説明

感染症を治療するためのアスパルチル−プロテアーゼの二環式ペプチド模倣阻害剤

本発明は、アスパルチル−プロテアーゼ活性を発現する微生物病原体と関連した感染症の治療に有用である一般式(I)の3−アザ−ビシクロ[3.2.1]オクタン誘導体、その調製、使用及び医薬組成物について言及する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感染症、特にはアスパルチル−プロテアーゼ活性を発現する微生物病原体に起因する病態、の治療に有用な一般式(I)の3−アザ−ビシクロ[3.2.1]オクタン誘導体について言及する。
【0002】
具体的に、本発明は、真菌感染症の治療用カンジダ・アルビカンスSAP2阻害剤として、HIV感染症の治療用HIVプロテアーゼ阻害剤として、又はマラリア治療用プラスメプシン若しくはヒスト−アスパルチルプロテアーゼ(HAP)阻害剤としての、一般式(I)の化合物、及びその代謝物について言及する。
【背景技術】
【0003】
アスパルチルプロテアーゼは、異なる生理学的及び機能的特性を持つ多くの生物及び組織において広範に分布しており、活性部位に2つのアスパルチル残基を含有し、一方はプロトン化され、他方はされておらず、一般的な酸−塩基触媒として一緒に作用する。2つのアスパラギン酸塩残基の間に結合した水分子は、アミド結合加水分解用の求核試薬であると考えられており、それは、脱プロトン化した触媒のアスパラギン酸残基によって活性化される。ペプチド加水分解を触媒するため、2つのアスパラギン酸残基は、分子の三次構造において十分に接近する必要がある。アスパラギン酸プロテアーゼの大部分は、ペプシン及びキモトリプシン等の消化酵素の他、レニン及びある種の真菌プロテアーゼ(カンジダ・アルビカンスSAPs、ペニシロペプシン等)等のリソソームカテプシンD及びプロセシング酵素を含めた、ペプシンファミリーに属している。アスパラギン酸プロテアーゼの第二のファミリーは、HIV等のウイルスプロテアーゼを含み、レトロペプシンともいわれる。アスパラギン酸プロテアーゼの活性部位は、一般に、選択的不可逆的阻害剤によって化学修飾されるのに求核性が十分にある基を含有しない。このため、今までに開発されたアスパラギン酸プロテアーゼ阻害剤の大部分は、非共有結合性の相互作用を介してそれらの標的酵素に結合する。従って、それらの化合物は、可逆的阻害剤であり、酵素がその天然基質と比べて阻害剤の方に高い親和性を示す場合、結果として効果的な阻害となる(非特許文献1)。
【0004】
酵素触媒反応の遷移状態と似ている安定な構造は、基質と比べてより強固に酵素を結合するはずであると提案された。結果として、効果的なアスパルチルプロテアーゼ阻害剤の設計に非常に成功したアプローチは、遷移状態アイソスターのペプチド模倣構造への取り込みに基づいている。
【0005】
カンジダ・アルビカンスは、日和見性真菌病原体であり、特に免疫不全患者において重度の全身感染症を引き起こす。いくらかの抗真菌薬が利用可能であるものの、C.アルビカンスに対する新規な薬物の必要性は、カンジダに原因する粘膜及び全身感染症の広範な発生と利用可能な薬物に対する抵抗の発生の両方が原因で、激しさを増している(非特許文献2)。実際、薬物の有効性にもかかわらず、カンジダ・アルビカンスは、罹患率、入院費用及び死亡率の非常に起こりやすい原因として位置付けられている(非特許文献3)。疾患を引き起こす能力は、おそらくカンジダと宿主間の多重相互作用を伴う複雑な過程であるが、分泌性アスパルチルプロテアーゼ(SAPs)活性は、主要な病原性因子であるように思われるため、感染症の薬物療法に対して可能性のある標的を提供する。カンジダ株は、同一疾患の経過中に少なくとも9個の異なる遺伝子(SAP1−9)を発現するが、感染症の異なる段階で、異なるSAPsは異なる機能を有することが示されており(非特許文献4);特にそれらの中でも、SPA2は、宿主での持続的コロニー形成及び侵入に関与する中で最も発現する酵素の一つである。
【0006】
アスパルチルプロテアーゼ活性の阻害剤の必要性について、他の強力な証拠としては、以下の側面によるものが挙げられる。
・カンジダ・アルビカンスに原因する感染症の免疫不全患者は、全身カンジダ症にかかる場合や、更には一般的な治療法に対する抵抗を発生する可能性がある。
・HIV及びHTVLウイルスは、ウイルス成熟に関し、アスパルチルプロテアーゼに依存する。
・熱帯熱マラリア原虫は、ヘモグロビンを処理するのにプラスメプシンI及びIIを使用する。
【0007】
近年、アスパルチルプロテアーゼが重要な役割を果たす病原微生物に対するHIVプロテアーゼ阻害剤(HIV−PI)の阻害活性が実証されている(非特許文献5)。特に、HIV−PIは、カンジダ・アルビカンス(非特許文献6)とマラリアプラスメプシンII及びIV(非特許文献7)の両方のアスパルチルプロテアーゼに対してマイクロモル濃度の活性を示す。かかる結果は、それら分子の柔軟性及びHIV−1のアスパルチルプロテアーゼとカンジダ・アルビカンスのSAP2の間での一部の構造類似性に従っている。
【0008】
従って、アスパルチルプロテアーゼに対して阻害活性を有する新規化合物は、真菌感染症の治療用カンジダ・アルビカンスSAP2阻害剤として、HIV感染症の治療用HIVプロテアーゼ阻害剤として、又はマラリア治療用プラスメプシン若しくはヒスト−アスパルチルプロテアーゼ(HAP)阻害剤として作用することができる。
【0009】
式(I)の化合物が知られている。
【化1】


ここで、
R1は、H、ベンジル、p−メトキシベンジル及びビンズヒドリルからなる群の中で選択され、好ましくはベンジルであり;
R2は、H、アルキル、アリール及びアルキルアリールからなる群の中で選択され、好ましくはH、ベンジル、メチル又はイソブチルであり;
R3及びR4は、独立して、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、アルコキシカルボニル及び−CH(α−アミノ酸側鎖)CH2OHからなる群の中で選択され、好ましくはH、ヒドロキシエチル、プロパルギル又は−CH(α−アミノ酸側鎖)CH2OHであるか;或いは
R3及びR4は、それらが結合している窒素原子と一緒に、最終的に置換された環、好ましくはピペリジン、4−ヒドロキシエチル−ピペラジン、4−カルボエトキシ−ピペラジン、又はモルホリンを形成することができ;可能性のある立体異性体の組み合わせが全て含まれる。
【0010】
