説明

情報記録媒体

【課題】青色レーザで記録・再生を行った場合のコントラストを改善し、良好な再生特性を持つ多層情報記録用媒体を提供する。
【解決手段】基板1と、光の照射によって生じる原子配列変化により情報が記録されるN層の記録膜3,9の情報面と(Nは2以上の整数)、N−1個のスペーサ層7とを有する情報記録媒体において、光入射側の情報面から情報面を数えたとき、前記情報面の透過率が情報面1>情報面2……情報面N−1>情報面Nの関係になるように各情報面の透過率を設定すると共に、前記基板の厚さを0.578mm以上0.592mm以下および/または前記スペーサ層の厚さを13μm以上27μm以下とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスクに用いられる情報記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ光を照射して薄膜(記録膜)に情報を記録する原理は種々知られているが、そのうちで膜材料の相変化(相転移とも呼ばれる)やフォトダークニングなど、レーザ光の照射による原子配列変化を利用するものは、薄膜の変形をほとんど伴わないため、2枚のディスク部材を直接貼り合わせて両面ディスク構造情報記録媒体、または複数の情報面を有する多層構造情報記録媒体が得られるという長所を持つ。
【0003】
通常の光ディスクでは、波長が660nm付近の一般に赤色レーザと言われている光源を用いている。これら情報記録媒体は基板上に下部保護層、GeSbTe系等の記録膜、ZnS−SiO2系上部保護層、Alなど反射率の大きい反射層を順に積層した構造を有している。記録容量を上げる方法はいくつかあるが、660nm付近の波長より短波長の光源を使用する方法や多層構造にする方法などが提案されている。ODS/ISOM‘99予稿集第110頁(文献1)に波長400nm付近用の2層情報記録媒体が示されている。この媒体では光入射側に反射層を持たない第1の情報面と光から遠い側にAl合金反射層を持つ第2の情報面を有する。しかし、このデータは計算結果のみで記録・再生した場合に生じるコントラストが小さい点の改良については示されていない。また、同様な波長400nm付近用の2層情報記録媒体がPCOS’99講演予稿集22頁(文献2)に開示されているが、この媒体も同様に光入射側に反射層を持たない第1の情報面をもつ。
【0004】
また、特開平10−293942号には、透明下部保護膜、相変化記録膜、透明上部保護膜、透明型反射膜または透明干渉膜からなる相変化型記録媒体を複数層設けることが記載されている。
【0005】
なお、波長400nm付近の短波長のレーザは一般に、長波長の赤色レーザと対比させて青色、青緑色、青紫色、緑色レーザなどと呼ばれているが本明細書中では、まとめて青色レーザと呼ぶ。
【0006】
本明細書では、結晶−非晶質間の相変化ばかりでなく、融解(液相への変化)と再結晶化、結晶状態−結晶状態間の相変化も含むものとして「相変化」及び「原子配列変化」という用語を使用する。また、マークエッジ記録とは、記録マークのエッジ部分を信号の“1”に、マーク間およびマーク内を信号の“0”に対応させた記録方式のことをいう。本明細書において光ディスクとは、光の照射によって再生できる情報が記載された円板(ディスク)、及び/または光の照射によって情報の再生を行う装置をいう。
【非特許文献1】ODS/ISOM‘99予稿集第110頁
【非特許文献2】PCOS’99講演予稿集22頁
【特許文献1】特開平10−293942号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の多層情報記録媒体はいずれも、青色レーザを用いた高密度の書き換え可能な相変化型の多層情報記録媒体として用いる場合、コントラストが小さいという問題を有している。
【0008】
また、特開平10−293942号では、透明反射層の透過率について思想がない。
【0009】
そこで、この発明の目的は、青色レーザで記録・再生を行った場合のコントラストを改善し、良好な再生特性を持つ多層情報記録用媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、前記課題を解決するため、第1に、情報記録媒体を、基板と、光の照射によって生じる原子配列変化により情報が記録されるN層の記録膜の情報面と(Nは2以上の整数)、N−1個のスペーサ層とを有し、光入射側の情報面から情報面を数えたとき、前記情報面の透過率が情報面1>情報面2……情報面N−1>情報面Nの関係にあり、かつ前記基板の厚さが0.578mm以上0.592mm以下であるという構成にした。
【0011】
第2に、情報記録媒体を、基板と、光の照射によって生じる原子配列変化により情報が記録されるN層の記録膜の情報面と(Nは2以上の整数)、N−1個のスペーサ層とを有し、光入射側の情報面から情報面を数えたとき、前記情報面の透過率が情報面1>情報面2……情報面N−1>情報面Nの関係にあり、かつ前記スペーサ層の厚さが13μm以上27μm以下であるという構成にした。
【0012】
第3に、情報記録媒体を、基板と、光の照射によって生じる原子配列変化により情報が記録されるN層の記録膜の情報面と(Nは2以上の整数)、N−1個のスペーサ層とを有し、光入射側の情報面から情報面を数えたとき、前記情報面の透過率が情報面1>情報面2……情報面N−1>情報面Nの関係にあり、かつ前記基板の厚さが0.578mm以上0.592mm以下で、前記スペーサ層の厚さが13μm以上27μm以下であるという構成にした。
【0013】
第4に、情報記録媒体を、NA0.65の光学系で記録・再生される情報記録媒体であって、基板と、光の照射によって生じる原子配列変化により情報が記録されるN層の記録膜の情報面と(Nは2以上の整数)、N−1個のスペーサ層とを有し、光入射側の情報面から情報面を数えたとき、前記情報面の透過率が情報面1>情報面2……情報面N−1>情報面Nの関係にあり、かつ前記基板の厚さが0.578mm以上0.592mm以下であるという構成にした。
【0014】
第5に、情報記録媒体を、NA0.65の光学系で記録・再生される情報記録媒体であって、基板と、光の照射によって生じる原子配列変化により情報が記録されるN層の記録膜の情報面と(Nは2以上の整数)、N−1個のスペーサ層とを有し、光入射側の情報面から情報面を数えたとき、前記情報面の透過率が情報面1>情報面2……情報面N−1>情報面Nの関係にあり、かつ前記スペーサ層の厚さが13μm以上27μm以下であるという構成にした。
【0015】
第6に、情報記録媒体を、NA0.65の光学系で記録・再生される情報記録媒体であって、基板と、光の照射によって生じる原子配列変化により情報が記録されるN層の記録膜の情報面と(Nは2以上の整数)、N−1個のスペーサ層とを有し、光入射側の情報面から情報面を数えたとき、前記情報面の透過率が情報面1>情報面2……情報面N−1>情報面Nの関係にあり、かつ前記基板の厚さが0.578mm以上0.592mm以下で、前記スペーサ層の厚さが13μm以上27μm以下であるという構成にした。
【0016】
第7に、前記第1乃至第6のいずれかの構成を有する情報記録媒体において、前記記録膜の膜厚が4nm以上25nm以下であるという構成にした。
【発明の効果】
【0017】
本発明によると良好な記録・再生特性を有する情報記録媒体が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明を実施例によって詳細に説明する。
【実施例1】
【0019】
(本発明の情報記録媒体の構成、製法)
図1は、本発明の第1実施例のディスク状情報記録媒体の断面構造を示す模式図である。この媒体は次のようにして製作した。まず、直径12cm、厚さ0.6mmで表面にトラッキング用の溝を有するポリカーボネイト基板1上に、膜厚約30nmの(ZnS)80(SiO20膜と膜厚約4nmのAl4057膜と膜厚約1nmのCr4057膜を積層してなるL0下部保護層2、膜厚約6nmのGeSbTeL0記録膜3、膜厚約1nmのCr膜と膜厚約4nmのAl膜と膜厚約125nmの(ZnS)80(SiO20膜を積層してなるL0上部保護層4、膜厚約35nmの(Al)膜よりなるL0透明反射層5、膜厚約50nmの(ZnS)80(SiO20膜からなるL0最上部保護層6を順次形成した。上記のような層4,5,6多層積層によって生じる光学干渉を用いて透明な反射層を得る。積層膜の形成はマグネトロン・スパッタリング装置により行った。こうして第1のディスク部材を得た。
【0020】
他方、同様のスパッタリング方法により、第1のディスク部材と異なる構成を持つ第2のディスク部材を得た。第2のディスク部材は、ポリカーボネイト保護基板12上に、膜厚約80nmのAg98PdCu膜からなるL1反射層11上に膜厚約80nmの(ZnS)80(SiO20膜と膜厚約5nmのCrを積層してなるL1上部保護層10、膜厚約18nmのGeSbTeL1記録膜9、膜厚約5nmのCr4057膜と膜厚約80nmの(ZnS)80(SiO20膜を積層してなるL1下部保護層8を順次形成したものである。
【0021】
その後、前記第1のディスク部材と第2のディスク部材をそれぞれのL0最上部保護層6とL1下部保護層8をスペーサ層7を介して貼り合わせ、図1に示す2層情報記録媒体(ディスクA)を得た。
【0022】
各情報面は光入射側の構成膜(L0下部保護層2からL0最上部保護層6まで)をL0、光から遠い方の構成膜(L1下部保護層8からL1反射層11まで)をL1とした。
【0023】
(従来型の情報記録媒体の構成、製法)
透明反射層の効果を明らかにするため、透明反射層を持たないディスク状情報記録媒体を作製した。図2は、この媒体の断面構造を示す模式図である。
【0024】
この媒体は次のようにして製作した。まず、直径12cm、厚さ0.585mmで表面にトラッキング用の溝を有するポリカーボネイト基板1上に、膜厚約30nmの(ZnS)80(SiO20膜と膜厚約4nmのAl4057膜と膜厚約1nmのCr4057膜からなるL0下部保護層2、膜厚約6nmのGeSbTeからなるL0記録膜3、膜厚約1nmのCr膜と膜厚約4nmのAl膜と膜厚約125nmの(ZnS)80(SiO20膜からなるL0上部保護層4を順次形成した。積層膜の形成はマグネトロン・スパッタリング装置により行った。こうして第1のディスク部材を得た。
【0025】
他方、同様のスパッタリング方法により、第1のディスク部材と異なる構成を持つ第2のディスク部材を得た。第2のディスク部材は、ポリカーボネイト保護基板12上に、膜厚約80nmのAg98PdCu膜からなるL1反射層11上に膜厚約80nmの(ZnS)80(SiO20膜と膜厚約5nmのCrからなるL1上部保護層10、膜厚約18nmのGeSbTeからなるL1記録膜9、膜厚約5nmのCr4057膜と膜厚約80nmの(ZnS)80(SiO20膜からなるL1下部保護層8を順次形成したものである。
【0026】
その後、前記第1のディスク部材と第2のディスク部材をそれぞれのL0上部保護層4とL1下部保護層8をスペーサー層7を介して貼り合わせ、図2に示す情報記録媒体(ディスクB)を得た。
【0027】
(初期結晶化)
前記のようにして製作したディスクAとディスクBのL0記録膜3に、次のようにして初期結晶化を行った。なお、以下ではL0記録膜3、L1記録膜9についてのみ説明するが、この他の多層媒体の記録膜についても全く同様である。
【0028】
媒体(ディスクA,ディスクB)を記録トラック上の点の線速度が5m/sであるように回転させ、波長約810nmの半導体レーザのレーザパワーを300mWにしてL1の記録膜にフォーカスした後、レーザパワーを700mWにして、基板1およびL0膜、スペーサー層を通して記録膜9に媒体の半径方向に長い長円形のスポット形状で照射した。スポットの移動は、媒体の1回転につき媒体の半径方向のスポット長の1/24ずつずらした。こうして、初期結晶化を行った。この初期結晶化は1回でもよいが3回繰り返すと初期結晶化によるノイズ上昇を少し低減できた。この初期結晶化は高速で行える利点がある。
【0029】
次ぎに波長約810nmの半導体レーザのレーザパワーを300mWにしてレーザのフォーカス位置を変えてL0の記録膜にフォーカスした後、レーザパワーを700mWにして、基板1を通して記録膜3に媒体の半径方向に長い長円形のスポット形状で照射した。スポットの移動は、媒体の1回転につき媒体の半径方向のスポット長の1/24ずつずらした。こうして、初期結晶化を行った。この初期結晶化は1回でもよいが3回繰り返すと初期結晶化によるノイズ上昇を少し低減できた。この初期結晶化は高速で行える利点がある。
【0030】
