説明

情報記録媒体、記録再生装置およびスタンパー

【課題】内周側から外周側までの全域において磁気的信号の確実な読み取りが可能なサーボパターンを有する情報記録媒体を提供する。
【解決手段】ガラス基材11の一面側に凹凸パターン20によってサーボパターンが形成されると共に、同心円状または螺旋状のデータ記録トラックが一面側に設けられてデータトラックパターンが形成され、サーボパターンを構成する凹凸パターン20は、ガラス基材11の回転方向に沿った単位凸部長をデータトラックパターンの中心からの距離で除した値、および、回転方向に沿った単位凹部長を上記中心からの距離で除した値の双方が内周側から外周側に向かうほど小さくなるように単位凸部長および単位凹部長が規定されると共に、上記中心からの距離が等しい同一半径位置において単位凹部長が単位凸部長以下の長さとなるように単位凸部長および単位凹部長が規定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凹凸パターンによってサーボパターンが形成された情報記録媒体、その情報記録媒体を備えた記録再生装置、およびその情報記録媒体を製造するためのスタンパーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体素子や情報記録媒体などを製造する工程において、ナノメートルサイズの凹凸パターンを形成したスタンパーを基材上の樹脂層に押し付けてスタンパーの凹凸形状を樹脂層に転写することで基材の上にナノメートルサイズの凹凸パターンを形成するナノインプリントリソグラフィ法(ナノメートルサイズの凹凸パターンを形成するインプリント方法:以下、「インプリント方法」ともいう)が米国特許5772905号明細書に開示されている。このインプリント方法では、まず、その転写面にナノメートルサイズ(一例として、最小幅が25nm程度)の凹凸パターンが形成されたスタンパー(mold)を製造する。具体的には、シリコン基板(silicon substrate )の表面に形成された酸化シリコン等の薄膜(molding layer )を覆うようにして形成された樹脂層に電子ビームリソグラフィ装置を用いて所望のパターンを描画した後に、反応性イオンエッチング装置によって樹脂層をマスクとして薄膜をエッチング処理することによって複数の凸部(features)を有する凹凸パターンを薄膜の厚み内に形成する。これにより、スタンパーが製造される。
【0003】
次いで、例えば、シリコン製の基材(substrate )の表面にポリメチルメタクリレート(PMMA:樹脂材料)をスピンコートして厚み55nm程度の樹脂層(薄膜:thin film layer )を形成する。続いて、基材および樹脂層の積層体、並びにスタンパーの双方を加熱した後に、基材上の樹脂層にスタンパーの各凸部を押し付ける。この際には、スタンパーの凸部が押し込まれた部位の樹脂材料がスタンパーの凹部に向けて移動することにより、凸部が押し込まれた部位に凹部(regions )が形成(転写)される。次いで、スタンパーを押し付けた状態の積層体を室温となるまで放置した後に(冷却処理した後に)、樹脂層からスタンパーを剥離する。これにより、スタンパーの凹凸パターンにおける各凸部が樹脂層に転写されて、基材の上(樹脂層)にナノメートルサイズの凹凸パターンが形成される。この後、凹凸パターンが形成された樹脂層をマスクとして用いて基材をエッチング処理することにより、基材に複数の凹部が形成される。したがって、上記のような技術(インプリント方法)によって情報記録媒体用基材上の樹脂層に凹部を形成することにより、その樹脂層をマスクとして用いたエッチング処理によってナノメートルサイズの凹凸パターンを有する情報記録媒体を製造することが可能となる。
【特許文献1】米国特許5772905号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、従来のインプリント方法(製造方法)に従って製造された情報記録媒体には、以下の問題点がある。すなわち、従来の製造方法では、基材上に形成した樹脂層にスタンパーの凸部を押し込むことによって樹脂層に凹部を設けて凹凸パターンを形成し、凹凸パターンが形成された樹脂層をマスクとして用いて基材をエッチング処理することによって基材に凹凸パターンを形成している。しかし、この製造方法に従って例えばディスクリートトラック型の磁気記録媒体(情報記録媒体)を製造したときには、磁気記録媒体の外周側となる領域において樹脂層に対する凸部(スタンパーの凸部)の押し込み量が不足して、樹脂層に形成される(転写される)凹凸パターンにおける凹部の底部に大量の樹脂材料が残存するおそれがある。この結果、従来の製造方法に従って磁気記録媒体を製造したときには、凹部の底部に残存する樹脂材料の取り除き処理時に凹部が過剰に拡がることに起因して磁気記録媒体に凹凸パターンを高精度で形成するのが困難となるおそれがある。なお、以下の説明では、スタンパーの押し付けによって樹脂層に形成される凹部の底面と基材との間に取り残された樹脂材料を「残渣」ともいう。
【0005】
具体的には、例えば、図15に示すように、上記の製造方法に従って製造した磁気ディスク10xは、同心円状の複数の記録トラックで構成された凹凸パターン20tが形成されたトラックパターン領域Atと、トラッキングサーボ用の凹凸パターン20sxが形成されたサーボパターン領域Asxとが磁気ディスク10xの回転方向(同図に示す矢印Rの向き)で交互に並ぶように規定されて製造されている。この場合、この種の磁気記録媒体を搭載した記録再生装置では、記録再生時に磁気記録媒体を角速度一定で回転させるのが一般的となっている。したがって、この磁気ディスク10xでは、単位時間当たりに磁気ヘッド(図示せず)の下方を通過させられる磁気ディスク10x上の長さに比例して、磁気ディスク10xの回転方向に沿ったサーボパターン領域Asxの長さが内周側から外周側に向かうほど長くなるように(サーボパターン領域Asxが外周側ほど幅広となるように)規定されている。具体的には、図16,17に示すように、凹凸パターン20tの中心O(図15参照)からの距離に比例して、内周側サーボパターン領域Asxiの回転方向に沿った長さよりも、外周側サーボパターン領域Asxoの回転方向に沿った長さの方が長くなっている。
【0006】
また、この種の磁気ディスクでは、サーボパターン領域Asx(凹凸パターン20sx)における凸部21sxi,21sxo(以下、区別しないときは「凸部21sx」ともいう)の回転方向に沿った単位凸部長(磁気信号の読み取りに際して「1つの凸部有り」と検出される基準の長さ:図16,17におけるL1xi,L1xo)と、凹部22sxi,22sxo(以下、区別しないときは「凹部22sx」ともいう)の回転方向に沿った単位凹部長(磁気信号の読み取りに際して「1つの凹部有り」と検出される基準の長さ:図16,17におけるL2xi,L2xo)とが磁気ディスク10xの内周側領域Axiから外周側領域Axoまでの全域において1:1の比(単位凸部長に対する単位凹部長の比が1)となるように規定されている。したがって、この磁気ディスク10xでは、内周側サーボパターン領域Asxiにおける凹部22sxiの長さL2xiよりも、外周側サーボパターン領域Asxoにおける凹部22sxoの長さL2xoの方が凹凸パターン20tの中心Oからの距離に比例して長くなっている。
【0007】
一方、上記の磁気ディスク10xを製造するためのスタンパー(図18,19参照)には、磁気ディスク10xに形成すべき凹凸パターン20t,20sxとは凹凸位置関係が反転している凹凸パターン39xが形成されている。したがって、図18,19に示すように、磁気ディスク10xを製造するためのスタンパーでは、内周側サーボパターン領域Asxiにおける凹部22sxiに対応する凸部(図18に示す凸部39ax)の回転方向に沿った長さL6xiよりも、外周側サーボパターン領域Asxoにおける凹部22sxoに対応する凸部(図19に示す凸部39ax)の回転方向に沿った長さL6xoの方が長くなっている。
【0008】
この場合、従来の製造方法では、スタンパーの全域に亘ってほぼ均一な押圧力で凹凸パターン39xを樹脂層に押し付けている。したがって、図18に示すように、回転方向に沿った長さL6xiが比較的短い凸部39axが形成されている部位(内周側サーボパターン領域Asxiの凹凸パターン20sxが形成される部位)では、凸部39axが押し込まれた部位の樹脂材料がスタンパーの凹部39bx,39bx内に向けてスムーズに移動する結果、凸部39axを十分に奥深くまで樹脂層に押し込むことができる。この結果、凸部39axの先端と基材との間(凹部41bxの底部)の樹脂層の厚みT1が十分に薄い凹凸パターン41xを基材の上に形成することができる。これに対して、図19に示すように、回転方向に沿った長さL6xoが比較的長い凸部39axが形成されている部位(外周側サーボパターン領域Asxoの凹凸パターン20sxが形成される部位)では、凸部39axが押し込まれた部位の樹脂材料がスタンパーの凹部39bx,39bx内に向けて移動するのが困難となる結果、凸部39axを樹脂層に奥深くまで十分に押し込むのが困難となる。この結果、凸部39axの先端と基材との間(凹部41bxの底部)に厚みT2の残渣が生じることとなる。
