説明

感光性樹脂組成物

【課題】アルカリ現像性の感光性レリーフパターン形成材料を用いて、低キュア温度で残留応力が低く、優れたレリーフパターンを形成する、感光性樹脂組成物、該組成物を用いた硬化レリーフパターンの製造方法、及び該硬化レリーフパターンを有してなる半導体装置を提供する。
【解決手段】(A)アルカリ可溶性フェノール樹脂、及びポリヒドロキシスチレンまたはポリヒドロキシスチレン誘導体からなる群より選択される重合物100質量部に対して、特定の(B)感光性ジアゾナフトキノン化合物1〜100質量部、及び(C)有機溶剤100〜1000質量部を含む感光性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置における表面保護膜や層間絶縁膜等の各種の耐熱性レリーフパターン形成に有用なアルカリ現像性の感光性レリーフパターン形成材料、該感光性レリーフパターン形成材料を用いた該レリーフパターンの形成方法、及び該レリーフパターンを有してなる半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路に代表される半導体装置には、機能や構造により様々なものが提案されているが、これら半導体装置の製造工程の多くは、前半工程と後半工程の2つの工程に分けられる。前半工程は半導体基板上にトランジスタなどの素子を形成し、これらの素子を電気的に接続する工程であり、後半工程は半導体装置が使用される機器に合わせて電気的信号の入出力ができるように半導体装置を実装する工程である。特に後半工程は、半導体装置をその用途に合わせて薄型化する工程、樹脂でモールドする工程など、機械的あるいは熱的に過酷な条件での工程が多いため、これらの工程に対する耐久性を確保する必要がある。
このため、前半工程の最後に半導体装置上に表面保護膜を形成させてから後半工程に入るのが一般的である。
表面保護膜材料としては、従来、ポリイミド樹脂やポリベンゾオキサゾール樹脂等が使用されてきている。これらの樹脂は、耐熱性や機械特性等に優れ、多くの半導体装置の製造工程で用いられてきた。
【0003】
しかしながら、近年、環境保護の観点からの要請や、あるいは電子材料技術の進展に伴う材料改良の要請から、表面保護膜材料には様々な性能も求められている。その中でも特に、以下三つの要求性能の達成が当業界の課題である。
第一の要請としては、現像工程でアルカリ現像液によるレリーフパターン形成技術が求められている。従来技術としては、例えばポリイミド樹脂からなる表面保護膜の場合、ポリイミド前駆体を光線で露光後、N−メチル−2−ピロリドンなどの大量の有機溶剤系現像液を用いる現像方法が採用されていたが、近年の環境問題の高まり等からこのような有機溶剤系現像液から環境負荷の少ないアルカリ現像液への転換が求められている。
【0004】
第二の要請としては、表面保護膜の残留応力の低減が求められている。その理由の一つとしては、半導体装置の作製に使用される半導体基板の寸法が大きくなるに従い、残留応力が高い表面保護膜を使用すると、半導体基板の反りがより大きくなる。そのため、半導体装置の性能や製造工程に悪影響を及ぼす恐れがある。また、別の理由としては、半導体装置の配線工程で低誘電率材料を使用した場合、その上に形成された表面保護膜の残留応力により、低誘電率材料に種々の欠陥が発生する恐れがある。
第三の要請としては、表面保護膜を形成させる温度条件(キュア温度)の低下が求められている。従来、例えばポリイミド樹脂からなる表面保護膜の場合、イミド化を進行させるために、350〜400℃のキュア温度で硬化を行う必要があった。しかしながら、近年、有機半導体を用いた半導体装置や磁気ランダムアクセスメモリ等、その動作原理上、高温キュアを許容し得ない半導体装置も開発されており、キュア温度の低下が望まれている。
【0005】
従来、アルカリ現像性の感光性レリーフパターン形成材料からレリーフパターンを製造する方法としては、様々な方法が開発されている。その代表的な方法としては、例えば、a)アルカリ現像液に可溶な樹脂中の極性基が、酸性物質との接触により脱離するタイプの保護基により保護されている樹脂と、露光により酸を発生する化合物(光酸発生剤)と
を組み合わせて、レリーフパターンを製造する方法「化学増幅型現像システム」、b)アルカリ現像液に可溶な樹脂と、露光部と未露光部の違いにより該樹脂のアルカリ現像液に対する溶解性に変化を生じさせる感光性化合物(溶解抑止剤)とを組み合わせて、レリーフパターンを製造する方法「溶解抑止型現像システム」等が挙げられる。
【0006】
a)の化学増幅型現像システムの例としては、例えば、水酸基をtert−ブトキシカルボニル基等の保護基で保護したポリヒドロキシスチレンと光酸発生剤からなる材料(例えば非特許文献1参照)、あるいは、メタクリレート成分と多面体オリゴシルセスキオキサン成分を含むポリマーと光酸発生剤からなる材料(例えば特許文献1参照)等が挙げられる。しかしながら、光酸発生剤は一般的に強酸あるいはハロゲン原子を含有しており、これらの物質が原因となり金属配線材料が腐食される恐れがあるので、化学増幅型現像システムは半導体装置用のレリーフパターン形成システムとしては好ましくない。
b)の溶解抑止型現像システムの例としては、例えば、アルカリ現像液に可溶な樹脂であるポリベンズオキサゾール前駆体と溶解抑止剤からなるレリーフパターン形成材料を表面保護膜材料として用いる技術が提案されている(例えば特許文献2参照)。しかしながら、ポリベンズオキサゾール前駆体からポリベンズオキサゾールへの閉環反応(オキサゾール環への閉環反応)は、比較的低温で成されているものの、上記キュア温度の低減に加え残留応力の低減の要求を満足させるのは困難である。
【0007】
また、アルカリ可溶性フェノール樹脂と感光剤を含有するポジ型レジスト組成物を用いる技術が提案されている(例えば特許文献3参照)。しかしながら、本発明者らが追試したところ、この組成物はキュア後の残留応力が高く、機械的な特性が十分に得られないため、半導体装置の性能や製造工程に悪影響を及ぼす恐れがあり、また、半導体装置の配線工程で低誘電率材料を使用した場合、その上に形成された表面保護膜の残留応力により、低誘電率材料に欠陥が発生する恐れがあることが判明した(後述の比較例1〜2参照)。
このように、半導体装置の表面保護膜または層間絶縁膜材料として有用で、現像工程ではアルカリ現像液が使用でき、低いキュア温度により、残留応力が低く優れたレリーフパターンを形成する感光性レリーフパターン形成材料はこれまでに開発されておらず、その出現が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第02/073308号パンフレット
【特許文献2】特開昭63−096162号公報
【特許文献3】特開平03−048249号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】高分子先端材料one point 10レジスト材料 第3章 化学増幅レジスト 第31−96頁(著者:伊藤 洋、編集:高分子学会、発行所:共立出版株式会社、発行年:2005年)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、高感度かつ低いキュア温度で、低残留応力の硬化レリーフパターンを形成することが可能なアルカリ現像可能な感光性樹脂組成物、該組成物を用いた硬化レリーフパターンの製造方法、及び該硬化レリーフパターンを有してなる半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは前記課題を解決するため、アルカリ可溶性フェノール樹脂、またはポリヒ
ドロキシスチレンまたはポリヒドロキシスチレン誘導体である重合物と種々の感光性ジアゾナフトキノン化合物(以下、「PAC」という。)との組合せを鋭意検討した結果、特定の構造をもつPACと組合せた組成物が、上記特性を満足することを見出し、本発明をなすに至った。
すなわち、本発明の第一は、(A)アルカリ可溶性フェノール樹脂、及びポリヒドロキシスチレンまたはポリヒドロキシスチレン誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種の重合物100質量部に対して、(B)感光性ジアゾナフトキノン化合物1〜100質量部、及び(C)有機溶剤100〜1000質量部を含む半導体装置の表面保護膜用または層間絶縁膜用の感光性樹脂組成物であって、(B)感光性ジアゾナフトキノン化合物が、下記一般式(1)〜(5)のいずれかで表されるポリヒドロキシ化合物の1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、及び該ポリヒドロキシ化合物の1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステルからなる群から選択される少なくとも一種の化合物であることを特徴とする半導体装置の表面保護膜用または層間絶縁膜用の感光性樹脂組成物である。
【0012】
【化1】

