説明

感光性ペースト、パターンの形成方法および平面ディスプレイパネル用部材の製造方法。

【課題】頂部幅の細い隔壁の形成に有効な紫外線吸収剤を含有する感光性ペーストであって、ペーストを低温で保管しても該紫外線吸収剤が析出することのない感光性ペーストを提供する。
【解決手段】低軟化点ガラス粉末を含む無機成分、感光性有機成分、下記一般式(1)で表される構造を有する化合物、光重合開始剤、および溶媒を含むことを特徴とする感光性ペースト。
【化1】


(式中、R〜Rはそれぞれ水素原子、アルキル基のいずれかであり、R〜Rの合計炭素数が3〜5である。また、R〜Rはそれぞれ水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、ハロゲン原子のいずれかである。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマディスプレイパネル、電界放出ディスプレイ、蛍光表示管などの平面ディスプレイ用部材に用いるパターンの形成に好適な感光性ペースト、それを用いたパターンの形成方法、および平面ディスプレイパネル用部材の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、プラズマディスプレイ、電界放出ディスプレイ、蛍光表示管、液晶表示装置、有機エレクトロルミネッセンスディスプレイ、発光ダイオードディスプレイなどの平面ディスプレイの開発が活発に行われている。このうちプラズマディスプレイは、前面ガラス基板と背面ガラス基板との間に備えられた放電空間内で対向するアノード電極とカソード電極の間にプラズマ放電を生じさせ、上記放電空間内に封入されているガスから発生した紫外線を放電空間内に設けた蛍光体に照射し発光させることにより表示を行うものである。また、電界放出ディスプレイは、電界放出させた電子を蛍光体に照射することにより表示を行うものである。
【0003】
プラズマディスプレイや蛍光表示管などのガス放電タイプのディスプレイは、放電空間を仕切るための絶縁性の隔壁を必要とする。また、電界放出ディスプレイは、ゲート電極とカソードを隔絶するための絶縁性の隔壁を必要とする。また、電界放出ディスプレイ、特に表面伝導型電子放出素子ディスプレイにおいては、フェースプレート側に隔壁を設けることにより、発光の混色が抑制できることが報告されている。これらプラズマディスプレイパネルや電界放出ディスプレイなどの絶縁性の隔壁の形成においては、ガラス粉末などの無機材料を高精度でパターン加工ができる材料や加工方法が必要である。このような無機材料の微細パターン加工を行う方法として、感光性ペースト法によりパターンを形成する方法が提案されている(例えば特許文献1〜3)。
【0004】
ディスプレイの高精細化のためには、これらのディスプレイ用隔壁の頂部幅が細いことが望まれる。しかしながら、感光性ペースト塗布膜においては、無機微粒子を多く分散含有することから露光光の散乱が避け難く、特に表面付近における光散乱に起因する頂部幅の太りが発生しやすくなる問題があった。この課題を解消するため、波長365nmにおける吸光係数が波長405nmにおける吸光係数および波長436nmにおける吸光係数よりも大きい紫外線吸収剤を添加することにより頂部幅の細い隔壁を形成できることが提案されている(特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3249576号公報(請求項1)
【特許文献2】特許第3239759号公報(請求項1)
【特許文献3】特許第3402070号公報(請求項1)
【特許文献4】特開2008−224940号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献4に記載の紫外線吸収剤は、感光性ペーストを低温において保存する際に部分的に結晶として析出してしまい、この結晶が露光光の散乱源となるため感光性ペースト法によるパターン形成において欠陥を生じやすく、またこの結晶が焼成工程において除去されることによって除去後に空間が残ってしまうため、隔壁に欠けや空洞が生じてしまうという問題があった。そこで本発明は、頂部幅の細い隔壁の形成に有効な紫外線吸収剤を含有する感光性ペーストであって、ペーストを低温で保管しても該紫外線吸収剤が析出することのない感光性ペーストを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は以下の構成を有する。すなわち低軟化点ガラス粉末を含む無機成分、感光性有機成分、下記一般式(1)で表される構造を有する化合物、光重合開始剤、および溶媒を含むことを特徴とする感光性ペーストによって達成される。
【0008】
【化1】

【0009】
(式中、R〜Rはそれぞれ水素原子、アルキル基のいずれかであり、R〜Rの合計炭素数が3〜5である。また、R〜Rはそれぞれ水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、ハロゲン原子のいずれかである。)
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、頂部幅の細い隔壁の形成に有効な紫外線吸収剤を含有する感光性ペーストであって、ペーストを低温で保管しても該紫外線吸収剤が析出することのない感光性ペーストを提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
発明者らは、頂部幅の細い隔壁の形成に有効な紫外線吸収剤を含有する感光性ペーストであって、ペーストを低温で保管しても該紫外線吸収剤が析出することのない感光性ペーストについて鋭意検討を行った結果、以下に述べる感光性ペーストによって達成できることを明らかにした。
【0012】
感光性ペーストとは、基板上に塗布し、必要に応じ乾燥を行った後の塗膜に対し活性光線を照射(露光)することにより露光部分が現像液に不溶となり、しかる後現像液によって非照射部分のみを除去することによってパターン形成を行うことが可能なペーストをいう。ここで言う活性光線とは250〜1100nmの波長領域の電磁波を指し、具体的には超高圧水銀灯、メタルハライドランプなどの紫外光線、ハロゲンランプなどの可視光線、ヘリウム−カドミウムレーザー、ヘリウム−ネオンレーザー、アルゴンイオンレーザー、半導体レーザー、YAGレーザー、炭酸ガスレーザーなどの特定波長のレーザー光線などが挙げられるが、中でもエネルギーの高い紫外線が好ましい。
【0013】
本発明の感光性ペーストは、無機成分として低軟化点ガラス粉末を必須成分とする。低軟化点ガラス粉末を含有することにより、低軟化点ガラス粉末の軟化温度以上の温度で焼成し、後述の感光性有機成分等の有機成分を除去し、無機成分からなるパターンを得ることができる。本発明において低軟化点ガラスとは、軟化点が400〜700℃の範囲であるガラスを指す。軟化点が前述の範囲にあることで、平面ディスプレイパネル用部材の製造工程において焼結時の溶融性が適切となるため好ましい。より好ましい軟化点の範囲は500〜650℃である。本発明においてガラスの軟化点は、ガラス粉末の示差熱量分析(DTA)曲線の第3変曲点として定義される。低軟化点ガラス粉末の無機成分に占める割合は60〜95体積%が好ましい。含有割合が60体積%より小さくなると、焼成時の焼結が困難になり、焼成後のパターンの空隙率が大きくなる傾向があるため好ましくない。95体積%より大きくなると、焼成時の無機成分全体の流動性が大きくなってしまうため焼成後のパターン形状の制御が困難になる問題が発生する場合があるため好ましくない。
