説明

情報機器装置

【課題】操作者を識別するための操作者とのインターフェースを簡素に構成して操作の誤認識を防止することができる情報機器装置を提供する。
【解決手段】複合機の操作パネル19は、パネル本体30の上面30aにタッチパネル31および複数の操作ボタン32〜34が設けられる。この操作パネル19は、タッチパネル31や操作ボタン32〜34を操作するユーザに携帯された端末装置と人体通信を行うためのアンテナとしての機能を果たす電極シート36をパネル本体30の上面30aに配置し、電極シート36の上面を絶縁カバー38で覆うように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体通信を利用して操作者を識別する情報機器装置に関する。
【背景技術】
【0002】
パスワード認証やカード認証、あるいは指紋や静脈といった生体情報認証などの汎用の個人認証機能(ユーザ認証機能)を備えた画像形成装置などは、一般的には所定の認証操作を受けてユーザを認証すると装置の使用を許可して認証状態を維持し、操作部で受ける各種の継続的な操作をその認証したユーザ本人が行っているものと認識して動作するようになっている。
【0003】
この画像形成装置などにおける個人認証やデータ通信では、セキュリティ性や操作性などに関する種々の技術が考案されている。
【0004】
たとえば、特許文献1には、画像形成装置のスリープ解除スイッチや電源スイッチに指紋認証機構を組み込み、その特定機能のスイッチの押下操作に伴い指紋照合による個人認証を行うことで、特定機能を作動させる際のセキュリティ性と操作性の両立を図るようにした技術が開示されている。特許文献2には、店舗に設置された消耗品購入装置やドライバ購入装置、メーカが設置した情報端末装置などのデータ供給源と、データ受信先となるインクジェットプリンタなどの画像形成装置との間でのデータ通信を、ユーザの人体に装着されたデータ送受信機を介して行う人体通信システムにおいて、データ送受信機と装置間で人体通信によるデータ転送を行うためにユーザが装置の接触部に触れた際に、指紋照合や静脈照合による個人認証を行うことで、人体通信を利用したデータ通信における操作性(接続の簡便性)やセキュリティ性(データの秘匿性)を高めるようにした技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−77990号公報
【特許文献2】特開2006−81025号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、画像形成装置などにおける従来の個人認証では、認証中に操作部で受け付ける操作をその認証したユーザ本人が行っているものと認識するため、認証ユーザの操作とそれ以外の操作を区別して認識することができない。たとえば、操作部に物が落ちたり書類の端部が接触したりして行われた意図しない操作(誤操作)や、認証ユーザが一時的に装置から離れている間に他のユーザが行った操作(なりすまし操作)なども、認証ユーザが行っているものと誤認識するおそれがある。
【0007】
特定機能のスイッチに指紋認証機構を組み込む特許文献1の技術においては、全ての操作部材に指紋認証機構を組み込むことで上記のような誤認識を防止することも考えられるが、操作部材の数が多くなると実装レイアウトが困難になり、コストが嵩む問題がある。
【0008】
人体通信を利用したデータ通信に指紋照合などによる個人認証を組み合わせた特許文献2の技術も同様であり、たとえば、多数の操作部材が設けられている操作部の全ての操作部材に指紋認証センサなどを組み込むことで上記の誤認識を防止できたとしても、やはり操作部材および指紋認証センサの実装レイアウトやコスト面が問題になる。
【0009】
これらの特許文献1および2では、操作の誤認識を防止しようとすると、いずれも操作者を識別(認証)するために必要となる操作者とのインターフェースの構成が複雑になる問題がある。
【0010】
本発明は、上記の問題を解決しようとするものであり、操作者を識別するための操作者とのインターフェースを簡素に構成して操作の誤認識を防止することができる情報機器装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
かかる目的を達成するための本発明の要旨とするところは、次の各項の発明に存する。
【0012】
[1]操作部と、
前記操作部の操作に係る操作者の人体を通信路にして端末装置と通信する通信部と、
前記通信部に接続され、前記通信部と前記端末装置との間に前記操作者の人体を含む通信路を形成する位置に配置されたアンテナと、
を備えた情報機器装置。
【0013】
上記発明では、情報機器装置の通信部は、操作部の操作に係る操作者の人体を通信路にして端末装置と通信することができる。ここでの操作部の操作に係る操作者とは、操作部を操作している人や操作しようとする人などを含む。端末装置は、この操作者の身に付けられて(腕などに装着されて)人体に直接的に接触する、あるいは操作者に携帯され衣服などを介して人体に間接的に接触する(近接配置される)などし、操作者の人体を通信路にして情報機器装置の通信部と通信することができる。
【0014】
このような人体を通信路として用いる通信(人体通信)において、情報機器装置の通信部と端末装置との間には、通信部に接続され所定の位置に配置されたアンテナにより、操作者の人体を含む通信路が形成される。たとえば、人体とアンテナの接触のみによって通信路が形成される方式では、アンテナは操作者による操作部への操作に伴い人体(指先など)に接触される操作箇所に配置することが望ましい。人体とアンテナが近接するだけでも通信路が形成される方式では、アンテナは操作箇所に配置してもよく、操作箇所の近傍(周辺)などに配置してもよい。
【0015】
情報機器装置は、このアンテナによって通信部と端末装置との間に形成された操作者の人体を含む通信路を通じて、たとえば、操作者の識別データが記憶された端末装置と通信し操作者を識別することができる。
【0016】
このように、操作部の操作に係る操作者を識別するための操作者とのインターフェースとしては、たとえば、多数の操作部材が設けられている操作部の全ての操作部材に指紋などの生体情報を取得するためのセンサを設けるなどの複雑な構成としなくても、人体通信を利用した操作者の識別においては、上記のアンテナを設けるだけの簡素な構成とすることができる。そして、このような簡素な構成により、識別した操作者による操作とそれ以外の操作、たとえば、物品などが操作部に接触して起こる誤操作や他のユーザによるなりすまし操作などを区別して認識できるようになり、操作の誤認識を防止することができる。
【0017】
[2]前記操作部は、
パネル本体と、前記パネル本体の表面に設けられた複数の操作部材とを有する操作パネルであり、
前記アンテナは前記操作パネルの表面に配置されている
ことを特徴とする[1]に記載の情報機器装置。
【0018】
上記発明では、パネル本体の表面に複数の操作部材が設けられた操作パネルを有する情報機器装置では、その操作パネルの表面にアンテナを配置するだけの簡素な構成で、操作パネルの操作部材を操作する操作者の端末装置と人体通信が行えるようになり、操作の誤認識を防止することができる。
【0019】
[3]前記複数の操作部材には、タッチパネルおよびボタンのうちの少なくとも一方が含まれる
ことを特徴とする[2]に記載の情報機器装置。
【0020】
上記発明では、操作部材としてタッチパネルやボタンを備えた操作パネルにおいても、その操作パネルの表面にアンテナを配置するだけの簡素な構成で、タッチパネルやボタンを操作する操作者の端末装置と人体通信が行えるようになり、操作の誤認識を防止することができる。
【0021】
[4]前記アンテナは、前記複数の操作部材を覆うように配置されている
ことを特徴とする[2]または[3]に記載の情報機器装置。
【0022】
上記発明では、操作者が操作部材を操作するのに伴い、操作部材を覆うように配置されたアンテナに操作者の人体(指先など)が接触するようになる。この操作に伴うアンテナへの人体の接触または近接によって通信路が形成され、通信可能となる。
【0023】
[5]前記アンテナは、前記複数の操作部材の周辺に配置されている
ことを特徴とする[2]または[3]に記載の情報機器装置。
【0024】
上記発明では、操作者が操作部材を操作するのに伴い、操作部材の周辺に配置されたアンテナに操作者の人体(手や指先など)が近接するようになる。この操作に伴うアンテナへの人体の近接によって通信路が形成され、通信可能となる。また、操作部材を覆うようにアンテナを配置すると操作部材の操作性や認識性の低下が懸念されるが、アンテナを操作部材の周辺に配置する構成であればそのような懸念を解消することができる。
【0025】
[6]前記アンテナは、当該情報機器装置における装置本体の周辺における前記操作者の立つ位置に配置されている
ことを特徴とする[1]に記載の情報機器装置。
【0026】
上記発明では、情報機器装置は、装置本体の周辺における操作者の立つ位置にアンテナを配置するだけの簡素な構成で、操作部の操作に係る操作者の端末装置と人体通信が行えるようになる。
【0027】
[7]前記通信部は、電界に誘起されて前記アンテナに発生する電位変化を検出する電界センサの機能を有する
ことを特徴とする[1]〜[6]のいずれか1項に記載の情報機器装置。
【0028】
上記発明では、アンテナに近接(接触を含む)する人体表面の電界に誘起されてアンテナに発生する電位変化を電界センサの機能を有する通信部によって検出することができ、人体表面の電界から電気信号を取り出すことができる。これにより、人体表面に電界を発生させて人体に通信路を形成し通信を行う方式においては、アンテナに電界センサを組み合わせるだけの簡素な構成で、操作部の操作に係る操作者の端末装置と人体通信が行えるようになり、操作の誤認識を防止することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明の情報機器装置によれば、操作者を識別するための操作者とのインターフェースを簡素に構成して操作の誤認識を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の一実施形態に係る情報機器装置としての複合機と端末装置とからなる画像処理システムの構成を示す図である。
【図2】図1の複合機における操作パネルの分解状態を示す斜視図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る複合機の制御系の構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る端末装置の制御系の構成を示すブロック図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る複合機による各種操作に対する制御動作を示す流れ図である。
【図6】複合機の周辺に端末装置と通信するための電極シートを配置した構成の一例を示す図である。
