説明

感光性平版印刷版の処理方法

【課題】 感光層の上に水溶性のオーバーコートを有する感光性平版印刷版を画像露光の後、現像の前に洗浄水で洗浄して該オーバーコート層を除去する処理を含む処理方法における現像前洗浄に用いる洗浄水を循環再利用しても槽内や配管に炭酸カルシウムの沈着や樹脂濃度の上昇による処理速度の低下とカビ発生等の問題を解消し、処理の迅速化及び安定化が可能な感光性平版印刷版の処理方法を提供する。
【解決手段】 感光層の上に水溶性のオーバーコート層を設けた感光性平版印刷版を洗浄工程で洗浄水で洗浄した後に現像する処理方法において、該洗浄工程で用いる洗浄水がキレート剤、界面活性剤又は防腐剤を含有する洗浄液である処理方法。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、感光層の上に水溶性のオーバーコートを有する感光性平版印刷版を画像露光の後、現像の前に感光性平版印刷版を洗浄水で洗浄して該オーバーコート層を除去する処理を含む処理方法における処理の迅速化及び安定化技術に関する。
【0002】
【従来の技術】支持体上に感光層を設けた感光性平版印刷版の感光層の膜面を傷や埃から保護したり、感光層の酸化反応を防止したりするために水溶性のオーバーコート層を設ける場合がある。このような感光性平版印刷版は、画像露光の後に、現像前の前処理でオーバーコートを除去せずに現像すると、現像においてオーバーコート層が溶解・除去される時間にばらつきを生じ、現像むらを生じたり、感度のバラツキの原因になる問題がある。
【0003】この問題を解消するため、現像の前に感光性平版印刷版を水洗してオーバーコート層を除去する方法が知られている。この方法を自動現像機で行う場合、現像前洗浄に用いる洗浄水を使い捨てる方法(新液かけ流し)で行うと廃液量が多くなるので、通常は洗浄水のタンクを設け洗浄水の循環再利用を行っている。このような方法で長期ランニングを行う場合には、洗浄水の持ち出しや蒸発による洗浄水の減少を補う目的や処理の安定性を保つ目的で洗浄水の補充が行われるが、その時に水に含まれるカルシウムイオンも同時に供給される。このカルシウムイオンが原因となって槽内や配管に炭酸カルシウムが沈着しメンテナンス効率の低下や故障の原因となっていた。
【0004】また、少量の液補充で現像前洗浄に用いる洗浄水を循環再利用しながら長期ランニングを行うと、洗浄水中の樹脂濃度が上昇し洗浄処理の速度が低下し、処理ムラ発生の原因となっていた。また、長期ランニングで樹脂を含む現像前洗浄処理液を長期間タンクに貯溜させておくと、処理液にカビが発生し、配管系の目詰まりが生じてランニング終盤には処理不能が生じる問題があった。
【0005】
【本発明が解決しようとする課題】本発明は上記従来の技術の問題を解決しようとするもので、本発明が解決しようとする課題は、現像前洗浄に用いる洗浄水を循環再利用しても槽内や配管に炭酸カルシウムの沈着や樹脂濃度の上昇による処理速度の低下とカビ発生等の問題を解消し、処理の迅速化及び安定化が可能な感光性平版印刷版の処理方法を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決する本発明の手段は下記(1)〜(3)である。
【0007】(1)感光層の上に水溶性のオーバーコート層を設けた感光性平版印刷版を洗浄工程で洗浄水で洗浄した後に現像する処理方法において、該洗浄工程で用いる洗浄水がキレート剤を含有する洗浄液であることを特徴とする感光性平版印刷版の処理方法。
【0008】(2)感光層の上に水溶性のオーバーコート層を設けた感光性平版印刷版を洗浄工程で洗浄水で洗浄した後に現像する処理方法において、該洗浄工程で用いる洗浄水が界面活性剤を含有する洗浄液であることを特徴とする感光性平版印刷版の処理方法。
【0009】(3)感光層の上に水溶性のオーバーコート層を設けた感光性平版印刷版を洗浄工程で洗浄水で洗浄した後に現像する処理方法において、該洗浄工程で用いる洗浄水が防腐剤を含有する洗浄液であることを特徴とする感光性平版印刷版の処理方法。
【0010】以下、本発明について詳述する。
【0011】本発明の処理方法で処理される感光性平版印刷版は、支持体上に少なくとも感光層及びオーバーコート層をこの順に有し、活性光により該感光層が現像液に対する膨潤性や溶解性が変化し、該現像液で処理することによって画像を形成し得るものである。
【0012】本発明の処理方法で処理される感光性平版印刷版の支持体は、感光性平版印刷版の支持体として用いられる公知のものを包含し、例えば、アルミニウム、鋼鉄、亜鉛、銅等からなる金属板;プラスチックフィルム、クロム、亜鉛、銅、ニッケル、アルミ、鉄等がメッキ又は蒸着された金属板;プラスチックフィルム、ガラス板;樹脂等が塗布された紙;アルミニウム等の金属が貼られた紙;親水化処理したプラスチックフィルム等が挙げられる。
【0013】本発明の処理方法で処理される感光性平版印刷版の感光層としては、英国特許第1,350,521号、同第1,460,978号、同第1,505,739号各明細書に記載されているようなジアゾ樹脂を含有する感光層、特開昭50−125806号公報に記載されているようなo−キノンジアジド化合物とノボラック型フェノール樹脂との混合物からなる感光層、米国特許第3,860,426号明細書中に具体的に示されているような光架橋性フォトポリマーの感光層、米国特許第4,072,527号、同第4,072528号各明細書に記載されている光重合性型フォトポリマー組成物の感光層、英国特許第1,235,281号、同1,495,861号各明細書に記載されているようなアジドと水溶性ポリマーとの混合物からなる感光層等が挙げられる。
【0014】本発明の処理方法で処理される好ましい感光性平版印刷版として、下記バインダー、モノマー及び光重合開始剤を含有する感光層を有する感光性平版印刷版が挙げられる。
【0015】バインダーとしては、例えば、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリビニルクロライド、及びそのコポリマー、ポリビニル樹脂、アクリル樹脂等の高分子重合体が挙げられる。
【0016】これらの中で好ましい高分子重合体は、下記(1)〜(17)に記載のモノマーの混合物を共重合して得られた共重合高分子重合体である。
