惰行制御装置
【課題】レリーズベアリング劣化による路上故障を防止する惰行制御装置を提供する。
【解決手段】惰行制御中にクラッチが断になっている時間を累積計測する断時間累積計測部4と、断時間累積計測部4が計測したクラッチ断累積時間がクラッチにおける部材の疲労の指標となる所定時間を超えた場合、惰行制御を禁止する時間超過制限部5及び/又は断時間累積計測部4が計測したクラッチ断累積時間がクラッチにおける部材の疲労の指標となる所定時間を超えた場合、警告表示を行う時間超過警告部6とを備える。
【解決手段】惰行制御中にクラッチが断になっている時間を累積計測する断時間累積計測部4と、断時間累積計測部4が計測したクラッチ断累積時間がクラッチにおける部材の疲労の指標となる所定時間を超えた場合、惰行制御を禁止する時間超過制限部5及び/又は断時間累積計測部4が計測したクラッチ断累積時間がクラッチにおける部材の疲労の指標となる所定時間を超えた場合、警告表示を行う時間超過警告部6とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行中にクラッチを断にしエンジンをアイドル状態に戻して燃料消費を抑える惰行制御装置に係り、レリーズベアリング劣化による路上故障を防止する惰行制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両において、クラッチが断のとき、アクセルペダルが踏み込まれると、アクセルが開かれてエンジンがいわゆる空ぶかしとなり、エンジン回転数は、アクセル開度に対応したエンジン回転数に落ち着く。このとき、エンジンが発生させた駆動力とエンジン内部抵抗(フリクション)とが均衡し、エンジン出力トルクは0である。すなわち、エンジンは、外部に対して全く仕事をせず、燃料が無駄に消費される。例えば、エンジン回転数が2000rpmで空ぶかしをしたとすると、運転者には大きなエンジン音が聞こえるので、相当な量の燃料が無駄に消費されていることが実感できる。
【0003】
エンジンが外部に対して仕事をしない状態は、前述したクラッチ断のときの空ぶかしに限らず、車両の走行中にも発生している。すなわち、エンジンは、空ぶかしのときと同じようにアクセル開度に対応したエンジン回転数で回転するだけで、車両の加速・減速に寄与しない。このとき、エンジンを回転させるためだけに燃料が消費されており、非常に無駄である。
【0004】
本出願人は、エンジンが回転はしているが外部に対して仕事をしないときに、クラッチを断にし、エンジンをアイドル状態に戻して燃料消費を抑える惰行制御(燃費走行制御とも言う)を行う惰行制御装置を提案した(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−342832号公報
【特許文献2】特開平8−67175号公報
【特許文献3】特開2001−304305号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述の提案に加え、本出願人は、クラッチ回転数とアクセル開度とを指標とする惰行制御判定マップを用い、クラッチ回転数とアクセル開度のプロット点が惰行制御可能領域内にあって、アクセルペダル操作速度が所定範囲内にて、かつクラッチ回転数とアクセル開度のプロット点が惰行制御しきい線をアクセル開度減少方向に通過したとき、クラッチを断すると共にエンジン回転数を低下させて惰行制御を開始し、アクセルペダル操作速度が所定範囲外となったか又はプロット点が惰行制御可能領域外に出たとき惰行制御を終了する惰行制御装置を提案中である。
【0007】
ところで、クラッチでは、エンジンのフライホイールに対してクラッチ板がスプリングの力で圧接されている。クラッチを断するときは、レリーズベアリングでスプリングを押してクラッチ板をフライホイールから離す。レリーズベアリングは、クラッチ板が取り付けられた変速機のインプットシャフトを軸承しているので、レリーズベアリングをスプリングで押すときは、レリーズフォークでレリーズベアリングを押して軸方向に移動させることになる。
【0008】
このクラッチ断の動作時、レリーズベアリングにスラスト荷重がかかり、このスラスト荷重がレリーズベアリングの劣化要因となる。レリーズベアリングの劣化は、クラッチ断が継続する時間に比例して進むとされ、従来よりクラッチペダルへの足載せがレリーズベアリングの劣化を早めることが知られている。
【0009】
惰行制御では、クラッチ断が継続する時間が長い。変速時におけるクラッチ断の時間が、例えば、2〜3秒程度の短時間であるのに対し、惰行制御におけるクラッチ断の時間は、例えば、20〜30秒の長時間に及ぶ。このように、惰行制御を行うと、変速時よりも長いクラッチ断の間、継続してスラスト荷重がかかることになるため、レリーズベアリングの寿命が短くなることが避けられない。しかし、レリーズベアリング劣化のために路上故障が起きるのは好ましくない。
【0010】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、レリーズベアリング劣化による路上故障を防止する惰行制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために本発明は、クラッチ回転数とアクセル開度で参照される惰行制御判定マップと、前記惰行制御判定マップへのクラッチ回転数とアクセル開度のプロット点が惰行制御可能領域内にあって、アクセルペダル操作速度が所定範囲内にて、かつクラッチ回転数とアクセル開度のプロット点が惰行制御しきい線をアクセル開度減少方向に通過したとき、クラッチを断すると共にエンジン回転数を低下させて惰行制御を開始し、アクセルペダル操作速度が所定範囲外となったか又はプロット点が惰行制御可能領域外に出たとき惰行制御を終了する惰行制御実行部と、惰行制御中にクラッチが断になっている時間を累積計測する断時間累積計測部と、前記断時間累積計測部が計測したクラッチ断累積時間がクラッチにおける部材の疲労の指標となる所定時間を超えた場合、惰行制御を禁止する時間超過制限部とを備えたものである。
【0012】
また、本発明は、クラッチ回転数とアクセル開度で参照される惰行制御判定マップと、前記惰行制御判定マップへのクラッチ回転数とアクセル開度のプロット点が惰行制御可能領域内にあって、アクセルペダル操作速度が所定範囲内にて、かつクラッチ回転数とアクセル開度のプロット点が惰行制御しきい線をアクセル開度減少方向に通過したとき、クラッチを断すると共にエンジン回転数を低下させて惰行制御を開始し、アクセルペダル操作速度が所定範囲外となったか又はプロット点が惰行制御可能領域外に出たとき惰行制御を終了する惰行制御実行部と、惰行制御中にクラッチが断になっている時間を累積計測する断時間累積計測部と、前記断時間累積計測部が計測したクラッチ断累積時間がクラッチにおける部材の疲労の指標となる所定時間を超えた場合、警告表示を行う時間超過警告部とを備えたものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明は次の如き優れた効果を発揮する。
【0014】
(1)レリーズベアリング劣化による路上故障を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の惰行制御装置のブロック構成図である。
【図2】本発明の惰行制御装置が適用される車両のクラッチシステムのブロック構成図である。
【図3】図2のクラッチシステムを実現するアクチュエータの構成図である。
【図4】本発明の惰行制御装置が適用される車両の入出力構成図である。