【図7】図1、図6の複合機による割り込み操作に対する制御動作の一例を示す流れ図である。
【図8】複合機に複数の操作パネルを設けた構成の一例を示す図である。
【図9】図8の複合機の制御系の構成を示すブロック図である。
【図10】複合機に複数の操作パネルを設けた構成の一例を示す図である。
【図11】複合機に複数の操作パネルを設けた構成の一例を示す図である。
【図12】複合機による複数操作部・複数ユーザ個別認証/同時操作に対する制御動作の一例を示す流れ図(1/3)である。
【図13】複合機による複数操作部・複数ユーザ個別認証/同時操作に対する制御動作の一例を示す流れ図(2/3)である。
【図14】複合機による複数操作部・複数ユーザ個別認証/同時操作に対する制御動作の一例を示す流れ図(3/3)である。
【図15】複合機による複数操作部・複数ユーザ同時認証/連携操作に対する制御動作の一例を示す流れ図である。
【図16】複合機による複数操作部・単独ユーザ引継操作に対する制御動作の一例を示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図面に基づき本発明の実施形態を説明する。
【0032】
図1は、本発明の一実施形態に係る画像処理システム5のシステム構成例を示している。画像処理システム5は、画像処理装置(情報機器装置)としての複合機10と、複合機10を使用するユーザの認証データ(識別データ)が記憶された端末装置40とで構成される。複合機10は、装置本体10aの前面上部に操作パネル19が設けられている。ユーザは、この操作パネル19を通じて複合機10を使用するための各種の操作を行うことができる。
【0033】
複合機10は、原稿画像を光学的に読み取ってその複製画像を記録紙に印刷して出力するコピー機能、読み取った原稿の画像データをファイルにして保存したりパーソナルコンピュータなどの情報処理端末へ送信したりするスキャン機能、情報処理端末から受信した印刷データに係る画像を記録紙に印刷して出力するプリンタ機能、画像データを送受信するファクシミリ機能などを備えている。
【0034】
さらに複合機10は、ユーザに携帯されている端末装置40とユーザの人体を通信路にして通信を行う機能(人体通信機能)、ユーザによる操作パネル19に対する操作の検出と連動して、ユーザの人体を通信路にして端末装置40と通信し認証データに基づいてユーザを認証する機能(ユーザ認証機能)、その認証結果に応じて、操作に対する動作を制御する機能を備えている。
【0035】
認証データは、ユーザ認証を行うために使用される認証用のデータであるが、本実施形態ではユーザを識別することもできる識別データ(個人識別情報)としての機能も備えている。そのため、上記の認証結果に応じて、操作に対する動作を制御する機能については、端末装置40と通信し識別データに基づいてユーザを識別し、その識別結果に応じて、操作に対する動作を制御する機能とも言える。
【0036】
人体通信とは、人体を通信路として利用し近距離のデータ通信を行う通信技術であり、電流方式や電界方式などの複数種類の方式がある。
【0037】
電流方式は、人体に微弱な電流(交流)を流し、その電流にデータ(情報)をのせることで通信を行う方式である。たとえば、腕時計型などの端末装置(データ送受信機)を装着した手で、通信相手となる情報機器装置などの電極にタッチするだけで、両装置間でのデータ通信が可能になる。
【0038】
電界方式は、人体の近傍に電界を発生させることで誘電体である人体が誘電分極し、人体全体が電界をまとった通信路になり、この人体の近傍(人体表面)に誘起させた電界の通信路を通じてデータ通信を行う方式であり、データ信号の媒体に電界を用いる方式である。具体的には、端末装置の電極によって人体表面に電圧(交流電圧)を印加して微弱な電界を発生させ(誘起)、その電界が人体表面に広がり、人体表面が情報機器装置の電極に近接または接触することで電界に誘起されて電極に電位が発生する。この電界の変動(電界強度変化)に誘起されて電極に発生する電位変化を光学式電界センサで検出し電気信号に変換するなどしてデータ通信を行う仕組みとなっている。
【0039】
電界方式では、電界の変動を信号として検出するので、端末装置や情報機器装置などの通信機器と人体が直接触れている必要はなく、信号経路の間に絶縁体が存在していても通信が成立する。たとえば、手(指)や足が接触した部分だけではなく、人体表面から数センチメートルの範囲でも通信可能であり、人体との間に衣服や靴などが介在していても通信可能である。
【0040】
端末装置は、カード型、腕時計型、鍵型など、ユーザが携帯可能な種々の形状に構成することができる。たとえば、従業員証などに組み込んだカード型に構成した場合には、図1に示すように、ユーザはそのカード型の端末装置40をネックストラップ48に取り付けて首に掛けたり、衣服のポケットに入れたりして携帯することができる。腕時計型に構成した場合は腕に装着して携帯することができる。
【0041】
また、人体通信技術では人体を通じて端末装置に電力を供給できるので、端末装置にバッテリなどの二次電池を搭載する必要がなく、小型化が容易で携帯性に優れた端末装置を構成することができる。
【0042】
図2は、複合機10における操作パネル19の構成を示す分解斜視図である。ここでは、電界方式の人体通信に対応した構成の一例を説明する。
【0043】
操作パネル19は、パネル本体30と、電極シート36と、絶縁カバー38とを備えている。電極シート36と絶縁カバー38は、パネル本体30の上面(表面)30aを覆うようにその順番で重ね合わせられて貼着されるなどして取り付けられ、操作パネル19の上面部分を構成するようになっている。
【0044】
パネル本体30は、横長矩形状の上面30aに、操作部材であるタッチパネル31および複数の操作ボタン32〜34と、光学式電界センサ35が設けられている。タッチパネル31は、液晶ディスプレイなどで構成された表示部の表面(画面上)に設けられ、押下された座標位置を検出する位置入力装置である。このタッチパネル31は、パネル本体30の上面30aよりも小さい横長矩形状とされ、パネル本体30の上面30aにおける略中央に配置されている。複数の操作ボタンは、モード選択ボタン、スタートボタン32、ストップボタン33、テンキー34などであり、たとえば、パネル本体30の上面30aにおける右側領域(タッチパネル31の右側)などに配置されている。
【0045】
電極シート36は、電界方式の人体通信を行うためのアンテナとしての機能を果たす。この電極シート36は導電性材料で形成されており、パネル本体30の上面30aと同じかまたはほぼ同じ大きさの横長矩形状とされている。電極シート36におけるタッチパネル31および各操作ボタン32〜34と対応する各々の箇所には、それらの操作部材を操作パネル上に露出させるための開口37が形成されている。電極シート36の上面(表面)には、たとえば、操作ボタンの名称や機能、タッチパネル31の操作の説明などを文字や記号などで表した操作ガイドが印刷などによって記載されている。この電極シート36は、操作ガイドを表示する機能も有しており、操作ガイドシートと兼用した構成となっている。
【0046】
パネル本体30の上面30aに電極シート36を取り付けると、その上面30aが電極シート36に覆われると共に開口37から操作部材が露出される。これにより、電極シート36は操作部材の周囲に配置された構成となる。なお、本例の電極シート36は、操作部材を取り囲むように配置しているが、取り囲まずに操作部材の周辺に配置するようにしてもよい。たとえば、タッチパネル31に対しては、上側を除いた左右と下側の周辺箇所に電極シートを配置するような構成としてもよい。
【0047】
絶縁カバー38は、合成樹脂(プラスチック)などの絶縁性材料で形成されている。絶縁カバー38は、電極シート36と同様に、パネル本体30の上面30aと同じかまたはほぼ同じ大きさの横長矩形状とされており、タッチパネル31および各操作ボタン32〜34と対応する各々の箇所に開口39が形成されている。また、少なくとも電極シート36の操作ガイドに対応する箇所は、光透過性を有するように形成されている。たとえば、光透過性を有する合成樹脂材料で全体を形成する、あるいは、同材料に装飾用の塗装などを施して着色する場合でも、上記箇所は着色せずに光透過性を残すように形成するなどの構成とすることができる。
【0048】
パネル本体30上の電極シート36に絶縁カバー38を重ね合わせて取り付けると、電極シート36が絶縁カバー38に覆われると共に開口39から操作部材が露出される。これにより、操作部材の視認性や操作性が確保された構成となる。
【0049】
光学式電界センサ35は、電界方式の人体通信を行うための通信部(受信部)としての機能を果たすものであり、たとえば、パネル本体30の上面30aにおける略中央の前寄り(タッチパネル31の前側)などに配置されている。この光学式電界センサ35は、電極シート36に接続できる位置、詳細には、電界に誘起されて電極シート36に発生する電位が検出可能となるように接続できる位置であれば、パネル本体30における任意の位置に配置することができる。
【0050】
光学式電界センサ35は、たとえば、電気光学結晶(電界光学結晶)と、レーザ光源と、偏光板と、光検出器などを備えて構成される。電気光学結晶は、電位の変化によって光学的な性質(屈折率)が変化する電気光学効果を有する光学素子である。電気光学結晶は、たとえば、一部分が電極シート36に接続され、その接続部以外の任意の部分が複合機10のGND(グランド)に接続されるなどして、電界に誘起されて電極シート36に発生する電位(電位変化)が印加されるようになっている。
【0051】
電極シート36との接続は、たとえば、光学式電界センサ35の上面部分をパネル本体30の上面30aから露出させて電極シート36に直接接触させて接続する構成としてもよいし、電極シート36に発生する電位を検出できる距離に一部分(接続部)を配置(近接配置)して接続する構成としてもよい。ただし、微弱な電位を精度良く検出するには、光学式電界センサ35は電極シート36に接触させて接続する構成が好ましい。
【0052】
この光学式電界センサ35は、電気光学結晶にレーザ光源からレーザ光を照射し、電気光学結晶を透過したレーザ光を偏光板で所定の偏光に変換し、その光強度を光検出器で検出して電気信号に変換することにより、電界に誘起されて電極シート36に発生し電気光学結晶に印加される電位変化から電気信号を取り出すようになっている。
【0053】
電界方式の人体通信では、前述したように、信号経路の間に絶縁体が存在していても通信可能であり、人体表面から数センチメートルの範囲でも通信可能であるため、タッチパネル31や操作ボタン32〜34を操作(押下)する際に手や指が直接電極シート36に触れなくても近接するだけで通信することができる。
【0054】
また、本例では電極シート36を操作部材の周囲(周辺)に配置しているが、操作部材を覆うように配置してもよい。たとえば、導電性プラスチックなどの導電性と光透過性を有する弾性材料を用いることで、被覆した操作部材の視認性や操作性を確保できる電極シートを形成することも可能である。
