特に第二の実施形態を適用する場合は、ポインティングデバイスの誤操作を完全に排除することが出来るため、快適な文字入力操作を実現することが出来る。
【0153】
又、キー総数の少ないことは、単に小型化に有利であるのみならず、省資源にも貢献するため、小型化を目的としない、デスクトップコンピュータ用のキーボードとしても利用できる。
【0154】
更に、機械的なキースイッチに代えて、タッチパネル上に実現するソフトウェアキーボードに於いても、画面上のキー領域を削減することが出来るため(結果的にソフトウェアキーを表示している状態での画面を広く使えることにより)、効果的に利用することが出来る。
【符号の説明】
【0155】
100 キーボード及びポインティングデバイス全体を示す
101〜103 ポインティングデバイス部を示す
104 バックスペースキーを示す
105 スペースバーを示す
106 スペースバーが新たなシフトキーを兼用することを示すシンポルを示す
107,108 Fnシフトキーを示す
109,110 altキー及び、スペースバーの連続押下を明示的に行うキーを示す
【0156】
200 キートップ上の表示領域全体を示す
201〜209 キートップ上のシンボル表示可能領域を示す
210 英文字 Y に該当するキートップの例を示す
220 英文字 R に相当するキートップの例を示す
【0157】
400 ポインティングデバイスでキーを代用する一例(shift, enter, ctrl の3キー)の全体を示す
401 ポインティングデバイスとしての領域を示す
402 shift キーの代替動作を可能とする領域を示す
403 enter キーの代替動作を可能とする領域を示す
404 ctrl キーの代替動作を可能とする領域を示す
【0158】
500 図4のポインティングデバイスとキーボードを組み合わせた例を示す
501 図4のポインティングデバイスの配置位置を示す
【0159】
600 図4のポインティングデバイスの外形を一般的な矩形で実現した例を示す
601 ポインティング領域を示す
602 ポインティング関連操作専用領域を明示する例を示す
【0160】
700 図6のポインティングデバイスをキーボードと組み合わせた例を示す
701 図6のポインティングデバイスの配置位置を示す
【0161】
800 図4のに更に6つのキーを取り込んだ例を示す
801 ポインティングデバイス領域を示す
802〜807 図4に対し新たに追加された6つのキーに該当する領域を示す
【0162】
900 図8のポインティングデバイスをキーボードと組み合わせた例を示す
901 図8のポインティングデバイスの配置位置を示す
【0163】
1000 図8のポインティングデバイスの外形を一般的な矩形で実現した例を示す
1001 ポインティングデバイスの領域を示す
【0164】
1100 図10のポインティングデバイスをキーボードと組み合わせた例を示す
1101 図10のポインティングデバイスの配置位置を示す
【0165】
1200 従来技術による典型的な小型キーボードとポインティングデバイスを一体化した例を示す
1201 キーボード部を示す
1202 ポインティングデバイス領域を示す
1203 左クリックスイッチを示す
1204 ポインティングデバイス本体を示す
1205 右クリックスイッチを示す
【0166】
1300 図12のキーボードが小型化される場合の典型的な例を示す
1301 キーボード右端のキー間隔の縮小される領域を示す
1302 キーボード左端のキー間隔の縮小される領域を示す
【0167】
1400 本発明の前提となる典型的なシステム構成を示す
1401 キーボードを示す
1402 ポインティングデバイスを示す
1403 キーボードと処理システムとの接続経路を示す
1404 ポインティングデバイスと処理システムとの接続経路を示す
1405 キーボードとポインティングデバイスを統合的に処理する処理システムを示す
1406 処理システムと上位システムのキー情報接続経路を示す
1407 処理システムと上位システムのポインティング情報接続経路を示す
1408 処理システムと接続される上位システムを示す
【0168】
1500〜1522 キー入力処理を示すフローチャートを示す
【0169】
1600〜1617 ポインティングデバイスの処理フローチャートを示す
【0170】
1700 QWERTY配列を用いる一般的キーボードの全体を示す
1701〜1704 右手ホームポジションのキーと該当文字を示す
1705〜1708 左手ホームポジションのキーと該当文字を示す
1709 左手、ホームポジションの小指担当のキーの内、1隣接キー以遠のキー配置領域を示す
1710 右手、ホームポジションの小指担当のキーの内、1隣接キー以遠のキー配置領域を示す
1711 数字、及び、記号の配置領域を示す
1712 機能キー(F1〜F12, Esc, Ins, Del 等)の配置領域を示す
【0171】
1800 本発明によるキー配置の基本構成の全体を示す
1801 大型キーの配置領域を示す
1802 機能キーの一部の配置領域を示す
【0172】
1900 従来キーとの大きさの比較の為に表示した、本発明による典型的なキーボードのキー全体を示す
1901 高さ方向の比較のための従来技術によるキーボードの左端を示す
1902 幅方向の比較の為、従来技術によるキーボードの上部を示す
1903 本発明によるキーボードの幅方向の短縮された長さを示す
1904 本発明によるキーボードの高さ方向の短縮された長さを示す
【0173】
2000 従来キーボードでのキー操作中に手の位置とポインティングデバイスの位置関係を示す
2001 キー操作中にポインティングデバイスに右手の一部が接触してしまう様子を示す
2002 キー操作中にポインティングデバイスに左手の一部が接触してしまう様子を示す

【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報機器用のキーボードであって、そのキー配列が、図17、1701〜1708に示すホームポジションから1隣接キーの範囲にある英文字、及び一部記号の配列は、広く普及している所謂QWERTY配列を踏襲し、1709,1710,1712に示す領域のキーを全て廃止し、先のホームポジションから1隣接範囲にあるキーに重複して配置、又は、1711の領域に再配置し、かつ、図8に示す如く、前述のホームポジションから1隣接範囲のキーを左右の手の操作範囲で分離し、領域1801を確保し、その領域に、少なくとも、shift, enter, ctrl の内1つ以上のキーを配置することを特徴とする、キーボード。
【請求項2】
請求項1のキーボードに於いて、従来位置(即ち、図7に於ける1709,1710,1712に示す領域)から削除され、ホームポジションから1隣接範囲にあるキーに重複配置されたキーを有効化する手段として、新規のシフト機能を実現するキーを、新たに追加する、若しくは、文字キー、又は記号キー、又は空白キー、又は機能キーと兼用することを特徴とする、請求項1の配列のキーボード。
【請求項3】
請求項1の配列のキーボードと、平面の表面上の指の動きを検出することで位置情報を入力する接触式のポインティングデバイスと、それらを統合的に処理する処理システムと、上位システムとの接続経路を、前記キーボード用接続経路と、前記ポインティングデバイス用接続経路を独立して持つ構成からならる、キーボードとポインティングデバイスの一体化された情報入力機器であって、図8に示す1801の領域に配置されるキー、若しくはその周辺のキーをポインティングデバイスの操作で代用することにより、1801の領域にポインティングデバイスを配置し、請求項1のキー配列から更に物理的キーを削減したことを特徴とする、キーボードとポインティングデバイスの一体化された情報入力装置。
【請求項4】
請求項3のキーボードに於いて、ポインティングデバイスとキーの処理を統合的に行うことにより、ポインティングデバイス操作中の特定のキー操作を、キー操作から、ポインティングデバイス従属操作に変換し、ポインティングデバイスの動作状態を可変することを特徴とする、キーボードとポインティングデバイスの一体化された情報入力装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2013−25328(P2013−25328A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−156049(P2011−156049)
【出願日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(708001705)
【Fターム(参考)】