説明

感熱記録印刷物、感熱記録印刷物の製造方法、及び感熱記録印刷物の製造装置

【課題】 感熱記録媒体を切断した際における微粉の発生を抑制することである。
【解決手段】 感熱記録媒体2を加熱して切断部位を発色させ、感熱記録媒体2の発色させた領域を切断する。感熱記録媒体2の切断部位を発色させることにより、その発色領域では感熱記録媒体を構成している支持体と感熱記録層との密着度が高くなるとともに感熱記録層の表面近傍に存在する顔料が感熱記録層内に取り込まれるので、この発色領域を切断しても顔料などの微粉の発生が抑制される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感熱記録印刷物、感熱記録印刷物の製造方法、及び感熱記録印刷物の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の感熱記録印刷物は、支持体の表面側に感熱記録層が積層されて形成されている。感熱記録印刷物に対して印字を行うには、一例として、印字ヘッドの発熱素子を感熱記録印刷物に接触させ、この状態で発熱素子を発熱させて感熱記録層を発色させる。これにより、感熱発色層が発色し、所望の文字や図形などが記録される。
【0003】
このような感熱記録媒体では、支持体上に感熱記録層を形成する方法として、ブレードコーター、エアナイフコーター、ロールコーター、バーコーター、グラビアコーター、リップコーター等の塗工装置を用いて感熱インキを塗工する方法が用いられている。このとき、支持体としては、幅が1m前後で数千mのロール紙、又は、大判のシートが使われる。支持体上に感熱記録層を形成した感熱記録媒体は、スリッター、カッターなどで切断されて所望の長さ及び幅の小巻ロール状の感熱記録媒体、あるいは、感熱ラベル等の感熱記録印刷物に加工される。
【0004】
例えば、ロール状の感熱記録媒体を用いる感熱記録印刷物の製造装置では、当該製造装置内にセットされた感熱記録媒体をロール状態から引き出して搬送する搬送部、ロール状態から引き出されて搬送される感熱記録媒体に接触して発熱することにより感熱記録媒体を発色させて印字する印字ヘッド、ロール状態から引き出された感熱記録媒体を所望の長さに切断するカッターを備えている。感熱記録媒体は、印字データに基づいて印字ヘッドを発熱させることによる印字が行われた後、カッターによって所望の長さに切断される(例えば、特許文献1、2参照)。
【0005】
感熱記録媒体は、印字ヘッドの発熱により発色する前の状態では表裏面とも白色であり、印字ヘッドが発熱して感熱記録層が発色することにより、感熱記録層内の発色剤などの成分によって、例えば黒色、赤色、青色などの色に発色する。また、感熱記録媒体には、支持体上に異なる色に発色する複数の領域を有するものもある。
【0006】
【特許文献1】特開2001−180060公報
【特許文献2】特開2002−103286公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
感熱記録印刷物の製造装置内にセットされた感熱記録媒体を切断する場合、感熱発色層の一部が支持体から剥離し、顔料などの微粉が発生する。例えば、支持体が紙の場合には微粉の発生量が多くなるという問題点がある。
【0008】
このような微紛は、切断された感熱記録媒体に付着して運ばれ、他の場所に付着する。例えば、紙粉はカッターや印字ヘッドに付着する。微紛がカッターに付着すると、微粉が付着したカッターで切断動作を行うことによりカッターが刃こぼれ等の損傷を受け易くなり、カッターの耐久性が低下する。また、微粉が印字ヘッドに付着すると、付着した微粉が印字ヘッドと感熱記録媒体との間で研磨剤となって印字ヘッドの保護層にダメージを与えることになり、印字ヘッドの耐久性が低下する。
【0009】
別の問題として、複数色に発色する感熱発色層が形成されている感熱記録媒体の場合は、発色前の色調は、ほぼ透明で白色の色調を有し、それぞれの感熱発色層の発色時の色調を識別することは困難である。そのため、感熱記録媒体を印字ヘッドにより印字する際、感熱発色層が何色に発色するかが事前にわからないという不都合がある。特に、複数色の発色領域を有する感熱記録媒体では、発色する前の状態はほぼ透明で白色であるから、このような感熱記録媒体の発色領域、発色色相を予め知ることはできず、テスト印字を強いられる不都合もある。
【0010】
