説明

情報記録媒体用ガラス基板

【課題】表面の清浄度を高く維持しつつ、平滑性を優れたものとすることができる情報記録媒体用ガラス基板を提供する。
【解決手段】情報記録媒体用ガラス基板は、原子間力顕微鏡を使用して、表面粗さ(Ra)を10μm四方の視野で10視野以上測定した測定結果より算出される表面粗さ(Ra)のばらつき率は、3%以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばハードディスク等のような情報記録装置の磁気記録媒体である磁気ディスク、光磁気ディスク、光ディスク等の情報記録媒体に用いられる情報記録媒体用ガラス基板に関するものである。より詳しくは、その表面に円周方向へ同心円を描きながら延びるテクスチャーが形成された情報記録媒体用ガラス基板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、上記のような情報記録媒体の1つとして、ハードディスク装置に内装された磁気ディスクが知られている。この磁気ディスクは、その中心に円孔を有する円盤状の情報記録媒体用ガラス基板(以下、略して「ガラス基板」ともいう)の表面に磁性膜等を積層することによって作製される。同磁気ディスクは、円孔に支持軸であるスピンドルが嵌挿されることによってハードディスク装置の内部に装着され、同スピンドルを中心に回転可能に支持されて使用される。そして、磁気ディスクに記録された磁気記録情報を読み取るための磁気ヘッド((以下、単にヘッドともいう)は、主として磁気ディスクの表面から一定距離だけ浮上した状態で磁気ディスク上を移動するように構成されている。
【0003】
一方、磁気ディスクは、その記録容量を増大させるため、高記録密度化が図られている。この磁気ディスクの高記録密度化を図る方法の一つとして、ガラス基板の表面を平滑なものとすることにより、磁気ディスク表面とヘッドとの距離を狭める方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。すなわち、該ガラス基板は、まず、酸化セリウム等のガラス材料に対して化学的に影響を与える研磨剤を使用してその表面を研磨することにより、同表面が平滑面とされる。その後、洗浄液として酸性水溶液及びアルカリ性水溶液を使用し、表面に固着した鉄粉、研磨粉等を除去するように洗浄処理が施されることにより、清浄度の高いガラス基板が形成される。同洗浄処理においては、酸性水溶液中にガラス中の一部の成分が溶出し、ガラス基板の表面はガラスの骨格成分である珪素酸化物(SiO)に富む状態となる。このSiOに富む状態となったガラス基板の表面がアルカリ性水溶液でエッチングされることにより、表面に固着した鉄粉、研磨粉等が除去される。そして、ガラス基板の表面でエッチングされる部分の厚みは、10nm程度とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−150547号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、近年は磁気ディスクのさらなる高記録密度化が要請されており、磁気ディスク表面とヘッドとの距離はより狭まる傾向にあるため、上記従来のガラス基板ではこれに対応できないという問題があった。つまり、洗浄処理でエッチングされる部分の厚みを10nm程度とした場合、形成されたガラス基板のなかには、不均一なエッチングによって異常な高さの凸部、凹凸の粗さのばらつき等のような欠点が発生する可能性がある。このような欠点を有するガラス基板から形成された磁気ディスクは、高記録密度化を図るために表面とヘッドとの距離を特に狭めた場合、移動中のヘッドが凸部に衝突したり、引っ掛かったり等する不具合(グライドエラー)を発生させやすくなる。
【0006】
一方、この問題を解決する方法として、洗浄液として弱酸性水溶液及び弱アルカリ性水溶液を使用し、ガラス基板の表面に影響を与えることなく、表面に固着した鉄粉、研磨粉等を除去することが考えられた。しかし、これら鉄粉、研磨粉等は、ガラス基板の表面に化学的に強く固着しているものが多く、中にはガラス基板の表面中に食い込むものも存在し、該洗浄液でこれら鉄粉、研磨粉等を取り除くことができず、却って清浄度の低下を招くこととなった。他に、SiOに富む状態となったガラス基板の表面部分を、研磨剤で研磨して除去する方法も考えられたが、この場合、研磨粉等がガラス基板の表面に固着するのみならず、同研磨後に行われる洗浄でガラス基板の表面が変質してしまうという問題が発生した。
【0007】
この発明は、上記のような従来技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的とするところは、表面の清浄度を高く維持しつつ、平滑性を優れたものとすることができる情報記録媒体用ガラス基板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の情報記録媒体用ガラス基板の発明は、原子間力顕微鏡を使用して、表面粗さ(Ra)を10μm四方の視野で10視野以上測定した測定結果より算出される表面粗さ(Ra)のばらつき率は、3%以下であることを特徴とする。(但し、表面粗さ(Ra)のばらつき率は、全視野での表面粗さ(Ra)の全体平均値と、各視野毎の表面粗さ(Ra)の個別平均値とをそれぞれ比較し、個別平均値が全体平均値から0.1nm以上異なる視野数が全視野数に対して占める割合を示す。)