初期化の順序はL1記録膜から行ってもL0記録膜から行っても、また3層以上の多層情報記録媒体においてはランダムに行っても良い。
【0031】
(記録・消去・再生)
前記のようにして製作し、初期結晶化を行った媒体について、次ぎのように記録・消去・再生特定の評価を行った。なお、以下ではL1の記録膜9についてのみ説明するが、L0の記録膜3についても全く同様であり、また3層以上の多層情報記録媒体においてのそれぞれの情報面の記録膜についても同様である。
【0032】
初期結晶化が完了した記録膜9の記録領域にトラッキングと自動焦点合わせを行いながら、記録用レーザ光のパワーを中間パワーレベルPe(3mW)と高パワーレベルPh(7mW)との間で変化させて情報の記録を行った。記録トラックの線速度は9m/s、半導体レーザ波長は405nm、レンズの開口数(NA)は0.65である。記録用レーザ光により記録領域に形成される非晶質またはそれに近い部分が記録点となる。この媒体の反射率は結晶状態の方が高く、記録され非晶質状態になった領域の反射率が低くなっている。
【0033】
記録用レーザ光の高レベルと中間レベルのパワー比は1:0.3〜1:0.7の範囲が好ましい。また、この他に短時間ずつ他のパワーレベルにしてもよい。図3に示したように、1つの記録マークの形成中にウインドウ幅の半分(Tw/2)ずつ中間パワーレベルPeより低いボトムパワーレベルPbまでパワーを繰り返し下げ、かつクーリングパワーレベルPcを記録パルスの最後に持つ波形を生成する手段を持った装置で記録・再生を行うと、再生信号波形のジッター値およびエラーレートが低減した。クーリングパワーレベルPcは中間パワーレベルPeより低く、ボトムパワーレベルPbより高いか同じレベルである。この波形は、第1パルス幅Tpが記録マークとそのマークの直前に設けられたスペースの長さの組み合わせによって変化する特徴とクーリングパルス幅Tc(記録パルスの最後にPcレベルまで下げる時間幅)が記録マークとそのマークの後続スペース長の組み合わせにより決まる特徴を持つ。マーク直前のスペース長が短く、マークが長いほどTpは短くなり、マーク直前のスペース長が長く、マークが短いほどTpは長くなる。ただし、媒体の構造によっては6Twマークの記録用記録波形のTpを特に長くした場合、ジッター低減効果が大きかった。また、後続のスペース長が長く、マークが長いほど、Tcは短くなり、後続のスペース長が短く、マークが短いほど、Tcは長くなる。
【0034】
図3には3Tw,4Tw,6Tw,11Twの記録波形しか示していないが、5Twは6Twの記録波形の一連の高いパワーレベルのパルス列のうち、Tw/2の高いパワーレベルPhと直後のTw/2のボトムパワーレベルPbをそれぞれ一つずつ削減したものである。また、7Tw〜10Tw用記録波形は6Tw用記録波形の最後尾の高いパワーレベルのパルスの直前に、Tw/2の高いパワーレベルPhとTw/2のボトムパワーレベルPbを、それぞれ1組ずつ追加したものである。したがって、5組追加したものが11Twである。
【0035】
ここでは、3Twに対応する最短記録マーク長を0.26μmとした。記録すべき部分を通り過ぎると、レーザ光パワーを再生(読み出し)用レーザ光の低パワーレベルPr(1mW)に下げるようにした。
【0036】
このような記録方法では、既に情報が記録されている部分に対して消去することなく、重ね書きによって新たな情報を記録すれば、新たな情報に書き換えられる。すなわち、単一のほぼ円形の光スポットによるオーバーライトが可能である。
【0037】
しかし、書き換え時の最初のディスク1回転または複数回転で、前記のパワー変調した記録用レーザ光の中間パワーレベル(3mW)またはそれに近いパワーの連続光を照射して、記録されている情報を一たん消去し、その後、次の1回転でボトムパワーレベル(0.5mW)と高パワーレベル(7mW)の間で、または中間パワーレベル(3mW)と高パワーレベル(7mW)との間で、情報信号に従ってパワー変調したレーザ光を照射して記録するようにしてもよい。このように、情報を消去してから記録するようにすれば、前に書かれていた情報の消え残りが少ない。従って、線速度を2倍に上げた場合の書き換えも、容易になる。
【0038】
(透明反射層の効果)
本実施例記載の透明反射層を持つ図1に記載の情報記録媒体(ディスクA)および透明反射層を持たない図2に記載の従来の情報記録媒体(ディスクB)のL0について比較した。初回記録時の最短記録信号(3Tw)のC/N(搬送波対雑音比)について比べたところ、ディスクAでは50dBのC/Nがあったが、ディスクBではC/Nが小さく46dBであった。ディスクAでC/Nが大きくなったのは、透明反射層を設けることにより記録膜と透明反射層との間での干渉を利用することが出来、信号振幅が大きくなったためである。
【0039】
(透明反射層の光学特性)
透明反射層5の光学特性依存性を測定した。光学特性を変化させた複数の媒体を作成した。最短記録マーク3Twと3Tスペースの繰り返し信号を記録した際のC/Nを測定した。結果を表1に示す。透明反射層の組成が変わると透明反射層の消衰係数が変化し、反射層での吸収量が多くなるため、透過率一定とした時の反射率差が小さくなり、C/N(dB)が低下した。った。これより、透明反射層の消衰係数は、小さいことが好ましいことがわかる。実用レベルでC/Nを確保するには48dB以上必要であるため、透明反射層の消衰係数0.5以下であることが好ましい。また、レーザの環境温度変動による劣化を考慮した場合には、C/Nが49dB以上必要であるため、透明反射層の消衰係数は0.3 以下であることがより好ましい。また、透明反射層の反射率は5%以上50%以下であることが望ましい。
【表1】

【0040】
次に透明反射層5の屈折率依存性を測定した。これを、表2に示す。透明反射層の屈折率nが変わると上部保護層と透明反射層の光干渉量が変わるため、透過率一定とした時の反射率差がかわる。ここで、反射率差とは、媒体における、記録膜の結晶状態と非結晶状態、つまり未記録状態と記録状態との反射率の差をいう。
【表2】

【0041】
これより、透明反射層の屈折率は、実用レベルの反射率差を確保するには4%以上必要であるため、透明反射層の屈折率2.2以下または2.5以上であることが好ましい。また、レーザの環境温度変動による劣化を考慮した場合には、反射率差が5%以上必要であるため、透明反射層の屈折率は2.0 以下または2.6以上であることがより好ましい。
【0042】
さらに上部保護層の屈折率(2.35)との差が大きい方が好ましいことがわかる。上部保護層の屈折率と透明反射層の屈折率の差が0.15以上であることが好ましい。また、レーザの環境温度変動による劣化を考慮した場合には、上部保護層の屈折率と透明反射層の屈折率の差が0.25以上であることがより好ましい。
【0043】
透明反射層膜厚及び上部保護層膜厚及び最上部保護層膜厚は、反射率差が大きくとれるように決定することがC/Nが大きくなり好ましい。この膜厚は上部保護層が80〜160nmが好ましく、100〜140nmがより好ましい。透明反射層と最上部保護層膜厚は、透明反射層と最上部保護層膜厚の合計が50〜130nmが好ましく、70〜110nmがより好ましい。
【0044】
干渉を利用するためには、透明反射層膜厚の最低膜厚は5nm以上にすることが好ましく、10nm以上だとより好ましい。
【0045】
透明反射層材料は、SiO,SiO,TiO,Al,Y,CeO,La,In,GeO,GeO,PbO,SnO,SnO,BeO,Bi,TeO,WO,WO,Sc,Ta,ZrO,CuO,MgOなどの酸化物、TaN,AlN,BN,CrN,Si,GeN,Al−Si−N系材料(例えばAlSiN)などの窒化物が好ましい。これら化合物における元素比は、例えば酸化物や硫化物における金属元素と酸素元素あるいは硫黄元素の比は、Al,Y,Laは2:3、SiO,ZrO,GeOは1:2、Taは2:5、ZnSは1:1という比をとるかその比に近いことが好ましいが、その比から外れていても同様の効果は得られる。しかし、上記整数比から外れている場合、例えばAl−OはAlとOの比率がAlからAl量で±10原子%以下、Si−OはSiとOの比率がSiOからSi量で±10原子%以下等、金属元素量のずれが10原子%以下が好ましい。10原子%以上ずれると、光学特性が変化するため、変調度が10%以上低下した。
【0046】
この他上記光学特性を持つ材料も使用可能である。透明反射層材料中の不純物元素が5原子%を超えると1万回以上の多数回オーバーライト時のジッター上昇が5%以上になることがわかった。したがって、透明反射層材料中の不純物元素が透明反射層成分の5原子%以下が書き換え特性の劣化を少なく出来、好ましい。2原子%以下であるとさらに好ましい。
【0047】
(下部保護層)
本実施例では、L1下部保護層8を(ZnS)80(SiO20とCr4057層の2層構造としている。また、L0下部保護層2を(ZnS)80(SiO20膜と膜厚約4nmのAl4057膜と膜厚約1nmのCr4057膜を積層した3層構造としている。2層構造をとる下部保護層2、8の(ZnS)80(SiO20に代わる材料としては、ZnSとSiOの混合比を変えたものが好ましい。また、ZnS,Si−N系材料、Si−O−N系材料、SiO,SiO,TiO,Al,Y,CeO,La,In,GeO,GeO,PbO,SnO,SnO,BeO,Bi,TeO,WO,WO,Sc,Ta,ZrO,CuO,MgOなどの酸化物、TaN,AlN,BN,Si,GeN,Al−Si−N系材料(例えばAlSiN)などの窒化物、ZnS,Sb,CdS,In,Ga,GeS,SnS,PbS,Biなどの硫化物、SnSe,SbSe,CdSe,ZnSe,InSe,GaSe,GeSe,GeSe,SnSe,PbSe,BiSeなどのセレン化物、CeF,MgF,CaFなどの弗化物、あるいはSi,Ge,TiB,BC,B,C,または、上記の材料に近い組成のものを用いてもよい。また、ZnS−SiO,ZnS−Alなど、これらの混合材料の層やこれらの多重層でもよい。この中で、ZnSはスパッタレートが大きく、ZnSが60mol%以上を占めると成膜時間を短くできるため、これを60mol%以上含む混合物の場合、ZnSのスパッタレートが大きい点と酸化物や窒化物等の化学安定性の良い点が組み合わされる。この他の硫化物、セレン化物でもZnSに近い特性が得られた。
【0048】
これら化合物における元素比は、例えば酸化物や硫化物における金属元素と酸素元素あるいは硫黄元素の比は、Al,Y,Laは2:3、SiO,ZrO,GeOは1:2、Taは2:5、ZnSは1:1という比をとるかその比に近いことが好ましいが、その比から外れていても同様の効果は得られる。しかし、上記整数比から外れている場合、例えばAl−OはAlとOの比率がAlからAl量で±10原子%以下、Si−OはSiとOの比率がSiOからSi量で±10原子%以下等、金属元素量のずれが10原子%以下が好ましい。10原子%以上ずれると、光学特性が変化するため、変調度が10%以上低下した。
【0049】
上記材料は、下部保護層全原子数の90%以上であることが好ましい。上記材料以外の不純物が10原子%以上になると、書き換え可能回数が1/2以下になる等、書き換え特性の劣化が見られた。
【0050】
本実施例で用いた下部保護層の消衰係数kについては0または0に近いことが好ましい。さらに、下部保護層材料の80%以上の膜厚において消衰係数kがk≦0.01であれば、コントラストの低下が2%以下に抑制でき好ましい。
【0051】
下部保護層を2層以上にし、記録膜側の下部保護層材料をCrまたはCr4057すると、多数回書き換え時に記録膜へZn,Sの拡散を抑制でき、書き換え特性が良好であることがわかった。記録膜側の下部保護層材料のCrに代わる材料としては、CrにSiO,Ta,Al,ZrO−Yを混合した混合物が好ましい。次いで、CoOまたはGeO,NiO、これらとCrの混合物が好ましい。これら酸化物は消衰係数kが小さく、下部界面層における吸収が非常に小さい。そのため、変調度が大きく保てるという利点がある。
【0052】
また、CrまたはCr4057の一部をAlまたはAl4057に変えると、記録膜以外での吸収が減り透過率が大きくできるため、L0層でC/Nが大きく出来てこのましい。AlまたはAl4057の代りにSiOまたはSi3363など、またこれらの窒素と酸素量の比が異なるものを用いても同様な特性が得られた。
【0053】
また、AlN,BN,CrN,Cr2N,GeN,HfN,Si,Al−Si−N系材料(例えばAlSiN)、Si−N系材料、Si−O−N系材料、TaN,TiN,ZrN,などの窒化物は保存寿命が大きくなり、外界温度変化に強く、より好ましい。窒素が含まれた記録膜組成またはそれに近い組成の材料でも接着力が向上する。
【0054】
その他、BeO,Bi,CeO,CuO,CuO,CdO,Dy,FeO,Fe,Fe,GeO,GeO,HfO,In,La,MgO,MnO,MoO,MoO,NbO,NbO,PbO,PdO,SnO,SnO,Sc,SrO,ThO,TiO,Ti,TiO,TeO,VO,V,VO,WO,WOなどの酸化物、C,Cr,Cr23,Cr,FeC,MoC,WC,WC,HfC,TaC,CaCなどの炭化物または、上記の材料に近い組成のものを用いてもよいし、これらの混合材料でもよい。
【0055】
下部保護層の記録膜側に酸化物または窒化物の層を設けた場合は、Zn,S等の記録膜中への拡散が防止でき、消え残りが増加するのを抑制できる。さらに、記録感度を低下させないためには、25nm以下とすることが好ましく、10nm以下ではより好ましかった。均一な膜形成ができるのは約2nm以上であり、5nm以上がさらに良好であった。これより、記録膜側の下部保護層膜厚を2〜25nmとすると記録・再生特性がより良くなり、好ましい。未満の場合、再結晶化のためにC/Nが低下した。また、下部保護層膜厚が10nm未満の場合、記録膜の保護効果がなくなるため、書き換え可能回数が1桁以上低下した。下部保護層と記載したものは、L0下部保護層、L1下部保護層、さらに多層情報記録媒体の下部保護層を意味する。
【0056】
(記録膜)
本実施例では、記録膜3、記録膜9をGeSbTeにより形成している。本記録膜の再生波長における屈折率は、結晶状態が2.0、非晶質状態が2.6と、結晶状態の方が小さい。
【0057】
GeSbTeに代わる記録膜3,9の材料としては、AgGe30Sb14Te53,CrGe32Sb13Te52等、Ag−Ge−Sb−Te系、Cr−Ge−Sb−Te系材料で組成比の異なるものが変調度が大きくなり好ましい。記録膜3および/または記録膜9中のAg量やCr量が多いと短波長での反射率変化が大きくなるが、結晶化速度は遅くなる。従って、添加されるAg量またはCr量が2原子%以上、10原子%以下が好ましい。しかし、Agの添加されていないGe−Sb−Te系材料でもオーバーライトは可能である。Agの代わりに記録膜3,9へ添加する元素としては、Cr,W,Mo,Pt,Co,Ni,Pd,Si,Au,Cu,V,Mn,Fe,Ti,Biのいずれかのうちの少なくとも一つで置き換えても、オーバーライト特性が良好であることがわかった。これらの記録膜3,9材料は全て、再生波長における屈折率は結晶状態の方が非晶質状態より小さい。
【0058】
本実施例で記録膜9の膜厚を変化させ、10回書き換え後および10万回書き換え後のジッター(σ/Tw)を測定したところ、表3のようになった。記録膜9の膜厚(nm)に対し、10回書き換え後については前エッジまたは後エッジのジッターの悪い方の値(%)を、1万回書き換え後については前エッジのジッター値(%)を示した。
【表3】

【0059】
これより、記録膜9の膜厚を薄くすると記録膜流動や偏析による、10回書き換え後のジッターが増加し、また厚くすると、1万回書き換え後のジッターが増加することがわかった。これより、記録膜9の膜厚は4nm以上、25nm以下がジッターを20%以下にでき好ましく、5nm以上、20nm以下であればジッターを15%以下に出来より好ましい。
【0060】
記録膜3の膜厚および、1〜N−1情報面(レイヤー)における記録膜膜厚については、前記情報面の記録膜膜厚が情報面1≦情報面2≦…≦情報面N−1≦情報面Nの関係にあると各情報面において記録・再生可能となるため好ましい。さらに、光入射側の基板より1からN−1番めの情報面用記録膜の合計膜厚が10nm以下であると、N番めの情報面のC/Nが48dB以上と大きくでき好ましい。上記合計膜厚が8nm以下になるとN番めの情報面のC/Nが49dB以上と大きくできより好ましい。
【0061】
(上部保護層)
本実施例では、上部保護層10をZnS−SiOとCr4060により形成した。また、L0上部保護層4を(ZnS)80(SiO20膜と膜厚約4nmのAl4060膜と膜厚約1nmのCr4060膜を積層した3層構造としている。
【0062】
ZnS−SiOに代わる上部保護層の材料としては、Si−N系材料、Si−O−N系材料、ZnS,SiO,SiO,TiO,Al,Y,CeO,La,In,GeO,GeO,PbO,SnO,SnO,BeO,Bi,TeO,WO,WO,Sc,Ta,ZrO,CuO,MgOなどの酸化物、TaN,AlN,BN,Si,GeN,Al−Si−N系材料(例えばAlSiN)などの窒化物、ZnS,Sb,CdS,In,Ga,GeS,SnS,PbS,Biなどの硫化物、SnSe,SbSe,CdSe,ZnSe,InSe,GaSe,GeSe,GeSe,SnSe,PbSe,BiSeなどのセレン化物、CeF,MgF,CaFなどの弗化物、あるいはSi,Ge,TiB,BC,B,Cまたは、上記の材料に近い組成のものを用いてもよい。また、ZnS−SiO,ZnS−Alなどこれらの混合材料の層やこれらの多重層でもよい。消衰係数は0または0に近いことが好ましい。
【0063】
これら化合物における元素比は、例えば酸化物あるいは硫化物における金属元素と酸素元素あるいは硫黄元素の比は、Al,Y,Laは2:3、SiO,ZrO,GeOは1:2、Taは2:5、ZnSは1:1という比をとるかその比に近いことが好ましいが、その比から外れていても同様の効果は得られる。上記整数比から外れている場合、例えばAl−OはAlとOの比率がAlからAl量で±10原子%以下、Si−OはSiとOの比率がSiOからSi量で±10原子%以下等、金属元素量のずれが10原子%以下が好ましい。10原子%以上ずれると、光学特性が変化するため、変調度が10%以上低下した。
【0064】
上記材料は、上部保護層全原子数の90%以上であることが好ましい。上記材料以外の不純物が10原子%以上になると、書き換え可能回数が1/2以下になる等、書き換え特性の劣化が見られた。
【0065】
上部保護層を2層以上にし、記録膜側の上部保護層材料をCrにすると、多数回書き換え時に記録膜へZn,Sの拡散を抑制でき、書き換え特性が良好になることがわかった。
【0066】
さらにその一部をAl,またはSiOに変えるとコントラストが大きく出来て好ましいことがわかった。
【0067】
上部保護層と記載したものは、L0上部保護層、L1上部保護層、さらに多層情報記録媒体の上部保護層を意味する。
【0068】
(反射層)
本実施例では反射層11にAg98PdCu膜を用いた。他の反射層の材料としては、Ag−Pt,Ag−Au等、Ag合金を主成分とするものが好ましい。Agも使用可能である。Ag合金中のAg以外の元素の含有量を0.5原子%以上4原子%以下の範囲にすると、多数回書き換え時の特性およびビットエラーレートが良好になり、1原子%以上2原子%以下の範囲ではより良好になることがわかった。
【0069】
また、Zn98Pd膜、Zn98Pt膜、Zn98Cu膜、Zn98Ni膜、Zn−Pd膜、Zn−Pt膜、Zn−Cu膜、Zn−Ni膜は、Ag系材料に比べコストが安いという利点がある。Znも使用可能である。Zn合金中のZn以外の元素の含有量は0.5原子%以上4原子%以下の範囲にすると、多数回書き換え時の特性およびビットエラーレートが良好になり、1原子%以上2原子%以下の範囲ではより良好になることがわかった。
【0070】
次いで、Au,Al,Cu,Ni,Fe,Co,Cr,Ti,Pd,Pt,W,Ta,Mo,Sb,Bi,Dy,Cd,Mn,Mg,Vの元素単体、またはAu合金、上記以外のAg合金、Cu合金、Pd合金、Pt合金などこれらを主成分とする合金、あるいはこれら同志の合金よりなる層を用いてもよい。このように、反射層は、金属元素、半金属元素、これらの合金、混合物からなる。
【0071】
この中で、Ag,Al,Al合金、Ag合金、等のように、反射率が大きいものは、コントラスト比が大きくなり書き換え特性が良好である。単体より合金の方が接着力が大きくなる。この場合の主成分となるAl,Ag等以外の元素の含有量はAg合金同様に、0.5原子%以上5原子%以下の範囲にすると、コントラスト比が大きく、また接着力も大きくでき良好であった。1原子%以上2原子%以下の範囲ではより良くなった。波長400nm付近における反射率を比較するとAgまたはAg合金は約95%、Al,Al合金は約92%と、Ag系の方が大きいが、材料コストも大きい。これらに次ぐ材料としては、Zn,Zn合金が約89%、Pt,Pt合金が約65%と短波長における反射率が大きく、コントラストを大きく出来た。
【0072】
上記材料は、反射層全原子数の95%以上であることが好ましい。上記材料以外の不純物が5原子%以上になると、書き換え可能回数が1/2以下になる等、書き換え特性の劣化が見られた。
【0073】
反射層膜厚が20nmより薄い場合、強度が弱く、熱拡散が小さく記録膜流動が起きやすいため、1万回書き換え後のジッターが15%より大きくなる。30nmでは15%まで低下できる。また、反射層膜厚が200nmより厚い場合、それぞれの反射層を作製する時間が長くなり、2工程以上に分ける、またはスパッタリング用の真空室を2室以上設ける等、形成時間が倍増した。また、反射層の膜厚が5nm以下だと島状に成膜され、ノイズが大きくなった。これより、反射層の膜厚はノイズ及びジッター、形成時間より、5nm以上、200nm以下が好ましい。
【0074】
(基板)
本実施例では、表面に直接、トラッキング用の溝を有するポリカーボネート基板1を用いているが、それに代えてポリオレフィン、エポキシ、アクリル樹脂、紫外線硬化樹脂層を表面に形成した化学強化ガラスなどを用いてもよい。強化ガラスの代わりに石英やCaFを用いてもよい。
【0075】
また、トラッキング用の溝を有する基板とは、基板表面全てまたは一部に、記録・再生波長をλとしたとき、λ/12n′(n′は基板材料の屈折率)以上の深さの溝を持つ基板である。溝は一周で連続的に形成されていても、途中分割されていてもよい。溝深さが約λ/6n′の時、クロストークが小さくなり好ましいことが分かった。さらに溝深さが約λ/3n′より深い時、基板形成時の歩留まりは悪くなるが、クロスイレースが小さくなり好ましいことが分かった。
【0076】
また、その溝幅は場所により異なっていてもよい。溝部の存在しない、サンプルサーボフォーマットの基板、他のトラッキング方式、その他のフォーマットによる基板等でも良い。溝部とランド部の両方に記録・再生が行えるフォーマットを有する基板でも、どちらか一方に記録を行うフォーマットの基板でも良い。トラックピッチの大きさが小さいと隣のトラックからの信号の漏れが検出されノイズとなるため、トラックピッチはスポット径(光強度が1/e2となる領域)の1/2以上であることが好ましい。
【0077】
ディスクサイズも直径12cmに限らず、13cm、8cm、3.5インチ、2.5インチ等、他のサイズでも良い。ディスク厚さも0.6mmに限らず、1.2mm、0.8mm、0.4mm、0.1mm等、他の厚さでも良い。
【0078】
本実施例では、スペーサ層を介して貼り合わせているが、第2のディスク部材の代わりに別の構成のディスク部材、または保護用の基板などを用いてもよい。貼り合わせに用いるディスク部材または保護用の基板の図5のように保護基板側から形成して、最後に光入射側の基板1を形成するか、貼り合わせしてもよい。またこうして作製した2まいのディスクを貼り合わせて両面ディスクとしてもよい。紫外線波長領域における透過率が大きい場合、紫外線硬化樹脂によって貼り合わせを行うこともできる。その他の方法で貼り合わせを行ってもよい。また、第1および第2のディスク部材を貼り合わせる前に第1および第2のディスク部材の最上層上に紫外線硬化樹脂を厚さ約10μm塗布し、硬化後に貼り合わせを行うと、エラーレートをより低減できる。
【0079】
(各層の膜厚、材料)
各層の膜厚、材料についてはそれぞれ単独の好ましい範囲をとるだけでも記録・再生特性等が向上するが、それぞれの好ましい範囲を組み合わせることにより、さらに効果が上がる。
【実施例2】
【0080】
(情報記録媒体の構成、製法)
図1の模式図に示した断面構造を有し、膜厚のみを相違させ、他は全て同じ条件とした情報記録媒体を製作した。この媒体は次のようにして製作した。まず、直径12cm、厚さ0.6mmで表面にトラッキング用の溝を有するポリカーボネイト基板1上に、膜厚約30nmの(ZnS)80(SiO20膜と膜厚約4nmのAl4057膜と膜厚約1nmのCr4057膜からなるL0下部保護層2、膜厚約6nmのGeSbTeからなるL0記録膜3、膜厚約1nmのCr膜と膜厚約4nmのAl膜と膜厚約125nmの(ZnS)80(SiO20膜からなるL0上部保護層4、膜厚約35nmの(Al)膜よりなるL0透明反射層5、膜厚約50nmの(ZnS)80(SiO20膜からなるL0最上部保護層6を順次形成した。積層膜の形成はマグネトロン・スパッタリング装置により行った。こうして第1のディスク部材を得た。
