説明

感熱印刷用記録シート

【課題】
高速印刷する過程での高温に耐え得る感熱印刷用記録シートであって、受像層からの熱の拡散を抑制することによって鮮明な画像を得るともに、用紙のシワや反りの発生を抑制することが可能な、主として高速印刷のための感熱印刷用記録シート提供する。
【解決手段】
空隙率20〜90%且つ厚さ3〜100μmである熱可塑性樹脂製多孔質層を基材層の少なくとも片面に含むことを特徴とする感熱印刷用記録シートである。更には、感熱印刷用記録シートが、基材層、熱可塑性樹脂製多孔質層及び受像層をこの順に積層した構造を含み、厚さ100μm〜300μmである。また、熱可塑性樹脂がポリオレフィン樹脂の少なくとも1種を主成分とし、融点が130℃〜280℃である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感熱方式による印刷用記録シートに関し、受像時に受像層からの熱の拡散を抑制することによって鮮明な画像を得るとともに、熱履歴による皺や反りを抑制する記録シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、サーマルヘッドを用いて情報を感熱記録する方法として、例えばインクを加熱して溶融して受像あるいは転写させる方式、熱により分解して受像させる方式、シート中のインクを熱で昇華させて受像あるいは転写させる方式、又はシート中のインクを内蔵したミクロカプセルを熱で溶融して受像させる方式等が広く利用されている。そして、そのための特殊な感熱方式印刷用紙が開発されている。これらの用紙は通常、基材として紙や合成紙、場合によっては樹脂フィルムを用いているが、天然繊維に由来する紙等は、平滑性が不十分なために用紙とサーマルヘッドとの密着性に欠け、そのため印刷物の鮮明度に欠ける。また、印刷時の水分や熱により、乾燥後にカールするという問題点がある。一方、樹脂フィルムは剛性に欠け、いわゆる腰がないため印刷用紙としては使用態様が限定される。
そこで、紙を基材にして受像層などの機能を有する樹脂層を積層した記録用紙がいくつか報告されている。例えば、サーマルヘッドからの熱を感熱記録紙の内部で吸収して、基材層を構成する紙が高温とならない記録用紙が考えられた(例えば、特許文献1参照)。特許文献1の記録用紙は、紙製の基材の両表面に、主成分がポリエチレンテレフタレートで小さな孔を有するシート状のミクロボイド層、更にその片方の面の上に染料受容層を有するものである。この記録用紙は、印刷物の解像度ならびに用紙の反り防止には効果が認められるが、特に高速化した感熱式印刷をするには、ミクロボイド層のクッション性ならびに断熱性が更に求められる。また、ポリエチレンテレフタレートは吸湿しやすいのでシワや反りが発生したり、剛性が強いので保存や運搬する場合に硬くてロール状にすることが難しいことも克服すべき課題として残されている。
【0003】
【特許文献1】特開平02−225086号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、高速印刷する過程での高温に耐え得る感熱印刷用記録シートに関し、受像層からの熱の拡散を抑制することによって鮮明な画像を得るともに、用紙のシワや反りの発生を抑制することが可能な、主として高速印刷のための感熱印刷用記録シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、空隙率20〜90%且つ厚さ3〜100μmである熱可塑性樹脂製多孔質層を基材層の少なくとも片面に含むことを特徴とする感熱印刷用記録シートに関する。更には、感熱印刷用記録シートが、基材層、熱可塑性樹脂製多孔質層及び受像層をこの順に積層した構造を含み、厚さ100μm〜300μmである上記記載の感熱印刷用記録シートであり、好ましくは熱可塑性樹脂製多孔質層が不織布である。
また、熱可塑性樹脂が、ポリオレフィン樹脂から選ばれる少なくとも1種を主成分とし、融点が130℃〜280℃である上記に記載の感熱印刷用記録シートである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明は、熱可塑性樹脂製多孔質層を基材層の少なくとも片面に含む感熱印刷用記録シートであり、以下、詳細について説明する。
【0007】
基材層
