慣性センサ素子
【課題】脚部を励振しない状態で角加速度を検出する。
【解決手段】慣性センサ素子1aは、板状の基部2と、第1、第2の検出脚部3,4と、枠状の支持部5と、検出電極とを備えている。第1の角加速度検出手段は、X軸廻りの角加速度による力に応じて発生した第1、第2の検出脚部3,4の歪みによる電圧信号を検出電極から受けて、電圧信号を基にX軸廻りの角加速度を検出し、第2の角加速度検出手段は、Y軸廻りの角加速度による力に応じて発生した第1、第2の検出脚部3,4の歪みによる電圧信号を検出電極から受けて、電圧信号を基にY軸廻りの角加速度を検出し、第3の角加速度検出手段は、Z軸廻りの角加速度による力に応じて発生した第1、第2の検出脚部3,4の歪みによる電圧信号を検出電極から受けて、電圧信号を基にZ軸廻りの角加速度を検出する。
【解決手段】慣性センサ素子1aは、板状の基部2と、第1、第2の検出脚部3,4と、枠状の支持部5と、検出電極とを備えている。第1の角加速度検出手段は、X軸廻りの角加速度による力に応じて発生した第1、第2の検出脚部3,4の歪みによる電圧信号を検出電極から受けて、電圧信号を基にX軸廻りの角加速度を検出し、第2の角加速度検出手段は、Y軸廻りの角加速度による力に応じて発生した第1、第2の検出脚部3,4の歪みによる電圧信号を検出電極から受けて、電圧信号を基にY軸廻りの角加速度を検出し、第3の角加速度検出手段は、Z軸廻りの角加速度による力に応じて発生した第1、第2の検出脚部3,4の歪みによる電圧信号を検出電極から受けて、電圧信号を基にZ軸廻りの角加速度を検出する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脚部を励振しない状態で角加速度を検出する静止型の慣性センサ素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図34(A)は特許文献1に開示された従来の角速度センサの平面図、図34(B)は図34(A)の角速度センサをE側から見た側面図である。図34(A)、図34(B)の角速度センサは、圧電材料として水晶を用いた圧電振動式の角速度センサである。図34(A)、図34(B)において、1000は音叉型の振動子素子(水晶板)、1011〜1014は励振用の電極、1021〜1024は角速度検出用の電極である。励振用の電極1011〜1014は振動子素子1000の一方の脚部1001の表裏及び左右の面に、検出用の電極1021〜1024は振動子素子1000の他方の脚部1002の左右の面に形成されている。脚部1001及び1002は、この脚部1001及び1002に対して平行な軸線Lを有する主軸1003から分岐されており、脚部1001,1002と主軸1003とは共通の平面に位置している。
【0003】
この角速度センサにおいては、図34(B)に示されるように、励振用の電極1011と1013とが端子P1に共通に接続され、励振用の電極1012と1014とが端子P2に共通に接続され、この端子P1とP2との間に交流電圧(励振振動信号)が印加される。このため、あるときは図34(B)の中脚部1001に矢印で示す如く電界が発生し、次には逆方向の電界が発生することにより、逆圧電効果により振動子素子1000の一方の脚部1001が、更に他方の脚部1002も連動して、左右に振動(屈曲振動)する。
【0004】
ここで、脚部1001,1002の振動方向をX軸方向、このX軸方向と直交する紙面内の方向、すなわち主軸1003の軸線Lの方向をY軸方向、このX−Y平面と直交する方向(振動子素子1000の板面に垂直な方向)をZ軸方向とした場合、Y軸の廻りに角速度が作用すると、すなわち振動子素子1000がY軸の廻りに回転すると、コリオリの力によりZ軸方向の振動成分が生じ、振動子素子1000がXZ平面で楕円運動するように振動する。このZ軸方向の振動成分の大きさはコリオリの力に比例しているので、振動子素子1000の他方の脚部1002には圧電効果により、角速度に比例した大きさで振動の方向に応じた極の電荷が発生する。
【0005】
これにより、検出用の電極1021と1024とを共通に接続した端子P3と、検出用の電極1022と1023とを共通に接続した端子P4との間に電荷が発生し、コリオリの力に応じた電圧信号が得られる。この電圧信号の大きさによって、Y軸の廻りに作用する角速度の大きさを知ることができる。また、この電圧信号は基本的にサインカーブとして得られ、この電圧信号の波形と励振振動信号の波形とを位相比較することにより、その位相の進み遅れで角速度の方向を知ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−325912号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の角速度センサでは、コリオリの力を利用してY軸廻りの角速度を検出することになるが、コリオリの力は、速度のあるもの、すなわち振動しているものにしか働かない。そのため、従来の角速度センサでは、振動子素子1000の脚部1001,1002を励振する必要があり、電力を消費するという問題点があった。したがって、腕時計等に角速度センサを搭載すると、電力の消費が大きく、例えば数日程度しか電池がもたないという問題点があった。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、脚部を励振しない状態で角加速度を検出することができ、さらに角加速度から角速度を検出することができる静止型の慣性センサ素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の慣性センサ素子は、板状の基部と、この基部から第1の方向に延びるように形成された第1の検出脚部と、前記基部から前記第1の方向と反対方向に延びるように形成された第2の検出脚部と、前記基部と反対側の前記第1の検出脚部の端部を固定すると共に、前記基部と反対側の第2の検出脚部の端部を固定する支持部と、前記第1、第2の検出脚部の各々に設けられた検出電極と、角加速度及び加速度が加わっていない初期状態において前記基部と前記第1、第2の検出脚部と前記支持部とが配置される平面に対して平行で、かつ前記第1の方向と直交する方向をX軸方向、前記第1の方向と平行な方向をY軸方向、XY平面と直交する方向をZ軸方向としたとき、X軸廻りの角加速度による力に応じて発生した前記第1、第2の検出脚部の歪みによる電圧信号を前記検出電極から受けて、この電圧信号を基に前記X軸廻りの角加速度を検出する第1の角加速度検出手段と、Y軸廻りの角加速度による力に応じて発生した前記第1、第2の検出脚部の歪みによる電圧信号を前記検出電極から受けて、この電圧信号を基に前記Y軸廻りの角加速度を検出する第2の角加速度検出手段と、Z軸廻りの角加速度による力に応じて発生した前記第1、第2の検出脚部の歪みによる電圧信号を前記検出電極から受けて、この電圧信号を基に前記Z軸廻りの角加速度を検出する第3の角加速度検出手段とを有するものである。
【0010】
また、本発明の慣性センサ素子の1構成例は、さらに、前記検出されたX軸廻りの角加速度を時間で積分してX軸廻りの角速度を求める第1の積分手段と、前記検出されたY軸廻りの角加速度を時間で積分してY軸廻りの角速度を求める第2の積分手段と、前記検出されたZ軸廻りの角加速度を時間で積分してZ軸廻りの角速度を求める第3の積分手段とを有するものである。
また、本発明の慣性センサ素子の1構成例は、さらに、X軸方向の加速度による力に応じて発生した前記第1、第2の検出脚部の歪みによる電圧信号を前記検出電極から受けて、この電圧信号を基に前記X軸方向の加速度を検出する第1の加速度検出手段と、Y軸方向の加速度による力に応じて発生した前記第1、第2の検出脚部の歪みによる電圧信号を前記検出電極から受けて、この電圧信号を基に前記Y軸方向の加速度を検出する第2の加速度検出手段と、Z軸方向の加速度による力に応じて発生した前記第1、第2の検出脚部の歪みによる電圧信号を前記検出電極から受けて、この電圧信号を基に前記Z軸方向の加速度を検出する第3の加速度検出手段とを有するものである。
【0011】
また、本発明の慣性センサ素子の1構成例において、前記検出電極は、前記第1の検出脚部の一方の側面に形成された第1、第2の検出電極と、前記第1の検出脚部の他方の側面に形成された第3、第4の検出電極と、前記第1の検出脚部の上面に形成された第5の検出電極と、前記第1の検出脚部の下面に形成された第6の検出電極と、前記第2の検出脚部の一方の側面に形成された第7、第8の検出電極と、前記第2の検出脚部の他方の側面に形成された第9、第10の検出電極と、前記第2の検出脚部の上面に形成された第11の検出電極と、前記第2の検出脚部の下面に形成された第12の検出電極とからなり、前記第1の角加速度検出手段は、X軸廻りの角加速度による力に応じて発生した前記第1、第2の検出脚部の歪みによる電圧信号を前記第1乃至第4の検出電極及び前記第7乃至第10の検出電極から受けて、この電圧信号を基に前記X軸廻りの角加速度を検出し、前記第2の角加速度検出手段は、Y軸廻りの角加速度による力に応じて発生した前記第1、第2の検出脚部の歪みによる電圧信号を前記第1乃至第12の検出電極から受けて、この電圧信号を基に前記Y軸廻りの角加速度を検出し、前記第3の角加速度検出手段は、Z軸廻りの角加速度による力に応じて発生した前記第1、第2の検出脚部の歪みによる電圧信号を前記第1乃至第12の検出電極から受けて、この電圧信号を基に前記Z軸廻りの角加速度を検出するものである。
【0012】
また、本発明の慣性センサ素子の1構成例において、前記検出電極は、前記第1乃至第12の検出電極からなり、前記第1の加速度検出手段は、X軸方向の加速度による力に応じて発生した前記第1、第2の検出脚部の歪みによる電圧信号を前記第1乃至第12の検出電極から受けて、この電圧信号を基に前記X軸方向の加速度を検出し、前記第2の加速度検出手段は、Y軸方向の加速度による力に応じて発生した前記第1、第2の検出脚部の歪みによる電圧信号を前記第1乃至第4の検出電極及び前記第7乃至第10の検出電極から受けて、この電圧信号を基に前記Y軸方向の加速度を検出し、前記第3の加速度検出手段は、Z軸方向の加速度による力に応じて発生した前記第1、第2の検出脚部の歪みによる電圧信号を前記第1乃至第4の検出電極及び前記第7乃至第10の検出電極から受けて、この電圧信号を基に前記Z軸方向の加速度を検出するものである。
また、本発明の慣性センサ素子の1構成例は、前記第1の方向と直交する方向の前記基部の両端部にそれぞれ重りを設けたものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、基部から第1の方向に延びるように形成された第1の検出脚部と、基部から第1の方向と反対方向に延びるように形成された第2の検出脚部と、基部と反対側の第1の検出脚部の端部を固定すると共に、基部と反対側の第2の検出脚部の端部を固定する支持部と、第1、第2の検出脚部の各々に設けられた検出電極と、第1、第2、第3の角加速度検出手段とを設けることにより、脚部を励振しない静止状態で、X,Y,Zの3軸の廻りの角加速度の大きさと向きを検出することができる。
【0014】
また、本発明では、第1、第2、第3の積分手段を設けることにより、X,Y,Zの3軸の廻りの角速度を検出することができる。
また、本発明では、第1、第2、第3の加速度検出手段を設けることにより、X,Y,Zの3軸の廻りの角加速度に加えてX,Y,Zの3軸方向の加速度の大きさと向きを検出することができる。
【0015】
また、本発明では、第1の方向と直交する方向の基部の両端部にそれぞれ重りを設けることにより、角加速度又は加速度が加わったときの第1、第2の検出脚部の歪みを大きくすることができるので、角加速度及び加速度の検出感度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の参考例に係る慣性センサ素子の構成を示す平面図である。
【図2】本発明の参考例に係る慣性センサ素子の構成を示す斜視図である。
【図3】本発明の参考例に係る慣性センサ素子の構成を示す断面図である。
【図4】本発明の参考例に係る慣性センサ素子の各電極の接続関係を示す回路図である。
【図5】本発明の参考例に係る慣性センサ素子の角加速度検出回路の構成例を示す回路図である。
【図6】本発明の参考例に係る慣性センサ素子の加速度検出回路の構成例を示す回路図である。
【図7】本発明の参考例においてZ軸廻りの角加速度が加わったときの基部と検出脚部の動きを模式的に示す平面図及び斜視図である。
【図8】本発明の参考例においてZ軸廻りの角加速度が加わったときに検出脚部に生じる電界を示す断面図である。
【図9】本発明の参考例においてX軸方向の加速度が加わったときの基部と検出脚部の動きを模式的に示す平面図及び斜視図である。
【図10】本発明の参考例においてX軸方向の加速度が加わったときに検出脚部に生じる電界を示す断面図である。
【図11】本発明の第1の実施の形態に係る慣性センサ素子の構成を示す平面図である。
【図12】本発明の第1の実施の形態に係る慣性センサ素子の構成を示す斜視図である。
【図13】本発明の第1の実施の形態に係る慣性センサ素子の構成を示す断面図である。
【図14】本発明の第1の実施の形態に係る慣性センサ素子の各電極の接続関係を示す回路図である。
【図15】本発明の第1の実施の形態に係る慣性センサ素子の第1の角加速度検出回路の構成例を示す回路図である。
【図16】本発明の第1の実施の形態に係る慣性センサ素子の第1の加速度検出回路の構成例を示す回路図である。
【図17】本発明の第1の実施の形態に係る慣性センサ素子の第2の角加速度検出回路の構成例を示す回路図である。
【図18】本発明の第1の実施の形態に係る慣性センサ素子の第2の加速度検出回路の構成例を示す回路図である。
【図19】本発明の第1の実施の形態に係る慣性センサ素子の第3の角加速度検出回路の構成例を示す回路図である。
【図20】本発明の第1の実施の形態に係る慣性センサ素子の第3の加速度検出回路の構成例を示す回路図である。
【図21】本発明の第1の実施の形態においてX軸廻りの角加速度が加わったときの基部と検出脚部の動きを模式的に示す平面図、斜視図及び側面図である。
【図22】本発明の第1の実施の形態においてX軸廻りの角加速度が加わったときに検出脚部に生じる電界を示す断面図である。
【図23】本発明の第1の実施の形態においてX軸方向の加速度が加わったときの基部と検出脚部の動きを模式的に示す平面図及び斜視図である。
【図24】本発明の第1の実施の形態においてX軸方向の加速度が加わったときに検出脚部に生じる電界を示す断面図である。
【図25】本発明の第1の実施の形態においてY軸廻りの角加速度が加わったときの基部と検出脚部の動きを模式的に示す平面図、斜視図及び側面図である。
【図26】本発明の第1の実施の形態においてY軸廻りの角加速度が加わったときに検出脚部に生じる電界を示す断面図である。
【図27】本発明の第1の実施の形態においてY軸方向の加速度が加わったときの基部と検出脚部の動きを模式的に示す平面図及び斜視図である。
【図28】本発明の第1の実施の形態においてY軸方向の加速度が加わったときに検出脚部に生じる電界を示す断面図である。
