説明

情報通信システムおよび情報通信方法

【課題】ネットワーク上の品質劣化の原因となる装置を、短時間に効率よく特定する。
【解決手段】複数の情報端末および複数の中継装置のそれぞれに、階層構造化されたIPアドレス空間において階層を識別する階層識別子が含まれるIPアドレスが付与され、複数の情報端末および複数の中継装置は、階層識別子の階層構造に従う構成で接続され、情報サーバ装置は、階層識別子の階層構造において最上位階層の中継装置に接続されており、情報端末は、情報サーバ装置のIPアドレスを通信先とするパケットを送信し、情報サーバ装置は、複数の中継装置のそれぞれを識別する中継装置識別情報と、その中継装置に付与されたIPアドレスに含まれる階層識別子とが対応付けられて記憶され、中継装置を介して中継され送信されるパケットを受信し、受信したパケットの送信元IPアドレスに含まれる階層識別子に対応付けられた中継装置識別情報を読み出す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、階層構造化されたIPアドレス空間において階層を識別する階層識別子が含まれるIPアドレスが付与された情報端末が、中継装置を介して情報サーバ装置と通信を行う情報通信システムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、個々の情報端末に付与されたIPアドレスによって通信先の情報端末を識別し、情報の送受信を行うIPネットワークが発達している。このようなIPネットワークでは、文字情報のみならず、画像、音声、動画など様々なコンテンツ情報が配信されており、音声や映像などのストリーミング配信を行う伝送プロトコルとしてRTP(Real-time Transport Protocol)などが広く利用されている。
このような高度に発達したIPネットワークにおいて、ネットワーク上のいずれかの区間に故障や輻輳などの異常が発生し、転送遅延やパケットロスが発生して品質が劣化している場合、IPネットワークが広範であればあるほど、また接続されたコンピュータ装置が多ければ多いほど、その品質劣化区間を特定するのは困難である。品質劣化区間の特定方法としては、例えば、ネットワーク上に設置されるルータごとに負荷状況を計測していく方法や、ネットワーク上に設置される各情報端末にpingやtracerouteを送信し、その応答に基づいて品質劣化区間の切り分けを行う方法などが考えられる。また、品質劣化区間の特定方法として、特許文献1には、ネットワーク上の定められたポイントに品質計測サイトを配置して、その品質計測サイトのそれぞれと通信を行うことで、品質劣化区間を特定する方法が提案されている。特許文献2には、このようなIPネットワークにおける品質の測定を行う技術が記載されている。
【0003】
【特許文献1】特開2007−36839号公報
【特許文献2】特開2007−221318号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ルータごとの負荷状況を計測することや、pingやtracerouteの応答によって品質劣化区間の特定を行う方法では、品質劣化区間の特定に時間がかかるとともに、ユーザの経験やスキルによって、品質劣化区間の特定を行うまでの時間や、その特定の信用性などにバラツキがでる場合がある。特許文献1に示される技術においては、品質劣化区間の特定のために複数の品質測定サイトと通信を行う必要があるためネットワーク負荷が増え、またその近傍のルータや情報端末のIPアドレスを管理しているため、情報端末のIPアドレスが変更された場合には各情報端末に対応するIPアドレスを変更して管理する必要があり、運用負荷がかかる。
【0005】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたもので、ネットワーク上の品質劣化区間を、短時間に効率よく特定することを可能とする情報通信システムおよび情報通信方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明は、IPアドレスが付与される複数の情報端末と、IPアドレスが付与され、情報端末が送受信するパケットを中継する複数の中継装置と、IPアドレスが付与され、中継装置を介して情報端末とパケットを送受信する情報サーバ装置と、を備えた情報通信システムであって、複数の情報端末および複数の中継装置のそれぞれに付与されるIPアドレスは、階層構造化されたIPアドレス空間において階層を識別する階層識別子が含まれるIPアドレスであり、かつ、複数の情報端末および複数の中継装置は、階層構造に従う構成で接続され、情報サーバ装置は、階層構造において最上位階層の中継装置に接続されており、情報端末は、自身に付与されたIPアドレスを送信元IPアドレスとし、情報サーバ装置に付与されたIPアドレスを送信先とするパケットを送信する端末パケット送信部を備え、情報サーバ装置は、複数の中継装置のそれぞれを識別する中継装置識別情報と、それぞれの中継装置に付与されたIPアドレスに含まれる階層識別子とが対応付けられて記憶されている階層識別子記憶部と、中継装置を介して送信されるパケットを受信するサーバパケット受信部と、サーバパケット受信部が受信したパケットの送信元IPアドレスに含まれる階層識別子に対応付けられた中継装置識別情報を、階層識別子記憶部から読み出す中継装置判定部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
また、本発明は、上述の情報サーバ装置の、サーバパケット受信部は、複数の情報端末から送信されるパケットを受信し、中継装置判定部は、階層識別子記憶部に記憶された階層識別子のうち、最上位階層の階層識別子から下位階層の階層識別子に向けて、順番に、階層識別子が、サーバパケット受信部が受信する複数のパケットのそれぞれの送信元IPアドレスに含まれる階層識別子を下位階層として包含するか否かを判定し、複数のパケットのそれぞれの送信元IPアドレスに含まれる階層識別子の全てを下位階層として包含する階層識別子のうち最下位階層の階層識別子に対応付けられた中継装置識別情報を、階層識別子記憶部から読み出すことを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、上述の情報端末は、階層構造において最上位階層の中継装置に接続される対向サーバ装置から送信されるパケットを受信する端末パケット受信部と、端末パケット受信部が受信するパケットのパケットヘッダ情報に基づいて、パケットの品質劣化を数値で示す品質情報を算出する端末品質算出部と、品質情報に対応する品質閾値情報が予め記憶されている端末品質閾値記憶部と、品質算出部が算出する品質情報と、品質閾値記憶部に記憶されている品質閾値情報とを比較して、品質情報が示す値が、品質閾値情報が示す値を超えているか否かを判定する端末品質異常判断部と、をさらに備え、端末パケット送信部は、端末品質異常判断部によって、品質情報が示す値が、品質閾値情報が示す値を超えていると判定された場合に、異常があったことを示す情報を含み、自身に付与されたIPアドレスを送信元IPアドレスとし、情報サーバ装置に付与されたIPアドレスを送信先とするパケットを送信することを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、上述の情報通信システムは、階層構造において最上位階層の中継装置に接続される品質測定器をさらに備え、品質測定器は、情報端末から送信されるパケットを受信する測定器受信部と、測定器受信部が受信するパケットのパケットヘッダ情報に基づいて、パケットの品質劣化を数値で示す品質情報を算出する測定器品質算出部と、品質情報に対応する品質閾値情報が予め記憶されている測定器品質閾値記憶部と、測定器品質算出部が算出する品質情報と、測定器品質閾値記憶部に記憶されている品質閾値情報とを比較して、品質情報が示す値が、品質閾値情報が示す値を超えているか否かを判定する測定器品質異常判断部と、測定器品質異常判断部によって、品質情報が示す値が、品質閾値情報が示す値を超えていると判定された場合に、異常があったことを示す情報と、測定器受信部が受信したパケットの送信元IPアドレスとを含む品質異常情報パケットを、情報サーバ装置に送信する測定器パケット送信部と、を備えることを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、IPアドレスが付与される複数の情報端末と、IPアドレスが付与され、情報端末が送受信するパケットを中継する複数の中継装置と、IPアドレスが付与され、中継装置を介して情報端末とパケットを送受信する情報サーバ装置と、を備えた情報通信システムにおける情報通信方法であって、複数の情報端末および複数の中継装置のそれぞれに付与されるIPアドレスは、階層構造化されたIPアドレス空間において階層を識別する階層識別子が含まれるIPアドレスであり、かつ、複数の情報端末および複数の中継装置は、階層構造に従う構成で接続され、情報サーバ装置は、複数の中継装置のそれぞれを識別する中継装置識別情報と、それぞれの中継装置に付与されたIPアドレスに含まれる階層識別子とが対応付けられて記憶されている階層識別子記憶部を備え、階層構造において最上位階層の中継装置に接続されており、情報端末の、端末パケット送信部が、自身に付与されたIPアドレスを送信元IPアドレスとし、情報サーバ装置に付与されたIPアドレスを送信先とするパケットを送信するステップと、情報サーバ装置の、サーバパケット受信部が、中継装置を介して送信されるパケットを受信するステップと、中継装置判定部が、サーバパケット受信部が受信したパケットの送信元IPアドレスに含まれる階層識別子に対応付けられた中継装置識別情報を、階層識別子記憶部から読み出すステップと、を備えることを特徴とする情報通信方法である。
【発明の効果】
【0011】
以上説明したように、本発明によれば、複数の情報端末および複数の中継装置のそれぞれに、階層構造化されたIPアドレス空間において階層を識別する階層識別子が含まれるIPアドレスが付与され、複数の情報端末および複数の中継装置は、階層識別子の階層構造に従う構成で接続され、情報サーバ装置は、階層識別子の階層構造において最上位階層の中継装置に接続されており、情報端末は、自身に付与されたIPアドレスを送信元IPアドレスとし、情報サーバ装置のIPアドレスを通信先とするパケットを送信し、情報サーバ装置は、複数の中継装置のそれぞれを識別する中継装置識別情報と、その中継装置に付与されたIPアドレスに含まれる階層識別子とが対応付けられて記憶され、中継装置を介して中継され送信されるパケットを受信し、受信したパケットの送信元IPアドレスに含まれる階層識別子に対応付けられた中継装置識別情報を読み出すようにしたので、情報端末から送信されるパケットの送信元IPアドレスに含まれる階層識別子に対応する階層識別子を付与された中継装置を判定することができ、これにより、パケットを送信した情報端末に対応する中継装置を特定することが可能となる。
【0012】
また、本発明によれば、情報サーバ装置は、複数の情報端末から送信されるパケットを受信し、予め記憶された階層識別子のうち、最上位階層の階層識別子から下位階層の階層識別子に向けて順番に、パケット受信部が受信する複数のパケットの送信元IPアドレスに含まれる階層識別子を下位階層として包含するか否かを判定し、送信元IPアドレスに含まれる階層識別子を下位階層として包含する最下位階層の階層識別子に対応付けられた中継装置識別情報を読み出すようにしたので、情報端末から送信されるパケットの送信元IPアドレスに含まれる階層識別子に対応する階層識別子を付与された中継装置を効率よく特定することができ、パケットを送信した情報端末に対応する中継装置を特定する処理負荷を軽減し、特定するまでの時間を短縮することが可能となる。
【0013】
また、本発明によれば、情報端末は、階層構造において最上位階層の中継装置に接続される対向サーバ装置から送信されるパケットのパケットヘッダ情報に基づいて、パケットの転送遅延時間または損失率のいずれかを数値で示す品質情報を算出し、予め記憶されている品質閾値情報と比較して、品質情報が示す値が、品質閾値情報が示す値を超えている場合に、情報サーバ装置に、異常があったことを示す情報を含むパケットを送信するようにしたので、情報サーバ装置は、異常があった際に送信されるパケットを受信して、そのパケットの送信元に対応する中継装置を判定することができ、これにより、品質劣化の原因となる中継装置を効率よく特定することが可能となる。また、これによれば、例えば、スイッチ等のIPアドレスを持たない周辺装置により品質劣化が起きている場合にも、その原因となる装置を特定できる。
【0014】