【図5】惰行制御の概要を説明するための作動概念図である。
【図6】惰行制御判定マップのグラフイメージ図である。
【図7】惰行制御による燃費削減効果を説明するためのグラフである。
【図8】惰行制御判定マップを作成するために実測したアクセル開度とクラッチ回転数のグラフである。
【図9】本発明の惰行制御装置における断時間累積計測の手順を示すフローチャートである。
【図10】本発明の惰行制御装置における時間超過警告の手順を示すフローチャートである。
【図11】本発明の惰行制御装置における時間超過制限の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態を添付図面に基づいて詳述する。
【0017】
図1に示されるように、本発明に係る惰行制御装置1は、クラッチ回転数とアクセル開度で参照される惰行制御判定マップ2と、惰行制御判定マップ2へのクラッチ回転数とアクセル開度のプロット点が惰行制御可能領域内にあって、アクセルペダル操作速度が所定範囲内にて、かつクラッチ回転数とアクセル開度のプロット点が惰行制御しきい線をアクセル開度減少方向に通過したとき、クラッチを断すると共にエンジン回転数を低下させて惰行制御を開始し、アクセルペダル操作速度が所定範囲外となったか又はプロット点が惰行制御可能領域外に出たとき惰行制御を終了する惰行制御実行部3と、惰行制御中にクラッチが断になっている時間を累積計測する断時間累積計測部4と、断時間累積計測部4が計測したクラッチ断累積時間がクラッチにおける部材の疲労の指標となる所定時間を超えた場合、惰行制御を禁止する時間超過制限部5と、断時間累積計測部4が計測したクラッチ断累積時間がクラッチにおける部材の疲労の指標となる所定時間を超えた場合、警告表示を行う時間超過警告部6とを備える。
【0018】
ここで、クラッチ108(図2参照)における部材の疲労とは、主としてレリーズベアリング165が変速時よりも長時間のスラスト荷重によって疲労することを表しているが、他の部材の疲労も含めてよい。
【0019】
惰行制御装置1を構成する惰行制御判定マップ2、惰行制御実行部3、断時間累積計測部4、時間超過制限部5、時間超過警告部6は、例えば、ECU(図示せず)に搭載されるのが好ましい。
【0020】
本発明の惰行制御装置1を搭載する車両について各部を説明する。
【0021】
図2に示されるように、本発明の惰行制御装置1を搭載する車両のクラッチシステム101は、マニュアル式とECU制御による自動式との両立方式である。クラッチペダル102に機械的に連結されたクラッチマスターシリンダ103は、運転者によるクラッチペダル102の踏み込み・戻し操作に応じて中間シリンダ(クラッチフリーオペレーティングシリンダ、切替シリンダとも言う)104に動作油を供給するようになっている。一方、ECU(図示せず)で制御されるクラッチフリーアクチュエータユニット105は、クラッチ断・接の指令により中間シリンダ104に動作油を供給するようになっている。中間シリンダ104は、クラッチスレーブシリンダ106に動作油を供給するようになっている。クラッチスレーブシリンダ106のピストン107がクラッチ108の可動部に機械的に連結されている。
【0022】
クラッチ108は、エンジンのフライホイール161に対向するクラッチ板162と、クラッチ板162をフライホイール161に圧接させるスプリング163と、インプットシャフト164に沿って移動しクラッチ板162をフライホイール161から離反させるレリーズベアリング165と、ピストン107に駆動されてレリーズベアリング165を移動させるレリーズフォーク166とを有する。スプリング163は、円錐状に形成され、外周部がクラッチ板162に接し、内周部がレリーズベアリング165に接する。レリーズベアリング165は、変速機のインプットシャフト164を軸承し、かつインプットシャフト164に対して軸方向に移動自在に構成される。レリーズフォーク166は、てこであり、長手方向の一端にピストン107が連結され、他端にレリーズベアリング165が連結され、一端と他端の間に支点167が設けられる。
【0023】
図2の構成によるクラッチ108においては、クラッチスレーブシリンダ106内に動作油が充填されてピストン107のロッドが伸張すると、レリーズフォーク166が回動してレリーズベアリング165をスプリング163から離れる方向に移動させるので、クラッチ板162に対するスプリング163の圧接力がなくなり、クラッチ板162がフライホイール161から離れてフライホイール161からクラッチ板162へ回転が伝達されなくなる。すなわち、クラッチ断となる。
【0024】
一方、クラッチスレーブシリンダ106内の動作油が排出されてピストン107のロッドが短縮すると、レリーズフォーク166が前述とは逆向きに回動してレリーズベアリング165をスプリング163に押し付ける方向に移動させるので、クラッチ板162に対してスプリング163の圧接力が働くようになり、クラッチ板162がフライホイール161に圧接され、フライホイール161からクラッチ板162へ回転が伝達されるようになる。すなわち、クラッチ接となる。
【0025】
なお、クラッチ108は、図2のものとは異なり、レリーズベアリング165がスプリング163を押し付けたときに、スプリング163の外周部が反転してクラッチ断となるように構成することもできる。この場合、ピストン107が伸張する方向が図2とは逆になるようクラッチスレーブシリンダ106を反対向きに設置する(図3、図4参照)。これにより、アクチュエータの動作ロジックは、クラッチ108の構成によらず共通となる。
【0026】
図3に示されるように、アクチュエータ110は、クラッチフリーアクチュエータ111を備える。クラッチフリーアクチュエータ111は、中間シリンダ104とクラッチフリーアクチュエータユニット105とを備える。クラッチフリーアクチュエータユニット105は、ソレノイドバルブ112、リリーフバルブ113、油圧ポンプ114を備える。中間シリンダ104は、プライマリピストン116とセカンダリピストン117とが直列配置されてなり、クラッチマスターシリンダ103からの動作油によりプライマリピストン116がストロークすると、セカンダリピストン117が随伴してストロークするようになっている。また、中間シリンダ104は、クラッチフリーアクチュエータユニット105からの動作油によりセカンダリピストン117がストロークするようになっている。セカンダリピストン117のストロークに応じてクラッチスレーブシリンダ106に動作油が供給される。この構成により、マニュアル操作が行われたときには、優先的にマニュアル操作どおりのクラッチ断・接が実行され、マニュアル操作が行われていないときにはECU制御どおりのクラッチ断・接が実行される。
【0027】
なお、本発明の惰行制御装置は、マニュアル式のない自動式のみのクラッチシステムにも適用できる。
【0028】
図4に示されるように、車両には、主として変速機・クラッチを制御するECU121と、主としてエンジンを制御するECM122が設けられる。ECU121には、シフトノブスイッチ、変速機のシフトセンサ、セレクトセンサ、ニュートラルスイッチ、T/M回転センサ、車速センサ、アイドルスイッチ、マニュアル切替スイッチ、パーキングブレーキスイッチ、ドアスイッチ、ブレーキスイッチ、半クラッチ調整スイッチ、アクセル操作量センサ、クラッチセンサ、油圧スイッチの各入力信号線が接続されている。また、ECU121には、クラッチシステム101の油圧ポンプ114のモータ、ソレノイドバルブ112、坂道発進補助用バルブ、ウォーニング&メータの各出力信号線が接続されている。ECM122には、図示しないがエンジン制御に利用される各種の入力信号線と出力信号線が接続されている。ECM122は、エンジン回転数、アクセル開度、エンジン回転変更要求の各信号をCAN(Controller Area Network;車載ネットワーク)の伝送路を介してECU121に送信することができる。