【0081】
他方、同様のスパッタリング方法により、第1のディスク部材と異なる構成を持つ第2のディスク部材を得た。第2のディスク部材は、ポリカーボネイト保護基板12上に、膜厚約80nmのAg98PdCu膜からなるL1反射層11上に膜厚約120nmの(ZnS)80(SiO20膜と膜厚約5nmのCrからなるL1上部保護層10、膜厚約10nmのGeSbTeからなるL1記録膜9、膜厚約5nmのCr4057膜と膜厚約95nmの(ZnS)80(SiO20膜からなるL1下部保護層8を順次形成したものである。
【0082】
その後、前記第1のディスク部材と第2のディスク部材をそれぞれのL0最上部保護層6とL1下部保護層8をスペーサ層7を介して貼り合わせ、図1に示す2層情報記録媒体(ディスクA)を得た。
【0083】
各情報面は光入射側の構成膜(L0下部保護層2からL0最上部保護層6まで)をL0、光から遠い方の構成膜(L1下部保護層8からL1反射層11まで)をL1とした。
【0084】
これより、L1ディスクの反射率は、結晶状態の反射率が非晶質状態の反射率より低くなった。また下部保護層、記録膜、上部保護層の膜厚を変えると記録膜の吸収率比Ac/Aa(Acは結晶状態の記録膜における吸収、Aaは非晶質状態の記録膜における吸収)を1.3倍に大きく出来実施例1に記載の多層情報記録媒体のL1に比べ、本実施例のL1はオーバーライト時のジッターを5%以上小さくできることがわかった。
【0085】
L1下部保護層8膜厚の好ましい範囲は70nm〜140nm,より好ましい範囲は80nm〜130nmである。L1上部保護層10膜厚の好ましい範囲は95nm〜155nm,より好ましい範囲は105nm〜145nmである。L1記録膜9膜厚の好ましい範囲は実施例1に記載の通りである。
【実施例3】
【0086】
(本発明の情報記録媒体の構成、製法)
図4は、本発明の多層ディスク状情報記録媒体の断面構造を示す模式図である。2層以上の媒体はこのようにして製作した。一例として3層媒体を示す。
【0087】
まず、直径12cm、厚さ0.6mmで表面にトラッキング用の溝を有するポリカーボネイト保護基板30上に、膜厚約80nmのAg98PdCu膜からなるL2反射層29上に膜厚約80nmの(ZnS)80(SiO20膜と膜厚約5nmのCrからなるL2上部保護層28、膜厚約18nmのGeSbTeからなるL2記録膜27、膜厚約5nmのCr4057膜と膜厚約80nmの(ZnS)80(SiO20膜からなるL2下部保護層26を順次形成したものである。
【0088】
その後、紫外線硬化樹脂を用いてトラッキング用の溝をスタンパから転写するフォトポリメリゼーション法(2P法)によって表面にトラッキング用の溝を有するL1−L2間スペーサ層25を形成した。 この上に、L1を形成した。L1−L2間スペーサ層25上に、膜厚約50nmの(ZnS)80(SiO20膜からなるL1最上部保護層24、膜厚約35nmの(Al)膜よりなるL1透明反射層23、膜厚約120nmの(ZnS)80(SiO20膜と膜厚約4nmのAl膜と膜厚約1nmのCr膜からなるL1上部保護層22、膜厚約5nmのGeSbTeからなるL1記録膜21、膜厚約1nmのCr4057膜と膜厚約4nmのAl4057膜と膜厚約125nmの(ZnS)80(SiO20膜からなるL1下部保護層20、を順次形成した。
【0089】
次に先ほどと同様の2P法によりL0−L1間スペーサ層19を形成した。
【0090】
L0−L1間スペーサ層19上に膜厚約50nmの(ZnS)80(SiO20膜からなるL0最上部保護層18、膜厚約35nmの(Al)膜よりなるL0透明反射層17、膜厚約120nmの(ZnS)80(SiO20膜と膜厚約4nmのAl膜と膜厚約1nmのCr膜からなるL0上部保護層16、膜厚約4nmのGeSbTeからなるL0記録膜3、膜厚約1nmのCr4057膜と膜厚約4nmのAl4057膜と膜厚約125nmの(ZnS)80(SiO20膜からなるL0下部保護層15、膜厚約25nmの(ZnS)80(SiO20膜からなるL0最上部保護層14を順次形成した。最後に基板13を貼り併せた。積層膜の形成はマグネトロン・スパッタリング装置により行った。こうして多層ディスク部材を得た。初期化及び、記録・再生方法は実施例1と同様である。このように、片側3層以上にして記録・再生することが可能である。
【実施例4】
【0091】
(情報記録媒体の構成、製法)
実施例1の情報記録媒体の基板1の板厚0.575〜0.596mmの範囲で板厚のみ変えた多層情報記録媒体を作製した。(ディスクE1〜E8)
(基板板厚依存性)
本実施例の情報記録媒体(ディスクE1〜E8)の各レイヤーに3Twの記録信号を記録し、S/N比(シグナル対ノイズ比)を測定した。この結果を表4に示す。
【表4】

【0092】
このように、基板の板厚が厚すぎるとフォーカスがずれるためL1のS/Nが下がり、板厚が薄すぎるとフォーカスがずれL0のS/Nが下がる。したがって、NA0.65の光学系で記録・再生した場合、エラーせずに信号が再生できるため多層情報記録媒体の基板厚は0.578mm以上0.592以下が好ましいことがわかった。さらに環境温度の変動にも適用できるレベルで再生できることから、基板厚さが0.58mm以上0.59mm以下がより好ましい。また、レーザ波長が660nmより短いため、板厚許容量が小さくなっている。従って、最大厚さと最小厚さの差が0.014mm以下であることが好ましく、0.01mm以下であることがより好ましい。
【0093】
本実施例に記載されていない事項については、実施例1〜3、実施例5と同様である。
【実施例5】
【0094】
(情報記録媒体の構成、製法)
実施例1の情報記録媒体のスペーサ層7の厚さを10〜31μmの範囲でスペーサ層厚のみ変えた多層情報記録媒体を作製した。(ディスクF1〜F8)
(基板板厚依存性)
本実施例の情報記録媒体(ディスクF1〜F8)の各レイヤーに3Twの記録信号を記録し、S/N比(シグナル対ノイズ比)を測定した。この結果を表5に示す。
【表5】

【0095】
このように、スペーサ層厚が厚すぎるとフォーカスがずれるためL1のS/Nが下がり、スペーサ層厚が薄すぎるとフォーカスがずれL0のS/Nが下がる。したがって、NA0.65の光学系で記録・再生した場合、エラーせずに信号が再生できるため多層情報記録媒体のスペーサ層厚は13μm以上27μm以下が好ましいことがわかった。さらに環境温度の変動にも適用できるレベルで再生できることから、スペーサ層厚は15μm以上25μm以下がより好ましい。また、レーザ波長が660nmより短いため、スペーサ層厚許容量が小さくなっている。従って、最大厚さと最小厚さの差が14μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましい。
【0096】
本実施例に記載されていない事項については、実施例1〜4と同様である。
【実施例6】
【0097】
(情報記録媒体の構成、製法)
実施例1の情報記録媒体の基板1の板厚を0.094mm、スペーサ層7の厚さを9μmに変えた多層情報記録媒体を作製した。本媒体の作製方法は、実施例3に記載したように保護基板側からL1膜を積層し、次にスペーサ層を2P法にて作製した後、L0膜を積層、基板1を形成した。基板1の形成方法は、スピンコート、2P法のいずれか1つ、これらの組み合わせ、また別の方法でもよい。板厚が実施例7の範囲にあることと好ましい。板厚がずれた場合はS/Nが悪くなるが、記録・再生は可能であった。
【0098】
本実施例に記載されていない事項については、実施例1〜3、7〜8と同様である。
【実施例7】
【0099】
(情報記録媒体の構成、製法)
実施例1の情報記録媒体の基板1の板厚を0.091〜0.097mmの範囲で板厚のみ変えた多層情報記録媒体を作製した。(ディスクH1〜H8)
(基板板厚依存性)
本実施例の情報記録媒体(ディスクH1〜H8)の各レイヤーに3Twの記録信号を記録し、S/N比(シグナル対ノイズ比)を測定した。この結果を表6に示す。
【表6】

【0100】
このように、基板の板厚が厚すぎるとフォーカスがずれるためL1のS/Nが下がり、板厚が薄すぎるとフォーカスがずれL0のS/Nが下がる。したがって、NA0.85の光学系で記録・再生した場合、エラーせずに信号が再生できるため多層情報記録媒体の基板厚は0.091mm以上0.097mm以下が好ましいことがわかった。さらに環境温度の変動にも適用できるレベルで再生できることから、基板厚さが0.092mm以上0.096mm以下がより好ましい。また、レーザ波長が660nmより短いため、板厚許容量が小さくなっている。従って、最大厚さと最小厚さの差が0.006mm以下であることが好ましく、0.004mm以下であることがより好ましい。
【0101】
本実施例に記載されていない事項については、実施例1〜3、実施例6、8と同様である。
【実施例8】
【0102】
(情報記録媒体の構成、製法)
実施例6の情報記録媒体のスペーサ層7の厚さを7〜13μmの範囲でスペーサ層厚のみ変えた多層情報記録媒体を作製した。(ディスクJ1〜J8)
(基板板厚依存性)本実施例の情報記録媒体(ディスクJ1〜J8)の各レイヤーに3Twの記録信号を記録し、S/N比(シグナル対ノイズ比)を測定した。この結果を表7に示す。
【表7】

【0103】
このように、スペーサ層厚が厚すぎるとフォーカスがずれるためL1のS/Nが下がり、スペーサ層厚が薄すぎるとフォーカスがずれL0のS/Nが下がる。したがって、NA0.85の光学系で記録・再生した場合、エラーせずに信号が再生できるため多層情報記録媒体のスペーサ層厚は7μm以上13μm以下が好ましいことがわかった。さらに環境温度の変動にも適用できるレベルで再生できることから、スペーサ層厚は8μm以上12μm以下がより好ましい。また、レーザ波長が660nmより短いため、スペーサ層厚許容量が小さくなっている。従って、最大厚さと最小厚さの差が6μm以下であることが好ましく、4μm以下であることがより好ましい。
【0104】
本実施例に記載されていない事項については、実施例1〜3、6〜7と同様である。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】本発明による情報記録媒体の一例の断面模式図。
【図2】従来構造の情報記録媒体の断面模式図。
【図3】本発明の情報記録媒体の記録・再生特性評価に用いた記録波形を示す図。
【図4】本発明による情報記録媒体の他の例を示す断面模式図。
【図5】本発明による情報記録媒体の他の例を示す断面模式図。
【符号の説明】
【0106】
1,1′ 基板
2,2′ 下部保護層
3,3′ 記録膜
4,4′ 上部保護層
5,5′ 冷却制御層
6,6′ 反射層
7 貼り合わせ樹脂
8,8′ コントラスト拡大層
14 基板
T ウインド幅(Tw)
Pc クーリングパルスパワーレベル
Pe 中間パワーレベル
Ph 高パワーレベル
Pp プリヒートパワーレベル
P1 パワーが0のレベル
Tc クーリングパルス幅
Tp 第1パルス幅
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスクに用いられる情報記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ光を照射して薄膜(記録膜)に情報を記録する原理は種々知られているが、そのうちで膜材料の相変化(相転移とも呼ばれる)やフォトダークニングなど、レーザ光の照射による原子配列変化を利用するものは、薄膜の変形をほとんど伴わないため、2枚のディスク部材を直接貼り合わせて両面ディスク構造情報記録媒体、または複数の情報面を有する多層構造情報記録媒体が得られるという長所を持つ。
【0003】
通常の光ディスクでは、波長が660nm付近の一般に赤色レーザと言われている光源を用いている。これら情報記録媒体は基板上に下部保護層、GeSbTe系等の記録膜、ZnS−SiO2系上部保護層、Alなど反射率の大きい反射層を順に積層した構造を有している。記録容量を上げる方法はいくつかあるが、660nm付近の波長より短波長の光源を使用する方法や多層構造にする方法などが提案されている。ODS/ISOM‘99予稿集第110頁(文献1)に波長400nm付近用の2層情報記録媒体が示されている。この媒体では光入射側に反射層を持たない第1の情報面と光から遠い側にAl合金反射層を持つ第2の情報面を有する。しかし、このデータは計算結果のみで記録・再生した場合に生じるコントラストが小さい点の改良については示されていない。また、同様な波長400nm付近用の2層情報記録媒体がPCOS’99講演予稿集22頁(文献2)に開示されているが、この媒体も同様に光入射側に反射層を持たない第1の情報面をもつ。
