説明

感光材料処理装置

【課題】処理液循環、処理液温調、補充液の送液などを、安価に効率よく行う。
【解決手段】水洗液補充タンク136に蓄えられた水洗液を高圧洗浄ポンプ150の駆動により、補充パイプ146、洗浄パイプ148A、循環パイプ160、及び循環パイプ156Cを通して循環させるよう流路構成し、水洗槽56〜62の処理液を循環させるための循環パイプ116〜122と、上記の循環パイプ160の間に、循環パイプ160内の水流から受けた動力(流動力)を循環パイプ116〜122内の処理液に伝達する循環ポンプヘッド10D〜10Gを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処理液が貯留された処理槽内へフィルムやカラーペーパー等の感光材料を搬送することにより現像処理を行う感光材料処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ラボ等で使用される感光材料処理装置は、発色現像液、漂白定着液、水洗液等の処理液が貯留された複数の処理槽を備えており、この処理槽内へフィルムやカラーペーパー等の感光材料を搬送することで現像処理を行う。
【0003】
各槽の処理液は、感光材料を現像、定着、水洗処理することにより、その成分組成や貯留量が変化する。そのため、各処理槽には感光材料の処理量に応じて、補充槽から新しい処理液を補充し、処理液の成分組成や貯留量を一定に維持している。また、処理液の補充や、処理中の感光材料との接触などにより、処理液中に成分ばらつきが生じたり、温度が不均一になったりする。これを防止するために、各槽に処理液循環部を設けて、各処理液を循環させている(例えば、特許文献1、2参照)。この処理液循環(処理液温調)や補充液の送液には、マグネットポンプが一般的に用いられている。マグネットポンプは、マグネットカップリングを用いた電動ポンプであり、耐薬品性に優れていることから感光材料処理装置で広く使用されている。
【特許文献1】特許2004−77924号公報
【特許文献2】特許2004−109494号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のように各処理槽に専用のマグネットポンプを設けた構成では、処理槽の数だけマグネットポンプが必要となり、高価なマグネットポンプを複数設けることで装置コストが上昇してしまう。さらに、各槽の処理液循環を多数のマグネットポンプを用いて行うため、効率も悪い。
【0005】
また、発熱源となる複数のマグネットポンプの発熱によって装置内の温度が上昇し、これに伴い処理槽内の温度が制御温度より上昇する場合がある。そのため、温度制御を安定化するには装置を冷却するための排気ファンが必要となり、発熱源数に応じて必要数の排気ファンを設けると、装置内のスペースが占有されて装置全体が大型化し、また排気効率が低下する。さらに、マグネットポンプや排気ファンの数が多くなると、装置の組立性やメンテナンス性が悪化する問題もある。
【0006】
本発明は上記事実を考慮して、処理液循環、処理液温調、補充液の送液などを、安価に効率よく行うことができる感光材料処理装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために請求項1に記載の発明は、感光材料を処理するための処理液が貯留された処理槽と、前記処理槽に水を供給する又は処理槽に供給する水を循環させるための一次側流路と、前記一次側流路を通して前記水の供給又は循環を行う動力源と、前記処理槽の処理液を循環するための二次側流路と、前記一次側流路と前記二次側流路の間に設けられ、一次側流路を流動する水の流動力を二次側流路の処理液に伝達して処理液を流動させる動力伝達手段と、を有することを特徴としている。
【0008】
請求項1に記載の発明では、感光材料を処理するための現像液、定着液、水洗液等の処理液が貯留された処理槽に、ポンプ等の動力源の駆動により供給路となる一次側流路を通して水が供給される、又は、動力源の駆動により循環路となる一次側流路を通して水が循環される。この水には、例えば、現像液や定着液等が貯留された処理槽に加えられる加水、処理槽に設けられた感光材料の搬送ガイドや搬送ローラ等を洗浄するための洗浄水、水洗液が貯留された処理槽(水洗槽)に補充される補充水等が含まれる。
【0009】
上記動力源の駆動で一次側流路の水が流動すると、一次側流路と、循環路となる二次側流路の間に設けられた動力伝達手段によって、一次側流路を流動する水の流動力が二次側流路の処理液に伝達され、処理液は流動する。そして処理槽の処理液は二次側流路を通して循環し、成分組成や温度が一定に保たれる。
【0010】
このように、二次側流路に処理液循環用の動力源等を設けなくとも、一次側流路から二次側流路へ流動力を伝達する動力伝達手段を設けることで、処理槽の処理液を循環できるため、この感光材料処理装置では動力源の数を減らすことができる。また、例えば、複数の処理槽を備え、各処理槽にそれぞれ二次側流路(循環路)が設けられた構成では、各二次側流路と一次側流路との間にそれぞれ動力伝達手段を設けることにより、単一の動力源によって各処理槽の各処理液を循環させることもできる。
【0011】
これにより、動力源の削減とそれに伴う電気配線や制御系部品等の削減でコストが抑えられるとともに、少ない動力源にて効率の高い処理液循環を行うことができる。
【0012】
また、発熱源となる動力源の数が減少することで、装置内の温度上昇が抑えられ、処理槽内の温度を安定化する温度制御が容易となる。さらに、装置を冷却するための排気ファンの数も減少できるため、装置の小型化が可能となり、排気効率の低下も抑えられる。また、動力源と排気ファンの削減により、装置の組立性やメンテナンス性が良好なる。
【0013】
また、動力源と動力伝達手段の間は一次側流路のみで接続できるため、動力源及び動力伝達手段のレイアウトの自由度を向上することができる。
【0014】
請求項2に記載の発明は、感光材料を処理するための処理液が貯留された処理槽と、前記処理槽に水を供給する又は処理槽に供給する水を循環させるための一次側流路と、前記一次側流路を通して前記水の供給又は循環を行う動力源と、前記処理槽に処理液を補充するための二次側流路と、前記一次側流路と前記二次側流路の間に設けられ、一次側流路を流動する水の流動力を二次側流路の処理液に伝達して処理液を流動させる動力伝達手段と、を有することを特徴としている。