【図29】本発明の第1の実施の形態においてZ軸廻りの角加速度が加わったときの基部と検出脚部の動きを模式的に示す平面図及び斜視図である。
【図30】本発明の第1の実施の形態においてZ軸廻りの角加速度が加わったときに検出脚部に生じる電界を示す断面図である。
【図31】本発明の第1の実施の形態においてZ軸方向の加速度が加わったときの基部と検出脚部の動きを模式的に示す平面図、斜視図及び側面図である。
【図32】本発明の第1の実施の形態においてZ軸方向の加速度が加わったときに検出脚部に生じる電界を示す断面図である。
【図33】本発明の第2の実施の形態に係る慣性センサ素子の構成を示す平面図である。
【図34】従来の角速度センサの構成を示す平面図及び側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[参考例]
以下、本発明の参考例について図面を参照して説明する。図1は本発明の参考例に係る慣性センサ素子の構成を示す平面図、図2は図1の慣性センサ素子の斜視図、図3(A)は図1の慣性センサ素子のA−A線断面図、図3(B)は図1の慣性センサ素子のB−B線断面図である。
【0018】
慣性センサ素子1は、板状の基部2と、基部2から第1の方向(図1では上方向)に延びるように形成された第1の検出脚部3と、基部2から前記第1の方向と反対の方向(図1では下方向)に延びるように形成された第2の検出脚部4と、基部2と反対側の第1の検出脚部3の端部を固定すると共に、基部2と反対側の第2の検出脚部4の端部を固定する枠状の支持部5と、基部2との接続部から支持部5との接続部まで前記第1の方向に沿って第1の検出脚部3に形成された第1の貫通孔6と、基部2との接続部から支持部5との接続部まで前記第1の方向に沿って第2の検出脚部4に形成された第2の貫通孔7とを備えている。なお、図1〜図3では、角加速度及び加速度が加わっていない初期状態において基部2と検出脚部3,4と支持部5とが配置される平面(図1の紙面)に対して平行で、かつ前記第1の方向と直交する方向をX軸方向、前記第1の方向と平行な方向をY軸方向、XY平面と直交する方向をZ軸方向としている。図1におけるOは原点であり、基部2の中心である。
【0019】
基部2と検出脚部3,4と支持部5とは、例えば厚さ0.1〜0.3mm程度の水晶板(Z板)等の圧電材料により一体成形されている。このような慣性センサ素子1を製造するには、水晶板を例えばエッチングなどにより加工すればよい。検出脚部3,4の幅(X軸方向の寸法)は0.05〜0.3mm程度、長さ(Y軸方向の寸法)は1.0〜5.0mm程度に形成されていればよい。図1〜図3の例では、検出脚部3,4は、同一の幅と同一の長さに形成されている。
慣性センサ素子1を例えば腕時計等の機器に搭載する場合には、慣性センサ素子1の支持部5が機器の筐体に固定される。
【0020】
図3(A)に示すように、第1の検出脚部3の支持部近傍の一方の側面には前記第1の方向に沿って検出電極101が形成され、支持部近傍の他方の側面には前記第1の方向に沿って検出電極102が形成され、さらに第1の貫通孔6によってできた第1の検出脚部3の内側の壁面には検出電極101,102と対向するように検出電極103が形成されている。
【0021】
同様に図3(B)に示すように、第2の検出脚部4の支持部近傍の側面には前記第1の方向に沿って検出電極104が形成され、支持部近傍の他方の側面には前記第1の方向に沿って検出電極105が形成され、さらに第2の貫通孔7によってできた第2の検出脚部4の内側の壁面には検出電極104,105と対向するように検出電極106が形成されている。
【0022】
図4は慣性センサ素子1の各電極の接続関係を示す回路図である。第1の検出脚部3の検出電極101〜103及び第2の検出脚部4の検出電極104〜106は、Z軸廻りの角加速度を検出する角加速度検出回路200とX軸方向の加速度を検出する加速度検出回路201に接続されている。
【0023】
図5は角加速度検出回路200の構成例を示す回路図、図6は加速度検出回路201の構成例を示す回路図である。角加速度検出回路200は、バッファ202〜207と、加算器208〜211と、差動増幅回路212と、積分器213とから構成され、加速度検出回路201は、バッファ214〜219と、加算器220〜223と、差動増幅回路224と、積分器225とから構成される。
【0024】
次に、本参考例の慣性センサ素子1の動作を説明する。図7(A)は慣性センサ素子1にZ軸廻りの角加速度αZが加わったときの基部2と検出脚部3,4の動きを模式的に示す平面図、図7(B)は図7(A)の慣性センサ素子1の斜視図である。慣性センサ素子1に原点O(基部2の中心)を通るZ軸廻りの角加速度αZが加わると、慣性センサ素子1の基部2及び検出脚部3,4には角加速度αZと反対方向に慣性による力F=mαZ(mは基部2及び検出脚部3,4の質量)が加わる。この慣性による力Fにより、基部2及び検出脚部3,4は、角加速度αZが加わっていない初期状態(図7(A)、図7(B)の破線で示すS0)に対して、図7(A)、図7(B)の状態S1で示すようにXY平面に沿って変形する。
【0025】
この変形により、検出脚部3の検出電極101と103間、検出電極102と103間、検出脚部4の検出電極104と106間、及び検出電極105と106間には、それぞれ図8の矢印で示すような電界が圧電効果によって生じる。
角加速度検出回路200は、Z軸廻りの角加速度αZによる力に応じて発生した検出脚部3,4の歪みによる電圧信号を検出電極101〜106から受けて、この電圧信号を基に角加速度αZを検出する。なお、検出電極101〜106で検出されるのは、正確には検出脚部3,4の歪みに応じた電荷であるが、この電荷はバッファによって電圧に変換されるので、以後、検出電極101〜106の出力については電圧信号又は出力電圧と称することにする。
【0026】
すなわち、角加速度検出回路200の加算器208は、バッファ202を介して受け取った検出電極101の出力電圧とバッファ203を介して受け取った検出電極102の出力電圧とを加算する。加算器209は、バッファ205を介して受け取った検出電極104の出力電圧とバッファ206を介して受け取った検出電極105の出力電圧とを加算する。加算器210は、加算器208の出力電圧とバッファ207を介して受け取った検出電極106の出力電圧とを加算する。加算器211は、バッファ204を介して受け取った検出電極103の出力電圧と加算器209の出力電圧とを加算する。差動増幅回路212は、加算器211の出力電圧と加算器210の出力電圧との差を求める。積分器213は、差動増幅回路212の出力電圧を積分する。
【0027】
こうして、角加速度検出回路200では、検出脚部3,4に生じた電界の低電位側の総計を加算器210で求め、検出脚部3,4に生じた電界の高電位側の総計を加算器211で求め、加算器211の出力電圧と加算器210の出力電圧との差を差動増幅回路212で求めることにより、検出脚部3,4に生じた電位差の総計を求め、この電位差の総計を積分器213で積分する。積分器213の出力電圧は、角加速度αZに応じた大きさと極性とを持つ。よって、角加速度検出回路200は、積分器213の出力電圧の大きさによって角加速度αZの大きさを検出することができ、また積分器213の出力電圧の極性によって角加速度αZの向きを検出することができる。
【0028】
図9(A)は慣性センサ素子1にX軸方向の加速度aXが加わったときの基部2と検出脚部3,4の動きを模式的に示す平面図、図9(B)は図9(A)の慣性センサ素子1の斜視図である。慣性センサ素子1にX軸方向の加速度aXが加わると、慣性センサ素子1の基部2及び検出脚部3,4には加速度aXと反対方向に慣性による力F=maXが加わる。この慣性による力Fにより、基部2及び検出脚部3,4は、加速度aXが加わっていない初期状態S0に対して、図9(A)、図9(B)の状態S1で示すようにXY平面に沿って変形する。
【0029】
この変形により、検出脚部3の検出電極101と103間、検出電極102と103間、検出脚部4の検出電極104と106間、及び検出電極105と106間には、それぞれ図10の矢印で示すような電界が圧電効果によって生じる。
加速度検出回路201は、X軸方向の加速度aXによる力に応じて発生した検出脚部3,4の歪みによる電圧信号を検出電極101〜106から受けて、この電圧信号を基に加速度aXを検出する。
【0030】
すなわち、加速度検出回路201の加算器220は、バッファ214を介して受け取った検出電極101の出力電圧とバッファ215を介して受け取った検出電極102の出力電圧とを加算する。加算器221は、バッファ217を介して受け取った検出電極104の出力電圧とバッファ218を介して受け取った検出電極105の出力電圧とを加算する。加算器222は、加算器220の出力電圧と加算器221の出力電圧とを加算する。加算器223は、バッファ216を介して受け取った検出電極103の出力電圧とバッファ219を介して受け取った検出電極106の出力電圧とを加算する。差動増幅回路224は、加算器223の出力電圧と加算器222の出力電圧との差を求める。積分器225は、差動増幅回路224の出力電圧を積分する。
【0031】
こうして、加速度検出回路201では、検出脚部3,4に生じた電界の低電位側の総計を加算器222で求め、検出脚部3,4に生じた電界の高電位側の総計を加算器223で求め、加算器223の出力電圧と加算器222の出力電圧との差を差動増幅回路224で求めることにより、検出脚部3,4に生じた電位差の総計を求め、この電位差の総計を積分器225で積分する。積分器225の出力電圧は、加速度aXに応じた大きさと極性とを持つ。よって、加速度検出回路201は、積分器225の出力電圧の大きさによって加速度aXの大きさを検出することができ、また積分器225の出力電圧の極性によって加速度aXの向きを検出することができる。
【0032】
以上のように、本参考例によれば、検出脚部3,4を励振しない静止状態で、角加速度の大きさと向きを検出することができる。その結果、本参考例では、脚部の励振を必要とする従来のセンサに比べて消費電力を低減することができる。また、本参考例では、静止状態で角加速度に加えて加速度の大きさと向きを検出することができる。また、本参考例では、角加速度検出回路200の後ろに、角加速度を時間で積分する積分手段(不図示)を設けることにより、角速度を求めることができる。
【0033】
また、本参考例では、検出脚部3,4に貫通孔6,7を設けることにより、検出脚部3,4を柔らかくすることができるので、角加速度又は加速度が加わったときの検出脚部3,4の歪みを大きくすることができ、また検出モードの共振周波数を低下させることができる。検出脚部3,4の最大変位は、貫通孔6,7を設けない場合に比べて例えば数倍程度にすることができ、検出モードの共振周波数は、貫通孔6,7を設けない場合に比べて例えば数分の1程度にすることができる。
【0034】
さらに、本参考例では、貫通孔6によってできた検出脚部3の内側の壁面に検出電極101,102と対向するように検出電極103を形成し、貫通孔7によってできた検出脚部4の内側の壁面に検出電極104,105と対向するように検出電極106を形成することにより、角加速度又は加速度に応じた歪みによって検出脚部3,4に生じる電界の方向に対して検出電極を垂直に設けることができるので、電界効率を向上させることができ、また検出電極3,4のそれぞれの両側面のみに検出電極を設ける場合に比べて検出電極間の距離を狭くすることができるので、電界を大きく検出することができる。以上の貫通孔6,7と検出電極101〜106の構成により、本参考例では、角加速度及び加速度の検出感度を向上させることができる。
【0035】
なお、慣性センサ素子1にX軸方向の加速度aXが加わった場合、角加速度検出回路200の積分器213の出力電圧は零となり、慣性センサ素子1にZ軸廻りの角加速度αZが加わった場合、加速度検出回路201の積分器225の出力電圧は零となる。したがって、角加速度検出回路200が加速度aXを誤って角加速度αZとして検出したり、加速度検出回路201が角加速度αZを誤って加速度aXとして検出したりすることはない。
【0036】
[第1の実施の形態]
次に、本発明の第1の実施の形態について説明する。図11は本発明の第1の実施の形態に係る慣性センサ素子の構成を示す平面図、図12は図11の慣性センサ素子の斜視図、図13(A)は図11の慣性センサ素子のA−A線断面図、図13(B)は図11の慣性センサ素子のB−B線断面図である。
【0037】
慣性センサ素子1aは、基部2と、基部2から第1の方向(図11では上方向)に延びるように形成された第1の検出脚部3と、基部2から前記第1の方向と反対の方向(図11では下方向)に延びるように形成された第2の検出脚部4と、基部2と反対側の第1の検出脚部3の端部を固定すると共に、基部2と反対側の第2の検出脚部4の端部を固定する枠状の支持部5とを備えている。なお、図11〜図13では、角加速度及び加速度が加わっていない初期状態において基部2と検出脚部3,4と支持部5とが配置される平面(図11の紙面)に対して平行で、かつ前記第1の方向と直交する方向をX軸方向、前記第1の方向と平行な方向をY軸方向、XY平面と直交する方向をZ軸方向としている。図11におけるOは原点であり、基部2の中心である。
【0038】
基部2と検出脚部3,4と支持部5とは、例えば厚さ0.1〜0.3mm程度の水晶板(Z板)等の圧電材料により一体成形されている。このような慣性センサ素子1aを製造するには、水晶板を例えばエッチングなどにより加工すればよい。検出脚部3,4の幅(X軸方向の寸法)は0.05〜0.3mm程度、長さ(Y軸方向の寸法)は1.0〜5.0mm程度に形成されていればよい。図11〜図13の例では、検出脚部3,4は、同一の幅と同一の長さに形成されている。
慣性センサ素子1aを例えば腕時計等の機器に搭載する場合には、慣性センサ素子1aの支持部5が機器の筐体に固定される。
【0039】
図13(A)に示すように、第1の検出脚部3の支持部近傍の一方の側面には前記第1の方向に沿って検出電極301,302が形成され、支持部近傍の他方の側面には前記第1の方向に沿って検出電極303,304が形成され、第1の検出脚部3の支持部近傍の上面には前記第1の方向に沿って検出電極305が形成され、支持部近傍の下面には前記第1の方向に沿って検出電極306が形成されている。
【0040】
同様に図13(B)に示すように、第2の検出脚部4の支持部近傍の一方の側面には前記第1の方向に沿って検出電極307,308が形成され、支持部近傍の他方の側面には前記第1の方向に沿って検出電極309,310が形成され、第1の検出脚部3の支持部近傍の上面には前記第1の方向に沿って検出電極311が形成され、支持部近傍の下面には前記第1の方向に沿って検出電極312が形成されている。
【0041】