【0004】
また、特開平10−293942号には、透明下部保護膜、相変化記録膜、透明上部保護膜、透明型反射膜または透明干渉膜からなる相変化型記録媒体を複数層設けることが記載されている。
【0005】
なお、波長400nm付近の短波長のレーザは一般に、長波長の赤色レーザと対比させて青色、青緑色、青紫色、緑色レーザなどと呼ばれているが本明細書中では、まとめて青色レーザと呼ぶ。
【0006】
本明細書では、結晶−非晶質間の相変化ばかりでなく、融解(液相への変化)と再結晶化、結晶状態−結晶状態間の相変化も含むものとして「相変化」及び「原子配列変化」という用語を使用する。また、マークエッジ記録とは、記録マークのエッジ部分を信号の“1”に、マーク間およびマーク内を信号の“0”に対応させた記録方式のことをいう。本明細書において光ディスクとは、光の照射によって再生できる情報が記載された円板(ディスク)、及び/または光の照射によって情報の再生を行う装置をいう。
【非特許文献1】ODS/ISOM‘99予稿集第110頁
【非特許文献2】PCOS’99講演予稿集22頁
【特許文献1】特開平10−293942号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の多層情報記録媒体はいずれも、青色レーザを用いた高密度の書き換え可能な相変化型の多層情報記録媒体として用いる場合、コントラストが小さいという問題を有している。
【0008】
また、特開平10−293942号では、透明反射層の透過率について思想がない。
【0009】
そこで、この発明の目的は、青色レーザで記録・再生を行った場合のコントラストを改善し、良好な再生特性を持つ多層情報記録用媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、前記課題を解決するため、第1に、情報記録媒体を、基板と、光の照射によって生じる原子配列変化により情報が記録されるN層の記録膜の情報面と(Nは2以上の整数)、N−1個のスペーサ層とを有し、光入射側の情報面から情報面を数えたとき、前記情報面の透過率が情報面1>情報面2……情報面N−1>情報面Nの関係にあり、かつ前記基板の厚さが0.578mm以上0.592mm以下であるという構成にした。
【0011】
第2に、情報記録媒体を、基板と、光の照射によって生じる原子配列変化により情報が記録されるN層の記録膜の情報面と(Nは2以上の整数)、N−1個のスペーサ層とを有し、光入射側の情報面から情報面を数えたとき、前記情報面の透過率が情報面1>情報面2……情報面N−1>情報面Nの関係にあり、かつ前記スペーサ層の厚さが13μm以上27μm以下であるという構成にした。
【0012】
第3に、情報記録媒体を、基板と、光の照射によって生じる原子配列変化により情報が記録されるN層の記録膜の情報面と(Nは2以上の整数)、N−1個のスペーサ層とを有し、光入射側の情報面から情報面を数えたとき、前記情報面の透過率が情報面1>情報面2……情報面N−1>情報面Nの関係にあり、かつ前記基板の厚さが0.578mm以上0.592mm以下で、前記スペーサ層の厚さが13μm以上27μm以下であるという構成にした。
【0013】
第4に、情報記録媒体を、NA0.65の光学系で記録・再生される情報記録媒体であって、基板と、光の照射によって生じる原子配列変化により情報が記録されるN層の記録膜の情報面と(Nは2以上の整数)、N−1個のスペーサ層とを有し、光入射側の情報面から情報面を数えたとき、前記情報面の透過率が情報面1>情報面2……情報面N−1>情報面Nの関係にあり、かつ前記基板の厚さが0.578mm以上0.592mm以下であるという構成にした。
【0014】
第5に、情報記録媒体を、NA0.65の光学系で記録・再生される情報記録媒体であって、基板と、光の照射によって生じる原子配列変化により情報が記録されるN層の記録膜の情報面と(Nは2以上の整数)、N−1個のスペーサ層とを有し、光入射側の情報面から情報面を数えたとき、前記情報面の透過率が情報面1>情報面2……情報面N−1>情報面Nの関係にあり、かつ前記スペーサ層の厚さが13μm以上27μm以下であるという構成にした。
【0015】
第6に、情報記録媒体を、NA0.65の光学系で記録・再生される情報記録媒体であって、基板と、光の照射によって生じる原子配列変化により情報が記録されるN層の記録膜の情報面と(Nは2以上の整数)、N−1個のスペーサ層とを有し、光入射側の情報面から情報面を数えたとき、前記情報面の透過率が情報面1>情報面2……情報面N−1>情報面Nの関係にあり、かつ前記基板の厚さが0.578mm以上0.592mm以下で、前記スペーサ層の厚さが13μm以上27μm以下であるという構成にした。
【0016】
第7に、前記第1乃至第6のいずれかの構成を有する情報記録媒体において、前記記録膜の膜厚が4nm以上25nm以下であるという構成にした。
【発明の効果】
【0017】
本発明によると良好な記録・再生特性を有する情報記録媒体が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明を実施例によって詳細に説明する。
【実施例1】
【0019】
(本発明の情報記録媒体の構成、製法)
図1は、本発明の第1実施例のディスク状情報記録媒体の断面構造を示す模式図である。この媒体は次のようにして製作した。まず、直径12cm、厚さ0.6mmで表面にトラッキング用の溝を有するポリカーボネイト基板1上に、膜厚約30nmの(ZnS)80(SiO20膜と膜厚約4nmのAl4057膜と膜厚約1nmのCr4057膜を積層してなるL0下部保護層2、膜厚約6nmのGeSbTeL0記録膜3、膜厚約1nmのCr膜と膜厚約4nmのAl膜と膜厚約125nmの(ZnS)80(SiO20膜を積層してなるL0上部保護層4、膜厚約35nmの(Al)膜よりなるL0透明反射層5、膜厚約50nmの(ZnS)80(SiO20膜からなるL0最上部保護層6を順次形成した。上記のような層4,5,6多層積層によって生じる光学干渉を用いて透明な反射層を得る。積層膜の形成はマグネトロン・スパッタリング装置により行った。こうして第1のディスク部材を得た。
【0020】
他方、同様のスパッタリング方法により、第1のディスク部材と異なる構成を持つ第2のディスク部材を得た。第2のディスク部材は、ポリカーボネイト保護基板12上に、膜厚約80nmのAg98PdCu膜からなるL1反射層11上に膜厚約80nmの(ZnS)80(SiO20膜と膜厚約5nmのCrを積層してなるL1上部保護層10、膜厚約18nmのGeSbTeL1記録膜9、膜厚約5nmのCr4057膜と膜厚約80nmの(ZnS)80(SiO20膜を積層してなるL1下部保護層8を順次形成したものである。
【0021】
その後、前記第1のディスク部材と第2のディスク部材をそれぞれのL0最上部保護層6とL1下部保護層8をスペーサ層7を介して貼り合わせ、図1に示す2層情報記録媒体(ディスクA)を得た。
【0022】
各情報面は光入射側の構成膜(L0下部保護層2からL0最上部保護層6まで)をL0、光から遠い方の構成膜(L1下部保護層8からL1反射層11まで)をL1とした。
【0023】
(従来型の情報記録媒体の構成、製法)
透明反射層の効果を明らかにするため、透明反射層を持たないディスク状情報記録媒体を作製した。図2は、この媒体の断面構造を示す模式図である。
【0024】
この媒体は次のようにして製作した。まず、直径12cm、厚さ0.585mmで表面にトラッキング用の溝を有するポリカーボネイト基板1上に、膜厚約30nmの(ZnS)80(SiO20膜と膜厚約4nmのAl4057膜と膜厚約1nmのCr4057膜からなるL0下部保護層2、膜厚約6nmのGeSbTeからなるL0記録膜3、膜厚約1nmのCr膜と膜厚約4nmのAl膜と膜厚約125nmの(ZnS)80(SiO20膜からなるL0上部保護層4を順次形成した。積層膜の形成はマグネトロン・スパッタリング装置により行った。こうして第1のディスク部材を得た。
【0025】
他方、同様のスパッタリング方法により、第1のディスク部材と異なる構成を持つ第2のディスク部材を得た。第2のディスク部材は、ポリカーボネイト保護基板12上に、膜厚約80nmのAg98PdCu膜からなるL1反射層11上に膜厚約80nmの(ZnS)80(SiO20膜と膜厚約5nmのCrからなるL1上部保護層10、膜厚約18nmのGeSbTeからなるL1記録膜9、膜厚約5nmのCr4057膜と膜厚約80nmの(ZnS)80(SiO20膜からなるL1下部保護層8を順次形成したものである。
【0026】
その後、前記第1のディスク部材と第2のディスク部材をそれぞれのL0上部保護層4とL1下部保護層8をスペーサー層7を介して貼り合わせ、図2に示す情報記録媒体(ディスクB)を得た。
【0027】
(初期結晶化)
前記のようにして製作したディスクAとディスクBのL0記録膜3に、次のようにして初期結晶化を行った。なお、以下ではL0記録膜3、L1記録膜9についてのみ説明するが、この他の多層媒体の記録膜についても全く同様である。
【0028】
媒体(ディスクA,ディスクB)を記録トラック上の点の線速度が5m/sであるように回転させ、波長約810nmの半導体レーザのレーザパワーを300mWにしてL1の記録膜にフォーカスした後、レーザパワーを700mWにして、基板1およびL0膜、スペーサー層を通して記録膜9に媒体の半径方向に長い長円形のスポット形状で照射した。スポットの移動は、媒体の1回転につき媒体の半径方向のスポット長の1/24ずつずらした。こうして、初期結晶化を行った。この初期結晶化は1回でもよいが3回繰り返すと初期結晶化によるノイズ上昇を少し低減できた。この初期結晶化は高速で行える利点がある。
【0029】
次ぎに波長約810nmの半導体レーザのレーザパワーを300mWにしてレーザのフォーカス位置を変えてL0の記録膜にフォーカスした後、レーザパワーを700mWにして、基板1を通して記録膜3に媒体の半径方向に長い長円形のスポット形状で照射した。スポットの移動は、媒体の1回転につき媒体の半径方向のスポット長の1/24ずつずらした。こうして、初期結晶化を行った。この初期結晶化は1回でもよいが3回繰り返すと初期結晶化によるノイズ上昇を少し低減できた。この初期結晶化は高速で行える利点がある。
【0030】
初期化の順序はL1記録膜から行ってもL0記録膜から行っても、また3層以上の多層情報記録媒体においてはランダムに行っても良い。
【0031】
(記録・消去・再生)
前記のようにして製作し、初期結晶化を行った媒体について、次ぎのように記録・消去・再生特定の評価を行った。なお、以下ではL1の記録膜9についてのみ説明するが、L0の記録膜3についても全く同様であり、また3層以上の多層情報記録媒体においてのそれぞれの情報面の記録膜についても同様である。
【0032】
初期結晶化が完了した記録膜9の記録領域にトラッキングと自動焦点合わせを行いながら、記録用レーザ光のパワーを中間パワーレベルPe(3mW)と高パワーレベルPh(7mW)との間で変化させて情報の記録を行った。記録トラックの線速度は9m/s、半導体レーザ波長は405nm、レンズの開口数(NA)は0.65である。記録用レーザ光により記録領域に形成される非晶質またはそれに近い部分が記録点となる。この媒体の反射率は結晶状態の方が高く、記録され非晶質状態になった領域の反射率が低くなっている。
【0033】
記録用レーザ光の高レベルと中間レベルのパワー比は1:0.3〜1:0.7の範囲が好ましい。また、この他に短時間ずつ他のパワーレベルにしてもよい。図3に示したように、1つの記録マークの形成中にウインドウ幅の半分(Tw/2)ずつ中間パワーレベルPeより低いボトムパワーレベルPbまでパワーを繰り返し下げ、かつクーリングパワーレベルPcを記録パルスの最後に持つ波形を生成する手段を持った装置で記録・再生を行うと、再生信号波形のジッター値およびエラーレートが低減した。クーリングパワーレベルPcは中間パワーレベルPeより低く、ボトムパワーレベルPbより高いか同じレベルである。この波形は、第1パルス幅Tpが記録マークとそのマークの直前に設けられたスペースの長さの組み合わせによって変化する特徴とクーリングパルス幅Tc(記録パルスの最後にPcレベルまで下げる時間幅)が記録マークとそのマークの後続スペース長の組み合わせにより決まる特徴を持つ。マーク直前のスペース長が短く、マークが長いほどTpは短くなり、マーク直前のスペース長が長く、マークが短いほどTpは長くなる。ただし、媒体の構造によっては6Twマークの記録用記録波形のTpを特に長くした場合、ジッター低減効果が大きかった。また、後続のスペース長が長く、マークが長いほど、Tcは短くなり、後続のスペース長が短く、マークが短いほど、Tcは長くなる。