(式(1)中、Zは化学式
【化2】

で表される有機基から選択される少なくとも1つの4価の基を示す。R1 、R2 、R3 、及びR4 はそれぞれ独立に1価の有機基を示し、bは0または1を示し、a、c、d、及びeはそれぞれ独立に0〜3の整数を示し、f、g、h、及びiはそれぞれ独立に0〜2かつ、2≦f+g+h+i≦8の整数を示す。)
【0013】
【化3】

(式(2)中、kは3〜8の整数を示し、jは1〜5の整数を示し、k×j個のLはそれぞれ独立に1個以上の炭素原子を有する1価の有機基を示し、k個のT、及びk個のSはそれぞれ独立に水素原子および1価の有機基からなる群から選択される1価の基を示す。)
【0014】
【化4】

(式(3)中、Aは脂肪族の3級あるいは4級炭素を含む2価の有機基を示し、Mは化学式
【化5】

で表される基から選択される少なくとも1つの2価の基を示す。)
【0015】
【化6】

(式(4)中、R5 は水素原子、アルキル基、アルコキシ基、及びシクロアルキル基から選択される少なくとも1つの1価の基を示す。)
【化7】

(式(5)中、R6 、R7 はそれぞれ独立に1価の有機基を示し、l、mはそれぞれ独立に0〜3の整数を示し、n、oはそれぞれ独立に0〜2かつ、2≦n+o≦4の整数を示す。)
【0016】
本発明の第二は、前記(B)感光性ジアゾナフトキノン化合物が、下記一般式(1)、(3)、(5)のいずれかで表されるポリヒドロキシ化合物の1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、及び該ポリヒドロキシ化合物の1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステルからなる群から選択される少なくとも一種の化合物であることを特徴とする請求項1記載の半導体装置の表面保護膜用または層間絶縁膜用の感光性樹脂組成物である。
【化8】

(式(1)中、Zは化学式
【化9】

で表される有機基を示す。R1 、R2 、R3 、及びR4 はそれぞれ独立に1価の有機基を示し、bは0または1を示し、a、c、d、及びeはそれぞれ独立に0〜3の整数を示し、f、g、h、及びiはそれぞれ独立に0〜2かつ、2≦f+g+h+i≦8の整数を示す。)
【化10】