本発明に係る基材層は、主に天然成分由来の紙、半合成紙或いは合成紙が用いられるが、その他に樹脂フィルム、繊維織布、不織布、金属箔、無機シート或いはこれらを組み合わせた複合シートを任意に用いることができる。
合成紙としては、公知の種々のものを使用することができ、例えばポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン樹脂もしくはその他の合成樹脂を樹脂成分として、これに無機質充填剤などを添加して混合し、押し出して製造したもの、またはポリスチレン樹脂もしくはポリプロピレン樹脂等のフィルムの表面に耐湿性顔料を塗工して製造したもの等が挙げられるがこれに限定されるものではない。
【0008】
熱可塑性樹脂製多孔質層
本発明に係る熱可塑性樹脂製多孔質層は、基材層の少なくとも片面に有し、そうすることにより、サーマルヘッドからの付与される熱或いは予熱方式で加熱したときの熱が熱可塑性樹脂製多孔質層で拡散するので、基材層に熱が高温のまま伝達されることを妨げ、基材層に皺や反り等が発生することを防ぐことができる。通常は、熱可塑性樹脂製多孔質層は基材層と受像層との間にある。熱可塑性樹脂製多孔質層の空隙率は20〜90%であり、好ましくは40〜85%である。空隙率が小さすぎると熱の拡散が不十分となり基材層が反る等する虞がある。空孔は細かく、均一で孔径分布が狭いものが好ましい。また、空孔の構造は一方の面から他方の面に連通 していても、一方が閉塞したものあるいは両方が閉塞した独立孔(ボイド)であって連通していても良い。
なお、空隙率(%)は、一般に以下の式により求められる。
空隙率 (%)=(1−嵩密度/真密度)×100
【0009】
嵩密度は、通常、多孔質シートの目付け、あるいは坪量とシートの厚みから求められる。また、真密度は樹脂材の密度である。
【0010】
本発明に係る熱可塑性樹脂製多孔質層の厚さは、目的に応じて適宜選択することができるが、通常は3μm〜100μmであり、好ましくは5μm〜50μmである。適度に厚い場合には、クッション性が高く、感熱印刷用記録シートをロール巻きにして保存又は運搬する際に巻き癖が発生することを防止できる。また、本発明に係る熱可塑性樹脂製多孔質層は、目付量が好ましくは5〜100g/m2、特に好ましくは5〜20g/m2であり、繊維径は0.7μm〜30μm、特に好ましくは1μm〜20μmである。
【0011】
本発明に係る熱可塑性樹脂製多孔質層は、上記空隙率を有するフィルムあるいはシートであって、具体的には空孔を有する、多孔シート、発泡体および繊維構成体などが挙げられる。
【0012】
多孔シートの場合は、その空孔の形状は、表面に通じる連続孔でも内部に閉鎖された空孔でも良く、形も球状、扁平状、直方体などいずれでも良い。一般的には、熱可塑性樹脂に有機或いは無機の添加物を溶融混合し、溶融押出ししたシートを延伸することによって空孔を発生することによって製造される。
【0013】
発泡体の場合は、例えば熱可塑性樹脂中に気化する物質等の発泡剤を混合して気泡を発生させたものが挙げられる。本発明に用いる発泡剤としては、特に制限なく公知の種々のものを使用することができる。具体的には、化学発泡剤として、炭酸水素ナトリウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、亜硝酸アンモニウム、クエン酸、アゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリル、ベンゼンスルホニルヒドラジド、アゾジカルボン酸バリウム、ジニトロソペンタメチレンテトラミン、P,P’−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド、P−トルエンスルホニルヒドラジド、P−トルエンスルホニルアセトンヒドラゾーン等が挙げられる。また、物理発泡剤としては、プロパン、ブタン、ペンタン、イソブタン、ネオペンタン、イソペンタン、ヘキサン、エタン、ヘプタン、エチレン、プロピレン、石油エーテル等の炭化水素、メタノール、エタノール等のアルコール、メチルクロライド、メチレンクロライド、ジクロロフルオロメタン、クロロトリフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン、クロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン等のハロゲン化炭化水素、二酸化炭素、窒素、アルゴン、水等が挙げられる。