説明

情報記録媒体の劣化検出装置、該劣化検出装置を備えた洗浄装置及びプリンタ

【課題】可逆性記録層が劣化した情報記録媒体を的確に検出し得る劣化検出装置と、該劣化検出装置を備えた洗浄装置及びプリンタを提供する。
【解決手段】情報記録媒体がその一面に備える可逆性記録層に印字された印字部と非印字部とからなる測定領域をスキャンして光反射率に応じた出力信号を送出するスキャナ9と、前記出力信号から印字部及び/又は非印字部の反射率値を生成し、該印字部及び/又は非印字部の反射率値に基づいて可逆性記録層の劣化状態を検証するとともに、劣化していると判定された場合に、劣化検出信号を送出する検出制御手段12とによって情報記録媒体の劣化検出装置8を構成した。また、該劣化検出装置8を洗浄装置またはプリンタに内蔵させ、洗浄装置による洗浄前若しくは洗浄後、或いはプリンタによる印字後に、可逆性記録層7の劣化状態を検証できるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報記録媒体の基材の一面に設けられた可逆性記録層の劣化を検出する劣化検出装置及び該劣化検出装置を備えた洗浄装置とプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
RFID(Radio Frequency Identification)システムで用いられる非接触型ICカードやRFIDタグからなるRFID型の情報記録媒体は、基材内にICチップとアンテナが配設され、入出力装置(リーダ・ライタ)との間で電磁波を利用して非接触でコマンド,データ等の信号を送受信し得る機能を備えており、入出力装置側のアンテナが放射する有効電磁波ゾーン内で誘導起電力を生成して動作状態となるため、電池レスで使用できる利便性があり、データの保存容量が大きく、セキュリティ性に優れているため、近年、交通・レジャー分野,物流分野,セキュリティー分野,工場生産分野,環境分野,その他の幅広い分野で導入されている。
【0003】
このようなRFID型の情報記録媒体にあって、ICチップが具備するメモリに格納されている情報を知得するには、入出力装置で読み取り処理を行う必要があり、直接目視することができない。そこで、基材の一面に可逆性記録層を設け、メモリに格納されているデータに関する情報等を可視情報として可逆的に書き換えて表示し得るようにしたものが種々提案されている(例えば、特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−244013号公報
【特許文献2】特開2004−265247号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、基材の一面に設けられた可逆性記録層は、使用環境の影響を受けて多かれ少なかれ劣化するものであり、印字が薄くなったり、消え残りが生じるといった問題がある。この問題に対処するために、従来はICチップのメモリに記憶された書き換え履歴に基づいて使用回数を管理して廃棄時期を決めていた。この場合、可逆性記録層の劣化は各情報記録媒体間で一様ではなく、使用環境に応じて劣化の程度が異なるため、使用回数のみで一元的に廃棄時期を決める方法では、劣化していないのに廃棄されたり、逆に劣化が甚だしいのに廃棄されなかったりするという問題が生じていた。
【0006】
一方、主に工場における生産管理では、上記のようなRFID型の情報記録媒体以外に、基材の一面に可逆性記録層のみを備え、該可逆性記録層に可視情報を可逆的に書き換えて表示する非RFID型の情報記録媒体も用いられている。このような情報記録媒体にあっては、上述したRFID型における書き換え履歴に基づいた劣化管理を行うこともできず、使用者が目視によって劣化状態を判断するしかないため、使用者にそれなりの負担を強いるものであった。
【0007】
本発明は、かかる従来の実状に鑑みてなされたものであって、可逆性記録層が劣化した情報記録媒体を的確に検出し得る劣化検出装置と、該劣化検出装置を備えた洗浄装置及びプリンタを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、基材の一面に可視情報を繰り返し印字可能な可逆性記録層が設けられてなる情報記録媒体の、その可逆性記録層に印字された印字部と非印字部とからなる測定領域をスキャンして光反射率に応じた出力信号を送出するスキャナと、前記出力信号から印字部及び/又は非印字部の反射率値を生成し、該印字部及び/又は非印字部の反射率値に基づいて可逆性記録層の劣化状態を検証するとともに、劣化していると判定された場合に、劣化検出信号を送出する検出制御手段とを備えていることを特徴とする情報記録媒体の劣化検出装置である。