【0009】
一方、凹凸パターン41xが形成された樹脂層をマスクとして用いて基材をエッチング処理する際には、凹凸パターン41xにおける凹部41bxの底面の残渣をエッチング処理等によって除去する必要がある(前述した取り除き処理)。この場合、前述したように、回転方向に沿ったL6xiが短い凸部39ax,39ax・・を押し込んだ部位の残渣の厚みT1は、回転方向に沿ったL6xoが長い凸部39ax,39ax・・を押し込んだ部位の残渣の厚みT2よりも十分に薄くなっている。したがって、後に外周側サーボパターン領域Asxoとなる外周側の領域において厚みT2の残渣を確実に取り除くことができるように十分な時間のエッチング処理(取り除き処理)を実行したときには、厚みT2の残渣の取り除きが完了するのに先立ち、内周側の領域において厚みT1の残渣の取り除きが完了する。この結果、厚みT1の残渣が取り除かれた部位(回転方向に沿った長さが短い凹部41bxの部位)では、厚みT2の残渣の取り除きが完了するまでエッチングされ続けることによって凹部41bxの内側壁(凸部41axの側面)が浸食されて凹部41bxが過剰に拡がってしまう。このため、従来の製造方法に従って製造した磁気ディスク10xには、所望する広さの凹部41bxを形成するのが困難であることに起因して、内周側サーボパターン領域Asxiにおいて凹部22sxiの広さが過剰に広くなり、これに起因して磁気的信号の確実な読み取りが困難となるおそれがある。
【0010】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、その内周側から外周側までの全域において磁気的信号の確実な読み取りが可能なサーボパターンを有する情報記録媒体および記録再生装置、並びに、このような情報記録媒体を製造し得るスタンパーを提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成すべく本発明に係る情報記録媒体は、基材の少なくとも一面側に凹凸パターンによってサーボパターンが形成されると共に、同心円状または螺旋状のデータ記録トラックが当該一面側に設けられてデータトラックパターンが形成され、前記サーボパターンを構成する前記凹凸パターンは、前記基材の回転方向に沿った単位凸部長を前記データトラックパターンの中心からの距離で除した値が内周側から外周側に向かうほど小さくなるように当該単位凸部長が規定されると共に、前記回転方向に沿った単位凹部長を前記データトラックパターンの中心からの距離で除した値が前記内周側から前記外周側に向かうほど小さくなるように当該単位凹部長が規定され、かつ、前記データトラックパターンの中心からの距離が等しい同一半径位置において前記回転方向に沿った前記単位凹部長が当該回転方向に沿った前記単位凸部長以下の長さとなるように当該単位凸部長および当該単位凹部長が規定されている。
【0012】
なお、本明細書における「同心円状または螺旋状のデータ記録トラック」には、凹凸パターンの凹部によって情報記録媒体における半径方向および回転方向の双方に対して分離された凸部(単位記録要素)が同心円状または螺旋状に配列させられたパターンド媒体のデータトラックパターンにおけるトラック状のデータ記録部が含まれる。また、本明細書における「単位凸部長」とは、情報記録媒体からの磁気信号の読み取りに際して「1つの凸部有り」と検出するための基準の長さをいう。さらに、本明細書における「単位凹部長」とは、情報記録媒体からの磁気信号の読み取りに際して「1つの凹部有り」と検出するための基準の長さをいう。したがって、実際の情報記録媒体では、サーボデータの内容に応じて、単位凸部長の整数倍の長さの凸部や単位凹部長の整数倍の長さの凹部が形成されてサーボパターンが構成される。この場合、「1つの凸部有り」と検出するための基準の長さや「1つの凹部有り」と検出するための基準の長さについては、サーボパターン全体においてそれぞれ1つの共通する長さに規定してもよいし、サーボパターンを構成する各種パターンの種類(プリアンブルパターン、アドレスパターンおよびバーストパターン等)に応じて各パターン毎に相違する長さに規定することもできる。また、一般的には、凸部の形成部位は「検出信号の出力有り」または「信号レベルがHighの検出信号」として検出され、凹部の形成部位は「検出信号の出力なし」または「信号レベルがLow の検出信号」として検出される。さらに、本発明では、極く僅かな程度の製造誤差が生じて、凹凸パターンにおける単位凹部長が単位凸部長よりも僅かに長い長さになったとしても、その凹凸パターンにおける単位凹部長は単位凸部長以下の長さの範疇に含まれるものとする。
【0013】
また、本発明に係る情報記録媒体は、前記単位凹部長が前記内周側から前記外周側までの全域において等しい長さ、または、ほぼ等しい長さとなるように規定されて前記サーボパターンを構成する前記凹凸パターンが形成されている。なお、本発明では、極く僅かな程度の製造誤差が生じて、凹凸パターンにおける単位凹部長が僅かにばらついた状態になったとしても、それらの長さは等しい長さの範疇に含まれるものとする。また、本明細書における「ほぼ等しい長さ」には、製造目標としての所定の長さを中心として、製造誤差とは別に当初から規定した僅かな幅の許容範囲内の長さが含まれるものとする。
【0014】
さらに、本発明に係る情報記録媒体は、前記単位凸部長が前記内周側から前記外周側までの全域において等しい長さ、または、ほぼ等しい長さとなるように規定されて前記サーボパターンを構成する前記凹凸パターンが形成されている。なお、本発明では、極く僅かな程度の製造誤差が生じて、凹凸パターンにおける単位凸部長が僅かにばらついた状態になったとしても、それらの長さは等しい長さの範疇に含まれるものとする。
【0015】
また、本発明に係る記録再生装置は、上記のいずれかの情報記録媒体と、前記データトラックパターンの中心からの距離に応じて予め規定された読み出し周波数情報に基づいて前記情報記録媒体から前記サーボパターンに対応付けられているサーボデータを読み出してサーボ制御する制御部とを備えている。
【0016】
また、本発明に係る記録再生装置は、上記のいずれかの情報記録媒体と、前記内周側から前記外周側までの間を同心円状に区分けした複数の環状領域毎に予め規定された読み出し周波数情報に基づいて前記情報記録媒体から前記サーボパターンに対応付けられているサーボデータを読み出してサーボ制御する制御部とを備えている。
【0017】
また、本発明に係るスタンパーは、情報記録媒体製造用のスタンパーであって、上記のいずれかの情報記録媒体における前記凹凸パターンの凹部に対応して形成された凸部と、前記情報記録媒体における前記凹凸パターンの凸部に対応して形成された凹部とを有する凹凸パターンが形成されている。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る情報記録媒体および記録再生装置によれば、単位凸部長をデータトラックパターンの中心からの距離で除した値が内周側から外周側に向かうほど小さくなるように単位凸部長を規定すると共に、単位凹部長をデータトラックパターンの中心からの距離で除した値が内周側から外周側に向かうほど小さくなるように単位凹部長を規定し、かつ、データトラックパターンの中心からの距離が等しい同一半径位置において単位凹部長が単位凸部長以下の長さとなるように単位凸部長および単位凹部長を規定してサーボパターンを構成する凹凸パターンを形成したことにより、回転方向に沿った単位凹部長がデータトラックパターンの中心からの距離に比例して長くなるように(単位凹部長を中心からの距離で除した値が内周側から外周側までの全域に亘って等しくなるように)凹凸パターンが形成されている従来の情報記録媒体(磁気ディスク10x)と比較して、外周側の単位凹部長を十分に短くすることができる。したがって、この情報記録媒体を製造するためのスタンパーにおいて情報記録媒体の各凹部に対応する凸部の回転方向に沿った長さを十分に短くすることができるため、インプリント処理時に厚手の残渣を生じさせることなく、スタンパーの各凸部を十分に奥深くまで樹脂層に押し込むことができる。この結果、残渣の厚みがサーボパターン形成領域の全域においてほぼ同様の厚みとなるため、残渣の取り除き処理時にサーボパターン形成領域の内周側における各凹部が過剰に拡がる事態が回避される。したがって、樹脂層における凹部の部位に最終的に形成されるサーボパターン用の各凹部が過剰に拡がる事態が回避されてサーボパターン用の凹凸パターンを高精度で形成することができる。これにより、全域において磁気的信号の確実な読み取りが可能なサーボパターンを有する情報記録媒体、およびその情報記録媒体を備えた記録再生装置を提供することができる。
【0019】