これらの発泡剤は、1種単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。また、これらの発泡剤の中でも、安全性、経済性等の観点から二酸化炭素が好ましい。本発明に用いる発泡核剤としては、たとえば炭酸カルシウム、クレー、タルク、シリカ、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、カーボンブラック、二酸化珪素、酸化チタン、プラスチック微小球、オルトホウ酸、脂肪酸のアルカリ土類金属塩、クエン酸、炭酸水素ナトリウム(重曹)などからなる1種または複数種の組み合わせが挙げられる。この中で特に、クエン酸と炭酸水素ナトリウム(重曹)との組み合わせが好ましい。
気泡の分布としては微細な孔が均一にあるものが好ましい。
【0014】
繊維構成体の場合は、好ましくは不織布を挙げることができる。不織布は、空孔が細かく、均一で孔径分布が狭く、また表面の平滑性にも優れている点で特に好ましい。不織布を構成する繊維は、短繊維、長繊維、合成繊、半合成繊維、再生繊維或いは複合繊維等が用いられ、これらの繊維が混合したものであっても良い。
本発明に係る不織布は、公知の種々の方法で得ることができ、例えば、スパンボンド法、メルトブローン法、フラッシュ紡糸法、トウ開繊法、バーストファイバー法あるいは湿式法などで得たウエッブを形成し、熱エンボスロール等熱接着法、ホットメルトなど接着剤接着法、ニードルパンチ、水流パンチなど機械的交絡法等により3次元の網目構造を採ることができる。この中でも繊維径が細く、孔径が小さく、孔径分布が狭い不織布が得られることからメルトブローン法を用いることが特に好ましい。
【0015】
本発明に係る不織布は、目付量が好ましくは5〜100g/m2、特に好ましくは5〜20g/m2であり、繊維径は0.1μm〜30μm、特に好ましくは1μm〜20μmである。メルトブローン法の場合には、素材の種類にもよるが、目付量は5〜50g/m2、好ましくは5〜20g/m2、繊維径は0.7μm〜20μm、好ましくは1μm〜10μmである。
【0016】
本発明に係る熱可塑性樹脂製多孔質層の素材は、少なくとも1種の熱可塑性樹脂を主成分としてなり、熱可塑性樹脂は、単独重合体であっても共重合体であっても良い。熱可塑性樹脂としては、種々公知のものが用いられるが、中でもポリオレフィン、ポリエステル又はポリアミドは取り扱いが容易なことから好ましい。具体的には、ポリオレフィンとしては、エチレン、プロピレン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル・1−ペンテン、1−ヘプテン、1−ブテン、1−オクテンなどの炭素原子が2以上のα−オレフィンの単独重合体、これらオレフィンの2種以上の共重合体が挙げられる。ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、全芳香族ポリエステル又はポリ乳酸等が挙げられる。ポリアミドとしては、ナイロン−6、ナイロン−66、ポリメタキシレンアジパミド又は芳香族ポリアミド等が挙げられる。熱可塑性樹脂は、単独重合体であっても、共重合体であっても良い。
これらの中でも、ポリプロピレン、4−メチル・1−ペンテン重合体など比較的融点の高いポリオレフィン樹脂は吸湿性が低いので、感熱印刷用記録シートが膨張して撓む等の虞がないため特に好ましい。本発明に係る熱可塑性樹脂製多孔質層の熱可塑性樹脂は、好ましくは融点が130℃〜280℃であり、融点が150℃を超えるものが特に好ましい。熱可塑性樹脂は複数種類組み合わせても良く、その組み合わせは目的に応じて適宜選択することができる。
【0017】
本発明の熱可塑性樹脂製多孔質層は、目的を損なわない範囲で公知の種々の添加剤を混合していても良い。例えば、滑剤、難燃剤、安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、界面活性剤、易滑剤、顔料、蛍光塗料等の添加剤を用いることができる。これらの添加剤は、熱可塑性樹脂に混合しても良いし、熱可塑性樹脂製多孔質層を成形した後に塗布または含浸等することができる。
【0018】
受像層