本発明の目的は、感熱記録媒体を切断した際における微粉の発生を抑制し、製造装置内に設けられたカッターや印字ヘッドの損傷を防ぐことである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、記録面に感熱発色層が形成された感熱記録媒体からなる感熱記録印刷物の製造方法において、前記感熱発色層の領域の一部領域を発色させる工程と、前記一部領域を切断する工程とにより、複数の感熱記録部材を形成するようにし、また、前記一部領域を発色させる工程を、前記一部領域を切断する工程より先に実行する感熱記録印刷物の製造方法およびその製造方法を具現化する製造装置を提供する。
【発明の効果】
【0012】
感熱記録印刷物の端部から発生する紙粉等を低減し、また、異なる色調に発色する感熱発色層が形成されている感熱記録媒体を使用する場合は、感熱記録媒体が何色に発色するかを確認するためのテスト印字を不要とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の第1の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0014】
図1は、感熱記録媒体を使用し、感熱記録印刷物を製造する製造装置の外観を示す斜視図である。この製造装置1は、大判の感熱記録媒体2(図5参照)を矩形形状に切断することにより製造された感熱記録印刷物、例えば、感熱ラベル2aを製造する装置である。また、ロール状に巻回された感熱記録媒体3(図2、図6等参照)を使用可能な構造である。製造装置1の本体ケース4の正面側には、印字された後の感熱ラベル2a又はロール状の感熱記録媒体3が排出される搬出口5、感熱ラベル2a又はロール状の感熱記録媒体3に印字する印字データを表示する表示部6、電源スイッチ7、カッター用スイッチ8が設けられている。本体ケース4の上面には、感熱ラベル2aを挿入する挿入口9が設けられている。
【0015】
図2は、感熱記録印刷物を製造する製造装置1の内部構造を示す側面図である。本体ケース3内には、挿入口9から搬出口5に向けて、搬送ローラ10、ガイド板11、センサ12、ガイドローラ13、プラテンローラ14、印字ヘッド15、搬送ローラ16、センサ17、カッター18が配設されている。印字ヘッド15としては、例えば、サーマルプリンタヘッドが用いられている。本体ケース3内におけるガイド板11の下側には、ロール状に巻回された感熱記録媒体3が着脱可能に収納されている。
【0016】
搬送ローラ10は、駆動モータ27(図3参照)に連結されて回転駆動されるローラであり、搬送ローラ10が回転駆動されることにより挿入口9から挿入された感熱ラベル2aが搬送方向下流側に位置する印字ヘッド15側に向けて搬送される。挿入口9から挿入された感熱ラベル2aは、ガイド板11の上面に沿って進行する。
【0017】
センサ12は、発光素子と受光素子とを備えた反射型タイプのセンサであり、発光素子から出射された光がロール状態から引き出された感熱記録媒体3に当たって反射し、反射した光を受光素子で受光することにより感熱記録媒体3を検知する。
【0018】
ガイドローラ13は、回転可能に支持されたローラであり、ロール状態から引き出された感熱記録媒体3を屈曲させて印字ヘッド15に向けて案内する。
【0019】
プラテンローラ14は、駆動モータ27に連結されて回転駆動され、搬送部として機能するローラであり、プラテンローラ14が回転駆動されることにより感熱ラベル2a又はロール状態から引き出された感熱記録媒体3は搬送方向下流側に位置する搬出口5に向けて搬送される。
【0020】
印字ヘッド15は、ヘッド移動機構(図示せず)に支持されてプラテンローラ14の外周面に接離可能に設けられている。印字ヘッド15におけるプラテンローラ14の外周面に当接される面には複数の発熱素子が配列され、これらの発熱素子は印字データに基づいて選択的に発熱される。プラテンローラ14と印字ヘッド15との間に感熱ラベル2a又はロール状態から引き出された感熱記録媒体3が挟持された状態で印字ヘッド15の発熱素子が選択的に発熱されることにより、感熱ラベル2a又はロール状態から引き出された感熱記録媒体3における発熱した発熱素子と接触した部分が発色し、印字データに応じた印字が行われる。
【0021】
搬送ローラ16は、駆動モータ27に連結されて回転駆動され、搬送部として機能するローラであり、搬送ローラ16が回転駆動されることにより感熱ラベル2a又はロール状態から引き出された感熱記録媒体3は搬送方向下流側に位置する搬出口5に向けて搬送される。
【0022】
センサ17は、センサ12と同様に発光素子と受光素子とを備えた反射型タイプのセンサであり、発光素子から出射された光がロール状態から引き出された感熱記録媒体3又は感熱ラベル2aに当たって反射し、反射した光を受光素子で受光することにより感熱記録媒体3又は感熱ラベル2aを検知する。