【0009】
ここで、情報記録媒体としては、基材内にICチップとアンテナとを備え、かつ基材の一面に可視情報を繰り返し印字可能な可逆性記録層を備えてなるRFID型の情報記録媒体と、基材の一面に可視情報を繰り返し印字可能な可逆性記録層のみを備えてなる非RFID型の情報記録媒体の何れであってもよい。また、可逆性記録層は、非印字部が白色を呈し、印字部が黒色を呈するように構成されたものが好適に用いられ得る。
【0010】
前記情報記録媒体の劣化検出装置にあって、検出制御手段が、測定領域の最小反射率値が予め設定された閾値以上である場合に可逆性記録層が劣化していると判定する制御内容を備えている構成が提案される。
【0011】
また、検出制御手段が、測定領域の最大反射率値が予め設定された閾値以下である場合に可逆性記録層が劣化していると判定する制御内容を備えている構成が提案される。
【0012】
また、検出制御手段が、測定領域の最小反射率値を最大反射率値で除し、得られた値が予め設定された閾値以上である場合に可逆性記録層が劣化していると判定する制御内容を備えている構成が提案される。
【0013】
さらに、検出制御手段が、測定領域の最大反射率値から最小反射率値を減じ、得られた値が予め設定された閾値以下である場合に可逆性記録層が劣化していると判定する制御内容を備えている構成が提案される。
【0014】
また、本発明は、基材の一面に可視情報を繰り返し印字可能な可逆性記録層が設けられてなる情報記録媒体を再使用前に洗浄するための洗浄装置であって、上述した情報記録媒体の劣化検出装置を備えてなり、可逆性記録層に印字が施されている情報記録媒体の洗浄前、若しくは洗浄後に前記劣化検出装置のスキャナによって測定領域をスキャンし、かつ検出制御手段によって可逆性記録層の劣化検出を行うことを特徴とする洗浄装置である。
【0015】
また、本発明は、基材の一面に可視情報を繰り返し印字可能な可逆性記録層が設けられてなる情報記録媒体の、その可逆性記録層に印字を施すプリンタであって、上述した情報記録媒体の劣化検出装置を備えてなり、印字後に前記劣化検出装置のスキャナによって測定領域をスキャンし、かつ検出制御手段によって可逆性記録層の劣化検出を行うことを特徴とするプリンタである。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、上述したように、基材の一面に可視情報を繰り返し印字可能な可逆性記録層が設けられてなる情報記録媒体の、その可逆性記録層に印字された印字部と非印字部とからなる測定領域をスキャンして光反射率に応じた出力信号を送出するスキャナと、前記出力信号から印字部及び/又は非印字部の反射率値を生成し、該印字部及び/又は非印字部の反射率値に基づいて可逆性記録層の劣化状態を検証するとともに、劣化していると判定された場合に、劣化検出信号を送出する検出制御手段とを備えた情報記録媒体の劣化検出装置であるから、個々の情報記録媒体毎に可逆性記録層の劣化状態が判定され、可逆性記録層が劣化した情報記録媒体を的確に検出することができる。そして、検出制御手段から送出される劣化検出信号に基づいて光りや音を発する報知手段を作動させるようにすれば、可逆性記録層が劣化した情報記録媒体を検出したことを報知することができる。また、情報記録媒体が振分け手段を備えた搬送経路によって搬送される場合には、検出制御手段から送出される劣化検出信号に基づいて振分け手段を作動させ、搬送経路を除去経路側に切り換えるようにすれば、可逆性記録層が劣化した情報記録媒体を除去することができる。
【0017】
前記情報記録媒体の劣化検出装置にあって、検出制御手段が、測定領域の最小反射率値が予め設定された閾値以上である場合に可逆性記録層が劣化していると判定する制御内容を備えている構成にあっては、測定領域の最小反射率値の多寡に基づいて可逆性記録層の劣化を検出することができる。
