情報記録媒体及び情報読取装置
【課題】 情報読取装置で二次元バーコードや顔写真などの情報を光学的に読み取る際に、たとえ幾何学的な歪みが生じたとしても、その歪みを簡易に補正することができ、ひいては読み取り精度の向上に簡易に資することが可能な情報記録媒体及び情報読取装置を提供することにある。
【解決手段】 情報記録媒体(カード2)のうち、情報読取装置(スワイプ式イメージスキャナ1)によって情報が読み取られる読み取り領域(読み取り領域3)に、情報記録媒体の表面を光学的に読み取る際に幾何学的な歪みが発生した場合であって、情報読取装置によってその歪みが補正される場合に用いられるマーク(マーク6)が含まれることを特徴とする。
【解決手段】 情報記録媒体(カード2)のうち、情報読取装置(スワイプ式イメージスキャナ1)によって情報が読み取られる読み取り領域(読み取り領域3)に、情報記録媒体の表面を光学的に読み取る際に幾何学的な歪みが発生した場合であって、情報読取装置によってその歪みが補正される場合に用いられるマーク(マーク6)が含まれることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の情報を記録する紙やプラスチックなどの情報記録媒体、及び、その情報記録媒体に記録された情報を読み取る情報読取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば免許証,キャッシュカード又はクレジットカードなど、様々な個人情報が記録された情報記録媒体がある。情報記録媒体では、個人情報を記録するにあたって、磁気ストライプ,ICチップ又はバーコードなどが使用される。このうち、最も簡易かつ安価に個人情報を記録できるのが、バーコードである。バーコードは、商品の流通分野を含む多方面で広く使用されており、例えば、米国運転免許証では、PDF417と呼ばれる符合体系のスタック型バーコードが使用されている。なお、近年になって、一次元バーコードを積み重ねることによって情報量を増加させた二次元バーコードが広く普及している。
【0003】
二次元バーコードに記録された個人情報を読み取る手法としては、種々ある。例えば、二次元イメージセンサが組み込まれたカメラを用いて対象物(二次元バーコード)を撮像し、得られた二次元画像データを解析して個人情報を読み取る手法や、フラットベットスキャナを用いて、ガラス上に載置された対象物(の二次元バーコード)を反対側から光学的に読み取る手法などがある。しかし、これらの手法は、いずれも高価な機器や広い設置環境が必要になることから、例えばデパートの受付や個人ユースには不向きである。そのため、受付や個人ユースでは、カードの端を手に持ち(手でつまみ)、カードをスワイプさせて二次元バーコードに記録された情報を読み取るスワイプ式の情報読取装置が広く使用されている。
【0004】
ところで、情報記録媒体の中には、二次元バーコードが印刷されているのみならず、顔写真が一緒に掲載されたカードがある。例えば、図11に示すプラスチック製のカード100は、下方に二次元バーコード101が印刷されるとともに、左上隅に顔写真102が掲載されている。また、例えば特許文献1に開示されたIDカード(特許文献1の図5参照)は、下方にバーコード(顔写真内容コード)が印刷されるとともに、左方に上半身の写真が掲載されている。
【0005】
このように、顔写真,指紋又はサインなどの視覚上の特徴が掲載されたカードは、セキュリティ面での信頼性が高くなる。例えば、カードに顔写真を掲載し、その顔写真の特徴(目・口・鼻の中心位置や大きさなど)を符号化して二次元バーコードの中に埋め込んでおく。そうすると、顔写真が他人のものと差し替えられたとしても、二次元バーコードと顔写真を光学的に読み取って、その顔写真の特徴と、その二次元バーコードに埋め込まれた顔写真の特徴とを照合することによって、偽造犯罪を簡易に防止することができる。
【0006】
【特許文献1】特開2001−52142号公報(図5)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述したように、二次元バーコードや顔写真を備え、偽造犯罪の防止にも寄与し得るカードであっても、受付や個人ユースで使用されるスワイプ式の情報読取装置によって情報を読み取ろうとすると、幾何学的な歪みが生じて読み取り精度が低下する場合がある。
【0008】
すなわち、スワイプ式(手動式)の情報読取装置では、人間が情報記録媒体の端を持って(つまんで)スワイプする、という人為的動作が介在するため、情報記録媒体が一定速度でスワイプされない場合がある。この場合、情報読取装置に記録された画像データに搬送方向のジッターが生じてしまい、その結果、二次元バーコード画像や顔写真画像が歪んで読み取り精度が低下する。なお、かかる問題は、自動式の情報読取装置であっても、モータでカードを搬送する途中で何らかの故障により搬送速度が変わると、同様に生ずる。
【0009】
一方で、受付や個人ユースにおいて、スワイプ式の情報読取装置以外の二次元イメージセンサやフラットベットスキャナを利用すれば、スワイプという人為的動作を必要としないため、二次元バーコード画像や顔写真画像が歪むことはない。しかし、上述のとおり、コスト上昇を招いたり、広い設置環境が必要になったりと、市場普及の妨げとなる要因を数多く含む。そのため、二次元バーコード画像や顔写真画像がたとえ歪んだとしても、この歪みを補正することができるようなカードの登場が望まれる。
【0010】
本発明は、このような点に鑑みてなされたものであり、その目的は、情報読取装置で二次元バーコードや顔写真などの情報を光学的に読み取る際に、たとえ幾何学的な歪みが生じたとしても、その歪みを簡易に補正することができ、ひいては読み取り精度の向上に簡易に資することが可能な情報記録媒体及び情報読取装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
以上のような課題を解決するために、本発明は、情報記録媒体のうち、情報読取装置によって情報が読み取られる読み取り領域に、情報記録媒体の表面を光学的に読み取る際に幾何学的な歪みが発生した場合であって、情報読取装置によってその歪みが補正される場合に用いられるマークが含まれることを特徴とする。
【0012】
より具体的には、本発明は、以下のものを提供する。
【0013】
(1) 情報読取装置に使用される情報記録媒体において、前記情報記録媒体は、前記情報読取装置によって情報が読み取られる読み取り領域を有し、前記読み取り領域には、前記情報記録媒体の表面を光学的に読み取る際に幾何学的な歪みが発生した場合であって、前記情報読取装置によって当該歪みが補正される場合に用いられるマークが含まれることを特徴とする情報記録媒体。
【0014】
本発明によれば、情報読取装置に使用される情報記録媒体において、その情報記録媒体は、情報読取装置によって情報が読み取られる読み取り領域を有しており、その読み取り領域には、情報記録媒体の表面(例えば二次元バーコードや顔写真などが印刷された表面)を光学的に読み取る際に幾何学的な歪み(例えば搬送方向に延びた歪み)が発生した場合であって、情報読取装置によってその歪みが補正される場合に用いられるマークが含まれることとしたから、搬送方向のジッターによる画像の歪みを補正することができる。
【0015】
すなわち、例えば二次元バーコード、顔写真、指紋及びサインなど、情報記録媒体の表面にあるものをスワイプ式の情報読取装置で光学的に読み取ろうとすると、スワイプに起因した搬送方向のジッター(幾何学的な歪み)が発生する場合があるが、本発明によれば、上述したマークを光学的に読み取ることによって得られる歪み補正情報を基にして、その歪みを補正することができる。
【0016】
このように、本発明は、情報記録媒体に予めマークを付して(印刷して)おくだけで、情報記録媒体の表面を光学的に読み取る際に生じる幾何学的な歪みを簡易に補正することができものなので、読み取り精度の向上を簡易に図ることができる。
【0017】
ここで、読み取り領域内における「マーク」の配置については、特に限定されない。例えば二次元バーコードや顔写真などに隣接して配置されていてもよいし、二次元バーコードや顔写真の中に含まれていてもよい。
【0018】
また、「マーク」は、例えば線・枠・塗り潰し図形・記号・文字などの種類、直線・三角形・四角形・菱形・複数の平行線・折れ線などの形、読み取り領域全体・読み取り領域の半分・読み取り領域の一部などの大きさ、1個・2個・3個などの個数の如何を問わない。
【0019】
なお、「情報読取装置」には、スワイプ式(手動式)の情報読取装置が含まれるのは勿論のこと、自動式の情報読取装置も含まれる。例えば、モータによってカードを搬送する途中で、何らかの故障により搬送速度が変わった場合、かかる場合であっても、搬送方向のジッターによる画像の歪みを補正することが可能になる。
【0020】
(2) 前記マークは、前記情報読取装置における情報記録媒体の搬送方向と垂直な方向に幅をもち、かつ、当該搬送方向に対して当該幅が変化する図形であることを特徴とする(1)記載の情報記録媒体。
【0021】