それらの調製は、非特許文献8〜14において報告されている。
【0011】
ニューロトロフィン活性の欠損に関連した病態の治療用医薬組成物におけるそれらの使用は、WO2004/000324(特許文献1)に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】WO2004/000324
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Tacconelli, E. et al. Curr. Med. Chem. 2004, 4, 49
【非特許文献2】Shao, P. -L. et al. Int. J. Antimicrob. Agents 2007, 30, 487
【非特許文献3】Pfaller MA & D:J:Diekema. Epidemiology of invasive Candidiasis: a persistent public health Problem. Clin.Microbiol.Rev. 2007;20:133-163
【非特許文献4】Schaller, M. et al. J. Invest. Dermatol. 2000, 114, 712
【非特許文献5】Tacconelli et al., Curr. Med. Chem., 2004, 4, 49
【非特許文献6】Cassone et al., J. Infect. Dis., 1999, 180, 448
【非特許文献7】Andrews et al., Antimicrob. Agents Chemother. 2006, 639
【非特許文献8】J. Org. Chem. 1999, 64, 7347
【非特許文献9】J. Org. Chem. 2002, 67, 7483
【非特許文献10】Bioorg. Med. Chem. 2001, 9, 1625
【非特許文献11】Eur. J. Org. Chem. 2002, 873
【非特許文献12】J. Org. Chem. 2002, 67, 7483
【非特許文献13】C. R. Chimie 2003, 631
【非特許文献14】J. Comb. Chem. 2007, 9, 454
【発明の概要】
【0014】
従って、本発明の目的は、特にはSAP2の、アスパルチルプロテアーゼ活性に関連した病態の治療用、特には免疫抑制患者におけるカンジダ・アルビカンスの薬物耐性全身感染症の治療用の、薬剤を調製するための、代替化合物を提供することにある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】投与の(1時間、24時間、48時間)後にAPG12で膣内治療されたラットにおけるC.アルビカンスSA40の膣感染である。
【図2】投与の(1時間、24時間、48時間)後にAPG12で膣内治療されたラットにおけるC.アルビカンスAIDS68の膣感染である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、式(I)の化合物について言及するものである。
【化2】


ここで、
R1は、−CH(R)COR5であり;
Rは、α−アミノ酸側鎖であり、好ましくは、前記α−アミノ酸がGly、Leu、Val、Ile、Ala、Phe、Phg、Nle及びNvaからなる群から選択され;
R2は、H、アルキル、アリール又はアルキルアリールであり、好ましくは、H、ベンジル、メチル又はイソブチルであり;
R3及びR4は、独立して、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アルキルアリール、アリール、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、アルコキシカルボニル及び−CH(α−アミノ酸側鎖)CH2OHからなる群の中で選択され、好ましくは、H、ヒドロキシエチル、プロパルギル若しくは−CH(Leu側鎖)CH2OHであるか;又は
R3及びR4は、それらが結合している窒素原子と一緒に、最終的に置換された、5〜8員環、好ましくは、ピペリジン、4−ヒドロキシエチル−ピペラジン、4−カルボエトキシ−ピペラジン、4−ベンジル−ピペラジン、4−フェネチル−ピペラジン若しくはモルホリンを形成することができ;
R5は、−Oアルキル、−Oアリール、−NHアルキル、NHアリール、アミノ酸及びペプチドからなる群の中で選択され、好ましくは、−OCH3又はNHCH2CH(OH)CH2CONHBuであり;
可能性のある立体異性体の組み合わせの全てが含まれる。
【0017】
驚くべきことには、式(I)
【化3】


[式中:
R1は、ベンジル、フェニル及び−CH(R)COR5からなる群の中で選択され、好ましくは、ベンジル又は−CH(R)COR5であり;
Rは、α−アミノ酸側鎖であり、好ましくは、前記α−アミノ酸がGly、Leu、Val、Ile、Ala、Phe、Phg、Nle及びNvaからなる群から選択され;
R2は、H、アルキル、アリール又はアルキルアリールであり、好ましくは、H、ベンジル、メチル又はイソブチルであり;
R3及びR4は、独立して、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アルキルアリール、アリール、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、アルコキシカルボニル及び−CH(α−アミノ酸側鎖)CH2OHからなる群の中で選択され、好ましくは、H、ヒドロキシエチル、プロパルギル若しくは−CH(Leu側鎖)CH2OHであるか;又は
R3及びR4は、それらが結合している窒素原子と一緒に、最終的に置換された、5〜8員環、好ましくは、ピペリジン、4−ヒドロキシエチル−ピペラジン若しくは4−カルボエトキシ−ピペラジンを形成することができ;
R5は、−Oアルキル、−Oアリール、−NHアルキル、NHアリール、α−アミノ酸及びペプチドからなる群の中で選択され、好ましくは、−OCH3又はNHCH2CH(OH)CH2CONHBuであり;
可能性のある立体異性体の組み合わせの全てが含まれる]の化合物が、生体外及び生体内の両方におけるSAP2の強力な阻害剤であることを見出し、それ故に、それらは、好ましくはカンジダ・アルビカンス、HIV、HTVL又は熱帯熱マラリア原虫に関連した、感染性疾患の治療用薬剤を調製するために使用できる。
【0018】
