説明

情報端末及び描画制御プログラム並びに描画制御方法

【課題】簡単な操作で、見栄えのよい手書き入力を実現する。
【解決手段】表示部上に、タッチ位置を検出可能なタッチパネルを備える情報端末において、前記タッチパネルから出力される信号に基づいてタッチ位置の移動軌跡を特定し、前記移動軌跡で規定される線を描画若しくは消去する機能と、タッチが解除された場合に、タッチが解除された位置近傍のタッチ状態に基づいて、描画若しくは消去している線の終端部分の形状を加工する機能と、を有するデータ処理部を備え、1点でタッチされた場合、前記タッチが解除された位置近傍のタッチ位置の移動方向、移動速度及び移動加速度の少なくとも1つの変化に基づいて、前記終端部分の加工形状を決定し、複数の点でタッチされた場合、前記タッチが解除された各々の位置近傍のタッチ位置の移動軌跡に基づいて、前記タッチが解除された各々の位置の先に線を外挿する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報端末及び描画制御プログラム並びに描画制御方法に関し、特に、タッチパネルを備えた情報端末及びタッチパネル上の描画を制御する描画制御プログラム並びに描画制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スマートフォンやタブレット端末等の表示部にタッチパネルを備えた情報端末が普及している。この情報端末では、タッチパネル上に指やタッチペンをタッチしスライドさせることにより、線を描いたり、消去したりするなどの手書き入力を行うことができる。また、マルチタッチが可能なタッチパネルでは、複数の指やタッチペンをスライドさせることにより、複数の線で囲まれる領域を塗りつぶしたり、その領域内の情報を消去したりするなどの手書き入力を行うことができる。
【0003】
タッチパネルを備えた情報端末に関する技術ではないが、手書き入力に関連する技術として、下記特許文献1には、ペンスイッチがオンからオフに移行した時に、予め設定された時間内は赤外線信号と超音波信号の発信を継続する機能と、赤外線信号と超音波信号の発信周期を連続的に可変可能とする機能を前記制御手段が具備している電子ペン、並びに少なくとも、一つ以上の赤外線受光部と、二つ以上の超音波受信部を有し、前記赤外線信号と前記超音波信号の到達時間差を計測する赤外線超音波測定部、並びに該赤外線超音波測定部から得られた到達時間差を用いて前記電子ペンの位置座標データを計算する座標演算部、並びに前記電子ペンの位置座標データを筆跡データに変換する変換処理部とから成る手書き筆跡入力システムが開示されている。
【0004】
また、手書き入力のためのペンに関連する技術として、下記特許文献2には、手書き入力が行われたときの筆運びに伴う手書き情報を検出する手書き情報入力装置において、手書き入力が行われたときの描画点の動きについての手書き情報を検出する複数のセンサ(加速度センサと角速度センサ)と、前記センサで検出した前記手書き情報(加速度センサにより検出した加速度情報と角速度センサにより検出した角速度情報)を記憶する記憶手段と、前記記憶手段により記憶した前記手書き情報を外部へ読み出すための手書き情報読み出し手段と、を備えた構成が開示されている。
【0005】
また、下記特許文献3には、ペン先が筆記対象媒体に対して接地していると判定しているときパラメータ変動量推定部でペン先が筆記対象媒体に対して接地状態の場合に描画中のペン先速度を算出してペン先位置を演算するペン先挙動検出部からの情報に基づいて加速度センサとジャイロセンサにおけるパラメータ変動量を推定し、推定したパラメータ変動量に基づいて筆跡演算部で加速度センサとジャイロセンサによって得られる情報に基づいて演算した筆記軌跡を修正する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−128120号公報
【特許文献2】特開2003−114754号公報
【特許文献3】特開2009−223839号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の手書き入力は、タッチパネルにタッチ(接触又は押下)した位置(タッチ位置)の移動軌跡を正確に読み取ることを目的としているため、タッチ位置の移動軌跡がそのまま画面上に描画される。しかしながら、手書き入力は文字や図形を簡便に描くことが特徴であるため、タッチ位置の移動軌跡がそのまま描画されると、手書きされた文字や図形の見栄えが悪化してしまう場合がある。例えば、文字は、文字を構成する各々の線の終端部分に、運筆の終わりを上に跳ね上げる「はね」や運筆の終わりを伸ばす「はらい」、運筆の終わりを止める「とめ」などを表現することによって見栄えがよくなり、イラストなどの図形は、「はらい」や「とめ」などを表現することによって見栄えがよくなるが、このような微細な表現を手書き入力で実現することは難しいため、筆で描いたような文字や図形を描画することができない。
