説明

感圧接着剤用組成物

【課題】 従来の光重合開始剤における硬化物の変色、臭気の発生、また、光重合開始剤またはその分解物がブリードすることによる衛生面での問題等がなく、十分な接着力、保持力及び凝集性を有する粘着剤を得ることが可能な活性エネルギー線硬化型感圧接着剤用組成物を提供する。
【解決手段】 重量平均分子量が1万〜100万であり、且つ分子量1万あたり0.005〜5個のラジカル重合性不飽和結合を有する基を側鎖に有するアクリル系共重合体(A)とマレイミド誘導体(B)を含有する活性エネルギー線硬化型感圧接着剤用組成物を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感圧接着剤用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
感圧接着シートは、部品を長期間にわたり強固に固定するため、基材上に設けられる感圧性接着剤層を、程度の違いはあるが、架橋処理している。架橋処理のための架橋剤としては、感圧性接着剤を基材に塗工する前の溶液段階で架橋反応が起こらないように、主に熱反応型の架橋剤を用いている。しかし、熱反応型の架橋剤を用いると、塗工後の短時間の乾燥工程だけでは、架橋反応を完結させにくい。架橋が完結しない状態で、巻き替え、切断の工程に導くと、切断後も感圧性接着剤の流動が起こり、経時とともに切断面に巻き巣といわれる空隙が発生し、外観が損なわれる。そこで、通常は、巻き替え、切断の工程に導く前のジャンボロ―ル(たとえば1,250mm幅の1,000m巻き)の状態で、常温ないし加温下、数日から2週間熟成して、架橋反応を促進している。しかし、このような熟成は、生産性を低下させる原因となる。
【0003】
一方、紫外線や可視光等の光により重合する光重合性樹脂は、硬化が速いという利点により、塗料、インキ、接着剤、コーティング剤等に広く利用されている。特に硬化後、直ちに重ねたり、巻き取ったりする等の工程がある製造工程では、早い硬化速度が必要であり、光重合性樹脂の利用が進められている。
【0004】
ところで、光重合性樹脂を使用した活性エネルギー線硬化型感圧接着剤用組成物には、一般的には、光重合開始剤が使用されている。しかしながら、光重合開始剤は、光を効率的に吸収するために、一般的に芳香環をもつ化合物が用いられており、これを用いた組成物は光または熱により黄変しやすい問題点がある。また光重合開始剤は、各種のラジカル重合性単量体およびラジカル重合性オリゴマーに対する溶解性や、低分子量ラジカルを発生させてラジカル重合反応を効率的に開始させる必要性から、通常、低分子量化合物が使用されており、蒸気圧が低く、常温〜150℃の状態で、悪臭を発生するものが多い。また硬化物中に未反応の光重合開始剤、あるいは、光重合開始剤の分解物が残存すると、硬化物に光または熱が作用した際に、硬化物の変色(黄変)や悪臭が発生する。特に、硬化物から、未反応光重合開始剤等がブリードすると食品包装用途においては衛生面で問題である。
【0005】
このような光重合開始剤を含む活性エネルギー線硬化型感圧接着剤用組成物の欠点を改良するために、種々の技術が検討されている。例えば、光重合開始剤を使用しない技術として、少なくとも一つのラジカル重合性基と、分子内で最も低いC−H結合エネルギーが65〜75Kcal/molであるメチン基及び/又はメチレン基とを有するラジカル重合性単量体(a1)と、少なくとも一つのラジカル重合性基を有するラジカル重合性単量体(a2)とをラジカル(共)重合させて得られるラジカル(共)重合体(A)2〜98質量部と、少なくとも一つのラジカル重合性基を有するラジカル重合性単量体(B)98〜2質量部を含み、光重合開始剤を含まず、500mJ/cm2以下の紫外線照射量で硬化することを特徴とする光重合性樹脂組成物に関する技術が報告され、該組成物を粘着剤として利用可能であることが述べられている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
また、従来の光重合開始剤を使用する替わりに、マレイミド誘導体を使用する技術が報告されている。例えば、炭素原子と水素原子間の結合エネルギー(C−H結合エネルギー)が272〜314kJ/molである、少なくとも一つのメチン基又はメチレン基と、少なくとも一つのラジカル重合性基、及び少なくとも一つのウレタン結合を有するラジカル重合性化合物(A)及びマレイミド誘導体(B)を含有する活性エネルギー線硬化性樹脂組成物に関する技術が報告されている(例えば、特許文献2参照)。該特許文献には、該組成物を粘着剤として利用可能であることが述べられている。
【0007】