(式(3)中、Aは脂肪族の3級あるいは4級炭素を含む2価の有機基を示し、Mは化学式
【化11】

で表される基から選択される少なくとも1つの2価の基を示す。)
【化12】

(式(5)中、R6 、R7 はそれぞれ独立に1価の有機基を示し、l、mはそれぞれ独立に0〜3の整数を示し、n、oはそれぞれ独立に0〜2かつ、2≦n+o≦4の整数を示す。)
【発明の効果】
【0017】
本発明のアルカリ現像性の感光性樹脂組成物は、高感度であり、低いキュア温度で低い残留応力の硬化レリーフパターンを形成することが可能であるという効果を有する。また、該感光性樹脂組成物を用いたレリーフパターンの製造方法、及び該レリーフパターンを有してなる半導体装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<感光性樹脂組成物>
本発明の感光性樹脂組成物(以下、「本発明組成物」ともいう。)を構成する成分について、以下説明する。
(A)重合物
本発明組成物に用いられる(A)重合物は、アルカリ可溶性フェノール樹脂、及びポリヒドロキシスチレンまたはポリヒドロキシスチレン誘導体からなる群から選ばれた少なくとも1種の重合物である。(以下、「重合物A」ともいう。)
上述のアルカリ可溶性フェノール樹脂としては、例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシノール、ハイドロキノンなどの芳香族ヒドロキシ化合物とホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒドなどのアルデヒド類より合成されるノボラック樹脂もしくはレゾール樹脂またはこれらの変性樹脂が挙げられる。
上述のポリヒドロキシスチレンまたはポリヒドロキシスチレン誘導体としては、例えば、ポリ−o−ヒドロキシスチレン、ポリ−m−ヒドロキシスチレン、ポリ−p−ヒドロキシスチレン、ポリ−α−メチル−o−ヒドロキシスチレン、ポリ−α−メチル−m−ヒドロキシスチレン、ポリ−α−メチル−p−ヒドロキシスチレン、並びにこれらの部分アセチル化物、及び部分シリル化物等が挙げられる。これらのポリヒドロキシスチレンまたはポリヒドロキシスチレン誘導体の数平均分子量1000〜200000、特に好ましくは2000〜100000である。
【0019】
(B)感光性ジアゾナフトキノン化合物
本発明組成物に用いられる(B)感光性ジアゾナフトキノン化合物は、以降に詳述する特定構造を有するポリヒドロキシ化合物の1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、及び該ポリヒドロキシ化合物の1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステルからなる群から選択される少なくとも一種の化合物(以下、「NQD化合物B」ともいう。)である。
該NQD化合物Bは、常法に従って、ナフトキノンジアジドスルホン酸化合物をクロルスルホン酸、または塩化チオニルでスルホニルクロライドとし、得られたナフトキノンジアジドスルホニルクロライドと、ポリヒドロキシ化合物とを縮合反応させることにより得られる。例えば、ポリヒドロキシ化合物と1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホニルクロリドまたは1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホニルクロリドの所定量をジオキサン、アセトン、またはテトラヒドロフラン等の溶媒中において、トリエチルアミン等の塩基性触媒の存在下反応させてエステル化を行い、得られた生成物を水洗、乾燥することにより得ることができる。
【0020】
以下に本発明組成物において、重合物Aと組み合わせることにより、低いキュア温度により、残留応力が低く、優れた耐熱性を発現するアルカリ現像性の感光性レリーフパターンが得られるNQD化合物Bを示す。
(1)下記一般式(1)で表されるポリヒドロキシ化合物のNQD化物B
【化13】

(式(1)中、Zは化学式
【化14】

で表される有機基から選択される少なくとも1つの4価の基を示す。R1 、R2 、R3 、及びR4 はそれぞれ独立に1価の有機基を示し、bは0または1を示し、a、c、d、及びeはそれぞれ独立に0〜3の整数を示し、f、g、h、及びiはそれぞれ独立に0〜2の整数を示す。)
【0021】
具体的な化合物としては、特開2001−092138号公報に記載されている化合物が挙げられる。そのなかでも、以下のポリヒドロキシ化合物のNQD化物が、感度が高く、感光性樹脂組成物中での析出性が低いことから好ましい。
【化15】

【0022】
【化16】

【0023】
【化17】

【0024】
【化18】

【0025】
(2)下記一般式(2)で表されるポリヒドロキシ化合物のNQD化物B
【化19】

(式(2)中、kは3〜8の整数を示し、jは1〜5の整数を示し、k×j個のLはそれぞれ独立に1個以上の炭素原子を有する1価の有機基を示し、k個のT、及びk個のSはそれぞれ独立に水素原子および1価の有機基からなる群から選択される1価の基を示す。)
【0026】
具体的な好ましい例としては、特開2004−347902号公報に記載されている化合物が挙げられる。
そのなかでも、以下の化合物のNQD化物が、感度が高く、感光性樹脂組成物中での析出性が低いことから好ましい。
【化20】

(式中、pは4である。)
【0027】
(3)下記一般式(3)で表されるポリヒドロキシ化合物のNQD化物B
【化21】

(式(3)中、Aは脂肪族の3級あるいは4級炭素を含む2価の有機基を示し、Mは化学式
【化22】

で表される基から選択される少なくとも1つの2価の基を示す。)
【0028】
具体的な化合物は、特開2003−131368号公報に記載されている化合物が挙げられる。
そのなかでも、以下の化合物のNQD化物が、感度が高く、感光性樹脂組成物中での析出性が低いことから好ましい。
【化23】