また、本発明によれば、階層構造において最上位階層の中継装置に接続される品質測定器が、情報端末から送信されるパケットを受信し、受信するパケットのパケットヘッダ情報に基づいて、パケットの転送遅延時間または損失率のいずれかを数値で示す品質情報を算出し、予め記憶されている品質閾値情報と比較して、品質情報が示す値が、品質閾値情報が示す値を超えている場合に、異常があったことを示す情報を含み、受信したパケットの送信元IPアドレスを送信元IPアドレスとし、情報サーバ装置のIPアドレスを送信先とするパケットを送信するようにしたので、情報サーバ装置は、異常があった際に品質測定器から送信されるパケットを受信して、異常が検出されたパケットの送信元の中継装置を判定することができ、これにより、品質劣化の原因となる中継装置を効率よく特定することが可能となる。また、これにより、階層構造において最上位階層の中継装置に接続される品質測定器に品質情報を算出する機能部を備えさせることで、複数の情報端末のそれぞれに、品質情報を算出する機能部を備えさせることなく、情報端末に負荷をかけずに品質劣化の原因となる中継装置の特定を行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。
<ネットワーク構成>
図1は、階層化されたIPv6アドレス空間の概念を示す図である。IPv6アドレス空間において、プレフィックス(ネットワークアドレス)とホストアドレスとを識別するためのサブネットマスクは、例えば、アドレスの後に「/(サブネットマスク数値)」を連結して表記される。例えば、「3ffe:1234:5678::/48」のように表され、この場合、アドレスの先頭から48ビット(3ffe:1234:5678)がプレフィックスである。
【0016】
IPv6アドレス空間では、階層構造によるアドレス割り当てが可能である。図1の(b)に示すように、例えば、サブネットマスクがa(以下、「/a」と表す。また、図1の説明において小文字の英文字はサブネットマスクを示す数値とし、その数値はa<b<c<<<x<y<zの大小関係にあるとする。)であるプレフィックスのアドレス空間を第1階層とすると、「/a」のアドレス空間の特定のプレフィックスは、「/b」のアドレス空間のプレフィックスによって第2階層に分割される。同様に、「/b」のアドレス空間の特定のプレフィックスは、「/c」のアドレス空間のプレフィックスによって第3階層に分割される。
【0017】
すなわち、図1の(a)に示されるように、例えば、「/z」のアドレス空間の特定のプレフィックス(z−1、z−2)は、その上位の「/y」(y−1)のアドレス空間に包含される。同様に、「/z」のアドレス空間の特定のプレフィックス(z−3、z−4)は、その上位の「/y」(y−2)のアドレス空間に包含される。ここで、「/z」のアドレス空間の特定のプレフィックス(z−1、z−2、z−3、z−4)は、上位のプレフィックス「/x」(x−1)のアドレス空間に包含される。
【0018】
図2に、本実施形態における情報通信システムを、通信事業者網に適用する概念の例を示す。本実施形態では、図1で示したようなIPv6アドレス空間における階層化されたアドレスを、情報通信システムに接続される各装置に設定する。本実施形態では、対向サーバ500および対向端末510と、品質管理サーバ400とが、それぞれルータ(ブロック間ルータ)330−1に接続される。ここで、対向サーバ500は、例えば、情報端末からの要求に応じてRTPおよびRTCP(RTP Control Protocol)による動画配信を行う映像配信サーバ装置である。対向端末510は、例えば、P2P通信により情報の送受信を行うユーザ端末である。品質管理サーバ400は、情報通信システムのネットワークの品質を管理するサーバ装置である。
【0019】
ルータ320−1、ルータ320−2には、図2の(a)に示されるように、「/21」のアドレス空間における特定のプレフィックスを8分割した「/24」の網全体を集約するアドレス空間におけるプレフィックスのうち、特定のプレフィックスが付与される。「/24」のアドレス空間における特定のプレフィックスは、下位層となる「/32」のアドレス空間を包含する。図2では、ルータ320−1のアドレス空間は、ルータ(エッジルータ)310−1とルータ310−2とのアドレス空間を下位層として包含している。
【0020】
同様に、ルータ310−1の「/32」のアドレス空間は、ルータ(ホームゲートウェイ)300−1と、ルータ300−2とのアドレス空間を下位層として包含している。ルータ300−1は、品質測定器100−1とユーザ端末200−1とに接続され、ユーザのアドレス空間を提供する。品質測定器100−1は、対向サーバ500または対向端末510とユーザ端末200−1との間で送受信されるパケットを監視し、その品質を測定する。ユーザ端末200−1は、対向サーバ500から送信される情報を受信するコンピュータ装置であり、例えば、対向サーバ500からRTPで配信される動画を受信して表示するセットトップボックス(STB)である。
【0021】
図3に、本実施形態における情報通信システムが備えるコンピュータ装置と、各ルータに設定されるプレフィックスの例を示す。本実施形態における情報通信システムは、対向サーバ500と品質管理サーバ400とが接続されたルータ330を第1階層として、ルータ320−1と、ルータ320−2とが第2階層に、ルータ310−1と、ルータ310−2と、ルータ310−3と、ルータ310−4とが第3階層に、ルータ300−1と、ルータ300−2と、ルータ300−3と、ルータ300−4と、ルータ300−5と、ルータ300−6と、ルータ300−7と、ルータ300−8とが第4階層に構成される。第4階層のルータは、それぞれユーザに利用されるユーザ端末200と、対向サーバ500と自身の配下のユーザ端末200とのRTP通信の品質を測定する品質測定器100との情報端末に接続される。
【0022】
図4は、本実施形態における情報通信システムにおいて、対向サーバ500から送信されるパケットの流れを示す図である。なお、ユーザ端末200−1と通信を行うコンピュータ装置は、対向サーバ500の他に、例えばルータ330−1のアドレス空間の外部のアドレス空間における対向端末510などでも良い。
