説明

意匠性仕上げ塗料

【目的】 意匠性に優れた、塗膜表面に凹凸を有する仕上げを有し、しかも塗装機のノズル詰まり等のトラブル発生のおそれのない塗料を開発する。
【構成】 スプレー適性を有するライン塗装用塗料であって、繊維状顔料、針状顔料の少なくとも1種類以上を3質量%〜30質量%含み、更に骨材を3質量%〜50質量%含むことを特徴とする意匠性仕上げ塗料。
骨材は、不定形顔料又は真球顔料であることを特徴とする前記に記載された意匠性仕上げ塗料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工業用ライン塗装に適した建材ボード用の仕上げ塗料に関する。
【背景技術】
【0002】
工業用ライン塗装においては、一般的に塗装作業効率が求められるため、塗装の自動化が容易なスプレー塗装が多く採用されている。ライン塗装におけるスプレー塗装に使用される塗料には、塗装機におけるノズル詰まりなどのトラブルが発生した場合には、生産ライン全体が停止してしまい、生産計画に重大な齟齬を来すおそれがあることから、極力そのようなトラブルが発生することの無いように、スプレー塗装適性に優れた塗料が使用される。
しかしながら、建材ボード市場においては、競争が激化しており、建材ボードのライン塗装用塗料として、表面仕上がりにおいて他社に無い意匠に優れた塗料が求められているというのが現状である。
【特許文献1】特開平11−130980号
【特許文献2】特開平11−240122号
【0003】
本発明者らは、スプレー塗装適性があり、安定してライン塗装に使用できると同時に、建材ボードに塗装された塗膜は凹凸を有して豊かな表情の仕上げを可能とする塗料の開発を行ったものである。
【0004】
意匠性に優れた、塗膜表面に凹凸を有する仕上げとするためには、通常は塗料に使用する骨材、顔料に、粒径の大きなものを混入されることにより、形成される塗膜表面には骨材や顔料の大小による凹凸が発生するため、仕上がりは表情豊かなものとなる。しかしながらライン塗装においてはこうした大きな粒径の骨材、顔料は塗装機のノズル詰まりを起こすおそれがあることから使用ができず、ノズル詰まり等のトラブルの発生がほとんどない顔料を使用し、表情に優れた仕上がりの塗膜を形成することができる塗料を開発することを課題とする。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するため、本発明者は鋭意研究の結果、特定配合になる意匠性仕上げ塗料の開発に成功したものである。しかして、本発明の要旨は以下に存する。
【0006】
スプレー適性を有するライン塗装用塗料であって、繊維状顔料、針状顔料の少なくとも1種類以上を3質量%〜30質量%含み、更に骨材を3質量%〜50質量%含むことを特徴とする意匠性仕上げ塗料。
骨材は、不定形顔料又は真球顔料であることを特徴とする前記に記載された意匠性仕上げ塗料。
以下に詳細に説明する。
【0007】
本願発明の仕上げ塗料においては、溶剤系樹脂、エマルション等水系樹脂、水分散樹脂のいずれも制限無く使用することができる。樹脂としては、ポリウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、酢酸ビニル−アクリル共重合体樹脂、塩化ビニル系樹脂、アクリルシリコン系樹脂、フッ素系樹脂を使用することができる。
【0008】
本願発明に使用する繊維状顔料としては、各種の石油化学系合成繊維を原料とする短繊維顔料が使用できる。使用できる繊維としては、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、レーヨン、ナイロン、テトロン等が例示できる。
【0009】
本願発明に使用する針状顔料としては、針状カルシウムメタシリケート、ゾノライト、チタン酸カリ、ロックウール短繊維、ガラスファイバー短繊維、アルミニウムシリケート、カーボンファイバー短繊維、アラミドファイバー短繊維等が例示できる。
【0010】
本願発明の仕上げ塗料への、少なくとも1種類以上の繊維状顔料、針状顔料の配合割合としては、塗料全量に対して3〜30質量%、好ましくは5〜15質量%、より好ましくは8〜12質量%である。 3質量%未満であると、形成された塗膜に所望の凹凸による仕上がりが望めない。30質量%を超えて配合しても、仕上がり性は、配合量に比例して増大しないばかりか、塗装作業性の低下や塗膜形成が困難となる。
【0011】
本願発明に使用する骨材としては、不定形顔料、真球顔料を例示することができる。