【0018】
また、検出制御手段が、測定領域の最大反射率値が予め設定された閾値以下である場合に可逆性記録層が劣化していると判定する制御内容を備えている構成にあっては、測定領域の最大反射率値の多寡に基づいて可逆性記録層の劣化を検出することができる。
【0019】
また、検出制御手段が、測定領域の最小反射率値を最大反射率値で除し、得られた値が予め設定された閾値以上である場合に可逆性記録層が劣化していると判定する制御内容を備えている構成にあっては、測定領域の最大反射率値に対する最小反射率値の比率の多寡に基づいて可逆性記録層の劣化を検出することができる。
【0020】
さらに、検出制御手段が、測定領域の最大反射率値から最小反射率値を減じ、得られた値が予め設定された閾値以下である場合に可逆性記録層が劣化していると判定する制御内容を備えている構成にあっては、測定領域の最大反射率値と最小反射率値の差の多寡に基づいて可逆性記録層の劣化を検出することができる。
【0021】
また、本発明は、基材の一面に可視情報を繰り返し印字可能な可逆性記録層が設けられてなる情報記録媒体を再使用前に洗浄するための洗浄装置であって、上述した情報記録媒体の劣化検出装置を備えてなり、可逆性記録層に印字が施されている情報記録媒体の洗浄前、若しくは洗浄後に前記劣化検出装置のスキャナによって測定領域をスキャンし、かつ検出制御手段によって可逆性記録層の劣化検出を行う洗浄装置であるから、劣化検出装置を単独で用いる場合に比して他の設置場所を確保する必要がなく、可逆性記録層が劣化した情報記録媒体を洗浄装置内で検出することができる。また、その後に行われるプリンタへの供給前に、可逆性記録層の劣化を検出することができるため、可逆性記録層が劣化した情報記録媒体のプリンタへの供給を未然に防止することができる。
【0022】
また、本発明は、基材の一面に可視情報を繰り返し印字可能な可逆性記録層が設けられてなる情報記録媒体の、その可逆性記録層に印字を施すプリンタであって、上述した情報記録媒体の劣化検出装置を備えてなり、印字後に前記劣化検出装置のスキャナによって測定領域をスキャンし、かつ検出制御手段によって可逆性記録層の劣化検出を行うプリンタであるから、劣化検出装置を単独で用いる場合に比して他の設置場所を確保する必要がなく、可逆性記録層が劣化した情報記録媒体をプリンタ内で検出することができる。また、可逆性記録層に印字が施された情報記録媒体を実際に使用する前に、当該情報記録媒体が具備する可逆性記録層の劣化を検出することができるため、可逆性記録層が劣化した情報記録媒体の使用を未然に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】(A)はRFID型の情報記録媒体1aの一部切欠平面図、(B)は該情報記録媒体1aの縦断面図、(C)は非RFID型の情報記録媒体1aの縦断面図である。
【図2】劣化検出装置8の構成を示すブロック図である。
【図3】劣化検証処理のフローチャートである。
【図4】所定時間毎の各反射率値の変化をグラフ化して示したスキャンプロファイルである。
【図5】洗浄装置17の内部構成を示す概略図である。
【図6】プリンタ29の内部構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、本発明の第一実施例を、図1〜図4に基づいて説明する。
情報記録媒体1aは、図1(A),(B)に示すように、平板矩形状の基材2内にICチップ3と該ICチップ3に電気的に接続されたループアンテナ4とが配設されており、該基材2の一面には可逆性記録層7が設けられている。ここで、基材2は上下一対の合成樹脂製シート材2a,2bからなり、ICチップ3とループアンテナ4とを担持した絶縁基板5を間に配置した状態で積層され、接着剤層6を介して一体化されている。可逆性記録層7は、熱や磁気或いは電荷によって可視情報を繰り返し印字可能な各種リライト層で構成されており、非印字部が白色を呈し、印字部が黒色を呈するものが好適に用いられ得る。可逆性記録層7上には、必要に応じて可逆性記録層7の保護を目的とする透明なオーバーコート層(図示省略)が設けられる。
【0025】