図14は慣性センサ素子1aの各電極の接続関係を示す回路図である。第1の検出脚部3の検出電極301〜304及び第2の検出脚部4の検出電極307〜310は、X軸廻りの角加速度を検出する第1の角加速度検出回路400と、Y軸方向の加速度を検出する第2の加速度検出回路403と、Z軸方向の加速度を検出する第3の加速度検出回路405に接続されている。また、検出電極301〜312は、X軸方向の加速度を検出する第1の加速度検出回路401と、Y軸廻りの角加速度を検出する第2の角加速度検出回路402と、Z軸廻りの角加速度を検出する第3の角加速度検出回路404に接続されている。
【0042】
図15は第1の角加速度検出回路400の構成例を示す回路図、図16は第1の加速度検出回路401の構成例を示す回路図、図17は第2の角加速度検出回路402の構成例を示す回路図、図18は第2の加速度検出回路403の構成例を示す回路図、図19は第3の角加速度検出回路404の構成例を示す回路図、図20は第3の加速度検出回路405の構成例を示す回路図である。
【0043】
第1の角加速度検出回路400は、バッファ406〜413と、加算器414〜419と、差動増幅回路420と、積分器421とから構成される。第1の加速度検出回路401は、バッファ422〜433と、加算器434〜439と、差動増幅回路440と、積分器441とから構成される。第2の角加速度検出回路402は、バッファ442〜453と、加算器454〜459と、差動増幅回路460と、積分器461とから構成される。第2の加速度検出回路403は、バッファ462〜469と、加算器470〜475と、差動増幅回路476と、積分器477とから構成される。第3の角加速度検出回路404は、バッファ478〜489と、加算器490〜495と、差動増幅回路496と、積分器497とから構成される。第3の加速度検出回路405は、バッファ498〜505と、加算器506〜511と、差動増幅回路512と、積分器513とから構成される。
【0044】
次に、本実施の形態の慣性センサ素子1aの動作を説明する。図21(A)は慣性センサ素子1aにX軸廻りの角加速度αXが加わったときの基部2と検出脚部3,4の動きを模式的に示す平面図、図21(B)は図21(A)の慣性センサ素子1aの斜視図、図21(C)は図21(A)の慣性センサ素子1aをP側から見た側面図、図21(D)は図21(A)の慣性センサ素子1aをQ側から見た側面図である。
【0045】
慣性センサ素子1aに原点O(基部2の中心)を通るX軸廻りの角加速度αXが加わると、慣性センサ素子1aの基部2及び検出脚部3,4には角加速度αXと反対方向に慣性による力F=mαX(mは基部2及び検出脚部3,4の質量)が加わる。この慣性による力Fにより、基部2及び検出脚部3,4は、角加速度αXが加わっていない初期状態(図21(B)の破線で示すS0)に対して、図21(A)、図21(B)、図21(C)、図21(D)の状態S1で示すように原点Oを通るX軸を回転軸として角加速度αXと反対方向に回るように変形する。
【0046】
この変形により、検出脚部3の検出電極303と301間、検出電極302と304間、検出脚部4の検出電極307と309間、及び検出電極310と308間には、それぞれ図22の矢印で示すような電界が圧電効果によって生じる。
第1の角加速度検出回路400は、X軸廻りの角加速度αXによる力に応じて発生した検出脚部3,4の歪みによる電圧信号を検出電極301〜304,307〜310から受けて、この電圧信号を基に角加速度αXを検出する。なお、検出電極301〜312で検出されるのは、正確には検出脚部3,4の歪みに応じた電荷であるが、この電荷はバッファによって電圧に変換されるので、以後、検出電極301〜312の出力については電圧信号又は出力電圧と称することにする。
【0047】
すなわち、第1の角加速度検出回路400の加算器414は、バッファ406を介して受け取った検出電極301の出力電圧とバッファ409を介して受け取った検出電極304の出力電圧とを加算する。加算器415は、バッファ407を介して受け取った検出電極302の出力電圧とバッファ408を介して受け取った検出電極303の出力電圧とを加算する。加算器416は、バッファ410を介して受け取った検出電極307の出力電圧とバッファ413を介して受け取った検出電極310の出力電圧とを加算する。加算器417は、バッファ411を介して受け取った検出電極308の出力電圧とバッファ412を介して受け取った検出電極309の出力電圧とを加算する。加算器418は、加算器414の出力電圧と加算器417の出力電圧とを加算する。加算器419は、加算器415の出力電圧と加算器416の出力電圧とを加算する。差動増幅回路420は、加算器419の出力電圧と加算器418の出力電圧との差を求める。積分器421は、差動増幅回路420の出力電圧を積分する。
【0048】
こうして、第1の角加速度検出回路400では、検出脚部3,4に生じた電界の低電位側の総計を加算器418で求め、検出脚部3,4に生じた電界の高電位側の総計を加算器419で求め、加算器419の出力電圧と加算器418の出力電圧との差を差動増幅回路420で求めることにより、検出脚部3,4に生じた電位差の総計を求め、この電位差の総計を積分器421で積分する。積分器421の出力電圧は、角加速度αXに応じた大きさと極性とを持つ。よって、第1の角加速度検出回路400は、積分器421の出力電圧の大きさによって角加速度αXの大きさを検出することができ、また積分器421の出力電圧の極性によって角加速度αXの向きを検出することができる。
【0049】
図23(A)は慣性センサ素子1aにX軸方向の加速度aXが加わったときの基部2と検出脚部3,4の動きを模式的に示す平面図、図23(B)は図23(A)の慣性センサ素子1aの斜視図である。慣性センサ素子1aにX軸方向の加速度aXが加わると、慣性センサ素子1aの基部2及び検出脚部3,4には加速度aXと反対方向に慣性による力F=maXが加わる。この慣性による力Fにより、基部2及び検出脚部3,4は、加速度aXが加わっていない初期状態S0に対して、図23(A)、図23(B)の状態S1で示すようにXY平面に沿って加速度aXと反対方向に撓むように変形する。
【0050】
この変形により、検出脚部3の検出電極305と301間、検出電極305と303間、検出電極306と302間、検出電極306と304間、検出脚部4の検出電極311と307間、検出電極311と309間、検出電極312と308間、及び検出電極312と310間には、それぞれ図24の矢印で示すような電界が圧電効果によって生じる。
第1の加速度検出回路401は、X軸方向の加速度aXによる力に応じて発生した検出脚部3,4の歪みによる電圧信号を検出電極301〜312から受けて、この電圧信号を基に加速度aXを検出する。
【0051】
すなわち、第1の加速度検出回路401の加算器434は、バッファ422を介して受け取った検出電極301の出力電圧と、バッファ423を介して受け取った検出電極302の出力電圧と、バッファ424を介して受け取った検出電極303の出力電圧と、バッファ425を介して受け取った検出電極304の出力電圧とを加算する。加算器435は、バッファ426を介して受け取った検出電極305の出力電圧とバッファ427を介して受け取った検出電極306の出力電圧とを加算する。加算器436は、バッファ428を介して受け取った検出電極307の出力電圧と、バッファ429を介して受け取った検出電極308の出力電圧と、バッファ430を介して受け取った検出電極309の出力電圧と、バッファ431を介して受け取った検出電極310の出力電圧とを加算する。加算器437は、バッファ432を介して受け取った検出電極311の出力電圧とバッファ433を介して受け取った検出電極312の出力電圧とを加算する。加算器438は、加算器434の出力電圧と加算器436の出力電圧とを加算する。加算器439は、加算器435の出力電圧と加算器437の出力電圧とを加算する。差動増幅回路440は、加算器439の出力電圧と加算器438の出力電圧との差を求める。積分器441は、差動増幅回路440の出力電圧を積分する。
【0052】
こうして、第1の加速度検出回路401では、検出脚部3,4に生じた電界の低電位側の総計を加算器438で求め、検出脚部3,4に生じた電界の高電位側の総計を加算器439で求め、加算器439の出力電圧と加算器438の出力電圧との差を差動増幅回路440で求めることにより、検出脚部3,4に生じた電位差の総計を求め、この電位差の総計を積分器441で積分する。積分器441の出力電圧は、加速度aXに応じた大きさと極性とを持つ。よって、第1の加速度検出回路401は、積分器441の出力電圧の大きさによって加速度aXの大きさを検出することができ、また積分器441の出力電圧の極性によって加速度aXの向きを検出することができる。
【0053】
図25(A)は慣性センサ素子1aにY軸廻りの角加速度αYが加わったときの基部2と検出脚部3,4の動きを模式的に示す平面図、図25(B)は図25(A)の慣性センサ素子1aの斜視図、図25(C)は図25(A)の慣性センサ素子1aをP側から見た側面図、図25(D)は図25(A)の慣性センサ素子1aをQ側から見た側面図である。
【0054】
慣性センサ素子1aに原点O(基部2の中心)を通るY軸廻りの角加速度αYが加わると、慣性センサ素子1aの基部2及び検出脚部3,4には角加速度αYと反対方向に慣性による力F=mαYが加わる。この慣性による力Fにより、基部2及び検出脚部3,4は、角加速度αYが加わっていない初期状態S0に対して、図25(A)、図25(B)、図25(C)、図25(D)の状態S1で示すように原点Oを通るY軸を回転軸として角加速度αYと反対方向に回るように変形する。
【0055】
この変形により、検出脚部3の検出電極305と301間、検出電極305と303間、検出電極302と306間、検出電極304と306間、検出脚部4の検出電極311と307間、検出電極311と309間、検出電極308と312間、及び検出電極310と312間には、それぞれ図26の矢印で示すような電界が圧電効果によって生じる。
第2の角加速度検出回路402は、Y軸廻りの角加速度αYによる力に応じて発生した検出脚部3,4の歪みによる電圧信号を検出電極301〜312から受けて、この電圧信号を基に角加速度αYを検出する。
【0056】
すなわち、第2の角加速度検出回路402の加算器454は、バッファ442を介して受け取った検出電極301の出力電圧と、バッファ447を介して受け取った検出電極306の出力電圧と、バッファ444を介して受け取った検出電極303の出力電圧とを加算する。加算器455は、バッファ445を介して受け取った検出電極304の出力電圧と、バッファ446を介して受け取った検出電極305の出力電圧と、バッファ443を介して受け取った検出電極302の出力電圧とを加算する。加算器456は、バッファ448を介して受け取った検出電極307の出力電圧と、バッファ453を介して受け取った検出電極312の出力電圧と、バッファ450を介して受け取った検出電極309の出力電圧とを加算する。加算器457は、バッファ451を介して受け取った検出電極310の出力電圧と、バッファ452を介して受け取った検出電極311の出力電圧と、バッファ449を介して受け取った検出電極309の出力電圧とを加算する。加算器458は、加算器454の出力電圧と加算器456の出力電圧とを加算する。加算器459は、加算器455の出力電圧と加算器457の出力電圧とを加算する。差動増幅回路460は、加算器459の出力電圧と加算器458の出力電圧との差を求める。積分器461は、差動増幅回路460の出力電圧を積分する。
【0057】
こうして、第2の角加速度検出回路402では、検出脚部3,4に生じた電界の低電位側の総計を加算器458で求め、検出脚部3,4に生じた電界の高電位側の総計を加算器459で求め、加算器459の出力電圧と加算器458の出力電圧との差を差動増幅回路460で求めることにより、検出脚部3,4に生じた電位差の総計を求め、この電位差の総計を積分器461で積分する。積分器461の出力電圧は、角加速度αYに応じた大きさと極性とを持つ。よって、第2の角加速度検出回路402は、積分器461の出力電圧の大きさによって角加速度αYの大きさを検出することができ、また積分器461の出力電圧の極性によって角加速度αYの向きを検出することができる。
【0058】
図27(A)は慣性センサ素子1aにY軸方向の加速度aYが加わったときの基部2と検出脚部3,4の動きを模式的に示す平面図、図27(B)は図27(A)の慣性センサ素子1aの斜視図である。慣性センサ素子1aにY軸方向の加速度aYが加わると、慣性センサ素子1aの基部2及び検出脚部3,4には加速度aYと反対方向に慣性による力F=maYが加わる。この慣性による力Fにより、基部2及び検出脚部3,4は、加速度aYが加わっていない初期状態S0に対して、図27(A)、図27(B)の状態S1で示すようにXY平面に沿って加速度aYと反対方向に撓むように変形する。
【0059】
この変形により、検出脚部3の検出電極303と301間、検出電極304と302間、検出脚部4の検出電極307と309間、及び検出電極308と310間には、それぞれ図28の矢印で示すような電界が圧電効果によって生じる。
第2の加速度検出回路403は、Y軸方向の加速度aYによる力に応じて発生した検出脚部3,4の歪みによる電圧信号を検出電極301〜304,307〜310から受けて、この電圧信号を基に加速度aYを検出する。
【0060】
すなわち、第2の加速度検出回路403の加算器470は、バッファ462を介して受け取った検出電極301の出力電圧とバッファ463を介して受け取った検出電極302の出力電圧とを加算する。加算器471は、バッファ464を介して受け取った検出電極303の出力電圧とバッファ465を介して受け取った検出電極304の出力電圧とを加算する。加算器472は、バッファ466を介して受け取った検出電極307の出力電圧とバッファ467を介して受け取った検出電極308の出力電圧とを加算する。加算器473は、バッファ468を介して受け取った検出電極309の出力電圧とバッファ469を介して受け取った検出電極310の出力電圧とを加算する。加算器474は、加算器470の出力電圧と加算器473の出力電圧とを加算する。加算器475は、加算器471の出力電圧と加算器472の出力電圧とを加算する。差動増幅回路476は、加算器475の出力電圧と加算器474の出力電圧との差を求める。積分器477は、差動増幅回路476の出力電圧を積分する。
【0061】
こうして、第2の加速度検出回路403では、検出脚部3,4に生じた電界の低電位側の総計を加算器474で求め、検出脚部3,4に生じた電界の高電位側の総計を加算器475で求め、加算器475の出力電圧と加算器474の出力電圧との差を差動増幅回路476で求めることにより、検出脚部3,4に生じた電位差の総計を求め、この電位差の総計を積分器477で積分する。積分器477の出力電圧は、加速度aYに応じた大きさと極性とを持つ。よって、第1の加速度検出回路401は、積分器477の出力電圧の大きさによって加速度aYの大きさを検出することができ、また積分器477の出力電圧の極性によって加速度aYの向きを検出することができる。
【0062】
図29(A)は慣性センサ素子1aにZ軸廻りの角加速度αZが加わったときの基部2と検出脚部3,4の動きを模式的に示す平面図、図29(B)は図29(A)の慣性センサ素子1aの斜視図である。