請求項2に記載の情報記録媒体用ガラス基板の発明は、請求項1に記載の発明において、前記表面粗さ(Ra)に対する最大山高さ(Rp)の比(Rp/Ra)は、10以下であることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の情報記録媒体用ガラス基板の発明は、請求項1又は請求項2に記載の発明において、最大山高さ(Rp)は、10nm以下であることを特徴とする。
請求項4に記載の情報記録媒体用ガラス基板の発明は、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の情報記録媒体用ガラス基板であって、前記表面粗さ(Ra)は、0.1〜1.5nmであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、以上のように構成されているため、次のような効果を奏する。
請求項1又は請求項2に記載の発明によれば、表面の清浄度を高く維持しつつ、平滑性を優れたものとすることができ、ヘッドの浮上特性を向上させたものとすることができる。
【0011】
請求項3又は請求項4に記載の発明によれば、請求項1又は請求項2に記載の発明の効果に加えて、表面の荒れを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施形態のガラス基板を示す平面図。
【図2】(a)は研削加工が施されたガラス素板の表面の一部を示す断面図、(b)は実施形態のガラス基板の表面の一部を示す断面図。
【図3】ガラス基板の製造工程を示す工程図。
【図4】ガラス素板の表面に研削加工を施す状態を示す斜視図。
【図5】(a)はガラス素板の表面に異質層が形成された状態を示す断面図、(b)はガラス基板の深さと組成との関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、この発明を具体化した一実施形態を、図面に基づいて説明する。
図1に示すように、情報記録媒体用ガラス基板21(以下、略して「ガラス基板21」とも記載する)は、シート状のガラス板から円盤状に切り出されたガラス素板の表面を研磨等することにより、中心に円孔21bを有する円盤状に形成されている。そして、当該ガラス素板は、そのガラス組成中に少なくとも珪素酸化物を含み、同珪素酸化物の他に、アルミニウム酸化物及びアルカリ土類金属酸化物のうちの少なくとも1種を含む多成分系のガラス材料より形成されている。この多成分系のガラス材料としては、フロート法、ダウンドロー法、リドロー法又はプレス法で製造されたソーダライムガラス、アルミノシリケートガラス、ボロシリケートガラス、結晶化ガラス等が挙げられる。
【0014】
前記ソーダライムガラスは、そのガラス組成中に珪素酸化物としての二酸化ケイ素(SiO)と、酸化ナトリウム(NaO)と、アルカリ土類金属酸化物としての酸化カルシウム(CaO)とを主成分として含むガラス材料である。アルミノシリケートガラスは、そのガラス組成中にSiOと、アルミニウム酸化物としての酸化アルミニウム(Al)と、アルカリ金属酸化物であるRO(R=カリウム(K)、ナトリウム(Na)、リチウム(Li))とを主成分として含むガラス材料である。結晶化ガラスとしては、酸化リチウム(LiO)−SiO系ガラス、LiO−Al−SiO系ガラス、RO−Al−SiO系ガラス等が挙げられる。なお、ROはアルカリ土類金属酸化物を示し、そのRとしてマグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)等が挙げられる。また、ガラス素板に使用する多成分系のガラス材料として、ソーダライムガラス、アルミノシリケートガラス、ボロシリケートガラス、結晶化ガラス等のガラス組成中に酸化ジルコニウム(ZrO)や酸化チタン(TiO)等を含ませた化学強化用ガラスを使用してもよい。
【0015】
当該ガラス基板21の表面22に、例えばコバルト(Co)、クロム(Cr)、鉄(Fe)等の金属又は合金よりなる磁性膜、保護膜等を形成することにより、磁気ディスク、光磁気ディスク、光ディスク等の情報記録媒体が構成される。当該情報記録媒体は、ハードディスク装置等の情報記録装置に回転可能に内装されて使用される。また、該情報記録装置には、情報記録媒体に記録情報を記録したり、その記録された記録情報を読み取ったり等するためのヘッドが内装されている。
【0016】
前記ヘッドは、回転する情報記録媒体の表面上を所望の記録情報が記録された位置まで移動するシーク動作を行う。このシーク動作は、ノイズの発生、情報記録媒体の傷つき等の不具合が起こることを抑制するため、ヘッドが情報記録媒体の表面から浮上した状態で行われることが理想とされる。従って、ガラス基板21には高い平滑性が要求される。しかし、実際には近年の高記録密度化の要請により、情報記録媒体の表面からのヘッドの浮上高さ(タッチダウンハイト、以下略してTDHとも記載する)は、5nm未満に設定されており、シーク動作中のヘッドは、瞬間的に情報記録媒体の表面に接触するようになっている。
