説明

情報分析装置、画像処理システム及びプログラム

【課題】電子文書を媒体に印刷する際に発生する可能性がある不具合を印刷前に検出する。
【解決手段】原稿データに基づく印刷を指示する印刷指示データから画質項目を抽出する画質項目抽出部21において、色値分布情報生成部81が、画質項目と共に抽出した画質項目の色値の情報に基づいて各オブジェクト種別に対する色値の分布を示す色値分布情報を生成し、リスク分析部83が、色値分布情報に基づいて、K100%又はKのみでの再現がされないプロセスKリスク、極ハイライト部、極シャドー部、極グレイ部の色の再現がうまくいかない再現不良リスク、中間調の線が点線になる色細線リスク等を分析し、分析結果出力部85が、リスク分析の結果を出力し、補正内容決定部86が、リスク分析の結果に応じて原稿データ又は印刷時の画質指示の補正内容を決定し、補正処理部87が、決定した内容の補正を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報分析装置、画像処理システム、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
印刷前のプリフライトチェックにおいて、印刷環境の資源もあわせてチェックし、ドキュメントの内容と照合する技術は知られている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1の技術では、プリフライトチェックを行うPCの環境を調査し、プリンタのフォントを利用する場合にはプリンタの調査を行う。その後、ドキュメントを解析して使用される資源を調査する。そしてPCの環境及びプリンタの環境と、ドキュメントで使用される資源とを照合し、使用できないフォントやカラープロファイルが存在する場合や、ドキュメントに含まれるイメージの解像度がプリンタの解像度と大幅にかけ離れている場合、オペレータに対して警告の表示を出力し、必要に応じてドキュメントを編集させる。
【0003】
印刷しようとするドキュメント内の、印刷に関する情報やドキュメントの内容を解析を行うことにより、解析結果をクライアントに通知することで無駄な印刷を無くすことができるプリンタサーバも知られている(例えば、特許文献2参照)。この特許文献2の技術は、プリンタサーバ内で印刷ジョブ解析手段を用いて印刷ジョブの内容を解析し、印刷ステータス(ファイル、ページ数、部数、カラー/モノクロ、トナーセーブ、過去に同一ファイルが印刷されたかどうかの情報、テキストのスペルミス)をクライアントに送信し、クライアントが所望する印刷ジョブになっているかどうかをクライアントに判断させる構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−149407号公報
【特許文献2】特開2000−122835号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、電子文書を媒体に印刷する際に発生する可能性がある不具合を印刷前に検出することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、電子文書の印刷を指示する印刷指示情報から、当該電子文書を構成する複数の文書要素のそれぞれに対して指定された色値を示す色値情報を抽出する抽出手段と、前記抽出手段により抽出された前記色値情報に基づいて、前記電子文書における特定の文書要素の種別に対して指定された色値の分布状態を示す分布状態情報を生成する生成手段と、前記生成手段により生成された前記分布状態情報に基づいて、前記電子文書を媒体に印刷する際に発生する可能性がある不具合を検出する検出手段とを備えたことを特徴とする情報分析装置である。
請求項2に記載の発明は、前記検出手段は、前記電子文書における画像以外の文書要素の種別に対して指定された色値の予め定められた割合以上を占める特定の色値が、RGB色空間におけるR値が0、G値が0、B値が0の色値でなく、かつ、グレイスケールの色空間における値が100%の色値でないことを前記分布状態情報が示す場合に、前記不具合を検出することを特徴とする請求項1に記載の情報分析装置である。
請求項3に記載の発明は、前記検出手段は、前記特定の色値がRGB色空間におけるR値とG値とB値とが等しい色値でないことを前記分布状態情報が更に示す場合に、前記不具合を検出することを特徴とする請求項2に記載の情報分析装置である。
請求項4に記載の発明は、前記検出手段は、前記電子文書における色の漸次的移行が施された文書要素の種別に対して指定された色値が、白色以外で予め定められた基準以上白色に近い色の色値、黒色以外で予め定められた基準以上黒色に近い色の色値、及び、灰色軸上の色以外で予め定められた基準以上灰色軸に近い色の色値の何れかであることを前記分布状態情報が示す場合に、前記不具合を検出することを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れかに記載の情報分析装置である。
請求項5に記載の発明は、前記検出手段は、前記電子文書における線の形状を有する文書要素の種別に対して指定された色値が、中間調で表現される色値であることを前記分布状態情報が示す場合に、前記不具合を検出することを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れかに記載の情報分析装置である。
請求項6に記載の発明は、前記抽出手段は、前記複数の文書要素のそれぞれに対して指定された色値の処理手順を示す処理手順情報を更に抽出し、前記検出手段は、前記電子文書における文書要素の種別に対して指定された色値の処理が当該文書要素の種別に応じた処理手順で行われることを前記処理手順情報が示しており、かつ、前記電子文書における互いに隣接する異なる種別の文書要素に対して指定された色値が等価な色値であることを前記分布状態情報が示す場合に、前記不具合を検出することを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れかに記載の情報分析装置である。
請求項7に記載の発明は、前記検出手段により前記不具合が検出された場合に、当該不具合に関する情報を出力する出力手段を更に備えたことを特徴とする請求項1乃至請求項6の何れかに記載の情報分析装置である。
請求項8に記載の発明は、前記検出手段により前記不具合が検出された場合に、当該不具合に応じて前記印刷指示情報を補正する補正手段を更に備えたことを特徴とする請求項1乃至請求項7の何れかに記載の情報分析装置である。
請求項9に記載の発明は、電子文書の印刷を指示する印刷指示情報を送信する情報送信装置と、前記情報送信装置により送信された前記印刷指示情報に基づいて第1の文書画像を第1の媒体に形成する第1の画像形成装置と、前記第1の画像形成装置により前記第1の媒体に形成された前記第1の文書画像を読み取る第1の画像読取装置と、前記情報送信装置により送信された前記印刷指示情報に基づいて第2の文書画像を第2の媒体に形成する第2の画像形成装置と、前記第2の画像形成装置により前記第2の媒体に形成された前記第2の文書画像を読み取る第2の画像読取装置と、前記第1の画像読取装置により読み取られた前記第1の文書画像と、前記第2の画像読取装置により読み取られた前記第2の文書画像とに基づいて、前記第1の画像形成装置で形成される画像の画質特性と、前記第2の画像形成装置で形成される画像の画質特性とを近付けるための情報を生成する情報生成装置とを備え、前記情報送信装置は、前記電子文書を構成する複数の文書要素のそれぞれに対して指定された色値を示す色値情報を前記印刷指示情報から抽出する抽出手段と、前記抽出手段により抽出された前記色値情報に基づいて、前記電子文書における特定の文書要素の種別に対して指定された色値の分布状態を示す分布状態情報を生成する生成手段と、前記生成手段により生成された前記分布状態情報に基づいて、前記第1の文書画像及び前記第2の文書画像に発生する可能性がある不具合を検出する検出手段とを備えたことを特徴とする画像処理システムである。
請求項10に記載の発明は、コンピュータに、電子文書の印刷を指示する印刷指示情報から、当該電子文書を構成する複数の文書要素のそれぞれに対して指定された色値を示す色値情報を抽出する機能と、抽出された前記色値情報に基づいて、前記電子文書における特定の文書要素の種別に対して指定された色値の分布状態を示す分布状態情報を生成する機能と、生成された前記分布状態情報に基づいて、前記電子文書を媒体に印刷する際に発生する可能性がある不具合を検出する機能とを実現させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0007】
請求項1の発明によれば、電子文書を媒体に印刷する際に発生する可能性がある不具合を印刷前に検出することができる。
請求項2の発明によれば、画像以外の種別の文書要素がK(黒)100%で再現されない不具合を検出することができる。
請求項3の発明によれば、画像以外の種別の文書要素がK(黒)のみで再現されない不具合を検出することができる。
請求項4の発明によれば、文書要素に施された色の漸次的移行が滑らかに再現されない不具合を検出することができる。
請求項5の発明によれば、線の形状を有する文書要素が途切れた線になる不具合を検出することができる。
請求項6の発明によれば、等価な色値が指定された異なる種別の文書要素が隣接することにより色段差が生じる不具合を検出することができる。
請求項7の発明によれば、電子文書を媒体に印刷する際に発生する可能性がある不具合を印刷前に知ることができる。
請求項8の発明によれば、電子文書を媒体に印刷する際に発生する可能性がある不具合に印刷前に対処することができる。
