説明

情報読取装置

【課題】 例えば携帯型のハンディスキャナに密着型イメージセンサを用いた場合であっても、ガラス面に傷がつき、情報の読取精度が低下するのを防ぐことが可能な情報読取装置を提供する。
【解決手段】 走行路を形成するフレーム2を有し、フレーム2の一部が走行基準面3として形成され、走行基準面3に沿って情報記録媒体(カード4)がスワイプされることによって情報を読み取る情報読取装置(ハンディスキャナ1)において、光透過性部材(ガラス面5a)を介して情報記録媒体上の画像を撮像する撮像手段(密着型イメージセンサ5)を備えるとともに、光透過性部材の周囲のうち少なくとも一部に、情報記録媒体と光透過性部材の接触を防ぐ接触防止部(リブ9)が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の情報を記録する紙やプラスチックなどの情報記録媒体に記録された情報を読み取る情報読取装置に関するものであって、特に、携帯型の情報読取装置(例えばハンディスキャナ)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、ガイド(カード走行路)内においてカードを手動でスワイプさせて、カードに記録された情報を読み取る手動スワイプ式のハンディスキャナが知られている。なお、本明細書でいう「スワイプ」とは、カード状の情報記録媒体を情報読取装置のガイド(カード走行路)に沿って手動でさっと走らせる動作をいう。
【0003】
手動スワイプ式のハンディスキャナには、二次元バーコード等のカード表面の模様を撮像して画像データを取得するイメージセンサが設けられている。イメージセンサとしては、一般的に、縮小光学型イメージセンサが採用されている(例えば特許文献1参照)。縮小光学型イメージセンサが採用されているのは、被写界深度が深いことから、カードを移動(スワイプ)させることに起因して、読み取り面に対するカードの相対的な距離が多少変位したとしても、焦点を合わせることが容易であるからである。
【0004】
ところが、この縮小光学型イメージセンサを採用した場合には、ある程度の光路長を確保する必要があるため、装置全体が大型化する傾向にある。特に、持ち運び可能な携帯型のハンディスキャナに搭載するイメージセンサとして採用を考えた場合には、不向きである。また、縮小光学型イメージセンサは、例えば密着型イメージセンサなど他のセンサと比べて高価であるため、製品単価が廉価な携帯型のハンディスキャナに搭載するイメージセンサとしては、好ましくない。
【0005】
そこで、密着型イメージセンサを搭載した携帯型のハンディスキャナを考える。密着型イメージセンサは、縮小光学型イメージセンサよりも奥行きが少なく小型であるため、携帯型のハンディスキャナには適している。ただし、被写界深度が浅く、読み取り面(ガラス面)に対するカードの相対的な距離を短くする必要がある。
【0006】
【特許文献1】特開2002−259902号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、密着型イメージセンサを搭載した携帯型のハンディスキャナでは、次のような問題が生ずる。
【0008】
すなわち、上述のとおり、密着型イメージセンサは、被写界深度が浅くガラス面に対するカードの相対的な距離を短くしなければならないことから、カード表面に、ガラスよりも硬質なゴミ等が付いている場合には、ガラス面が傷つき、情報の読取精度が低下してしまうという問題がある。
【0009】
本発明は、このような点に鑑みてなされたものであり、その目的は、例えば携帯型のハンディスキャナに密着型イメージセンサを用いた場合であっても、ガラス面に傷がつき、情報の読取精度が低下するのを防ぐことが可能な情報読取装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以上のような課題を解決するために、本発明は、以下のものを提供する。
【0011】
(1) 走行路を形成するフレームを有し、当該フレームの一部が走行基準面として形成され、当該走行基準面に沿って情報記録媒体がスワイプされることによって情報を読み取る情報読取装置において、光透過性部材を介して前記情報記録媒体上の画像を撮像する撮像手段を備えるとともに、前記光透過性部材の周囲のうち少なくとも一部に、前記情報記録媒体と前記光透過性部材の接触を防ぐ接触防止部が形成されていることを特徴とする情報読取装置。
【0012】
本発明によれば、光透過性部材を介して情報記録媒体上の画像を撮像するカードリーダ等の情報読取装置で、その光透過性部材の周囲のうち少なくとも一部に、情報記録媒体と光透過性部材の接触を防ぐ接触防止部が形成されていることとしたので、光透過性部材に情報記録媒体が接触するのを防ぐことができ、ひいては光透過性部材が傷ついて、情報の読取精度が低下してしまうのを防ぐことができる。
【0013】
