説明

感光性樹脂組成物

【構成】 一般式(I)
【化1】


で示される構造単位を含むポリアミド酸100重量部に対し、一般式(II)
【化2】


で示されるエポキシ基を有するシリコン化合物0.5〜30重量部及び光照射により酸を発生する化合物0.5〜40重量部を含有する感光性樹脂組成物。
【効果】 製造が容易で、ポジ型のパターン形成ができ、基板との密着性に優れる感光性樹脂組成物が提供された。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は感光性樹脂組成物に関する。更に詳しくは製造が容易であり、基板との密着性が良好なポジ型の感光性樹脂組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】感光性ポリイミドは耐熱性感光材料として半導体の絶縁膜やパッシベーション膜などに広く使用されている。ネガ型感光材料としてたとえば特開昭54−145794号公報、特公昭55−41422号公報、特開平2−144539号公報などに光照射によって重合可能な炭素−炭素二重結合を有する化合物をポリイミド前駆体に混合したもの、エステル結合によって化学的に結合したものなどが報告されている。しかしながら、基板上に塗布された樹脂の一部を穴開けなどのパターン加工を行う際、加工を必要とする面積が全塗膜面に対して小さい場合には、ネガ型の感光材料では露光工程でマスク上のゴミや傷などの影響を受けやすいので、ポジ型の感光材料を使用する方が好ましい。ポジ型の感光性ポリイミドとしては、特開昭63−206743号公報、特開昭64−61747号公報にポリアミド酸のカルボキシル基にアミドやエステル結合を介してオルト位にニトロ基を有するフェニル誘導体を結合させたもの、特開平3−209478号公報、特開平3−247655号公報に水酸基などを有するポリイミドを利用するもの、特開平3−763号公報、特開平4−120171号公報に光照射によって酸を発生する化合物と発生した酸による分解でアルカリ可溶性となる樹脂を混合したものなどが開示されている。しかし、上記ポジ型感光材料は、製造が煩雑で、感光性とするためにはポリイミドの構造が特殊なものに限定され、また基板との密着性に欠けるといった問題を有している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、上述の従来技術の問題に鑑み、製造が容易であり、基板との密着性に優れ、最終焼成物として得られるポリイミドが構造上の限定を受けないポジ型の感光性樹脂組成物を提供することである。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、公知技術にかかわる上述の問題点を解決すべく鋭意検討を行った結果、ポリアミド酸にエポキシ基と加水分解性のアルコキシル基を有するシリコン化合物及び光照射により酸を発生する化合物を必須成分として含有させることにより、上述の種々の問題を解決しうることを知見し、本発明の感光性樹脂組成物を完成するに至った。すなわち、
【0005】本発明感光性樹脂組成物は、下記一般式(I)
【化9】


で示される構造単位を含むポリアミド酸を100重量部、下記一般式(II)
【化10】


で示されるエポキシ基を有するシリコン化合物0.5〜30重量部、及び光照射により酸を発生する化合物0.5〜40重量部を含有することからなる感光性樹脂組成物、
【0006】{ただし、式(I)においてR1は4価の有機基、R2は少なくとも2個の炭素原子を有する2価の有機基または2価のポリシロキサン基を表す、また式(II)においてZは
【化11】


