説明

情報記録媒体の読取方法及び読取装置並びに真偽判別方法及び真偽判別装置

【課題】 熱に近い赤外領域の長波長領域を使用することで、基材の色、刷色の影響及び光の吸収率の変動を受けることなく識別が可能な、情報記録媒体の読取方法及び読取装置並びに真偽判別方法及び真偽判別装置を提供する
【解決手段】 少なくともサーミスタセンサ4、熱赤外照射器5を備えた検知装置により、基材2上にこの基材2の熱伝導率とは異なる熱伝導率のインキ3で印刷された印刷物1の熱伝導率を測定するものであり、熱赤外照射器5からサーミスタセンサ4を加熱するか又は、サーミスタセンサ4に許容電流内で多目の電流を流し自己発熱させ、このサーミスタセンサ4を搬送される印刷物1に接触させて測定を行うと、印刷物1を構成する基材2とインキ3のそれぞれの熱伝導率は異なるので、基材2部分とインキ3部分のサーミスタセンサ4の温度変化量が異なり電気抵抗値の変化として検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報記録媒体の読取方法及び読取装置並びに真偽判別方法及び真偽判別装置に関する。特に、熱を利用しその温度変化により識別が可能となる情報記録媒体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、シート基材等に凹版印刷、スクリーン印刷、すき入れ、エンボス、レーザ加工、超音波加工等を用いて情報を付与し、付与した情報を読み取る方法として、赤外領域等による透過光でシートを評価するという技術は一般に公知である。
【0003】
また、可視領域に光吸収がなく、かつ、赤外領域に光吸収を有する印字材料で情報を形成してなる被測定物に赤外光を照射して、その吸収・反射を用いて真偽を判別する方法(例えば、特許文献1参照。)が提案されている。
【0004】
また、被測定物に光を照射して、反射光をレンズで結像してイメージセンサで取り込み、凹凸パターンを判別する、物品の真偽判定方法及び装置(例えば、特許文献2参照。)が提案されている。
【0005】
【特許文献1】特開平7−242087号公報
【特許文献2】特開2002−304653号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述した公知技術では、シート基材の厚みや色、印刷インキの刷色の変化により光の吸収率が変動するため評価の精度が悪くなるという問題があった。
【0007】
特許文献1による技術は、赤外光の吸収反射物質のみであるため、赤外領域が撮影可能な例えば市販のビデオカメラや赤外特性を持つ材料が容易に入手可能であることから、偽造・変造が容易であるという問題があった。
【0008】
特許文献2による技術は、被測定物が主にコインであり、凹版印刷物の場合には、刷色の変化により光の吸収率が変化するため評価が困難である。また、イメージセンサを用いると、装置が大掛かりとなって、自販機等への配設が困難になるという問題があった。
【0009】
本発明は、上記従来技術における問題点を解決するためになされたもので、基材の色の影響が少なく、赤外領域が撮影可能な、例えば市販のビデオカメラでの識別が不可能な、熱に近い赤外領域の長波長領域を使用する情報記録媒体の読取方法及び読取装置並びに真偽判別方法及び真偽判別装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1記載の発明は、基材上に、基材の熱伝導率とは異なる熱伝導率を有する材料で情報を付与した情報記録媒体の情報を読み取る方法であって、情報記録媒体に熱照射手段より熱を照射するステップと、熱照射により情報記録媒体に温度変化を与えるステップと、温度変化を温度センサを用いて電圧の変化として測定するステップと、測定した電圧変化を情報として読み取るステップとを有することを特徴とする情報記録媒体の読取方法である。
