説明

感光性樹脂組成物

【課題】 塗布ムラを小さくすることができると共に、プロセスマージンを広くすることができる高感度の感光性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】 アルカリ可溶性ノボラック樹脂(A)、アルカリ可溶性フェノール樹脂(B)、キノンジアジドスルホン酸エステル(C)及び有機溶剤(D)を有し、前記アルカリ可溶性ノボラック樹脂(A)と前記アルカリ可溶性フェノール樹脂(B)の比率が重量比で95:5〜85:15であり、前記アルカリ可溶性フェノール樹脂(B)の分子量が1000以下、かつ、分子量分布が1.05以上1.65以下であり、前記有機溶剤(D)は、プロピレングリコールモノメチルエーテル(D1)及び常圧の沸点が150℃〜240℃の範囲の溶剤(D2)を含む複合溶剤である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大型表示素子基板の加工に好適な感光性樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電子ディスプレイデバイスとして、液晶表示装置や有機EL素子などの平面表示装置が脚光を浴びている。液晶表示装置は、陰極線管(CRT)表示装置に比べて、小型でコンパクトであることから、液晶表示装置を備えたさまざまな機器が開発されている。パーソナルコンピュータやビデオカメラなどの民生用機器をはじめとして、各種機器の小型化に対する市場ニーズは高く、ラップトップ型コンピュータ、液晶モニタ付きカメラなどの小型化された携帯可能な機器が広く普及してきた。これらの機器において、液晶表示装置を具備することは必須であり、あわせてカラー表示、高輝度などの高機能化、高性能化への要求は強い。
【0003】
液晶表示装置においては、駆動方式として、薄膜トランジスタを用いたアクティブマトリックス方式が採用されることが多い。アクティブマトリックス型液晶表示装置は、各表示画素が薄膜トランジスタなどのスイッチング素子により個別に制御されるので、パッシブマトリックス型液晶表示装置に比べてクロストークが生じにくく、高精細化、大型化に適している。
【0004】
従来、表示素子基板の製造においては、レジスト層を形成するために基板の塗布面中央に感光性樹脂組成物を滴下した後スピンさせることにより、基板上に均一に塗布していた。また、例えば、第4世代基板(680mm×880mmまたは730×920mm)や第5世代基板(1000×1200mmまたは1300×1500mm)を用いる場合には、吐出ノズルを用いて基板の塗布面全面に感光性樹脂組成物を滴下した後スピンさせることにより、基板上に均一に感光性樹脂組成物を塗布する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−114920号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、近年、基板として用いられるマザーガラスがさらに大型化し、第8世代基板(2160×2460mm)、第9世代基板(2400×2800mm)、第10世代基板(2880×3130mm)等の大型の基板の処理が求められている。このような大型の表示素子基板の製造において基板をスピンさせ感光性樹脂組成物の塗布を行うと、装置が大型化し、また、大型のモータが必要となるため製造コストが上昇することとなる。そこで、基板上に感光性樹脂組成物を滴下しスリットコータを用いて大型基板の塗布面全面に塗布する方法(スリット塗布)が提案されているが、この方法においては塗布ムラが生じる虞があった。
【0007】
また、大型の基板においては、プロセスマージンを広くすることが求められる。即ち、大型の基板を用いる場合にはプリベイク等の加熱を行う場合に基板面内で温度のばらつきが生じたり、また、現像を行う際に基板面内において現像液に接触する時間にばらつきが生じたりするため、温度や現像時間の影響を抑制することが求められる。さらに、露光工程を短縮するために感光性を上げることが求められている。
【0008】
本発明の目的は、塗布ムラを小さくすることができると共に、プロセスマージンを広くすることができる高感度の感光性樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を達成すべく鋭意検討の結果、アルカリ可溶性ノボラック樹脂(A)と分子量及び分子量分布が制御されたアルカリ可溶性フェノール樹脂(B)を組み合わせて使用し、かつ、アルカリ可溶性ノボラック樹脂(A)とアルカリ可溶性フェノール樹脂(B)の比率を特定の範囲にすると共に、溶剤(D)としてプロピレングリコールモノメチルエーテル(D1)及び沸点が特定の範囲である溶剤(D2)を組み合わせて用いることが、前記課題の解決に有効であることを見出し、かかる知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明は、
(1)アルカリ可溶性ノボラック樹脂(A)、アルカリ可溶性フェノール樹脂(B)、キノンジアジドスルホン酸エステル(C)及び有機溶剤(D)を有し、前記アルカリ可溶性ノボラック樹脂(A)と前記アルカリ可溶性フェノール樹脂(B)の比率が重量比で95:5〜85:15であり、前記アルカリ可溶性フェノール樹脂(B)の分子量が1000以下、かつ、分子量分布が1.05以上1.65以下であり、前記有機溶剤(D)は、プロピレングリコールモノメチルエーテル(D1)及び常圧の沸点が150℃〜240℃の範囲の溶剤(D2)を含む複合溶剤である感光性樹脂組成物、