【0014】
低軟化点ガラス粉末の屈折率は1.50〜1.65であることが好ましい。このような低軟化点ガラス粉末を用いて無機成分と有機成分の屈折率の差を小さくし、光散乱を抑制することにより高精度のパターン加工が容易になる。また、低軟化点ガラス粉末の粒子径は、作製しようとするパターンの形状を考慮して選ばれるが、粒度分布測定装置(例えば、日機装製「MT3300」)により測定した重量分布曲線における50%粒子径d50(平均粒子径)が0.1〜3.0μm、最大粒子径dmax(トップサイズ)が10μm以下であることが好ましい。
【0015】
好ましく使用できる低軟化点ガラス粉末は、例えば酸化物表記で下記の組成を有するものである。
酸化リチウム、酸化ナトリウム、酸化カリウムのうち少なくとも1種:3〜15質量%
酸化ケイ素:5〜40質量%
酸化ホウ素:20〜50質量%
酸化亜鉛:0.5〜20質量%
酸化アルミニウム:10〜25質量%
酸化マグネシウムおよび/または酸化カルシウム:2〜15質量%
酸化バリウムおよび/または酸化ストロンチウム:2〜15質量%
上記のように、酸化リチウム、酸化ナトリウムまたは酸化カリウムのアルカリ金属酸化物のうち少なくとも1種を用い、その合計量が3〜15質量%、さらには3〜10質量%であることが好ましい。具体的な例としては、酸化リチウム7質量%、酸化ケイ素22質量%、酸化ホウ素33質量%、酸化亜鉛3質量%、酸化アルミニウム19質量%、酸化マグネシウム6質量%、酸化カルシウム5質量%、酸化バリウム5質量%の組成を有するものが挙げられるが、これに限定されない。
【0016】
本発明においては無機成分として上記の低軟化点ガラス粉末以外にフィラー成分を添加することができる。本発明におけるフィラー成分とは、パターンの強度や焼成収縮率を改善するために添加されるものであり、焼成温度でも溶融流動しにくい、700℃以下に軟化点や融点を有しない無機微粒子を指す。フィラー成分を添加することで、焼成によるパターンの収縮を抑制でき、またパターンの強度を向上させることができる。フィラー成分としては感光性ペースト中への分散性や充填性、露光時の光散乱の抑制を考慮し、平均粒子径(d50)1〜4μm、平均屈折率1.4〜1.7であるものを好ましく使用することができる。本発明では、このようなフィラー成分として、軟化点が700℃を超える高軟化点ガラス粉末や、コーディエライト、シリカなどのセラミックス粉末から選ばれた少なくとも1種を用いることができるが、平均粒子径や平均屈折率の調節のしやすさの点から高軟化点ガラス粉末の使用が好ましい。
【0017】
フィラー成分として高軟化点ガラス粉末を用いる場合は、軟化点が700℃よりも高く、1300℃以下の範囲のものを、全無機微粒子に対して3〜40体積%の組成範囲で添加することが好ましい。3体積%より少ない場合は焼成時にパターンのエッジが崩れやすくなり、良好な形状のパターンが得られない場合があるので好ましくない。また40体積%より多い場合は形成するパターンの緻密性が低下しやすくなるので好ましくない。好ましく使用できる高軟化点ガラス粉末は例えば酸化ナトリウム1質量%、酸化ケイ素40質量%、酸化ホウ素10質量%、酸化アルミニウム33質量%、酸化亜鉛4質量%、酸化カルシウム9質量%、酸化チタン3質量%の組成を有するものであるが、これに限定されない。
【0018】
本発明において、上記無機成分は感光性ペーストの固形分中に30〜70体積%の含有率で含まれていることが好ましい。より好ましくは40〜65体積%である。ここで、固形分とはペースト中に含まれる溶媒以外の成分、すなわち無機成分と、溶媒を除く有機成分とを合わせたものを意味する。無機成分の含有率が30体積%より小さくなると焼成によるパターンの収縮が大きくなり、形状が不良となりやすいので好ましくない。また、70体積%より大きくなると露光による架橋反応が不十分となりやすく、パターン形成が難しくなる傾向があるので好ましくない。
【0019】
固形分中の無機成分の含有割合(体積%)は、ペースト調製時に無機成分および有機成分の比重を考慮して、添加量(質量%)で制御できる。また、無機成分の含有割合を分析する方法としては、熱重量測定(TGA)と無機成分の焼成膜の比重測定により求める方法や、感光性ペーストを塗布、乾燥して得られるペースト乾燥膜の透過型電子顕微鏡観察像の画像解析により求める方法が挙げられる。熱重量測定と無機成分の焼成膜の比重測定により求める場合、例えば、感光性ペースト10mg程度をサンプルとして、室温〜600℃の重量変化をTGA(例えば、株式会社島津製作所製「TGA−50」)により評価する。通常、100〜150℃でペースト中の溶媒が蒸発するので、溶媒蒸発後の重量に対する600℃昇温後の重量の割合から、無機成分と有機成分の質量比を求める。一方、焼成膜の膜厚、面積と質量を基に無機成分の比重を評価すれば含有割合を評価できる。また、透過型電子顕微鏡観察により含有割合を求める場合は、ペースト乾燥膜の膜面に垂直な断面を、透過型電子顕微鏡(例えば、日本電子株式会社製「JEM−4000EX」)により観察し、像の濃淡により無機成分と有機成分を区別し、画像解析を行えばよい。透過型電子顕微鏡の評価エリアとしては、例えば、20μm×100μm程度の面積を対象とし、1000〜3000倍程度で観察すればよい。
【0020】
本発明の有機成分は、感光性モノマ、感光性オリゴマ、感光性ポリマのうち少なくとも1種類から選ばれた感光性有機成分、前記一般式(1)で表される構造を有する化合物、光重合開始剤、および溶媒を必須成分とし、さらに非感光性ポリマ成分、酸化防止剤、可塑剤、増粘剤、分散剤、沈殿防止剤などの添加剤成分を必要に応じて加えることで構成される。
【0021】