【0008】
また、従来の手書き入力では、指やタッチペンがタッチパネルに接触した位置から離される位置までの一連の移動軌跡が1つの図形として描画されるため、1つの連続した文字や図形を描画する場合には、タッチ状態を維持しなければならない。そのため、指やタッチペンが意図せずタッチパネルから離れてしまった場合には、連続する1つの図形として描画することができず、見栄えが悪化してしまう。また、指やタッチペンをタッチパネル上で早く動かした場合に、タッチ状態を検出できない場合もあり、このような場合も、連続する1つの図形として描画することができず、見栄えが悪化してしまう。
【0009】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、その主たる目的は、簡単な操作で、見栄えのよい手書き入力を実現することができる情報端末及び描画制御プログラム並びに描画制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明は、表示部上に、タッチ位置を検出可能なタッチパネルを備える情報端末において、前記タッチパネルから出力される信号に基づいてタッチ位置の移動軌跡を特定し、前記移動軌跡で規定される線を描画若しくは消去する機能と、タッチが解除された場合に、タッチが解除された位置近傍のタッチ状態に基づいて、描画若しくは消去している線の終端部分の形状を加工する機能と、を有するデータ処理部を備えるものである。
【0011】
また、本発明は、表示部上に、タッチ位置を検出可能なタッチパネルを備える情報端末で動作する描画制御プログラムであって、前記情報端末を、前記タッチパネルから出力される信号に基づいてタッチ位置の移動軌跡を特定し、前記移動軌跡で規定される線を描画若しくは消去する機能と、タッチが解除された場合に、タッチが解除された位置近傍のタッチ状態に基づいて、描画若しくは消去している線の終端部分の形状を加工する機能と、を有するデータ処理部、として機能させるものである。
【0012】
また、本発明は、表示部上に、タッチ位置を検出可能なタッチパネルを備える情報端末における描画制御方法であって、前記タッチパネルから出力される信号に基づいてタッチ位置の移動軌跡を特定し、前記移動軌跡で規定される線を描画若しくは消去する第1ステップと、タッチが解除された場合に、タッチが解除された位置近傍のタッチ状態に基づいて、描画若しくは消去している線の終端部分の形状を加工する第2ステップと、を実行するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の情報端末及び描画制御プログラム並びに描画制御方法によれば、簡単な操作で、見栄えのよい手書き入力を実現することができる。
【0014】
その理由は、タッチパネルを備える情報端末(描画制御プログラム)は、指やタッチペンなどがタッチパネルから離れた場合、タッチが解除された位置近傍のタッチ状態(タッチ位置の移動方向の変化、移動速度の変化、移動加速度の変化、移動軌跡など)に基づいて、移動軌跡の終端部分の処理方法を決定し、決定した処理方法に従って、終端部分を所定の形状に加工する制御を行うからである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施例に係る情報端末の外観を模式的に示す斜視図である。
【図2】本発明の一実施例に係る情報端末の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の一実施例に係る描画制御動作の一例(シングルタッチの場合)を説明する図である。
【図4】本発明の一実施例に係る描画制御動作の一例(マルチタッチの場合)を説明する図である。
【図5】本発明の一実施例に係る描画制御動作の他の例(マルチタッチの場合)を説明する図である。
【図6】本発明の一実施例に係る情報端末を用いた描画制御動作(終端部分を加工する制御)を示すフローチャート図である。
【図7】本発明の一実施例に係る描画制御動作の一例(線を繋ぎ合わせる場合)を説明する図である。
【図8】本発明の一実施例に係る情報端末を用いた描画制御動作(線を繋ぎ合わせる動作)を示すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