本発明の一態様は、少なくとも式(I)の化合物と、少なくとも他の薬剤的に容認できる成分、賦形剤、キャリヤー又は希釈剤とを含有する医薬組成物に関するものであり、ここで、R1は、−CH(α−アミノ酸側鎖)COR5であり、好ましくは、かかるα−アミノ酸が、Gly、Leu、Val、Ile、Ala、Phe、Phg、Nle及びNvaからなる群の中で選択される。
【0019】
本発明によれば:
アルキルは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、エテニル、プロペニル、ブテニル、イソブテニル、アセチレニル、プロピニル、ブチニル等の線状又は枝分かれしたラジカル鎖を意味しており;
アリールは、芳香環又はN、O、Sのようなヘテロ原子を含有する芳香族複素環を意味する。
【0020】
アミノ酸側鎖は、「アミノ酸」に結合している側鎖として種々の置換基を意味する。「アミノ酸」の語は、L又はDシリーズのあらゆる天然α−アミノ酸を含み、「側鎖」として、グリシンでは−H、アラニンでは−CH3、バリンでは−CH(CH3)2、ロイシンでは−CH2CH(CH3)2、イソロイシンでは−CH(CH3)CH2CH3、セリンでは−CH2OH、トレオニンでは−CH(OH)CH3、システインでは−CH2SH、メチオニンでは−CH2CH2SCH3、フェニルアラニンでは−CH2−(フェニル)、チロシンでは−CH2−(フェニル)−OH、トリプトファンでは−CH2−(インドール)、アスパラギン酸では−CH2COOH、アスパラギンでは−CH2C(O)(NH2)、グルタミン酸では−CH2CH2COOH、グルタミンでは−CH2CH2C(O)NH2、アルギニンでは−CH2CH2CH2−N(H)C(NH2)NH、ヒスチジンでは−CH2−(イミダゾール)、リシンでは−CH2(CH2)3NH2を有しており、アミノ酸の同一の側鎖が適切な保護基を持つものを含む。更に、「アミノ酸」の語は、非天然アミノ酸を含み、オルニチン(Orn)、ノルロイシン(Nle)、ノルバリン(NVa)、β−アラニン、L又はDのα−フェニルグリシン(Phg)、ジアミノプロピオン酸、ジアミノ酪酸、アミノヒドロキシ酪酸の他、ペプチドケミストリー技術において周知のもの等である。
【0021】
スキーム1は、上述の式(I)の化合物の合成的調製を要約するものであり、ここで、R1は−CH(R)COR5であり、Rは、市販の又は容易に合成可能なα−アミノ酸誘導体(II)からのα−アミノ酸側鎖である。
【0022】
【化4】

【0023】
プロトン性溶媒、好ましくはメタノール中で、還元剤、好ましくはH2及び触媒、好ましくはPd/Cを用いた、市販の又は容易に合成可能なジカルボニル誘導体、例えばジメトキシ−アセトアルデヒドによるアミノ酸誘導体(II)の還元的アルキル化は、周囲温度で、好ましくは25℃で16時間、攪拌した後、第2級アミン(III)を提供する。或いは、極性溶媒、好ましくはDMF中、塩基、好ましくはNEt3の存在下で且つ触媒、好ましくはKIの存在下、化合物(II)を、良好な脱離基(スキーム1のX)を含有する市販の又は容易に合成可能なアセタール誘導体、例えばブロモアセトアルデヒドジメチルアセタールと共に、好ましくは120℃にて、加熱する。アミン(III)は、ジ−O−アセチル−酒石酸無水物とのカップリング反応を介して、首尾よくアミド(IV)に変換される。極性溶媒中の酸、好ましくはMeOH中の塩化チオニルによるクルード(IV)の処理は、環状アセタール(V)を提供し、それは、酸触媒、好ましくはシリカゲル上のH2SO4の存在下、非極性溶媒中、好ましくは還流トルエン中で30分間、更に加熱され、(VI)が得られる。
【0024】
アミド(I)の合成は、活性化剤を使用せず、ニートのアミンの存在下、好ましくは60℃で18時間、メチルエステル(VI)を加熱することによって達成される。
【0025】
本発明の非制限的な説明を行うため、以下に示す例を報告する。
【実施例】
【0026】
実験の詳細
例1.(2S)−4−メチル−2−[(1R,5S,7S)−2−オキソ−7−(ピペリジン−1−カルボニル)−6,8−ジオキサ−3−アザ−ビシクロ[3.2.1]オクト−3−イル]−ペンタン酸メチルエステル[式(I)の化合物、ここで、R1=−CH(Leu側鎖)COOCH3、R2=H、R3及びR4=−CH2(CH2)3CH2−である]
L−ロイシンメチルエステル塩酸塩(2.9g,16mmol)、2−ブロモ−1,1−ジメトキシエタン(1.9ml,2.7g,16mmol)、NEt3(6.7ml,48mmol)及び触媒量のKIをDMF(190ml)中に含有する溶液を120℃にて3日間攪拌した。その反応溶液を減圧下で濃縮し、水で希釈し、DCMで抽出した。次いで、有機層を食塩水で洗浄し、Na2SO4上で乾燥させ、蒸発させた。未精製の生成物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル,EtOAc/P.E.1:1)によって精製し、式(III)の化合物(ここで、R=Leu側鎖)を黄色油として得た(1.2g,収率32%)。
[α]D24-3.32 (c 1.0, CHCl3); 1H-NMR (CDCl3, 200 MHz): δ 4.38 (t, J = 6 Hz, 1H), 3.65 (s, 3H), 3.30 (s, 3H), 3.29 (s, 3H), 3.24 (t, J = 6 Hz, 1H), 2.68 (dd, J1 = J2 = 6 Hz, 1H), 2.52 (dd, J1 = J2 = 6 Hz, 1H), 1.71-1.55 (m, 2H), 1.44-1.37 (m, 2H), 0.86 (d, J = 4 Hz, 3H), 0.83 (d, J = 4 Hz, 3H); 13C-NMR (CDCl3, 200 MHz): δ 175.9 (s), 103.6 (d), 59.9 (d), 54.0 (q), 53.1 (q), 51.7 (q), 49.3 (t), 42.8 (t), 25.0 (d), 22.8 (q), 22.5 (q); MS m/z 233 (0.5), 202 (7.2), 174 (33), 158 (14), 75 (100); IR (CHCl3) 2915, 1729, 1130, 1065 cm-1; C11H23NO4 (233.30)の分析 計算値: C, 56.63; H, 9.94; N, 6.00. 実測値: C, 57.49; H, 9.90; N, 6.24.