請求項9の発明によれば、電子文書を媒体に印刷する際に発生する可能性がある不具合を印刷前に検出することができる。
請求項10の発明によれば、電子文書を媒体に印刷する際に発生する可能性がある不具合を印刷前に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施の形態における画像ハンドリングシステムの全体構成を示した図である。
【図2】本発明の実施の形態の画像ハンドリングシステムにおける各装置の機能構成例を示した図である。
【図3】本発明の実施の形態の画像ハンドリングシステムにおける画像ハンドリングユーティリティの動作例を示したフローチャートである。
【図4】印刷指示データから画質項目を抽出することによって生成される色値分布情報の一例を示した図である。
【図5】本発明の実施の形態の画像ハンドリングシステムにおける画質項目抽出部の機能構成例を示した図である。
【図6】本発明の実施の形態の画像ハンドリングシステムにおける画質項目抽出部の動作例を示したフローチャートである。
【図7】本発明の実施の形態の画像ハンドリングシステムにおける画質項目抽出部が実行するプロセスKリスク分析処理の流れを示したフローチャートである。
【図8】本発明の実施の形態の画像ハンドリングシステムにおける画質項目抽出部が実行する再現不良リスク分析処理の流れを示したフローチャートである。
【図9】本発明の実施の形態の画像ハンドリングシステムにおける画質項目抽出部が実行する色細線リスク分析処理の流れを示したフローチャートである。
【図10】本発明の実施の形態における画像ハンドリングシステムで生成される画質ターゲット情報の例を示した図である。
【図11】本発明の実施の形態の画像ハンドリングシステムにおける画像ハンドリング部の動作例を示したフローチャートである。
【図12】本発明の実施の形態における画像ハンドリングシステムで送信される画質指示の例を示した図である。
【図13】本発明の実施の形態における画像ハンドリングシステムで送信される描画コマンドの例を示した図である。
【図14】本発明の実施の形態の画像ハンドリングシステムにおける端末装置のハードウェア構成図である。
【図15】本発明の実施の形態の画像ハンドリングシステムにおける画像処理装置の構成例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は、本実施の形態が適用される画像ハンドリングシステムの構成例を示したものである。
図示するように、この画像ハンドリングシステムは、端末装置10と、ターゲット画像処理装置(以下、「ターゲット装置」という)30aと、ハンドリング画像処理装置(以下、「ハンドリング装置」という)30bとがネットワーク80を介して接続されることにより、構成されている。
【0010】
端末装置10は、ターゲット装置30a及びハンドリング装置30bに対して印刷を指示するデータ(以下、「印刷指示データ」という)を送信するコンピュータ装置である。ここで、端末装置10としては、例えばPC(Personal Computer)を用いればよく、この場合、PCは、クライアントPCとして動作するものであってもサーバPCとして動作するものであってもよい。本実施の形態では、情報送信装置、情報生成装置の一例として、端末装置10を設けている。
【0011】
ターゲット装置30aは、紙等の媒体から画像を読み取る画像読取機能、紙等の媒体に画像を形成する画像形成機能等を有し、出力される画像の画質特性に関して他の画像処理装置の目標となる画像処理装置である。ここで、画質特性とは、画質に関する項目(以下、「画質項目」という)ごとの特性を意味している。例えば、画質項目として色を考えると、画質特性は、各CMYK信号に基づいて再現される色のLab空間での値等であり、画質項目として線を考えると、画質特性は、各ポイント値に基づいて再現される線幅のマイクロメートル値等である。
ハンドリング装置30bは、紙等の媒体から画像を読み取る画像読取機能、紙等の媒体に画像を形成する画像形成機能等を有し、出力される画像の画質特性をターゲット装置30aの画質特性に近付くように変化させる対象となる画像処理装置である。
【0012】
ネットワーク80は、端末装置10とターゲット装置30a及びハンドリング装置30bとが情報通信を行う際に用いられる通信回線網である。ここで、ネットワーク80としては、LAN(Local Area Network)やインターネットを用いるとよい。
【0013】
次に、図1の画像ハンドリングシステムにおける各装置の機能構成について説明する。
図2は、画像ハンドリングシステムにおける各装置の機能構成例を示したブロック図である。
まず、端末装置10の機能構成について説明する。
図示するように、端末装置10では、アプリケーションプログラム(以下、「アプリケーション」という)18と、プリンタドライバ19と、画像ハンドリングユーティリティ20とが動作する。
このうち、アプリケーション18は、ユーザの操作に応じて、原稿データを作成したり、作成済の原稿データを取り込んだりするプログラムである。
プリンタドライバ19は、アプリケーション18から原稿データに基づく印刷の要求があると、ターゲット装置30a及びハンドリング装置30bに原稿の印刷を指示する印刷指示データを送信するプログラムである。ここで、印刷指示データとは、例えばPDL(Page Description Language)で記述されたPDLデータである。また、印刷指示データには、解像度、階調情報、スクリーン等の画質に関する指示である画質指示と、文字、図形、イメージ等の描画命令である描画コマンドとが含まれる。本実施の形態では、電子文書の一例として、原稿データを用いており、電子文書の印刷を指示する印刷指示情報の一例として、印刷指示データを用いている。
【0014】
画像ハンドリングユーティリティ20は、ハンドリング装置30bで出力される画像の画質特性をターゲット装置30aで出力される画像の画質特性に近付けるための情報を生成する処理(以下、「ターゲットマッチング処理」という)を行うユーティリティプログラムである。尚、本実施の形態では、画像ハンドリングユーティリティ20を、端末装置10で実現されるものとして説明するが、例えば、ハンドリング装置30bで実現されるものであってもよいし、独立した装置で実現されるものであってもよい。また、本実施の形態では、ターゲット装置30aの画質特性を基準としてハンドリング装置30bの画質特性をこれに近付ける例を述べるが、ターゲット装置30aの画質特性とハンドリング装置30bの画質特性の中間の画質特性を採用することにより、これらの画質特性を近付けるようにしてもよい。
【0015】
そして、端末装置10は、この画像ハンドリングユーティリティ20の機能として、画質項目抽出部21と、抽象化原稿生成部22と、描画オブジェクト記憶部23と、出力指示部24と、読取画像受付部25と、画質特性比較部26と、画質ターゲット情報生成部28とを備える。
【0016】
画質項目抽出部21は、プリンタドライバ19から原稿の印刷を指示する印刷指示データを受け取り、この印刷指示データから画質項目を抽出する。
抽象化原稿生成部22は、画質項目抽出部21が抽出した画質項目に基づいて、抽象化した原稿データ(以下、「抽象化原稿データ」という)を生成する。具体的には、画質項目抽出部21が抽出した画質項目に関するターゲットマッチング処理が行い易いように、その画質項目に着目した抽象化原稿データを生成する。
描画オブジェクト記憶部23は、抽象化原稿データを生成するために必要な描画オブジェクトを描画コマンドの形式で記憶したデータベースである。
出力指示部24は、抽象化原稿データをプリンタドライバ19に受け渡すことにより、プリンタドライバ19に対して、抽象化原稿の印刷を指示する印刷指示データの出力指示を行う。
【0017】
読取画像受付部25は、後述するように、プリンタドライバ19からの印刷指示データに基づいて出力された抽象化原稿をターゲット装置30aの画像読取部60a及びハンドリング装置30bの画像読取部60bで読み取ることで得られた読取画像を、ネットワーク80を通じて受け付ける。
画質特性比較部26は、画質項目抽出部21が抽出した画質項目ごとに、読取画像受付部25がターゲット装置30aから受け付けた読取画像と、読取画像受付部25がハンドリング装置30bから受け付けた読取画像とを比較する。
画質ターゲット情報生成部28は、画質特性比較部26による読取画像の比較結果に基づいて、ハンドリング装置30bで出力される画像の画質特性をターゲット装置30aで出力される画像の画質特性に近付けるための情報(以下、「画質ターゲット情報」という)を生成する。
【0018】
次に、ターゲット装置30aの機能構成について説明する。
図示するように、ターゲット装置30aは、画像処理部40aと、画像形成部50aと、画像読取部60aとを含んでいる。
このうち、画像処理部40aは、プリンタドライバ19からネットワーク80を通じて送信された印刷指示データに基づいて、画像処理を行い、画像データを出力する。
画像形成部50aは、画像処理部40aが出力した画像データに基づいて紙等の媒体に画像を形成し、原稿(抽象化原稿を含む)を出力する。本実施の形態では、第1の画像形成装置の一例として、画像形成部50aを設けている。
画像読取部60aは、画像形成部50aが出力した抽象化原稿を読み取り、読取画像をネットワーク80を通じて読取画像受付部25に送信する。尚、この画像読取部60aは、画像形成部50aが出力した抽象化原稿を人手を介することなく読み取るインラインスキャナであってもよい。また、画像形成部50aとは別のスキャナ単体であってもよく、本実施の形態では2台の画像処理装置30の調整に関して記載しているが、例えば画像処理装置30が3台ある場合に、そのうち2台の画像処理装置30の画像形成部50の出力を1つのスキャナを用いて読み取ってもよい。本実施の形態では、第1の画像読取装置の一例として、画像読取部60aを設けている。
【0019】
ここで、画像処理部40aについて更に詳しく説明すると、画像処理部40aは、入力情報通知部41aと、描画処理部42aと、色再現処理部43aと、中間調処理部44aとを備える。
入力情報通知部41aは、プリンタドライバ19からネットワーク80を通じて入力された印刷指示データを描画処理部42aに通知する。
描画処理部42aは、入力情報通知部41aから通知された印刷指示データに含まれる描画コマンドに基づいて画像データを描画する。
色再現処理部43aは、描画処理部42aにより描画された画像データに対して各種の色再現処理を施す。ここで、色再現処理としては、描画コマンドにおける特定の色空間の色信号をトナーの色を成分とする別の色空間の色信号に変換する処理、色信号を色再現範囲内の別の色信号へ変換する処理、色信号の階調を補正する処理等がある。
中間調処理部44aは、スクリーン処理等により擬似中間調の画像を生成する。
【0020】
次いで、ハンドリング装置30bの機能構成について説明する。
図示するように、ハンドリング装置30bは、画像処理部40bと、画像形成部50bと、画像読取部60bと、画像ハンドリング部70とを含んでいる。
このうち、画像処理部40bは、プリンタドライバ19からネットワーク80を通じて送信された印刷指示データに基づいて、画像処理を行い、画像データを出力する。
画像形成部50bは、画像処理部40bが出力した画像データに基づいて紙等の媒体に画像を形成し、原稿(抽象化原稿を含む)を出力する。本実施の形態では、第2の画像形成装置の一例として、画像形成部50bを設けている。
画像読取部60bは、画像形成部50bが出力した抽象化原稿を読み取り、読取画像をネットワーク80を通じて読取画像受付部25に送信する。尚、この画像読取部60bは、画像形成部50bが出力した抽象化原稿を人手を介することなく読み取るインラインスキャナであってもよい。また、画像形成部50bとは別のスキャナ単体であってもよく、本実施の形態では2台の画像処理装置30の調整に関して記載しているが、例えば画像処理装置30が3台ある場合に、そのうち2台の画像処理装置30の画像形成部50の出力を1つのスキャナを用いて読み取ってもよい。本実施の形態では、第2の画像読取装置の一例として、画像読取部60bを設けている。
画像ハンドリング部70は、ターゲット装置30aで出力される画像の画質特性に近い画質特性で画像を出力するための処理(以下、「画像ハンドリング処理」という)を行う。
【0021】
ここで、画像処理部40bについて更に詳しく説明すると、画像処理部40bは、入力情報通知部41bと、描画処理部42bと、色再現処理部43bと、中間調処理部44bとを備える。
入力情報通知部41bは、プリンタドライバ19からネットワーク80を通じて入力された印刷指示データを描画処理部42b及び画像ハンドリング部70に通知する。
描画処理部42bは、入力情報通知部41bから通知された印刷指示データに含まれる描画コマンドに基づいて画像データを描画する。その際、画像ハンドリング部70による決定に基づく描画処理を行う。
色再現処理部43bは、描画処理部42bにより描画された画像データに対して各種の色再現処理を施す。ここで、色再現処理としては、描画コマンドにおける特定の色空間の色信号をトナーの色を成分とする別の色空間の色信号に変換する処理、色信号を色再現範囲内の別の色信号へ変換する処理、色信号の階調を補正する処理等がある。その際、画像ハンドリング部70による決定に基づく色再現処理を行う。
中間調処理部44bは、スクリーン処理等により擬似中間調の画像を生成する。その際、画像ハンドリング部70による決定に基づく中間調処理を行う。
【0022】
また、画像ハンドリング部70について更に詳しく説明すると、画像ハンドリング部70は、指示判定部71と、描画判定部72と、画像ハンドリングターゲット決定部73と、画質ターゲット情報記憶部74と、画像ハンドリングパラメータ記憶部75とを備える。
指示判定部71は、入力情報通知部41bから通知された印刷指示データに含まれる画質指示の内容を判定する。
描画判定部72は、入力情報通知部41bから通知された印刷指示データに含まれる描画コマンドの内容を判定する。
画像ハンドリングターゲット決定部73は、指示判定部71が内容を判定した画質指示と、画質ターゲット情報記憶部74に記憶された画質ターゲット情報とに基づいて、画像ハンドリング処理の目標となる画質特性を決定する。
画質ターゲット情報記憶部74は、画像ハンドリングユーティリティ20の画質ターゲット情報生成部28により生成された画質ターゲット情報を記憶する。
画像ハンドリングパラメータ記憶部75は、画像ハンドリングターゲット決定部73により決定された画質特性で画像を出力する画像ハンドリング処理で用いられる画像ハンドリングパラメータを記憶する。
【0023】
次に、本実施の形態における画像ハンドリングシステムの動作について説明する。
まず、画像ハンドリングシステムにおけるターゲットマッチング処理時の動作について説明する。
図3は、このときの画像ハンドリングユーティリティ20の動作例を示したフローチャートである。
ユーザは、アプリケーション18上で、画質特性を合わせたい原稿データと、画質特性を合わせる目標となるターゲット装置30aと、画質特性をその目標に合わせる対象であるハンドリング装置30bとを指定する。これにより、プリンタドライバ19が原稿データに基づく印刷を指示する印刷指示データを生成すると、画像ハンドリングユーティリティ20の動作が開始する。
【0024】
画像ハンドリングユーティリティ20では、まず、画質項目抽出部21が、指定された原稿データに基づく印刷を指示する印刷指示データをプリンタドライバ19から取得する(ステップ201)。そして、その印刷指示データから画質項目を抽出する(ステップ202)。具体的には、印刷指示データにおける描画コマンドから、文字、イメージ、図形等の画質項目を抽出する。例えば、原稿データが名刺である場合、名前部分を文字として、顔写真部分をイメージとして、コーポレートロゴ部分を図形として抽出する。
【0025】
次に、抽象化原稿生成部22が、ステップ201で画質項目抽出部21が抽出した画質項目を重視しつつ原稿データを抽象化した抽象化原稿データを生成する(ステップ203)。尚、このとき、抽象化原稿データは、描画オブジェクト記憶部23に記憶された描画オブジェクトを用いて生成される。
そして、出力指示部24が、ステップ203で抽象化原稿生成部22が生成した抽象化原稿データをプリンタドライバ19に渡すことにより、ターゲット装置30a及びハンドリング装置30bでの抽象化原稿の出力を指示する(ステップ204)。すると、プリンタドライバ19は、抽象化原稿データに基づく印刷を指示する印刷指示データをターゲット装置30a及びハンドリング装置30bに出力し、これにより、ターゲット装置30aは画像形成部50aで、ハンドリング装置30bは画像形成部50bで、それぞれ抽象化原稿を出力することになる。
【0026】
その後、画像形成部50aで出力された抽象化原稿は画像読取部60aで、画像形成部50bで出力された抽象化原稿は画像読取部60bでそれぞれ読み取られ、読取画像がネットワーク80を通じて画像ハンドリングユーティリティ20に渡される。
すると、画像ハンドリングユーティリティ20では、まず、読取画像受付部25がこれらの読取画像を受け付ける(ステップ205)。
次に、画質特性比較部26が、読取画像受付部25から読取画像を受け取り、これらの読取画像に基づいて、ターゲット装置30aの画質特性とハンドリング装置30bの画質特性とを比較する。具体的には、画質項目抽出部21が抽出した画質項目に対して、読取画像受付部25が受け付けたターゲット装置30aでの読取画像から得られる画質特性と、読取画像受付部25が受け付けたハンドリング装置30bでの読取画像から得られる画質特性との対応付けを行う(ステップ206)。
【0027】
そして、画質特性比較部26は、全ての画質項目について対応付けが終了したかどうかを判定する(ステップ207)。
その結果、全ての画質項目について対応付けが終了していないと判定すれば、画質特性比較部26は、ステップ206に戻り、画質項目に対して、ターゲット装置30aでの読取画像から得られる画質特性と、ハンドリング装置30bでの読取画像から得られる画質特性との対応付けを繰り返す。
一方、全ての画質項目について対応付けが終了したと判定すれば、画質特性比較部26は、対応付けの結果を画質ターゲット情報生成部28に渡し、画質ターゲット情報生成部28が、画質ターゲット情報を生成してファイルに保存する(ステップ208)。そして、画質ターゲット情報をネットワーク80を通じてハンドリング装置30bの画像ハンドリング部70に送信する(ステップ209)。これにより、画像ハンドリング部70では、画質ターゲット情報が画質ターゲット情報記憶部74に記憶される。
【0028】
ここで、図3のステップ202における処理について、詳細に説明する。
このステップは、原稿データに基づく印刷を指示する印刷指示データから画質項目を抽出するステップであるが、本実施の形態では、このステップにおいて、原稿データを構成する文書要素の一例としてのオブジェクトの色値に関する画質的リスク(以下、単に「リスク」という)を分析し、リスクがあると判断すれば、原稿の印刷前に警告を行ったり、原稿の印刷前にリスクに対処する処理(補正等)を行ったりすることで、所望の画質の原稿を得ることができるようにする。