しかしながら、これらの従来技術では、光照射により十分な架橋が行われず、したがって、十分な接着力及び凝集性を有する粘着剤を得ることができなかった。
【特許文献1】特開平8−81526号公報(特許請求の範囲、第1段落)
【特許文献2】特開2003−40939号公報(特許請求の範囲、第1段落)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明の目的は、従来の光重合開始剤における上記問題、つまり、硬化物の変色や臭気の発生、また、光重合開始剤またはその分解物がブリードすることによる衛生面での問題等がなく、十分な接着力、保持力及び凝集性を有する粘着剤を得ることが可能な活性エネルギー線硬化型感圧接着剤用組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、この目的の為に鋭意研究した結果、分子中に特定量のラジカル重合性不飽和結合を有する基を導入した特定のアクリル系共重合体(A)とマレイミド誘導体(B)を含有する感圧接着剤用組成物に紫外線を照射することにより、光重合開始剤なしに、粘着性、保持力と凝集性のバランスした粘着剤が出来る事を見いだし、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、重量平均分子量が1万〜100万であり、且つ分子量1万あたり0.005〜5個のラジカル重合性不飽和結合を有する基を側鎖に有するアクリル系共重合体(A)とマレイミド誘導体(B)を含有する活性エネルギー線硬化型感圧接着剤用組成物を提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の活性エネルギー線硬化型感圧接着剤用組成物を用いることにより、従来の光重合開始剤を用いなくとも、十分な接着力、保持力及び凝集性を有する粘着剤を得ることが可能となる。また、従来の光重合開始剤を用いないため、硬化物の変色や臭気の発生、また、光重合開始剤またはその分解物がブリードすることによる衛生面での問題等が発生することがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に本発明を詳細に説明する。
尚、本明細書中で(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸又はメタクリル酸のことであり、アクリル酸又はメタクリル酸の誘導体についても同様である。
【0013】
(アクリル系共重合体(A)の構造)
本発明で使用するアクリル系共重合体(A)は、重量平均分子量が1万〜100万であり、且つ分子量1万あたり0.005〜5個のラジカル重合性不飽和結合を有する基を側鎖に有する樹脂である。アクリル系共重合体(A)の重量平均分子量は、好ましくは20万〜80万であり、40〜70万であることがより好ましい。また、ラジカル重合性不飽和結合を有する基の数は、分子量1万あたり、好ましくは0.01〜2個である。アクリル系共重合体(A)の重量分子量及びラジカル重合性不飽和結合を有する基の数が上記範囲であると、架橋により十分に分子量が上がり、結果として十分な接着力、保持力及び凝集力を得ることができる。更に、活性エネルギー線硬化型感圧接着剤用組成物の粘度を塗工に適した範囲にすることができる。
【0014】
また、従来の光重合開始剤のみを使用した場合、アクリル系共重合体(A)の重量平均分子量が1〜50万であると十分な凝集力が得られないが、本発明のごとくマレイミド誘導体(B)を用いると架橋性の向上が顕著に現れる。マレイミド誘導体(B)は、紫外線により、重合開始用ラジカルを発生し、併用するアクリル共重合体(A)に導入したラジカル重合性不飽和結合を有する基に作用して架橋(硬化)を行うと考えられるが、この架橋の効率が従来の光重合開始剤による架橋効率よりも優れている事が推測される。
【0015】
(アクリル系共重合体(A)の詳細)
本発明で使用するアクリル系共重合体(A)は、炭素数1〜12個のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル(A−1)と、これと共重合可能な官能基を有する単量体(A−2)とを必須成分とし、これに必要に応じて他の共重合可能な単量体(A−3)を加えて重合する。
【0016】