本発明によれば、上述したマークは、情報読取装置における情報記録媒体の搬送方向と垂直な方向に幅をもち、かつ、搬送方向に対してその幅が変化する図形を有することとしたから、かかるマークは搬送方向に対して連続的な位置情報となり、搬送方向のジッターによる画像の歪みを補正するのに必要な情報を、高い分解能で取り出すことができる。その結果、情報読取装置において、搬送方向のジッターによる画像の歪みを補正する際の精度を向上させることができる。
【0022】
(3) 前記マークは、前記情報読取装置における情報記録媒体の搬送方向と垂直な方向に並んで配置された複数個の図形からなり、これら複数個の図形の位置的位相は、前記情報読取装置における情報記録媒体の搬送方向にずれていることを特徴とする(1)又は(2)記載の情報記録媒体。
【0023】
本発明によれば、上述したマークは、情報読取装置における情報記録媒体の搬送方向と垂直な方向に並んで配置された複数個の図形からなり、これら複数個の図形の位置的位相は、情報読取装置における情報記録媒体の搬送方向にずれていることとしたから、情報記録媒体上のレイアウトを考慮して、情報記録媒体の搬送方向と垂直な方向の幅をある程度小さくし、複数のセグメントをもつ複数個の図形を考えた場合であっても、情報読取装置において搬送方向のジッターによる画像の歪みを補正するのに必要な情報を精度よく取り出すことができる。例えば、搬送方向のジッターによって一のマーク図形の一部に局所的な丸みが発生した場合であっても、位置的位相がずれた他の図形から、画像のひずみを補正するのに必要な情報を精度よく取り出すことができる。
【0024】
なお、好ましくは、情報記録媒体の読み取り領域に、情報読取装置における情報記録媒体の搬送方向と垂直な方向に並んで配置され、互いに位置的位相が情報読取装置における情報記録媒体の搬送方向にずれている2個の図形を配置する。これにより、上述した歪みを補正するのに必要な情報を、最小限の印刷コストで精度よく取り出すことができる。
【0025】
(4) 前記読み取り領域には、前記情報記録媒体の所有者に関する符号化された情報を有する符号化情報部が含まれ、前記マークは、前記符号化特徴部に隣接して又は前記符号化特徴部の中に配置されていることを特徴とする(1)から(3)のいずれか記載の情報記録媒体。
【0026】
本発明によれば、上述した読み取り領域には、例えば二次元バーコードなど、情報記録媒体の所有者に関する符号化された情報を有する符号化情報部が含まれ、上述したマークは、この符号化情報部に隣接して又はこの符号化情報部の中に配置されていることとしたから、符号化情報部において、搬送方向のジッターによる画像の歪みを補正する際の精度を高めることができる。
【0027】
すなわち、例えば、PDF417の符号体系以外のバーコードは搬送方向のジッターによって悪影響を受けやすいが、そのバーコードに隣接するように上述のマークを配置することで、スワイプ時に、イメージセンサ等の撮像素子の正面を通過するバーコードとマークの移動速度が同じになり、その結果、搬送方向のジッターによる画像の歪みを補正する際の精度を高めることができる。
【0028】
(5) 前記読み取り領域には、前記情報記録媒体の所有者に関する視覚上の特徴を有する特徴部が含まれ、前記マークは、前記特徴部に隣接して又は前記特徴部の中に配置されていることを特徴とする(1)から(3)のいずれか記載の情報記録媒体。
【0029】
本発明によれば、上述した読み取り領域には、例えば顔写真・指紋・サインなど、情報記録媒体の所有者に関する視覚上の特徴(目や鼻の位置など)を有する特徴部が含まれており、上述したマークは、この特徴部に隣接して又はこの特徴部の中に配置されていることとしたから、符号化情報部に隣接して又は符号化情報部の中に配置されている場合と同様、特徴部において、搬送方向のジッターによる画像の歪みを補正する際の精度を高めることができる。
【0030】
なお、符号化情報部又は特徴部の所定位置にマークを配置して、情報記録媒体の読み取り領域において生じる違和感を払拭することもできる。例えば、二次元バーコードの一部や顔写真の写真枠に、歪み補正処理用のマークであるとは認識できないようにマークを埋め込む(或いは、二次元バーコードの一部や顔写真の写真枠をマークとして代用する)。また、マーク自体を、顔写真中の人物の周囲を囲むような図形にする。このように、マークを歪み補正処理用のマークであるとは認識できないような図形とすることで、情報記録媒体の読み取り領域にマークを配置したことに起因して生ずる違和感を払拭することができる。
【0031】
(6) (1)から(5)のいずれか記載の情報記録媒体の表面にあるマークに基づき前記歪みを補正する歪み補正手段を備えることを特徴とする情報読取装置。
【0032】
本発明によれば、情報読取装置に、上述した情報記録媒体の表面にあるマークに基づき、上述の歪みを補正する歪み補正手段が設けられることとしたので、搬送方向のジッターによる画像の歪みを精度よく補正することが可能な情報読取装置を提供することができる。
【0033】
(7) 走行路を形成するフレームを有し、当該フレームの一部が走行基準面として形成され、当該走行基準面に添って情報記録媒体がスワイプされることによって情報を読み取ることを特徴とする(6)記載の情報読取装置。
【0034】
本発明によれば、例えば略コ字形状のフレームの一部(例えば底部)が走行基準面として形成され、その走行基準面に添って情報記録媒体がスワイプされることによって情報を読み取る情報読取装置において、搬送方向のジッターによる画像の歪みを精度よく補正することができる。なお、スワイプとは、カードを情報記録媒体を情報読取装置にさっと走らせる動作をいう。
【発明の効果】
【0035】
本発明に係る情報記録媒体及び情報読取装置は、以上説明したように、情報記録媒体の表面を光学的に読み取る際に生じる幾何学的な歪みを簡易に補正することができ、ひいては読み取り精度の向上を図ることができる
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0037】
[外観構成]
図1は、本発明の実施の形態に係るスワイプ式(手動式)イメージスキャナ1及びカード2の外観構成の概要を示す模式図である。図1(a)は、カード2をスワイプ式イメージスキャナ1に通している様子を示しており、図1(b)は、カード2を正面から見て拡大した様子を示している。
【0038】
図1(a)において、本発明の実施の形態に係るスワイプ式イメージスキャナ1は、断面形状がほぼコ字形状をなすフレームを有しており、このフレームの底部をカード走行基準面として形成されている。また、この底部を挟んで対向する2つの側板部の間に、カード通路1aが形成されている。なお、スワイプ式イメージスキャナ1の電気的構成については後述する。
【0039】
一方で、図1(b)において、本発明の実施の形態に係るカード2は、JISに準拠している一般的なカードであって、例えば、幅86mm,高さ54mm,厚み0.76mmというサイズのプラスチックカードである。なお、ここではプラスチックカードを採用したが、例えば、スタンプカードなどの紙カード,カード内部にICチップが内蔵されたICカード,カード表面に特殊な塗工を施してデータの書き換えが可能なリライトカードなど、その種類の如何は問わない。また、サイズに関しても、如何なるサイズであってもよい。さらに、POS端末対象,ISU100対象の情報記録媒体を採用することもできる。
【0040】
カード2は、スワイプ式イメージスキャナ1によって情報が読み取られる読み取り領域3(図の斜線部)を有しており、その読み取り領域3には、カード2の所有者に関する符号化された情報を有する二次元バーコード5と、その二次元バーコード5の下方に印刷されたマーク6と、が含まれている。このマーク6は、カード2の表面を光学的に読み取る際に幾何学的な歪みが発生した場合であって、この歪みを補正する際に用いられるものである(後述の[補正処理]参照)。また、読み取り領域3以外の領域(カード2の左上隅)には、顔写真4が貼付されている。
【0041】
なお、二次元バーコード5は、1次元バーコードを拡張したもので、例えばソフト又はハードによって情報を二次元コードに変換(エンコード)し、その二次元コードをプリンタによってカード2に印刷することで、作成される。また、図1(b)では、読み取り領域3は、およそ下半分(1/2)となっているが、下から3/1であっても2/3であっても、その面積の如何は問わない。場合によっては、図1(b)の縦方向に読み取り領域3が設けられていてもよい。
【0042】
[電気的構成]
図2は、本発明の実施の形態に係るスワイプ式イメージスキャナ1の電気的構成を示す模式図である。
【0043】
図2において、本発明の実施の形態に係るスワイプ式イメージスキャナ1は、密着型のイメージセンサ11と、カード2がカード通路1aを通過するときに、カード2と接触して回転するパッドローラ12と、パッドローラ12の回転を検出してカード2の位置情報を取得するエンコーダ13と、を有する。また、イメージセンサ11は、撮像された二次元バーコード5やマーク6の画像データを記憶する画像メモリ14と電気的に接続され、その画像メモリ14は、画像メモリ14から取り込んだ画像データに対し、例えば後述する補正処理などの様々な処理を施す画像処理手段15と電気的に接続されている。
【0044】
以上のような電気的構成に基づき、以下、本発明の実施の形態に係るスワイプ式イメージスキャナ1によるマーク6を用いた補正処理について説明する。
【0045】
[補正処理]
