説明

情報配信システム及び情報配信方法

【課題】
DCSのEWSを有する顧客に対して、更新提案の情報配信するシステムを提供する。
【解決手段】
メーカ12では顧客A10からDB更新データ13を受け、メーカ12は更新提案の情報配信14を送信する。顧客A10は、更新提案の情報配信14を受け、更新提案の選択15を送信する。メーカ12はそれを受け、見積り,部品の発送16を行う。これに対して、顧客A10から更新提案の選択15を受けた場合にメーカ12は、マーケティング情報として、推奨更新パッケージ作成17を行う。推奨更新パッケージ作成17は、同一システムの顧客Bに対して、更新提案の情報配信14として送信される。このようにして、顧客のDCSの設備状況に即した更新提案の情報配信を行うビジネスモデルが構築される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報配信システム及び情報配信方法に係り、特に、制御システムの設備更新に関わる情報配信に好適な、情報配信システム及び情報配信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
分散型制御システム(Distributed Control System:以下、DCSと略称する)で代表される制御システムは、制御対象の情報を得て、プロセス制御等の制御演算を行い、演算結果を制御対象に伝えるものであり、例えば、特開平6−250869号公報に知られているように、多くのハードウエア,ソフトウエア及び種々の部品から構成されている。
【0003】
このようなDCSでは、DCSを一端購入すると、その予防保全や保証期間を過ぎた部品故障に対して、部分更新や新規更新を行う必要がある。
【0004】
DCSの部分更新及び新規更新はDCSメーカが所有する顧客に納入した時のDCSの設備の情報や営業活動,定期点検などを通じ、現在の顧客のDCSの設備状況の情報を収集し、更新の提案を持ちかけることも多い。近年では、コスト面から顧客自身が設備の更新に必要な部品を購入し、顧客自身で改造を行うケースも多い。
【特許文献1】特開平6−250869号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
DCSに特有の問題として、製品のライフタイムは長いが、近年、周辺機器,電子部品の急速なライフサイクルの早まりにより、製造中止品が多く、一方で、顧客側ではコスト削減の為に更新が遅くなり、保証期間を過ぎた故障部品の交換、代替品への切り替えなど、設備の維持に必要となる効果的な更新が難しくなっている。
【0006】
上記したように、DCSを一端購入し顧客自身でDCSの改造を行った場合に、その後の部分更新において、顧客自身のDCSの設備状況に即した適切な部分更新の情報が不足していた。
【0007】
しかしながら、顧客自身でDCSの改造を行った場合でも、製造中止品や部品の故障率は、DCSメーカが独自で持っている情報も多く、DCSの設備状況に即した適切な更新に関わる情報配信は望まれている。
【0008】
DCSメーカも顧客のDCSの現在の設備状況に即した更新提案のうちで、顧客に最も人気のある更新提案のマーケティング情報は不足していた。また、DCSの新製品の開発は既設のDCSの経過年数による切り替え時期や製造中止品の状況にあわせて行われていた。
【0009】
顧客に最も人気のある更新提案のマーケティング情報は、DCSメーカも効率の良い設備の更新提案を行えるようになる為、望まれている。また、顧客の更新の要望の多いDCSの新製品の開発は望まれていた。
本発明の目的は、上記の問題点に鑑み、適切な更新に関わる情報の配信が可能な情報配信システム及び情報配信方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明では、顧客の制御システムの情報を顧客データベースに記憶し、制御システムに応じた部品情報を製品データベースに記憶し、更新提案情報を更新提案データベースに記憶し、前記顧客の制御システムの情報に応じて前記製品データベースから情報を取得して、前記取得した情報に基づいて、前記更新提案データベースから所定の更新提案情報を選択し、さらに、前記選択した情報をネットワークを介して送信するように構成した。
より具体的には、DCSを所有する顧客に対し情報を配信する情報配信システムであって、前記DCSのエンジニアリングワークステーション(Engineering Work Station:以下、EWSと略称する)と、前記情報の配信元が所有する顧客のDCSのEWSのデータベース(Data Base:以下、DBと略称する)と製品DBと更新提案DBを有する装置と、前記EWSと前記装置を結ぶ通信ネットワークとを備えるように構成した。
【0011】
上記の構成において、前記DCSの改造に伴ないEWSのDBの更新データに基づき、前記顧客が所有するEWSに更新提案の情報配信するように構成した。
【0012】
上記の構成において、前記顧客が所有するEWSに配信された更新提案の選択により、前記DCSを所有する顧客に対し、見積り,部品の発送を行うように構成した。
【0013】