ここで、「接触防止部」は、光透過性部材の周囲のうち少なくとも一部に形成されているものであるが、走行路を形成するフレームの一部として形成されていてもよいし、また、このフレームに別途、接触防止部材を固着することによって形成されていてもよいし、その態様の如何は問わない。また、「光透過性部材の周囲のうち少なくとも一部」とは、光透過性部材の形状に沿った周囲全部であってもよいし、その形状に沿った周囲の一部であってもよい。なお、「光透過性部材」は、撮像手段によって情報記録媒体上の画像を撮像する際、光源から照射された光を透過させるものであれば如何なるものであってもよく、例えば石英ガラスやガラス樹脂等が挙げられる。
【0014】
(2) 前記接触防止部は、前記光透過性部材の周囲に亘って形成されていることを特徴とする(1)記載の情報読取装置。
【0015】
本発明によれば、上述した接触防止部は、上述した光透過性部材の周囲に亘って形成されていることとしたので、情報記録媒体と光透過性部材の接触をより確実に防ぐことができ、ひいては情報の読取精度が低下するのを防ぐことができる。
【0016】
(3) 前記走行路は、前記情報記録媒体が排出され、前記情報記録媒体の厚さ以上の第1隙間を有する排出部と、前記情報記録媒体が挿入され、前記第1隙間よりも幅が広い第2隙間を有する挿入部と、前記挿入部と前記排出部を連通させるテーパ状の連通部と、から形成され、前記撮像手段は、前記排出部に配設されるとともに、前記接触防止部は、前記光透過性部材と前記連通部との間に形成されていることを特徴とする(1)又は(2)記載の情報読取装置。
【0017】
本発明によれば、上述した走行路は、情報記録媒体の厚さ以上の第1隙間を有する排出部と、この第1隙間よりも幅が広い第2隙間を有する挿入部と、これら排出部と挿入部とを連通させるテーパ状の連通部と、から形成されている。そして、上述した撮像手段は、この排出部に配設されるとともに、接触防止部は、光透過性部材とこの連通部との間に形成されていることとしたので、情報記録媒体をスワイプし易いガイド形状を保ちつつ、情報記録媒体と光透過性部材の接触を防ぐことができる。
【0018】
すなわち、まず、情報記録媒体は、幅がある程度広い第2隙間を有する挿入部から走行路に挿入されるので、スワイプする前準備として情報記録媒体を走行路にスムーズにセットすることができる。そして、走行路にセットされた情報記録媒体は、テーパ状の連通部に沿って、排出部に配設された撮像手段に向かって移動していくので、走行路において、情報記録媒体をスムーズにスワイプすることができる。最後に、撮像手段と対向する位置に差し掛かった情報記録媒体は、第2隙間よりも幅が狭くなっている第1隙間を移動していくので、光透過性部材に対する情報記録媒体の相対的な距離を短くし、撮像手段によって情報記録媒体上の画像を適切に撮像することができる。
【0019】
このように、本発明に係る情報読取装置では、情報記録媒体をスワイプし易いガイド形状が保たれているので、使用者の利便性を向上させた上で、情報記録媒体と光透過性部材の接触を防ぎ、ひいては情報の読取精度の低下を防ぐことができる。
【0020】
(4) 前記撮像手段と対向する位置には、弾性部材からなるローラが設けられ、前記撮像手段は、前記情報記録媒体を前記接触防止部と前記ローラで挟持することによって定まった焦点距離に基づき、前記情報記録媒体上の画像を撮像することを特徴とする(1)から(3)のいずれか記載の情報読取装置。
【0021】
本発明によれば、上述した撮像手段と対向する位置に、弾性部材からなるローラを設け、撮像手段による撮像は、このローラと上述した接触防止部とで情報記録媒体を挟持することによって定まった焦点距離に基づいて行われるようにしたので、情報の読取精度を向上させることができる。
【0022】
すなわち、接触防止部の高さ(突出させる高さ)を適宜調整することによって、この接触防止部とローラに挟まれた情報記録媒体について、光透過性部材に対する相対的な距離を、所望の距離とすることができる。そして、この距離を、焦点距離と一致させることで、撮像手段による撮像を精度良く行うことができ、ひいては情報の読取精度を向上させることができる。
【0023】
なお、ここでいう「ローラ」は弾性部材からなるので、情報記録媒体の厚さが多少変わったとしても、その変化分を弾性部材によって吸収することができ、その結果、光透過性部材に対する情報記録媒体の相対的な距離を所望の距離に保つことができ、ひいては情報の読取精度を向上させることができる。
【発明の効果】
【0024】
以上説明したように、本発明によれば、撮像手段の一部として設けられた光透過性部材の周囲のうち少なくとも一部には、その光透過性部材と情報記録媒体の接触を防ぐ接触防止部が形成されていることとしたので、光透過性部材に傷がつくことに起因して、情報の読取精度が低下するのを防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0026】