【0023】
カッター18は、対向させて配置された一対のカッター刃を有しており、カッター用モータ28(図3参照)の駆動によりカッター刃が移動し、ロール状態から引き出された感熱記録媒体3を切断する。カッター18による切断動作は、カッター用スイッチ8が押された後に感熱記録媒体3が予め設定された寸法搬送され、その搬送が終了した後に行われる。切断された感熱記録媒体3は、感熱記録印刷物3aとして排出口5から排出される。
【0024】
図3は、製造装置1の電気的接続を示すブロック図である。製造装置1は、各部を制御するコントローラ20を有し、このコントローラ20は、各種の演算等を実行するCPU(Central Processing Unit)21、CPU21が行う演算等のための各種プログラムや固定データ等を格納するROM(Read Only Memory)22、CPU21のワークエリアとして機能するRAM(Random Access Memory)23等をバスライン24で接続することにより構成されている。
【0025】
CPU21には、センサ駆動部25を介したセンサ12、17、ヘッド駆動部15aを介した印字ヘッド15、モータ駆動部26を介した駆動モータ27、カッター用モータ28がバスライン24を経由して接続されている。駆動モータ27は、搬送ローラ10、16、プラテン14を回転駆動させるステッピングモータである。また、この製造装置1は、図示しないがケーブル端子やコネクタ端子などの接続部、あるいは光通信部などを備え、これらを介してキーボード、またはパーソナルコンピュータなどの外部装置と接続され、印字データなどの情報が与えられるように構成されている。
【0026】
図4は、製造装置1における印字終了後の感熱記録媒体3の幅方向をライン状に切断する場合の動作について説明するフローチャートである。製造装置1では、ロール状態から引き出されて搬送されている感熱記録媒体3に対して印字ヘッド15を発熱させることによる印字動作が行われ、この印字動作中に感熱記録媒体3を切断する信号が入力されたか否かが判断されている(ステップS1)。感熱記録媒体3を切断する信号は、カッター用スイッチ8が押されることにより入力される。
【0027】
感熱記録媒体3を切断する信号が入力された場合には(ステップS1のY)、印字ヘッド15が感熱記録媒体3の幅方向に沿って直線のライン状に発熱され(ステップS2)、このライン状の発熱により感熱記録媒体3が幅方向に沿って直線のライン状に発色し、ここに、感熱記録媒体3を幅方向に沿って直線のライン状に発色させる手段が実行される。
【0028】
感熱記録媒体3が幅方向に沿って直線のライン状に発色した後、駆動モータ27が所定のステップ数分駆動され(ステップS3)、駆動モータ27が所定のステップ数駆動されることにより感熱記録媒体3のライン状に発色した発色領域がカッター18による切断位置まで搬送され、ここに、感熱記録媒体3のライン状に発色した発色領域をカッター18による切断位置まで搬送する手段が実行される。
【0029】
駆動モータ27がステップ3における所定のステップ数駆動した後、カッター用モータ28が駆動され(ステップS4)、カッター用モータ28が駆動することにより感熱記録媒体3におけるライン状に発色した発色領域がカッター18によって切断され、ここに、感熱記録媒体3のライン状に発色した発色領域をカッター18により切断する手段が実行される。以上については、切断部位が直線状に切断する場合について例示したが、切断する形状が、例えば、曲線の場合は、切断される曲線形状に倣って発色される。
【0030】
図5は、大判の感熱記録媒体2と、この感熱記録媒体2を切断して製造された感熱記録印刷物としての感熱ラベル2aとを示す平面図である。1枚の感熱記録媒体2を切断線a〜fで切断することにより、16枚の感熱ラベル2aが製造されている。感熱記録媒体2の記録面には、赤、青、黒の異なる色調に発色する3色の発色領域がストライプ状に形成され、各感熱ラベル2aがそれぞれ赤、青、黒の発色領域を同じ配置状態で有する位置で切断されている。
【0031】