【0011】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明を前提とし、前述の熱照射手段より熱を照射するステップにおいて、熱照射量を周期的に変化させるステップと、変化させた照射量により、熱照射の周期波形と情報記録媒体の温度変化波形の位相差を検出するステップとをさらに有することを特徴とする情報記録媒体の読取方法である。
【0012】
請求項3記載の発明は、基材上に、基材の熱伝導率とは異なる熱伝導率を有する材料で情報を付与した情報記録媒体の読取装置であって、情報記録媒体に対し熱を照射する熱照射手段と、照射された熱を検知する熱検知手段と、検知した温度変化を信号に変化する増幅手段とを備えたことを特徴とする情報記録媒体の読取装置である。
【0013】
請求項4記載の発明は、基材上に、基材の熱伝導率とは異なる熱伝導率を有する材料で情報を付与した情報記録媒体の真偽判別方法であって、情報記録媒体に熱照射手段より熱を照射するステップと、熱照射により情報記録媒体に温度変化を与えるステップと、温度変化を温度センサを用いて電圧の変化として測定するステップと、測定した電圧変化を情報として読み取るステップと、読み取った情報を、あらかじめ記憶してある真正な情報と比較するステップとを有することを特徴とする情報記録媒体の真偽判別方法である。
【0014】
請求項5記載の発明は、請求項4記載の発明を前提とし、熱照射手段より熱を照射するステップにおいて、熱照射量を周期的に変化させるステップと、変化させた照射量により、熱照射の周期波形と情報記録媒体の温度変化波形の位相差を検出するステップとをさらに有することを特徴とする情報記録媒体の真偽判別方法である。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、熱に近い赤外領域の長波長領域を使用していることから、基材の色の影響が少なく、赤外領域が撮影可能な例えば市販のビデオカメラでの識別が不可能であるため、偽造防止効果が高く、また高精度に偽造品の真偽判別が可能になった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の実施の形態において、情報記録媒体とは、一般にカードに総称されるもの、各種証明書類、有価証券等のように、文字や画像等で情報が記録され、かつ、偽造、改ざんに対して防止対策がなされている媒体をいう。また、印刷物とは、これらの媒体に偽造・改ざん防止を付与する方法として印刷法を用いたものをいう。このような媒体に付与された情報は種々のセンサで検出可能であり、本実施の形態では熱的性質である熱伝導率を測定することで情報を得るものである。
【0017】
まず、本発明の情報記録媒体の読取方法、読取装置に係る実施の形態を説明する。
本実施の形態において、本発明に用いる情報記録媒体とは、基材上に、この基材とは熱伝導率の異なるインキで情報を付与して形成した印刷物等である。この印刷物の読取方法としては、接触方式、非接触方式の2方式を用いて説明する。
【0018】
実施の形態1として、印刷物の読取方法として接触方式を用いた例を説明する。温度変化に応じて抵抗値が変化する接触式サーミスタセンサを用いて説明する。
熱に近い赤外領域を検出する素子には、サーモパイル型、焦電型、サーミスタ型の3種類があり、サーミスタ型の赤外線検出素子の一般的な構造としては、基板上に形成された熱絶縁膜の上にサーミスタと一対の電極からなり、赤外線が当たってサーミスタの温度が変化するとサーミスタの抵抗が変化するので、二つの抵抗変化を一対の電極で検出して赤外線が検知できるようになっている。
【0019】
本実施の形態1では、熱照射手段と熱検知手段に同じ素子を用いる。つまり、熱照射手段として、サーミスタセンサに許容電流内で多めの電流を流し自己発熱をさせるか、又はサーミスタセンサに加熱装置等を取り付け、サーミスタセンサを過熱させる。
熱検知手段として、加熱したサーミスタセンサに被測定物を接触させると過熱したセンサから熱が奪われ、温度変化が生ずる。この温度変化によりサーミスタの抵抗値が変化し、同抵抗値を計測するものである。
