説明

感光性樹脂用帯電防止剤

【課題】 塩基性染料を含有する感光性樹脂の静電気障害を抑制し、更に塩基性染料を配合した感光性樹脂組成物の変退色も防止することができる感光性樹脂用帯電防止剤及び感光性樹脂組成物の提供。
【解決手段】 塩基性染料を含有する感光性樹脂用の帯電防止剤であって、エステル型帯電防止剤を含有し、帯電防止剤中のアルカリ金属及びアルカリ土類金属元素の合計含有量が100ppm以下である感光性樹脂用帯電防止剤、並びにこの帯電防止剤、感光性樹脂成分及び塩基性染料を含有する感光性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は塩基性染料を含有する感光性樹脂用の帯電防止剤及び感光性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プリント配線基板の製造には、エッチング等に用いられるレジスト材料として、支持体に感光性樹脂組成物等を塗布し、更に保護フィルムが被覆された感光性エレメントが用いられている。プリント配線基板等は、感光性エレメントを銅基板上にラミネートし、パターン露光した後、未露光部を現像液で除去し、エッチング処理等を施し、その後、パターンを形成させた後、レジスト材料の硬化部分を基板上から剥離除去する方法によって製造されることが一般的である(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】特開2005−128300号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
感光性エレメントの形態は、近年の高性能化に伴いわずかな静電気障害や微小異物が問題視されてきている。その為に、異物対策等として感光性フィルムをポリエチレンテレフタレート等の保護フィルムで覆っているが、その保護フィルムを基板からはがす際に静電気(剥離帯電)が発生してプリント配線基板に障害を起こす問題がある。
【0004】
また、感光性樹脂組成物は、人間の目に優しい塩基性染料等により着色されている事が一般的であり、その場合、エステル型帯電防止剤等を配合すると変退色が起こるという問題が生じていた。しかしこれらの問題を解決することはできていなかった。
【0005】
本発明の課題は、塩基性染料を含有する感光性樹脂の静電気障害を抑制し、更に塩基性染料を配合した感光性樹脂組成物の変退色も防止することができる感光性樹脂用帯電防止剤及び感光性樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、塩基性染料を含有する感光性樹脂用の帯電防止剤であって、エステル型帯電防止剤を含有し、帯電防止剤中のアルカリ金属及びアルカリ土類金属元素の合計含有量が100ppm以下である感光性樹脂用帯電防止剤、並びにこの帯電防止剤、感光性樹脂成分及び塩基性染料を含有する感光性樹脂組成物を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の感光性樹脂用帯電防止剤は、塩基性染料を含有する感光性樹脂の静電気障害を抑制することができ、更に塩基性染料を配合した感光性樹脂組成物の変退色も防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
[感光性樹脂用帯電防止剤]
本発明の感光性樹脂用帯電防止剤は、エステル型帯電防止剤を含有する。本発明に使用されるエステル型帯電防止剤は、例えば、エステル化触媒として水酸化ナトリウム等のアルカリ触媒下、分子内に2個以上のヒドロキシル基を持つ化合物と脂肪酸とを反応させることにより得ることができる。
【0009】
本発明のエステル型帯電防止剤の原料となる分子内に2個以上のヒドロキシル基を持つ化合物としては、多価アルコール、多価アルコールのアルキレンオキサイド付加物などが挙げられる。具体的には、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、ソルビトール、ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレングリセリン、ポリオキシエチレンソルビタンなどが挙げられる。これらのうち好ましくはグリセリン、ジグリセリンであり、より好ましくはジグリセリンである。