【0029】
なお、本発明で使用するクラッチ回転数は、クラッチのドリブン側の回転数であり、トランスミッションのインプットシャフトの回転数と同一である。図示しないインプットシャフト回転数センサが検出したインプットシャフト回転数からクラッチ回転数を求めることができる。あるいは車速センサが検出した車速から現在ギア段のギア比を用いてクラッチ回転数を求めることができる。クラッチ回転数は、車速相当のエンジン回転数を表している。
【0030】
以下、本発明の惰行制御装置1の動作を説明する。
【0031】
図5により、惰行制御の作動概念を説明する。ただし、ここでは惰行制御中の目標エンジン回転数はアイドル回転数とする。横軸は時間と制御の流れを示し、縦軸はエンジン回転数を示す。アイドル回転の状態からアクセルペダル141が大きく踏み込まれてアクセル開度が70%の状態が継続する間、エンジン回転数142が上昇し、車両が加速される。エンジン回転数142が安定し、アクセルペダル141の踏み込みが小さくなりアクセル開度が35%になったとき後述する惰行制御開始条件が成立したとする。惰行制御開始により、クラッチが断に制御され、エンジン回転数142がアイドル回転数に制御される。車両は惰行制御走行することになる。その後、アクセルペダルの踏み込みがなくなってアクセル開度が0%になるか又はその他の惰行制御終了条件が成立したとする。惰行制御終了により、エンジンが回転合わせ制御され、クラッチが接に制御される。この例では、アクセル開度が0%であるので、エンジンブレーキの状態となり、車両は減速される。
【0032】
惰行制御が行われなかったとすると、惰行制御の実行期間の間、破線のようにエンジン回転数が高いまま維持されることになるので、燃料が無駄に消費されるが、惰行制御が行われることで、惰行制御中はエンジン回転数142がアイドル回転数となり燃料が節約される。
【0033】
図6に惰行制御判定マップ2をグラフイメージで示す。
【0034】
惰行制御判定マップ2は、横軸をアクセル開度とし、縦軸をクラッチ回転数とするマップである。惰行制御判定マップ2は、エンジン出力トルクが負となるマイナス領域MAと、エンジン出力トルクが正となるプラス領域PAとに分けることができる。マイナス領域MAは、エンジン要求トルクよりもエンジンのフリクションが大きく、エンジン出力トルクが負となる領域である。プラス領域PAは、エンジン要求トルクがエンジンのフリクションよりも大きいため、エンジン出力トルクが正となる領域である。マイナス領域MAとプラス領域PAの境界となるエンジン出力トルクゼロ線ZLは、背景技術で述べたようにエンジンが外部に対して仕事をせず、燃料が無駄に消費されている状態を示している。
【0035】
本実施形態では、惰行制御判定マップ2のエンジン出力トルクゼロ線ZLよりやや左(アクセル開度が小さい側)に惰行制御しきい線TLが設定される。惰行制御判定マップ2には、マイナス領域MAとプラス領域PAとの間に惰行制御しきい線TLを含む有限幅の惰行制御可能領域CAが設定される。惰行制御判定マップ2には、クラッチ回転数の下限しきい線ULが設定されている。下限しきい線ULは、アクセル開度とは無関係にクラッチ回転数の下限しきい値を規定したものである。下限しきい線ULは、アイドル状態におけるクラッチ回転数よりも図示のようにやや上に設定される。
【0036】
惰行制御装置1は、次の4つの惰行開始条件が全て成立したとき、惰行制御を開始するようになっている。
(1)アクセルペダルの操作速度がしきい値範囲内
(2)惰行制御判定マップ2においてクラッチ回転数とアクセル開度のプロット点が惰行制御しきい線TLをアクセル戻し方向で通過
(3)惰行制御判定マップ2へのプロット点が惰行制御可能領域CA内
(4)惰行制御判定マップ2においてクラッチ回転数が下限しきい線UL以上
【0037】
惰行制御装置1は、次の2つの惰行終了条件がひとつでも成立したとき、惰行制御を終了するようになっている。
(1)アクセルペダルの操作速度がしきい値範囲外
(2)惰行制御判定マップ2へのプロット点が惰行制御可能領域CA外
【0038】
惰行制御判定マップ2と惰行開始条件、惰行終了条件に従う惰行制御装置1の動作を説明する。
【0039】
惰行制御実行部3は、アクセルペダル操作量に基づくアクセル開度と、インプットシャフト回転数又は車速から求めたクラッチ回転数とを常に監視し、図6の惰行制御判定マップ2上に、アクセル開度とクラッチ回転数の座標点をプロットする。時間の経過に伴い座標点が移動する。このとき、座標点が惰行制御可能領域CA内に存在する場合、惰行制御実行部3は、惰行制御を開始するか否かの判定を行うようになる。座標点が惰行制御可能領域CA内に存在しない場合、惰行制御実行部3は、惰行制御を開始するか否かの判定を行わない。
【0040】
次に、座標点が惰行制御しきい線TLをアクセル開度が減少する方向に通過すると、惰行制御実行部3は、惰行制御を開始する。すなわち、惰行制御装置1は、クラッチを断に制御すると共に、ECM122がエンジンに指示する制御アクセル開度をアイドル相当に制御する。これにより、クラッチは断となり、エンジンはアイドル状態になる。
【0041】
図6に座標点の移動方向を矢印で示したように、アクセル開度が減少する方向とは、図示左方向である。もし、座標点が惰行制御しきい線TLを通過しても、座標点の移動方向が図示右方向の成分を有する場合、アクセル開度は増加するので、惰行制御実行部3は、惰行制御を開始しない。
【0042】
惰行制御実行部3は、惰行制御を開始した後も、アクセル開度とクラッチ回転数とを常に監視し、惰行制御判定マップ2に、アクセル開度とクラッチ回転数の座標点をプロットする。座標点が惰行制御可能領域CAから外に出たとき、惰行制御実行部3は、惰行制御を終了する。
【0043】
以上の動作により、アクセルペダルが踏み込み側に操作されているときは、アクセル開度とクラッチ回転数の座標点が惰行制御しきい線TLを通過しても惰行制御が開始されず、アクセルペダルが戻し側に操作されているときのみ、座標点が惰行制御しきい線TLを通過することで惰行制御が開始されるので、運転者は、違和感がなくなる。
【0044】
惰行制御実行部3は、座標点が下限しきい線ULよりも下に存在する(クラッチ回転数が下限しきい値より低い)ときは、惰行制御を開始しない。これは、エンジンがアイドル状態のときにクラッチを断にしても燃料消費を抑える効果が多くは期待できないからである。よって、惰行制御実行部3は、座標点が下限しきい線ULよりも上に存在するときのみ、惰行制御を開始することになる。
【0045】
図7により、惰行制御による燃費削減効果を説明する。
【0046】
まず、惰行制御を行わないものとする。エンジン回転数は、約30sから約200sまでの間、1600〜1700rpmの範囲で遷移しており、約200sから約260sまでの間に、約1700rpmから約700rpm(アイドル回転数)へ低下している。
【0047】
エンジントルクは、約30sから約100sまでの間に増加しているが、その後、減少に転じ、約150sまで減少を続けている。エンジントルクは、約150sから約160sまでほぼ0Nmであり、約160sから約200sまでの間に増加するが、約200sにてほぼ0Nmになる。結果的に、エンジントルクがほぼ0Nmとなる期間は、約150sから約160sまで(楕円B1)、約200sから約210sまで(楕円B2)、約220sから約260sまで(楕円B3)の3箇所である。