【0015】
請求項2に記載の発明では、動力源の駆動で一次側流路の水が流動すると、一次側流路と、補充路となる二次側流路の間に設けられた動力伝達手段によって、一次側流路を流動する水の流動力が二次側流路の処理液に伝達され、処理液は流動する。そして処理槽には処理液が二次側流路を通して補充され、処理槽内の処理液の成分組成や貯留量が一定に保たれる。
【0016】
このように、二次側流路に処理液補充用の動力源等を設けなくとも、一次側流路から二次側流路へ流動力を伝達する動力伝達手段を設けることで、処理槽に処理液が補充できる。これにより、請求項1に記載の発明と同様に、動力源数及び部品点数の削減によるコストダウン効果、少ない動力源にて処理液補充が可能となることによる高効率化、装置内の温度上昇抑制効果及び処理液温調の高効率化、装置大型化の抑制効果、装置の組立性やメンテナンス性の向上効果、動力源及び動力伝達手段のレイアウト自由度の向上効果が得られる。
【0017】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2記載の感光材料処理装置において、前記動力伝達手段は、前記一次側流路の途中に接続される第1の液室と、前記第1の液室内に設けられ、その第1の液室内を流動する水によって回転される第1の羽根車と、前記第1の液室と隔壁を介して隔てられ、前記二次側流路の途中に接続される第2の液室と、前記隔壁を通し前記第1の羽根車に連結されて前記第2の液室内に設けられ、第1の羽根車に連動回転して第2の液室内の処理液を流動させる第2の羽根車と、を有するポンプヘッドであることを特徴としている。
【0018】
請求項3に記載の発明では、一次側流路の途中に接続されたポンプヘッドの第1の液室において、液室内を水が流動すると、その流動力によって第1の羽根車が回転し、第1の液室と隔壁を介して隔てられた第2の液室では、隔壁を通し第1の羽根車に連結された第2の羽根車が、第1の羽根車に連動して回転する。この第2の羽根車の回転によって、二次側流路の途中に接続された第2の液室内の処理液が流動し、二次側流路を通した処理液循環や処理液補充が行われる。
【0019】
このようなポンプヘッドによって、一次側流路から二次側流路へ流動力を伝達する動力伝達手段を簡単な構成により実現することができる。
【0020】
請求項4に記載の発明は、請求項3記載の感光材料処理装置において、前記一次側流路を流動する水は、前記処理液の一種である前記感光材料を水洗処理するための水洗液が貯留された処理槽に補充される補充水とされ、前記一次側流路内の水圧は、前記二次側流路内の液圧よりも高くされていることを特徴としている。
【0021】
請求項4に記載の発明では、処理液の一種である、感光材料を水洗処理するための水洗液が貯留された処理槽(水洗槽)に、一次側流路を通して補充水が補充される。ここで、仮にポンプヘッドの第1の液室と第2の液室の間のシール部等で液漏れが発生した場合、一次側流路内の水圧が二次側流路内の液圧よりも高いことで、第1の液室内の補充水が第2の液室内に漏れる。そのため、第2の液室内から第1の液室内に処理液が漏れ、異なる種類の処理液が貯留された他の処理槽に供給されることを防止できる。
【0022】
また、上記のように処理液に補充水が混じっても、これは従来から行われている、処理液の蒸発量に応じて処理槽に水を加える蒸発補正の加水と同じであるため、感光材料の処理に対する悪影響は抑えられる。また、この補充水の漏れ量を管理することにより、感光材料処理装置の状態(処理槽内の処理液の濃度等)を良好に保つことができる。
【0023】
請求項5に記載の発明は、請求項3又は請求項4記載の感光材料処理装置において、前記ポンプヘッドは、前記第1の羽根車がインペラであり、前記第2の羽根車がギヤポンプ用ギヤであることを特徴としている。
【0024】
請求項5に記載の発明では、水の流動力(流動エネルギー)を回転力(回転エネルギー)に変換する第1の羽根車をインペラ(回転羽根)とすることにより、エネルギー変換ロスが抑えられ、高効率でのエネルギー変換が可能となる。また、回転力を処理液の流動力に変換する第2の羽根車をギヤポンプ用ギヤとすることにより、例えば、動力源からの水流を電磁弁等の流量制御弁にて制御し、二次側のギヤポンプ用ギヤの回転を制御することによって、処理槽に補充する補充液量の制御(微調整)が可能となる。
【発明の効果】
【0025】
本発明の感光材料処理装置によれば、処理液循環、処理液温調、補充液の送液などを、安価に効率よく行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、図面を参照して本発明の実施形態に係る感光材料処理装置と、感光材料処理装置の処理液循環流路及び補充流路に用いられるポンプヘッドについて説明する。
【0027】
図1及び図2に示すように、本実施形態のポンプヘッド10は、2分割構成とされた一対のハウジング12(12A,12B)を備えており、仕切板14を間に挟んで組み合わせられたこの一対のハウジング12内に、1本の回転軸16に取り付けられたインペラ18及びギヤポンプ用ギヤ19からなる2つの羽根車が収容されている。
【0028】
ハウジング12は、片面が塞がれた浅い円筒状とされ、外周面にフランジ20が形成されている。フランジ20の外周面には、給液管22と排液管24が設けられており、これらの給液管22及び排液管24はハウジング12内の空洞部を介して連通されている。またフランジ20の内側面には、円周状の周溝26が形成されており、周溝26には、シールパッキンとしてのOリング28が嵌め入れられている。
【0029】
このハウジング12は、互いに開口面側を対向させてそれらの間に円板状の仕切板14を挟み、各々同心状に位置合わせされ、フランジ20に形成された複数の取付孔30に図示しないネジがそれぞれ挿入されてネジ止め固定されている。この組立状態で、一対のハウジング12内には、仕切板14によって仕切られた2つの液室30(30A,30B)が構成され、これらの液室30は、Oリング28が仕切板14に密着することで液密性が保たれている。