【0020】
図1は、接触式サーミスタセンサを用いた検知装置と検知方法の概略図である。図1(a)は、検知装置による印刷物の検知方法を示す図であり、図1(b)は、その時の読取検知電圧値を示す図である。
図1(a)は、少なくともサーミスタセンサ4、熱赤外照射器5を備えた検知装置により、基材2上にこの基材2の熱伝導率とは異なる熱伝導率のインキ3で印刷された印刷物1の熱伝導率を測定するものである。例えば、インキに対するカーボンの含有量の違いにより熱伝導率が異なり、カーボンの量が多いと熱の吸収・伝導が良く、少ないと熱の吸収・伝導が悪くなるというような現象を利用するものである。
検知装置の熱照射手段としての熱赤外照射器5からサーミスタセンサ4を加熱するか又は、サーミスタセンサ4に許容電流内で多目の電流を流し自己発熱させ、このサーミスタセンサ4を搬送される印刷物1に接触させて測定を行うと、印刷物1を構成する基材2とインキ3のそれぞれの熱伝導率は異なるので、基材2部分とインキ3部分のサーミスタセンサ4の温度変化量が異なり電気抵抗値の変化として検出できる。
【0021】
図1(b)は、サーミスタセンサ4による印刷物1の温度変化量を電気抵抗値の変化として検出した図を示すものである。横軸を測定位置、縦軸を検知電圧とする。印刷物1の搬送方向に従ってスキャンしていくと、印刷物1の基材2部分の熱伝導率とインキ3部分の熱伝導率とは異なって構成されており、基材2部分はインキが載っておらず熱吸収量が小さいため、検知電圧レベルは低くなり、インキ3部分は熱吸収量が大きいため、検知電圧レベルはインキ部分でピークが出現する。
【0022】
また、印刷物1の基材2部分にインキ3部分より熱吸収量の小さいインキを用いることも可能である。この時は、基材2部分が熱吸収量の小さいインキで印刷されるため、図1(b)と同様の形状の検知電圧レベル及びピークが得られる。
【0023】
図2は、サーミスタセンサで印刷物1を測定した図を示す。比較として、印刷物1を複写機でコピーしたものも測定した。実線が基材、点線が印刷部分、一点鎖線が複写物である。見た目は同じ印刷物であっても、印刷インキとコピーしたトナーの熱吸収量の違いがあるために、測定波形が異なり、真偽判別が可能になる。
【0024】
次に、実施の形態2として、印刷物の読取方法として非接触温度検知方式を用いた例を説明する。サーモパイル型赤外線センサを利用した検知方法を説明する。熱検知手段であるサーモパイルセンサは、熱型赤外線センサであり、センサ部に入ってきた熱(遠赤外線)により電力を発生させる起電力型の素子であり、温度測定対象物から入射した赤外線によって生じた温度とセンサ周辺温度との差に対応する電圧を発生する素子である。
熱赤外照射器からサーモパイルセンサへの熱の入力を断続的にするために、熱赤外照射器のオン・オフ又は、チョッパを使用する。
【0025】
また、一般に、サーモパイルの電圧感度は周囲温度の変化によって変わり、サーモパイル抵抗も周囲温度の変化によって抵抗値が変化するので、室温(最初の温度)や外乱の影響を考慮する必要があるが、本実施の形態においては、これらの影響を無視することによる影響を受けない範囲で実施した。
【0026】
図3は、非接触式サーモパイルセンサを用いた検知装置と検知方法の概略図である。
図3(a)は、検知装置による印刷物1の検知方法を示す図であり、図3(b)は、その時の読取検知電圧値を示す図である。
【0027】
図3(a)は、サーモパイルセンサ6、熱赤外照射器5、チョッパ7を備えた検知装置により、基材2上に、この基材2の熱伝導率とは異なる熱伝導率のインキ3で印刷された印刷物1の熱伝導率を測定する。
印刷物1の裏面側にサーモパイルセンサ6を設置し、このサーモパイルセンサ6と、印刷物1を介して向き合う位置に熱赤外照射器5を配置する。