本願発明に使用する不定形顔料としてはシリカ、珪砂、炭化珪素、セラミックス粉、木粉、プラスチック粉等が例示できる。
本願発明に使用する真球顔料としては、アクリルビーズ、セラミックバルーン、ガラスバルーン等が例示される。
その中でも真球顔料が好ましく使用できる。
【0012】
本願発明の仕上げ塗料への、骨材の配合割合としては、塗料全量に対して3〜50質量%、好ましくは5〜30質量%、より好ましくは10〜20質量%である。3質量%未満であると、塗料の流動性付与のために必要な効果が望めない。50質量%を超えて配合しても、塗料に対する流動性は配合量に比例して増大しないばかりか、塗装作業性の低下やコスト的に不利となる。
【0013】
本発明になる仕上げ塗料には、上記の他、充填材として、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、クレイ、タルク等の粉状充填材、マイカ、グラファイト等のリン片状充填材、酸化チタン、カーボンブラック等の着色顔料・ペースト類が使用できる。その他必要に応じて、架橋助剤、発泡剤、消泡剤、分散剤、増・減粘剤等各種の添加剤を使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に、本発明の理解を助けるために具体的な実施例を説明する。言うまでもないが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0015】
[配合例1]
アクリル樹脂エマルション50質量%、繊維状顔料としてナイロン66繊維10質量%、真球顔料としてアクリルビーズ10質量%、着色顔料として酸化チタン,水和酸化第二鉄,酸化鉄,カーボンブラックなどを15質量%、塗料添加剤15質量%を混合・分散し仕上げ塗料1を得た。
[配合例2]
アクリル樹脂エマルション50質量%、針状顔料として針状カルシウムメタシリケート10質量%、真球顔料としてアクリルビーズ15質量%、着色顔料として酸化チタン,水和酸化第二鉄,酸化鉄,カーボンブラックなどを15質量%、塗料添加剤10質量%を混合・分散し仕上げ塗料2を得た。
[配合例3]
アクリル樹脂エマルション50質量%、繊維状顔料としてナイロン66繊維7質量%、針状顔料として針状カルシウムメタシリケート8質量%、真球顔料としてアクリルビーズ13質量%、着色顔料として酸化チタン,水和酸化第二鉄,酸化鉄,カーボンブラックなどを15質量%、塗料添加剤7質量%を混合・分散し仕上げ塗料3を得た。
【0016】
[試験方法]
仕上げ塗料1〜3を、窯業系建材ボード用板材にエアレススプレー塗装を行ない、100℃で5分温風乾燥し、塗膜を乾燥硬化させ、これを試験板とした。
【0017】
[結果]
仕上げ塗料による試験1〜3は、繊維顔料が塗膜表面を形成する凹凸によって、表情豊かな仕上がりとなった。また、真球顔料を含有することで、塗料に流動性が付与され、繊維顔料を含有するにもかかわらず、スプレーによる塗装作業性が良好であった。
なお、真球顔料の添加は、本願発明の本来の目的である流動性の付与の他に、塗膜仕上がりにおいて繊維顔料と積層されることにより、塗膜に奥行き、立体感を形成することができることが判明し、仕上がりは土壁風の豊かな表情を演出することが可能となった。
【産業上の利用可能性】
【0018】
本発明による仕上げ塗料は、塗装作業効率を第一の優先課題とされる工業用ライン塗装において、安定した塗装作業性を顕現すると同時に、他に見られない豊かな凹凸による表面仕上げを実現したものであり、工業用建材ボード業界のみならず、建築、土木等各分野にて広く使用ができるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スプレー適性を有するライン塗装用塗料であって、繊維状顔料、針状顔料の少なくとも1種類以上を3質量%〜30質量%含み、更に骨材を3質量%〜50質量%含むことを特徴とする意匠性仕上げ塗料。
【請求項2】
骨材は、不定形顔料又は真球顔料であることを特徴とする前記に記載された意匠性仕上げ塗料。

【公開番号】特開2007−161829(P2007−161829A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−358437(P2005−358437)
【出願日】平成17年12月13日(2005.12.13)
【出願人】(000232542)日本特殊塗料株式会社 (35)
【Fターム(参考)】