【0017】上記モノマー混合物には、上記モノマーと共重合し得る他のモノマーを混合してもよい。また高分子重合体は、上記モノマーの共重合体によって得られる共重合体を例えば、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート等によって修飾したものであってもよい。
【0018】(1)芳香族水酸基を有するモノマー、例えば、o−ヒドロキシスチレン、p−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレン、o−ヒドロキシフェニルアクリレート、p−ヒドロキシフェニルアクリレート、m−ヒドロキシフェニルアクリレート等。
【0019】(2)脂肪族水酸基を有するモノマー、例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、4−ヒドロキシブチルメタクリレート、5−ヒドロキシペンチルアクリレート、5−ヒドロキシペンチルメタクリレート、6−ヒドロキシヘキシルアクリレート、6−ヒドロキシヘキシルメタクリレート、N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)メタクリルアミド、ヒドロキシエチルビニルエーテル等。
【0020】(3)アミノスルホニル基を有するモノマー、例えば、m−アミノスルホニルフェニルメタクリレート、p−アミノスルホニルフェニルメタクリレート、m−アミノスルホニルフェニルアクリレート、p−アミノフェニルアクリレート、N−(p−アミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド、N−(p−アミノスルホニルフェニル)アクリルアミド等。
【0021】(4)スルホンアミド基を有するモノマー、例えば、N−(p−トルエンスルホニル)アクリルアミド、N−(p−トルエンスルホニル)メタクリルアミド等。
【0022】(5)α,β−不飽和カルボン酸類、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸水、無水イタコン酸等。
【0023】(6)置換又は無置換のアルキルアクリレート、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸ヘプチル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ノニル、アクリル酸デシル、アクリル酸ウンデシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸−2−クロロエチル、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、グリシジルアクリレート等。
【0024】(7)置換又は無置換のアルキルメタクリレート、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸アミル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸ヘプチル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸ノニル、メタクリル酸デシル、メタクリル酸ウンデシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸−2−クロロエチル、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート等。
【0025】(8)アクリルアミド若しくはメタクリルアミド類、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−ヘキシルアクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、N−ニトロフェニルアクリルアミド、N−エチル−N−フェニルアクリルアミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)アクリルアミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)アクリルアミド、(9)フッ化アルキル基を含有するモノマー、例えば、トリフルオロエチルアクリレート、トリフルオロエチルメタクリレート、テトラフルオロプロピルメタクリレート、ヘキサフルオロプロピルメタクリレート、オクタフルオロペンチルアクリレート、オクタフルオロペンチルメタクリレート、ヘプタデカフルオロデシルメタクリレート、N−ブチル−N−(2−アクリロキシエチル)ヘプタデカフルオロオクチルスルホンアミド等。
【0026】(10)ビニルエーテル類、例えば、エチルビニルエーテル、2−クロロエチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル類。
【0027】(11)ビニルエステル類、例えば、ビニルアセテート、ビニルクロロアセテート、ビニルブチレート、安息香酸ビニル等。
【0028】(12)スチレン類、例えば、スチレン、メチルスチレン、クロロメチルスチレン等。
【0029】(13)ビニルケトン類、例えば、メチルビニルケトン、エチルビニルケトン、プロピルビニルケトン、フェニルビニルケトン等。
【0030】(14)オレフィン類、例えば、エチレン、プロピレン、イソブチレン、ブタジエン、イソプレン等。
【0031】(15)N−ビニルピロリドン、N−ビニルカルバゾール、4−ビニルピリジン等。
【0032】(16)シアノ基を有するモノマー、例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリル、2−ペンテンニトリル、2−メチル−3−ブテンニトリル、2−シアノエチルアクリレート、o−シアノスチレン、m−シアノスチレン、p−シアノスチレン等。
【0033】(17)アミノ基を有するモノマー、例えばN,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、ポリブタジエンウレタンアクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、アクリロイルモルホリン、N−イソプロピルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド等。