【0055】
このような電極シートであれば、電極(アンテナ)に直接触れることで通信が可能になる電流方式にも適用することができる。また、電流方式の場合には、端末装置40は人体に直接接触して携帯(装着)される腕時計型などが好適である。
【0056】
図3は、複合機10の概略構成を示すブロック図である。複合機10は、当該複合機10の動作を制御するCPU(Central Processing Unit)11にバス12を介して読取部13と、記録部14と、ROM(Read Only Memory)15と、RAM(Random Access Memory)16と、ハードディスク装置17と、表示部18と、操作部19と、画像処理部20と、ネットワーク通信部21と、通信制御部22と、モデム23と、外部端末通信部24と、ユーザ認証処理部25と、電源制御部26などが接続されて構成されている。モデム23の配下にはNCU(Network Control Unit)27が接続されている。
【0057】
読取部13は、原稿画像を光学的に読み取って画像データを取得する。読取部13は、たとえば、原稿に光を照射する光源と、その反射光を受けて原稿を幅方向に1ライン分読み取るラインイメージセンサと、原稿からの反射光をラインイメージセンサに導いて結像させるレンズやミラーなどからなる光学系のほか、ミラーや光源を移動させてライン単位の読取位置を原稿の長さ方向に順次移動させる移動機構などを備えて構成されている。
【0058】
記録部14は、画像データに基づく画像を電子写真プロセスによって記録紙上に形成して出力する。記録部14は、たとえば、記録紙の搬送装置と、感光体ドラムと、帯電装置と、入力される画像データに応じて点灯制御されるLD(Laser Diode)と、LDから射出されたレーザ光を感光体ドラム上で走査させる走査ユニットと、現像装置と、転写分離装置と、クリーニング装置と、定着装置とを有する、いわゆるレーザープリンタとして構成されている。レーザ光に代えてLED(Light Emitting Diode)で感光体ドラムを照射するLEDプリンタのほか他の方式のプリンタであってもかまわない。
【0059】
ROM15には各種プログラムや固定データが格納され、CPU11はこれらのプログラムに従って各種の処理を実行する。RAM16はCPU11がプログラムを実行する際に各種のデータを一時的に格納するワークメモリや画像データを一時記憶する画像メモリとして使用される。ハードディスク装置17は、読取部13で読み取られた原稿の画像データや、情報処理端末(パーソナルコンピュータ)などから受信した印刷データや、ファクシミリ受信した画像データなどの保存に使用される。
【0060】
表示部18は、液晶ディスプレイなどで構成され、操作画面、設定画面、編集画面などの各種の画面を表示する。操作部19は、図2で説明したモード選択ボタン、スタートボタン32、ストップボタン33、テンキー34などの各種のボタン類と、液晶ディスプレイの表面に設けられて押下された座標位置を検出するタッチパネル31などを有する操作パネル(19)で構成される。
【0061】
画像処理部20は、情報処理端末から受信した印刷データ(ベクタ形式の印刷データ)に対してラスタライズ処理を施す機能や、画像データに対して、画像補正、回転、拡大/縮小、圧縮/伸張など各種の画像処理を施す。
【0062】
ネットワーク通信部21は、LAN(Local Area Network)などのネットワークを通じて情報処理端末などと各種のデータを送受信する。通信制御部22は、ファクシミリ通信に係るプロトコル制御などを行う。モデム23は、ディジタル信号をアナログ信号で伝送可能とするための変調やその復調を行い、NCU27は公衆電話回線と接続されて発呼や着呼に関する制御や検出を行う。
【0063】
外部端末通信部24は、人体を通信路として端末装置40とデータ通信を行う機能を果たす。電界方式の人体通信を用いる場合には、外部端末通信部24は図2で説明した光学式電界センサ35を備えて構成され、その機能を有している。
【0064】
ユーザ認証処理部25は、端末装置40から外部端末通信部24が受信した認証データと、複合機10に記憶されている照合用の認証データとを比較するなどによりユーザの識別(特定)および認証を行う(認証処理)。なお、このように認証データを受信して認証処理を行う構成に限らず、ユーザ認証処理部25が外部端末通信部24を介して端末装置40にアクセスし、端末装置40内の認証データに基づいて認証処理を行うなどの構成としてもよい。
【0065】
電源制御部26は、複合機10の各部への電力供給を制御し、複合機10の全部分へ電力供給する通常モードと、ユーザ操作の開始や着呼を検出する部分以外への電力供給を停止させた待機モード(省電力モード)との切り替え制御などを行う。
【0066】
複合機10は、電源が投入されると端末装置40との通信が随時可能な状態となる。ただし、消費電力を抑えるため通常(無操作時)は待機モードとなっている。
【0067】
図4は、端末装置40の概略構成を示すブロック図である。端末装置40は、当該端末装置40の動作を統括制御するCPU41にバス42を介してROM43と、RAM44と、記憶部45と、データ入力部46と、本体通信部47などを接続して構成される。
【0068】
ROM43には、CPU41によって実行される各種プログラムや各種の固定データが記憶されている。RAM44は、CPU41がプログラムを実行する際に各種のデータを一時的に格納するワークメモリや送受信に係るデータを一時的に保存する通信バッファなどとして使用される。
【0069】
記憶部45は、不揮発メモリであり、ユーザ認証に使用される認証データが記憶される。データ入力部46は、記憶部45に記憶されるデータを外部から入力するインターフェース部である。本体通信部47は、人体を通信路として複合機10とデータ通信を行う機能を果たす。
【0070】
次に、複合機10の動作について説明する。
【0071】
(各種操作に対する制御動作例)
図5は、複合機10で各種の操作を行う場合のその操作に対する制御動作を示している。各種の操作は、たとえば、画面の遷移、ジョブの設定および実行、ハードディスク装置17に保存されているドキュメントファイルや画像ファイル(画像データ)のプレビュー表示や編集などの操作である。ここでは、複合機10はユーザから操作を受けるたびにそのユーザの携帯する端末装置40から人体通信によるデータ通信によって受信した認証データに基づいてユーザ認証(認証処理)を行うように動作するが、ここでは電界方式の人体通信を用いる場合で説明する。
【0072】
また複合機10は、認証したユーザに対応付けてそのユーザから受けた操作に係る動作(画面の遷移、ジョブの設定/実行、ファイルのプレビュー表示/編集など)を管理すると共に、その管理中に新たに受けた操作に対してユーザ認証を行い、この認証結果に応じて、新たに受けた操作に対する動作を制御する、詳細には、新たに受けた操作に対する動作を、その操作を行ったユーザと、管理中の動作に係るユーザとが一致しているか否かによって変更するようになっている。
【0073】
またここでは、操作開始前は複合機10が通常モードとなっている場合で説明するが、待機モードとなっている場合も基本的には同様に動作する。
【0074】
端末装置40を携帯するユーザは、複合機10を使用するに当たり、操作パネル19における所望の操作部材を操作する。たとえば、タッチパネル31に触れたりモード選択ボタンを押下したりするなどのタッチ操作を行う(操作開始)。
【0075】
複合機10では、ユーザから操作パネル19の操作部材に対するタッチ操作を受けるのに伴い(ステップS101)、外部端末通信部24(光学式電界センサ35)に接続され、かつ操作部材の周囲に配置されている電極シート36によって、外部端末通信部24とユーザに携帯されている端末装置40との間に、ユーザの人体を含む通信路が形成される。この通信路を通じて外部端末通信部24と端末装置40の間でデータ通信が行われる。詳細には、ユーザが操作部材をタッチ操作する際に指や手が電極シート36に近接すると、端末装置40内の認証データがユーザの人体におけるその近接部分から電極シート36に受信されて外部端末通信部24へ入力される。
【0076】
複合機10のユーザ認証処理部25は、操作パネル19で操作部材がタッチ操作を受けると、外部端末通信部24に入力された認証データと、複合機10に記憶されている照合用の認証データとを比較するなどの認証処理によってユーザの識別(特定)および認証を行う(ステップS102)。認証不可の場合には(ステップS103;NO)、CPU11はこのユーザに対する複合機10の使用を許可せず、本動作をエラー終了する(End)。
【0077】
認証許可の場合には(ステップS103;Yes)、CPU11はこのユーザに対する複合機10の使用を許可する。そして、このユーザの情報をRAM16に記憶し(ステップS104)、このユーザに合わせた画面を表示部18に表示して(ステップS105)、複合機10を次の操作待ち状態にする。
【0078】
記憶するユーザの情報は、たとえば、認証ユーザおよびそのユーザの操作に係る動作を管理(認識)するための管理テーブルなどである。たとえば、ユーザが認証されるとRAM16内に管理テーブルが作成され、ユーザの識別情報(ユーザIDなど)と、操作内容を示す情報(画面遷移情報、ジョブ種情報、ジョブ設定情報など)と、ジョブのステータスを示す情報(設定中、編集作業中、実行中など)などが関連付けられて管理テーブルに記憶される。この管理テーブルは、少なくともジョブがキャンセルされるまたはユーザから実行指示の操作を受けて実行し終了するまで保存し、その後、自動的に消去するようにする。
【0079】
この管理テーブルによって、認証ユーザの管理およびそのユーザの操作に係る動作、たとえば、タッチ操作を検出した操作ボタンに応じた画面の表示、ジョブの種別選択、設定、キャンセル、実行(開始および終了)、待機、割り込み、操作の受け付け拒否などの動作が管理されるようになる。
【0080】
表示する画面は、ユーザから受けた操作に応じて切り替える。たとえば、押下されたモード選択ボタン(ハードボタン)に対応するモードの画面や、表示部に表示されている各種の操作ボタン(ソフトボタン)の中でタッチされた操作ボタンに対応する画面などである。
【0081】
続いて、操作パネル19の操作部材に対するタッチ操作を受けると(ステップS106)、そのタッチ操作に伴い外部端末通信部24へ入力された認証データに基づき、ステップS102と同様の認証処理によってユーザの識別および認証を行う(ステップS107)。CPU11は、ここで識別したユーザ、すなわち、新たな操作を行ったユーザと、ステップS104で記憶した情報(ユーザ識別情報など)によって示されるユーザ、すなわち、直前の操作を行ったユーザを比較し、同一のユーザである場合には(ステップS108;Yes)、操作に応じた動作(処理)を行う(ステップS109)。今回の操作によって操作が完了しない場合には(ステップS110;No)、ステップS106へ戻り、次の操作待ち状態にする。