(2)前記溶剤(D2)は、常圧の沸点が150℃〜200℃の範囲である前記(1)記載の感光性樹脂組成物、
(3)前記溶剤(D2)がジエチレングリコールジアルキルエーテルである前記(1)または(2)記載の感光性樹脂組成物、
(4)前記アルカリ可溶性樹脂組成物(B)の分子量分布が1.10以上1.50以下である前記(1)〜(3)の何れかに記載の感光性樹脂組成物、
(5)前記キノンジアジドスルホン酸エステル(C)が、1,2-ナフトキノンジアジド−5−スルホニルクロリドと4,4’−[1−[4−[1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノールのエステル化合物を含む前記(1)〜(4)の何れかに記載の感光性樹脂組成物
を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る感光性樹脂組成物によれば、塗布ムラを小さくすることができると共に、プロセスマージンを広くすることができる高感度の感光性樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の感光性樹脂組成物は、アルカリ可溶性ノボラック樹脂(A)、アルカリ可溶性フェノール樹脂(B)、キノンジアジドスルホン酸エステル(C)及び有機溶剤(D)を含有する。また、前記アルカリ可溶性ノボラック樹脂(A)と前記アルカリ可溶性フェノール樹脂(B)の比率が重量比で95:5〜85:15であり、前記アルカリ可溶性フェノール樹脂(B)の分子量が1000以下、かつ、分子量分布が1.05以上1.65以下であり、前記有機溶剤(D)は、プロピレングリコールモノメチルエーテル(D1)及び常圧の沸点が150℃〜240℃の範囲の溶剤(D2)を含む複合溶剤である。
【0013】
本発明に用いられるアルカリ可溶性ノボラック樹脂(A)は、アルカリ性水溶液からなる現像液に可溶性のノボラック樹脂である。ノボラック樹脂は、フェノール化合物とアルデヒド化合物とを、酸性触媒を用いて脱水縮合することにより得られる樹脂である。ノボラック樹脂を製造するために用いるフェノール化合物は、一価のフェノール化合物であってもよく、レゾルシノールなどの二価以上の多価フェノール化合物であってもよい。
【0014】
一価のフェノール化合物としては、例えば、フェノール;o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール;2,3−キシレノール、2,5−キシレノール、3,4−キシレノール、3,5−キシレノールなどのキシレノール;2−エチルフェノール、3−エチルフェノール、4−エチルフェノール、2−プロピルフェノール、3−プロピルフェノール、4−プロピルフェノール、2−t−ブチルフェノール、3−t−ブチルフェノール、4−t−ブチルフェノール、2,5−ジエチルフェノール、3,5−ジエチルフェノール、2−t−ブチル−4−メチルフェノール、2−t−ブチル−5−メチルフェノール、2−t−ブチル−3−メチルフェノール、2,3,5−トリメチルフェノール、2,3,5−トリエチルフェノールなどのアルキルフェノール;2−メトキシフェノール、3−メトキシフェノール、4−メトキシフェノール、2−エトキシフェノール、3−エトキシフェノール、4−エトキシフェノール、2,3−ジメトキシフェノール、2,5−ジメトキシフェノールなどのアルコキシフェノール;2−フェニルフェノール、3−フェニルフェノール、4−フェニルフェノールなどのアリールフェノール;2−イソプロペニルフェノール、4−イソプロペニルフェノール、2−メチル−4−イソプロペニルフェノール、2−エチル−4−イソプロペニルフェノールなどのアルケニルフェノール;などを挙げることができる。多価フェノール化合物としては、例えば、レゾルシノール、2−メチルレゾルシノール、4−メチルレゾルシノール、5−メチルレゾルシノール、2−メトキシレゾルシノール、4−メトキシレゾルシノール;ヒドロキノン;カテコール、4−t−ブチルカテコール、3−メトキシカテコール;4,4’−ジヒドロキシビフェニル、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン;ピロガロール;フロログリシノール;などを挙げることができる。これらのフェノール化合物の中で、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、2,5−キシレノール、3,5−キシレノール、2,3,5−トリメチルフェノールを好適に用いることができる。フェノール化合物は、1種を単独で用いることができ、あるいは、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0015】
フェノール化合物と脱水縮合させるアルデヒド化合物としては、脂肪族アルデヒド、脂環式アルデヒド又は芳香族アルデヒドのいずれをも用いることができる。脂肪族アルデヒドとしては、例えば、ホルムアルデヒド、トリオキサン、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n−ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、トリメチルアセトアルデヒド、n−ヘキシルアルデヒド、アクロレイン、クロトンアルデヒドなどを挙げることができる。
【0016】