この場合、単位凹部長をデータトラックパターンの中心からの距離で除した値が外周側から内周側に向かうほど大きくなるように単位凹部長が規定されているため、その内周側において単位凹部長が過度に短くなる事態が回避されている。したがって、インプリント法以外の各種製造方法によって情報記録媒体を製造する際にも凹部の形成処理(レジスト層に対する現像処理や、磁性層などに対するエッチング処理等)が困難となる事態を回避することができる結果、サーボパターン形成領域の全域において凹部を高精度で形成することができる。また、単位凸部長をデータトラックパターンの中心からの距離で除した値が内周側から外周側に向かうほど小さくなるように単位凸部長を規定したことにより、この情報記録媒体を製造するためのスタンパーにおいて情報記録媒体の各凸部に対応する凹部の回転方向に沿った長さを外周側においても十分に短くすることができる。このため、インプリント処理時にスタンパーにおける凸部の押し込みによってスタンパーにおける凹部内に移動させられる樹脂材料によって、十分に高い凸部を樹脂層に形成する(十分に厚い樹脂マスクを形成する)ことができる。さらに、データトラックパターンの中心からの距離が等しい同一半径位置において回転方向に沿った単位凹部長が回転方向に沿った単位凸部長以下の長さとなるように単位凸部長および単位凹部長を規定してサーボパターン(凹凸パターン)を形成したことにより、単位凹部長が単位凸部長を超えるように規定して形成した凹凸パターンと比較して、単位凹部長を十分に短くすることができる。したがって、この情報記録媒体を製造するためのスタンパーにおいて情報記録媒体の各凹部に対応する各凸部の回転方向に沿った長さを十分に短くすることができるため、厚手の残渣を生じさせることなく樹脂層に凹凸パターンを転写することができる。この結果、残渣の取り除き時に樹脂層の各凹部が過剰に拡がる事態を確実に回避してサーボパターンを高精度で形成することができる。
【0020】
また、本発明に係る情報記録媒体および記録再生装置によれば、単位凹部長が内周側から外周側までの全域において等しい長さ、または、ほぼ等しい長さとなるように規定してサーボパターンを構成する凹凸パターンを形成したことにより、この情報記録媒体を製造するためのスタンパーにおいて情報記録媒体の各凹部に対応する各凸部の回転方向に沿った長さを内周側から外周側までの全域において等しい長さとすることができる。したがって、情報記録媒体の製造時に生じる残渣の厚みを内周側から外周側までの全域において均一にすることができる。これにより、内周側から外周側までサーボパターン(凹凸パターン)を一層高精度で形成することができる。また、内周側から外周側までの全域において単位凹部長を等しい長さ、または、ほぼ等しい長さに規定したことにより、インプリント法以外の各種製造方法によって情報記録媒体を製造する場合にも凹部の形成処理(レジスト層に対する現像処理や、磁性層などに対するエッチング処理等)が容易となる結果、サーボパターン形成領域の全域において凹部を高精度で形成することができる。
【0021】
さらに、本発明に係る情報記録媒体および記録再生装置によれば、単位凸部長が内周側から外周側までの全域において等しい長さ、または、ほぼ等しい長さとなるように規定してサーボパターンを構成する凹凸パターンを形成したことにより、この情報記録媒体を製造するためのスタンパーにおいて情報記録媒体の各凸部に対応する各凹部の回転方向に沿った長さを内周側から外周側まで均一にすることができるため、インプリント処理時に、スタンパーにおける各凸部の押し込みによって各凹部内に移動させられた樹脂材料によって形成される凸部(マスクとして機能する樹脂材料)の高さを内周側から外周側まで均一にすることができる。この結果、均一な厚みのマスク(均一な高さの凸部)を用いてサーボパターン用の凹部を高精度で形成することができる。
【0022】
また、本発明に係る記録再生装置によれば、データトラックパターンの中心からの距離に応じて予め規定された読み出し周波数情報に基づいて制御部が情報記録媒体からサーボパターンに対応付けられているサーボデータを読み出すことにより、情報記録媒体を角速度一定の条件で回転させつつサーボパターン(サーボデータ)を確実に読み出すことができる。
【0023】
また、本発明に係る記録再生装置によれば、内周側から外周側までの間を同心円状に区分けした複数の環状領域毎に予め規定された読み出し周波数情報に基づいて制御部が情報記録媒体からサーボパターンに対応付けられているサーボデータを読み出すことにより、読み出し周波数情報の周波数の種類が少なくて済むため、例えば、磁気ヘッドを内外周方向にシーク動作させる際における読み出し周波数情報の周波数切替え処理の回数を少なくすることができる。これにより、シーク動作を短時間で実行することができるため、高速なデータアクセスを行うことができる。
【0024】
また、本発明に係るスタンパーによれば、上記のいずれかの情報記録媒体における凹凸パターンの凹部に対応して形成した凸部と、情報記録媒体における凹凸パターンの凸部に対応して形成した凹部とを有する凹凸パターンを形成したことにより、回転方向に沿った長さが過剰に長い凸部がスタンパーに存在しないため、凹凸パターンを形成するためのインプリント処理時(情報記録媒体製造用の中間体における樹脂層にスタンパーの凹凸パターンを転写する処理時)に、樹脂層に対してスタンパーの凹凸パターン(各凸部)をスムーズに押し込むことができる。したがって、各凸部の押し込み量の不足に起因する不都合(中間体上に厚手の残渣が生じることに起因して各凹部が過剰に拡がる事態)が生じる事態を回避することができる。これにより、サーボデータの確実な読み取りが可能な情報記録媒体を製造することができる。また、回転方向に沿った長さが過剰に長い凹部がスタンパーに存在しないため、インプリント処理時にこのスタンパーの凸部の押し込みによってスタンパーの凹部内に移動させられる樹脂材料によって、十分に高い凸部を樹脂層に形成する(十分に厚い樹脂マスクを形成する)ことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明に係る情報記録媒体、記録再生装置およびスタンパーの最良の形態について、添付図面を参照して説明する。
【0026】
図1に示すハードディスクドライブ1は、本発明に係る記録再生装置の一例としての磁気記録再生装置であって、スピンドルモータ2、磁気ヘッド3、信号変換部4、検出用クロック出力部5、サーボデータ検出部6、ドライバ7、制御部8、ROM9および磁気ディスク10を備えて構成されている。この場合、磁気ディスク10は、一例として、垂直記録方式で記録データを記録可能なディスクリートトラック型の磁気ディスク(パターンド媒体)であって、本発明における情報記録媒体に相当する。具体的には、図2に示すように、この磁気ディスク10は、軟磁性層12、中間層13および磁性層14がガラス基材11の上にこの順で形成されている。この場合、中間層13の上に形成されている磁性層14は、磁性材料で形成された凸部21,21・・と凹部22とが交互に形成されることによって所定の凹凸パターン20を構成する。また、凹部22,22・・には、SiO等の非磁性材料15が埋め込まれている。さらに、凹部22に埋め込まれた非磁性材料15、および凸部21の上には、一例としてダイヤモンドライクカーボン(DLC)の薄膜がCVD法によって成膜されて厚みが2nm程度の保護層(DLC膜)16が形成されている。また、この磁気ディスク10では、保護層16の表面に潤滑剤(一例として、フッ素系の潤滑剤)が塗布されている。
【0027】
ガラス基材11は、本発明における基材に相当し、直径2.5インチのガラス板を表面研磨して厚みが0.6mm程度となるように形成されている。なお、本発明における基材は、ガラス材料に限定されるものではなく、アルミニウムやセラミックなどの各種非磁性材料で形成することができる。軟磁性層12は、CoZrNb合金などの軟磁性材料をスパッタリングすることによって厚みが100nm〜200nm程度となるように形成されている。中間層13は、磁性層14を形成するための下地層として機能する層であって、CrやCoCr非磁性合金などの中間層形成用材料をスパッタリングすることによって厚みが40nm程度となるように形成されている。磁性層14は、磁性材料で形成された凸部21,21・・で構成された層であって、例えばCoCrPt合金をスパッタリングする処理と、レジストパターン等をマスクとして用いてエッチング処理して凹部22,22・・を形成する処理とがこの順で実行されることによって、凸部21,21・・(凹凸パターン20)が形成されて構成されている。
【0028】
この場合、図3に示すように、この磁気ディスク10では、トラックパターン領域At,At・・の間にサーボパターン領域As,As・・が設けられてトラックパターン領域Atおよびサーボパターン領域Asが磁気ディスク10の回転方向(矢印Rの向き)において交互に並ぶように規定されている。また、図4,5に示すように、トラックパターン領域At(内周側トラックパターン領域Atiおよび外周側トラックパターン領域Ato)には、データトラックパターンとしての凹凸パターン20tが形成されている。この場合、凹凸パターン20tは、磁気ディスク10の回転中心を中心O(図3参照)とする同心円状の多数の凸部21t,21t・・(データ記録用トラック:以下「記録トラック」ともいう)と、各凸部21t,21t・・の間の凹部22t,22t・・とで構成されている。なお、磁気ディスク10の回転中心と凹凸パターン20tの中心Oとが一致しているのが好ましいが、実際には、製造誤差に起因する30〜50μm程度の極く小さなずれが生じることがある。しかし、この程度のずれ量であれば磁気ヘッド3に対するトラッキングサーボ制御が十分に可能であるため、回転中心と中心Oとは、実質的には同様であるといえる。また、凹凸パターン20tの凹部22t,22t・・には、非磁性材料15が埋め込まれてトラックパターン領域Atの表面が平坦化されている。