【0082】
また、新たな操作を行ったユーザと直前の操作を行ったユーザが同一でない場合には(ステップS108;No)、前のユーザの管理テーブルを消去するなどして設定内容をリセットし(ステップS111)、ステップS103へ戻る。新たな操作を行ったユーザが認証不可の場合には(ステップS103;NO)、CPU11はこのユーザに対する複合機10の使用を許可せず、エラー終了する(End)。認証許可の場合には(ステップS103;Yes)、CPU11はこのユーザに対する複合機10の使用を許可し、ステップS104以降を同様に行う。この場合は、直前の操作を行っていた認証ユーザとは異なる新たな認証ユーザの管理テーブルが作成され、そのユーザの操作に係る動作が管理されるようになる。
【0083】
また、ステップS110で操作が完了した場合には(ステップS110;Yes)、本動作を終了する(End)。
【0084】
なお、ステップS106における操作部材へのタッチ操作で認証データが入力されない場合には、操作部材に物品などが接触したものと判断し、その操作に対する動作(処理)を行わずに次の操作待ち状態とするようにしてもよい。
【0085】
このように、本実施形態に係る複合機10では、複数の操作部材が設けられた操作パネル19を操作して複合機10を使用するユーザを、人体通信を利用したデータ通信を行って認証(識別)する場合に、その認証を行うためのユーザとのインターフェースとして、操作パネル19の表面に電極シート36を配置するだけの簡素な構成により、操作パネル19の操作部材を操作するユーザの端末装置40と人体通信によるデータ通信を行ってユーザを認証することができる。
【0086】
特に、電界方式の人体通信を用いる場合には、電極シート36に電界センサ(光学式電界センサ35)を組み合わせるだけの簡素な構成で、電極シート36に近接した人体表面の電界に誘起されて電極シート36に発生した電位変化からユーザを認証するためのデータ(認証データ)を電気信号として取り出し、ユーザを認証することができる。
【0087】
詳細には、操作部材を操作する際にユーザの指や手が操作パネル19上の電極シート36に近接すると、電極シート36によって外部端末通信部24(光学式電界センサ35)と端末装置40との間にユーザの人体を含む通信路が形成され、その通信路を通じてユーザの端末装置40からそのユーザの認証データを受信し、ユーザを認証することができる。そして、このような簡素な構成により、認証したユーザによる操作とそれ以外の操作、たとえば、他のユーザによる操作や物品などが操作部材に接触して起こる誤操作などを区別して認識できるようになり、操作の誤認識を防止することができる。また、本実施形態では電極シート36を操作ガイドシートと兼用していることにより、それらを個別に設ける場合に比べて安価に構成することができ、操作パネル19の組み立ても簡単になる。
【0088】
また複合機10では、ユーザがパスワード認証やカード認証、あるいは指紋や静脈といった生体情報認証などの認証操作を別途行わなくても、操作パネル19に対する操作(タッチ操作)の検出と連動してユーザ認証(認証処理)が行われ、ユーザの識別および認証が行われる。そして、複合機10は、この認証結果(識別結果)に応じて、その操作に対する動作を制御する。
【0089】
たとえば、図5で説明したように、認証不可の場合は操作に応じた動作を行わず(操作を受け付けず)、認証許可の場合は操作に応じた動作を行う(操作を受け付ける)、前の操作と新たな操作の操作間でユーザが一致するか否か、すなわち、同一のユーザが操作を継続しているか否か/ユーザが入れ替わったか否かにより、操作の受否や新たなユーザに対応した動作を行う、などの制御が可能になる。また、管理中の動作を一旦終了させなくても新たな操作を行うユーザを識別(認識)できるようになり、その操作に対する動作を制御することができる。
【0090】
これにより、特別な操作を行って、操作間でのユーザの認証状態(認識状態)を切り替えることなく、受けた操作のユーザに対応した動作を行うことができる。ユーザ認証においては、従来のような認証に係る特別な操作(認証操作や認証解除操作など)が不要であると共に、認証ユーザ以外の操作を受け付けないようにしたり、認証ユーザ毎に動作を切り替えたりする(操作の検出と連動した認証状態および動作の自動切り替え)などが可能となる。これにより、ユーザ認証における操作性とセキュリティ性を向上しつつ、受けた操作のユーザに対応した動作が行えることで利便性が向上する。
【0091】
特に、図5で説明したようなジョブの設定に係る動作の管理中にユーザが変わった場合は、変わる前のユーザに係る管理中のジョブの設定が無効にされて新たなユーザに係る動作に切り替わり、その新たな動作の管理が開始されるようになる。このようなユーザの入れ替わりにおいて、入れ替わる前に管理していた動作のセキュリティを確保しつつ、新たなユーザに対する操作性が高められる。
【0092】
(電極配置例)
図6は、人体通信におけるアンテナとしての機能を有する電極シートを複合機の周辺に配置した場合の構成例を示している。
【0093】
本例の複合機50は、装置本体50aの前面上部における右側に操作パネル51が設けられている。図2で説明した操作パネル19と同様に、この操作パネル51にもタッチパネルや各種の操作ボタンなどの複数の操作部材が設けられている。ただし、操作パネル51には図2で説明した電極シートおよび光学式電界センサは設けられておらず、光学式電界センサ52は、装置本体50aの下部に設けられている。さらに複合機50は、2枚の電極シート53、54と、これらに接続された導電ケーブル55とを備えている。
【0094】
一方の電極シート53は、複合機50が設置される設置エリア56のカーペットの下や床材(フロアパネル)の下などに埋設されている。本例では、電極シート53は、複合機50(装置本体50a)の底面よりも一回り大きな矩形状の設置エリア56における左側領域に配置されている。設置エリア56における右側領域は、床材などがアース接続されたGNDエリア57とされており、電極シート53はこのGNDエリア57と絶縁されている。
【0095】
複合機50は、右側の脚がGNDエリア57の床上に接地し、左側の脚が電極シート53の埋設されている床上に接地して、設置エリア56内に設置されており、光学式電界センサ52が電極シート53に近接配置されている。
【0096】
光学式電界センサ52は、前述の複合機10と同様に、電界方式の人体通信を行うための通信部(受信部)としての機能を果たし、本例では、電極シート53から脚を介して装置本体50aに伝播する電界の電位変化から電気信号を取り出す機能を果たす。この光学式電界センサ52は、装置本体50aにおける任意の位置に配置することができる。ただし、電極シート53から脚(プラスチック製のキャスターなど)を介して装置本体50aに伝播する電界の微弱な電位を精度良く検出するには、脚の近く(本例の場合は、電極シート53に近接する左側の脚の近傍)に配置することが好ましい。
【0097】
電極シート53は、その脚に対応する位置(脚に近接する位置)に配置することが望ましい。本例の電極シート53はその脚に対応する位置を含む大きさおよび配置とされており、電界の伝播ロスを抑えて電界を脚に効率よく伝播できる構成となっている。
【0098】
この電極シート53と導電ケーブル55で接続されている他方の電極シート54は、複合機50の認証エリア58における床下(カーペットや床材などの下)に埋設されている。導電ケーブル55も同様に、電極シート53と電極シート54の間の床下などに埋設されている。
【0099】
認証エリアとは、ユーザが複合機50の操作パネル51を操作する際に立つ位置を含むエリアである。たとえば、複合機50の操作パネル51から前方へ所定距離(たとえば、数十センチメートル)だけ離れた位置を含む所定の大きさ(たとえば、人間一人が立った状態で両足が乗る大きさ)のエリアなどが認証エリアとされる。電極シート54は、この認証エリア58内に配置されている。本例では、電極シート54は認証エリア58とほぼ同じ大きさとなっている。また、電極シート54が配置されている認証エリア58の周囲は、床材などがアース接続されたGNDエリア59となっており、電極シート54はこのGNDエリア59と絶縁されている。
【0100】
複合機50は、操作パネル51の操作部材に対する操作(タッチ操作)を受けると、図5で説明した制御動作と同様の制御動作を行うようになっている。すなわち、操作を受けるたびに認証処理(ステップS102/S107)を行い、認証結果(ユーザの識別結果)に応じて、操作に対する動作を制御するようになっている。
【0101】
なお、本例の構成ではユーザが認証エリア58に立つだけでユーザの識別および認証が可能である。すなわち、操作パネル51を操作しているユーザに加えて、操作パネル51を操作しようとするユーザなども含む、操作に係るユーザを識別および認証することができる。このユーザ認証(認証処理)を操作の検出と連動して行うか、または、操作の検出と連動せずに行うか、たとえば、認証エリア58内のユーザ検知後(ユーザ認証後)は常時または所定時間間隔で認証処理を行うなどは、必要に応じて設定変更できるように構成してもよい。
【0102】
これにより、本例の複合機50では、端末装置40を携帯するユーザが複合機50を使用するために操作パネル51の前に立つと、認証エリア58内に位置する足の裏(靴底)で電極シート54上の床を踏み付け、足の裏が電極シート54に近接配置されるようになる。そして、電極シート54、および、電極シート54と導電ケーブル55で接続され複合機50の光学式電界センサ52に近接配置された電極シート53によって、光学式電界センサ52と端末装置40との間にユーザの人体を含む通信路が形成され、複合機50はその通信路を通じてユーザの端末装置40からそのユーザの認証データを受信し、ユーザを識別および認証することができる。
【0103】
このように、本例の複合機50では、装置本体50aの周辺における所定の認証エリア58に電極シート54を配置する、具体的には操作パネル51を操作する際にユーザが立つ位置に電極シート54を配置するだけの簡素な構成で、操作パネル51を操作するユーザの端末装置40と人体通信によるデータ通信を行ってユーザを識別および認証できるようになる。
【0104】
また、複合機50の装置本体50aに設けた光学式電界センサ52を導電ケーブル55に直接接続せず、床下などに埋設した電極シート53を介して通信可能に接続する構成としていることにより、導電ケーブル55も床下などに埋設することができる。これにより、複合機50(装置本体50a)を移動させる場合に、誤って導電ケーブル55を踏んだり引っ掛けたりすることによる導電ケーブル55の損傷なども防止することができる。
【0105】
また、この構成を利用して複合機50の盗難防止などを行うことも可能である。たとえば、電極シート53に光学式電界センサ52と常時または所定時間間隔などで通信を行う防犯システムを接続し、複合機50の移動に伴い光学式電界センサ52との通信が不可になったことを防犯システムが検知すると警備会社に通報するなどの構成によって、複合機50の盗難防止を図ることも可能である。