【0034】上記、共重合体は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって、測定された重合平均分子量が1万〜20万であるものが好ましいが、重量平均分子量はこの範囲に限定されるものではない。
【0035】本発明において、上記高分子化合物のうちアクリル系重合体が特に好ましい。
【0036】上記高分子重合体には、必要に応じて、ポリビニルブチラール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ノボラック樹脂、天然樹脂等、他の任意の高分子重合体を併用してもよい。感光性組成物中におけるこれらの高分子重合体の含有量は、20〜90重量%の範囲が好ましく、30〜70重量%の範囲が更に好ましい。
【0037】モノマーとしては、公知の重合性モノマー類を使用することができる。具体的化合物としては、例えば、2−エチルヘキシルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート等の単官能アクリル酸エステル及びその誘導体或いはこれらのアクリレートをメタクリレート、イタコネート、クロトネート、マレエート等に代えた化合物、ポリエチレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ビスフェノールAジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールのε−カプロラクトン付加物のジアクリレート等の2官能アクリル酸エステル及びその誘導体或いはこれらのアクリレートをメタクリレート、イタコネート、クロトネート、マレエート等に代えた化合物、或いはトリメチロールプロパントリアクリレート、EO変性されたイソシアヌル酸のトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ピロガロールトリアクリレート等の多官能アクリル酸エステル及びその誘導体或いはこれらのアクリレートをメタクリレート、イタコネート、クロトネート、マレエート等に代えた化合物等を挙げることができる。
【0038】また適当な分子量のオリゴマーにアクリル酸、又はメタアクリル酸を導入し、光重合性を付与したいわゆるプレポリマーと呼ばれるものも好適に使用できる。
【0039】この他に、特開昭58−212994号、同61−6649号、同62−46688号、同62−48589号、同62−173295号、同62−187092号、同63−67189号、特開平1−244891号公報等に記載の化合物などを挙げることができ、更に「11290の化学商品」化学工業日報社、p.286〜294に記載の化合物、「UV・EB硬化ハンドブック(原料編)」高分子刊行会、p−11〜65に記載の化合物なども本発明においては好適に用いることができる。
【0040】これらの中で、分子内に2個以上のアクリル基又はメタクリル基を有する化合物が本発明においては好ましく、更に分子量が10,000以下、より好ましくは5,000以下のものが好ましい。また本発明ではこれらのモノマー或いはプレポリマーのうち1種又は2種以上を混合して用いることができる。
【0041】光重合開始剤としては、例えばJ.コーサー(J.Kosar)著「ライト・センシティブ・システムズ」第5章に記載されているようなカルボニル化合物、有機硫黄化合物、過硫化物、レドックス系化合物、アゾ並びにジアゾ化合物、ハロゲン化合物、光還元性色素等が挙げられる。更に具体的な化合物は英国特許第1,459,563号に開示されている。
【0042】即ち、光重合開始剤としては、次のようなものを使用することができる。例えば、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、α,α−ジメトキシ−α−フェニルアセトフェノン等のベンゾイン誘導体;ベンゾフェノン、2,4−ジクロルベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4,4′−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン等のベンゾフェノン誘導体;2−クロルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン等のチオキサントン誘導体;2−クロルアントラキノン、2−メチルアントラキノン等のアントラキノン誘導体;N−メチルアクリドン、N−ブチルアクリドン等のアクリドン誘導体;α,α−ジエトキシアセトフェノン;ベンジルフルオレノン;キサントン;ウラニル化合物の他、特公昭59−1281号 特公昭61−9621号及び特開昭60−60104号記載のトリアジン誘導体、特開昭59−1504号及び特開昭61−243807号記載の有機過酸化物、特公昭43−23684号、特公昭44−6413号、特公昭44−6413号、特公昭47−1604号及び米国特許第3,567,453号記載のジアゾニウム化合物、米国特許第2,848,328号、米国特許第2,852,379号及び米国特許第2,940,853号記載の有機アジド化合物、特公昭36−22062号、特公昭37−13109号、特公昭38−18015及び特公昭45−9610号記載のオルトキノンジアジド類、特公昭55−39162号、特開昭59−14023号及び「マクロモレキュルス(Macromoleules)、第10巻、第1307頁(1977年)記載の各種オニウム化合物、特開昭59−142205号記載のアゾ化合物、特開平1−54440号、ヨーロッパ特許第109,851号、ヨーロッパ特許第126,712号、「ジャーナル・オブ・イメージング・サイエンス」(J.Imag.Sci.)」、第30巻、第174頁(1986年)記載の金属アレン錯体、特願平4−56831号及び特願平4−89535号記載の(オキソ)スルホニウム有機ホウ素錯体、特開昭61−151197号記載のチタノセン類、「コーディネーション・ケミストリー・レビュー(Coordinantion Chemistry Review)」、第84巻、第85〜第277頁(1988年)及び特開平2−182701号記載のルテニウム等の遷移金属を含有する遷移金属錯体、特開平3−209477号の記載2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体、四臭化炭素、特開昭59−107344号記載の有機ハロゲン化合物等が挙げられる。