背景技術で示したように、タッチパネル上で線を描く場合、指やタッチペンをスライドさせるが、従来の手書き入力では、指やタッチペンをタッチパネルから離した位置が線の終端となるため、筆で描いたような文字や図形(「はね」や「はらい」、「とめ」など再現した文字や図形)を描画することが難しく、見栄えが悪化するという問題があった。
【0017】
また、従来の手書き入力では、指やタッチペンがタッチパネルに接触した位置から離される位置までの一連の移動軌跡が1つの図形として描画されるため、指やタッチペンが意図せずタッチパネルから離れてしまった場合や、装置がタッチ状態を検出できない場合には、連続する1つの図形として描画することができず、見栄えが悪化するという問題があった。
【0018】
そこで、本発明の一実施の形態では、タッチパネルを備える情報端末において、指やタッチペンなどがタッチパネルから離れた場合、タッチが解除された位置近傍のタッチ状態に基づいて、移動軌跡の終端部分の処理方法を決定し、決定した処理方法に従って終端部分を所定の形状に加工する制御を行う。
【0019】
具体的には、表示部上に、タッチ位置を検出可能なタッチパネルを備える情報端末において、タッチパネルから出力される信号に基づいてタッチ位置を特定し、当該タッチ位置の移動軌跡に基づき、線を描画若しくは消去する機能を備え、指やタッチペンなどがタッチパネルから離れた場合に、その離れ方(タッチ位置の移動方向の変化や移動速度/移動加速度の変化、押圧力の変化、移動軌跡など)を検出し、その離れ方に従って描画若しくは消去している線の終端部分の延長線上の描画若しくは消去の方法を決定し、決定した方法に従って描画若しくは消去を行うように制御する。
【0020】
これにより、簡単な操作で見栄えのよい文字や図形を描画することができる。特に、上記手法を文字の描画に適用することにより、文字の「はね」や「はらい」、「とめ」を正確に再現することができ、手書き入力文字の見栄えを格段に向上させることができる。
【実施例】
【0021】
上記した本発明の一実施の形態についてさらに詳細に説明すべく、本発明の一実施例に係る情報端末及び描画制御プログラム並びに描画制御方法について、図1乃至図8を参照して説明する。図1は、本実施例の情報端末の外観を模式的に示す斜視図であり、図2は、情報端末の構成を示すブロック図である。また、図3乃至図5は、本実施例の情報端末の描画制御動作の一例(終端部分を加工する動作)を示す図であり、図6は、その描画制御動作の手順を示すフローチャート図である。また、図7は、本実施例の情報端末の描画制御動作の一例(線を繋ぎ合わせる動作)を示す図であり、図8は、その描画制御動作の手順を示すフローチャート図である。
【0022】
図1に示すように、本実施例の情報端末100は、ノート型のコンピュータ装置やタブレット端末、電子ペーパー、電子ブック等の表示機能を備えた装置である。なお、以下の実施例では、情報端末として入力と表示が可能な情報端末100を例にして説明するが、本実施例の情報端末は、必ずしも表示機能を備えていなくてもよく、タッチパネルを用いて情報を入力可能な装置であればよい。
【0023】
上記情報端末100は、図2に示すように、CPU(Central Processing Unit)101、メモリ102、表示部103、表示コントローラ104、操作部105、通信部106、電池107、データ処理部108などで構成される。
【0024】
CPU101は、メモリ102から読み出した入力制御プログラムを実行し、各部の動作を制御する制御部として機能する。
【0025】
メモリ102は、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)などで構成され、CPU101で動作する各種プログラム、情報端末100の動作を制御するための設定情報、各種データ(例えば、予め設定された終端部分の形状を規定する情報、ユーザを識別するための情報、ドキュメントのデータ)などを記憶する。
【0026】
表示部103は、液晶表示装置(LCD:Liquid Crystal Display)や有機EL(electroluminescence)表示装置、電子ペーパー(EPD:Electrophoretic Display)等からなり、描画した線や図形などを表示する。なお、電子ペーパーは、一対の透明なフィルム基板の内表面に透明導電性の電極が形成され、電極間に導電性を有する黒色トナーと電気絶縁性を有する白色トナーが封入され、電極間に電圧を印加すると黒色トナーが移動して白色トナーと入れ替わって色が変化する構造である。
【0027】