【0010】
本発明のエステル型帯電防止剤の原料となる脂肪酸としては、炭素数6〜30の直鎖又は分枝脂肪酸が挙げられ、好ましくは炭素数6〜22の直鎖脂肪酸である。具体的には、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ノナン酸、イソノナン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、ベヘニン酸等が挙げられ、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸が好ましく、オレイン酸がより好ましい。
【0011】
本発明のエステル型帯電防止剤は、帯電防止性の観点から、ヒドロキシ基が残存する部分エステル化合物であることが好ましく、モノエステル化合物を含有することがより好ましい。エステル型帯電防止剤中のモノエステル化合物の含量は、帯電防止性の観点から、30重量%以上であることが好ましい。
ここで、モノエステル化合物の含量(%)とは、エステル型帯電防止剤のエステル化合物におけるモノエステル化合物の重量割合であり、ゲルパーミッションクロマトグラフィー分析(カラム:TSKgelG2000HXL、検出器:RI、溶離液:THF)により測定することができる。
【0012】
本発明のエステル型帯電防止剤として好ましいものは、分子内に1個以上のヒドロキシル基を持つ化合物であり、更に好ましくは下記一般式(1)で表される(ポリ)グリセリン脂肪酸エステル(以下、(ポリ)グリセリン脂肪酸エステル(1)という)である。
【0013】
(ポリ)グリセリン脂肪酸エステル(1)において、Rは優れた帯電防止性及び感光性樹脂成分との相溶性を得る観点から、炭素数5〜21のアルキル基又はアルケニル基であり、炭素数7〜17のアルキル基又はアルケニル基が好ましく、炭素数11〜17のアルキル基又はアルケニル基がより好ましく、炭素数15〜17のアルケニル基が更に好ましい。またアルキル基又はアルケニル基は、直鎖でも分岐鎖を有していても良い。Xは、優れた帯電防止性を得る観点から、水素原子又はRCO(Rは前記の意味を示し、炭素数11〜17のアルキル基又はアルケニル基が好ましい。)で表される基を示し、複数個のXは同一でも異なっていても良いが、少なくとも1個は水素原子である。nは、優れた帯電防止性及び感光性樹脂成分との相溶性を得る観点から、0〜2の整数であり、0又は1が好ましく、1がより好ましい。
【0014】
(ポリ)グリセリン脂肪酸エステル(1)は、グリセリン又はポリグリセリン(以下(ポリ)グリセリンという)と炭素数6〜22の脂肪酸とをエステル化することにより得られる。(ポリ)グリセリンとしては、優れた帯電防止効果を得る観点から、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリンが挙げられ、グリセリン及びジグリセリンが好ましく、ジグリセリンが更に好ましい。
【0015】
炭素数6〜22の脂肪酸の具体例として、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ノナン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、ベヘニン酸等が挙げられ、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸が好ましく、オレイン酸がより好ましい。
【0016】
(ポリ)グリセリン脂肪酸エステル(1)は、(ポリ)グリセリンの部分エステル化合物であり、モノエステル化合物がより好ましい。
【0017】
(ポリ)グリセリン脂肪酸エステル(1)は、例えば、エステル化触媒として水酸化ナトリウム等のアルカリ触媒下、(ポリ)グリセリンと炭素数6〜22の脂肪酸との高温エステル化により得ることができる。具体的には、例えば、反応温度190〜240℃で、(ポリ)グリセリンと炭素数6〜22の脂肪酸とをエステル化反応させた後、生成水を系外に除去する。この時、反応速度がかなり遅くなって現実的ではないが、無触媒下で、上記反応をおこなうこともできる。
【0018】
本発明においては、塩基性染料を含有した感光性樹脂組成物の変退色を抑制する観点から、帯電防止剤中のアルカリ金属及びアルカリ土類金属元素の合計含有量を100ppm以下とすることが必要であり、50ppm以下が好ましく、10ppm以下がより好ましく、1ppm以下が更に好ましい。