慣性センサ素子1aに原点O(基部2の中心)を通るZ軸廻りの角加速度αZが加わると、慣性センサ素子1aの基部2及び検出脚部3,4には角加速度αZと反対方向に慣性による力F=mαZが加わる。この慣性による力Fにより、基部2及び検出脚部3,4は、角加速度αZが加わっていない初期状態S0に対して、図29(A)、図29(B)の状態S1で示すように原点Oを通るZ軸を回転軸として角加速度αZと反対方向に回るように変形する。
【0063】
この変形により、検出脚部3の検出電極301と305間、検出電極303と305間、検出電極302と306間、検出電極304と306間、検出脚部4の検出電極311と307間、検出電極311と309間、検出電極312と308間、及び検出電極312と310間には、それぞれ図30の矢印で示すような電界が圧電効果によって生じる。
第3の角加速度検出回路404は、Z軸廻りの角加速度αZによる力に応じて発生した検出脚部3,4の歪みによる電圧信号を検出電極301〜312から受けて、この電圧信号を基に角加速度αZを検出する。
【0064】
すなわち、第3の角加速度検出回路404の加算器490は、バッファ478を介して受け取った検出電極301の出力電圧と、バッファ479を介して受け取った検出電極302の出力電圧と、バッファ480を介して受け取った検出電極303の出力電圧と、バッファ481を介して受け取った検出電極304の出力電圧とを加算する。加算器491は、バッファ482を介して受け取った検出電極305の出力電圧と、バッファ483を介して受け取った検出電極306の出力電圧とを加算する。加算器492は、バッファ484を介して受け取った検出電極307の出力電圧と、バッファ485を介して受け取った検出電極308の出力電圧と、バッファ486を介して受け取った検出電極309の出力電圧と、バッファ487を介して受け取った検出電極310の出力電圧とを加算する。加算器493は、バッファ488を介して受け取った検出電極311の出力電圧とバッファ489を介して受け取った検出電極312の出力電圧とを加算する。加算器494は、加算器490の出力電圧と加算器493の出力電圧とを加算する。加算器495は、加算器491の出力電圧と加算器492の出力電圧とを加算する。差動増幅回路496は、加算器495の出力電圧と加算器494の出力電圧との差を求める。積分器497は、差動増幅回路496の出力電圧を積分する。
【0065】
こうして、第3の角加速度検出回路404では、検出脚部3,4に生じた電界の低電位側の総計を加算器495で求め、検出脚部3,4に生じた電界の高電位側の総計を加算器494で求め、加算器495の出力電圧と加算器494の出力電圧との差を差動増幅回路496で求めることにより、検出脚部3,4に生じた電位差の総計を求め、この電位差の総計を積分器497で積分する。積分器497の出力電圧は、角加速度αZに応じた大きさと極性とを持つ。よって、第2の角加速度検出回路402は、積分器497の出力電圧の大きさによって角加速度αZの大きさを検出することができ、また積分器497の出力電圧の極性によって角加速度αZの向きを検出することができる。
【0066】
図31(A)は慣性センサ素子1aにZ軸方向の加速度aZが加わったときの基部2と検出脚部3,4の動きを模式的に示す平面図、図31(B)は図31(A)の慣性センサ素子1aの斜視図、図31(C)は図31(A)の慣性センサ素子1aをP側から見た側面図、図31(D)は図31(A)の慣性センサ素子1aをQ側から見た側面図である。
【0067】
慣性センサ素子1aにZ軸方向の加速度aZが加わると、慣性センサ素子1aの基部2及び検出脚部3,4には加速度aZと反対方向に慣性による力F=maZが加わる。この慣性による力Fにより、基部2及び検出脚部3,4は、加速度aZが加わっていない初期状態S0に対して、図31(A)、図31(B)、図31(C)、図31(D)の状態S1で示すようにYZ平面に沿って加速度aZと反対方向に撓むように変形する。
【0068】
この変形により、検出脚部3の検出電極301と303間、検出電極304と302間、検出脚部4の検出電極307と309間、及び検出電極310と308間には、それぞれ図32の矢印で示すような電界が圧電効果によって生じる。
第3の加速度検出回路405は、Z軸方向の加速度aZによる力に応じて発生した検出脚部3,4の歪みによる電圧信号を検出電極301〜304,307〜310から受けて、この電圧信号を基に加速度aZを検出する。
【0069】
すなわち、第3の加速度検出回路405の加算器506は、バッファ498を介して受け取った検出電極301の出力電圧とバッファ499を介して受け取った検出電極302の出力電圧とを加算する。加算器507は、バッファ500を介して受け取った検出電極303の出力電圧とバッファ501を介して受け取った検出電極304の出力電圧とを加算する。加算器508は、バッファ502を介して受け取った検出電極307の出力電圧とバッファ503を介して受け取った検出電極308の出力電圧とを加算する。加算器509は、バッファ504を介して受け取った検出電極309の出力電圧とバッファ505を介して受け取った検出電極310の出力電圧とを加算する。加算器510は、加算器506の出力電圧と加算器508の出力電圧とを加算する。加算器511は、加算器507の出力電圧と加算器509の出力電圧とを加算する。差動増幅回路512は、加算器511の出力電圧と加算器510の出力電圧との差を求める。積分器513は、差動増幅回路512の出力電圧を積分する。
【0070】
こうして、第3の加速度検出回路405では、検出脚部3,4に生じた電界のうち図32の左側の電位の総計を加算器510で求め、検出脚部3,4に生じた電界のうち図32の右側の電位の総計を加算器511で求め、加算器511の出力電圧と加算器510の出力電圧との差を差動増幅回路512で求めることにより、検出脚部3,4に生じた電位差の総計を求め、この電位差の総計を積分器513で積分する。積分器513の出力電圧は、加速度aZに応じた大きさと極性とを持つ。よって、第3の加速度検出回路405は、積分器513の出力電圧の大きさによって加速度aZの大きさを検出することができ、また積分器513の出力電圧の極性によって加速度aZの向きを検出することができる。
【0071】
以上のように、本実施の形態によれば、検出脚部3,4を励振しない静止状態で、X,Y,Zの3軸の廻りの角加速度の大きさと向きを検出することができる。その結果、本実施の形態では、脚部の励振を必要とする従来のセンサに比べて消費電力を低減することができる。また、本実施の形態では、静止状態でX,Y,Zの3軸の廻りの角加速度に加えてX,Y,Zの3軸方向の加速度の大きさと向きを検出することができる。
【0072】
また、本実施の形態では、第1の角加速度検出回路400の後ろに、X軸廻りの角加速度を時間で積分する第1の積分手段(不図示)を設けることにより、X軸廻りの角速度を検出することができ、第2の角加速度検出回路402の後ろに、Y軸廻りの角加速度を時間で積分する第2の積分手段(不図示)を設けることにより、Y軸廻りの角速度を検出することができ、第3の角加速度検出回路404の後ろに、Z軸廻りの角加速度を時間で積分する第3の積分手段(不図示)を設けることにより、Z軸廻りの角速度を検出することができる。
【0073】
[第2の実施の形態]
図33は本発明の第2の実施の形態に係る慣性センサ素子の構成を示す平面図である。本実施の形態の慣性センサ素子1bは、参考例の慣性センサ素子1に対して、前記第1の方向と直交する第2の方向の基部2の両端部に重り8,9を設けたものである。
【0074】
本実施の形態では、重り8,9を設けることにより、基部2の質量が増加するので、角加速度又は加速度が加わったときの慣性による力が増大することになり、角加速度又は加速度が加わったときの検出脚部3,4の歪みが増大する。検出脚部3,4の最大変位は、重り8,9を設けない場合の例えば数倍程度にすることができる。こうして、本実施の形態では、角加速度及び加速度の検出感度を増大させることができる。本実施の形態を第1の実施の形態に適用してもよいことは言うまでもない。
【0075】
なお、参考例および第1、第2の実施の形態では、検出脚部3,4の支持部近傍に検出電極を設けているが、このような電極配置にする理由は、角加速度又は加速度が加わったときに基部2の近傍と支持部5の近傍では検出脚部の伸縮が逆になる場合があるので、前記第1の方向に沿って検出脚部3,4の全面に検出電極を配置すると、電荷が打ち消しあってしまい、検出脚部3,4の電界を検出できないことが考えられるからである。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明は、角加速度センサや角速度センサに適用することができる。
【符号の説明】
【0077】
1a,1b…慣性センサ素子、2…基部、3,4…検出脚部、5…支持部、8,9…重り、301〜312…検出電極、400,402,404…角加速度検出回路、401,403,405…加速度検出回路、406〜413,422〜433,442〜453,462〜469,478〜489,498〜505…バッファ、414〜419,434〜439,454〜459,470〜475,490〜495,506〜511…加算器、420,440,460,476,496,512…差動増幅回路、421,441,461,477,497,513…積分器。
【技術分野】
【0001】
本発明は、脚部を励振しない状態で角加速度を検出する静止型の慣性センサ素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図34(A)は特許文献1に開示された従来の角速度センサの平面図、図34(B)は図34(A)の角速度センサをE側から見た側面図である。図34(A)、図34(B)の角速度センサは、圧電材料として水晶を用いた圧電振動式の角速度センサである。図34(A)、図34(B)において、1000は音叉型の振動子素子(水晶板)、1011〜1014は励振用の電極、1021〜1024は角速度検出用の電極である。励振用の電極1011〜1014は振動子素子1000の一方の脚部1001の表裏及び左右の面に、検出用の電極1021〜1024は振動子素子1000の他方の脚部1002の左右の面に形成されている。脚部1001及び1002は、この脚部1001及び1002に対して平行な軸線Lを有する主軸1003から分岐されており、脚部1001,1002と主軸1003とは共通の平面に位置している。
【0003】
この角速度センサにおいては、図34(B)に示されるように、励振用の電極1011と1013とが端子P1に共通に接続され、励振用の電極1012と1014とが端子P2に共通に接続され、この端子P1とP2との間に交流電圧(励振振動信号)が印加される。このため、あるときは図34(B)の中脚部1001に矢印で示す如く電界が発生し、次には逆方向の電界が発生することにより、逆圧電効果により振動子素子1000の一方の脚部1001が、更に他方の脚部1002も連動して、左右に振動(屈曲振動)する。
【0004】
ここで、脚部1001,1002の振動方向をX軸方向、このX軸方向と直交する紙面内の方向、すなわち主軸1003の軸線Lの方向をY軸方向、このX−Y平面と直交する方向(振動子素子1000の板面に垂直な方向)をZ軸方向とした場合、Y軸の廻りに角速度が作用すると、すなわち振動子素子1000がY軸の廻りに回転すると、コリオリの力によりZ軸方向の振動成分が生じ、振動子素子1000がXZ平面で楕円運動するように振動する。このZ軸方向の振動成分の大きさはコリオリの力に比例しているので、振動子素子1000の他方の脚部1002には圧電効果により、角速度に比例した大きさで振動の方向に応じた極の電荷が発生する。
【0005】
これにより、検出用の電極1021と1024とを共通に接続した端子P3と、検出用の電極1022と1023とを共通に接続した端子P4との間に電荷が発生し、コリオリの力に応じた電圧信号が得られる。この電圧信号の大きさによって、Y軸の廻りに作用する角速度の大きさを知ることができる。また、この電圧信号は基本的にサインカーブとして得られ、この電圧信号の波形と励振振動信号の波形とを位相比較することにより、その位相の進み遅れで角速度の方向を知ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−325912号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の角速度センサでは、コリオリの力を利用してY軸廻りの角速度を検出することになるが、コリオリの力は、速度のあるもの、すなわち振動しているものにしか働かない。そのため、従来の角速度センサでは、振動子素子1000の脚部1001,1002を励振する必要があり、電力を消費するという問題点があった。したがって、腕時計等に角速度センサを搭載すると、電力の消費が大きく、例えば数日程度しか電池がもたないという問題点があった。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、脚部を励振しない状態で角加速度を検出することができ、さらに角加速度から角速度を検出することができる静止型の慣性センサ素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の慣性センサ素子は、板状の基部と、この基部から第1の方向に延びるように形成された第1の検出脚部と、前記基部から前記第1の方向と反対方向に延びるように形成された第2の検出脚部と、前記基部と反対側の前記第1の検出脚部の端部を固定すると共に、前記基部と反対側の第2の検出脚部の端部を固定する支持部と、前記第1、第2の検出脚部の各々に設けられた検出電極と、角加速度及び加速度が加わっていない初期状態において前記基部と前記第1、第2の検出脚部と前記支持部とが配置される平面に対して平行で、かつ前記第1の方向と直交する方向をX軸方向、前記第1の方向と平行な方向をY軸方向、XY平面と直交する方向をZ軸方向としたとき、X軸廻りの角加速度による力に応じて発生した前記第1、第2の検出脚部の歪みによる電圧信号を前記検出電極から受けて、この電圧信号を基に前記X軸廻りの角加速度を検出する第1の角加速度検出手段と、Y軸廻りの角加速度による力に応じて発生した前記第1、第2の検出脚部の歪みによる電圧信号を前記検出電極から受けて、この電圧信号を基に前記Y軸廻りの角加速度を検出する第2の角加速度検出手段と、Z軸廻りの角加速度による力に応じて発生した前記第1、第2の検出脚部の歪みによる電圧信号を前記検出電極から受けて、この電圧信号を基に前記Z軸廻りの角加速度を検出する第3の角加速度検出手段とを有するものである。
【0010】
また、本発明の慣性センサ素子の1構成例は、さらに、前記検出されたX軸廻りの角加速度を時間で積分してX軸廻りの角速度を求める第1の積分手段と、前記検出されたY軸廻りの角加速度を時間で積分してY軸廻りの角速度を求める第2の積分手段と、前記検出されたZ軸廻りの角加速度を時間で積分してZ軸廻りの角速度を求める第3の積分手段とを有するものである。