【0048】
燃料消費量(縦軸目盛りなし;便宜上、エンジントルクと重なるように配置してある)は、約50sから約200sまではエンジントルクの遷移にほぼ随伴して変化している。エンジントルクがほぼ0Nmであっても、燃料消費量は0ではない。
【0049】
ここで、惰行制御を行うものとすると、エンジントルクがほぼ0Nmとなる期間において、エンジン回転数がアイドル回転数に制御されることになる。グラフには、惰行制御を行わないエンジン回転数の線(実線)から別れるように惰行制御時のエンジン回転数の線(太い実線)が示される。惰行制御は、楕円B1,B2,B3の3回にわたり実行された。この惰行制御が行われた期間における燃料消費量は、惰行制御を行わない場合の燃料消費量を下回っており、燃料消費が節約されたことが分かる。
【0050】
次に、惰行制御判定マップ2の具体的な設定例を説明する。
【0051】
図8に示されるように、惰行制御判定マップ2を作成するために、アクセル開度とクラッチ回転数の特性を実測し、横軸をアクセル開度とし縦軸をクラッチ回転数(=エンジン回転数;クラッチ接のとき)としたグラフを作成する。これにより、実測したエンジン出力トルクゼロ線ZLを描くことができる。エンジン出力トルクゼロ線ZLよりも左側全体がマイナス領域MAであり、右側全体がプラス領域PAである。
【0052】
エンジン出力トルクゼロ線ZLのやや左側に惰行制御しきい線TLを定義して描く。惰行制御しきい線TLのやや左側に減速ゼロしきい線TLgを推測して描く。エンジン出力トルクゼロ線ZLのやや右側に加速ゼロしきい線TLkを推測して描く。減速ゼロしきい線TLgと加速ゼロしきい線TLkに挟まれた領域を惰行制御可能領域CAと定義する。下限しきい線ULは、この例では、880rpmに設定する。
【0053】
なお、減速ゼロしきい線TLg、加速ゼロしきい線TLkは、運転者が運転しづらくない程度に設定するが、人間の感覚の問題であるため設計では数値化できないので、実車でチューニングする。惰行制御しきい線TLは、減速ゼロしきい線TLgと加速ゼロしきい線TLkの中央に設定する。
【0054】
以上のように作成した図8のグラフを適宜に数値化(離散化)して記憶素子に書き込むことにより、惰行制御実行部3がその演算処理に利用可能な惰行制御判定マップ2が得られる。
【0055】
次に、本発明の惰行制御装置1におけるクラッチ断累積時間に基づくクラッチ部材(以下、レリーズベアリング165)の保護動作の手順について図9、図10、図11を参照しつつ説明する。
【0056】
車両の製造時若しくは販売時、及びレリーズベアリング165の交換時、惰行制御装置1内のクラッチ断累積時間Tcを外部からリセット(ゼロクリア)しておくものとする。その後、惰行制御装置1は、惰行開始条件の成立により惰行制御を開始し、惰行終了条件の成立により惰行制御を終了することを繰り返す。
【0057】
図9に示されるように、断時間累積計測部4は、ステップS91にて、惰行制御中かどうか判定する。NOの場合、終わりへ進む。YESの場合、断時間累積計測部4は、ステップS92にて、クラッチが断になっている時間を累積計測する。これにより、惰行制御中であれば、クラッチ断累積時間Tcがカウントアップされ、惰行制御中でなければクラッチ断累積時間Tcは同じ値を維持する。
【0058】
図10に示されるように、時間超過警告部6は、ステップS101にて、クラッチ断累積時間Tcが所定時間Tlim1を超えたかどうか判定する。所定時間Tlim1は、あらかじめ実験によりレリーズベアリング165の疲労を調べ、警告を行うのに適切な時間を設定しておくとよい。NOの場合、終わりへ進む。YESの場合、ステップS102に進み、警告表示を行う。警告表示は、レリーズベアリング165のメンテナンス(交換)を行うよう運転者に促すものであるから、適宜な視聴覚的な手段を用いて行う。
【0059】
図11に示されるように、時間超過制限部5は、ステップS111にて、クラッチ断累積時間Tcが所定時間Tlim2を超えたかどうか判定する。所定時間Tlim2は、あらかじめ実験によりレリーズベアリング165の疲労を調べ、惰行制御のような長時間のクラッチ断が禁止されるべき時間を設定しておくとよい。NOの場合、終わりへ進む。YESの場合、ステップS112に進み、惰行制御を禁止する。
【0060】
以上説明したように、本発明の惰行制御装置1によれば、クラッチ断累積時間Tcを計測し、クラッチ断累積時間Tcが所定時間Tlim2を超えたとき惰行制御を禁止するようにしたので、レリーズベアリング劣化のために路上故障が起きることが未然に防止される。
【0061】
本発明の惰行制御装置1によれば、クラッチ断累積時間Tcを計測し、クラッチ断累積時間Tcが所定時間Tlim1を超えたとき警告表示を行うようにしたので、メンテナンスを時期適切に行うことができ、レリーズベアリング劣化のために路上故障が起きることが未然に防止される。
【0062】
警告表示に用いる所定時間Tlim1と惰行制御禁止に用いる所定時間Tlim2は、いずれもレリーズベアリング165の疲労の指標となるものであるが、両者の値を同じとし、警告と惰行制御禁止が同時となるようにしてもよい。この場合、惰行制御禁止となるまでレリーズベアリング165を使い切ることができる。また、Tlim1<Tlim2のように異ならせてもよい。この場合、惰行制御禁止となる前に、運転者がレリーズベアリング165の交換を行うことができる。
【符号の説明】
【0063】
1 惰行制御装置
2 惰行制御判定マップ
3 惰行制御実行部
4 断時間累積計測部
5 時間超過制限部
6 時間超過警告部
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行中にクラッチを断にしエンジンをアイドル状態に戻して燃料消費を抑える惰行制御装置に係り、レリーズベアリング劣化による路上故障を防止する惰行制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両において、クラッチが断のとき、アクセルペダルが踏み込まれると、アクセルが開かれてエンジンがいわゆる空ぶかしとなり、エンジン回転数は、アクセル開度に対応したエンジン回転数に落ち着く。このとき、エンジンが発生させた駆動力とエンジン内部抵抗(フリクション)とが均衡し、エンジン出力トルクは0である。すなわち、エンジンは、外部に対して全く仕事をせず、燃料が無駄に消費される。例えば、エンジン回転数が2000rpmで空ぶかしをしたとすると、運転者には大きなエンジン音が聞こえるので、相当な量の燃料が無駄に消費されていることが実感できる。
【0003】
エンジンが外部に対して仕事をしない状態は、前述したクラッチ断のときの空ぶかしに限らず、車両の走行中にも発生している。すなわち、エンジンは、空ぶかしのときと同じようにアクセル開度に対応したエンジン回転数で回転するだけで、車両の加速・減速に寄与しない。このとき、エンジンを回転させるためだけに燃料が消費されており、非常に無駄である。
【0004】
本出願人は、エンジンが回転はしているが外部に対して仕事をしないときに、クラッチを断にし、エンジンをアイドル状態に戻して燃料消費を抑える惰行制御(燃費走行制御とも言う)を行う惰行制御装置を提案した(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−342832号公報