【0030】
ハウジング12の筒底面における中心部には、円孔部32が形成されており、円孔部32には、円筒状の滑り軸受34が嵌め入れられている。また、仕切板14の中心部には、貫通孔36が形成されており、貫通孔36には軸シール38が嵌め入れられている。
【0031】
回転軸16は、この軸シール38に挿通されて軸方向の中央部40が軸シール38に摺動回転自在に密接するとともに、先端部42が滑り軸受34に摺動回転自在に挿入されており、図2に示すように、仕切板14を貫通しつつ一対のハウジング12に滑り軸受34を介して回転自在に組み付けられている。また、仕切板14の貫通孔36部分における2つの液室30の液密性は軸シール38によって保たれている。
【0032】
また本実施形態では、軸シール38は(株)伊藤産業製の「TRD回転軸封システム」を用いている。このTRD回転軸封システムは、回転軸16に軸径よりも小さい穴径のフランジ付きブッシングを差し込んで回転軸表面とブッシングの間の液漏れを防止するとともに、ブッシングが外周面を仕切板14の貫通孔36内周面に強く接触させつつ、回転軸16と共転することで流体をシールする構造となっている。
【0033】
回転軸16の中央部40と先端部42の間に設けられた2箇所の中間部44は、2つの液室30内にそれぞれ配置されている。インペラ18とギヤポンプ用ギヤ192は、この回転軸16の2箇所の中間部44に外挿され固定されて各液室30内にそれぞれ収容されており、一方(例えばインペラ18)が回転すると、回転軸16を介して他方(例えばギヤポンプ用ギヤ19)が連動回転する。また、図1に示すように、インペラ18には、中央部側から外周側へ放射状に伸びる例えば8枚の羽根46が形成されている。
【0034】
ポンプヘッド10は以上の構成とされており、このポンプヘッド10を一次側及び二次側の液体流路間に接続する際は、インペラ18側を一次側、ギヤポンプ用ギヤ19側を二次側とし、一次側の給液管22Aの先端に形成された給液口23を一次側流路の途中の上流側配管に接続し、一次側の排液管24の先端に形成された排液口25を一次側流路の途中の下流側配管に接続する。また、二次側の給液管22Bの給液口23を二次側流路の途中の上流側配管に接続し、二次側の排液管24の排液口25を二次側流路の途中の下流側配管に接続する。
【0035】
これにより、一次側流路で液体が上流側から下流側へ流動すると、一次側の給液管22Aから液室30A内へ流入した液体が一次側の排液管24から流出し、その流動圧力でインペラ18が回転する(図1の矢印A方向)。このインペラ18の回転に連動してギヤポンプ用ギヤ19が回転し、液室30B内の液体が二次側の排液管24から流出する。これに伴い、二次側の給液管22Bから液室30B内へ液体が流入し、二次側流路の液体が上流側から下流側へ流動する。
【0036】
このように、本実施形態のポンプヘッド10は、一次側流路を流動する液体の流動力が、連動回転する2つの羽根車(インペラ18及びギヤポンプ用ギヤ19)を介して二次側流路の液体に伝達されることにより、二次側流路の液体を流動させることができる。また、軸シール38を上述したTRD回転軸封システムで構成していることにより、軸シール部の高い液密性を確保しつつ回転負荷を小さくすることができている。これにより、二次側の動力源が一次側の液流(水流)であっても、その動力を安価に効率よく伝達することができる。
【0037】
次に、上記のポンプヘッド10を処理液の循環流路や補充流路に用いた本実施形態に係る感光材料処理装置について説明する。
【0038】
図3に示すように、感光材料処理装置50には、発色現像液51が貯留された現像槽52、漂白定着液53が貯留された定着槽54、及び、水洗液55がそれぞれ貯留された第1〜第4の水洗槽56,58,60,62が設けられており、水洗槽56〜62では、後浴側から前浴側へ水洗液55をオーバーフローさせて貯留するカスケード方式を採用している。
【0039】
現像槽52の上流側には、感光材料(カラーペーパー)70を現像槽52へ案内するガイドローラ72が設けられている。
【0040】
現像槽52、定着槽54の槽内には処理ラック74が配置され、それぞれ発色現像液51、漂白定着液53に漬浸されている。各処理ラック74には複数の搬送ローラ対75が設けられており、ガイドローラ72によって現像槽52へ案内された感光材料70は、これらの搬送ローラ対75に搬送されて現像槽52及び定着槽54の各処理液中を通過することにより現像処理される。
【0041】
また、現像槽52と定着槽54との間には、スクイズローラ76が設けられており、現像槽52から引き上げられた感光材料70は、スクイズローラ76に搬送されて後浴の定着槽54へ案内される。さらに、定着槽54と水洗槽56との間にはスクイズローラ78が配置されており、定着槽54から引き上げられた感光材料70は、スクイズローラ78に搬送されて後浴の第1水洗槽56へ案内される。
【0042】
各水洗槽56〜62を仕切る第1〜第3の隔壁80,82,84には、感光材料70を水中搬送可能とする搬送通路86が形成されている。この搬送通路86は、シール手段としてのブレード88により水密に仕切られており、感光材料70の通過は許容するが、水洗液55の通過は阻止する構成とされている。
【0043】
水洗槽56〜62には、ラック90〜96が挿入されており、これらラック90〜96には複数の搬送ローラ対98が設けられている。スクイズローラ78によって第1水洗槽56内へ案内された感光材料70は、これらの搬送ローラ対98に搬送されて各水洗槽56〜62の水洗液中を通過することにより水洗処理され、排出ローラ100により第4水洗槽62から引き上げられて図示しない乾燥部へ搬送される。
【0044】
第4水洗槽62の側方には、サブタンク62Aが設けられている。このサブタンク62Aと第4水洗槽62を仕切る隔壁102には流出口102Aが形成されており、また補充用の水洗液55が貯留された水洗液補充タンク136とサブタンク62Aとの間には、途中に補充ポンプ140Dを接続した補充パイプ146が配管されている。この補充ポンプ140Dにより、蒸発量や感光材料70の処理量に応じた所定量が水洗液55が水洗液補充タンク136から補充パイプ146を通してサブタンク62Aへ補充され、流出口102Aから第4水洗槽62へ流入する。
