説明

感熱磁気記録媒体

【課題】従来、磁気記録層の色を遮蔽する方法として、磁気記録層と白色層の間に金属による反射層を設けていた。この方法は、工程が複雑になり、磁気カード本体がコスト高になるという課題があった。
【解決手段】前記課題を解決するために、支持基材の片面全面に磁気記録層が形成され、磁気記録層を遮蔽するために磁気記録層の上全面に遮蔽層が形成され、遮蔽層の上全面に熱によって発色する感熱記録層が形成された感熱磁気記録媒体であって、遮蔽層は白色顔料を含む材料で構成し、遮蔽層と感熱記録層の間に放射線硬化型材料で構成されたバリア層を形成するか、感熱記録層を放射線硬化型材料で構成した感熱磁気記録媒体を提供するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気記録層ならびに感熱発色層を有する感熱磁気記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、乗り物で使用されるプリペイドカード,商店で使用されるポイントカード等は、片側全面に磁気記録部が形成され、磁気記録情報の一部を可視化するために、熱によって発色する感熱記録部が形成されている。
前述の感熱記録部(以下、感熱記録層ともいう)は、磁気記録面と同一面に設けることも、逆面に設けることもできるが、多くの場合、カードの片面にはカードとしての必要なデザインや印刷を行う必要性があることから、感熱記録層は磁気記録部が形成されている面と同一面に設けられている。
感熱記録層を磁気記録層と同一面に設ける場合、感熱記録層に印字された印字が明瞭に見えるように磁気記録層と感熱記録層の間に金属による反射層を設けている。
さらに視認効果を高めるために、金属による反射層の上に白色の遮蔽層(以下、白色層ともいう)を設ける方法が提供されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】実開平4−90581号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されている方法は、磁気記録層と白色層の間に金属による反射層を設けるために工程が複雑になり、磁気カード本体がコスト高になるという課題がある。
そこで、白色層だけで遮蔽することも提案されているが、白色層の上に感熱記録層を設ける場合に白色層が厚くなってしまい、磁気記録の際にスペースロスが発生するという問題がある。このように白色層を厚くしている原因は、白色層の上の感熱記録層にある。
即ち、感熱記録層を形成する際に感熱記録塗料が白色層に浸透して、遮蔽効果を低下させているのである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するために、本発明の感熱磁気記録媒体の請求項1に記載の発明は、支持基材の片面全面に磁気記録層が形成され、磁気記録層を遮蔽するために磁気記録層の上全面に遮蔽層が形成され、遮蔽層の上全面に熱によって発色する感熱記録層が形成された感熱磁気記録媒体であって、遮蔽層は白色顔料を含む材料で構成し、遮蔽層と感熱記録層の間に放射線硬化型材料で構成されたバリア層を形成するか、感熱記録層を放射線硬化型材料で構成したことを特徴とするものである。
【0006】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、放射線硬化型材料は、紫外線硬化型樹脂,電子線硬化型樹脂の何れかであることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
1)請求項1に記載のように、支持基材の片面全面に磁気記録層が形成され、磁気記録層を遮蔽するために磁気記録層の上全面に遮蔽層が形成され、遮蔽層の上全面に熱によって発色する感熱記録層が形成された感熱磁気記録媒体であって、遮蔽層は白色顔料を含む材料で構成し、遮蔽層と感熱記録層の間に放射線硬化型材料で構成されたバリア層を形成するか、感熱記録層を放射線硬化型材料で構成したことによって、例えば、放射線硬化型材料として浸透が遅い水系溶剤を使用することができ、遮蔽層が感熱記録層を構成する塗料またはインキによって浸透破壊されることがなく、遮蔽層を薄い構成とすることができる。その結果、先ず、磁気記録/読取精度を高めることができる。
また、白色度が高まれば、その上に印字された印字の視認性が向上する。
また、感熱記録層上に意匠性に優れた印刷を施すことができる。