【0029】
例えば、原稿データ中のイメージ以外のオブジェクトは、RGB=(0,0,0)若しくはK(黒)100%、又は、R=G=Bでの再現を要求する描画指示がなされている場合、様々な手段によりK100%又はKのみでの再現が保証されるが、原稿データの作成過程によっては、K100%又はKのみでの再現が要求される描画部分にも関わらず、そのような再現がされないというリスクがある。具体的には、CMYK色空間で作成した原稿データをPDF(Portable Document Format)ファイルに変換する際、PDFファイルの色空間の既定値はRGB色空間なので、CMYK色空間の色値が一旦RGB色空間の色値に変換されることがあるが、このとき、K100%での再現が要求される部分がRGB=(0,0,0)とならなかったり、Kのみでの再現が要求される部分がR=G=Bとならなかったりする場合である。
【0030】
また、原稿データで極ハイライト部、極シャドー部、極グレイ部の色値が指定されている場合は、画像処理部40a,40b又は画像形成部50a,50bで問題が発生し、再現不良となるリスクがある。ここで、「極ハイライト部」とは、RGB=(255,255,255)の色値を除くその色値の周囲のかなり明るい部分を意味し、白色以外で予め定められた基準以上白色に近い色の部分の一例である。また、「極シャドー部」とは、RGB=(0,0,0)の色値を除くその色値の周囲のかなり暗い部分を意味し、黒色以外で予め定められた基準以上黒色に近い色の部分の一例である。更に、「極グレイ部」とは、グレイ軸を除くグレイ軸にかなり近い部分を意味し、灰色軸上の色以外で予め定められた基準以上灰色軸に近い色の部分の一例である。
【0031】
更に、原稿データ中の線に対して中間調で表現される色値が指定されている場合は、スクリーン処理を行うことにより、線が途切れて点線になるリスクがある。
そこで、本実施の形態では、このような色値の意図しない変化や色値の設定ミス等によるトラブルを事前に回避できるようにする。
【0032】
まず、原稿データに発生するリスクについて、具体的な色値及びオブジェクトを用いて説明する。尚、本明細書では、RGB色空間において、R値を単に「R」、G値を単に「G」、B値を単に「B」と称することがあるものとする。
図4は、原稿データを分析することで得られる各オブジェクト種別に対する色値の分布を示す色値分布情報を例示したものである。具体的には、色値分布情報は、色空間と、色値と、オブジェクト種別ごとのその色値が指定されたオブジェクトの数とを対応付けたものとなっている。尚、図では、色空間がRGBの場合、色値1がBを示し、色値2がGを示し、色値3がRを示すものとする。
【0033】
(a)は、リスクがない原稿の場合の色値分布情報の例である。この色値分布情報において、例えば、No.1は、RGB=(0,0,0)、つまり、K100%で再現される黒が、多くのテキスト及びグラフィックスに対して指定されていることを示している。
(b)は、リスクがある原稿の場合の色値分布情報の第1の例である。この色値分布情報の第1の例は、CMYK色空間で作成した原稿データをPDFファイルに変換した場合等に起き得る色値の意図しない変化が生じたときの例である。この色値分布情報の第1の例において、例えば、No.1は、K100%で再現される黒を多くのテキスト及びグラフィックスに対して指定したにも関わらず、CMYK色空間からRGB色空間への変換等により、その黒の色値がRGB=(0,0,0)から少しずれた色値になっていることを示している。
(c)は、リスクがある原稿の場合の色値分布情報の第2の例である。この色値分布情報の第2の例は、再現不良が発生するときの例を含む。例えば、No.1は、極ハイライト部の色値で塗り潰しが行われたオブジェクトがあることを示す。また、この色値分布情報の第2の例は、線が途切れて点線になるときの例も含む。例えば、No.2は、明るい赤で描画された細線があることを示しているが、このような赤は中間調で表されるため、赤の点線になる虞がある。また、No.3は、中間調のグレイで描かれた線があることを示しているが、これも点線になる虞がある。
【0034】
尚、色値に対応付けられるオブジェクトの情報を、(a),(b)では「テキスト」、「グラフィックス」という項目で管理し、(c)では、「塗り潰し」、「線画(細線)」という項目で管理するようにしたが、これはあくまで説明の便宜上設定した例である。例えば、(a),(b),(c)の全てにおいて、「テキスト」、「グラフィックス」、「塗り潰し」、「線画(細線)」を設定するようにしてもよい。
【0035】
次に、このようなリスクを分析し、リスクに関する警告又は補正を行う情報分析装置の一例としての画質項目抽出部21について説明する。
図5は、画質項目抽出部21の機能構成例を示したブロック図である。
図示するように、画質項目抽出部21は、色値分布情報生成部81と、色値分布情報記憶部82と、リスク分析部83と、分析結果記憶部84と、分析結果出力部85と、補正内容決定部86と、補正処理部87とを備えている。
【0036】
色値分布情報生成部81は、原稿データに基づく印刷を指示する印刷指示データから画質項目と共に画質項目に指定された色値の情報を抽出し、この画質項目に指定された色値の情報に基づいて色値分布情報を生成する。本実施の形態では、色値情報の一例として、画質項目ごとの色値の情報を用いており、色値情報を抽出する抽出手段一例として、色値分布情報生成部81を設けている。また、分布状態情報の一例として、色値分布情報を用いており、分布状態情報を生成する生成手段の一例として、色値分布情報生成部81を設けている。
色値分布情報記憶部82は、色値分布情報生成部81が生成した色値分布情報を記憶する。
【0037】
リスク分析部83は、色値分布情報記憶部82に記憶された色値分布情報に基づいて、原稿データにあるリスクを分析する。具体的には、第一に、Kトナーのみで印刷することを意図されたオブジェクトが、プロセスK(CMYKトナーの混色)で印刷されてしまうプロセスKリスクを分析し、第二に、極ハイライト部、極シャドー部、極グレイ部の色が指定されることにより再現不良を起こしてしまう再現不良リスクを分析し、第三に、細線の色として中間調で表現される色が指定されることにより細線が点線になってしまう色細線リスク等を分析する。本実施の形態では、電子文書を媒体に印刷する際に発生する可能性がある不具合、文書画像に発生する可能性がある不具合の一例として、リスクを用いており、不具合を検出する検出手段の一例として、リスク分析部83を設けている。
分析結果記憶部84は、リスク分析部83による分析結果を記憶する。
分析結果出力部85は、分析結果記憶部84に記憶された分析結果を表示機構15(図14参照)に出力する。本実施の形態では、不具合に関する情報を出力する出力手段の一例として、分析結果出力部85を設けている。
補正内容決定部86は、原稿データにリスクがあり、原稿データに対してリスクを軽減するための補正を行う旨の指示があった場合に、補正内容を決定する。
補正処理部87は、補正内容決定部86が決定した補正内容に基づいて、原稿データを補正する。本実施の形態では、印刷指示情報を補正する補正手段の一例として、補正処理部87を設けている。
【0038】
図6は、画質項目抽出部21の動作例を示したフローチャートである。
図示するように、画質項目抽出部21では、まず、色値分布情報生成部81が、原稿データに基づく印刷を指示する印刷指示データから画質項目及び画質項目に指定された色値の情報を抽出し、この画質項目及び色値の情報に基づいて色値分布情報を生成し、色値分布情報記憶部82に記憶する(ステップ211)。
次に、リスク分析部83が、色値分布情報記憶部82に記憶された色値分布情報に基づいて、原稿データのリスク分析処理を行う。即ち、第一に、プロセスKリスク分析処理を行う(ステップ212)。このプロセスKリスク分析処理については後述する。第二に、再現不良リスク分析処理を行う(ステップ213)。この再現不良リスク分析処理についても後述する。第三に、色細線リスク分析処理を行う(ステップ214)。この色細線リスク分析処理についても後述する。そして、これらのリスク分析処理の結果、リスクがあると判断された場合は、そのリスクの種別と、そのリスクを生じさせる原因となった色値等の情報とを含む分析結果が分析結果記憶部84に記憶される。
【0039】
すると、分析結果出力部85が、分析結果記憶部84に記憶された分析結果を表示機構15(図14参照)に出力し、表示機構15(図14参照)が分析結果を表示する(ステップ215)。即ち、プロセスKリスク、再現不良リスク、色細線リスクの何れのリスクがあり、如何なる色値がリスクを生じさせる原因となっているかを表示する。
【0040】
また、分析結果記憶部84に分析結果が記憶されている場合、つまり、何れかのリスクがある場合は、原稿データのリスクを軽減するための補正に関する処理が行われる。即ち、まず、補正内容決定部86が、分析結果記憶部84に記憶された分析結果を1つ取り出す(ステップ216)。そして、原稿データに対してこの分析結果におけるリスクを軽減するための補正を行うかどうかをユーザに問い合わせ、ユーザからの応答に基づいて、補正を行うかどうかを判定する(ステップ217)。その結果、補正を行うと判定すれば、原稿データに対する補正内容を決定して保存し(ステップ218)、ステップ219へ進む。この補正内容についても、リスク種別ごとに後述する。一方、補正を行わないと判定すれば、そのままステップ219へ進む。