前記情報記録媒体1aは、図示しない入出力装置(リーダ・ライタ)との間で電磁波を利用してコマンド,データ等の信号を非接触で送受信し得る非接触型の電池レスタイプとなっており、前記ICチップ3が具備するメモリ(図示省略)には、入出力装置との交信により、所要データが書き換え可能に格納される。また、基材2の一面に設けられた可逆性記録層7には、所定の印字装置による印字によって前記所要データに関する可視情報が文字,数字,記号,バーコード等によって表示される。尚、本発明で適用可能な情報記録媒体としては、上記のようなRFID型の情報記録媒体1a以外に、図1(C)に示すように、基材2の一面に可逆性記録層7のみを備え、該可逆性記録層7に文字,数字,記号,バーコード等からなる可視情報を可逆的に書き換えて表示する非RFID型の情報記録媒体1bであってもよい。
【0026】
前記情報記録媒体1a,1bが備える可逆性記録層7の劣化状態を検出する劣化検出装置8は、図2に示すように、スキャナ9,増幅回路10,アナログデジタル変換回路11,検出制御手段12,報知手段13を備えている。また、必要に応じてソレノイド,モータ等の駆動手段14を備えるものとしてもよい。
【0027】
スキャナ9は、可逆性記録層7に印字された印字部と非印字部とからなる測定領域をスキャンして光反射率に応じた出力信号を送出するものであり、該スキャナ9から送出された出力信号は増幅回路10で増幅された後、アナログデジタル変換回路11でデジタル信号に変換されて検出制御手段12を構成する主制御基板15に入力される。
【0028】
検出制御手段12は、マイクロコンピュータからなる主制御基板15を備えており、該主制御基板15の基板回路上には、劣化検出に関する統括的な制御を処理実行する中央制御装置CPUが配設されている。該中央制御装置CPUには、必要なデータを随時読み書き可能な記憶装置RAMが、データのやり取りを行うデータバス(図示省略)を介して接続されている。さらに、中央制御装置CPUには、記憶装置ROMがアドレスを指定する情報を一方的に伝えるアドレスバス(図示省略)を介して接続されている。ここで、記憶装置ROMには、演算処理に用いる動作プログラムや各種閾値等の固定データが格納されている。一方、記憶装置RAMには、記憶エリア,ソフトタイマを構成するレジスタ領域,及びワークエリア等が設けられている。
【0029】
さらに、上記主制御基板15の基板回路には、所定のクロックパルスを出力するクロック装置(図示省略)が設けられ、中央制御装置CPUに接続されている。そして中央制御装置CPUは一定間隔のクロックパルスによって、時系列的に演算処理を行い、一連の処理作動を順次実行する。
【0030】
また、上記主制御基板15の基板回路には、中央制御装置CPUが周辺機器とデータ通信を行う入力ポート(図示省略)及び出力ポート(図示省略)が設けられており、該出力ポートを介して主制御基板15から劣化検出信号としての制御指令信号が、作動制御基板16に向けて発信され、該作動制御基板16がブザーやランプ等からなる報知手段13を作動させるようになっている。尚、駆動手段14を備えるものにあっては、主制御基板15からの制御指令信号を受けた作動制御基板16によってソレノイド,モータ等の駆動手段14が作動されることとなる。また、主制御基板15の入力ポートには、アナログデジタル変換回路11,増幅回路10を介してスキャナ9が接続されている。さらに、劣化検出装置8を操作するための操作パネルも接続されている。
【0031】
次に、検出制御手段12による可逆性記録層7の劣化検証処理を、図3に示すフローチャートに従って説明する。
スキャナ9によって可逆性記録層7の測定領域のスキャンが開始されると(S001)、その出力信号が増幅回路10及びアナログデジタル変換回路11を介して主制御基板15に入力される。ここで、可逆性記録層7に印字された印字部が黒色を呈し、非印字部が白色を呈するものである場合、白色の非印字部は光反射率が高く黒色の印字部に比してスキャナ9の出力電圧が大きくなり、逆に黒色の印字部は光反射率が低く白色の非印字部に比してスキャナ9の出力電圧が小さくなる。この電圧差による出力信号の変化を利用して、主制御基板15が所定の演算処理により所定時間毎(例えば2msec毎)の反射率値を算出して記憶装置RAMに順次記憶する(S002)。次いで、記憶装置RAMに記憶された各反射率値から最小反射率値Rminと最大反射率値Rmaxとを選出する(S003)。