【0029】
(4)下記一般式(4)で表されるポリヒドロキシ化合物のNQD化物B
【化24】

(式(4)中、R5 は水素原子、アルキル基、アルコキシ基、及びシクロアルキル基から選択される少なくとも1つの1価の基を示す。)
【0030】
具体的な化合物としては、特開2001−356475号公報に記載されている化合物が挙げられる。
そのなかでも、以下の化合物のNQD化物が、感度が高く、感光性樹脂組成物中での析出性が低いことから好ましい。
【化25】

【化26】

(式(5)中、R6 、R7 はそれぞれ独立に1価の有機基を示し、l、mはそれぞれ独立に0〜3の整数を示し、n、oはそれぞれ独立に0〜2かつ、2≦n+o≦4の整数を示す。)
【0031】
具体的な化合物としては、特開2004−077999号公報に記載されている化合物が挙げられる。
その中でも、以下の化合物のNQD化物が、感度が高く、感光性樹脂組成物中での析出性が低いことから好ましい。
【化27】

【化28】

【0032】
本発明組成物において、NQD化合物Bにおけるナフトキノンジアジドスルホニル基は、5−ナフトキノンジアジドスルホニル基、4−ナフトキノンジアジドスルホニル基のいずれも好ましく用いられる。4−ナフトキノンジアジドスルホニルエステル化合物は水銀灯のi線領域に吸収を持っており、i線露光に適している。5−ナフトキノンジアジドスルホニルエステル化合物は水銀灯のg線領域まで吸収が伸びており、g線露光に適している。本発明においては、露光する波長によって4−ナフトキノンジアジドスルホニルエステル化合物、又は5−ナフトキノンジアジドスルホニルエステル化合物を選択することが好ましい。また、同一分子中に4−ナフトキノンジアジドスルホニル基、5−ナフトキノンジアジドスルホニル基を併用したナフトキノンジアジドスルホニルエステル化合物を得ることもできるし、4−ナフトキノンジアジドスルホニルエステル化合物と5−ナフトキノンジアジドスルホニルエステル化合物を混合して使用することもできる。
本発明組成物において、NQD化合物Bの添加量は、重合物A100質量部に対して1〜100質量部であり、好ましくは3〜40質量部であり、さらに好ましくは10〜30質量部の範囲である。
【0033】
(C)有機溶剤
本発明組成物に用いられる(C)有機溶剤としては、極性溶媒であるN−メチル−2−
ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、テトラメチル尿素、及びγ−ブチロラクトン、モルフォリン等が挙げられる。その他、この極性溶媒以外に、一般的な有機溶媒であるケトン類、エステル類、ラクトン類、エーテル類、ハロゲン化炭化水素類、炭化水素類を混合してもよく、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、シュウ酸ジエチル、乳酸エチル、乳酸メチル、乳酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ベンジルアルコール、フェニルグリコール、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、1,4−ジクロロブタン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、アニソール、ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン等も使用することができる。
本発明組成物において、(C)有機溶剤の添加量は、重合物A100質量部に対して100〜1000質量部であり、好ましくは120〜700質量部であり、さらに好ましくは150〜500質量部の範囲である。
【0034】
(D)その他の成分
本発明の感光性樹脂組成物には、必要に応じて染料、界面活性剤、安定剤を添加剤として加えることも可能である。上記添加剤について具体的に述べると、染料としては、例えば、メチルバイオレット、クリスタルバイオレット、マラカイトグリーン等が、界面活性剤としては、例えば、ポリプロピレングリコールまたはポリオキシエチレンラウリルエーテル等のポリグリコール類あるいはその誘導体からなる非イオン系界面活性剤、例えば、フロラード(商品名;住友3M社製)、メガファック(商品名;大日本インキ化学工業社製)あるいはスルフロン(商品名;旭硝子社製)等のフッ素系界面活性剤、例えば、KP341(商品名;信越化学工業社製)、DBE(商品名;チッソ社製)、及びグラノール(商品名;共栄社化学社製)等の有機シロキサン界面活性剤を用いることが出来る。
【0035】
<硬化レリーフパターンの形成方法>
本発明の感光性樹脂組成物を用いて基板上に硬化レリーフパターンを形成する方法(以下、「本発明方法」ともいう。)の一例を以下に示す。
まず、感光性樹脂組成物を層またはフィルムの形で基板上に形成する塗布工程を実施する。該基板としては、例えば、シリコンウェハー、セラミック基板、もしくはアルミ基板などが挙げられる。この時、形成するレリーフパターンと基板との接着性を向上させるため、あらかじめ該基板にシランカップリング剤などの接着助剤を塗布しておいても良い。