【0106】
なお、本例では複合機50を操作するユーザの人体(足の裏)に近接される位置に配置した電極シート54と、複合機50の装置本体50aに設けた光学式電界センサ52とを、上述したように導電ケーブル55および設置エリア56に配置した電極シート53を介して通信可能に接続する構成としているが、電極シート54と光学式電界センサ52を導電ケーブル55で直接接続するように構成してもよい。たとえば、導電ケーブル55の先端にコネクタを設けて光学式電界センサ52に着脱可能に接続できる構成などとしてもよい。
【0107】
(割り込み操作に対する制御動作例)
図7は、前述した複合機10や複合機50による割り込み操作に対する制御動作を示している。割り込み操作は、たとえば、複合機に保存されているファイルのプリントジョブや原稿のコピージョブの実行中にそのジョブを一時中断させて他のプリントジョブやコピージョブを割り込み実行させるなどの操作である。ここでは、ユーザBのジョブ実行中にユーザAが割り込み操作を行う場合で説明する。
【0108】
また、割り込み操作を受け付けるか否か、すなわち、先行ジョブと割り込みジョブのいずれを優先させるかは、ユーザに対して予め決められている優先度を比較し、その比較結果に基づいて決定するようにしている。なお、優先度が同じ場合には先行ジョブを優先させるようにしている。優先度は、たとえば、役職、所属先(部署、グループなど)といったユーザの属性、あるいは、ユーザ毎に定められた権限などに基づいて決められる。ここでは、優先度として権限を用いる場合を例に説明する。
【0109】
また、複合機10と複合機50ではいずれも同様に動作できるが、ここでは複合機10を例に説明する。
【0110】
複合機10(または複合機50)は、ユーザから操作パネル19へのタッチ操作(操作パネル19の操作部材に対するタッチ操作)を受けるのに伴い(ステップS121)、ユーザに携帯されている端末装置40からユーザの人体を含む通信路を通じて認証データを受信し、その認証データに基づく認証処理を行う(ステップS122)。認証不可の場合には(ステップS123;NO)、複合機10はこのユーザに対する使用を許可せずに本動作を終了する(End)。
【0111】
認証許可の場合(ステップS123;Yes)、たとえば、ここでユーザBを認証した場合には、複合機10はユーザBに対する使用を許可する。続いて、複合機10はユーザBの情報、たとえば、ユーザBの操作に係る動作を管理するための管理テーブルなどを記憶し(ステップS124)、ユーザBに合わせた画面、たとえば、ジョブ設定画面などを表示部18に表示する(ステップS125)。
【0112】
ユーザBからジョブの設定および実行の操作(スタートボタン32の押下操作)を受けると、複合機10はそのジョブを実行する(ステップS126)。複合機10は、このジョブの実行中にユーザB以外のユーザによる操作パネル19へのタッチ操作を受けるかを監視し(ステップS127)、そのタッチ操作を受けることなく(ステップS127;No)、ユーザBのジョブを終了すると(ステップS128;Yes)、本動作を終了する(End)。
【0113】
ユーザBのジョブを終了する前に(ステップS128;No)、上記のタッチ操作を受けた場合(ステップS127;Yes)、たとえば、ここでユーザAからタッチ操作を受けた場合には、複合機10はユーザAの情報、たとえば、ユーザAの操作に係る動作を管理するための管理テーブルなどを記憶し(ステップS129)、ユーザBのジョブが依然として実行中であるか否かを確認する(ステップS130)。たとえば、ユーザAによるタッチ操作の直後にユーザBのジョブが終了した場合には(ステップS130;No)、ステップS133へ移行する。
【0114】
ユーザBのジョブが実行中である場合には(ステップS130;Yes)、複合機10はユーザAの権限とユーザBの権限を比較する(ステップS131)。ユーザAの権限がユーザBの権限と同じかそれよりも低い場合には(ステップS131;No)、ユーザAのタッチ操作に応じた処理(制御)を行わずにステップS127へ戻る。
【0115】
ユーザAの権限がユーザBの権限よりも高い場合には(ステップS131;Yes)、複合機10はユーザAによる割り込み制御であると認識し、ユーザBの制御からユーザAの制御へ切り替える。詳細には、ユーザBのジョブを中断し(ステップS132)、ユーザAに合わせた画面、たとえば、ジョブ設定画面や適切な割り込み画面などを表示部18に表示する(ステップS133)。ユーザAからジョブの設定および実行の操作(スタートボタン32の押下操作による割り込みの実行指示操作)を受けると、複合機10はそのジョブを実行し(ステップS134)、そのジョブの終了を監視する(ステップS135;No)。
【0116】
ユーザAのジョブを終了すると(ステップS135;Yes)、中断しているジョブがあるか否かを確認する(ステップS136)。中断しているジョブがある場合(ステップS136;Yes)、たとえば、ユーザBのジョブを中断している場合には、複合機10はそのユーザBのジョブを再開し(ステップS137)、ステップS127へ戻る。中断しているジョブがない場合には(ステップS136;No)、本動作を終了する(End)。
【0117】
なお、上記の割り込み操作による先行ジョブの中断制御は、割り込みジョブの実行指示操作(スタートボタン32の押下操作)のタイミングで行うようしてもよい。
【0118】
このように、複合機10や複合機50では、ユーザによる操作パネル19へのタッチ操作毎に人体通信を利用したユーザ認証を行い、ユーザの携帯する端末装置40から受信した認証データに基づいてユーザを識別することができるので、本例による割り込み操作に対する制御動作のように、新たに受けた操作に係る認証ユーザ(ユーザA)と管理中の動作に係るユーザ(ユーザB)とが一致しない場合、すなわち、管理中の動作に係るユーザに対して新たな認証ユーザが変わった場合は、両ユーザの優先度を比較した結果に基づいて一方のユーザに係る動作を優先実行することができる。たとえば、競合する複数の動作などをユーザの優先度に基づいて自動で切り替えられるようになる。
【0119】
詳細には、上述したように、優先度の低いユーザに係る実行中のジョブを中断して、優先度の高い新たな認証ユーザに係るジョブを先に行う割り込み制御や、優先度の高いユーザに係る実行中のジョブを継続して、優先度の低い新たな認証ユーザに係るジョブを待機させる待機制御などを自動で行うことができる。
【0120】
たとえば、あるユーザによるコピーやプリントの動作中(ジョブ実行中)に別のユーザが割り込みコピーなどを行いたい場合に、一般には「割り込みコピー」ボタンなどの特定のボタンを押下する操作が必要であるが、本例であれば操作パネルにおけるタッチパネルや操作ボタンを押下したタイミングでユーザ認証を行い、現在コピーやプリントを行っているユーザとは別のユーザによる操作であるか否かを認識できる。この操作パネルに対するタッチ操作のみで「割り込み操作」であることを認識できることにより、直ちに適切な割り込み画面などへ遷移することができる。
【0121】
このように、ユーザによる操作パネル19へのタッチ操作毎に人体通信を利用したユーザ認証を行ってユーザを識別し、管理中の動作と新たな操作に対する動作の一方をユーザの優先度に基づいて自動で優先実行できることにより、操作性や利便性が向上する。
【0122】
(複数操作部構成例1)
図8は、人体通信におけるアンテナとしての機能を有する電極シートが表面に配置された操作パネルを複合機に複数設けた場合の構成例を示している。
【0123】
前述した操作パネルに対する操作に伴い人体通信を利用してユーザ認証を行う複合機10などでは、操作毎にユーザを識別できるため、たとえば、複数の操作パネルで同じタイミングに受けた各々の操作などに対し、各々ユーザ認証を行って各々のユーザを識別し、各々の操作に対する各々の動作(処理)が並行に実行できる(競合しない)場合は、その各々の動作を並行実行するようなことも可能になる。本例では、複合機が複数の操作パネルによってそのような同時操作(並行操作)に対する個別のユーザ認証(個別認証/並行認証)を行い、並行実行可能な複数の動作を同時制御(並行制御)する構成について説明する。
【0124】
本例の複合機60は、装置本体60aに対し離間して配置され、外付け操作部として構成されている大型の第1操作パネル62と、装置本体60aに直接取り付けられ、本体操作部として構成されている小型の第2操作パネル64との2つの操作パネル(操作部)を備えている。また複合機60は、この2つの操作パネルで同時操作を受け付ける機能、同時操作に対して個別認証を行う機能、同時操作に対する各動作が並行に実行できる場合はその各動作の同時制御を行う機能を備えている。
【0125】
第1操作パネル62は、パネル本体の表面に操作部材であるタッチパネルが設けられている。このタッチパネルは、パネル本体の表面よりも一回り小さい大型の液晶ディスプレイなどで構成された表示部の表面(画面上)に設けられている。さらにパネル本体の表面には、タッチパネルの周囲に枠状(額縁状)の電極シートが配置されており、この電極シートは図2の操作パネル19と同様に絶縁カバーなどによって覆われている。またパネル本体には、電極シートに接続された光学式電界センサも同様に設けられている。
【0126】
この第1操作パネル62は、複合機60の装置本体60aに取り付けられた支持アーム65を介して支持されている。たとえば、図示のように、支持アーム65は装置本体60aにおける背面上部の右側に取り付けられており、第1操作パネル62はこの支持アーム65に支持されて装置本体60aの後側における右上方に配置されている。また第1操作パネル62は、たとえば、複合機60に保存されている各種のファイルをプレビュー表示したり、プレビュー表示したファイルを編集したり、ファイルを保存やプリントしたりする各種の操作を受け付ける機能を備えている。
【0127】
第2操作パネル64は、パネル本体の表面に操作部材であるタッチパネルおよび複数の操作ボタンが設けられている。第2操作パネル64では、小型の液晶ディスプレイなどで構成された表示部の表面(画面上)にタッチパネルが設けられている。複数の操作ボタンは、モード選択ボタン、スタートボタン、ストップボタン、テンキーなどである。さらにパネル本体の表面には、操作部材の周囲に電極シートが配置されており、この電極シートは図2の操作パネル19と同様に絶縁カバーなどによって覆われている。またパネル本体には、電極シートに接続された光学式電界センサも同様に設けられている。
【0128】
この第2操作パネル64は、複合機60における装置本体60aの前面上部における右側に配置されている。
【0129】