感光性ポリマとしてはアルカリ可溶性のポリマを好ましく用いることができる。ポリマがアルカリ可溶性を有することで、現像液として環境に問題のある有機溶媒ではなくアルカリ水溶液を用いることができる。アルカリ可溶性のポリマとしては、アクリル系共重合体を好ましく用いることができる。アクリル系共重合体とは、共重合成分に少なくともアクリル系モノマを含む共重合体であり、アクリル系モノマの具体的な例としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、sec−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、n−ペンチルアクリレート、アリルアクリレート、ベンジルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、ブトキシトリエチレングリコールアクリレート、シクロへキシルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、2−エチルへキシルアクリレート、グリセロールアクリレート、グリシジルアクリレート、ヘプタデカフロロデシルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、イソボルニルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、イソデシルアクリレート、イソオクチルアクリレート、ラウリルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、メトキシエチレングリコールアクリレート、メトキシジエチレングリコールアクリレート、オクタフロロペンチルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、ステアリルアクリレート、トリフロロエチルアクリレート、アクリルアミド、アミノエチルアクリレート、フェニルアクリレート、1−ナフチルアクリレート、2−ナフチルアクリレート、チオフェノールアクリレート、ベンジルメルカプタンアクリレートなどのアクリル系モノマ、及びこれらのアクリレートをメタクリレートに代えたものなどが挙げられる。アクリル系モノマ以外の共重合成分としては、炭素−炭素二重結合を有する化合物が使用可能であるが、好ましくはスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、クロロメチルスチレン、ヒドロキシメチルスチレンなどのスチレン類や、1−ビニル−2−ピロリドンなどが挙げられる。
【0022】
アクリル系共重合体にアルカリ可溶性を付与するためには、モノマとして不飽和カルボン酸等の不飽和酸を加えることにより達成される。不飽和酸の具体的な例としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、またはこれらの酸無水物が挙げられる。これらを付加した後のポリマの酸価は50〜150の範囲であることが好ましい。
【0023】
アクリル系共重合体の露光による硬化反応の反応速度を大きくするためには、側鎖または分子末端に炭素−炭素二重結合を有するアクリル系共重合体とすることが好ましい。炭素−炭素二重結合を有する基としては、ビニル基、アリル基、アクリル基、メタクリル基などが挙げられる。このような官能基を側鎖または分子末端に有するアクリル系共重合体は、アクリル系共重合体中のメルカプト基、アミノ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基に対して、グリシジル基やイソシアネート基と炭素−炭素二重結合を有する化合物や、アクリル酸クロライド、メタクリル酸クロライドまたはアリルクロライドの反応により合成できる。
【0024】
グリシジル基と炭素−炭素二重結合を有する化合物としては、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート、アリルグリシジルエーテル、グリシジルエチルアクリレート、クロトニルグリシジルエーテル、グリシジルクロトネート、グリシジルイソクロトネートなどが挙げられる。イソシアネート基と炭素−炭素二重結合を有する化合物としては、アクリロイルイソシアネート、メタクリロイルイソシアネート、アクリロイルエチルイソシアネート、メタクリロイルエチルイソシアネートなどが挙げられる。
【0025】
また、感光性モノマは、炭素−炭素不飽和結合を含有する化合物であり、その具体的な例として、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、sec−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、n−ペンチルアクリレート、アリルアクリレート、ベンジルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、ブトキシトリエチレングリコールアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、グリセロールアクリレート、グリシジルアクリレート、ヘプタデカフロロデシルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、イソボルニルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、イソデシルアクリレート、イソオクチルアクリレート、ラウリルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、メトキシエチレングリコールアクリレート、メトキシジエチレングリコールアクリレート、オクタフロロペンチルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、ステアリルアクリレート、トリフロロエチルアクリレート、アリル化シクロヘキシルジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、グリセロールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、トリグリセロールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラプロピレングリコールジメタクリレート、アクリルアミド、アミノエチルアクリレート、フェニルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、ベンジルアクリレート、1−ナフチルアクリレート、2−ナフチルアクリレート、ビスフェノールAジアクリレート、ビスフェノールA−エチレンオキサイド付加物のジアクリレート、ビスフェノールA−プロピレンオキサイド付加物のジアクリレート、チオフェノールアクリレート、ベンジルメルカプタンアクリレート、また、これらの芳香環の水素原子のうち、1〜5個を塩素または臭素原子に置換したモノマ、もしくは、スチレン、p−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、塩素化スチレン、臭素化スチレン、α−メチルスチレン、塩素化α−メチルスチレン、臭素化α−メチルスチレン、クロロメチルスチレン、ヒドロキシメチルスチレン、カルボキシメチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、ビニルカルバゾール、および、上記化合物の分子内のアクリレートを一部もしくはすべてをメタクリレートに置換したもの、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、1−ビニル−2−ピロリドンなどが挙げられる。また、多官能モノマにおいて、不飽和結合を有する基はアクリル基、メタクリル基、ビニル基、アリル基が混在していてもよい。本発明ではこれらを1種または2種以上使用することができる。
【0026】