また、製造工程を短縮することによって、安価な感熱磁気記録媒体の提供を可能とすることができる。
2)請求項2に記載のように、請求項1に記載の発明において、放射線硬化型材料は、紫外線硬化型樹脂,電子線硬化型樹脂の何れかであることによって、市販の放射線源の使用を可能にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図面を参照して、本発明の感熱磁気記録媒体について説明する。
図1は、本発明の感熱磁気記録媒体の断面の一例,図2は、本発明の感熱磁気記録媒体の断面の他の一例,である。
【0009】
図1を参照して、本発明の感熱磁気記録媒体の断面の一例について説明する。
図に示すように、感熱磁気記録媒体1は、支持基材2の片面に、磁気記録層3,磁気記録層の色を遮蔽するための白色層4,感熱印字を行うための感熱記録層5,必要であれば保護層7がこの順に形成されている。
保護層7は、感熱記録層5に記録された情報を物理的損傷や、化学薬品,日常使用されている化学調味料,洗剤,油などによるアタックから護るため、および、感熱ヘッドによる印字時の耐熱性や滑性を付与し、スティッキング防止のために設けられる。
保護層7は、感熱記録層5を構成している樹脂が前述の機能を備えていれば設ける必要はない。
以下に、各層に形成される材料の一例について説明する。
【0010】
(支持基材)
例えば、ポリエステル,ポリカ−ボネ−ト,ポリアミド,ポリイミド,アクリル,ポリプロピレン,ポリエチレン,ポリ塩化ビニルなどの樹脂、または、樹脂などを含浸させた含浸紙等を使用することができる。
支持基材は、感熱磁気記録媒体の各層を形成する際に、熱などの影響を受けるために、耐熱性を有し、製品となった後で衝撃や、曲げに対して強い材料が使用されることが好ましい。
また、感熱磁気記録媒体がカードとして使用される場合は、読取装置との関連で、支持基材の厚さは、材質によっても異なるが、0.18mm〜0.50mm程度のものが好ましい。
【0011】
(磁気記録材料)
磁気記録層を形成するための塗料は、前述の支持基材に対応する、例えば、ポリエステル樹脂,ポリウレタン樹脂,ポリアクリル酸エステル樹脂,エポキシ樹脂,塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体樹脂,スチレン・ブタジエン共重合体樹脂の中から選択された樹脂に、以下に掲げる磁性粉を均一に分散し、必要に応じて分散剤,帯電防止剤,可塑剤等を添加して作製する。
磁気記録材料に使用される磁性粉は、γ−Fe23,Fe34,γ−Fe23およびFe34の混合粉,Co含有Fe23,Baフェライト,Srフェライト等から選択される。
外部磁界に強い磁気記録層とする場合は、保磁力または抗磁力が1500〜5000エルステッドのBaフェライト、Srフェライト等の磁性粉から選択して使用する。
【0012】
塗料の塗布方法として、ドクターコート,ブレードコート,エアナイフコート,スクイズコート,リバースロールコート,グラビアコート,トランスファーロールコート,カーテンコート,エクストルージョンコート等の方法が有り、これら何れかの方法によって磁気記録層を形成する。
また、薄い塗膜で高い磁気出力を得たい場合は、塗布物が乾燥炉に入る前に、例えば、永久磁石の間を通過させ、磁性粉を配向してバインダ中に固定する。
【0013】
(遮蔽層)
白色顔料は、公知のもの、例えば、アルミニウム,亜鉛,マグネシウム,バリウム,チタン等の炭酸塩,酸化物,水酸化物,硫酸塩など、及び天然シリカ,クレー,ゼオライト,カオリン,焼成カオリン等の粘土類を含む無機系白色顔料等から選択して使用する。
【0014】
(感熱記録層)
感熱記録層で用いられる公知の発色剤としては、例えば、キサンテン系化合物として、ローダミンBアニリノラクタム、3−ジエチルアミノ−7−ジベンジルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−オクチルアミノフルオラン、3−(N−エチル−N−トリル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ピペリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−エチル−N−トリル)アミノ−6−メチル−7−フェネチルフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(4−ニトロアニリノ)フルオラン、3−ジブチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン等から選択して使用することができる。