【0043】本発明の処理方法で処理される感光性平版印刷版のオーバーコート層としては、感光層面を保護する目的のみに用いる場合には、皮膜形成性を有し、現像前の洗浄工程で用いる洗浄水に溶解するもの、ラジカル重合性の感光層を有し、空気中の酸素による重合禁止作用を期待しポリビニルアルコールや酸性セルロース類などのような酸素遮断性に優れたポリマーを用いたオーバーコート層等が挙げられる。また、例えば特公昭55−49729号公報記載のようなものも含まれる。更にまた、本発明に係る感光性平版印刷版のオーバーコート層は、面状を改良するために界面活性剤が添加されていてもよい。
【0044】本発明の感光性平版印刷版が感光層が光重合性感光層である場合、オーバーコート層は後述する現像液(一般にはアルカリ水溶液)への溶解性が高いことが好ましい。好ましい化合物例を挙げると、ポリビニルアルコール、ポリサッカライド、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ゼラチン、膠、カゼイン、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチル澱粉、アラビアゴム、サクローズオクタアセテート、アルギン酸アンモニウム、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルアミン、ポリエチレンオキシド、ポリスチレンスルホン酸、ポリアクリル酸、水溶性ポリアミド等が挙げられる。これらの化合物を単独又は2種以上混合したものを主成分として用いることができる。特に好ましい化合物としてはポリビニルアルコールが挙げられる。
【0045】これらの化合物を適当な溶剤に溶解し光重合性感光層上に塗布乾燥してオーバーコート層を形成する。
【0046】オーバーコート層の厚みは0.1〜5.0μmが好ましく、特に好ましくは0.5〜3.0μmである。
【0047】オーバーコート層は、更に必要に応じて、マット剤等を含有することができる。
【0048】本発明において、現像前の洗浄工程で用いる洗浄液は、キレート剤、界面活性剤及び防腐剤から選ばれる少なくとも1種を含有する液であり、溶媒としては水(例えば、水道水)を使用することができる。
【0049】キレート剤としては、金属イオンと配位結合してキレート化合物を形成する化合物を用いる。エチレンジアミンテトラ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩、トリエチレンテトラミンヘキサ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩、ジエチレントリアミンペンタ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩、ヒドロキシエチルエチレンジアミントリ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩、ニトリオトリ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩、1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩、アミノトリ(メチレンホスホン酸)、そのカリウム塩、そのナトリウム塩、ホスホノアルカントリカルボン酸等が挙げられる。これらのキレート剤はカリウム塩及びナトリウム塩の代わりに有機アミン塩を有するものも有効である。
【0050】キレート剤の添加量は0.0001〜3.0重量%の範囲が適当である。
【0051】界面活性剤としては、アニオン、ノニオン、カチオン及び両性の何れの界面活性剤も用いることができるが、アニオン又はノニオン界面活性剤が好ましい。好ましい界面活性剤の種類はオーバーコート層や感光層の組成によって異なり、一般にオーバーコート層素材の溶解促進剤となり、感光層成分の溶解性が小さいものが好ましい。
【0052】アニオン界面活性剤としては、脂肪酸塩類、アビチェン酸塩類、ヒドロキシアルカンスルホン酸塩類、アルカンスルホン酸塩類、ジアルキルスルホコハク酸塩類、アルキルベンゼンスルホン酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、アルキルフェノキシポリオキシエチレンプロピルスルホン酸塩類、ポリオキシエチレンアルキルスルホフェニルエーテル塩類、N−メチル−N−オレイルタウリンナトリウム類、N−アルキルスルホコハク酸モノアミド二ナトリウム塩類、石油スルホン酸塩類、硫酸化ヒマシ油、硫酸化牛脂油、脂肪酸アルキルエステルの硫酸エステル塩類、アルキル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩類、脂肪酸モノグリセリド硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、アルキル燐酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル燐酸エステル塩類、スチレン−無水マレイン酸共重合物の部分ケン化物類、オレフィン−無水マレイン酸共重合物の部分ケン化物類、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物類等が挙げられる。
【0053】ノニオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンポリスチリルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンポリオキエイプロピレンアルキルエーテル類、グリセリン脂肪酸エステル類、ソルビタン脂肪酸部分エステル類、ペンタエリスリトール脂肪酸部分エステル類、プロピレングリコールモノ脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸部分エステル類、イエチレングリコール脂肪酸エステル類、ポリイグリセリン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレン化ひまし油類、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸部分エステル類、脂肪酸ジエタノールアミド類、N,N−ビス−ヒドロキシアルキルアミン類、ポリオキシエチレンアルキルアミン、トリエタノールアミン脂肪酸エステル、トリアルキルアミンオキシド等が挙げられる。