該組成物の塗布方法は、スピンナーを用いた回転塗布、スプレーコーターを用いた噴霧塗布、浸漬、印刷、またはロールコーティング等で行う。
【0036】
次に、80〜140℃でプリベークして塗膜を乾燥した後、コンタクトアライナー、ミラープロジェクション、もしくはステッパー等の露光装置を用いて、該層または該フィルムをマスクを介して化学線で露光するか、または光線、電子線、もしくはイオン線を直接照射する露光工程を実施する。該化学線としては、X線、電子線、紫外線、もしくは可視光線などが使用できるが、200〜500nmの波長のものが好ましい。パターンの解像度及び取扱い性の点で、その光源波長は水銀ランプのg線、h線、もしくはi線が好ましく、単独でも混合して用いても良い。露光装置としてはコンタクトアライナー、ミラープロジェクション、もしくはステッパーが特に好ましい。
【0037】
次に、該露光部または該照射部を現像液で溶出除去する現像工程を実施する。現像方法は、浸漬法、パドル法、及び回転スプレー法等の方法から選択して行うことが出来る。 現像液としては、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、アンモニア水等の無機アルカリ類、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノー
ルアミン等の有機アミン類、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド等の4級アンモニウム塩類等の水溶液、および必要に応じメタノール、エタノール、等の水溶性有機溶媒や界面活性剤を適当量添加した水溶液を使用することが出来る。この中で、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液が好ましく、その濃度は、0.5%〜10%であり、さらに好ましくは、1.0%〜5%である。現像後、リンス液により洗浄を行い現像液を除去することにより、基板上に形成されたレリーフパターンを得ることができる。リンス液としては、蒸留水、メタノール、エタノール、イソプロパノール等を単独または組み合わせて用いることができる。
【0038】
最後に、このようにして得られた重合物のレリーフパターンを加熱する加熱工程を実施する。加熱温度は150℃以上が好ましく、感光性ジアゾナフトキノン化合物と希釈溶媒とを揮散させることで硬化レリーフパターンを得ることができる。半導体装置の表面保護膜として、一般的に使われているポリイミドまたはポリベンゾオキサゾール前駆体組成物を用いた硬化レリーフパターンの形成方法においては、300℃以上に加熱して脱水環化反応を進行させることにより、ポリイミドあるいはポリベンズオキサゾール等に変換する必要があるが、本発明方法においてはその必要性はないので、MRAM、有機半導体、銅配線を有するCMOS等の300℃以上の加熱ができない耐熱性に劣る半導体装置にも好適に使用することが出来る。
【0039】
もちろん、本発明方法においても300〜400℃に加熱処理をしてもよい。このような加熱処理装置としては、ホットプレート、オーブン、または温度プログラムを設定できる昇温式オーブンを用いることにより行うことが出来る。加熱処理を行う際の雰囲気気体としては空気を用いてもよく、窒素、アルゴン等の不活性ガスを用いることもできる。また、より低温にて熱処理を行う必要が有る際には、真空ポンプ等を利用して減圧下にて加熱を行ってもよい。
<半導体装置>
本発明の半導体装置は、上述の硬化レリーフパターンを、表面保護膜、層間絶縁膜、再配線用絶縁膜、フリップチップ装置用保護膜、もしくはバンプ構造を有する装置の保護膜として、公知の半導体装置の製造方法と組み合わせることで製造することができる。
【実施例】
【0040】
以下に、実施例などを用いて本発明を更に具体的の説明するが、本発明はこれら実施例などにより何ら限定せれるものではない。
(感光性ジアゾナフトキノン化合物の作製)
<参考例1>
撹拌機、滴下ロート及び温度計を付した1lセパラブルフラスコにポリヒドロキシ化合物として下記の構造式で表される化合物(旭有機材工業社製、商品名;BIPC−BI25X−TPA)(前記式(1)に対応する化合物)30g(0.0565mol)を用い、このOH基の80mol%に相当する量の1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルフォン酸クロライド48.6g(0.181mol)をアセトン300gに撹拌溶解した後、フラスコを恒温槽にて30℃に調整した。次にアセトン18gにトリエチルアミン18.3gを溶解し、滴下ロートに仕込んだ後、これを30分かけてフラスコ中へ滴下した。滴下終了後更に30分間撹拌を続け、その後塩酸を滴下し、更に30分間撹拌をおこない反応を終了させた。その後濾過し、トリエチルアミン塩酸塩を除去した。ここで得られた濾液を純水1640gと塩酸22gを混合撹拌した3lビーカーに撹拌しながら滴下し、析出物を得た。この析出物を水洗、濾過した後、40℃減圧下で48時間乾燥し、(B)感光性ジアゾナフトキノン化合物(PAC−1)を得た。
【0041】
【化29】