表示コントローラ104は、表示部103を駆動し、CPU101の指示に従って、表示部103の表示を制御する。
【0028】
操作部105は、表示部103の前面又は背面に、透明電極が格子状に配置された感圧式若しくは静電容量方式のタッチパネル等であり、指やタッチペンなどでタッチした部分に配置された透明電極から出力される信号をCPU101及びデータ処理部108に送る。なお、本実施例のタッチパネルは、複数の透明電極から信号を同時に処理することができる(いわゆるマルチタッチ機能を備える)ものとする。
【0029】
通信部106は、NIC(Network Interface Card)やモデムなどであり、有線通信や無線通信によりネットワークに接続されたコンピュータ装置やサーバと交信し、ドキュメントのデータなどを受信する。
【0030】
電池107は、情報端末100の各部を駆動するための電源を供給する二次電池などである。
【0031】
データ処理部108は、操作部105(タッチパネル)から出力される信号を処理し、タッチ位置を特定する。そして、1又は複数の位置でタッチされ、少なくとも1つのタッチ位置を移動させた場合に、各々の線の移動軌跡に基づいて、線を描画若しくは消去する。また、指やタッチペンがタッチパネルから離された場合、その離され方(タッチ位置の移動方向の変化や移動速度/移動加速度の変化、押圧力の変化、移動軌跡など)を検出し、その離れ方に従って描画若しくは消去している線の終端部分の延長線上の描画若しくは消去の方法を決定し、決定した方法に従って描画若しくは消去を行う。このデータ処理部108は、ハードウェアとして構成してもよいし、ソフトウェア(CPU101上で動作する描画制御プログラム)として構成してもよい。
【0032】
なお、図2は、本実施例の情報端末100の一例であり、その構成は適宜変更することができる。
【0033】
次に、上記構成の情報端末100を用いて手書き入力した場合の描画制御について、図面を参照して具体的に説明する。
【0034】
従来、タッチパネル上で指やタッチペンなどをスライドさせて線を描画する場合、指やタッチペンをタッチパネル上にタッチした位置(以下、タッチ開始位置と呼ぶ。)から、指やタッチペンをタッチパネルから離した位置(以下、タッチ終了位置と呼ぶ。)までのタッチ位置の移動軌跡が線として描画される。
【0035】
しかしながら、手書き入力は、文字や図形を簡便に入力することを目的としており、文字や図形を正確に入力するのは難しいため、手書き入力した文字や図形の見栄えが悪化するという問題があった。例えば、文字は、線の終端部分に「はね」や「はらい」、「とめ」などを表現することによって流麗になって見栄えがよくなり、イラストなどの図形は、「はらい」、「とめ」などを表現することによって躍動感が生じて見栄えがよくなるが、手書き入力では、指やタッチペンを微細に動かすことが難しいため、見栄えのよい文字や図形を描画することができない。
【0036】
そこで、本実施例では、指やタッチペンがタッチパネルから離された場合、データ処理部108は、タッチ終了位置近傍のタッチ状態に基づいて、その離され方を検出し、その離れ方に従って、線の終端部分を自動的に加工して、「はね」や「はらい」、「とめ」などを表現できるようにする。
【0037】
具体的には、図3(a)に示すように、指をタッチパネル上で移動させると、移動軌跡(図の太線)に沿って図の細線で示す幅の線が描画されるが、その際、タッチ終了位置近傍のタッチ状態(図の黒丸で示すタッチ位置から先の指の離し方)に従って、線の終端形状を加工する。
【0038】
例えば、タッチ終了位置近傍でタッチ位置が上方向に移動した場合は、「はね」の動作であると判断して、図3(b−1)に示すように、線の終端部分を上方向に伸ばし、線の幅を徐々に細くする。その際、上方向に移動するタッチ位置の移動速度や移動加速度に応じて、上方向に伸ばす長さや幅の変化量を変える。例えば、タッチ位置の移動速度や移動加速度が大きくなるに従って、上方向に伸ばす長さを長くしたり、幅の変化量を大きくしたりする。
【0039】
また、タッチ終了位置近傍でタッチ位置が移動軌跡の延長線方向に移動した場合は、「はらい」の動作であると判断して、図3(b−2)に示すように、線の終端部分を延長線方向に伸ばし、線の幅を徐々に小さくする。その際、移動軌跡の延長線方向に移動するタッチ位置の移動速度や移動加速度に応じて、延長線方向に伸ばす長さや幅の変化量を変える。例えば、タッチ位置の移動速度や移動加速度が大きくなるに従って、延長線方向に伸ばす長さを長くしたり、幅の変化量を大きくしたりする。
【0040】