図3は、スワイプ式イメージスキャナ1において、マーク6の画像データを用いた歪み補正処理が実行される仕組みを説明するための説明図である。図3には、二次元バーコード5(中央付近のみ)と、その二次元バーコード5の下方に印刷されたマーク6(中央付近のみ)と、が示されている。
【0046】
始めに、二次元バーコード5及びマーク6の読み取りが行われる。より具体的には、イメージセンサ(撮像素子)11は、カード通路1aを通過するカード2の二次元バーコード5及びマーク6を光電変換によって撮像する。そして、撮像された二次元バーコード5及びマーク6の画像データは、画像メモリ14において記憶される。これにより、二次元バーコード5及びマーク6の読み取りが完了する。なお、この画像メモリ14は、RAM,SDRAM,DDRSDRAM,RDRAMなど、画像データを記憶しうるものであれば如何なるものであってもよい。
【0047】
次に、マーク6を用いた補正処理が行われる。より具体的には、画像処理手段15は、画像メモリ14に記憶されている二次元バーコード5及びマーク6の画像データを読み込む。
【0048】
ここで、二次元バーコード5及びマーク6の画像データに搬送方向のジッターが生じていない場合(図3(a))のマーク6の所定寸法を、画像メモリ14等に予め記憶させておく。例えば、図3(a)において、マーク6の高さがB(1個又は数個の数値からなる)になるときの水平方向の長さをAとして記憶させておく。
【0049】
そして、上述した読み込み処理によって得られた二次元バーコード5及びマーク6の画像データに、搬送方向(図中の水平方向)のジッターが生じたと仮定する。すなわち、例えば図3(b)に示すように、二次元バーコード5の画像データが歪むとともに、マーク6の画像データも区間Hだけ延びて歪んだと仮定する。
【0050】
この場合、画像処理手段15では、マーク6の高さがB'(=B)になるときの水平方向の長さA'が検出され、水平方向の長さA'の区間では、二次元バーコード5及びマーク6の画像データが搬送方向にA'/Aの倍率で歪んでいることが認識される(上述したA'/Aの倍率が1になるときは、搬送方向のジッターは生じておらず、1以外になるときは、搬送方向のジッターが生じている、と認識される)。
【0051】
同様に、マーク6の高さB'の値を適宜変更し、複数個の水平方向の長さA'を検出する。その結果、搬送方向に歪んでいる長さA'の区間のうち、実際に歪んでいる区間Hを特定することができ、特定された区間Hの分だけ搬送方向に縮小することで、幾何学的な歪みを補正することが可能になる。このように、スワイプ式イメージスキャナ1の画像処理手段15は、マーク6を用いた補正処理を行い、カード2の表面を光学的に読み取る際に発生した幾何学的な歪みを補正することができる。なお、かかる補正後の二次元バーコード5に対して位置検出処理,構造解析処理,復号処理などの信号処理が行われると、二次元バーコード5の情報を的確に読み取ることができ、ひいては読み取り精度の向上を簡易に図ることができる。
【0052】
なお、マーク6は、二次元バーコード5の下方に隣接して印刷されているが(図1(b)参照)、このようにすることで、スワイプ時に、イメージセンサ11の正面を通過するマーク6と二次元バーコード5の移動速度が同じになり、その結果、スワイプ式イメージスキャナ1において、搬送方向のジッターによる画像の歪みを補正する際の精度を高めることができる。
【0053】
[変形例]
図4は、本発明の他の実施の形態に係るカード2の外観構成の概要を示す模式図である。図1(b)と同じ要素については、同符号で示すものとする。
【0054】
図4(a)において、本発明の他の実施の形態に係るカード2では、顔写真4が読み取り領域3の内部に貼付されている。そして、その顔写真4の下方にマーク6が印刷されている。従って、スワイプ式イメージスキャナ1の画像処理手段15(図2参照)において、上述同様、顔写真4の幾何学的な歪みを補正することが可能になる。
【0055】
すなわち、スワイプ式イメージスキャナ1では、人間がカード2をもってスワイプする、という人為的動作が介在するため、カード2がカード通路1aを一定速度で通過しない場合がある。かかる場合には、画像メモリ14(図2参照)に記憶された画像データに搬送方向のジッターが生じ、顔画像が歪んでしまう。読み取り領域3に含まれるマーク6は、この幾何学的歪みを補正するために設けられたものである。このマーク6を用いた歪み補正の仕組みについては、図5を用いて後述する。
【0056】
なお、図4(a)では、二次元バーコード5と併せて読み取り領域4に顔写真4を貼付したが、本発明はこれに限られず、例えば図4(b)に示すように指紋4'を貼付(或いは指紋4'を付けて、その上に透明フィルムを貼るなど)してもよいし、図4(c)に示すようにサイン4''を貼付(或いはサイン4''を記入して、その上に透明フィルムを貼るなど)してもよい。
【0057】
また、図4(a)〜図4(c)に示すように、マーク6を顔写真4,指紋4',サイン4''に隣接する位置に配置することによって、スワイプ時に、イメージセンサ11の正面を通過するマーク6と顔写真4,指紋4',サイン4''との移動速度が同じになり、その結果、スワイプ式イメージスキャナ1において、搬送方向のジッターによる画像の歪みを補正する際の精度を高めることができる。
【0058】
図5は、スワイプ式イメージスキャナ1において、マーク6の画像データを用いた歪み補正が実行される仕組みを説明するための説明図である。図5には、顔写真4の任意の一部分に相当する真円部4aと、顔写真4の下方に掲載されたマーク6と、が示されている。
【0059】
図3を用いて説明した補正処理と同様に、まず、スワイプ式イメージスキャナ1において、画像メモリ14の画像データに搬送方向のジッターが生じていない場合(図5(a))のマーク6の所定寸法を、画像メモリ14等に予め記憶させておく。例えば、図5(a)では、マーク6の高さがB(1個又は数個の数値からなる)になるときの水平方向の長さをAとして記憶させておく。そして、画像メモリ14に記憶された画像データに、例えば図5(b)に示すような搬送方向のジッターが生じたと仮定する。すなわち、真円部4aの画像データが搬送方向(図中の水平方向)に歪むとともに、マーク6の画像データも区間H1及び区間H2だけ延びて歪んだと仮定する。
【0060】
この場合、スワイプ式イメージスキャナ1の画像処理手段15では、マーク6の高さがB'(=B)になるときの水平方向の長さA'が検出され、水平方向の長さA'の区間では、真円部4a及びマーク6の画像データが搬送方向にA'/Aの倍率で歪んでいることが認識される。
【0061】
このようにして、マーク6の高さB'を適宜変更し、複数個の水平方向の長さA'を検出する。そうすると、搬送方向に歪んでいる長さA'の区間のうち、実際に歪んでいる区間H1を特定することができる。また、同様にして、実際に歪んでいる区間H2も特定することができる。従って、スワイプ式イメージスキャナ1の画像処理手段15は、歪んでいる区間や歪んでいる倍率を基にして、その歪みを補正することが可能になる。
【0062】
図6は、マーク6の外観の変更した様子を説明するための説明図である。
【0063】
図6(a)において、三角形のマーク6aは、図5(a)に示すマーク6と同様の図形である。このように、スワイプ式イメージスキャナ1におけるカード2の搬送方向と垂直な方向(図6中の縦方向)に幅をもつ図形とすることで、図5を用いて上述したように、歪んでいる区間を特定することが可能になる。
【0064】
ここで、スワイプ式イメージスキャナ1におけるカード2の搬送方向と垂直な方向に幅をもつ図形としては、様々なものが挙げられる。例えば、図6(a)において、マーク6bやマーク6cに示すように、マーク6aと線対称の図形としてもよいし、マーク6dに示すように、マーク6aとマーク6bを結合したような図形としてもよいし、マーク6e,マーク6f,マーク6gに示すように、平行四辺形,菱形,台形としてもよい。また、図6(b)において、マーク4hが示すように、サイン4''を囲むような三角形の図形としてもよい。加えて、コントラストにて分別できれば、図柄が重なっている図形であってもよい。
【0065】
また、歪み補正の精度(分解能)を上げるには、マーク6(マーク6a〜6h)において、カード2の搬送方向と垂直な方向に対する変化量を大きくすればよい。例えば、図6(a)又は図6(b)では、横長の三角形となっているが、これを縦長の三角形にしたり、一本の縦長の直線にしたりする等である。しかし、例えば45度の変化量で三角形のマーク6を作成すると、カード2の規定の範囲内(例えば高さ54mmの範囲内)にレイアウトできなくなる場合がある。そこで、幾つかのセグメントに分割した図形としてもよい。
【0066】
図7は、マーク6として幾つかのセグメントに分割した図形を採用したときの補正処理に関する説明図である。
【0067】
図7において、図7(a)のマーク6iが示すように、45度の変化量を維持しながら幾つかのセグメントに分割した図形とすることができる。そうすると、上述したレイアウトの問題を解消でき、ひいてはマークの高さをある程度抑えた上で歪み補正の精度を上げることができる。
【0068】