本発明で用いられる感光性ペーストは、さらにウレタン化合物を含有することが好ましい。ウレタン化合物を含有することにより、ペースト乾燥膜の柔軟性が向上し、焼成時の応力を小さくでき、亀裂や断線などの欠陥を効果的に抑制できるためである。また、ウレタン化合物を含有することにより、熱分解性が向上し、焼成工程において焼成残渣が発生しにくくなる。本発明で好ましく使用するウレタン化合物として、例えば、下記一般式(2)で表される構造を有する化合物が挙げられる。
【0027】
【化2】

【0028】
ここで、RおよびR10はエチレン性不飽和基を含む置換基、水素、炭素数1〜20のアルキル基、アリル基、アラルキル基およびヒドロキシアラルキル基からなる群から選ばれたものであり、それぞれ同じであっても異なっていても良い。R11はアルキレンオキサイド基またはアルキレンオキサイドオリゴマ、R12はウレタン結合を含む有機基である。nは1〜10の整数である。
【0029】
このようなウレタン化合物としては、エチレンオキサイド単位を含む化合物が好ましい。より好ましくは、一般式(2)中、R12がエチレンオキサイド単位(以下、EOと示す)とプロピレンオキサイド単位を含むオリゴマであり、かつ、該オリゴマ中のEO含有量が8〜70質量%の範囲内である化合物である。EO含有量が70質量%以下であることにより、柔軟性がさらに向上し、焼成応力を小さくできるため、欠陥を効果的に抑制できる。さらに、熱分解性が向上し、後の焼成工程において、焼成残渣が発生しにくくなる。また、EO含有量が8%以上であることにより、他の有機成分との相溶性が向上する。
【0030】
また、ウレタン化合物が炭素−炭素二重結合を有することも好ましい。ウレタン化合物の炭素−炭素二重結合が他の架橋剤の炭素−炭素二重結合と反応して架橋体の中に含有されることにより、さらに重合収縮を抑制することができる。
【0031】
本発明で好ましく用いられるウレタン化合物の具体例としては、UA−2235PE(分子量18000、EO含有率20%)、UA−3238PE(分子量19000、EO含有率10%)、UA−3348PE(分子量22000,EO含有率15%)、UA−5348PE(分子量39000、EO含有率23%)(以上、新中村化学(株)製)などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これらの化合物は混合して用いてもよい。
【0032】
ウレタン化合物の含有量は、溶媒を除く有機成分の0.1〜10質量%であることが好ましい。含有量を0.1質量%以上とすることで、ペースト乾燥膜の柔軟性を向上することができ、ペースト乾燥膜を焼成する際の焼成収縮応力を緩和することができる。含有量が10質量%を超えると、有機成分と無機成分の分散性が低下し、また相対的にモノマおよび光重合開始剤の濃度が低下するので、欠陥が生じやすくなる。
【0033】
本発明の感光性ペーストは、前記一般式(1)で表される構造を有する化合物を含有することを必須とする。一般式(1)で表される構造を有する化合物は紫外線吸収剤であり、該化合物を含有することにより、隔壁の頂部幅を細幅化することができる。また、一般式(1)で表される構造を有する化合物の添加量の増加に伴って隔壁の頂部幅が細くなることから、目的とする隔壁頂部幅が得られるように感光性ペースト中の前記一般式(1)で表される構造を有する化合物の含有量を調整することによって、隔壁頂部幅を制御することができる。隔壁頂部細幅化のメカニズムは明確ではないが、一般式(1)で表される構造を有する化合物は、露光時に強く散乱され易いi線(波長365nm)などの短波長の光を効率的に吸収することから、ペーストへの添加によりペースト塗布膜表面における散乱光を吸収し、頂部幅を細幅化すると推定される。また、一般式(1)で表される構造を有する化合物は、感光性ペーストに対し低温においても高い相溶性を示すことから、感光性ペーストの低温保存中に結晶として析出することが無く安定に保存でき、低温保存後の感光性ペーストを用いて隔壁を形成する際に、ペースト中に析出した結晶等による欠陥を生じることなく隔壁を形成できる。また一般式(1)で表される構造を有する化合物は感光性ペースト中に十分な量を添加できるため、他の紫外線吸収剤と比較して隔壁頂部幅を特に細幅化することができ、感光性ペースト中の一般式(1)で表される構造を有する化合物の含有量を調整することによって隔壁頂部幅を広い範囲で制御することができる。一般式(1)において、R〜Rの合計炭素数が2以下、および6以上の場合、感光性ペーストに対する相溶性、特に低温における相溶性が低くなるため好ましくない。
【0034】
一般式(1)で表される構造を有する化合物において、R〜Rのアルキル基の数は特に制限されないが、R、R、Rが水素であり、Rがアルキル基である化合物が本発明に好適に用いられる。また、R〜Rが全て水素、あるいはR、R、Rが水素であり、Rが塩素である化合物が本発明に好適に用いられる。このような化合物としては、2−(2−ヒドロキシ−5−n−プロピルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−イソプロピルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−n−ブチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−イソブチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−s−ブチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−n−ペンチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−イソペンチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−ネオペンチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−s−ペンチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−t−ペンチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、およびこれらの化合物のRの水素を塩素で置換した化合物などが挙げられるが、これらの中でも特に2−(2−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾールを好ましく用いることができる。
【0035】
一般式(1)で表される構造を有する化合物の添加量は、ペーストの全重量に対し0.1〜20質量%であることが好ましい。0.1質量%以下では、頂部の細幅化効果が十分に得られないので好ましくない。また、20質量%以上では、一般式(1)で表される構造を有する化合物による光吸収によって、感光性ペースト法によるパターン形成に必要となる露光量が大きくなりすぎるため好ましくない。より好ましい添加量範囲は0.5〜4質量%である。
【0036】