図9は、複合機60の概略構成を示すブロック図である。複合機60は、図3に示した複合機10の構成に対し、表示部18が第1表示部61および第2表示部63に置き換えられ、操作部19(操作パネル19)が第1操作部62(第1操作パネル62)および第2操作部64(第2操作パネル)に置き換えられた構成となっている。他の各部は、複合機10における同符号の各部と同じ構成である。
【0130】
このように、本例の複合機60では、2つの操作パネルを備えると共に、それぞれの操作パネルを操作するユーザを同時かつ個別に識別および認証することができるため、2人のユーザから同時かつ個別に操作を受け付け、その各々の操作に対する各々の動作を同時制御できる。たとえば、第1操作パネル62では一方のユーザから複合機60に保存されているドキュメントファイルや画像ファイルのプレビュー表示や編集の操作などを受け付け、第2操作パネル64では他方のユーザからコピーやファクシミリ送信の操作などを受け付け、各動作を同時に制御することができる。このように、複数(2人)のユーザによる同時操作(並行操作)が行えることで操作効率や利便性が高められる。
【0131】
(複数操作部構成例2)
図10は、図8で説明した大型の操作パネル(外付け操作部)を複合機に複数設けた場合の構成例を示している。
【0132】
本例の複合機70は、外付け操作部として構成された上述の第1操作パネル62と同じ構成の2つの操作パネル、詳細には第1操作パネル(第1操作部)72および第2操作パネル(第2操作部)74を備えており、装置本体70aの前面上部などに操作パネルが設けられていない構成となっている。また複合機70は、上述した複合機60と同様に、上記の2つの操作パネルで同時操作を受け付ける機能、同時操作に対して個別認証を行う機能、同時操作に対する各動作が並行に実行できる場合はその各動作の同時制御を行う機能を備えている。
【0133】
第1操作パネル72は、図8で説明したように、装置本体70aにおける背面上部の右側に取り付けられた支持アーム75に支持されて装置本体70aの後側における右上方に配置されている。第2操作パネル74は、図10に示すように、装置本体70aにおける背面上部の左側に取り付けられた支持アーム76に支持されて装置本体70aの後側における左上方に配置されている。
【0134】
このように、本例の複合機70では、2つの操作パネルが左右に離間して配置されていることにより、2人のユーザが離れて操作できるようになる。これにより、2人のユーザがこの2つの操作パネルで同時操作(並行操作)を行う際の操作性が良好になる。
【0135】
(複数操作部構成例3)
図11は、図8で説明した大型の操作パネルを複合機に無線で接続する場合の構成例を示している。
【0136】
本例の複合機80は、装置本体80aと分離構成にされて装置本体80aに無線接続される大型の第1操作パネル(第1操作部/無線操作部)82と、装置本体80aの前面上部に設けられた第2操作パネル(第2操作部/本体操作部)84とを備えている。また複合機80は、上述した複合機60、70と同様に、この2つの操作パネルで同時操作を受け付ける機能、同時操作に対して個別認証を行う機能、同時操作に対する各動作が並行に実行できる場合はその各動作の同時制御を行う機能を備えている。
【0137】
装置本体80aには操作パネル無線通信部85が設けられており、第1操作パネル82はこの操作パネル無線通信部85と無線通信を行う本体無線通信部86を備えている。なお、図11ではこれらの無線通信部におけるアンテナ部分のみを示している。
【0138】
第2操作パネル84は、たとえば、図2で説明した操作パネル19と同じ構成である。装置本体80a側の操作パネルは、この他に図8で説明した第2操作パネル64などで構成するようにしてもよい。
【0139】
このように、本例の複合機80では、2つの操作パネルのうちの一方が装置本体80aに無線で接続されることにより、図10で説明した複合機70と同様に、2人のユーザが離れて操作できるようになり、この2つの操作パネルで同時操作(並行操作)を行う際の操作性が良好になる。特に本例では、第1操作パネル82は装置本体80aとの通信可能範囲内で場所を選ばずに操作できるため、利便性が良好になる。
【0140】
なお、図8〜図11では操作パネルの数を2つとした場合で説明したが、3つ以上としてもよい。複合機は、この3つ以上の操作パネルで同時操作を受け付ける機能、それらの同時操作に対して個別認証を行う機能、それらの同時操作に対する各動作のうちの2つ以上の動作が並行に実行できる場合はその動作の同時制御を行う機能を備えるように構成すればよい。また、装置本体に設ける操作パネルなどは、タッチパネルおよび表示部の無い簡素な構成の操作パネルとしてもよい。また、装置本体に操作パネルを設けずに、全ての操作パネルを装置本体と無線で接続するように構成してもよい。
【0141】
上記の3つ以上の操作パネルによる同時操作の具体例としては、装置本体の操作パネルでスキャン動作やプリント動作を伴う操作を行い、外付けまたは無線接続される複数の操作パネル(大型操作パネル)でスキャン動作やプリント動作を伴わない操作、たとえば、複合機に保存されているドキュメントファイルのプレビュー表示や編集の操作などを同時に行うようなケースが挙げられる。これにより、特に複合機1台当たりに割り当てられるユーザの人数が多くなる大規模なオフィスなどにおいては、複合機の稼働率が高められ、生産性(処理効率)を向上できるようになる。
【0142】
(複数操作部・複数ユーザ個別認証/同時操作に対する制御動作例)
図12〜図14は、上記例の複数の操作部(操作パネル)を備えた複合機60、70、80などにおける複数ユーザによる個別認証および同時操作に対する制御動作を示している。ここでは、ユーザAが第1操作部で複合機に保存されているドキュメントファイルのプレビュー表示や編集を経てプリントの操作を行い、ユーザBが第2操作部でコピーの操作を行う場合で説明する。
【0143】
また、この2種類の同時操作による各動作では印刷出力の動作が並行に実行できないことになるが(排他制御)、いずれを優先させるかは、図7で説明した割り込み操作に対する制御動作と同様に、ユーザに対して予め決められている優先度(権限)を比較し、その比較結果に基づいて決定するようにしており、優先度が同じ場合には先行ジョブを優先させるようにしている。
【0144】
また、複合機60、70、80ではいずれも同様に動作できるが、ここでは複合機60を例に説明する。
【0145】
複合機60(または複合機70、80)は、ユーザから第1操作部62へのタッチ操作(タッチパネルに対するタッチ操作)を受けるのに伴い(ステップS141)、ユーザに携帯されている端末装置40からユーザの人体を含む通信路を通じて認証データを受信し、その認証データに基づく認証処理を行う(ステップS142)。認証不可の場合には(ステップS143;NO)、複合機60はこのユーザに対する使用を許可せずに本動作を終了する(End)。
【0146】
認証許可の場合(ステップS143;Yes)、たとえば、ここでユーザAを認証した場合には、複合機60はユーザAに対する使用を許可する。続いて、複合機60はユーザAの情報(ユーザA用の動作・管理テーブルなど)を記憶し(ステップS144)、ユーザAに合わせた画面(プレビュー表示・編集画面など)を第1表示部61に表示して(ステップS145)、第1操作部62によりユーザAから各種の操作、ここでは、複合機60に保存されているドキュメントファイルのプレビュー表示や編集を受ける(ステップS146)。
【0147】
複合機60は、このユーザAから第1操作部62への操作を受けている最中に第2操作部64へのタッチ操作を受けるかを監視し(ステップS147)、そのタッチ操作を受けることなく(ステップS147;No)、第1操作部62でユーザAからジョブの実行操作、ここではドキュメントファイルのプリント指示操作を受けると(ステップS148;Yes)、複合機60はそのジョブを実行し(ステップS149)、本動作を終了する(End)。
【0148】
ユーザAによる操作の受け付け中にユーザA以外のユーザによるタッチ操作を受けた場合(ステップS147;Yes)、たとえば、ここでユーザBから第2操作部64へのタッチ操作を受けた場合には、複合機60はユーザBの情報(ユーザB用の動作・管理テーブルなど)を記憶し(ステップS150)、ユーザBの権限とユーザAの権限を比較する(ステップS151)。ユーザBの権限がユーザAの権限と同じかそれよりも低い場合には(ステップS151;No)、図13のステップS152へ移行する。ユーザBの権限がユーザAの権限よりも高い場合には(ステップS151;Yes)、図14のステップS163へ移行する。
【0149】
図13のステップS152では、複合機60はユーザBに合わせた画面(コピー設定画面など)を第2表示部63に表示し(ステップS152)、第2操作部64によりユーザBから各種の操作、ここでは、コピーに関する各種の設定の操作を受ける(ステップS153〜ステップS154;No)。続いて、複合機60は第2操作部64でユーザBからジョブの実行操作(スタートボタンの押下によるコピー指示操作)を受けると(ステップS154;Yes)、ユーザAのジョブ(ドキュメントファイルのプリントジョブ)を実行している場合には(ステップS155;Yes)、ユーザBから指示されたジョブを待機し(ステップS156)、ユーザAのジョブの実行終了後にその待機させていたユーザBのジョブを実行し(ステップS157)、本動作を終了する(End)。
【0150】
ユーザAのジョブを実行していない場合には(ステップS155;No)、複合機60はユーザBから指示されたジョブを開始し(ステップS158)、このユーザBのジョブの実行中に第1操作部62でユーザAからジョブの実行操作を受けるかを監視する(ステップS159;No〜ステップS162;No)。そして、ユーザAからその操作を受けることなく(ステップS159;No)、ユーザBのジョブを終了すると(ステップS162;Yes)、本動作を終了する(End)。
【0151】
ユーザBのジョブの実行中にユーザAから上記の操作を受けた場合には(ステップS159;Yes)、複合機60はユーザBのジョブを中断し、ユーザAから指示されたジョブを開始する(ステップS160)。複合機60は、ユーザAのジョブを終了すると、中断していたユーザBのジョブを再開し(ステップS161)、このユーザBのジョブの再開後に再び第1操作部62でユーザAからジョブの実行操作を受けるかを監視する(ステップS159;No〜ステップS162;No)。そして、ユーザAからその操作を受けることなく(ステップS159;No)、ユーザBのジョブを終了すると(ステップS162;Yes)、本動作を終了する(End)。
【0152】
図14のステップS163では、複合機60はユーザBに合わせた画面(コピー設定画面など)を第2表示部63に表示し(ステップS163)、第2操作部64によりユーザBから各種の操作、ここでは、コピーに関する各種の設定の操作を受ける(ステップS165〜ステップS166;No)。
【0153】