【0019】
このようにアルカリ金属及びアルカリ土類金属元素の合計含有量を低減させるために、エステル化反応にアルカリ触媒を用いた場合には触媒の除去操作を行う。触媒除去操作としては、キョーワード600S、キョーワード700(協和化学(株)製)等の吸着剤を用いてアルカリ触媒を吸着処理により除去する方法が挙げられる。
【0020】
尚、帯電防止剤中のアルカリ金属及びアルカリ土類金属元素の合計含有量が100ppm以下とは、エステル型帯電防止剤の製造で含まれる触媒からもたらされるもの、他から添加されるものも含め、帯電防止剤中のアルカリ金属及びアルカリ土類金属元素の合計含有量が100ppm以下であることをいう。また、アルカリ金属及びアルカリ土類金属元素の合計含有量は、硫酸灰化/ICP−MS法にて(定量下限0.1ppm)測定することができる。
【0021】
本発明の感光性樹脂用帯電防止剤は、エステル型帯電防止剤を含有し、アルカリ金属及びアルカリ土類金属元素の合計含有量が100ppm以下であることにより、塩基性染料を含有する感光性樹脂組成物の静電気障害を抑制できるばかりでなく、優れた変退色を防止する効果も兼ね備えた樹脂組成物を提供できる。
【0022】
本発明の優れた効果が発現できる理由は定かではないが、感光性樹脂とエステル型帯電防止剤との相溶性のバランスが非常に優れることから、静電気障害を抑制できていると考えられる。また、エステル型帯電防止剤の製造で含まれるアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属元素の極めて微量成分が染料の変退色に悪影響を及ぼしていることを見出し、帯電防止剤中のアルカリ金属及びアルカリ土類金属元素の合計含有量を100ppm以下にすることにより、色を発現する染料の構造を維持できる結果、当該樹脂組成物の変退色を防止することができたものと考えられる。
【0023】
本発明の感光性樹脂用帯電防止剤は、エステル型帯電防止剤以外に、エステル型帯電防止剤を製造する際の未反応分や、エステル型帯電防止剤以外の公知の帯電防止剤を含有することができる。
【0024】
本発明の感光性樹脂用帯電防止剤中のエステル型帯電防止剤の含有量は、本発明の目的を達成する観点から、50重量%以上が好ましく、70重量%以上がより好ましく、90重量%以上が更に好ましい。
【0025】
[感光性樹脂組成物]
本発明の感光性樹脂組成物は、本発明の感光性樹脂用帯電防止剤、感光性樹脂成分及び塩基性染料を含有する。
【0026】
本発明の感光性樹脂組成物中の、本発明の感光性樹脂用帯電防止剤の含有量は、良好な帯電防止性及び変退色防止性を得、更に表面のべとつきや白化現象を防止する観点から、感光性樹脂成分100重量部に対し、0.1〜5重量部が好ましく、0.5〜4重量部がより好ましく、1〜3重量部が更に好ましい。
【0027】
本発明に用いられる感光性樹脂成分は、バインダー樹脂、光重合性モノマー及び光重合開始剤を含有するものであり、一般に感光性樹脂分野に使用されるものを用いることができる。
【0028】
バインダー樹脂としては、アクリル系樹脂が好ましく、例えば、(メタ)アクリル酸;アルキル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリルアミド等の単独重合体、又はこれらの単量体を含む共重合体が挙げられる。ここで、(メタ)アクリルとは、アクリル又はメタクリルを意味し、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートを意味する。
【0029】
バインダー樹脂の含有量は、本発明の感光性樹脂組成物の全固形分中、10〜80重量%が好ましく、20〜70重量%がより好ましい。
【0030】
光重合性モノマーは、感光性樹脂組成物が活性光線の照射を受ける際に、光重合開始剤の作用により重合し硬化するものである。光重合性モノマーとしては、光重合可能なモノマーであれば特に制限はないが、エチレン性二重結合を少なくとも1つ有する付加重合可能なモノマーが好ましい。なお、光重合性モノマーは、狭義のモノマー(単量体)だけでなく、二量体、三量体、オリゴマーをも包含する概念である。
【0031】