【0029】
また、図4,5に示すように、サーボパターン領域As(内周側サーボパターン領域Asiおよび外周側サーボパターン領域Aso)には、サーボパターンとしての凹凸パターン20sが形成されている。この場合、凹凸パターン20sは、プリアンブルパターン、アドレスパターンおよびバーストパターンなどの各種サーボパターンを構成する凸部21s,21s・・(凸部21siおよび凸部21so)並びに凹部22s,22s・・(凹部22siおよび凹部22so)で構成されている。また、この磁気ディスク10では、回転方向(各図における矢印Rの向き)に沿った凹部22sの長さを凹凸パターン20tの中心Oからの距離に比例させずに(外周側ほど長くせずに)、磁気ディスク10の内周側から外周側までの全域において等しくなるように(単位凹部長をデータトラックパターンの中心からの距離で除した値を内周側から外周側に向かうほど小さく規定した一例であって、本発明における「単位凹部長が等しい長さ、または、ほぼ等しい長さ」となるように規定した一例)各凹部22s,22s・・が形成されている。
【0030】
同様にして、回転方向に沿った凸部21sの長さについても、凹凸パターン20tの中心Oからの距離に比例させずに(外周側ほど長くせずに)、内周側から外周側までの全域において等しくなるように(単位凸部長をデータトラックパターンの中心からの距離で除した値を内周側から外周側に向かうほど小さく規定した一例であって、本発明における「単位凸部長が等しい長さ、または、ほぼ等しい長さ」となるように規定した一例)各凸部21s,21s・・が形成されている。このため、この磁気ディスク10では、回転方向に沿った凸部21sの長さと凹部22sの長さとの合計長(すなわち、凸部21sおよび凹部22sの形成ピッチ)が凹凸パターン20tの中心Oからの距離に比例せずに(外周側ほど長くせずに)、磁気ディスク10の内周側から外周側までの全域において等しくなるように規定されている。したがって、回転方向に沿った凸部21sの長さに対する凹部22sの長さの比が内周側から外周側までの全域において等しくなるように凹凸パターン20sが形成されている。
【0031】
具体的には、図4に示すように、内周側領域Ai(一例として、凹凸パターン20tの中心Oからの距離が11mmの部位におけるプリアンブルパターンの形成領域)では、凸部21siの長さL1i(一例として、220nm)と凹部22siの長さL2i(一例として、220nm)との合計長である長さL3iが440nmとなるように規定されている。また、図5に示すように、外周側領域Ao(一例として、凹凸パターン20tの中心Oからの距離が32mmの部位におけるプリアンブルパターンの形成領域)においても、凸部21soの長さL1o(一例として、凸部21siの長さL1iと等しい220nm)と、凹部22soの長さL2o(一例として、凹部22siの長さL2iと等しい220nm)との合計長である長さL3oが440nmとなっている。この結果、図4,5に示すように、この磁気ディスク10では、内周側領域Aiにおける凹凸パターン20sの凸部21siの長さL1iに対する凹部22siの長さL2iの比と、外周側領域Aoにおける凸部21soの長さL1oに対する凹部22soの長さL2oの比とがそれぞれ1となっている(データトラックパターンの中心からの距離が等しい同一半径位置において回転方向に沿った単位凹部長が回転方向に沿った単位凸部長以下の長さとなるように単位凸部長および単位凹部長が規定されている状態の一例)。
【0032】
この場合、凸部21sの長さ(単位凸部長)に対する凹部22sの長さ(単位凹部長)の比については、上記のプリアンブルパターンのみならず、アドレスパターンやバーストパターンを構成する凹凸パターン20sについても同様に規定されている。また、バーストパターンについては、磁気ディスク10の回転方向に沿って複数の矩形状の凹部22s,22s・・が凸部21sを挟んで並んでいる領域において、単位凸部長に対する単位凹部長の比が上記の条件を満たすように規定されている。なお、図4,5では、サーボパターンにおけるプリアンブルパターンおよびバーストパターンを模式的に図示しており、理解を容易にすべく、回転方向に沿った各凸部21s,21s・・や各凹部22s,22s・・の長さをサーボパターンの単位凸部長および単位凹部長のみで図示している。したがって、実際の磁気ディスク10では、凸部21s,21s・・や凹部22s,22s・・の数、形成位置および長さが各図に示す状態とは異なり、トラッキングサーボ制御に必要なトラックアドレスおよびセクターアドレス等の情報(パターン)を含む各種の制御用データに対応して、凸部21sや凹部22sのそれぞれの数、形成位置および長さが規定されて凹凸パターン20sが形成されている。この場合、凸部21sや凹部22sの実際の長さは、凸部21sや凹部22sの長さ(単位凸部長および単位凹部長)の整数倍の長さとなる。
【0033】
一方、スピンドルモータ2は、制御部8の制御下で磁気ディスク10を一例として4200rpmの回転数で定速回転させる。磁気ヘッド3は、図1に示すように、スイングアーム3aを介してアクチュエータ3bに取り付けられて磁気ディスク10に対する記録データの記録再生時において磁気ディスク10上を移動させられる。また、磁気ヘッド3は、磁気ディスク10のサーボパターン領域Asからのサーボデータの読み出しと、トラックパターン領域At(凸部21t,21t・・)に対する記録データの磁気的な書き込みと、トラックパターン領域Atに磁気的に書き込まれている記録データの読み出しとを実行する。なお、磁気ヘッド3は、実際には磁気ディスク10に対して磁気ヘッド3を浮上させるためのスライダの底面(エアベアリング面)に形成されているが、このスライダについての説明および図示を省略する。アクチュエータ3bは、制御部8の制御下でドライバ7から供給される駆動電流によってスイングアーム3aをスイングさせることにより、磁気ヘッド3を磁気ディスク10上の任意の記録再生位置に移動させる。信号変換部4は、アンプ、LPF(Low Pass Filter)およびA/D変換器等(図示せず)を備え、磁気ヘッド3によって磁気ディスク10から取得された各種信号を増幅してノイズを除去した後にA/D変換して出力する。
【0034】
ROM9は、制御部8が出力すべき読み出し周波数情報についてのクロックデータDclを磁気ヘッド3の移動位置(中心Oからの距離)に関連付けて記憶している。この場合、制御部8は、後述するように、クロックデータDclに基づき、一例として、凹凸パターン20tの中心Oからの距離に比例して外周側ほど波長が短くなるように読み出し周波数情報の周波数を直線的に変化させて検出用クロック出力部5に出力する。検出用クロック出力部5は、制御部8がクロックデータDclに基づいて出力する読み出し周波数情報を取得すると共に、信号変換部4から出力されたデジタルデータのうちから、磁気ヘッド3を介してサーボパターン領域Asから読み出されたプリアンブル用のデータ(信号)を取得(検出)する。また、検出用クロック出力部5は、取得した読み出し周波数情報とプリアンブル用のデータとに基づいて位相や周波数等の調整を行うことにより、実際のサーボデータ検出時に使用される検出用クロックClsを生成してサーボデータ検出部6に出力する。
【0035】
この場合、この磁気ディスク10では、回転方向に沿ったサーボパターン領域Asの長さが内周側から外周側までの全域において等しくなるように凹凸パターン20sが形成されているため、磁気ディスク10を角速度一定の回転速度で定速回転させたときには、磁気ヘッド3の下方をサーボパターン領域Asが通過させられる時間が外周側ほど短時間となる。したがって、制御部8は、一例として、磁気ディスク10が4200rpmで定速回転させられている状態において、磁気ヘッド3が内周側領域Aiの記録トラック(凸部21t)にオントラックさせられているときには、22MHzの読み出し周波数情報を出力し、磁気ヘッド3が外周側領域Aoの記録トラック(凸部21t)にオントラックさせられているときには、64MHzの読み出し周波数情報を出力する。また、磁気ヘッド3が内周側領域Aiから外周側領域Aoの間のいずれかの記録トラック(凸部21t)にオントラックさせられているときには、制御部8は、読み出し周波数情報の周波数を22MHz〜64MHzの間で凹凸パターン20tの中心Oからの距離に比例して直線的に変化させて出力する。
【0036】