なお、第1操作部(第1表示部)が装置本体に無線で接続される構成の場合には(図11参照)、ステップS163とステップS165の間で、ユーザAが現在使用しているその無線接続型の第1表示部に、他のユーザ(この場合はユーザB)による操作が開始されたことを警告表示する(ステップS164)。これにより、ユーザAが複合機60(装置本体60a)から離れた場所で第1操作部を操作している場合でも、他のユーザが複合機60を同時に使用していることが把握できる。また、第1操作部が無線接続型でない場合にも、この警告表示を行うようにしてもよい。
【0154】
続いて、複合機60は第2操作部64でユーザBからジョブの実行操作(スタートボタンの押下によるコピー指示操作)を受けると(ステップS166;Yes)、ユーザAのジョブ(ドキュメントファイルのプリントジョブ)を実行している場合には(ステップS167;Yes)、そのユーザAのジョブを中断し、ユーザBから指示されたジョブを開始する(ステップS168)。複合機60は、ユーザBのジョブを終了すると、中断していたユーザAのジョブを再開し(ステップS169)、そのユーザAのジョブを終了すると、本動作を終了する(End)。
【0155】
ユーザAのジョブを実行していない場合には(ステップS167;No)、複合機60はユーザBから指示されたジョブを開始し(ステップS170)、このユーザBのジョブの実行中に第1操作部62でユーザAからジョブの実行操作を受けるかを監視する(ステップS171;No〜ステップS172;No)。そして、ユーザAからその操作を受けることなく(ステップS171;No)、ユーザBのジョブを終了すると(ステップS172;Yes)、本動作を終了する(End)。
【0156】
ユーザBのジョブの実行中にユーザAから上記の操作を受けた場合には(ステップS171;Yes)、複合機60はユーザAから指示されたジョブを待機し(ステップS173)、ユーザBのジョブの実行終了後に(ステップS174;Yes)、その待機させていたユーザAのジョブを実行し(ステップS175)、本動作を終了する(End)。
【0157】
なお、ここではユーザAとユーザBの画面表示や操作自体は並行に実行できる場合を例に説明したが、並行に実行できない場合は、優先度(権限)の比較結果に基づいて画面の表示制御や操作の受付制御を切り替えるようにしてもよい。
【0158】
たとえば、ユーザAの優先度の方が高い場合には、図13のステップS152では、ユーザBが使用する第2表示部にユーザAと競合する画面は表示せず、代りに、優先度の高いユーザ(ユーザA)がその画面を使用しているため表示不可である旨のメッセージ(報知画面)や他の画面などを表示するようにしてもよい。また、ユーザBの第2表示部にユーザAと競合する画面は表示するが、ステップS153ではユーザAと競合する操作をユーザBの第2操作部で受け付けず、第2表示部に、優先度の高いユーザ(ユーザA)が競合する操作を行っているため操作不可である旨のメッセージなどを併せて表示するようにしてもよい。また、このような画面の表示待ち状態や操作待ち状態でユーザAによる競合画面の使用や競合操作が終了すると、その待ち状態を解除して第2表示部にユーザBに合わせた画面を表示したり、第2操作部でユーザBから操作を受け付けたりするようにしてもよい。
【0159】
逆にユーザBの優先度の方が高い場合には、図14のステップS164では、ユーザAが使用する第1表示部に警告表示として、たとえば、優先度の高いユーザ(ユーザB)がその競合する画面の使用を開始したため表示不可である旨、あるいは、競合する操作を開始したため操作不可である旨のメッセージなどを表示した後に、その競合画面を消去したり別の画面へ遷移したりして保留状態とするようにしてもよい。また、このような保留状態でユーザBによる競合画面の使用や競合操作が終了すると、その保留状態を解除してユーザBから解放された画面を第1表示部に再表示したり、中断した操作を第1操作部でユーザAから継続して受け付けたりするようにしてもよい。
【0160】
このように、複合機60や複合機70、80では、複数のユーザによる複数の操作パネル(操作部)へのタッチ操作毎に人体通信を利用したユーザ認証を個別に行い、各ユーザの携帯する端末装置40から受信した認証データに基づいて各ユーザとその各操作を識別することができるので、本例による制御動作のように、識別した複数のユーザ(ユーザAおよびユーザB)の各々の操作を同時に受け付けることができる(同時操作)。また、その同時操作による各動作が並行に実行できない場合にはその各動作の優先順位を、その複数のユーザの各々に対して予め決められている優先度(権限)を比較した結果に基づいて決定し、その優先順位に従って各動作を制御することができる。このような複数操作部による複数ユーザの同時操作が行えることで操作効率や利便性が高められる。また、複合機の稼働率を高められて生産性を向上することができる。
【0161】
(複数操作部・複数ユーザ同時認証/連携操作に対する制御動作例)
本体および外付けなどの複数の操作部(操作パネル)を備える複合機などでは、上述した複数ユーザの個別認証および同時操作に対する動作以外の制御も可能である。たとえば、複数ユーザによる同時認証を伴う操作に対する動作の制御、詳細には複数ユーザが連携して操作を行うべき所定の動作に対する制御(連携制御)なども可能であり、ここではその制御動作について説明する。
【0162】
2人のユーザを同時認証する場合は、たとえば、一方のユーザが複合機の一方の操作パネル上における操作部材以外の任意の箇所に触れることによりそのユーザを認証できるので、その状態で他方のユーザが他方の操作パネル上の操作部材を操作しつつユーザ認証を行った上で操作を実施するなどが可能となる。なお、操作パネル(操作部)が1つのみの複合機でこの複数ユーザによる所定の動作に対する制御を行うことも可能である。その場合は、複数のユーザが操作パネルの近くで接近して操作性が低下することを回避するために、操作パネルとは別の箇所、たとえば、装置本体の側面部などに、タッチ操作を受けてユーザの端末装置40と人体通信を行うための電極シートおよび電界センサを配置し、上記の一方のユーザはこの特定箇所へのタッチ操作によって認証するように構成してもよい。
【0163】
図15は、複数の操作部を備えた複合機における複数ユーザの同時認証および連携操作(共同作業)に対する制御動作を示している。ここでは、ユーザAが操作承認者、ユーザBが操作実施者であり、ユーザBがユーザAの認証状態および監視の元で、操作部から認証を伴う操作(データ入力、設定、ジョブ実行など)を行い、ユーザAがその操作の内容を最後まで監視することで承認し、ユーザBが操作を完了させるといった連携操作を行う場合で説明する。このような連携操作は、たとえば、ファクシミリの番号間違いや相手先の番号変更などによって機密情報を誤送信してしまうことを防止するため承認なしでは送信できないファクシミリの誤送信防止、あるいは、承認なしでは出力できない機密文書のプリントなどにおける操作が挙げられる。また、ここでは複合機60を例に説明する。
【0164】
複合機60は、ユーザから操作部(操作部材以外の任意の箇所)へのタッチ操作を受けるのに伴い(ステップS181)、ユーザに携帯されている端末装置40からユーザの人体を含む通信路を通じて認証データを受信し、その認証データに基づく認証処理を行う(ステップS182)。認証不可の場合には(ステップS183;NO)、複合機60はこのユーザに対する使用を許可せずに本動作を終了する(End)。
【0165】
認証許可の場合(ステップS183;Yes)、たとえば、ここで操作承認者であるユーザAを一方の操作部(たとえば、第1操作部)へのタッチ操作で認証した場合には、複合機60はユーザAの情報(ユーザA用の動作・管理テーブルなど)を記憶する(ステップS184)。続いて、操作実施者であるユーザBによる他方の操作部(たとえば、第2操作部)へのタッチ操作を受けるかを監視し、そのタッチ操作を受けない場合には(ステップS185;No)、たとえば、所定時間が経過してもユーザBによる操作部へのタッチ操作を検出できない場合には、本動作を終了する(End)。
【0166】
ユーザBによる操作部へのタッチ操作を受けた場合には(ステップS185;Yes)、複合機60はユーザBの情報(ユーザB用の動作・管理テーブルなど)を記憶し(ステップS186)、操作部によりユーザBからユーザAの承認が必要となる操作を受ける(ステップS187)。以後、複合機60は、ユーザBの操作が完了するまでユーザAに対して一定時間毎に認証処理(ユーザ認証)を実施する(ステップS188→ステップS189;Yes→ステップS189;No→ステップS187)。
【0167】
ユーザBの操作が完了する前にユーザAを認証できなくなった場合には(ステップS189;No)、すなわち、ユーザAが一方の操作部から手を離したことでユーザAの認証データを受信できなくなった場合には、複合機60は、他方の操作部によるユーザBからの操作の受け付けを一時中止し、所定時間が経過する前にユーザAを再び認証できるかを監視する。
【0168】
所定時間内にユーザAを認証できた場合、すなわち、ユーザAによる一方の操作部へのタッチ操作を検出できた場合には(ステップS194;Yes)、複合機60は、ユーザAを認証できなくなったタイミングの直前にユーザBから受けた操作をキャンセルし(ステップS195)、ステップS187へ戻る。所定時間内にユーザAを認証できなかった場合、すなわち、ユーザAによる一方の操作部へのタッチ操作を検出できなかった場合には(ステップS194;No)、複合機60は、ユーザBから受けた全ての操作をキャンセルし(ステップS196)、本動作を終了する(End)。
【0169】
また複合機60は、他方の操作部でユーザBからジョブの実行操作を受けると(ステップS190;Yes)、ユーザAに対して認証処理(ユーザ認証)を行い、このジョブの実行操作時点でユーザAを認証できるか確認する(ステップS191)。ユーザAを認証できない場合には(ステップS192;No)、ステップS194へ移行し、所定時間内にユーザAを認証できれば(ステップS194;Yes)、ユーザBから最後に受けたジョブの実行操作のみをキャンセルして(ステップS195)、ステップS187へ戻る。所定時間内にユーザAを認証できなければ(ステップS194;No)、複合機60は、ユーザBから受けた全ての操作をキャンセルし(ステップS196)、本動作を終了する(End)。
【0170】
また、ユーザBからジョブの実行操作を受けた時点でユーザAを認証できた場合には(ステップS192;Yes)、ユーザBから指示されたジョブを実行し(ステップS193)、本動作を終了する(End)。
【0171】
なお、ここでは操作承認者(ユーザA)が操作実施者(ユーザB)の操作内容を常時かつ最後まで監視して承認する場合を例に説明したが(同時認証/連携操作)、このような承認方法の他に、操作承認者が操作実施者の操作内容(設定状態や入力データなど)を最後に確認して承認(承認操作を実施)するような承認方法としてもよい(個別認証/連携操作)。
【0172】