【0034】
図3には3Tw,4Tw,6Tw,11Twの記録波形しか示していないが、5Twは6Twの記録波形の一連の高いパワーレベルのパルス列のうち、Tw/2の高いパワーレベルPhと直後のTw/2のボトムパワーレベルPbをそれぞれ一つずつ削減したものである。また、7Tw〜10Tw用記録波形は6Tw用記録波形の最後尾の高いパワーレベルのパルスの直前に、Tw/2の高いパワーレベルPhとTw/2のボトムパワーレベルPbを、それぞれ1組ずつ追加したものである。したがって、5組追加したものが11Twである。
【0035】
ここでは、3Twに対応する最短記録マーク長を0.26μmとした。記録すべき部分を通り過ぎると、レーザ光パワーを再生(読み出し)用レーザ光の低パワーレベルPr(1mW)に下げるようにした。
【0036】
このような記録方法では、既に情報が記録されている部分に対して消去することなく、重ね書きによって新たな情報を記録すれば、新たな情報に書き換えられる。すなわち、単一のほぼ円形の光スポットによるオーバーライトが可能である。
【0037】
しかし、書き換え時の最初のディスク1回転または複数回転で、前記のパワー変調した記録用レーザ光の中間パワーレベル(3mW)またはそれに近いパワーの連続光を照射して、記録されている情報を一たん消去し、その後、次の1回転でボトムパワーレベル(0.5mW)と高パワーレベル(7mW)の間で、または中間パワーレベル(3mW)と高パワーレベル(7mW)との間で、情報信号に従ってパワー変調したレーザ光を照射して記録するようにしてもよい。このように、情報を消去してから記録するようにすれば、前に書かれていた情報の消え残りが少ない。従って、線速度を2倍に上げた場合の書き換えも、容易になる。
【0038】
(透明反射層の効果)
本実施例記載の透明反射層を持つ図1に記載の情報記録媒体(ディスクA)および透明反射層を持たない図2に記載の従来の情報記録媒体(ディスクB)のL0について比較した。初回記録時の最短記録信号(3Tw)のC/N(搬送波対雑音比)について比べたところ、ディスクAでは50dBのC/Nがあったが、ディスクBではC/Nが小さく46dBであった。ディスクAでC/Nが大きくなったのは、透明反射層を設けることにより記録膜と透明反射層との間での干渉を利用することが出来、信号振幅が大きくなったためである。
【0039】
(透明反射層の光学特性)
透明反射層5の光学特性依存性を測定した。光学特性を変化させた複数の媒体を作成した。最短記録マーク3Twと3Tスペースの繰り返し信号を記録した際のC/Nを測定した。結果を表1に示す。透明反射層の組成が変わると透明反射層の消衰係数が変化し、反射層での吸収量が多くなるため、透過率一定とした時の反射率差が小さくなり、C/N(dB)が低下した。った。これより、透明反射層の消衰係数は、小さいことが好ましいことがわかる。実用レベルでC/Nを確保するには48dB以上必要であるため、透明反射層の消衰係数0.5以下であることが好ましい。また、レーザの環境温度変動による劣化を考慮した場合には、C/Nが49dB以上必要であるため、透明反射層の消衰係数は0.3 以下であることがより好ましい。また、透明反射層の反射率は5%以上50%以下であることが望ましい。
【表1】

【0040】
次に透明反射層5の屈折率依存性を測定した。これを、表2に示す。透明反射層の屈折率nが変わると上部保護層と透明反射層の光干渉量が変わるため、透過率一定とした時の反射率差がかわる。ここで、反射率差とは、媒体における、記録膜の結晶状態と非結晶状態、つまり未記録状態と記録状態との反射率の差をいう。
【表2】

【0041】
これより、透明反射層の屈折率は、実用レベルの反射率差を確保するには4%以上必要であるため、透明反射層の屈折率2.2以下または2.5以上であることが好ましい。また、レーザの環境温度変動による劣化を考慮した場合には、反射率差が5%以上必要であるため、透明反射層の屈折率は2.0 以下または2.6以上であることがより好ましい。
【0042】
さらに上部保護層の屈折率(2.35)との差が大きい方が好ましいことがわかる。上部保護層の屈折率と透明反射層の屈折率の差が0.15以上であることが好ましい。また、レーザの環境温度変動による劣化を考慮した場合には、上部保護層の屈折率と透明反射層の屈折率の差が0.25以上であることがより好ましい。
【0043】
透明反射層膜厚及び上部保護層膜厚及び最上部保護層膜厚は、反射率差が大きくとれるように決定することがC/Nが大きくなり好ましい。この膜厚は上部保護層が80〜160nmが好ましく、100〜140nmがより好ましい。透明反射層と最上部保護層膜厚は、透明反射層と最上部保護層膜厚の合計が50〜130nmが好ましく、70〜110nmがより好ましい。
【0044】
干渉を利用するためには、透明反射層膜厚の最低膜厚は5nm以上にすることが好ましく、10nm以上だとより好ましい。
【0045】
透明反射層材料は、SiO,SiO,TiO,Al,Y,CeO,La,In,GeO,GeO,PbO,SnO,SnO,BeO,Bi,TeO,WO,WO,Sc,Ta,ZrO,CuO,MgOなどの酸化物、TaN,AlN,BN,CrN,Si,GeN,Al−Si−N系材料(例えばAlSiN)などの窒化物が好ましい。これら化合物における元素比は、例えば酸化物や硫化物における金属元素と酸素元素あるいは硫黄元素の比は、Al,Y,Laは2:3、SiO,ZrO,GeOは1:2、Taは2:5、ZnSは1:1という比をとるかその比に近いことが好ましいが、その比から外れていても同様の効果は得られる。しかし、上記整数比から外れている場合、例えばAl−OはAlとOの比率がAlからAl量で±10原子%以下、Si−OはSiとOの比率がSiOからSi量で±10原子%以下等、金属元素量のずれが10原子%以下が好ましい。10原子%以上ずれると、光学特性が変化するため、変調度が10%以上低下した。
【0046】
この他上記光学特性を持つ材料も使用可能である。透明反射層材料中の不純物元素が5原子%を超えると1万回以上の多数回オーバーライト時のジッター上昇が5%以上になることがわかった。したがって、透明反射層材料中の不純物元素が透明反射層成分の5原子%以下が書き換え特性の劣化を少なく出来、好ましい。2原子%以下であるとさらに好ましい。
【0047】
(下部保護層)
本実施例では、L1下部保護層8を(ZnS)80(SiO20とCr4057層の2層構造としている。また、L0下部保護層2を(ZnS)80(SiO20膜と膜厚約4nmのAl4057膜と膜厚約1nmのCr4057膜を積層した3層構造としている。2層構造をとる下部保護層2、8の(ZnS)80(SiO20に代わる材料としては、ZnSとSiOの混合比を変えたものが好ましい。また、ZnS,Si−N系材料、Si−O−N系材料、SiO,SiO,TiO,Al,Y,CeO,La,In,GeO,GeO,PbO,SnO,SnO,BeO,Bi,TeO,WO,WO,Sc,Ta,ZrO,CuO,MgOなどの酸化物、TaN,AlN,BN,Si,GeN,Al−Si−N系材料(例えばAlSiN)などの窒化物、ZnS,Sb,CdS,In,Ga,GeS,SnS,PbS,Biなどの硫化物、SnSe,SbSe,CdSe,ZnSe,InSe,GaSe,GeSe,GeSe,SnSe,PbSe,BiSeなどのセレン化物、CeF,MgF,CaFなどの弗化物、あるいはSi,Ge,TiB,BC,B,C,または、上記の材料に近い組成のものを用いてもよい。また、ZnS−SiO,ZnS−Alなど、これらの混合材料の層やこれらの多重層でもよい。この中で、ZnSはスパッタレートが大きく、ZnSが60mol%以上を占めると成膜時間を短くできるため、これを60mol%以上含む混合物の場合、ZnSのスパッタレートが大きい点と酸化物や窒化物等の化学安定性の良い点が組み合わされる。この他の硫化物、セレン化物でもZnSに近い特性が得られた。
【0048】
これら化合物における元素比は、例えば酸化物や硫化物における金属元素と酸素元素あるいは硫黄元素の比は、Al,Y,Laは2:3、SiO,ZrO,GeOは1:2、Taは2:5、ZnSは1:1という比をとるかその比に近いことが好ましいが、その比から外れていても同様の効果は得られる。しかし、上記整数比から外れている場合、例えばAl−OはAlとOの比率がAlからAl量で±10原子%以下、Si−OはSiとOの比率がSiOからSi量で±10原子%以下等、金属元素量のずれが10原子%以下が好ましい。10原子%以上ずれると、光学特性が変化するため、変調度が10%以上低下した。
【0049】
上記材料は、下部保護層全原子数の90%以上であることが好ましい。上記材料以外の不純物が10原子%以上になると、書き換え可能回数が1/2以下になる等、書き換え特性の劣化が見られた。
【0050】
本実施例で用いた下部保護層の消衰係数kについては0または0に近いことが好ましい。さらに、下部保護層材料の80%以上の膜厚において消衰係数kがk≦0.01であれば、コントラストの低下が2%以下に抑制でき好ましい。
【0051】
下部保護層を2層以上にし、記録膜側の下部保護層材料をCrまたはCr4057すると、多数回書き換え時に記録膜へZn,Sの拡散を抑制でき、書き換え特性が良好であることがわかった。記録膜側の下部保護層材料のCrに代わる材料としては、CrにSiO,Ta,Al,ZrO−Yを混合した混合物が好ましい。次いで、CoOまたはGeO,NiO、これらとCrの混合物が好ましい。これら酸化物は消衰係数kが小さく、下部界面層における吸収が非常に小さい。そのため、変調度が大きく保てるという利点がある。
【0052】
また、CrまたはCr4057の一部をAlまたはAl4057に変えると、記録膜以外での吸収が減り透過率が大きくできるため、L0層でC/Nが大きく出来てこのましい。AlまたはAl4057の代りにSiOまたはSi3363など、またこれらの窒素と酸素量の比が異なるものを用いても同様な特性が得られた。
【0053】
また、AlN,BN,CrN,Cr2N,GeN,HfN,Si,Al−Si−N系材料(例えばAlSiN)、Si−N系材料、Si−O−N系材料、TaN,TiN,ZrN,などの窒化物は保存寿命が大きくなり、外界温度変化に強く、より好ましい。窒素が含まれた記録膜組成またはそれに近い組成の材料でも接着力が向上する。
【0054】
その他、BeO,Bi,CeO,CuO,CuO,CdO,Dy,FeO,Fe,Fe,GeO,GeO,HfO,In,La,MgO,MnO,MoO,MoO,NbO,NbO,PbO,PdO,SnO,SnO,Sc,SrO,ThO,TiO,Ti,TiO,TeO,VO,V,VO,WO,WOなどの酸化物、C,Cr,Cr23,Cr,FeC,MoC,WC,WC,HfC,TaC,CaCなどの炭化物または、上記の材料に近い組成のものを用いてもよいし、これらの混合材料でもよい。
【0055】
下部保護層の記録膜側に酸化物または窒化物の層を設けた場合は、Zn,S等の記録膜中への拡散が防止でき、消え残りが増加するのを抑制できる。さらに、記録感度を低下させないためには、25nm以下とすることが好ましく、10nm以下ではより好ましかった。均一な膜形成ができるのは約2nm以上であり、5nm以上がさらに良好であった。これより、記録膜側の下部保護層膜厚を2〜25nmとすると記録・再生特性がより良くなり、好ましい。未満の場合、再結晶化のためにC/Nが低下した。また、下部保護層膜厚が10nm未満の場合、記録膜の保護効果がなくなるため、書き換え可能回数が1桁以上低下した。下部保護層と記載したものは、L0下部保護層、L1下部保護層、さらに多層情報記録媒体の下部保護層を意味する。
【0056】
(記録膜)
本実施例では、記録膜3、記録膜9をGeSbTeにより形成している。本記録膜の再生波長における屈折率は、結晶状態が2.0、非晶質状態が2.6と、結晶状態の方が小さい。
【0057】
GeSbTeに代わる記録膜3,9の材料としては、AgGe30Sb14Te53,CrGe32Sb13Te52等、Ag−Ge−Sb−Te系、Cr−Ge−Sb−Te系材料で組成比の異なるものが変調度が大きくなり好ましい。記録膜3および/または記録膜9中のAg量やCr量が多いと短波長での反射率変化が大きくなるが、結晶化速度は遅くなる。従って、添加されるAg量またはCr量が2原子%以上、10原子%以下が好ましい。しかし、Agの添加されていないGe−Sb−Te系材料でもオーバーライトは可能である。Agの代わりに記録膜3,9へ添加する元素としては、Cr,W,Mo,Pt,Co,Ni,Pd,Si,Au,Cu,V,Mn,Fe,Ti,Biのいずれかのうちの少なくとも一つで置き換えても、オーバーライト特性が良好であることがわかった。これらの記録膜3,9材料は全て、再生波長における屈折率は結晶状態の方が非晶質状態より小さい。