対向サーバ500または対向端末510から送信され、ユーザ端末200−1のIPアドレスを宛先とするパケットは、ルータ330−1によってルータ320−1に転送され、ルータ320−1によってルータ310−1に転送され、ルータ300−1を介して20−1に送信される。同様に、ユーザ端末200−2を宛先とするパケットは、ルータ330−1、ルータ320−1、ルータ310−1の順に転送され、ルータ300−2を介してユーザ端末200−2に送信される。同様に、ユーザ端末200−3を宛先とするパケットは、ルータ330−1、ルータ320−1、ルータ310−2の順に転送され、ルータ300−3を介してユーザ端末200−3に転送される。同様に、ユーザ端末200−5を宛先とするパケットは、ルータ330−1、ルータ320−2、ルータ310−3の順に転送され、ルータ300−5を介してユーザ端末200−5に転送される。このように、対向サーバ500からユーザ端末200に送信されるパケットは、ピラミッド状に形成されたネットワーク網の最上位層にある通信事業者側(対向サーバ500)から、最下位層にあるユーザ側(ユーザ端末200)に向かって、上位層のルータから下位層のルータへの転送が繰り替えされてユーザ端末200に到達する。
【0023】
図5は、本実施形態における品質測定器100と対向サーバ500とが情報を送受信する概念を示す図である。図5の(a)に示されるように、品質測定器100は、タップ301によってレイヤー1のレベルで分岐される、対向サーバ500からユーザ端末200にRTP送信される音声映像トラフィックを監視する。ここで、品質測定器100は、対向サーバ500から送信される音声映像トラフィックにおけるRTPパケットおよびRTCPパケットを監視し、リアルタイムに品質測定を行う。
【0024】
また、図5の(b)に示されるように、品質測定器100は、受信するRTPパケットに含まれる情報に基づいて、例えば、パケットロス、リオーダ、遅延、ジッタなどのネットワーク劣化値や、R値、MDI値などの客観評価値などの通信の品質劣化を示す品質情報を算出する。後述するように、品質測定器100は、算出した品質情報と、自身に予め記憶されている閾値とを比較して、算出した品質情報が閾値を超過しているか否かを判定して品質劣化を検出し、品質劣化を検出した場合は、アラーム通知(例えば、SNMPトラップ)を、ルータ300を介して品質管理サーバ400に送信する。品質管理サーバ400は、ネットワークを介して接続される複数の品質測定器100から送信されるアラーム通知を受信し、集約して表示部に表示する。ここで、品質管理サーバ400は、例えば、品質測定器100のIPアドレス、測定対象パケットの送信元/送信IPアドレス、アラーム説明、タイムスタンプなどを表示する。
【0025】
<ブロック構成>
図6は、本実施形態における情報通信システムが備える品質測定器100および品質管理サーバ400のブロック構成を示す図である。
品質測定器100は、対向サーバ500からユーザ端末200に送信されるパケットを取得し、そのパケットの通信品質を測定するコンピュータ装置であり、パケット受信部110と、品質算出部120と、品質異常判断部130と、品質閾値情報管理DB140と、パケット送信部150とを備えている。
【0026】
パケット受信部110は、対向サーバ500からユーザ端末200に送信されるパケットを受信し、受信したパケットのパケットヘッダ情報を読み出す。
品質算出部120は、パケット受信部110が受信したパケットから読み出されたパケットヘッダ情報に基づいて品質測定値を算出し、算出した品質測定値に基づいてパケットの品質劣化を数値で示す品質情報を生成する。図8は、品質算出部120が測定する品質測定値の例を示す図である。品質算出部120は、例えば、パケットロス、リオーダ、遅延、ジッタなどの測定値に基づいて品質劣化を数値で示す品質情報を算出する。
【0027】
パケットロスは、RTPパケットのヘッダフィールド「sequence number」をソースとして、RTPパケット受信ごとに、受信したRTPパケットのシーケンス番号が、受信済みの最新のRTPパケットのシーケンス番号と連続していない場合、パケットロスと判定され、ロスしたパケット数が品質測定値として記憶カウントされる。なお、品質算出部120は、ここでパケットロスと判定されたシーケンス番号を持つRTPパケットを、その後に受信した場合には、リオーダとみなし、品質測定値のカウントを減らす。品質算出部120は、このようにカウントしたパケットロスに基づいて、一定時間(T)における全フレーム数に対する品質測定値(フレーム数)の割合を、品質情報として算出する。
【0028】
リオーダは、RTPパケットのヘッダフィールド「sequence number」をソースとして、RTPパケット受信ごとに、特定のシーケンス番号のパケットがパケットロスとカウントされた後に、そのシーケンス番号をもつRTPパケットが受信された場合に、リオーダとして品質測定値をカウントする。品質算出部120は、このようにカウントしたリオーダに基づいて、一定時間(T)における全フレーム数に対する品質測定値(フレーム数)の割合を、品質情報として算出する。
【0029】
遅延は、RTCP SR(Real-time Transport Control Protocol Sender Report)パケットのヘッダフィールド「DLSR」(delay since last SR)をソースとして、RTCPパケットを双方向から受信するごとに、RTCP SRを受信した時間と、その次のRTCP SRを受信した時間との差分から、RTCPSRのDLSR(装置処理時間)を減算し、品質測定器100とユーザ端末200との間のパケットの往復遅延を算出する。さらに品質測定器100と対向サーバ500との間のパケットの往復遅延も同様の手順で算出し、それらを足して2で割ることで、エンドエンドの片方向遅延を測定することが可能である。品質算出部120は、一定時間(T)における遅延の測定値の平均値を、品質情報として算出する。
【0030】
ジッタは、RTPパケットのヘッダフィールド「timestamp」をソースとして、RTPパケット受信ごとに、受信したRTPパケットのタイムスタンプと、受信済みの最新のRTPパケットのタイムスタンプとの差分を元に、RFC1889(RTP)に記載されるRTPパケット インターバル時間の統計的分散の見積もりに基づいて算出することが可能である。品質算出部120は、一定時間(T)におけるジッタの測定値の平均値を、品質情報として算出する。
【0031】
品質算出部120は、このように算出したパケットロス、遅延、ジッタ、リオーダのそれぞれの品質情報をフィールドとして含む、図7の(a)に示されるようなデータ構造をもつ品質情報テーブルを生成する。図7は、本実施形態において各機能部が送受信するデータの例を示す図である。図7における各データ例においては、縦の列をフィールド、横の列をレコード、1以上のレコードを含む集合をテーブルとする。図7に示されるデータの上段はフィールド名を意味する。