脂環式アルデヒドとしては、例えば、シクロペンタンアルデヒド、シクロヘキサンアルデヒド、フルフラール、フリルアクロレインなどを挙げることができる。芳香族アルデヒドとしては、例えば、ベンズアルデヒド、o−トルアルデヒド、m−トルアルデヒド、p−トルアルデヒド、p−エチルベンズアルデヒド、2,4−ジメチルベンズアルデヒド、2,5−ジメチルベンズアルデヒド、3,4−ジメチルベンズアルデヒド、3,5−ジメチルベンズアルデヒド、o−クロロベンズアルデヒド、m−クロロベンズアルデヒド、p−クロロベンズアルデヒド、o−ヒドロキシベンズアルデヒド、m−ヒドロキシベンズアルデヒド、p−ヒドロキシベンズアルデヒド、o−アニスアルデヒド、m−アニスアルデヒド、p−アニスアルデヒド、テレフタルアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、α−フェニルプロピオンアルデヒド、β−フェニルプロピオンアルデヒド、桂皮アルデヒドなどを挙げることができる。これらのアルデヒド化合物は、1種を単独で用いることができ、あるいは、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0017】
本発明においては、ノボラック樹脂を製造する際のフェノール化合物とアルデヒド化合物との縮合反応は、酸性触媒の存在下において行うことができる。酸性触媒としては、例えば、塩酸、硫酸、ギ酸、酢酸、シュウ酸、p−トルエンスルホン酸などを挙げることができる。かかる反応により得られる縮合反応生成物は、そのままノボラック樹脂として使用することができる。
【0018】
本発明において、アルカリ可溶性ノボラック樹脂(A)は、低分子量成分を分別除去して用いることができる。低分子量成分を除去する方法としては、例えば、異なる溶解性を有する2種の溶媒中で樹脂を分別する液−液分別法、低分子量成分を遠心分離により除去する方法、薄膜蒸留法などを挙げることができる。前記のノボラック樹脂の場合、得られた縮合反応生成物を良溶媒、例えば、メタノール、エタノールなどのアルコール溶媒;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン溶媒;エチレングリコールモノエチルエーテルアセテートなどのアルキレングリコール溶媒;テトラヒドロフランなどのエーテル溶媒;などに溶解し、次いで水中に注いで沈殿させることにより、低分子量成分が除去されたノボラック樹脂を得ることができる。
【0019】
本発明において使用するアルカリ可溶性ノボラック樹脂(A)は、重量平均分子量が、2,000〜20,000であることが好ましく、2,500〜12,000であることがより好ましく、3,000〜8,000であることがさらに好ましい。重量平均分子量は、単分散のポリスチレンを標準試料とし、テトラヒドロフラン(THF)を溶離液としてゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定することができる。
【0020】
本発明に用いられるアルカリ可溶性フェノール樹脂(B)は、アルカリ性水溶液からなる現像液に可溶性のフェノール樹脂である。フェノール樹脂は、フェノールとホルムアルデヒドとを酸性触媒を用いて脱水縮合することにより得られる。また、本発明に用いられるアルカリ可溶性フェノール樹脂(B)の重量平均分子量(Mw)は1000以下、分子量分布(Mw/Mn;Mnは数平均分子量を示す)は1.05以上1.65以下である。この範囲を満たさない場合には、塗布ムラが大きくなったり、プロセスマージンが小さくなったり、感度が低くなるという問題が生じる。
【0021】
なお、重量平均分子量(Mw)や分子量分布(Mw/Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて、測定することができる。例えば、テトラヒドロフラン等の溶媒を溶離液とし、標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)を求めて分散比(Mw/Mn)を算出するなどの常法を用いて求めることができる。
【0022】
また、本発明に用いられるアルカリ可溶性ノボラック樹脂(A)とアルカリ可溶性フェノール樹脂(B)との比率は、重量比で95:5〜85:15の範囲である。この範囲を満たさない場合には、塗布ムラが大きくなったり、プロセスマージンが小さくなったり、感度が低くなるという問題が生じる。
【0023】
本発明に用いられるキノンジアジドスルホン酸エステル(C)としては、例えば、1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル(別名:6−ジアゾ−5,6−ジヒドロ−5−オキソーナフタレン−1−スルホン酸エステル)、1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、1,2−ナフトキノンジアジド−6−スルホン酸エステル、2,1−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、2,1−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、2,1−ナフトキノンジアジド−6−スルホン酸エステル等を挙げることができる。
【0024】