【0045】
水洗槽56〜62の隔壁80〜84には、流下開口80A〜84Aが形成されている。流下開口80A〜84Aの形成位置は、下流側のものが高く、上流側になるほど低く設定されており、これら流下開口80A〜84Aは、カスケード効率を高めるために、隣接するもの同士で一方は右側、他方は左側となるように交互に形成されている。そしてこの流下開口80A〜84Aを介してオーバーフロー水が前浴側の水洗槽に流下することにより、水洗槽56〜62に水洗液55が補充される。
【0046】
第1水洗槽56の側壁上部には、排水パイプ91の上端部に形成されたオーバーフロー口104が配置されている。このオーバーフロー口104の流下レベルは第1隔壁80の流下開口80Aの流下レベルよりも低く設定されており、第1水洗槽56の貯留水の水面がオーバーフロー口104の高さを超えると、水がオーバーフロー口104に流入し、排水パイプ106を通って排水タンク108に排出される。これにより、第1水洗槽56に貯留された水洗液55の水面高さが所定の範囲内に保たれるよう制御される。
【0047】
上述した感光材料処理装置50には、各処理槽52〜62において処理液(発色現像液51、漂白定着液53、水洗液55)を循環するための循環系、各処理槽52〜62に処理液を補充するための補充系、補充系の補充タンクに処理液を供給するための供給系、及び、各処理槽52〜62や供給系の処理液カートリッジを水洗するための洗浄系の各流路を構成するパイプと、動力源としてのポンプや流量制御用の電磁弁等が接続されるが、その流路構成を本実施形態と比較するために、先ず、従来の流路構成について説明する。 図8に示すように、従来の感光材料処理装置200における循環系の流路構成では、各処理槽52〜62にそれぞれ専用の循環パイプ112〜122が配管されており、各循環パイプ112〜122にはそれぞれ専用の電動機付き循環ポンプ(マグネットポンプ)124A,124B,124C,124D,124E,124Fが接続されている。また、現像槽52の循環パイプ112、定着槽54の循環パイプ114、及び第4水洗槽62の循環パイプ122には、個々に処理液の温度を一定に制御する必要から、1本パイプ型の鋳込みヒータ126A,126B,126Cが個別に設けられており、第1〜第3水洗槽56,58,60の循環パイプ116,118,120には、3本パイプ型の鋳込みヒータ128が共有されて設けられている。
【0048】
これにより、現像槽52に貯留された発色現像液51は、循環パイプ112を通し循環ポンプ124Aにより循環されて成分が均一にされるとともに、その循環過程で鋳込みヒータ126Aにより加熱されて温度が一定にされる。
【0049】
同様に、定着槽54に貯留された漂白定着液53は、循環パイプ114を通し循環ポンプ124Bにより循環されて成分が均一にされるとともに、その循環過程で鋳込みヒータ126Bにより加熱されて温度が一定にされる。
【0050】
また、第1〜第3水洗槽56,58,60に貯留された水洗液55は、循環パイプ116,118,120を通して循環ポンプ124C,124D,124Eにより循環されるとともに、その循環過程で鋳込みヒータ128に加熱され、成分濃度や温度のローカリゼーションの発生が抑制される。またここでは、一つの鋳込みヒータ128により第1〜第3水洗槽56,58,60の各水洗液55が効率よく温度制御される。
【0051】
さらに、第4水洗槽62に貯留された水洗液55は、循環パイプ122を通して循環ポンプ124Fにより循環されるとともに、その循環過程で鋳込みヒータ126Cに加熱され、成分濃度や温度のローカリゼーションの発生が抑制される。
【0052】
また、感光材料処理装置50は、各処理槽に補充する各処理液と、現像槽52及び定着槽54への加水と処理槽内の搬送ローラ対75,98等を自動洗浄するための水(水洗液)が蓄えられた補充タンクユニット130を備えている。
【0053】
従来の補充系の流路構成では、補充タンクユニット130の発色現像液補充タンク132と現像槽52との間、漂白液補充タンク134Aと定着槽54との間、定着液補充タンク134Bと定着槽54との間、水洗液補充タンク136と第4水洗槽62のサブタンク62Aとの間に、補充パイプ142,144A,144B,146が配管されており、各補充パイプ142〜146にはそれぞれ専用の電動機付き補充ポンプ(ベローズポンプ)140A,140B,140C,140Dが接続されている。
【0054】
補充パイプ146は、補充ポンプ140Dの上流側で、洗浄系の流路を構成する2本の洗浄パイプ148A,148Bへと分岐しており、その分岐部に、すなわち洗浄系の最上流部に電動機付き高圧洗浄ポンプ150が接続されている。そして従来の洗浄系では、一方の洗浄パイプ148Aが各処理槽52〜62の水洗用とされ、他方の洗浄パイプ148Bが、感光材料処理装置50に装填された処理液カートリッジ152の発色現像液ボトル153A、漂白液ボトル153B、及び定着液ボトル153Cの水洗用とされている。
【0055】
洗浄パイプ148A側では、下流部に設けられた各ノズルから各処理槽52〜56へ向けた加水時の希釈水、水洗時の洗浄水の噴射が電磁弁154A,154B,154C,154Dによって制御され、洗浄パイプ148B側では、下流部に設けられた各ノズルから処理液カートリッジ152の各ボトル153A〜153Cへ向けた洗浄水の噴射が電磁弁154E,154F,154Gによって制御される。
【0056】
また、処理液カートリッジ152の発色現像液ボトル153Aと補充タンクユニット130の発色現像液補充タンク132との間、漂白液ボトル153Bと漂白液補充タンク134Aとの間、定着液ボトル153Cと定着液補充タンク134Bとの間には、それぞれ給液パイプが配管されて(図8では3本の給液パイプを給液パイプ148Cで簡略的に示している)、供給系の流路が構成されており、処理液カートリッジ152の各ボトル153A〜153Cから補充タンクユニット130の各補充タンク132,134A,134B,136への各処理液の供給は、給液パイプに個別に設けられた電磁弁によって制御される(図8では3個の電磁弁を電磁弁154Hで簡略的に示している)。