【0042】
<参考例2>
撹拌機、滴下ロート及び温度計を付した1lセパラブルフラスコにポリヒドロキシ化合物として下記の構造式で表される化合物(本州化学工業社製、商品名;Tekoc−4HBPA)(上記式(1)に対応する化合物)30g(0.0474mol)を用い、このOH基の80mol%に相当する量の1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルフォン酸クロライド40.76g(0.152mol)をアセトン300gに撹拌溶解した後、フラスコを恒温槽にて30℃に調整した。次にアセトン15gにトリエチルアミン15.4gを溶解し、滴下ロートに仕込んだ後、これを30分かけてフラスコ中へ滴下した。滴下終了後更に30分間撹拌を続け、その後塩酸を滴下し、更に30分間撹拌し反応を終了させた。その後濾過し、トリエチルアミン塩酸塩を除去した。ここで得られた濾液を純水1640gと塩酸22gを混合撹拌した3lビーカーに撹拌しながら滴下し、析出物を得た。この析出物を水洗、濾過した後、40℃減圧下で48時間乾燥し、(B)感光性ジアゾナフトキノン化合物(PAC−2)を得た。
【0043】
【化30】

【0044】
<参考例3>
撹拌機、滴下ロート及び温度計を付した1lセパラブルフラスコにポリヒドロキシ化合物として3,3’,5,5’−テトラキス(2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4,4’−ジヒドロキシ−ジフェニルプロパン(旭有機材工業社製、商品名;TEPC−BIP−A)(上記式(1)に対応する化合物)30g(0.0423mol)を用い、このOH基の80mol%に相当する量の1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルフォン酸クロライド36.39g(0.135mol)をアセトン300gに撹拌溶解した後、フラスコを恒温槽にて30℃に調整した。次にアセトン14gにトリエチルアミン13.7gを溶解し、滴下ロートに仕込んだ後、これを30分かけてフラスコ中へ滴下した。滴下終了後更に30分間撹拌を続け、その後塩酸を滴下し、更に30分間撹拌をおこない反応を終了させた。その後濾過し、トリエチルアミン塩酸塩を除去した。ここで得られた濾液を純水1640gと塩酸22gを混合撹拌した3lビーカーに撹拌しながら滴下し、析出物を得た。この析出物を水洗、濾過した後、40℃減圧下で48時間乾燥し、(B)感光性ジアゾナフトキノン化合物(PAC−3)を得た。
【0045】
<参考例4>
撹拌機、滴下ロート及び温度計を付した1lセパラブルフラスコにポリヒドロキシ化合物として下記の構造式で表される化合物(旭有機材工業社製、商品名;BIPC−PDAB)(上記式(1)に対応する化合物)30g(0.0482mol)を用い、このOH基の62.5mol%に相当する量の1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルフォン酸クロライド64.75g(0.241mol)をアセトン300gに撹拌溶解した後、フラスコを恒温槽にて30℃に調整した。次にアセトン24gにトリエチルアミン24.4gを溶解し、滴下ロートに仕込んだ後、これを30分かけてフラスコ中へ滴下した。滴下終了後更に30分間撹拌を続け、その後塩酸を滴下し、更に30分間撹拌をおこない反応を終了させた。その後濾過し、トリエチルアミン塩酸塩を除去した。ここで得られた濾液を純水1640gと塩酸30gを混合撹拌した3lビーカーに撹拌しながら滴下し、析出物を得た。この析出物を水洗、濾過した後、40℃減圧下で48時間乾燥し、(B)感光性ジアゾナフトキノン化合物(PAC−4)を得た。
【0046】
【化31】

【0047】
<参考例5>
レゾルシノール102.4g(0.92mol)、ヘキサナール92.0g(0.92mol)をエタノール920ml中に溶解した。これを0℃に冷やし12N塩酸を148ml滴下、攪拌した。次にこの混合物を窒素雰囲気下70℃で10時間攪拌した。室温にしたのち濾過によって沈殿物を除去した。濾液を80℃の水で洗浄後乾燥し得られた固体をメタノール及びヘキサン、アセトン混合溶媒で再結晶を行った。その後真空乾燥を行い、下記のレゾルシン環状4量体を収率50%で得た。
【0048】
【化32】

(式中、pは4である。)
【0049】
次に、上記で合成して得られたレゾルシン環状4量体(上記式(2)に対応する化合物)を76.9g(0.1mol)、1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルフォン酸クロライドを134.3g(0.5mol、ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル化率62.5%相当)、テトラヒドロフラン1057gを加え、20℃で撹拌溶解した。これに、トリエチルアミン53.14g(0.525mol)をテトラヒドロフラン266gで希釈したものを、30分かけて一定速度で滴下した。この際、反応液は氷水浴を用いて20〜30℃の範囲で温度制御した。滴下終了後、更に30分間、20℃で撹拌放置した後、36質量%濃度の塩酸水溶液6.83gを一気に投入し、次いで反応液を氷水浴で冷却し、析出した固形分を吸引濾別した。この際得られた濾液を、0.5質量%濃度の塩酸水溶液10リットルに、その撹拌下で1時間かけて滴下し、目的物を析出させ、吸引濾別して回収した。得られたケーク状回収物を、再度イオン交換水5リットルに分散させ、撹拌、洗浄、濾別回収し、この水洗操作を3回繰り返した。最後に得られたケーク状物を、40℃で48時間真空乾燥し、(B)感光性ジアゾナフトキノン化合物(PAC−5)を得た。
【0050】
<参考例6>
容量1lのセパラブルフラスラスコに2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)−ヘキサフルオロプロパン109.9g(0.3mol)、テトラヒドロフラン(THF)330g、ピリジン47.5g(0.6mol)を入れ、これに室温下で5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物98.5g(0.6mol)を粉体のまま加えた。
そのまま室温で3日間撹拌反応を行ったあと、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)にて反応を確認したところ、原料は全く検出されず、生成物が単一ピークとして純度99%で検出された。この反応液をそのまま1lのイオン交換水中に撹拌下で滴下し、生成物を析出させた。
【0051】
次に析出物を濾別した後、これにTHF500mlを加え撹拌溶解し、この均一溶液を陽イオン交換樹脂:アンバーリスト15(オルガノ株式会社製)100gが充填されたガラスカラムを通し残存するピリジンを除去した。次にこの溶液を3lのイオン交換水中に高速撹拌下で滴下することにより生成物を析出させ、これを濾別した後、真空乾燥することにより下記構造のイミドフェノール化合物(NI)(上記式(3)に対応する化合物)を収率86%で得た。
【化33】