【化12】


または
【化13】


であり、R3
【化14】


【化15】


または
【化16】


(ただし、sは0〜4の整数、tは1〜4の整数を表す)であり、R4は独立に炭素数1〜6のアルキル基、R5は独立に炭素数1〜6の飽和または不飽和の炭化水素基を表し、1≦k≦3である。}。
【0007】本発明の組成物に使用するポリアミド酸は、前記式(I)で示される構造単位を有するが、その式(I)におけるR1は4価の芳香族基、4価の複素環式基、4価の脂環式炭化水素基、4価の脂肪族炭化水素基などの4価の有機基を表す。また、R2は脂肪族基、環式脂肪族基、炭素環式芳香族基、複素環式基などの炭素数2以上の2価の有機基またはポリシロキサン基である。また、R1またはR2はハロゲン原子(例えばフッ素、塩素または臭素)もしくは炭素数1〜4のアルキレン基などの1個で置換されたものでもよい。
【0008】本発明の組成物に使用するポリアミド酸は、R1で示される4価の有機基を有するテトラカルボン酸二無水物とR2で示される2価の有機基を有するジアミンを反応させて得られる式(I)で示される構造単位を有するものである。
【0009】R1で示される4価の有機基を有するテトラカルボン酸二無水物の具体的な化合物を示すと、4価の芳香族基を有する芳香族テトラカルボン酸二無水物としてはピロメリット酸二無水物、3,3′,4,4′−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2′,3,3′−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3′,4′−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3′,4,4′−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2′,3,3′−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3′,4′−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビス−(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス−(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、1,2,5,6−ナフタリンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタリンテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフロロプロパン二無水物などが挙げられ、4価の脂環式炭化水素基を有する脂環式テトラカルボン酸二無水物としてはシクロブタンテトラカルボン酸二無水物、メチルシクロブタンテトラカルボン酸二無水物などが挙げられ、4価の脂肪炭化水素基を有する脂肪族テトラカルボン酸二無水物としては1,2,3,4−テトラカルボキシブタン二無水物など、4価の複素環式基を有する化合物としては、チオフェン−2,3,4,5−テトラカルボン酸二無水物、ピラジン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、ピリジン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物などの化合物を挙げることができる。しかし、必ずしもこれらの化合物に限定されるものではない。
【0010】R2で示される2価の有機基を有するジアミンの具体的な化合物を示すと、芳香族ジアミンとしては4,4′−ジアミノジフェニルエーテル、3,4′−ジアミノジフェニルエーテル、4,4′−ジアミノジフェニルメタン、4,4′−ジアミノジフェニルスルホン、4,4′−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4′−ジ(メタアミノフェノキシ)ジフェニルスルホン、4,4′−ジ(パラアミノフェノキシ)ジフェニルスルホン、オルトフェニレンジアミン、メタフェニレンジアミン、パラフェニレンジアミン、ベンジジン、3,3′−ジアミノベンゾフェノン、4,4′−ジアミノベンゾフェノン、4,4′−ジアミノジフェニル−2,2−プロパン、1,5−ジアミノナフタレン、1,8−ジアミノナフタレン、4,4′−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、2,2−ビス{4−(4−アミノフェノキシ)フェニル}ヘキサフロロプロパン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4′−ジアミノ−3,3′−ジエチル−5,5′−ジメチルジフェニルメタン、4,4′−ジアミノ−3,3′,5,5′−テトラメチルジフェニルメタン、1,4−ジアミノトルエン、メタキシリレンジアミン、2,2′−ジメチルベンジジンなどが挙げられ、脂肪族ジアミンとしてはトリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、2,11−ドデカンジアミンなどが挙げられ、シリコン系ジアミンとしてはビス(パラアミノフェノキ)ジメチルシラン、1,4−ビス(3−アミノプロピルジメチルシリル)ベンゼンなどが挙げられ、脂環式ジアミンとしては1,4−ジアミノシクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、イソフォロンジアミンなど、グアナミン類としてはアセトグアナミン、ベンゾグアナミンなどが挙げられる。しかし、必ずしもこれらの化合物に限定されるものではない。
【0011】また、R2で示される2価のポリシロキサン基を有するジアミノポリシロキサンとしては、次式(1)〜(9)
【化17】


【化18】


【化19】


【化20】


【化21】


【化22】


【化23】


【化24】


【化25】


(ただし、式中pは1〜100である)で示される化合物をあげることができる。しかし、これらの化合物に限定されるものではない。
【0012】本発明の組成物に用いるポリアミド酸の対数粘度数は製膜性の点から0.1〜5dl/gの範囲が望ましい。この対数粘度数とは式(III)
【数1】