【0057】
これにより、補充タンクユニット130の各補充タンク132,134A,134Bには、電磁弁154Hの開放によって、処理液カートリッジ152の各ボトル153A〜153Cから各処理液が供給される。さらに、高圧洗浄ポンプ150の駆動と電磁弁154E〜154Gの開放により、洗浄パイプ148Bの各ノズルから各ボトル153A〜153C内へ水洗液55が高圧噴射され、ボトル内が水洗される。これにより、ボトル内の残留液も無駄なく供給される。
【0058】
また、現像槽52では、蒸発量や感光材料70の処理量に応じた所定量の発色現像液51が補充ポンプ140Aの駆動で発色現像液補充タンク132から補充パイプ142を通し補充される。
【0059】
同様に、定着槽54では、蒸発量や感光材料70の処理量に応じた所定量の漂白定着液53が補充ポンプ140B,140Cの駆動で漂白液補充タンク134A及び定着液補充タンク134Bから補充パイプ144A,144Bを通し補充される。
【0060】
また、水洗槽56〜62では、前述したように、水洗液55が補充ポンプ140Dの駆動で水洗液補充タンク136から補充パイプ146を通し第4水洗槽62のサブタンク62Aに補充されることにより、水洗槽56〜62に補充される。
【0061】
さらに、現像槽52及び定着槽54では、高圧洗浄ポンプ150の駆動と電磁弁154A〜154Cの開放により、洗浄パイプ148Aの各ノズルから各槽内へ水洗液55が供給されて加水が行われる。
【0062】
また、感光材料処理装置50のメンテナンス等では、高圧洗浄ポンプ150の駆動と電磁弁154A〜154Dの開放により、洗浄パイプ148Aの各ノズルから洗浄用の水洗液55が高圧噴射され、各処理槽52〜62内の搬送ローラ対75,98等が自動洗浄される。
【0063】
以上が従来の流路構成であるが、このように各循環パイプ及び各補充パイプには、専用のポンプが設けられているため、前述したように、ポンプ数及び部品点数の増加によるコストアップ、多数のポンプにて処理液循環及び補充を行うことによる効率の低下、装置内の温度上昇及び処理液温調効率の低下、装置の大型化、及び、組立性やメンテナンス性の悪化等の問題があり、改善する必要がある。
【0064】
次に、本発明の実施形態に係る流路構成について説明する。
【0065】
(第1の実施形態)
図4に示すように、第1の実施形態では、従来の流路構成に対し補充系は、補充ポンプ140A,140B,140Cが本実施形態のポンプヘッド10により構成された補充ポンプヘッド10A,10B,10Cに置き換えられ、補充ポンプ140Dが取り除かれており、循環系は、循環ポンプ124C,124D,124E,124Fがポンプヘッド10により構成された循環ポンプヘッド10D,10E,10F,10Gに置き換えられている。
【0066】
高圧洗浄ポンプ150を介して補充パイプ146に接続された洗浄パイプ148Aの上流側では、途中から3本の補充系循環パイプ156A,156B,156Cが分岐している。循環パイプ156A,156Bは下流端が循環パイプ156Cにそれぞれ接続されて合流しており、循環パイプ156Cは下流端が水洗液補充タンク136に接続されている。これにより、本実施形態の補充系では、水洗液補充タンク136に対し、補充パイプ146、洗浄パイプ148A、及びこれらの循環パイプ156A〜156Cによって流路途中が3つに分岐する補充系循環流路(一次側流路)が構成されている。
【0067】
また、循環パイプ156Aには、補充ポンプヘッド10Aの一次側が接続され、補充ポンプヘッド10Aの二次側は補充パイプ142に接続されており、洗浄パイプ148Aから補充ポンプヘッド10Aの一次側への送水は、循環パイプ156Aの上流側に設けられた電磁弁154Iによって制御される。
【0068】
循環パイプ156Bには、補充ポンプヘッド10Bの一次側が接続され、補充ポンプヘッド10Bの二次側は補充パイプ144Aに接続されており、洗浄パイプ148Aから補充ポンプヘッド10Bの一次側への送水は、循環パイプ156Bの上流側に設けられた電磁弁154Jによって制御される。
【0069】
循環パイプ156Cには、補充ポンプヘッド10Cの一次側が接続され、補充ポンプヘッド10Cの二次側は補充パイプ144Bに接続されており、洗浄パイプ148Aから補充ポンプヘッド10Cの一次側への送水は、循環パイプ156Cの上流側に設けられた電磁弁154Kによって制御される。
【0070】
洗浄系では、洗浄パイプ148Aにおける電磁弁154A〜154Dよりも下流側に、洗浄パイプ148Aから分岐して第4水洗槽62のサブタンク62Aに接続された補充パイプ158が配管されており、洗浄パイプ148Aからサブタンク62Aへの送水(水洗液55の補充)は、補充パイプ158に設けられた電磁弁154Lによって制御される。
【0071】
また、洗浄パイプ148Aの最下流部には、処理液カートリッジ152から補充タンクユニット130へ各処理液を供給するとともに、各ボトル153A〜153Cを水洗するための従来と同じ供給系の流路が構成されており、さらに供給系の上流側から循環パイプ160が分岐している。
【0072】
循環パイプ160は、下流端が循環パイプ156Cの途中に接続されて合流しており、他方の循環パイプ160Bは、下流端が発色現像液補充タンク132に接続されている。これにより、洗浄パイプ148Aの下流側では、洗浄パイプ148Aから循環パイプ160及び循環パイプ156Cを介して水洗液補充タンク136に至る洗浄系循環流路(一次側流路)が構成されている。
【0073】
この循環パイプ160には、循環ポンプヘッド10D〜10Gの一次側がそれぞれ接続され、循環ポンプヘッド10D〜10Gの二次側は水洗槽56〜62の循環パイプ116〜122にそれぞれ接続されており、洗浄パイプ148Aから各循環ポンプヘッド10D〜10Gの一次側への送水は、循環パイプ160の上流側に設けられた電磁弁154Mによって制御される。 また、高圧洗浄ポンプ150によって送水される循環パイプ156A〜156C内の水圧は、補充パイプ142,144A,144B内の液圧よりも高くされており、同じく、循環パイプ160内の水圧は、循環パイプ116〜122内の液圧よりも高くされている。