【特許文献2】特開平8−67175号公報
【特許文献3】特開2001−304305号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述の提案に加え、本出願人は、クラッチ回転数とアクセル開度とを指標とする惰行制御判定マップを用い、クラッチ回転数とアクセル開度のプロット点が惰行制御可能領域内にあって、アクセルペダル操作速度が所定範囲内にて、かつクラッチ回転数とアクセル開度のプロット点が惰行制御しきい線をアクセル開度減少方向に通過したとき、クラッチを断すると共にエンジン回転数を低下させて惰行制御を開始し、アクセルペダル操作速度が所定範囲外となったか又はプロット点が惰行制御可能領域外に出たとき惰行制御を終了する惰行制御装置を提案中である。
【0007】
ところで、クラッチでは、エンジンのフライホイールに対してクラッチ板がスプリングの力で圧接されている。クラッチを断するときは、レリーズベアリングでスプリングを押してクラッチ板をフライホイールから離す。レリーズベアリングは、クラッチ板が取り付けられた変速機のインプットシャフトを軸承しているので、レリーズベアリングをスプリングで押すときは、レリーズフォークでレリーズベアリングを押して軸方向に移動させることになる。
【0008】
このクラッチ断の動作時、レリーズベアリングにスラスト荷重がかかり、このスラスト荷重がレリーズベアリングの劣化要因となる。レリーズベアリングの劣化は、クラッチ断が継続する時間に比例して進むとされ、従来よりクラッチペダルへの足載せがレリーズベアリングの劣化を早めることが知られている。
【0009】
惰行制御では、クラッチ断が継続する時間が長い。変速時におけるクラッチ断の時間が、例えば、2〜3秒程度の短時間であるのに対し、惰行制御におけるクラッチ断の時間は、例えば、20〜30秒の長時間に及ぶ。このように、惰行制御を行うと、変速時よりも長いクラッチ断の間、継続してスラスト荷重がかかることになるため、レリーズベアリングの寿命が短くなることが避けられない。しかし、レリーズベアリング劣化のために路上故障が起きるのは好ましくない。
【0010】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、レリーズベアリング劣化による路上故障を防止する惰行制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために本発明は、クラッチ回転数とアクセル開度で参照される惰行制御判定マップと、前記惰行制御判定マップへのクラッチ回転数とアクセル開度のプロット点が惰行制御可能領域内にあって、アクセルペダル操作速度が所定範囲内にて、かつクラッチ回転数とアクセル開度のプロット点が惰行制御しきい線をアクセル開度減少方向に通過したとき、クラッチを断すると共にエンジン回転数を低下させて惰行制御を開始し、アクセルペダル操作速度が所定範囲外となったか又はプロット点が惰行制御可能領域外に出たとき惰行制御を終了する惰行制御実行部と、惰行制御中にクラッチが断になっている時間を累積計測する断時間累積計測部と、前記断時間累積計測部が計測したクラッチ断累積時間がクラッチにおける部材の疲労の指標となる所定時間を超えた場合、惰行制御を禁止する時間超過制限部とを備えたものである。
【0012】
また、本発明は、クラッチ回転数とアクセル開度で参照される惰行制御判定マップと、前記惰行制御判定マップへのクラッチ回転数とアクセル開度のプロット点が惰行制御可能領域内にあって、アクセルペダル操作速度が所定範囲内にて、かつクラッチ回転数とアクセル開度のプロット点が惰行制御しきい線をアクセル開度減少方向に通過したとき、クラッチを断すると共にエンジン回転数を低下させて惰行制御を開始し、アクセルペダル操作速度が所定範囲外となったか又はプロット点が惰行制御可能領域外に出たとき惰行制御を終了する惰行制御実行部と、惰行制御中にクラッチが断になっている時間を累積計測する断時間累積計測部と、前記断時間累積計測部が計測したクラッチ断累積時間がクラッチにおける部材の疲労の指標となる所定時間を超えた場合、警告表示を行う時間超過警告部とを備えたものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明は次の如き優れた効果を発揮する。
【0014】
(1)レリーズベアリング劣化による路上故障を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の惰行制御装置のブロック構成図である。
【図2】本発明の惰行制御装置が適用される車両のクラッチシステムのブロック構成図である。
【図3】図2のクラッチシステムを実現するアクチュエータの構成図である。
【図4】本発明の惰行制御装置が適用される車両の入出力構成図である。
【図5】惰行制御の概要を説明するための作動概念図である。
【図6】惰行制御判定マップのグラフイメージ図である。
【図7】惰行制御による燃費削減効果を説明するためのグラフである。
【図8】惰行制御判定マップを作成するために実測したアクセル開度とクラッチ回転数のグラフである。
【図9】本発明の惰行制御装置における断時間累積計測の手順を示すフローチャートである。
【図10】本発明の惰行制御装置における時間超過警告の手順を示すフローチャートである。
【図11】本発明の惰行制御装置における時間超過制限の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態を添付図面に基づいて詳述する。
【0017】
図1に示されるように、本発明に係る惰行制御装置1は、クラッチ回転数とアクセル開度で参照される惰行制御判定マップ2と、惰行制御判定マップ2へのクラッチ回転数とアクセル開度のプロット点が惰行制御可能領域内にあって、アクセルペダル操作速度が所定範囲内にて、かつクラッチ回転数とアクセル開度のプロット点が惰行制御しきい線をアクセル開度減少方向に通過したとき、クラッチを断すると共にエンジン回転数を低下させて惰行制御を開始し、アクセルペダル操作速度が所定範囲外となったか又はプロット点が惰行制御可能領域外に出たとき惰行制御を終了する惰行制御実行部3と、惰行制御中にクラッチが断になっている時間を累積計測する断時間累積計測部4と、断時間累積計測部4が計測したクラッチ断累積時間がクラッチにおける部材の疲労の指標となる所定時間を超えた場合、惰行制御を禁止する時間超過制限部5と、断時間累積計測部4が計測したクラッチ断累積時間がクラッチにおける部材の疲労の指標となる所定時間を超えた場合、警告表示を行う時間超過警告部6とを備える。
【0018】
ここで、クラッチ108(図2参照)における部材の疲労とは、主としてレリーズベアリング165が変速時よりも長時間のスラスト荷重によって疲労することを表しているが、他の部材の疲労も含めてよい。
【0019】
惰行制御装置1を構成する惰行制御判定マップ2、惰行制御実行部3、断時間累積計測部4、時間超過制限部5、時間超過警告部6は、例えば、ECU(図示せず)に搭載されるのが好ましい。
【0020】
本発明の惰行制御装置1を搭載する車両について各部を説明する。
【0021】
図2に示されるように、本発明の惰行制御装置1を搭載する車両のクラッチシステム101は、マニュアル式とECU制御による自動式との両立方式である。クラッチペダル102に機械的に連結されたクラッチマスターシリンダ103は、運転者によるクラッチペダル102の踏み込み・戻し操作に応じて中間シリンダ(クラッチフリーオペレーティングシリンダ、切替シリンダとも言う)104に動作油を供給するようになっている。一方、ECU(図示せず)で制御されるクラッチフリーアクチュエータユニット105は、クラッチ断・接の指令により中間シリンダ104に動作油を供給するようになっている。中間シリンダ104は、クラッチスレーブシリンダ106に動作油を供給するようになっている。クラッチスレーブシリンダ106のピストン107がクラッチ108の可動部に機械的に連結されている。