その後、補正内容決定部86は、分析結果記憶部84に未処理の分析結果が残っているかどうかを判定し(ステップ219)、残っていれば、ステップ217に戻り、残っていなければ、ステップ220へ進む。
そして、最後に、補正処理部87が、原稿データの補正を行うと判定されたリスクがある部分を、そのリスクに対してステップ218で決定された補正を施した後の部分で置き換える(ステップ220)。
【0041】
図7は、プロセスKリスク分析処理の流れを示したフローチャートである。尚、ここでは、説明を簡略化するため、色値分布情報の各レコードには、色空間としてRGBが指定されているものとする。
プロセスKリスク分析処理を行う場合、リスク分析部83は、まず、図4の色値分布情報の1つのレコードを取り出す(ステップ221)。
【0042】
そして、リスク分析部83は、取り出したレコードにおける色値が、意図した色を表すものであるかどうかを判定する(ステップ222)。即ち、プロセスKリスクはテキスト及びグラフィックスの多くをK100%又はKのみで再現しようとしてそのような再現ができないリスクなので、テキストやグラフィックスの多くを最初から黒やグレイ以外の意図した色(例えば赤)で再現しようとした場合を、このステップ222で除外している。具体的には、R、G、Bの平均値が予め定めた閾値(例えば35)以下であるかどうかを調べ、閾値を超えていれば、黒やグレイ以外の意図した色を表すものであると判定し、閾値以下であれば、黒やグレイ以外の意図した色を表すものでないと判定すればよい。
【0043】
その結果、取り出したレコードにおける色値が、黒やグレイ以外の意図した色を表すものであると判定されれば、ステップ227へ進む。一方、取り出したレコードにおける色値が、黒やグレイ以外の意図した色を表すものでないと判定されれば、リスク分析部83は、取り出したレコードにおける色値が、Kのみでの再現が可能なものであるかどうかを判定する(ステップ223)。具体的には、RGB色空間における色値について、R=G=Bが成り立つかどうかを調べ、R=G=Bが成り立てば、Kのみでの再現が可能なものであると判定し、R=G=Bが成り立たなければ、Kのみでの再現が可能なものでないと判定すればよい。
【0044】
その結果、取り出したレコードにおける色値が、Kのみでの再現が可能なものであると判定されれば、ステップ227へ進む。一方、取り出したレコードにおける色値が、Kのみでの再現が可能なものでないと判定されれば、リスク分析部83は、取り出したレコードにおける色値が指定されたテキストが多いかどうかを判定する(ステップ224)。具体的には、取り出したレコードにおける「テキスト」の数の全レコードにおける「テキスト」の数に対する割合が、予め定めた閾値以上であるかどうかを調べ、閾値以上であれば、テキストが多いと判定し、閾値未満であれば、テキストが少ないと判定すればよい。
その結果、取り出したレコードにおける色値が指定されたテキストが多いと判定されれば、ステップ226へ進む。
【0045】
一方、取り出したレコードにおける色値が指定されたテキストが多いと判定されなければ、リスク分析部83は、取り出したレコードにおける色値が指定されたグラフィックスが多いかどうかを判定する(ステップ225)。具体的には、取り出したレコードにおける「グラフィックス」の数の全レコードにおける「グラフィックス」の数に対する割合が、予め定めた閾値以上であるかどうかを調べ、閾値以上であれば、グラフィックスが多いと判定し、閾値未満であれば、グラフィックスが少ないと判定すればよい。
その結果、取り出したレコードにおける色値が指定されたグラフィックスが多いと判定されれば、ステップ226へ進む。一方、取り出したレコードにおける色値が指定されたグラフィックスが多いと判定されなければ、ステップ227へ進む。
【0046】
ステップ224でテキストが多いと判定された場合、又は、ステップ225でグラフィックスが多いと判定された場合、リスク分析部83は、リスク種別「プロセスK」とこのレコードにおける色値とを対応付けて分析結果として分析結果記憶部84に記憶する(ステップ226)。
そして、最後に、リスク分析部83は、取り出したレコードが色値分布情報における最終レコードであるかどうかを判定し(ステップ227)、最終レコードでなければ、ステップ222に戻り、最終レコードであれば、プロセスKリスク分析処理を終了する。
【0047】
尚、この動作例では、テキスト及びグラフィックスの多くがK100%で再現されないリスクと、テキスト及びグラフィックスの多くがKのみで再現されないリスクとを併せて検出するようにしたが、これらのリスクを別々に検出するようにしてもよい。例えば、ステップ223では、K100%で再現可能かのみを判定するようにしてもよい。
【0048】
また、この動作例では、取り出したレコードにおける色値が指定されたテキストが多いという条件、及び、取り出したレコードにおける色値が指定されたグラフィックスが多いという条件の少なくとも一方が満たされることを、プロセスKリスクがあると判定するための1つの条件としたが、この限りではない。例えば、取り出したレコードにおける色値が指定されたテキストが多いという条件、及び、取り出したレコードにおける色値が指定されたグラフィックスが多いという条件の両方が満たされることを、プロセスKリスクがあると判定するための1つの条件としてもよい。
【0049】
ところで、プロセスKリスクがある場合の補正としては、例えば、リスク種別「プロセスK」に対応付けられた色値をKのみで再現可能なように変更することが考えられる。具体的には、リスク種別「プロセスK」に対応付けられた色値について、R、G、Bの平均値を算出し、R、G、Bの全てをこの平均値に揃えることが考えられる。その際、R、G、Bの平均値が極めて0に近ければ、つまり、R、G、Bの平均値が予め定めた閾値以下であれば、K100%での再現が要求されていたものとみなし、RGB=(0,0,0)としてもよい。
【0050】
図8は、再現不良リスク分析処理の流れを示したフローチャートである。尚、ここでも、説明を簡略化するため、色値分布情報の各レコードには、色空間としてRGBが指定されているものとする。また、このフローチャートの処理においては、色値分布情報に、オブジェクトの情報として、グラデーション(色の漸次的移行)が施されたグラフィックスの数を管理する項目「グラデーション」が設けられていることを前提とする。
再現不良リスク分析処理を行う場合、リスク分析部83は、まず、図4の色値分布情報の1つのレコードを取り出す(ステップ231)。
【0051】
そして、リスク分析部83は、取り出したレコードにおける色値が、極ハイライト部の色値であるかどうかを判定する(ステップ232)。具体的には、RGBが(255,255,255)でなく、その平均値が予め定めた閾値(例えば250)を超えているかどうかを調べ、RGBが(255,255,255)でなく平均値が閾値を超えていれば、極ハイライト部の色値であると判定し、平均値が閾値以下であれば、極ハイライト部の色値でないと判定すればよい。
【0052】
その結果、取り出したレコードにおける色値が、極ハイライト部の色値であると判定されれば、その色値が指定されたオブジェクトにグラデーションが施されているかどうかを判定する(ステップ233)。即ち、グラデーションが施されたオブジェクトに極ハイライト部の色値が指定されると滑らかなグラデーションとならないトラブルが起きるので、このようなトラブルをリスクとして検出する。具体的には、取り出したレコードにおける「グラデーション」が1以上であるかどうかを調べ、1以上であれば、グラデーションが施されていると判定し、0であれば、グラデーションが施されていないと判定すればよい。
【0053】
その結果、取り出したレコードにおける色値が指定されたオブジェクトにグラデーションが施されていないと判定されれば、ステップ241へ進む。一方、取り出したレコードにおける色値が指定されたオブジェクトにグラデーションが施されていると判定されれば、リスク分析部83は、リスク種別「極ハイライト再現不良」とこのレコードにおける色値とを対応付けて分析結果として分析結果記憶部84に記憶する(ステップ234)。
【0054】
また、ステップ232で、取り出したレコードにおける色値が、極ハイライト部の色値でないと判定されれば、リスク分析部83は、取り出したレコードにおける色値が、極シャドー部の色値であるかどうかを判定する(ステップ235)。具体的には、RGBが(0,0,0)でなく、その平均値が予め定めた閾値(例えば20)以下であるかどうかを調べ、RGBが(0,0,0)でなく平均値が閾値以下であれば、極シャドー部の色値であると判定し、平均値が閾値を超えていれば、極シャドー部の色値でないと判定すればよい。
【0055】
その結果、取り出したレコードにおける色値が、極シャドー部の色値であると判定されれば、その色値が指定されたオブジェクトにグラデーションが施されているかどうかを判定する(ステップ236)。即ち、グラデーションが施されたオブジェクトに極シャドー部の色値が指定されると滑らかなグラデーションとならないトラブルが起きるので、このようなトラブルをリスクとして検出する。具体的には、取り出したレコードにおける「グラデーション」が1以上であるかどうかを調べ、1以上であれば、グラデーションが施されていると判定し、0であれば、グラデーションが施されていないと判定すればよい。
【0056】