【0052】
生成物がイミド化していることは、IRチャートで1394および1774cm-1のイミド基の特性吸収が現れ1540および1650cm-1付近のアミド基の特性吸収が存在しないこと、およびNMRチャートでアミドおよびカルボン酸のプロトンのピークが存在しないことにより確認した。次に、上記イミドフェノール化合物(NI)65.9g(0.1mol)、1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルフォン酸クロライドを53.7g(0.2mol)、アセトン560g加え、20℃で撹拌溶解した。これに、トリエチルアミン21.2g(0.21mol)をアセトン106.2gで希釈したものを、30分かけて一定速度で滴下した。この際、反応液は氷水浴などを用いて20〜30℃の範囲で温度制御した。
滴下終了後、更に30分間、20℃で撹拌放置した後、36重量%濃度の塩酸水溶液5.6gを一気に投入し、次いで反応液を氷水浴で冷却し、析出した固形分を吸引濾別した。この際得られた濾液を、0.5重量%濃度の塩酸水溶液5lに、その撹拌下で1時間かけて滴下し、目的物を析出させ、吸引濾別して回収した。得られたケーク状回収物を、再度イオン交換水5lに分散させ、撹拌、洗浄、濾別回収し、この水洗操作を3回繰り返した。最後に得られたケーク状物を、40℃で48時間真空乾燥し、(B)感光性ジアゾナ
フトキノン化合物(PAC−6)を得た。
【0053】
<参考例7>
撹拌機、滴下ロート及び温度計を付した1lセパラブルフラスコにポリヒドロキシ化合物として、4,6−ビス((4−ヒドロキシフェニル)エチル)ベンゼン−1,3−ジオール(本州化学工業社製、商品名;BisHPMC−RS)(上記式(4)に対応する化合物)30g(0.0857mol)を用い、このOH基の80mol%に相当する量の1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルフォン酸クロライド73.7g(0.274mol)をアセトン300gに撹拌溶解した後、フラスコを恒温槽にて30℃に調整した。次にアセトン28gにトリエチルアミン27.7gを溶解し、滴下ロートに仕込んだ後、これを30分かけてフラスコ中へ滴下した。滴下終了後更に30分間撹拌を続け、その後塩酸を滴下し、更に30分間撹拌をおこない反応を終了させた。その後濾過し、トリエチルアミン塩酸塩を除去した。ここで得られた濾液を純水1640gと塩酸30gを混合撹拌した3lビーカーに撹拌しながら滴下し、析出物を得た。この析出物を水洗、濾過した後、40℃減圧下で48時間乾燥し、(B)感光性ジアゾナフトキノン化合物(PAC−7)を得た。
【0054】
<参考例8>
撹拌機、滴下ロート及び温度計を付した1lセパラブルフラスコにポリヒドロキシ化合物として下記構造式で表される化合物(旭有機材工業社製、商品名;BIMC−BZ)(上記式(5)に対応する化合物)15.0g(50mmol)を用い、このOH基の90mol%に相当する量の1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルフォン酸クロライド24.2g(90mmol)をアセトン197.4gに撹拌溶解した後、フラスコを恒温槽にて30℃に調整した。これに、トリエチルアミン9.56g(94.5mmol)をアセトン47.8gで希釈したものを30分かけて一定速度で滴下した。この際、反応液は氷水浴を用いて20〜30℃の範囲で温度制御した。滴下終了後、更に30分間、20℃で撹拌放置した後、36質量%濃度の塩酸水溶液3.6g(24.9mmol)を一気に投入し、次いで反応液を氷水浴で冷却し、析出した固形物を吸引濾別した。この際得られた濾液を、0.5質量%濃度の塩酸水溶液5lに、その撹拌下で1時間かけて滴下し、目的物を析出させ、吸引濾別して回収した。得られたケーク状回収物を、再度イオン交換水3lに分散させ、撹拌、洗浄、濾別回収し、この水洗操作を3回繰り返した。最後に得られたケーク状物を40℃で48時間真空乾燥し、(B)感光性ジアゾナフトキノン化合物(PAC−8)を得た。
【化34】

【0055】
<参考例9>
撹拌機、滴下ロート及び温度計を付した1lセパラブルフラスコに下記構造式で表されるポリヒドロキシ化合物として4,4’−(1−(2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−プロピル)フェニル)エチリデン)ビスフェノール(本州化学工業社製、商品名;Tris−PA)30g(0.0707mol)を用い、このOH基の83.3mol%に相当する量の1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルフォン酸クロライド47.49g(0.177mol)をアセトン300gに撹拌溶解した後、フラスコを恒温槽にて30℃に調整した。次にアセトン18gにトリエチルアミン17.9gを溶解し、滴下ロートに仕込んだ後、これを30分かけてフラスコ中へ滴下した。滴下終了後更に30分間撹拌を続け、その後塩酸を滴下し、更に30分間撹拌を行い反応を終了させた。その後濾過し、トリエチルアミン塩酸塩を除去した。ここで得られた濾液を純水1640gと塩酸30gを混合撹拌した3lビーカーに撹拌しながら滴下し析出物を得た。この析出物を水洗、濾過した後、40℃減圧下で48時間乾燥し、(B)感光性ジアゾナフトキノン化合物(PAC−9)を得た。
【化35】