【0027】
乾燥DCM(4.5ml)中の(S,S)−2,3−ジ−O−アセチル−酒石酸無水物(1g,4.7mmol)の懸濁液に、乾燥DCM(2.5ml)中の式(III)の化合物(ここで、R=Leu側鎖)(1g,4.7mmol)の溶液を窒素雰囲気下0℃にて加えた。反応混合物を室温にて一晩攪拌した。溶媒を蒸発させた後、式(IV)の未精製生成物(ここで、R=Leu側鎖)をMeOH(8ml)中に溶解し、塩化チオニル(292μl,4mmol)を0℃にて滴下しながら加えた。次いで、その混合物を60℃に到達させ、2時間攪拌した。溶媒を除去し、式(V)の未精製生成物(ここで、R=Leu側鎖)を黄色油として単離し、更に精製を行わずに次の工程に用いた。
【0028】
トルエン(8ml)中の(V)(ここで、R=Leu側鎖)(1.63g,4.7mmol)の溶液を、トルエン(12ml)中のSiO2/H2SO4(1g)の還流懸濁液に素早く加えた。その混合物を30分間反応させ、次いで、溶媒の3分の1を留去した。熱反応混合物をNaHCO3のパッドを通してろ過し、溶媒を蒸発させた後、フラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル,EtOAc/P.E.1:2)によって未精製生成物を精製し、(VI)(ここで、R=Leu側鎖)が白色固体として得られた(730mg,3工程を通した収率50%)。
[α]D2422.0 (c 1.0, MeOH); 1H-NMR (CDCl3, 200 MHz): δ 5.88 (d, J = 2 Hz, 1H), 5.09 (t, J = 8 Hz, 1H), 4.87 (s, 1H), 4.59 (s, 1H), 3.72 (s, 3H), 3.64 (s, 3H), 3.50 (dd, J1 = 12 Hz, J2= 2 Hz, 1H), 3.11 (dd, J1 = 12 Hz, J2 = 2 Hz, 1H), 1.67-1.60 (m, 2H), 1.46-1.32 (m, 1H), 0.88 (s, 3H), 0.84 (s, 3H); 13C-NMR (CDCl3, 200 MHz): δ 170.8 (s), 168.7 (s), 165.6 (s), 100.0 (d), 77.8 (d), 77.3 (d), 52.8 (d), 52.4 (q), 52.3 (q), 48.1 (t), 36.6 (t), 24.7 (d), 23.3 (q), 21.3 (q); MS m/z 315 (11), 256 (100), 240 (4); C14H21NO7 (315.33)の分析 計算値: C, 53.33; H, 6.71; N, 4.44. 実測値: C, 52.99; H, 5.58; N, 4.79.
【0029】
(VI)(ここで、R=Leu側鎖)(1g,3.2mmol)及びピペリジン(6.3ml,63mmol)を含有する溶液を60℃にて一晩攪拌した。次いで、その反応混合物を減圧下で濃縮し、未精製の生成物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル,DCM/MeOH 20:1)によって精製し、式(VII)の化合物[ここで、R=Leu側鎖、R3及びR4=−CH2(CH2)3CH2−(式(I)の化合物(ここで、R1=−CH(Leu側鎖)COOCH3、R2=H、R3及びR4=−CH2(CH2)3CH2−)に相当する)]を黄色油として得た(816mg,収率70%)。
[α]D2233.6 (c 1.0, CHCl3); 1H-NMR (CDCl3, 200 MHz):(2つの回転異性体の混合物)δ 5.79 (d, 1H, J = 1.4 Hz), 5.06-4.94 (m, 1H), 5.02 (s, 1H), 4.82 (s, 1H, minor), 4.71 (s, 1H, major), 3.62 (s, 3H, minor), 3.61 (s, 3H, major), 3.55-3.20 (m, 5H), 3.09 (d, J = 11.8 Hz, 1H), 1.67-1.34 (m, 9H), 0.86 (d, J = 4.8 Hz, 3H), 0.84 (d, J = 5.8 Hz, 3H); 13C-NMR(CDCl3, 200 MHz)(2つの回転異性体の混合物): δ 171.1 (s, minor), 170.8 (s, major), 167.6 (s, minor), 166.8 (s, major), 164.9 (s, minor), 164.8 (s, major), 99.6 (d, major), 99.5 (d, minor), 78.0 (d), 76.4 (d), 52.7 (q), 52.4 (d, major), 52.2 (d, minor), 48.6 (t, major), 47.7 (t, minor), 46.4 (t), 43.5 (t), 36.7 (t, major), 35.8 (t, minor), 26.4 (t), 25.5 (t), 24.7 (d), 24.5 (t), 23.2 (q), 21.5 (q); MS m/z 368 (M+), 309 (21), 312 (100); IR (CHCl3) 2935, 1739, 1666 cm-1. C18H29N3O6 (368.43) の分析 計算値: C, 58.68; H, 7.66; N, 7.60. 実測値: C, 57.06; H, 7.50; N, 8.32.