(ここでη及びηoはウベローデ粘度計を使用し、温度30±0.01℃で測定した値である。ηは溶液、ηoは溶媒のみの測定値であり、Cは溶液濃度0.5g/dlである。)で表されるηinhのことである。
【0013】本発明の組成物に使用する前記一般式(II)で示されるエポキシ基を有するシリコン化合物は、一分子中にエポキシ基と加水分解性のアルコキシル基とを有することが必要である。具体的な化合物としては3−グリシドキシプロピルジイソプロピルエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルジイソプロピルメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルジn−プロピルメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルジn−プロピルエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルジメチルエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルジメチルメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルジメチルイソプロポキシシラン、3−グリシドキシプロピルジメチルn−プロポキシシラン、3−グリシドキシプロピルジエチルエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルジエチルメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルジエチルイソプロポキシシラン、3−グリシドキシプロピルジエチルn−プロポキシシラン、(3−グリシドキシプロピル)メチルジエトキシシラン、(3−グリシドキシプロピル)メチルジメトキシシラン、(3−グリシドキシプロピル)メチルジイソプロポキシシラン、(3−グリシドキシプロピル)メチルジn−プロポキシシラン、(3−グリシドキシプロピル)エチルジメトキシシラン、(3−グリシドキシプロピル)エチルジメトキシシラン、(3−グリシドキシプロピル)エチルジイソプロポキシシラン、(3−グリシドキシプロピル)エチルジn−プロポキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジイソプロペノキシシラン、3−グリシドキシプロピルエチルジイソプロペノキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリn−プロポキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシランなどを挙げることができるが、これらの化合物に限定されるものではない。
【0014】本発明の組成物における前記一般式(II)で示されるエポキシ基を有するシリコン化合物の組成物中の含有量は、前記ポリアミド酸100重量部に対して0.5〜30重量部、好ましくは3〜15重量部である。0.5重量部未満の場合は感光性を示さず、30重量部をこえる場合は感度が低くなる。
【0015】本発明の組成物で使用する光照射により酸を発生する化合物は、かかる性質を有するものとして公知の化合物類及びそれらの混合物、例えばアンモニウム塩、ジアゾニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、セレニウム塩、アルソニウム塩などの各種オニウム化合物類、フェニルトリハロメチルスルホン化合物類、ハロメチルトリアジン化合物類、ハロメチルオキサジアゾール化合物などの有機ハロゲン化合物類、1,2−ナフトキノンジアジド−(2)−4−スルホン酸のエステルもしくはアミド化合物類、ニトロベンジルアルコールのスルホン酸エステル化合物類、オキシムのスルホン酸エステル化合物類、N−ヒドロキシアミドまたはイミドのスルホン酸エステル化合物類、β−ケトスルホン系化合物類、ベンゾインのスルホン酸エステル化合物類などに属するものが広く適する。
【0016】これらの具体的な例としては以下の化合物を挙げることができる。すなわち、ジ(パラタ−シャリ−ブチルフェニル)ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ベンゼンジアゾニウムパラトルエンスルホネート、4−p−トリル−メルカプト−2,5−ジエトキシ−ベンゼンジアゾニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニルアミン−4−ジアゾニウムサルフェート、トリ(タ−シャリ−ブチルフェニル)スルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリフェニルセレニウムテトラフルオロボレート、オルトニトロベンジルパラトルエンスルホネート、ベンゾイントシレート、ベンゾインメタンスルホネート、ベンゾイントリフルオロメタンスルホネート、ベンゾイン−2−トリフルオロメタンベンゼンスルホネート、アニソイントシレート、アニソインメタンスルホネート、アニソイントリフルオロメタンスルホネート、アニソイン−2−トリフルオロメタンベンゼンスルホネート、1−ベンゾイル−1−メチルスルホニルオキシ−シクロヘキサン、2−[(p−トリルスルホニル)オキシ]−1−フェニル−1−オクタノン、2−[(β−ナフチルスルホニル)オキシ]−1−フェニル−1−プロパノン、2−[(p−アセトアミドフェニルスルホニル」オキシ]−1−フェニル−1−プロパノン、安息香酸アミドトシレート、安息香酸アミドメタンスルホネート、N−トシロキシフタルイミド、N−[(2−トリフルオロメタンベンゼンスルホニル)オキシ]フタルイミド、N−トシロキシ−1,8−ナフタルイミド、N−[(2−トリフルオロメタンベンゼンスルホニル)オキシ]−1,8−ナフタルイミド、N−トシロキシ−2,3−ジフェニルマレイミド、N−[(2−トリフルオロメタンベンゼンスルホニル)オキシ]−2,3−ジフェニルマレイミド、4−(ジ−n−プロピルアミノ)−ベンゾニウムテトラフルオロボレート、4−メチル−6−トリクロロメチル−2−ピロン、