【0032】
図6に戻り、品質閾値情報管理DB140は、本実施形態の情報通信システムを管理する通信事業者により、品質情報の閾値を示す情報を含む品質閾値情報テーブルが記憶される記憶部である。図7の(b)は、品質閾値情報テーブルのデータ構造を示す図である。
図6に戻り、品質異常判断部130は、品質算出部120が生成する品質情報テーブルと、品質閾値情報管理DB140から読み出す品質閾値情報テーブルとを比較して、それぞれの対応するフィールドに含まれる値を比較し、品質情報テーブルに含まれる各値が、品質閾値情報テーブルに含まれる各値を超過するか否かを判定する。そして、品質異常判断部130は、品質情報テーブルに含まれる値が、品質閾値情報テーブルに含まれる値を超過すると判定したフィールドについて、異常を検出したと判定し、異常があったことを示す情報であるアラーム種別を生成する。そして、品質異常判断部130は、異常を検出した時刻を示す時刻情報と、生成したアラーム種別とを含む品質異常情報テーブルを生成する。ここで、品質異常判断部130は、複数のフィールドに異常を検出した場合は、アラーム種別には複数のフィールドについて異常を検出したことを示す情報が含まれる品質異常情報テーブルを生成する。
【0033】
パケット送信部150は、品質異常判断部130が生成した品質異常情報テーブルをペイロードに埋め込み、品質測定器100に予め付与されたIPv6アドレスを送信元IPアドレスとした品質異常情報パケットを生成し、品質管理サーバ400に送信する。また、パケット送信部150は、予め定められた一定時間(T)ごとに、その一定時間(T)に品質異常判断部130に生成された複数の品質異常テーブルに含まれる複数のアラームを含む品質異常情報パケットを生成し、品質管理サーバ400に送信するようにしても良い。このようにすれば、ネットワーク負荷、品質測定器100、品質管理サーバ400の処理負荷を軽減することができる。
【0034】
品質管理サーバ400は、ネットワークを介して接続された複数の品質測定器100から受信する品質異常情報パケットに基づいて、ネットワーク上の異常発生箇所を判定するコンピュータ装置であり、パケット受信部410と、品質情報管理DB420と、障害判断部430と、障害切り分け部440と、表示部450と、プレフィックス情報管理DB460とを備えている。
【0035】
パケット受信部410は、品質測定器100から受信する品質異常情報パケットに基づいて、品質異常情報レコードに送信元IPアドレスを付与した品質管理情報レコードを生成する。パケット受信部410は、品質測定器100から受信する品質異常情報パケットのペイロードから品質異常情報テーブルを取り出すと、取り出した品質異常情報テーブルに含まれるアラーム種別が複数のフィールドについて異常を検出したことを示す情報である場合には、そのフィールドごとにアラーム種別を分割し、それぞれのアラーム種別を1レコードとした上で、時刻情報とアラーム種別と、その品質異常情報パケットの送信元のIPアドレスとを含む品質管理情報レコードを、品質情報管理DB420に記憶させる。この際、パケット受信部410は、それぞれの品質管理情報レコードに、品質測定器100から受信した到着順を示すレコード番号を付与して、品質情報管理DB420に記憶させる。図7の(d)は、パケット受信部410が生成して品質情報管理DB420に記憶させる品質管理情報レコードのデータ構造例を示す図である。
【0036】
図6に戻り、品質情報管理DB420は、パケット受信部410によって複数の品質管理情報レコードが記憶される記憶部である。
障害判断部430は、現在時刻から、一定時間(T)を差し引いた時刻までの範囲の時刻情報が含まれる品質管理情報レコードを品質情報管理DB420から読み出し、読み出した品質管理情報レコードが含まれるアラーム種別障害情報テーブルを生成する。図7の(e)は、アラーム種別障害情報テーブルのデータ構造例を示す図である。
【0037】
図6に戻り、プレフィックス情報管理DB460は、本実施形態の情報通信システムを管理する通信事業者により、通信情報システムに接続される各ルータを識別するルータ名と、そのルータが包含されるプレフィックスが対応付けられたプレフィックス情報テーブルが記憶される記憶部である。図7の(f)は、品質閾値情報テーブルのデータ構造を示す図である。なお、図3の(a)には、プレフィックス情報管理DB460に記憶されるプレフィックス情報のデータ例が示されている。
【0038】
図6に戻り、障害切り分け部440は、障害判断部430が生成したアラーム種別情報テーブルと、プレフィックス情報管理DB460から読み出したプレフィックス情報テーブルとに基づいて、異常を検出した品質測定器100が接続されるルータを判定し、判定したルータ名が含まれる障害情報テーブルを生成する。図7の(g)は、障害切り分け部440が生成する障害情報テーブルのデータ構造例を示す図である。
表示部450は、障害切り分け部440が生成した障害情報テーブルに含まれる情報を表示するディスプレイである。
【0039】
<動作例>
次に、図9を参照して、本実施形態による情報通信システムの動作例を説明する。
まず、品質測定器100のパケット受信部110が、対向サーバ500から送信されるパケットを受信すると(ステップS1)、パケット受信部110は、受信したパケットからパケットヘッダ情報を取り出す。そして、品質算出部120は、ある一定時間(T)にステップS1で読み出したパケットヘッダ情報から、パケットロス率、遅延、ジッタ、リオーダ等の通信品質を示す情報を、一定時間(T)おきに算出して品質情報テーブルを生成する(ステップS2)。
【0040】
そして、品質異常判断部130は、品質閾値情報管理DB140に記憶された、パケットロス率、遅延、ジッタ、リオーダ等の閾値を含む品質閾値情報テーブルを読み出し、読み出した品質閾値情報テーブルに含まれる各閾値と、ステップS2で生成した品質情報テーブルに含まれる各値とを比較し、品質情報テーブルに含まれる値が、品質閾値情報テーブルに含まれる各閾値を超過するか否かを判定し、超過すると判定した場合に、超過した値に応じたアラーム種別と、閾値の超過を検出した時刻情報とを含む品質異常情報テーブルを生成する。ここで、生成する品質異常情報テーブルにおいては、超過のなかったフィールドは破棄する(ステップS3)。
【0041】