【0030】
例2.(2S)−2−[(1R,5S,7S)−7−(4−メチル−ピペラジン−1−カルボニル)−2−オキソ−6,8−ジオキサ−3−アザ−ビシクロ[3.2.1]オクト−3−イル]−4−メチル−ペンタン酸メチルエステル[式(I)の化合物、ここで、R1=−CH(Leu側鎖)COOCH3、R2=H、R3及びR4=−CH2CH2N(CH3)CH2CH2−である]
化合物(I)(ここで、R1=−CH(Leu側鎖)COOCH3、R2=H、R3及びR4=−CH2(CH2)3CH2−)について記載された手順に従い、化合物(VI)(ここで、R=Leu側鎖)(150mg,0.48mmol)及び1−メチルピペラジン(1.06ml,9.5mmol)から出発して、化合物(I)(ここで、R1=−CH(Leu側鎖)COOCH3、R2=H、R3及びR4=−CH2CH2N(CH3)CH2CH2−)を調製した。純化合物(I)(ここで、R1=−CH(Leu側鎖)COOCH3、R2=H、R3及びR4=−CH2CH2N(CH3)CH2CH2−)(128mg,収率72%)が黄色油として得られた。
[α]D2528.1 (c 0.9, CHCl3); 1H-NMR (CDCl3, 200 MHz): δ 5.85 (s, 1H), 5.12 (s, 1H), 5.05 (t, J = 8 Hz, 1H), 4.77 (s, 1H), 3.68 (s, 3H), 3.62-3.51 (m, 5H), 3.14 (d, J = 12 Hz, 1H), 2.42-2.33 (m, 4H), 2.72 (s, 3H), 1.73-1.65 (m, 2H), 1.49-1.42 (m, 1H), 0.92 (d, J = 6 Hz, 3H), 0.90 (d, J = 4 Hz, 3H); 13C-NMR (CDCl3, 200 MHz): δ 170.8 (s), 166.8 (s), 165.0 (s), 99.7 (d), 78.0 (d), 76.4 (d), 55.0, 54.6 (t), 52.8 (q), 52.5 (d), 48.6 (t), 46.1 (q), 45.4 (t), 42.3 (t), 36.9 (t), 24.8 (d), 23.3 (q), 21.6 (q); MS m/z 383 (23), 352 (2.4), 324 (9), 99 (55), 70 (100); IR (CHCl3) 2866, 1738, 1670 cm-1; C18H29N3O6 (383.44)の分析 計算値: C, 56.38; H, 7.62; N, 10.96. 実測値: C, 55.12; H, 6.88; N, 12.01.
【0031】
例3.4'−メチル−(2'S)−2'−[(1R,5S,7S)−7−(モルホリン−4−カルボニル)−2−オキソ−6,8−ジオキサ−3−アザ−ビシクロ[3.2.1]オクト−3−イル]−ペンタン酸メチルエステル[式(I)の化合物、ここで、R1=−CH(Leu側鎖)COOCH3、R2=H、R3及びR4=−CH2CH2OCH2CH2−である]
式(I)の化合物(ここで、R1=−CH(Leu側鎖)COOCH3、R2=H、R3及びR4=−CH2(CH2)3CH2−)について記載された手順に従い、化合物(VI)(ここで、R=Leu側鎖)(100mg,0.32mmol)及びモルホリン(0.55ml,6.3mmol)から出発して、式(I)の化合物(ここで、R1=−CH(Leu側鎖)COOCH3、R2=H、R3及びR4=−CH2CH2OCH2CH2−)を調製した。式(I)の純化合物(ここで、R1=−CH(Leu側鎖)COOCH3、R2=H、R3及びR4=−CH2CH2OCH2CH2−)(95mg,収率65%)が黄色油として得られた。
[α]D2229.0 (c 1.0, CHCl3); 1H-NMR (CDCl3, 200 MHz): δ 5.86 (d, J = 2 Hz, 1H), 5.16 (s, 1H), 5.06 (dd, J1 = J2= 8 Hz, 1H), 4.76 (s, 1H), 3.70 (s, 3H), 3.67-3.52 (m, 9H), 3.15 (d, J = 12 Hz, 1H), 1.75-1.67 (m, 2H), 1.53-1.43 (m, 1H), 0.94 (d, J = 6 Hz, 3H), 0.92 (d, J = 6 Hz, 3H); 13C-NMR (CDCl3, 200 MHz): δ 170.8 (s), 99.8 (d), 84.6 (d), 78.0 (d), 66.8 (t), 66.6 (t), 52.8 (q), 52.5 (d), 48.6 (t), 46.0 (t), 42.7 (t), 36.8 (t), 24.8 (d), 23.3 (q), 21.6 (q); MS m/z 370 (14), 311 (60), 283 (19), 168 (100); IR (CHCl3) 2932, 1735, 1668 cm-1; C17H26N2O7 (370.41)の分析 計算値: C, 55.13; H, 7.08; N, 7.56. 実測値: C, 54.27; H, 6.40; N, 7.22.