また、タッチ終了位置近傍でタッチ位置が静止した場合は、「とめ」の動作であると判断して、図3(b−3)に示すように、線の終端部分を太らせる。その際、静止する直前のタッチ位置の移動速度や移動加速度に応じて、太らせる程度を変える。例えば、ゆっくり静止するほど又は静止時間が長いほど大きく太らせる。
【0041】
また、感圧式のタッチパネルを用いる場合は、押圧力の変化に応じて、線の終端部分の形状を変化させる。例えば、図3(c)に示すように、タッチ位置の移動に対して押圧力が急激に小さくなった場合は、「はね」や「はらい」、「とめ」のサイズを小さく(「はね」や「はらい」の長さを短く、又は、「とめ」の大きさを小さく)し、押圧力の変化が緩やかになるに従って、「はね」や「はらい」、「とめ」のサイズを大きく(「はね」や「はらい」の長さを長く、又は、「とめ」の大きさを大きく)する。
【0042】
このように、タッチ終了位置近傍のタッチ状態(タッチ位置の移動方向の変化、移動速度の変化、移動加速度の変化、押圧力の変化など)に基づいて、線の終端部分の形状を加工することにより、筆で描いたような文字や図形を描画することができ、文字や図形の見栄えを向上させることができる。
【0043】
図3は、1本の指やタッチペンでタッチする場合(シングルタッチ)の例であるが、マルチタッチが可能なタッチパネルを用いて、複数の指やタッチペンで太い線や領域を描画する場合について、以下に説明する。
【0044】
太い線や領域を描く場合、タッチパネル上で複数(例えば2本)の指やタッチペンをスライドさせ、複数本の線で特定される閉曲面を塗りつぶす方法が用いられる。この方法では、図4(a−1)に示すように、指やタッチペンをタッチパネル上にタッチした位置(タッチ開始位置)から、指やタッチペンをタッチパネルから離した位置(タッチ終了位置)までを繋ぐ複数の線と、複数のタッチ開始位置を繋ぐ線と、複数のタッチ終了位置を繋ぐ線と、で特定される閉曲面が塗りつぶされて太い線となる。また、終端部分の形状を加工する方法として、図4(a−2)に示すように、複数のタッチ終了位置を円弧で繋いで終端部分に丸みを持たせる方法や、図4(a−3)に示すように、各々のタッチ終了位置から加速度方向に直線的に線を延ばして終端部分を尖らせる方法などがある。
【0045】
しかしながら、これらの方法では、「はね」や「はらい」、「とめ」などを正確に表現することができないという問題があった。そこで、本実施例では、マルチタッチで太い線や領域を描画する場合は、各々の線のタッチ終了位置近傍のタッチ位置の移動軌跡に基づいて、タッチ終了位置から先を描画するようにする。
【0046】
具体的には、図4(b−1)に示すように、2本の指で線を描画した際、各々の線のタッチ終了位置近傍のタッチ位置の移動軌跡に基づいて、移動軌跡が直線の場合はその直線を延長し、移動軌跡が曲線の場合は曲線の曲率を維持して延長し、延長した複数の線が交わる位置までを描画する。また、図4(b−2)に示すように、指をタッチパネルから離す際に、タッチ位置を水平方向に移動(タッチパネル面上で移動)させず、垂直方向(タッチパネルから離す方向)のみに移動させた場合、複数のタッチ終了位置を予め定めた図形で繋ぎ合わせて終端部分を一定の形状にする。そして、必要に応じて、複数の線で特定される領域を塗りつぶす。
【0047】
このように、複数の指やタッチペンで太い線や領域を描画した時に、各々の線のタッチ終了位置近傍のタッチ位置の移動軌跡に基づいて、各々の線を交点まで延長させたり、タッチ終了位置でタッチパネルから引き上げた場合は終端部分を予め定めた形状に加工したりすることにより、見栄えのよい文字や図形を描画することができる。
【0048】
なお、図4では、2本の線が徐々に近づき、その延長線上で交差する場合を示したが、2本の線が徐々に離れ、その延長線上で交差しない場合に対しても、本実施例の描画制御方法を適用することができる。
【0049】
例えば、間隔が徐々に広がるように2本の線の描画した場合、従来は、図5(a−1)に示すように、タッチ終了位置を加工せずにそのままにするか、若しくは、図5(a−2)に示すように、2本の線のタッチ終了位置を直線で繋ぐかのいずれかの方法が用いられていた。
【0050】
これに対して、本実施例では、図5(b−1)に示すように、各々の線のタッチ終了位置近傍のタッチ位置の移動軌跡に基づいて、移動軌跡が直線の場合はその直線を予め定めた長さだけ延長したり、移動軌跡が曲線の場合は曲線の曲率を維持して予め定めた長さだけ延長したりする。また、図5(b−2)に示すように、複数のタッチ終了位置を予め定めた図形で繋ぎ合わせ、必要に応じて、複数の線で特定される領域を塗りつぶす。このような描画制御を行うことにより、見栄えのよい文字や図形を描画することができる。