【0017】
当該ガラス基板21は、JIS B 0601に規定される算術平均粗さ(Ra)が、好ましくは0.1〜1.5nmであり、より好ましくは0.1〜1.0nmであり、さらに好ましくは0.1〜0.6nmである。なお、同Raは、AFM(原子間力顕微鏡:デジタルインスツルメント社製)を使用して測定されたものである。Raが大きくなるに従い、ガラス基板21の表面22が荒れ、平滑性が低下し、シーク動作中のヘッドが表面22に発生した凹凸に横方向から衝突したり、引っ掛かったり等する不具合(グライドエラー)が発生しやすくなる。Raを0.1nm未満とする場合、ガラス素板の研磨時間が長くなり、歩留まりも減少することから、却って製造コストが嵩む。
【0018】
さらに、ガラス基板21は、JIS B 0601に規定され、AFMで測定された最大山高さ(Rp)が、好ましくは10nm以下である。Rpが10nmを超えると、ガラス基板21の表面22に異常な高さの突起(アスペリティ)が存在し、グライドエラーが発生しやすくなる。そして、前記Raに対するRpの比(Rp/Ra)は、好ましくは10以下である。Rp/Raが10を超えると、表面22に粗さのばらつきが発生し、ヘッドが凸部あるいはアスペリティを飛び越えにくくなり、グライドエラーが発生しやすくなる。
【0019】
図2(b)に示すように、ガラス基板21の表面22には、複数の突条24からなるテクスチャー23が形成されている。各突条24は、頂部が平坦な尾根状又は頂部が尖った尾根状をなし、それぞれの頂部が図中に二点鎖線で示した基準線25を超えないように形成されている。このため、当該ガラス基板21に優れた平滑性が付与され、シーク動作中のヘッドが突条24に横方向から衝突したり、引っ掛かったり等してグライドエラーが発生することを抑制されている。
【0020】
また、図1に示すように、各突条24は、全体で同心円を描きながら、それぞれがガラス基板21の円周方向、つまり情報記録媒体に対するヘッドの移動方向へ延びるように形成されている。当該ガラス基板21は、表面にテクスチャー23が形成されない平滑又は超平滑なガラス基板と比較し、ヘッド接触時の接触面積が低減されている。このため、情報記録媒体の表面に塗布された潤滑油等にヘッドが粘着されたり等して発生する情報記録媒体の表面へのヘッドの固着(スティッキング)が抑制されている。従って、スティッキング及びグライドエラーの発生が抑制されていることから、該ガラス基板21はヘッドの浮上特性が向上しており、情報記録媒体とされたときにその表面とヘッドとの距離を狭め、高記録密度化を図ることが可能となる。
【0021】
次に、上記ガラス基板21の製造方法について説明する。
図3は、このガラス基板21の製造工程を示す工程図である。同図に示すように、ガラス基板21は、円盤加工工程11、端面面取り工程12、研磨工程13、研削前洗浄処理工程14、研削加工工程15及び研削後洗浄処理工程16を経て製造される。
【0022】
前記円盤加工工程11においては、シート状のガラス板を超硬合金又はダイヤモンド製のカッターを用いて切断することにより、その中心に円孔を有する円盤状のガラス素板が形成される。前記端面面取り工程12においては、ガラス素板の内外周端面が研削され、外径及び内径寸法が所定長さとされるとともに、内外周端面の角部が研磨されて面取り加工される。
【0023】
前記研磨工程13においては、ガラス素板の表面に研磨加工が施されることにより、同表面が平滑面とされる。同研磨加工は、前段研磨加工と、後段研磨加工との2段階に大きく分けられる。これらのうち、前段研磨加工は、ガラス素板の厚みを所定値とし、反りやうねりと、凹凸やクラック等の大きな欠陥とを取除いて表面を平坦面とする目的で行われる。従って、同前段研磨加工では、その研磨剤は比較的粒径の粗いものが使用され、研磨パッドは使用しないか、あるいは硬質で目の粗いものが使用される。
【0024】
後段研磨加工は、情報記録媒体として要求される平滑性を満たすために行われ、同後段研磨加工でガラス素板は、ガラス基板21相当の表面粗さ、つまりRaが好ましくは1.5nm以下となるまで研磨される。従って、研磨剤は、比較的粒径が細かく、ガラス材料に対する親和力が高い、例えば酸化セリウムや酸化ランタン等の希土類酸化物、コロイダルシリカ等が使用される。また、研磨パッドには合成樹脂発泡体、スウェード等を材料とした軟質で目の細かいものが使用される。なお、前段研磨加工及び後段研磨加工は、ガラス素板の研磨効率、表面の平滑性等の向上を図るため、さらに複数段階に分けて施してもよい。
【0025】