本発明に係る受像層は、インクを受け、インクを発色させ、それを定着させる層であり、均一で平滑性に優れた薄いフィルムである。通常は、ベースとなるポリマーにインク定着剤、及び、必要に応じて各種添加剤を混入した受像層用樹脂からなり、厚さは、目的にもよるが一般的には0.1μm〜50μmである。
【0019】
ベースとなるポリマーとしては、ポリエステル、ポリカーボネートあるいはポリオレフィン等が用いられ、ポリエチレンテレフタレート或いはポリプロピレンが耐熱性やインク定着剤との相溶性が良い点で好ましく使用される。
インク定着剤としては、水酸基、カルボン酸基或いはエステル基を有する、分子量が大きい有機化合物或いは低重合度の樹脂等が用いられる。特に多価アルコール或いは高級脂肪酸等がインクとの相溶性が良く、保存性も良いため好ましい。
【0020】
本発明の受像層は、インクの移動や定着の為に改質オイルや、インクの発色を良くする各種化合物を用いることができる。また、必要に応じて、難燃剤、安定剤、酸化防止剤、にじみ防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、界面活性剤、易滑剤、顔料、蛍光塗料等の添加剤を用いることができる。
【0021】
感熱印刷用記録シート
本発明の感熱印刷用記録シートは、上記の基材層、熱可塑性樹脂製多孔質層を含んでなり、熱可塑性樹脂製多孔層は基材層の少なくとも片面にある。このような構造にすることにより、サーマルヘッド等から伝わった熱が熱可塑性樹脂製多孔層で吸収され、基材層への熱の拡散を防止し、感熱印刷用記録シートのシワあるいはカールの発生を防ぐことができるので、好ましい。本発明の感熱印刷用記録シートは、通常は、基材層、熱可塑性樹脂製多孔層及び受像層をこの順に積層した構造を有し、熱可塑性樹脂製多孔層で熱が遮断されるので、受像層から熱が拡散することを防ぎ、受像中での感熱性インクの拡散を防止するので印字を鮮明にする。
さらに、基材層の裏面に同じ熱可塑性樹脂製多孔質層を積層することによって、さらにシワ、カールを防止することができるので好ましい。両面に印刷する記録印刷シートの場合には、表面から、受像層/熱可塑性樹脂製多孔質層/基材層/熱可塑性樹脂製多孔質層/受像層の順に配した積層体からなる。
【0022】
本発明の感熱印刷用記録シートは、厚さ100μm〜300μmであり、好ましくは150μm〜250μmである。また、基材層、熱可塑性樹脂製多孔質層、受像層の厚さの比率は、通常、約1:12:45である。感熱印刷用記録シートの厚さ、それを構成する各層の比率は目的に応じて適宜選択することができる。
【0023】
本発明の感熱印刷用記録シートは、上記の基材層、熱可塑性樹脂製多孔質層及び受像層が、隣接する層同士が接着されており、接着は公知の種々の方法で行うことができる。基材層及び熱可塑性樹脂製多孔質層との積層と、熱可塑性樹脂製多孔質層及び受像層との積層は、同時に行っても、どちらか一方を先に行っても良いが、製法が容易なことから基材層と熱可塑性樹脂製多孔質層との積層を先に行った方が好ましい。また、予め作成した各層同士を積層しても、予め作成した一方の層の上に他層をオンラインで積層しても良い。
【0024】
基材層と熱可塑性樹脂製多孔質層との間では、例えば、熱可塑性樹脂製多孔質層がスパンボンド法によるものである場合には、基材層上に直接スパンボンド法により繊維を溶融紡糸して不織布層としても良い。
基材層が天然素材のパルプ由来の紙の場合には、接着性を改良するため、紙の表面に熱可塑性樹脂製多孔質層よりも融点の低い熱可塑性樹脂をラミネートしておき、ホットメルト接着により熱可塑性樹脂製多孔質層を接着することができる。この場合、ラミネート材としては低分子量のポリオレフィン樹脂、低密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体などが好ましい。
【0025】
熱可塑性樹脂製多孔質層と受像層との間では、例えば、熱可塑性樹脂製多孔質層に接着剤層を設けてその上にフィルム状に成形した受像層を積層することもできるし、熱可塑性樹脂製多孔質層に上記受像層用樹脂をブレードコーター、ロールコーター、ロッドコーター等を用いて塗布することもできる。その場合には、塗布する受像層用樹脂の量は熱可塑性樹脂製多孔質層の凹凸を平滑にするだけの塗布量があればよく、通常は乾燥重量で0.1〜30g/m2であり、好ましくは0.5〜10g/m2の範囲である。