【0051】
なお、複数の指やタッチペンはタッチパネルから同時に離す必要はなく、別々に離すこともできる。この場合は、すべてのタッチが解除されてから、各々の線のタッチ終了位置近傍の移動軌跡に基づいて、上述した描画制御を行えばよい。また、上記では、複数の線の終端処理を行った後、必要に応じて、複数の線で特定される領域(閉曲面)を塗りつぶしたが、複数の線のタッチ位置を繋ぐ線を描画しながら終端処理を行うことによっても、同じように塗りつぶすことができる。
【0052】
次に、タッチ終了位置近傍のタッチ状態(タッチ位置の移動方向の変化や移動速度/移動加速度の変化、押圧力の変化、タッチ位置の移動軌跡)に基づいて、線の終端部分の形状を加工する手順について、図6のフローチャート図を参照して説明する。
【0053】
まず、図6に示すように、ユーザが情報端末100のタッチパネル上で1又は複数の指やタッチペンを移動させると、データ処理部108は、タッチパネルの出力信号を処理してタッチ位置を特定し、そのタッチ位置の移動軌跡に基づいて通常の描画を行う(S101)。次に、データ処理部108は、いずれかのタッチ位置が終点に達したかを判断し(S102)、いずれのタッチ位置も終点に達していない場合は、タッチ位置の移動軌跡を曲線近似し(S103)、S101に戻って通常の描画を継続する。
【0054】
いずれかのタッチ位置が終点に達した場合は、データ処理部108は、終点での水平加速度があるかを判断する(S104)。水平加速度がある場合は、データ処理部108は、直前の近似曲線から外挿して軌跡を描画する(S105)。そして、データ処理部108は、すべてのタッチ位置が終点に達したかを判断し(S106)、終点に達していないものがあれば、S105に戻って同様の処理を繰り返し、すべてのタッチ位置が終点に達したら、終点でのタッチ位置の移動方向の変化、移動速度の変化、移動加速度の変化、押圧力の変化、移動軌跡などに基づいて、若しくは、予め定めた方法に従って、終端部分の描画処理を行う(S107)。
【0055】
S104で、終点での水平加速度がない場合は、データ処理部108は、軌跡を止め(S108)、他に移動しているタッチ位置があるかを判断する(S109)。他に移動しているタッチ位置があれば、S101に戻って同様の処理を繰り返し、他に移動しているタッチ位置がなければ、終点でのタッチ位置の移動方向の変化、移動速度の変化、移動加速度の変化、押圧力の変化、移動軌跡などに基づいて、若しくは、予め定めた方法に従って、終端部分の描画処理を行う(S110)。
【0056】
このように、タッチ終了位置近傍のタッチ状態に基づいて1又は複数の線の終端の形状を加工することにより、見栄えのよい文字や図形を描画することができる。また、複数の指やタッチペンで複数の線を描画した時に、各々の線のタッチ終了位置近傍のタッチ状態に基づいてタッチ終了位置から線を延長させたり、終端部分を予め定めた形状に加工したりすることにより、見栄えのよい文字や図形を描画することができる。
【0057】
以上、1又は複数の連続する線の終端部分の描画処理に関して記載したが、例えば、指やタッチペンが意図せずタッチパネルから離れてしまった場合や、指やタッチペンをタッチパネル上で早く動かすことによって情報端末100がタッチ状態を検出できない場合には、連続する1つの図形として描画することができず、見栄えが悪化する。
【0058】
このような場合に、近似曲線から軌跡を外挿する手法を利用することにより、断片化した線を繋がった線として描画することができる。例えば、図7に示すように、断続的に線を描画した場合、各々の線の断片の終端部分に対して、近似曲線から軌跡を外挿する手法を利用して線を延長することにより、各々の断片をその先の断片に繋ぎ合わせることができ、結果として、1本の連続した線を描画することができる。この場合の情報端末100の描画動作について、図8のフローチャート図を参照して説明する。
【0059】
まず、図8に示すように、ユーザが情報端末100のタッチパネル上で1又は複数の指やタッチペンを移動させると、データ処理部108は、タッチパネルの出力信号を処理してタッチ位置を特定し、そのタッチ位置の移動軌跡に基づいて通常の描画を行う(S201)。次に、データ処理部108は、タッチされた点が離されたかを判断する(S202)。離されていない場合は、S201に戻って通常の描画を継続し、離された場合は、データ処理部108は、予め規定された時間内に再度、タッチされたか(又は、予め規定された時間内、かつ、予め規定された距離範囲内の位置にタッチされたか)を判断する(S203)。
【0060】