【0058】
本実施例で記録膜9の膜厚を変化させ、10回書き換え後および10万回書き換え後のジッター(σ/Tw)を測定したところ、表3のようになった。記録膜9の膜厚(nm)に対し、10回書き換え後については前エッジまたは後エッジのジッターの悪い方の値(%)を、1万回書き換え後については前エッジのジッター値(%)を示した。
【表3】

【0059】
これより、記録膜9の膜厚を薄くすると記録膜流動や偏析による、10回書き換え後のジッターが増加し、また厚くすると、1万回書き換え後のジッターが増加することがわかった。これより、記録膜9の膜厚は4nm以上、25nm以下がジッターを20%以下にでき好ましく、5nm以上、20nm以下であればジッターを15%以下に出来より好ましい。
【0060】
記録膜3の膜厚および、1〜N−1情報面(レイヤー)における記録膜膜厚については、前記情報面の記録膜膜厚が情報面1≦情報面2≦…≦情報面N−1≦情報面Nの関係にあると各情報面において記録・再生可能となるため好ましい。さらに、光入射側の基板より1からN−1番めの情報面用記録膜の合計膜厚が10nm以下であると、N番めの情報面のC/Nが48dB以上と大きくでき好ましい。上記合計膜厚が8nm以下になるとN番めの情報面のC/Nが49dB以上と大きくできより好ましい。
【0061】
(上部保護層)
本実施例では、上部保護層10をZnS−SiOとCr4060により形成した。また、L0上部保護層4を(ZnS)80(SiO20膜と膜厚約4nmのAl4060膜と膜厚約1nmのCr4060膜を積層した3層構造としている。
【0062】
ZnS−SiOに代わる上部保護層の材料としては、Si−N系材料、Si−O−N系材料、ZnS,SiO,SiO,TiO,Al,Y,CeO,La,In,GeO,GeO,PbO,SnO,SnO,BeO,Bi,TeO,WO,WO,Sc,Ta,ZrO,CuO,MgOなどの酸化物、TaN,AlN,BN,Si,GeN,Al−Si−N系材料(例えばAlSiN)などの窒化物、ZnS,Sb,CdS,In,Ga,GeS,SnS,PbS,Biなどの硫化物、SnSe,SbSe,CdSe,ZnSe,InSe,GaSe,GeSe,GeSe,SnSe,PbSe,BiSeなどのセレン化物、CeF,MgF,CaFなどの弗化物、あるいはSi,Ge,TiB,BC,B,Cまたは、上記の材料に近い組成のものを用いてもよい。また、ZnS−SiO,ZnS−Alなどこれらの混合材料の層やこれらの多重層でもよい。消衰係数は0または0に近いことが好ましい。
【0063】
これら化合物における元素比は、例えば酸化物あるいは硫化物における金属元素と酸素元素あるいは硫黄元素の比は、Al,Y,Laは2:3、SiO,ZrO,GeOは1:2、Taは2:5、ZnSは1:1という比をとるかその比に近いことが好ましいが、その比から外れていても同様の効果は得られる。上記整数比から外れている場合、例えばAl−OはAlとOの比率がAlからAl量で±10原子%以下、Si−OはSiとOの比率がSiOからSi量で±10原子%以下等、金属元素量のずれが10原子%以下が好ましい。10原子%以上ずれると、光学特性が変化するため、変調度が10%以上低下した。
【0064】
上記材料は、上部保護層全原子数の90%以上であることが好ましい。上記材料以外の不純物が10原子%以上になると、書き換え可能回数が1/2以下になる等、書き換え特性の劣化が見られた。
【0065】
上部保護層を2層以上にし、記録膜側の上部保護層材料をCrにすると、多数回書き換え時に記録膜へZn,Sの拡散を抑制でき、書き換え特性が良好になることがわかった。
【0066】
さらにその一部をAl,またはSiOに変えるとコントラストが大きく出来て好ましいことがわかった。
【0067】
上部保護層と記載したものは、L0上部保護層、L1上部保護層、さらに多層情報記録媒体の上部保護層を意味する。
【0068】
(反射層)
本実施例では反射層11にAg98PdCu膜を用いた。他の反射層の材料としては、Ag−Pt,Ag−Au等、Ag合金を主成分とするものが好ましい。Agも使用可能である。Ag合金中のAg以外の元素の含有量を0.5原子%以上4原子%以下の範囲にすると、多数回書き換え時の特性およびビットエラーレートが良好になり、1原子%以上2原子%以下の範囲ではより良好になることがわかった。
【0069】
また、Zn98Pd膜、Zn98Pt膜、Zn98Cu膜、Zn98Ni膜、Zn−Pd膜、Zn−Pt膜、Zn−Cu膜、Zn−Ni膜は、Ag系材料に比べコストが安いという利点がある。Znも使用可能である。Zn合金中のZn以外の元素の含有量は0.5原子%以上4原子%以下の範囲にすると、多数回書き換え時の特性およびビットエラーレートが良好になり、1原子%以上2原子%以下の範囲ではより良好になることがわかった。
【0070】
次いで、Au,Al,Cu,Ni,Fe,Co,Cr,Ti,Pd,Pt,W,Ta,Mo,Sb,Bi,Dy,Cd,Mn,Mg,Vの元素単体、またはAu合金、上記以外のAg合金、Cu合金、Pd合金、Pt合金などこれらを主成分とする合金、あるいはこれら同志の合金よりなる層を用いてもよい。このように、反射層は、金属元素、半金属元素、これらの合金、混合物からなる。
【0071】
この中で、Ag,Al,Al合金、Ag合金、等のように、反射率が大きいものは、コントラスト比が大きくなり書き換え特性が良好である。単体より合金の方が接着力が大きくなる。この場合の主成分となるAl,Ag等以外の元素の含有量はAg合金同様に、0.5原子%以上5原子%以下の範囲にすると、コントラスト比が大きく、また接着力も大きくでき良好であった。1原子%以上2原子%以下の範囲ではより良くなった。波長400nm付近における反射率を比較するとAgまたはAg合金は約95%、Al,Al合金は約92%と、Ag系の方が大きいが、材料コストも大きい。これらに次ぐ材料としては、Zn,Zn合金が約89%、Pt,Pt合金が約65%と短波長における反射率が大きく、コントラストを大きく出来た。
【0072】
上記材料は、反射層全原子数の95%以上であることが好ましい。上記材料以外の不純物が5原子%以上になると、書き換え可能回数が1/2以下になる等、書き換え特性の劣化が見られた。
【0073】
反射層膜厚が20nmより薄い場合、強度が弱く、熱拡散が小さく記録膜流動が起きやすいため、1万回書き換え後のジッターが15%より大きくなる。30nmでは15%まで低下できる。また、反射層膜厚が200nmより厚い場合、それぞれの反射層を作製する時間が長くなり、2工程以上に分ける、またはスパッタリング用の真空室を2室以上設ける等、形成時間が倍増した。また、反射層の膜厚が5nm以下だと島状に成膜され、ノイズが大きくなった。これより、反射層の膜厚はノイズ及びジッター、形成時間より、5nm以上、200nm以下が好ましい。
【0074】
(基板)
本実施例では、表面に直接、トラッキング用の溝を有するポリカーボネート基板1を用いているが、それに代えてポリオレフィン、エポキシ、アクリル樹脂、紫外線硬化樹脂層を表面に形成した化学強化ガラスなどを用いてもよい。強化ガラスの代わりに石英やCaFを用いてもよい。
【0075】
また、トラッキング用の溝を有する基板とは、基板表面全てまたは一部に、記録・再生波長をλとしたとき、λ/12n′(n′は基板材料の屈折率)以上の深さの溝を持つ基板である。溝は一周で連続的に形成されていても、途中分割されていてもよい。溝深さが約λ/6n′の時、クロストークが小さくなり好ましいことが分かった。さらに溝深さが約λ/3n′より深い時、基板形成時の歩留まりは悪くなるが、クロスイレースが小さくなり好ましいことが分かった。
【0076】
また、その溝幅は場所により異なっていてもよい。溝部の存在しない、サンプルサーボフォーマットの基板、他のトラッキング方式、その他のフォーマットによる基板等でも良い。溝部とランド部の両方に記録・再生が行えるフォーマットを有する基板でも、どちらか一方に記録を行うフォーマットの基板でも良い。トラックピッチの大きさが小さいと隣のトラックからの信号の漏れが検出されノイズとなるため、トラックピッチはスポット径(光強度が1/e2となる領域)の1/2以上であることが好ましい。
【0077】
ディスクサイズも直径12cmに限らず、13cm、8cm、3.5インチ、2.5インチ等、他のサイズでも良い。ディスク厚さも0.6mmに限らず、1.2mm、0.8mm、0.4mm、0.1mm等、他の厚さでも良い。
【0078】
本実施例では、スペーサ層を介して貼り合わせているが、第2のディスク部材の代わりに別の構成のディスク部材、または保護用の基板などを用いてもよい。貼り合わせに用いるディスク部材または保護用の基板の図5のように保護基板側から形成して、最後に光入射側の基板1を形成するか、貼り合わせしてもよい。またこうして作製した2まいのディスクを貼り合わせて両面ディスクとしてもよい。紫外線波長領域における透過率が大きい場合、紫外線硬化樹脂によって貼り合わせを行うこともできる。その他の方法で貼り合わせを行ってもよい。また、第1および第2のディスク部材を貼り合わせる前に第1および第2のディスク部材の最上層上に紫外線硬化樹脂を厚さ約10μm塗布し、硬化後に貼り合わせを行うと、エラーレートをより低減できる。
【0079】
(各層の膜厚、材料)
各層の膜厚、材料についてはそれぞれ単独の好ましい範囲をとるだけでも記録・再生特性等が向上するが、それぞれの好ましい範囲を組み合わせることにより、さらに効果が上がる。
【実施例2】
【0080】
(情報記録媒体の構成、製法)
図1の模式図に示した断面構造を有し、膜厚のみを相違させ、他は全て同じ条件とした情報記録媒体を製作した。この媒体は次のようにして製作した。まず、直径12cm、厚さ0.6mmで表面にトラッキング用の溝を有するポリカーボネイト基板1上に、膜厚約30nmの(ZnS)80(SiO20膜と膜厚約4nmのAl4057膜と膜厚約1nmのCr4057膜からなるL0下部保護層2、膜厚約6nmのGeSbTeからなるL0記録膜3、膜厚約1nmのCr膜と膜厚約4nmのAl膜と膜厚約125nmの(ZnS)80(SiO20膜からなるL0上部保護層4、膜厚約35nmの(Al)膜よりなるL0透明反射層5、膜厚約50nmの(ZnS)80(SiO20膜からなるL0最上部保護層6を順次形成した。積層膜の形成はマグネトロン・スパッタリング装置により行った。こうして第1のディスク部材を得た。
【0081】
他方、同様のスパッタリング方法により、第1のディスク部材と異なる構成を持つ第2のディスク部材を得た。第2のディスク部材は、ポリカーボネイト保護基板12上に、膜厚約80nmのAg98PdCu膜からなるL1反射層11上に膜厚約120nmの(ZnS)80(SiO20膜と膜厚約5nmのCrからなるL1上部保護層10、膜厚約10nmのGeSbTeからなるL1記録膜9、膜厚約5nmのCr4057膜と膜厚約95nmの(ZnS)80(SiO20膜からなるL1下部保護層8を順次形成したものである。
【0082】
その後、前記第1のディスク部材と第2のディスク部材をそれぞれのL0最上部保護層6とL1下部保護層8をスペーサ層7を介して貼り合わせ、図1に示す2層情報記録媒体(ディスクA)を得た。
【0083】
各情報面は光入射側の構成膜(L0下部保護層2からL0最上部保護層6まで)をL0、光から遠い方の構成膜(L1下部保護層8からL1反射層11まで)をL1とした。
【0084】
これより、L1ディスクの反射率は、結晶状態の反射率が非晶質状態の反射率より低くなった。また下部保護層、記録膜、上部保護層の膜厚を変えると記録膜の吸収率比Ac/Aa(Acは結晶状態の記録膜における吸収、Aaは非晶質状態の記録膜における吸収)を1.3倍に大きく出来実施例1に記載の多層情報記録媒体のL1に比べ、本実施例のL1はオーバーライト時のジッターを5%以上小さくできることがわかった。
【0085】
L1下部保護層8膜厚の好ましい範囲は70nm〜140nm,より好ましい範囲は80nm〜130nmである。L1上部保護層10膜厚の好ましい範囲は95nm〜155nm,より好ましい範囲は105nm〜145nmである。L1記録膜9膜厚の好ましい範囲は実施例1に記載の通りである。
【実施例3】
【0086】
(本発明の情報記録媒体の構成、製法)
図4は、本発明の多層ディスク状情報記録媒体の断面構造を示す模式図である。2層以上の媒体はこのようにして製作した。一例として3層媒体を示す。
【0087】