前記研削前洗浄処理工程14においては、研磨されたガラス素板の表面に研削前洗浄処理が施される。この研削前洗浄処理とは、洗浄液を使用して研磨加工後のガラス素板の表面を洗浄する処理をいい、特には同表面に化学的に強く固着した酸化セリウム、コロイダルシリカ等の研磨剤、表面に食い込んだ鉄粉等の付着物を除去する処理をいう。そして、研削前洗浄処理は、まずガラス素板21aを洗浄液である強酸性水溶液に浸漬した後、同ガラス素板21aを洗浄液である強アルカリ性水溶液に浸漬することによって行われる。
【0026】
すなわち、研削前洗浄処理において、強酸性水溶液に浸漬されたガラス素板21aは、前に挙げた研磨剤、鉄粉等の付着物のみが、あるいは同付着物がガラス素板21aの表面部分とともに強酸性水溶液に溶解することにより、その表面に付着した大半の付着物を除去される。この後に、強アルカリ性水溶液に浸漬されたガラス素板21aは、同ガラス素板21a及び付着物が互いに同極性に帯電し、静電気的に反発することにより、強酸性水溶液への浸漬後に残留する付着物を除去される。この研削前洗浄処理時に強酸性水溶液に浸漬されたガラス素板は、その表面のガラス組成が変質し、同ガラス素板の内部のガラス組成と異なるものとなってしまう。そして、図5(a)に示すように、研削前洗浄処理が施されたガラス素板21aの表面には、その内部26よりも耐薬品性の低い異質層27が形成されることとなる。
【0027】
ここで、異質層27が形成される理由について説明する。強酸性水溶液に接触したガラス素板21aの表面からは、そのガラス組成中に含まれるアルカリ土類金属酸化物及びアルミニウム酸化物がアルカリ土類金属イオン及びアルミニウムイオンとなって強酸性水溶液中に溶出する。これらアルカリ土類金属イオン及びアルミニウムイオンはイオン半径が大きなものであり、アルカリ土類金属イオン及びアルミニウムイオンを取り除かれたガラス素板21aの表面の分子中には、大きな隙間が形成されている。このように分子中に隙間が形成された状態でガラス素板21aの表面に、例えば酸性水溶液、アルカリ性水溶液等の薬品を接触させた場合、同隙間にこれら薬品から発生した他のイオンが入り込み、ガラスの分子中のSi−O結合に影響を与える。従って、ガラス素板21aの表面からアルカリ土類金属イオン及びアルミニウムイオンを取り除いて形成された異質層27は、耐酸性、耐アルカリ性等といった耐薬品性が低下することとなる。
【0028】
同洗浄処理においては、酸性の洗浄液を使用した後、アルカリ性の洗浄液を使用することにより、異質層27の厚み、変質の程度等を制御し、該異質層27が過剰な厚みで形成されることを抑制可能としている。これは、強アルカリ性水溶液にガラス素板21aの表面を接触させることにより、耐薬品性の低い異質層27が均質にエッチングされ、同異質層27の過剰に変質した部分、所望する厚みを超える部分等が除去されることによる。また、ガラス素板の洗浄液への浸漬時間の制御により、強酸性及び強アルカリ性水溶液の表面への浸透の度合いを調整し、異質層27の厚み、変質の程度等を制御することも可能である。
【0029】
前記強酸性水溶液としては、pHが3.0以下のものを使用することが好ましい。pHが3.0を超える場合、ガラス素板21aの表面に付着した研磨剤、鉄粉等の付着物を十分に除去することができず、得られるガラス基板21の清浄度が低下することとなる。具体的には、強酸性水溶液として、フッ化水素酸、ケイフッ化水素酸、硫酸、硝酸、塩酸、スルファミン酸、酢酸、酒石酸、クエン酸、グルコン酸、マロン酸、シュウ酸等が挙げられる。そして、これらの中から少なくとも1種が選択され、使用される。
【0030】
前記強アルカリ性水溶液としては、pHが10.5以上のものを使用することが好ましい。pHが10.5未満の場合、ガラス素板21aの表面に付着した付着物を十分に除去することができず、異質層27を均質にエッチングすることも難しくなる。具体的には、強アルカリ性水溶液として、水酸化カリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、アンモニア水等の無機アルカリ水溶液、テトラアンモニウムハイドライド等の有機アルカリ水溶液等が挙げられる。そして、これらの中から少なくとも1種が選択され、使用される。
【0031】
図5(b)は、研削前洗浄処理が施されたガラス素板21aにおいて、その表面から所定深さにおけるガラス組成中に含まれるイオン数を二次イオン質量分析計(SIMS)を使用して測定した結果を示すグラフである。なお、測定したガラス素板21aのガラス材料にはアルミノシリケートガラスを使用している。
【0032】
この結果より、アルカリ土類金属イオンであるカルシウムイオン(Ca2+)及びマグネシウムイオン(Mg2+)と、アルミニウムイオン(Al3+)のイオン数は、ガラス素板21aの表面からの深さが深い箇所(内部26)と比較して、深さが浅い箇所(異質層27)では減少している。一方、珪素酸化物のケイ素イオン(Si4+)のイオン数は、内部26と異質層27とで変化はない。従って、異質層27は内部26と比較し、Ca2+、Mg2+及びAl3+の減少によってガラス組成中のSi4+、つまり珪素酸化物の含有量が相対的に高められている。
【0033】