上記各単量体(A−1)、(A−2)及び必要に応じて添加する(A−3)の混合物を重合する方法としては特に限定されるものではないが、ラジカル溶液重合法、塊状重合法、懸濁重合法等を用いることができる。重合開始剤としては、特に限定はないが、アゾ化合物、過酸化物がラジカル重合開始剤として使われる。アゾ化合物としては、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)等が挙げられ、過酸化物としては過酸化ベンゾイル(BPO)、ジクミルパーオキシド等が挙げられる。各単量体(A−1)、(A−2)及び必要に応じて添加する(A−3)の反応終了後、単量体(A−2)が有する官能基と反応する官能基とラジカル重合性不飽和結合を有する基との両方を持った単量体(A−4)を添加し、単量体(A−2)の官能基と反応を行う。この反応は、後述するように、単量体(A−2)と単量体(A−4)の組み合わせにより異なるが、いずれも公知の方法で行うことが出来る。以上の工程を経て本発明で使用するアクリル系共重合体(A)を製造する。
【0017】
(単量体(A−1))
本発明に用いる炭素数1〜12個のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル(A−1)としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート等があり、より好ましくは、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレートを挙げる事が出来る。尚、これらの単量体は単独でも、2種類以上を併用しても良い。(A−1)成分の共重合比率は、60〜98質量%で、好ましくは、70〜95質量%である。60質量%未満では、粘着性が低下し、98質量%を越える場合は、粘着剤の凝集力が著しく低下することがある。
【0018】
(単量体(A−2))
次に、本発明に用いる官能基を有する単量体(A−2)の官能基としては、カルボキシル基、ヒドロキシル基、エポキシ基、アミノ基、イソシアネート基等が挙げられる。
【0019】
カルボキシル基を有する単量体としては、例えば(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸等が挙げられる。
ヒドロキシル基を有する単量体としては、例えば2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変成(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等が挙げられる。
エポキシ基を有する単量体としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アリルグリシジルエーテル等が挙げられる。
アミノ基を有する単量体としては、例えば、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
また、イソシアネート基を有する単量体としては、例えば、メタアクリルイソシアネート、2−メタアクリロイルオキシエチルイソシアネート、m−イソプロペニル−α,α’ジメチルベンジルイソシアネート等が挙げられる。
(A−2)成分の共重合比率は、アクリル系共重合体(A)の側鎖に導入するラジカル重合性不飽和結合の数と、同数(アクリル系共重合体(A)の分子量1万あたり0.005〜5個)または同数以上であってもよい。但し、(A−2)成分の共重合比率は40質量%未満であることが好ましい。40%以上を越えると粘着性が低下する可能性がある。これらの単量体(A−2)は、エポキシ基やイソシアネート基を有する単量体と、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アミノ基を有する単量体とを併用しないことが好ましい。これらの組み合わせ以外であれば、2種類以上を併用しても良い。
【0020】
(単量体(A−3))
次に、単量体(A−3)としては、例えば、酢酸ビニル、無水マレイン酸、スチレン、メチルビニルトルエン、エチルビニルトルエン、ブチルビニルトルエン、アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、アクリロイルモルホリン、ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジメチルアクリルアミド等、N−メチロール(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
尚、これらの単量体(A−3)は単独でも、2種類以上を併用しても良い。また(A−3)成分の共重合比率は、0〜40質量%で、好ましくは、30質量%以下である。40質量%以上共重合させると、粘着性が低下し、タックがなくなってしまうことがある。
【0021】
(単量体(A−4))
次に、単量体(A−4)としては、主鎖の製造に用いる単量体(A−2)の官能基により異なってくるが
1)単量体(A−2)がカルボキシル基を有する場合に使用する単量体(A−4)としては、エポキシ基を有する単量体であり、例えばグリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アリルグリシジルエーテル等が挙げられる。