一方で、図7(a)に示すセグメント化されたマーク4iは、単調増加又は単調減少を繰り返す図形となるため、その変化点(各三角形の頂点)では局所的な丸みが発生する場合がある。従って、これを改善すべく、マーク4iと線対称な図形であるマーク4jを組合せ、両者の位置的位相をカード2の搬送方向にずらして配置する。これにより、マーク4iの図形が直線的でない部分であっても、マーク4jの直線的な部分を用いることによって、精度良く歪み補正を行うことができる。
【0069】
この歪み補正の詳細を以下に説明する。図7(b)は、図7(a)の点線部Xを拡大した拡大図である。まず、スワイプ式イメージスキャナ1において、画像メモリ14の画像データに搬送方向のジッターが生じていない場合(図7(b))のマーク6i及びマーク6jの所定寸法を、画像メモリ14等に予め記憶させておく。例えば、図7(b)では、マーク6i及びマーク6jの高さがそれぞれB1及びB2になるときの水平方向の長さをA1及びA2として記憶させておく。そして、画像メモリ14に記憶された画像データに、例えば図7(c)に示すような搬送方向のジッターが生じたと仮定する。この場合、画像処理手段15では、マーク6iの高さがB1'(=B1)になるときの水平方向の長さA1'が検出されるとともに、マーク6jの高さがB2'(=B2)になるときの水平方向の長さA2'が検出される。
【0070】
ここで、マーク6iの三角形の頂点に局所的な丸みが発生しているため(図7(c)参照)、マーク6iの高さB1'と水平方向の長さA1'とでは、歪んだ区間を特定することが困難である。すなわち、局所的な丸みが発生している部分においては、搬送方向に対してマーク6iの幅が大きく変化しないことから、分解能が低下し、歪んだ区間を特定することができなくなる。そこで、これを改善すべく、マーク6iと線対称かつ位置的位相がずれた図形であるマーク6jを用いる。図7(c)に示すように、マーク6iとマーク6jとは、マーク6iに局所的な丸みが発生した場合であっても、マーク6jには局所的な丸みが発生しないような位置関係となっている。従って、マーク6jの高さB2'と水平方向の長さA2'とを用いて、歪んだ区間を精度良く特定することが可能になる。
【0071】
図8は、サイン4''に平行四辺形の枠からなるマーク6kが配置されている様子を説明するための説明図である。
【0072】
図8に示すマーク6kによれば、図7を用いて説明したような歪み補正と同様の補正処理を行うことができる。すなわち、マーク6kの所定寸法(A1,A2,B1,B2)を画像メモリ14に予め記憶させておき(図8(a))、仮に、図8(b)に示すような搬送方向のジッターが生じたとしても、局所的な丸みが原因で歪んだ区間の特定が困難な寸法(A1',B1')ではなく、局所的な丸みが発生しておらず歪んだ区間の特定が可能な寸法(A2',B2')を用いることによって、その歪みを補正することができる。
【0073】
図9は、顔写真4に隣接して又は顔写真4の中にマーク6l〜マーク6nが配置されている様子を説明するための説明図である。
【0074】
図9(a)〜図9(c)に示すマーク6l〜マーク6nによれば、上述した補正処理と同様に、搬送方向のジッターによる画像の歪みを補正することが可能になる。特に、マーク6l又はマーク6mによれば、一方が顔写真4の写真枠に埋め込まれている状態(図9(a))又は顔写真4の中に埋め込まれている状態(図9(b))となっているので、他方は一本の直線で足りることとなり、その結果、配置スペースをコンパクト化することができる。また、特に、マーク6nによれば、顔写真4の中に埋め込まれ、人物画像の周囲を囲むような状態(図9(c))となっているので、マーク6nを、歪み補正処理用の図形であると容易に認識することができなくなり、その結果、カード2の読み取り領域3にマーク6nを配置したことに起因して生ずる違和感を払拭することができる。
【0075】
なお、歪み補正は、マーク6を止め、エンコーダ等の機器を用いて行うことも考えられるが、かかる方法は、エンコーダ等の機器を用いることが原因でコスト上昇や容積増大を招く結果、小型化・コンパクト化の時代の流れに逆らうことになる。この点、本発明を用いた歪み補正よれば、カード2に所定のマーク6を配置するだけで、搬送方向のジッターよる歪みを補正することができ、ひいてはスワイプ式イメージスキャナ1やカード2の信頼性を簡易に向上させることができる。
【0076】
また、本実施形態では、マークから歪みを検出する方法として、予め歪んでいない時の画像を学習する方式を採用したが、本発明はこれに限定しない。例えば、マークの幅は直線的に変化する、という前提を作っておけば、画像上、その直線部分が歪んだ分だけ速度変動していることが分かる。換言すれば、マークの幅が直線的に変化する図形である場合、その直線性から外れる分を速度の補正とすることにより、速度変動補正ができるようになる。
【0077】
図10は、二次元バーコード5の読み取り時のスキューを検出する様子を説明するための説明図である。
【0078】
図10において、マーク6pによれば、マークを目立たせることなく、二次元バーコード5の読み取り時のスキューを検出することができる。すなわち、二次元バーコード5の上下に波線(マーク6p)を施すことにより、マーク6pのピーク位置のズレ量の変化が分かるので、そのピーク位置のズレ量が変化した場合、スキューを検出することができる。例えば、最初の位相ズレが90度であるとき、スキューが検出される場合には、その位相ズレは70度や100度になる。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明に係る情報記録媒体及び情報読取装置は、情報記録媒体の表面を光学的に読み取る際に、幾何学的な歪みが発生したとしても、その歪みを補正することが可能なものとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明の実施の形態に係るスワイプ式イメージスキャナ及びカードの外観構成の概要を示す模式図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るスワイプ式イメージスキャナの電気的構成を示す模式図である。
【図3】スワイプ式イメージスキャナにおいて、マークの画像データを用いた歪み補正処理が実行される仕組みを説明するための説明図である。
【図4】本発明の他の実施の形態に係るカードの外観構成の概要を示す模式図である。
【図5】スワイプ式イメージスキャナにおいて、マークの画像データを用いた歪み補正が実行される仕組みを説明するための説明図である。
【図6】マークの外観の変更した様子を説明するための説明図である。
【図7】マークとして幾つかのセグメントに分割した図形を採用したときの補正処理に関する説明図である。
【図8】サインに平行四辺形の枠からなるマークが配置されている様子を説明するための説明図である。
【図9】顔写真に隣接して又は顔写真の中にマークが配置されている様子を説明するための説明図である。
【図10】二次元バーコード読み取り時のスキューを検出する様子を説明するための説明図である。
【図11】従来例を説明するための模式図である。
【符号の説明】
【0081】
1 スワイプ式イメージスキャナ
2 カード
3 読み取り領域
4 顔写真
5 二次元バーコード
6 マーク
11 イメージセンサ
12 パッドローラ
13 エンコーダ
14 画像メモリ
15 画像処理手段
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の情報を記録する紙やプラスチックなどの情報記録媒体、及び、その情報記録媒体に記録された情報を読み取る情報読取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば免許証,キャッシュカード又はクレジットカードなど、様々な個人情報が記録された情報記録媒体がある。情報記録媒体では、個人情報を記録するにあたって、磁気ストライプ,ICチップ又はバーコードなどが使用される。このうち、最も簡易かつ安価に個人情報を記録できるのが、バーコードである。バーコードは、商品の流通分野を含む多方面で広く使用されており、例えば、米国運転免許証では、PDF417と呼ばれる符合体系のスタック型バーコードが使用されている。なお、近年になって、一次元バーコードを積み重ねることによって情報量を増加させた二次元バーコードが広く普及している。
【0003】
二次元バーコードに記録された個人情報を読み取る手法としては、種々ある。例えば、二次元イメージセンサが組み込まれたカメラを用いて対象物(二次元バーコード)を撮像し、得られた二次元画像データを解析して個人情報を読み取る手法や、フラットベットスキャナを用いて、ガラス上に載置された対象物(の二次元バーコード)を反対側から光学的に読み取る手法などがある。しかし、これらの手法は、いずれも高価な機器や広い設置環境が必要になることから、例えばデパートの受付や個人ユースには不向きである。そのため、受付や個人ユースでは、カードの端を手に持ち(手でつまみ)、カードをスワイプさせて二次元バーコードに記録された情報を読み取るスワイプ式の情報読取装置が広く使用されている。
【0004】
ところで、情報記録媒体の中には、二次元バーコードが印刷されているのみならず、顔写真が一緒に掲載されたカードがある。例えば、図11に示すプラスチック製のカード100は、下方に二次元バーコード101が印刷されるとともに、左上隅に顔写真102が掲載されている。また、例えば特許文献1に開示されたIDカード(特許文献1の図5参照)は、下方にバーコード(顔写真内容コード)が印刷されるとともに、左方に上半身の写真が掲載されている。