具体的に、異質層27のガラス組成中における珪素酸化物の含有率は、内部26のガラス組成中における珪素酸化物の含有率に対し、1.0倍を超え、かつ1.2倍以下であることが好ましい。異質層27の珪素酸化物の含有率が内部26の含有率の1.2倍を超えると、耐薬品性が過剰に低下し、ガラス素板21aを強アルカリ性水溶液に浸漬したときに、その表面が均質にエッチングされず、荒れることによって平滑性が低下してしまうおそれがある。
【0034】
前記研削加工工程15においては、洗浄処理時にガラス素板21aの表面に形成された異質層27を研削し、除去するための研削加工が施される。また、前記テクスチャー23は、この研削加工時に形成される。当該研削加工は、アルミニウム基板のテクスチャー処理などで一般的に使用される、所謂テクスチャーマシンを使用して行われる。
【0035】
ここで、前記テクスチャーマシンについて説明する。
図4に示すように、当該テクスチャーマシンは、ガラス素板21aの直上位置に回動自在に支持されたローラ31を備えている。同ローラ31は、その長さがガラス素板21aの半径にほぼ等しく、ガラス素板21aの半径方向に延びるように配設されている。該ローラ31とガラス素板21aの表面との間には、研磨用摺接部材としてのテープ部材32がローラ31の一側方からこれらの間を通って他側方へ移動するように配設されている。このテープ部材32は、ガラス素板21aとローラ31との間を通る際、ローラ31からの圧力によってガラス素板21aの表面に押圧されて摺接される。また、ガラス素板21aの表面には、研磨剤33が滴下される。
【0036】
前記テープ部材32は、織物、不織布、植毛品などをテープ状に形成したものであり、その材質は特に制限されず、例えばポリエチレン繊維等のように、この種のテクスチャーマシンで使用されるものであればいかなるものも用いることができる。研磨剤33は、研磨粉を水等の液中に分散させて得られるものである。この研磨粉としては、前に挙げた希土類酸化物、コロイダルシリカの他に、ダイヤモンド砥粒が挙げられる。該研削加工では、ガラス素板21aの表面に付着しにくく、化学的に影響を与えることのないダイヤモンド砥粒を使用することが好ましい。
【0037】
ダイヤモンド砥粒は、要求される研削量に応じてその粒径、形状が適宜選択される。この実施形態では、平均粒径(D50)で好ましくは0.05〜0.3μm、より好ましくは0.08〜0.25μmのダイヤモンド砥粒が使用される。D50が0.05μm未満の場合、ガラス素板21aに対する研削能力の低下を招き、歩留まりの低下、加工コストの高騰を招くおそれがある。一方、0.3μmを越えると、高低差の大きな突条24が形成され、ガラス素板21aの表面が荒れてしまうおそれがある。
【0038】
上記テクスチャーマシンを使用した研削加工において、ガラス素板21aは、図4中の矢印方向に回転されながら、その表面にテープ部材32が摺接されることにより、同表面を研削される。研削加工後のガラス素板21aは、図2(a)に示すように、異質層27の大半を除去されるとともに、その表面に複数の突条24からなるテクスチャー23が形成される。また、同研削加工で除去することのできなかった異質層27は、一部の突条24の上部に残留することとなる。
【0039】
研削加工後の状態で、ガラス素板21aの表面に残留する異質層27の厚みは、好ましくは3nm以下である。残留する異質層27の厚みが増すに従い、当該研削加工工程15よりも後に施される前記研削後洗浄処理工程16で異質層27が不均一にエッチングされたり等するため、得られるガラス基板21の表面22が荒れてしまう。なお、残留する異質層27の厚みの下限は、0nmである。
【0040】
研削加工工程15において、その研削量は、好ましくは0.5nm以上である。研削量が0.5nm未満の場合、研削加工後のガラス素板21aの表面に厚さ3nmよりも多くの異質層27が残留し、前述のように得られるガラス基板21の表面22が荒れてしまう。なお、この研削量とは、テクスチャー23の有無に係わらず、研削加工を施す前のガラス素板21aの厚みから、研削加工を施した後のガラス素板21aの厚みを引くことによって算出された量を示す。つまり、ここでいう研削量は、テクスチャー23を構成する各突条24の平均高さを示す量ではない。また、研削量の上限は、前記研削前洗浄処理が施された直後の異質層27の厚みと同値である。研削量が異質層27の厚みを超える場合、異質層27を除去するための研削加工でガラス素板21aの表面を却って傷つけることとなり、得られるガラス基板21の平滑性が低下してしまうおそれがある。
【0041】
前記研削後洗浄処理工程16においては、研削加工後のガラス素板21aの表面からダイヤモンド砥粒等の研磨粉、塵埃等を除去するために研削後洗浄処理が施される。この研削後洗浄処理は、洗浄液にガラス素板21aを浸漬することによって行われる。ガラス素板21aが洗浄液に浸漬された状態で、研磨粉、塵埃等がガラス素板21aの表面から洗い流され、洗浄液中に分散されて除去されることにより、得られるガラス基板21の清浄度が高められる。
【0042】