2)単量体(A−2)がエポキシ基を有する場合に使用する単量体(A−4)としては、カルボキシル基を持つ単量体であり、例えば(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、等が挙げられる。
3)単量体(A−2)が水酸基を有する場合に使用する単量体(A−4)としては、例えば、メタアクリルイソシアネート、2−メタアクリロイルオキシエチルイソシアネート、m−イソプロペニル−α,α’ジメチルベンジルイソシアネート等のイソシアネート単量体、またはジイソシアネートと水酸基を有する単量体との1:1付加反応生成物(ハーフウレタン)を挙げることが出来る。ハーフウレタンの原料となるジイソシアネートとしては、例えばトリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられ、水酸基を有する単量体としては、例えば2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変成(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等が挙げられる。
4)単量体(A−2)がアミノ基を有する場合に使用する単量体(A−4)としては、上記の1)〜3)の場合の単量体の全てを挙げることが出来る。
5)単量体(A−2)がイソシアネート基を有する場合に使用する単量体(A−4)としては、水酸基を有する単量体であり、前項ハーフウレタンの原料に掲げた同じ単量体が挙げられる。
【0022】
以上の単量体(A−4)は、アクリル系共重合体(A)の分子量1万あたり0.005〜5個、好ましくは0.01〜2個のオレフィン濃度にコントロールする必要がある。0.005個以下では、凝集性が不足し保持力が十分に得られないことがあり、5個以上では硬くなりすぎ、タックが不足し、十分な粘着性を得られないことがある。
【0023】
(マレイミド誘導体)
次に、本発明で使用するマレイミド誘導体(B)としては、例えば、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−プロピルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−ヘキシルマレイミド、N−ラウリルマレイミド、2−マレイミドエチル−エチルカーボネート、2−マレイミドエチル−イソプロピルカーボネート、N−エチル−(2−マレイミドエチル)カーバメート、N−シクロヘキシルマレイミドの如き単官能脂肪族マレイミド類、
N−フェニルマレイミド、N−(2−メチルフェニル)マレイミド、N−(2−エチルフェニル)マレイミド、N−(2,6−ジエチルフェニル)マレイミド、N−(2−クロロフェニル)マレイミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)マレイミドの如き芳香族単官能マレイミド類、
N,N’−メチレンビスマレイミド、N,N’−エチレンビスマレイミド、N,N’−トリメチレンビスマレイミド、N,N’−ヘキサメチレンビスマレイミド、N,N’−ドデカメチレンビスマレイミド、ポリプロピレングリコール−ビス(3−マレイミドプロピル)エーテル、テトラエチレングリコール−ビス(3−マレイミドプロピル)エーテル、ビス(2−マレイミドエチル)カーボネート、1,4−ビス(マレイミド)シクロヘキサン、特開平11−292874号公報に開示されているトリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレートと脂肪族マレイミドカルボン酸とを脱水エステル化して得られるイソシアヌレート骨格のマレイミドエステル化合物、トリス(カーバメートヘキシル)イソシアヌレートと脂肪族マレイミドアルコールとをウレタン化して得られるイソシアヌレート骨格のマレイミドウレタン化合物等のイソシアヌル骨格ポリマレイミド類、米国特許第6034150号公報に開示されているイソホロンビスウレタンビス(N−エチルマレイミド)、トリエチレングリコールビス(マレイミドエチルカーボネート)、特開平11−124403号公報に開示されている脂肪族マレイミドカルボン酸と各種脂肪族ポリオールとを脱水エステル化、又は脂肪族マレイミドカルボン酸エステルと各種脂肪族ポリオールとをエステル交換反応して得られる脂肪族ポリマレイミドエステル化合物類、特開平11−124403号公報に開示されている脂肪族マレイミドカルボン酸と各種脂肪族ポリエポキシドとをエーテル開環反応して得られる脂肪族ポリマレイミドエステル化合物類、特開平11−124404号公報に開示されている脂肪族マレイミドアルコールと各種脂肪族ポリイソシアネートとのウレタン化反応して得られる脂肪族ポリマレイミドウレタン化合物類の如き脂肪族多官能マレイミド類、