【0017】4−(3,4,5−トリメトキシスチリル)−6−トリクロロメチル−2−ピロン、4−(4−メトキシスチリル)−6−(3,3,3−トリクロロ−プロペニル)−2−ピロン、2−トリクロロメチル−ベンズイミダゾール、2−トリブロモメチル−キノン、2,4−ジメチル−1−トリブロモアセチル−ベンゼン、4−ジブロモアセチル−安息香酸、1,4−ビス−ジブロモメチル−ベンゼン、トリス−ジブロモメチル−s−トリアジン、2−(6−メトキシナフチル−2−イル)−4,6−ビス−トリクロロメチル−s−トリアジン、2−(ナフチル−1−イル)−4,6−ビス−トリクロロメチル−s−トリアジン、2−(ナフチル−2−イル)−4,6−ビス−トリクロロメチル−s−トリアジン、2−(4−エトキシナフチル−1−イル)−4,6−ビス−トリクロロメチル−s−トリアジン、2−(ベンゾピラニル−3−イル)−4,6−ビス−トリクロロメチル−s−トリアジン、2−(4−メトキシアントラシ−1−イル)−4,6−ビス−トリクロロメチル−s−トリアジン、2−(フェネチル−9−イル)−4,6−ビス−トリクロロメチル−s−トリアジン、o−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、2−フェニル−5−トリクロロメチルオキサジアゾール、2−(p−メトキシフェニル)−5−トリクロロメチルオキサジアゾール、2−スチリル−5−トリクロロメチルオキサジアゾール、2−(n−ブチル)−5−トリクロロメチルオキサジアゾール、α−トリフルオロアセトフェノンオキシム−4−ヒドロキシベンゼンスルホネート、9−(4−ヒドロキシベンゼンスルホニルオキシイミノ)−フルオレン、9−(4−メタクリルアミドメチルベンゼンスルホニルオキシイミノ)−フルオレン、2−(4−メトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−S−トリアジン、2−(4−メトキシナフチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、ジフェニル(4−チオフェノキシフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、(4−メトキシフェニル)フェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、(4−メトキシフェニル)フェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、2,6−ジニトロベンジルトシレートなどを挙げることができる。しかし、これらの化合物に限定されるものではない。
【0018】光照射によって酸を発生する化合物の組成物中の含有量は、前記ポリアミド酸100重量部に対して0.5〜40重量部、好ましくは3〜20重量部である。0.5重量部未満の場合は感度が低く、40重量部をこえると、硬化後のポリイミドの膜質を低下させるので好ましくない。
【0019】本発明の感光性樹脂組成物においては、必要に応じて増感剤、染料、顔料、界面活性剤などを使用することもできる。
【0020】本発明の組成物に用いるポリアミド酸は、極性溶媒中、テトラカルボン酸二無水物とジアミンを温度0〜100℃、好ましくは10〜30℃で反応することにより得ることかできる。またポリアミド酸の分子量をコントロールすることを目的に一官能性の酸無水物またはアミンを添加して反応する。このポリアミド酸を得る反応成分であるテトラカルボン酸二無水物、ジアミンは前述のとおりである。一官能性の酸無水物やアミンとしては無水フタル酸、無水マレイン酸、アニリン、モノアリルアミンなどを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0021】好ましい溶媒の具体例として、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、テトラメチル尿素、ピリジン、ヘキサメチルホスホルアミド、メチルホルムアミド、N−アセチル−2−ピロリドン、2−メトキシエタノール、2−エトキシブタノール、2−ブトキシエタノール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、シクロペンタノン、クレゾール、γ−ブチロラクトン、イソホロン、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジメチルメトキシアセトアミド、テトラヒドロフラン、N−メチル−ε−カプロラクタム、テトラヒドロチオフェンジオキシド{スルフォラン(sulpholane)}などを挙げることができる。また、溶媒として上記有機溶媒を、他の非プロトン性(中性)有機溶媒、例えば、芳香族、脂環式もしくは脂肪族炭化水素、またはそれら(例えば、ベンゼン、トルエン、キシレンなど、シクロヘキサン、ペンタン、ヘキサン、石油エーテル、塩化メチレンなど)の塩素化誘導体またはアルコールやジオキサンなどで希釈したものを用いることもできる。
【0022】本発明の感光性樹脂組成物は、前記式(I)で示される構造単位を含むポリアミド酸に、前記式(II)で示されるエポキシ基を有するシリコン化合物と光照射により酸を発生する化合物とを配合することにより得ることができる。通常は溶液の状態で供される。
【0023】本発明の感光性樹脂組成物を用いたパターン化されたアミド酸及びポリイミドの形成方法について説明する。本発明の感光性樹脂組成物はスピンコート、浸漬、印刷、ディスペンスあるいはロールコーターなど公知の方法によりシリコンウエハー、金属板、プラスチック板、あるいはガラス板などの基板上に塗布する。得られた塗膜は電気炉あるいはホットプレートなどの加熱手段を用いて30〜110℃、より好ましくは60〜100℃の温度で数分〜数十分プリベークを行うことにより塗膜中の大部分の溶媒の除去する。この溶媒を除去した塗膜にネガマスクを置き、化学線を照射する。化学線としてはX線、電子線、紫外線、あるいは可視光線などが例として挙げられるが、紫外線または電子線が特に好適である。引き続き上記加熱手段により110〜190℃、より好ましくは120〜170℃で30秒〜15分間加熱を行う。