また、本発明の慣性センサ素子の1構成例は、さらに、X軸方向の加速度による力に応じて発生した前記第1、第2の検出脚部の歪みによる電圧信号を前記検出電極から受けて、この電圧信号を基に前記X軸方向の加速度を検出する第1の加速度検出手段と、Y軸方向の加速度による力に応じて発生した前記第1、第2の検出脚部の歪みによる電圧信号を前記検出電極から受けて、この電圧信号を基に前記Y軸方向の加速度を検出する第2の加速度検出手段と、Z軸方向の加速度による力に応じて発生した前記第1、第2の検出脚部の歪みによる電圧信号を前記検出電極から受けて、この電圧信号を基に前記Z軸方向の加速度を検出する第3の加速度検出手段とを有するものである。
【0011】
また、本発明の慣性センサ素子の1構成例において、前記検出電極は、前記第1の検出脚部の一方の側面に形成された第1、第2の検出電極と、前記第1の検出脚部の他方の側面に形成された第3、第4の検出電極と、前記第1の検出脚部の上面に形成された第5の検出電極と、前記第1の検出脚部の下面に形成された第6の検出電極と、前記第2の検出脚部の一方の側面に形成された第7、第8の検出電極と、前記第2の検出脚部の他方の側面に形成された第9、第10の検出電極と、前記第2の検出脚部の上面に形成された第11の検出電極と、前記第2の検出脚部の下面に形成された第12の検出電極とからなり、前記第1の角加速度検出手段は、X軸廻りの角加速度による力に応じて発生した前記第1、第2の検出脚部の歪みによる電圧信号を前記第1乃至第4の検出電極及び前記第7乃至第10の検出電極から受けて、この電圧信号を基に前記X軸廻りの角加速度を検出し、前記第2の角加速度検出手段は、Y軸廻りの角加速度による力に応じて発生した前記第1、第2の検出脚部の歪みによる電圧信号を前記第1乃至第12の検出電極から受けて、この電圧信号を基に前記Y軸廻りの角加速度を検出し、前記第3の角加速度検出手段は、Z軸廻りの角加速度による力に応じて発生した前記第1、第2の検出脚部の歪みによる電圧信号を前記第1乃至第12の検出電極から受けて、この電圧信号を基に前記Z軸廻りの角加速度を検出するものである。
【0012】
また、本発明の慣性センサ素子の1構成例において、前記検出電極は、前記第1乃至第12の検出電極からなり、前記第1の加速度検出手段は、X軸方向の加速度による力に応じて発生した前記第1、第2の検出脚部の歪みによる電圧信号を前記第1乃至第12の検出電極から受けて、この電圧信号を基に前記X軸方向の加速度を検出し、前記第2の加速度検出手段は、Y軸方向の加速度による力に応じて発生した前記第1、第2の検出脚部の歪みによる電圧信号を前記第1乃至第4の検出電極及び前記第7乃至第10の検出電極から受けて、この電圧信号を基に前記Y軸方向の加速度を検出し、前記第3の加速度検出手段は、Z軸方向の加速度による力に応じて発生した前記第1、第2の検出脚部の歪みによる電圧信号を前記第1乃至第4の検出電極及び前記第7乃至第10の検出電極から受けて、この電圧信号を基に前記Z軸方向の加速度を検出するものである。
また、本発明の慣性センサ素子の1構成例は、前記第1の方向と直交する方向の前記基部の両端部にそれぞれ重りを設けたものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、基部から第1の方向に延びるように形成された第1の検出脚部と、基部から第1の方向と反対方向に延びるように形成された第2の検出脚部と、基部と反対側の第1の検出脚部の端部を固定すると共に、基部と反対側の第2の検出脚部の端部を固定する支持部と、第1、第2の検出脚部の各々に設けられた検出電極と、第1、第2、第3の角加速度検出手段とを設けることにより、脚部を励振しない静止状態で、X,Y,Zの3軸の廻りの角加速度の大きさと向きを検出することができる。
【0014】
また、本発明では、第1、第2、第3の積分手段を設けることにより、X,Y,Zの3軸の廻りの角速度を検出することができる。
また、本発明では、第1、第2、第3の加速度検出手段を設けることにより、X,Y,Zの3軸の廻りの角加速度に加えてX,Y,Zの3軸方向の加速度の大きさと向きを検出することができる。
【0015】
また、本発明では、第1の方向と直交する方向の基部の両端部にそれぞれ重りを設けることにより、角加速度又は加速度が加わったときの第1、第2の検出脚部の歪みを大きくすることができるので、角加速度及び加速度の検出感度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の参考例に係る慣性センサ素子の構成を示す平面図である。
【図2】本発明の参考例に係る慣性センサ素子の構成を示す斜視図である。
【図3】本発明の参考例に係る慣性センサ素子の構成を示す断面図である。
【図4】本発明の参考例に係る慣性センサ素子の各電極の接続関係を示す回路図である。
【図5】本発明の参考例に係る慣性センサ素子の角加速度検出回路の構成例を示す回路図である。
【図6】本発明の参考例に係る慣性センサ素子の加速度検出回路の構成例を示す回路図である。
【図7】本発明の参考例においてZ軸廻りの角加速度が加わったときの基部と検出脚部の動きを模式的に示す平面図及び斜視図である。
【図8】本発明の参考例においてZ軸廻りの角加速度が加わったときに検出脚部に生じる電界を示す断面図である。
【図9】本発明の参考例においてX軸方向の加速度が加わったときの基部と検出脚部の動きを模式的に示す平面図及び斜視図である。
【図10】本発明の参考例においてX軸方向の加速度が加わったときに検出脚部に生じる電界を示す断面図である。
【図11】本発明の第1の実施の形態に係る慣性センサ素子の構成を示す平面図である。
【図12】本発明の第1の実施の形態に係る慣性センサ素子の構成を示す斜視図である。
【図13】本発明の第1の実施の形態に係る慣性センサ素子の構成を示す断面図である。
【図14】本発明の第1の実施の形態に係る慣性センサ素子の各電極の接続関係を示す回路図である。
【図15】本発明の第1の実施の形態に係る慣性センサ素子の第1の角加速度検出回路の構成例を示す回路図である。
【図16】本発明の第1の実施の形態に係る慣性センサ素子の第1の加速度検出回路の構成例を示す回路図である。
【図17】本発明の第1の実施の形態に係る慣性センサ素子の第2の角加速度検出回路の構成例を示す回路図である。
【図18】本発明の第1の実施の形態に係る慣性センサ素子の第2の加速度検出回路の構成例を示す回路図である。
【図19】本発明の第1の実施の形態に係る慣性センサ素子の第3の角加速度検出回路の構成例を示す回路図である。
【図20】本発明の第1の実施の形態に係る慣性センサ素子の第3の加速度検出回路の構成例を示す回路図である。
【図21】本発明の第1の実施の形態においてX軸廻りの角加速度が加わったときの基部と検出脚部の動きを模式的に示す平面図、斜視図及び側面図である。
【図22】本発明の第1の実施の形態においてX軸廻りの角加速度が加わったときに検出脚部に生じる電界を示す断面図である。
【図23】本発明の第1の実施の形態においてX軸方向の加速度が加わったときの基部と検出脚部の動きを模式的に示す平面図及び斜視図である。
【図24】本発明の第1の実施の形態においてX軸方向の加速度が加わったときに検出脚部に生じる電界を示す断面図である。
【図25】本発明の第1の実施の形態においてY軸廻りの角加速度が加わったときの基部と検出脚部の動きを模式的に示す平面図、斜視図及び側面図である。
【図26】本発明の第1の実施の形態においてY軸廻りの角加速度が加わったときに検出脚部に生じる電界を示す断面図である。
【図27】本発明の第1の実施の形態においてY軸方向の加速度が加わったときの基部と検出脚部の動きを模式的に示す平面図及び斜視図である。
【図28】本発明の第1の実施の形態においてY軸方向の加速度が加わったときに検出脚部に生じる電界を示す断面図である。
【図29】本発明の第1の実施の形態においてZ軸廻りの角加速度が加わったときの基部と検出脚部の動きを模式的に示す平面図及び斜視図である。
【図30】本発明の第1の実施の形態においてZ軸廻りの角加速度が加わったときに検出脚部に生じる電界を示す断面図である。
【図31】本発明の第1の実施の形態においてZ軸方向の加速度が加わったときの基部と検出脚部の動きを模式的に示す平面図、斜視図及び側面図である。
【図32】本発明の第1の実施の形態においてZ軸方向の加速度が加わったときに検出脚部に生じる電界を示す断面図である。
【図33】本発明の第2の実施の形態に係る慣性センサ素子の構成を示す平面図である。
【図34】従来の角速度センサの構成を示す平面図及び側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[参考例]
以下、本発明の参考例について図面を参照して説明する。図1は本発明の参考例に係る慣性センサ素子の構成を示す平面図、図2は図1の慣性センサ素子の斜視図、図3(A)は図1の慣性センサ素子のA−A線断面図、図3(B)は図1の慣性センサ素子のB−B線断面図である。
【0018】
慣性センサ素子1は、板状の基部2と、基部2から第1の方向(図1では上方向)に延びるように形成された第1の検出脚部3と、基部2から前記第1の方向と反対の方向(図1では下方向)に延びるように形成された第2の検出脚部4と、基部2と反対側の第1の検出脚部3の端部を固定すると共に、基部2と反対側の第2の検出脚部4の端部を固定する枠状の支持部5と、基部2との接続部から支持部5との接続部まで前記第1の方向に沿って第1の検出脚部3に形成された第1の貫通孔6と、基部2との接続部から支持部5との接続部まで前記第1の方向に沿って第2の検出脚部4に形成された第2の貫通孔7とを備えている。なお、図1〜図3では、角加速度及び加速度が加わっていない初期状態において基部2と検出脚部3,4と支持部5とが配置される平面(図1の紙面)に対して平行で、かつ前記第1の方向と直交する方向をX軸方向、前記第1の方向と平行な方向をY軸方向、XY平面と直交する方向をZ軸方向としている。図1におけるOは原点であり、基部2の中心である。
【0019】
基部2と検出脚部3,4と支持部5とは、例えば厚さ0.1〜0.3mm程度の水晶板(Z板)等の圧電材料により一体成形されている。このような慣性センサ素子1を製造するには、水晶板を例えばエッチングなどにより加工すればよい。検出脚部3,4の幅(X軸方向の寸法)は0.05〜0.3mm程度、長さ(Y軸方向の寸法)は1.0〜5.0mm程度に形成されていればよい。図1〜図3の例では、検出脚部3,4は、同一の幅と同一の長さに形成されている。
慣性センサ素子1を例えば腕時計等の機器に搭載する場合には、慣性センサ素子1の支持部5が機器の筐体に固定される。
【0020】
図3(A)に示すように、第1の検出脚部3の支持部近傍の一方の側面には前記第1の方向に沿って検出電極101が形成され、支持部近傍の他方の側面には前記第1の方向に沿って検出電極102が形成され、さらに第1の貫通孔6によってできた第1の検出脚部3の内側の壁面には検出電極101,102と対向するように検出電極103が形成されている。
【0021】
同様に図3(B)に示すように、第2の検出脚部4の支持部近傍の側面には前記第1の方向に沿って検出電極104が形成され、支持部近傍の他方の側面には前記第1の方向に沿って検出電極105が形成され、さらに第2の貫通孔7によってできた第2の検出脚部4の内側の壁面には検出電極104,105と対向するように検出電極106が形成されている。
【0022】
図4は慣性センサ素子1の各電極の接続関係を示す回路図である。第1の検出脚部3の検出電極101〜103及び第2の検出脚部4の検出電極104〜106は、Z軸廻りの角加速度を検出する角加速度検出回路200とX軸方向の加速度を検出する加速度検出回路201に接続されている。
【0023】
図5は角加速度検出回路200の構成例を示す回路図、図6は加速度検出回路201の構成例を示す回路図である。角加速度検出回路200は、バッファ202〜207と、加算器208〜211と、差動増幅回路212と、積分器213とから構成され、加速度検出回路201は、バッファ214〜219と、加算器220〜223と、差動増幅回路224と、積分器225とから構成される。
【0024】
次に、本参考例の慣性センサ素子1の動作を説明する。図7(A)は慣性センサ素子1にZ軸廻りの角加速度αZが加わったときの基部2と検出脚部3,4の動きを模式的に示す平面図、図7(B)は図7(A)の慣性センサ素子1の斜視図である。慣性センサ素子1に原点O(基部2の中心)を通るZ軸廻りの角加速度αZが加わると、慣性センサ素子1の基部2及び検出脚部3,4には角加速度αZと反対方向に慣性による力F=mαZ(mは基部2及び検出脚部3,4の質量)が加わる。この慣性による力Fにより、基部2及び検出脚部3,4は、角加速度αZが加わっていない初期状態(図7(A)、図7(B)の破線で示すS0)に対して、図7(A)、図7(B)の状態S1で示すようにXY平面に沿って変形する。
【0025】
この変形により、検出脚部3の検出電極101と103間、検出電極102と103間、検出脚部4の検出電極104と106間、及び検出電極105と106間には、それぞれ図8の矢印で示すような電界が圧電効果によって生じる。
角加速度検出回路200は、Z軸廻りの角加速度αZによる力に応じて発生した検出脚部3,4の歪みによる電圧信号を検出電極101〜106から受けて、この電圧信号を基に角加速度αZを検出する。なお、検出電極101〜106で検出されるのは、正確には検出脚部3,4の歪みに応じた電荷であるが、この電荷はバッファによって電圧に変換されるので、以後、検出電極101〜106の出力については電圧信号又は出力電圧と称することにする。
【0026】
すなわち、角加速度検出回路200の加算器208は、バッファ202を介して受け取った検出電極101の出力電圧とバッファ203を介して受け取った検出電極102の出力電圧とを加算する。加算器209は、バッファ205を介して受け取った検出電極104の出力電圧とバッファ206を介して受け取った検出電極105の出力電圧とを加算する。加算器210は、加算器208の出力電圧とバッファ207を介して受け取った検出電極106の出力電圧とを加算する。加算器211は、バッファ204を介して受け取った検出電極103の出力電圧と加算器209の出力電圧とを加算する。差動増幅回路212は、加算器211の出力電圧と加算器210の出力電圧との差を求める。積分器213は、差動増幅回路212の出力電圧を積分する。
【0027】
こうして、角加速度検出回路200では、検出脚部3,4に生じた電界の低電位側の総計を加算器210で求め、検出脚部3,4に生じた電界の高電位側の総計を加算器211で求め、加算器211の出力電圧と加算器210の出力電圧との差を差動増幅回路212で求めることにより、検出脚部3,4に生じた電位差の総計を求め、この電位差の総計を積分器213で積分する。積分器213の出力電圧は、角加速度αZに応じた大きさと極性とを持つ。よって、角加速度検出回路200は、積分器213の出力電圧の大きさによって角加速度αZの大きさを検出することができ、また積分器213の出力電圧の極性によって角加速度αZの向きを検出することができる。
【0028】