【0005】
このように、顔写真,指紋又はサインなどの視覚上の特徴が掲載されたカードは、セキュリティ面での信頼性が高くなる。例えば、カードに顔写真を掲載し、その顔写真の特徴(目・口・鼻の中心位置や大きさなど)を符号化して二次元バーコードの中に埋め込んでおく。そうすると、顔写真が他人のものと差し替えられたとしても、二次元バーコードと顔写真を光学的に読み取って、その顔写真の特徴と、その二次元バーコードに埋め込まれた顔写真の特徴とを照合することによって、偽造犯罪を簡易に防止することができる。
【0006】
【特許文献1】特開2001−52142号公報(図5)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述したように、二次元バーコードや顔写真を備え、偽造犯罪の防止にも寄与し得るカードであっても、受付や個人ユースで使用されるスワイプ式の情報読取装置によって情報を読み取ろうとすると、幾何学的な歪みが生じて読み取り精度が低下する場合がある。
【0008】
すなわち、スワイプ式(手動式)の情報読取装置では、人間が情報記録媒体の端を持って(つまんで)スワイプする、という人為的動作が介在するため、情報記録媒体が一定速度でスワイプされない場合がある。この場合、情報読取装置に記録された画像データに搬送方向のジッターが生じてしまい、その結果、二次元バーコード画像や顔写真画像が歪んで読み取り精度が低下する。なお、かかる問題は、自動式の情報読取装置であっても、モータでカードを搬送する途中で何らかの故障により搬送速度が変わると、同様に生ずる。
【0009】
一方で、受付や個人ユースにおいて、スワイプ式の情報読取装置以外の二次元イメージセンサやフラットベットスキャナを利用すれば、スワイプという人為的動作を必要としないため、二次元バーコード画像や顔写真画像が歪むことはない。しかし、上述のとおり、コスト上昇を招いたり、広い設置環境が必要になったりと、市場普及の妨げとなる要因を数多く含む。そのため、二次元バーコード画像や顔写真画像がたとえ歪んだとしても、この歪みを補正することができるようなカードの登場が望まれる。
【0010】
本発明は、このような点に鑑みてなされたものであり、その目的は、情報読取装置で二次元バーコードや顔写真などの情報を光学的に読み取る際に、たとえ幾何学的な歪みが生じたとしても、その歪みを簡易に補正することができ、ひいては読み取り精度の向上に簡易に資することが可能な情報記録媒体及び情報読取装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
以上のような課題を解決するために、本発明は、情報記録媒体のうち、情報読取装置によって情報が読み取られる読み取り領域に、情報記録媒体の表面を光学的に読み取る際に幾何学的な歪みが発生した場合であって、情報読取装置によってその歪みが補正される場合に用いられるマークが含まれることを特徴とする。
【0012】
より具体的には、本発明は、以下のものを提供する。
【0013】
(1) 情報読取装置に使用される情報記録媒体において、前記情報記録媒体は、前記情報読取装置によって情報が読み取られる読み取り領域を有し、前記読み取り領域には、前記情報記録媒体の表面を光学的に読み取る際に幾何学的な歪みが発生した場合であって、前記情報読取装置によって当該歪みが補正される場合に用いられるマークが含まれることを特徴とする情報記録媒体。
【0014】
本発明によれば、情報読取装置に使用される情報記録媒体において、その情報記録媒体は、情報読取装置によって情報が読み取られる読み取り領域を有しており、その読み取り領域には、情報記録媒体の表面(例えば二次元バーコードや顔写真などが印刷された表面)を光学的に読み取る際に幾何学的な歪み(例えば搬送方向に延びた歪み)が発生した場合であって、情報読取装置によってその歪みが補正される場合に用いられるマークが含まれることとしたから、搬送方向のジッターによる画像の歪みを補正することができる。
【0015】
すなわち、例えば二次元バーコード、顔写真、指紋及びサインなど、情報記録媒体の表面にあるものをスワイプ式の情報読取装置で光学的に読み取ろうとすると、スワイプに起因した搬送方向のジッター(幾何学的な歪み)が発生する場合があるが、本発明によれば、上述したマークを光学的に読み取ることによって得られる歪み補正情報を基にして、その歪みを補正することができる。
【0016】
このように、本発明は、情報記録媒体に予めマークを付して(印刷して)おくだけで、情報記録媒体の表面を光学的に読み取る際に生じる幾何学的な歪みを簡易に補正することができものなので、読み取り精度の向上を簡易に図ることができる。
【0017】
ここで、読み取り領域内における「マーク」の配置については、特に限定されない。例えば二次元バーコードや顔写真などに隣接して配置されていてもよいし、二次元バーコードや顔写真の中に含まれていてもよい。
【0018】
また、「マーク」は、例えば線・枠・塗り潰し図形・記号・文字などの種類、直線・三角形・四角形・菱形・複数の平行線・折れ線などの形、読み取り領域全体・読み取り領域の半分・読み取り領域の一部などの大きさ、1個・2個・3個などの個数の如何を問わない。
【0019】
なお、「情報読取装置」には、スワイプ式(手動式)の情報読取装置が含まれるのは勿論のこと、自動式の情報読取装置も含まれる。例えば、モータによってカードを搬送する途中で、何らかの故障により搬送速度が変わった場合、かかる場合であっても、搬送方向のジッターによる画像の歪みを補正することが可能になる。
【0020】
(2) 前記マークは、前記情報読取装置における情報記録媒体の搬送方向と垂直な方向に幅をもち、かつ、当該搬送方向に対して当該幅が変化する図形であることを特徴とする(1)記載の情報記録媒体。
【0021】
本発明によれば、上述したマークは、情報読取装置における情報記録媒体の搬送方向と垂直な方向に幅をもち、かつ、搬送方向に対してその幅が変化する図形を有することとしたから、かかるマークは搬送方向に対して連続的な位置情報となり、搬送方向のジッターによる画像の歪みを補正するのに必要な情報を、高い分解能で取り出すことができる。その結果、情報読取装置において、搬送方向のジッターによる画像の歪みを補正する際の精度を向上させることができる。
【0022】
(3) 前記マークは、前記情報読取装置における情報記録媒体の搬送方向と垂直な方向に並んで配置された複数個の図形からなり、これら複数個の図形の位置的位相は、前記情報読取装置における情報記録媒体の搬送方向にずれていることを特徴とする(1)又は(2)記載の情報記録媒体。
【0023】
本発明によれば、上述したマークは、情報読取装置における情報記録媒体の搬送方向と垂直な方向に並んで配置された複数個の図形からなり、これら複数個の図形の位置的位相は、情報読取装置における情報記録媒体の搬送方向にずれていることとしたから、情報記録媒体上のレイアウトを考慮して、情報記録媒体の搬送方向と垂直な方向の幅をある程度小さくし、複数のセグメントをもつ複数個の図形を考えた場合であっても、情報読取装置において搬送方向のジッターによる画像の歪みを補正するのに必要な情報を精度よく取り出すことができる。例えば、搬送方向のジッターによって一のマーク図形の一部に局所的な丸みが発生した場合であっても、位置的位相がずれた他の図形から、画像のひずみを補正するのに必要な情報を精度よく取り出すことができる。
【0024】
なお、好ましくは、情報記録媒体の読み取り領域に、情報読取装置における情報記録媒体の搬送方向と垂直な方向に並んで配置され、互いに位置的位相が情報読取装置における情報記録媒体の搬送方向にずれている2個の図形を配置する。これにより、上述した歪みを補正するのに必要な情報を、最小限の印刷コストで精度よく取り出すことができる。
【0025】
(4) 前記読み取り領域には、前記情報記録媒体の所有者に関する符号化された情報を有する符号化情報部が含まれ、前記マークは、前記符号化特徴部に隣接して又は前記符号化特徴部の中に配置されていることを特徴とする(1)から(3)のいずれか記載の情報記録媒体。
【0026】
本発明によれば、上述した読み取り領域には、例えば二次元バーコードなど、情報記録媒体の所有者に関する符号化された情報を有する符号化情報部が含まれ、上述したマークは、この符号化情報部に隣接して又はこの符号化情報部の中に配置されていることとしたから、符号化情報部において、搬送方向のジッターによる画像の歪みを補正する際の精度を高めることができる。
【0027】
すなわち、例えば、PDF417の符号体系以外のバーコードは搬送方向のジッターによって悪影響を受けやすいが、そのバーコードに隣接するように上述のマークを配置することで、スワイプ時に、イメージセンサ等の撮像素子の正面を通過するバーコードとマークの移動速度が同じになり、その結果、搬送方向のジッターによる画像の歪みを補正する際の精度を高めることができる。
【0028】
(5) 前記読み取り領域には、前記情報記録媒体の所有者に関する視覚上の特徴を有する特徴部が含まれ、前記マークは、前記特徴部に隣接して又は前記特徴部の中に配置されていることを特徴とする(1)から(3)のいずれか記載の情報記録媒体。
【0029】