また、トリアリールメタン系化合物として、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)フタリド、3−(p−ジメチルアミノフェニル)−3−(2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3,3−ビス(1,2−ジメチルインドール−3−イル)−5−ジメチルアミノフタリド、3−p−ジメチルアミノフェニル−3−(1−メチルピロール−2−イル)−6−ジメチルアミノフタリド等から選択して使用することができる。
また、ジフェニルメタン系化合物として、4,4’−ビス−ジメチルアミノフェニルベンズヒドリルベンジルエーテル、N−ハロフェニルロイコオーラミン、N−2,4,5−トリクロロフェニルロイコオーラミン等から選択して使用することができる。
また、 また、チアジン系化合物として、ベンゾイルロイコメチレンブルー、p−ニトロベンゾイルロイコメチレンブルー等から選択して使用することができる。
また、スピロ系化合物として、3−メチルスピロジナフトピラン、3−エチルスピロジナフトピラン、3,3’−ジクロロスピロジナフトピラン、3−ベンジルスピロジナフトピラン、3−メチルナフト−(3−メトキシベンゾ)スピロピラン、3−プロピルスピロベンゾピラン等から選択して使用することができる。
なお、これらは単独もしくは2つ以上混合して使用することができる。
【0015】
感熱記録層で使用される顕色剤としては、フェノール誘導体、芳香族カルボン酸誘導体あるいはその金属化合物、N,N’−ジアリールチオ尿素誘導体等が使用される。
好ましくは、フェノール誘導体であり、具体的には、1,1−ビス(p−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(p−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(p−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(p−ヒドロキシフェニル)ヘキサン、ビスフェノールスルフォン、ビス(3−アリル−4−ヒドロキシフェニル)スルフォン、4−ヒドロキシ−4’−イソプロピルオキシジフェニルスルフォン、3,4−ジヒドロキシ−4’−メチルジフェニルスルフォン、ジフェノールエーテル、p−ヒドロキシ安息香酸ベンジル、p−ヒドロキシ安息香酸プロピル、p−ヒドロキシ安息香酸ブチル等から選択して使用することができる。
【0016】
本発明の感熱記録層形成に使用するバインダーは、電子線硬化性樹脂、または、紫外線硬化樹脂から選択して使用する。
電子線,紫外線による硬化は、熱硬化性樹脂の予備重合物であるプレポリマー,オリゴマー等の液状樹脂が、流動性のある柔らかい状態から三次元網目を形成して、硬いプラスチック状態になる。
例えば、前記電子線による硬化手段によれば、室温で、しかも、高速処理が可能であるために、熱に弱い支持基材あるいは熱容量の大きい素材への適用が可能である。また、電子線による硬化には、加速電圧が100〜300KVの電子線加速器を用いる1パスの吸収線量が0.5〜20Mradになるように調整する。
【0017】
電子線硬化性樹脂としては、分子末端、または、分子側鎖にラジカル重合硬化性の官能基を有する不飽和ポリエステル,変性不飽和ポリエステル,アクリル系ポリマーおよびエチレン不飽和結合を有するポリマー,およびモノマーなどが単体でまたは他の溶剤とともに使用することができる。例えば、ポリエステルポリアクリレート,ポリエステルポリメタクリレート,ポリウレタンポリアクリレート,ポリウレタンポリメタクリレート,単官能アクリレート,単官能メタクリレート,ビニルピロリドン,ポリアミドポリアクリレート,ポリアミドポリメタクリレート,ポリシロキサンポリアクリレート等が挙げられる。
これらの樹脂は単独で使用しても良いし、混合して使用しても良い。
発色剤、または、顕色剤の電子線硬化性樹脂に対する割合は、電子線硬化性樹脂100重量部に対し20〜100重量部が好適とされている。
【0018】