N,N’−(4,4’−ジフェニルメタン)ビスマレイミド、N,N’−(4,4’−ジフェニルオキシ)ビスマレイミド、N,N’−p−フェニレンビスマレイミド、N,N’−m−フェニレンビスマレイミド、N,N’−2,4−トリレンビスマレイミド、N,N’−2,6−トリレンビスマレイミド、特開平11−124403号公報に開示されているマレイミドカルボン酸と各種芳香族ポリオールとを脱水エステル化、又はマレイミドカルボン酸エステルと各種芳香族ポリオールとをエステル交換反応して得られる芳香族ポリマレイミドエステル化合物類、特開平11−124403号公報に開示されているマレイミドカルボン酸と各種芳香族ポリエポキシドとをエーテル開環反応して得られる芳香族ポリマレイミドエステル化合物類、特開平11−124404号公報に開示されているマレイミドアルコールと各種芳香族ポリイソシアネートとのウレタン化反応して得られる芳香族ポリマレイミドウレタン化合物類の如き芳香族多官能マレイミド類、
等が挙げられるが、これらに限定されるものではなく、特開平11−302278号公報に開示されているマレイミドカルボン酸とテトラヒドロフルフリルアルコールとを反応して得られる単官能マレイミド類も使用できる。
【0024】
(好ましい多官能マレイミド誘導体)
上記のマレイミド誘導体のなかでも、脂肪族多官能マレイミド類は、硬化速度が速く、得られる硬化塗膜の物性に優れるため好ましい。特に、アルキル鎖長が炭素数1〜6のマレイミドアルキルカルボン酸と、数平均分子量100〜1000のポリエチレングリコール、数平均分子量100〜1000のポリプロピレングリコール及び数平均分子量100〜1000のポリテトラメチレングリコールから選択される1種以上を脱水エステル化、又はアルキル鎖長が1〜6のマレイミドアルキルカルボン酸エステルと、数平均分子量100〜1000のポリエチレングリコール、数平均分子量100〜1000のポリプロピレングリコール及び数平均分子量100〜1000のポリテトラメチレングリコールから選択される1種以上をエステル交換反応して得られる式(1)、又は式(2)で表される脂肪族ビスマレイミド化合物は、硬化速度と塗膜物性とのバランスに優れるため好ましい。
【0025】
【化1】

(1)
(式中、Rは水素原子又はメチル基を表し、mは1〜6の整数、nは2〜23の整数を表す。)
【0026】
【化2】

(2)
(式中、mは1〜6の整数、pは2〜14の整数を表す。)
本発明のマレイミド誘導体(B)の使用量は、アクリル共重合体(A)100質量部に対し0.1〜20質量部使用することができるが、好ましくは1〜10質量部である。
【0027】
また、本発明の活性エネルギー線硬化型感圧接着剤用組成物には、必須成分である、上記のアクリル系共重合体(A)及びマレイミド誘導体(B)以外に、本発明の目的性能を阻害しない範囲において、その他のラジカル重合性化合物(C)、粘着付与樹脂(D)等の改質剤を添加する事が出来る。更に、必要に応じ、一般にUV塗料等に添加可能なその他各種添加剤(E)を添加することもできる。
【0028】
(その他のラジカル重合性化合物(C))
その他のラジカル重合性化合物(C)は、架橋度合いを調節する物として添加する事が出来る。単官能の化合物の添加により、過架橋を防止する事が出来る。多官能の化合物の添加では架橋性を上げることができる。単官能のラジカル重合性化合物としては、例えば、前記(A−1)に挙げた物を挙げることができる。多官能のラジカル重合性化合物としては、例えば、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、その他エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート等を挙げることができる。
【0029】
(粘着付与樹脂(D))
粘着付与樹脂(D)としては、キシレン樹脂、ケトン樹脂、石油樹脂、ロジン樹脂、テルペン樹脂、クマロンインデン樹脂、フェノール樹脂等がある。特に、部分不均化又は不均化ロジン、水添ロジン、マレイン酸変性ロジン、重合ロジン、ホルムアルデヒド変性ロジン、ロジンとペンタエリスリトール等のアルコールとの反応したエステル化ロジン等のロジン及びロジン誘導体と、テルペン及びテルペン誘導体が有効である。ロジン及びロジン誘導体と、テルペン及びテルペン誘導体は、粘着力、保持力を上げるためには、軟化点が100℃以上のものが良く、5〜40質量%加えると有効である。
【0030】
(添加剤(E))