因みに図4は、所定時間毎の各反射率値の変化をグラフ化して示したスキャンプロファイルであって、このスキャンプロファイル上で反射率値が最も小さい箇所が最小反射率値Rminであり、反射率値が最も大きい箇所が最大反射率値Rmaxである。次いで、最小反射率値Rminが予め設定された閾値A以上であるか否かを判断する(S004)。これは印字部の黒色が薄くなっているか否か判断するものであり、一般に最小反射率値Rminが20%以上であれば可逆性記録層7の劣化が疑われる。そこで、ステップ(S004)では閾値Aを20%としており、最小反射率値Rminが20%以上であれば可逆性記録層7が劣化していると判定して、主制御基板15が劣化検出信号としての制御指令信号を作動制御基板16に送出する(S005)。そして、その制御指令信号を受けた作動制御基板16によって報知手段13を作動させた後(S006)、処理を終了する。
【0032】
ステップ(S004)で最小反射率値Rminが閾値A以上でなかった場合には、最大反射率値Rmaxが予め設定された閾値B以下であるか否かを判断する(S007)。これは非印字部の白色が以前の印字の消え残りや劣化等によって黒ずんでいるか否か判断するものであり、一般に最大反射率値Rmaxが70%以下であれば可逆性記録層7の劣化が疑われる。そこで、ステップ(S007)では閾値Bを70%としており、最大反射率値Rmaxが70%以下であれば可逆性記録層7が劣化していると判定して、主制御基板15が劣化検出信号としての制御指令信号を作動制御基板16に送出する(S005)。そして、その制御指令信号を受けた作動制御基板16によって報知手段13を作動させた後(S006)、処理を終了する。
【0033】
ステップ(S007)で最大反射率値Rmaxが閾値B以下でなかった場合には、最小反射率値Rminを最大反射率値Rmaxで除し、得られた値が予め設定された閾値C以上であるか否かを判断する(S008)。これは最大反射率値Rmaxに対する最小反射率値Rminの比率によって劣化を判断するものであり、一般に最小反射率値Rminが最大反射率値Rmaxの50%以上であれば可逆性記録層7の劣化が疑われる。そこで、ステップ(S008)では閾値Cを50%としており、最小反射率値Rminを最大反射率値Rmaxで除した値が50%以上であれば可逆性記録層7が劣化していると判定して、主制御基板15が劣化検出信号としての制御指令信号を作動制御基板16に送出する(S005)。そして、その制御指令信号を受けた作動制御基板16によって報知手段13を作動させた後(S006)、処理を終了する。
【0034】
ステップ(S008)で最小反射率値Rminを最大反射率値Rmaxで除した値が閾値C以上でなかった場合には、最大反射率値Rmaxから最小反射率値Rminを減じ、得られた値が予め設定された閾値D以下であるか否かを判断する(S009)。これは最大反射率値Rmaxと最小反射率値Rminとの差によって劣化を判断するものであり、一般にその差が20%以下であれば可逆性記録層7の劣化が疑われる。そこで、ステップ(S009)では閾値Dを20%としており、最大反射率値Rmaxから最小反射率値Rminを減じた値が20%以下であれば可逆性記録層7が劣化していると判定して、主制御基板15が劣化検出信号としての制御指令信号を作動制御基板16に送出する(S005)。そして、その制御指令信号を受けた作動制御基板16によって報知手段13を作動させた後(S006)、処理を終了する。
【0035】
ステップ(S009)で最大反射率値Rmaxから最小反射率値Rminを減じた値が閾値D以下でなかった場合には、可逆性記録層7に劣化はないと判定して処理を終了する。
【0036】
尚、上述した可逆性記録層7の劣化判断に用いる判断基準としての閾値A,B,C,Dは適宜変更可能である。また、印字部が黒色を呈し、非印字部が白色を呈する可逆性記録層7の劣化検証について説明したが、印字部が白色を呈し、非印字部が透明(地肌部の色により銀色を呈する)となる可逆性記録層や、印字部が白色を呈し、非印字部が青色を呈する可逆性記録層であっても閾値A,B,C,Dを適宜設定することにより、その劣化検証が可能である。
【0037】