【0054】界面活性剤の好ましい添加量は0.005〜10重量%である。また、界面活性剤に消泡剤を併用することもできる。
【0055】防腐剤としては、フェノール又はその誘導体、ホルマリン、イミダゾール誘導体、デヒドロ酢酸ナトリウム、4−イソチアゾリン−3−オン誘導体、ベンゾイソチアゾリン−3−オン、ベンゾトリアゾール誘導体、アミジングアニジン誘導体、四級アンモニウム塩類、ピロジン,キノリン,グアニジン等の誘導体、ダイアジン、トリアゾール誘導体、オキサゾール,オキサジン誘導体等が挙げられる。
【0056】本発明の洗浄方法において、現像前洗浄に用いる洗浄液は温度を調節して用いることが好ましく、該温度は20〜60℃の範囲が好ましい。洗浄の方法は、スプレー、ディップ、塗布等公知の処理液供給技術を用いることができ、適宜ブラシや絞りロール、ディップ処理における液中シャワーなどの処理促進手段を用いることができる。
【0057】本発明において、現像前洗浄工程終了後直ちに現像処理を行ってもよく、また、現像前洗浄工程の後に乾燥させてから現像処理を行ってもよい。現像工程の後は、水洗、リンス、ガム引き等公知の後処理を行うことができる。
【0058】本発明の処理方法における現像液は、前記感光性平版印刷版の現像に用いられる現像液であり、例えば、感光性成分としてジアゾ樹脂や光重合性組成物を用いたるネガ型感光性平版印刷版用のネガ用現像液、感光性成分としてo−キノンジアジド化合物を用いたポジ型感光性平版印刷版用のポジ用現像液、及び上記ネガ型感光性平版印刷版とポジ型感光性平版印刷版の両用のネガ・ポジ両用現像液が挙げられる。本発明の処理方法において、現像液は、公知の上記ネガ用現像液、ポジ用現像液、及びネガ・ポジ両用現像液の何れであってもよい。
【0059】本発明の処理方法において、現像液は、現像する感光性平版印刷版によっても異なるが、代表的にはアルカリ剤及びその他の添加剤からなるものである。該現像液において、現像液のpHは8以上が好ましく、特に、12以上が好ましい。
【0060】アルカリ剤としては、各種のものを用いることができるが、ケイ酸アルカリを用いることが好ましい。用いることができるケイ酸アルカリとしては、例えば、ケイ酸カリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、メタケイ酸カリウム、ケイ酸アンモニウム等が挙げられる。これらケイ酸アルカリは現像液中に0.3〜10重量%の範囲で含有させるのが好ましい。また、ケイ酸アルカリにおけるSiO2濃度は、0.1〜7.0重量%の範囲にあるのが好ましい。
【0061】現像液には、上記ケイ酸アルカリ以外のアルカリ剤を使用することができ、使用することができるアルカリ剤としては、例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、第三リン酸ナトリウム、第二リン酸ナトリウム、第三リン酸カリウム、第二リン酸カリウム、第三リン酸アンモニウム、第二リン酸アンモニウム、メタケイ酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸アンモニウムなどのような無機アルカリ剤、モノ、ジ又はトリエタノールアミン及び水酸化テトラアルキルのような有機アルカリ剤を挙げることができる。これらの中でも、水酸化カリウムもしくは水酸化ナトリウムが好ましい。
【0062】上記アルカリ剤の他に有機溶剤を加えることができる。有機溶剤としては20℃おける水に対する溶解度が10重量%以下のものが好ましく、例えば、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸ベンジル、エチレングリコールモノブチルアセート、乳酸ブチル、レプリン酸ブチルのようなカルボン酸エステル;エチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンのようなケトン類;エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールベンジルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、プロピレングリコール、フェニルプロピレングリコール、ベンジルアルコール、メチルフェニルカルビノール、n−アミルアルコール、メチルアミルアルコールのようなアルコール類;キシレンのようなアルキル置換芳香族炭化水素;メチレンジクロライド、エチレンジクロライド、モノクロルベンゼンのようなハロゲン化炭化水素;を挙げることができる。これらの有機溶剤はそれぞれ単独で又は2種以上を組合わせて使用することができる。
【0063】現像液には、上記アルカリ剤及び有機溶剤以外に他の種々の公知の添加剤をそれぞれの目的をもって添加することができる。これら添加剤としては、還元剤、硬調化剤、キレート剤、界面活性剤、有機カルボン酸が挙げられる。
【0064】還元剤としては、無機及び有機の還元剤がある。無機の還元剤としては、例えば、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸アンモニウム、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウム等の亜硫酸塩、亜リン酸ナトリウム、亜リン酸カリウム、亜リン酸水素ナトリウム、亜リン酸水素カリウム、亜リン酸二水素ナトリウム、亜リン酸水素二カリウム等のリン酸塩、ヒドラジン、チオ硫酸ナトリウム、亜ジチオン酸ナトリウム等を挙げることができるが、特に効果が優れている還元剤は亜硫酸塩である。有機の還元剤としては、水溶性又はアルカリ可溶性の有機の還元剤、例えば、ハイドロキノン、メトール、メトキシキノン、チオサリチル酸、レゾルシン、2−メチルレゾルシン等のフェノール化合物、フェニレンジアミン、フェニルヒドラジン等のアミン化合物を挙げることができる。これらの還元剤は、現像剤中に0.1〜10重量%含有させるのが好ましく、0.5〜5重量%含有させるのがより好ましい。