上記の構成において、前記顧客が所有するEWSに配信された更新提案の選択により、推奨更新パッケージ作成し、同様のDCSを所有する顧客のEWSに対し、推奨更新パッケージを含めた更新提案の情報配信をするように構成した。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、DCS等の制御システムについての設備状況に即した更新提案を配信することが可能となる。より、具体的には、顧客の予算や更新計画に合わせた更新内容を選択できる。また、DCSメーカも顧客の要望の多い提案について情報を入手することができ、要望の多い開発を集中して行うことができ、コスト面でも顧客に望まれる更新提案の内容を持ちかけることができる。その結果として、顧客自身の設備更新にかかるコストを削減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態を説明する。図1は、本発明を適用してなる更新提案の情報配信により適用されるビジネスモデルの概略図を示す。また、図2には、更新提案の情報配信により適用されるネットワークの時系列の流れ図を示す。なお、図1では顧客端末A10と顧客端末B11とメーカ端末12により構成される。また、各矢印は手続きの方向を示しているが本実施形態では通信ネットワークで実現される。
【0016】
すなわち、メーカ端末12では顧客端末A10からDB更新データ13を受け、メーカ端末12は更新提案の情報配信14を送信する。顧客端末A10は、更新提案の情報配信14を受け、更新提案の選択の情報15を送信する。メーカ端末12はそれを受け、見積り,部品の発送の情報16を送信する。
【0017】
これに対して、顧客端末A10から更新提案の選択の情報15を受けた場合にメーカ端末12は、マーケティング情報として、推奨更新パッケージ作成17を行う。推奨更新パッケージ作成17は、同一システムの顧客端末Bに対して、更新提案の情報配信14として送信される。このようにして、顧客のDCSの設備状況に即した更新提案の情報配信をネットワークが構築される。
【0018】
図3は、本発明の目的である更新提案を行う情報配信システムの一実施形態の概略構成を示す構成図である。
【0019】
図3において、本実施形態は、顧客Aの端末システムとしての顧客Aの所有するEWS20と、顧客Bの端末システムとしての顧客Bの所有するEWS21と、メーカの端末システムとしてのメーカの所有する顧客のDCSのEWSのDBと製品DBと更新提案DBを有する装置(あるいは、装置22と略称する)22と、前記EWS20と、EWS21と装置22それらとを結ぶ通信ネットワーク23とから構成される。
【0020】
そこで図3を用いて、DCSのEWSを有する顧客に対して、更新提案の情報配信を行うシステムの流れを説明する。
【0021】
ここでは、まず、顧客がDCSを購入後、改造を行っていない場合を説明する。その場合において、顧客Aの所有するEWS20のDB内容とメーカの所有する顧客のDCSのEWSのDBを有する装置22のDBの内容は一致しており、この装置22に基づき、更新提案の情報配信を行う。
【0022】
次に、顧客自身がDCSの改造を実施した場合を説明する。顧客自身がDCSを改造を実施し、顧客Aの所有するEWS20のDBを更新すると前記EWS20より装置22にDB更新データが送信される。これにより、顧客Aの所有するEWS20とメーカの所有する顧客のDCSのEWSのDBを有する装置22の内容は一致しており、装置22に基づき、更新提案の情報配信を行う。
【0023】
また、メーカからの更新提案の情報配信,顧客からの更新提案の選択,見積りの送付は通信ネットワーク23を介して行われる。
【0024】
さらに図4は、メーカの有するDBのデータファイルを示しており、特に更新提案の情報配信をすることに用いられる。顧客DB30は、顧客のEWSのDB31とDB更新データ32で構成され、製品DB33は、新製品情報種々のタイプ,DCSの新製品であるDB34と、製造中種々のタイプのDCSの部品等の製造中止品情報である製造中止品情報DB35と、種々のタイプのDCSの部品の故障率情報である部品故障率データDB36と、種々のタイプのDCSでの過去の見積りデータである見積りデータ37と、種々のタイプのDCSでの部品の発送データである部品の発送データ38で構成され、一方更新提案DB39は、種々の推奨更新パッケージ40と種々の現地調査提案41と種々の予備品推奨42と種々の部分更新提案43と種々の一括更新提案44と種々のマーケティング情報45で構成される。
【0025】
さらに上記の発明において、更新提案の情報配信を決定する手順について説明する。上記の情報配信においては、顧客側で一定の期間をおいて実施される定期点検と同時に設備更新を実施する場合が多く、特にこの時期の前に設備更新に必要な情報が配信されることが望まれる為、一番近い定期点検のXヶ月までに図5で示すロジックにより情報配信を検討する。ここで、Xとは、部品手配から出荷までのリードタイムにより定めるものとする。
【0026】
また、顧客DBの顧客のEWSのDBの部品データのうちで、Xヶ月後迄に製造中止または部品の故障率が磨耗故障期間となるものを予備品推奨とする。予備品推奨の部品を含むユニット単位での更新する場合を部分更新とする。
【0027】