前記洗浄液には、同洗浄液によるガラス素板21aへの化学的な影響を抑えるため、中性又はアルカリ性のものが使用される。アルカリ性の洗浄液としては、前記研削前洗浄処理で挙げたアルカリ性水溶液が挙げられる。中性の洗浄液としては、水、純水、イソプロピルアルコール等のアルコール、塩化ナトリウム等のアルカリ金属塩等といった無機塩の水溶液を電気分解することにより得られた電解水又はガスが溶解されたガス溶解水等の機能水等の中性水溶液が挙げられる。なお、電解水には、電気分解時に陽極側で得られるものと陰極側で得られるものの二種類があり、洗浄液にはいずれを使用してもよい。
【0043】
一方、前記研削加工で述べたように、ガラス基板21の表面22が荒れることを抑制するため、研削加工後のガラス素板21aの表面には、3nm以下の厚みの異質層27が残留している。同異質層27をほぼ完全に除去することを目的とする場合、当該研削後洗浄処理で使用する洗浄液には、異質層27のみをエッチングし、内部26には影響を与えないようにするため、アルカリ性のものを使用することが好ましい。具体的には、洗浄液としてpHが11.0〜13.0のアルカリ性水溶液を使用することが好ましい。pHが11.0未満の場合、異質層27を十分にエッチングして除去することが可能な程度のエッチング能を有していないおそれがある。pHが13.0を超えると、異質層27のみならず、内部26までエッチングされるおそれがあるとともに、異質層27が均一にエッチングされず、得られたガラス基板21の表面22が却って荒れるおそれがある。さらに、この研削後洗浄処理工程16での洗浄効果を高めるため、洗浄液に、界面活性剤、キレート剤、有機溶剤等の助剤(ビルダー)を添加してもよい。
【0044】
上記のように、研削後洗浄処理工程16で洗浄液にアルカリ性のものを使用した場合、異質層27が耐薬品性の低いものであることから、同異質層27は、洗浄液によって選択的に溶解され、除去される。このとき、図2(a),(b)に示すように、異質層27が各突条24の上部に残留していることから、各突条24の高さを、異質層27と内部26との境界である基準線25でそれぞれ均一に揃えることが可能となる。また、当該異質層27中に食い込んだ、あるいは異質層27の表面に固着した研磨剤、鉄粉、研磨粉等を、この研削後洗浄処理を施すことによってほぼ完全に除去することが可能となる。そして、研削後洗浄処理が施され、ガラス素板21aから得られたガラス基板21は、その表面の清浄度を高く維持しつつ、平滑性の優れたものとなる。
【0045】
前記実施形態によって発揮される効果について、以下に記載する。
・ 本実施形態のガラス基板21は、ガラス素板21aに円盤加工、端面面取り、研磨、研削前洗浄処理、研削加工及び研削後洗浄処理を順番に施して製造される。これらのうち、研削前洗浄処理では、ガラス素板21aの表面に固着等した付着物を除去するため、その洗浄液に強酸性水溶液が使用され、同強酸性水溶液が使用されることにより、その表面に耐薬品性の低い異質層27が形成されてしまう。これに対し、研削加工では、ガラス素板21aの表面を研削し、異質層27を除去することにより、当該異質層27の厚みが所定値以下とされる。このため、研削加工後のガラス素板21aの表面を洗浄する際に、洗浄液の影響により異質層27が不均一にエッチングされる等といった不具合の発生を抑制することができる。従って、当該ガラス素板21aから得られたガラス基板21を、その表面の清浄度を高く維持しつつ、平滑性の優れたものとすることができる。
【0046】
・ また、研削加工では、ガラス素板21aの表面の研削量を0.5nm以上とし、研削後の異質層27の厚みを3nm以下としている。このように、研削量及び異質層27の厚みを設定することにより、異質層27が研削後のガラス素板21aの表面に必要以上に残留することを抑えることができる。従って、洗浄液の影響により、研削加工後のガラス素板21aの表面で異質層27が不均一にエッチングされる等の不具合の発生が効果的に抑制され、得られるガラス基板21の平滑性をさらに優れたものとすることができる。
【0047】
・ また、異質層27のガラス組成中における珪素酸化物の含有率は、内部26のガラス組成中における珪素酸化物の含有率に対し、1.0倍を超え、1.2倍以下とされている。このため、異質層27の耐薬品性が過剰に低下することを抑制し、洗浄等によるガラス素板の表面の荒れを防止することができる。
【0048】
・ また、研削前洗浄処理では、洗浄液に強酸性水溶液を使用することにより、アルカリ土類金属イオン又はアルミニウムイオンが選択的に溶出し、珪素酸化物の含有量が内部26よりも相対的に高められる。このため、異質層27の耐薬品性を簡易に調整しつつ、ガラス素板21aの表面を洗浄することができる。
【0049】
・ また、研削加工は、テクスチャーマシンを使用し、テープ部材32をガラス素板21aの円周方向へ摺接させることによって施される。従って、テクスチャー23を構成する各突条24を円周方向へ延びるように確実に形成することができ、ヘッドの浮上特性が向上されたガラス基板を歩留まりよく製造することができる。
【実施例】
【0050】
以下、前記実施形態をさらに具体化した実施例について説明する。