図1は、本発明の実施の形態に係るハンディスキャナ1を上から見たときの概要を示す模式図である。また、図2は、本発明の実施の形態に係るハンディスキャナ1を横から見たときの概要を示す模式図である。特に、図2(a)は、ハンディスキャナ1をスワイプ方向と直角の方向から見たときの概要を示しており、図2(b)は、ハンディスキャナ1をスワイプ方向から見たときの概要を示している。
【0027】
図1及び図2において、ハンディスキャナ1は、断面形状がほぼコ字形状をなし(図2(b)参照)、ガイド(カード走行路)を形成するフレーム2と、このフレーム2の一部(底部)として形成される走行基準面3と、カード4上の画像を撮像する密着型イメージセンサ5と、密着型イメージセンサ5によって撮像された画像の画像データを記憶する画像メモリ6と、画像メモリ6と電気的に接続され、画像メモリ6から取り込んだデータに対して様々な処理を施す画像処理手段7と、カード4が密着型イメージセンサ5の前面(図1では右側)を通過するときに、カード4を圧送しながら回転するパッドローラ8と、を有している。
【0028】
密着型イメージセンサ5は、ガラス面5aを介して光源5bから照射された光をカード4に当て、カード4からの反射光を、例えばフォトダイオードなどの受光素子5cで受光することによって、カード4上の画像を撮像するようにしている。
【0029】
カード走行路を形成するフレーム2は、カード4が挿入される挿入部11と、カード4が排出される排出部12と、挿入部11と排出部12とを連通させるテーパ状の連通部13と、から形成されている。また、挿入部11が有する第2隙間は、排出部12が有する第1隙間よりも幅が広くなっている。ここでは、第1隙間がカード4の厚さの約1.5倍、第2隙間がカード4の厚さの約5倍となっている。これにより、スワイプする前準備としてカード4をフレーム2にスムーズにセットすることができる。
【0030】
また、挿入部11は、カード4のカード全長と同程度の長さを有している。これにより、カード4を、カード走行路に沿ってほぼ真っ直ぐにした状態で、挿入部11から連通部13へとスワイプすることができ、ひいては情報の読取精度を向上させることができる。
【0031】
すなわち、図3(a)に示すように、挿入部11をカード4のカード全長と同程度の長さにした場合には、カード4がカード走行路に沿ってほぼ真っ直ぐの状態になる一方で、図3(b)に示すように、挿入部11がカード4のカード全長よりも極端に短い場合には、カード4がカード走行路に沿ってほぼ真っ直ぐの状態にならないことがある。後者の状態で、カード4が連通部13へスワイプされた場合には、密着型イメージセンサ5によって撮像されたカード4上の画像に歪が生じる虞があり、その結果、情報の読取精度が低下する可能性がある。このように、挿入部11が、カード4のカード全長と同程度の長さを有することによって、情報の読取精度を向上させている。
【0032】
ここで、図1及び図2において、ガラス面5aと連通部13との間(両者の境界付近)には、カード4とガラス面5aの接触を防ぐ「接触防止部」の一例として、リブ9が形成されている。リブ9は、ハンディスキャナ1の左側のフレーム2の一部として一体的に形成され、また、長方形状のガラス面5aの周囲のうち、一部(一辺)に近接するように形成されている(図2(a)参照)。さらに、リブ9は、テーパ状の連通部13の傾斜に沿って、カード4をスムーズにスワイプできるように、連通部13と連続的に繋がっている。
【0033】
以上説明したように、本発明の実施の形態に係るハンディスキャナ1は、カード4をスワイプし易いガイド形状を保ちつつ、カード4とガラス面5aの接触を防ぐことができる。すなわち、図1に示すカード4が、点線の位置まで移動したときであっても、所定の高さに調整されたリブ9の存在により、カード4がガラス面5aに接触するのを防ぐことができ、ひいては情報の読取精度低下を防ぐことができる。
【0034】
なお、本実施形態では、リブ9は、排出部12における左側のフレーム2より約0.4mm突出して設けられているが、このリブ9の高さを適宜調整することによって、ガラス面5aに対するカード4の相対的な距離を所望の距離とすることができる。
【0035】
図4を用いて詳細に説明すると、連通部13から排出部12へと差し掛かったカード4は、排出部12における左側のフレーム2(ガラス面5a)より突出したリブ9によって、ガラス面5aから離反する方向への力を受ける(図中の矢印参照)。一方で、密着型イメージセンサ5と対向する位置にあるパッドローラ8によって、ガラス面5aと接触する方向への力を受ける(図中の矢印参照)。その結果、カード4は、ガラス面5aの中心(受光素子5cの前方)において、ガラス面5aから距離X(図4参照)だけ離れた状態でスワイプされる。このように、リブ9の高さを適宜調整することによって、リブ9とパッドローラ8に挟まれたカード4について、ガラス面5aに対する相対的な距離Xを所望の距離とすることができる。そして、この距離Xを焦点距離と一致させることで、撮像手段による撮像を精度良く行うことができ、ひいては情報の読取精度を向上させることができる。