図9(A)は慣性センサ素子1にX軸方向の加速度aXが加わったときの基部2と検出脚部3,4の動きを模式的に示す平面図、図9(B)は図9(A)の慣性センサ素子1の斜視図である。慣性センサ素子1にX軸方向の加速度aXが加わると、慣性センサ素子1の基部2及び検出脚部3,4には加速度aXと反対方向に慣性による力F=maXが加わる。この慣性による力Fにより、基部2及び検出脚部3,4は、加速度aXが加わっていない初期状態S0に対して、図9(A)、図9(B)の状態S1で示すようにXY平面に沿って変形する。
【0029】
この変形により、検出脚部3の検出電極101と103間、検出電極102と103間、検出脚部4の検出電極104と106間、及び検出電極105と106間には、それぞれ図10の矢印で示すような電界が圧電効果によって生じる。
加速度検出回路201は、X軸方向の加速度aXによる力に応じて発生した検出脚部3,4の歪みによる電圧信号を検出電極101〜106から受けて、この電圧信号を基に加速度aXを検出する。
【0030】
すなわち、加速度検出回路201の加算器220は、バッファ214を介して受け取った検出電極101の出力電圧とバッファ215を介して受け取った検出電極102の出力電圧とを加算する。加算器221は、バッファ217を介して受け取った検出電極104の出力電圧とバッファ218を介して受け取った検出電極105の出力電圧とを加算する。加算器222は、加算器220の出力電圧と加算器221の出力電圧とを加算する。加算器223は、バッファ216を介して受け取った検出電極103の出力電圧とバッファ219を介して受け取った検出電極106の出力電圧とを加算する。差動増幅回路224は、加算器223の出力電圧と加算器222の出力電圧との差を求める。積分器225は、差動増幅回路224の出力電圧を積分する。
【0031】
こうして、加速度検出回路201では、検出脚部3,4に生じた電界の低電位側の総計を加算器222で求め、検出脚部3,4に生じた電界の高電位側の総計を加算器223で求め、加算器223の出力電圧と加算器222の出力電圧との差を差動増幅回路224で求めることにより、検出脚部3,4に生じた電位差の総計を求め、この電位差の総計を積分器225で積分する。積分器225の出力電圧は、加速度aXに応じた大きさと極性とを持つ。よって、加速度検出回路201は、積分器225の出力電圧の大きさによって加速度aXの大きさを検出することができ、また積分器225の出力電圧の極性によって加速度aXの向きを検出することができる。
【0032】
以上のように、本参考例によれば、検出脚部3,4を励振しない静止状態で、角加速度の大きさと向きを検出することができる。その結果、本参考例では、脚部の励振を必要とする従来のセンサに比べて消費電力を低減することができる。また、本参考例では、静止状態で角加速度に加えて加速度の大きさと向きを検出することができる。また、本参考例では、角加速度検出回路200の後ろに、角加速度を時間で積分する積分手段(不図示)を設けることにより、角速度を求めることができる。
【0033】
また、本参考例では、検出脚部3,4に貫通孔6,7を設けることにより、検出脚部3,4を柔らかくすることができるので、角加速度又は加速度が加わったときの検出脚部3,4の歪みを大きくすることができ、また検出モードの共振周波数を低下させることができる。検出脚部3,4の最大変位は、貫通孔6,7を設けない場合に比べて例えば数倍程度にすることができ、検出モードの共振周波数は、貫通孔6,7を設けない場合に比べて例えば数分の1程度にすることができる。
【0034】
さらに、本参考例では、貫通孔6によってできた検出脚部3の内側の壁面に検出電極101,102と対向するように検出電極103を形成し、貫通孔7によってできた検出脚部4の内側の壁面に検出電極104,105と対向するように検出電極106を形成することにより、角加速度又は加速度に応じた歪みによって検出脚部3,4に生じる電界の方向に対して検出電極を垂直に設けることができるので、電界効率を向上させることができ、また検出電極3,4のそれぞれの両側面のみに検出電極を設ける場合に比べて検出電極間の距離を狭くすることができるので、電界を大きく検出することができる。以上の貫通孔6,7と検出電極101〜106の構成により、本参考例では、角加速度及び加速度の検出感度を向上させることができる。
【0035】
なお、慣性センサ素子1にX軸方向の加速度aXが加わった場合、角加速度検出回路200の積分器213の出力電圧は零となり、慣性センサ素子1にZ軸廻りの角加速度αZが加わった場合、加速度検出回路201の積分器225の出力電圧は零となる。したがって、角加速度検出回路200が加速度aXを誤って角加速度αZとして検出したり、加速度検出回路201が角加速度αZを誤って加速度aXとして検出したりすることはない。
【0036】
[第1の実施の形態]
次に、本発明の第1の実施の形態について説明する。図11は本発明の第1の実施の形態に係る慣性センサ素子の構成を示す平面図、図12は図11の慣性センサ素子の斜視図、図13(A)は図11の慣性センサ素子のA−A線断面図、図13(B)は図11の慣性センサ素子のB−B線断面図である。
【0037】
慣性センサ素子1aは、基部2と、基部2から第1の方向(図11では上方向)に延びるように形成された第1の検出脚部3と、基部2から前記第1の方向と反対の方向(図11では下方向)に延びるように形成された第2の検出脚部4と、基部2と反対側の第1の検出脚部3の端部を固定すると共に、基部2と反対側の第2の検出脚部4の端部を固定する枠状の支持部5とを備えている。なお、図11〜図13では、角加速度及び加速度が加わっていない初期状態において基部2と検出脚部3,4と支持部5とが配置される平面(図11の紙面)に対して平行で、かつ前記第1の方向と直交する方向をX軸方向、前記第1の方向と平行な方向をY軸方向、XY平面と直交する方向をZ軸方向としている。図11におけるOは原点であり、基部2の中心である。
【0038】
基部2と検出脚部3,4と支持部5とは、例えば厚さ0.1〜0.3mm程度の水晶板(Z板)等の圧電材料により一体成形されている。このような慣性センサ素子1aを製造するには、水晶板を例えばエッチングなどにより加工すればよい。検出脚部3,4の幅(X軸方向の寸法)は0.05〜0.3mm程度、長さ(Y軸方向の寸法)は1.0〜5.0mm程度に形成されていればよい。図11〜図13の例では、検出脚部3,4は、同一の幅と同一の長さに形成されている。
慣性センサ素子1aを例えば腕時計等の機器に搭載する場合には、慣性センサ素子1aの支持部5が機器の筐体に固定される。
【0039】
図13(A)に示すように、第1の検出脚部3の支持部近傍の一方の側面には前記第1の方向に沿って検出電極301,302が形成され、支持部近傍の他方の側面には前記第1の方向に沿って検出電極303,304が形成され、第1の検出脚部3の支持部近傍の上面には前記第1の方向に沿って検出電極305が形成され、支持部近傍の下面には前記第1の方向に沿って検出電極306が形成されている。
【0040】
同様に図13(B)に示すように、第2の検出脚部4の支持部近傍の一方の側面には前記第1の方向に沿って検出電極307,308が形成され、支持部近傍の他方の側面には前記第1の方向に沿って検出電極309,310が形成され、第1の検出脚部3の支持部近傍の上面には前記第1の方向に沿って検出電極311が形成され、支持部近傍の下面には前記第1の方向に沿って検出電極312が形成されている。
【0041】
図14は慣性センサ素子1aの各電極の接続関係を示す回路図である。第1の検出脚部3の検出電極301〜304及び第2の検出脚部4の検出電極307〜310は、X軸廻りの角加速度を検出する第1の角加速度検出回路400と、Y軸方向の加速度を検出する第2の加速度検出回路403と、Z軸方向の加速度を検出する第3の加速度検出回路405に接続されている。また、検出電極301〜312は、X軸方向の加速度を検出する第1の加速度検出回路401と、Y軸廻りの角加速度を検出する第2の角加速度検出回路402と、Z軸廻りの角加速度を検出する第3の角加速度検出回路404に接続されている。
【0042】
図15は第1の角加速度検出回路400の構成例を示す回路図、図16は第1の加速度検出回路401の構成例を示す回路図、図17は第2の角加速度検出回路402の構成例を示す回路図、図18は第2の加速度検出回路403の構成例を示す回路図、図19は第3の角加速度検出回路404の構成例を示す回路図、図20は第3の加速度検出回路405の構成例を示す回路図である。
【0043】
第1の角加速度検出回路400は、バッファ406〜413と、加算器414〜419と、差動増幅回路420と、積分器421とから構成される。第1の加速度検出回路401は、バッファ422〜433と、加算器434〜439と、差動増幅回路440と、積分器441とから構成される。第2の角加速度検出回路402は、バッファ442〜453と、加算器454〜459と、差動増幅回路460と、積分器461とから構成される。第2の加速度検出回路403は、バッファ462〜469と、加算器470〜475と、差動増幅回路476と、積分器477とから構成される。第3の角加速度検出回路404は、バッファ478〜489と、加算器490〜495と、差動増幅回路496と、積分器497とから構成される。第3の加速度検出回路405は、バッファ498〜505と、加算器506〜511と、差動増幅回路512と、積分器513とから構成される。
【0044】
次に、本実施の形態の慣性センサ素子1aの動作を説明する。図21(A)は慣性センサ素子1aにX軸廻りの角加速度αXが加わったときの基部2と検出脚部3,4の動きを模式的に示す平面図、図21(B)は図21(A)の慣性センサ素子1aの斜視図、図21(C)は図21(A)の慣性センサ素子1aをP側から見た側面図、図21(D)は図21(A)の慣性センサ素子1aをQ側から見た側面図である。
【0045】
慣性センサ素子1aに原点O(基部2の中心)を通るX軸廻りの角加速度αXが加わると、慣性センサ素子1aの基部2及び検出脚部3,4には角加速度αXと反対方向に慣性による力F=mαX(mは基部2及び検出脚部3,4の質量)が加わる。この慣性による力Fにより、基部2及び検出脚部3,4は、角加速度αXが加わっていない初期状態(図21(B)の破線で示すS0)に対して、図21(A)、図21(B)、図21(C)、図21(D)の状態S1で示すように原点Oを通るX軸を回転軸として角加速度αXと反対方向に回るように変形する。
【0046】
この変形により、検出脚部3の検出電極303と301間、検出電極302と304間、検出脚部4の検出電極307と309間、及び検出電極310と308間には、それぞれ図22の矢印で示すような電界が圧電効果によって生じる。
第1の角加速度検出回路400は、X軸廻りの角加速度αXによる力に応じて発生した検出脚部3,4の歪みによる電圧信号を検出電極301〜304,307〜310から受けて、この電圧信号を基に角加速度αXを検出する。なお、検出電極301〜312で検出されるのは、正確には検出脚部3,4の歪みに応じた電荷であるが、この電荷はバッファによって電圧に変換されるので、以後、検出電極301〜312の出力については電圧信号又は出力電圧と称することにする。
【0047】
すなわち、第1の角加速度検出回路400の加算器414は、バッファ406を介して受け取った検出電極301の出力電圧とバッファ409を介して受け取った検出電極304の出力電圧とを加算する。加算器415は、バッファ407を介して受け取った検出電極302の出力電圧とバッファ408を介して受け取った検出電極303の出力電圧とを加算する。加算器416は、バッファ410を介して受け取った検出電極307の出力電圧とバッファ413を介して受け取った検出電極310の出力電圧とを加算する。加算器417は、バッファ411を介して受け取った検出電極308の出力電圧とバッファ412を介して受け取った検出電極309の出力電圧とを加算する。加算器418は、加算器414の出力電圧と加算器417の出力電圧とを加算する。加算器419は、加算器415の出力電圧と加算器416の出力電圧とを加算する。差動増幅回路420は、加算器419の出力電圧と加算器418の出力電圧との差を求める。積分器421は、差動増幅回路420の出力電圧を積分する。
【0048】
こうして、第1の角加速度検出回路400では、検出脚部3,4に生じた電界の低電位側の総計を加算器418で求め、検出脚部3,4に生じた電界の高電位側の総計を加算器419で求め、加算器419の出力電圧と加算器418の出力電圧との差を差動増幅回路420で求めることにより、検出脚部3,4に生じた電位差の総計を求め、この電位差の総計を積分器421で積分する。積分器421の出力電圧は、角加速度αXに応じた大きさと極性とを持つ。よって、第1の角加速度検出回路400は、積分器421の出力電圧の大きさによって角加速度αXの大きさを検出することができ、また積分器421の出力電圧の極性によって角加速度αXの向きを検出することができる。
【0049】
図23(A)は慣性センサ素子1aにX軸方向の加速度aXが加わったときの基部2と検出脚部3,4の動きを模式的に示す平面図、図23(B)は図23(A)の慣性センサ素子1aの斜視図である。慣性センサ素子1aにX軸方向の加速度aXが加わると、慣性センサ素子1aの基部2及び検出脚部3,4には加速度aXと反対方向に慣性による力F=maXが加わる。この慣性による力Fにより、基部2及び検出脚部3,4は、加速度aXが加わっていない初期状態S0に対して、図23(A)、図23(B)の状態S1で示すようにXY平面に沿って加速度aXと反対方向に撓むように変形する。
【0050】
この変形により、検出脚部3の検出電極305と301間、検出電極305と303間、検出電極306と302間、検出電極306と304間、検出脚部4の検出電極311と307間、検出電極311と309間、検出電極312と308間、及び検出電極312と310間には、それぞれ図24の矢印で示すような電界が圧電効果によって生じる。
第1の加速度検出回路401は、X軸方向の加速度aXによる力に応じて発生した検出脚部3,4の歪みによる電圧信号を検出電極301〜312から受けて、この電圧信号を基に加速度aXを検出する。
【0051】
すなわち、第1の加速度検出回路401の加算器434は、バッファ422を介して受け取った検出電極301の出力電圧と、バッファ423を介して受け取った検出電極302の出力電圧と、バッファ424を介して受け取った検出電極303の出力電圧と、バッファ425を介して受け取った検出電極304の出力電圧とを加算する。加算器435は、バッファ426を介して受け取った検出電極305の出力電圧とバッファ427を介して受け取った検出電極306の出力電圧とを加算する。加算器436は、バッファ428を介して受け取った検出電極307の出力電圧と、バッファ429を介して受け取った検出電極308の出力電圧と、バッファ430を介して受け取った検出電極309の出力電圧と、バッファ431を介して受け取った検出電極310の出力電圧とを加算する。加算器437は、バッファ432を介して受け取った検出電極311の出力電圧とバッファ433を介して受け取った検出電極312の出力電圧とを加算する。加算器438は、加算器434の出力電圧と加算器436の出力電圧とを加算する。加算器439は、加算器435の出力電圧と加算器437の出力電圧とを加算する。差動増幅回路440は、加算器439の出力電圧と加算器438の出力電圧との差を求める。積分器441は、差動増幅回路440の出力電圧を積分する。