(実施例1)
アルミノシリケートガラスよりなるガラス素板を、そのサイズが厚み0.6mm、外径65mm、内径20mmとなるように形成した。アルミノシリケートガラスのガラス組成は、SiO 63モル%、Al 16モル%、NaO 11モル%、LiO 4モル%、MgO 2モル%、CaO 4モル%であった。次に、同ガラス素板に研削前洗浄処理を施した。この研削前洗浄処理は、ガラス素板を濃度が0.01%のフッ化水素酸に温度35℃で3分間浸漬した後、濃度0.01%の水酸化カリウム水溶液(KOH)に温度35℃で3分間浸漬することによって行った。
【0051】
その後、ガラス素板に研削加工を施し、その両面を研削した。この研削加工では、研磨剤の研磨粉にはダイヤモンド砥粒を使用し、テクスチャーを形成することなくガラス素板を研削するとともに、その研削量を2nmとした。また、研削加工後、ガラス素板の表面に存在する異質層の厚みは2nmであった。この後、ガラス素板に研削後洗浄処理を施した。この研削後洗浄処理は、ガラス素板を濃度1%の水酸化カリウム水溶液に温度35℃で3分間浸漬することによって行った。そして、実施例1のガラス基板を得た。
【0052】
実施例1のガラス基板の表面をAFMを使用し、Raを10μm四方の視野で10視野以上測定した。この測定結果からRaのばらつき率を算出した。なお、同Raのばらつき率は、全視野でのRaの全体平均値と、各視野毎のRaの個別平均値とをそれぞれ比較した場合、個別平均値が全体平均値から0.1nm以上異なる視野数が全視野数に対して占める割合を示す。例えば、10視野を測定し、そのうち3視野の個別平均値が全体平均値から0.1nm以上異なっている場合、Raのばらつき率は30%となる。つまり、同Raのばらつき率は、高ければガラス基板の表面が荒れていることを示し、低ければガラス基板の表面が平滑であることを示す。この実施例1のRaのばらつき率は、3%以下であった。また、TDHは、4nmであった。これらの結果より、平滑性及び浮上特性の良好なガラス基板が得られた。
(実施例2)
研削加工において、研削量を4nmとし、異質層の厚みを1nmとした以外は、実施例1と同様にしてガラス素板を加工し、実施例2のガラス基板を得た。実施例2のガラス基板のRaのばらつき率は、2%以下であり、TDHは、3.5nmであった。この結果から、平滑性及び浮上特性の良好なガラス基板が得られた。
(実施例3)
研削前洗浄処理においては、濃度0.02%の水酸化カリウム水溶液を使用し、研削加工においては、ガラス素板にテクスチャーを形成し、研削後洗浄処理においては、濃度2%の水酸化カリウム水溶液を使用した。これら以外は、実施例1と同様にしてガラス素板を加工し、実施例3のガラス基板を得た。
【0053】
このとき、テクスチャー形成のための研削加工の加工条件は、テープ部材の張力:22.1(N)、テープ部材の速度:7.6(cm/min)、ローラの押圧力:30.9(N)、ガラス素板の回転数:300(rpm)、ダイヤモンドスラリーの供給量:20(ml/min)とした。また、テープ部材にはポリエステル製のものを、ダイヤモンド砥粒には粒子径が0.2(μm)のものを使用した。
【0054】
実施例3のガラス基板のRaのばらつき率は、3%以下であり、TDHは、2.5nmであった。これを実施例1の結果と比較検討した結果、Raのばらつき率に変化がなくとも、TDHが向上したことから、テクスチャーを形成することによって浮上特性が向上することが示された。
(比較例1)
研削加工を施さなかった以外は、実施例1と同様にしてガラス素板を加工し、比較例1のガラス基板を得た。このとき、異質層の厚みは5nmであった。比較例1のガラス基板のRaのばらつき率は、15%以上であり、TDHは、5nmであった。これを実施例1の結果と比較検討した結果、Raのばらつき率が上がり、TDHも低下したことから、研削加工を施さない場合、異質層が不均一にエッチングされ、平滑性が低下するとともに、これに伴って浮上特性も低下することが示された。
【0055】
なお、前記実施形態又は実施例を次のように変更して構成してもよい。
・ 実施形態では研削加工時にテクスチャー23を形成したが、これに限らず実施例で示したように、テクスチャー23を形成することなく、異質層27の一部を研削し、除去するためにのみ研削加工を施してもよい。なお、研削加工でテクスチャー23を形成しない場合には、ダイヤモンド砥粒の粒径、形状を適宜選択することにより、同研削加工で形成される突条24の高さを異質層27の厚み未満とすればよい。このように構成した場合、製造を簡易なものとすることができ、生産量の向上を図ることができる。
【0056】
・ 円盤加工工程11、端面面取り工程12、研磨工程13、研削前洗浄処理工程14、研削加工工程15及び研削後洗浄処理工程16のうち、少なくともいずれか1つの工程後、必要に応じてガラス素板21aを洗浄するための洗浄工程を設けてもよい。なお、同洗浄工程の洗浄には、ガラス素板21aの表面に付着した研磨粉、鉄粉、研磨剤、塵埃等の付着物を除去するための洗浄の他、ガラス素板21aの表面に残留する洗浄液を除去するための洗浄も含むものとする。この洗浄工程で使用する洗浄液としては、前に挙げた酸性水溶液、アルカリ性水溶液、中性水溶液が使用される。