このように本発明にかかる劣化検出装置8によれば、個々の情報記録媒体1aまたは情報記録媒体1b毎に可逆性記録層7の劣化状態が自動的に判定され、可逆性記録層7が劣化した情報記録媒体1aまたは情報記録媒体1bを的確に検出することができる。これにより、従来のようなICチップのメモリに記憶された書き換え履歴に基づいて可逆性記録層7の劣化を一元的に管理する場合に発生する、劣化していないのに廃棄されたり、逆に劣化が甚だしいのに廃棄されないという不具合を解消することができる。また、使用者が目視によって劣化判断する場合の負担が解消される。
【0038】
また、検出制御手段12から送出される劣化検出信号に基づいて光りや音を発する報知手段13を作動させるようにすれば、可逆性記録層7が劣化した情報記録媒体1aまたは情報記録媒体1bの検出を報知することができる。さらに、後述するように、情報記録媒体1aまたは情報記録媒体1bが振分け手段を備えた搬送経路によって搬送される場合には、検出制御手段12から送出される劣化検出信号に基づいて振分け手段を作動させ、搬送経路を除去経路側に切り換えるようにすれば、可逆性記録層7が劣化した情報記録媒体1aまたは情報記録媒体1bを自動的に搬送経路から除去することができる。
【0039】
次に、第二実施例について説明する。この第二実施例は、基材2の一面に可視情報を繰り返し印字可能な可逆性記録層7が設けられてなる情報記録媒体1aまたは情報記録媒体1b(図1参照)を再使用前に洗浄するための洗浄装置に、上述した劣化検出装置8を組み込んだものである。
【0040】
洗浄装置17は、図5に示すように、搬送経路に沿って前方から順に配置された受台18、洗浄ロールブラシ19、吸水ローラ20、乾燥ファン21、スキャナ9、可動案内板22、消去ヘッド23、入出力装置(リーダ・ライタ)24、良品回収トレイ25を備えている。可動案内板22の除去経路26側には不良品回収トレイ27が配設されており、スキャナ9には検出制御手段12が接続されている。搬送経路の所要位置には、情報記録媒体1aまたは情報記録媒体1bを、搬送経路の後方に向けて移動させる複数の送りローラ28が配設されており、該送りローラ28と前記洗浄ロールブラシ19、吸水ローラ20、乾燥ファン21が図示しない複数のモータによって夫々回転駆動される。また、前記洗浄ロールブラシ19には図示しない供給手段によって洗浄液が供給される。可動案内板22には、ソレノイドからなる駆動手段14が設けられており、検出制御手段12から劣化検出信号が送出されると駆動手段14が作動されて可動案内板22が情報記録媒体1aまたは情報記録媒体1bを除去経路26側に送るように切り換えられる。そして、この可動案内板22と駆動手段14とによって振分け手段が構成されている。また、前記スキャナ9と検出制御手段12とによって情報記録媒体の劣化検出装置8が構成されている。
【0041】
かかる構成にあって、可逆性記録層7を上向きにした状態で受台18上に供給された使用済みの情報記録媒体1aまたは情報記録媒体1b(以下、これらを総称して情報記録媒体1a等という)は、各送りローラ28の送り作用を介して順次前方から後方へに搬送される。この搬送に伴って情報記録媒体1a等は、洗浄ロールブラシ19によって洗浄された後、吸水ローラ20により洗浄液がふき取られ、乾燥ファン21によって乾燥される。次いで、スキャナ9によって可逆性記録層7の測定領域がスキャンされて、その出力信号が検出制御手段12に入力されると、検出制御手段12によって可逆性記録層7の劣化状態が検証される。ここで、可逆性記録層7が劣化していると判定されると、検出制御手段12から送出される劣化検出信号によって駆動手段14が作動されて可動案内板22が除去経路26側に切り換えられる。これにより、可逆性記録層7が劣化した情報記録媒体1a等は、除去経路26を経て不良品回収トレイ27に送られる。除去経路26には図示しない通過センサが設けられており、該通過センサによって情報記録媒体1a等の通過が検知されると可動案内板22が元の位置に復帰するようになっている。一方、検出制御手段12によって可逆性記録層7に劣化はないと判定されると、情報記録媒体1a等は消去ヘッド23に送られ、可逆性記録層7に印字されている印字部が消去される。また、RFID型の情報記録媒体1aにあっては、入出力装置24によってメモリに記憶されている情報が消去された後、良品回収トレイ25に送られる。
【0042】