【0024】次いで露光部を現像液で溶解除去することによりポジ型のレリーフパターンを得る。ここで使用される現像液は反応溶媒の例として前述した有機溶媒またはこれにアルコール、キシレン、水などの貧溶媒を混合したものを使用することができる。次に必要によりアルコール、水などの貧溶媒中でリンスし、更に150℃以下の温度で乾燥を行う。またプリベーク後のいずれかの時点で基板からフィルムを剥し、単独のフィルムとして使用することも可能である。
【0025】現像により形成されたレリーフパターンのポリアミド酸はポリイミドの前駆体であるため、これを上記加熱手段により200〜500℃、好ましくは300〜400℃の温度で数分〜数十分加熱することにより、閉環してイミド化し、パターン化されたポリイミド膜を得る。
【0026】以上のようにして得るポジ型レリーフパターンはつぎのような反応で形成する。すなわち、マスクを通して光照射が行なわれると未露光部では、エポキシ基を有するシリコン化合物のエポキシ基は開環しないが、露光部では発生した酸によって、エポキシ基が開環する。この後、さらに熱を加えると未露光部ではポリアミド酸のカルボキシル基はエポキシ基を有するシリコン化合物のエポキシ基に付加するが、露光部ではエポキシ基は開環しているため、カルボキシル基との反応は起こらない。更に加熱中にシリコン化合物のアルコキシ基間の縮合も一部進行するため未露光部ではポリアミド酸のカルボキシル基を介した架橋構造が形成され、溶剤に対する溶解性が著しく減少するか、または不溶となる。このため、露光部と未露光部に溶剤に対する溶解性の差が生じ、露光部を溶剤で除去することによって、ポジ型のレリーフパターンを形成する。また、このようにして得たパターン化されたポリアミド酸や、更に加熱による脱水でイミド化した硬化物は、組成中に含まれるエポキシ基を有するシリコン化合物が基板との密着性にも寄与するため、基板との密着性に極めて優れており、そのためカップリング剤などによる基板処理を必要としない。
【0027】このようにして本発明の感光性樹脂組成物からパターン化されたポリイミド膜を得ることができる。本発明の感光性樹脂組成物は電子材料用途、特に半導体用の各種保護膜、平坦化膜、パッシベーション膜、バッファーコート膜、LSIメモリーのα線遮蔽膜、層間絶縁膜、プリント配線板の多層板の層間膜、液晶配向膜あるいはサーマルヘッドの蓄熱材などに適用可能である。
【0028】
【実施例】以下に実施例によって、本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によってなんら限定されるものではない。
【0029】合成例1(ポリアミド酸の合成1)
撹拌装置、滴下ロート、温度計、コンデンサー及び窒素置換装置を付した1リットルのフラスコを高温槽中に固定した。脱水精製した500gのN−メチル−2−ピロリドン(以下「NMP」と略記する。)、21.29g(0.1063モル)の4,4′−ジアミノジフェニルエーテル(以下「DDE」と略記する。)を投入し撹拌を続け溶解させた。この溶液に34.26g(0.1063モル)の3,4,3′,4′−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(以下「BTDA」と略記する。)を添加し、20〜30℃で8時間反応を行い濃度10.0重量%のポリアミド酸を得た。
【0030】合成例2(ポリアミド酸の合成2)
合成例1と同様の装置を用い、脱水精製した500gのNMP中に34.20g(0.1708モル)のDDEを投入し撹拌を続け溶解させた。この溶液に31.06g(0.1423モル)のピロメリット酸二無水物(以下「PMDA」と略記する。)と9.457g(0.0569モル)の無水フタル酸を添加し、20〜30℃で8時間反応を行い、末端に無水フタルが付加した濃度13.0重量%のポリアミド酸を得た。
【0031】合成例3(ポリアミド酸の合成3)
合成例1と同様の装置を用い、脱水精製した500gのNMP中に15.97g(0.1470モル)のパラフェニレンジアミン(以下「PDA」と略す。)と3.14g(0.0418モル)のアリルアミンを投入し撹拌を続け溶解させた。この溶液に49.21g(0.1672モル)の3,3′,4,4′−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(以下「BPDA」と略す。)を添加し、20〜30℃で8時間反応を行い、末端にアリルアミンの付加した濃度12.0重量%のポリアミド酸を得た。
【0032】合成例4〜5(ポリアミド酸の合成)
反応成分の量以外は、合成例1と同様の装置、溶媒および方法によって種々のポリアミド酸溶液を得た。表1中にはテトラカルボン酸二無水物、ジアミン、その他の反応成分のg数とモル数および溶液中のポリアミド酸濃度を合成例1、2、3と共に示した。
【0033】なお、表1に記載されている略号はつぎのとおりである。
テトラカルボン酸二無水物:BTDA:3,4,3′4′ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物PMDA:無水ピロメリット酸BPDA:3,4,3′4′−ビフェニルトラカルボン酸二無水物6FDA:2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフロロプロパン二無水物ODPA:ビス−(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物ジアミン:DDE:4,4′−ジアミノジフェニルエーテルPDA:パラフェニレンジアミンBAPS:4,4′−ジ(パラアミノフェノキシ)ジフェニルスルホンDDS:3,3′−ジアミノジフェニルスルホンAPDS:ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン溶媒:NMP:N−メチル−2−ピロリドン
【0034】
【表1】