【0032】
例4.(2S)−2−[(1R,5S,7S)−7−(4−ベンジル−ピペラジン−1−カルボニル)−2−オキソ−6,8−ジオキサ−3−アザ−ビシクロ[3.2.1]オクト−3−イル]−4−メチル−ペンタン酸メチルエステル[式(I)の化合物、ここで、R1=−CH(Leu側鎖)COOCH3、R2=H、R3及びR4=−CH2CH2N(ベンジル)CH2CH2−である]
式(I)の化合物(ここで、R1=−CH(Leu側鎖)COOCH3、R2=H、R3及びR4=−CH2(CH2)3CH2−)について記載された手順に従い、式(VI)の化合物(ここで、R=Leu側鎖)(100mg,0.32mmol)及び1−ベンジルピペラジン(1.1ml,6.3mmol)から出発して、式(I)の化合物(ここで、R1=−CH(Leu側鎖)COOCH3、R2=H、R3及びR4=−CH2CH2N(ベンジル)CH2CH2−)を調製した。式(I)の純化合物(ここで、R1=−CH(Leu側鎖)COOCH3、R2=H、R3及びR4=−CH2CH2N(ベンジル)CH2CH2−)(106mg,収率72%)が黄色油として得られた。
[α]D2320.1 (c 1.1, CHCl3); 1H-NMR (CDCl3, 200 MHz):δ 7.42-7.27 (m, 5H), 5.88 (s, 1H), 5.25-5.05 (m, 2H), 4.79 (s, 1H), 3.71 (s, 3H), 3.63-3.53 (m, 7H), 3.16 (d, J = 11.6 Hz, 1H), 2.51-2.45 (m, 4H), 1.76-1.68 (m, 2H), 1.55-1.25 (m, 1H), 0.96 (d, J = 5, 3H), 0.93 (d, J = 6.2 Hz, 3H); 13C-NMR (CDCl3, 200 MHz):δ 170.8 (s), 166.8 (s), 165.0 (s), 129.1 (d), 128.3 (d), 127.3 (d), 99.7 (d), 78.0 (d), 76.4 (d), 62.9 (t), 52.9 (q), 52.7, 52.7 (t), 52.5 (d), 48.5 (t), 45.5, 42.4 (t), 36.8 (t), 24.8 (d), 23.3 (q), 21.6 (q); MS m/z 459 (10), 400 (1), 330 (1), 175 (19), 91 (100); IR (CHCl3) 2940, 1740, 1672 cm-1; C24H33N3O6 (459.55)の分析 計算値: C, 62.73; H, 7.24; N, 9.14. 実測値: C, 61.34; H, 6.82; N, 8.50.
【0033】
例5.(2S)−2−[(1R,5S,7S)−7−(4−フェニルエチル−ピペラジン−1−カルボニル)−2−オキソ−6,8−ジオキサ−3−アザ−ビシクロ[3.2.1]オクト−3−イル]−4−メチル−ペンタン酸メチルエステル[式(I)の化合物、ここで、R1=−CH(Leu側鎖)COOCH3、R2=H、R3及びR4=−CH2CH2N(−CH2CH2Ph)CH2CH2−である]
式(I)の化合物(ここで、R1=−CH(Leu側鎖)COOCH3、R2=H、R3及びR4=−CH2(CH2)3CH2−)について記載された手順に従い、式(VI)の化合物(ここで、R=Leu側鎖)(100mg,0.32mmol)及び1−フェニルエチルピペラジン(1.2ml,6.3mmol)から出発して、式(I)の化合物(ここで、R1=−CH(Leu側鎖)COOCH3、R2=H、R3及びR4=−CH2CH2N(−CH2CH2Ph)CH2CH2−)を調製した。式(I)の純化合物(ここで、R1=−CH(Leu側鎖)COOCH3、R2=H、R3及びR4=−CH2CH2N(−CH2CH2Ph)CH2CH2−)(89mg,収率59%)が黄色油として得られた。
[α]D2521.3 (c 0.9, CHCl3); 1H-NMR (CDCl3, 200 MHz):δ 7.33-7.18 (m, 5H), 5.88 (d, J = 2 Hz, 1H), 5.17 (s, 1H), 5.09 (dd, J1 = 8 Hz, J2 = 6 Hz, 1H), 4.81 (s, 1H), 3.72 (s, 3H), 3.78-3.63 (m, 4H), 3.57 (dd, J1 = 12 Hz, J2 = 2 Hz, 1H), 3.18 (d, J = 12 Hz, 1H), 2.88-2.80 (m, 2H), 2.70-2.58 (m, 6H), 1.78-1.70 (m, 2H), 1.53-1.25 (m, 1H), 0.98 (d, J = 6 Hz, 3H), 0.94 (d, J = 6 Hz, 3H); 13C-NMR (CDCl3, 200 MHz):δ 170.6 (s), 166.5 (s), 164.8 (s), 138.5 (s), 128.4 (d), 128.3 (d), 126.1 (d), 99.5 (d), 77.7 (d), 76.9 (d), 59.5 (t), 52.6 (q), 52.4, 52.2 (t), 51.9 (d), 48.2, 44.3 (t), 41.3 (t), 36.5 (t), 32.4 (t), 24.4 (d), 22.8 (q), 21.2 (q); MS m/z 414 (1), 382 (95), 56(100); IR (CHCl3) 2923, 1740, 1672 cm-1; C25H35N3O6 (473.57)の分析 計算値: C, 63.41; H, 7.45; N, 8.87. 実測値: C, 62.28; H, 7.01; N, 8.96.