紫外線硬化樹脂として、例えば、N−ビニルピロリドン,アクリルアミド,ジメチルアクリルアミド,アクロイルモルフォリン,エチルカルビト−ルアクリレ−ト,フェニルカルビト−ルアクリレ−ト,ヒドロキシエチルアクリレ−ト等のアクリレ−ト系の単官能モノマ−,または,ポリエステルアクリレ−ト,エポキシアクリレ−ト,ウレタンアクリレ−ト,ヘキサメチレンビスアクリルアミド等の多官能モノマ−等が挙げられる。
また、光開始剤としては、アセトフェノン類,ベンゾフェノン,ミヒラーケトン,ベンジル,ベンゾイン,ベンゾインアルキルエーテル,ベンジルジメチルケタール,テトラメチルチウラムモノサルファイド,チオキサントン類,アゾ化合物等があり、硬化性樹脂の硬化反応のタイプ,安定性,紫外線照射装置との適性などの観点から選択する。
光開始剤は、紫外線硬化樹脂100重量部に対して、1〜5重量部の範囲で添加し使用する。
【0019】
図2を参照して、本発明の感熱磁気記録媒体の断面の、他の一例について説明する。
図に示すように、感熱磁気記録媒体1は、支持基材2の片面に、磁気記録層3,磁気記録層の色を遮蔽するための白色層4,バリア層6,感熱印字を行うための感熱記録層5,必要であれば保護層7をこの順に形成する。
保護層7は、図1で説明したように感熱記録層5を保護するために設けられる。
感熱記録層5を構成している樹脂が前述の機能を備えていれば設ける必要はない。
バリア層6は、その上に形成される感熱記録層5の溶剤や樹脂分が遮蔽層である白色層に浸透しないように設けるのが目的で厚く形成する必要はなく、乾燥した状態で1〜5μm程度でよい。
バリア層を形成する材料には、前述の放射線硬化樹脂を使用して塗布する。
【0020】
(実施例)
支持基材は市販の二軸延伸の白色ポリエステル(厚さ250μm)を使用した。
また、磁気塗料は、抗磁力2750エルステッドの市販の磁気塗料を使用し、配向しながら、乾燥状態で15μmとなるように塗布した。
白色層は、アクリル系のバインダに、市販の酸化チタン,光重合開始剤を混ぜた塗料を使用し、乾燥状態で5μmとなるように塗布した。
感熱記録層は、紫外線硬化樹脂として、ナガセ化成社製のDA250に光開始剤としてメルク社製ダイキュア−1173を添加し、発色剤として3−(N−エチル−N−トリル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン,顕色剤としてビスフェノールスルフォンを添加し 塗料を作成し、乾燥状態で5μmとなるように塗布した。
塗布装置は、いずれも放射線源を装備したリバースロールコーターを使用した。
出来上がった感熱磁気記録媒体は、磁気記録材料の茶色を完全に遮蔽し、良好な印字特性を得ることができた。
【産業上の利用可能性】
【0021】
プリペイドカード,ポイントカード,IDカード,会員証カード等に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の感熱磁気記録媒体の断面の一例である。
【図2】本発明の感熱磁気記録媒体の断面の、他の一例である。
【符号の説明】
【0023】
1 感熱磁気記録媒体
2 支持基材
3 磁気記録層
4 白色層
5 感熱記録層
6 バリア層
7 保護層


【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持基材の片面全面に磁気記録層が形成され、磁気記録層を遮蔽するために磁気記録層の上全面に遮蔽層が形成され、遮蔽層の上全面に熱によって発色する感熱記録層が形成された感熱磁気記録媒体であって、
遮蔽層は白色顔料を含む材料で構成し、遮蔽層と感熱記録層の間に放射線硬化型材料で構成されたバリア層を形成するか、感熱記録層を放射線硬化型材料で構成したことを特徴とする感熱磁気記録媒体。
【請求項2】
請求項1に記載の感熱磁気記録媒体において、
放射線硬化型材料は、紫外線硬化型樹脂,電子線硬化型樹脂の何れかであることを特徴とする感熱磁気記録媒体。

r 28c;

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−76244(P2007−76244A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−268977(P2005−268977)
【出願日】平成17年9月15日(2005.9.15)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】