【0056】
次に、本発明における実施例及び比較例を示す。
[実施例1〜10、比較例1、2]
(感光性樹脂組成物の調製と硬化レリーフパターンの形成)
<感光性樹脂組成物の調製>
重合物Aとして、クレゾールノボラック(旭有機材工業製、EP4080G、P−1という)、ポリヒドロキシスチレン(丸善石油化学製、マルカリンカー、P−2という)100質量部に、上記参考例1〜9にて得られた感光性ジアゾキノン化合物(PAC−1〜PAC−9)20質量部をGBL170質量部に溶解した後、0.2μmのフィルターで濾過して、実施例1〜10、及び比較例1〜2の感光性樹脂組成物を調製した。
【0057】
<硬化レリーフパターンの形成>
(1)パターニング特性評価
上記感光性樹脂組成物をスピンコーター(東京エレクトロン社製、クリーントラックMark8)にて、5インチシリコンウエハーにスピン塗布し、ホットプレートにて120℃、180秒間プリベークを行い、膜厚10.7μmの塗膜を形成した。膜厚は大日本スクリーン製造社製膜厚測定装置(ラムダエース)にて測定した。
この塗膜に、テストパターン付きレチクルを通してi線(365nm)の露光波長を有するニコン社製ステッパー(NSR2005i8A)を用いて露光量を段階的に変化させて露光した。これをクラリアントジャパン社製アルカリ現像液(AZ300MIFデベロッパー、2.38質量%水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液)を用い、23℃の条件下で現像後膜厚が6.9μmとなるように現像時間を調整して現像を行い、レリーフパターンを形成した。感光性樹脂組成物の感度を表1に示した。
なお、感光性樹脂組成物の感度は、次のようにして評価した。
[感度(mJ/cm2 )]
上記現像時間において、塗膜の露光部を完全に溶解除去しうる最小露光量。
【0058】
(2)機械特性評価
上記感光性樹脂組成物をスピンコーター(東京エレクトロン社製、クリーントラックMark8)にて、5インチシリコンウエハーにスピン塗布し、ホットプレートにて120℃、180秒間プリベークを行い、膜厚11.0μmの塗膜を形成した。この塗膜を縦型キュア炉(光陽リンドバーグ社製)にて、窒素雰囲気中、250℃で1時間のキュアを施した。キュア後の膜を薄膜ストレス装置FLX−2320(LKA−TENCOR社製)にて、応力を測定した。塗膜が示した応力を表1に示した。
【0059】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明の感光性樹脂組成物は、半導体用の保護膜、層間絶縁膜、液晶配向膜等の分野で、好適に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)アルカリ可溶性フェノール樹脂、及びポリヒドロキシスチレンまたはポリヒドロキシスチレン誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種の重合物100質量部に対して、(B)感光性ジアゾナフトキノン化合物1〜100質量部、及び(C)有機溶剤100〜1000質量部を含む半導体装置の表面保護膜用または層間絶縁膜用の感光性樹脂組成物であって、(B)感光性ジアゾナフトキノン化合物が、下記一般式(1)〜(5)のいずれかで表されるポリヒドロキシ化合物の1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、及び該ポリヒドロキシ化合物の1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステルからなる群から選択される少なくとも一種の化合物であることを特徴とする半導体装置の表面保護膜用または層間絶縁膜用の感光性樹脂組成物。
【化1】

(式(1)中、Zは化学式
【化2】

で表される有機基から選択される少なくとも1つの4価の基を示す。R1 、R2 、R3 、及びR4 はそれぞれ独立に1価の有機基を示し、bは0または1を示し、a、c、d、及びeはそれぞれ独立に0〜3の整数を示し、f、g、h、及びiはそれぞれ独立に0〜2かつ、2≦f+g+h+i≦8の整数を示す。)
【化3】

(式(2)中、kは3〜8の整数を示し、jは1〜5の整数を示し、k×j個のLはそれぞれ独立に1個以上の炭素原子を有する1価の有機基を示し、k個のT、及びk個のSはそれぞれ独立に水素原子および1価の有機基からなる群から選択される1価の基を示す。)
【化4】

(式(3)中、Aは脂肪族の3級あるいは4級炭素を含む2価の有機基を示し、Mは化学式
【化5】

で表される基から選択される少なくとも1つの2価の基を示す。)
【化6】

(式(4)中、R5 は水素原子、アルキル基、アルコキシ基、及びシクロアルキル基から選択される少なくとも1つの1価の基を示す。)
【化7】

(式(5)中、R6 、R7 はそれぞれ独立に1価の有機基を示し、l、mはそれぞれ独立に0〜3の整数を示し、n、oはそれぞれ独立に0〜2かつ、2≦n+o≦4の整数を示す。)
【請求項2】
前記(B)感光性ジアゾナフトキノン化合物が、下記一般式(1)、(3)、(5)のいずれかで表されるポリヒドロキシ化合物の1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、及び該ポリヒドロキシ化合物の1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステルからなる群から選択される少なくとも一種の化合物であることを特徴とする請求項1記載の半導体装置の表面保護膜用または層間絶縁膜用の感光性樹脂組成物。
【化8】

(式(1)中、Zは化学式
【化9】

で表される有機基を示す。R1 、R2 、R3 、及びR4 はそれぞれ独立に1価の有機基を示し、bは0または1を示し、a、c、d、及びeはそれぞれ独立に0〜3の整数を示し、f、g、h、及びiはそれぞれ独立に0〜2かつ、2≦f+g+h+i≦8の整数を示す。)
【化10】

(式(3)中、Aは脂肪族の3級あるいは4級炭素を含む2価の有機基を示し、Mは化学式
【化11】

で表される基から選択される少なくとも1つの2価の基を示す。)
【化12】

(式(5)中、R6 、R7 はそれぞれ独立に1価の有機基を示し、l、mはそれぞれ独立に0〜3の整数を示し、n、oはそれぞれ独立に0〜2かつ、2≦n+o≦4の整数を示す。)

【公開番号】特開2012−208519(P2012−208519A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−155394(P2012−155394)
【出願日】平成24年7月11日(2012.7.11)
【分割の表示】特願2006−311750(P2006−311750)の分割
【原出願日】平成18年11月17日(2006.11.17)
【出願人】(309002329)旭化成イーマテリアルズ株式会社 (771)
【Fターム(参考)】