その他各種添加剤(E)としては、例えば光重合開始剤、熱重合開始剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、ラジカル重合禁止剤、シランカップリング剤、光安定剤、可塑剤、無機充填剤、有機充填剤、熱安定剤、脱水剤、着色剤、防菌・防カビ剤、難燃剤、消泡剤、レベリング剤、湿潤・分散剤、沈降防止剤、増粘剤・タレ防止剤、乳化剤、防曇剤、滑剤、防汚剤、帯電防止剤、導電剤等を挙げることが出来るが、これらに限定される物ではない。
【0031】
(塗工方法)
本発明の感圧接着剤組成物の形態、及び塗工方法としては、特に限定はなく、無溶剤であっても溶剤を含んでいても良い。塗工時に加温や加熱または溶剤等による希釈によって、剥離紙、剥離フィルムあるいは各種基材に塗工可能な、所定の粘度にコントロールし、リバースロールコーター、ナイフコーター、キスコーター、リバースグラビアコーター、バーコーター、カーテンコーター、ダイコーター等を使用し塗工を行うと良い。更に塗工後、必要に応じて乾燥、冷却等の工程を経て製膜しても良い。
【0032】
(UV等照射)
本発明の活性エネルギー線硬化型感圧接着剤用樹脂組成物は塗工、製膜後、紫外線や電子線等の活性エネルギー線を照射することにより、架橋を行わせることができる。紫外線の場合は、波長360nmでの照射強度が0.1〜100mW/cm2の光源を用い、積算の照射量が50〜2,000mJ/cm2になるように照射するのが好ましい。電子線を用いる場合、1〜10Mradで照射するのが好ましい。
【実施例】
【0033】
以下、実施例及び比較例によって本発明を更に具体的に説明する。もとより、本発明は、これらの例に限定されるものではない。尚、以下に表示する部は質量部である。
【0034】
(合成例1)
n−ブチルアクリレート523.6部、エチルアクリレート70部、酢酸ビニル70部、アクリル酸35部、2−ヒドロキシエチルアクリレート1.4部、メルカプトエタノール0.7部を混合し、この混合物の100部、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル1.4部、酢酸エチル240部、トルエン60部を攪拌機、冷却器、温度計、滴下漏斗のついたフラスコに仕込み75℃に加熱し重合を開始させた。次に75℃で残りの上記混合物600質量部を3時間かけて滴下し、さらに10時間保ち重合させ、アクリルベースポリマー溶液(以下ベースポリマー)を得た。これは不揮発分70質量%(120℃、1時間による加熱後の残分)、粘度12700mPa・s(BM型粘度計、(株)東京計器製)、
次に、このベースポリマー溶液500部に、メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(カレンズMOI 昭和電工(株)製)1.9部をフラスコに仕込み60℃で約8時間反応続けることによってアクリル系共重合体溶液を得た。重量平均分子量はゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC,東ソー(株)製)で測定した結果、11.9万であった。
【0035】
(合成例2)
n−ブチルアクリレート337.1部、エチルアクリレート45部、酢酸ビニル45部、アクリル酸22.5部、2−ヒドロキシエチルアクリレート0.5部を混合し、この混合物の100部、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル2.3部、酢酸エチル440部、トルエン110部を攪拌機、冷却器、温度計、滴下漏斗のついたフラスコに仕込み75℃に加熱し重合を開始させた。次に75℃で残りの上記混合物600質量部を3時間かけて滴下し、さらに10時間保ち重合させ、ベースポリマー溶液を得た。これは不揮発分45質量%、粘度1350mPa・sであった。
別の攪拌機、冷却器、温度計、滴下漏斗のついたフラスコにヘキサメチレンジイソシアネート168部および酢酸エチル85部仕込んで、撹拌しながら50℃まで昇温する。 次に2−ヒドロキシエチルアクリレート116部、P−ベンゾキノン0.1部よりなる混合液を2時間かけて滴下し、50℃で4時間反応を続ける事によりヘキサメチレンジイソシアネートと2−ヒドロキシエチルアクリレートのハーフウレタン溶液を得た。
次に、前記のベースポリマー溶液500部、ハーフウレタン溶液1.4部を攪拌機、冷却器、温度計のついたフラスコに仕込み60℃で約8時間反応続けることによってアクリル系共重合体溶液を得た。重量平均分子量は23.2万であった。
【0036】
(合成例3)
合成例2で、2,2’−アゾビスイソブチロニトリルを0.9部に変えた以外は同じにして重合を行い、ベースポリマー溶液を得た。これは不揮発分45質量%、粘度17100mPa・sであった。