【0034】
例6.(2S)−4−メチル−2−[(1R,5S,7S)−2−オキソ−7−(ピペリジン−1−カルボニル)−6,8−ジオキサ−3−アザ−ビシクロ[3.2.1]オクト−3−イル]−ペンタン酸(3−ブチルカルバモイル−2−ヒドロキシ−プロピル)−アミド[式(I)の化合物、ここで、R1=−CH(Leu側鎖)COR5、R2=H、R3及びR4=−CH2CH2OCH2CH2−、R5=−NHCH2CH(OH)CH2CONHBuである]
DCM(4ml)中の4−アミノ−3−ヒドロキシ−酪酸メチルエステル塩酸塩(37mg,0.22mmol)の溶液に、窒素雰囲気下、0℃にて、PyBrOP(102mg,0.22mmol)と、式(I)の化合物(ここで、R1=−CH(Leu側鎖)COOCH3、R2=H、R3及びR4=−CH2(CH2)3CH2−)のLiOHによる塩基性エステル加水分解によって予め得られた、(2S)−4−メチル−2−[(1R,5S,7S)−2−オキソ−7−(ピペリジン−1−カルボニル)−6,8−ジオキサ−3−アザ−ビシクロ[3.2.1]オクト−3−イル]−ペンタン酸(80mg,0.22mmol)と、DIPEA(85μl,0.5mmol)とを加えた。得られた溶液を室温に到達させて、一晩攪拌させた。次いで、反応混合物をNaHCO3の飽和溶液、水性5%KHSO4及び食塩水で洗浄し、NaSO上で乾燥させた。溶媒を蒸発させた後、未精製生成物をEtOAc中で希釈させ、PyBrOPを沈殿させるために4℃にて3時間放置した。フラッシュクロマトグラフィーによる精製の後、得られた化合物(40mg,0.08mmol)を、THF(200μl)及び2滴のH2Oの混合物中で、n−ブチルアミン(168μl,1.7mmol)により、50℃にて3日間処理した。Amberlyst15上での反応混合物のろ過、更にはカラムクロマトグラフィー(シリカゲル,DCM/MeOH 20:1)による精製によって、式(I)の化合物(ここで、R1=−CH(Leu側鎖)COR5、R2=H、R3及びR4=−CH2CH2OCH2CH2−、R5=−NHCH2CH(OH)CH2CONHBu)が無色油として得られた。
1H-NMR (CDCl3, 200 MHz):δ 6.81-6.68 (m, 1H), 6.41-6.22 (m, 1H), 5.90, 5.86 (s, 1H, 2つのジアステレオ異性体の混合物), 5.14-4.81 (m, 3H), 4.13-3.92 (m, 1H), 3.66-3.35 (m, 6H), 3.36-3.02 (m, 4H), 2.28 (d, J = 5.2 Hz, 2H), 1.88-1.20 (m, 13H), 0.97-0.87 (m, 9H); 13C-NMR (CDCl3, 200 MHz):δ 171.5 (s), 170.2 (s), 168.0 (s), 164.8 (s), 99.6 (d), 77.9 (d), 67.9 (d), 54.1, 53.9 (d), 47.6 (t), 46.6 (t), 44.5 (t), 43.6 (t), 39.4 (t), 36.4 (t), 34.9 (t), 31.6 (t), 26.4 (t), 25.6 (t), 24.9 (d), 24.6 (t), 23.1 (q), 22.0 (q), 20.3 (t), 13.9 (q); MS m/z 510 (3), 309 (34), 112 (69), 84 (100).
【0035】
選択された本発明の化合物の生体外及び生体内活性について、非制限的な説明を与えるため、以下に示す例を報告する。
【0036】
プロテアーゼ酵素アッセイ
分光光度法:
式(I)の各種化合物のプロテアーゼ活性は、同一濃度でのペプスタチン活性に対する分光光度アッセイによって測定された:各アッセイは、pH3.2の50mMクエン酸ナトリウム中1%(w/v)BSA0.4ml及びプロテアーゼ溶液(1μg/ml)50μlにおいてサンプル50μlを含んだ。37℃にて30分後、10%(w/v)トリクロロ酢酸1mlを加えた。チューブを氷中にて30分間保存し、次いで、10分間遠心分離にかけた(3000g)。上澄みの吸光度を280nmで読んだ。対照:クエン酸塩緩衝液中1%BSA。酵素の一のユニットは、1min−1のΔA280を触媒した。純プロテアーゼの場合、アッセイは、ΔA2800.1−0.4の範囲に亘って酵素濃度に比例した。検出下限は1μgであった(De Bernardis F., Sullivan P.A., Cassone A. Medical Mycology 2001, 39, 303)。
【0037】
表1.本発明の代表的な化合物のSAP2に対する生体外活性。I%は、同一濃度10μMでのペプスタチンに対する阻害率である。
【化5】

【0038】
【表1】

【0039】
生体内アッセイ
実験的膣感染:
実験的膣感染については、前述のラット膣モデルを採用した(De Bernardis, F.; Boccanera, M.; Adriani, D.; Spreghini, E.; Santoni, G.; Cassone, A. Infect. Immun., 1997, 65, 3399)。
【0040】
簡単に説明すると、卵巣を摘出された雌のウィスターラット(80−100g;Charles River Calco,イタリア)は、安息香酸エストラジオール0.5mg(Estradiolo,Amsa Farmaceutici srl,ローマ,イタリア)を皮下に注射された。1回目のエストラジオールの6日後に、その動物は、試験されるC.アルビカンス株それぞれの食塩溶液0.1ml中の107酵母細胞を膣内接種された。接種材料は、多目的目盛り付きチップ(Combitip;PBI,ミラノ,イタリア)を備えたシリンジを介して膣腔中に投薬された。酵母細胞は、あらかじめ、旋回シェーカー(200rpm)上、28℃のYPDブロス(酵母エキス1%;ペプトン2%;デキストロース2%)中で成長し、遠心分離(1500g)によって収集され、洗浄され、血球計数器でカウントされ、所要の数だけ食塩溶液中において懸濁させた。膣液中の細胞数は、前述のクロラムフェニコール(50μg/ml)を含有するサブロー培地上で、(目盛り付きプラスチック製ループ(Disponoic,PBI,ミラノ,イタリア)を用いて)各動物から取った、サンプル100μlを培養することによってカウントされた。少なくとも1CFUが膣洗浄に見られた場合、即ち、数値が>103CFU/mlの場合に、ラットが感染したと見なした。
【0041】
生体内研究用の代表的な例として、上記した式(1)の化合物の一つであり、以下APG12と名付けた、表1の化合物6に対応するものを、2つの異なる株、即ちSA40及び薬物耐性AIDS68の膣内カンジダ・アルビカンス投与の1時間、24時間、48時間後に、10μMの濃度で膣内に投与した。ポジティブ(ペプスタチン10μg;フルコナゾール10μg)及びネガティブ(無菌食塩溶液)を同様に投与した。
【0042】