サーボデータ検出部6は、検出用クロック出力部5から出力された検出用クロックClsに同期して読み込むことにより、信号変換部4から出力されたデジタルデータからサーボデータDsを取得(検出)して制御部8に出力する。ドライバ7は、制御部8からの制御信号に従ってアクチュエータ3bを制御して磁気ヘッド3を所望の記録トラック(凸部21t)にオントラックさせる。制御部8は、ハードディスクドライブ1を総括的に制御する。また、制御部8は、サーボデータ検出部6から出力されるヘッド位置情報に基づいて磁気ヘッド3が磁気ディスク10上の内周側から外周側までの間のいずれの記録トラックにオントラックしているかを特定すると共に、所望する磁気ヘッド3の位置(磁気ヘッド3を移動させようとする記録トラックの位置)に応じて予め規定されてROM9に記憶させられているクロックデータDcl(周波数変更条件についてのデータ)に応じて前述したように読み出し周波数情報の周波数を変化させて検出用クロック出力部5に出力する。さらに、制御部8は、サーボデータ検出部6から出力されたサーボデータDsに基づいてドライバ7を制御する。
【0037】
次に、磁気ディスク10の製造方法について説明する。
【0038】
上記の磁気ディスク10の製造に際しては、図6に示す中間体30と図7に示すスタンパー35とを使用する。この場合、図6に示すように、中間体30は、軟磁性層12、中間層13、および磁性層14がガラス基材11の上にこの順で形成されると共に、磁性層14の上に、マスク層17と、厚み80nm程度の樹脂層(レジスト層)18とが形成されて構成されている。一方、スタンパー35は、本発明に係る情報記録媒体製造用のスタンパーの一例であって、図7に示すように、磁気ディスク10における凹凸パターン20(凹凸パターン20t,20s)とは凹凸位置関係が反転している凹凸パターン39が形成されて、インプリント法による磁気ディスク10の製造が可能に構成されている。この場合、スタンパー35の凹凸パターン39は、凸部39a,39a・・が磁気ディスク10の凹凸パターン20における凹部22,22・・に対応し、凹部39b,39b・・が凹凸パターン20における凸部21,21・・に対応して形成されている。したがって、このスタンパー35では、凸部39aの回転方向に沿った長さが凹凸パターン20における凹部22の回転方向に沿った長さとほぼ等しく、かつ凹部39bの回転方向に沿った長さが凹凸パターン20における凸部21の回転方向に沿った長さとほぼ等しくなっている。なお、中間体30およびスタンパー35の製造方法については、特に限定されず、公知の各種製造方法によって製造することができる。
【0039】
この中間体30およびスタンパー35を用いた磁気ディスク10の製造に際しては、図8に示すように、まず、中間体30の樹脂層18にスタンパー35の凹凸パターン39をインプリント法によって転写する。具体的には、スタンパー35における凹凸パターン39の形成面を中間体30の樹脂層18に押し付けることにより、凹凸パターン39の凸部39a,39a・・を中間体30の樹脂層18に押し込む。この場合、このスタンパー35を用いて製造する磁気ディスク10は、前述したように、凸部21s,21s・・の長さ(単位凸部長)を凹凸パターン20tの中心Oからの距離で除した値が内周側サーボパターン領域Asiから外周側サーボパターン領域Asoに向かうほど小さくなるように各凸部21s,21s・・の長さが規定されると共に、凹部22s,22s・・の長さ(単位凹部長)を凹凸パターン20tの中心Oからの距離で除した値が内周側サーボパターン領域Asiから外周側サーボパターン領域Asoに向かうほど小さくなるように各凹部22s,22s・・の長さが規定されている。
【0040】
具体的には、スタンパー35を用いて製造する磁気ディスク10では、凹部22s(凹部22si,22so)の長さが内周側サーボパターン領域Asiから外周側サーボパターン領域Asoまでのサーボパターン領域Asの全域において等しい長さとなるように規定されている。したがって、磁気ディスク10を製造するためのスタンパー35には、磁気ディスク10におけるサーボパターン領域Asに対応する全域において、回転方向に沿った長さが長さL2i,L2oを大きく超える凸部39aが存在しないように(凸部39aの長さが長さL2i,L2oとほぼ等しくなるように)凹部39b,39b・・が形成されている。この結果、凸部39a,39a・・が樹脂層18にスムーズに押し込まれる。これにより、スタンパー35における凸部39aの先端部と中間体30のマスク層17との間に厚手の残渣が生じることなく、スタンパー35の凸部39a,39a・・が十分に奥深くまで中間体30の樹脂層18に押し込まれる。
【0041】
この際に、凸部39a,39a・・が押し込まれた部位の樹脂材料がスタンパー35の凹部39b,39b・・内に向けて移動することにより、図8に示すように、マスク層17上に樹脂材料からなる凸部41a,41a・・が形成される。この場合、このスタンパー35では、前述したように各凸部39a,39a・・の回転方向に沿った長さがサーボパターン領域Asに対応する全域において等しい長さとなっている。したがって、凸部39a,39a・・の押し込みによって凹部39b,39b・・内に向けて移動する樹脂材料の移動量がサーボパターン領域Asに対応する全域において均一となっている。また、このスタンパー35を用いて製造する磁気ディスク10では、凸部21s(凸部21si,21so)の長さが内周側サーボパターン領域Asiから外周側サーボパターン領域Asoまでのサーボパターン領域Asの全域において等しい長さとなるように規定されている。したがって、磁気ディスク10を製造するためのスタンパー35には、磁気ディスク10におけるサーボパターン領域Asに対応する全域において、回転方向に沿った長さが長さL1i,L1oを大きく超える凹部39bが存在しないように(凹部39bの長さが長さL1i,L1oとほぼ等しくなるように)凸部39a,39a・・が形成されている。この結果、凹部39b内に移動させられた樹脂材料の高さ、すなわち、凸部41aの高さがサーボパターン領域Asに対応する全域において均一となる。
【0042】
次いで、中間体30からスタンパー35を剥離し、さらに、底面に残存する樹脂(残渣:図示せず)を酸素プラズマ処理によって除去することにより、図9に示すように、中間体30におけるマスク層17の上に樹脂層18からなる凹凸パターン41が形成される。この場合、前述したように中間体30の樹脂層18に対してスタンパー35における内周側の凸部39a,39a・・から外周側の凸部39a,39a・・までほぼ均等に押し込まれてマスク層17上の残渣の厚みが全域においてほぼ均等となっているため、中間体30のいずれかの部位(例えば内周側の領域)において残渣の取り除きが完了した時点で、他の領域(例えば外周側の領域)においてもほぼ同時に残渣の取り除きが完了する。次いで、残渣の取り除きが完了した凹凸パターン41(樹脂層18)をマスクとして用いてエッチング処理を実行することにより、凹凸パターン41における凹部41b,41b・・の底部においてマスク(凸部41a,41a・・)から露出しているマスク層17をエッチングする。
【0043】
この場合、マスクとして用いる凹凸パターン41を形成するのに使用したスタンパー35は、その凹凸パターン39が磁気ディスク10の凹凸パターン20とは凹凸位置関係が反転しているため、凹凸パターン39の単位凸部長(凸部39aの単位凸部長に対応する長さ)を凹凸パターン39の中心(凹凸パターン20tの中心Oに対応する位置)からの距離で除した値が内周側から外周側に向かうほど小さくなっている。言い換えれば、スタンパー35の凹凸パターン39は、中心(凹凸パターン20tの中心Oに対応する位置)からの距離で単位凸部長を除した値が外周側から内周側に向かうほど大きくなっている。したがって、この凹凸パターン39を転写して形成した凹凸パターン41では、単位凹部長(凹部41bの単位凹部長に対応する長さ)を凹凸パターン41の中心(凹凸パターン20tの中心Oに対応する位置)からの距離で除した値が外周側から内周側に向かうほど大きくなっており、これにより、内周側の凹部41bにおける回転方向に沿った長さが過度に短くなる事態が回避されている。したがって、凹部41bが過度に狭いことに起因するエッチング不良を招くことなく、十分に広い凹部41bから露出しているマスク層17を確実にエッチングすることが可能となっている。
【0044】
また、凹凸パターン41を形成するのに使用したスタンパー35では、磁気ディスク10における単位凹部長に対応する凸部39aの長さが内周側から外周側までの全域において等しい長さとなっている。したがって、この凹凸パターン39を転写して形成した凹凸パターン41では、単位凹部長(凹部41bの単位凹部長に対応する長さ)が内周側から外周側までの全域において等しい長さとなるため、残渣の取り除きが完了した凹凸パターン41を用いて内周側から外周側までマスク層17を均一にエッチング処理することが可能となっている。これにより、図10に示すように、凸部42aおよび凹部42bを有する凹凸パターン42が中間体30のマスク層17に形成される。
【0045】