次に、合成例1と同様に、このベースポリマー溶液500部に、メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(カレンズMOI 昭和電工(株)製)1.2部をフラスコに仕込み60℃で約8時間反応続けることによってアクリル系共重合体溶液を得た。重量平均分子量52.2万であった。
【0037】
(合成例4)
n−ブチルアクリレート337.5部、エチルアクリレート45部、酢酸ビニル45部、アクリル酸22.5部、2−ヒドロキシエチルアクリレート0.05部を混合し、この混合物の100部、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.5部、酢酸エチル440部、トルエン110部を攪拌機、冷却器、温度計、滴下漏斗のついたフラスコに仕込み75℃に加熱し重合を開始させた。次に75℃で残りの上記混合物450質量部を3時間かけて滴下し、さらに10時間保ち重合させ、ベースポリマー溶液を得た。これは不揮発分45質量%、粘度29800mPa・sであった。
次に、このベースポリマー溶液500部に、メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(カレンズMOI 昭和電工(株)製)0.12部をフラスコに仕込み60℃で約8時間反応続けることによってアクリル系共重合体溶液を得た。重量平均分子量79.8万であった。
【0038】
(合成例5)
合成例1と同様に、ベースポリマー(不揮発分70質量%、粘度12700mPa・s)を得た後、次に、このベースポリマー溶液500部に、メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(カレンズMOI 昭和電工(株)製)7.5部をフラスコに仕込み60℃で約8時間反応続けることによってアクリル系共重合体溶液を得た。重量平均分子量は11.9万であった。
【0039】
(合成例6)
合成例2と同様にベースポリマー、ハーフウレタンを合成した後、次に、合成例2と同様にこのベースポリマー溶液500部とハーフウレタン溶液5.7部を攪拌機、冷却器、温度計のついたフラスコに仕込み60℃で約8時間反応続けることによってアクリル系共重合体溶液を得た。重量平均分子量は23.2万であった。
以上の合成例1〜合成例6について、表1に一覧を記載した。
【0040】
(合成例7) 攪拌装置、温度計、ディーンスターク型分留器を備えた容量1Lのセパラブルフラスコに、数平均分子量250のポリテトラメチレングリコール(テラサン250、デュポン社製)125部(0.5モル)、マレイミド酢酸171部(1.1モル)、p−トルエンスルホン酸・1水和物12部、ヒドロキノン0.15部、トルエン200mlを仕込み、35kPa、80℃の条件で生成する水を除去しながら4時間攪拌して反応を終了した。反応混合物にトルエン200mlを加え、飽和炭酸水素ナトリウム100mlで3回、飽和食塩水100mlで2回洗浄した。得られた有機層を濃縮し、下記式(3)で表されるマレイミド誘導体(MIA)を得た。
【0041】
【化3】

(3)
【0042】
(実施例1)
合成例1のアクリル系共重合体溶液を100部と合成例7で合成したMIA、1.4部を攪拌機で十分に混合し感圧接着剤組成物を得た。
【0043】
(実施例2)〜(実施例8)
表2、表3、表4に記載の配合組成で実施例1と同様にして感圧接着剤組成物を得た。
【0044】
(実施例9)
合成例3のアクリル系共重合体溶液を100部、不均化ロジンエステル系樹脂A−100(荒川化学社製)を10質量部、重合ロジンエステル系樹脂D−135(荒川化学社製)を10質量部、合成例7で合成したMIA 0.9部を攪拌機で十分に混合し感圧接着剤組成物を得た。
【0045】
(実施例10)
合成例4のアクリル系共重合体溶液を100部、不均化ロジンエステル系樹脂A−100(荒川化学社製)を10質量部、重合ロジンエステル系樹脂D−135(荒川化学社製)を10質量部、合成例7で合成したMIA 0.9部を攪拌機で十分に混合し感圧接着剤組成物を得た。
【0046】
(比較例1)
合成例1のアクリル系共重合体溶液を100部とイルガキュア184(チバ・スペシャリティーケミカルズ社製)1.4部を、攪拌機で十分に混合し感圧接着剤組成物を得た。
【0047】
(比較例2)〜(比較例5)
表3、表4に記載の配合組成で比較例1と同様にして感圧接着剤組成物を得た。
以下、実施例1〜10、比較例1〜5で作製した感圧接着剤組成物について、下記により試験片を作製し評価試験を行った。
【0048】
(試験片の作製)