【0074】
以上が本実施形態の流路構成であり、この感光材料処理装置50では、露光済みの感光材料70が各処理槽52〜62を順次通過することにより、発色現像、漂白定着、水洗の各処理が行われる。水洗処理された感光材料70は乾燥部で乾燥された後に排出され、プリント写真となる。
【0075】
また、従来と同様の供給系により、処理液カートリッジ152から補充タンクユニット130に各処理液が供給される。さらに、高圧洗浄ポンプ150の駆動と電磁弁154E〜154Gの開放により、洗浄パイプ148Aの最下流部に設けられた各ノズルから処理液カートリッジ152の各ボトル153A〜153C内へ水洗液55が高圧噴射されることにより、ボトル内が水洗されて残留液も供給される。 また、高圧洗浄ポンプ150の駆動と電磁弁154A〜154D,154Lの開放により、補充パイプ146、洗浄パイプ148A、及び補充パイプ158を通して水洗液55が各処理槽52〜62に供給されることで、水洗槽56〜62への水洗液補充、現像槽52及び定着槽54への加水、各処理槽52〜62内の搬送ローラ対75,98等の自動洗浄が行われる。
【0076】
また、各処理槽52〜62への水洗液供給とは独立して、高圧洗浄ポンプ150の駆動と電磁弁154Mの開放により、一次側の洗浄系循環流路(循環流路補充パイプ146、洗浄パイプ148A、循環パイプ160、156C)を通した水洗液55の循環が可能であり、この水洗液循環を行うと、循環パイプ160を流動する水洗液55の流動力が循環ポンプヘッド10D〜10Gによって、二次側の循環パイプ116〜122の各水洗液55に伝達され、各循環パイプ内で水流が生じる。そして水洗槽56〜62内の水洗液55は、循環パイプ116〜122を通して循環し、従来の循環系と同様に、循環過程で鋳込みヒータ126C,128に加熱され、成分濃度や温度のローカリゼーションの発生が抑えられる。
【0077】
一方、補充系では、上記の洗浄系の水洗液循環とは独立して、高圧洗浄ポンプ150の駆動と電磁弁154I〜154Kの開放により、一次側の補充系循環流路(循環流路補充パイプ146、洗浄パイプ148A、循環パイプ156A〜156C)を通した水洗液55の循環が可能であり、この水洗液循環を行うと、循環パイプ156A〜156Cを流動する水洗液55の流動力が補充ポンプヘッド10A〜10Cによって、二次側の補充パイプ142,144A,144Bの各処理液(補充液)に伝達され、各補充パイプ内で液流が生じる。そして現像槽52及び定着槽54には各処理液が補充パイプ142,144A,144Bを通して補充され、従来の補充系と同様に、槽内の処理液の成分組成や貯留量が一定に保たれる。
【0078】
以上説明したように、本実施形態の感光材料処理装置50では、単一の高圧洗浄ポンプ150と複数のポンプヘッド10(補充ポンプヘッド10A〜10C及び循環ポンプヘッド10D〜10G)を用いた流路構成で、各処理槽52〜62への補充液の送液と、水洗槽56〜62での水洗液循環が行えるため、従来に比べ、電動機付きポンプの削減とそれに伴う電気配線や制御系部品等の削減で装置コストが抑えられる。さらに、少ない動力源にて効率の高い処理液補充と処理液循環を行うことができる。
【0079】
また、発熱源となる電動機付きポンプの数が減少することで、装置内の温度上昇が抑えられ、各処理槽52〜62内の温度を安定化する温度制御が容易となる。さらに、装置を冷却するための排気ファンの数も減少できるため、装置の大型化を抑制できるとともに、装置の組立性やメンテナンス性が良好なり、排気ファンの排気効率低下も抑えられる。
【0080】
また、高圧洗浄ポンプ150と各ポンプヘッド10A〜10Gの間は一次側流路のみで接続できるため、レイアウトの自由度を向上することができる。
【0081】
また、一次側流路から二次側流路へ流動力を伝達する動力伝達手段については、上述したポンプヘッド10によって簡単な構成により実現できている。
【0082】
さらに、このポンプヘッド10では、一次側の水流の流動エネルギーを回転エネルギーに変換する一次側の羽根車をインペラ18としたことにより、エネルギー変換ロスが抑えられ、高効率でのエネルギー変換が可能となる。また、回転エネルギーを処理液の流動エネルギーに変換する二次側の羽根車をギヤポンプ用ギヤ19としたことにより、高圧洗浄ポンプ150からの水流を電磁弁154I〜154Kにて制御し、補充ポンプヘッド10A〜10Cの二次側のギヤポンプ用ギヤ19の回転を制御することで、現像槽52及び定着槽54に補充する補充液量の制御(微調整)が可能となる。 また本実施形態では、仮に各ポンプヘッド10の一次側の液室30Aと二次次側の液室30の間のシール部(軸シール)で液漏れが発生したとしても、一次側流路内の水圧が二次側流路内の液圧よりも高いことにより、すなわち、循環パイプ156A〜156C内の水圧>補充パイプ142,144A,144B内の液圧、及び、循環パイプ160内の水圧>循環パイプ116〜122内の液圧であることにより、一次側の液室30Aの補充水が二次次側の液室30に漏れる。そのため、二次次側の液室30内から一次側の液室30A内に処理液が漏れ、異なる種類の処理液が貯留された他の処理槽に供給されることを防止できる。
【0083】
また、上記のように処理液に補充水が混じっても、これは従来から行われている、処理液の蒸発量に応じて現像槽52及び定着槽54に水を加える蒸発補正の加水と同じであるため、感光材料70の処理に対する悪影響は抑えられる。また、この補充水の漏れ量を管理することにより、感光材料処理装置50の状態(処理槽内の処理液の濃度等)を良好に保つことも可能である。
【0084】
(第2の実施形態) 上述した感光材料処理装置において、処理能力が大きい機種の場合、処理液の補充量が多くなるため、第1の実施形態の構成では処理量に対して水洗槽56〜62への補充水量が不足し、水洗槽56〜62の温調が追いつかないことも起こり得る。そこで、このように処理能力が大きい機種では、図5に示す第2の実施形態に係る感光材料処理装置170のように、第1の実施形態の構成に対して、例えば水洗液補充タンク136と第4水洗槽62の間に配管した補充パイプ146には個別に補充ポンプ140Dを設け、さらに、第4水洗槽62の循環系流路は従来と同様に構成して、循環パイプ122に循環ポンプ124Fを設けるようにする。
