説明

感光体帯電および除電システム

【課題】帯電および除電機能に必要な種々のコンポーネントおよび電源のコストを低減する。
【解決手段】共通の電源を共有する、2つの厚膜フィルム帯電デバイス200、300または2つの分離した表面導体を有する共通の厚膜フィルム帯電デバイスが、感光体110の帯電および除電に用いられる。厚膜フィルム帯電デバイスは、誘電体材料上に支持される一式の交流バイアス電極を用い、この誘電体材料は、その誘電体の対向側上の対向電極をも支持する。対向電極に加えられる直流オフセットは、感光体帯電レベルを設定するのに用いられる。一直流電圧が感光体の帯電に用いられ、ゼロまたは約ゼロの直流電圧が、感光体110に対して残留する電荷を消去するのに用いられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、静電写真印刷装置に関し、さらに詳細にはこのようなマシン内の感光体の表面を帯電および除電するシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
典型的には、プリンタの静電写真印刷プロセスにおいて、光導電性部材または感光体部材は、部材の表面に感光性を与えるために、帯電デバイスによって実質的に一様な電位に帯電される。感光体部材の帯電部分は露光されて、部材上の照射領域内の電荷を選択的に消散させる。これにより、感光体部材上に静電潜像が記録される。静電潜像が感光体部材上に記録された後、現像剤材料を部材と接触させることによって、潜像が現像される。一般に、現像剤材料は、キャリア粒体に摩擦電気的に付着するトナー粒子を含む。トナー粒子は、キャリア粒体から、ドナーロールかそれとも感光体部材上の潜像かへ引き付けられる。次いでドナーロールへ引き付けられたトナーは、通例は感光体である電荷保持表面の静電潜像上に堆積される。次いでトナー粉像は、感光体部材からコピー基板へ転写される。
【0003】
トナー材料を支持部材上へ加熱によって恒久的に固定定着するまたは溶融定着するために、トナー材料の構成物質が合体して粘着性示すようになる点まで、トナー材料の温度を高める必要がある。この動作が原因で、トナーは、支持部材の繊維もしくは小孔に、またはそうでない場合は支持部材の表面に、ある程度まで流れる。その後、トナー材料が冷却するにつれて凝固することにより、トナー材料は、支持部材に堅固に接合されるようになる。
【0004】
転写は、典型的には、印刷シートが感光体部材と接触している状態またはそうでない場合は感光体部材に近接した状態となるための交流および直流バイアスを、「転写−分離ゾーン」(しばしば「転写ゾーン」とだけ略記される)が作り出すことによって実行される。転写ゾーン内で用紙または他の基板の背面に(すなわち感光体部材から離れた面に)加えられた直流バイアスは、感光体部材から、用紙または転写ゾーンに提供される他の基板へ、トナーを静電気的に転写する。トナー粒子は加熱されて、コピー基板に粉像を恒久的に付着する。バイアス転写ロール、例えば米国特許第3,847,478号明細書に開示された分割バイアスロールもまた、感光体部材から媒体へ画像を転写するのに用いられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
除電デバイスは、米国特許第4,534,641号明細書および米国特許第7,424,250B2号明細書に示される文献などの電子写真プロセスにおいて、残存する任意の感光体電荷を除去するのに用いられる。周知の帯電/放電システムは、ピン式スコロトロン(スコロトロン=グリッド付きコロナ帯電器)またはダイコロトロン(誘電体式コロナ帯電器)などの種々の帯電デバイス、ならびに除電ランプまたは除電針ならびに種々の交流および直流電源などの種々の除電機構を利用する。帯電および除電機能に必要な種々のコンポーネントおよび電源は、かなりコスト高となることがある。
【0006】