【0022】
クラッチ108は、エンジンのフライホイール161に対向するクラッチ板162と、クラッチ板162をフライホイール161に圧接させるスプリング163と、インプットシャフト164に沿って移動しクラッチ板162をフライホイール161から離反させるレリーズベアリング165と、ピストン107に駆動されてレリーズベアリング165を移動させるレリーズフォーク166とを有する。スプリング163は、円錐状に形成され、外周部がクラッチ板162に接し、内周部がレリーズベアリング165に接する。レリーズベアリング165は、変速機のインプットシャフト164を軸承し、かつインプットシャフト164に対して軸方向に移動自在に構成される。レリーズフォーク166は、てこであり、長手方向の一端にピストン107が連結され、他端にレリーズベアリング165が連結され、一端と他端の間に支点167が設けられる。
【0023】
図2の構成によるクラッチ108においては、クラッチスレーブシリンダ106内に動作油が充填されてピストン107のロッドが伸張すると、レリーズフォーク166が回動してレリーズベアリング165をスプリング163から離れる方向に移動させるので、クラッチ板162に対するスプリング163の圧接力がなくなり、クラッチ板162がフライホイール161から離れてフライホイール161からクラッチ板162へ回転が伝達されなくなる。すなわち、クラッチ断となる。
【0024】
一方、クラッチスレーブシリンダ106内の動作油が排出されてピストン107のロッドが短縮すると、レリーズフォーク166が前述とは逆向きに回動してレリーズベアリング165をスプリング163に押し付ける方向に移動させるので、クラッチ板162に対してスプリング163の圧接力が働くようになり、クラッチ板162がフライホイール161に圧接され、フライホイール161からクラッチ板162へ回転が伝達されるようになる。すなわち、クラッチ接となる。
【0025】
なお、クラッチ108は、図2のものとは異なり、レリーズベアリング165がスプリング163を押し付けたときに、スプリング163の外周部が反転してクラッチ断となるように構成することもできる。この場合、ピストン107が伸張する方向が図2とは逆になるようクラッチスレーブシリンダ106を反対向きに設置する(図3、図4参照)。これにより、アクチュエータの動作ロジックは、クラッチ108の構成によらず共通となる。
【0026】
図3に示されるように、アクチュエータ110は、クラッチフリーアクチュエータ111を備える。クラッチフリーアクチュエータ111は、中間シリンダ104とクラッチフリーアクチュエータユニット105とを備える。クラッチフリーアクチュエータユニット105は、ソレノイドバルブ112、リリーフバルブ113、油圧ポンプ114を備える。中間シリンダ104は、プライマリピストン116とセカンダリピストン117とが直列配置されてなり、クラッチマスターシリンダ103からの動作油によりプライマリピストン116がストロークすると、セカンダリピストン117が随伴してストロークするようになっている。また、中間シリンダ104は、クラッチフリーアクチュエータユニット105からの動作油によりセカンダリピストン117がストロークするようになっている。セカンダリピストン117のストロークに応じてクラッチスレーブシリンダ106に動作油が供給される。この構成により、マニュアル操作が行われたときには、優先的にマニュアル操作どおりのクラッチ断・接が実行され、マニュアル操作が行われていないときにはECU制御どおりのクラッチ断・接が実行される。
【0027】
なお、本発明の惰行制御装置は、マニュアル式のない自動式のみのクラッチシステムにも適用できる。
【0028】
図4に示されるように、車両には、主として変速機・クラッチを制御するECU121と、主としてエンジンを制御するECM122が設けられる。ECU121には、シフトノブスイッチ、変速機のシフトセンサ、セレクトセンサ、ニュートラルスイッチ、T/M回転センサ、車速センサ、アイドルスイッチ、マニュアル切替スイッチ、パーキングブレーキスイッチ、ドアスイッチ、ブレーキスイッチ、半クラッチ調整スイッチ、アクセル操作量センサ、クラッチセンサ、油圧スイッチの各入力信号線が接続されている。また、ECU121には、クラッチシステム101の油圧ポンプ114のモータ、ソレノイドバルブ112、坂道発進補助用バルブ、ウォーニング&メータの各出力信号線が接続されている。ECM122には、図示しないがエンジン制御に利用される各種の入力信号線と出力信号線が接続されている。ECM122は、エンジン回転数、アクセル開度、エンジン回転変更要求の各信号をCAN(Controller Area Network;車載ネットワーク)の伝送路を介してECU121に送信することができる。
【0029】
なお、本発明で使用するクラッチ回転数は、クラッチのドリブン側の回転数であり、トランスミッションのインプットシャフトの回転数と同一である。図示しないインプットシャフト回転数センサが検出したインプットシャフト回転数からクラッチ回転数を求めることができる。あるいは車速センサが検出した車速から現在ギア段のギア比を用いてクラッチ回転数を求めることができる。クラッチ回転数は、車速相当のエンジン回転数を表している。
【0030】
以下、本発明の惰行制御装置1の動作を説明する。
【0031】
図5により、惰行制御の作動概念を説明する。ただし、ここでは惰行制御中の目標エンジン回転数はアイドル回転数とする。横軸は時間と制御の流れを示し、縦軸はエンジン回転数を示す。アイドル回転の状態からアクセルペダル141が大きく踏み込まれてアクセル開度が70%の状態が継続する間、エンジン回転数142が上昇し、車両が加速される。エンジン回転数142が安定し、アクセルペダル141の踏み込みが小さくなりアクセル開度が35%になったとき後述する惰行制御開始条件が成立したとする。惰行制御開始により、クラッチが断に制御され、エンジン回転数142がアイドル回転数に制御される。車両は惰行制御走行することになる。その後、アクセルペダルの踏み込みがなくなってアクセル開度が0%になるか又はその他の惰行制御終了条件が成立したとする。惰行制御終了により、エンジンが回転合わせ制御され、クラッチが接に制御される。この例では、アクセル開度が0%であるので、エンジンブレーキの状態となり、車両は減速される。
【0032】
惰行制御が行われなかったとすると、惰行制御の実行期間の間、破線のようにエンジン回転数が高いまま維持されることになるので、燃料が無駄に消費されるが、惰行制御が行われることで、惰行制御中はエンジン回転数142がアイドル回転数となり燃料が節約される。
【0033】
図6に惰行制御判定マップ2をグラフイメージで示す。
【0034】
惰行制御判定マップ2は、横軸をアクセル開度とし、縦軸をクラッチ回転数とするマップである。惰行制御判定マップ2は、エンジン出力トルクが負となるマイナス領域MAと、エンジン出力トルクが正となるプラス領域PAとに分けることができる。マイナス領域MAは、エンジン要求トルクよりもエンジンのフリクションが大きく、エンジン出力トルクが負となる領域である。プラス領域PAは、エンジン要求トルクがエンジンのフリクションよりも大きいため、エンジン出力トルクが正となる領域である。マイナス領域MAとプラス領域PAの境界となるエンジン出力トルクゼロ線ZLは、背景技術で述べたようにエンジンが外部に対して仕事をせず、燃料が無駄に消費されている状態を示している。