【0065】硬調化剤としては公知の各種のものを用いることができるがポリエチレンオキサイド基を有する化合物が好ましい。中でもポリエチレンオキサイド基を有するノニオン性界面活性剤、特に、ポリエチレンオキサイド基とアルキル基を有するノニオン性界面活性剤が好ましい。
【0066】ポリエチレンオキサイド基を有するノニオン性界面活性剤は、エチレンオキサイド基を3つ以上有し、かつ、HLB(Hydrophile−Lipophile Balance)値が5以上、更にHLBが8〜20であるノニオン界面活性剤がより好ましい。また、ノニオン界面活性剤としては、エチレンオキサイド基と共にプロピレンオキサイド基を有するものが好ましい。中でもHLB値が8以上であるものがより好ましい。
【0067】ポリエチレンオキサイド基を有する化合物の好ましい例として、下記一般式〔1〕〜〔8〕で表される化合物が挙げられる。
【0068】
【化1】


【0069】一般式〔1〕〜〔8〕式において、Rは水素原子又は1価の有機基を表し、a、b、c、m、n、x及びyは各々1〜40の整数を表す。
【0070】Rで表される有機基としたは、例えば、直鎖若しくは分岐の炭素数1〜30のアルキル基、置換基〔例えば、アリール基(フェニル基等)〕を有するアルキル基、アルキル部分が直鎖若しくは分岐の炭素数1〜30のアルキル基であるアルキルカルボニル基、置換基(例えばヒドロキシル基、上記のようなアルキル基等)を有していてもよいフェニル基等が挙げられる。
【0071】次に、硬調化剤の具体例を示す。
【0072】ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンノニルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンベヘニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンベヘニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルアミン、ポリオキシエチレンオレイルアミン、ポリオキシエチレンステアリン酸アミド、ポリオキシエチレンオレイン酸アミド、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレンアビエチルエーテル、ポリオキシエチレンラノリンエーテル、ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノステアレート、ポリオキシエチレングリセリルモノオレート、ポリオキシエチレングリセリルモノステアレート、ポリオキシエチレンプロピレングリコールモノステアレート、オキシエチレンオキシプロピレンブロックポリマー、ジスチレン化フェノールポリエチレンオキシド付加物、トリベンジルフェノールポリエチレンオキシド付加物、オクチルフェノールポリオキシエチレンポリオキシプロピレン付加物、グリセロールモノステアレート、ソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート等。
【0073】ポリエチレンオキサイド基を有する化合物の重量平均分子量は300〜10000の範囲が好ましく、500〜5000の範囲が特に好ましい。
【0074】キレート剤としては公知の各種のものを用いることができるが、例えば、ポリリン酸及びそのナトリウム塩、カリウム塩及びアンモニウム塩、エチレンジアミンテトラ酢酸、ジエチレントリアミンペンタ酢酸、トリエチレンテトラミンヘキサ酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミントリ酢酸、ニトリロトリ酢酸、1,2−ジアミノシクロヘキサンテトラ酢酸及び1,3−ジアミノ−2−プロパノールテトラ酢酸などのアミノポリカルボン酸及びそれらのナトリウム塩、カリウム塩及びアンモニウム塩、アミノトリ(メチレンホスホン酸)、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)、トリエチレンテトラミンヘキサ(メチレンホスホン酸)、ヒドロキシエチルエチレンジアミントリ(メチレンホスホン酸)及び1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸やそれらのナトリウム塩、カリウム塩及びアンモニウム塩を挙げることができる。
【0075】キレート剤を使用する場合、キレート剤の種類、使用される硬水の硬度及び量等によってその使用量の最適値が変化するが、通常、使用時の現像液に対して0.01〜5重量%、より好ましくは0.0l〜0.5重量%の範囲で使用される。キレート剤の添加量が少ないと所期の目的が十分に達成されず、添加量が多いと色抜けなど、画像部への悪影響がでてくる。
【0076】界面活性剤としては、カチオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられる。
【0077】カチオン界面活性剤はアミン型と第四アンモニウム塩型に大別されるが、これらの何れをも用いることができる。
【0078】アミン型の例としては、ポリオキシエチレンアルキルアミン、N−アルキルプロピレンアミン、N−アルキルポリエチレンポリアミン、N−アルキルポリエチレンポリアミンジメチル硫酸塩、アルキルビグアニド、長鎖アミンオキシド、アルキルイミダゾリン、1−ヒドロキシエチル−2−アルキルイミダゾリン、1−アセチルアミノエチル−2−アルキルイミダゾリン、2−アルキル−4−メチル−4−ヒドロキシメチルオキサゾリン等がある。