まず、直径12cm、厚さ0.6mmで表面にトラッキング用の溝を有するポリカーボネイト保護基板30上に、膜厚約80nmのAg98PdCu膜からなるL2反射層29上に膜厚約80nmの(ZnS)80(SiO20膜と膜厚約5nmのCrからなるL2上部保護層28、膜厚約18nmのGeSbTeからなるL2記録膜27、膜厚約5nmのCr4057膜と膜厚約80nmの(ZnS)80(SiO20膜からなるL2下部保護層26を順次形成したものである。
【0088】
その後、紫外線硬化樹脂を用いてトラッキング用の溝をスタンパから転写するフォトポリメリゼーション法(2P法)によって表面にトラッキング用の溝を有するL1−L2間スペーサ層25を形成した。 この上に、L1を形成した。L1−L2間スペーサ層25上に、膜厚約50nmの(ZnS)80(SiO20膜からなるL1最上部保護層24、膜厚約35nmの(Al)膜よりなるL1透明反射層23、膜厚約120nmの(ZnS)80(SiO20膜と膜厚約4nmのAl膜と膜厚約1nmのCr膜からなるL1上部保護層22、膜厚約5nmのGeSbTeからなるL1記録膜21、膜厚約1nmのCr4057膜と膜厚約4nmのAl4057膜と膜厚約125nmの(ZnS)80(SiO20膜からなるL1下部保護層20、を順次形成した。
【0089】
次に先ほどと同様の2P法によりL0−L1間スペーサ層19を形成した。
【0090】
L0−L1間スペーサ層19上に膜厚約50nmの(ZnS)80(SiO20膜からなるL0最上部保護層18、膜厚約35nmの(Al)膜よりなるL0透明反射層17、膜厚約120nmの(ZnS)80(SiO20膜と膜厚約4nmのAl膜と膜厚約1nmのCr膜からなるL0上部保護層16、膜厚約4nmのGeSbTeからなるL0記録膜3、膜厚約1nmのCr4057膜と膜厚約4nmのAl4057膜と膜厚約125nmの(ZnS)80(SiO20膜からなるL0下部保護層15、膜厚約25nmの(ZnS)80(SiO20膜からなるL0最上部保護層14を順次形成した。最後に基板13を貼り併せた。積層膜の形成はマグネトロン・スパッタリング装置により行った。こうして多層ディスク部材を得た。初期化及び、記録・再生方法は実施例1と同様である。このように、片側3層以上にして記録・再生することが可能である。
【実施例4】
【0091】
(情報記録媒体の構成、製法)
実施例1の情報記録媒体の基板1の板厚0.575〜0.596mmの範囲で板厚のみ変えた多層情報記録媒体を作製した。(ディスクE1〜E8)
(基板板厚依存性)
本実施例の情報記録媒体(ディスクE1〜E8)の各レイヤーに3Twの記録信号を記録し、S/N比(シグナル対ノイズ比)を測定した。
【0092】
基板の板厚が厚すぎるとフォーカスがずれるためL1のS/Nが下がり、板厚が薄すぎるとフォーカスがずれL0のS/Nが下がる。したがって、NA0.65の光学系で記録・再生した場合、エラーせずに信号が再生できるため多層情報記録媒体の基板厚は0.578mm以上0.592以下が好ましいことがわかった。さらに環境温度の変動にも適用できるレベルで再生できることから、基板厚さが0.58mm以上0.59mm以下がより好ましい。また、レーザ波長が660nmより短いため、板厚許容量が小さくなっている。従って、最大厚さと最小厚さの差が0.014mm以下であることが好ましく、0.01mm以下であることがより好ましい。
【0093】
本実施例に記載されていない事項については、実施例1〜3、実施例5と同様である。
【実施例5】
【0094】
(情報記録媒体の構成、製法)
実施例1の情報記録媒体のスペーサ層7の厚さを10〜31μmの範囲でスペーサ層厚のみ変えた多層情報記録媒体を作製した。(ディスクF1〜F8)
(基板板厚依存性)
本実施例の情報記録媒体(ディスクF1〜F8)の各レイヤーに3Twの記録信号を記録し、S/N比(シグナル対ノイズ比)を測定した。この結果を表4に示す。
【表4】

【0095】
このように、スペーサ層厚が厚すぎるとフォーカスがずれるためL1のS/Nが下がり、スペーサ層厚が薄すぎるとフォーカスがずれL0のS/Nが下がる。したがって、NA0.65の光学系で記録・再生した場合、エラーせずに信号が再生できるため多層情報記録媒体のスペーサ層厚は13μm以上27μm以下が好ましいことがわかった。さらに環境温度の変動にも適用できるレベルで再生できることから、スペーサ層厚は15μm以上25μm以下がより好ましい。また、レーザ波長が660nmより短いため、スペーサ層厚許容量が小さくなっている。従って、最大厚さと最小厚さの差が14μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましい。
【0096】
本実施例に記載されていない事項については、実施例1〜4と同様である。
【実施例6】
【0097】
(情報記録媒体の構成、製法)
実施例1の情報記録媒体の基板1の板厚を0.094mm、スペーサ層7の厚さを9μmに変えた多層情報記録媒体を作製した。本媒体の作製方法は、実施例3に記載したように保護基板側からL1膜を積層し、次にスペーサ層を2P法にて作製した後、L0膜を積層、基板1を形成した。基板1の形成方法は、スピンコート、2P法のいずれか1つ、これらの組み合わせ、また別の方法でもよい。板厚が実施例7の範囲にあることと好ましい。板厚がずれた場合はS/Nが悪くなるが、記録・再生は可能であった。
【0098】
本実施例に記載されていない事項については、実施例1〜3、7〜8と同様である。
【実施例7】
【0099】
(情報記録媒体の構成、製法)
実施例1の情報記録媒体の基板1の板厚を0.091〜0.097mmの範囲で板厚のみ変えた多層情報記録媒体を作製した。(ディスクH1〜H8)
(基板板厚依存性)
本実施例の情報記録媒体(ディスクH1〜H8)の各レイヤーに3Twの記録信号を記録し、S/N比(シグナル対ノイズ比)を測定した。。
【0100】
基板の板厚が厚すぎるとフォーカスがずれるためL1のS/Nが下がり、板厚が薄すぎるとフォーカスがずれL0のS/Nが下がる。したがって、NA0.85の光学系で記録・再生した場合、エラーせずに信号が再生できるため多層情報記録媒体の基板厚は0.091mm以上0.097mm以下が好ましいことがわかった。さらに環境温度の変動にも適用できるレベルで再生できることから、基板厚さが0.092mm以上0.096mm以下がより好ましい。また、レーザ波長が660nmより短いため、板厚許容量が小さくなっている。従って、最大厚さと最小厚さの差が0.006mm以下であることが好ましく、0.004mm以下であることがより好ましい。
【0101】
本実施例に記載されていない事項については、実施例1〜3、実施例6、8と同様である。
【実施例8】
【0102】
(情報記録媒体の構成、製法)
実施例6の情報記録媒体のスペーサ層7の厚さを7〜13μmの範囲でスペーサ層厚のみ変えた多層情報記録媒体を作製した。(ディスクJ1〜J8)
(基板板厚依存性)本実施例の情報記録媒体(ディスクJ1〜J8)の各レイヤーに3Twの記録信号を記録し、S/N比(シグナル対ノイズ比)を測定した。この結果を表5に示す。
【表5】

【0103】
このように、スペーサ層厚が厚すぎるとフォーカスがずれるためL1のS/Nが下がり、スペーサ層厚が薄すぎるとフォーカスがずれL0のS/Nが下がる。したがって、NA0.85の光学系で記録・再生した場合、エラーせずに信号が再生できるため多層情報記録媒体のスペーサ層厚は7μm以上13μm以下が好ましいことがわかった。さらに環境温度の変動にも適用できるレベルで再生できることから、スペーサ層厚は8μm以上12μm以下がより好ましい。また、レーザ波長が660nmより短いため、スペーサ層厚許容量が小さくなっている。従って、最大厚さと最小厚さの差が6μm以下であることが好ましく、4μm以下であることがより好ましい。
【0104】
本実施例に記載されていない事項については、実施例1〜3、6〜7と同様である。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】本発明による情報記録媒体の一例の断面模式図。
【図2】従来構造の情報記録媒体の断面模式図。
【図3】本発明の情報記録媒体の記録・再生特性評価に用いた記録波形を示す図。
【図4】本発明による情報記録媒体の他の例を示す断面模式図。
【図5】本発明による情報記録媒体の他の例を示す断面模式図。
【符号の説明】
【0106】
1,1′ 基板
2,2′ 下部保護層
3,3′ 記録膜
4,4′ 上部保護層
5,5′ 冷却制御層
6,6′ 反射層
7 貼り合わせ樹脂
8,8′ コントラスト拡大層
14 基板
T ウインド幅(Tw)
Pc クーリングパルスパワーレベル
Pe 中間パワーレベル
Ph 高パワーレベル
Pp プリヒートパワーレベル
P1 パワーが0のレベル
Tc クーリングパルス幅
Tp 第1パルス幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、光の照射によって生じる原子配列変化により情報が記録されるN層の記録膜の情報面と(Nは2以上の整数)、N−1個のスペーサ層とを有し、光入射側の情報面から情報面を数えたとき、前記情報面の透過率が情報面1>情報面2……情報面N−1>情報面Nの関係にあり、かつ前記基板の厚さが0.578mm以上0.592mm以下であることを特徴とする情報記録媒体。
【請求項2】
基板と、光の照射によって生じる原子配列変化により情報が記録されるN層の記録膜の情報面と(Nは2以上の整数)、N−1個のスペーサ層とを有し、光入射側の情報面から情報面を数えたとき、前記情報面の透過率が情報面1>情報面2……情報面N−1>情報面Nの関係にあり、かつ前記スペーサ層の厚さが13μm以上27μm以下であることを特徴とする情報記録媒体。
【請求項3】
基板と、光の照射によって生じる原子配列変化により情報が記録されるN層の記録膜の情報面と(Nは2以上の整数)、N−1個のスペーサ層とを有し、光入射側の情報面から情報面を数えたとき、前記情報面の透過率が情報面1>情報面2……情報面N−1>情報面Nの関係にあり、かつ前記基板の厚さが0.578mm以上0.592mm以下で、前記スペーサ層の厚さが13μm以上27μm以下であることを特徴とする情報記録媒体。
【請求項4】
NA0.65の光学系で記録・再生される情報記録媒体であって、基板と、光の照射によって生じる原子配列変化により情報が記録されるN層の記録膜の情報面と(Nは2以上の整数)、N−1個のスペーサ層とを有し、光入射側の情報面から情報面を数えたとき、前記情報面の透過率が情報面1>情報面2……情報面N−1>情報面Nの関係にあり、かつ前記基板の厚さが0.578mm以上0.592mm以下であることを特徴とする情報記録媒体。
【請求項5】
NA0.65の光学系で記録・再生される情報記録媒体であって、基板と、光の照射によって生じる原子配列変化により情報が記録されるN層の記録膜の情報面と(Nは2以上の整数)、N−1個のスペーサ層とを有し、光入射側の情報面から情報面を数えたとき、前記情報面の透過率が情報面1>情報面2……情報面N−1>情報面Nの関係にあり、かつ前記スペーサ層の厚さが13μm以上27μm以下であることを特徴とする情報記録媒体。
【請求項6】
NA0.65の光学系で記録・再生される情報記録媒体であって、基板と、光の照射によって生じる原子配列変化により情報が記録されるN層の記録膜の情報面と(Nは2以上の整数)、N−1個のスペーサ層とを有し、光入射側の情報面から情報面を数えたとき、前記情報面の透過率が情報面1>情報面2……情報面N−1>情報面Nの関係にあり、かつ前記基板の厚さが0.578mm以上0.592mm以下で、前記スペーサ層の厚さが13μm以上27μm以下であることを特徴とする情報記録媒体。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1つに記載の情報記録媒体において、前記記録膜の膜厚が4nm以上25nm以下であることを特徴とする情報記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−66071(P2006−66071A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−304651(P2005−304651)
【出願日】平成17年10月19日(2005.10.19)
【分割の表示】特願2000−260860(P2000−260860)の分割
【原出願日】平成12年8月25日(2000.8.25)
【出願人】(000005810)日立マクセル株式会社 (2,366)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】