本発明によれば、上述した読み取り領域には、例えば顔写真・指紋・サインなど、情報記録媒体の所有者に関する視覚上の特徴(目や鼻の位置など)を有する特徴部が含まれており、上述したマークは、この特徴部に隣接して又はこの特徴部の中に配置されていることとしたから、符号化情報部に隣接して又は符号化情報部の中に配置されている場合と同様、特徴部において、搬送方向のジッターによる画像の歪みを補正する際の精度を高めることができる。
【0030】
なお、符号化情報部又は特徴部の所定位置にマークを配置して、情報記録媒体の読み取り領域において生じる違和感を払拭することもできる。例えば、二次元バーコードの一部や顔写真の写真枠に、歪み補正処理用のマークであるとは認識できないようにマークを埋め込む(或いは、二次元バーコードの一部や顔写真の写真枠をマークとして代用する)。また、マーク自体を、顔写真中の人物の周囲を囲むような図形にする。このように、マークを歪み補正処理用のマークであるとは認識できないような図形とすることで、情報記録媒体の読み取り領域にマークを配置したことに起因して生ずる違和感を払拭することができる。
【0031】
(6) (1)から(5)のいずれか記載の情報記録媒体の表面にあるマークに基づき前記歪みを補正する歪み補正手段を備えることを特徴とする情報読取装置。
【0032】
本発明によれば、情報読取装置に、上述した情報記録媒体の表面にあるマークに基づき、上述の歪みを補正する歪み補正手段が設けられることとしたので、搬送方向のジッターによる画像の歪みを精度よく補正することが可能な情報読取装置を提供することができる。
【0033】
(7) 走行路を形成するフレームを有し、当該フレームの一部が走行基準面として形成され、当該走行基準面に添って情報記録媒体がスワイプされることによって情報を読み取ることを特徴とする(6)記載の情報読取装置。
【0034】
本発明によれば、例えば略コ字形状のフレームの一部(例えば底部)が走行基準面として形成され、その走行基準面に添って情報記録媒体がスワイプされることによって情報を読み取る情報読取装置において、搬送方向のジッターによる画像の歪みを精度よく補正することができる。なお、スワイプとは、カードを情報記録媒体を情報読取装置にさっと走らせる動作をいう。
【発明の効果】
【0035】
本発明に係る情報記録媒体及び情報読取装置は、以上説明したように、情報記録媒体の表面を光学的に読み取る際に生じる幾何学的な歪みを簡易に補正することができ、ひいては読み取り精度の向上を図ることができる
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0037】
[外観構成]
図1は、本発明の実施の形態に係るスワイプ式(手動式)イメージスキャナ1及びカード2の外観構成の概要を示す模式図である。図1(a)は、カード2をスワイプ式イメージスキャナ1に通している様子を示しており、図1(b)は、カード2を正面から見て拡大した様子を示している。
【0038】
図1(a)において、本発明の実施の形態に係るスワイプ式イメージスキャナ1は、断面形状がほぼコ字形状をなすフレームを有しており、このフレームの底部をカード走行基準面として形成されている。また、この底部を挟んで対向する2つの側板部の間に、カード通路1aが形成されている。なお、スワイプ式イメージスキャナ1の電気的構成については後述する。
【0039】
一方で、図1(b)において、本発明の実施の形態に係るカード2は、JISに準拠している一般的なカードであって、例えば、幅86mm,高さ54mm,厚み0.76mmというサイズのプラスチックカードである。なお、ここではプラスチックカードを採用したが、例えば、スタンプカードなどの紙カード,カード内部にICチップが内蔵されたICカード,カード表面に特殊な塗工を施してデータの書き換えが可能なリライトカードなど、その種類の如何は問わない。また、サイズに関しても、如何なるサイズであってもよい。さらに、POS端末対象,ISU100対象の情報記録媒体を採用することもできる。
【0040】
カード2は、スワイプ式イメージスキャナ1によって情報が読み取られる読み取り領域3(図の斜線部)を有しており、その読み取り領域3には、カード2の所有者に関する符号化された情報を有する二次元バーコード5と、その二次元バーコード5の下方に印刷されたマーク6と、が含まれている。このマーク6は、カード2の表面を光学的に読み取る際に幾何学的な歪みが発生した場合であって、この歪みを補正する際に用いられるものである(後述の[補正処理]参照)。また、読み取り領域3以外の領域(カード2の左上隅)には、顔写真4が貼付されている。
【0041】
なお、二次元バーコード5は、1次元バーコードを拡張したもので、例えばソフト又はハードによって情報を二次元コードに変換(エンコード)し、その二次元コードをプリンタによってカード2に印刷することで、作成される。また、図1(b)では、読み取り領域3は、およそ下半分(1/2)となっているが、下から3/1であっても2/3であっても、その面積の如何は問わない。場合によっては、図1(b)の縦方向に読み取り領域3が設けられていてもよい。
【0042】
[電気的構成]
図2は、本発明の実施の形態に係るスワイプ式イメージスキャナ1の電気的構成を示す模式図である。
【0043】
図2において、本発明の実施の形態に係るスワイプ式イメージスキャナ1は、密着型のイメージセンサ11と、カード2がカード通路1aを通過するときに、カード2と接触して回転するパッドローラ12と、パッドローラ12の回転を検出してカード2の位置情報を取得するエンコーダ13と、を有する。また、イメージセンサ11は、撮像された二次元バーコード5やマーク6の画像データを記憶する画像メモリ14と電気的に接続され、その画像メモリ14は、画像メモリ14から取り込んだ画像データに対し、例えば後述する補正処理などの様々な処理を施す画像処理手段15と電気的に接続されている。
【0044】
以上のような電気的構成に基づき、以下、本発明の実施の形態に係るスワイプ式イメージスキャナ1によるマーク6を用いた補正処理について説明する。
【0045】
[補正処理]
図3は、スワイプ式イメージスキャナ1において、マーク6の画像データを用いた歪み補正処理が実行される仕組みを説明するための説明図である。図3には、二次元バーコード5(中央付近のみ)と、その二次元バーコード5の下方に印刷されたマーク6(中央付近のみ)と、が示されている。
【0046】
始めに、二次元バーコード5及びマーク6の読み取りが行われる。より具体的には、イメージセンサ(撮像素子)11は、カード通路1aを通過するカード2の二次元バーコード5及びマーク6を光電変換によって撮像する。そして、撮像された二次元バーコード5及びマーク6の画像データは、画像メモリ14において記憶される。これにより、二次元バーコード5及びマーク6の読み取りが完了する。なお、この画像メモリ14は、RAM,SDRAM,DDRSDRAM,RDRAMなど、画像データを記憶しうるものであれば如何なるものであってもよい。
【0047】
次に、マーク6を用いた補正処理が行われる。より具体的には、画像処理手段15は、画像メモリ14に記憶されている二次元バーコード5及びマーク6の画像データを読み込む。
【0048】
ここで、二次元バーコード5及びマーク6の画像データに搬送方向のジッターが生じていない場合(図3(a))のマーク6の所定寸法を、画像メモリ14等に予め記憶させておく。例えば、図3(a)において、マーク6の高さがB(1個又は数個の数値からなる)になるときの水平方向の長さをAとして記憶させておく。
【0049】
そして、上述した読み込み処理によって得られた二次元バーコード5及びマーク6の画像データに、搬送方向(図中の水平方向)のジッターが生じたと仮定する。すなわち、例えば図3(b)に示すように、二次元バーコード5の画像データが歪むとともに、マーク6の画像データも区間Hだけ延びて歪んだと仮定する。
【0050】
この場合、画像処理手段15では、マーク6の高さがB'(=B)になるときの水平方向の長さA'が検出され、水平方向の長さA'の区間では、二次元バーコード5及びマーク6の画像データが搬送方向にA'/Aの倍率で歪んでいることが認識される(上述したA'/Aの倍率が1になるときは、搬送方向のジッターは生じておらず、1以外になるときは、搬送方向のジッターが生じている、と認識される)。
【0051】
同様に、マーク6の高さB'の値を適宜変更し、複数個の水平方向の長さA'を検出する。その結果、搬送方向に歪んでいる長さA'の区間のうち、実際に歪んでいる区間Hを特定することができ、特定された区間Hの分だけ搬送方向に縮小することで、幾何学的な歪みを補正することが可能になる。このように、スワイプ式イメージスキャナ1の画像処理手段15は、マーク6を用いた補正処理を行い、カード2の表面を光学的に読み取る際に発生した幾何学的な歪みを補正することができる。なお、かかる補正後の二次元バーコード5に対して位置検出処理,構造解析処理,復号処理などの信号処理が行われると、二次元バーコード5の情報を的確に読み取ることができ、ひいては読み取り精度の向上を簡易に図ることができる。
【0052】