規定の時間内(又は、規定の時間内かつ規定の距離範囲内の位置)に再度、タッチされた場合は、データ処理部108は、軌跡を曲線近似し、途切れなく描画した後(S204)、S201に戻って同様の処理を繰り返す。一方、規定の時間内(又は、規定の時間内かつ規定の距離範囲内の位置)に再度、タッチされなかった場合は、データ処理部108は、上記と同様に、終点でのタッチ位置の移動方向の変化、移動速度の変化、移動加速度の変化、押圧力の変化、移動軌跡などに基づいて、若しくは、予め定めた方法に従って、終端部分の描画処理を行う(S205)。
【0061】
なお、本発明は上記実施例の記載に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、その構成及び制御は適宜変更可能である。
【0062】
例えば、上記説明では、線を描画したり、領域を塗りつぶしたりする場合について記載したが、予め描画された線を消去したり、領域内の情報を消去したりする場合に対しても同様に適用することができる。
【0063】
また、上記説明では、感圧式のタッチパネルを用いてタッチの押圧力の変化を利用する構成としたが、タッチの押圧力を利用せずに、タッチ位置の移動方向や移動速度や移動加速度の変化、移動軌跡のみを利用する場合は、静電式のタッチパネルを用いることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は、タッチパネルを備える装置、及び当該装置で動作するプログラム、並びにタッチパネル入力を制御する方法に利用可能である。
【符号の説明】
【0065】
100 情報端末
101 CPU
102 メモリ
103 表示部
104 表示コントローラ
105 操作部
106 通信部
107 電池
108 データ処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示部上に、タッチ位置を検出可能なタッチパネルを備える情報端末において、
前記タッチパネルから出力される信号に基づいてタッチ位置の移動軌跡を特定し、前記移動軌跡で規定される線を描画若しくは消去する機能と、タッチが解除された場合に、タッチが解除された位置近傍のタッチ状態に基づいて、描画若しくは消去している線の終端部分の形状を加工する機能と、を有するデータ処理部を備える、
ことを特徴とする情報端末。
【請求項2】
前記タッチパネルが1点でタッチされた場合、
前記データ処理部は、前記タッチが解除された位置近傍のタッチ位置の移動方向、移動速度及び移動加速度の少なくとも1つの変化に基づいて、前記終端部分の加工形状を決定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の情報端末。
【請求項3】
前記タッチパネルが押圧を検知する感圧式のタッチパネルの場合、
前記データ処理部は、前記タッチが解除された位置近傍のタッチの押圧力の変化に基づいて、前記終端部分の加工形状のサイズを決定する、
ことを特徴とする請求項2に記載の情報端末。
【請求項4】
前記タッチパネルが複数の点でタッチされた場合、
前記データ処理部は、前記タッチが解除された各々の位置近傍のタッチ位置の移動軌跡に基づいて、前記タッチが解除された各々の位置の先に線を外挿する、
ことを特徴とする請求項1に記載の情報端末。
【請求項5】
前記データ処理部は、複数のタッチ位置の間隔が、前記タッチが解除された位置近傍で小さくなる場合は、前記外挿した複数の線を交点まで延ばし、複数のタッチ位置の間隔が、前記タッチが解除された位置近傍で大きくなる場合は、前記タッチが解除された各々の位置から先に所定の長さの線を外挿、若しくは、前記タッチが解除された複数の位置を予め定めた形状の図形で繋ぎ合わせる、
ことを特徴とする請求項4に記載の情報端末。
【請求項6】
前記データ処理部は、前記タッチが解除された後、予め定めた時間内、若しくは、予め定めた時間内かつ予め定めた距離範囲内の位置に、再度タッチされた場合は、前記タッチが解除された位置から線を外挿し、再度タッチされた位置に繋ぎ合わせる、
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一に記載の情報端末。
【請求項7】
表示部上に、タッチ位置を検出可能なタッチパネルを備える情報端末で動作する描画制御プログラムであって、
前記情報端末を、
前記タッチパネルから出力される信号に基づいてタッチ位置の移動軌跡を特定し、前記移動軌跡で規定される線を描画若しくは消去する機能と、タッチが解除された場合に、タッチが解除された位置近傍のタッチ状態に基づいて、描画若しくは消去している線の終端部分の形状を加工する機能と、を有するデータ処理部、として機能させる、