このような感熱記録媒体2は、支持体に感熱発色層を積層して製造されている。支持体としては、例えば、ポリエチレン、ポリアミド、ポリエステル、ポリプロピレン、塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのプラスチックフィルムや、上質紙、和紙などの紙が使用されている。感熱発色層は、発色剤、顕色剤、および結合剤を主成分として、必要に応じて発色助剤、填剤などの補助剤を含有するものである。発色剤としては、例えば、トリフェニルメンタン系、フルオラン系、フェノチアジン系などのロイコ染料などが使用される。顕色剤としては、例えば、フェノール類、有機酸、固体酸などが使用される。結合剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、セルロース誘導体、水性アクリル樹脂、でんぷん誘導体などの水溶性結合剤や、ポリスチレン、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体などの非水溶性結合剤などが使用される。
【0032】
感熱記録媒体2を切断して感熱ラベル2aを製造する工程において、一部領域の切断線a、c上をサーマルヘッド(図示せず)で加熱してライン状に発色させている。そして、ライン状に発色した発色領域(切断線a、cを含む領域)を切断することにより感熱ラベル2aを製造している。
【0033】
この場合、予め設定されている切断領域である一部領域の発色させる幅は、非印字領域の切断部位を含む領域であって、発色させた後に切断する場合の切断位置の近傍であって、切断位置のばらつきを考慮した必要最小限の幅が設定される。
【0034】
また、切断部位が曲線状の場合は、切断される形状に従って発色させる。また、切断部位の全領域を発色させることが望ましいが、印字条件等の制約で切断領域の主要部のみを発色させる場合も所定の効果を発揮させることができる。
【0035】
各感熱ラベル2aの端部の切断部位には、各色に発色した領域が形成されている。各感熱ラベル2aの端部は、通常の使用において、記録面の非印字領域の少なくとも一部とされるのでこの端部が予め発色していても実用上の弊害はない。
【0036】
ここで、感熱ラベル2aの1辺が発色し、この発色領域に感熱ラベル2aが有する3色の発色領域が含まれているので、感熱ラベル2aを加熱した場合にどの領域が何色に発色するのかを知ることができる。このため、感熱ラベル2aを挿入口9から挿入する際の向きを容易に確認することができる。
【0037】
また、感熱記録媒体2の一部領域上の切断線a、c上を加熱して発色させることにより、その発色領域では感熱記録媒体2を構成している支持体と感熱発色層との密着度が高くなるとともに感熱発色層の表面近傍に存在する顔料が感熱発色層内に取り込まれるので、発色した切断線a、c上を切断しても顔料などの微粉の発生が抑制される。なお、感熱記録媒体2を切断して感熱ラベル2aを製造する工程において、微粉の発生をより一層低減させるためには、全ての切断線a〜f上を加熱して発色させることが好適である。
【0038】
この場合、本実施形態においては、上記一部領域をサーマルヘッド(図示せず)により加熱したので、より効果的に発色層を支持体との密着性を高めることを可能にしたものである。すなわち、サーマルヘッドは、通常、感熱記録媒体に加圧状態で加熱するからである。
【0039】
そして、感熱記録媒体2の切断部位を発色させ、その発色領域を切断して切断時における微粉の発生を抑制することにより、微粉の発生が原因となる様々な不都合を防止することができる。微粉の発生が原因となる不都合としては、例えば、感熱ラベル2aに付着している微粉が商品などに付着して商品イメージを低下させることや、感熱記録媒体2を切断するカッターに付着することである。微粉が付着したカッターで切断動作を行うことにより、カッターが刃こぼれ等の損傷を受け易くなり、カッターの耐久性が低下する。
【0040】
図6は、ロール状に巻回された感熱記録媒体3を示す斜視図である。この感熱記録媒体3は、図5で説明した感熱記録媒体2と同様に、感熱記録媒体3の記録面には、赤、青、黒の異なる色調に発色する3色の発色領域がストライプ状に形成されている。この感熱記録媒体3を製造装置1にセットして使用した場合、ロール状態から引き出された感熱記録媒体3に対して印字ヘッド15により印字データに応じた印字が行われ、印字終了後には、カッター18により切断され感熱記録印刷物3aとして排出される。感熱記録媒体3におけるカッター18によって切断される位置は、感熱記録媒体3の幅方向に沿って印字ヘッド15により加熱されてライン状に発色している。
【0041】
このため、使用途中の感熱記録媒体3を製造装置1内から一旦取外し、その後に再度、製造装置1内にセットする場合、当該感熱記録媒体3が何色に発色する感熱記録媒体3であるかを容易に確認することができる。
【0042】