なお、マーク6は、二次元バーコード5の下方に隣接して印刷されているが(図1(b)参照)、このようにすることで、スワイプ時に、イメージセンサ11の正面を通過するマーク6と二次元バーコード5の移動速度が同じになり、その結果、スワイプ式イメージスキャナ1において、搬送方向のジッターによる画像の歪みを補正する際の精度を高めることができる。
【0053】
[変形例]
図4は、本発明の他の実施の形態に係るカード2の外観構成の概要を示す模式図である。図1(b)と同じ要素については、同符号で示すものとする。
【0054】
図4(a)において、本発明の他の実施の形態に係るカード2では、顔写真4が読み取り領域3の内部に貼付されている。そして、その顔写真4の下方にマーク6が印刷されている。従って、スワイプ式イメージスキャナ1の画像処理手段15(図2参照)において、上述同様、顔写真4の幾何学的な歪みを補正することが可能になる。
【0055】
すなわち、スワイプ式イメージスキャナ1では、人間がカード2をもってスワイプする、という人為的動作が介在するため、カード2がカード通路1aを一定速度で通過しない場合がある。かかる場合には、画像メモリ14(図2参照)に記憶された画像データに搬送方向のジッターが生じ、顔画像が歪んでしまう。読み取り領域3に含まれるマーク6は、この幾何学的歪みを補正するために設けられたものである。このマーク6を用いた歪み補正の仕組みについては、図5を用いて後述する。
【0056】
なお、図4(a)では、二次元バーコード5と併せて読み取り領域4に顔写真4を貼付したが、本発明はこれに限られず、例えば図4(b)に示すように指紋4'を貼付(或いは指紋4'を付けて、その上に透明フィルムを貼るなど)してもよいし、図4(c)に示すようにサイン4''を貼付(或いはサイン4''を記入して、その上に透明フィルムを貼るなど)してもよい。
【0057】
また、図4(a)〜図4(c)に示すように、マーク6を顔写真4,指紋4',サイン4''に隣接する位置に配置することによって、スワイプ時に、イメージセンサ11の正面を通過するマーク6と顔写真4,指紋4',サイン4''との移動速度が同じになり、その結果、スワイプ式イメージスキャナ1において、搬送方向のジッターによる画像の歪みを補正する際の精度を高めることができる。
【0058】
図5は、スワイプ式イメージスキャナ1において、マーク6の画像データを用いた歪み補正が実行される仕組みを説明するための説明図である。図5には、顔写真4の任意の一部分に相当する真円部4aと、顔写真4の下方に掲載されたマーク6と、が示されている。
【0059】
図3を用いて説明した補正処理と同様に、まず、スワイプ式イメージスキャナ1において、画像メモリ14の画像データに搬送方向のジッターが生じていない場合(図5(a))のマーク6の所定寸法を、画像メモリ14等に予め記憶させておく。例えば、図5(a)では、マーク6の高さがB(1個又は数個の数値からなる)になるときの水平方向の長さをAとして記憶させておく。そして、画像メモリ14に記憶された画像データに、例えば図5(b)に示すような搬送方向のジッターが生じたと仮定する。すなわち、真円部4aの画像データが搬送方向(図中の水平方向)に歪むとともに、マーク6の画像データも区間H1及び区間H2だけ延びて歪んだと仮定する。
【0060】
この場合、スワイプ式イメージスキャナ1の画像処理手段15では、マーク6の高さがB'(=B)になるときの水平方向の長さA'が検出され、水平方向の長さA'の区間では、真円部4a及びマーク6の画像データが搬送方向にA'/Aの倍率で歪んでいることが認識される。
【0061】
このようにして、マーク6の高さB'を適宜変更し、複数個の水平方向の長さA'を検出する。そうすると、搬送方向に歪んでいる長さA'の区間のうち、実際に歪んでいる区間H1を特定することができる。また、同様にして、実際に歪んでいる区間H2も特定することができる。従って、スワイプ式イメージスキャナ1の画像処理手段15は、歪んでいる区間や歪んでいる倍率を基にして、その歪みを補正することが可能になる。
【0062】
図6は、マーク6の外観の変更した様子を説明するための説明図である。
【0063】
図6(a)において、三角形のマーク6aは、図5(a)に示すマーク6と同様の図形である。このように、スワイプ式イメージスキャナ1におけるカード2の搬送方向と垂直な方向(図6中の縦方向)に幅をもつ図形とすることで、図5を用いて上述したように、歪んでいる区間を特定することが可能になる。
【0064】
ここで、スワイプ式イメージスキャナ1におけるカード2の搬送方向と垂直な方向に幅をもつ図形としては、様々なものが挙げられる。例えば、図6(a)において、マーク6bやマーク6cに示すように、マーク6aと線対称の図形としてもよいし、マーク6dに示すように、マーク6aとマーク6bを結合したような図形としてもよいし、マーク6e,マーク6f,マーク6gに示すように、平行四辺形,菱形,台形としてもよい。また、図6(b)において、マーク4hが示すように、サイン4''を囲むような三角形の図形としてもよい。加えて、コントラストにて分別できれば、図柄が重なっている図形であってもよい。
【0065】
また、歪み補正の精度(分解能)を上げるには、マーク6(マーク6a〜6h)において、カード2の搬送方向と垂直な方向に対する変化量を大きくすればよい。例えば、図6(a)又は図6(b)では、横長の三角形となっているが、これを縦長の三角形にしたり、一本の縦長の直線にしたりする等である。しかし、例えば45度の変化量で三角形のマーク6を作成すると、カード2の規定の範囲内(例えば高さ54mmの範囲内)にレイアウトできなくなる場合がある。そこで、幾つかのセグメントに分割した図形としてもよい。
【0066】
図7は、マーク6として幾つかのセグメントに分割した図形を採用したときの補正処理に関する説明図である。
【0067】
図7において、図7(a)のマーク6iが示すように、45度の変化量を維持しながら幾つかのセグメントに分割した図形とすることができる。そうすると、上述したレイアウトの問題を解消でき、ひいてはマークの高さをある程度抑えた上で歪み補正の精度を上げることができる。
【0068】
一方で、図7(a)に示すセグメント化されたマーク4iは、単調増加又は単調減少を繰り返す図形となるため、その変化点(各三角形の頂点)では局所的な丸みが発生する場合がある。従って、これを改善すべく、マーク4iと線対称な図形であるマーク4jを組合せ、両者の位置的位相をカード2の搬送方向にずらして配置する。これにより、マーク4iの図形が直線的でない部分であっても、マーク4jの直線的な部分を用いることによって、精度良く歪み補正を行うことができる。
【0069】
この歪み補正の詳細を以下に説明する。図7(b)は、図7(a)の点線部Xを拡大した拡大図である。まず、スワイプ式イメージスキャナ1において、画像メモリ14の画像データに搬送方向のジッターが生じていない場合(図7(b))のマーク6i及びマーク6jの所定寸法を、画像メモリ14等に予め記憶させておく。例えば、図7(b)では、マーク6i及びマーク6jの高さがそれぞれB1及びB2になるときの水平方向の長さをA1及びA2として記憶させておく。そして、画像メモリ14に記憶された画像データに、例えば図7(c)に示すような搬送方向のジッターが生じたと仮定する。この場合、画像処理手段15では、マーク6iの高さがB1'(=B1)になるときの水平方向の長さA1'が検出されるとともに、マーク6jの高さがB2'(=B2)になるときの水平方向の長さA2'が検出される。
【0070】
ここで、マーク6iの三角形の頂点に局所的な丸みが発生しているため(図7(c)参照)、マーク6iの高さB1'と水平方向の長さA1'とでは、歪んだ区間を特定することが困難である。すなわち、局所的な丸みが発生している部分においては、搬送方向に対してマーク6iの幅が大きく変化しないことから、分解能が低下し、歪んだ区間を特定することができなくなる。そこで、これを改善すべく、マーク6iと線対称かつ位置的位相がずれた図形であるマーク6jを用いる。図7(c)に示すように、マーク6iとマーク6jとは、マーク6iに局所的な丸みが発生した場合であっても、マーク6jには局所的な丸みが発生しないような位置関係となっている。従って、マーク6jの高さB2'と水平方向の長さA2'とを用いて、歪んだ区間を精度良く特定することが可能になる。
【0071】
図8は、サイン4''に平行四辺形の枠からなるマーク6kが配置されている様子を説明するための説明図である。
【0072】
図8に示すマーク6kによれば、図7を用いて説明したような歪み補正と同様の補正処理を行うことができる。すなわち、マーク6kの所定寸法(A1,A2,B1,B2)を画像メモリ14に予め記憶させておき(図8(a))、仮に、図8(b)に示すような搬送方向のジッターが生じたとしても、局所的な丸みが原因で歪んだ区間の特定が困難な寸法(A1',B1')ではなく、局所的な丸みが発生しておらず歪んだ区間の特定が可能な寸法(A2',B2')を用いることによって、その歪みを補正することができる。
【0073】
図9は、顔写真4に隣接して又は顔写真4の中にマーク6l〜マーク6nが配置されている様子を説明するための説明図である。
【0074】