このように、情報記録媒体の劣化検出装置8を備えた洗浄装置17にあっては、劣化検出装置8を単独で用いる場合に比して他の設置場所を確保する必要がなく、可逆性記録層7が劣化した情報記録媒体1a等を洗浄装置17内で検出することができる。また、その後に行われるプリンタへの供給前に、可逆性記録層7の劣化を検出することができるため、可逆性記録層7が劣化した情報記録媒体1a等のプリンタへの供給を未然に防止することができる。
【0043】
尚、この第二実施例では、情報記録媒体1a等の洗浄後に可逆性記録層7の測定領域をスキャンするようにしているが、これに代えて、洗浄ロールブラシ19の前方にスキャナ9及び可動案内板22を配設し、洗浄ロールブラシ19による洗浄前に劣化検出を行うようにしてもよい。これにより、可逆性記録層7が劣化した情報記録媒体1a等を洗浄する無駄を排除することができる。
【0044】
次に、第三実施例について説明する。この第三実施例は、基材2の一面に可視情報を繰り返し印字可能な可逆性記録層7が設けられてなる情報記録媒体1aまたは情報記録媒体1b(図1参照)の、その可逆性記録層7に印字を施すプリンタに、上述した劣化検出装置8を組み込んだものである。
【0045】
プリンタ29は、図6に示すように、搬送経路に沿って前方から順に配置された供給トレイ30、供給ローラ31、消去ヘッド23、入出力装置(リーダ・ライタ)24a,印字ヘッド32、入出力装置(リーダ・ライタ)24b、スキャナ9、可動案内板22、排出トレイ33を備えている。可動案内板22の除去経路26側には不良品回収トレイ27が配設されており、スキャナ9には検出制御手段12が接続されている。搬送経路の所要位置には、情報記録媒体1a等を、搬送経路の後方に向けて移動させる複数の送りローラ28が配設されており、該送りローラ28と前記供給ローラ31が図示しない複数のモータによって夫々回転駆動される。また、可動案内板22には、ソレノイドからなる駆動手段14が設けられており、検出制御手段12から劣化検出信号が送出されると駆動手段14が作動されて可動案内板22が情報記録媒体1a等を除去経路26側に送るように切り換えられる。そして、この可動案内板22と駆動手段14とによって振分け手段が構成されている。また、前記スキャナ9と検出制御手段12とによって情報記録媒体の劣化検出装置8が構成されている。
【0046】
かかる構成にあって、可逆性記録層7を上向きにした状態で供給トレイ30内に積み重ねられている情報記録媒体1a等は、供給ローラ31の回転によって最下部のものから一枚ずつ搬送経路に供給され、各送りローラ28の送り作用を介して順次前方から後方へに搬送される。この搬送に伴って情報記録媒体1a等は、可逆性記録層7に印字されている前回使用時の印字部が消去ヘッド23によって消去される。また、RFID型の情報記録媒体1aにあっては、入出力装置24aによってメモリに記憶されている情報が消去される。次いで、印字ヘッド32によって可逆性記録層7に可視情報の印字が施される。また、RFID型の情報記録媒体1aにあっては、入出力装置24bによってメモリに所要情報が格納される。次いで、スキャナ9によって可逆性記録層7の測定領域がスキャンされて、その出力信号が検出制御手段12に入力されると、検出制御手段12によって可逆性記録層7の劣化状態が検証される。ここで、可逆性記録層7が劣化していると判定されると、検出制御手段12から送出される劣化検出信号によって駆動手段14が作動されて可動案内板22が除去経路26側に切り換えられる。これにより、可逆性記録層7が劣化した情報記録媒体1a等は、除去経路26を経て不良品回収トレイ27に送られる。除去経路26には図示しない通過センサが設けられており、該通過センサによって情報記録媒体1a等の通過が検知されると可動案内板22が元の位置に復帰するようになっている。一方、検出制御手段12によって可逆性記録層7に劣化はないと判定されると、情報記録媒体1a等は排出トレイ33に送られ、その後、使用に供される。
【0047】
このように、情報記録媒体の劣化検出装置8を備えたプリンタ29にあっては、劣化検出装置8を単独で用いる場合に比して他の設置場所を確保する必要がなく、可逆性記録層7が劣化した情報記録媒体1a等をプリンタ29内で検出することができる。また、可逆性記録層7に印字が施された情報記録媒体1a等を実際に使用する前に、当該情報記録媒体1a等が具備する可逆性記録層7の劣化を検出することができるため、可逆性記録層7が劣化した情報記録媒体1a等の使用を未然に防止することができる。