次いで、凹凸パターン42(マスク層17)をマスクとして用いてエッチング処理を実行することにより、凹凸パターン42における凹部42b,42b・・の底部においてマスク(凸部42a,42a・・)から露出している磁性層14をエッチングする。これにより、図11に示すように、その回転方向に沿った長さがスタンパー35における凹部39bの回転方向に沿った長さとほぼ等しい凸部21と、その回転方向に沿った長さがスタンパー35における凸部39aの回転方向に沿った長さとほぼ等しい凹部22とを有する凹凸パターン20(凹凸パターン20t,20s)が中間体30の磁性層14に形成される。次いで、凸部21,21・・の上に残存しているマスク層17に対して選択的にエッチング処理を行うことにより、残存しているマスク層17を完全に除去して凸部21,21・・の突端面を露出させる。
【0046】
次いで、非磁性材料15としてのSiOをスパッタリングする。この際には、非磁性材料15によって凹部22,22・・が完全に埋め尽くされ、かつ、凸部21,21・・の上に例えば厚みが60nm程度の非磁性材料15の層が形成されるように、非磁性材料15を十分にスパッタリングする。続いて、磁性層14の上(凸部21,21・・の上および凹部22,22・・の上)の非磁性材料15の層に対してイオンビームエッチング処理を実行する。この際には、各凸部21,21・・の突端面が非磁性材料15から露出するまでイオンビームエッチング処理を継続する。これにより、中間体30の表面が平坦化される。続いて、中間体30の表面を覆うようにしてCVD法によってダイヤモンドライクカーボン(DLC)の薄膜を成膜することによって保護層16形成した後に、保護層16の表面にフッ素系の潤滑剤を平均厚さが例えば2nm程度となるように塗布する。これにより、図2に示すように、磁気ディスク10が完成する。
【0047】
この磁気ディスク10では、前述したように、サーボパターン領域Asの凹凸パターン20sにおける回転方向に沿った凸部21s,21s・・の長さ(長さL1i,L1o)と、回転方向に沿った各凹部22s,22s・・の長さ(長さL2i,L2o)とが磁気ディスク10の内周側から外周側までの全域に亘って等しくなるように各凸部21s,21s・・および各凹部22s,22s・・が形成されている。したがって、この磁気ディスク10では、サーボパターン領域Asの凹凸パターン20sにおける回転方向に沿った凸部21sの長さと凹部22sの長さとの合計長(長さL3i,L3o)が磁気ディスク10の内周側から外周側までの全域に亘って等しくなるように各凸部21s,21s・・および各凹部22s,22s・・が形成されている。この結果、図3に示すように、内周側サーボパターン領域Asi(内周側領域Aiの凹凸パターン20s)の回転方向に沿った長さL4iと、外周側サーボパターン領域Aso(外周側領域Aoの凹凸パターン20s)の回転方向に沿った長さL4oとが等しくなっている。このため、この磁気ディスク10では、トラックパターン領域Atの回転方向に沿った長さが内周側から外周側に向けて徐々に長くなっている。具体的には、内周側トラックパターン領域Ati(内周側領域Aiの凹凸パターン20t)の回転方向に沿った長さL5iよりも、外周側トラックパターン領域Ato(外周側領域Aoの凹凸パターン20t)の回転方向に沿った長さL5oの方が長くなっている。したがって、従来の磁気ディスク10xと比較して、外周側において凸部21tの長さが長くなっている分だけ、記録データの記録可能容量が増加している。
【0048】
また、この磁気ディスク10では、上記のように、凹凸パターン20s(サーボパターン)における回転方向に沿った凸部21s,21s・・の長さと、回転方向に沿った各凹部22s,22s・・の長さとが磁気ディスク10の内周側から外周側までの全域に亘って等しくなるように各凸部21s,21s・・および各凹部22s,22s・・が形成されている。したがって、この磁気ディスク10を搭載したハードディスクドライブ1では、記録データの記録再生時において、制御部8が、サーボデータ検出部6からの信号に基づいて磁気ヘッド3の位置(凹凸パターン20tの中心Oからの距離)を特定すると共に、磁気ヘッド3を移動させようとする位置に応じて読み出し周波数情報の周波数を直線的に変化させて検出用クロック出力部5に出力することでサーボデータDsを読み出すための基準となるクロックの周波数を変化させている。これにより、内周側サーボパターン領域Asiから外周側サーボパターン領域Asoまでのサーボパターン領域Asの全域からサーボデータDsを確実に読み出す(検出する)ことが可能となっている。また、制御部8は、サーボパターン領域Asから読み出されたサーボデータDsに基づいてドライバ7を制御することにより、アクチュエータ3bを駆動させて磁気ヘッド3を所望のトラックにオントラックさせる。これにより、トラックパターン領域At内の凸部21t,21t・・(データ記録トラック)にオントラックさせた磁気ヘッド3を介して記録データの記録再生が行われる。
【0049】
このように、この磁気ディスク10およびハードディスクドライブ1によれば、単位凸部長を凹凸パターン20tの中心Oからの距離で除した値が内周側から外周側に向かうほど小さくなるように単位凸部長を規定すると共に単位凹部長を凹凸パターン20tの中心Oからの距離で除した値が内周側から外周側に向かうほど小さくなるように単位凹部長を規定し、かつ、凹凸パターン20tの中心Oからの距離が等しい同一半径位置において単位凹部長が単位凸部長以下の長さとなるように単位凸部長および単位凹部長を規定して凹凸パターン20s(サーボパターン)を形成したことにより、回転方向に沿った単位凹部長が中心からの距離に比例して長くなるように(単位凸部長を中心からの距離で除した値が内周側から外周側までの全域に亘って等しくなるように)凹凸パターンが形成されている従来の磁気ディスク10xと比較して、外周側の単位凹部長を十分に短くすることができる。したがって、この磁気ディスク10を製造するためのスタンパー35において磁気ディスク10の各凹部22s,22s・・に対応する凸部39a,39a・・の回転方向に沿った長さを十分に短くすることができるため、インプリント処理時に、スタンパー35における凸部39aの先端部と中間体30のマスク層17との間に厚手の残渣を生じさせることなく、スタンパー35の凸部39a,39a・・を十分に奥深くまで中間体30の樹脂層18に押し込むことができる。この結果、残渣の厚みがサーボパターン領域Asの全域においてほぼ同様の厚みとなるため、残渣の取り除き処理時に内周側サーボパターン領域Asiにおける凹部41b,41b・・が過剰に拡がる事態が回避される。したがって、凹部41b,41b・・の部位に最終的に形成される凹部22si,22si・・が過剰に拡がる事態が回避されて凹凸パターン20sを高精度で形成することができる。これにより、サーボパターン領域Asの全域において磁気的信号の確実な読み取りが可能なサーボパターンを有する磁気ディスク10、およびその磁気ディスク10を備えたハードディスクドライブ1を提供することができる。
【0050】
この場合、単位凹部長を凹凸パターン20tの中心Oからの距離で除した値が外周側から内周側に向かうほど大きくなるように単位凹部長が規定されているため、その内周側において単位凹部長が過度に短くなる事態が回避されている。したがって、製造時における凹部の形成処理(マスク層17や磁性層14に対するエッチング処理等)が困難となる事態を回避することができる結果、サーボパターン領域Asの全域において凹部22s,22s・・を高精度で形成することができる。また、単位凸部長を凹凸パターン20tの中心Oからの距離で除した値が内周側から外周側に向かうほど小さくなるように単位凸部長を規定したことにより、この磁気ディスク10を製造するためのスタンパー35において磁気ディスク10の各凸部21s,21s・・に対応する凹部39b,39b・・の回転方向に沿った長さを外周側においても十分に短くすることができる。このため、インプリント処理時にスタンパー35における凸部39a,39a・・の押し込みによって凹部39b,39b・・内に移動させられる樹脂材料によって、十分に高い凸部41a,41a・・を樹脂層18に形成する(十分に厚い樹脂マスクを形成する)ことができる。さらに、凹凸パターン20tの中心Oからの距離が等しい同一半径位置において回転方向に沿った単位凹部長が回転方向に沿った単位凸部長以下の長さとなるように単位凸部長および単位凹部長を規定して凹凸パターン20sを形成したことにより、単位凹部長が単位凸部長を超えるように規定して形成した凹凸パターンと比較して、単位凹部長を十分に短くすることができる。したがって、スタンパー35において磁気ディスク10の各凹部22s,22s・・に対応する凸部39a,39a・・の回転方向に沿った長さを十分に短くすることができるため、マスク層17上に厚手の残渣を生じさせることなく凹凸パターン41を形成することができる。この結果、残渣の取り除き時に凹部41b,41b・・が過剰に拡がる事態を確実に回避して凹凸パターン20sを高精度で形成することができる。
【0051】