それゆえに、コストが低減された、帯電/除電機能を実行するシステムおよび方法の必要性が、依然として存在する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この必要性にこたえて、感光体の帯電および除電用に共通の電源を共有する、2つの厚膜フィルム帯電デバイスを用いる単一の帯電/除電システムが、以下に提供される。各厚膜フィルム帯電デバイスは、誘電体材料上に支持される一式の交流バイアス電極を用い、この誘電体材料は、その表面上に対向電極も支持する。共通の対向電極または上側導体に対して加えられる直流オフセットは、感光体帯電レベルを設定するのに用いられる。一直流電圧が感光体の帯電に用いられ、ゼロまたは約ゼロの直流電圧が感光体の除電に用いられる。共通の対向電極は、個々にバイアスすることができて、単一の一体化された帯電デバイスまたは一対のデバイスが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1A】本開示の2重目的の厚膜フィルム帯電/除電デバイスを用いる典型的なモジュール式電子写真プリンタの部分的な正面図である。
【図1B】本開示のもう一つの実施の形態における2重目的の厚膜フィルム帯電/除電デバイスを用いる典型的なモジュール式電子写真プリンタの部分的な正面図である。
【図2A】図1Aの印刷装置に用いられる、本開示に従う2重目的の厚膜フィルム帯電デバイスの斜視図である。
【図2B】図1Bの印刷装置に用いられる、本開示に従う2重目的の厚膜フィルム帯電デバイスの斜視図である。
【図3】図2Aおよび図2Bに示される電極のイオン生成を制御する電気的概略図である。
【図4】厚膜フィルム帯電デバイスの動作を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に図1Aを参照すると、感光体表面を帯電し感光体表面から電荷を消去する(すなわち除電する)ように構成される2つの厚膜フィルム帯電デバイスを含む、電子写真印刷システムが示される。
【0010】
図1Aに、矢印8の方向に、クリーニングデバイス120、現像剤140、転写デバイス150、分離デバイス160、厚膜フィルム帯電デバイス200、露光デバイス170およびコントローラ180などの処理ステーションを通して進む感光体110を含むマーキングデバイス100が示される。コントローラ180は、厚膜フィルム帯電デバイス200によって感光体110に加えられる電荷を制御し、次いで露光デバイス170からの画像通りの光パターンが、感光体110を露光して光放電する。続いて、帯電されたトナー粒子が、感光体110の放電領域に付着するように提供され、次いでコントローラが、感光体110に加えられた電荷とは逆符号の電荷を、転写デバイス150に位置する受け入れ基板へ加える動作を制御して、画像通りのパターンを保持しながら、現像されたトナーを移動させ、分離デバイス160を経由して基板へ電荷がいくらか追加されて、感光体110から基板をはぎ取ることを容易にする。次いで残留トナーは、クリーニング部120によって感光体110からクリーニングされる。
【0011】
本開示に従って、図2Aおよび図3〜図4に示されるように、厚膜フィルム帯電デバイス200は、感光体110を帯電するのに用いられ、厚膜フィルム帯電デバイス300は、感光体から電荷を消去するのに用いられる。厚膜フィルム帯電デバイス200および300は、両方とも、2つの導電層206および208との間に位置を定められた誘電体層202を支持するセラミック基板201を含む。導電層206は、その中にスロット210および212を含み、一方で導体208は、2つの導電細片の形をして、これらが上側電極のスロット210および212の下にある状態になっている。コロナ放電は、スロット210および212の内部で作り出される。導電層206および208に電圧を加えると、比較的高い、実質的に一様な電位に感光体の表面を帯電する。
【0012】
図3の電気的概略図は、1ライン動作モードにおける2つの厚膜フィルム帯電デバイス200および300を描写する。各ラインは1つの電極(下側導体)を有し、すべての電極は共通の上側導体(図2A)を有する。電極の数は、帯電デバイスの用途、ならびにその用途に必要なセラミック基板の物理的寸法および電力量に依存する。
【0013】
帯電デバイスの材料を選ぶことによって、厚膜フィルム回路が、ピーク・トゥ・ピークで3000ボルトの高さの交流電圧および最大1100ボルトまでの直流電圧を取り扱うことが可能となる。セラミックの剛性により、感光体110に隣接して、デバイスをその端部で支持しながらつるすことが可能となる。