【0085】
これにより、この感光材料処理装置170では、補充ポンプ140Dの駆動で、第4水洗槽62を含む各水洗槽56〜62に十分な水量が補充できるとともに、循環ポンプ124Fの駆動で第4水洗槽62の水洗液循環が個別に行われるようになり、処理量に対する補充水量不足と循環不足を解消することができて、水洗槽56〜62の適切且つ安定した温度調整が可能となる。また、このように個別にポンプを設ける流路は、水洗槽62への補充パイプ146や循環パイプ122に限らず、現像槽52や定着槽54で、熱移動、処理液循環及び補充で不足が発生する場合には、それらの循環流路や補充流路に個別にポンプを設けてもよい。
【0086】
(第3の実施形態)
図7に示す第3の実施形態に係る感光材料処理装置180は、第1の実施形態の構成に対し、水洗槽56〜62の循環系に設けた循環ポンプヘッド10D〜10Gを、従来の循環ポンプ124C〜124Fに戻した構成である。 このように、感光材料処理装置180における処理液補充系の流路のみに補充ポンプヘッド10A〜10Cを設け、補充系のベローズポンプを全て廃止した本実施形態においても、それらの補充ポンプヘッド10A〜10Cと単一の高圧洗浄ポンプ150を用いた流路構成で、現像槽52及び定着槽54に補充液を送液できるため、第1の実施形態と同様に、電動機付きポンプ数及び部品点数の削減によるコストダウン効果、単一のポンプにて処理液補充が可能となることによる高効率化、装置大型化の抑制効果、装置の組立性やメンテナンス性の向上効果、動力源及び動力伝達手段のレイアウト自由度の向上効果が得られる。
【0087】
また、本実施形態とは逆に、第1の実施形態の構成に対して補充ポンプヘッド10A〜10Cを従来の補充ポンプ140A〜140Dに戻し、水洗槽56〜62の循環系の流路のみに循環ポンプヘッド(マグネットポンプ)10D〜10Gを設けるよう流路構成することも可能である。その場合にも、単一の高圧洗浄ポンプ150にて水洗槽56〜62の処理液循環が可能となることによる高効率化を含め、上記と同様の効果が得られる。
【0088】
(第4の実施形態)
第4の実施形態は、上述した第1の実施形態に対し、処理槽52〜62の各処理液の循環を単一の循環ポンプと複数の循環ポンプヘッドを用いて行う変形例である。 図8に示すように、本実施形態の感光材料処理装置190における処理槽52〜62では、第4水洗槽62の循環パイプ122のみに循環ポンプ124Fが設けられて一次側流路が構成されており、二次次側流路は、現像槽52の循環パイプ112、定着槽54の循環パイプ114、及び、第1〜第3水洗槽56〜60の循環パイプ116〜120によって構成されている。また、一次側の循環パイプ122と、二次側の循環パイプ112〜120との間には、循環ポンプヘッド10H,10I、及び、循環ポンプヘッド10D〜10Fが接続されており、現像槽52と定着槽54の循環パイプ112,114には、2本パイプ型の鋳込みヒータ192が共有されて設けられている。
【0089】
これにより、本実施形態の感光材料処理装置190では、単一の循環ポンプ124Fの駆動によって、全ての処理槽52〜62の処理液循環が行われる。このように、本実施形態では、電動機付きポンプは循環系と補充系で2台必要となるが、従来機の装置で用いられていた、循環用のマグネットポンプや補充用のベローズポンプを使用することなく、同等の機能を実現することができる。したがって、この構成においても、第1の実施形態と同様の効果が得られる。
【0090】
なお、ポンプヘッド10の各構成部品は例えば合成樹脂や金属などで構成されるが、上記の感光材料処理装置の処理液循環系や補充系に用いる場合には、各構成部品の材質は以下のものにすることが好ましい。
【0091】
ハウジング12、仕切板14は、感光材料処理液に対する耐薬品性を有する樹脂を用いる。例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリフェニレンオキサイド(PPO)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)などが用いられる。さらには、これら樹脂に対してガラス繊維を添加し、耐熱性、部品成形精度を向上させてもよい。
【0092】
Oリング28としては、感光材料処理液に対し耐薬品性を有するゴムが好ましく用いられる。例えば、シリコンゴム、EPDM、フッ素ゴムなどが挙げられる。
【0093】
滑り軸受34としては、感光材料処理液に対し耐薬品性を有し、摺動性向上を図った樹脂が好ましく用いられる。例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリフェニレンオキサイド(PPO)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)などに、フッ素などの固体潤滑材、あるいは炭素繊維のいずれか、または両方を添加した樹脂が挙げられる。
【0094】
回転軸16としては、感光材料処理液に対し耐薬品性を有し、摺動性向上を図った樹脂又はセラミックスが好ましく用いられる。また、耐磨耗性を付与するために表面硬度が高いほど好ましい。例えば、ポリフェニレンサルファイド(PPS)にフッ素等の固体潤滑材あるいは炭素繊維のいずれか、または両方を添加したものが挙げられる。 また、上述した感光材料処理装置の実施例として、循環ポンプ124A〜124Fは(株)イワキ製のマグネットポンプ(MD-6-NL、MD-10NL等)を使用し、補充ポンプ140A〜140Dは(株)イワキ製のベローズポンプ(KBR-3XAU1M等)を使用し、高圧洗浄ポンプ150は三相電機(株)製(PDH-051ID2等)を使用し、鋳込みヒータ126A,126B,126C,128,192は東立電機(株)製を使用し、電磁弁154A〜154Mは伸和コントロールズ(株)製(B423-804A等)を使用した。
【0095】
以上、本発明を上述した第1〜第4の実施形態により詳細に説明したが、本発明はそれらの実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の形態が実施可能である。