次に、品質測定器100のパケット送信部150は、ステップS3で品質異常判断部130が生成した品質異常情報テーブルをペイロードに読み込み、品質測定器100に予め付与されたIPアドレスを送信元IPアドレスとする品質異常情報パケット(例えば、SNMPトラップ)を生成し、品質管理サーバ400に送信する(ステップS4)。品質管理サーバ400のパケット受信部410は、品質測定器100から送信される品質異常情報パケットを受信すると、品質異常情報パケットのペイロードから品質異常情報テーブルを取り出し、取り出した品質異常情報テーブルに含まれるアラーム種別のレコードに、複数のアラーム種別が含まれる場合は、各々のアラーム種別ごとのレコードに分割し、分割したレコードに、パケット送信元アドレスをフィールドとして付け加えたレコードを生成する。そして、パケット受信部410は、ネットワークを介して接続される複数の品質測定器100から送信されるパケットの到着順に、レコードにレコード番号を付与し、品質管理情報レコードとして品質情報管理DB420に書き込む(ステップS5)。
【0042】
そして、障害判断部430は、品質情報管理DB420から、現在時刻から一定時間(T)を差し引いた時刻までの範囲の時刻情報を含む品質管理情報レコードを品質情報管理DB420から読み出す。障害判断部430は、読み出した品質管理情報レコードのアラーム種別をキーとして、アラーム種別障害情報テーブルを生成する(ステップS6)。障害切り分け部440は、プレフィックス情報管理DB460から、プレフィックス情報テーブルを読み出し、読み出したプレフィックス情報テーブルと、ステップS6で障害判断部430が生成したアラーム種別障害情報テーブルとに基づいて、障害情報テーブルを生成する。
【0043】
ここで、障害切り分け部440による障害情報テーブルの生成処理においては、例えば、障害切り分け部440は、プレフィックス情報テーブルに含まれる上位階層フィールドのプレフィックスと、アラーム種別障害情報テーブルに含まれる送信元IPアドレスとを比較し、各送信元アドレスがどのプレフィックスと一致するかを判定する。この際、最上位階層のプレフィックスから下位階層のプレフィックスへと順に比較していき、アラーム種別障害情報テーブルに含まれる送信元IPアドレスの全てが特定の同一のプレフィックス(例えば、「/x」)と一致すると判定した場合は、そのプレフィックス(「/x」)の配下にある一階層下のプレフィックス(例えば、「/y」)と、アラーム種別障害情報テーブルに含まれるそれぞれの送信元IPアドレスとを比較していく。
【0044】
そして、障害切り分け部440は、アラーム種別障害情報テーブルに含まれるそれぞれの送信元IPアドレスが、プレフィックス情報テーブルに含まれる特定の階層の複数のプレフィックスに一致した場合は、その一階層上位の階層をプレフィックスに対応するルータ名を異常が発生している被疑ルータと判定し、そのルータ名と、そのテーブルのアラーム種別と、時刻情報の範囲(一定時間(T)の開始時刻と終了時刻)とを含む障害情報テーブルを生成する(ステップS7)。表示部450は、ステップS7で生成された障害情報テーブルに基づいて、どのような障害が、どの装置で発生したかを示す情報を、表示部450に出力する(ステップS8)。
【0045】
図10は、上述のステップS7において、障害切り分け部440が行う被疑ルータの判定処理を説明する図である。例えば、(a)に示されるように、ルータ320−1(エリア間ルータ)において異常が発生しているとする。この場合、(b)に示されるように、まず、品質異常情報パケットの送信元IPアドレスと第2階層(「/32」の階層、ルータ320の階層)の各プレフィックスとを比較し、品質異常情報パケットの送信元IPアドレスのプレフィックスと一致するプレフィックスを検出する(ステップS10)。ここで、品質異常情報パケットの送信元IPアドレスのプレフィックスと一致する第2階層のプレフィックスを複数検出すると、その第2階層のプレフィックスの上位の階層のルータ330を、被疑ルータと判定する(ステップS11)。
【0046】
一方、ステップS10で、品質異常情報パケットの送信元IPアドレスのプレフィックスの全てが、第2階層のいずれかのプレフィックスと一致すると判定すると、品質異常情報パケットの送信元IPアドレスと第3階層(「/40」の階層、ルータ310の階層)の各プレフィックスとを比較し、品質異常情報パケットの送信元IPアドレスのプレフィックスと一致するプレフィックスを検出する(ステップS12)。ここで、品質異常情報パケットの送信元IPアドレスのプレフィックスと一致する第3階層のプレフィックスを複数検出すると、その第3階層のプレフィックスの上位の階層のルータ320を、被疑ルータと判定する(ステップS13)。図10の例では、ここで、ルータ320−1が被疑箇所として判定される。
【0047】
一方、ステップS12で、品質異常情報パケットの送信元IPアドレスのプレフィックスの全てが、第3階層のいずれかのプレフィックスと一致すると判定すると、品質異常情報パケットの送信元IPアドレスと第4階層(「/48」の階層、ルータ300の階層)の各プレフィックスとを比較し、品質異常情報パケットの送信元IPアドレスのプレフィックスと一致するプレフィックスを検出する(ステップS14)。ここで、品質異常情報パケットの送信元IPアドレスのプレフィックスと一致する第4階層のプレフィックスを複数検出すると、その第4階層のプレフィックスの上位の階層のルータ310を、被疑ルータと判定する(ステップS15)。
【0048】
ここで、さらに下位の階層(第5階層、第6階層・・・)が存在する場合には、同様に、下位階層のいずれかのプレフィックスと一致するかを判定し、品質異常情報パケットの送信元IPアドレスと下位階層の各プレフィックスとを比較し、品質異常情報パケットの送信元IPアドレスのプレフィックスと一致するプレフィックスを検出する処理を繰り返し、品質異常情報パケットの送信元IPアドレスのプレフィックスと一致する下位階層のプレフィックスを複数検出すると、その下位階層のプレフィックスの上位の階層のルータを、被疑ルータと判定するようにしても良い。そして、特定のルータが被疑箇所として判断されなかった場合には、ホームゲートウェイ(ルータ300−1)が被疑箇所として判定される(ステップS16)。
【0049】