受像層の組成の均一化を図るためには、また表面の平滑性をうるためには前者の積層法が好ましいが、積層の仕方は目的によって選択することができる。
【0026】
本発明の感熱印刷用記録シートは、上記の層の他に必要に応じて他の層を積層することができ、その層の位置は特に限定されず、基材層の受像層と反対側に積層しても良い。積層する層としては、例えば、帯電防止層、吸湿防止層、反射防止層、着色層、補強層粘着層、平滑層などがあげられる。また、前記熱可塑性樹脂製多孔質層やカール防止フィルムなどであっても良い。これらは用途に応じて種類、厚さ等を適宜選択することができる。とくに、基材層を上記の熱可塑性樹脂製多孔質層2層でサンドイッチした記録シートは使用前の保管時ならびに印刷後にカール発生、シワの発生を著しく抑制できるので特に好ましい態様である。
【0027】
本発明の感熱印刷用記録シートは、感熱印刷インクにより印刷が可能であり、インクとしては公知の種々のものを用いることができる。例えば、受像する方法によりインクを分類すると、インクを熱で溶融噴射するタイプ、インクを記録シート上で熱分解させるタイプ、インクを熱で昇華させるタイプ又はインクを包んだマイクロカプセル等を熱溶融させるタイプ等が挙げられる。この中でインクを熱で昇華させるタイプのものが高速で印刷するために一般的に用いられる。またインクは油性又は水性のいずれであっても良く、印刷条件等で選択することができる。
【0028】
本発明の感熱印刷用記録シートは、感熱印刷方法により印刷するのに用いることができる。感熱印刷法とは、情報により射出量を制御してプリントするインクジェット方式或いはインクリボンなどに印刷して、これを熱転写する方式等のことをいう。具体的には、サーマルファクシミリ、ビデオプリンター、バーコードプリンター等の直接感熱記録プリンタに使用することができるが、凸版印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷、溶剤型オフセット印刷、紫外線硬化型オフセット印刷、シートの形態でもロールの形態の輪転方式の印刷等により印刷或いは印字することもできる。
【実施例】
【0029】
以下に本発明を更に詳細に説明するために、実施例を記載するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。尚、評価方法は以下のとおりである。

(1)空隙率
空隙率 (%)=(1−嵩密度/真密度)×100
で表されるが、通常は慣用的単位を用いて次のように求められる。
空隙率(%)=[1−(目付または坪量(g/m2)/(厚み(mm)×密度(g/cm3)))
×100
樹脂材の密度はASTM D1505により求めた。
(2)見かけ密度
一辺10cmの正方形に切り取り、厚さ及び重量を測定した。
(3)目付け量
一辺10cmの正方形に切り取り、重量を測定し1m当りに換算した。
(4)厚さ
一辺10cmの正方形に切り取り、デジタル式厚み計で測定した。
(5)画像品質の評価方法
各実施例及び比較例で作製した感熱印刷用記録シートを、昇華熱転写プリンタ(ソニー製UP−5500)によるプリント工程に供して記録シートの画像受容層面上に、ブラック階調画像をプリントし、この画像のSTEP14の濃度をマクベス濃度計(サカタインクス社製、モデル:RD−914フィルター無し)によって測定した。
形成された熱転写画像の品質について、目視にて観察する。判断基準は以下の通り。
〇:画像は鮮明であり、印字濃度が低い所から高い所までの、色再現性が良好であり、画像にムラがない。
△:画像の鮮明性に少し欠け、印字濃度が低い所から高い所までの、色再現性がやや不良であり、画像にムラが部分的にある。
×:画像の鮮明性に欠け、印字濃度が低い所から高い所までの、色再現性が不良であり、画像にムラが部分的にある。
(6)印刷後の反りの評価方法
各実施例及び比較例で作製した感熱印刷用記録シートをプリンタへ通して印刷した印刷シートを、湿度23℃、相対湿度50%の雰囲気下、平らな台の上に2分間放置し、印刷シート4隅の反りの高さを測定し評価した。
○:4隅のカール高さの最大値が15mm未満。
△:4隅カール高さの最大値が15〜30mm未満
×:4隅カール高さの最大値が30mm以上
【0030】
実施例1