キノンジアジドスルホン酸エステルは、常法に従ってキノンジアジドスルホン酸化合物をキノンジアジドスルホン酸ハライドとした後、アセトン、ジオキサン、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、テトラヒドロフラン等の有機溶媒中において炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等の無機塩基の存在下、または、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、トリブチルアミン、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、ピリジン、ジシクロヘキシルアミン等の有機塩基の存在下、キノンジアジドスルホン酸ハライドとヒドロキシ基を有する化合物とを縮合反応させることにより、得ることができる。
【0025】
キノンジアジドスルホン酸ハライドとしては、例えば、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルホニルクロリド(別名:6−ジアゾ−5,6−ジヒドロ−5−オキソーナフタレン−1−スルホン酸クロリド)、1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホニルクロリド、1,2−ナフトキノンジアジド−6−スルホンニルクロリド、2,1−ナフトキノンジアジド−4−スルホンニルクロリド、2,1−ナフトキノンジアジド−5−スルホンニルクロリド、2,1−ナフトキノンジアジド−6−スルホニルクロリド等を挙げることができる。
【0026】
ヒドロキシル基を有する化合物としては、例えば、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,4,4’−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,3,4,4’−ペンタヒドロキシベンゾフェノンなどのポリヒドロキシベンゾフェノン;没食子酸メチル、没食子酸エチル、没食子酸プロピルなどの没食子酸エステル;2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(2,4−ジヒドロキシフェニル)プロパンなどのポリヒドロキシビスフェニルアルカン;トリス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)エタン、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−1−(4−ヒドロキシフェニル)エタン、ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニルメタン、4,4’−[1−[4−[1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノールなどのポリヒドロキシトリスフェニルアルカン;1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,3,3−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンなどのポリヒドロキシテトラキスフェニルアルカン;α,α,α’,α’−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)−m−キシレン、α,α,α’,α’−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)−p−キシレン、α,α,α’,α’−テトラキス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−m−キシレンなどのポリヒドロキシテトラキスフェニルキシレン;2,6−ビス(2,4−ジヒドロキシベンジル)−p−クレゾール、2,6−ビス(2,4−ジヒドロキシ−3−メチルベンジル)−p−クレゾール、4,6−ビス(4−ヒドロキシベンジル)レゾルシン、4,6−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルベンジル)レゾルシン、4,6−ビス(4−ヒドロキシベンジル)−2−メチルレゾルシン、4,6−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルベンジル)−2−メチルレゾルシンなどのフェノール化合物とホルムアルデヒドとのトリマー;前記フェノール化合物とホルムアルデヒドとのテトラマー;ノボラック樹脂;などを挙げることができる。
【0027】
上記の酸ハライド及びヒドロキシル基を有する化合物は、1種を単独で用いることができ、あるいは、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0028】
これらの中でも、感光性を増加させる観点から、酸ハライドとして、1,2−ナフトキノンジアジドー5−スルホニルクロリドを用い、ヒドロキシル基を有する化合物として、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン及び4,4’−[1−[4−[1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノールのうちの少なくとも1つを用いたキノンジアジドスルホン酸エステルを用いることが好ましい。
【0029】
得られるキノンジアジドスルホン酸エステルのエステル化率は、50モル%以上であることが好ましく、60モル%以上であることがより好ましい。エステル化率は、酸ハライドとヒドロキシル基を有する化合物との配合比により決定される。