【0079】また、第四アンモニウム塩型の例としては、長鎖第1アミン塩、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルエチルアンモニウム塩、アルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩、アルキルキノリニウム塩、アルキルイソキノリニウム塩、アルキルピリジニウム硫酸塩、ステアラミドメチルピリジニウム塩、アシルアミノエチルジエチルアミン塩、アシルアミノエチルメチルジエチルアンモニウム塩、アルキルアミドプロピルジメチルベンジルアンモニウム塩、脂肪酸ポリエチレンポリアミド、アシルアミノエチルピリジニウム塩、アシルコラミノホルミルメチルピリジニウム塩、ステアロオキシメチルピリジニウム塩、脂肪酸トリエタノールアミン、脂肪酸トリエタノールアミンギ酸塩、トリオキシエチレン脂肪酸トリエタノールアミン、脂肪酸ジブチルアミノエタノール、セチルオキシメチルピリジニウム塩、p−イソオクチルフェノキシエトキシエチルジメチルベンジルアンモニウム塩等がある。(上記化合物の例の中の「アルキル」とは炭素数6〜20の、直鎖又は一部置換されたアルキルを示し、具体的には、ヘキシル、オクチル、セチル、ステアリル等の直鎖アルキルが好ましく用いられる。)
これらの中では、特に水溶性の第四アンモニウム塩型のカチオン界面活性剤が有効で、その中でも、アルキルトリメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、エチレンオキシド付加アンモニウム塩等が好適である。また、カチオン成分をくり返し単位として有する重合体も広い意味ではカチオン界面活性剤であり、カチオン界面活性剤に含包される。特に、親油性モノマーと共重合して得られた第四アンモニウム塩を含む重合体は好適に用いることができる。該重合休の重量平均分子量は300〜50000の範囲であり、特に好ましくは500〜5000の範囲である。これらのカチオン界面活性剤は単独で使用するほか、2種以上を併用してもよい。
【0080】アニオン型界面活性剤としては、高級アルコール(C8〜C22)硫酸エステル塩類〔例えば、ラウリルアルコールサルフェートのナトリウム塩、オクチルアルコールサルフェートのナトリウム塩、ラウリルアルコールサルフェートのアンモニウム塩、TeePol−81(商品名 シエル化学製)、第二ナトリウムアルキルサルフェート等〕脂肪族アルコールリン酸エステル塩類(例えば、セチルアルコールリン酸エステルのナトリウム塩等)、アルキルアリールスルホン酸塩類(例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸のナトリウム塩、イソプロピルナフタレンスルホン酸のナトリウム塩、ジナフタリンジスルホン酸のナリトウム塩、メタニトロベンゼンスルホン酸のナトリウム塩等)、アルキルアミドのスルホン酸塩類(例えば、C1733CON(CH3)CH2SO3Na等)、二塩基性脂肪酸エステルのスルホン酸塩類(例えば、ナトリウムスルホコハク酸ジオクチルエステル、ナトリウムスルホコハク酸ジヘキシルエステル等)がある。これらの中で特にスルホン酸塩類が好適に用いられる。
【0081】両性界面活性剤としては、例えばN−メチル−N−ペンタデシルアミノ酢酸ナトリウムのような化合物を用いることができる。
【0082】界面活性剤は、現像液に0.1〜10重量%の範囲の濃度で含有させるのが好ましい。
【0083】有機カルボン酸としては、炭素原子数6〜20の脂肪族カルボン酸及び芳香族カルボン酸を挙げることができる。脂肪族カルボン酸の具体的な例としては、カプロン酸、エナンチル酸、カプリル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸及びステアリン酸等があり、特に好ましいのは炭素数8〜12のアルカン酸である。また、炭素鎖中に二重結合を有する不飽和脂肪酸でも、枝分かれした炭素鎖のものでもよい。芳香族カルボン酸はべンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環などにカルボキシル基が置換された化含物で、具体的には、o−クロロ安息香酸、p−クロロ安息香酸、o−ヒドロキシ安息香酸、p−ヒドロキシ安息香酸、o−アミノ安息香酸、p−アミノ安息香酸、2,4−ジヒドロキシ安息香酸、2,5−ジヒドロキシ安息香酸、2,6−ジヒドロキシ安息香酸、2,3−ジヒドロキシ安息香酸、3,5−ジヒドロキシ安息香酸、没食子酸、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、2−ヒドロキシ−1−ナフトエ酸、1−ナフトエ酸、2−ナフトエ酸などがあるがヒドロキシナフトエ酸は特に有効である。上記脂肪族及び芳香族カルボン酸は水溶性を高めるためにナトリウム塩やカリウム塩又はアンモニウム塩として用いるのが好ましい。有機カルボン酸を用いる場合、有機カルボン酸の使用量は格別な制限はないが、0.1重量%より低いと効果が十分でなく、また、10重量%以上ではそれ以上の効果の改善が計れないばかりか、別の添加剤を併用する時に溶解を妨げることがある。従って、好ましい添加量は使用時の現像液に対して0.1〜10重量%であり、より好ましくは0.5〜4重量%である。
【0084】現像液の残余の成分は水であるが、更に必要に応じて当業界で知られた種々の添加剤、例えば、消泡剤等を含有させることができる。
【0085】
【実施例】以下に本発明を実施例で更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0086】実施例1感光性記録材料の作製0.3mm厚のアルミニウム板(材質1050、調質H16)の表面を3%水酸化ナトリウム水溶液で脱脂し、2%塩酸浴中で25℃、50A/dm2で電解エッチングし、水洗後、30%硫酸浴中で3g/m2の陽極酸化皮膜を設け、2%メタケイ酸ナトリウム水溶液で85℃、10秒間親水化処理を行って支持体を作製した。
【0087】この支持体上に下記組成の感光層用塗布液をワイヤーバーを用いて塗布し、80℃で2分間乾燥し、乾燥後の膜厚2.0μmの感光層を設けた。この感光層上に下記組成のオーバーコート層用塗布液をアプリケーターを用いて2μmの膜厚になるように塗布し、80℃で3分間乾燥してオーバーコート層を設け、感光性記録材料を作製した。
【0088】
感光層用塗布液 高分子化合物 6.0g ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート 4.0g 2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−(p−メトキシスチリル)