ことを特徴とする描画制御プログラム。
【請求項8】
前記タッチパネルが1点でタッチされた場合、
前記データ処理部は、前記タッチが解除された位置近傍のタッチ位置の移動方向、移動速度及び移動加速度の少なくとも1つの変化に基づいて、前記終端部分の加工形状を決定する、
ことを特徴とする請求項7に記載の描画制御プログラム。
【請求項9】
前記タッチパネルが押圧を検知する感圧式のタッチパネルの場合、
前記データ処理部は、前記タッチが解除された位置近傍のタッチの押圧力の変化に基づいて、前記終端部分の加工形状のサイズを決定する、
ことを特徴とする請求項8に記載の描画制御プログラム。
【請求項10】
前記タッチパネルが複数の点でタッチされた場合、
前記データ処理部は、前記タッチが解除された各々の位置近傍のタッチ位置の移動軌跡に基づいて、前記タッチが解除された各々の位置の先に線を外挿する、
ことを特徴とする請求項7に記載の描画制御プログラム。
【請求項11】
前記データ処理部は、複数のタッチ位置の間隔が、前記タッチが解除された位置近傍で小さくなる場合は、前記外挿した複数の線を交点まで延ばし、複数のタッチ位置の間隔が、前記タッチが解除された位置近傍で大きくなる場合は、前記タッチが解除された各々の位置から先に所定の長さの線を外挿、若しくは、前記タッチが解除された複数の位置を予め定めた形状の図形で繋ぎ合わせる、
ことを特徴とする請求項10に記載の描画制御プログラム。
【請求項12】
前記データ処理部は、前記タッチが解除された後、予め定めた時間内、若しくは、予め定めた時間内かつ予め定めた距離範囲内の位置に、再度タッチされた場合は、前記タッチが解除された位置から線を外挿し、再度タッチされた位置に繋ぎ合わせる、
ことを特徴とする請求項7乃至11のいずれか一に記載の描画制御プログラム。
【請求項13】
表示部上に、タッチ位置を検出可能なタッチパネルを備える情報端末における描画制御方法であって、
前記タッチパネルから出力される信号に基づいてタッチ位置の移動軌跡を特定し、前記移動軌跡で規定される線を描画若しくは消去する第1ステップと、
タッチが解除された場合に、タッチが解除された位置近傍のタッチ状態に基づいて、描画若しくは消去している線の終端部分の形状を加工する第2ステップと、を実行する、
ことを特徴とする描画制御方法。
【請求項14】
前記タッチパネルが1点でタッチされた場合、
前記第2ステップでは、前記タッチが解除された位置近傍のタッチ位置の移動方向、移動速度及び移動加速度の少なくとも1つの変化に基づいて、前記終端部分の加工形状を決定する、
ことを特徴とする請求項13に記載の描画制御方法。
【請求項15】
前記タッチパネルが押圧を検知する感圧式のタッチパネルの場合、
前記第2ステップでは、前記タッチが解除された位置近傍のタッチの押圧力の変化に基づいて、前記終端部分の加工形状のサイズを決定する、
ことを特徴とする請求項14に記載の描画制御方法。
【請求項16】
前記タッチパネルが複数の点でタッチされた場合、
前記第2ステップでは、前記タッチが解除された各々の位置近傍のタッチ位置の移動軌跡に基づいて、前記タッチが解除された各々の位置の先に線を外挿する、
ことを特徴とする請求項13に記載の描画制御方法。
【請求項17】
前記第2ステップでは、複数のタッチ位置の間隔が、前記タッチが解除された位置近傍で小さくなる場合は、前記外挿した複数の線を交点まで延ばし、複数のタッチ位置の間隔が、前記タッチが解除された位置近傍で大きくなる場合は、前記タッチが解除された各々の位置から先に所定の長さの線を外挿、若しくは、前記タッチが解除された複数の位置を予め定めた形状の図形で繋ぎ合わせる、
ことを特徴とする請求項16に記載の描画制御方法。
【請求項18】
前記第2ステップで、前記タッチが解除された後、予め定めた時間内、若しくは、予め定めた時間内かつ予め定めた距離範囲内の位置に、再度タッチされた場合は、前記タッチが解除された位置から線を外挿し、再度タッチされた位置に繋ぎ合わせる処理を行う、
ことを特徴とする請求項13乃至17のいずれか一に記載の描画制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−88891(P2013−88891A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−226530(P2011−226530)
【出願日】平成23年10月14日(2011.10.14)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】