なお、本実施形態のステップS7における被疑ルータの判定処理では、ネットワーク上の複数の箇所で、異なる異常が検出され、品質異常情報パケットが送信された場合に、そのアラーム種別ごとに、被疑ルータを判定して品質劣化の原因となる装置を特定するようにしても良い。例えば、図11に示されるように、一定時間(T)内に、ルータ310−1でパケットロスが発生し、かつ、ルータ320−2でジッタが発生している場合に、品質管理サーバ400の障害切り分け部440は、一定時間(T)内に複数のユーザ端末200から受信する品質異常情報パケットを、アラーム種別ごとに被疑ルータの判定処理を行うことで、同時多発的に発生した故障に対しても、それぞれの品質劣化の原因となる装置を特定することが可能である。
【0050】
また、図12に示されるように、最上位階層のルータであるルータ330−1に品質測定器600を接続し、品質測定器600がユーザ端末200から送信されるパケットを受信するようにすれば、上りトラフィックの品質を同様に測定することができる。この場合、品質測定器600は、上述の品質測定器100と同様の機能部を備えており、品質測定器600が備えるパケット受信部110が、複数のユーザ端末200から送信されるパケットを受信する。品質測定器600の品質算出部120が、上述のステップS2以降の処理と同様に、受信したパケットのそれぞれについて、品質情報テーブルを生成する処理を行う。
【0051】
そして、品質測定器600の品質異常判断部130が、品質測定器600の品質算出部120が算出する品質情報テーブルに基づいて品質異常情報テーブルを生成すると、品質測定器600のパケット送信部150は、品質測定器600のパケット受信部110が受信したパケットの送信元IPアドレスを含む品質異常情報パケットを、品質管理サーバ400に送信する。品質管理サーバ400は、品質異常情報パケットに含まれるパケットの送信元IPアドレスを読み出して、ステップS7におけるパケットの送信元IPアドレスとして用いて上述の被疑ルータ判定処理を行うことで、品質劣化の原因となる装置の特定を行うことが可能である。
【0052】
なお、本実施形態において、最下位階層のルータであるルータ300と、品質測定器100とは、異なる装置として説明したが、最下位階層のルータであるホームゲートウェイ装置などに、品質測定器100が備える各機能部を備えるようにしても良い。
また、本実施形態では、IPv6アドレス空間を例として説明したが、NATなどによるアドレス変換が行われない場合には、IPv4アドレス空間において階層構造化したアドレスを用いて本実施形態における情報通信を行っても良い。また、図5に示したように、ホームゲートウェイによってNAT変換が行われる前にトラフィックをキャプチャすれば、NAT変換が行われるIPv4ネットワークにおいても、本実施形態を適用することが可能である。
また、本実施形態において、ユーザ端末200は、STBとしたが、PC(パーソナルコンピュータ)、PDA(Personal Digital Assistant)などの、入力部、出力部、制御部、演算部、記憶部を備えたコンピュータ機器を適用して良い。
【0053】
このように、本実施形態によれば、ネットワーク上に故障などの異常が発生した場合に、故障の発生したルータを特定し、品質劣化の原因となる装置を効率よく特定することが可能となる。また、本実施形態によれば、故障が発生し、品質劣化の原因となる装置を特定するために、新たに通信を行って品質の検査を行う必要がなく、ネットワーク負荷、処理負荷をかけずに品質劣化ポイントの特定が可能である。さらに、本実施形態によれば、品質を算出するための品質管理サーバ400は、階層構造化されたネットワークの最上位階層のルータに接続するのみで良く、ネットワーク内の各切り分けポイントなどにそれぞれ品質計測のための装置を設置する必要がない。
【0054】
なお、本発明における処理部の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより情報通信を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータシステム」は、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)を備えたWWWシステムも含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(RAM)のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。
【0055】
また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良い。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】階層構造化されたIPアドレス空間の概念を示す図である。
【図2】本発明の一実施形態による情報通信システムの階層構造を示す図である。
【図3】本発明の一実施形態による情報通信システムの階層構造を示す図である。
【図4】本発明の一実施形態による情報通信システムにおけるパケットの流れを示す図である。
【図5】本発明の一実施形態による品質測定器と品質管理サーバとが送受信するパケットを示す図である。
【図6】本発明の一実施形態による情報通信システムの機能構成を示すブロック図である。
【図7】本発明の一実施形態による情報通信システムにおいて用いるデータ構造例を示す図である。
【図8】本発明の一実施形態による情報通信システムにおいて生成される品質情報の例を示す図である。
【図9】本発明の一実施形態による情報通信システムの動作例を示す図である。
【図10】本発明の一実施形態による情報通信システムにおいて被疑ルータを判定する処理を示す図である。
【図11】本発明の一実施形態による情報通信システムにおいて複数の故障が発生した場合の概念を示す図である。
【図12】本発明の一実施形態による情報通信システムにおいて最上位階層のルータに品質測定器を接続した場合の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0057】
100 品質測定器
110 パケット受信部
120 品質算出部
130 品質異常判断部
140 品質閾値情報管理DB
150 パケット送信部
200 ユーザ端末
300 ルータ
301 タップ
310 ルータ
320 ルータ
330 ルータ
380 ルータ
390 ルータ
400 品質管理サーバ
410 パケット受信部
420 品質情報管理DB
430 障害判断部
440 障害切り分け部
450 表示部
460 プレフィックス情報管理DB
500 対向サーバ
510 対向端末
600 品質測定器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