【0030】
本発明の感光性樹脂組成物において、キノンジアジドスルホン酸エステル(C)の配合量は、アルカリ可溶性ノボラック樹脂(A)とアルカリ可溶性フェノール樹脂(B)との合計100重量部に対して、5〜40重量部であることが好ましく、10〜30重量部であることがより好ましい。キノンジアジドスルホン酸エステル(C)の配合量が、アルカリ可溶性ノボラック樹脂(A)とアルカリ可溶性フェノール樹脂(B)との合計100重量部に対して、5〜40重量部であると、レジストパターンのハーフトーンパターン部の形成性が良好で、しかも実効感度と残膜率、解像性などのレジスト特性のバランスに優れた感光性樹脂組成物を得ることができる。
【0031】
また、本発明に用いられる有機溶剤(D)は、プロピレングリコールモノメチルエーテル(D1)及び常圧の沸点が150℃〜240℃の範囲の溶剤(D2)を含む複合溶剤である。
【0032】
常圧の沸点が150℃〜240℃の範囲の溶剤(D2)としては、アルカリ可溶性ノボラック樹脂(A)及びキノンジアジドスルホン酸エステル(B)を溶解する溶剤であれば特に制限はなく、例えば、アルキレングリコール系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤、炭化水素系溶剤、ケトン系溶剤、アミド系溶剤などを挙げることができる。以下、カッコ内に沸点(℃)を示して溶剤(D2)の例示を行う。なお、プロピレングリコールモノメチルエーテル(D1)の沸点は146℃である。
【0033】
アルキレングリコール系溶剤としては、例えば、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(195)、エチレングリコールモノエチルエーテル(202)などのエチレングリコールモノアルキルエーテル;ジエチレングリコールジメチルエーテル(162)、ジエチレングリコールジエチルエーテル(189)、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル(176)、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル(212)などのジエチレングリコールジアルキルエーテル;ジプロピレングリコールジメチルエーテル(171)、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(188)などのプロピレングリコールアルキルエーテル;エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(158)、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(188)などのエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート;プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート(158)などのプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート;などを挙げることができる。
【0034】
エステル系溶剤としては、例えば、3−エトキシプロピオン酸エチル(170)、乳酸ブチル(187)、安息香酸メチル(200)などを挙げることができる。炭化水素系溶剤としては、例えば、n−ノナン(150)、デカン(174)、デカリン(194)、α−ピネン(156)、β−ピネン(163)、δ−ピネン(161)、1−クロロオクタン(182)、2−メチルシクロヘキサン(ラセミ体:165)、3−メチルシクロヘキサノン(ラセミ体:170)、4−メチルシクロヘキサノン(171)、4−エチルシクロヘキサン(194)、o−クロロトルエン(159)、m−クロロトルエン(162)、p−クロロトルエン(162)、プロピルベンゼン(159)、ブチルベンゼン(183)、イソブチルベンゼン(173)、クメン(152)などの芳香族炭化水素などを挙げることができる。ケトン系溶剤としては、例えば、シクロヘキサノン(156)などを挙げることができる。アミド系溶剤としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド(153)、N,N−ジメチルアセトアミド(194)、N−メチルピロリドン(202)などを挙げることができる。これらの溶剤は、1種を単独で用いることができ、あるいは、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0035】
また、常圧の沸点が150℃〜240℃の範囲の溶剤(D2)には上述の溶剤の他、プロピレングリコールモノメチルエーテル(120)等の常圧の沸点が150℃〜240℃の範囲を満たさない溶剤を混合して用いてもよい。この場合には、塗布ムラ抑制の観点から常圧の沸点が150℃〜240℃の範囲の溶剤と、常圧の沸点が150℃〜240℃の範囲を満たさない溶剤との比率を重量比で4:1〜1:4とすることが好ましい。
【0036】
プロピレングリコールモノメチルエーテル(D1)と常圧の沸点が150℃〜240℃の範囲の溶剤(D2)との比率は重量比で6:4〜9.5:0.5とすることが好ましい。この範囲を満たさない場合には塗布ムラが大きくなったり、プロセスマージンが小さくなったり、感度が低くなるという問題が生じる。