−s−トリアジン 0.5g ポリアクリル酸(ジュリマーAC10L、日本純薬製) 0.02g フッ素系界面活性剤(FC−430、住友3M社製) 0.01g 色素(ビクトリアピュアーブルーBOH、保土谷化学社製) 0.02g 乳酸メチル 180ml 2−エトキシプロパノール 20mlオーバーコート層用塗布液 ポリビニルアルコール(酸素透過度:0.5 MW:35000)
97重量部 界面活性剤(バイエル(株)製 FT−248) 3重量部 水 900重量部図1に示す自動現像機の現像前洗浄槽1に下記現像前洗浄液■を1l、現像槽2に下記現像母液を9l、水洗槽3に水道水を3l仕込み、自動現像機をセットして、画像露光した上記感光性平版印刷版の現像処理を行った。現像処理において、感光性平版印刷版を1m2通すごとに現像前洗浄液50ml、下記濃縮現像補充液を4倍に希釈した現像補充液25ml、及び水洗水50mlを補充しながら1日に20m2ずつ30日間で600m2の前記感光性平版印刷版を処理した。なお、処理条件は、現像前洗浄を25℃3秒、現像を25℃20秒とした。この処理の後、現像前洗浄槽1内の現像前洗浄液を排液して現像前洗浄液を観察したところ、スラッジ成分の固着は認められず、容易に清掃することができた。
【0089】なお、図1において、Aは現像前洗浄部、Bは現像部、Cは水洗部、Tは感光性平版印刷版の搬送路、11〜15は感光性平版印刷版搬送用のガイドロール、16は絞りロール、17は現像ブラシ、18a、18bはシャワーノズル、19a、19bはポンプで、図中、*1と*1、*2と*2とはそれぞれ配管で接続されている。
【0090】比較例1現像前洗浄液として水道水を用いた他は実施例1と同様の実験を行ったところ、処理後の現像前洗浄槽には硬い固形分が固着し、洗浄にはブラシで擦り洗いが必要であった。
【0091】実施例2現像前洗浄液として下記現像前洗浄液■を用い、補充量を感光性平版印刷版1m2当たり5mlとした他は実施例1と同様の実験を行った。現像前洗浄液の補充量が実施例1の10%であったにもかかわらず、オーバーコート層の洗浄性は良好であり、ランニングを通じて25℃3秒の迅速処理で問題なく処理が可能であった。
【0092】比較例2現像前洗浄液として水道水を用いた他は実施例2と同様の実験を行った。処理量が100m2を越えた付近から、オーバーコート層の溶解速度が遅くなり、25℃3秒処理を続けるとオーバーコート層が完全に除去されない状態で感光性平版印刷版が現像部へ運ばれた。
【0093】実施例3現像前洗浄液として下記現像前洗浄液■を用い、感光性平版印刷版の処理を1日5m2ずつ120日間とした他は実施例1と同様の実験を行ったところ、ランニングを通じて安定に現像処理することができた。
【0094】比較例3現像前洗浄液として水道水を用いた他は実施例3と同様の実験を行った。70日目付近から現像前洗浄部のシャワーノズルからの液供給量が減少し始めた。80日目に配管系を点検したところ、内壁にカビが発生し液の循環を妨げていた。
【0095】
現像液 現像母液 濃縮現像補充液 水 590重量部 82重量部 β−アニリノエタノール 0.3重量部 0.3重量部 プロピレングリコール 0.3重量部 0.6重量部 2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸 0.6重量部 0.6重量部 p−tert−ブチル安息香酸 1.2重量部 1.5重量部 エマルゲン147(花王(株)製、非イオン性界面活性剤)
0.05重量部 0.55重量部 珪酸カリウム水溶液(SiO2含有26重量%、K2O含有13重量%)
2.2重量部 6.0重量部 水酸化カリウム 1.5重量部 3.1重量部 亜硫酸カリウム 0.9重量部 1.8重量部現像前洗浄液■エチレンジアミン四酢酸の0.05%水道水溶液現像前洗浄液■ジアルキルスルホコハク酸ナトリウムの0.8%水溶液現像前洗浄液■デヒドロ酢酸ナトリウムの1%水溶液
【0096】
【発明の効果】本発明によれば、感光層の上に水溶性のオーバーコートを有する感光性平版印刷版を画像露光の後、現像の前に感光性平版印刷版を洗浄水で洗浄して該オーバーコート層を除去する処理を含む処理方法において、現像前洗浄に用いる洗浄水を循環して繰り返し使用する場合、請求項1に係る発明によれば、現像前洗浄に用いる循環再使用する洗浄水を入れる槽内や該洗浄水を通す配管に炭酸カルシウムが沈着する問題が解消され、請求項2に係る発明によれば、循環再使用する洗浄水中の樹脂濃度の上昇による洗浄処理速度が低下する問題が解消され、請求項3に係る発明によれば、循環再使用する洗浄水中にカビが発生する問題が解消される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例に使用した自動現像機の一例を示す概略構成図である。
【符号の説明】
1 現像前洗浄槽
2 現像槽
3 水洗槽
18a、18b シャワーノズル
19a 19b ポンプ
A 現像前洗浄部
B 現像部
C 水洗部
D 後処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】 感光層の上に水溶性のオーバーコート層を設けた感光性平版印刷版を洗浄工程で洗浄水で洗浄した後に現像する処理方法において、該洗浄工程で用いる洗浄水がキレート剤を含有する洗浄液であることを特徴とする感光性平版印刷版の処理方法。
【請求項2】 感光層の上に水溶性のオーバーコート層を設けた感光性平版印刷版を洗浄工程で洗浄水で洗浄した後に現像する処理方法において、該洗浄工程で用いる洗浄水が界面活性剤を含有する洗浄液であることを特徴とする感光性平版印刷版の処理方法。
【請求項3】 感光層の上に水溶性のオーバーコート層を設けた感光性平版印刷版を洗浄工程で洗浄水で洗浄した後に現像する処理方法において、該洗浄工程で用いる洗浄水が防腐剤を含有する洗浄液であることを特徴とする感光性平版印刷版の処理方法。

【図1】
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【公開番号】特開平10−10754
【公開日】平成10年(1998)1月16日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平8−166033
【出願日】平成8年(1996)6月26日
【出願人】(000001270)コニカ株式会社 (4,463)