【0036】
また、本実施形態では、距離Xは0.2mmとなるように、リブ9の高さを調節している。ここで、距離Xを0.2mmとするべく、例えば密着型イメージセンサ5をより深いところへ埋め込む(図4でいえば、左に移動させる)ことも考えられる。しかし、ガラス面5aと周囲ガイド14(ガラス面5aの周囲であって、リブ9が形成されていない領域を示す。面積等は限定されない。図2参照)との間に段差が生じ、スワイプ時の引っかかり感やカードキズの原因となる。そこで、本発明では、リブ9の高さを調整することによって、距離Xを0.2mmに保つようにしている。
【0037】
また、パッドローラ8は弾性部材からなるので、カード4の厚さが多少変わったとしても、その変化分をパッドローラ8によって吸収することができ、その結果、ガラス面5aに対する相対的な距離Xを一定に保つことができる。
【0038】
また、本実施形態では、連通部13をテーパ形状としたが、例えば、排出部12の一部をテーパ形状とすることもできる。これにより、カード4を挿入部11からだけでなく、排出部13からも取り込むことができる。そして、フレーム2と密着型イメージセンサ5の間隔が一定になるのであれば、カード4をスワイプさせても、フレーム2を移動させても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明に係る情報読取装置は、撮像手段の一部として設けられた光透過性部材に傷がつくことに起因して、情報の読取精度が低下するのを防ぐことが可能なものとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の実施の形態に係るハンディスキャナを上から見たときの概要を示す模式図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るハンディスキャナを横から見たときの概要を示す模式図である。
【図3】挿入部にカードが挿入される様子を説明するための説明図である。
【図4】ガラス面に対するカードの相対的な距離を所望の距離とする様子を説明するための説明図である。
【符号の説明】
【0041】
1 ハンディスキャナ
2 フレーム
3 走行基準面
4 カード
5 密着型イメージセンサ
5a ガラス面
5b 光源
5c 受光素子
6 画像メモリ
7 画像処理手段
8 パッドローラ
9 リブ
11 挿入部
12 連通部
13 排出部
14 周囲ガイド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行路を形成するフレームを有し、当該フレームの一部が走行基準面として形成され、当該走行基準面に沿って情報記録媒体がスワイプされることによって情報を読み取る情報読取装置において、
光透過性部材を介して前記情報記録媒体上の画像を撮像する撮像手段を備えるとともに、前記光透過性部材の周囲のうち少なくとも一部に、前記情報記録媒体と前記光透過性部材の接触を防ぐ接触防止部が形成されていることを特徴とする情報読取装置。
【請求項2】
前記接触防止部は、前記光透過性部材の周囲に亘って形成されていることを特徴とする請求項1記載の情報読取装置。
【請求項3】
前記走行路は、前記情報記録媒体が排出され、前記情報記録媒体の厚さ以上の第1隙間を有する排出部と、
前記情報記録媒体が挿入され、前記第1隙間よりも幅が広い第2隙間を有する挿入部と、
前記挿入部と前記排出部を連通させるテーパ状の連通部と、から形成され、
前記撮像手段は、前記排出部に配設されるとともに、前記接触防止部は、前記光透過性部材と前記連通部との間に形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の情報読取装置。
【請求項4】
前記撮像手段と対向する位置には、弾性部材からなるローラが設けられ、
前記撮像手段は、前記情報記録媒体を前記接触防止部と前記ローラで挟持することによって定まった焦点距離に基づき、前記情報記録媒体上の画像を撮像することを特徴とする請求項1から3のいずれか記載の情報読取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−11538(P2007−11538A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−189441(P2005−189441)
【出願日】平成17年6月29日(2005.6.29)
【出願人】(000002233)日本電産サンキョー株式会社 (1,337)
【Fターム(参考)】