IPアドレスが付与される複数の情報端末と、IPアドレスが付与され、前記情報端末が送受信するパケットを中継する複数の中継装置と、IPアドレスが付与され、前記中継装置を介して前記情報端末とパケットを送受信する情報サーバ装置と、を備えた情報通信システムであって、
前記複数の情報端末および前記複数の中継装置のそれぞれに付与される前記IPアドレスは、階層構造化されたIPアドレス空間において階層を識別する階層識別子が含まれるIPアドレスであり、かつ、前記複数の情報端末および前記複数の中継装置は、前記階層構造に従う構成で接続され、前記情報サーバ装置は、前記階層構造において最上位階層の前記中継装置に接続されており、
前記情報端末は、
自身に付与された前記IPアドレスを送信元IPアドレスとし、前記情報サーバ装置に付与された前記IPアドレスを送信先とするパケットを送信する端末パケット送信部を備え、
前記情報サーバ装置は、
複数の前記中継装置のそれぞれを識別する中継装置識別情報と、当該それぞれの中継装置に付与されたIPアドレスに含まれる前記階層識別子とが対応付けられて記憶されている階層識別子記憶部と、
前記中継装置を介して送信される前記パケットを受信するサーバパケット受信部と、
前記サーバパケット受信部が受信した前記パケットの送信元IPアドレスに含まれる前記階層識別子に対応付けられた前記中継装置識別情報を、前記階層識別子記憶部から読み出す中継装置判定部と、
を備えることを特徴とする情報通信システム。
【請求項2】
前記情報サーバ装置の、
前記サーバパケット受信部は、複数の前記情報端末から送信される前記パケットを受信し、
前記中継装置判定部は、前記階層識別子記憶部に記憶された前記階層識別子のうち、最上位階層の階層識別子から下位階層の階層識別子に向けて、順番に、当該階層識別子が、前記サーバパケット受信部が受信する複数の前記パケットのそれぞれの送信元IPアドレスに含まれる前記階層識別子を下位階層として包含するか否かを判定し、前記複数のパケットのそれぞれの送信元IPアドレスに含まれる前記階層識別子の全てを下位階層として包含する前記階層識別子のうち最下位階層の前記階層識別子に対応付けられた前記中継装置識別情報を、前記階層識別子記憶部から読み出す
ことを特徴とする請求項1に記載された情報通信システム。
【請求項3】
前記情報端末は、
前記階層構造において前記最上位階層の前記中継装置に接続される対向サーバ装置から送信されるパケットを受信する端末パケット受信部と、
前記端末パケット受信部が受信する前記パケットのパケットヘッダ情報に基づいて、当該パケットの品質劣化を数値で示す品質情報を算出する端末品質算出部と、
前記品質情報に対応する品質閾値情報が予め記憶されている端末品質閾値記憶部と、
前記品質算出部が算出する前記品質情報と、前記品質閾値記憶部に記憶されている前記品質閾値情報とを比較して、前記品質情報が示す値が、前記品質閾値情報が示す値を超えているか否かを判定する端末品質異常判断部と、をさらに備え、
前記端末パケット送信部は、前記端末品質異常判断部によって、前記品質情報が示す値が、前記品質閾値情報が示す値を超えていると判定された場合に、異常があったことを示す情報を含み、自身に付与された前記IPアドレスを送信元IPアドレスとし、前記情報サーバ装置に付与された前記IPアドレスを送信先とする前記パケットを送信する
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載された情報通信システム。
【請求項4】
前記情報通信システムは、前記階層構造において前記最上位階層の前記中継装置に接続される品質測定器をさらに備え、
前記品質測定器は、
前記情報端末から送信される前記パケットを受信する測定器受信部と、
前記測定器受信部が受信する前記パケットのパケットヘッダ情報に基づいて、当該パケットの品質劣化を数値で示す品質情報を算出する測定器品質算出部と、
前記品質情報に対応する品質閾値情報が予め記憶されている測定器品質閾値記憶部と、
前記測定器品質算出部が算出する前記品質情報と、前記測定器品質閾値記憶部に記憶されている前記品質閾値情報とを比較して、前記品質情報が示す値が、前記品質閾値情報が示す値を超えているか否かを判定する測定器品質異常判断部と、
前記測定器品質異常判断部によって、前記品質情報が示す値が、前記品質閾値情報が示す値を超えていると判定された場合に、異常があったことを示す情報と、前記測定器受信部が受信した前記パケットの送信元IPアドレスとを含む品質異常情報パケットを、前記情報サーバ装置に送信する測定器パケット送信部と、
を備えることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載された情報通信システム。
【請求項5】
IPアドレスが付与される複数の情報端末と、IPアドレスが付与され、前記情報端末が送受信するパケットを中継する複数の中継装置と、IPアドレスが付与され、前記中継装置を介して前記情報端末とパケットを送受信する情報サーバ装置と、を備えた情報通信システムにおける情報通信方法であって、
前記複数の情報端末および前記複数の中継装置のそれぞれに付与される前記IPアドレスは、階層構造化されたIPアドレス空間において階層を識別する階層識別子が含まれるIPアドレスであり、かつ、前記複数の情報端末および前記複数の中継装置は、前記階層構造に従う構成で接続され、前記情報サーバ装置は、複数の前記中継装置のそれぞれを識別する中継装置識別情報と、当該それぞれの中継装置に付与されたIPアドレスに含まれる前記階層識別子とが対応付けられて記憶されている階層識別子記憶部を備え、前記階層構造において最上位階層の前記中継装置に接続されており、
前記情報端末の、
端末パケット送信部が、自身に付与された前記IPアドレスを送信元IPアドレスとし、前記情報サーバ装置に付与された前記IPアドレスを送信先とするパケットを送信するステップと、
前記情報サーバ装置の、
サーバパケット受信部が、前記中継装置を介して送信される前記パケットを受信するステップと、
中継装置判定部が、前記サーバパケット受信部が受信した前記パケットの送信元IPアドレスに含まれる前記階層識別子に対応付けられた前記中継装置識別情報を、前記階層識別子記憶部から読み出すステップと、
を備えることを特徴とする情報通信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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