【0037】
また、塗布ムラ抑制の観点から、溶剤(D2)は、沸点が150℃〜200℃の範囲であることがさらに好ましい。
【0038】
また、本発明においては、感光性樹脂組成物に、密着促進剤を配合することができる。密着促進剤としては、例えば、メラミン系密着促進剤、シラン系密着促進剤などを挙げることができる。
【0039】
メラミン系密着促進剤としては、例えば、サイメル(登録商標)300、303[日本サイテックインダストリーズ(株)]、MW−30MH、MW−30、MS−11、MS−001、MX−750、MX−706[(株)三和ケミカル]などを挙げることができる。メラミン系密着促進剤の配合量は、アルカリ可溶性ノボラック樹脂(A)とアルカリ可溶性フェノール樹脂(B)との合計100重量部に対して、0.1〜20重量部であることが好ましく、0.5〜18重量部であることがより好ましく、1〜15重量部であることがさらに好ましい。
【0040】
シラン系密着促進剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランなどを挙げることができる。シラン系密着促進剤の配合量は、アルカリ可溶性ノボラック樹脂(A)とアルカリ可溶性フェノール樹脂との合計100重量部に対して、0.0001〜2重量部であることが好ましく、0.001〜1重量部であることがより好ましく、0.005〜0.8重量部であることがさらに好ましい。
【0041】
本発明においては、感光性樹脂組成物に、界面活性剤を配合することができる。界面活性剤の配合量は、感光性樹脂組成物に対して、100〜5,000重量ppmであることが好ましく、200〜2,000重量ppmであることがより好ましい。感光性樹脂組成物に界面活性剤を配合することにより、塗膜における塗布ムラの発生をさらに防止することができる。界面活性剤としては、例えば、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、ポリオキシアルキレン系界面活性剤などを挙げることができる。
【0042】
シリコーン系界面活性剤としては、例えば、SH28PA、SH29PA、SH30PA、ポリエーテル変性シリコーンオイルSF8410、SF8427、SH8400、ST80PA、ST83PA、ST86PA[東レ・ダウコーニング(株)]、KP321、KP323、KP324、KP340、KP341[信越シリコーン(株)]、TSF400、TSF401、TSF410、TSF4440、TSF4445、TSF4446[ジーイー東芝シリコーン(株)]、BYK300、BYK301、BYK302、BYK306、BYK307、BYK310、BYK315、BYK320、BYK323、BYK331、BYK333、BYK370、BYK375、BYK377、BYK378[ビッグケミー・ジャパン(株)] などを挙げることができる。
【0043】
フッ素系界面活性剤としては、例えば、フロリナートFC−430、FC−431[住友スリーエム(株)]、サーフロンS−141、S−145、S−381、S−393[旭硝子(株)]、エフトップ(登録商標)EF301、EF303、EF351、EF352[(株)ジェムコ]、メガファック(登録商標)F171、F172、F173、R−30[大日本インキ化学工業(株)]などを挙げることができる。また、フルオロカーボン鎖を有するシリコーン系界面活性剤として、メガファック(登録商標)R08、F470、F471、F472SF、F475[大日本インキ化学工業(株)]などを挙げることができる。
【0044】
ポリオキシアルキレン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレートなどを挙げることができる。
【0045】
本発明の感光性樹脂組成物を基板上に塗布する方法に特に制限はなく、例えば、スプレー法、ロールコート法、回転塗布法、スリットアンドスピン法、スピンレススリット法などを挙げることができる。これらの中で、スピンレススリット法を好適に用いることができる。スピンレススリット法によれば、ポジ型感光性樹脂組成物を供給するスリットを移動させることにより、基板にスリットが接触することなくポジ型感光性樹脂組成物を塗布することができる。スピンレススリット法による塗布には、スピンレスコーター[東京応化工業(株)]、テーブルコーター[中外炉工業(株)]、リニアコーター[大日本スクリーン製造(株)]、ヘッドコーター[平田機工(株)]、スリットダイコーター[東レエンジニアリング(株)]、東レスリットコーター[東レ(株)]などを用いることができる。
【0046】
基板上の感光性樹脂組成物の塗膜の乾燥は、例えば、公知の方法に従って、該塗膜の流動性を実質的に消失させる目的で行われる該塗膜の加熱(プリベイク)により併せて行えばよい。プリベイクは、ホットプレートやオーブン等を用いて、通常、60〜120℃で、10〜600秒間加熱することにより行うことができる。また、プリベイクする前に、公知の方法に従って塗膜を減圧乾燥しておくのも好適である。
【0047】
これらの工程により基板上にレジスト膜が形成されるが、レジスト膜の厚さとしては、通常、0.5〜5μm、好ましくは0.8〜4μmである。
【0048】