その結果、取り出したレコードにおける色値が指定されたオブジェクトにグラデーションが施されていないと判定されれば、ステップ241へ進む。一方、取り出したレコードにおける色値が指定されたオブジェクトにグラデーションが施されていると判定されれば、リスク分析部83は、リスク種別「極シャドー再現不良」とこのレコードにおける色値とを対応付けて分析結果として分析結果記憶部84に記憶する(ステップ237)。
【0057】
更に、ステップ235で、取り出したレコードにおける色値が、極シャドー部の色値でないと判定されれば、リスク分析部83は、取り出したレコードにおける色値が、極グレイ部の色値であるかどうかを判定する(ステップ238)。具体的には、RGBがR=G=Bを満たさず、R、G、Bのその平均値からのずれの全てが予め定めた範囲内にあるかどうかを調べ、RGBがR=G=Bを満たさず平均値からのずれの全てが範囲内であれば、極グレイ部の色値であると判定し、平均値からのずれの何れかが範囲外であれば、極グレイ部の色値でないと判定すればよい。
【0058】
その結果、取り出したレコードにおける色値が、極グレイ部の色値であると判定されれば、その色値が指定されたオブジェクトにグラデーションが施されているかどうかを判定する(ステップ239)。即ち、グラデーションが施されたオブジェクトに極グレイ部の色値が指定されると、赤っぽいグレイ、緑っぽいグレイ、青っぽいグレイが周期的に現れる所謂レインボーバンディングが発生するトラブルが起きるので、このようなトラブルをリスクとして検出する。具体的には、取り出したレコードにおける「グラデーション」が1以上であるかどうかを調べ、1以上であれば、グラデーションが施されていると判定し、0であれば、グラデーションが施されていないと判定すればよい。
【0059】
その結果、取り出したレコードにおける色値が指定されたオブジェクトにグラデーションが施されていないと判定されれば、ステップ241へ進む。一方、取り出したレコードにおける色値が指定されたオブジェクトにグラデーションが施されていると判定されれば、リスク分析部83は、リスク種別「極グレイ再現不良」とこのレコードにおける色値とを対応付けて分析結果として分析結果記憶部84に記憶する(ステップ240)。
更にまた、ステップ238で、取り出したレコードにおける色値が、極グレイ部の色値でないと判定されれば、ステップ241へ進む。
【0060】
そして、最後に、リスク分析部83は、取り出したレコードが色値分布情報における最終レコードであるかどうかを判定し(ステップ241)、最終レコードでなければ、ステップ232に戻り、最終レコードであれば、再現不良リスク分析処理を終了する。
【0061】
尚、この動作例では、極ハイライト部、極シャドー部、極グレイ部の色値の何れかが指定されたオブジェクトがあるとき、そのオブジェクトにグラデーションが施されている場合に再現不良リスクとして検出するようにしたが、そのオブジェクトが他の条件を満たしている場合に再現不良リスクとして検出するようにしてもよい。そのような他の条件としては、例えば、オブジェクトの面積が閾値以上である等の条件が考えられる。或いは、他の条件を満たすことを要求せず、極ハイライト部、極シャドー部、極グレイ部の色値の何れかが指定されたオブジェクトがあるというだけで、これを再現不良リスクとして検出してもよい。
【0062】
ところで、再現不良リスクがある場合の補正としては、例えば、リスク種別「極ハイライト再現不良」に対応付けられた色値を、通常のデバイスで再現可能な明るい濃度の色値に変更し、リスク種別「極シャドー再現不良」に対応付けられた色値を、通常のデバイスで再現可能な暗い濃度の色値に変更し、リスク種別「極グレイ再現不良」に対応付けられた色値を、同程度の濃度のR=G=Bを満たす色値に変更することが考えられる。
【0063】
図9は、色細線リスク分析処理の流れを示したフローチャートである。尚、ここでも、説明を簡略化するため、色値分布情報の各レコードには、色空間としてRGBが指定されているものとする。
色細線リスク分析処理を行う場合、リスク分析部83は、まず、図4の色値分布情報の1つのレコードを取り出す(ステップ251)。
【0064】
そして、リスク分析部83は、取り出したレコードにおける色値が、中間調で表現される色値であるかどうかを判定する(ステップ252)。具体的には、R、G、Bの何れかが0及び255以外であるかどうかを調べ、R、G、Bの何れかが0及び255以外であれば、中間調で表現される色値であると判定し、R、G、Bの全てが0又は255であれば、中間調で表現される色値でないと判定すればよい。
【0065】
その結果、取り出したレコードにおける色値が、中間調で表現される色値でないと判定されれば、ステップ255へ進む。一方、取り出したレコードにおける色値が、中間調で表現される色値であると判定されれば、リスク分析部83は、その色値が指定されたオブジェクトに細線があるかどうかを判定する(ステップ253)。具体的には、取り出したレコードにおける「線画(細線)」が1以上であるかどうかを調べ、1以上であれば、細線があると判定し、0であれば、細線がないと判定すればよい。
【0066】
その結果、取り出したレコードにおける色値が指定されたオブジェクトに細線がないと判定されれば、ステップ255へ進む。一方、取り出したレコードにおける色値が指定されたオブジェクトに細線があると判定されれば、リスク分析部83は、リスク種別「色細線」とこのレコードにおける色値とを対応付けて分析結果として分析結果記憶部84に記憶する(ステップ254)。
そして、最後に、リスク分析部83は、取り出したレコードが色値分布情報における最終レコードであるかどうかを判定し(ステップ255)、最終レコードでなければ、ステップ252に戻り、最終レコードであれば、色細線リスク分析処理を終了する。
【0067】
ところで、色細線リスクがある場合の補正としては、例えば、リスク種別「色細線」に対応付けられた色値を中間調で表現されないように変更することが考えられる。具体的には、リスク種別「色細線」に対応付けられた色値が明るい赤を示すものであれば、その色値をRGB=(255,0,0)とすればよい。
【0068】
このように、本実施の形態では、リスク分析部83が、プロセスKリスク分析処理、再現不良リスク分析処理、色細線リスク分析処理を行うようにしたが、これらには限らない。例えば、同じ色の隣接するオブジェクト間にオブジェクト種別の差異により色段差が生ずる色段差リスクを分析する色段差リスク分析処理を行うようにしてもよい。
この色段差リスク分析処理について簡単に説明する。
まず、色段差が生じるためには、画質指示(図12参照)における処理手順情報の一例である色味に「オブジェクト最適化」が設定されていることが必要である。ここで、「オブジェクト最適化」とは、オブジェクト種別ごとに異なる色変換を行うことによりオブジェクト種別ごとに相応しい色味を再現するための設定であり、色値の処理を文書要素の種別に応じた処理手順で行うことの一例である。つまり、原稿データ全体に対して一律にイメージ用の色変換を行うのではなく、原稿データのイメージの部分に対してはイメージ用の色変換を行い、原稿データのグラフィックスの部分に対してはグラフィックス用の色変換を行うというものである。
【0069】
画質指示においてこのような設定がなされていることを前提として、異なる種別のオブジェクトが隣接して配置され、これらのオブジェクトに対して同じ色値が指定されている場合を考える。この場合、これらの互いに隣接するオブジェクトの領域は、原稿データを作成するアプリケーションでは、オブジェクトの境界のない同じ色の1つの領域に見えたとしても、実際に印刷した媒体上では、オブジェクト種別ごとに異なる色変換を行うことでトナー量が異なってくるため、オブジェクトの境界に色段差が発生して見えることになる。
【0070】
また、色段差リスク分析処理は、図4の色値分布情報に、各オブジェクトの原稿データ内での位置を示す位置情報を記憶した上で、次のように行う。即ち、まず、ある色値が指定された異なる種別のオブジェクトがあるかどうかを判定する。異なる種別のオブジェクトがあると判定されれば、次に、これらのオブジェクトが互いに隣接するかどうかを位置情報に基づいて判定する。そして、これらのオブジェクトが互いに隣接すると判定されれば、色段差リスクとして検出する。
【0071】
ところで、図5〜9の説明では、原稿データのリスク分析や、原稿データにリスクがある場合の補正を行う際に、印刷指示データに付随してターゲット装置30a及びハンドリング装置30bに送信される画質指示(図12参照)は考慮しなかったが、画質指示を考慮してリスク分析や補正を行うようにしてもよい。
その場合、まず、図6のステップ211では、色値分布情報生成部81が、画質指示の情報を抽出し、これも加味して色値分布情報を生成し、この画質指示の情報が加味された色値分布情報に基づいてリスク分析を行う。例えば、色細線リスク分析処理において、画像指示のスクリーンが「低線数」又は「中線数」であるという条件が更に満たされた場合に、色細線リスクと判定することが考えられる。
また、図6のステップ218では、補正内容決定部86が、画像指示に対する補正内容を決定して保存し、図6のステップ220では、補正処理部87が、画質指示のリスクに関係する部分を、そのリスクに対して決定された補正を施した後の部分で置き換える。例えば、色細線リスクがある場合には、画質指示のスクリーンを「低線数」又は「中線数」から「高線数」に変更することが考えられる。また、色段差リスクがある場合には、画質指示の色味を「オブジェクト最適化」から「イメージ用」又は「グラフィックス用」に変更することが考えられる。
【0072】
ここで、更に、図3のステップ208で生成される画質ターゲット情報について説明する。
図10は、画質ターゲット情報の具体例を示した図である。