印刷物1を熱赤外照射器5を用いて加熱することにより、加熱された印刷物1の基材2部分、インキ3部分から放射される赤外線の熱量を、サーモパイルセンサ6で検知することができる。
印刷物1を構成する基材2とインキ3のそれぞれの熱伝導率は異なるため、加熱している間、基材2部分とインキ3部分の温度変化量が異なり、サーモパイルセンサ6の電圧変化として捉えることができる。また、加熱をやめると、しばらくしてから検知電圧が最大になるが、インキ3は基材2より熱を蓄積しやすいことから、インキ3の方が最大値が現れる時間が遅れる。最大値の遅れを位相差として検出することもできる。
【0028】
図3(b)は、サーモパイルセンサ6による印刷物1の温度変化量を電気抵抗値の変化として検出した図であり、サーモパイルセンサ6による測定波形と振幅、位相のグラフを示すものである。横軸を測定時間、縦軸を検知電圧とする。 断続的に熱を遮断してサーモパイルセンサ6で検知する、つまり、加熱・冷却(非加熱)を繰り返すことから、点線で示されるような波形となる。
波形は周期的な波形となり、振幅の大きさは、基材2とインキ3の材料の違いにより、インキ3が基材2より熱を蓄積しやすいことから、冷却されるまでの時間が基材よりかかり、このことが位相のずれとして現れている。
【0029】
図4は、サーモパイルセンサを用いた読取装置において、熱赤外照射器5から、測定対象物に熱を照射したとき、対象物の裏側に熱が到達するまでの対象物の材質による時間の違いを現した図である
紙、印刷(印刷に用いるインキ部分)及びカード基材は、それぞれ熱の吸収率(伝導率)に影響を受けるため、図3(b)で示したように、熱赤外照射器のオン・オフと波長のピークが出る位置は、材質により時間的なずれが生じることがわかる。
【0030】
本実施の形態では、印刷物を搬送させない静止状態で読み取りを行っているが、勿論、チョッパとロックインアンプの組合せによる搬送系によって、読み取りも可能である。
【0031】
図5は、サーモパイルセンサで印刷物1を測定した図であり、図3(b)の一周期分を見たときの図を示す。熱源とは測定物のない状態で測定、基材とは紙を測定、印刷とは熱吸収のよいインキを測定した測定値をグラフにしたものである。実線が基材、点線が印刷部分、一点鎖線が測定物のない状態での測定である。
【0032】
また、被測定物が印刷物の場合、基材の熱伝導率と、該基材の熱伝導率とは異なる熱伝導率を有するインキでは、サーモパイルセンサが検出する信号には差が生じることがわかる。
【0033】
以上、本発明の情報記録媒体及びその読取方法、読取装置に係る実施の形態を、接触方式、非接触方式の2方式を用いて説明したが、これに限定されることなく、他の熱センサを用いても同様の結果を得ることができるのは当然である。
【0034】
以上詳述した実施の形態に基づいて、情報記録媒体の真偽判別方法として用いることが可能となる。真性の情報記録媒体に用いているインキの種類等が解らないと、例え情報記録媒体を偽造したとしても、偽造した情報記録媒体に用いたインキの熱伝導率が真正の情報記録媒体と異なるため、あらかじめ真正な情報記録媒体の基材とインキの熱伝導率を登録しておくことで、偽造した情報記録媒体のインキの熱伝導率と比較することにより真偽判別が可能となる。
【0035】
(実施例1) 本実施の形態に基づく実施例1として、印刷物の真偽判別方法及び真偽判別装置を説明する。
図6及び図7に、基材層としての用紙上に、熱伝導率Aのインキ、熱伝導率Bのインキという異なる2種類のインキを用いて印刷により情報を形成した印刷物の読取方法及び読取装置を示す。本実施例では印刷による場合を説明するが、蒸着又は貼付により付与する場合も同様である。
【0036】
図6は、読取装置のブロック図を示すものである。図6(a)は反射方式、図6(b)は透過方式の読取装置である。反射方式と透過方式とでは、熱赤外検知器8の位置が変わるだけで、あとの構成は同じである。
【0037】