すなわち、図5の情報配信のロジック図において以下の動作をメーカ端末で実行する。まず、顧客のEWSのDB31及びDB更新データ32に基づいて、顧客のDCSを特定し、この特定されたDCSに対応して、新製品の情報DB34,製造中止品情報DB35,部品の故障データDB36,見積りデータ37及び部品の発送データ38から該当するデータを読み出す。これらの読み出したデータを参照して、推奨更新パッケージ40,現地調査提案41,予備品推奨42,部分更新提案43,一括更新提案44及びマーケティング情報45から該当するデータを読み出す。ステップS1でXヶ月後迄に予備品推奨が部分更新のA%を越えるか否か判断され、A%を越えないとき(No)は予備品推奨及び部分更新及び一括更新提案の情報配信が行われる。A%を越えるとき(Yes)はステップS2でXヶ月後迄に部分更新が一括更新のB%を越えるか否か判断される。B%を越えないとき(No)は部分更新及び一括更新提案の情報配信が行われる。B%を越えるとき(Yes)は一括更新提案の情報配信が行われる。
【0028】
さらに上記の発明において、推奨更新パッケージ作成の手順について、説明する。顧客端末Aに更新提案の情報配信を行った際に、更新提案の選択をされたものだけを組み合せて推奨更新パッケージを作成する。これを顧客端末Bに更新提案の情報配信を行う際に、図5の情報配信のロジックの検討と合わせて配信する。
【0029】
以上のようにして、一番近い定期点検のXヶ月前に情報配信が検討され、この時期の前に適切な更新提案の情報配信が行われる。また、顧客に好まれる提案内容を拡充することができ、特にメーカと顧客との信頼関係を構築する上で、最も重要な問題を良好に解決することができるものである。
【0030】
なお、DCSを例に発明したが、本発明は、上述の説明した実施形態に限定されるものではなく、本発明の精神を逸脱することなく種々の変形が可能とされるものである。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明を適用してなる更新提案の情報配信により適用されるビジネスモデルの概略図である。
【図2】本発明を適用してなる更新提案の情報配信により適用されるビジネスモデルのフロー図である。
【図3】本発明を適用してなる更新提案の情報配信システムの概略構成を示すシステム図である。
【図4】メーカの有するDBのデータファイルを示したデータファイル図である。
【図5】本発明の説明のための情報配信のロジック図である。
【符号の説明】
【0032】
10 顧客A
11,30 顧客DB
12 メーカ
13,32 DB更新データ
14 更新提案の情報配信
15 更新提案の選択
16 見積り,部品の発送
17 推奨更新パッケージ作成
20 顧客Aの所有するEWS
21 顧客Bの所有するEWS
22 メーカの所有する顧客のDCSのEWSのDBと製品DBと更新提案DBを有する装置(装置)
23 通信ネットワーク
31 顧客のEWSのDB
33 製品DB
34 新製品情報
35 製造中止品情報DB
36 部品の故障率データ
37 見積りデータ
38 部品の発送データ
39 更新提案DB
40 推奨更新パッケージ
41 現地調査提案
42 予備品推奨
43 部分更新提案
44 一括更新提案
45 マーケティング情報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
顧客の制御システムに関する更新情報を送信する情報配信システムであって、前記顧客の制御システムの情報を記憶する顧客データベースと、制御システムに応じた部品情報を記憶する製品データベースと、更新提案情報を記憶する更新提案データベースと、前記顧客の制御システムの情報に応じて前記製品データベースから情報を取得して、前記取得した情報に基づいて、前記更新提案データベースから所定の更新提案情報を選択する演算部と、前記選択した情報をネットワークを介して送信する送信部を有することを特徴とする情報配信システム。
【請求項2】
請求項1記載の情報配信システムにおいて、前記製品データベースには、前記顧客の制御システムの改造に伴なって更新されることを特徴とする情報配信システム。
【請求項3】
請求項1記載の情報配信システムにおいて、前記選択された更新提案に応じて、見積り情報或いは部品発送情報を送信することを特徴とする情報配信システム。
【請求項4】
請求項1記載の情報配信システムにおいて、前記選択された更新提案に応じて、推奨更新パッケージ作成し、同様の制御システムを所有する顧客に対し、推奨更新パッケージを含めた更新提案の情報送信することを特徴とする情報配信システム。
【請求項5】
顧客の制御システムの情報を顧客データベースに記憶し、制御システムに応じた部品情報を製品データベースに記憶し、更新提案情報を更新提案データベースに記憶し、演算部は、前記顧客の制御システムの情報に応じて前記製品データベースから情報を取得して、前記取得した情報に基づいて、前記更新提案データベースから所定の更新提案情報を選択し、送信部は、前記選択した情報をネットワークを介して送信する情報配信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−175813(P2009−175813A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−11033(P2008−11033)
【出願日】平成20年1月22日(2008.1.22)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】