光重合性モノマーとしては、多価アルコールとα,β−不飽和カルボン酸とのエステルが好ましい。多価アルコールとしては、ポリアルキレングリコール(アルキレン基の炭素数2〜3、オキシアルキレンの平均付加モル数2〜14)、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等が挙げられ、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールが好ましい。α,β−不飽和カルボン酸としてはアクリル酸又はメタクリル酸が好ましい。
【0032】
光重合性モノマーの具体例としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0033】
光重合性モノマーの含有量は、本発明の感光性樹脂組成物の全固形分中、10〜80重量%が好ましく、20〜70重量%がより好ましい。
【0034】
光重合開始剤は、光を直接吸収し、あるいは光増感されて分解反応又は水素引き抜き反応を起こし、重合活性ラジカルを発生する機能を有し、光重合性モノマーの重合を開始させる剤である。
【0035】
光重合開始剤は、特に限定されず、公知の光重合開始剤の中から適宜選択することができる。光重合開始剤の具体例としては、2−(2’−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダソール2量体、2−(2’−クロロフェニル)−4,5−ビス(3’−メトキシフェニル)イミダゾール2量体等のイミダゾール誘導体、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン等のα−アミノアルキルフェノン系化合物が挙げられる。
【0036】
光重合開始剤の含有量は、本発明の感光性樹脂組成物の全固形分中、0.1〜30重量%が好ましく、0.5〜20重量%がより好ましく、0.7〜10重量%が更に好ましい。
【0037】
本発明の感光性樹脂組成物は、粘度を調節して、均一な塗布膜形成を可能とし、保存安定性を高める観点から、溶剤を含有することができる。溶剤としては、シクロヘキサノン、エチルセロソルブアセテート、エチレングリコールジエチルエーテル、酢酸エチル等が挙げられる。本発明の感光性樹脂組成物中の溶剤の含有量は、5〜50重量%が好ましい。
【0038】
上記のバインダー樹脂、光重合性モノマー、光重合開始剤及び溶剤は、それぞれ単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0039】
本発明に用いられる塩基性染料としては、染料自体または染料を4級化することにより、水溶性を有するものが好ましい。
【0040】
塩基性染料としては、例えば、C.I.ベーシック イエロー(C.I.Basic Yellow)1、2、11、13、15、19、21、28、29、32、36、40、41、45、51、63、67、70、73及び91;C.I.ベーシック オレンジ(C.I.Basic Orange)2、21、22及び30;C.I.ベーシック レッド(C.I.Basic Red)1、1:1、2、12、13、14、15、18、18:1、23、24、27、29、35、36、38、39、46、46:1、51、52、54、68、69、70、73、82、109及び115;C.I.ベーシック バイオレット(C.I.Basic Violet)1、3、7、10、11、11:1、15、16、21、27、35及び39;C.I.ベーシック ブルー(C.I.Basic Blue)1、3、7、9、21、22、26、35、41、45、47、52、54、65、66、69、75、77、92、100、105、117、122、124、129、147及び151;及びC.I.ベーシックグリーン(C.I.Basic Green)1及び4等を挙げることができる。またこれらの染料を任意に配合して調色しても構わない。
【0041】
塩基性染料の含有量は、目視で確認できる程度の色調を得る観点から、本発明の感光性樹脂組成物の全固形分に対し、0.001〜1.0重量%が好ましく、0.004〜0.6重量%がより好ましい。
【0042】
本発明の感光性樹脂組成物を調製するには、本発明の帯電防止剤、バインダー樹脂、光重合性モノマー、光重合開始剤、並びに塩基性染料、必要により溶剤等を所定量混合することにより得ることができる。