【0035】実施例1合成例1で合成したポリアミド酸の溶液10.0gにエポキシ基を有するシリコン化合物(以下シリコン化合物と称す)として0.050gの3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(以下ES−1と略称する)と光照射によって酸を発生する化合物(以下光酸発生剤と略す)として0.150gの2−(4−メトキシスチリル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−S−トリアジン(以下、PA−1と称す)を添加して感光性樹脂組成物を調製した。この感光性樹脂組成物をシリコンウエハー上に回転塗布し、ホットプレート上で80℃で3分間の乾燥を行った。この時乾燥後の膜厚が約1〜2μmとなるように塗布時の回転を調整した。次に10μm角の穴開け用のパターンが描かれたポジ用のマスクを通し、超高圧水銀灯(9mW/cm2)で露光を行った。露光後、140℃のホットプレート上で2分間加熱し、NMP70重量部、イソプロピルアルコール30重量部の混合溶液で現像を行い、水でリンスした後乾燥した。このようにして10μm角の鮮明なパターンが得られた。これを150℃で30分間、さらに400℃で60分間焼成を行った。パターンの崩れは見られなかった。
【0036】実施例2〜7ポリアミド酸溶液、シリコン化合物、光酸発生剤を表2参照のごとく用いる以外は実施例1と同様にして感光性樹脂組成物を調製した。また露光条件を表2参照のごとく変える以外は実施例1と同様にしてパターン化および焼成を行った。何れもパターンの崩れは見られなかった。
【0037】表2に記載されているシリコン化合物の略号はつぎのとおりである。
ES−1:3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランES−2:(3−グリシドキシプロピル)メチルジエトキシシランES−3:2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランES−4:3−グリシドキシプロピルジイソプロピルエトキシシランまた、同じく光酸発生剤の略号はつぎのとおりである。
PA−1:2−(4−メトキシスチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−S−トリアジン
【化26】