【0014】
スイッチS−Aは、感光体除電デバイスとして用いられる第1厚膜フィルム帯電器へ供給される交流高電圧を制御し、一方スイッチS−Bは、感光体帯電デバイスとして用いられる第2厚膜フィルム帯電器へ交流高電圧を供給する。コロナ放電を打ち出すために、帯電デバイスの動作には、ピーク・トゥ・ピークで1800ボルトを上回る交流電圧が必要である。上側導体は、可変直流電圧源または接地電位に接続される。
【0015】
コロナ放電は、電極が交流高電圧を受けると発生する。電極を囲む電場は、スロット210および212(図2A)における上側導体の指状突起部間の誘電体表面上で、空気分子をイオン化させる。上側導体は、感光体表面上で帯電を確立し制御する直流電圧まで、さらに電圧を加えられてもよい。帯電デバイス200(図1A)は、直流電荷が上端の導電層から感光体表面上へ流れることを可能にするプラズマ場を発生させる。
【0016】
厚膜フィルム帯電デバイス200(図2A)の導体へ適切な交流および直流電圧を加えることによって、単一帯電/除電システムの動作描写(図3)に示されるように、上側導体上に、その後で感光体へ、コロナ放電および電圧電位が生成される。同一の電源システムを利用して除電デバイス300(図1A)へ交流電圧を加え、一方で上側導体上にゼロ直流電位を加えると、厚膜フィルムデバイスの表面上にコロナ放電が生成されることになる。除電デバイスは、感光体110の表面をゼロ電位まで露光し、それによって残留する任意の極性の電荷が感光体表面から除去されることになる。帯電デバイスおよび除電デバイスは、両方とも、同一の単一電源システムを用いるシステム要求として、いっしょにまたは独立して作動することができる。
【0017】
代替としては、図1Bおよび図2Bに開示されるように、単一電源が電力を供給する構成の単一の2重目的帯電/除電厚膜フィルムデバイス400は、感光体表面110を帯電することと除電することの両方で、用いることができる。厚膜フィルム帯電デバイス400は、図1Bに示されるように、ユニット401および402を含み、各ユニットは、図2Bに示されるように、分離した上側導電層406および407と下側導電層408との間に位置を定められた共通の誘電体層404を支持する共通のセラミック基板403を含む。導電層406および407は、その中にスロット410〜413を含み、一方で導体408は、上側導電層406および407のスロット410〜413の下にある導電細片の形をしている。コロナ放電は、上側導電層406および407のスロット内部で、それぞれ発生する。ピーク・トゥ・ピークで3000ボルトの高さの交流電圧を導電層408に加え、かつ最大1100ボルトまでの直流電圧を導電層406に加えると、感光体の表面は、比較的高い、実質的に一様な電位に帯電する。次いで、同じ交流電圧を独立してかつ同時に導電層408に加え、かつゼロボルトの直流電圧を導電層407に加えると、感光体の表面は除電される。単一電源は、ユニット401および402に両方とも電圧を加えるのに用いられる。
【0018】
要約すると、本開示の単一の帯電/除電システムは、誘電体層および導電層で構成される厚膜フィルム機構(図2A)を含む。帯電デバイスは、2つの構成で作動することができる。第1構成は、交流および直流高電圧を入力に加え、デバイスは、感光体に流れる直流電荷を出力する。第2構成は、交流高電圧およびゼロ直流電圧を入力に加え、デバイスは、感光体上に残留する任意の直流電荷を排除する、交流ゼロ電位の直流電荷を出力する。2つの厚膜フィルム帯電デバイスを用いて、これらのデバイスを共通の電源に接続すると、1つの電源および共通の部品を備えた単一のシステムとなる。代替としては、分離した上側導体へ単一電源が電力を供給する構成の単一の厚膜フィルム帯電デバイスは、基板の電荷保持表面を、必要に応じて帯電することと除電することの両方で用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
感光体に電荷を加え、前記感光体から電荷を消去するシステムであって、
感光体表面と、
誘電体層および多重の導電層を含む第1厚膜フィルム帯電デバイスと、
誘電体層および多重の導電層を含む第2厚膜フィルム帯電デバイスと、