【0043】
本発明の感光性樹脂組成物は、上記成分以外に、滑剤、可塑剤、防曇剤、光安定剤、紫外線吸収剤、顔料、無機充填剤、防カビ剤、抗菌剤、発泡剤、難燃剤等を、本発明の目的達成を妨げない範囲で含有することができる。
【実施例】
【0044】
次に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
なお、例中の部及び%は特記しない限り、重量部及び重量%である。また、エステル化合物中のアルカリ金属及びアルカリ土類金属元素の合計含有量(以下単に金属元素含有量という)は硫酸灰化/ICP−MS法により測定した。
【0045】
合成例1
1000mlのガラス製4つ口フラスコにジグリセリン(商品名:ジグリセリンS、坂本薬品(株)製)166.2g(1.0モル)とオレイン酸(商品名:ルナックO−LL、花王(株)製)416.6g(1.5モル)とを秤取り、窒素吹き込み下で225℃まで昇温して7時間反応させた。この時、水分は系外に留出させ、ジグリセリンセスキオレイン酸エステル(以下エステル化合物1という)を得た。このときの金属元素含有量は0.7ppmであった。
【0046】
合成例2
ジグリセリンの量を216.1g(1.3モル)、オレイン酸の量を361.1g(1.3モル)とする以外は合成例1と同様にして、ジグリセリンモノオレイン酸エステル(以下エステル化合物2という)を得た。このときの金属元素含有量は0.8ppmであった。
【0047】
合成例3
1000mlのガラス製4つ口フラスコにジグリセリン(商品名:ジグリセリンS、坂本薬品(株)製)166.2g(1.0モル)と、ステアリン酸(商品名:ルナックS−40、花王(株)製)276.0g(1.0モル)と、水酸化ナトリウム(和光純薬(株)製:試薬)0.25gを秤取り、窒素吹き込み下で225℃まで昇温して4時間反応させた。この時、水分は系外に留出させた。反応終了後、90℃まで冷却を行い、キョーワード600S(協和化学(株)製:商品名)を8.84g投入し、1時間攪拌を行った後、ラヂオライト700(昭和化学工業(株)製、商品名)を敷き詰めたろ紙で吸引濾過を行い、ジグリセリンモノステアリン酸エステル(以下エステル化合物3という)を得た。このときの金属元素含有量は0.8ppmであった。
【0048】
合成例4
1000mlのガラス製4つ口フラスコにグリセリン(商品名:精製グリセリン、花王(株)製)184.0g(2.0モル)とラウリン酸(商品名:ルナックL−98、花王(株)製)402.2g(2.0モル)とを秤取り、窒素吹き込み下で225℃まで昇温して7時間反応させた。この時、水分は系外に留出させ、グリセリンモノラウリン酸エステル(以下エステル化合物4という)を得た。このときの金属元素含有量は0.9ppmであった。
【0049】
合成例5
1000mlのガラス製4つ口フラスコに1,1,1−トリス(ヒドロキシメチル)プロパン(和光純薬(株)製:試薬)340.0g(2.5モル)とラウリン酸(商品名:ルナックL−98、花王(株)製)509.4g(2.5モル)と、水酸化ナトリウム(和光純薬(株)製:試薬)0.51gを秤取り、窒素吹き込み下で225℃まで昇温して4時間反応させた。この時、水分は系外に留出させた。反応終了後、90℃まで冷却を行い、キョーワード600S(協和化学(株)製:商品名)を17.0g投入し、1時間攪拌を行った後、ラヂオライト700(昭和化学工業(株)製、商品名)を敷き詰めたろ紙で吸引濾過を行い、トリメチロールプロパンモノラウリン酸エステル(以下エステル化合物5という)を得た。このときの金属元素含有量は0.7ppmであった。
【0050】
合成例6
1000mlのガラス製4つ口フラスコに1,1,1−トリス(ヒドロキシメチル)プロパン(和光純薬(株)製:試薬)268.4g(2.0モル)と3,5,5−トリメチルヘキサン酸(和光純薬(株)製:試薬)474.0g(3.0モル)と、水酸化ナトリウム(和光純薬(株)製:試薬)0.40gを秤取り、窒素吹き込み下で225℃まで昇温して4時間反応させた。この時、水分は系外に留出させた。反応終了後、90℃まで冷却を行い、キョーワード600S(協和化学(株)製:商品名)を14.8g投入し、1時間攪拌を行った後、ラヂオライト700(昭和化学工業(株)製、商品名)を敷き詰めたろ紙で吸引濾過を行い、トリメチロールプロパンセスキイソノナン酸エステル(以下エステル化合物6という)を得た。このときの金属元素含有量は0.8ppmであった。