本発明の感光性ペーストは光重合開始剤を含むことを必須とする。光重合開始剤は活性光源の照射によってラジカルを発生する光ラジカル開始剤を好ましく用いることができ、その具体的な例として、ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4,4−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4−ジクロロベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4−メチルジフェニルケトン、ジベンジルケトン、フルオレノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、p−t−ブチルジクロロアセトフェノン、チオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、ベンジル、ベンジルメトキシエチルアセタール、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、アントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、2−アミルアントラキノン、β−クロルアントラキノン、アントロン、ベンズアントロン、ジベンゾスベロン、メチレンアントロン、4−アジドベンザルアセトフェノン、2,6−ビス(p−アジドベンジリデン)シクロヘキサノン、2,6−ビス(p−アジドベンジリデン)−4−メチルシクロヘキサノン、1−フェニル−1,2−ブタジオン−2−(O−メトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(O−エトキシカルボニル)オキシム、1,3−ジフェニルプロパントリオン−2−(O−エトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−3−エトキシプロパントリオン−2−(O−ベンゾイル)オキシム、ミヒラーケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−1−プロパノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−1−ブタノン、ナフタレンスルホニルクロライド、キノリンスルホニルクロライド、N−フェニルチオアクリドン、4,4−アゾビスイソブチロニトリル、ジフェニルジスルフィド、ベンズチアゾールジスルフィド、トリフェニルホスフィン、カンファーキノン、四臭素化炭素、トリブロモフェニルスルホン、過酸化ベンゾインおよびエオシン、メチレンブルーなどの光還元性の色素とアスコルビン酸、トリエタノールアミンなどの還元剤の組合せなどがあげられる。また、これらを2種以上組み合わせて使用しても良い。これらの中でも、特に2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−1−ブタノンを添加した感光性ペーストは感度が高く、パターン形成時の露光量を低減できることから本発明に好ましく用いられる。2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−1−ブタノンを添加した感光性ペーストはi線に対する感度が特に高いため、感光性ペーストに用いた場合に隔壁頂部幅が太くなり易いが、前述の一般式(1)で表される構造を有する化合物と共に用いることにより、頂部幅の細い隔壁を形成できる。光重合開始剤は、感光性モノマと感光性ポリマの合計量に対し、0.05〜20質量%、より好ましくは、0.1〜15質量%の範囲で添加される。光重合開始剤の量が少なすぎると、光感度が不良となるおそれがあるので好ましくない。また、光重合開始剤の量が多すぎれば、光の吸収が大きくなりすぎて深部まで光が届かず、深部の硬化が不十分となるので好ましくない。
【0037】
本発明の感光性ペーストは溶媒を含むことを必須とする。溶媒としては、特に溶解度パラメータが18〜30MPa1/2の範囲内である溶媒を用いることが好ましい。ここで、溶解度パラメータ(SP値)とはヒルデブラントの溶解度パラメータであり、具体的な値は1999年John Wiley&Sons発行J.Braundrup,E.H.Immergut,E.A.Grulke編、ポリマーハンドブック(Polymer Handbook)第四版、セクションVII、P.694〜697の表8等に記載されている。18〜30MPa1/2の範囲内のSP値を有する溶媒の例としては、メシチレン(SP値:18.0MPa1/2)、エチレングリコールメチルエーテルアセテート(SP値:18.8MPa1/2)、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール(SP値:19.0MPa1/2)、テルピネオール(SP値:21.8MPa1/2)、ベンジルアルコール(SP値:24.8MPa1/2)、γ−ブチロラクトン(SP値:25.8MPa1/2)、プロピオラクトン(SP値:27.2MPa1/2)、エチレングリコール(SP値:29.9MPa1/2)などが挙げられる。これらの中でも、特にγ−ブチロラクトンが本発明に好ましく用いられる。本発明においては、上記溶媒を複数混合して用いることができる。また、上記以外の溶媒を併用することも可能であるが、併用する溶媒のSP値が18〜30MPa1/2の範囲外である場合には、その添加重量は溶解度パラメータが18〜30MPa1/2の範囲内である溶媒の合計添加重量未満であることが好ましい。
【0038】
さらに、本発明の感光性ペーストは、非感光性のポリマ成分、例えばメチルセルロース、エチルセルロース等のセルロース化合物、高分子量ポリエーテルなどを含有しても良い。
【0039】
酸化防止剤を添加することも好ましい。酸化防止剤とは、ラジカル連鎖禁止作用、三重項の消去作用およびハイドロパーオキサイドの分解作用のうち1つ以上を持つものである。感光性ペーストに酸化防止剤を添加すると、酸化防止剤がラジカルを捕獲したり、励起された光重合開始剤のエネルギー状態を基底状態に戻したりすることにより散乱光による余分な光反応が抑制され、酸化防止剤で抑制できなくなる露光量で急激に光反応が起こることにより、現像液への溶解、不溶のコントラストを高くすることができる。具体的にはp−ベンゾキノン、ナフトキノン、p−キシロキノン、p−トルキノン、2,6−ジクロロキノン、2,5−ジアセトキシ−p−ベンゾキノン、2,5−ジカプロキシ−p−ベンゾキノン、ヒドロキノン、p−t−ブチルカテコール、2,5−ジブチルヒドロキノン、モノ−t−ブチルヒドロキノン、2,5−ジ−t−アミルヒドロキノン、ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ヒドロキノンモノメチルエーテル、α−ナフトール、ヒドラジン塩酸塩、トリメチルベンジルアンモニウムクロリド、トリメチルベンジルアンモニウムオキザレート、フェニル−β−ナフチルアミン、パラベンジルアミノフェノール、ジ−β−ナフチルパラフェニレンジアミン、ジニトロベンゼン、トリニトロベンゼン、ピクリン酸、キノンジオキシム、シクロヘキサノンオキシム、ピロガロール、タンニン酸、トリエチルアミン塩酸塩、ジメチルアニリン塩酸塩、クペロン、2,2’−チオビス(4−t−オクチルフェノレート)−2−エチルへキシルアミノニッケル−(II)、4,4’−チオビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,2,3−トリヒドロキシベンゼンなどが挙げられるがこれらに限定されない。また、これらを2種以上組み合わせて使用することもできる。酸化防止剤の添加量は、感光性ペースト中に好ましくは0.1〜30質量%、より好ましくは0.5〜20質量%の範囲である。酸化防止剤の添加量をこの範囲内とすることにより、感光性ペーストの光感度を維持し、また重合度を保ちパターン形状を維持しつつ、露光部と非露光部のコントラストを大きくとることができる。