前記第1および第2厚膜フィルム帯電デバイスに属する前記多重の導電層に接続される単一の電源とを含み、
前記電源によって電圧を加えられると、前記第1厚膜フィルム帯電デバイスが、前記多重の導電層に交流および直流電圧を両方とも加えて前記感光体を帯電し、前記第2厚膜フィルム帯電デバイスが、ゼロ電位電荷を出力する状態で前記導電層に交流電圧を加えて前記感光体上に残留する任意の直流電荷を消去するように、前記厚膜フィルム帯電デバイスが構成される、システム。
【請求項2】
前記第1および第2厚膜フィルム帯電デバイスのそれぞれは、前記デバイスの表面上の交流バイアス導電層を支持する誘電体支持部材を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記誘電体支持部材は、前記部材の表面上の対向導電層を支持する、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記感光体表面に所定の帯電レベルを設定するために、前記第1厚膜フィルム帯電デバイスの前記導電層に直流オフセットが加えられる、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記感光体表面を帯電する前記第1厚膜フィルム帯電デバイスに、直流電圧が使用され、かつ前記第2厚膜フィルム帯電デバイスに、約ゼロの直流電圧が使用されて、前記感光体表面を除電する、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
電荷保持基板に電荷を加え、前記電荷保持基板から電荷を消去するシステムであって、
電荷保持表面と、
誘電体層および導電層を含む厚膜フィルム帯電デバイスと、
前記厚膜フィルム帯電デバイスに属する前記導電層に接続される単一の電源とを含み、
前記電源によって電圧を加えられると、前記厚膜フィルム帯電デバイスの第1部分が、前記導電層に交流および直流電圧を両方とも加えて前記電荷保持表面を帯電し、前記厚膜フィルム帯電デバイスの第2部分が、前記厚膜フィルム帯電デバイスの前記第2部分に属する前記導電層に同じ交流電圧およびゼロ直流電圧を加えてゼロ電位電荷を出力し、前記電荷保持表面上に残留する任意の直流電荷を消去するように、前記厚膜フィルム帯電デバイスが構成される、システム。
【請求項7】
前記厚膜フィルム帯電デバイスは、前記デバイスの表面上の交流バイアス導電層を支持する誘電体支持部材を含む、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記誘電体支持部材は、前記部材の表面上の対向導電層を支持する、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
感光体に電荷を加え、前記感光体から電荷を消去する方法であって、
感光体表面を設けるステップと、
多重の厚膜フィルム帯電デバイスを設けるステップであって、各厚膜フィルム帯電デバイスが誘電体層および多重の導電層を含む、ステップと、
前記多重の厚膜フィルム帯電デバイスに属する前記多重の導電層に接続される単一の電源を設けるステップと、
前記電源によって電圧を加えられると、前記厚膜フィルム帯電デバイスは、前記多重の導電層に交流および直流電圧を両方とも同時に加えて前記感光体を帯電し、交流電圧およびゼロ直流電圧を前記導電層に加えて前記感光体上に残留する任意の直流電荷を消去するように、前記厚膜フィルム帯電デバイスを構成するステップとを含む、方法。
【請求項10】
前記厚膜フィルム帯電デバイスのそれぞれに、前記デバイスの表面上の交流バイアス導電層を支持する誘電体支持部材を設けるステップを含む、請求項9に記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−3582(P2013−3582A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−132398(P2012−132398)
【出願日】平成24年6月11日(2012.6.11)
【出願人】(596170170)ゼロックス コーポレイション (1,961)
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
【Fターム(参考)】