【0051】
合成例7
1000mlのガラス製4つ口フラスコにソルビタンM−70II(中央化成(株)製、商品名)165.0g(1.0モル)とステアリン酸(商品名:ルナックS−40、花王(株)製)414.0g(1.5モル)、水酸化ナトリウム(和光純薬(株)製:試薬)0.25gと活性炭を2.9gを秤取り、窒素吹き込み下で190℃まで昇温して4時間反応させた。この時、水分は系外に留出させた。反応終了後、90℃まで冷却を行い、キョーワード600S(協和化学(株)製:商品名)を11.6g投入し、1時間攪拌を行った後、ラヂオライト100(昭和化学工業(株)製、商品名)を敷き詰めたろ紙で吸引濾過を行い、ソルビタンセスキステアリン酸エステル(以下エステル化合物7という)を得た。このときの金属元素含有量は0.8ppmであった。
【0052】
比較合成例1
1000mlのガラス製4つ口フラスコにジグリセリン(商品名:ジグリセリンS、坂本薬品(株)製)166.2g(1.0モル)と、オレイン酸(商品名:ルナックO−LL、花王(株)製)416.6g(1.5モル)と、水酸化ナトリウム(和光純薬(株)製:試薬)0.25gを秤取り、窒素吹き込み下で225℃まで昇温して4時間反応させた。この時、水分は系外に留出させ、ジグリセリンセスキオレイン酸エステル(以下エステル化合物8という)を得た。このときの金属元素含有量は220ppmであった。
【0053】
比較合成例2
合成例3において、反応終了後のキョーワード600Sによる吸着処理を行わなかったこと以外は合成例3と同様にしてジグリセリンモノステアリン酸エステル(以下エステル化合物9という)を得た。このときの金属元素含有量は220ppmであった。
【0054】
比較合成例3
1000mlのガラス製4つ口フラスコにジグリセリン(商品名:ジグリセリンS、坂本薬品(株)製)166.2g(1.0モル)と、ベヘニン酸(商品名:ルナックBA、花王(株)製)510.1g(1.5モル)と、水酸化ナトリウム(和光純薬(株)製:試薬)0.25gを秤取り、窒素吹き込み下で225℃まで昇温して4時間反応させた。この時、水分は系外に留出させ、ジグリセリンセスキベヘニン酸エステル(以下エステル化合物10という)を得た。このときの金属元素含有量は220ppmであった。
【0055】
比較合成例4
2000mlのガラス製4つ口フラスコにジグリセリン(商品名:ジグリセリンS、坂本薬品(株)製)166.2g(1.0モル)と、オレイン酸(商品名:ルナックO−LL、花王(株)製)1111.0g(4.0モル)と、水酸化ナトリウム(和光純薬(株)製:試薬)0.25gを秤取り、窒素吹き込み下で225℃まで昇温して5時間反応させた。この時、水分は系外に留出させ、ジグリセリンテトラオレイン酸エステル(以下エステル化合物11という)を得た。このときの金属元素含有量は220ppmであった。
【0056】
比較合成例5
合成例5において、反応終了後のキョーワード600Sによる吸着処理を行わなかったこと以外は合成例5と同様にしてトリメチロールプロパンモノラウリン酸エステル(以下エステル化合物12という)を得た。このときの金属元素含有量は410ppmであった。
【0057】
比較合成例6
合成例7において、反応終了後のキョーワード600Sによる吸着処理を行わなかったこと以外は合成例7と同様にしてソルビタンセスキステアリン酸エステル(以下エステル化合物13という)を得た。このときの金属元素含有量は200ppmであった。
【0058】
合成例1〜7及び比較合成例1〜6で得られたエステル化合物の組成及び金属元素含有量を表1にまとめて示す。
【0059】
なお、エステル化合物の組成は、ゲルパーミッションクロマトグラフィー分析(カラム:TSKgelG2000HXL、検出器:RI、溶離液:THF)により測定した。
【0060】
【表1】

【0061】
実施例1〜7,比較例1〜7