図中、「Image/」の部分は、色やスクリーンに関する目標を記述する部分である。そして、「Color/」の部分において、「Intent=Perceptual」は、色域マッピングを知覚重視で行うことを、「Gray=Normal」は、通常の方法でK版を生成することを、それぞれ示しており、全体的な色再現に関する目標記述の例である。一方、「RGB」、「CMYK」等は、特定の色に対する目標記述の例である。
また、「Other/」の部分は、画像処理のポリシーに関する目標を記述する部分である。「Policy/」の部分において、「OOR=OFF」は、オブジェクトごとにレンダリング処理を変えないことを、「OOH=OFF」は、オブジェクトごとにスクリーン処理を変えないことを、それぞれ示している。
尚、ここでは、画質ターゲット情報を構造型文書の形式で示したが、これはあくまで一例であって、これに限られるものではない。
また、このような画質ターゲット情報は、複数の画像ハンドリングシステムで共有してもよい。
【0073】
次に、画像ハンドリングシステムにおける画像ハンドリング処理時の動作について説明する。
図11は、このときの画像ハンドリング部70の動作例を示したフローチャートである。
ユーザは、アプリケーション18上で、画質特性を合わせたい原稿データと、原稿を出力したいハンドリング装置30bとを指定する。これにより、プリンタドライバ19が原稿データに基づく印刷を指示する印刷指示データを生成して入力情報通知部41bに送信し、入力情報通知部41bがこれを受信すると、画像ハンドリング部70の動作が開始する。尚、この動作例では、図3のステップ209でハンドリング装置30b内に記憶した画質ターゲット情報を読み出して利用する第1のケース、図3のステップ208で端末装置10内に保存した画質ターゲット情報を添付して利用する第2のケース、画質ターゲット情報を利用しない第3のケースを想定している。
【0074】
画像ハンドリング部70では、まず、指示判定部71及び描画判定部72が、指定された原稿データに基づく印刷を指示する印刷指示データを入力情報通知部41bから取得する(ステップ701)。
そして、指示判定部71が、印刷指示データに含まれる画質指示の内容を判定し、描画判定部72が、印刷指示データに含まれる描画コマンドの内容を判定し、これらの判定結果を画像ハンドリングターゲット決定部73に伝える(ステップ702)。ここで、画質指示は、上記第1のケースでは、画質ターゲット情報を指定する情報と画質に関する印刷設定とを含み、上記第2のケースでは、画質ターゲット情報を保存したファイルと画質に関する印刷設定とを含み、上記第3のケースでは、画質に関する印刷設定のみを含む。そこで、画質指示の内容の判定では、画質指示がこれらの何れに該当するかも判定する。
【0075】
次に、画像ハンドリングターゲット決定部73は、指示判定部71から伝えられた判定結果によって、画質指示が画質ターゲット情報を指定する情報を含むことが示されているかどうかを判定する(ステップ703)。その結果、画質指示が画質ターゲット情報を指定する情報を含むことが示されていれば、既に画質ターゲット情報記憶部74に記憶されている画質ターゲット情報の中から指定された画質ターゲット情報を選択する(ステップ704)。そして、画質ターゲット情報と、印刷設定とに基づいて、画像ハンドリングの目標を決定する(ステップ707)。
【0076】
また、画質指示が画質ターゲット情報を指定する情報を含むことが示されていなければ、画像ハンドリングターゲット決定部73は、指示判定部71から伝えられた判定結果によって、画質指示が画質ターゲット情報を保存したファイルを含むことが示されているかどうかを判定する(ステップ705)。その結果、画質指示が画質ターゲット情報を保存したファイルを含むことが示されていれば、そのファイルに保存された画質ターゲット情報を一時的にその印刷指示データのみに適用する画質ターゲット情報として取得する(ステップ706)。そして、画質ターゲット情報と、印刷設定とに基づいて、画像ハンドリングの目標を決定する(ステップ707)。
【0077】
更に、画質指示が画質ターゲット情報を保存したファイルを含むことが示されていなければ、画像ハンドリングターゲット決定部73は、印刷設定のみに基づいて、画像ハンドリングの目標を決定する(ステップ708)。
その後、画像ハンドリングターゲット決定部73は、ハンドリング装置30bで出力される画像の画質特性をステップ707又はステップ708で決定された目標に近付けるためのデータを、描画処理部42b、色再現処理部43b、中間調処理部44bの各処理部に供給する(ステップ709)。尚、この場合、ハンドリング装置30bで出力される画像の画質特性を目標に近付けるために、描画コマンドの書き換えが必要であれば、描画判定部72で内容の判定が行われた描画コマンドを書き換えて描画処理部42bに供給する。また、画像ハンドリングターゲット決定部73が各処理部に供給するデータを生成する際には、画像ハンドリングパラメータ記憶部75に記憶された画像ハンドリングパラメータも用いられる。
【0078】
ここで、図13のステップ701で取得する印刷指示データについて説明する。
図12は、印刷指示データに含まれる画質指示について示した図である。
画質指示としては、上記第2のケースにおける画質ターゲット情報を保存したファイルも考えられるが、ここでは、上記第1のケースにおける画質ターゲット情報を指定する情報(指定情報)と、プリンタドライバ19上での画質に関する印刷設定とを示している。具体的には、Index1,2,3の画質指示は、印刷設定として、解像度、階調情報、スクリーン、色味等の画質項目ごとの設定情報を含んでおり、Index4,5の画質指示は、画質ターゲット情報を指定する情報として、画質ターゲット情報に付与された「高画質」、「カスタム1」等の名称を含んでいる。
尚、ここで示した画質項目はあくまで一例であり、これら以外にも、入力色信号(例えば、CMYK、RGB)に対する色再現、入力線幅指定(例えば、mm、pixel)に対する細線再現、オブジェクトごとの画像処理ポリシー(OOR/OOH)、スクリーン角度、オブジェクトの描画方法(ラスタかベクタか)等が考えられる。
【0079】
図13は、印刷指示データに含まれる描画コマンドについて示した図である。
図では、描画コマンドに対して、その描画コマンドによる実際の描画の内容を示している。ここで、例えば文字描画1と文字描画2のように、同じ原稿データに対して、実際の描画内容が異なる場合がある。このような場合、ハンドリング装置30bの画質特性をターゲット装置30aの画質特性に合わせることが困難になることがある。そのため、ターゲット装置30aにおける描画内容を出力結果から予測し、これをハンドリング装置30bにも反映することで、出力結果をより近付ける。
【0080】
次に、端末装置10のハードウェア構成について説明する。
図14は、端末装置10のハードウェア構成を示した図である。
図示するように、端末装置10は、演算手段であるCPU(Central Processing Unit)11と、記憶手段であるメインメモリ12及び磁気ディスク装置(HDD:Hard Disk Drive)13とを備える。ここで、CPU11は、OS(Operating System)やアプリケーション等の各種ソフトウェアを実行し、上述した各機能を実現する。また、メインメモリ12は、各種ソフトウェアやその実行に用いるデータ等を記憶する記憶領域であり、磁気ディスク装置13は、各種ソフトウェアに対する入力データや各種ソフトウェアからの出力データ等を記憶する記憶領域である。
更に、端末装置10は、外部との通信を行うための通信I/F14と、ビデオメモリやディスプレイ等からなる表示機構15と、キーボードやマウス等の入力デバイス16とを備える。
【0081】
最後に、ターゲット装置30a及びハンドリング装置30bとして機能する画像処理装置30の機構について説明する。
図15は、画像処理装置30の構成例を示した図である。この画像処理装置30は、所謂タンデム型のカラープリンタであり、画像データに基づき画像形成を行う画像形成部50と、画像処理装置30全体の動作を制御する主制御部31とを備えている。更には、例えばPC等との通信を行って印刷指示データを受信する通信部32と、原稿から画像を読み取って読取画像を生成する画像読取部60と、通信部32で受信した印刷指示データや画像読取部60で生成した読取画像等に対し予め定めた画像処理を施すことで画像データを取得して画像形成部50に転送する画像処理部40と、ユーザからの操作入力の受付やユーザに対する各種情報の表示を行うユーザインターフェース(UI)部33とを備えている。
【0082】
画像形成部50は、例えば電子写真方式により画像を形成する構成部であって、並列して配置される4つの画像形成ユニット51Y,51M,51C,51K(以下、「画像形成ユニット51」という)を備えている。各画像形成ユニット51は、機能部材として、例えば、矢印A方向に回転しながら静電潜像が形成され、その後にトナー像が形成される感光体ドラム52と、感光体ドラム52の表面を予め定められた電位で帯電する帯電器53と、帯電器53により帯電された感光体ドラム52を画像データに基づいて露光する露光器54と、感光体ドラム52上に形成された静電潜像を各色トナーにより現像する現像器55と、転写後の感光体ドラム52表面を清掃するドラムクリーナ56とを備えている。
画像形成ユニット51各々は、現像器55に収容されるトナーを除いて概ね同じ構成であり、それぞれがイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)のトナー像を形成する。