次に、レジスト膜をマスクを通して露光する。露光においては、レジスト膜にマスクパターンを介して活性光線を照射し、レジスト膜中に所定形状の潜像パターンを形成する。露光の際に用いる活性光線に特に制限はなく、例えば、可視光線、紫外線、遠紫外線、X線などを挙げることができる。これらの中で、可視光線と紫外線を好適に用いることができる。照射する光線量に特に制限はなく、レジスト膜の使用目的、膜の厚さなどに応じて適宜選択することができる。
【0049】
続いて、露光後のレジスト膜に現像液を接触させて潜像パターンを現像することによりレジストパターンを形成する。潜像パターンの現像に用いる現像液(アルカリ現像液)に特に制限はなく、例えば、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの水溶液を挙げることができる。これらの現像液の濃度は、0.1〜5重量%であることが好ましい。
【0050】
潜像パターンを現像したのち、基板上のレジストパターンを、例えば、純水で洗浄し、圧縮空気や圧縮窒素により風乾することが好ましい。また、所望により、現像されたパターンをホットプレートやオーブンなどの加熱装置を用いて、100〜250℃で、ホットプレート上では2〜60分間、オーブン中では2〜90分間程度加熱(ポストベーク)してもよい。
【実施例】
【0051】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
【0052】
(実施例1)
m−クレゾールとp−クレゾールとを重量比55/45で仕込み、シュウ酸を触媒としてホルムアルデヒドと脱水縮合して、重量平均分子量3600および9500の2種のアルカリ可溶性ノボラック樹脂を合成した。
【0053】
また、シュウ酸を触媒としてフェノールとホルムアルデヒドとを脱水縮合して、重量平均分子量620、分子量分布が1.21であるアルカリ可溶性フェノール樹脂を得た。
【0054】
アルカリ可溶性ノボラック樹脂90重量部、アルカリ可溶性フェノール樹脂10重量部、キノンジアジドスルホン酸エステルとして、PAC320(6−ジアゾ−5,6−ジヒドロ−5−オキソーナフタレン−1−スルホン酸と2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノンとのエステル)15重量部及びPAC430(6−ジアゾ−5,6−ジヒドロ−5−オキソーナフタレン−1−スルホン酸と2,3,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノンとのエステル)10重量部を溶剤708重量部に溶解した。ここで、実施例1においてはプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGMEA)90wt%及びジエチレングリコールエチルメチルエーテル(EDM)10wt%からなる溶剤を用いた。
【0055】
また、活性剤としてBYK302(ポリエーテル変成したジメチルポリシロキサン)を用いて、この濃度が400ppmとなるように調製した。
【0056】
また、アルカリ可溶性ノボラック樹脂は、感度評価時に算出される残膜率(塗布後の膜厚である1.5μmに対する現像後の膜厚の割合)が95%となるような比率で重量平均分子量3600の樹脂(F)と重量平均分子量9500(S)の樹脂を混合させたものを用いた。FとSの比率は60:40とした。
【0057】
(実施例2)
FとSの比率を53:47とし、有機溶剤に溶解するアルカリ可溶性ノボラック樹脂を85重量部、アルカリ可溶性フェノール樹脂15重量部とした以外は、実施例1と同様にして感光性樹脂組成物の調製を行った。
【0058】
(実施例3)
FとSの比率を66:34とし、有機溶剤に溶解するアルカリ可溶性ノボラック樹脂を95重量部、アルカリ可溶性フェノール樹脂5重量部とした以外は、実施例1と同様にして感光性樹脂組成物の調製を行った。
【0059】
(実施例4)
FとSの比率を58:42とし、有機溶剤として、PGMEA90wt%及びジエチレングリコールブチルメチルエーテル(BDM)10wt%からなる溶剤を用いた以外は、実施例1と同様にして感光性樹脂組成物の調製を行った。
【0060】
(実施例5)
FとSの比率を58:42とし、有機溶剤として、PGMEA70wt%、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)20wt%及びBDM10wt%からなる溶剤を用いた以外は、実施例1と同様にして感光性樹脂組成物の調製を行った。
【0061】
(実施例6)
アルカリ可溶性フェノール樹脂として、重量平均分子量(Mw)が721、分子量分布(Mw/Mn)が1.54であるものを用いた以外は、実施例1と同様にして感光性樹脂組成物の調製を行った。
【0062】
(比較例1)
FとSの比率を72:28とし、有機溶剤にアルカリ可溶性ノボラック樹脂を100重量部溶解させ、アルカリ可溶性フェノール樹脂を溶解させなかった以外は、実施例1と同様にして感光性樹脂組成物の調製を行った。
【0063】
(比較例2)
FとSの比率を48:52とし、有機溶剤に溶解するアルカリ可溶性ノボラック樹脂を80重量部、アルカリ可溶性フェノール樹脂20重量部とした以外は、実施例1と同様にして感光性樹脂組成物の調製を行った。
【0064】
(比較例3)
FとSの比率を63:37とし、アルカリ可溶性フェノール樹脂として、重量平均分子量(Mw)が1600、分子量分布(Mw/Mn)が1.72であるものを用いた以外は、実施例1と同様にして感光性樹脂組成物の調製を行った。
【0065】
(比較例4)