メタクリル酸/ベンジルメタクリレート共重合体(モル比:30/70、重量平均分子量:20000、固形分40%のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液):16.0部、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート4.0部、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン2.0部、2,2'−ビス(o−クロロフェニル)−4,5,4',5'−テトラフェニル−1,2'−ビイミダゾール:1.0部、シクロヘキサノン:17.0部、Malachite Green oxalate(シグマアルドリッチ:試薬)の0.1%メタノール溶液0.5ml、並びに合成例1〜7及び比較合成例1〜6で得られたエステル化合物1〜13 0.21gをガラス製サンプル瓶に入れた後、攪拌し、均一化して、感光性樹脂組成物を得た。
【0062】
得られた組成物について、下記方法で帯電防止性及び変退色防止性の評価を行った。また、エステル化合物を添加しない感光性樹脂組成物についても同様に帯電防止性及び変退色防止性の評価を行った。これらの結果を表2に示す。
【0063】
<帯電防止性の評価法>
感光性樹脂組成物を、スピンコーターでガラス板上に塗布(膜厚1.5μm)した後、80℃で3分間ホットプレートにより乾燥した。次いで、得られた塗膜に超高圧水銀ランプを用いて60mJ/cm2まで紫外線を照射し硬化させた後、PETフィルムを置き、20g/cm2の加重を加え25℃、50%RHの恒温恒湿室内に保管し、1日後にPETフィルムを剥し、PETフィルムの剥離面を横河ヒューレッドパッカード社製、型番4329Aの高絶縁抵抗計により表面固有抵抗値を測定した。
【0064】
<変退色防止性の評価法>
感光性樹脂組成物を、スピンコーターでガラス板上に塗布(膜厚1.5μm)した後、90℃で3分間ホットプレートにより乾燥した。次いで、得られた塗膜に超高圧水銀ランプを用いて60mJ/cm2まで紫外線を照射し硬化させた。そのガラス板上の硬化物について、経時時間と共に変退色の状態を目視にて観察し、下記基準で評価した。
・評価基準
○:変退色無し
△:僅かに変退色有り
×:変退色している
【0065】
【表2】

【0066】
表2の結果から明らかなように本発明の帯電防止剤及び塩基性染料を含有する感光性樹脂組成物は変退色することなく、良好な帯電防止性能を有している。
【0067】
比較例1の感光性樹脂組成物では変退色は起こさないが、帯電防止性能が付与されず剥離帯電等による静電気障害が懸念される。比較例2〜4、6及び7の感光性樹脂組成物は帯電防止性能は付与されているが、変退色を起こす為、本来の塩基性染料の役割を果たさない。比較例5の感光性樹脂組成物は帯電防止性能が付与されず、また変退色も起こす。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩基性染料を含有する感光性樹脂用の帯電防止剤であって、エステル型帯電防止剤を含有し、帯電防止剤中のアルカリ金属及びアルカリ土類金属元素の合計含有量が100ppm以下である感光性樹脂用帯電防止剤。
【請求項2】
エステル型帯電防止剤が、一般式(1)で表される(ポリ)グリセリン脂肪酸エステルである請求項1記載の感光性樹脂用帯電防止剤。
【化1】

(式中、Rは炭素数5〜21のアルキル基又はアルケニル基を示す。Xは水素原子又はRCO(Rは前記の意味を示す)で表される基を示し、複数個のXは同一でも異なっていても良いが、少なくとも一つは水素原子である。nは0〜2の整数を示す。)
【請求項3】
一般式(1)において、Rが炭素数11〜17のアルキル基又はアルケニル基で、かつ、nが0又は1である請求項2記載の感光性樹脂用帯電防止剤。
【請求項4】
帯電防止剤中のアルカリ金属及びアルカリ土類金属元素の合計含有量が10ppm以下である請求項1〜3いずれか記載の感光性樹脂用帯電防止剤。
【請求項5】
請求項1〜4いずれか記載の感光性樹脂用帯電防止剤、感光性樹脂成分及び塩基性染料を含有する感光性樹脂組成物。

【公開番号】特開2009−51991(P2009−51991A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−222262(P2007−222262)
【出願日】平成19年8月29日(2007.8.29)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】