4−メチル−1−ペンテン共重合体(商品名:TPX DX820、三井化学(株)製、融点240℃、密度0.833、260℃、5kg荷重におけるメルトフローレート180g/10分)をメルトブローン法により、樹脂温度350℃、紡糸エア量60Nm/kg(樹脂1kgを紡糸するのに使用するエア量)で紡糸し、ウェブフォーマーにて捕集し、160℃のカレンダーロール装置で押圧して、繊維径2.7μm、目付け量12g/m、厚さ28μm、空隙率52%の不織布を得て、これを熱可塑性樹脂製多孔質層とした。
基材層として、コート紙(王子製紙製OKコート、目付け量:127.9g/m)。この紙に接着剤として高圧法低密度ポリエチレンを両面に塗布し、その両面上に前記記載の同一の不織布を重ね、130℃の熱ロールをかけて接着した。
次に、一方の不織布の上に、厚さ4.5μmのポリエチレンテレフタレート2軸延伸フィルムを受像層用ベース樹脂としてロールコーターで塗布して乾燥し、その上にさらに、インク受理層を設けた。インク受理層の塗被物は、カルボキシメチルセルロース(セロゲン7A:エーテル化度0.7〜0.8:第一工業製薬社製)100部、コロイダルシリカ(スノーテックスC:日産化学社製)20部を用い、固形分濃度15%に調整して得た。次いで該塗被物を、エアーナイフコーターにより乾燥塗工量5g/m2となるように塗工し、これを乾燥させてインク受理層を形成した。
得られた感熱印刷用記録シート全体の厚さは210μmであった。
また、得られた感熱印刷記録シートを、上記の画像受像評価方法及び印刷後の反りの評価方法で評価した。結果を(表1)に示した。
【0031】
実施例2
ポリプロピレン(商品名:三井ポリプロF107DV、三井化学(株)製、融点165℃、230℃、2160g荷重におけるメルトフローレート7g/10分)を、二酸化炭素を発泡剤として用いた押出発泡法により、押出温度175℃としたTダイから押出して、厚さ50μm、空隙率40%の発泡体を得て、これを熱可塑性樹脂製多孔質層とした。
基材層として、コート紙(王子製紙製OKコート、目付け量:127.9g/m)。この紙に接着剤として高圧法低密度ポリエチレンを両面に塗布し、その両面上に前記発泡体を重ね、130℃の熱ロールをかけて接着した。
次に、一方の発泡体の上に、厚さ4.5μmのポリエチレンテレフタレート2軸延伸フィルムを受像層用ベース樹脂としてロールコーターで塗布して乾燥した。
実施例1と同じ方法でインク受理層を設けて感熱印刷用記録シートを得た、シート全体の厚さは230μmであった。
実施例1と同じ方法で評価した。結果は(表1)の通りであった。
【0032】
比較例1
実施例1で用いた不織布に変えて、4−メチル−1−ペンテン共重合体(商品名:TPX DX820、三井化学(株)製、融点240℃、260℃、5kg荷重におけるメルトフローレート180g/10分)からなる厚さ28μmのフィルムを用いた以外は、実施例1と同様にして感熱印刷用記録シートを作成した。
得られた感熱印刷用記録シートの厚さは210μmであった。実施例1と同じ方法でインク受理層を設けて感熱印刷用記録シートを得た、シート全体の厚さは230μmであった。
実施例1と同じ方法で評価した。結果は(表1)の通りであった。
【0033】
(表1)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
空隙率20〜90%且つ厚さ3〜100μmである熱可塑性樹脂製多孔質層を基材層の少なくとも片面に有することを特徴とする感熱印刷用記録シート。
【請求項2】
感熱印刷用記録シートが、基材層、熱可塑性樹脂製多孔質層及び受像層をこの順に積層した構造を含み、厚さ100μm〜300μmである請求項1記載の感熱印刷用記録シート。
【請求項3】
熱可塑性樹脂製多孔質層が不織布である請求項1又は2記載の感熱印刷用記録シート。
【請求項4】
熱可塑性樹脂が、ポリオレフィン樹脂から選ばれる少なくとも1種を主成分としてなり且つ融点が130℃〜280℃である請求項1〜3のいずれかに記載の感熱印刷用記録シート。


【公開番号】特開2006−168184(P2006−168184A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−363636(P2004−363636)
【出願日】平成16年12月15日(2004.12.15)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】