【0057】
・ 円盤加工工程11、端面面取り工程12、研磨工程13、研削前洗浄処理工程14、研削加工工程15及び研削後洗浄処理工程16のいずれかの工程の間に化学強化工程を設けてもよい。この化学強化工程では、情報記録媒体として要求される耐衝撃性、耐振動性、耐熱性等を向上させるため、ガラス素板21aの表面に化学強化処理が施される。この化学強化処理とは、ガラス組成中に含まれるリチウムイオンやナトリウムイオン等の一価の金属イオンを、それよりイオン半径が大きいナトリウムイオンやカリウムイオン等の一価の金属イオンにイオン交換することをいう。そして、同化学強化処理により、ガラス素板21aの表面には圧縮応力層が形成され、その表面が化学強化される。化学強化処理は、硝酸カリウム(KNO)、硝酸ナトリウム(NaNO)、硝酸銀(AgNO)等が加熱溶融された化学強化処理液にガラス素板21aを浸漬して行われる。同化学強化処理時の温度は、使用したガラス材料の歪点よりも好ましくは50〜150℃程度低い温度であり、より好ましくは化学強化処理液自体の温度が350〜400℃程度である。
【0058】
・ 実施例ではガラス基板のガラス材料として、ガラス組成中にアルカリ土類金属酸化物及びアルミニウム酸化物を含むアルミノシリケートガラスを使用したが、これに限らず、前に挙げたようなソーダライムガラス、ボロシリケートガラス、結晶化ガラス等を使用してもよい。これらソーダライムガラス、ボロシリケートガラス、結晶化ガラス等は、そのガラス組成中にアルミニウム酸化物を全く含まないか、あるいは極僅かに含むガラス材料である。そして、これらガラス材料を使用した場合、異質層はガラス組成中からアルカリ土類金属酸化物のアルカリ土類金属イオンが溶出されることによって形成される。
【0059】
・ 前記異質層は、ガラス組成中からアルカリ土類金属イオン又はアルミニウムイオンが取り除かれて形成されることに限らず、カリウムイオン、ナトリウムイオン、リチウムイオン等のアルカリ金属イオンが取り除かれて形成されるものであってもよい。
【0060】
・ 前記研削加工では、実施形態で示したテクスチャーマシンを使用することに限らず、ガラス素板21aの表面を擦り、異質層27を研削して除去することが可能であれば、いずれの装置を使用してもよい。また、このように異質層27を研削して除去する場合、ヘッドの移動方向となる周方向にガラス素板21aの表面を擦ることが可能な装置を使用することが好ましい。これは、前述のようにガラス素板21aの表面を周方向に研削することにより、ヘッドの浮上特性を向上させることができることによる。このような装置としては、例えばスクラブマシン等が挙げられる。このスクラブマシンとは、回転可能に支持された合成樹脂、発泡体等よりなる研磨用摺接部材としての円板状のスクラブ材を有し、同スクラブ材を回転させながら、ガラス素板21aの表面をその周方向に擦ることができるように構成された装置をいう。
【符号の説明】
【0061】
21…情報記録媒体用ガラス基板、21a…ガラス素板、22…表面、24…突条、26…内部、27…異質層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子間力顕微鏡を使用して、表面粗さ(Ra)を10μm四方の視野で10視野以上測定した測定結果より算出される表面粗さ(Ra)のばらつき率は、3%以下であることを特徴とする情報記録媒体用ガラス基板。
(但し、表面粗さ(Ra)のばらつき率は、全視野での表面粗さ(Ra)の全体平均値と、各視野毎の表面粗さ(Ra)の個別平均値とをそれぞれ比較し、個別平均値が全体平均値から0.1nm以上異なる視野数が全視野数に対して占める割合を示す。)
【請求項2】
前記表面粗さ(Ra)に対する最大山高さ(Rp)の比(Rp/Ra)は、10以下であることを特徴とする請求項1に記載の情報記録媒体用ガラス基板。
【請求項3】
最大山高さ(Rp)は、10nm以下であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の情報記録媒体用ガラス基板。
【請求項4】
前記表面粗さ(Ra)は、0.1〜1.5nmであることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の情報記録媒体用ガラス基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−146394(P2012−146394A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−105835(P2012−105835)
【出願日】平成24年5月7日(2012.5.7)
【分割の表示】特願2011−62840(P2011−62840)の分割
【原出願日】平成14年10月23日(2002.10.23)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】