FとSの比率を62:38とし、アルカリ可溶性フェノール樹脂として、重量平均分子量(Mw)が620、分子量分布(Mw/Mn)が3.22であるものを用いた以外は、実施例1と同様にして感光性樹脂組成物の調製を行った。
【0066】
(比較例5)
有機溶剤として、PGMEA100wt%からなる溶剤を用いた以外は、実施例1と同様にして感光性樹脂組成物の調製を行った。
【0067】
(比較例6)
FとSの比率を58:42とし、アルカリ可溶性フェノール樹脂に代えて低分子フェノール化合物(Mw=424、Mw/Mn≒1)を用いた以外は、実施例1と同様にして感光性樹脂組成物の調製を行った。
【0068】
(評価方法)
実施例1〜6及び比較例1〜6において調製した感光性樹脂組成物の評価を以下の方法により行った。
【0069】
(感度)
シリコンウェハー基板上に、調製液を滴下してスピンさせた後に、スローバキュームタイムを20秒、メイン圧力を35Paとして真空乾燥させ、その後110℃/180sにて加熱乾燥することで膜厚1.5μmの膜を形成させた。その後、3μmのラインアンドスペースのマスクを介して超高圧水銀ランプで露光した。ついで2.5%に調製した水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液に70秒間浸漬させる現像工程を実施し、膜をパターン化させた。
【0070】
形成されたパターンのライン幅を観測し、マスク設計と同様の3μmの長さになっている露光量を感度とした。値が小さいほど、露光工程に要する時間が短縮されることを示す。従って、値が小さいほど、エネルギーの削減につながりよい。
【0071】
(ベーク温度マージン)
加熱乾燥の条件を、90℃/180s、100℃/180s、110℃/180s、120℃/180sとした以外は感度評価と同様の方法で製膜した。現像工程後の膜厚を観測し、現像工程後の膜厚の残存割合を残膜率として観測した(現像後膜厚/現像前膜厚)。各種加熱条件における残膜率の最大値と最小値の差を、ベーク温度マージンとした。値が小さいほど、条件が変化しても膜厚が変わらないことを示す。従って、値が小さいほど、大型基板において面内で均一なパターンを形成できて良い。
【0072】
(現像時間マージン)
感度評価と同様の方法で製膜後、70s、90s、110sの3条件にて現像を実施した。各種条件での残膜率を観測し、残膜率の最大値と最小値の差を、現像時間マージンとした。値が小さいほど、条件が変化しても膜厚が変わらないことを示す。従って、値が小さいほど、大型基板において面内で均一なパターンを形成できて良い。
【0073】
(塗布ムラ)
縦3mm、横3mm、高さ5μmの台座を基板下に設置し、730mm×920mm(厚さ0.7mm)のガラス基板上にスリットコータを用いて塗布した。その後、台座部分の膜厚変化を観測し、膜厚値が最大となるところと膜厚値が最小となるところの差を算出した。値が小さいほど、塗布ムラが生じづらいことを示す。従って、値が小さいほど、特に大型基板で塗布する際のレジストとして好適である。
【0074】
実施例1〜6及び比較例1〜6の結果を表1に示す。
【表1】

【0075】
表1に見られるように、アルカリ可溶性ノボラック樹脂(A)と分子量及び分子量分布が制御されたアルカリ可溶性フェノール樹脂(B)を組み合わせて使用し、かつ、アルカリ可溶性ノボラック樹脂(A)とアルカリ可溶性フェノール樹脂(B)の比率を特定の範囲にすると共に、有機溶剤(D)としてPGMEA(D1)及び沸点が特定の範囲である溶剤(D2)を組み合わせて用いた場合には、高感度で、かつプロセスマージン(ベーク温度マージン及び現像時間マージン)が大きく、また塗布ムラを抑制できることが分かった。
【0076】
一方、比較例1〜6に見られるように、これらの条件を満たさない場合には、塗布ムラが大きくなると共に、プロセスマージンが小さくなり、また、感度が低くなることが分かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ可溶性ノボラック樹脂(A)、アルカリ可溶性フェノール樹脂(B)、キノンジアジドスルホン酸エステル(C)及び有機溶剤(D)を有し、
前記アルカリ可溶性ノボラック樹脂(A)と前記アルカリ可溶性フェノール樹脂(B)の比率が重量比で95:5〜85:15であり、
前記アルカリ可溶性フェノール樹脂(B)の分子量が1000以下、かつ、分子量分布が1.05以上1.65以下であり、
前記有機溶剤(D)は、プロピレングリコールモノメチルエーテル(D1)及び常圧の沸点が150℃〜240℃の範囲の溶剤(D2)を含む複合溶剤である感光性樹脂組成物。
【請求項2】
前記溶剤(D2)は、常圧の沸点が150℃〜200℃の範囲である請求項1記載の感光性樹脂組成物。
【請求項3】
前記溶剤(D2)は、ジエチレングリコールジアルキルエーテルである請求項1または2記載の感光性樹脂組成物。
【請求項4】
前記アルカリ可溶性樹脂組成物(B)の分子量分は、が、1.10以上1.50以下である請求項1〜3の何れか一項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項5】
前記キノンジアジドスルホン酸エステル(C)は、1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホニルクロリドと4,4’−[1−[4−[1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノールのエステル化合物を含む請求項1〜4の何れか一項に記載の感光性樹脂組成物。