【0052】
こうして、第1の加速度検出回路401では、検出脚部3,4に生じた電界の低電位側の総計を加算器438で求め、検出脚部3,4に生じた電界の高電位側の総計を加算器439で求め、加算器439の出力電圧と加算器438の出力電圧との差を差動増幅回路440で求めることにより、検出脚部3,4に生じた電位差の総計を求め、この電位差の総計を積分器441で積分する。積分器441の出力電圧は、加速度aXに応じた大きさと極性とを持つ。よって、第1の加速度検出回路401は、積分器441の出力電圧の大きさによって加速度aXの大きさを検出することができ、また積分器441の出力電圧の極性によって加速度aXの向きを検出することができる。
【0053】
図25(A)は慣性センサ素子1aにY軸廻りの角加速度αYが加わったときの基部2と検出脚部3,4の動きを模式的に示す平面図、図25(B)は図25(A)の慣性センサ素子1aの斜視図、図25(C)は図25(A)の慣性センサ素子1aをP側から見た側面図、図25(D)は図25(A)の慣性センサ素子1aをQ側から見た側面図である。
【0054】
慣性センサ素子1aに原点O(基部2の中心)を通るY軸廻りの角加速度αYが加わると、慣性センサ素子1aの基部2及び検出脚部3,4には角加速度αYと反対方向に慣性による力F=mαYが加わる。この慣性による力Fにより、基部2及び検出脚部3,4は、角加速度αYが加わっていない初期状態S0に対して、図25(A)、図25(B)、図25(C)、図25(D)の状態S1で示すように原点Oを通るY軸を回転軸として角加速度αYと反対方向に回るように変形する。
【0055】
この変形により、検出脚部3の検出電極305と301間、検出電極305と303間、検出電極302と306間、検出電極304と306間、検出脚部4の検出電極311と307間、検出電極311と309間、検出電極308と312間、及び検出電極310と312間には、それぞれ図26の矢印で示すような電界が圧電効果によって生じる。
第2の角加速度検出回路402は、Y軸廻りの角加速度αYによる力に応じて発生した検出脚部3,4の歪みによる電圧信号を検出電極301〜312から受けて、この電圧信号を基に角加速度αYを検出する。
【0056】
すなわち、第2の角加速度検出回路402の加算器454は、バッファ442を介して受け取った検出電極301の出力電圧と、バッファ447を介して受け取った検出電極306の出力電圧と、バッファ444を介して受け取った検出電極303の出力電圧とを加算する。加算器455は、バッファ445を介して受け取った検出電極304の出力電圧と、バッファ446を介して受け取った検出電極305の出力電圧と、バッファ443を介して受け取った検出電極302の出力電圧とを加算する。加算器456は、バッファ448を介して受け取った検出電極307の出力電圧と、バッファ453を介して受け取った検出電極312の出力電圧と、バッファ450を介して受け取った検出電極309の出力電圧とを加算する。加算器457は、バッファ451を介して受け取った検出電極310の出力電圧と、バッファ452を介して受け取った検出電極311の出力電圧と、バッファ449を介して受け取った検出電極309の出力電圧とを加算する。加算器458は、加算器454の出力電圧と加算器456の出力電圧とを加算する。加算器459は、加算器455の出力電圧と加算器457の出力電圧とを加算する。差動増幅回路460は、加算器459の出力電圧と加算器458の出力電圧との差を求める。積分器461は、差動増幅回路460の出力電圧を積分する。
【0057】
こうして、第2の角加速度検出回路402では、検出脚部3,4に生じた電界の低電位側の総計を加算器458で求め、検出脚部3,4に生じた電界の高電位側の総計を加算器459で求め、加算器459の出力電圧と加算器458の出力電圧との差を差動増幅回路460で求めることにより、検出脚部3,4に生じた電位差の総計を求め、この電位差の総計を積分器461で積分する。積分器461の出力電圧は、角加速度αYに応じた大きさと極性とを持つ。よって、第2の角加速度検出回路402は、積分器461の出力電圧の大きさによって角加速度αYの大きさを検出することができ、また積分器461の出力電圧の極性によって角加速度αYの向きを検出することができる。
【0058】
図27(A)は慣性センサ素子1aにY軸方向の加速度aYが加わったときの基部2と検出脚部3,4の動きを模式的に示す平面図、図27(B)は図27(A)の慣性センサ素子1aの斜視図である。慣性センサ素子1aにY軸方向の加速度aYが加わると、慣性センサ素子1aの基部2及び検出脚部3,4には加速度aYと反対方向に慣性による力F=maYが加わる。この慣性による力Fにより、基部2及び検出脚部3,4は、加速度aYが加わっていない初期状態S0に対して、図27(A)、図27(B)の状態S1で示すようにXY平面に沿って加速度aYと反対方向に撓むように変形する。
【0059】
この変形により、検出脚部3の検出電極303と301間、検出電極304と302間、検出脚部4の検出電極307と309間、及び検出電極308と310間には、それぞれ図28の矢印で示すような電界が圧電効果によって生じる。
第2の加速度検出回路403は、Y軸方向の加速度aYによる力に応じて発生した検出脚部3,4の歪みによる電圧信号を検出電極301〜304,307〜310から受けて、この電圧信号を基に加速度aYを検出する。
【0060】
すなわち、第2の加速度検出回路403の加算器470は、バッファ462を介して受け取った検出電極301の出力電圧とバッファ463を介して受け取った検出電極302の出力電圧とを加算する。加算器471は、バッファ464を介して受け取った検出電極303の出力電圧とバッファ465を介して受け取った検出電極304の出力電圧とを加算する。加算器472は、バッファ466を介して受け取った検出電極307の出力電圧とバッファ467を介して受け取った検出電極308の出力電圧とを加算する。加算器473は、バッファ468を介して受け取った検出電極309の出力電圧とバッファ469を介して受け取った検出電極310の出力電圧とを加算する。加算器474は、加算器470の出力電圧と加算器473の出力電圧とを加算する。加算器475は、加算器471の出力電圧と加算器472の出力電圧とを加算する。差動増幅回路476は、加算器475の出力電圧と加算器474の出力電圧との差を求める。積分器477は、差動増幅回路476の出力電圧を積分する。
【0061】
こうして、第2の加速度検出回路403では、検出脚部3,4に生じた電界の低電位側の総計を加算器474で求め、検出脚部3,4に生じた電界の高電位側の総計を加算器475で求め、加算器475の出力電圧と加算器474の出力電圧との差を差動増幅回路476で求めることにより、検出脚部3,4に生じた電位差の総計を求め、この電位差の総計を積分器477で積分する。積分器477の出力電圧は、加速度aYに応じた大きさと極性とを持つ。よって、第1の加速度検出回路401は、積分器477の出力電圧の大きさによって加速度aYの大きさを検出することができ、また積分器477の出力電圧の極性によって加速度aYの向きを検出することができる。
【0062】
図29(A)は慣性センサ素子1aにZ軸廻りの角加速度αZが加わったときの基部2と検出脚部3,4の動きを模式的に示す平面図、図29(B)は図29(A)の慣性センサ素子1aの斜視図である。
慣性センサ素子1aに原点O(基部2の中心)を通るZ軸廻りの角加速度αZが加わると、慣性センサ素子1aの基部2及び検出脚部3,4には角加速度αZと反対方向に慣性による力F=mαZが加わる。この慣性による力Fにより、基部2及び検出脚部3,4は、角加速度αZが加わっていない初期状態S0に対して、図29(A)、図29(B)の状態S1で示すように原点Oを通るZ軸を回転軸として角加速度αZと反対方向に回るように変形する。
【0063】
この変形により、検出脚部3の検出電極301と305間、検出電極303と305間、検出電極302と306間、検出電極304と306間、検出脚部4の検出電極311と307間、検出電極311と309間、検出電極312と308間、及び検出電極312と310間には、それぞれ図30の矢印で示すような電界が圧電効果によって生じる。
第3の角加速度検出回路404は、Z軸廻りの角加速度αZによる力に応じて発生した検出脚部3,4の歪みによる電圧信号を検出電極301〜312から受けて、この電圧信号を基に角加速度αZを検出する。
【0064】
すなわち、第3の角加速度検出回路404の加算器490は、バッファ478を介して受け取った検出電極301の出力電圧と、バッファ479を介して受け取った検出電極302の出力電圧と、バッファ480を介して受け取った検出電極303の出力電圧と、バッファ481を介して受け取った検出電極304の出力電圧とを加算する。加算器491は、バッファ482を介して受け取った検出電極305の出力電圧と、バッファ483を介して受け取った検出電極306の出力電圧とを加算する。加算器492は、バッファ484を介して受け取った検出電極307の出力電圧と、バッファ485を介して受け取った検出電極308の出力電圧と、バッファ486を介して受け取った検出電極309の出力電圧と、バッファ487を介して受け取った検出電極310の出力電圧とを加算する。加算器493は、バッファ488を介して受け取った検出電極311の出力電圧とバッファ489を介して受け取った検出電極312の出力電圧とを加算する。加算器494は、加算器490の出力電圧と加算器493の出力電圧とを加算する。加算器495は、加算器491の出力電圧と加算器492の出力電圧とを加算する。差動増幅回路496は、加算器495の出力電圧と加算器494の出力電圧との差を求める。積分器497は、差動増幅回路496の出力電圧を積分する。
【0065】
こうして、第3の角加速度検出回路404では、検出脚部3,4に生じた電界の低電位側の総計を加算器495で求め、検出脚部3,4に生じた電界の高電位側の総計を加算器494で求め、加算器495の出力電圧と加算器494の出力電圧との差を差動増幅回路496で求めることにより、検出脚部3,4に生じた電位差の総計を求め、この電位差の総計を積分器497で積分する。積分器497の出力電圧は、角加速度αZに応じた大きさと極性とを持つ。よって、第2の角加速度検出回路402は、積分器497の出力電圧の大きさによって角加速度αZの大きさを検出することができ、また積分器497の出力電圧の極性によって角加速度αZの向きを検出することができる。
【0066】
図31(A)は慣性センサ素子1aにZ軸方向の加速度aZが加わったときの基部2と検出脚部3,4の動きを模式的に示す平面図、図31(B)は図31(A)の慣性センサ素子1aの斜視図、図31(C)は図31(A)の慣性センサ素子1aをP側から見た側面図、図31(D)は図31(A)の慣性センサ素子1aをQ側から見た側面図である。
【0067】
慣性センサ素子1aにZ軸方向の加速度aZが加わると、慣性センサ素子1aの基部2及び検出脚部3,4には加速度aZと反対方向に慣性による力F=maZが加わる。この慣性による力Fにより、基部2及び検出脚部3,4は、加速度aZが加わっていない初期状態S0に対して、図31(A)、図31(B)、図31(C)、図31(D)の状態S1で示すようにYZ平面に沿って加速度aZと反対方向に撓むように変形する。
【0068】
この変形により、検出脚部3の検出電極301と303間、検出電極304と302間、検出脚部4の検出電極307と309間、及び検出電極310と308間には、それぞれ図32の矢印で示すような電界が圧電効果によって生じる。
第3の加速度検出回路405は、Z軸方向の加速度aZによる力に応じて発生した検出脚部3,4の歪みによる電圧信号を検出電極301〜304,307〜310から受けて、この電圧信号を基に加速度aZを検出する。
【0069】
すなわち、第3の加速度検出回路405の加算器506は、バッファ498を介して受け取った検出電極301の出力電圧とバッファ499を介して受け取った検出電極302の出力電圧とを加算する。加算器507は、バッファ500を介して受け取った検出電極303の出力電圧とバッファ501を介して受け取った検出電極304の出力電圧とを加算する。加算器508は、バッファ502を介して受け取った検出電極307の出力電圧とバッファ503を介して受け取った検出電極308の出力電圧とを加算する。加算器509は、バッファ504を介して受け取った検出電極309の出力電圧とバッファ505を介して受け取った検出電極310の出力電圧とを加算する。加算器510は、加算器506の出力電圧と加算器508の出力電圧とを加算する。加算器511は、加算器507の出力電圧と加算器509の出力電圧とを加算する。差動増幅回路512は、加算器511の出力電圧と加算器510の出力電圧との差を求める。積分器513は、差動増幅回路512の出力電圧を積分する。
【0070】
こうして、第3の加速度検出回路405では、検出脚部3,4に生じた電界のうち図32の左側の電位の総計を加算器510で求め、検出脚部3,4に生じた電界のうち図32の右側の電位の総計を加算器511で求め、加算器511の出力電圧と加算器510の出力電圧との差を差動増幅回路512で求めることにより、検出脚部3,4に生じた電位差の総計を求め、この電位差の総計を積分器513で積分する。積分器513の出力電圧は、加速度aZに応じた大きさと極性とを持つ。よって、第3の加速度検出回路405は、積分器513の出力電圧の大きさによって加速度aZの大きさを検出することができ、また積分器513の出力電圧の極性によって加速度aZの向きを検出することができる。
【0071】
以上のように、本実施の形態によれば、検出脚部3,4を励振しない静止状態で、X,Y,Zの3軸の廻りの角加速度の大きさと向きを検出することができる。その結果、本実施の形態では、脚部の励振を必要とする従来のセンサに比べて消費電力を低減することができる。また、本実施の形態では、静止状態でX,Y,Zの3軸の廻りの角加速度に加えてX,Y,Zの3軸方向の加速度の大きさと向きを検出することができる。
【0072】
また、本実施の形態では、第1の角加速度検出回路400の後ろに、X軸廻りの角加速度を時間で積分する第1の積分手段(不図示)を設けることにより、X軸廻りの角速度を検出することができ、第2の角加速度検出回路402の後ろに、Y軸廻りの角加速度を時間で積分する第2の積分手段(不図示)を設けることにより、Y軸廻りの角速度を検出することができ、第3の角加速度検出回路404の後ろに、Z軸廻りの角加速度を時間で積分する第3の積分手段(不図示)を設けることにより、Z軸廻りの角速度を検出することができる。
【0073】
[第2の実施の形態]