図7は、感熱記録媒体3の加熱領域と非加熱領域との断面模式図である。感熱記録媒体3におけるカッター18による切断位置を加熱して発色させることにより、図7に示すように、その発色領域では感熱記録媒体3を構成している支持体51と感熱発色層52との密着度が高くなるとともに感熱発色層52の表面近傍に存在する顔料53が感熱発色層内に取り込まれるので、発色した発色領域を切断しても顔料53などの微粉の発生が抑制される。
【0043】
図8は、感熱記録媒体3、2aを切断する際に、発色した発色領域を切断した場合と非発色領域とを切断した場合とで微粉の発生量がどのように異なるかを実験した結果を示す説明図である。微粉の発生量は、支持体と感熱発色層との密着力により決定されるため、感熱発色層の密着力の評価を行い、密着力の評価は、JISに定めるクロス切断法に行った。評価サンプルは、印刷装置を用いて、標準の印字条件で、幅100mmの感熱記録媒体Aの中央部に幅20mmの発色領域Bを形成したものを用いた。このサンプルにクロス切断冶具(コーテック株式会社:cross cut guide 1.0)を用いて、カッターにて1mm間隔で縦横十字に10本の切込みを入れたクロスカット部Cを形成した。クロスカット部Cは、発色領域Bと非発色領域とにかかるように形成した。このように形成したクロスカット部Cに粘着テープDを貼り、片側から90度の角度で粘着テープDを引き剥がし、粘着テープDに付着した感熱発色層の有無を調べた。なお、粘着テープとしては、スコッチ製「透明粘着テープ」型式「BH−18」が好適である。
【0044】
その結果、非発色領域からは白色の感熱発色層が粘着テープDに付着していることが確認された。一方、発色領域Bからは感熱発色層が剥離して粘着テープDに付着する現象は見られなかった。この実験から明らかなように、発色領域Bでは、支持体との感熱発色層との間では、非発色領域と比較して格段に優れた密着力が発生し、微紛の発生が抑制できることが判明した。また、上記したようにサーマルヘッドのような加熱手段を用いることにより感熱発色層を加圧しながら発色させるので感熱発色層を支持体の表面との密着性をさらに高める効果をもたらすこととなるので好適である。
【0045】
図9は、感熱記録印刷物の製造装置1における印字終了後、感熱記録媒体3を切断し、その後、切断部位を発色させる動作について説明するフローチャートである。以上、感熱記録印刷物の切断前に、当該切断部位について発色させた後に切断する工程を有する場合についての実施の形態について説明したが、以下においては、切断した後に切断部位を発色させる場合の第2の実施の形態について説明する。
【0046】
ここでは、感熱記録印刷物の製造装置1を用いて感熱記録媒体3を切断した後に、当該切断部位の感熱発色層を発色させる場合の動作について、図9のフローチャートを用いて説明する。
【0047】
製造装置1では、ロール状態から引き出されて搬送されている感熱記録媒体3に対して印字ヘッド15を発熱させることによる印字動作が行われ、この印字動作中に感熱記録媒体3を切断する信号が入力されたか否かが判断されている(ステップS11)。感熱記録媒体3を切断する信号は、カッター用スイッチ8が押されることにより入力される。
【0048】
感熱記録媒体3を切断する信号が入力された場合には(ステップS11のY)、駆動モータ27が所定のステップ数分駆動され(ステップS12)、駆動モータ27が所定のステップ数駆動されることにより、感熱記録媒体3の発色させたい一部領域がカッター18による切断位置まで搬送され、ここに、感熱記録媒体3の発色させたい一部領域をカッター18による切断位置まで搬送する手段が実行される。
【0049】
駆動モータ27がステップ3における所定のステップ数駆動した後、カッター用モータ28が駆動され(ステップS13)、カッター用モータ28が駆動することにより感熱記録媒体3における発色させたい一部領域がカッター18によって切断され、ここに、感熱記録媒体3の発色させたい一部領域をカッター18により切断する手段が実行される。
【0050】
感熱記録媒体3の発色させたい一部領域は、カッター18により切断された後、駆動モータ27がステップS1と逆方向に所定のステップ数分駆動され(ステップS14)、駆動モータ27が所定のステップ数駆動されることにより、感熱記録媒体3の発色させたい一部領域が印字ヘッド15の位置まで戻る。
【0051】
印字ヘッド15が感熱記録媒体3の幅方向に沿って一部領域が加熱され(ステップS15)、この一部領域が加熱により感熱記録媒体3が幅方向に沿って発色し、ここに、感熱記録媒体3を幅方向に沿ってカッター18により切断された感熱記録媒体3の端部を発色させる手段が実行される。