【0035】
本実施形態では、惰行制御判定マップ2のエンジン出力トルクゼロ線ZLよりやや左(アクセル開度が小さい側)に惰行制御しきい線TLが設定される。惰行制御判定マップ2には、マイナス領域MAとプラス領域PAとの間に惰行制御しきい線TLを含む有限幅の惰行制御可能領域CAが設定される。惰行制御判定マップ2には、クラッチ回転数の下限しきい線ULが設定されている。下限しきい線ULは、アクセル開度とは無関係にクラッチ回転数の下限しきい値を規定したものである。下限しきい線ULは、アイドル状態におけるクラッチ回転数よりも図示のようにやや上に設定される。
【0036】
惰行制御装置1は、次の4つの惰行開始条件が全て成立したとき、惰行制御を開始するようになっている。
(1)アクセルペダルの操作速度がしきい値範囲内
(2)惰行制御判定マップ2においてクラッチ回転数とアクセル開度のプロット点が惰行制御しきい線TLをアクセル戻し方向で通過
(3)惰行制御判定マップ2へのプロット点が惰行制御可能領域CA内
(4)惰行制御判定マップ2においてクラッチ回転数が下限しきい線UL以上
【0037】
惰行制御装置1は、次の2つの惰行終了条件がひとつでも成立したとき、惰行制御を終了するようになっている。
(1)アクセルペダルの操作速度がしきい値範囲外
(2)惰行制御判定マップ2へのプロット点が惰行制御可能領域CA外
【0038】
惰行制御判定マップ2と惰行開始条件、惰行終了条件に従う惰行制御装置1の動作を説明する。
【0039】
惰行制御実行部3は、アクセルペダル操作量に基づくアクセル開度と、インプットシャフト回転数又は車速から求めたクラッチ回転数とを常に監視し、図6の惰行制御判定マップ2上に、アクセル開度とクラッチ回転数の座標点をプロットする。時間の経過に伴い座標点が移動する。このとき、座標点が惰行制御可能領域CA内に存在する場合、惰行制御実行部3は、惰行制御を開始するか否かの判定を行うようになる。座標点が惰行制御可能領域CA内に存在しない場合、惰行制御実行部3は、惰行制御を開始するか否かの判定を行わない。
【0040】
次に、座標点が惰行制御しきい線TLをアクセル開度が減少する方向に通過すると、惰行制御実行部3は、惰行制御を開始する。すなわち、惰行制御装置1は、クラッチを断に制御すると共に、ECM122がエンジンに指示する制御アクセル開度をアイドル相当に制御する。これにより、クラッチは断となり、エンジンはアイドル状態になる。
【0041】
図6に座標点の移動方向を矢印で示したように、アクセル開度が減少する方向とは、図示左方向である。もし、座標点が惰行制御しきい線TLを通過しても、座標点の移動方向が図示右方向の成分を有する場合、アクセル開度は増加するので、惰行制御実行部3は、惰行制御を開始しない。
【0042】
惰行制御実行部3は、惰行制御を開始した後も、アクセル開度とクラッチ回転数とを常に監視し、惰行制御判定マップ2に、アクセル開度とクラッチ回転数の座標点をプロットする。座標点が惰行制御可能領域CAから外に出たとき、惰行制御実行部3は、惰行制御を終了する。
【0043】
以上の動作により、アクセルペダルが踏み込み側に操作されているときは、アクセル開度とクラッチ回転数の座標点が惰行制御しきい線TLを通過しても惰行制御が開始されず、アクセルペダルが戻し側に操作されているときのみ、座標点が惰行制御しきい線TLを通過することで惰行制御が開始されるので、運転者は、違和感がなくなる。
【0044】
惰行制御実行部3は、座標点が下限しきい線ULよりも下に存在する(クラッチ回転数が下限しきい値より低い)ときは、惰行制御を開始しない。これは、エンジンがアイドル状態のときにクラッチを断にしても燃料消費を抑える効果が多くは期待できないからである。よって、惰行制御実行部3は、座標点が下限しきい線ULよりも上に存在するときのみ、惰行制御を開始することになる。
【0045】
図7により、惰行制御による燃費削減効果を説明する。
【0046】
まず、惰行制御を行わないものとする。エンジン回転数は、約30sから約200sまでの間、1600〜1700rpmの範囲で遷移しており、約200sから約260sまでの間に、約1700rpmから約700rpm(アイドル回転数)へ低下している。
【0047】
エンジントルクは、約30sから約100sまでの間に増加しているが、その後、減少に転じ、約150sまで減少を続けている。エンジントルクは、約150sから約160sまでほぼ0Nmであり、約160sから約200sまでの間に増加するが、約200sにてほぼ0Nmになる。結果的に、エンジントルクがほぼ0Nmとなる期間は、約150sから約160sまで(楕円B1)、約200sから約210sまで(楕円B2)、約220sから約260sまで(楕円B3)の3箇所である。
【0048】
燃料消費量(縦軸目盛りなし;便宜上、エンジントルクと重なるように配置してある)は、約50sから約200sまではエンジントルクの遷移にほぼ随伴して変化している。エンジントルクがほぼ0Nmであっても、燃料消費量は0ではない。
【0049】
ここで、惰行制御を行うものとすると、エンジントルクがほぼ0Nmとなる期間において、エンジン回転数がアイドル回転数に制御されることになる。グラフには、惰行制御を行わないエンジン回転数の線(実線)から別れるように惰行制御時のエンジン回転数の線(太い実線)が示される。惰行制御は、楕円B1,B2,B3の3回にわたり実行された。この惰行制御が行われた期間における燃料消費量は、惰行制御を行わない場合の燃料消費量を下回っており、燃料消費が節約されたことが分かる。
【0050】
次に、惰行制御判定マップ2の具体的な設定例を説明する。
【0051】
図8に示されるように、惰行制御判定マップ2を作成するために、アクセル開度とクラッチ回転数の特性を実測し、横軸をアクセル開度とし縦軸をクラッチ回転数(=エンジン回転数;クラッチ接のとき)としたグラフを作成する。これにより、実測したエンジン出力トルクゼロ線ZLを描くことができる。エンジン出力トルクゼロ線ZLよりも左側全体がマイナス領域MAであり、右側全体がプラス領域PAである。
【0052】
エンジン出力トルクゼロ線ZLのやや左側に惰行制御しきい線TLを定義して描く。惰行制御しきい線TLのやや左側に減速ゼロしきい線TLgを推測して描く。エンジン出力トルクゼロ線ZLのやや右側に加速ゼロしきい線TLkを推測して描く。減速ゼロしきい線TLgと加速ゼロしきい線TLkに挟まれた領域を惰行制御可能領域CAと定義する。下限しきい線ULは、この例では、880rpmに設定する。
【0053】
なお、減速ゼロしきい線TLg、加速ゼロしきい線TLkは、運転者が運転しづらくない程度に設定するが、人間の感覚の問題であるため設計では数値化できないので、実車でチューニングする。惰行制御しきい線TLは、減速ゼロしきい線TLgと加速ゼロしきい線TLkの中央に設定する。
【0054】
以上のように作成した図8のグラフを適宜に数値化(離散化)して記憶素子に書き込むことにより、惰行制御実行部3がその演算処理に利用可能な惰行制御判定マップ2が得られる。
【0055】
次に、本発明の惰行制御装置1におけるクラッチ断累積時間に基づくクラッチ部材(以下、レリーズベアリング165)の保護動作の手順について図9、図10、図11を参照しつつ説明する。
【0056】