【0040】
本発明に好ましく用いられる感光性ペーストは、低軟化点ガラス粉末、感光性有機成分、一般式(1)で表される構造を有する化合物、光重合開始剤、溶媒、非感光性ポリマ成分、紫外線吸収剤、酸化防止剤、分散剤などの各成分を所定の組成となるように調合した後、3本ローラーなどの混練機器を用いて本混練を行って均質分散し作製することが好ましい。また、本混練を終えた感光性ペーストを適宜、濾過、脱泡しておくことも好ましい。
【0041】
かくして得られた感光性ペーストをガラス基板上に塗布、露光、現像、焼成することにより、頂部幅の細い隔壁を有する平面ディスプレイパネル用部材を作製できる。
【0042】
以下に本発明の平面ディスプレイパネル用部材の製造方法につき、AC型プラズマディスプレイを例に取り説明する。
【0043】
プラズマディスプレイは、前面板もしくは背面板またはその両方に形成された蛍光体層が内部空間内に面するように該前面板と該背面板を封着してなる部材において、前記内部空間内に放電ガスが封入されてなるものである。前面板には、表示面側の基板上に表示用放電のための透明電極(サステイン電極、スキャン電極)が形成されている。放電のため、前記サステイン電極と前記スキャン電極の間隙は比較的狭い方がよい。より低抵抗な電極を形成する目的で透明電極の背面側にバス電極を形成してもよい。但し、バス電極は材質がAg、Cr/Cu/Cr等で構成されていて、不透明であることが多い。従って、前記透明電極とは異なり、セルの表示の邪魔となるので、表示面の外縁部に設けることが好ましい。AC型プラズマディスプレイの場合、電極の上層に透明誘電体層およびその保護膜としてMgO薄膜が形成される場合が多い。背面板には、表示させるセルをアドレス選択するための電極(アドレス電極)が形成されている。セルを仕切るための隔壁や蛍光体層は前面板、背面板のどちらかまたは両方に形成してもよいが、背面板のみに形成される場合が多い。プラズマディスプレイにおいては、前記前面板と前記背面板は封着され、両者の間の内部空間には、Xe−Ne、Xe−Ne−He等の放電ガスが封入されている。
【0044】
以下に背面板の製造方法を説明する。ガラス基板としては、ソーダガラスやプラズマディスプレイ用の耐熱ガラスである“PP8”(日本電気硝子社製)、“PD200”(旭硝子社製)を用いることができる。ガラス基板のサイズは特に限定はなく、厚みは1〜5mmのものを用いることができる。ガラス基板上に銀やアルミニウム、クロム、ニッケルなどの金属により、アドレス電極用のストライプ状の導電パターンを形成する。形成方法としては、これらの金属の粉末と有機バインダーを主成分とする金属ペーストをスクリーン印刷でパターン印刷する方法や、有機バインダーとして感光性有機成分を用いた感光性金属ペーストを塗布した後に、フォトマスクを用いてパターン露光し、不要な部分を現像工程で溶解除去し、さらに通常350〜600℃に加熱・焼成して電極パターンを形成する感光性ペースト法を用いることができる。また、ガラス基板上にクロムやアルミニウムを蒸着した後に、レジストを塗布し、レジストをパターン露光・現像した後にエッチングにより不要な部分を取り除く、エッチング法を用いることができる。
【0045】
さらに、アドレス電極上に誘電体層を設けることが好ましい。誘電体層を設けることによって、放電の安定性向上や、誘電体層の上層に形成する隔壁の倒れや剥がれを抑止することができる。誘電体層を形成する方法としては、低軟化点ガラス粉末や高軟化点ガラス粉末などの無機成分と有機バインダーを主成分とする誘電体ペーストをスクリーン印刷、スリットダイコーター等で全面印刷または塗布する方法などがある。
【0046】
次に、本発明の感光性ペーストを用いた隔壁の形成方法について説明する。まず、誘電体層を形成した基板上に隔壁用の感光性ペーストを塗布する。塗布方法としては、バーコーター、ロールコーター、スリットダイコーター、ブレードコーター、スクリーン印刷等の方法を用いることができる。塗布厚みは、所望の隔壁の高さとペーストの焼成による収縮率を考慮して決めることができる。塗布厚みは、塗布回数、スクリーンのメッシュ、ペーストの粘度等によって調整できる。
【0047】
塗布した感光性ペーストを乾燥した後、露光を行う。露光は通常のフォトリソグラフィで行われるように、フォトマスクを介して露光する方法が一般的である。また、フォトマスクを用いずに、レーザー光などで直接描画する方法を用いてもよい。露光装置としては、ステッパー露光機、プロキシミティ露光機などを用いることができる。この際使用される活性光線は、例えば、近赤外線、可視光線、紫外線などが挙げられる。これらの中で紫外線が最も好ましく、その光源として、例えば、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ハロゲンランプ、殺菌灯などが使用できる。これらのなかでも、超高圧水銀灯が好適である。露光条件は塗布厚みにより異なるが、通常、1〜100mW/cmの出力の超高圧水銀灯を用いて0.01〜30分間露光を行う。
【0048】
隔壁は2層以上で構成することもできる。隔壁を2層以上で構成することにより、隔壁形状の構成範囲を3次元的に拡大できる。また、本発明においては、隔壁を2層以上で構成し、本発明の感光性ペーストを隔壁の最上層形成のみに用いることが好ましい。隔壁を2層以上の構造体とし、本発明の感光性ペーストを隔壁の最上層形成のみに用いることにより、一般式(1)の化合物を隔壁頂部のみに選択的に存在させることができ、頂部幅の細幅化効果を維持したまま露光量を低減でき、生産においてタクトアップが可能となる。例えば、2層構造の隔壁を形成する場合、1層目の感光性ペーストを塗布し、ストライプ状に露光した後、2層目の感光性ペーストを塗布し、1層目とは垂直方向のストライプ状に露光し、現像を行うことで段違い状の井桁構造を有する隔壁の形成が可能である。また、1層目塗布後に露光を行わず、2層目塗布後に格子状に露光することにより、面一井桁構造の隔壁を形成できる。このとき、1層目の感光性ペーストとして一般式(1)で表される構造を有する化合物を含まない感光性ペーストを用い、2層目に本発明の感光性ペーストを用いることにより、1層目と2層目に共に本発明の感光性ペーストを用いた場合に比べ、2層目のペースト塗布後の露光における露光量を低減でき、なおかつ頂部幅の細い隔壁を形成できる。
【0049】