実施例の感圧接着剤組成物を、コロナ処理した厚さ25μmのポリエステルフィルム上に、塗工乾燥後の厚さが25μmになるように塗工し80℃で3分間乾燥後、剥離処理した厚さ75μmのポリエステルフィルムムとラミネートした。次に、25μmのポリエステルフィルム側から紫外線を120W/cm高圧水銀ランプ(GS日本電池(株)製)により、1000mJ/cm2の紫外線を照射し、感圧接着剤組成物層を架橋させる事により感圧接着シートを作製し、試験片とした。
【0049】
(評価試験)
(1)粘着力:JIS Z 0237に準じて行った。まず試験片より幅25mm×長さ100mmを切りとり、75μm剥離ポリエステルフィルムを剥がして感圧接着剤面を、厚さ2mmのSUS304鋼板に2kgローラー一往復加圧で貼付した。1時間放置した後、引張試験機を用い、180°方向に300mm/分の引張速度で試験片を引き剥がし粘着力を測定した。なお、試験は全て温度23±2℃,相対湿度50±10%の恒温恒湿下で行った。
【0050】
(2)耐熱保持力:幅25mm×長さ75mmの試験片を、25×25mmの面積が接するように、接着力評価の際と同様に、SUS304鋼板に圧着させ、1時間放置した。その後、70℃の雰囲気に10分間放置した後、同条件下で、1kgの荷重を試験片に取付け、試験片がSUS板から落下するまでの時間を測定した。なお、24時間保持した場合は「24h<」とした。
【0051】
(3)ボールタック:JIS Z 0237に準じて行った。幅25mm×長さ100mmの試験片を100mmの助走距離をあけ、30°の傾斜板に取り付ける。その後ボールスタート位置からJIS B 1501に規定するステンレス製硬球を転がし、試験片上で静止するボールの最大ナンバーを求めた。
【0052】
(4)ゲル分率:100×50mmの試験片をトルエン中に、室温で24時間浸漬する。取り出した試験片を100℃で2時間乾燥させ、以下の式より算出した。
ゲル分率=(浸漬後の試験片質量−25μmポリエステルフィルムの質量)÷(浸漬前の試験片質量−25μmポリエステルフィルムの質量)×100
【0053】
【表1】

【0054】
【表2】


・粘着付与剤は不均化ロジンエステル系樹脂A−100(荒川化学社製)を10質量部と重合ロジンエステル系樹脂D−135(荒川化学社製)を10質量部添加
・接着破壊箇所 C:接着剤層による凝集破壊 A:粘着剤とステンレス界面の剥離
【0055】
【表3】

・粘着付与剤は不均化ロジンエステル系樹脂A−100(荒川化学社製)を10質量部と重合ロジンエステル系樹脂D−135(荒川化学社製)を10質量部添加
・接着破壊箇所 C:接着剤層による凝集破壊 A:粘着剤とステンレス界面の剥離
【0056】
【表4】


・粘着付与剤は不均化ロジンエステル系樹脂A−100(荒川化学社製)を10質量部と重合ロジンエステル系樹脂D−135(荒川化学社製)を10質量部添加
・接着破壊箇所 C:接着剤層による凝集破壊 A:粘着剤とステンレス界面の剥離


【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量平均分子量が1万〜100万であり、且つ分子量1万あたり0.005〜5個のラジカル重合性不飽和結合を有する基を側鎖に有するアクリル系共重合体(A)とマレイミド誘導体(B)を含有する活性エネルギー線硬化型感圧接着剤用組成物。
【請求項2】
前記アクリル系共重合体(A)の重量平均分子量が20〜80万である請求項1記載の活性エネルギー線硬化型感圧接着剤用組成物。
【請求項3】
前記マレイミド誘導体(B)が、式(1)
【化1】

(1)
(式中、Rは水素原子又はメチル基を表し、mは1〜6の整数、nは2〜23の整数を表す。)又は式(2)
【化2】

(2)
(式中、mは1〜6の整数、pは2〜14の整数を表す。)で表される化合物である請求項1又は2のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型感圧接着剤用組成物。
【請求項4】
前記マレイミド誘導体(B)が、式(3)
【化3】

(3)
で表される化合物である請求項1又は2のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型感圧接着剤用組成物。

【公開番号】特開2006−70060(P2006−70060A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−251341(P2004−251341)
【出願日】平成16年8月31日(2004.8.31)
【出願人】(000002886)大日本インキ化学工業株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】