図33は本発明の第2の実施の形態に係る慣性センサ素子の構成を示す平面図である。本実施の形態の慣性センサ素子1bは、参考例の慣性センサ素子1に対して、前記第1の方向と直交する第2の方向の基部2の両端部に重り8,9を設けたものである。
【0074】
本実施の形態では、重り8,9を設けることにより、基部2の質量が増加するので、角加速度又は加速度が加わったときの慣性による力が増大することになり、角加速度又は加速度が加わったときの検出脚部3,4の歪みが増大する。検出脚部3,4の最大変位は、重り8,9を設けない場合の例えば数倍程度にすることができる。こうして、本実施の形態では、角加速度及び加速度の検出感度を増大させることができる。本実施の形態を第1の実施の形態に適用してもよいことは言うまでもない。
【0075】
なお、参考例および第1、第2の実施の形態では、検出脚部3,4の支持部近傍に検出電極を設けているが、このような電極配置にする理由は、角加速度又は加速度が加わったときに基部2の近傍と支持部5の近傍では検出脚部の伸縮が逆になる場合があるので、前記第1の方向に沿って検出脚部3,4の全面に検出電極を配置すると、電荷が打ち消しあってしまい、検出脚部3,4の電界を検出できないことが考えられるからである。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明は、角加速度センサや角速度センサに適用することができる。
【符号の説明】
【0077】
1a,1b…慣性センサ素子、2…基部、3,4…検出脚部、5…支持部、8,9…重り、301〜312…検出電極、400,402,404…角加速度検出回路、401,403,405…加速度検出回路、406〜413,422〜433,442〜453,462〜469,478〜489,498〜505…バッファ、414〜419,434〜439,454〜459,470〜475,490〜495,506〜511…加算器、420,440,460,476,496,512…差動増幅回路、421,441,461,477,497,513…積分器。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状の基部と、
この基部から第1の方向に延びるように形成された第1の検出脚部と、
前記基部から前記第1の方向と反対方向に延びるように形成された第2の検出脚部と、
前記基部と反対側の前記第1の検出脚部の端部を固定すると共に、前記基部と反対側の第2の検出脚部の端部を固定する支持部と、
前記第1、第2の検出脚部の各々に設けられた検出電極と、
角加速度及び加速度が加わっていない初期状態において前記基部と前記第1、第2の検出脚部と前記支持部とが配置される平面に対して平行で、かつ前記第1の方向と直交する方向をX軸方向、前記第1の方向と平行な方向をY軸方向、XY平面と直交する方向をZ軸方向としたとき、X軸廻りの角加速度による力に応じて発生した前記第1、第2の検出脚部の歪みによる電圧信号を前記検出電極から受けて、この電圧信号を基に前記X軸廻りの角加速度を検出する第1の角加速度検出手段と、
Y軸廻りの角加速度による力に応じて発生した前記第1、第2の検出脚部の歪みによる電圧信号を前記検出電極から受けて、この電圧信号を基に前記Y軸廻りの角加速度を検出する第2の角加速度検出手段と、
Z軸廻りの角加速度による力に応じて発生した前記第1、第2の検出脚部の歪みによる電圧信号を前記検出電極から受けて、この電圧信号を基に前記Z軸廻りの角加速度を検出する第3の角加速度検出手段とを有することを特徴とする慣性センサ素子。
【請求項2】
請求項1記載の慣性センサ素子において、
さらに、前記検出されたX軸廻りの角加速度を時間で積分してX軸廻りの角速度を求める第1の積分手段と、
前記検出されたY軸廻りの角加速度を時間で積分してY軸廻りの角速度を求める第2の積分手段と、
前記検出されたZ軸廻りの角加速度を時間で積分してZ軸廻りの角速度を求める第3の積分手段とを有することを特徴とする慣性センサ素子。
【請求項3】
請求項1記載の慣性センサ素子において、
さらに、X軸方向の加速度による力に応じて発生した前記第1、第2の検出脚部の歪みによる電圧信号を前記検出電極から受けて、この電圧信号を基に前記X軸方向の加速度を検出する第1の加速度検出手段と、
Y軸方向の加速度による力に応じて発生した前記第1、第2の検出脚部の歪みによる電圧信号を前記検出電極から受けて、この電圧信号を基に前記Y軸方向の加速度を検出する第2の加速度検出手段と、
Z軸方向の加速度による力に応じて発生した前記第1、第2の検出脚部の歪みによる電圧信号を前記検出電極から受けて、この電圧信号を基に前記Z軸方向の加速度を検出する第3の加速度検出手段とを有することを特徴とする慣性センサ素子。
【請求項4】
請求項1記載の慣性センサ素子において、
前記検出電極は、
前記第1の検出脚部の一方の側面に形成された第1、第2の検出電極と、
前記第1の検出脚部の他方の側面に形成された第3、第4の検出電極と、
前記第1の検出脚部の上面に形成された第5の検出電極と、
前記第1の検出脚部の下面に形成された第6の検出電極と、
前記第2の検出脚部の一方の側面に形成された第7、第8の検出電極と、
前記第2の検出脚部の他方の側面に形成された第9、第10の検出電極と、
前記第2の検出脚部の上面に形成された第11の検出電極と、
前記第2の検出脚部の下面に形成された第12の検出電極とからなり、
前記第1の角加速度検出手段は、X軸廻りの角加速度による力に応じて発生した前記第1、第2の検出脚部の歪みによる電圧信号を前記第1乃至第4の検出電極及び前記第7乃至第10の検出電極から受けて、この電圧信号を基に前記X軸廻りの角加速度を検出し、
前記第2の角加速度検出手段は、Y軸廻りの角加速度による力に応じて発生した前記第1、第2の検出脚部の歪みによる電圧信号を前記第1乃至第12の検出電極から受けて、この電圧信号を基に前記Y軸廻りの角加速度を検出し、
前記第3の角加速度検出手段は、Z軸廻りの角加速度による力に応じて発生した前記第1、第2の検出脚部の歪みによる電圧信号を前記第1乃至第12の検出電極から受けて、この電圧信号を基に前記Z軸廻りの角加速度を検出することを特徴とする慣性センサ素子。
【請求項5】
請求項3記載の慣性センサ素子において、
前記検出電極は、
前記第1の検出脚部の一方の側面に形成された第1、第2の検出電極と、
前記第1の検出脚部の他方の側面に形成された第3、第4の検出電極と、
前記第1の検出脚部の上面に形成された第5の検出電極と、
前記第1の検出脚部の下面に形成された第6の検出電極と、
前記第2の検出脚部の一方の側面に形成された第7、第8の検出電極と、
前記第2の検出脚部の他方の側面に形成された第9、第10の検出電極と、
前記第2の検出脚部の上面に形成された第11の検出電極と、
前記第2の検出脚部の下面に形成された第12の検出電極とからなり、
前記第1の加速度検出手段は、X軸方向の加速度による力に応じて発生した前記第1、第2の検出脚部の歪みによる電圧信号を前記第1乃至第12の検出電極から受けて、この電圧信号を基に前記X軸方向の加速度を検出し、
前記第2の加速度検出手段は、Y軸方向の加速度による力に応じて発生した前記第1、第2の検出脚部の歪みによる電圧信号を前記第1乃至第4の検出電極及び前記第7乃至第10の検出電極から受けて、この電圧信号を基に前記Y軸方向の加速度を検出し、
前記第3の加速度検出手段は、Z軸方向の加速度による力に応じて発生した前記第1、第2の検出脚部の歪みによる電圧信号を前記第1乃至第4の検出電極及び前記第7乃至第10の検出電極から受けて、この電圧信号を基に前記Z軸方向の加速度を検出することを特徴とする慣性センサ素子。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の慣性センサ素子において、
前記第1の方向と直交する方向の前記基部の両端部にそれぞれ重りを設けたことを特徴とする慣性センサ素子。
【請求項1】
板状の基部と、
この基部から第1の方向に延びるように形成された第1の検出脚部と、
前記基部から前記第1の方向と反対方向に延びるように形成された第2の検出脚部と、
前記基部と反対側の前記第1の検出脚部の端部を固定すると共に、前記基部と反対側の第2の検出脚部の端部を固定する支持部と、
前記第1、第2の検出脚部の各々に設けられた検出電極と、
角加速度及び加速度が加わっていない初期状態において前記基部と前記第1、第2の検出脚部と前記支持部とが配置される平面に対して平行で、かつ前記第1の方向と直交する方向をX軸方向、前記第1の方向と平行な方向をY軸方向、XY平面と直交する方向をZ軸方向としたとき、X軸廻りの角加速度による力に応じて発生した前記第1、第2の検出脚部の歪みによる電圧信号を前記検出電極から受けて、この電圧信号を基に前記X軸廻りの角加速度を検出する第1の角加速度検出手段と、
Y軸廻りの角加速度による力に応じて発生した前記第1、第2の検出脚部の歪みによる電圧信号を前記検出電極から受けて、この電圧信号を基に前記Y軸廻りの角加速度を検出する第2の角加速度検出手段と、
Z軸廻りの角加速度による力に応じて発生した前記第1、第2の検出脚部の歪みによる電圧信号を前記検出電極から受けて、この電圧信号を基に前記Z軸廻りの角加速度を検出する第3の角加速度検出手段とを有することを特徴とする慣性センサ素子。
【請求項2】
請求項1記載の慣性センサ素子において、
さらに、前記検出されたX軸廻りの角加速度を時間で積分してX軸廻りの角速度を求める第1の積分手段と、
前記検出されたY軸廻りの角加速度を時間で積分してY軸廻りの角速度を求める第2の積分手段と、
前記検出されたZ軸廻りの角加速度を時間で積分してZ軸廻りの角速度を求める第3の積分手段とを有することを特徴とする慣性センサ素子。
【請求項3】
請求項1記載の慣性センサ素子において、
さらに、X軸方向の加速度による力に応じて発生した前記第1、第2の検出脚部の歪みによる電圧信号を前記検出電極から受けて、この電圧信号を基に前記X軸方向の加速度を検出する第1の加速度検出手段と、
Y軸方向の加速度による力に応じて発生した前記第1、第2の検出脚部の歪みによる電圧信号を前記検出電極から受けて、この電圧信号を基に前記Y軸方向の加速度を検出する第2の加速度検出手段と、
Z軸方向の加速度による力に応じて発生した前記第1、第2の検出脚部の歪みによる電圧信号を前記検出電極から受けて、この電圧信号を基に前記Z軸方向の加速度を検出する第3の加速度検出手段とを有することを特徴とする慣性センサ素子。
【請求項4】
請求項1記載の慣性センサ素子において、
前記検出電極は、
前記第1の検出脚部の一方の側面に形成された第1、第2の検出電極と、
前記第1の検出脚部の他方の側面に形成された第3、第4の検出電極と、
前記第1の検出脚部の上面に形成された第5の検出電極と、
前記第1の検出脚部の下面に形成された第6の検出電極と、
前記第2の検出脚部の一方の側面に形成された第7、第8の検出電極と、
前記第2の検出脚部の他方の側面に形成された第9、第10の検出電極と、
前記第2の検出脚部の上面に形成された第11の検出電極と、
前記第2の検出脚部の下面に形成された第12の検出電極とからなり、
前記第1の角加速度検出手段は、X軸廻りの角加速度による力に応じて発生した前記第1、第2の検出脚部の歪みによる電圧信号を前記第1乃至第4の検出電極及び前記第7乃至第10の検出電極から受けて、この電圧信号を基に前記X軸廻りの角加速度を検出し、
前記第2の角加速度検出手段は、Y軸廻りの角加速度による力に応じて発生した前記第1、第2の検出脚部の歪みによる電圧信号を前記第1乃至第12の検出電極から受けて、この電圧信号を基に前記Y軸廻りの角加速度を検出し、
前記第3の角加速度検出手段は、Z軸廻りの角加速度による力に応じて発生した前記第1、第2の検出脚部の歪みによる電圧信号を前記第1乃至第12の検出電極から受けて、この電圧信号を基に前記Z軸廻りの角加速度を検出することを特徴とする慣性センサ素子。
【請求項5】
請求項3記載の慣性センサ素子において、
前記検出電極は、
前記第1の検出脚部の一方の側面に形成された第1、第2の検出電極と、
前記第1の検出脚部の他方の側面に形成された第3、第4の検出電極と、
前記第1の検出脚部の上面に形成された第5の検出電極と、
前記第1の検出脚部の下面に形成された第6の検出電極と、
前記第2の検出脚部の一方の側面に形成された第7、第8の検出電極と、
前記第2の検出脚部の他方の側面に形成された第9、第10の検出電極と、
前記第2の検出脚部の上面に形成された第11の検出電極と、
前記第2の検出脚部の下面に形成された第12の検出電極とからなり、
前記第1の加速度検出手段は、X軸方向の加速度による力に応じて発生した前記第1、第2の検出脚部の歪みによる電圧信号を前記第1乃至第12の検出電極から受けて、この電圧信号を基に前記X軸方向の加速度を検出し、
前記第2の加速度検出手段は、Y軸方向の加速度による力に応じて発生した前記第1、第2の検出脚部の歪みによる電圧信号を前記第1乃至第4の検出電極及び前記第7乃至第10の検出電極から受けて、この電圧信号を基に前記Y軸方向の加速度を検出し、
前記第3の加速度検出手段は、Z軸方向の加速度による力に応じて発生した前記第1、第2の検出脚部の歪みによる電圧信号を前記第1乃至第4の検出電極及び前記第7乃至第10の検出電極から受けて、この電圧信号を基に前記Z軸方向の加速度を検出することを特徴とする慣性センサ素子。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の慣性センサ素子において、
前記第1の方向と直交する方向の前記基部の両端部にそれぞれ重りを設けたことを特徴とする慣性センサ素子。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図2】
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【図23】
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【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【公開番号】特開2012−42478(P2012−42478A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−223891(P2011−223891)
【出願日】平成23年10月11日(2011.10.11)
【分割の表示】特願2006−151321(P2006−151321)の分割
【原出願日】平成18年5月31日(2006.5.31)
【出願人】(000104722)京セラキンセキ株式会社 (870)
【出願人】(591171057)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月11日(2011.10.11)
【分割の表示】特願2006−151321(P2006−151321)の分割
【原出願日】平成18年5月31日(2006.5.31)
【出願人】(000104722)京セラキンセキ株式会社 (870)
【出願人】(591171057)
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