APG12で膣内処置されたラットにおけるカンジダ・アルビカンスクリアランスのプロファイルは、天然SAP2阻害剤ペプスタチンで処置したラットと、フルコナゾールで処置したラットにおいて観測された促進に似ている(表2及び図1)。更に重要なことには、薬物耐性AIDS68株におけるカンジダ・アルビカンスクリアランスの促進は、天然SAP2阻害剤ペプスタチンとAPG12の両方の有効性を示すが、未処理対照に似たクリアランスプロファイルが示すように、フルコナゾールは無効である(表3及び図2)。
【0043】
表2.投与の(1時間、24時間、48時間)後にAPG12で膣内治療されたラットにおけるカンジダSA40クリアランスの促進
【0044】
【表2】

【0045】
全値×1000;SA40:未処理対照;開始1日目で、APG12処理と未処理対照間の違いはすべて統計的に有意である;(P<0.01,マンホイットニーU検定)
【0046】
表3.投与の(1時間、24時間、48時間)後にAPG12で膣内治療されたラットにおけるカンジダAIDS68クリアランスの促進
【0047】
【表3】

【0048】
全値×1000;AIDS68:未処理対照;開始1日目で、APG12処理と未処理対照間の違いはすべて統計的に有意である;(P<0.01,マンホイットニーU検定)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】


[式中:
R1は、−CH(R)COR5であり;
Rは、α−アミノ酸側鎖であり;
R2は、H、アルキル、アリール、又はアルキルアリールであり;
R3及びR4は、独立して、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アルキルアリール、アリール、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、アルコキシカルボニル、及び−CH(α−アミノ酸側鎖)CH2OHからなる群から選択されるか;又は
R3及びR4は、それらが結合している窒素原子と一緒に、任意に置換された5〜8員環を形成することができ;
R5は、−Oアルキル、−Oアリール、−NHアルキル、NHアリール、アミノ酸、及びペプチドからなる群から選択され;
可能性のある立体異性体の組み合わせの全てが含まれる]の化合物。
【請求項2】
R2が、H、ベンジル、メチル又はイソブチルであることを特徴とする請求項1に記載の式(I)の化合物。
【請求項3】
Rが、Gly、Leu、Val、Ile、Ala、Phe、Phg、Nle、及びNvaのものからなる群から選択されることを特徴とする請求項2に記載の式(I)の化合物。
【請求項4】
R3及びR4が、独立して、H、ヒドロキシエチル、プロパルギル、及び−CH(Leu側鎖)CH2OHからなる群から選択されるか;又は
R3及びR4が、それらが結合している窒素原子と一緒に、ピペリジン、4−ヒドロキシエチル−ピペラジン、4−メチル−ピペラジン、4−カルボエトキシ−ピペラジン、4−フェニルエチル−ピペラジン、4−ベンジル−ピペラジン、及びモルホリンからなる群から選択される環を形成できることを特徴とする請求項3に記載の式(I)の化合物。
【請求項5】
R3がHで、且つ、R4が、H、ヒドロキシエチル、プロパルギル、及び−CH(Leu側鎖)CH2OHからなる群から選択されるか;又は
R3及びR4が、それらが結合している窒素原子と一緒に、ピペリジン、4−ヒドロキシエチル−ピペラジン、及び4−カルボエトキシ−ピペラジンからなる群から選択される環を形成できることを特徴とする請求項4に記載の式(I)の化合物。
【請求項6】
Rが、Leu側鎖であることを特徴とする請求項5に記載の式(I)の化合物。
【請求項7】
薬剤として使用するための請求項1〜6のいずれかに記載の式(I)の化合物。
【請求項8】
感染症の治療用薬剤を調製するための、式(I)
【化2】


[式中:
R1は、ベンジル、フェニル、及び−CH(R)COR5からなる群から選択され;
Rは、α−アミノ酸側鎖であり;
R2は、H、アルキル、アリール、又はアルキルアリールであり;
R3及びR4は、独立して、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アルキルアリール、アリール、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、アルコキシカルボニル、及び−CH(α−アミノ酸側鎖)CH2OHからなる群から選択されるか;又は
R3及びR4は、それらが結合している窒素原子と一緒に、任意に置換された5〜8員環を形成することができ;
R5は、−Oアルキル、−Oアリール、−NHアルキル、NHアリール、アミノ酸、及びペプチドからなる群から選択され;
可能性のある立体異性体の組み合わせの全てが含まれる]の化合物の使用。
【請求項9】
式(I)の化合物の請求項8に記載の使用であって、
R1が、ベンジル、及び−CH(R)COR5からなる群から選択され;
Rが、α−アミノ酸側鎖であって、Gly、Leu、Val、Ile、Ala、Phe、Phg、Nle、及びNvaのものからなる群から選択され;
R2が、H,ベンジル、メチル、及びイソブチルの群から選択され;
R3及びR4が、独立して、H、ヒドロキシエチル、プロパルギル、及び−CH(Leu側鎖)CH2OHからなる群から選択されるか;又は
R3及びR4が、それらが結合している窒素原子と一緒に、ピペリジン、4−ヒドロキシ−ピペラジン、及び4−カルボエトキシ−ピペラジンからなる群から選択される環を形成できることを特徴とする使用。
【請求項10】
アスパルチル−プロテアーゼ活性を発現する微生物病原体と関連した感染症の治療用薬剤を調製するための、請求項8又は9に記載の化合物の使用。
【請求項11】
カンジダ・アルビカンス、HIV、HTVL、及び熱帯熱マラリア原虫からなる群から選択される病原体と関連した感染症の治療用薬剤を調製するための、請求項10に記載の化合物の使用。
【請求項12】
カンジダ・アルビカンスと関連した薬物耐性感染症の治療用薬剤を調製するための、請求項11に記載の化合物の使用。
【請求項13】
請求項1〜6のいずれかに記載の式(I)の化合物を少なくとも1種と、少なくとも他の薬剤的に容認できる成分、キャリヤー又は希釈剤とを含有する医薬組成物。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−509863(P2012−509863A)
【公表日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−536898(P2011−536898)
【出願日】平成21年11月24日(2009.11.24)
【国際出願番号】PCT/EP2009/065728
【国際公開番号】WO2010/060904
【国際公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【出願人】(505303934)ユニヴァーシタ’デグリ ステュディ ディ フィレンツェ (3)
【出願人】(500254996)
【Fターム(参考)】