また、この磁気ディスク10およびハードディスクドライブ1によれば、単位凹部長が内周側から外周側までの全域において等しい長さとなるように規定して凹凸パターン20s(サーボパターン)を形成したことにより、この磁気ディスク10を製造するためのスタンパー35において磁気ディスク10の各凹部22s,22s・・に対応する凸部39a,39a・・の回転方向に沿った長さを内周側から外周側までの全域において等しい長さとすることができる。したがって、磁気ディスク10の製造時に生じる残渣の厚みを内周側から外周側までの全域において均一にすることができる。これにより、内周側サーボパターン領域Asiから外周側サーボパターン領域Asoまで凹凸パターン20sを一層高精度で形成することができる。また、内周側から外周側までの全域において単位凹部長を等しい長さ、または、ほぼ等しい長さに規定したことにより、製造時における凹部の形成処理(マスク層17や磁性層14に対するエッチング処理等)が容易となる結果、サーボパターン領域Asの全域において凹部22s,22s・・を高精度で形成することができる。
【0052】
さらに、この磁気ディスク10およびハードディスクドライブ1によれば、単位凸部長が内周側から外周側までの全域において等しい長さとなるように規定して凹凸パターン20s(サーボパターン)を形成したことにより、この磁気ディスク10を製造するためのスタンパー35において磁気ディスク10の各凸部21s,21s・・に対応する凹部39b,39b・・の回転方向に沿った長さを内周側から外周側まで均一にすることができるため、インプリント処理時に、スタンパー35における凸部39aの押し込みによって凹部39b内に移動させられた樹脂材料によって形成される凸部41a(マスクとして機能する樹脂材料)の高さを内周側から外周側まで均一にすることができる。この結果、均一な厚みのマスク(均一な高さの凸部41a)を用いて凹部22s,22s・・を高精度で形成することができる。
【0053】
また、このハードディスクドライブ1によれば、凹凸パターン20tの中心Oからの距離に応じて予め規定された読み出し周波数情報に基づいてサーボデータ検出部6が磁気ディスク10からサーボパターンに対応付けられているサーボデータDsを読み出すことにより、磁気ディスク10を角速度一定の条件で回転させつつサーボパターン領域AsからサーボデータDsを確実に読み出すことができる。
【0054】
さらに、この磁気ディスク10を製造するためのスタンパー35によれば、磁気ディスク10における凹凸パターン20(凹凸パターン20t,20s)の凹部22,22・・に対応して形成された凸部39a,39a・・と、磁気ディスク10における凹凸パターン20の凸部21,21・・に対応して形成された凹部39b,39b・・とを有する凹凸パターン39を形成したことにより、回転方向に沿った長さが過剰に長い凸部39aがスタンパー35に存在しないため、インプリント処理時に、中間体30の樹脂層18に対してスタンパー35の凹凸パターン39(各凸部39a,39a・・)をスムーズに押し込むことができる。したがって、各凸部39a,39a・・の押し込み量の不足に起因する不都合(マスク層17上に厚手の残渣が生じることに起因して各凹部41b,41b・・が過剰に拡がる事態)が生じる事態を回避することができる。これにより、サーボデータDsの確実な読み取りが可能な磁気ディスク10を製造することができる。また、回転方向に沿った長さが過剰に長い凹部39bがスタンパー35に存在しないため、インプリント処理時に凸部39a,39a・・の押し込みによって凹部39b,39b・・内に移動させられる樹脂材料によって、十分に高い凸部41a,41a・・を樹脂層18に形成する(十分に厚い樹脂マスクを形成する)ことができる。
【0055】
なお、本発明は、上記の構成に限定されない。例えば、サーボパターン領域Asの全域(内周側サーボパターン領域Asiから外周側サーボパターン領域Asoまで)において回転方向に沿った各凸部21s,21s・・の長さ(長さL1i,L1o)および各凹部22s,22s・・の長さ(長さL2i,L2o)が等しくなるように凹凸パターン20sを形成する例について上記したが、各凸部21s,21s・・の長さや各凹部22s,22s・・の長さが内周側から外周側までの各部において僅かに異なるように凹凸パターン20sを形成することもできる。具体的には、内周側の凸部21siよりも外周側の凸部21soの方が回転方向に沿った長さが僅かに長くなるような構成や、内周側の凹部22siよりも外周側の凹部22soの方が回転方向に沿った長さが僅かに長くなるような構成を採用することができる。また、内周側の凸部21siよりも外周側の凸部21soの方が回転方向に沿った長さが僅かに短くなるような構成や、内周側の凹部22siよりも外周側の凹部22soの方が回転方向に沿った長さが僅かに短くなるような構成を採用することもできる。
【0056】
上記のように凹部22s,22s・・の長さを異ならしめる構成であったとしても、外周側の凹部22soの長さを、従来の磁気ディスク10xにおける凹部22sxoの長さL2xoよりも短くして単位凹部長を規定することで、その磁気ディスクを製造するためのスタンパーにおける対応する凸部の長さを外周側においても十分に短くすることができる。したがって、インプリント時に厚手の残渣が生じる事態を十分に回避することができる。また、上記のように凸部21s,21s・・の長さを異ならしめる構成であったとしても、外周側の凸部21soの長さを、従来の磁気ディスク10xにおける凸部21sxoの長さL1xoよりも短くして単位凸部長を規定することで、その磁気ディスクを製造するためのスタンパーにおける対応する凹部の長さを外周側においても十分に短くすることができる。したがって、インプリント時に凸部39a,39a・・の押し込みによって凹部39b,39b・・内に移動させられる樹脂材料によって、十分に高い凸部41a,41a・・を樹脂層18に形成する(十分に厚い樹脂マスクを形成する)ことができる。
【0057】
また、上記のハードディスクドライブ1では、制御部8が、サーボデータ検出部6からの信号に基づいて磁気ヘッド3の位置(凹凸パターン20tの中心Oからの距離)を特定すると共に、磁気ヘッド3を移動させようとする位置に応じて読み出し周波数情報の周波数を直線的に変化させて検出用クロック出力部5に出力する構成を採用しているが、本発明はこれに限定されない。例えば、図12に示すように、磁気ディスク10の内周側領域Aiから外周側領域Aoまでの間を同心円状に区分けして複数の環状領域A1,A2・・AN(Nは2以上の自然数:以下、区別しないときには「環状領域AM(Mは2以上でN以下の自然数)」ともいう)を規定すると共に、各環状領域AM毎に読み出し周波数情報の周波数を予め規定しておく。また、記録再生時には、制御部8が、サーボデータ検出部6からの信号に基づいて磁気ヘッド3の位置(環状領域AM)を特定すると共に、磁気ヘッド3を移動させようとする位置(環状領域AM)に対応付けられている読み出し周波数情報を検出用クロック出力部5に出力する。
【0058】
この場合、上記の環状領域A1,A2・・ANのそれぞれの幅(磁気ディスク10の半径方向に沿った長さ)は、同一周波数の読み出し周波数情報に基づいてサーボデータDsが読み出し可能な範囲、すなわち、検出用クロック出力部5が読み出し周波数情報とプリアンブル用のデータとに基づいて位相や周波数の調整を行って実際にサーボデータを読み出すための同期用クロックとして使用される検出用クロックClsを生成できる範囲に規定するのが好ましい。この構成によれば、制御部8が凹凸パターン20tの中心Oからの磁気ヘッド3の距離に応じて読み出し周波数情報の周波数を直線的に変化させて出力する上記のハードディスクドライブ1と比較して、読み出し周波数情報の周波数の種類が少なくて済むため、例えば、磁気ヘッド3を内外周方向にシーク動作させる際における読み出し周波数情報の周波数切替え処理の回数を少なくすることができる。これにより、シーク動作を短時間で実行することができるため、高速なデータアクセスを行うことができる。
【0059】
さらに、上記のハードディスクドライブ1では、磁気ディスク10を角速度一定の回転速度で定速回転させつつ、制御部8が凹凸パターン20tの中心Oからの磁気ヘッド3の距離に応じて検出用クロック出力部5に対して出力する読み出し周波数情報の周波数を変化させているが、本発明はこれに限定されず、磁気ディスク10を線速度一定の回転速度で回転させ、制御部8から周波数一定の読み出し周波数情報を出力することでサーボデータ検出部6がサーボデータDsを読み取る構成を採用することができる。加えて、本発明におけるサーボパターンは上記の例に限定されず、磁気ディスク10のサーボパターン領域Asにおける凹凸パターン20sの凹凸形状を反転させると共に本発明における各種条件を満たすように単位凸部長および単位凹部長を規定してサーボパターンを形成することもできる。また、上記の磁気ディスク10では、凹凸パターン20における各凸部21,21・・の基端部から突端部までが磁性材料で形成されているが、本発明はこれに限定されず、図13に示す磁気ディスク10aのように、基材11aに形成した凹凸パターンを覆うようにして磁性層14aを形成することにより、その表面が磁性層14aで形成された凸部21a,21a・・と底面が磁性層14aで形成された凹部22a,22a・・とによって凹凸パターン20aを構成することもできる。