このように、本例の制御動作では、複数ユーザが連携して操作を行うべき所定の動作に関して、その連携した操作が行われているか否かが、操作部に対する操作の検出と連動してユーザ認証を行った結果(ユーザの識別結果)に基づいて検査されるようになる。このような所定の動作において、複数ユーザによる連携操作を検査できることにより、一人の操作者による操作ミスや不正な単独操作などを排除できる。また、このような連携操作による所定の動作を実行できることにより、複数ユーザによる操作のバリエーションが広がって利便性が高められる。
【0173】
また、本例の同時認証/連携操作では、複合機は操作承認者が操作実施者の操作内容を常時監視していることを認識するために、操作承認者が自機(操作部)に触れていることを、人体通信を利用したユーザ認証によって検出し認識するようにしている。このように、操作承認者が複合機に触れていなくても、図6に示した複合機の周辺に認証エリア(58)を設ける構成によって、認証エリアに立っている操作承認者を複合機がユーザ認証によって検出し認識するようにしてもよい。この場合は、操作承認者は認証エリアに立つだけでよいため負担が軽減される。図6に示した構成は、このような同時認証/連携操作において好適である。
【0174】
(複数操作部・単独ユーザ引継操作に対する制御動作例)
本体および外付けなどの複数の操作部(操作パネル)を備える複合機などでは、操作部毎にユーザ認証を行うことができるため、たとえば、第1操作部でユーザから受けた操作に対する動作の管理中に第2操作部でそのユーザから受けた操作を、管理中の動作に対するそのユーザの操作として受け付けることも可能である。このような複数の操作部間での操作の引き継ぎ(継続)は、たとえば、1つのジョブにおける複数工程の操作などを複数の操作部間で引き継ぐような場合が挙げられる。ここではその制御動作について説明する。
【0175】
図16は、複数の操作部を備えた複合機における単独ユーザによる操作部間での引き継ぎ操作(継続操作)に対する制御動作を示している(継続制御)。ここでは、ユーザAが外付けの操作部(大型の第1操作部)で画像ファイルの編集作業を行い、その後、本体の操作部(小型の第2操作部)でその画像ファイルの出力(プリント、ファクシミリ送信、配信)や保存に関する操作を引き継いで行う場合で説明する。また、ここでは複合機60を例に説明する。
【0176】
複合機60は、ユーザから第1操作部62へのタッチ操作を受けるのに伴い(ステップS201)、ユーザに携帯されている端末装置40からユーザの人体を含む通信路を通じて認証データを受信し、その認証データに基づく認証処理を行う(ステップS202)。認証不可の場合には(ステップS203;NO)、複合機60はこのユーザに対する使用を許可せずに本動作を終了する(End)。
【0177】
認証許可の場合(ステップS203;Yes)、たとえば、ここでユーザAを認証した場合には、複合機60はユーザAに対する使用を許可する。続いて、複合機60はユーザAの情報(ユーザA用の動作・管理テーブルなど)を記憶し(ステップS204)、ユーザAに合わせた画面(編集画面など)を第1表示部61に表示して(ステップS205)、第1操作部62によりユーザAから複合機60内に保存されている画像ファイルの編集の操作を受ける(ステップS206)。
【0178】
複合機60は、ユーザAから第1操作部62で画像ファイルの編集終了操作を受けない、または、その編集終了操作を受けたがユーザAから第2操作部64へのタッチ操作を受けない場合には(ステップS207;No)、本動作を終了する(End)。
【0179】
ユーザAから第1操作部62で画像ファイルの編集終了操作を受け、その後、ユーザAから第2操作部64へのタッチ操作を受けた場合には(ステップS207;Yes)、複合機60は第1操作部62(第1表示部61)をログアウト状態にして解放し(ステップS208)、第1表示部61からの操作引継ぎ画面を第2表示部63に表示する(ステップS209)。操作引継ぎ画面では、たとえば、編集を終了した画像ファイルが既に処理対象として選択(指定)された状態などとなっている。
【0180】
ここで、複合機60は第2操作部64によりユーザAから上記の画像ファイルに対する出力に関する各種の操作を受ける(ステップS210〜ステップS211;No)。続いて、複合機60は第2操作部64でユーザAからジョブの実行操作を受けると(ステップS211;Yes)、ユーザAのジョブ(画像ファイルの出力)を実行し(ステップS212)、本動作を終了する(End)。
【0181】
なお、ここでは第1操作部62から第2操作部64へ操作を引き継ぐ場合を例に説明したが、操作の引き継ぎ方法はこれに限らない。たとえば、2つの操作部間で操作を往復するように引き継いだり、3つ以上の操作部で操作を引き継いだりするようにしてもよい。
【0182】
このように、本例の制御動作では、特定のユーザが第1操作部で操作を行った管理中の動作に対する操作を第2操作部で引き継いで(継続して)行う、すなわち、管理中の動作に対する操作を異なる複数の操作部間で引き継いで行うことができるので、複数の操作部による操作のバリエーションが広がり、利便性が向上する。また、一人のユーザが複数の操作部を一度に占有して操作するわけではないので、解放されている操作部を他のユーザが使用可能であり、複数のユーザによる操作効率(生産性)が高められる。
【0183】
以上、本発明の一実施形態を図面によって説明してきたが、具体的な構成はこの実施形態に示したものに限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0184】
たとえば、上述した実施形態ではユーザ認証機能を備えた複合機において、操作部の操作に係るユーザおよびユーザ毎の操作は、ユーザの端末装置と通信しユーザ認証を行って識別・認識する場合を例に説明したが、ユーザ認証を行わない構成としてもよい。すなわち、ユーザの端末装置と通信し、ユーザ認証を行わずにユーザの識別のみを行って、操作部の操作に係るユーザおよびユーザ毎の操作を識別・認識する構成としてもよい。
【0185】
また、ユーザの識別(認証)は、操作部に対する操作検出毎に行うようにしているが、操作の検出回数や検出箇所などに応じて変更するようにしてもよい。検出回数の場合は、最初の操作検出による識別以降は操作検出1回おきや2回おきなどに識別を行うようにしてもよい。検出箇所の場合は、検出箇所毎に、操作検出毎や操作検出N回おきの条件を設定しその条件で識別を行うようにしてもよい。タッチパネルに複数の操作ボタン(ソフトボタン)が表示される場合は、その操作ボタン毎に上記の条件を設定するようにしてもよい。
【0186】
また、複数ユーザによる同時操作などでは、たとえば、大型の操作部における単一の大画面を分割して各ユーザに割り当て、その分割画面毎に各ユーザから各操作を受け付けるように構成してもよい。また、このような画面の分割は、一人のユーザによる画面の使用中に他のユーザが画面(タッチパネル)に触れると、自動的に行われるようにしてもよい。
【0187】
また、本発明に係る情報機器装置(画像処理装置)は実施形態で説明した複合機に限らず、複写機、プリンタ機、ファクシミリ機などの画像処理装置、操作部を備えた情報処理装置などの各種の情報機器装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0188】
5…画像処理システム
10…複合機
10a…装置本体
11…CPU
12…バス
13…読取部
14…記録部
15…ROM
16…RAM
17…ハードディスク装置
18…表示部
19…操作部/操作パネル
20…画像処理部
21…ネットワーク通信部
22…通信制御部
23…モデム
24…外部端末通信部
25…ユーザ認証処理部
26…電源制御部
27…NCU
30…パネル本体
30a…上面
31…タッチパネル
32…スタートボタン(操作ボタン)
33…ストップボタン(操作ボタン)
34…テンキー(操作ボタン)
35…光学式電界センサ
36…電極シート
37…開口
38…絶縁カバー
39…開口
40…端末装置
41…CPU
42…バス
43…ROM
44…RAM
45…記憶部
46…データ入力部
47…本体通信部
48…ネックストラップ
50…複合機
50a…装置本体
51…操作パネル
52…光学式電界センサ
53…電極シート
54…電極シート
55…導電ケーブル
56…設置エリア
57…GNDエリア
58…認証エリア
59…GNDエリア
60…複合機
60a…装置本体
61…第1表示部
62…第1操作部/第1操作パネル(外付け操作部)
63…第2表示部
64…第2操作部/第2操作パネル(本体操作部)
65…支持アーム
70…複合機
70a…装置本体
72…第1操作部/第1操作パネル(外付け操作部)
74…第2操作部/第2操作パネル(外付け操作部)
75…支持アーム
76…支持アーム
80…複合機
80a…装置本体
82…第1操作部/第1操作パネル(無線操作部)
84…第2操作部/第2操作パネル(本体操作部)
85…操作パネル無線通信部
86…本体無線通信部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作部と、
前記操作部の操作に係る操作者の人体を通信路にして端末装置と通信する通信部と、
前記通信部に接続され、前記通信部と前記端末装置との間に前記操作者の人体を含む通信路を形成する位置に配置されたアンテナと、
を備えた情報機器装置。
【請求項2】
前記操作部は、
パネル本体と、前記パネル本体の表面に設けられた複数の操作部材とを有する操作パネルであり、
前記アンテナは前記操作パネルの表面に配置されている
ことを特徴とする請求項1に記載の情報機器装置。
【請求項3】
前記複数の操作部材には、タッチパネルおよびボタンのうちの少なくとも一方が含まれる
ことを特徴とする請求項2に記載の情報機器装置。
【請求項4】
前記アンテナは、前記複数の操作部材を覆うように配置されている
ことを特徴とする請求項2または3に記載の情報機器装置。
【請求項5】
前記アンテナは、前記複数の操作部材の周辺に配置されている
ことを特徴とする請求項2または3に記載の情報機器装置。
【請求項6】
前記アンテナは、当該情報機器装置における装置本体の周辺における前記操作者の立つ位置に配置されている
ことを特徴とする請求項1に記載の情報機器装置。
【請求項7】
前記通信部は、電界に誘起されて前記アンテナに発生する電位変化を検出する電界センサの機能を有する
ことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の情報機器装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2010−260244(P2010−260244A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−112338(P2009−112338)
【出願日】平成21年5月1日(2009.5.1)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】