図9(a)〜図9(c)に示すマーク6l〜マーク6nによれば、上述した補正処理と同様に、搬送方向のジッターによる画像の歪みを補正することが可能になる。特に、マーク6l又はマーク6mによれば、一方が顔写真4の写真枠に埋め込まれている状態(図9(a))又は顔写真4の中に埋め込まれている状態(図9(b))となっているので、他方は一本の直線で足りることとなり、その結果、配置スペースをコンパクト化することができる。また、特に、マーク6nによれば、顔写真4の中に埋め込まれ、人物画像の周囲を囲むような状態(図9(c))となっているので、マーク6nを、歪み補正処理用の図形であると容易に認識することができなくなり、その結果、カード2の読み取り領域3にマーク6nを配置したことに起因して生ずる違和感を払拭することができる。
【0075】
なお、歪み補正は、マーク6を止め、エンコーダ等の機器を用いて行うことも考えられるが、かかる方法は、エンコーダ等の機器を用いることが原因でコスト上昇や容積増大を招く結果、小型化・コンパクト化の時代の流れに逆らうことになる。この点、本発明を用いた歪み補正よれば、カード2に所定のマーク6を配置するだけで、搬送方向のジッターよる歪みを補正することができ、ひいてはスワイプ式イメージスキャナ1やカード2の信頼性を簡易に向上させることができる。
【0076】
また、本実施形態では、マークから歪みを検出する方法として、予め歪んでいない時の画像を学習する方式を採用したが、本発明はこれに限定しない。例えば、マークの幅は直線的に変化する、という前提を作っておけば、画像上、その直線部分が歪んだ分だけ速度変動していることが分かる。換言すれば、マークの幅が直線的に変化する図形である場合、その直線性から外れる分を速度の補正とすることにより、速度変動補正ができるようになる。
【0077】
図10は、二次元バーコード5の読み取り時のスキューを検出する様子を説明するための説明図である。
【0078】
図10において、マーク6pによれば、マークを目立たせることなく、二次元バーコード5の読み取り時のスキューを検出することができる。すなわち、二次元バーコード5の上下に波線(マーク6p)を施すことにより、マーク6pのピーク位置のズレ量の変化が分かるので、そのピーク位置のズレ量が変化した場合、スキューを検出することができる。例えば、最初の位相ズレが90度であるとき、スキューが検出される場合には、その位相ズレは70度や100度になる。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明に係る情報記録媒体及び情報読取装置は、情報記録媒体の表面を光学的に読み取る際に、幾何学的な歪みが発生したとしても、その歪みを補正することが可能なものとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明の実施の形態に係るスワイプ式イメージスキャナ及びカードの外観構成の概要を示す模式図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るスワイプ式イメージスキャナの電気的構成を示す模式図である。
【図3】スワイプ式イメージスキャナにおいて、マークの画像データを用いた歪み補正処理が実行される仕組みを説明するための説明図である。
【図4】本発明の他の実施の形態に係るカードの外観構成の概要を示す模式図である。
【図5】スワイプ式イメージスキャナにおいて、マークの画像データを用いた歪み補正が実行される仕組みを説明するための説明図である。
【図6】マークの外観の変更した様子を説明するための説明図である。
【図7】マークとして幾つかのセグメントに分割した図形を採用したときの補正処理に関する説明図である。
【図8】サインに平行四辺形の枠からなるマークが配置されている様子を説明するための説明図である。
【図9】顔写真に隣接して又は顔写真の中にマークが配置されている様子を説明するための説明図である。
【図10】二次元バーコード読み取り時のスキューを検出する様子を説明するための説明図である。
【図11】従来例を説明するための模式図である。
【符号の説明】
【0081】
1 スワイプ式イメージスキャナ
2 カード
3 読み取り領域
4 顔写真
5 二次元バーコード
6 マーク
11 イメージセンサ
12 パッドローラ
13 エンコーダ
14 画像メモリ
15 画像処理手段
【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報読取装置に使用される情報記録媒体において、
前記情報記録媒体は、前記情報読取装置によって情報が読み取られる読み取り領域を有し、
前記読み取り領域には、前記情報記録媒体の表面を光学的に読み取る際に幾何学的な歪みが発生した場合であって、前記情報読取装置によって当該歪みが補正される場合に用いられるマークが含まれることを特徴とする情報記録媒体。
【請求項2】
前記マークは、前記情報読取装置における情報記録媒体の搬送方向と垂直な方向に幅をもち、かつ、当該搬送方向に対して当該幅が変化する図形であることを特徴とする請求項1記載の情報記録媒体。
【請求項3】
前記マークは、前記情報読取装置における情報記録媒体の搬送方向と垂直な方向に並んで配置された複数個の図形からなり、
これら複数個の図形の位置的位相は、前記情報読取装置における情報記録媒体の搬送方向にずれていることを特徴とする請求項1又は2記載の情報記録媒体。
【請求項4】
前記読み取り領域には、前記情報記録媒体の所有者に関する符号化された情報を有する符号化情報部が含まれ、
前記マークは、前記符号化特徴部に隣接して又は前記符号化特徴部の中に配置されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか記載の情報記録媒体。
【請求項5】
前記読み取り領域には、前記情報記録媒体の所有者に関する視覚上の特徴を有する特徴部が含まれ、
前記マークは、前記特徴部に隣接して又は前記特徴部の中に配置されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか記載の情報記録媒体。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか記載の情報記録媒体の表面にあるマークに基づき前記歪みを補正する歪み補正手段を備えることを特徴とする情報読取装置。
【請求項7】
走行路を形成するフレームを有し、当該フレームの一部が走行基準面として形成され、当該走行基準面に添って情報記録媒体がスワイプされることによって情報を読み取ることを特徴とする請求項6記載の情報読取装置。
【請求項1】
情報読取装置に使用される情報記録媒体において、
前記情報記録媒体は、前記情報読取装置によって情報が読み取られる読み取り領域を有し、
前記読み取り領域には、前記情報記録媒体の表面を光学的に読み取る際に幾何学的な歪みが発生した場合であって、前記情報読取装置によって当該歪みが補正される場合に用いられるマークが含まれることを特徴とする情報記録媒体。
【請求項2】
前記マークは、前記情報読取装置における情報記録媒体の搬送方向と垂直な方向に幅をもち、かつ、当該搬送方向に対して当該幅が変化する図形であることを特徴とする請求項1記載の情報記録媒体。
【請求項3】
前記マークは、前記情報読取装置における情報記録媒体の搬送方向と垂直な方向に並んで配置された複数個の図形からなり、
これら複数個の図形の位置的位相は、前記情報読取装置における情報記録媒体の搬送方向にずれていることを特徴とする請求項1又は2記載の情報記録媒体。
【請求項4】
前記読み取り領域には、前記情報記録媒体の所有者に関する符号化された情報を有する符号化情報部が含まれ、
前記マークは、前記符号化特徴部に隣接して又は前記符号化特徴部の中に配置されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか記載の情報記録媒体。
【請求項5】
前記読み取り領域には、前記情報記録媒体の所有者に関する視覚上の特徴を有する特徴部が含まれ、
前記マークは、前記特徴部に隣接して又は前記特徴部の中に配置されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか記載の情報記録媒体。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか記載の情報記録媒体の表面にあるマークに基づき前記歪みを補正する歪み補正手段を備えることを特徴とする情報読取装置。
【請求項7】
走行路を形成するフレームを有し、当該フレームの一部が走行基準面として形成され、当該走行基準面に添って情報記録媒体がスワイプされることによって情報を読み取ることを特徴とする請求項6記載の情報読取装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2006−215633(P2006−215633A)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−25199(P2005−25199)
【出願日】平成17年2月1日(2005.2.1)
【出願人】(000002233)日本電産サンキョー株式会社 (1,337)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年2月1日(2005.2.1)
【出願人】(000002233)日本電産サンキョー株式会社 (1,337)
【Fターム(参考)】
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