【0060】
この場合、基材11aの凹凸パターンについては、前述した磁気ディスク10における凹凸パターン20の形成方法と同様にして、例えば磁性層14のエッチングに際してマスクとして使用した凹凸パターン42を用いて基材11aをエッチングすることで形成することができる。また、例えばスタンパー35を用いたプレス成形や射出成形によって基材11aに凹凸パターンを形成することもできる。このように、インプリント法以外の各種製造方法によって凹凸パターンを形成する場合であっても、凹凸パターン20sを高精度で形成することができる。さらに、図14に示す磁気ディスク10bのように、各凸部21,21・・を構成する磁性層14bと各凸部21,21・・間の凹部22b,22b・・の底面を構成する磁性層14bとを連続させて凹凸パターン20bを構成することもできる。また、上記の磁気ディスク10,10a,10bでは、各凹部22に非磁性材料15を埋め込んでその表面を平坦化しているが、磁気ヘッド3の十分な浮上安定性が得られる場合には、凹部22に対する非磁性材料15を不要とすることができる。さらに、本発明に係る情報記録媒体は、磁気ディスク10,10a,10bのような垂直記録方式の磁気ディスクのみならず、面内記録方式の磁気ディスクが本発明に含まれる。
【0061】
さらに、インプリント法によって磁気ディスク10を製造する方法について上記したが、本発明に係る情報記録媒体を製造する方法はこれに限定されない。例えば、電子線描画装置を用いて中間体30の樹脂層18にサーボパターンおよびデータトラックパターンを描画した後に現像処理して前述した凹凸パターン41と凹凸位置関係が一致する凹凸パターンを樹脂層18に形成し、この凹凸パターンをマスクとして用いてマスク層17に対するエッチング処理を実行することで磁気ディスク10と同様の情報記録媒体を製造することができる。この場合、本発明に係る情報記録媒体では、単位凸部長をデータトラックパターンの中心からの距離で除した値が内周側から外周側に向かうほど小さくなるように規定されると共に、単位凹部長をデータトラックパターンの中心からの距離で除した値が内周側から外周側に向かうほど小さくなるように規定されてサーボパターンを構成する凹凸パターンが形成されている。言い換えれば、本発明に係る情報記録媒体では、単位凸部長をデータトラックパターンの中心からの距離で除した値、および単位凹部長をデータトラックパターンの中心からの距離で除した値の双方が外周側から内周側に向かうほどそれぞれ大きくなるように規定されて凹凸パターンが形成されている。したがって、本発明に係る情報記録媒体によれば、その内周側において単位凸部長および単位凹部長が過度に短くなる事態が回避されているため、製造時における凹部の形成処理(レジスト層に対する現像処理や、磁性層などに対するエッチング処理等)が困難となる事態を回避することができる。この場合、高密度記録化の要請に応えてサーボパターン等の一層の微細化が図られたとしても、本発明に係る情報記録媒体によれば、サーボパターン領域の全域においてサーボパターンを高精度で形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】ハードディスクドライブ1の構成を示すブロック図である。
【図2】磁気ディスク10の層構造を示す断面図である。
【図3】磁気ディスク10の平面図である。
【図4】磁気ディスク10における内周側領域Aiの平面図である。
【図5】磁気ディスク10における外周側領域Aoの平面図である。
【図6】磁気ディスク10を製造するための中間体30の断面図である。
【図7】磁気ディスク10を製造するためのスタンパー35の断面図である。
【図8】中間体30の樹脂層18にスタンパー35の凹凸パターン39を押し付けた状態の断面図である。
【図9】図8に示す状態の樹脂層18からスタンパー35を剥離してマスク層17の上に凹凸パターン41(樹脂マスク)を形成した状態の断面図である。
【図10】凹凸パターン41をマスクとしてマスク層17をエッチング処理して磁性層14の上に凹凸パターン42(マスク)を形成した状態の断面図である。
【図11】凹凸パターン42をマスクとして磁性層14をエッチング処理して中間層13の上に凹凸パターン20を形成した状態の断面図である。
【図12】環状領域A1,A2・・ANの一例を示す平面図である。
【図13】磁気ディスク10aの層構造を示す断面図である。
【図14】磁気ディスク10bの層構造を示す断面図である。
【図15】従来の磁気ディスク10xの平面図である。
【図16】磁気ディスク10xにおける内周側領域Axiの平面図である。
【図17】磁気ディスク10xにおける外周側領域Axoの平面図である。
【図18】磁気ディスク10xの製造工程において、スタンパーの凸部39ax,39ax・・(回転方向に沿った長さが短い凸部39ax,39ax・・)が押し込まれた状態の樹脂層の断面図である。
【図19】磁気ディスク10xの製造工程において、スタンパーの凸部39ax,39ax・・(回転方向に沿った長さが長い凸部39ax,39ax・・)が押し込まれた状態の樹脂層の断面図である。
【符号の説明】
【0063】
1 ハードディスクドライブ
5 検出用クロック出力部
6 サーボデータ検出部
7 ドライバ
10,10a,10b 磁気ディスク
11 ガラス基材
11a 基材
14,14a,14b 磁性層
18 樹脂層
20,20a,20b,20s,20t 凹凸パターン
21,21a,21b,21s,21si,21so,21t 凸部
22,22a,22b,22s,22si,22so,22t 凹部
30 中間体
35 スタンパー
A1,A2・・AN 環状領域
Ai 内周側領域
Ao 外周側領域
As サーボパターン領域
Asi 内周側サーボパターン領域
Aso 外周側サーボパターン領域
At トラックパターン領域
Ati 内周側トラックパターン領域
Ato 外周側トラックパターン領域
Cls 検出用クロック
Ds サーボデータ
L1i〜L5i,L1o〜L5o 長さ
O 中心
R 矢印

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の少なくとも一面側に凹凸パターンによってサーボパターンが形成されると共に、同心円状または螺旋状のデータ記録トラックが当該一面側に設けられてデータトラックパターンが形成され、
前記サーボパターンを構成する前記凹凸パターンは、前記基材の回転方向に沿った単位凸部長を前記データトラックパターンの中心からの距離で除した値が内周側から外周側に向かうほど小さくなるように当該単位凸部長が規定されると共に、前記回転方向に沿った単位凹部長を前記データトラックパターンの中心からの距離で除した値が前記内周側から前記外周側に向かうほど小さくなるように当該単位凹部長が規定され、かつ、前記データトラックパターンの中心からの距離が等しい同一半径位置において前記回転方向に沿った前記単位凹部長が当該回転方向に沿った前記単位凸部長以下の長さとなるように当該単位凸部長および当該単位凹部長が規定されている情報記録媒体。
【請求項2】
前記サーボパターンを構成する前記凹凸パターンは、前記単位凹部長が前記内周側から前記外周側までの全域において等しい長さ、または、ほぼ等しい長さとなるように規定されている請求項1記載の情報記録媒体。
【請求項3】
前記サーボパターンを構成する前記凹凸パターンは、前記単位凸部長が前記内周側から前記外周側までの全域において等しい長さ、または、ほぼ等しい長さとなるように規定されている請求項1または2記載の情報記録媒体。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の情報記録媒体と、前記データトラックパターンの中心からの距離に応じて予め規定された読み出し周波数情報に基づいて前記情報記録媒体から前記サーボパターンに対応付けられているサーボデータを読み出してサーボ制御する制御部とを備えている記録再生装置。
【請求項5】
請求項1から3のいずれかに記載の情報記録媒体と、前記内周側から前記外周側までの間を同心円状に区分けした複数の環状領域毎に予め規定された読み出し周波数情報に基づいて前記情報記録媒体から前記サーボパターンに対応付けられているサーボデータを読み出してサーボ制御する制御部とを備えている記録再生装置。
【請求項6】
請求項1から3のいずれかに記載の情報記録媒体における前記凹凸パターンの凹部に対応して形成された凸部と、前記情報記録媒体における前記凹凸パターンの凸部に対応して形成された凹部とを有する凹凸パターンが形成された情報記録媒体製造用のスタンパー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2006−309879(P2006−309879A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−131530(P2005−131530)
【出願日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】