【0096】
例えば、処理槽の循環系流路に設ける循環ポンプヘッド(10D〜10G,10H,10I)については、処理槽の一部に形成して処理槽に一体化させるようにしてもよい。上述したように、二次側の動力源を一次側の水流に依存する場合は、電動機付きポンプで直接回転力(流動力)を伝える従来の構成に比べて、高い回転トルクが得にくくなり、低い回転トルクでも効率よく二次側を循環するためには、ポンプヘッドと処理槽の配管抵抗を極力小さくすることが好ましい。これに対し、上記のようにポンプヘッドを直接処理槽の一部に形成する構成であれば、配管抵抗を小さくすることができて循環効率を向上することができ、更に配管の省略に伴う流路構成の簡素化も実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】本発明の一実施形態に係るポンプヘッドの一方のハウジングを取り外した状態を示す正面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るポンプヘッドを示す縦断面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る感光材料処理装置を示す縦断面図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る感光材料処理装置の流路構成を示す概略構成図である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る感光材料処理装置の流路構成を示す概略構成図である。
【図6】本発明の第3の実施形態に係る感光材料処理装置の流路構成を示す概略構成図である。
【図7】本発明の第4の実施形態に係る感光材料処理装置の流路構成を示す概略構成図である。
【図8】従来の感光材料処理装置の流路構成を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0098】
10 ポンプヘッド(動力伝達手段)
10A〜10C 補充ポンプヘッド(動力伝達手段)
10D〜10I 循環ポンプヘッド(動力伝達手段)
14 仕切板(隔壁)
18 インペラ(第1の羽根車)
19 ギヤポンプ用ギヤ(第2の羽根車)
30 液室
30A 液室(第1の液室)
30B 液室(第2の液室)
50 感光材料処理装置
52 現像槽(処理槽)
51 発色現像液(処理液)
53 漂白定着液(処理液)
54 定着槽(処理槽)
55 水洗液(処理液)
56 第1水洗槽(処理槽)
58 第2水洗槽(処理槽)
60 第3水洗槽(処理槽)
62 第4水洗槽(処理槽)
70 感光材料
112 循環パイプ(二次側流路)
114 循環パイプ(二次側流路)
116 循環パイプ(二次側流路)
118 循環パイプ(二次側流路)
120 循環パイプ(二次側流路)
122 循環パイプ(二次側流路)
142 補充パイプ(二次側流路)
144A 補充パイプ(二次側流路)
144B 補充パイプ(二次側流路)
146 補充パイプ(一次側流路)
148A 洗浄パイプ(一次側流路)
150 高圧洗浄ポンプ(動力源)
156A 循環パイプ(一次側流路)
156B 循環パイプ(一次側流路)
156C 循環パイプ(一次側流路)
160 循環パイプ(一次側流路)
170 感光材料処理装置
180 感光材料処理装置
190 感光材料処理装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
感光材料を処理するための処理液が貯留された処理槽と、
前記処理槽に水を供給する又は処理槽に供給する水を循環させるための一次側流路と、
前記一次側流路を通して前記水の供給又は循環を行う動力源と、
前記処理槽の処理液を循環するための二次側流路と、
前記一次側流路と前記二次側流路の間に設けられ、一次側流路を流動する水の流動力を二次側流路の処理液に伝達して処理液を流動させる動力伝達手段と、
を有することを特徴とする感光材料処理装置。
【請求項2】
感光材料を処理するための処理液が貯留された処理槽と、
前記処理槽に水を供給する又は処理槽に供給する水を循環させるための一次側流路と、
前記一次側流路を通して前記水の供給又は循環を行う動力源と、
前記処理槽に処理液を補充するための二次側流路と、
前記一次側流路と前記二次側流路の間に設けられ、一次側流路を流動する水の流動力を二次側流路の処理液に伝達して処理液を流動させる動力伝達手段と、
を有することを特徴とする感光材料処理装置。
【請求項3】
前記動力伝達手段は、
前記一次側流路の途中に接続される第1の液室と、
前記第1の液室内に設けられ、その第1の液室内を流動する水によって回転される第1の羽根車と、
前記第1の液室と隔壁を介して隔てられ、前記二次側流路の途中に接続される第2の液室と、
前記隔壁を通し前記第1の羽根車に連結されて前記第2の液室内に設けられ、第1の羽根車に連動回転して第2の液室内の処理液を流動させる第2の羽根車と、
を有するポンプヘッドであることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の感光材料処理装置。
【請求項4】
前記一次側流路を流動する水は、前記処理液の一種である前記感光材料を水洗処理するための水洗液が貯留された処理槽に補充される補充水とされ、
前記一次側流路内の水圧は、前記二次側流路内の液圧よりも高くされていることを特徴とする請求項3記載の感光材料処理装置。
【請求項5】
前記ポンプヘッドは、前記第1の羽根車がインペラであり、前記第2の羽根車がギヤポンプ用ギヤであることを特徴とする請求項3又は請求項4記載の感光材料処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−114580(P2007−114580A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−307370(P2005−307370)
【出願日】平成17年10月21日(2005.10.21)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】