【0052】
このように切断された感熱記録媒体3の端部の発色層について、第1の実施の形態と同様に発色した発色領域を切断した場合と非発色領域とを切断した場合とで微粉の発生量がどのように異なるかを実験した結果、ほぼ同様の結果が得られた。但し、感熱記録媒体3の切断部位である一部領域の感熱発色層を発色させないで切断しているので、切断する際の微粉が発生するので、切断後における感熱記録媒体3(感熱記録印刷物3a)の切断部位からの微粉の発生の程度は抑制できる効果はあるが、全体として最初に切断する一部領域を発色させてから切断するという第一の実施の形態の方がより効果的である。
【0053】
なお、本実施の形態のように、印字がされた感熱記録媒体を切断して感熱記録印刷物を製造するに際して、切断後に切断された端部の感熱発色層を発色させる場合において、印字ヘッド15を用いて発色させる方法について述べたが、感熱発色層を非接触で、例えばニクロム線ヒータ等で加熱して発色させても、同様に、感熱発色層を緻密にさせ、支持体との密着性を高める効果があるので微粉の発生を抑止する効果はある。副次的な効果として、上記したように異なる色調の感熱発色層が形成されている感熱記録媒体のそれぞれの各色の形成されている位置を視認することができる効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の一実施の形態の感熱記録印刷物の製造装置の外観を示す斜視図である。
【図2】感熱記録印刷物の製造装置の内部構造を示す側面図である。
【図3】感熱記録印刷物の製造装置の電気的接続を示すブロック図である。
【図4】感熱記録印刷物の製造装置における印字終了後の感熱記録媒体を切断する動作について説明するフローチャートである。
【図5】大判の感熱記録媒体とこの感熱記録媒体を切断して製造した感熱ラベルとを示す平面図である。
【図6】ロール状に巻回された感熱記録媒体を示す斜視図である。
【図7】感熱記録媒体の加熱領域と非加熱領域との断面模式図である。
【図8】感熱記録媒体を切断する際に、発色領域を切断した場合と非発色領域とを切断した場合とで微粉の発生量がどのように異なるかを実験した結果を示す説明図である。
【図9】感熱記録印刷物の製造装置における印字終了後、感熱記録媒体を切断し、その後、切断部位を発色させる動作について説明するフローチャートである。
【符号の説明】
【0055】
1 製造装置
2 感熱記録媒体
2a 感熱ラベル
3 感熱記録媒体
15 印字ヘッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録面に感熱発色層が形成された感熱記録媒体からなる感熱記録印刷物の製造方法において、
前記感熱発色層の領域の一部領域を発色させる工程と、前記一部領域を切断する工程と、により複数の感熱記録印刷物を製造することを特徴とする感熱記録印刷物の製造方法。
【請求項2】
前記一部領域を発色させる工程を、前記一部領域を切断する工程より先に行うことを特徴とする請求項1記載の感熱記録印刷物の製造方法。
【請求項3】
前記記録面に異なる色調に発色する感熱発色層が形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の感熱記録印刷物の製造方法。
【請求項4】
記録面に感熱発色層が形成された感熱記録媒体からなる感熱記録印刷物であって、
前記感熱記録印刷物の端部が加熱されて発色していることを特徴とする感熱記録印刷物。
【請求項5】
異なる色調に発色する感熱発色層が形成されていることを特徴とする請求項4記載の感熱記録印刷物。
【請求項6】
記録面に発色する感熱発色層が形成された感熱記録媒体の一部領域を切断することにより複数個の感熱記録印刷物を製造する製造装置であって、
前記感熱記録媒体の一部領域を発色させる発色手段と、
前記一部領域を切断する切断手段と、
を有することを特徴とする感熱記録印刷物の製造装置。
【請求項7】
前記感熱記録印刷物は、異なる色調に発色する感熱発色層が形成されていることを特徴とする請求項6記載の感熱記録印刷物の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−159885(P2006−159885A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−97324(P2005−97324)
【出願日】平成17年3月30日(2005.3.30)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】