露光後、露光部分と非露光部分の現像液に対する溶解度の差を利用して現像を行うが、通常、浸漬法やスプレー法、ブラシ法等で行う。現像液としては感光性ペースト中の有機成分が溶解可能である有機溶媒を用いることができるが、感光性ペースト中にカルボキシル基などの酸性基を持つ化合物が存在する場合、アルカリ水溶液で現像できる。アルカリ水溶液としては水酸化ナトリウムや、炭酸ナトリウム、水酸化カリウム水溶液等を使用できるが、有機アルカリ水溶液を用いた方が焼成時にアルカリ成分を除去しやすいので好ましい。
【0050】
有機アルカリとしては、一般的なアミン化合物を用いることができる。具体的にはテトラメチルアンモニウムヒドロキサイド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキサイド、モノエタノールアミン、ジエタノールアミンなどが挙げられる。
【0051】
アルカリ水溶液の濃度は通常0.05〜5質量%、より好ましくは0.1〜1質量%である。アルカリ濃度が低すぎれば可溶部が除去されにくく、アルカリ濃度が高すぎればパターンの剥離や現像装置の腐食のおそれがあり好ましくない。また、現像時の現像温度は20〜50℃で行うことが工程管理上好ましい。
【0052】
次に、焼成炉にて520〜620℃の温度で10〜60分間保持して焼成を行い、隔壁を形成する。
【0053】
隔壁パターンは特に限定されないが、ストライプ状、格子状などが好ましい。また、隔壁の高さは60〜140μmであることが好ましい。より好ましくは90〜130μmである。また、隔壁底部幅の好ましい値は隔壁パターンのピッチによって異なるが、20〜100μmであることが好ましい。また、本発明の感光性ペーストを隔壁の最上層形成のみに用いる場合、隔壁最上層の厚さは5〜40μmであることが好ましい。
【0054】
次に、蛍光体ペーストを用いて蛍光体層を形成する。蛍光体層は、感光性蛍光体ペーストを用いたフォトリソグラフィ法、ディスペンサー法、スクリーン印刷法等によって形成できる。蛍光体層の厚みは特に限定されるものではないが、10〜30μm、より好ましくは15〜25μmである。蛍光体粉末は特に限定されないが、発光強度、色度、色バランス、寿命などの観点から、以下の蛍光体が好適である。青色は2価のユーロピウムを賦活したアルミン酸塩蛍光体(例えば、BaMgAl1017:Eu)やCaMgSiである。緑色では、パネル輝度の点からZnSiO:Mn、YBO:Tb、BaMgAl1424:Eu,Mn、BaAl1219:Mn、BaMgAl1423:Mnが好適である。さらに好ましくはZnSiO:Mnである。赤色では、同様に(Y、Gd)BO:Eu、Y:Eu、YPVO:Eu、YVO:Euが好ましい。さらに好ましくは(Y、Gd)BO:Euである。焼成する工程を経て蛍光体を形成する場合、上述の誘電体層や隔壁の焼成と同時に行っても良い。
【実施例】
【0055】
以下に、本発明を実施例により具体的に説明する。ただし、本発明はこれに限定されるものではない。なお、以下の無機粉末の平均粒子径(d50)および最大粒子径(dmax)は日機装株式会社製「MT3300」を用いて測定した値である。
【0056】
A.感光性ペースト原料
紫外線吸収剤:下記構造式で表される構造を有する化合物を用いた。
【0057】
【化3】

【0058】
化合物No.1:BASF社製TINUVIN PS
化合物No.2:BASF社製TINUVIN P
化合物No.3:BASF社製TINUVIN 329
化合物No.4:BASF社製TINUVIN 328
化合物No.5:BASF社製TINUVIN 928
化合物No.6:シプロ化成株式会社製SEESORB 707
化合物No.7:BASF社製TINUVIN 571
これらの紫外線吸収剤は、いずれも下記一般式(3)で表される構造を有する。
【0059】
【化4】

【0060】
ここで、化合物No.1は、R13〜R16がいずれも水素原子あるいはアルキル基であり、その合計炭素数が4であることから一般式(1)で表される構造を有する化合物に該当する。一方、化合物No.2、化合物No.3、化合物No.4、化合物No.7はR13〜R16がいずれも水素原子あるいはアルキル基であるが、炭素数の合計がそれぞれ1、8、10、13であり、一般式(1)で表される構造を有する化合物に該当しない。また、化合物No.5、および化合物No.6はR13〜R16に水素原子およびアルキル基以外の置換基を有しているため一般式(1)で表される構造を有する化合物に該当しない。
【0061】
このほかに下記の原料を用いた。
溶媒:γ−ブチロラクトン
感光性モノマ1:トリメチロールプロパントリアクリレート
感光性モノマ2:テトラプロピレングリコールジメタクリレート
感光性ポリマ:メタクリル酸/メタクリル酸メチル/スチレン=40/40/30からなる共重合体のカルボキシル基に対して0.4当量のグリシジルメタクリレートを付加反応させたもの(重量平均分子量43000、酸価100)
光重合開始剤1:2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−1−ブタノン(BASF社製IC369)
光重合開始剤2:2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−1−プロパノン(BASF社製IC907)
酸化防止剤:1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]
有機染料:スダンIV(東京応化工業株式会社製)
低軟化点ガラス粉末:酸化リチウム7質量%、酸化ケイ素22質量%、酸化ホウ素33質量%、酸化亜鉛3質量%、酸化アルミニウム19質量%、酸化マグネシウム6質量%、酸化バリウム5質量%、酸化カルシウム5質量%(軟化点:590℃、d50:2μm、dmax:10μm)
高軟化点ガラス粉末:酸化ナトリウム1質量%、酸化ケイ素40質量%、酸化ホウ素10質量%、酸化アルミニウム33質量%、酸化亜鉛4質量%、酸化カルシウム9質量%、酸化チタン3質量%(軟化点:770℃、d50:2μm、dmax:10μm)
B.感光性ペーストの作製
感光性ペーストの組成を表1および表2に示した。感光性ペーストは以下のように作成した。
【0062】
表1および表2に記載の有機成分を秤量した後、混合、溶解した。次に、表1および表2に記載の無機成分を添加した後、3本ローラー混練機にて混練し、感光性ペーストとした。作製した感光性ペーストは、遠心脱泡器により脱泡を行った。
【0063】
C.ペーストの相溶性・保存安定性評価
ペーストの相溶性は以下のように評価した。作製直後のペーストを目視で観察し、相分離の有無を確認した。また、ペーストを2枚のガラス板で挟み、偏光顕微鏡を用いてクロスニコル下で観察し、輝点の有無を確認した。本評価において輝点が確認された場合、ペーストに相溶していない結晶が存在することが分かる。上記の評価で、相分離が無く、なおかつ結晶も存在しない場合を○、そうでない場合を×とした。
【0064】
保存安定性は以下のように評価した。相溶性評価が○であったペーストを−20℃の冷凍庫内で48時間保存した後、冷凍庫より取り出して室内で静置し室温まで昇温した。その後、相溶性評価と同様に偏光顕微鏡観察を行って結晶析出の有無を確認し、結晶が析出していない場合を○、析出している場合を×とした。