【0048】
尚、この第三実施例では、プリンタ29が消去ヘッド23及び入出力装置24aを備えているが、第二実施例の洗浄装置17とともに用いる場合には、該洗浄装置17が具備する消去ヘッド23及び入出力装置24によって前回使用時の印字部及びメモリに記憶された情報が消去されているため、プリンタ29の消去ヘッド23及び入出力装置24aを除去することも可能である。
【符号の説明】
【0049】
1a,1b 情報記録媒体
2 基材
7 可逆性記録層
8 劣化検出装置
9 スキャナ
12 検出制御手段
17 洗浄装置
29 プリンタ
Rmin 最小反射率値
Rmax 最大反射率値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の一面に可視情報を繰り返し印字可能な可逆性記録層が設けられてなる情報記録媒体の、その可逆性記録層に印字された印字部と非印字部とからなる測定領域をスキャンして光反射率に応じた出力信号を送出するスキャナと、
前記出力信号から印字部及び/又は非印字部の反射率値を生成し、該印字部及び/又は非印字部の反射率値に基づいて可逆性記録層の劣化状態を検証するとともに、劣化していると判定された場合に、劣化検出信号を送出する検出制御手段と
を備えていることを特徴とする情報記録媒体の劣化検出装置。
【請求項2】
検出制御手段が、測定領域の最小反射率値が予め設定された閾値以上である場合に可逆性記録層が劣化していると判定する制御内容を備えていることを特徴とする請求項1に記載した情報記録媒体の劣化検出装置。
【請求項3】
検出制御手段が、測定領域の最大反射率値が予め設定された閾値以下である場合に可逆性記録層が劣化していると判定する制御内容を備えていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載した情報記録媒体の劣化検出装置。
【請求項4】
検出制御手段が、測定領域の最小反射率値を最大反射率値で除し、得られた値が予め設定された閾値以上である場合に可逆性記録層が劣化していると判定する制御内容を備えていることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載した情報記録媒体の劣化検出装置。
【請求項5】
検出制御手段が、測定領域の最大反射率値から最小反射率値を減じ、得られた値が予め設定された閾値以下である場合に可逆性記録層が劣化していると判定する制御内容を備えていることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載した情報記録媒体の劣化検出装置。
【請求項6】
基材の一面に可視情報を繰り返し印字可能な可逆性記録層が設けられてなる情報記録媒体を再使用前に洗浄するための洗浄装置であって、
請求項1乃至請求項5の何れか1項に記載した情報記録媒体の劣化検出装置を備えてなり、可逆性記録層に印字が施されている情報記録媒体の洗浄前、若しくは洗浄後に前記劣化検出装置のスキャナによって測定領域をスキャンし、かつ検出制御手段によって可逆性記録層の劣化検出を行うことを特徴とする洗浄装置。
【請求項7】
基材の一面に可視情報を繰り返し印字可能な可逆性記録層が設けられてなる情報記録媒体の、その可逆性記録層に印字を施すプリンタであって、
請求項1乃至請求項5の何れか1項に記載した情報記録媒体の劣化検出装置を備えてなり、印字後に前記劣化検出装置のスキャナによって測定領域をスキャンし、かつ検出制御手段によって可逆性記録層の劣化検出を行うことを特徴とするプリンタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−95790(P2011−95790A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−246063(P2009−246063)
【出願日】平成21年10月27日(2009.10.27)
【出願人】(000186566)小林クリエイト株式会社 (169)
【Fターム(参考)】