図6(a)の読取装置(反射方式)、図6(b)の読取装置(透過方式)は、熱赤外照射器5、熱赤外照射用電源部10、熱赤外検知器8、増幅部11、信号整形部12、二値化部13、出力器14から構成される。
熱赤外照射器5は、長波長領域の光源(LED、レーザ、ヒータ等)を用い、熱赤外検知器8は、長波長領域の受光素子(フォトダイオード、フォトトランジスタ等)を用いる。
【0038】
図7に、上記読取装置を用いた印刷物の読取方法を概略的に示す。
図7(a)は、透過方式による読取方法を示す概略図である。
印刷物1の上方に熱赤外照射器5、下方に熱赤外検知器8を設置し、矢印方向に印刷物1が移動していくと、熱赤外照射器5から放射される熱は、情報を形成している熱伝導率Aのインキ部分、熱伝導率Bのインキ部分、印刷されていない用紙部分のそれぞれの熱を、熱赤外検知器8で検知される信号量として測定する。
【0039】
図7(b)は、反射方式による読取方法を示す概略図である。
印刷物1の上方に熱赤外照射器5と熱赤外検知器8とを並べて設置し、印刷物1の下方に金属板(熱赤外反射板)9を置いたものである。矢印方向に印刷物1が移動していくと、熱赤外照射器5より熱を放射し、放射された熱をすぐ熱赤外検知器8で検知するものである。
【0040】
印刷物1は、(a)の透過方式の場合は熱赤外照射器5と熱赤外検知器8の間隙に、(b)の反射方式の場合は熱赤外照射器5からの長波長領域の光が熱赤外検知器8へ反射する位置に、それぞれ配置する。
熱赤外照射器5と熱赤外検知器8又は印刷物1を移動させることにより、印刷物上の熱伝導率Aのインキ部分、熱伝導率Bのインキ部分の熱伝導率の差によって、長波長領域の光は、検知電圧が、(a)の透過方式の場合は低く、(b)の反射方式の場合は高くなることから検出が可能となる。
また、長波長領域の光の反射光量を測定する際に、長波長領域の光の反射光量が微弱な場合には、熱赤外照射器5からの長波長領域の光が透過する側の基材層に、金属製の熱線反射層を貼付若しくは読取装置に金属製の熱赤外反射板を設置することにより、熱の反射効率を高めることが可能となる。
【0041】
図8は、図7の印刷物1をサーモパイルセンサを用いた読取装置で読取った測定値(振幅)を示す図である。比較として、印刷物1を複写機でコピーしたものを測定した。図の横軸には、熱源、熱伝導率Aのインキ部分、熱伝導率Bのインキ部分、熱伝導率Aのインキ部分のコピー、熱伝導率Bのインキ部分のコピーの熱赤外検知器8で検知される信号量の測定値を示す。
図から、熱伝導率Aのインキ部分と熱伝導率Bのインキ部分の熱伝導率の違いがはっきり出ているが、比較として用いた複写物では、熱伝導率の異なる2種類のインキの違いがでていないということが分るので、あらかじめ真正な印刷物の基材層、インキ部分を測定して記録しておくことで、真偽判別が可能となる。
【0042】
(実施例2) 実施例1では、熱伝導率Aのインキ、熱伝導率Bのインキという異なる2種類のインキを用いて印刷により情報を形成した印刷物の読取方法及び読取装置を説明したが、本実施例2では、さらにその印刷物の上にホログラム等のOVD箔を貼付した貼付物を、サーモパイル型赤外線センサを用いて測定した結果を示す。蒸着により付与した蒸着物の場合も同様に測定することができる。
【0043】
図9は、用紙上に、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)のCMYインキとブラック(K)インキの2種類の黒インキで印刷して印刷物を作製し、この印刷物にさらにOVD箔を貼付したOVD貼付物に対して、熱源のみ、用紙部分、用紙のCMYKインキ部分、用紙のKインキ部分、用紙+OVD箔部分、用紙のCMYKインキ部分+OVD箔部分、用紙のKインキ部分+OVD箔部分を、サーモパイル型赤外線センサを用いて測定したものである。
【0044】
図9において、CMYインキとブラック(K)インキの印刷物で位相に差があり、この印刷物の上にさらにOVD箔を貼付しても、全体の位相にずれが生じるが、OVDの下にあるCMYインキとブラック(K)インキでは、同様に位相に差を測定することができる。