【0083】
また、画像形成部50は、各画像形成ユニット51の感光体ドラム52にて形成された各色トナー像が多重転写される中間転写ベルト61と、各画像形成ユニット51にて形成された各色トナー像を中間転写ベルト61に順次転写(一次転写)する一次転写ロール62とを備えている。更に、中間転写ベルト61上に重畳して転写された各色トナー像を記録媒体(記録紙)である用紙Pに一括転写(二次転写)する二次転写ロール63と、二次転写された各色トナー像を用紙P上に定着させる定着器65とを備えている。
【0084】
画像形成部50の画像形成ユニット51各々は、上記の機能部材を用いた電子写真プロセスによりイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色トナー像を形成する。各画像形成ユニット51にて形成された各色トナー像は、一次転写ロール62により中間転写ベルト61上に順に静電転写され、各色トナーが重畳された合成トナー像を形成する。中間転写ベルト61上の合成トナー像は、中間転写ベルト61の移動(矢印B方向)に伴って二次転写ロール63が配置された二次転写領域Trに搬送され、用紙収容容器35から供給される用紙P上に一括して静電転写される。その後、用紙P上に静電転写された合成トナー像は、定着器65によって定着処理を受けて用紙P上に定着される。そして、定着画像が形成された用紙Pは、画像処理装置30の排出部に設けられた用紙積載部36に搬送され集積される。
【0085】
一方、一次転写後に感光体ドラム52に付着しているトナー(一次転写残トナー)、及び、二次転写後に中間転写ベルト61に付着しているトナー(二次転写残トナー)は、それぞれドラムクリーナ56及びベルトクリーナ64によって除去される。
このようにして、画像処理装置30での画像形成処理がプリント枚数分のサイクルだけ繰り返し実行される。
【0086】
ここで、この画像処理装置30において、画像形成部50及び画像読取部60は、それぞれの基準の特性に近付けるためにキャリブレーションされていることが望ましい。
また、画像処理装置30は、画質項目抽出部21が抽出した画質項目に応じて、事前処理を行うようにしてもよい。このような事前処理としては、画像処理部40における階調補正、画像形成部50におけるレジ補正、複数枚ランニング等がある。
更に、画像読取部60は、画質項目抽出部21が抽出した画質項目に応じて、画像読取部60aの読み取り精度や読み取り位置等を変化させてもよい。
【0087】
また、本実施の形態では、リスク分析を、端末装置10の画像ハンドリングユーティリティ20内で行うようにしたが、これには限らない。例えば、端末装置10に接続された独立の装置内で行ってもよい。
【0088】
尚、本実施の形態を実現するプログラムは、通信手段により提供することはもちろん、CD−ROM等の記録媒体に格納して提供することも可能である。
【符号の説明】
【0089】
10…端末装置、18…アプリケーション、19…プリンタドライバ、20…画像ハンドリングユーティリティ、21…画質項目抽出部、22…抽象化原稿生成部、23…描画オブジェクト記憶部、24…出力指示部、25…読取画像受付部、26…画質特性比較部、28…画質ターゲット情報生成部、30a…ターゲット装置、30b…ハンドリング装置、40a,40b…画像処理部、50a,50b…画像形成部、60a,60b…画像読取部、70…画像ハンドリング部、71…指示判定部、72…描画判定部、73…画像ハンドリングターゲット決定部、74…画質ターゲット情報記憶部、75…画像ハンドリングパラメータ記憶部、80…ネットワーク、81…色値分布情報生成部、82…色値分布情報記憶部、83…リスク分析部、84…分析結果記憶部、85…分析結果出力部、86…補正内容決定部、87…補正処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子文書の印刷を指示する印刷指示情報から、当該電子文書を構成する複数の文書要素のそれぞれに対して指定された色値を示す色値情報を抽出する抽出手段と、
前記抽出手段により抽出された前記色値情報に基づいて、前記電子文書における特定の文書要素の種別に対して指定された色値の分布状態を示す分布状態情報を生成する生成手段と、
前記生成手段により生成された前記分布状態情報に基づいて、前記電子文書を媒体に印刷する際に発生する可能性がある不具合を検出する検出手段と
を備えたことを特徴とする情報分析装置。
【請求項2】
前記検出手段は、前記電子文書における画像以外の文書要素の種別に対して指定された色値の予め定められた割合以上を占める特定の色値が、RGB色空間におけるR値が0、G値が0、B値が0の色値でなく、かつ、グレイスケールの色空間における値が100%の色値でないことを前記分布状態情報が示す場合に、前記不具合を検出することを特徴とする請求項1に記載の情報分析装置。
【請求項3】
前記検出手段は、前記特定の色値がRGB色空間におけるR値とG値とB値とが等しい色値でないことを前記分布状態情報が更に示す場合に、前記不具合を検出することを特徴とする請求項2に記載の情報分析装置。
【請求項4】
前記検出手段は、前記電子文書における色の漸次的移行が施された文書要素の種別に対して指定された色値が、白色以外で予め定められた基準以上白色に近い色の色値、黒色以外で予め定められた基準以上黒色に近い色の色値、及び、灰色軸上の色以外で予め定められた基準以上灰色軸に近い色の色値の何れかであることを前記分布状態情報が示す場合に、前記不具合を検出することを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れかに記載の情報分析装置。
【請求項5】
前記検出手段は、前記電子文書における線の形状を有する文書要素の種別に対して指定された色値が、中間調で表現される色値であることを前記分布状態情報が示す場合に、前記不具合を検出することを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れかに記載の情報分析装置。
【請求項6】
前記抽出手段は、前記複数の文書要素のそれぞれに対して指定された色値の処理手順を示す処理手順情報を更に抽出し、
前記検出手段は、前記電子文書における文書要素の種別に対して指定された色値の処理が当該文書要素の種別に応じた処理手順で行われることを前記処理手順情報が示しており、かつ、前記電子文書における互いに隣接する異なる種別の文書要素に対して指定された色値が等価な色値であることを前記分布状態情報が示す場合に、前記不具合を検出することを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れかに記載の情報分析装置。
【請求項7】
前記検出手段により前記不具合が検出された場合に、当該不具合に関する情報を出力する出力手段を更に備えたことを特徴とする請求項1乃至請求項6の何れかに記載の情報分析装置。
【請求項8】
前記検出手段により前記不具合が検出された場合に、当該不具合に応じて前記印刷指示情報を補正する補正手段を更に備えたことを特徴とする請求項1乃至請求項7の何れかに記載の情報分析装置。
【請求項9】
電子文書の印刷を指示する印刷指示情報を送信する情報送信装置と、
前記情報送信装置により送信された前記印刷指示情報に基づいて第1の文書画像を第1の媒体に形成する第1の画像形成装置と、
前記第1の画像形成装置により前記第1の媒体に形成された前記第1の文書画像を読み取る第1の画像読取装置と、
前記情報送信装置により送信された前記印刷指示情報に基づいて第2の文書画像を第2の媒体に形成する第2の画像形成装置と、
前記第2の画像形成装置により前記第2の媒体に形成された前記第2の文書画像を読み取る第2の画像読取装置と、
前記第1の画像読取装置により読み取られた前記第1の文書画像と、前記第2の画像読取装置により読み取られた前記第2の文書画像とに基づいて、前記第1の画像形成装置で形成される画像の画質特性と、前記第2の画像形成装置で形成される画像の画質特性とを近付けるための情報を生成する情報生成装置と
を備え、
前記情報送信装置は、
前記電子文書を構成する複数の文書要素のそれぞれに対して指定された色値を示す色値情報を前記印刷指示情報から抽出する抽出手段と、
前記抽出手段により抽出された前記色値情報に基づいて、前記電子文書における特定の文書要素の種別に対して指定された色値の分布状態を示す分布状態情報を生成する生成手段と、
前記生成手段により生成された前記分布状態情報に基づいて、前記第1の文書画像及び前記第2の文書画像に発生する可能性がある不具合を検出する検出手段と
を備えたことを特徴とする画像処理システム。
【請求項10】
コンピュータに、
電子文書の印刷を指示する印刷指示情報から、当該電子文書を構成する複数の文書要素のそれぞれに対して指定された色値を示す色値情報を抽出する機能と、
抽出された前記色値情報に基づいて、前記電子文書における特定の文書要素の種別に対して指定された色値の分布状態を示す分布状態情報を生成する機能と、
生成された前記分布状態情報に基づいて、前記電子文書を媒体に印刷する際に発生する可能性がある不具合を検出する機能と
を実現させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−203818(P2012−203818A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−70150(P2011−70150)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】