【0065】
D.隔壁パターンの作製
表1、および表2に記載の感光性ペーストを−20℃の冷凍庫内で48時間保存した後、冷凍庫より取り出して23℃の室内で静置し室温まで昇温した感光性ペーストを用いて、以下の手順にて隔壁パターンを作製した。旭硝子株式会社製“PD−200”ガラス基板(42インチ)上に、感光性銀ペーストを用いたフォトリソグラフィ法によりアドレス電極パターンを形成した。次いで、アドレス電極が形成されたガラス基板上に誘電体層をスクリーン印刷法により20μmの厚みで形成した。しかる後、隔壁の下層を形成するための感光性ペーストをスリットダイコーターによりアドレス電極パターンおよび誘電体層が形成された背面板ガラス基板上に、焼成後に厚さ100μmのガラス膜となる膜厚で塗布し、100℃で1時間乾燥した。続いて隔壁の上層を形成するための感光性ペーストをスリットダイコーターにより焼成後に厚さ20μmのガラス膜となる膜厚で塗布後、100℃で30分乾燥し、2層の層構造を有する感光性ペースト塗膜を形成した。引き続き、露光マスクを介して露光を行った。露光マスクは、ピッチ160μm、線幅25μm、プラズマディスプレイにおけるストライプ状の隔壁パターン形成が可能になるように設計したクロムマスクである。露光は、各感光性ペースト塗膜について50mW/cmの出力の超高圧水銀灯で100mJ/cmから500mJ/cmまで、5mJ/cmおきに紫外線露光を行った。
【0066】
次に、35℃に保持したモノエタノールアミンの0.3質量%水溶液をシャワーで300秒間かけることにより現像した後、シャワースプレーを用いて水洗浄して、光硬化していないスペース部分を除去した。その後、560℃で30分保持して焼成することにより隔壁を形成した。
【0067】
E.隔壁パターンの評価
上記手法で作製した露光量の異なる試料を割断して隔壁の長手方向と垂直な断面を露出させ、走査型電子顕微鏡(日立製作所製、S2400)で断面を観察し、隔壁と誘電体の接触部における隔壁幅(底部幅)を測定した。隔壁底部幅は露光量の増加と共に太くなることから、作製した試料のうち、焼成後の隔壁の底部幅が55μmに最も近い試料を選択し、その試料の頂部幅を測定した。また、底部幅が55μmに最も近くなった露光量を最適露光量とした。また、最適露光量で露光された基板について、光学顕微鏡を用いて基板上方より1cm×1cmの範囲を観察し、隔壁頂部の欠けの有無を確認した。本評価においては、頂部幅と最適露光量の数値がいずれも小さく、なおかつ隔壁頂部に欠けがないことが好ましい。
【0068】
評価結果 作製したペーストの相溶性、保存安定性評価結果を表1および表2に示す。また、これらのペーストを用いて作製した隔壁パターンの評価結果を表3および表4に示す。
【0069】
【表1】

【0070】
【表2】

【0071】
【表3】

【0072】
【表4】

【0073】
一般式(1)で表される構造を有する紫外線吸収剤を添加した実施例1〜5のペーストは、相溶性と保存安定性のいずれも○であった。また、これらのペーストを用いて作製した実施例6〜15の隔壁パターンは、いずれも比較例8に比べて頂部幅が細く、なおかつ隔壁頂部に欠けが見られず、良好な結果を示した。また、一般式(1)で表される構造を有する紫外線吸収剤の添加量の増加に伴って頂部幅が細くなっていることから、一般式(1)で表される構造を有する紫外線吸収剤の添加量を調整することにより頂部幅を制御できることが分かった。さらに、実施例1〜5のペーストを隔壁の上層形成用のみに用いた実施例11〜15は、上下層共に実施例1〜5のペーストを用いた実施例6〜10と同等の頂部幅でありながら、最適露光量を低露光量化できた。
【0074】
一方、比較例1のペーストは、紫外線吸収剤を含まないことから相溶性、保存安定性は○であったが、該ペーストのみを用いて作製した隔壁パターンの頂部幅は実施例6〜15に比べて太かった。また、一般式(1)で表される構造を有する化合物以外の紫外線吸収剤を添加したペーストのうち、比較例2〜5のペーストは、相溶性は○であったが保存安定性が×であった。また、比較例6のペーストは相溶性試験において結晶が観察され、相溶性が×であった。また、比較例7は、化合物No.7が液体であるにも関わらず、ペースト作製後に液滴として相分離しており、相溶性が×であった。また、比較例2〜7のペーストを用いて作製した比較例9〜14の隔壁パターンには、ペーストに相溶していない紫外線吸収剤の結晶や液滴が焼成により除去された後に残された空間と見られる隔壁頂部の欠けが見られた。さらに、これらの隔壁パターンの頂部幅は34〜38μmであり、紫外線吸収剤としてこれらのペーストと等量の化合物No.1を添加したペーストを用いて作製した実施例8のパターンに比べ、頂部幅が太かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
低軟化点ガラス粉末を含む無機成分、感光性有機成分、下記一般式(1)で表される構造を有する化合物、光重合開始剤、および溶媒を含むことを特徴とする感光性ペースト。
【化1】

(式中、R〜Rはそれぞれ水素原子、アルキル基のいずれかであり、R〜Rの合計炭素数が3〜5である。また、R〜Rはそれぞれ水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、ハロゲン原子のいずれかである。)
【請求項2】
前記溶媒の溶解度パラメータが18〜30MPa1/2の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の感光性ペースト。
【請求項3】
前記一般式(1)で表される構造を有する化合物が、2−(2−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾールであることを特徴とする請求項1または2に記載の感光性ペースト。
【請求項4】
前記溶媒がγ−ブチロラクトンであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の感光性ペースト。
【請求項5】
前記光重合開始剤が2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−1−ブタノンであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の感光性ペースト。
【請求項6】
基板上に請求項1〜5のいずれかに記載の感光性ペーストを塗布、露光、現像、焼成することを特徴とするパターンの形成方法。
【請求項7】
請求項6に記載のパターンの形成方法を用いて隔壁を形成する工程を含む平面ディスプレイパネル用部材の製造方法。

【公開番号】特開2012−93742(P2012−93742A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−214223(P2011−214223)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】