このように下のインキをOVDで隠蔽してもOVDの下の材料を位相差として測定することが可能であり、熱伝導率が同一にならないと識別が困難となるので、偽造がし難くなり、真偽判別が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】実施の形態1の接触式サーミスタセンサを用いた検知装置と検知方法の概略図
【図2】サーミスタセンサで印刷物を測定した図
【図3】実施の形態2の非接触式サーモパイルセンサを用いた検知装置と検知方法の概略図
【図4】実施の形態2において測定対象物の材質の違いによる熱の伝導率を測定した図
【図5】サーモパイルセンサで印刷物を測定した図
【図6】実施例1の印刷物の読取装置を示す図
【図7】実施例1の印刷物の読取方法を示す図
【図8】実施例1の印刷物の測定値を示す図
【図9】実施例2の印刷物の測定値を示す図
【符号の説明】
【0046】
1 印刷物
2 基材
3 インキ
4 サーミスタセンサ
5 熱赤外照射器
6 サーモパイルセンサ
7 チョッパ
8 熱赤外検知器
9 金属板
10 熱赤外照射用電源部
11 増幅部
12 信号整形部
13 二値化部
14 出力器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に、前記基材の熱伝導率とは異なる熱伝導率を有する材料で情報を付与した情報記録媒体の情報を読取る方法であって、
前記情報記録媒体に熱照射手段より熱を照射するステップと、
前記熱照射により前記情報記録媒体に温度変化を与えるステップと、
前記温度変化を温度センサを用いて電圧の変化として測定するステップと、
前記測定した電圧変化を情報として読取るステップとを有することを特徴とする情報記録媒体の読取り方法。
【請求項2】
前記熱照射手段より熱を照射するステップにおいて、
熱照射量を周期的に変化させるステップと、
前記変化させた照射量により、熱照射の周期波形と情報記録媒体の温度変化波形の位相差を検出するステップとをさらに有する、請求項1に記載の情報記録媒体の読取り方法。
【請求項3】
基材上に、前記基材の熱伝導率とは異なる熱伝導率を有する材料で情報を付与した情報記録媒体の読取装置であって、
前記情報記録媒体に対し熱を照射する熱照射手段と、
前記照射された熱を検知する熱検知手段と、
前記検知した温度変化を信号に変化する増幅手段とを備えたことを特徴とする情報記録媒体の読取装置。
【請求項4】
基材上に、前記基材の熱伝導率とは異なる熱伝導率を有する材料で情報を付与した情報記録媒体の真偽判別方法であって、
前記情報記録媒体に熱照射手段より熱を照射するステップと、
前記熱照射により前記情報記録媒体に温度変化を与えるステップと、
前記温度変化を温度センサを用いて電圧の変化として測定するステップと、
前記測定した電圧変化を情報として読取るステップと、
前記読取った情報を、あらかじめ記憶してある真正な情報と比較するステップとを有することを特徴とする情報記録媒体の真偽判別方法。
【請求項5】
前記熱照射手段より熱を照射するステップにおいて、
熱照射量を周期的に変化させるステップと、
前記変化させた照射量により、熱照射の周期波形と情報記録媒体の温度変化波形の位相差を検出するステップとをさらに有することを特徴とする請求項4に記載の情報記録媒体の真偽判別方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−101647(P2009−101647A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−277037(P2007−277037)
【出願日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【出願人】(303017679)独立行政法人 国立印刷局 (471)
【Fターム(参考)】