車両の製造時若しくは販売時、及びレリーズベアリング165の交換時、惰行制御装置1内のクラッチ断累積時間Tcを外部からリセット(ゼロクリア)しておくものとする。その後、惰行制御装置1は、惰行開始条件の成立により惰行制御を開始し、惰行終了条件の成立により惰行制御を終了することを繰り返す。
【0057】
図9に示されるように、断時間累積計測部4は、ステップS91にて、惰行制御中かどうか判定する。NOの場合、終わりへ進む。YESの場合、断時間累積計測部4は、ステップS92にて、クラッチが断になっている時間を累積計測する。これにより、惰行制御中であれば、クラッチ断累積時間Tcがカウントアップされ、惰行制御中でなければクラッチ断累積時間Tcは同じ値を維持する。
【0058】
図10に示されるように、時間超過警告部6は、ステップS101にて、クラッチ断累積時間Tcが所定時間Tlim1を超えたかどうか判定する。所定時間Tlim1は、あらかじめ実験によりレリーズベアリング165の疲労を調べ、警告を行うのに適切な時間を設定しておくとよい。NOの場合、終わりへ進む。YESの場合、ステップS102に進み、警告表示を行う。警告表示は、レリーズベアリング165のメンテナンス(交換)を行うよう運転者に促すものであるから、適宜な視聴覚的な手段を用いて行う。
【0059】
図11に示されるように、時間超過制限部5は、ステップS111にて、クラッチ断累積時間Tcが所定時間Tlim2を超えたかどうか判定する。所定時間Tlim2は、あらかじめ実験によりレリーズベアリング165の疲労を調べ、惰行制御のような長時間のクラッチ断が禁止されるべき時間を設定しておくとよい。NOの場合、終わりへ進む。YESの場合、ステップS112に進み、惰行制御を禁止する。
【0060】
以上説明したように、本発明の惰行制御装置1によれば、クラッチ断累積時間Tcを計測し、クラッチ断累積時間Tcが所定時間Tlim2を超えたとき惰行制御を禁止するようにしたので、レリーズベアリング劣化のために路上故障が起きることが未然に防止される。
【0061】
本発明の惰行制御装置1によれば、クラッチ断累積時間Tcを計測し、クラッチ断累積時間Tcが所定時間Tlim1を超えたとき警告表示を行うようにしたので、メンテナンスを時期適切に行うことができ、レリーズベアリング劣化のために路上故障が起きることが未然に防止される。
【0062】
警告表示に用いる所定時間Tlim1と惰行制御禁止に用いる所定時間Tlim2は、いずれもレリーズベアリング165の疲労の指標となるものであるが、両者の値を同じとし、警告と惰行制御禁止が同時となるようにしてもよい。この場合、惰行制御禁止となるまでレリーズベアリング165を使い切ることができる。また、Tlim1<Tlim2のように異ならせてもよい。この場合、惰行制御禁止となる前に、運転者がレリーズベアリング165の交換を行うことができる。
【符号の説明】
【0063】
1 惰行制御装置
2 惰行制御判定マップ
3 惰行制御実行部
4 断時間累積計測部
5 時間超過制限部
6 時間超過警告部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クラッチ回転数とアクセル開度で参照される惰行制御判定マップと、
前記惰行制御判定マップへのクラッチ回転数とアクセル開度のプロット点が惰行制御可能領域内にあって、アクセルペダル操作速度が所定範囲内にて、かつクラッチ回転数とアクセル開度のプロット点が惰行制御しきい線をアクセル開度減少方向に通過したとき、クラッチを断すると共にエンジン回転数を低下させて惰行制御を開始し、アクセルペダル操作速度が所定範囲外となったか又はプロット点が惰行制御可能領域外に出たとき惰行制御を終了する惰行制御実行部と、
惰行制御中にクラッチが断になっている時間を累積計測する断時間累積計測部と、
前記断時間累積計測部が計測したクラッチ断累積時間がクラッチにおける部材の疲労の指標となる所定時間を超えた場合、惰行制御を禁止する時間超過制限部とを備えたことを特徴とする惰行制御装置。
【請求項2】
クラッチ回転数とアクセル開度で参照される惰行制御判定マップと、
前記惰行制御判定マップへのクラッチ回転数とアクセル開度のプロット点が惰行制御可能領域内にあって、アクセルペダル操作速度が所定範囲内にて、かつクラッチ回転数とアクセル開度のプロット点が惰行制御しきい線をアクセル開度減少方向に通過したとき、クラッチを断すると共にエンジン回転数を低下させて惰行制御を開始し、アクセルペダル操作速度が所定範囲外となったか又はプロット点が惰行制御可能領域外に出たとき惰行制御を終了する惰行制御実行部と、
惰行制御中にクラッチが断になっている時間を累積計測する断時間累積計測部と、
前記断時間累積計測部が計測したクラッチ断累積時間がクラッチにおける部材の疲労の指標となる所定時間を超えた場合、警告表示を行う時間超過警告部とを備えたことを特徴とする惰行制御装置。
【請求項1】
クラッチ回転数とアクセル開度で参照される惰行制御判定マップと、
前記惰行制御判定マップへのクラッチ回転数とアクセル開度のプロット点が惰行制御可能領域内にあって、アクセルペダル操作速度が所定範囲内にて、かつクラッチ回転数とアクセル開度のプロット点が惰行制御しきい線をアクセル開度減少方向に通過したとき、クラッチを断すると共にエンジン回転数を低下させて惰行制御を開始し、アクセルペダル操作速度が所定範囲外となったか又はプロット点が惰行制御可能領域外に出たとき惰行制御を終了する惰行制御実行部と、
惰行制御中にクラッチが断になっている時間を累積計測する断時間累積計測部と、
前記断時間累積計測部が計測したクラッチ断累積時間がクラッチにおける部材の疲労の指標となる所定時間を超えた場合、惰行制御を禁止する時間超過制限部とを備えたことを特徴とする惰行制御装置。
【請求項2】
クラッチ回転数とアクセル開度で参照される惰行制御判定マップと、
前記惰行制御判定マップへのクラッチ回転数とアクセル開度のプロット点が惰行制御可能領域内にあって、アクセルペダル操作速度が所定範囲内にて、かつクラッチ回転数とアクセル開度のプロット点が惰行制御しきい線をアクセル開度減少方向に通過したとき、クラッチを断すると共にエンジン回転数を低下させて惰行制御を開始し、アクセルペダル操作速度が所定範囲外となったか又はプロット点が惰行制御可能領域外に出たとき惰行制御を終了する惰行制御実行部と、
惰行制御中にクラッチが断になっている時間を累積計測する断時間累積計測部と、
前記断時間累積計測部が計測したクラッチ断累積時間がクラッチにおける部材の疲労の指標となる所定時間を超えた場合、警告表示を行う時間超過警告部とを備えたことを特徴とする惰行制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−31941(P2012−31941A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−172554(P2010−172554)
【出願日】平成22年7月30日(2010.7.30)
【出願人】(000000170)いすゞ自動車株式会社 (1,721)
【出願人】(391008559)株式会社トランストロン (30)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月30日(2010.7.30)
【出願人】(000000170)いすゞ自動車株式会社 (1,721)
【出願人】(391008559)株式会社トランストロン (30)
【Fターム(参考)】
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