PA−2:2−(4−メトキシナフチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−S−トリアジン
【化27】


PA−3:ジフェニル(4−チオフェノキシフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート
【化28】


PA−4:(4−メトキシフェニル)フェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート
【化29】


PA−5:ベンゾイントシレート
【化30】


PA−6:2,6−ジニトロベンジルトシレート
【化31】


【0038】また、基板との密着性を確認するためマスクを使用しない以外は上述の実施例と同様の方法でシリコンウエハー上に硬化膜を形成せしめた後、その硬化膜に切り目を入れて一辺2mmの正方形100個の小片に細分し、その表面にセロハンテープを貼り付けて直ちに剥した。その時の剥がれた個数を数えることにより密着性の評価を行った。結果を表2に示した。
【0039】比較例1合成例1で合成したポリアミド酸溶液10gにシリコン化合物をいれない以外は実施例1と同様にして組成物を調製し、実施例1と同様の方法でパターン化を試みたが、現像中にポリアミド酸がすべて溶解して、パターンを得ることができなかった。
【0040】比較例2合成例1で合成したポリアミド酸溶液10gに光酸発生剤をいれない以外は実施例1と同様にして組成物を調製し、実施例1と同様の方法でパターン化を試みた。その結果、光を照射した部分も現像に使用した混合溶液に対して不溶化し、10μm角の穴開けはできなかった。
【0041】比較例3合成例1で合成したポリアミド酸溶液をシリコンウエハー上に実施例1と同様に回転塗布し、80℃で3分間乾燥した後150℃で30分間、さらに400℃で60分間焼成することによって、シリコンウエハー上に硬化膜を形成させた。これを実施例と同様の方法で密着性の評価を行った。結果を表2に示した。
【0042】実施例と比較例から本発明の感光性樹脂組成物は、基板との密着性に優れた感光材料であることがわかる。
【0043】
【表2】


【0044】
【発明の効果】本発明における感光性樹脂組成物は、容易に製造することができ、ポジ型の鮮明なレリーフパターンを形成することができ、基板との密着性に優れる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 下記一般式(I)
【化1】


で示される構造単位を含むポリアミド酸を100重量部、下記一般式(II)
【化2】


で示されるエポキシ基を有するシリコン化合物0.5〜30重量部、及び光照射により酸を発生する化合物0.5〜40重量部を含有することからなる感光性樹脂組成物、{ただし、式(I)においてR1は4価の有機基、R2は少なくとも2個の炭素原子を有する2価の有機基または2価のポリシロキサン基を表す、また式(II)においてZは
【化3】


【化4】


または
【化5】


であり、R3
【化6】


【化7】


もしくは
【化8】


(ただし、sは0〜4の整数、tは1〜4の整数を表す)であり、R4は独立に炭素数1〜6のアルキル基、R5は独立に炭素数1〜6の飽和または不飽和の炭化水素基を表し、1≦k≦3である。}。

【公開番号】特開平6−348016
【公開日】平成6年(1994)12月22日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平5−134357
【出願日】平成5年(1993)6月4日
【出願人】(000002071)チッソ株式会社 (658)